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JP2024089290A - 補強部材の設計方法 - Google Patents

補強部材の設計方法 Download PDF

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JP2024089290A
JP2024089290A JP2022204563A JP2022204563A JP2024089290A JP 2024089290 A JP2024089290 A JP 2024089290A JP 2022204563 A JP2022204563 A JP 2022204563A JP 2022204563 A JP2022204563 A JP 2022204563A JP 2024089290 A JP2024089290 A JP 2024089290A
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JP2022204563A
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博仁 赤星
Hirohito Akaboshi
晃三 服部
Kozo Hattori
一夫 平松
Kazuo Hiramatsu
周平 大田
Shuhei Ota
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Okumura Corp
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Okumura Corp
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Abstract

Figure 2024089290000001
【課題】実情に合った補強性能を評価した補強部材の設計方法を提供する。
【解決手段】既存の梁に開孔を設け、梁の両側面の開孔の周囲に補強鋼板を接着すると共に、梁側面に補強鋼板をアンカーにて接合して補強する場合、補強部材の必要補強せん断力QR,needを、開孔を設ける前の梁のせん断耐力Qsu0と開孔を設けた後の梁のせん断耐力QsuRとの差から求め、1接合面当たりの接合面せん断耐力qjを、アンカーの材種及び直径、補強鋼板の有効接着面積ab、材種及び開孔芯の鉛直断面における断面積apとから算出し、1接合面当たりの接合面せん断耐力qjが、補強鋼板の必要補強せん断力QR,needから算出される1接合面当たりの必要接合面せん断力qj,need以上であり、補強鋼板の最大耐力時において、ボルト孔で支圧破壊せず、開孔の上下部で降伏せず、かつ、開孔の上下部で座屈しないように、補強鋼板の形状を定める。
【選択図】図7

Description

特許法第30条第2項適用申請有り 発行日:令和4年9月1日 刊行物:奥村組技術年報No.48,第6,75~80頁,株式会社奥村組技術研究所
本発明は、既存の鉄筋コンクリート造の梁に開孔を設けた場合における補強部材の設計方法に関する。
建築物の寿命期間中に、設備配管の変更や新設を行うために、既存の鉄筋コンクリート造の梁に新たに開孔を設ける場合がある。当初設計においては開孔が存在しないので、開孔による断面減少を補強するために補強構造を追加する必要がある。
このような開孔の補強構造として、開孔の周囲の梁両面に補強鋼板を設置する工法がある(例えば、特許文献1参照)。この工法においては、既存の梁には、配管を通すための開孔が設けられ、その周囲に補強鋼板を固定するためのアンカー孔が4つ設けられる。補強鋼板には、梁の開孔と同径の開孔と、補強鋼板を梁側面に固定するためのアンカーを貫通させるための孔が4つ設けられる。
特開昭55-042965号公報
しかしながら、上記補強工法の補強性能については十分な検証がされておらず、設計方法は確立されていなかった。このため、実情に合った補強性能の評価方法が求められていた。
本発明は、以上の点に鑑み、実情に合った補強性能を評価した補強部材の設計方法を提供することを目的とする。
本発明の補強部材の設計方法は、既存の鉄筋コンクリート製の梁に開孔を設け、前記梁の両側面の前記開孔の周囲に補強鋼板を接着すると共に、前記補強鋼板の少なくとも四隅近傍に設けたボルト孔によって前記梁側面に前記補強鋼板をボルトにて接合して補強する場合における、前記補強鋼板と前記ボルトからなる補強部材の設計方法であって、前記補強部材の必要補強せん断力を、前記開孔を設ける前の前記梁のせん断耐力と前記開孔を設けた後の前記梁のせん断耐力との差から求め、1接合面当たりの接合面せん断耐力を、前記ボルトの材種及び直径と、前記補強鋼板の有効接着面積、材種及び開孔芯の鉛直断面における断面積とから算出し、前記1接合面当たりの接合面せん断耐力が、前記補強鋼板の必要補強せん断力から算出される1接合面当たりの必要接合面せん断力以上であり、前記補強鋼板の最大耐力時において、ボルト孔で支圧破壊せず、前記開孔の上下部で降伏せず、かつ、前記開孔の上下部で座屈しないように、前記補強鋼板の形状を定めることを特徴とする。
本発明の補強部材の設計方法によれば、後述する構造実験の結果から分かるように、実情に合った補強性能を曲げ応力を考慮して評価した補強部材の設計方法を得ることができる。
接合面のせん断力は4つに区分した補強鋼板の部分のそれぞれの対角方向に作用するので、本発明の補強部材の設計方法において、前記補強鋼板の四隅近傍に配置されるボルトのうち、対角位置に設けられた2つのボルトをつなぐ直線の方向におけるせん断による必要接合面せん断力と曲げによる梁材軸方向の必要接合面せん断力との合力ベクトル、及び、前記直線と梁材軸方向とのなす角について正弦値を求め、前記1接合面当たりの接合面せん断耐力を、前記補強鋼板の必要補強せん断力を上記正弦値の4倍した値で除した値として求めることが好ましい。
また、後述する構造実験の結果から、梁の梁せいと開孔の直径の比である開孔比に応じて接合面のせん断耐力が低下することが分かったので、本発明の補強部材の設計方法において、前記1接合面当たりの接合面せん断耐力を、固着力が十分な場合の接合面における1接合面当たりの必要せん断力と、固着力が不十分な場合の接合面における1接合面当たりのせん断力との最小値に、前記梁の梁せいと前記開孔の直径の比に基づく低減係数を乗じた値として求めることが好ましい。
本発明の補強部材の設計方法において、例えば、前記梁に前記開孔を設ける前のせん断耐力を大野・荒川min式により算出し、前記開孔を設けた後の前記梁の補強前のせん断耐力を大野・荒川min式の変形式である修正広沢式より算出すればよい。
本発明の実施形態に係る補強部材の設計方法が適用される開孔が設けられた既存のRC梁を示す模式斜視図。 試験体♯21/3を示す正面図。 試験体♯21/3を示す上面図。 図3のIV-IV線矢視断面図。 図3のV-V線矢視断面図。 試験体♯21/3の補強鋼板の固定状態を示す拡大断面図。 本発明の実施形態に係る補強部材の設計方法を示すフローチャート。 開孔周囲のせん断補強筋の有効な範囲cを説明する図。 補強鋼板の1接合面の有効接着面積abを説明する図。 補強鋼板に生じる座屈の概念を説明する図。 各種ひび割れ等の主な発生現象を併記した全試験体のせん断力と部材変形角の関係を示すグラフ。 τ・Σapと補強効果の実測値Qex,Rとの関係を示すグラフ。 σ・Σapと補強効果の実測値Qex,Rとの関係を示すグラフ。 接合面のせん断変形量y0と1接合面当たりの接合面せん断耐力の実測値Qex,jとの関係を示すグラフ。 最大せん断耐力の設計値QsuRと実験値Qmaxとの関係を示すグラフ。
本発明の実施形態に係る補強部材の設計方法について図面を参照して説明する。なお、図面は本実施形態を模式的に説明するための図であり、寸法はデフォルメされている。
本補強部材の設計方法は、図1に示すように、既存のRC(鉄筋コンクリート)造の梁10に開孔11を設け、この開孔11を含む部分(以下、開孔部という)に補強用の鋼板(以下、補強鋼板という)20を設置し、エキポシ樹脂31(図6参照)及びアンカーボルト(以下、アンカーという)32を用いて固定することにより補強を施した有孔梁鋼板補強工法において、補強部材である補強鋼板20及びアンカー32を設計する方法である。なお、アンカー32は本発明のボルトに相当する。
本補強部材の設計方法が適用される梁10は、RC造であって、上下方向(Z軸方向)を長辺とした断面矩形状に形成されており、その梁材軸方向(X軸方向)の両端がRC造の柱40と一体化されている。なお、梁10は、その上部における両側面から梁幅方向(Y軸方向)外方に向かってそれぞれ張り出すRC造のスラブと一体化されたものなどであってもよい。
梁10には、図2から図6も参照して、梁主筋として複数本の上端梁主筋12及び複数本の下端梁主筋13が梁材軸方向に沿って埋設されている。上端梁主筋12は、梁10の上部に梁幅方向に間隔を空けて埋設されている。一方、下端梁主筋13は、梁10の下部に梁幅方向に間隔を空けて埋設されている。なお、ここでは、上端梁主筋12及び下端梁主筋13はそれぞれ5本配筋されているが、これらの本数や配置は適宜変更可能である。
また、上端梁主筋12及び下端梁主筋13は、複数本のせん断補強筋(あばら筋)14,15によって結束されている。せん断補強筋14,15は、上端梁主筋12及び下端梁主筋13を囲む矩形の枠状に形成されており、梁材軸方向に間隔を開けて梁10に埋設されている。これらせん断補強筋14,15によって、上端梁主筋12と下端梁主筋13との間でせん断力が伝達されるように構成されている。梁10の端部のせん断破壊を防止するため、端部には中央部及びその近傍部のせん断補強筋14よりも間隔が狭くなるようにせん断補強筋15が配筋されている。
補強鋼板20は、板厚がt[mm]の矩形状の鋼板であり、その中央部に梁10に設けた開孔11と同径の開孔21が設けられている。補強鋼板20は、梁10の梁幅方向の両側面にそれぞれ設置され、それぞれ少なくとも4本のアンカー32にて固定されている。アンカー32は、開孔11を中心に、梁軸方向及び上下方向にそれぞれ対称に配置されている。なお、合計8本のアンカー32の代わりに4本の貫通したアンカーによって補強鋼板20を固定してもよい。
補強鋼板20の材質は、JIS G 3101に規定のSS400,S490、JIS G 3106に規定のSM400A,SM400B,SM400C,SM490A,SM490B,SM490C、又は、JIS G 3136に規定のSN400A,SN400B,SN400C,SN490A,SN490B,SN490Cである。
梁10は、コンクリート強度σBDが15N/mm2以上30N/mm2以下の普通コンクリートが打設されてなるものである。そして、梁10の梁せいをD[mm]としたとき、梁幅bは2/3・D以下、内法スパン長さLは3D以上、開孔11の直径HはD/3以下かつ250mm以下、開孔11の上下位置は梁10の上端と下端からそれぞれD/4以外の範囲であり、開孔11の間隔は隣り合う開孔11の直径Hの平均の3倍以上であるものに本設計方法を適用可能である。
アンカー32は、カプセル方式又は注入方式の接着剤を用いて、六角ナット33及び平座金34(図5及び図6参照)を用いて固定される。アンカー32、六角ナット33及び平座金34は、JIS B 1051に規定の強度区分4.6,4.8,5.6に属する鋼材からなるものであり、これらの材質は、補強鋼板20と同じ、又は、JIS G 3112に規定のSR235,SR295,SD295,SD345である。アンカー12の埋め込み部は、全長に渡りねじ切りされたもの、又は、異形鉄筋である。
接着剤31は、エキポシ樹脂系接着剤であり、それぞれ23℃の試験条件において、JIS K 7181に規定の試験方法による圧縮強さは50.0N/mm2以上、JIS K 7161に規定の試験方法による引張強さは19.6N/mm2以上、JIS K 7181に規定の試験方法による圧縮弾性係数は9.8X102N/mm2以上、JIS K 7117に規定の試験方法による粘度は2500mPa・s以下である。ただし、接着剤31の粘度は、実験等により良好な充填性を確認した場合には、前記数値に限定されない。
接着剤31を注入したときに、液漏れ防止のためにシール材35(図6参照)を用いる。シール材35は、エキポシ樹脂系パテであり、それぞれ23℃の試験条件において、JIS K 7181に規定の試験方法による圧縮強さは50.0N/mm2以上、JIS K 7161に規定の試験方法による引張強さは19.6N/mm2以上、JIS K 7181に規定の試験方法による圧縮弾性係数は9.8X102N/mm2以上である。
本実施形態は、既存のRC造の梁10に貫通する開孔11を設ける場合において、開孔11の両面に補強鋼板20を設置して、アンカー(又は貫通ボルト)32で固定した補強構造の設計方法に関する。本方法は、補強鋼板20にせん断応力及び曲げ応力が作用すると仮定した設計方法である。
本補強構造の設計方法においては、図7に示すように、まず、補強構造により補強することが必要なせん断力である必要補強せん断力QR,needを算定する(STEP1)。
補強後の梁10のせん断耐力QsuRは、式(1)に示すように、補強前の開孔11を有する梁10(以下、有孔梁ともいう)の開孔周囲のせん断耐力Qsu0と、補強構造によるせん断耐力の増加分QRの和として算出される。
suR=Qsu0+QR ・・・ (1)
補強後の梁10のせん断耐力QsuRが、式(2)に示すように、開孔11を設ける前の梁10(以下、無孔梁ともいう)のせん断耐力Qsu以上となるように設計する。
suR≧Qsu ・・・ (2)
式(1)から式(3)が導かれる。
R=QsuR-Qsu0 ・・・ (3)
補強構造によるせん断耐力の増加分QRは、式(4)に示すように、必要補強せん断力QR,need以上であればよい。
R≧QR,need ・・・ (4)
必要補強せん断力QR,needは、式(5)により算出する。
R,need=α(Qsu-Qsu0) ・・・ (5)
ここで、αは開孔比(H/D)に応じた割増係数であり、H/D<1/4のときは1.2であり、H/D≧1/4のときは1.0である。
割増係数αのこのような値は、後述する試験体を用いた構造実験から導かれる。具体的には、この構造実験において、開孔比が1/4である試験体においては最大耐力が期待値を概ね満足していたが、開孔比が1/3である試験体においては期待値を下回った。これから、梁せいDに対して開孔比が小さいものは設計上安全側にあると想定することができる。しかし、開孔比が小さいほど上下に偏心させる自由度が増すなど、開孔11の位置変化などの実験では確認できていない影響を総合的に配慮し、開孔比が1/4未満である場合には、割増係数αを1.2とした。
suは、開孔11を設ける前の梁10のせん断耐力であり、式(6)に示す大野・荒川min式により算出する。この式は、日本建築学会発行の「鉄筋コンクリート構造 計算基準・同解説」に記載されている。
Figure 2024089290000002
ここで、kuは、梁10の有効せいdに基づく係数であって、ku=(160/d)0.37である。ただし、d≧400[mm]のとき、ku =0.72とし、d≦160[mm]のとき、ku=1.0とする。kは、引張鉄筋比prに基づく係数であり、kp=2.36pr 0.23である。FcRは、コンクリートの補強設計強度基準[N/mm2]である。Mは、最大曲げモーメント[Nmm]であり、Qは、最大せん断力[N]である。bは、梁10の梁幅[mm]、Dは、梁10の梁せい[mm]、dは、梁10の有効せい[mm]、jは、応力中心間距離[mm]である。pwは、せん断補強比である。ただし、pwが0.012を超える場合、pwは0.012とする。そして、σwyは、せん断補強筋14,15の規格降伏点[N/mm2]である。
su0は、補強前の有孔梁10の開孔周囲のせん断耐力であり、式(7)に示す大野・荒川min式の変形式である修正広沢式を用いて算出する。この式も、日本建築学会発行の「鉄筋コンクリート構造 計算基準・同解説」に記載されている。
Figure 2024089290000003

ただし、ps=Σ{a(sinθ+cosθ)/(b・c)} ・・・(8)
ここで、Hは、開孔11の直径[mm]である。psは、開孔周囲のせん断補強筋14,15の有効な範囲c内における補強筋比である。ただし、psが0.012を超える場合、psは0.012とする。σsyは、開孔周囲のせん断補強筋の規格降伏点F[N/mm2]である。図8及び図9を参照して、cは、開孔周囲のせん断補強筋14,15の有効な範囲であって、開孔の中心より45°の方向に引いた直線が引張鉄筋(主筋)の重心と交わる位置の間の距離[mm]である。asは、cの範囲内にある1組のせん断補強筋14,15の断面積[mm2]である。θは、開孔周囲のせん断補強筋14.15が梁材軸となす角度である。
本補強構造の設計方法においては、次に、アンカー32の材種と直径、及び補強鋼板20の有効接着面積ab、材種、開孔芯の鉛直断面における断面積apを選定する(STEP2)。
そして、次に、1接合面当たりの接合面せん断力qjを求める(STEP3)。
本補強構造は、コンクリートと一体になるように補強鋼板20をアンカー32を用いて定着させると共に接着剤31を用いて接着させた構造であるので 、コンクリートの損傷を抑制するには補強鋼板20との接合面の固着力が重要である。
コンクリートがせん断力を受けると、コンクリート側の接合面は変形するが、補強鋼板20は、コンクリートに比べ十分固いから、せん断力を受けても変形しない。そのため、開孔21から離れるほど、補強鋼板20とコンクリートとの接合面の間の変形量が大きくなるので、補強鋼板20の接合面のせん断応力は開孔21の近傍よりも縁端部のほうが大きくなる。そこで、効率よく補強効果を発揮させるには、4隅のアンカー32の固着力が重要になる。
後述する構造実験の結果を参照すると、梁10の破壊性状は、せん断ひび割れを伴うアンカー32周囲のコンクリートの破壊により、アンカー32の固着抵抗が喪失し、接合面の剥離が進展することにより、耐力を喪失したものと考えられる。
また、アンカー32の水平変形量が0.5mm程度以下の微小変形時、接着剤31の接合面直下のコンクリート界面に破壊線が生じている。最大耐力時はアンカー32から開孔11側の範囲には破壊が生じておらず、このアンカー32の周囲の接合面にて固着抵抗及び摩擦抵抗としてせん断応力を伝達させると考えられる。
ここでの摩擦抵抗は、コンクリート界面が破壊される以前も物体内部の摩擦抵抗としての作用、すなわちアンカー32の反力による圧縮面圧を伴うせん断抵抗であると考えられる。アンカー32と補強鋼板20の支圧抵抗は固着抵抗及び摩擦抵抗に比べ十分小さいことから無視し、摩擦抵抗及び固着抵抗の組合せによりせん断耐力を評価することが可能であると考えられる。
(1接合面当たりの必要接合面せん断力)
補助鋼板20とコンクリートとの接合面に生じる1接合面当たりの必要接合面せん断力qj,need[N]は、図10を参照して、梁10のせん断及び曲げによって作用されるそれぞれの応力を考慮して、式(9)により求める。なお、必要接合面せん断力qj,needを求める際は、各接合面の必要せん断力のうちの最大値によって評価する。
j,need=√(qj,Q 2+qj,M 2+2qj,Q・qj,M・cosφ) ・・・ (9)
sinφj=(qj,Q/qj,need)・sinφ ・・・ (10)
ここで、qj,Qは、梁10のせん断によるアンカー32の対角方向の必要接合面せん断力[N]であり、qj,Mは、梁10の曲げによる梁材軸方向の必要接合面せん断力[N]である。そして、φは、図10を参照して、梁材軸方向と縁端にあるアンカー32の対角線のなす角度である。φは、アンカー32間の梁材軸直交方向の距離Ha[mm]とアンカー32間の梁材軸方向の距離La[mm]とから、式(11)によって求まる。なお、後述する構造実験で性能確認した試験体は全て梁材軸方向と縁端にあるアンカー32の対角線のなす角度が32.5°であるので、φの上限は32.5°とする。
φ=tan-1(Ha/La) ・・・ (11)
(梁のせん断によるアンカー対角方向の必要接合面せん断力)
後述する構造実験の結果から、本補強構造において、最大耐力は補強板の接合面のせん断破壊によって決まることが分かる。よって、補強によるせん断力の増分QRは、梁10の側面と補強鋼板20との接合面のせん断方向の鉛直成分による補強力に応じて定まる。すなわち、接合面のせん断力は、開孔21の上部及び下部にそれぞれ区分される補強鋼板20の部分に作用する。
そこで、補強によるせん断耐力の増分の必要量QR,needは、式(12)に示すように、梁10の終局耐力時における開孔21の上部及び下部に区分して存在する1接合面間の補強鋼板20の各部分が負担することが必要なせん断力Qp,needの4倍として求める。
R,need=4Qp,need ・・・ (12)
このとき、接合面のせん断力は、4つに区分した補強鋼板20の部分のそれぞれの対角方向に作用する。そこで、この必要せん断力Qp,needを用いて、梁10のせん断による1接合面当たりのアンカー32の対角方向の必要せん断力qj,Qは、用いて、式(13)によって求まる。
j,Q=Qp,need/sinφ ・・・ (13)
(梁の曲げによる梁材軸方向の必要接合面せん断力)
梁10の曲げによる1接合面当たりの梁材軸方向の必要接合面せん断力qj,Mは、安全側に評価するために、式(14)より求める。
j,M=1/2・max(|Ppc|,|Ppt|) ・・・ (14)
ここで、Ppcは、圧縮縁側にある補助鋼板20の合力[N]であり、Pptは、引張縁側にある補助鋼板20の合力[N]である。
圧縮縁側にある補助鋼板20の合力Ppc、及び、引張縁側にある補助鋼板20の合力Pptは、日本建築学会発行の「鉄筋コンクリート構造 計算基準・同解説」の「13条 梁の曲げに対する断面算定」にならって求める。ただし、コンクリートと補助鋼板20の接合面にはせん断変形が生じていることを考慮して補強部材間の剛性を適切に評価するために、接合面のせん断変形および補助鋼板20の軸変形を組み合わせて、相当ヤング係数を式(15)、(16)により求める。
j,pc=(kj,pc・La)/apc ・・・ (15)
j,pt=(kj,pt・La)/apt ・・・ (16)
ここで、Ej,pcは、圧縮縁側にある補強部材の相当ヤング係数[N/mm2]であり、Ej,ptは、引張縁側にある補強部材の相当ヤング係数[N/mm2]である。Laは、梁材軸方向のアンカー32からアンカー32までの距離[mm]である。apcは、圧縮縁側にある両面の補強鋼板の断面積[mm2]であり、aptは、引張縁側にある両面の補強鋼板の断面積[mm2]である。そして、kj,pcは、接合面のせん断剛性と補強鋼板20の軸剛性を考慮した圧縮縁側にある補強部材の相当軸剛性[N/mm]であり、式(17)により求める。kj,ptは、接合面のせん断剛性と補強鋼板20の軸剛性を考慮した引張縁側にある補強部材の相当軸剛性[N/mm]であり、式(18)により求める。
j,pc=(kj・Es・apc)/(kj・La+Es・apc) ・・・ (17)
j,pt=(kj・Es・apt)/(kj・La+Es・apt) ・・・ (18)
ここで、kjは、1接合面のせん断剛性[kN/mm]であり、ここでは、後述する構造試験の結果などから300kN/mmとする。Esは、補強鋼材20のヤング係数[N/mm2]である。
(軸剛性を考慮した引張縁側にある補強部材の相当軸剛性)
式(17)、(18)の導出について説明する。
補強部材のせん断剛性、補強鋼板20の軸剛性、及び、これらの組み合わせ剛性の関係式は、それぞれ、式(19)から式(21)となる。
p=kj・y0 ・・・ (19)
p=kpl・Δlp ・・・ (20)
p=kj,p・(Δlp+2y0) ・・・ (21)
ここで、y0は、接合面のせん断変形量[mm]であり、Δlpは、補強鋼板20の伸び量[mm]である。そして、kjは、1接合面のせん断剛性[N/mm]であり、kplは、1接合面の補強鋼板20の軸剛性[N/mm]であり、kj,pは、開孔芯の鉛直断面における1接合面の補強部材の相当軸剛性[N/mm]である。
式(19)から式(21)により、式(22)が求まる。
j,p=(kj・kpl)/(kj+2kpl) ・・・ (22)
そして、両面の補強鋼板20を考慮した剛性kj,ptは、式(23)により求まる。
j,pt=2kj,p=2・(kj・kpl)/(kj+2kpl) ・・・ (23)
さらに、梁材軸方向の1方向に軸力が作用した場合のヤング係数Esに軸剛性の関係は、式(24)より表される。
pl=(Es・ap)/La ・・・ (24)
ここで、apは、開孔芯の鉛直方向における1接合面間の補強鋼板20の断面積[mm2]である。
式(24)を式(23)に代入すると、式(25)が得られる。
j,pt=2(kj・Es・ap)/(kj・La+2Es・ap) ・・・ (25)
この式(25)に、両面の補強鋼板20を考慮した式(26)を代入すると、上式(18)が得られる。接合面のせん断剛性と補強鋼板20の軸剛性を考慮した圧縮縁側にある補強部材の相当軸剛性kj,pcも、同様に得られる。なお、本実施形態が適用される梁10においては、開孔21の上下にある補強鋼板20の断面積は同じであるので、相当ヤング係数Ej,pc、Ej,ptは同じとなる。
pc=apt=2ap ・・・ (26)
(各々の合力の算定)
各々の合力は式(27)の釣り合い式が成立する。
cc+Psc+Pst+Ppc+Ppt=0 ・・・(27)
ここで、Pccは、圧縮コンクリートの合力[N]であり、Pscは、圧縮鉄筋の合力[N]であり、Pstは、引張鉄筋の合力[N]である。
中立軸位置をxn[mm]としたとき、各合力Psc、Pst、Ppc、Pptは、それぞれ式(28)から式(31)により求まる。
sc=(n-1)・σc・{(dsc-xn)/xn}・asc ・・・ (28)
st=n・σc・{(dst-xn)/xn}・ast ・・・ (29)
pc=(Ej,pc/Es)・n・σc・{(dpc-xn)/xn}・apc ・・・ (30)
pt=(Ej,pt/Es)・n・σc・{(dpt-xn)/xn}・apt ・・・ (31)
ここで、nは、クリープの影響を考慮したヤング係数比(Es/Ec)であって、日本建築学会発行の「鉄筋コンクリート構造 計算基準・同解説」の12条(3)項の規定による。dscは、圧縮縁より圧縮鉄筋の重心までの距離[mm]であり、dstは、圧縮縁より引張鉄筋の重心までの距離[mm]であり、dpcは、圧縮縁より圧縮縁側にある補強鋼板20の重心までの距離[mm]であり、dptは、圧縮縁より引張縁側にある補強鋼板20の重心までの距離[mm]である。そして、ascは、圧縮鉄筋の断面積[mm2]であり、astは、引張鉄筋の断面積[mm2]である。apcは、圧縮縁側にある両面の補強鋼板20の断面積[mm2]であり、aptは、引張縁側にある両面の補強鋼板20の断面積[mm2]である。
そして、(a)開孔21より圧縮縁側に中立軸がある場合、すなわち、xn<dH-H/2である場合、式(32)が成立する。ただし、dHは、圧縮縁より開孔芯までの距離[mm]である。
cc=Pcc1 ・・・ (32)
(b)開孔21内に中立軸がある場合、すなわち、dH-H/2≦xn<dH+H/2である場合、式(33)が成立する。
cc=Pcc1+Pcc2 ・・・ (33)
(c)開孔21より引張縁側に中立軸がある場合、すなわち、dH+H/2≦xnである場合、式(34)が成立する。
cc=Pcc1+Pcc2+Pcc3 ・・・ (33)
ただし、各合力Pcc1、Pcc2、Pcc3は、それぞれ、式(34)から式(36)により表される。
cc1=-(b/2)・(σc/xn)・Xn 2 ・・・ (34)
cc2=(b/2)・(σc/xn)・{Xn-(dH-H/2)}2 ・・・ (35)
cc3=-(b/2)・(σc/xn)・{Xn-(dH+H/2)}2 ・・・ (36)
ここで、bは、梁幅[mm]である。
式(28)から式(36)に基づき、開孔位置における梁10の設計曲げモーメントM[mm]は、式(37)から求まる。
M=Pcc1・(2/3)X+Pcc2・(2/3){Xn-(dH-H/2)}+Pcc3・(2/3){Xn-(dH+H/2)}+Psc・(dsc-xn)+Pst・(dst-xn)+Ppc・(dpc-xn)+Ppt・(dpt-xn)/xn ・・・ (37)
そして、本補強構造の設計方法においては、式(13)で求めた1接合面当たりの接合面せん断耐力qjが、式(12)で求めた梁10のせん断による1接合面当たりのアンカー対角方向の必要せん断力qj,need以上であるか否かを確認する(STEP4)。
j≧qj,need ・・・ (38)
式(38)が成立していなければ(STEP4:NO)、アンカー32の材種及び直径と、補強鋼板20の有効接着面積ab、材種、開孔芯の鉛直断面における断面積apと少なくとも何れかを再選定する(STEP2)。
式(38)が成立していれば(STEP4:YES)、支圧強度、組み合わせ応力、及び座屈の条件を満たしているか否かを検討する(STEP5)。
(支圧強度の検討)
まず、補強鋼板20がアンカー32用の貫通孔で支圧破壊しないことを、式(39)により確認する。
1.9Fp・tp・da≧αd・qj ・・・ (39)
ここで、Fpは、「一般財団法人日本建築学会 鉄筋コンクリート構造計算規準・同解説 2018年版」による鋼板のF値[N/mm2]である。tpは、補強鋼板20の厚さ[mm]である。daは、アンカー32の軸部の直径[mm]であり、異形鉄筋では呼び名[mm]である。αdは、安全性を考慮した支圧係数であり、ここでは、1である。
(組み合わせ応力の検討)
次に、補強鋼板20の開孔21の上下部が降伏しないことを、式(40)により、当該部に生じる応力σp,need[N/mm2]が補強鋼板20の規格降伏点σpy[N/mm2]以内であることによって確認する。
σpy≧σp,need ・・・ (40)
ここで、補強鋼板20に生じる応力σp,needは、梁10のせん断及び曲げによって作用されるそれぞれの応力を考慮して、式(41)から式(44)により求める。
σp,need 2=σx 2+3τxy 2 ・・・ (41)
σx=qj,M/ap ・・・ (42)
τxy=Qp,need/ap ・・・ (43)
p=tp(Hp-H)/2 ・・・ (44)
ここで、σxは、開孔芯の鉛直断面における1接合面間の補強鋼板20に生じる軸応力[N/mm2]である。qj,Mは、梁10の曲げによる1接合面当たりの梁材軸方向の必要接合面せん断力[N]である。τxyは、開孔芯の鉛直断面における1接合面間の補強鋼板20に生じるせん断応力[N/mm2]である。apは、開孔芯の鉛直断面における1接合面間の補強鋼板20の断面積[mm2]である。Hpは補強鋼板20の高さ[mm]であり、Hは開孔11の直径[mm]である。
(座屈の検討)
次に、補強鋼板20の開孔21の上下部で座屈しないことを、式(45)により、接合面せん断耐力qjが補強鋼板20の弾性座屈荷重Pcr[N]以下であることによって確認する。
cr≧qj ・・・ (45)
補強鋼板20に生じる座屈の概念を示す図10を参照して、図中のハッチング部分の長方形状の補強鋼板20に接合面せん断力が圧縮力として作用した場合でも弾性座屈が生じないものとし、その座屈荷重Pcrは式(46)、(47)により求まる。
cr=π2s・IP/lk 2 ・・・ (46)
P=bP・tP 3/12 ・・・ (47)
ここで、Esは、補強鋼板20のヤング係数[N/mm2]であり、IPは、開孔芯の鉛直断面における1接合面間の補強鋼板20面外の断面2次モーメント[mm4]である。lkは、開孔芯の鉛直断面における1接合面間の補強鋼板20の座屈長さ[mm]であり、ここでは、Hとする。そして、bPは、開孔芯の鉛直断面における1接合面間の補強鋼板20の幅[mm]である。
式(39)、式(40)及び式(45)の全ての式が成立したとき(STEP5:YES)、補強構造の設計を終了する。一方、これらの式のうち1つでも成立しないときは(STEP5:NO)、アンカー32の直径又は補強鋼板20の有効接着面積ab、材種、厚さの少なくとも何れかを再選定する(STEP2)。
(構造実験)
(試験体)
試験体として合計8体を準備した。各試験体とも、梁幅bは300mm、梁せいDは450mm、内法スパン長さLは1350mmの梁10を用意した。
試験体♯21/3は、図2から図6に示すように、5本ずつ配筋した上端梁主筋12及び下端梁主筋13は、SD490からなる直径19mmの鉄筋であり、主筋比ptは1.19%であった。中央部及びその近傍のせん断補強筋14は、SD295Aからなる直径6mの鉄筋であって、梁軸方向の間隔は一般部で100mm、開孔11の周囲は開孔11によるせん断補強筋14の切断があるため200mmであり、一般部の補強筋比psは0.21%であり、開孔11の周囲の補強筋比psは0.12%であった。そして、両端部325mmに位置する端部のせん断補強筋15は、SD295Aからなる直径6mの鉄筋であって、梁軸方向の間隔は50mmであり、両端部の補強筋比psは0.85%であった。
柱部40(図1参照)を模した上支持部41及び下支持部42は、それぞれ幅が550mm、高さが740mm、奥行きが450mmであった。上支持部41及び下支持部42は、十分にせん断強度を有するように、その内部に主筋及びせん断補強筋が配筋された。以上のように配筋された梁10、上支持部41及び下支持部42は、目標圧縮強度が21N/mm2のコンクリートを打設することにより形成した。
その後、梁10の幅方向中心であった上端から250mmの位置を中心として直径Hが梁せいDの1/3である150mmの開孔11を設けた。そして、その中心から梁幅方向にそれぞれ155mm及び梁高さ方向にそれぞれ99mm離れた位置を中心に4つのM20用のボルト孔を設けた。
また、SS400からなり、高さが274mm、幅が386mm、厚さtpが4.5mmの補助鋼板20を2枚用意した。これら補助鋼板20の中心に直径Hが150mmの開孔21を設けた。その中心から梁幅方向にそれぞれ155mm及び梁高さ方向にそれぞれ99mm離れた位置を中心にそれぞれボルト径より3mmだけ大きい4つの開孔を設けた。
そして、2枚の補強鋼板20を、ブラスト処理した後、梁10の梁幅方向の両側面にそれぞれに防錆塗料(メタラクトH-15(関西ペイント株式会社製)・JIS K 5633)を塗布し、補強鋼板20を4本のM20で埋め込み長さLaが140mmのアンカー32、六角ナット33及び平座金34を用いてコンクリートに留め付けた後に、補強鋼板20の縁および開孔21の周囲にシール(S930(株式会社東邦アーステック製)を施し、エポキシ樹脂31としてCP300(株式会社東邦アーステック製)を注入した。
試験体♯21/3Aは、アンカー32として、M22の貫通ボルトを用いたことを除いて試験体♯21/3と同一であった。
試験体♯15/3は、目標圧縮強度が15N/mm2のコンクリートを打設して梁10、上支持部41及び下支持部42を形成したこと、補助鋼板20の厚さtpが3.2mmであること、及び、アンカー32がM16であることを除いて試験体♯21/3と同一であった。
試験体♯21/4は、開孔11の直径Hが梁せいDの1/4である113mmであること、補助鋼板20の高さが220mm、幅が310mm、厚さtpが3.2mmであること、及び、アンカー32がM16であることを除いて試験体♯21/3と同一であった。
試験体♯21/4Bは、開孔11の直径Hが梁せいDの1/4である113mmであること、補助鋼板20の厚さtpが3.2mmであること、及び、アンカー32がM16であることを除いて試験体♯21/3と同一であった。
試験体♯21/4Pは、開孔11の直径Hが梁せいDの1/4である113mmであること、中央部及びその近傍のせん断補強筋14は、梁幅方向に4本並んでおり、その梁軸方向の間隔は一般部で45mm、開孔11の周囲は180mmであり、一般部の補強筋比psは0.94%であり、開孔11の周囲の補強筋比psは0.60%であること、及び、両端部のせん断補強筋15は、梁軸方向の間隔は35mmであり、両端部の補強筋比psは1.21%であることを除いて試験体♯21/3と同一であった。
試験体♯21/3aは、補助鋼板20の幅が420mmであること、アンカー32がM6の打ち込み式であること、及び、補助鋼板20のボルト孔がボルト径よりも2mm大きいことを除いて試験体♯21/3と同一であった。
試験体♯21/3Nは、補助鋼板20が梁10に接着、接合されていないことを除いて試験体♯21/3と同一であった。
試験体の諸元を表1にまとめた。
Figure 2024089290000004
(実験内容)
上支持部41が上に下支持部42が下になるように、試験体を垂直に建研式加力装置に固定し、押引き型油圧ジャッキを用い試験体に逆対称変形が生ずるよう水平方向に加力した。載荷履歴は、部材変形角R=±1.25×10-3radで1サイクル、R=±(2.5,5,7.5,10)×10-3radでそれぞれ2サイクル後、R=+30×10-3radまでの一方向載荷を原則とした。なお、試験体の損傷状況を考慮し、試験体♯21/4PのみR=±15×10-3rad を2サイクル追加した。
加力装置の載荷重であるせん断力と部材変形角に加え、梁10の主要部の鉄筋ひずみ、補強鋼板20のひずみ及び各部のせん断変形角を計測した。せん断変形角については梁10の開孔周囲部と端部の範囲に区分し、その範囲内にある対角に設置した変位計の計測値から算出した。
(破壊性状)
破壊性状は、試験体♯21/4Pのみが梁10の端部の曲げ破壊であり、他の試験体は梁10の開孔周囲のせん断破壊であった。
例えば、試験体♯21/3においては、各種ひび割れ等の主な発生現象を併記した全試験体のせん断力と部材変形角の関係を示す図11に示すように、R=+0.16×10-3rad時に一般部の曲げひび割れ(FC)が生じ、R=+0.48×10-3rad時に曲げせん断ひび割れが生じた。R=+0.74×10-3rad時に主筋に沿う付着割裂ひび割れが生じ、R=+0.91×10-3rad時に一般部のせん断ひび割れ(SC)が生じた。R=+1.9×10-3rad時に弦材のせん断ひび割れ(CSC)が生じ、R=+2.5×10-3rad時に開孔部のひび割れ(HSC)が生じた。
その後、剛性が低下し、エポキシ樹脂31の剥離音を伴いながら変形が進み、R=+3.3×10-3rad(209kN)時にアンカー32の近傍のせん断ひび割れ(HESC)が生じた。弦材のせん断ひび割れ、開孔内部のひび割れが増加すると共に、アンカー32の近傍のせん断ひび割れが補強鋼板20の接合面を跨ぐように発生(247kN)し、R=+5.1×10-3rad時にあばら筋が降伏(STY)し、補強鋼板20の曲がりがみられ、最大耐力(256kN)に達した。最大耐力以降、開孔部のせん断ずれの進展とともに荷重が低下し、R=+10.5×10-3rad時に補強鋼板が降伏(PY)した。以上より、最大耐力時の破壊形式は開孔部のせん断破壊型と考えられる。
なお、試験体♯21/4Pにおいては、最大耐力時にせん断補強筋15は降伏ひずみに達しておらず梁端の主筋12,13が降伏ひずみに達していたこと、最大耐力以降の耐力低下が小さかったこと等の理由から曲げ破壊と判定した。ただし、最大耐力直後の負載荷及び同変形角の2サイクル目の正載荷では中央部及びその近傍せん断補強筋14が降伏ひずみに達していた。これから、試験体♯21/4Pにおいても、最大耐力をせん断破壊時の耐力として評価できると考えられる。これより、全ての試験体において、最大耐力をせん断破壊時の耐力として評価できることが分かった。
(最大耐力)
試験体の耐力の一覧を表2に示す。無孔梁のせん断耐力Qsuは、開孔11を設ける前の状態を想定して式(6)により算出した。有孔梁のせん断耐力Qsu0は、式(7)により算出した。Qmaxは、加力実験による最大耐力である。補強された有孔梁の開孔周囲せん断耐力QsuRの設計値は、式(1)により算出した。補強によるせん断耐力の増分の設計値QRは、式(9)のQR,needをQRに、Qp,needをQpにそれぞれ読み替えて算出した。補強によるせん断耐力の増分の実験に基づく推測値Qex,R は、次式(48)により算出した。
ex,R=Qmax-αsu0・Qsu0 ・・・ (48)
ここで、Qmaxは、最大耐力の実験値である。αsu0は、修正広沢式の計算値に対する実験値の比である余裕度であり、ここでは、試験体♯21/3Nの実験結果に基づく値である1.22である。なお、この値は、「一般社団法人 日本建築学会、『鉄筋コンクリート構造計算規準・同解説』、2018」、「日本建築センター、『ビルディングレター1993年10月号』、1993」及び「落合 等、北山和宏、『せん断破壊するRC梁および有孔梁のせん断性能評価に関する研究』、コンクリート工学年次論文集、Vol.34、No.2、2012」などの文献による修正広沢式における計算値に対する実験値の比の平均値とほぼ同等である。
無孔梁の試験体である試験体♯21/3Nを除く全ての試験体において、補強によるせん断耐力の増分の実験に基づく推測値Qex,Rは、補強によるせん断耐力の増分の設計値QRを上回った。これより、式(9)による補強によるせん断耐力の増分QRは、補強による実際の増分よりも安全側に評価していることが分かる。また、加力実験による最大耐力Qmaxは補強された有孔梁の開孔周囲せん断耐力の設計値QsuRを上回ることが分かった。これにより、式(1)による有孔梁の孔周囲せん断耐力QsuRは、実際の最大せん断耐力Qmaxよりも安全側に評価していることが分かった。
Figure 2024089290000005
(せん断抵抗として評価することの妥当性)
補強効果が開孔上下部の鋼板のせん断抵抗として評価する式(9)の妥当性を検証した。
開孔21の上下部の補強鋼板20に生じる最大主応力と最大せん断応力とは概ね等しいので、開孔21の上下部の補強鋼板20が負担するせん断抵抗力を想定した値として、梁材軸直交方向のせん断応力τと、梁材軸に対して45°方向の応力σとからそれぞれ求める。
なお、τ[N/mm2]は、式(29)に示すように、最大耐力時における梁材軸に対して直交方向のせん断応力であって、開孔21の上部の補強鋼板20のせん断力τ(P0u)と下部の補強鋼板20のせん断力τ(P0l)との平均値として算出した。
τ=(τ(P0u)+τ(P0l))/2 ・・・ (49)
σ [N/mm2]は、式(50)に示すように、最大耐力時における梁材軸に対して45°方向の応力であって、開孔21の上部の補強鋼板20の応力σ(P0u)と下部の補強鋼板20の応力σ(P0l)との平均値として算出した。
σ=(σ(P0u)+σ(P0l))/2 ・・・ (50)
τ・np・ap及びσ・np・apと補強効果の実測値Qex,Rとの関係を図12A及び図12Bにそれぞれ示す。なお、np・apは、開孔芯にある梁材軸直交方向の補強鋼板20の断面積[mm2]であり、式(51)により求まる。
p・ap=2・tp(Hp-H) ・・・ (51)
ここで、npは、補強鋼板20の枚数であり、ここでは、2である。tpは、補強鋼板20の厚さ[mm]である。Hpは、補強鋼板20の高さ[mm]であり、Hは、開孔21の直径[mm]である。
図12Aに点線で示した回帰直線から最も離れた位置にある点は、唯一の曲げ破壊が先行した試験体♯21/4Pに係る点である。試験体♯21/4Pは他の試験体に比べ全体的に梁部10の損傷が進展していた。そのため、損傷に伴う局部的な力の流れの変動により、補強鋼板20に伝達すべき圧縮応力がコンクリート側へ伝達されることにより最大耐力前に補強鋼板20の圧縮応力が低下したと考えられる。
これより、圧縮応力を無視し、梁材軸に対して45°方向の引張応力により相当せん断力を評価した表が図12Bである。この回帰直線は各点と左程乖離しておらず、全体の相関性がより高くなっている。そして、その相関関係は概ね1:1 である。
そこで、式(52)に示すように、実験結果に基づいた実際の補強効果の推測値(実測値)Qex,Rは、開孔21の上下部の補強鋼板20に生じるせん断抵抗力4Qex,pとして概ね評価することができることが分かった。
ex,R≒4Qex,p≒σ・Σap ・・・ (52)
なお、試験体♯15/3に関しては、貧調合コンクリートを使用して製作した試験体の特性上、他試験体に比べ、鉛直方向の強度のばらつきが大きく、かつ上端主筋12の付着割裂破壊が進行していた。このことから、無補強時の有孔梁のせん断耐力を実際より大きく評価した結果、Qex,Rを小さく評価したと推測される。
(1接合面のせん剛性)
上述したように補強部材の剛性kj,pを評価する際に、1接合面のせん断剛性kjを300kN/mmとしたことについて検討する。接合面のせん断変形量y0[mm]と1接合面当たりの接合面せん断耐力の実測値Qex,jとの関係を、図13のグラフに示す。試験体♯21/3aを除いても、せん断剛性の平均値は247.4kNである。
また、一般社団法人プレハブ建築協会発行の「プレキャスト建築技術集大成」などに記載されている「せん断摩擦における滑りとせん断応力度」との関係を示すグラフにおいても、微小変形下においてはほぼ直線的にせん断耐力は増加しており、滑り量が0.1mmの点と原点とを結んだ直線の傾きであるせん断剛性は229kNである。
これらから、1接合面のせん断剛性kjを300kN/mmとしたことは安全側であり、適切であると考えられる。
(設計式の安全性)
最大せん断耐力の設計値QsuRと実験値Qmaxとの関係を図14に示す。これらの比(Qmax/QsuR)は、無補強の試験体♯21/3Nが1.22であるのに対し、補強を施した全試験体の平均値では1.37、中央値で1.35、最小値で1.24となり、全補強試験体において修正広沢式の余裕度の平均値を上回る安全性の高い設計式であることを確認した。
目標値である無孔梁10のせん断耐力Qsuと最大せん断耐力の実験値Qmaxの比(Qmax/Qsu)は、表2を参照して、中央値が1.32であり、概ね良好な結果であった。1を少し下回っている試験体もあったが、低減係数βHを導入していることなどを考慮すると、設計値QsuRは安全側の評価となる。
なお、本発明は実施形態に限定されるものではない。例えば、式(6)、(7)、(39)~(47)などの式は、他の式を適用してもよい。
10…RC造の梁、 11…開孔、 12…上端梁主筋、 13…下端梁主筋、 14…中央部及びその近傍のせん断補強筋、 15…梁の端部のせん断補強筋、 20…補強鋼板、 21…開孔、 31…接着剤、エキポシ樹脂、 32…アンカー、アンカーボルト、 33…六角ナット、 34…平座金、 35…シール材、 40…柱、 41…上支持部、 42…上支持部。

Claims (4)

  1. 既存の鉄筋コンクリート製の梁に開孔を設け、前記梁の両側面の前記開孔の周囲に補強鋼板を接着すると共に、前記補強鋼板の少なくとも四隅近傍に設けたボルト孔によって前記梁側面に前記補強鋼板をボルトにて接合して補強する場合における、前記補強鋼板と前記ボルトからなる補強部材の設計方法であって、
    前記補強部材の必要補強せん断力を、前記開孔を設ける前の前記梁のせん断耐力と前記開孔を設けた後の前記梁のせん断耐力との差から求め、
    1接合面当たりの接合面せん断耐力を、前記ボルトの材種及び直径と、前記補強鋼板の有効接着面積、材種及び開孔芯の鉛直断面における断面積とから算出し、
    前記1接合面当たりの接合面せん断耐力が、前記補強鋼板の必要補強せん断力から算出される1接合面当たりの必要接合面せん断力以上であり、
    前記補強鋼板の最大耐力時において、ボルト孔で支圧破壊せず、前記開孔の上下部で降伏せず、かつ、前記開孔の上下部で座屈しないように、前記補強鋼板の形状を定めることを特徴とする補強部材の設計方法。
  2. 前記補強鋼板の四隅近傍に配置されるボルトのうち、対角位置に設けられた2つのボルトをつなぐ直線の方向におけるせん断による必要接合面せん断力と曲げによる梁材軸方向の必要接合面せん断力との合力ベクトル、及び、前記直線と梁材軸方向とのなす角について正弦値を求め、
    前記1接合面当たりの必要接合面せん断耐力を、前記補強鋼板の必要補強せん断力を上記正弦値の4倍した値で除した値として求めることを特徴とする請求項1に記載の補強部材の設計方法。
  3. 前記1接合面当たりの接合面せん断耐力を、固着力が十分な場合の接合面における1接合面当たりのせん断力と、固着力が不十分な場合の接合面における1接合面当たりのせん断力との最小値に、前記梁の梁せいと前記開孔の直径の比に基づく低減係数を乗じた値として求めることを特徴とする請求項1に記載の補強部材の設計方法。
  4. 前記梁に前記開孔を設ける前のせん断耐力を大野・荒川min式により算出し、前記開孔を設けた後の前記梁の補強前のせん断耐力を大野・荒川min式の変形式である修正広沢式より算出することを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の補強部材の設計方法。
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