JP3180171B2 - 強誘電性液晶素子 - Google Patents
強誘電性液晶素子Info
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- JP3180171B2 JP3180171B2 JP31078592A JP31078592A JP3180171B2 JP 3180171 B2 JP3180171 B2 JP 3180171B2 JP 31078592 A JP31078592 A JP 31078592A JP 31078592 A JP31078592 A JP 31078592A JP 3180171 B2 JP3180171 B2 JP 3180171B2
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- ferroelectric liquid
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、液晶表示装置や液晶−
光シャッター等で用いる液晶素子に関し、更には液晶分
子の配向特性を改善した液晶素子用導電性配向膜及びそ
れを用いた液晶素子に関するものである。
光シャッター等で用いる液晶素子に関し、更には液晶分
子の配向特性を改善した液晶素子用導電性配向膜及びそ
れを用いた液晶素子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】TV画像は、精細で中間調を持つ動画像
である。このTV画像を表示する場合には、高解像度、
高速応答、多段階調表示、高コントラスト、高信頼性、
カラー化など最も高度な技術が要求される。この点で、
CRTに表示されるTV画像の品質は非常に優れてい
る。しかし、表示画像の大面積化の流れの中で軽量化が
可能な液晶表示装置が注目されるようになり、最近で
は、各画素毎にスイッチング素子を設けてネマティック
液晶を直接駆動するアクティブマトリックス型液晶素子
によるTV画像表示方法を中心に盛んに研究されてい
る。しかし、組み込むスイッチング素子としてはTFT
方式が最も優れていると考えられるが、素子作製プロセ
スの複雑さ、工程数等大面積化への大きな障害となって
いる。
である。このTV画像を表示する場合には、高解像度、
高速応答、多段階調表示、高コントラスト、高信頼性、
カラー化など最も高度な技術が要求される。この点で、
CRTに表示されるTV画像の品質は非常に優れてい
る。しかし、表示画像の大面積化の流れの中で軽量化が
可能な液晶表示装置が注目されるようになり、最近で
は、各画素毎にスイッチング素子を設けてネマティック
液晶を直接駆動するアクティブマトリックス型液晶素子
によるTV画像表示方法を中心に盛んに研究されてい
る。しかし、組み込むスイッチング素子としてはTFT
方式が最も優れていると考えられるが、素子作製プロセ
スの複雑さ、工程数等大面積化への大きな障害となって
いる。
【0003】一方、強誘電性液晶分子の屈折率異方性を
利用して偏光素子との組み合わせにより透過光線を制御
する形の表示素子がクラーク(Clark)及びラガー
ウォル(Lagerwall)により提案されている
(特開昭56−107216号公報、米国特許第436
7924号明細書等)。この強誘電性液晶は、一般に特
定の温度領域において、非らせん構造のカイラルスメク
ティックC相(SmC*)又はH相(SmH* )を有
し、この状態において、加えられた電界に応答して第1
の光学的安定状態と第2の光学的安定状態の何れかを取
り、且つ電界の印加のない時にはその状態を維持する性
質、即ち双安定性を有し、また電界の変化に対応する応
答も速やかであり、高速並びに記憶型の表示素子として
広い利用が期待され、特にその機能から単純マトリック
ス駆動方式による大画面で高精細な表示素子への応用が
期待されている。
利用して偏光素子との組み合わせにより透過光線を制御
する形の表示素子がクラーク(Clark)及びラガー
ウォル(Lagerwall)により提案されている
(特開昭56−107216号公報、米国特許第436
7924号明細書等)。この強誘電性液晶は、一般に特
定の温度領域において、非らせん構造のカイラルスメク
ティックC相(SmC*)又はH相(SmH* )を有
し、この状態において、加えられた電界に応答して第1
の光学的安定状態と第2の光学的安定状態の何れかを取
り、且つ電界の印加のない時にはその状態を維持する性
質、即ち双安定性を有し、また電界の変化に対応する応
答も速やかであり、高速並びに記憶型の表示素子として
広い利用が期待され、特にその機能から単純マトリック
ス駆動方式による大画面で高精細な表示素子への応用が
期待されている。
【0004】強誘電性液晶素子は該液晶の双安定性な2
状態の制御に基づいた本質的に2値表示法であるため、
中間調の表示には不向きであろうと考えられている。し
かし、強誘電性液晶の階調表示技術の開発により、該液
晶の優れた特性を生かしたより広範囲の応用が可能にな
ると期待される。単純マトリックス駆動方式での階調表
示方法として、画素内で該液晶の2つの双安定な配向状
態間の遷移をミクロな領域で制御してマイクロドメイン
形成に基づく面積階調法が提案されている(特開昭59
−193427号公報)。しかし従来の配向制御技術に
よって2値状態間のコントラスト比、スイッチング過程
におけるヒステリシス、更には発生するマイクロドメイ
ン安定性、制御性に対して十分の制御が行なわれ、実用
可能な階調性が実現できているとは言い難い。
状態の制御に基づいた本質的に2値表示法であるため、
中間調の表示には不向きであろうと考えられている。し
かし、強誘電性液晶の階調表示技術の開発により、該液
晶の優れた特性を生かしたより広範囲の応用が可能にな
ると期待される。単純マトリックス駆動方式での階調表
示方法として、画素内で該液晶の2つの双安定な配向状
態間の遷移をミクロな領域で制御してマイクロドメイン
形成に基づく面積階調法が提案されている(特開昭59
−193427号公報)。しかし従来の配向制御技術に
よって2値状態間のコントラスト比、スイッチング過程
におけるヒステリシス、更には発生するマイクロドメイ
ン安定性、制御性に対して十分の制御が行なわれ、実用
可能な階調性が実現できているとは言い難い。
【0005】この双安定性を有する液晶を用いた光学変
調素子が所定の駆動特性を発揮するためには、一対の平
行基板間に配置される液晶が電界の印加状態とは無関係
に、上記2つの安定状態の間での変換が効果的に起こる
ような分子配列状態にあることが必要である。
調素子が所定の駆動特性を発揮するためには、一対の平
行基板間に配置される液晶が電界の印加状態とは無関係
に、上記2つの安定状態の間での変換が効果的に起こる
ような分子配列状態にあることが必要である。
【0006】また、液晶の複屈折を利用した液晶素子の
場合、直交ニコル下での透過率は、 I/IO =sin2 4θsin2 (Δndπ/λ) 式中:IO は入射光強度、Iは透過光強度、θはチルト
角、Δnは屈折率異方性、dは液晶層の膜厚、λは入射
光の波長である。で表される。前述の非らせん構造にお
けるチルト角θは第1と第2の配向状態でのねじれ配列
した液晶分子の平均分子軸方向の角度として現れること
になる。上式によれば、係るチルト角θが22.5゜に
できる限り近いことが必要である。
場合、直交ニコル下での透過率は、 I/IO =sin2 4θsin2 (Δndπ/λ) 式中:IO は入射光強度、Iは透過光強度、θはチルト
角、Δnは屈折率異方性、dは液晶層の膜厚、λは入射
光の波長である。で表される。前述の非らせん構造にお
けるチルト角θは第1と第2の配向状態でのねじれ配列
した液晶分子の平均分子軸方向の角度として現れること
になる。上式によれば、係るチルト角θが22.5゜に
できる限り近いことが必要である。
【0007】ところで強誘電性液晶の配向方法として
は、大きな面積に亘ってスメクティック液晶を形成する
複数の分子で組織された液晶分子層を、その法線に沿っ
て一軸に配向させることが必要であることから、通常ラ
ビング処理を行なったポリイミド膜が広く用いられてき
た。特に非らせん構造のカイラルスメクティック液晶の
ための配向方法としては、例えば米国特許第45617
26号明細書等が知られている。従来のラビング処理し
たポリイミド膜によって配向させて得られた非らせん構
造の強誘電性液晶でのチルト角θ(後述の図3に示す角
度)が、らせん構造を持つ強誘電性液晶でのチルト角Θ
(後述の図2に示す三角錐の頂角の1/2の角度)と較
べて小さくなっていることが一般的である。特に、ラビ
ング処理したポリイミド膜によって配向させて得られた
非らせん構造の強誘電性液晶でのチルト角θは、一般に
3゜〜8゜程度で、その時の透過率はせいぜい3〜5%
程度であった。
は、大きな面積に亘ってスメクティック液晶を形成する
複数の分子で組織された液晶分子層を、その法線に沿っ
て一軸に配向させることが必要であることから、通常ラ
ビング処理を行なったポリイミド膜が広く用いられてき
た。特に非らせん構造のカイラルスメクティック液晶の
ための配向方法としては、例えば米国特許第45617
26号明細書等が知られている。従来のラビング処理し
たポリイミド膜によって配向させて得られた非らせん構
造の強誘電性液晶でのチルト角θ(後述の図3に示す角
度)が、らせん構造を持つ強誘電性液晶でのチルト角Θ
(後述の図2に示す三角錐の頂角の1/2の角度)と較
べて小さくなっていることが一般的である。特に、ラビ
ング処理したポリイミド膜によって配向させて得られた
非らせん構造の強誘電性液晶でのチルト角θは、一般に
3゜〜8゜程度で、その時の透過率はせいぜい3〜5%
程度であった。
【0008】この様に、クラークとラガウォールによれ
ば双安定性を実現する非らせん構造の強誘電性液晶での
チルト角が、らせん構造を持つ強誘電性液晶でのチルト
角と同一の角度を持つはずであるが、実際には非らせん
構造でのチルト角θの方が、らせん構造でのチルト角Θ
より小さくなっている。しかも、この非らせん構造での
チルト角θが、らせん構造でのチルト角Θより小さくな
る原因が、非らせん構造での液晶分子のねじれ配列に起
因していることが明らかにされている。つまり、非らせ
ん構造を持つ強誘電性液晶では、液晶分子が図4に示す
様に基板の法線に対して上基板に隣接する液晶分子の軸
43(ねじれ配向の方向44)へ連続的にねじれ角δで
ねじれて配列しており、このことが非らせん構造でのチ
ルト角θが、らせん構造でのチルト角Θより小さくなる
原因となっている。
ば双安定性を実現する非らせん構造の強誘電性液晶での
チルト角が、らせん構造を持つ強誘電性液晶でのチルト
角と同一の角度を持つはずであるが、実際には非らせん
構造でのチルト角θの方が、らせん構造でのチルト角Θ
より小さくなっている。しかも、この非らせん構造での
チルト角θが、らせん構造でのチルト角Θより小さくな
る原因が、非らせん構造での液晶分子のねじれ配列に起
因していることが明らかにされている。つまり、非らせ
ん構造を持つ強誘電性液晶では、液晶分子が図4に示す
様に基板の法線に対して上基板に隣接する液晶分子の軸
43(ねじれ配向の方向44)へ連続的にねじれ角δで
ねじれて配列しており、このことが非らせん構造でのチ
ルト角θが、らせん構造でのチルト角Θより小さくなる
原因となっている。
【0009】尚、図中41は上下基板に形成したラビン
グ処理や斜方蒸着処理によって得られた一軸性配向軸を
表している。
グ処理や斜方蒸着処理によって得られた一軸性配向軸を
表している。
【0010】また、従来のラビング処理したポリイミド
配向膜によって生じたカイラルスメクティック液晶の配
向状態は電極と液晶層の間に絶縁体層としてのポリイミ
ド配向膜の存在によって、第1の光学的安定状態(例え
ば、白の表示状態)から第2の光学的安定状態(例え
ば、黒の表示状態)にスイッチングするための一方極性
電圧を印加した場合、この一方極性電圧の印加解除後、
強誘電性液晶層には他方極性の逆電界Vrefが生じ、
係る逆電界Vrefがディスプレイ時における残像現象
を引き起こすという問題や(吉田明雄著、昭和62年1
0月「液晶討論会予行集」142〜143頁の「SSF
LCのスイッチング特性」)、イオン種などによる電荷
染め付等によるスイッチングにおけるヒステリシス等の
問題があった。
配向膜によって生じたカイラルスメクティック液晶の配
向状態は電極と液晶層の間に絶縁体層としてのポリイミ
ド配向膜の存在によって、第1の光学的安定状態(例え
ば、白の表示状態)から第2の光学的安定状態(例え
ば、黒の表示状態)にスイッチングするための一方極性
電圧を印加した場合、この一方極性電圧の印加解除後、
強誘電性液晶層には他方極性の逆電界Vrefが生じ、
係る逆電界Vrefがディスプレイ時における残像現象
を引き起こすという問題や(吉田明雄著、昭和62年1
0月「液晶討論会予行集」142〜143頁の「SSF
LCのスイッチング特性」)、イオン種などによる電荷
染め付等によるスイッチングにおけるヒステリシス等の
問題があった。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明の主目的は、前
述した強誘電性液晶の配向技術における問題点を解決
し、双安定性の2値状態間のコントラスト比を向上し、
スイッチング過程における残像現象やヒステリシスを解
消して、さらには実用可能な階調性を実現するために、
各画素内に発生するマイクロドメイン安定性、制御性に
対して十分の制御を有する強誘電性液晶素子を提供する
ことにある。さらにまた、カイラルスメクティック液晶
の非らせん構造での大きなチルト角を生じ、高コントラ
ストな画像が表示され、しかもスイッチング過程での残
像現象、ヒステリシスの生じない表示が可能な強誘電性
液晶素子を提供することを目的とするものである。
述した強誘電性液晶の配向技術における問題点を解決
し、双安定性の2値状態間のコントラスト比を向上し、
スイッチング過程における残像現象やヒステリシスを解
消して、さらには実用可能な階調性を実現するために、
各画素内に発生するマイクロドメイン安定性、制御性に
対して十分の制御を有する強誘電性液晶素子を提供する
ことにある。さらにまた、カイラルスメクティック液晶
の非らせん構造での大きなチルト角を生じ、高コントラ
ストな画像が表示され、しかもスイッチング過程での残
像現象、ヒステリシスの生じない表示が可能な強誘電性
液晶素子を提供することを目的とするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明は、それぞれに電
極と配向膜を有する一対の基板間に強誘電性液晶を挟持
してなる液晶素子であって、上記配向膜が、基板上に設
けられた電極を覆う導電性を付与した保護膜上に形成さ
れ、直鎖状π共役導電性高分子が基板面に対して略平行
方向に一次元配向した構造を有し、且つ該一次元配向軸
方向の光学的二色性比が2以上であることを特徴とする
強誘電性液晶素子である。
極と配向膜を有する一対の基板間に強誘電性液晶を挟持
してなる液晶素子であって、上記配向膜が、基板上に設
けられた電極を覆う導電性を付与した保護膜上に形成さ
れ、直鎖状π共役導電性高分子が基板面に対して略平行
方向に一次元配向した構造を有し、且つ該一次元配向軸
方向の光学的二色性比が2以上であることを特徴とする
強誘電性液晶素子である。
【0013】 本発明において、上記直鎖状π共役導電
性高分子としては、好ましくは剛直π共役導電性高分子
を用い、また上記配向膜上に導電性突起物を有すること
が好ましい。この場合、導電性突起物も剛直π共役導電
性高分子からなることが好ましい。更にまた、本発明に
おいては、強誘電性液晶の自発分極の大きさが10nC
/cm2以上であることが好ましい。本発明の液晶素子
において液晶初期配向状態は交流電界を印加して得るの
が望ましい。
性高分子としては、好ましくは剛直π共役導電性高分子
を用い、また上記配向膜上に導電性突起物を有すること
が好ましい。この場合、導電性突起物も剛直π共役導電
性高分子からなることが好ましい。更にまた、本発明に
おいては、強誘電性液晶の自発分極の大きさが10nC
/cm2以上であることが好ましい。本発明の液晶素子
において液晶初期配向状態は交流電界を印加して得るの
が望ましい。
【0014】以下、図面に従って本発明を詳細に説明す
る。
る。
【0015】図1は、本発明の液晶素子用配向膜(以
下、配向膜と記す)を用いた強誘電性液晶素子の一例を
示す模式図である。以下、同図に基づいて本発明の配向
膜の特性を、本発明の配向膜を有する液晶セルの特性の
評価を通して説明する。図1において、11aと11b
は各々In2 O3 やITO等の透明電極12aと12b
で被覆されたガラス基板であり、その上に200〜10
00Åの帯電防止のために僅かに導電性を付与した保護
膜13aと13bと前記重合体からなる被膜の配向膜1
4aと14bが各々積層されている。帯電防止性を有す
る該保護膜としては10-10 S/cm以上の導電率、よ
り好ましくは10-8〜10-5S/cmの範囲の導電率を
持ち、可視領域の光に対して透過性の優れた媒体が好ま
しい。本発明においては、前記条件を満たす保護膜とし
てEBスパッタ法で作製したWO3薄膜を主に用いてい
るが、該WO3 膜の製法はこれに限定されるものではな
い。また、WO3 に限らず、上記特性を有する材料であ
れば導電性付与した保護膜として用いることができる。
例えば、SnO2 、TiO2 、ZnO、ZnS、Cd
O、CdS等多くの金属酸化物や硫化物を用いることが
でき、該酸化物や硫化物は僅かなドーパントの添加によ
り導電率を広範囲にわたり制御することが可能である長
所も有している。また、前記金属酸化物や硫化物の混合
物も保護膜のアモルファス化により、より平坦性の高い
膜が得られるため有効である。
下、配向膜と記す)を用いた強誘電性液晶素子の一例を
示す模式図である。以下、同図に基づいて本発明の配向
膜の特性を、本発明の配向膜を有する液晶セルの特性の
評価を通して説明する。図1において、11aと11b
は各々In2 O3 やITO等の透明電極12aと12b
で被覆されたガラス基板であり、その上に200〜10
00Åの帯電防止のために僅かに導電性を付与した保護
膜13aと13bと前記重合体からなる被膜の配向膜1
4aと14bが各々積層されている。帯電防止性を有す
る該保護膜としては10-10 S/cm以上の導電率、よ
り好ましくは10-8〜10-5S/cmの範囲の導電率を
持ち、可視領域の光に対して透過性の優れた媒体が好ま
しい。本発明においては、前記条件を満たす保護膜とし
てEBスパッタ法で作製したWO3薄膜を主に用いてい
るが、該WO3 膜の製法はこれに限定されるものではな
い。また、WO3 に限らず、上記特性を有する材料であ
れば導電性付与した保護膜として用いることができる。
例えば、SnO2 、TiO2 、ZnO、ZnS、Cd
O、CdS等多くの金属酸化物や硫化物を用いることが
でき、該酸化物や硫化物は僅かなドーパントの添加によ
り導電率を広範囲にわたり制御することが可能である長
所も有している。また、前記金属酸化物や硫化物の混合
物も保護膜のアモルファス化により、より平坦性の高い
膜が得られるため有効である。
【0016】前記配向膜14aと14bとの間には強誘
電性スメクティック液晶15が配置され、その間隔の距
離は強誘電性スメクティック液晶15のらせん配列構造
の形成を抑制するのに十分に小さい距離(例えば、0.
1〜3μm)に設定され、強誘電性スメクティック液晶
15は双安定性配向状態を生じている。上述の強誘電性
スメクティック液晶15が配置されている十分に小さい
液晶間距離は、配向膜14a,14bとの間に配置され
たビーズスペーサー16(例えば、シリカビーズ、アル
ミナビーズ等)によって保持される。また、17a,1
7bは偏光板を示す。
電性スメクティック液晶15が配置され、その間隔の距
離は強誘電性スメクティック液晶15のらせん配列構造
の形成を抑制するのに十分に小さい距離(例えば、0.
1〜3μm)に設定され、強誘電性スメクティック液晶
15は双安定性配向状態を生じている。上述の強誘電性
スメクティック液晶15が配置されている十分に小さい
液晶間距離は、配向膜14a,14bとの間に配置され
たビーズスペーサー16(例えば、シリカビーズ、アル
ミナビーズ等)によって保持される。また、17a,1
7bは偏光板を示す。
【0017】本発明において用いられる剛直π共役導電
性高分子としては例えば、ポリ(p−フェニレン)[P
PP]、ポリ(チオフェン−2,5−ジイル)[PT
h]、ポリ(ピリジン−2,5−ジイル)[PPy]、
ポリ(2,2’−ビピリジン−2,5−ジイル)[PB
Py]、ポリ(ピリジン−5,2−ジイル−チオフェン
−2,5−ジイル)[PTPy]、ポリ(ピロール−
2,5−ジイル)[PPr]などが1種類又は2種類以
上同時に用いられる。
性高分子としては例えば、ポリ(p−フェニレン)[P
PP]、ポリ(チオフェン−2,5−ジイル)[PT
h]、ポリ(ピリジン−2,5−ジイル)[PPy]、
ポリ(2,2’−ビピリジン−2,5−ジイル)[PB
Py]、ポリ(ピリジン−5,2−ジイル−チオフェン
−2,5−ジイル)[PTPy]、ポリ(ピロール−
2,5−ジイル)[PPr]などが1種類又は2種類以
上同時に用いられる。
【0018】該剛直π共役導電性高分子に高い導電性を
付与するにはドーパントを必要とする。しかし、ドーパ
ントを特別に使用しなくとも、10-10 S/cm以上の
導電率の膜が得られる。より好ましくは10-8〜10-4
S/cmの範囲の導電率を付与すればよい。また可視領
域の光に対して透過性の優れた媒体が好ましく、配向膜
の膜厚も通常1000Å以下、好ましくは500Å以
下、より好ましくは200Å以下が望ましい。
付与するにはドーパントを必要とする。しかし、ドーパ
ントを特別に使用しなくとも、10-10 S/cm以上の
導電率の膜が得られる。より好ましくは10-8〜10-4
S/cmの範囲の導電率を付与すればよい。また可視領
域の光に対して透過性の優れた媒体が好ましく、配向膜
の膜厚も通常1000Å以下、好ましくは500Å以
下、より好ましくは200Å以下が望ましい。
【0019】前記した剛直π共役導電性高分子は、光散
乱法における偏光解消度の測定から溶液中においても剛
直な構造を持ち、主鎖方向の分極率が他の2方向に比べ
て著しく大きく、偏光解消度の測定値は0.33と理論
的な極限値(1/3)に近く、これまで他の分子につい
て知られていない理想的な剛直構造をとっていることが
知られている。
乱法における偏光解消度の測定から溶液中においても剛
直な構造を持ち、主鎖方向の分極率が他の2方向に比べ
て著しく大きく、偏光解消度の測定値は0.33と理論
的な極限値(1/3)に近く、これまで他の分子につい
て知られていない理想的な剛直構造をとっていることが
知られている。
【0020】そこで、この分子鎖をある方向に並べるこ
とができれば、配向異方性の高い配向膜を作製すること
が可能となる。配向異方性を与える方法としては、延伸
法や流動配向法等が知られている。我々は流動配向法に
より、前記基板上に直鎖状π共役導電性高分子が該基板
面に対して略平行(1°以下)方向に一次元配向した構
造を有する配向膜を作製できることを見出した。この配
向膜に直線偏光を当てると強い2色性が観測された。内
径1φ以下の細管中を1cc/min以上の流速で該直
鎖状π共役導電性高分子の溶液を流したところ、流動軸
に対して、平行及び垂直な偏光を当てた時の紫外可視吸
収スペクトルの最大吸収波長における、該配向軸に平行
な偏光に対する吸光度Aa と垂直な偏光に対する吸光度
Ab とでは大きな差があり、その2色性比、Rd =Aa
/Ab は2以上の膜が得られた。2色性比が大きいほど
一軸配向性が高く、配向膜としては可能な限り大きな2
色性比を有するものが好ましいが、2以上の2色性比を
有する配向膜であれば、液晶を均一に配向させることが
できる。
とができれば、配向異方性の高い配向膜を作製すること
が可能となる。配向異方性を与える方法としては、延伸
法や流動配向法等が知られている。我々は流動配向法に
より、前記基板上に直鎖状π共役導電性高分子が該基板
面に対して略平行(1°以下)方向に一次元配向した構
造を有する配向膜を作製できることを見出した。この配
向膜に直線偏光を当てると強い2色性が観測された。内
径1φ以下の細管中を1cc/min以上の流速で該直
鎖状π共役導電性高分子の溶液を流したところ、流動軸
に対して、平行及び垂直な偏光を当てた時の紫外可視吸
収スペクトルの最大吸収波長における、該配向軸に平行
な偏光に対する吸光度Aa と垂直な偏光に対する吸光度
Ab とでは大きな差があり、その2色性比、Rd =Aa
/Ab は2以上の膜が得られた。2色性比が大きいほど
一軸配向性が高く、配向膜としては可能な限り大きな2
色性比を有するものが好ましいが、2以上の2色性比を
有する配向膜であれば、液晶を均一に配向させることが
できる。
【0021】しかし、従来液晶の配向技術として用いら
れてきたラビング法やLB法では、やはり引伸効果によ
る高分子鎖のマクロ的、統計的な一軸配向が生じるが、
これらの方法ではミクロな領域までも高分子鎖軸の配向
を制御することはできない。このような配向膜自体が持
つミクロな配向軸分布に起因して、界面近傍の強誘電液
晶分子の配向軸のずれが生じることにより、駆動時のヒ
ステリシス、残像現象や液晶配向状態の駆動劣化が引き
起こされる可能性が指摘されている。
れてきたラビング法やLB法では、やはり引伸効果によ
る高分子鎖のマクロ的、統計的な一軸配向が生じるが、
これらの方法ではミクロな領域までも高分子鎖軸の配向
を制御することはできない。このような配向膜自体が持
つミクロな配向軸分布に起因して、界面近傍の強誘電液
晶分子の配向軸のずれが生じることにより、駆動時のヒ
ステリシス、残像現象や液晶配向状態の駆動劣化が引き
起こされる可能性が指摘されている。
【0022】一方、該剛直π共役導電性高分子は、10
-6Torr以下の高真空下で加熱を行なうことにより、
比較的容易に熱分解することなく蒸発する。例えば真空
蒸着法により炭素基板上に作製したPPP蒸着膜は良好
な配向性・結晶性を持ち、PPP結晶の軸、即ち分子鎖
が炭素基板面に対してほぼ垂直に向いて配向しているこ
とが知られている。
-6Torr以下の高真空下で加熱を行なうことにより、
比較的容易に熱分解することなく蒸発する。例えば真空
蒸着法により炭素基板上に作製したPPP蒸着膜は良好
な配向性・結晶性を持ち、PPP結晶の軸、即ち分子鎖
が炭素基板面に対してほぼ垂直に向いて配向しているこ
とが知られている。
【0023】該剛直π共役導電性高分子は上記したよう
に結晶性が高い理想的な剛直高分子であり、該結晶性に
起因した配向膜特性として、ミクロな配向軸(結晶軸)
分布制御性と、また形成されたミクロな配向軸(結晶
軸)自体のずれが発生しにくいことが挙げられる。これ
らの配向膜特性に基づき、より安定な液晶配向が実現で
き、更に言えば、界面近傍の強誘電液晶分子の配向軸の
ずれが発生し難い配向膜を提供することができる。本発
明では、該剛直π共役導電性高分子配向膜の一軸配向特
性(結晶化の割合を反映している)を2色性比により評
価しているが、液晶の均一配向には2以上の2色性比を
有する配向膜であれば良く、好ましくは10以上、更に
ミクロな配向軸(結晶軸)分布制御のためには20以上
の2色性比を有する配向膜がより好ましい。
に結晶性が高い理想的な剛直高分子であり、該結晶性に
起因した配向膜特性として、ミクロな配向軸(結晶軸)
分布制御性と、また形成されたミクロな配向軸(結晶
軸)自体のずれが発生しにくいことが挙げられる。これ
らの配向膜特性に基づき、より安定な液晶配向が実現で
き、更に言えば、界面近傍の強誘電液晶分子の配向軸の
ずれが発生し難い配向膜を提供することができる。本発
明では、該剛直π共役導電性高分子配向膜の一軸配向特
性(結晶化の割合を反映している)を2色性比により評
価しているが、液晶の均一配向には2以上の2色性比を
有する配向膜であれば良く、好ましくは10以上、更に
ミクロな配向軸(結晶軸)分布制御のためには20以上
の2色性比を有する配向膜がより好ましい。
【0024】このように成膜された配向膜により効果的
な配向性を付与するため、該配向膜の表面を更にラビン
グすることも可能である。この際、ラビングの方向は、
一方向のみでよいが、該高分子鎖の配向方向に添ってラ
ビングすることが(平行、反平行)好ましい。また上下
基板に配向膜を用いた場合、上下基板の配向軸は平行、
反平行、或いは1°以下のわずかな角度を持たせて交差
する方向でもよく、用いる強誘電性液晶材料の配向特性
に従って種々の方法で行なうことができる。
な配向性を付与するため、該配向膜の表面を更にラビン
グすることも可能である。この際、ラビングの方向は、
一方向のみでよいが、該高分子鎖の配向方向に添ってラ
ビングすることが(平行、反平行)好ましい。また上下
基板に配向膜を用いた場合、上下基板の配向軸は平行、
反平行、或いは1°以下のわずかな角度を持たせて交差
する方向でもよく、用いる強誘電性液晶材料の配向特性
に従って種々の方法で行なうことができる。
【0025】本発明においては、液晶分子の配向状態を
制御するために直鎖状π共役導電性高分子の高分子鎖軸
の基板面内の一軸配向性を制御すると共に、該直鎖状π
共役導電性高分子の導電特性を利用して、双安定性の2
値状態間のコントラスト比を向上し、スイッチング過程
における残像現象やヒステリシスを解消して、更には実
用可能な階調性を実現するために、各画素内に発生する
マイクロドメイン安定性、制御性に対して十分の制御を
有する強誘電性液晶素子を提供することができる。ま
た、前記高分子鎖軸の面内一軸配向の形成方法として、
流動配向法について述べたが、本発明の配向膜形成法は
それに限定されるものではなく、前記一軸配向性が実現
できる方法であれば他の方法でもよい。例えば、予めラ
ビング配向処理した基板上に、直鎖状π共役導電性高分
子を10-6Torr以下の高真空下で加熱蒸着すること
により所望の配向膜を形成できる。
制御するために直鎖状π共役導電性高分子の高分子鎖軸
の基板面内の一軸配向性を制御すると共に、該直鎖状π
共役導電性高分子の導電特性を利用して、双安定性の2
値状態間のコントラスト比を向上し、スイッチング過程
における残像現象やヒステリシスを解消して、更には実
用可能な階調性を実現するために、各画素内に発生する
マイクロドメイン安定性、制御性に対して十分の制御を
有する強誘電性液晶素子を提供することができる。ま
た、前記高分子鎖軸の面内一軸配向の形成方法として、
流動配向法について述べたが、本発明の配向膜形成法は
それに限定されるものではなく、前記一軸配向性が実現
できる方法であれば他の方法でもよい。例えば、予めラ
ビング配向処理した基板上に、直鎖状π共役導電性高分
子を10-6Torr以下の高真空下で加熱蒸着すること
により所望の配向膜を形成できる。
【0026】本発明の配向膜を用いた液晶素子に使用さ
れる液晶物質は特に限定されない。しかし、液晶注入時
の初期均一配向の容易性から評価すると、降温過程で、
等方相、コレステリック相、スメクティックA相を通し
てカイラルスメクティックC相を生じる液晶が好まし
い。特にコレステリック相の時のピッチが0.8μm以
上のものが好ましい(但し、コレステリック相の温度範
囲における中央点で測定したもの)。しかし、本発明の
液晶配向膜の応用は上記特性の液晶にのみ限定されるも
のではなく、特にスイッチング過程の安定性・再現性か
らは、強誘電性液晶分子が有する自発分極の空間的発
散、即ち空間電荷の作る分極場が液晶分子の分子配向に
影響を及ぼし得るような大きな自発分極を有する強誘電
性液晶、例えば、自発分極Psが10nC/cm2 以上
である強誘電性液晶に対して好適に用いられる。また、
降温過程でコレステリック相を持たず、SmC* 相での
らせんピッチが0.5μm以下の強誘電性液晶でも、液
晶注入時の初期均一配向の達成は難しくはなるが十分に
用いることができる。
れる液晶物質は特に限定されない。しかし、液晶注入時
の初期均一配向の容易性から評価すると、降温過程で、
等方相、コレステリック相、スメクティックA相を通し
てカイラルスメクティックC相を生じる液晶が好まし
い。特にコレステリック相の時のピッチが0.8μm以
上のものが好ましい(但し、コレステリック相の温度範
囲における中央点で測定したもの)。しかし、本発明の
液晶配向膜の応用は上記特性の液晶にのみ限定されるも
のではなく、特にスイッチング過程の安定性・再現性か
らは、強誘電性液晶分子が有する自発分極の空間的発
散、即ち空間電荷の作る分極場が液晶分子の分子配向に
影響を及ぼし得るような大きな自発分極を有する強誘電
性液晶、例えば、自発分極Psが10nC/cm2 以上
である強誘電性液晶に対して好適に用いられる。また、
降温過程でコレステリック相を持たず、SmC* 相での
らせんピッチが0.5μm以下の強誘電性液晶でも、液
晶注入時の初期均一配向の達成は難しくはなるが十分に
用いることができる。
【0027】図2は、強誘電性液晶の動作説明のため
に、セルの例を模式的に描いたものである。21aと2
1bは、In2 O3 、SnO2 或いはITO等の薄膜か
らなる透明電極で被覆された基板(ガラス板)であり、
その間に液晶分子層22がガラス基板面に垂直になるよ
う配向したSmC* (カイラルスメクティックC)相又
はSmH* (カイラルスメクティックH)相の液晶が封
入されている。太線で示した線23は液晶分子を表して
おり、この液晶分子23はその分子に直交した方向に双
極子モーメント24を有している。この時の三角錐の頂
角をなす角度が係るらせん構造のカイラルスメクティッ
ク相でのチルト角Θを表している。基板21aと21b
上の電極間に一定の閾値以上の電圧を印加すると、液晶
分子23のらせん構造がほどけ、双極子モーメント24
が全て電界方向に向くよう、液晶分子23は配向方向を
変えることができる。液晶分子23は、細長い形状を有
しており、その長軸方向と短軸方向で屈折率異方性を示
し、従って例えばガラス基板面の上下に互いにクロスニ
コルの偏光子を置けば、電圧印加極性によって光学特性
が変わる液晶光学変調素子となることは、容易に理解さ
れる。
に、セルの例を模式的に描いたものである。21aと2
1bは、In2 O3 、SnO2 或いはITO等の薄膜か
らなる透明電極で被覆された基板(ガラス板)であり、
その間に液晶分子層22がガラス基板面に垂直になるよ
う配向したSmC* (カイラルスメクティックC)相又
はSmH* (カイラルスメクティックH)相の液晶が封
入されている。太線で示した線23は液晶分子を表して
おり、この液晶分子23はその分子に直交した方向に双
極子モーメント24を有している。この時の三角錐の頂
角をなす角度が係るらせん構造のカイラルスメクティッ
ク相でのチルト角Θを表している。基板21aと21b
上の電極間に一定の閾値以上の電圧を印加すると、液晶
分子23のらせん構造がほどけ、双極子モーメント24
が全て電界方向に向くよう、液晶分子23は配向方向を
変えることができる。液晶分子23は、細長い形状を有
しており、その長軸方向と短軸方向で屈折率異方性を示
し、従って例えばガラス基板面の上下に互いにクロスニ
コルの偏光子を置けば、電圧印加極性によって光学特性
が変わる液晶光学変調素子となることは、容易に理解さ
れる。
【0028】本発明の導電性配向膜を有する液晶素子で
用いる双安定性配向状態の表面安定型強誘電性液晶セル
は、その厚さを充分に薄く(例えば、0.1〜3μm)
することができる。このように液晶層が薄くなるに従が
い、図3に示すように電界を印加していない状態でも液
晶分子のらせん構造がほどけ、非らせん構造となり、そ
の双極子モーメントPa又はPbは上向き(34a)又
は下向き(34b)のどちらかの状態をとる。このよう
なセルに、図3に示す如く一定の閾値以上の極性の異な
る電界Ea又はEbを電圧印加手段31aと31bによ
り付与すると、双極子モーメントは、電界Ea又はEb
の電界ベクトルに対応して上向き34a又は下向き34
bと向きを変え、それに応じて液晶分子は第1の安定状
態33a或いは第2の安定状態33bの何れか一方に配
向する。この時の第1と第2安定状態のなす角度の1/
2がチルト角θに相当する。
用いる双安定性配向状態の表面安定型強誘電性液晶セル
は、その厚さを充分に薄く(例えば、0.1〜3μm)
することができる。このように液晶層が薄くなるに従が
い、図3に示すように電界を印加していない状態でも液
晶分子のらせん構造がほどけ、非らせん構造となり、そ
の双極子モーメントPa又はPbは上向き(34a)又
は下向き(34b)のどちらかの状態をとる。このよう
なセルに、図3に示す如く一定の閾値以上の極性の異な
る電界Ea又はEbを電圧印加手段31aと31bによ
り付与すると、双極子モーメントは、電界Ea又はEb
の電界ベクトルに対応して上向き34a又は下向き34
bと向きを変え、それに応じて液晶分子は第1の安定状
態33a或いは第2の安定状態33bの何れか一方に配
向する。この時の第1と第2安定状態のなす角度の1/
2がチルト角θに相当する。
【0029】この強誘電性液晶セルによって得られる効
果は、その第1に応答速度が極めて速いことであり、そ
の第2に液晶分子の配向が双安定性を有することであ
る。第2の点を、例えば図3によって更に説明すると、
電界Eaを印加すると液晶分子は第1の安定状態33a
に配向するが、この状態は電界を切っても安定である。
又、逆向きの電界Ebを印加すると、液晶分子は第2の
安定状態33bに配向してその分子の向きを変えるが、
やはり電界を切ってもこの状態に留まっている。また、
与える電界Eaが一定の閾値を越えない限り、それぞれ
の配向状態にやはり維持されている。
果は、その第1に応答速度が極めて速いことであり、そ
の第2に液晶分子の配向が双安定性を有することであ
る。第2の点を、例えば図3によって更に説明すると、
電界Eaを印加すると液晶分子は第1の安定状態33a
に配向するが、この状態は電界を切っても安定である。
又、逆向きの電界Ebを印加すると、液晶分子は第2の
安定状態33bに配向してその分子の向きを変えるが、
やはり電界を切ってもこの状態に留まっている。また、
与える電界Eaが一定の閾値を越えない限り、それぞれ
の配向状態にやはり維持されている。
【0030】次に、図5(a)は本発明の配向膜を用い
た配向方法により配向した液晶分子の配向状態を模式的
に示す断面図、図5(b)はそのC−ダイレクタを示す
図である。図5(a)に示す51a及び51bは、それ
ぞれ上基板及び下基板を表している。50は液晶分子5
2で組織された液晶分子層で、液晶分子52が円錐53
の底面54(円形)に沿った位置を変化させて配列して
いる。図5(b)は、C−ダイレクタを示す図であり、
同図中のU1 は一方の安定配向状態でのC−ダイレクタ
81で、U2 は他方の安定配向状態でのC−ダイレクタ
81である。C−ダイレクタ81は、図5(a)に示す
液晶分子層50の法線に対して垂直な仮想面への分子長
軸の射影である。
た配向方法により配向した液晶分子の配向状態を模式的
に示す断面図、図5(b)はそのC−ダイレクタを示す
図である。図5(a)に示す51a及び51bは、それ
ぞれ上基板及び下基板を表している。50は液晶分子5
2で組織された液晶分子層で、液晶分子52が円錐53
の底面54(円形)に沿った位置を変化させて配列して
いる。図5(b)は、C−ダイレクタを示す図であり、
同図中のU1 は一方の安定配向状態でのC−ダイレクタ
81で、U2 は他方の安定配向状態でのC−ダイレクタ
81である。C−ダイレクタ81は、図5(a)に示す
液晶分子層50の法線に対して垂直な仮想面への分子長
軸の射影である。
【0031】一方、従来のラビング処理したポリイミド
膜によって生じた配向状態は図5(c)のC−ダイレク
タ図によって示される。図5(c)に示す配向状態は、
上基板51aから下基板51bに向けて分子軸の捩れが
大きいため、チルト角θは小さくなっている。
膜によって生じた配向状態は図5(c)のC−ダイレク
タ図によって示される。図5(c)に示す配向状態は、
上基板51aから下基板51bに向けて分子軸の捩れが
大きいため、チルト角θは小さくなっている。
【0032】次に、図6(a)は、C−ダイレクタ81
が図5(b)の状態(ユニホーム配向状態という)での
チルト角θを示す説明図、及び図6(b)はC−ダイレ
クタ81が図5(c)の状態(スプレイ配向状態とい
う)でのチルト角θを示す説明図である。図中、60は
配向膜をラングミュアーブロジェット法によって形成し
たときの基板の引き上げ方向、又は配向膜を塗布法又は
蒸着法によって形成したときのラビング処理軸を示し、
61aは配向状態U1 での平均分子軸、61bは配向状
態U2 での平均分子軸、62aは配向状態S1 での平均
分子軸、62bは配向状態S2 での平均分子軸を示す。
平均分子軸61aと61bとは、互いに閾値電圧を越え
た逆極性電圧の印加によって変換することができる。同
様のことは平均分子軸62aと62bとの間でも生じ
る。
が図5(b)の状態(ユニホーム配向状態という)での
チルト角θを示す説明図、及び図6(b)はC−ダイレ
クタ81が図5(c)の状態(スプレイ配向状態とい
う)でのチルト角θを示す説明図である。図中、60は
配向膜をラングミュアーブロジェット法によって形成し
たときの基板の引き上げ方向、又は配向膜を塗布法又は
蒸着法によって形成したときのラビング処理軸を示し、
61aは配向状態U1 での平均分子軸、61bは配向状
態U2 での平均分子軸、62aは配向状態S1 での平均
分子軸、62bは配向状態S2 での平均分子軸を示す。
平均分子軸61aと61bとは、互いに閾値電圧を越え
た逆極性電圧の印加によって変換することができる。同
様のことは平均分子軸62aと62bとの間でも生じ
る。
【0033】次に、逆電界Vrevによる光学応答の遅
れ(残像)に対するユニフォーム配向状態の有用性につ
いて説明する。液晶セルの配向制御層の容量Ci、液晶
層の容量をCLC及び液晶の自発分極をPsとすると、残
像の原因となるVrevは下式で表される。
れ(残像)に対するユニフォーム配向状態の有用性につ
いて説明する。液晶セルの配向制御層の容量Ci、液晶
層の容量をCLC及び液晶の自発分極をPsとすると、残
像の原因となるVrevは下式で表される。
【0034】Vrev=2・Ps/(Ci+CLC) 図7は液晶セル内の電荷分布、自発分極Psの方向及び
逆電界Vrevの方向を模式的に示した断面図である。
図7(a)はパルス電界印加前のメモリ状態下における
+及び−電荷の分布状態を示し、この時の自発分極Ps
の向きは+電荷から−電荷の方向である。図7(b)は
パルス電界解除直後の自発分極Psの向きを示し、自発
分極Psは図7(a)の時の向きに対して逆向き(従っ
て液晶分子は一方の安定配向状態から他方の安定配向状
態に反転を生じている)であるが、+及び−電荷の分布
状態は図7(a)の時と同様であるため、液晶内に逆電
界Vrevが矢印B方向に生じている。この逆電界Vr
evはしばらくした後、図7(c)に示すように消滅
し、+及び−電荷の分布状態が変化する。
逆電界Vrevの方向を模式的に示した断面図である。
図7(a)はパルス電界印加前のメモリ状態下における
+及び−電荷の分布状態を示し、この時の自発分極Ps
の向きは+電荷から−電荷の方向である。図7(b)は
パルス電界解除直後の自発分極Psの向きを示し、自発
分極Psは図7(a)の時の向きに対して逆向き(従っ
て液晶分子は一方の安定配向状態から他方の安定配向状
態に反転を生じている)であるが、+及び−電荷の分布
状態は図7(a)の時と同様であるため、液晶内に逆電
界Vrevが矢印B方向に生じている。この逆電界Vr
evはしばらくした後、図7(c)に示すように消滅
し、+及び−電荷の分布状態が変化する。
【0035】図8は従来のポリイミド配向膜によって生
じたスプレイ配向状態の光学応答の変化をチルト角θの
変化に換えて示した説明図である。図8に示すように、
パルス電界印加時においては矢印X1 の方向に沿ってス
プレイ配向状態下の平均分子軸S(A)から最大チルト
角Θ付近のユニフォーム配向状態下の平均分子軸U2ま
でチルト角θが若干増大した安定配向状態が得られる。
図9はこの時の光学応答の状態を示すグラフである。
じたスプレイ配向状態の光学応答の変化をチルト角θの
変化に換えて示した説明図である。図8に示すように、
パルス電界印加時においては矢印X1 の方向に沿ってス
プレイ配向状態下の平均分子軸S(A)から最大チルト
角Θ付近のユニフォーム配向状態下の平均分子軸U2ま
でチルト角θが若干増大した安定配向状態が得られる。
図9はこの時の光学応答の状態を示すグラフである。
【0036】本発明によれば、前述した本発明の配向膜
を用いることで、液晶配向状態として、図8に示したス
プレイ状態下の平均分子軸S(A)、S(B)及びS
(C)を生じることが無く、従って最大チルト角Θに近
いチルト角θを生じる平均分子軸に配列させることがで
きる。
を用いることで、液晶配向状態として、図8に示したス
プレイ状態下の平均分子軸S(A)、S(B)及びS
(C)を生じることが無く、従って最大チルト角Θに近
いチルト角θを生じる平均分子軸に配列させることがで
きる。
【0037】図10は本発明の配向膜を用いた時の光学
応答の状態を示すグラフである。図10によれば、残像
に原因する光学応答の遅れを生じないこととメモリ状態
下での高いコントラストを引き起こしていることが認め
られる。図12は本発明の配向膜を用いた時の透過率と
50μsecの印加パルスの波高値との関係を示すグラ
フ(V−T特性)である。図12の実線と点線で示した
ように、初期状態の相違(暗状態、明状態)に対してV
−T特性に差のない配向状態が達成されていることが認
められた。
応答の状態を示すグラフである。図10によれば、残像
に原因する光学応答の遅れを生じないこととメモリ状態
下での高いコントラストを引き起こしていることが認め
られる。図12は本発明の配向膜を用いた時の透過率と
50μsecの印加パルスの波高値との関係を示すグラ
フ(V−T特性)である。図12の実線と点線で示した
ように、初期状態の相違(暗状態、明状態)に対してV
−T特性に差のない配向状態が達成されていることが認
められた。
【0038】本発明は、下述の実施例で明らかにするよ
うに、高配向制御された導電性配向膜を用いることによ
って、明状態と暗状態での大きな光学的コントラストを
示し、特に米国特許第4655561号明細書等に開示
されているマルチプレクシング駆動時の非選択画素に対
して大きなコントラストを生じ、更にディスプレイ時の
残像の原因となるスイッチング時(マルチプレクシング
駆動時)の光学応答の遅れを生じない配向状態を達成す
ることができると共にスイッチングによる配向状態の変
化も観測されず安定な配向状態が達成されていることを
確認できた。
うに、高配向制御された導電性配向膜を用いることによ
って、明状態と暗状態での大きな光学的コントラストを
示し、特に米国特許第4655561号明細書等に開示
されているマルチプレクシング駆動時の非選択画素に対
して大きなコントラストを生じ、更にディスプレイ時の
残像の原因となるスイッチング時(マルチプレクシング
駆動時)の光学応答の遅れを生じない配向状態を達成す
ることができると共にスイッチングによる配向状態の変
化も観測されず安定な配向状態が達成されていることを
確認できた。
【0039】
【実施例】以下、実施例を示し本発明を更に具体的に説
明する。
明する。
【0040】(実施例1)基板として、1500Å厚の
ITO膜が設けられている1.1mm厚のガラス基板を
2枚用意し、スパッタ法を用いてWO3 を該基板上にそ
れぞれ500Åの膜厚に成膜し保護膜とした。この膜の
シ−ト抵抗値は0.1×10-7S/cmであった。
ITO膜が設けられている1.1mm厚のガラス基板を
2枚用意し、スパッタ法を用いてWO3 を該基板上にそ
れぞれ500Åの膜厚に成膜し保護膜とした。この膜の
シ−ト抵抗値は0.1×10-7S/cmであった。
【0041】PPyをぎ酸に0.3%の重量濃度に溶か
し、該溶液を内径1φのステンレス管(長さ5mm)中
を流した後、流速軸を一定にして前記基板上に塗布し
た。塗布の模式図を図14に示す。配向膜の膜厚は10
nmであり、2色性比は48であった。また、配向膜面
に垂直な吸収成分はほとんど観測されず、高分子鎖軸が
基板面にほぼ平行に配向していることが分かった。同様
にして作製した配向膜の導電率を測定したところ、10
-6S/cmであった。
し、該溶液を内径1φのステンレス管(長さ5mm)中
を流した後、流速軸を一定にして前記基板上に塗布し
た。塗布の模式図を図14に示す。配向膜の膜厚は10
nmであり、2色性比は48であった。また、配向膜面
に垂直な吸収成分はほとんど観測されず、高分子鎖軸が
基板面にほぼ平行に配向していることが分かった。同様
にして作製した配向膜の導電率を測定したところ、10
-6S/cmであった。
【0042】次に、この膜に押込みの毛先の侵入長0.
4mm,および回転数1000rpmそして基板の送り
速度12mm/secの条件で高分子鎖軸方向とほぼ平
行にラビング処理を行い配向膜とした。
4mm,および回転数1000rpmそして基板の送り
速度12mm/secの条件で高分子鎖軸方向とほぼ平
行にラビング処理を行い配向膜とした。
【0043】その後、平均粒径約1.5μmのアルミナ
ビーズを一方の基板上に散布した後、各々の基板のラビ
ング軸が互いに平行且つ同一方向になるように2枚の基
板を重ね合わせて液晶セルを作製した。このセル内にチ
ッソ(株)社製の強誘電性液晶である「CS−101
4」(商品名)を等方相下で真空注入してから、等方相
から0.5℃/hで30℃まで徐冷することによって配
向させることができた。この強誘電性液晶「CS−10
14」を用いた本実施例のセルでの相変化は、下記の通
りであった。
ビーズを一方の基板上に散布した後、各々の基板のラビ
ング軸が互いに平行且つ同一方向になるように2枚の基
板を重ね合わせて液晶セルを作製した。このセル内にチ
ッソ(株)社製の強誘電性液晶である「CS−101
4」(商品名)を等方相下で真空注入してから、等方相
から0.5℃/hで30℃まで徐冷することによって配
向させることができた。この強誘電性液晶「CS−10
14」を用いた本実施例のセルでの相変化は、下記の通
りであった。
【0044】
【数1】 上述の液晶セルを一対の90゜クロスニコル偏光子の間
に挟み込んで、50μsの書き込みパルス電圧の波高値
を変えてV−T特定を測定した。結果を図12に示す。
この時のパルス電圧波形を図13に示した。図12よ
り、初期状態が暗状態であるか明状態であるかによらず
V−T特性に差がなく、駆動時のヒステリシスがないこ
とが示された。
に挟み込んで、50μsの書き込みパルス電圧の波高値
を変えてV−T特定を測定した。結果を図12に示す。
この時のパルス電圧波形を図13に示した。図12よ
り、初期状態が暗状態であるか明状態であるかによらず
V−T特性に差がなく、駆動時のヒステリシスがないこ
とが示された。
【0045】また、50μsecの30Vパルスを印加
してから90゜クロスニコルを消光位(最暗状態)にセ
ットし、この時の透過率をホトマルチプライヤーにより
測定し、続いて50μsecの−30Vパルスを印加
し、この時の透過率(明状態)を同様の方法で測定し、
チルト角θと最暗状態と最明状態の透過率の比、即ちコ
ントラスト比を求めた。最暗状態の透過率は0.8%で
あるのに対して最明状態の透過率は45%でコントラス
ト比は55:1であった。また、残像の原因となる光学
応答の遅れは0.1秒以下となり、いずれも好結果であ
った。
してから90゜クロスニコルを消光位(最暗状態)にセ
ットし、この時の透過率をホトマルチプライヤーにより
測定し、続いて50μsecの−30Vパルスを印加
し、この時の透過率(明状態)を同様の方法で測定し、
チルト角θと最暗状態と最明状態の透過率の比、即ちコ
ントラスト比を求めた。最暗状態の透過率は0.8%で
あるのに対して最明状態の透過率は45%でコントラス
ト比は55:1であった。また、残像の原因となる光学
応答の遅れは0.1秒以下となり、いずれも好結果であ
った。
【0046】更に、上記スイッチング動作を107 回以
上行なった後でも、強誘電液晶の配向状態に何らの変化
も生じなかった。
上行なった後でも、強誘電液晶の配向状態に何らの変化
も生じなかった。
【0047】この液晶セルを図11に示す駆動波形を用
いたマルチプレクシング駆動による表示を行なったとこ
ろ、高コントラストな高品位表示が得られ、また、所定
の文字入力による画像表示の後に全画面を白の状態に消
去したところ、残像の発生は判読できなかった。尚、図
11のSN 、SN+1 、SN+2 は走査線に印加した電圧波
形を表しており、Iは代表的な情報線に印加した電圧波
形を表している。(I−SN )は、情報線Iと走査線S
N との交差部に印加された合成波形である。また、本実
施例ではVO =5〜8V、ΔT=20〜70μsecで
行なった。
いたマルチプレクシング駆動による表示を行なったとこ
ろ、高コントラストな高品位表示が得られ、また、所定
の文字入力による画像表示の後に全画面を白の状態に消
去したところ、残像の発生は判読できなかった。尚、図
11のSN 、SN+1 、SN+2 は走査線に印加した電圧波
形を表しており、Iは代表的な情報線に印加した電圧波
形を表している。(I−SN )は、情報線Iと走査線S
N との交差部に印加された合成波形である。また、本実
施例ではVO =5〜8V、ΔT=20〜70μsecで
行なった。
【0048】(実施例2)実施例1で作製したPPyを
流動配向させた膜(膜厚:10mm、2色性比:48)
上に、蒸着角度を15°以下にしてPPPを抵抗加熱に
より真空蒸着して配向膜とした。配向膜の全膜厚は19
nmであり、2色性比は40であった。また配向膜面に
垂直な吸収成分はほとんど観測されず、高分子鎖軸はほ
ぼ基板面に平行に配向していることが分かった。該配向
膜に実施例1と同様にしてラビング処理を施したのち、
実施例1と同様にして液晶セルを作製し、評価を行った
ところ、実施例1と同様の良好な結果が得られた。ま
た、マルチプレクシング駆動による表示においても、コ
ントラストおよび残像については実施例1と同様の良好
な結果が得られた。
流動配向させた膜(膜厚:10mm、2色性比:48)
上に、蒸着角度を15°以下にしてPPPを抵抗加熱に
より真空蒸着して配向膜とした。配向膜の全膜厚は19
nmであり、2色性比は40であった。また配向膜面に
垂直な吸収成分はほとんど観測されず、高分子鎖軸はほ
ぼ基板面に平行に配向していることが分かった。該配向
膜に実施例1と同様にしてラビング処理を施したのち、
実施例1と同様にして液晶セルを作製し、評価を行った
ところ、実施例1と同様の良好な結果が得られた。ま
た、マルチプレクシング駆動による表示においても、コ
ントラストおよび残像については実施例1と同様の良好
な結果が得られた。
【0049】(実施例3)実施例1で用いた強誘電性液
晶「CS−1014」に替えて、同じくビフェニルエス
テル系化合物で下記に示す相転移状態を示す他の強誘電
性液晶を用いて以下の実験を行なった。
晶「CS−1014」に替えて、同じくビフェニルエス
テル系化合物で下記に示す相転移状態を示す他の強誘電
性液晶を用いて以下の実験を行なった。
【0050】
【数2】 液晶層が十分に厚い場合(〜100μ)、SmC* では
らせん構造をとり、そのピッチは約4μmであった。三
角波法による自発分極の状態から自発分極は約10nC
/cm2 であり、セル厚1.5μmでのチルト角Θは2
3.5°でほぼ最適値に近い値を持つ。
らせん構造をとり、そのピッチは約4μmであった。三
角波法による自発分極の状態から自発分極は約10nC
/cm2 であり、セル厚1.5μmでのチルト角Θは2
3.5°でほぼ最適値に近い値を持つ。
【0051】該液晶を実施例2で作製した液晶セル(但
し、ラビング処理なし)に注入した。その時の見かけの
チルト角θは16°で最適値に及ばなかった。
し、ラビング処理なし)に注入した。その時の見かけの
チルト角θは16°で最適値に及ばなかった。
【0052】これらの液晶セルに電圧±45V〜55V
で周波数40Hzの交流電圧を15分間印加したところ
チルト角θが20.1°のドメインが出現し始め、更に
55〜70Vの電圧では、このドメインが全体に広がり
非常に良いコントラストが得られた。70V以上では反
対に多くの欠陥が発生し、モノドメインが崩れた。安定
なモノドメインが出現した後の、双安定状態間の反転は
以下のパルスで行なわれた。
で周波数40Hzの交流電圧を15分間印加したところ
チルト角θが20.1°のドメインが出現し始め、更に
55〜70Vの電圧では、このドメインが全体に広がり
非常に良いコントラストが得られた。70V以上では反
対に多くの欠陥が発生し、モノドメインが崩れた。安定
なモノドメインが出現した後の、双安定状態間の反転は
以下のパルスで行なわれた。
【0053】
【表1】 交流電圧印加後の配向状態の変化は図5(a)に示した
層の捻じれが解ける効果であると考えている。また、反
転電圧は印加前の反転電圧に比べ電圧が高くなっている
が、この原因は明らかでないが、チルト角θがΘに近づ
くためには配向膜の界面近傍の液晶分子をも反転させる
エネルギーを与えなければならないために、反転に必要
な駆動電圧が高いことが必要であると考えられる。交流
電圧印加後のチルト角θにより透過光量が電圧印加前に
比較してコントラスト比は大幅に増加した。また反電場
効果による光学応答の遅れも0.1sec以下で安定な
スイッチングが可能であった。
層の捻じれが解ける効果であると考えている。また、反
転電圧は印加前の反転電圧に比べ電圧が高くなっている
が、この原因は明らかでないが、チルト角θがΘに近づ
くためには配向膜の界面近傍の液晶分子をも反転させる
エネルギーを与えなければならないために、反転に必要
な駆動電圧が高いことが必要であると考えられる。交流
電圧印加後のチルト角θにより透過光量が電圧印加前に
比較してコントラスト比は大幅に増加した。また反電場
効果による光学応答の遅れも0.1sec以下で安定な
スイッチングが可能であった。
【0054】また、該双安定状態を有する強誘電液晶相
は、通常高温状態から降温によって得られるが、この際
50Hz、140Vの交流電界を印加しつつ降温したと
ころ広い範囲にわたって均一なモノドメインの配向状態
が実現できた。
は、通常高温状態から降温によって得られるが、この際
50Hz、140Vの交流電界を印加しつつ降温したと
ころ広い範囲にわたって均一なモノドメインの配向状態
が実現できた。
【0055】(実施例4)実施例1で作製したPPyの
流動配向膜(膜厚:10nm、2色性比:48)をラビ
ング処理なしに配向膜として用い液晶セルを作製した。
実施例3と同じ強誘電性液晶を注入し、交流電圧(40
Hz、60V)を15分間印加したところ、チルト角θ
が21.7°の均一なモノドメイン配向状態が出現し
た。該液晶セルに実施例1と同様な評価を行なったとこ
ろ、ヒステリシスのない良好なスイッチング駆動特性を
示した。更に、実施例1と比較し特にコントラスト比の
大幅に改善された良好な液晶セルが得られることがわか
った。また、実施例1と同様のマルチプレクシング駆動
による表示を行なったところ、コントラスト及び残像に
ついても同様の良好な結果が得られた。また、スイッチ
ング動作を107 回以上行なった後でも、強誘電液晶の
配向状態に何らの変化も生じなかった。
流動配向膜(膜厚:10nm、2色性比:48)をラビ
ング処理なしに配向膜として用い液晶セルを作製した。
実施例3と同じ強誘電性液晶を注入し、交流電圧(40
Hz、60V)を15分間印加したところ、チルト角θ
が21.7°の均一なモノドメイン配向状態が出現し
た。該液晶セルに実施例1と同様な評価を行なったとこ
ろ、ヒステリシスのない良好なスイッチング駆動特性を
示した。更に、実施例1と比較し特にコントラスト比の
大幅に改善された良好な液晶セルが得られることがわか
った。また、実施例1と同様のマルチプレクシング駆動
による表示を行なったところ、コントラスト及び残像に
ついても同様の良好な結果が得られた。また、スイッチ
ング動作を107 回以上行なった後でも、強誘電液晶の
配向状態に何らの変化も生じなかった。
【0056】(実施例5)実施例4で用いたPPy配向
膜の替わりにPTPy配向膜(膜厚:10nm、2色性
比:45)を用いた以外は全て実施例3と同様にして液
晶セルを作製し、評価したところ、チルト角θが21.
9°の均一なモノドメイン配向状態が出現した。該液晶
セルに実施例1と同様な評価を行なったところ、ヒステ
リシスのない良好なスイッチング駆動特性を示した。更
に、実施例1と比較し特にコントラスト比の大幅に改善
された良好な液晶セルが得られることがわかった。ま
た、実施例1と同様のマルチプレクシング駆動による表
示を行なったところ、コントラスト及び残像についても
同様の良好な結果が得られた。また、スイッチング動作
を107 回以上行なった後でも、強誘電液晶の配向状態
に何らの変化も生じなかった。
膜の替わりにPTPy配向膜(膜厚:10nm、2色性
比:45)を用いた以外は全て実施例3と同様にして液
晶セルを作製し、評価したところ、チルト角θが21.
9°の均一なモノドメイン配向状態が出現した。該液晶
セルに実施例1と同様な評価を行なったところ、ヒステ
リシスのない良好なスイッチング駆動特性を示した。更
に、実施例1と比較し特にコントラスト比の大幅に改善
された良好な液晶セルが得られることがわかった。ま
た、実施例1と同様のマルチプレクシング駆動による表
示を行なったところ、コントラスト及び残像についても
同様の良好な結果が得られた。また、スイッチング動作
を107 回以上行なった後でも、強誘電液晶の配向状態
に何らの変化も生じなかった。
【0057】(実施例6)実施例1の液晶セル作製で、
PPPの正四角柱の微小突起物(大きさ:5μm、高
さ:9nm、間隔:10μm)をPPy配向膜上全面に
マスクパターンを用いて蒸着形成した以外は全く同様に
して液晶セルを作製し、実施例3で用いた強誘電性液晶
を注入して、透過率と50μsecの印加パルスの波高
値との関係を測定したところ、図15の実線で示した特
性が得られた。図15から明らかなように、画素全体に
わたって閾値電圧の異なる領域が分布することによっ
て、広い透過域(ゆるやかに変化する透過特性)を有す
る透過率/電圧特性となり、中間調を調整することがで
きることがわかった。
PPPの正四角柱の微小突起物(大きさ:5μm、高
さ:9nm、間隔:10μm)をPPy配向膜上全面に
マスクパターンを用いて蒸着形成した以外は全く同様に
して液晶セルを作製し、実施例3で用いた強誘電性液晶
を注入して、透過率と50μsecの印加パルスの波高
値との関係を測定したところ、図15の実線で示した特
性が得られた。図15から明らかなように、画素全体に
わたって閾値電圧の異なる領域が分布することによっ
て、広い透過域(ゆるやかに変化する透過特性)を有す
る透過率/電圧特性となり、中間調を調整することがで
きることがわかった。
【0058】本実施例の中で用いたPPPの微小突起物
は正四角柱であるが、その形状は実施例に限定されるも
のではなく、また突起物の大きさ、高さ、そしてその間
隔も実施例に限定されず、例えば、突起物の材質により
異なる。本実施例の液晶セルは他の実施例と同様な表示
特性を示すとともに、更に画素全体にわたって閾値電圧
の異なる領域が分布することによって、広い透過域(ゆ
るやかに変化する透過特性)を有する透過率/電圧特性
となり、導電性高分子化合物をポリイミド配向材と混合
することにより中間調の表示特性も改善されることがわ
かった。
は正四角柱であるが、その形状は実施例に限定されるも
のではなく、また突起物の大きさ、高さ、そしてその間
隔も実施例に限定されず、例えば、突起物の材質により
異なる。本実施例の液晶セルは他の実施例と同様な表示
特性を示すとともに、更に画素全体にわたって閾値電圧
の異なる領域が分布することによって、広い透過域(ゆ
るやかに変化する透過特性)を有する透過率/電圧特性
となり、導電性高分子化合物をポリイミド配向材と混合
することにより中間調の表示特性も改善されることがわ
かった。
【0059】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の配向膜を
用いることにより、 特にカイラルスメクティック液晶の非らせん構造での
大きなチルト角を生じ、明状態と暗状態でのコントラス
トが高く、特にマルチプレクシング駆動時の表示コント
ラストが非常に大きく高品位の表示が得られ、しかも目
ざわりな残像現象の生じることのない効果が得られる。
用いることにより、 特にカイラルスメクティック液晶の非らせん構造での
大きなチルト角を生じ、明状態と暗状態でのコントラス
トが高く、特にマルチプレクシング駆動時の表示コント
ラストが非常に大きく高品位の表示が得られ、しかも目
ざわりな残像現象の生じることのない効果が得られる。
【0060】強誘電性液晶の自発分極Psが大きくな
ると逆電界効果により駆動特性が悪化することが指摘さ
れていたが、本発明の液晶素子により、逆電界効果のな
い良好な駆動特性が得られるようになった。
ると逆電界効果により駆動特性が悪化することが指摘さ
れていたが、本発明の液晶素子により、逆電界効果のな
い良好な駆動特性が得られるようになった。
【0061】駆動時のヒステリシスがなく、また駆動
による配向の乱れの生じにくい液晶配向状態が得られ
た。
による配向の乱れの生じにくい液晶配向状態が得られ
た。
【0062】本発明の液晶素子を用いることによっ
て、画素全体に亘って閾値電圧の異なる領域が分布し、
広い透過域(ゆるやかに変化する透過特性)を有する透
過率/電圧特性となるため、中間調を調整することがで
きるようになった。
て、画素全体に亘って閾値電圧の異なる領域が分布し、
広い透過域(ゆるやかに変化する透過特性)を有する透
過率/電圧特性となるため、中間調を調整することがで
きるようになった。
【図1】本発明の強誘電性液晶素子の一例を示す模式図
である。
である。
【図2】らせん構造のカイラルスメクティック液晶の配
向状態を示す斜視図である。
向状態を示す斜視図である。
【図3】非らせん構造のカイラルスメクティック液晶の
配向状態を示す斜視図である。
配向状態を示す斜視図である。
【図4】基板の一軸性配向軸と非らせん構造の強誘電性
液晶分子の軸との関係を表す説明図である。
液晶分子の軸との関係を表す説明図である。
【図5】本発明における、液晶分子の配向状態を表す図
である。
である。
【図6】強誘電性液晶のチルト角θの説明図である。
【図7】強誘電性液晶素子における逆電界Vrevの説
明図である。
明図である。
【図8】電界印加によるチルト角θの変化を表す説明図
である。
である。
【図9】従来の液晶素子における光学応答特性を示す図
である。
である。
【図10】本発明の液晶素子の光学応答特性を示す図で
ある。
ある。
【図11】本発明の実施例における駆動電圧の波形図で
ある。
ある。
【図12】本発明の液晶素子における電圧−透過率特性
を示す図である。
を示す図である。
【図13】電圧−透過率特性の測定における印加電圧波
形図である。
形図である。
【図14】流動配向性を利用した配向膜塗布方法の説明
図である。
図である。
【図15】微小突起を有する配向膜を用いた液晶素子に
おける電圧−透過率特性を示す図である。
おける電圧−透過率特性を示す図である。
Claims (10)
- 【請求項1】 それぞれに電極と配向膜を有する一対の
基板間に強誘電性液晶を挟持してなる液晶素子であっ
て、上記配向膜が、基板上に設けられた電極を覆う導電
性を付与した保護膜上に形成され、直鎖状π共役導電性
高分子が基板面に対して略平行方向に一次元配向した構
造を有し、且つ該一次元配向軸方向の光学的二色性比が
2以上であることを特徴とする強誘電性液晶素子。 - 【請求項2】 直鎖状π共役導電性高分子が剛直π共役
導電性高分子であることを特徴とする請求項1記載の強
誘電性液晶素子。 - 【請求項3】 配向膜上に導電性突起物を有することを
特徴とする請求項1又は2記載の強誘電性液晶素子。 - 【請求項4】 導電性突起物が剛直π共役導電性高分子
であることを特徴とする請求項3記載の強誘電性液晶素
子。 - 【請求項5】 強誘電性液晶の自発分極の大きさが10
nC/cm2以上であることを特徴とする請求項1〜4
何れかに記載の強誘電性液晶素子。 - 【請求項6】 交流電界を印加して強誘電性液晶の初期
配向状態を得たことを特徴とする請求項1〜5何れかに
記載の強誘電性液晶素子。 - 【請求項7】 保護膜の導電率が10 -10 S/cm以上
である請求項1〜6の何れかに記載の強誘電性液晶素
子。 - 【請求項8】 保護膜の導電率が10 -8 〜10 -5 S/c
mである請求項1〜6の何れかに記載の強誘電性液晶素
子。 - 【請求項9】 保護膜が、金属酸化物或いは金属硫化物
からなる請求項1〜8の何れかに記載の強誘電性液晶素
子。 - 【請求項10】 保護膜が、金属酸化物及び金属硫化物
の混合物からなりアモルファス化されている請求項1〜
8の何れかに記載の強誘電性液晶素子。
Priority Applications (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP31078592A JP3180171B2 (ja) | 1992-10-27 | 1992-10-27 | 強誘電性液晶素子 |
Applications Claiming Priority (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP31078592A JP3180171B2 (ja) | 1992-10-27 | 1992-10-27 | 強誘電性液晶素子 |
Publications (2)
| Publication Number | Publication Date |
|---|---|
| JPH06138462A JPH06138462A (ja) | 1994-05-20 |
| JP3180171B2 true JP3180171B2 (ja) | 2001-06-25 |
Family
ID=18009443
Family Applications (1)
| Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
|---|---|---|---|
| JP31078592A Expired - Fee Related JP3180171B2 (ja) | 1992-10-27 | 1992-10-27 | 強誘電性液晶素子 |
Country Status (1)
| Country | Link |
|---|---|
| JP (1) | JP3180171B2 (ja) |
Families Citing this family (1)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| KR100383542B1 (ko) * | 2000-10-04 | 2003-05-12 | 주식회사 네오텍리서치 | 횡전극 배열 구조를 이용한 스멕틱 액정 표시장치 |
-
1992
- 1992-10-27 JP JP31078592A patent/JP3180171B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
| Publication number | Publication date |
|---|---|
| JPH06138462A (ja) | 1994-05-20 |
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Legal Events
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|---|---|---|---|
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