本発明の一実施の形態に係る車両の制御装置は、エンジントルクを発生するエンジンと、モータトルクを発生するモータと、エンジンとモータとの間に配置され、シフトレバーに対するシフト操作によって変速段が変更される手動変速機と、エンジンと手動変速機との間に配置され、クラッチアクチュエータの作動により開放または係合されるクラッチと、を備える車両に搭載され、エンジンを停止し、クラッチを開放し、モータトルクによりドライバ要求トルクを満たして走行するEVモードと、エンジンを運転し、クラッチを係合し、エンジントルクとエンジントルクのうち少なくともエンジントルクによりドライバ要求トルクを満たして走行するHEVモードと、を有し、EVモードにおいてモータトルクによりドライバ要求トルクを満たすことができなくなった場合に、HEVモードに切替える制御部を備える車両の制御装置であって、制御部は、EVモード中であっても、シフト操作、またはクラッチペダルに対するクラッチ操作の少なくとも一方を伴い、モータトルクによりドライバ要求トルクを満たすことができなくなることが想定される所定の操作が行われた場合、エンジンの始動を開始することを特徴とする。
これにより、本発明の一実施の形態に係る車両の制御装置は、EVモードからHEVモードに切替わった直後におけるドライバ要求トルクへの車両の応答性の悪化を抑制できる。
以下、図面を参照して、本発明の実施例に係る制御装置を搭載した車両について詳細に説明する。なお、以下の説明で使用する回転数は、回転速度(rpm)を示す。
図1において、本発明の一実施例に係る車両1は、エンジン2と、モータとしての走行用のモータジェネレータ3と、手動変速機4と、ディファレンシャル5と、駆動輪6と、制御部としてのECU(Electronic Control Unit)10と、を含んで構成されている。
エンジン2には、複数の気筒が形成されている。本実施例において、エンジン2は、各気筒に対して、吸気行程、圧縮行程、膨張行程および排気行程からなる一連の4行程を行うように構成されている。エンジン2はエンジントルクを発生する。
エンジン2には、ISG(Integrated Starter Generator)20が連結されている。ISG20は、ベルト21などを介してエンジン2のクランクシャフトに連結されている。ISG20は、電力が供給されることにより回転してエンジン2を回転駆動させる電動機の機能と、クランクシャフトから入力された回転力を電力に変換する発電機の機能とを有する。
モータジェネレータ3は、インバータ30を介してバッテリ31から供給される電力によって車両の駆動力を発生する電動機としての機能と、ディファレンシャル5を介して駆動輪6から入力される回転力(逆駆動力)によって回生発電を行う発電機としての機能とを有する。モータジェネレータ3は、本発明におけるモータを構成しており、モータトルクを発生する。
インバータ30は、ECU10の制御により、バッテリ31から供給された直流電力を三相の交流電力に変換してモータジェネレータ3に供給したり、モータジェネレータ3によって生成された三相の交流電力を直流電力に変換してバッテリ31を充電したりする。バッテリ31は、例えばリチウムイオン電池などの二次電池によって構成されている。
手動変速機4は、エンジン2とモータジェネレータ3との間に配置されている。手動変速機4はシフトレバー40と機械的に連結されている。手動変速機4の変速段は、シフトレバー40に対するシフト操作によって変更される。
手動変速機4は、エンジン2からクラッチ7を介して入力軸8に入力される回転を複数の変速段のいずれかに応じた変速比で変速して出力軸9から出力する。本実施例では、手動変速機4は、平行軸歯車式の手動変速機により構成されている。
手動変速機4の出力軸9は、モータジェネレータ3に接続されている。モータジェネレータ3の出力軸3Aは、ディファレンシャル5を介して左右の駆動輪6に接続されている。このように、車両1は、手動変速機4とディファレンシャル5との間にモータジェネレータ3を備えている。車両1は、エンジン2とモータジェネレータ3との少なくとも一方の駆動力により走行可能なハイブリッド車両として構成されている。
手動変速機4で成立可能な変速段としては、例えば低速段である1速段から高速段である5速段までの前進用の変速段と、後進用の変速段とがある。走行用の変速段の段数は、車両1の諸元により異なり、上述の1速段から5速段に限られるものではない。
手動変速機4における変速段は、ドライバにより操作されるシフトレバー40の操作位置に応じて切り替えられるようになっている。シフトレバー40の操作位置は、1速段から5速段に対応する位置と、後進用の変速段に対応する位置と、何れの変速段も構成しないニュートラル状態に対応する位置とがあり、これらの位置がいわゆるH型のシフトパターンとなるように配置されている。手動変速機4における変速段は、ドライバのシフトレバー40の操作がケーブル等の伝達機構を介して変速機構に機械的に伝達されることにより変更される。
手動変速機4にはシフトポジションセンサ41が設けられており、シフトポジションセンサ41は、手動変速機4の変速段(ニュートラル位置を含む)を検出する。シフトポジションセンサ41は、ECU10に接続されており、検出結果をECU10に送信するようになっている。
なお、本実施例ではシフトレバー40が手動変速機4に機械的に連結されており、ECU10の制御による介入は行われないため、シフトレバー40の操作位置と手動変速機4の変速段は一致する。そのため、シフトポジションセンサ41を、手動変速機4に代わってシフトレバー40に設け、シフトレバー40の操作位置をシフトポジションセンサ41が検出してECU10に送信するようにしてもよい。
エンジン2と手動変速機4との間の動力伝達経路には、クラッチ7が設けられている。クラッチ7は、後述するクラッチアクチュエータ70の作動により開放または係合される、バイワイヤ式のクラッチである。クラッチ7としては、例えば乾式単板の摩擦クラッチを用いることができる。エンジン2と手動変速機4とは、クラッチ7を介して接続されている。
このように、手動変速機4は、クラッチ7を介してエンジン2から動力が入力軸8に伝達され、シフト操作により変速段を切替可能に構成されている。クラッチ7はクラッチディスクを備えており、クラッチディスクと手動変速機4の入力軸8とは、相互に連結されており、一体的に回転する。したがって、クラッチディスクの回転数は手動変速機4の入力軸8の回転数と等しい。
クラッチ7は、クラッチアクチュエータ70によって作動され、エンジン2と手動変速機4との間で動力を伝達する係合状態と、動力を伝達しない開放状態と、回転差のある状態でトルクが伝達される半クラッチ状態と、のいずれかに切り替えられるようになっている。クラッチアクチュエータ70は、ECU10に接続され、ECU10によって制御されるようになっている。
クラッチ7にはクラッチ回転数センサ43が設けられている。クラッチ回転数センサ43は、クラッチ7のクラッチディスクの回転数(以下、クラッチ回転数ともいう)を検出する。クラッチ回転数センサ43は、ECU10に接続されており、検出結果をECU10に送信するようになっている。
ECU10は、ドライバにより操作されるクラッチペダル71の踏み込み量に応じてクラッチアクチュエータ70を制御し、クラッチ7をマニュアルクラッチと同等の動作となるように制御する。また、ECU10は、ドライバのクラッチペダル71の操作に関わらすクラッチアクチュエータ70を制御し、クラッチ7の状態を変更することができる。
詳しくは、ECU10は、後述するHEVモードでは、クラッチペダル71の踏み込み量に応じてクラッチアクチュエータ70を制御し、後述するEVモードにおいては、クラッチペダル71の操作に関わらすクラッチ7を開放状態に維持するようにクラッチアクチュエータ70を制御する。このように、クラッチ7は、クラッチペダル71に対するクラッチ操作またはECU10の制御指令に応じて、クラッチアクチュエータ70の駆動により開放または係合される。したがって、クラッチ7は、クラッチペダル71とは機械的に連結されておらず、電気信号を介して駆動されるバイワイヤ式のクラッチである。
クラッチペダル71の踏み込み量は、クラッチペダルセンサ72によって検出される。クラッチペダルセンサ72は、ECU10に接続されており、クラッチペダル71の踏み込み量をクラッチペダルストローク量として検出し、そのクラッチペダルストローク量に応じた信号をECU10に送信するようになっている。
なお、本実施例では、クラッチ7からの負荷(図示しないダイヤフラムスプリングの復元力)がクラッチペダル71に作用しないため、このままではドライバはクラッチペダル71の操作感(踏みごたえ)を感じることができない。そこで、クラッチペダル71には擬似負荷装置71Aが設けられており、この擬似負荷装置71Aは、クラッチペダル71の操作時の負荷を模した擬似的な負荷をクラッチペダル71に作用させている。
車両1は、ドライバにより操作されるアクセルペダル90を備えている。アクセルペダル90の踏み込み量は、アクセル開度センサ91によって検出される。アクセル開度センサ91は、ECU10に接続されており、アクセルペダル90の踏み込み量をアクセル開度として検出し、当該アクセル開度に応じた信号をECU10に送信するようになっている。
車両1は、ドライバにより操作されるブレーキペダル92を備えている。ブレーキペダル92の踏み込み量は、ブレーキペダルセンサ93によって検出される。ブレーキペダルセンサ93は、ECU10に接続されており、ブレーキペダル92の踏み込み量に応じた信号をECU10に送信するようになっている。
ECU10は、CPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)と、バックアップ用のデータなどを保存するフラッシュメモリと、入力ポートと、出力ポートとを備えたコンピュータユニットによって構成されている。
コンピュータユニットのROMには、各種定数や各種マップ等とともに、当該コンピュータユニットをECU10として機能させるためのプログラムが格納されている。すなわち、CPUがRAMを作業領域としてROMに格納されたプログラムを実行することにより、コンピュータユニットは、本実施例におけるECU10として機能する。
ECU10には、上述したセンサ類のほか、車速センサ11が接続されている。車速センサ11は、車両1の車速を検出し、検出結果をECU10に送信するようになっている。
ECU10は、車両1の走行モードを切り替えるようになっている。ECU10は、EVモードとHEVモードと走行モードとして有しており、EVモードまたはHEVモードに切り替えを行う。
EVモードは、エンジン2を停止し、クラッチ7を開放し、モータジェネレータ3のモータトルクによりドライバ要求トルクを満たして車両1を走行させる走行モードである。EVモードでは、エンジン2が運転していないため、エンジン回転数がゼロに維持される。また、EVモードでは、クラッチ7が開放されているため、エンジン2がモータジェネレータ3に連れ回ることが防止される。
詳しくは、EVモードでは、ドライバのクラッチペダル71に対するクラッチ操作の有無に関わらず、クラッチ7の実クラッチ位置(実際のクラッチ7の位置)が開放位置に維持され、エンジン2と手動変速機4との間の動力伝達は遮断される。
HEVモードは、エンジン2を運転し、クラッチ7を係合し、エンジン2のエンジントルクとモータジェネレータ3のモータトルクのうち少なくともエンジントルクによりドライバ要求トルクを満たして車両1を走行させる走行モードである。つまり、HEVモードでは、エンジントルクのみを用いる走行、またはエンジントルクとモータトルクとの両方のトルクを用いる走行が行われる。
ECU10は、EVモードでの走行中にモータトルクによりドライバ要求トルクを満たすことができなくなった場合、EVモードからHEVモードに切替える。詳しくは、ECU10は、バッテリ31の充電状態等に応じて定まるモータジェネレータ3の発生可能なモータトルクの最大値であるモータ出力可能トルクが、ドライバ要求トルクを満たすことができなくなった場合(ドライバ要求トルクが増加してモータ出力可能トルクを超えた場合)に、HEVモードに切替える。
ドライバ要求トルクの増加に基づいてEVモードからHEVモードに切替わった場合、HEVモードへの切替え直後は、ドライバ要求トルクに対するモータトルクの不足分をエンジントルクにより補うように、ECU10がモータジェネレータ3およびエンジン2を制御する。
ここで、本実施例では、モータジェネレータ3の出力軸3A上に作用するトルクを車軸トルクという。また、手動変速機4とクラッチ7とを備える車両1にあっては、ドライバ要求トルクは、アクセル開度だけでなくクラッチペダル71の踏み込み量にも基づいて決定される。
例えば、クラッチペダル71が踏み込まれていない場合(踏み込み量が0%の場合)はアクセル開度の大きさがドライバ要求トルクの大きさを意味するが、例えば、クラッチペダル71の踏み込み量が50%(クラッチ7の締結度および伝達トルクが50%であるものとする)の場合は、ドライバ要求トルクはクラッチペダル71が踏み込まれていない場合の50%の値となる。そのため、本明細書では、アクセル開度とクラッチペダル71の踏み込み量とから決定されるドライバ要求トルクを、クラッチ制限後車軸要求トルクという。
HEVモードへの切替え直後に仮にエンジン2がまだ始動を完了していなかった場合(始動途中である場合)、エンジントルクを走行用の駆動源として用いることができず、ドライバ要求トルクに対するモータトルクの不足分をエンジントルクにより十分に補うことができない。その場合、ドライバ要求トルクへの車両1の応答性が悪化することがある。このような状態は、ドライバにとっては、車両1が加速を躊躇(Hesitate)しているように感じるため、「ヘジ」と呼ばれる。ヘジの発生はドライバビリディを損なうため、これを抑制することが望ましい。
なお、エンジン2の始動(図示しないスタータによるクランキング)を開始してから、エンジントルクを走行用の駆動源として用いることができるようになるまでの期間には、エンジン2の始動を開始してから始動が完了するまでの期間(始動期間)と、クラッチ回転数と一致するようにエンジン回転数を増加させて回転合わせを行う期間(回転合わせ期間)とが含まれる。また、クラッチ回転数へのエンジン回転数の回転合わせは、エンジン2の始動が完了したことを条件に開始される。
図6に示す比較例は、HEVモードへの切替え直後にドライバ要求トルクへの車両の応答性が悪化する場合を示すタイミングチャートである。図6は、EVモード中にドライバが車両の大きな加速を求めて変速段をダウンシフトするとともにアクセルペダル90を大きく踏み込んだことにより、HEVモードへの切替えが行われた場合の車両状態の推移を表している。
図6の縦軸は、上から、変速段(図中、ギヤ段と記す)、クラッチ回転数、エンジン回転数、クラッチペダル71の踏み込み状態(図中、クラッチペダルと記す)、実クラッチ位置、アクセル開度、クラッチ制限後車軸要求トルク、モータトルク(図中、モータ出力トルクと記す)、車軸トルク、走行モードを表しており、横軸は時間の推移を表している。なお、クラッチ制限後車軸要求トルクを実線で表し、モータトルクを破線で表し、車軸トルクを一点鎖線で表す。
時刻t11より前の初期状態において、車両1はEVモードで走行している。このEVモードでは、クラッチペダル71は、踏み込まれていないリリース位置(図中、リリースと記す)にされているが、実クラッチ位置は、クラッチアクチュエータ70の駆動によって開放位置(図中、オープンと記す)に保たれている。また、エンジン2が運転していないため、エンジン回転数がゼロに維持されている。また、変速段が5速段に設定され、アクセル開度は一定開度(例えば、50%)に保たれている。また、ドライバ要求トルクとしてのクラッチ制限後車軸要求トルクがモータトルクにより満たされており、車軸トルクの値がモータトルクと同じ値となっている。
その後、ドライバは、車両1を加速させるためのダウンシフト操作として、時刻t11でクラッチペダル71を、最大に踏み込んだ位置であるプレス位置(図中、プレスと記す)に踏み込み、時刻t12で変速段をニュートラルに切替え、時刻t13で変速段を3速段(または4速段)に切替えるとともにクラッチペダル71をリリース位置に戻し始め、時刻t15でクラッチペダル71をリリース位置に戻し終わっている。
そして、クラッチペダル71の解放途中の時刻t14において、モータトルクがモータ出力可能トルクに到達し、クラッチ制限後車軸要求トルクをモータトルクだけで満たすことができなくなっている。このため、時刻t14でEVモードからHEVモードへの切替えが行われ、エンジン2の始動(クランキング)が開始される。
その後、時刻t15で、エンジン2の始動が完了する。そして、エンジン2の始動の完了後、クラッチ回転数との回転合わせのためにエンジン回転数が増加される。その後、時刻t16で、エンジン回転数がクラッチ回転数と一致し、回転合わせが完了する。
その後、時刻t17で、クラッチアクチュエータ70の駆動によってクラッチ7が締結され、実クラッチ位置が締結位置(図中、クローズと記す)にされる。これにより、時刻t17では、クラッチ制限後車軸要求トルクに対するモータトルクの不足分をエンジントルクにより補うことができる。
したがって、図6の比較例では、時刻t14でHEVモードへの切替えが行われてから、時刻t17でクラッチ7の締結が完了するまでの期間は、エンジントルクを走行用の駆動源として用いることができないので、クラッチ制限後車軸要求トルクに対して車軸トルクが不足し、ドライバ要求トルクへの車両1の応答性が悪化してしまう。言い換えれば、HEVモードへの切替え直後にヘジが発生してしまう。
そこで、本実施例では、EVモードからHEVモードに切替わった直後におけるドライバ要求トルクへの車両の応答性の悪化を抑制するため、HEVモードへの切替えが想定される操作がドライバにより行われた場合、HEVモードへの切替えに先立って予めエンジン2の始動を開始しておくようになっている。HEVモードへの切替えが想定される操作とは、モータトルクによりドライバ要求トルクを満たすことができなくなることが想定される所定の操作である。
ここで、モータトルクによりドライバ要求トルクを満たすことができなくなることが想定される所定の操作としては、先行車両の追い越し等のための、大きな加速を求める運転操作がある。大きな加速を求める運転操作としては、変速段を2段以上低速側の変速段にダウンシフト(例えば、5速段から3速段への飛び変速)してアクセルペダル90を踏み込む操作がある。本実施例では、この操作が行われた場合のECU10の動作について説明する。なお、大きな加速を求める運転操作には、変速段を1段だけ低速側の変速段にダウンシフト(例えば、5速段から4速段への変速)してアクセルペダル90をより大きく踏み込む操作もあり、この操作が行われた場合のECU10の動作については第2実施例で説明する。
本実施例において、ECU10は、EVモード中であっても、シフト操作、またはクラッチペダル71に対するクラッチ操作の少なくとも一方を伴い、モータトルクによりドライバ要求トルクを満たすことができなくなることが想定される所定の操作が行われた場合、エンジン2の始動を開始する。所定の操作は、2段以上低速側の変速段にダウンシフトするシフト操作である。例えば、所定の操作は、5速段から3速段へダウンシフトするシフト操作である。
ただし、シフト操作、またはクラッチペダル71に対するクラッチ操作の少なくとも一方を伴う所定の操作が行われている場合であっても、ブレーキ操作も行われている場合は、ドライバが車両1の減速のための操作をしている状況であり、モータトルクによりドライバ要求トルクを満たすことができなくなることが想定される操作ではない。
そこで、ECU10は、EVモード中に所定の操作が行われた場合であっても、ブレーキペダル92に対するブレーキ操作も行われている場合は、エンジン2の始動を開始しないようになっている。
以上のように構成された本実施例に係る車両の制御装置の動作時の車両状態の推移について、図2のタイミングチャートを参照して説明する。図2は、EVモード中にドライバが車両の大きな加速を求めて変速段を2段以上低速側の変速段にダウンシフトするとともにアクセルペダル90を踏み込んだことにより、HEVモードへの切替えに先立ってエンジン2が始動される場合の車両状態の推移を表している。図2の縦軸は、上から、変速段、クラッチ回転数、エンジン回転数、クラッチペダル71の踏み込み状態(図中、クラッチペダルと記す)、実クラッチ位置、アクセル開度、クラッチ制限後車軸要求トルク、モータトルク(図中、モータ出力トルクと記す)、車軸トルク、走行モードを表しており、横軸は時間の推移を表している。なお、クラッチ制限後車軸要求トルクを実線で表し、モータトルクを破線で表し、車軸トルクを一点鎖線で表す。
時刻t21より前の初期状態において、車両1はEVモードで走行している。このEVモードでは、クラッチペダル71は踏み込まれておらず、リリース位置(図中、リリースと記す)にされているが、実クラッチ位置は、クラッチアクチュエータ70の駆動によって開放位置(図中、オープンと記す)に保たれている。また、エンジン2が運転していないため、エンジン回転数がゼロに維持されている。また、変速段が5速段に設定され、アクセル開度は一定開度(例えば、50%)に保たれている。また、ドライバ要求トルクとしてのクラッチ制限後車軸要求トルクがモータトルクにより満たされており、車軸トルクの値がモータトルクと同じ値となっている。
その後、ドライバは、車両1を加速させるためのダウンシフト操作として、時刻t21でクラッチペダル71を、最大に踏み込んだ位置であるプレス位置(図中、プレスと記す)に踏み込み、時刻t22で変速段を5速段からニュートラルに切替え、時刻t23で変速段をニュートラルから3速段に切替えるとともに、クラッチペダル71をリリース位置に戻し始め、時刻t25でクラッチペダル71をリリース位置に戻し終わっている。
そして、クラッチペダル71の解放途中の時刻t24において、モータトルクがモータ出力可能トルクに到達し、クラッチ制限後車軸要求トルクをモータトルクだけで満たすことができなくなっている。このため、時刻t24で、ECU10は、EVモードからHEVモードへの切替えを行う。
ECU10は、HEVモードへの切替えを行う前のタイミングである時刻t23で、変速段がニュートラルから3速段に切替えられたことに応じて、HEVモードへの切替えに先立ってエンジン2の始動(図中、クランキングと記す)を開始する。
その後、時刻t24で、エンジン2の始動が完了する。そして、エンジン2の始動が完了したため、ECU10は、クラッチ回転数との回転合わせのためにエンジン回転数を増加させる。その後、時刻t25で、エンジン回転数がクラッチ回転数と一致し、回転合わせが完了する。
その後、時刻t26で、ECU10は、クラッチアクチュエータ70を駆動してクラッチ7を締結する。これにより、実クラッチ位置が締結位置(図中、クローズと記す)にされる。クラッチ位置が締結位置にされたことにより、時刻t26では、クラッチ制限後車軸要求トルクに対するモータトルクの不足分をエンジントルクにより補うことができる。
したがって、本実施例では、HEVモードへの切替え直後のヘジが発生する期間は、エンジン2の始動開始(時刻t23)から完了(時刻t24)までの期間を含んでおらず、エンジン2の回転合わせの開始(時刻t24)から完了(時刻t25)までの期間だけとなる。このため、EVモードからHEVモードに切替わった直後におけるドライバ要求トルクへの車両1の応答性の悪化を抑制できる。
以上のように、本実施例では、ECU10は、EVモード中であっても、シフト操作、またはクラッチペダル71に対するクラッチ操作の少なくとも一方を伴い、モータトルクによりドライバ要求トルクを満たすことができなくなることが想定される所定の操作が行われた場合、エンジン2の始動を開始する。
これにより、モータトルクによりドライバ要求トルクを満たすことができなくなることが想定される所定の操作がドライバにより行われた場合、EVモードへ切替えに先立って予めエンジン2の始動が開始される。
そのため、EVモードへの切替え時にエンジン2の始動を完了させておくことができ、EVモードへの切替え直後において、ドライバ要求トルクに対するモータトルクの不足分をエンジントルクにより補うことができる。このため、EVモードへの切替え直後において、エンジントルクの不足量と不足期間を低減でき、いわゆるヘジの発生を抑制できる。
この結果、EVモードからHEVモードに切替わった直後におけるドライバ要求トルクへの車両の応答性の悪化を抑制できる。
また、本実施例では、所定の操作は、2段以上低速側の変速段にダウンシフトするシフト操作である。
これにより、ドライバが、車両1の大きな加速を求めて、クラッチ7の開放操作をし、変速段を5速段から3速段にダウンシフトし、アクセルペダル90を踏み込んだ状態でクラッチの締結操作をした場合、3速段へのダウンシフトが行われたタイミングでエンジン2の始動が開始される。そのため、クラッチ7の締結操作をしたことに基づいてHEVモードへの切替えが行われる時に、エンジン2の始動を完了させておくことができる。
したがって、EVモードからHEVモードに切替わった直後におけるドライバ要求トルクへの車両の応答性の悪化を抑制できる。
また、本実施例では、ECU10は、EVモード中に所定の操作が行われた場合であっても、ブレーキペダル92に対するブレーキ操作も行われている場合は、エンジン2の始動を開始しない。
このように、ブレーキ操作を伴うダウンシフトは、車両の加速のための操作ではなく、停車へ移行するための操作であり、ドライバ要求トルクの増加によりHEVモードへ移行することが想定されないので、不必要なエンジン2の始動を行わないことにより燃費の悪化を回避できる。
次に、第2実施例に係る車両の制御装置について説明する。本実施例は、図1の構成の車両1においてECU10の動作の一部を異ならせたものである。以下、第1実施例と異なる部分について説明する。
HEVモードへの切替えが想定される運転操作としては、EVモードで走行中に、ドライバが、先行車両の追い越し等のために大きな加速を求めて運転操作を行う場合があり、大きな加速を求める運転操作には、変速段を1段だけ低速側の変速段にダウンシフト(例えば、5速段から4速段)してアクセルペダル90をより大きく踏み込む操作もある。
本実施例において、所定の操作は、クラッチ操作と、アクセルペダル90に対する所定閾値以上の量のアクセル操作とが同時に行われることとしている。
ここで、ドライバは、車両1を加速させるためではなくダウンシフト時のエンジン回転数の回転合わせを目的に、アクセルペダル90に対する所定閾値以上の量のアクセル操作を行うこともある。例えば、ダウンシフト操作中に、ドライバは、クラッチ回転数へのエンジン回転数の回転合わせを目的として、短時間だけアクセルペダル90を踏み込む操作(ブリッピング)を行うことがある。このブリッピングは、手動変速機4の変速を円滑に行うことを目的とした操作であり、車両1を加速させることを目的とした操作ではない。また、本実施例の車両1は、EVモード中はエンジン2の運転が停止しており、ブリッピングは不要であるが、不要なブリッピングがドライバの習慣により行われることがある。
そこで、ECU10は、EVモード中に所定の操作が行われた場合であっても、アクセル操作の量が所定閾値以上である時間が所定時間未満の場合は、エンジン2の始動を開始しないようになっている。
以上のように構成された本実施例に係る車両の制御装置の動作時の車両状態の推移について、図3のタイミングチャートを参照して説明する。図3は、EVモード中にドライバが車両の大きな加速を求めて変速段を1段低速側の変速段にダウンシフトするとともにアクセルペダル90を大きく踏み込んだことにより、HEVモードへの切替えに先立ってエンジン2が始動される場合の車両状態の推移を表している。図3の縦軸は、上から、変速段、クラッチ回転数、エンジン回転数、クラッチペダル71の踏み込み状態(図中、クラッチペダルと記す)、実クラッチ位置、アクセル開度、クラッチ制限後車軸要求トルク、モータトルク(図中、モータ出力トルクと記す)、車軸トルク、走行モードを表しており、横軸は時間の推移を表している。なお、クラッチ制限後車軸要求トルクを実線で表し、モータトルクを破線で表し、車軸トルクを一点鎖線で表す。
時刻t31より前の初期状態において、車両1はEVモードで走行している。このEVモードでは、クラッチペダル71は踏み込まれておらず、リリース位置(図中、リリースと記す)にされているが、実クラッチ位置は、クラッチアクチュエータ70の駆動によって開放位置(図中、オープンと記す)に保たれている。また、エンジン2が運転していないため、エンジン回転数がゼロに維持されている。また、変速段が5速段に設定され、アクセル開度は一定開度(例えば、50%)に保たれている。また、ドライバ要求トルクとしてのクラッチ制限後車軸要求トルクがモータトルクにより満たされており、車軸トルクの値がモータトルクと同じ値となっている。
その後、ドライバは、車両1を加速させるためのダウンシフト操作として、時刻t31でクラッチペダル71を、最大に踏み込んだ位置であるプレス位置(図中、プレスと記す)に踏み込み、時刻t32で変速段を5速段からニュートラルに切替え、時刻t34で変速段をニュートラルから4速段に切替えるとともに、クラッチペダル71をリリース位置に戻し始め、時刻t37でクラッチペダル71をリリース位置に戻し終わっている。
その後、クラッチペダル71の解放途中の時刻t35において、モータトルクがモータ出力可能トルクに到達し、クラッチ制限後車軸要求トルクをモータトルクだけで満たすことができなくなっている。このため、ECU10は、時刻t35でEVモードからHEVモードへの切替えを行う。
HEVモードへの切替えが行われる前のタイミングである時刻t33で、アクセル開度が所定閾値としてのアクセル開度閾値以上に増加している。したがって、クラッチ操作と、アクセルペダル90に対する所定閾値以上の量のアクセル操作とが同時に行われたため、ECU10は、時刻t33でエンジン2の始動(図中、クランキングと記す)を開始する。
その後、エンジン2の始動が完了し、時刻t36で、エンジン回転数がクラッチ回転数と一致し、回転合わせが完了する。
その後、時刻t37で、ECU10は、クラッチアクチュエータ70を駆動してクラッチ7を締結する。これにより、実クラッチ位置が締結位置(図中、クローズと記す)にされる。そのため、時刻t37では、クラッチ制限後車軸要求トルクに対するモータトルクの不足分をエンジントルクにより補うことができる。
したがって、本実施例では、HEVモードへの切替え直後のヘジが発生する期間は、エンジン2の始動開始(時刻t33)からHEVモードへの切替えタイミング(時刻t35)までの期間を含んでおらず、HEVモードへの切替えタイミング(時刻t35)からエンジン2の回転合わせの完了(時刻t37)までの期間だけとなる。このため、EVモードからHEVモードに切替わった直後におけるドライバ要求トルクへの車両1の応答性の悪化を抑制できる。
図4は、EVモードにおける惰性走行中に、ドライバが車両の減速を目的として変速段を1段低速側の変速段にダウンシフトするとともにアクセルペダル90をブリッピングした場合の車両状態の推移を表している。図4の縦軸は、上から、変速段、クラッチ回転数、エンジン回転数、クラッチペダル71の踏み込み状態(図中、クラッチペダルと記す)、実クラッチ位置、アクセル開度、クラッチ制限後車軸要求トルク、モータトルク(図中、モータ出力トルクと記す)、車軸トルク、走行モードを表しており、横軸は時間の推移を表している。なお、クラッチ制限後車軸要求トルクを実線で表し、モータトルクを破線で表し、車軸トルクを一点鎖線で表す。
時刻t41より前の初期状態において、車両1はEVモードで走行している。このEVモードでは、クラッチペダル71は踏み込まれておらず、リリース位置(図中、リリースと記す)にされているが、実クラッチ位置は、クラッチアクチュエータ70の駆動によって開放位置(図中、オープンと記す)に保たれている。また、エンジン2が停止しているため、エンジン回転数がゼロに維持されている。また、変速段が5速段に設定され、アクセル開度は一定開度(例えば、0%)に保たれている。また、ドライバ要求トルクとしてのクラッチ制限後車軸要求トルクがモータトルクにより満たされており、車軸トルクの値がモータトルクと同じ値となっている。
その後、ドライバは、車両1の減速のため、時刻t41でクラッチペダル71のプレス位置(図中、プレスと記す)への踏み込みを開始し、時刻t42でクラッチペダル71の踏み込みを完了し、時刻t43で変速段を5速段からニュートラルに切替え、時刻t44で変速段をニュートラルから4速段に切替えるとともに、クラッチペダル71をリリース位置に戻し始め、時刻t46でクラッチペダル71をリリース位置に戻し終わっている。
また、変速段がまだニュートラル位置にある時刻t44において、ドライバのブリッピングによりアクセル開度が短時間だけアクセル開度閾値以上となっている。アクセル開度は、時刻t44から、所定時間よりも短い期間T1の期間にわたってアクセル開度閾値以上となっている。
このように、図4では、EVモード中に所定の操作としての、クラッチ操作と、アクセルペダル90に対する所定閾値以上の量のアクセル操作とが同時に行われている。しかし、アクセル操作の量が所定閾値以上である時間が所定時間未満であったため、エンジン2の始動が開始されない。
ここで、アクセル開度(アクセルペダル90の踏み込み量)の検出手法としては、所望の先読み期間後のアクセル開度を推定する「先読み」の手法を採用し、この先読みの手法により得られた「先読み値」を現時点から先読み期間後のアクセル開度の値として用いることができる。アクセル開度の先読み値の推定方法は公知の手法を用いることができる。
アクセル開度の先読み値の推定方法として、図5に示す手法を用いることができる。図5において、縦軸はアクセル開度を表し、横軸は時間の推移を表している。図5に示すように、現時点P4から所望の先読み期間後の時点P5でのアクセル開度の推定値は、現時点P4から所定時間(図5では30m秒)遡った期間の各地点P1、P2、P3の間のアクセル開度の変化量(%/ms)の平均値に、先読み期間を乗算し、この乗算した値を現地点P4でのアクセル開度に加算することにより算出することができる。そして、実際のアクセル開度に代わって、アクセル開度の先読み値に基づいてエンジン2の始動を開始するか否かを判断することにより、ドライバの意図を更に早いタイミングで検出できるようになり、エンジン2の始動を更に早いタイミングで開始できるようになるので、ヘジの発生をより抑制できる。
以上のように、本実施例では、所定の操作は、クラッチ操作と、アクセルペダル90に対する所定閾値以上の量のアクセル操作とが同時に行われることである。
これにより、ドライバが、車両1の加速を求めて、クラッチの開放操作をし、変速段を5速段から4速段にダウンシフトし、アクセルペダル90を所定閾値以上に大きく踏み込んだ状態でクラッチ7の締結操作をした場合、アクセルペダル90が所定閾値以上に踏み込まれたタイミングでエンジン2の始動が開始される。そのため、クラッチ7の締結操作をしたことに基づいてHEVモードへの切替えが行われる時に、エンジン2の始動を完了させておくことができる。
また、本実施例では、ECU10は、EVモード中に所定の操作が行われた場合であっても、アクセル操作の量が所定閾値以上である時間が所定時間未満の場合は、エンジン2の始動を開始しない。
これにより、ダウンシフト操作中に短時間だけアクセルペダル90を踏み込む操作であるブリッピングは、車両1の加速のための操作ではなく、変速段の変更を円滑に行うための操作であり、ドライバ要求トルクの増加によりHEVモードへ移行することが想定されないので、不必要なエンジン2の始動による燃費の悪化を回避できる。
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正及び等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。