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JP3145409B2 - 活性酸素阻害剤の制御送達を用いる癒着の低減 - Google Patents

活性酸素阻害剤の制御送達を用いる癒着の低減

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JP3145409B2
JP3145409B2 JP52950096A JP52950096A JP3145409B2 JP 3145409 B2 JP3145409 B2 JP 3145409B2 JP 52950096 A JP52950096 A JP 52950096A JP 52950096 A JP52950096 A JP 52950096A JP 3145409 B2 JP3145409 B2 JP 3145409B2
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JP
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sod
inhibitor
composition according
adhesions
composition
Prior art date
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JP52950096A
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キース ベーカー,
アーサー ジェイ. コウリー,
Original Assignee
フォーカル, インコーポレイテッド
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Publication date
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Description

【発明の詳細な説明】 発明の背景 本発明は、一般に、手術上の癒着の防止および低減の
領域にある。
癒着は、手術の共通の合併症である。それらは、体内
の種々の領域で進行し得、そして手術前に別々であった
組織が、癒着の過程で、共に接着するようになることに
より特徴付けられる。癒着により引き起こされる損傷の
型および程度は、変化し得、その範囲は、閉塞に起因す
る腸内におけるような生命を脅かすものから、腱および
脊髄におけるような、慢性的痛みおよび骨盤腔における
不妊、心膜におけるさらなる外科的処置の妨害物となる
ものまで及ぶ。骨盤癒着の手術後の形成は、婦人科手術
を受けた患者に重大な問題を残し、そして不妊症の主な
原因である。一般に、女性における骨盤癒着の最も共通
の原因は、手術前の子宮内膜炎および骨盤炎症性疾患で
ある。
手術上の傷害または感染の結果としてのインタクトな
腹膜に対する損傷は、病態生理学的事象のカスケードを
起こす。手術的傷害および感染の3時間以内には、虚血
および再潅流損傷による、血管透過性の増大をもたらす
血管系への損傷、およびさらなる血管損傷をもたらす炎
症応答がある。漿液血液流体およびフィブリンマトリッ
クスの浸出液は、さらなる虚血を誘導し、これはフィブ
リンマトリックスの耐久性およびコラーゲン性癒着、な
らびにフィブリン分解産物を得るためのフィブリン溶
解、フィブリンマトリックスの吸収、および正常な修復
をもたらす。このカスケードは、好中球およびマクロフ
ァージ両方の炎症部位への移動を含む、炎症に関連する
予期される事象を包含する。この細胞移動との関連して
いるのは、炎症部位での酸素ラジカルの産生を誘導する
迅速なレスピラトリーバーストである。十分なフリーラ
ジカル捕捉剤の非存在下では、高濃度の酸素ラジカル
は、脈管の完全性を担う細胞を含む周囲のインタクトな
細胞を破損し得る。この増大した血管の透過性は、フィ
ブリン癒着のためのマトリックスとして働くタンパク質
様の漿液血液状液体の浸出を誘導し得る。さらに、増大
した血管透過性は、血流の局所的な妨害、および結果と
して血管供給を含む管内の細胞死を導く。この虚血事象
後の組織の再潅流は、さらなる酸素ラジカルの産生を誘
導し、そして最終的に、フィブリン癒着形成の程度をさ
らに悪化させる。
通常の環境下において、プラスミノゲンアクチベータ
ー活性(PAA)のフィブリン溶解能力は、このようなフ
ィブリン沈殿の吸収および従来の腹膜治癒を誘導する。
しかし、重篤な組織損傷の存在下では(例えば、手術的
外傷後)、PAAの減少は、異常な持続的フィブリン沈
殿、および最終的には、成熟したコラーゲン性癒着を誘
導する。細心の切開(すなわち、癒着溶解)は、相変わ
らず存在する癒着に対する最も広範に受け入れられる処
置である。従って、手術の実質的な部分は、癒着の効果
を修復するために引き続く手術を必要とする。この手順
は、一般に、「癒着溶解」と呼ばれる;いくつかの器官
系においては、この手順は、例えば腱の除去において
は、特定の名称、「腱癒着剥離」を有する。
癒着の形成および再形成の防止において用いられる可
能性のある治療条件は広範囲であり、そして手術時の骨
盤腔内への液体の浸出、2つの対向する表面間の機械的
バリア、および静脈内注射された薬理学的薬剤または局
所的に塗布された薬理学的薬剤を含む(Tulandi、「手
術後の癒着におけるリンガーラクテート(Ringer's Lac
tate)の効果」、Diamonら編、第381巻、Progress in C
linical and Biological Research(NY、Wiley−Liss19
93)59−63;Schwartzら、Sem.in Repro.Endocrin.9:89
−99(1991);Pjilmanら、Eur.J.Ost & Gyn.Repro.Bio
l.53:155−163(1994);およびMonkら、Am.J.Obstet.G
ynecol.170:1396−1403(1994))。しかし、徴候的な
癒着形成の発生率は高いままで、そして癒着防止に対す
る臨床的必要性がなおも存在する。
種々の種類の療法が、最初の癒着形成(「一次」癒
着)を防止するために用いられている。これらは、水溶
性ポリマーおよび/または生物学的に活性な分子(「薬
物」)を用いる洗浄を包含し、これは通常あまり効果的
ではない。しかし、カタラーゼと組み合わせたスーパー
オキシドジスムターゼ(SOD)の使用は、Poretzら、(I
nt.J.Fertil.36:39−42,1991)による研究において、ウ
サギの子宮内膜炎誘導癒着を防止または低減した。恒久
的な機械的バリア(例えば、TeflonTMシート)は、効果
的であり得るが除去するのが困難である;そして酸化セ
ルロース(InterCeedTM、Johnson & Johnson)のよう
な分解性バリア、および分解性重合ゲル(Sawhneyら、1
993;Hill−Westら、1994)は、一次癒着の防止において
顕著な有用性を有し得る。Tsimoyiannisら(Acta Chir.
Scand.155:171−174、1989)は、手術前の静脈内ボーラ
スでSOD、カタラーゼ、DMSO(ジメチルスルホキシ
ド)、またはアロプリノールの投与後に、ラットにおけ
る一次癒着の発生率が約50%低減し、そして虚血関連の
ラットにおける一次癒着の誘導の重篤度が50〜70%低減
することを報告した。PCT WO 93/16687は、水溶性また
は実質的に水溶性のマクロマー(さらなる重合を可能に
する重合性基を有するポリマー)が、1つの細胞または
組織と、1つの細胞または組織との相互作用を最小にす
るバリアとして適用され得ると教示する。
これらの薬物の共通の性質は、組織への酸化的損傷を
導く経路をそれらが阻害することであると仮定される。
SOD、カタラーゼ、およびDMSOは、それぞれ活性酸素種
(例えば、スーパーオキシド、過酸化物、またはヒドロ
キシラジカル)を直接破壊し;アロプリノールは、過酸
化水素を産生する、酵素キサンチンオキシダーゼを阻害
することが知られている。組織における活性酸素種の効
果を直接または間接的に阻害するこれらの化合物は、本
明細書中において「活性酸素阻害剤」、またはAOIとい
う。
スーパーオキシドジスムターゼ(SOD、二量体分子量
=31.5kDa、四量体=67kDa)は、脳、腎臓、および心臓
を含む広範な種々の組織における虚血/再潅流事象の処
置において効果的であった(Schneiderら、Fr.Rad.Bio
l.& Med.3:21−26(1987);Zimmermanら、Am.J.Med.Sc
i.307:284−292(1994);Voogdら、Fr.Rad.Biol.& Me
d.11:71−75(1991);Fridovich、Arch.Bioch.& Bioph
ys.247:1−11(1986);Kontosら、CNS Trauma 3:257−2
63(1986))。SODが、骨盤癒着の防止に効果的であり
得るという証拠もある(Tsimoyiannisら、Acta Chir.Sc
and.155:171−174(1989);Portzら、Int.J.Fert.36:39
−42(1991);O'Learyら、Ann.Surg.June:693−698(19
87))。しかし、血流からのその迅速な排出のために、
SODを用いる効力は限られている(Petkauら、Res.Commu
n.Chem.Pathol.Pharmacol.15:641−654(1976);Odlund
ら、Pharmacol.Toxic 62:95−100(1988))。効力の改
善は、排出の速度を低減するための化学的改変を包含す
る血流中のSOD含有率を増加するためのストラテジー(P
yatakら、Res.Comm.Chem.Path.Pharm.29:113−127(198
0);Hill−Westら、Obstat.Gynecol.83:59−64(199
4))、および高頻度の反復の注射からもたらされた
(O'Learyら、1987)。
一度形成された癒着の除去は、癒着形成の防御より実
質的により困難である。不運なことに、一次癒着を効果
的に防止する製剤(例えば、Hill−Westら、1994)は、
癒着溶解後の再癒着(「二次」癒着)を防止するには実
質的効果はより少ないものであり得る。一次癒着と二次
癒着間の正確な生物学的相違は公知ではないが、一次癒
着の形成が、他の細胞によってその後移植され、そして
恒久的な血管化組織中へ発達する、非接合部の間のフィ
ブリンブリッジの耐久性に依存している可能性がある。
最初のフィブリンブリッジの形成または安定化を破壊す
ることは少しは、一次癒着形成を防止する傾向がある。
しかし、二次癒着は、先在する損傷組織(すなわち溶解
した一次癒着)に適用した通常の治癒プロセスの結果で
あり得る。詳細にはまだ理解されていないが、癒着プロ
セスは、いくつかの細胞型の動員および新しいコラーゲ
ンの形成を包含し、そして代表的には完全な修復を得る
ために、2週間まで続く最初の段階それに続く成熟の数
カ月を有する。これらの相違のために、一次癒着防止に
効果的な処置は、癒着溶解後の癒着の再形成を防止する
ための増強を必要とする。
要約すると、多数の手術を受けた患者の場合のよう
に、損傷が繰り返される患者においては特に、癒着除去
において、効果的な組織の報告は全くない。
それゆえ、手術後または感染後の癒着を防止するため
の方法および組成物を提供することが、本発明の目的の
一つである。
発明の要旨 SODおよび他の活性酸素阻害剤が、バリア物質と組み
合わされて、癒着の形成および所望ではない細胞の増殖
を防止または低減させるために、直接的に組織損傷の局
部において適用される。好ましいバリア物質は、疾患組
織に直接適用される、AOIの制御放出を提供する重合ヒ
ドロゲルである。
実施例は、腹腔内(I.P.)へのボーラスにより、およ
び局所的に適用されたヒドロゲル系からの局所持続的放
出により投与されたときの、ラットにおける骨盤癒着に
およぼすSODの効果を示す。
図面の簡単な説明 図1は2000U SOD/ml対10,000U SOD/mlの投与量におい
て、未処置の動物(黒棒)と比較しての、ヒドロゲル
(‖‖‖)、SODのみ(≡)、およびヒドロゲルを介し
て局所的に送達されたSOD(白棒)での処置の、一次癒
着のラット子宮角モデルにおける効力%の棒グラフであ
る。
図2は、2000U SOD/ml、5,000U SOD/mlおよび10,000U
SOD/mlの投与量において、未処置の動物(黒棒)と比
較しての、ヒドロゲル(‖‖‖)、SODのみ(≡)、お
よびヒドロゲルを介して局所的に送達されたSOD(白
棒)での処置の、二次癒着のラット子宮角モデルにおけ
る効力%の棒グラフである。
図3は、一次癒着モデル(白棒)および二次癒着モデ
ル(黒棒)の両方について、未処置の動物(黒棒)と比
較しての、ヒドロゲル(‖‖‖)、SODのみ(≡)、お
よびヒドロゲルを介して局所的に送達されたSOD(白
棒)の効力%の棒グラフである。
発明の詳細な説明 本明細書中に記載のように、組織癒着(特に、二次組
織癒着)の防止または最小化を提供する方法および組成
物が記載される。この方法および組成物では、活性酸素
阻害剤(例えば、SOD)が、ヒドロゲル処方物におい
て、損傷領域に局所適用される。好ましい実施態様で
は、ヒドロゲルは、ポリエチレングリコールジラクチド
ジアクリレートのような生体適合性生分解性マクロマー
溶液の光重合によってインサイチュで重合される。ある
いは、またはさらに、バリア材が、活性酸素阻害剤、お
よび活性酸素阻害剤(「AOI」)の制御送達手段と併用
して用いられ得る。これらの材料(ヒドロゲルを包含す
る)は、他に特定されない限り、一般に「バリア材」と
呼ばれる。
バリア材: 一次バリア材: バリア材は、液体、ペースト、または他の流動形態と
して投与され得、そして適用部位またはその周辺で適合
するバリアを形成するように体内で局所的に変化され得
るか、または固体バリアとして投与され得る。バリア材
は、生体に温和であるべきであり、そして特に重篤な局
所炎症応答を誘発してはならない。本質的に全ての移植
片は、移植後に一時的に局所反応をもたらす。温和また
は生体適合性の材料は、延長されたまたは漸増する炎症
応答を誘発しない。好ましいバリア材は分解性である
か、または生体液に曝されることにより合理的な時間内
で消散するはずである。好ましいバリア材はまた、直接
損傷組織に局所的に送達され得るように、数時間から数
週間にわたるAOIの制御送達のデポ剤としても働くはず
である。
好ましいバリア材はゲルである。最も好ましいのは、
溶液中への漸次消散、自然加水分解、酸素分解、または
これらの組み合わせにより、インビボで吸収されるゲル
剤である。適切なゲルの例は、プルロニック(Pluroni
c) ポロキサマーゲル系、ポリアルキレンオキシド
(それらのいくつかのメンバーは、体温でゲルを形成す
るが、室温では液状である);およびHubbellら(WO 93
/17669)およびSawhneyら,J.Biomed.Mats.Res,28,831−
838(1994)により記載の共重合性ゲルである。プルロ
ニックゲル系は、引用されたHubbellの材料と同様に、
抗癒着バリア(Henryらの米国特許第4,911,926号および
第5,135,751号;Henryの米国特許第5,366,735号)および
薬物送達ビヒクル(Viegasの米国特許第5,292,516号)
として知られる。
多数の他の処方物が、薬物送達能を有するバリア材と
して潜在的に作用し得る。これらは、Dunnらの米国特許
第4,938,763号、Danielsらの米国特許第5,108,755号、S
udmannらの米国特許第4,913,903号、Cohnらの米国特許
第5,100,992号および第4,826,945号、Zalipskyらの米国
特許第5,219,564号、De Lucaらの米国特許第4,741,872
号および第5,160,745号、Churchillらの米国特許第4,52
6,938号および第4,942,035号、Dombの米国特許第4,888,
413号、Nowinskiらの米国特許第4,511,478号、della Va
lleeらの米国特許第4,957,744号、Feigenの米国特許第
4,925,677号、Hinghamらの米国特許第4,994,277号、Fra
nzらの米国特許第5,364,622号、およびEnglishらの米国
特許第4,804,691号の重合体を包含する。ヒアルロン酸
材(ヒアルロン酸ゲルおよび膜を包含する)もまた、損
傷組織へのAOIの局所送達に適切である。
ファブリックとして投与された酸化セルロースは、体
液中でゲルを形成し、そして薬物を送達し得る(Sheffi
eldらの米国特許第4,889,722号)。しかし、それは幾分
か炎症性であると考えられており、従って好ましくな
い。純粋に機械的なバリア(例えば、「テフロン(Tefl
on) 」フルオロポリマーシートおよび他の非分解性材
料)はあまり好ましくないが、薬物を直接損傷組織に局
所制御送達するための他の手段と併用すれば適切であり
得る。
あまり好ましくはないが、容易に分解できないゲルバ
リアが用いられ得る。これらは、アガロース、架橋ポリ
アクリルアミド、ゲル化ポリビニルアルコール、ゲル化
または架橋HEMA(ポリヒドロキシメチルアクリレー
ト)、架橋デキストラン、および他の公知のゲル化材の
ような材料を包含する。これらは、非常に生体適合性で
あり得、そして薬物送達に適切である。
ヒドロゲル中のゲル形成ポリマーの濃度は、周知のよ
うに可変である。適切なポリマー濃度は、少なくとも所
望の処置期間の間(典型的には、数日から数週間であ
る)、適用部位で持続するために十分な機械的特性を有
するゲルを与える濃度である。種々のポリマーの最小有
効ゲル化濃度は、超純アガロースについて0.1%(w/w)
程度の低さから、Hubbellらのポリマーについては3〜
5%の間まで、プルロニック のようないくつかのポロ
キサマーについては10%を超える濃度までの範囲であ
る。上限は、溶解度、粘度、ゲルの脆性の開始、形成後
の過剰膨潤、組織上の適用モノマーの浸透効果、および
処置において適用されるポリマーの量を最小化する必要
性により課される。これらの要因およびそれらの操作は
当該分野で公知であり、そしてポリマーによって変化す
る。濃度の上限は、アガロースについては2%程度の低
さから、Hubbellらのポリマーについては25〜30%の間
まで、ポロキサマーについては50%またはそれ以上の濃
度までで変化し得る。
バリアおよび送達手段について好ましい材料は、特定
の重要な特性によって特徴づけられる。これらの特性と
しては、生体適合性;1日から数週間にわたる送達時間;
送達されるAOIとの適合性;およびより好ましい実施態
様では、生分解性が挙げられる。好ましい材料は、少な
くともいくらかの水を含有し、生理学的に受容可能な塩
および緩衝液をさらに含有する;別の方法で材料の機械
的特性および拡散特性と適合する場合には、より高いレ
ベルの水が好ましい。単独の材料において、バリア機能
と制御送達機能とを組み合わせることが好ましい。この
ような材料としては、ヒドロゲルが好ましい。
以下の実施例に示すように、好ましい態様は、AOI
(好ましくはSOD)の溶液中への取り込みである。この
溶液はまた、生体適合性で生分解性のゲル形成光重合性
モノマー、および適切な光開始剤、緩衝液、および安定
剤を含有する;混合溶液を癒着溶解が行われた部位に送
達して、そして罹患領域を保護する;そして組成物を光
重合し、数日から1週間を超える間にわたってAOIを緩
慢に放出するバリアゲルを創出する。
上述のように、光重合性材料の濃度は可変である。実
施例において用いられた特定の材料については、モノマ
ーの好ましい濃度は、緩衝等張生理食塩水中で10%から
約25%w/wの範囲である。濃度がより高ければ、AOIの放
出はより緩慢にかつより長くなり、そしてバリアとして
長く持続するが、対応してより粘性になり、腹壁鏡また
はカテーテルを通して行われる場合、適用がより困難に
なり得る。他の材料は、前述のように、異なる好ましい
濃度を有する。
薬物送達手段。
制御送達手段は、ゲルに加えて、またはゲルの代わり
に用いられ得る。以下の特性を有する、当該分野で公知
の多数の生理学的に受容可能な薬物送達材料が存在す
る: 1.送達手段は、局所性または少なくとも潜在的に局所性
でなければならない。それにより、内容物を主に特定の
標的器官または領域に送達し得る。適切な手段は、ヒト
用途のためには好ましくないが、浸透ポンプ(例えば、
アルゼット(Alzet) ポンプ(Alza Co.))である。
2.送達手段は、生体適合性でなければならず、そして特
に、体内で実質的に炎症性であってはならない。例示的
な制御送達手段は、生体腐食性ポリマー中に捕捉された
薬物の小粒子を包含する。この生体腐食性ポリマーとし
ては、ポリグリコリド、ポリラクチド、またはポリ無水
物が挙げられ、例えば、Mathiowitzらの米国特許第4,89
8,734号;Dombの米国特許第5,175,235号;Gerhartらの米
国特許第5,286,763号;およびSaudekらの米国特許第4,7
45,161号に記載される。この小粒子は、必要に応じて放
出遅延シェルで被覆されている。この小粒子は、次い
で、癒着が防止さるれべき部位に送達される。好ましく
は、小粒子を、バリア膜またはゲルのような部位の周辺
にとどめるさらなる手段を伴う。制御送達手段は、送達
されるべき薬物が高い水溶解度を有し、かつ低分子量で
ある場合に、特に重要である。
3.好ましくは、送達手段は、薬物の送達と同時にまたは
その後に引き続いて体内で分解する。可能なヒドロゲル
材料として上述したポリマーのほとんどは、前段落中に
列挙したポリマーと同様に生分解性である。ポリ(ヒド
ロキシ酸)のような正統な腐食性ポリマー(例えば、ポ
リグリコリド、ポリラクチド、およびポリカプロラクン
トン)は、いくつかの新規のポリマーよりやや炎症性で
あるが、多くの状況において適切である。
薬学的に活性な化合物 活性酸素阻害剤。
本明細書中に使用されるように、AOIは、活性酸素種
を破壊するか、またはその形成を防止する化合物として
定義される。活性酸素種は、超酸化物、過酸化物(一般
には過酸化水素)、およびヒドロキシラジカル(OH)を
包含する。活性酸素から誘導された他の活性種もまた包
含され、これらとしては、例えば、次亜塩素酸イオン
(OCl-)、炭水化物上のヒドロキシフリーラジカル、
「一重項酸素」、またはオゾンが挙げられる。活性酸素
種は、組織を直接損傷する。さらに、活性酸素種は、損
傷部位に細胞を誘引することにより、または他の方法で
炎症応答を刺激することにより、間接的な損傷を引き起
こし得る。
好ましい抗酸化剤は、スーパーオキシドジスムターゼ
(SOD)である。SODは、超酸化物ラジカルを破壊するこ
とにより、組織傷害および炎症を防止すると考えられて
いる。SODの形態のいずれもが適切である。供給源はヒ
ト(免疫原性の最小化のために好ましい)を包含し、そ
して他の公知の供給源(ウシおよび細菌を包含する);
種々の組織(例えば、肝臓、赤血球など)由来のSOD;任
意の機能的金属イオン(例えば、マンガン、鉄、銅、お
よび亜鉛)を有するSODもまた包含する。組換えヒトSOD
の一形態(マンガン)はHecklらの米国特許第5,260,204
号に記載されている。これは、組換えヒト銅/亜鉛SOD
の供給源としてChironの欧州特許出願第138111号を援用
している。ペンダントポリマー(例えば、ポリエチレン
グリコールまたはポリビニルアルコール)で修飾された
SOD;組換えまたはトランスジェニックプロセスにより生
成された天然SOD;および変異またはプロテインエンジニ
アリングにより生成されたSODの変異形態もまた包含さ
れる。これらのプロセスの全てが当該分野で公知であ
る。
部位へのSODまたは抗酸化剤クラスの他のタンパク質
ベース薬物の送達の別の方法は、部位に注入された形質
転換細胞による発現、および哺乳動物プロモーターを含
む組換えDNA(例えば、プラスミド、発現カセット、ま
たはウイルスベクター)によるその部位での細胞の一過
性形質転換を包含する。これらは、任意の適切な手段
(これらの手段としては、カテーテルおよび他の類似の
デバイスを介するエレクトロポレーションまたはイオン
トホレシスを介する、溶液中のリポソーム、重合性複合
物(polymeric composite)を含む)、および当該分野
で公知の他の技術により局所的に送達され得る。抗酸化
活性を有する(すなわち、活性酸素を破壊するかまたは
その形成を防止する)他の薬物は、SODと併用して、互
いに併用して、または単独のいずれかで癒着の防止にお
いて用いられ得る。タンパク質薬物は、カタラーゼ、ペ
ルオキシダーゼ、および一般的なオキシダーゼまたは酸
化酵素(例えば、シトクロームP450、グルタチオンペル
オキシダーゼ、および他の天然または変性ヘムタンパク
質)を包含する。ほとんどこのような分子は、検出可能
なペルオキシダーゼ活性を有する。小分子薬物は、活性
酸素種を直接吸収するかまたは不活化することにより作
用し得る。これらは、ビタミンC(アスコルビン酸)お
よびビタミンE(トコフェロール)、食物添加酸化防止
剤(例えば、BHTおよびBHA;ブチル化ヒドロキシトルエ
ン、ブチル化ヒドロキシアニソール)、フェノール性化
合物およびキノン、および高遮蔽(highly hindered)
窒素フリーラジカルスカベンジャー(例えば、2,2,6,6
−エトラメチルピペリジン)を包含する。他の薬物は、
酵素活性を変化させることにより作用し、そしてこれら
は非常に有効であり得る。アロプリノールは、酵素キサ
ンチンオキシダーゼを阻害し、超酸化物の生成を実質的
に妨害し、そして非常に有効であることが見出された。
他のキサンチンオキシダーゼ阻害剤もまた有効であると
予想される。ベラパミルはカルシウムチャンネルブロッ
カーとして知られ、そして血管拡張剤として使用され
る。これは、実施例に記載のモデルにおける一次癒着の
防止に非常に有効である。その作用機構は不明である
が、刺激されたときに活性酸素を分泌すると考えられる
細胞(例えば、マクロファージ)の刺激を妨害し得る。
本明細書中で定義するように、ベラパミルは、活性酸素
の阻害剤である。
癒着処方物の防止において有効な材料が、すべてでは
ないが、活性酸素に対して作用する。繊維素溶解剤(fi
brinolytics)のような他の材料もまた用いられ得る。
これらの材料としては、ウロキナーゼ、組織プラスミノ
ーゲンアクチベーター、およびアンクロドが挙げられ
る。これらの材料は、例えば、Dunnら、Am.J.Obstet.Gy
necol.164:1327−1330(1991)により記載されるよう
に、単独で有効であり得るが、AOIと併用されたとき増
強され得る。
処方物 部位に投与されるAOIの量は、特定の部位、および用
いられる制御送達手段の性質に対して調整される。適切
な出発量は単回用量である;次いで、これは、量を最適
化するめにより多量または少量に調整され得る。以下の
実施例に示される結果は、広い至適範囲またはプラトー
がSODについて存在することを示す;他の研究では、多
くの適切なAOIもまた広い有効領域を示す。損傷部位に
低レベルの阻害剤を長期で存在させることは、手術の直
後の影響における保護を提供するだけでなく、治癒過程
の少なくとも初期の間における傷害および炎症もまた最
小にとどめ、そして一般に、より低い有効用量での使用
を可能にする。
AOIおよびバリア材の処方物は、インビボ条件下で約
0.5日から約20日までの期間にわたって損傷組織に直接A
OIを送達するはずである。これは、好ましくは、AOIを
取り込むゲルによって制御されるが、また、膜またはフ
ァブリックのような機械的バリアによっても提供され得
る。処方物はまた、阻害剤の放出を制御するための付加
手段を含有し得る。このような手段としては、例えば、
マイクロスフェア、マイクロカプセル、マイクロ粒子、
またはリポソームが挙げられる(本明細書中ではまとめ
て「マイクロスフェア」と称する)。特にAOIが約20,00
0ダルトン未満の小粒子であるとき、ここでは、AOIがマ
イクロスフェアからゲルに放出されて、処方物は、そこ
から単独またはゲルからのAOIの放出と組み合わされて
組織に拡散する。他の制御送達手段は、インタクトなま
たは細分化したゲル、ポリマーに放出可能に結合したAO
Iを有するポリマー、およびAOIまたはAOIと不活性塩ま
たは有機分子との複合体の緩慢に溶解する粒子を含有し
得る。例えば、遊離塩基としてのベラパミルは事実上水
に不溶性であり、一方その塩酸塩は非常に可溶性であ
る。従来の経時放出マイクロカプセルに液状の遊離塩基
形態を包括することは、重合バリアにマイクロカプセル
を取り込むことにより、より長期の送達を提供するため
に用いられ得る。
処方物は、薬学的処方物の分野で公知の賦形剤、緩衝
液、保存剤、および他の一般添加剤をさらに含有し得
る。処方物はまた、バリアの形成に必要とされる成分を
含有し得る。このような成分としては、例えば、重合誘
導剤または重合賦与剤が挙げられる。これらは、光開始
剤、連鎖移動剤、およびコモノマーを包含し得る。
処方物は、使用直前に混合するため、1つより多くの
容器中で調製され得、そして凍結乾燥、凍結、乾燥、冷
蔵、または他の一般に用いられる手段により安定化され
得る。処方物は滅菌されなければならない;処方物の成
分が不安定である場合、濾過滅菌および無菌充填が好ま
しい。
処置方法 組織への処方物の適用 処方物は、任意の適切な手段によって罹患組織に適用
され得る。これらは、噴霧、医薬含有液での洗浄、器具
を用いるかまたは手による塗布、および予備形成された
阻害剤含有バリアの直接移植を包含する。バリアがゲル
または他の固体形態である場合、ゲルは移植され得る;
しかし好ましくは、ゲル前駆体と送達されるべき阻害剤
との混合物の溶液が適用部位に送達され、そして適切な
手段によって直接組織上でゲル化される。好ましいゲル
化手段は、それらの簡易性のため、温度変化または剪断
の停止による物理的ゲル化;および光反応性ゲル化モノ
マーの光重合である。化学酸化還元反応、イオン架橋、
および他のゲル生成法もまた用いられ得る。
送達およびゲル化機能を行うための器具は、当該分野
で公知の原理および器具を用いて、特定の適用のために
選択される。これらは、典型的には、身体の内部部位に
最小限に侵襲するアクセスのためのカテーテルまたは腹
壁鏡;腱または創傷修復におけるように表面または外科
的に曝された部位のための注射器;および重合反応が必
要とされるときの適切な光源を含む。いくつかの適切な
器具は、米国特許第5,328,471号、米国特許第5,213,580
号、および米国特許出願第08/054,385号(WO 94/2496
2)、第08/036,128号(WO 94/21324)、および第08/26
5,448号に詳細に記載される。これらは、本明細書中に
参照として援用される。
医療適用 本明細書中に記載の組成物、医薬、および方法での処
置は、癒着が形成し、そして潜在的または実際に有害な
影響を有する任意の部位に対して意図される。これら
は、以下における、一次癒着、および特に二次癒着を包
含する:腹腔(腸−腸、および腸−腹膜を包含する);
骨盤腔(尿管、卵巣、またはファロピウス管の他の構造
体(互いおよび骨盤壁を包含する)への癒着を包含す
る);腱およびその支持構造体(腱−滑車または腱−滑
膜を包含する);神経鞘の修復;脊柱または脊髄板の修
復;心膜;炎症およびパンヌス形成を防止するための関
節の処置;および機能を損傷するかまたは痛みを引き起
こす癒着が形成される任意の状況。さらに、この組成物
は、望ましくない組織増殖が起こっている他の状態にお
いて用いられ得る。これらは、動脈の再狭窄、ケロイド
または過形成性瘢痕の修復、管を閉塞する肥大(例え
ば、良性前立腺肥大)、および子宮内膜症を包含し得
る。
本発明は、以下の非限定的な実施例を参照することに
よってさらに理解される。以下の研究は、(1)局所的
に送達されたスーパーオキシドジスムターゼを用いる可
能性を実証し、そして(2)手術後癒着の防止において
ヒドロゲル送達SODの効力をヒドロゲル単独またはSOD単
独と比較するように設計した。
実施例1:モデル化合物の放出 SODタンパク質とFocalGelシステムの成分との適合性
を、インビトロで検討した。SODとヒドロゲル(hydroge
l)システムの各成分との適合性を、ゲル電気泳動、逆
相HPLC、キャピラリー電気泳動、および酵素活性アッセ
イ(チトクロームC)により、SODの任意の効果につい
て試験を段階的に検討した。ゲルの光重合体化はUV光線
を必要とするので、UV照射(340〜400nm)のSOD安定性
に対する効果もまた評価した。
ヒドロゲルマクロマー(プレポリマー)調製 これまでに行われた全ての研究において、ヒドロゲル
を以下の方法を用いて同じ様式で調製した:Pluronic F
127をカリウムモノ塩基性リン酸溶液(pH6.8)に添加し
た。光開始剤(Irgacure 651)を三級ブタノールに溶
解し、そしてPluronic /緩衝溶液に添加した。次い
で、マクロモノマーおよびポリエチレングリコール(PE
G)8000を加えた。滅菌濾過の後、バイアルを満たし、
そして水およびt−ブタノールを凍結乾燥により除去し
た。これらの研究に使用する前に、ヒドロゲルの各バイ
アルを10%w/w、3%w/w Pluronic 、および1200ppm I
rgacure 651のマクロモノマー/PEG8000濃度に達するよ
うに通常の生理食塩溶液で再構成した。
A.処方物適合性研究 ヒドロゲル処方物中のSOD適合性を、段階研究設計を
用いて検討した。各処方物成分のSOD安定性を、紫外線
照射(365nm)の存在下および非存在下で検討した。こ
れらの研究において、タンパク質の安定性を、ゲル電気
泳動(SDS−PAGEおよびネイティブPAGE)、HPLC、キャ
ピラリー電気泳動、およびチトクロームCの還元による
酵素的活性によって評価した。
コントロールサンプルは、1つのバイアルのSOD(15,
000U 5mg)を1.5mLのPBSで最終[SOD]=10KU/mLになる
ように希釈することにより調製した。さらに、400μL
のこの溶液をPBSで1mLに希釈し、最終[SOD]=4KU/mL
にした。Irgacure /F127処理サンプルは、1.5mLのIrga
cure /F127(それぞれ、1200ppmおよび3%w/w)を1
つのバイアルのSOD(最終[SOD]=10KU/mL)に加える
ことにより調製した。全ての紫外線処理サンプルについ
ては、300μLのサンプル溶液を、20秒間または60秒間
のいずれかで照射した。ヒドロゲル処理サンプルを、1.
0mLのヒドロゲル溶液をSODのバイアルに最終[SOD]=1
5KU/mLになるように加えることにより調製した。1.5mL
のPBSをヒドロゲルに加えた後に、200μLのこの溶液
を、20秒間または60秒間のいずれかで光重合した。サン
プルを、分析の前に、37℃のインキュベーター中に24時
間置いた。
電気泳動のためのサンプルは、100μLのサンプルを3
00μLのサンプル緩衝液(Bio−Rad techinical manual
LIT−188 REV C)で希釈することにより調製した。サ
ンプルは分析の前には加熱しなかった。SODがヒドロゲ
ルから遊離した場合(これらの場合には、20μLを使用
した)サンプルを除いて、10μLのサンプルをゲルに載
せた。スタンダードを、販売業者のプロトコルに従って
泳動した。電気泳動ゲル中の分子量バンドを、画像解析
により積分した。
四量体構造で存在するタンパク質のバルクとともに、
同一ではない2つの低分子量サブユニット形態が存在す
るように思われる。相対的な適合性比較のためのベース
ラインを得るために、最初に、生理食塩溶液(照射して
いない)コントロールを用いてSODのSDS−PAGEを行っ
た。このデータは、92%のタンパク質が高分子形態(67
kDa)で存在し、残りの8%のタンパク質が低分子量モ
ノマー種(15.5kDa)のままであることを示唆する。12.
7kDaのピークもまた存在したが、バンドの強度は非常に
弱く、従って定量できなかった。開始剤およびマクロマ
ー処方物成分を添加しても、相対的なバンド強度はほぼ
一定のままであり、そしてUV照射を加えても明らかな変
化は観察されなかった。
SODコントロール溶液(PBS pH7.4中のSOD、[SOD]=
1.33および3.33mg/mL)のネイティブPAGE分析は、タン
パク質含量に直接比例するバンド強度を有する単一のバ
ンドのSOD移動を示す。Irgacure /F127処理およびヒド
ロゲル抽出溶液は、コントロールにより示されたものに
類似するSODバンド移動および強度を示す。
SODを含有する1つのバイアルに2mLの開始剤溶液をピ
ペッティングすることにより、SODを開始剤溶液(3%F
127および1200ppm Irgacure )中に混合した(最終[S
OD]=7.5KU/mL)。SOD/開始剤の300μLのアリコート
を、ブラックレイ(Black Ray)ランプ(出力=10mW/cm
2、1max=365nm)下で照射した。分析の結果を、SODピ
ークの全面積、計算されたSOD量、予測されるSOD量、お
よびパーセント回収率として分析した。コントロール溶
液のIrgacure レベルをまた測定し、そしてSOD/開始剤
サンプルにおいて観察されたレベルと比較した。
2分および5分の照射時間を用いたバルクゲル重合に
よってSODをまたヒドロゲル中に組み込んだ。重合の
後、SODを、200μLのバルクゲル(8mm×10mm)からPBS
中に2日間にわたって抽出した。各抽出サンプルをSOD
量について分析し、そしてその累積量を最初の%回収率
として計算した。Irgacure /F127中のSODのピーク面積
は、UV照射後(照射時間5分まで)、非照射コントロー
ルと比較して一定のままであった。このデータはまた、
コントロール溶液中のIrgacure 光開始剤の分解産物が
SOD/Irgacure 処理溶液中で変化しなかったことを示
す。観察されたサンプル中の全ての分解物ピークは、Ir
gacure 分解により説明された。ヒドロゲルからのSOD
抽出は、86.4であり、そして予想されたレベルの78.2%
を回収した。抽出は完全ではなさそうである。なぜな
ら、SODは49時間で部分的にしか放出されないことがイ
ンビトロで示されたからである。ヒドロゲルから抽出し
たSODに関するクロマトグラムは、ピーク分布がコント
ロール溶液のものと同様のままであったことを示す。
キャピラリー試験を行った。この実験の準備におい
て、水中のSODの標準曲線を作製した(1.48〜11.84KU/m
L)。SOD適合性サンプルを、1.2、1.6、および11.9KU/m
Lに調製した。CEによる分離は、3つの鋭いピーク(3.1
5、3.20、および3.27分)の存在を示す。第3のピーク
は、第4のピークである可能性がある肩を有する。各ピ
ークをそれぞれ積分し、そして第3のピークは、肩のピ
ーク領域を含むように積分した。SOD濃度に対する全ピ
ーク面積の標準曲線は、[SOD]=1.48〜11.84KU/mLに
わたって優れた直線性(R^2=1.000)を示す。結果は、
Irgacure /F127(未照射)で検出されたSODのレベルが
130であり、そして予想されたレベルの82%であったこ
とを示す。SOD/開始剤サンプルが照射された場合、SOD
レベルは、SOD濃度に関わらず高いままであった。低い
[SOD]サンプル(1.2KU/mL)由来の結果は、より高い
濃度(11.9KU/mL)で調製されたものよりも、応答可変
性であることを示した。バルク光重合されたヒドロゲル
から抽出したSODは、予想されるSODレベルの89〜108%
が回収されたことを示し、そしてピーク分布がSODコン
トロールと同様に保たれたことを示した。
標準的なアッセイ条件下で、0.1mM EDTAを含有す50mM
リン酸カリウム緩衝液(pH7.8)中の5×10-5Mキサンチ
ンオキシダーゼ(XOD)を用いて25℃でチトクロームC
(10-5M)還元を測定した。50%のチトクロームC還元
の阻害を、1ユニットのSOD活性として定義した。連続
的な分光光度率測定を、Hitachi UV/Vis分光光度計を用
いて550nmで5分間行った。適合性溶液を調製し、そし
て[SOD]=5000U/mLに処理し、次いで通常の生理食塩
溶液で最終[SOD]=10U/mLに希釈した。相対的な比活
性を、処理溶液の活性とコントロール溶液の活性([コ
ントロール]=10U/mL、チトクロームCの還元活性の50
%の阻害を有する)とを比較することにより決定した。
通常の生理食塩溶液中のSOD(10U/mL、照射なし)
を、相対的に適合性比較のためのコントロールサンプル
として使用した。アッセイにより定義された理論的な酵
素活性は50%の阻害活性であり、そしてコントロール溶
液は予想される応答(51.5%の阻害)を示した。開始剤
および/またはマクロマー成分を加えても、SOD活性に
おける劇的な変化は観察されなかった。さらに、SOD/ヒ
ドロゲル処方物をUV照射に1分間曝した場合も、SOD活
性のレベル(50.9%の阻害)が保持された。
インビトロの放出特性 続いて、4つのレベルのSOD(1、3、5、および10K
U/mK)を含有するバルク光重合されたヒドロゲルデバイ
スを調製し、そしてSODのインビトロの放出キネティッ
クスについて評価した。紫外線(10mW/cm2)の存在下ま
たは非存在下で、ヒドロゲルプレポリマー溶液の個々の
成分の各々にSODを溶解した。次いで、SODを、ゲル電気
泳動(SDS PAGEおよびネイティブPAGE)、逆相HPLC、キ
ャピラリー電気泳動、および酵素活性アッセイ(チトク
ロームC還元阻害として)により特徴づけた。これらの
技術を用いても、タンパク質の特性または酵素活性には
変化が見られなかった。バルクヒドロゲルからのSOD放
出のキネティックスを、1,000〜10,000U/mLの範囲のヒ
ドロゲル充填で、インビトロで決定した。
10%マクロマー溶液を、通常の生理食塩溶液中の1200
ppmのIrgacureおよび3%のF127を用いて調製した。イ
ンビボ研究設計を平行させ、SODの4つの用量(1、
3、5、および10KU/mL)をマクロマー溶液に混合し、
そして200μLのアリコート(365nm、10mW/cm2)中でバ
ルク光重合した。PBS中のSOD放出を、ミクロBCA法を用
いて長時間モニターした;放出されたSODの活性もま
た、チトクロームC阻害分析を用いて特徴づけた。
ヒドロゲル架橋密度および効果的な分子種サイズは、
ヒドロゲルからの薬物放出キネティックスの2つの主要
な決定因子である。この場合、SODの3つの分子量種(6
7kDaオリゴマー、15.5および12.7kDaモノマー)が存在
する。デキストランモデル成分を用いたデータにもとづ
いて、低分子量種が最初の12時間にゲルから完全に溶出
され、そして中程度の分子量種(67kDa)が最初の48時
間に、最初に一気に放出され、表面上の拡散領域が奪わ
れたことの証拠として延長された放出を伴うことを示
す。
インビトロでの生理食塩溶液中のヒドロゲルからのSO
D放出は二相性であった。10%マクロマー溶液から形成
されたヒドロゲルは、取り込まれたSODの90%を48時間
で(t1/2=4時間)放出し、残りの10%をゼロ次キネ
ティックスによって以後7日間(t100=8日間)にわた
って放出した。デキストランで得られたデータと比較す
ると、大分子量種の妨げられた拡散率を有して結合した
薬物拡散経路の長さの増大は、放出の持続時間を8日間
に拡散することをもたらす。サンプル溶出培地の比活性
分析は、拡大した処方物の安定性を示す。
実施例2:ラットモデルにおける一次癒着の阻害 動物モデル インビボの効力実験を、一次および二次ラット子宮角
癒着モデル(RUHAM)で行い、IP巨丸剤により送達され
た場合と制御されたヒドロゲル送達とでSODの相対的な
効力を比較した。コントロールグループは、未処理の
(傷害された)動物およびピドロゲル(SODなし)動物
を含む。最終的なインビボの効力実験は、一次および二
次RUHAMモデルにおいて用量範囲実験設計(1、3、
5、および10KU/mL)を用いた。インビボの評価実験の
ために用いた終点は、処置後1週間であった。
実験は2つのラット子宮角モデルを用いて行い、これ
は、最初の虚血性の発作に応答して癒着を発生する。第
1のモデルは、7日間の期間で新規の癒着を生じる(一
次モデル)。第2のモデルは、再形成(二次)モデルで
あり、これにより一次モデルで発生したフィブリンの癒
着が分離し、そして癒着の再形成が癒着分離の7日後に
観察される。40匹の性的に成熟した雄性Sprague−Dawle
yラット(225〜250グラム)を一次癒着モデルに用い
た。動物を、、ケタミン(25mg/mL)、キシラジン(1.3
mg/mL)、およびアセプロマジン(0.33mg/mL)の混合物
4ml/Kgの筋肉内注射後に麻酔した。外科手術中、無菌技
術を使用した。腹部を準備した後、3センチメートルの
下部正中線切開を行い、骨盤腔を曝した。子宮角を、血
管弧を曝すように配置した。子宮角の中心部分に対する
虚血を、二極性の電気メスを用いて血管弧を焼灼するこ
とにより誘導した。最小の血流を維持し、器官の生存を
確実にするために、角に血液を供給するほとんどの前方
および後方の血管を焼灼するようには処置を行わなかっ
た。2つのさらなる外傷を、電気メスを用いて角の対腸
管粘膜の表面に約2.5cm間隔で形成した。外科手術によ
る傷害の後、動物を、無秩序な様式で4つの処置グルー
プのうちの1つに割り当てた。筋肉腹膜層および覆って
いる腹膜を、4−0のビクリル(vicryl)吸収可能縫合
で閉じ、そして皮膚切開を、7mmのステンレス鋼針を用
いて閉じた。
動物を、1週間の終わりに癒着形成について評価し
た。子宮角の「癒着パーセント」は、癒着に携わる子宮
角の測定された長さを子宮角の全体の長さで割り、100
をかけることにより計算される。「パーセント効果」
は、100−「癒着パーセント」である。
第2の実験において、一次癒着モデルの開始の7日
後、動物(n=40)を開腹し、もう一度子宮角を曝し
た。顕微的な外科技術を用いて、子宮角と他の器官との
間の癒着を注意深く切り開き、分離した。二極性の電気
メスを用いて血流遮断を維持した。癒着分離の完成にお
いて、動物を異なるグループに割り当て、プロトコルに
従って処置し、そして腹膜腔を閉じた。動物を、1週間
の期間の終わりに癒着再形成について評価し、そして癒
着スコアを上記のように計算した。
一次および二次癒着モデルの両方において、動物を、
以下の実験設計に従って4つのグループの1つに無秩序
に割り当てた: グループ1:さらなる処置を伴わないコントロール傷害 グループ2:ヒドロゲルバリアのみ グループ3:SODのみ グループ4:ヒドロゲル含有SOD グループ2およびグループ4を処置する(ヒドロゲル
が必要とされる場合)ために、処方物を上記のように調
製し、そして0.25mLの溶液を、動物当たり1mLの全容量
で子宮角の中央および側方表面に載せた。調製物を、20
秒間、20mW/cm2の名目上の照射を誘導する長波紫外線に
曝することにより実質的に光重合した。
グループ3においては、通常の生理食塩溶液で再構成
された凍結乾燥したSODを、上記のように0.25mLのアリ
コート中の各子宮角の表面に滴下した。一次および二次
癒着形成における用量の効果を決定するために、4回の
実験を行った。2,000〜10,000U/mLの範囲の用量を、直
接腹膜組織に適用された場合とヒドロゲル処方物の補充
物として加えられた場合とで比較した。
一次癒着モデルにおける結果 結果を図11に示す。全ての「未処置の」コントロール
動物(グループ1)において、93%またはそれより多い
子宮角表面が近隣の子宮間膜および/または器官と癒着
し、7%またはそれより少ない効力スコアがもたらされ
た。癒着形成にバリアとして適用されたヒドロゲル(グ
ループ2)は、11〜46%効力の範囲の効力スコアの広い
範囲を示した。SOD溶液の適用(グループ3)は、86〜9
3%の効力スコアをもたらした。ヒドロゲル含有SODが適
用された(グループ4)場合、効力スコアは79〜85%の
範囲であった。SODまたはヒドロゲル内に取り込まれたS
ODのボーラス用量はそれぞれ2,000(10000U/kg)または
10,000U/mL(50,000U/kg)であったが、効力における有
意な効果は観察されなかった。
実施例3:ラットモデルにおける癒着再形成の防止 二次癒着モデルにおける結果 結果を図2に示す。全ての「未処置の」コントロール
動物(グループ1)において、94%またはそれより多い
子宮角表面が近隣の子宮間膜または他の器官と癒着し、
6%またはそれより少ない効力スコアがもたらされた。
癒着再形成にバリアとして適用されたヒドロゲル(グル
ープ2)は、20〜40%の効力スコアをもたらした。SOD
溶液が適用された場合(グループ3)は、スコアは0〜
29%の範囲の数であった。最後に、ヒドロゲルへの組み
込み後のSODの適用(グループ4)は、67〜94%の間の
範囲の効力スコアをもたらした。SODのボーラス用量ま
たはヒドロゲル内に取り込まれたSODの用量がそれぞれ
2,000、5,000、または10,000U/mLであった場合、効力に
おける有意な効果は観察されなかった。
用量の関数として有意な相違が見出されなかったの
で、個々の実験から得られたデータを組み合わせ、一次
と二次の両方のモデルについて処置グループ間の相違を
図3に示すように要約した。
Diamondら、Fert.and Ster.47:864(1987);Peters
ら、Br.J.Obstet.Gyn.99:59(1992);Lucianら、Obste
t.& Gyn.74:220(1989);Lucianoら、Fert.and Ster.4
8:1025(1987);およびSurreyら、J.Repro.Med.27:658
(1982)は、動物モデルにおける二次癒着の縮小が、一
次癒着もより困難であることを示した。本明細書に示さ
れたデータに基づけば、ラットにおける一次および二次
癒着が、異なる病理学的順序を通じて形成されるようで
ある。損傷部位における癒着形成についての組織学的評
価および傾向が比較される場合、2つのモデル間の相違
が明らかになる。フィブリンの分離に続く癒着の再吸収
は、一次モデルにおいて7日目から28日間起こった。対
照的に、二次癒着モデルは、8週間にわたって再吸収さ
れない持続的なコラーゲン様癒着をもたらす。これらの
データは、単回のボーラスが提供し得るよりも二次癒着
を防止するためにより長い期間持続する薬理学的な介入
が必要であることを示す。この二次モデルで形成される
癒着は、臨床的な状態において経験されたものに質的に
類似する。ヒドロゲルの他の処方物が癒着モデルにおい
て効力を産生していたが、本研究に用いられた特定の処
方物および適用方法は、バリアとして辺縁性の効力を提
供した。しかし、同じ処方物中に充填されたSOD、また
はSOD溶液の子宮角への直接の適用は、一次モデルにお
いてはるかにより高い効力を示した。これは、この一次
癒着モデルにおいて、効力が病理学的順序における早期
の介入によりSODによって産生されることを示し、これ
は、炎症の開始段階中の酸素誘導ラジカルの産生と一次
する。さらに、血液からのSODの除去速度が迅速である
ために、ボーラス用量により示される効力は短時間の構
成において起こったことが推測され得る。二次モデルに
おいては、バリア単独またはSODのボーラスが適用され
た場合に効力が劇的に減退した。しかし、治療の2つの
様式が組み合わされた(すなわち、バリアがSODと充填
された)場合、有意なレベルの効力が達成された。これ
は、SODに対するより延長された曝露が、一次モデルに
おいて形成される短命フィブリンの癒着よりもむしろ、
臨床的な集団において形成される癒着に類似する、分離
した、成熟コラーゲン様癒着を処置する場合に必要とさ
れるという仮説を支持する。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI A61K 47/32 A61P 43/00 105 A61P 43/00 105 A61K 37/50 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A61K 45/00 A61K 9/127 A61K 9/14 A61K 9/50 A61K 38/44 A61K 47/32 A61P 43/00 CAPLUS(STN)

Claims (13)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】組織部位における細胞増殖を阻害する組成
    物であって、該組織部位で重合バリアを形成するために
    重合し得る物質、ならびに活性酸素種の阻害剤、不活性
    塩と該阻害剤の複合体、および有機分子と該阻害剤との
    複合体からなる群より選択される、有効量の1つまたは
    それ以上の化合物を含み、ここで、該阻害剤がカタラー
    ゼではない、組成物。
  2. 【請求項2】患者の組織部位における、手術後癒着、再
    狭窄、ケロイド瘢痕化、肥大性瘢痕化、肥大性管閉塞、
    良性前立腺肥大、および子宮内膜症からなる群より選択
    される医学的条件を防止または緩和する組成物であっ
    て、該組織部位で重合バリアを形成するように重合し得
    る物質、ならびに活性酸素種の阻害剤、該阻害剤と不活
    性塩との複合体、および該阻害剤と有機分子との複合体
    からなる群より選択された1つまたはそれ以上の有効量
    の化合物を含む、組成物。
  3. 【請求項3】前記組成物が、薬学的に受容可能なキャリ
    アをさらに含む、請求項1または2に記載の組成物。
  4. 【請求項4】前記組成物が、活性酸素種の阻害剤以外の
    生物学的に活性な化合物をさらに含む、請求項1または
    2に記載の組成物。
  5. 【請求項5】前記阻害剤が、放出可能にポリマーに結合
    する、請求項1または2に記載の組成物。
  6. 【請求項6】前記阻害剤が、リポソーム、マイクロ粒
    子、またはマイクロカプセル中にカプセル化される、請
    求項1または2に記載の組成物。
  7. 【請求項7】前記阻害剤が、インタクトなまたは粉末化
    したゲル中に存在する、請求項1または2に記載の組成
    物。
  8. 【請求項8】重合したとき、前記物質がヒドロゲルを形
    成する、請求項1または2に記載の組成物。
  9. 【請求項9】重合したとき、前記物質がインビボで生分
    解性である、請求項1または2に記載の組成物。
  10. 【請求項10】前記物質が、光重合性である、請求項1
    または2に記載の組成物。
  11. 【請求項11】前記阻害剤が、スーパーオキシドジスム
    ターゼ、アロプリノール、ベラパミル、カタラーゼ、お
    よびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請
    求項1または2に記載の組成物。
  12. 【請求項12】前記阻害剤が、スーパーオキシドジスム
    ターゼである、請求項1または2に記載の組成物。
  13. 【請求項13】組織部位での前記医学的条件を処置する
    ことにおける使用のための薬物を調製するための、請求
    項2〜12のいずれかに記載の組成物の使用。
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