本発明の一実施形態について詳細に説明する。なお、以下の実施形態は本発明の一例を示したものであって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。また、以下の実施形態には種々の変更又は改良を加えることが可能であり、その様な変更又は改良を加えた形態も本発明に含まれ得る。
<研磨装置>
図1は、本発明を適用した研磨装置の一例を示す概略構成図である。
研磨装置1は、手動用ポリッシャーを含んで構成され得る。研磨装置1は、駆動部2と、駆動部2に設けられ、研磨装置1を把持するためのハンド部3a、3bと、研磨パッド取り付け部4と、研磨パッド5と、冷却装置支持部6と、冷却装置7とを備える。なお、図1中、Wは研磨対象物であり、例えば、塗膜を含む樹脂製の、車両の車体塗装面等である。研磨装置1は、例えばシングル回転の電動ポリッシャーで構成される。研磨装置1は、電動駆動、エア駆動、ギア駆動のポリッシャーで構成されていてもよく、又、シングル回転、ダブルアクション回転のポリッシャーであってもよい。
駆動部2は例えば略直方体形状を有し、駆動部2の長手方向一端寄りの位置に、駆動部2の長手方向と直交するように研磨パッド取り付け部4の一端が設けられている。研磨パッド取り付け部4の他端には、円盤状の研磨パッド5に対して研磨パッド取り付け部4が垂直となるように、研磨パッド5の中央部分が取り付けられ、研磨パッド取り付け部4を介して駆動部2によって、研磨パッド5を回転駆動するようになっている。また、駆動部2にはその長手方向に沿って冷却装置支持部6の一端が取り付けられ、冷却装置支持部6の他端には、冷却装置7が取り付けられている。
<研磨パッド>
研磨パッド5は特に限定されるものではないが、例えば、研磨面を有する層を備えている。その研磨面を有する層(研磨層)は、例えば、不織布、スウェード、又は樹脂繊維を含むシート状物で構成されていてもよい。なお、不織布パッドは、繊維のみ、又は繊維を樹脂で含浸して構成されていてもよい。
研磨面を有する層は、不織布からなる場合、疎密構造を有していてもよく、その疎の部分の割合が52%以上96%以下であってもよい。また、研磨面はJIS K 6253に準ずる方法で測定されたA硬度が30以上であるシート素材で構成してもよい。換言すると、研磨パッド5は、研磨面を有する層を備え、その研磨面を有する層は、例えば、繊維の集合体からなるシート素材で構成されており、その研磨面の疎の部分の割合が52%以上96%以下であり、且つJIS K 6253に準ずる方法で測定されたA硬度が30以上である。繊維の集合体である場合、疎の部分とは、繊維と繊維との間の空隙(細孔)部分である。
研磨パッド5において、研磨面を有する層は、例えば、合成樹脂からなる繊維を含んでおり、その合成樹脂は、ナイロン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アラミド樹脂、ポリイミド樹脂、又はポリエチレン樹脂を含有する素材で構成されていてもよい。
研磨パッド5において、例えば、研磨面を有する層の研磨面とは反対側の面に、研磨面を有する層を支持する支持層をさらに備えている。研磨面を有する層を支持する支持層は、樹脂製の弾性体で構成されていてもよい。また、2層以上の多層構造を有するものであってもよい。
研磨パッド5において、例えば、研磨面を有する層よりも、研磨面を有する層を支持する層の方が、JIS K 6253に準ずる方法で測定されたA硬度が低くてもよい。
このように、研磨パッド5として、研磨面を形成する硬質の層と、この硬質の層を支持する軟質の層と、を含む2層構造の研磨パッド5に形成することにより、研磨面が樹脂塗装面の曲面に押し当てられた場合に、曲面に応じて軟質の層が歪むことによって硬質の層が撓み、研磨面が樹脂塗装面の曲面に追従する傾向がある。
以下、研磨パッド5の一例として、研磨面を形成する硬質の層と、この硬質の層を支持する軟質の層とを含む2層構造を有する研磨パッド5の構成例を説明する。以下の説明では、研磨面を形成する硬質の層を単に「硬質の層」と表記し、硬質の層を支持する軟質の層を単に「軟質の層」と表記する。なお、本実施形態において「硬質の層」と「軟質の層」とは、相対的な層の性質を表すものである。つまり、上記硬質とは、一方の層である「研磨面を形成する層」の硬度が、他方の層である「研磨面を有する層を支持する層」の硬度よりも高いことを意味するものである。これとは逆に、上記軟質とは、他方の層である「研磨面を有する層を支持する層」の硬度が、一方の層である「研磨面を形成する層」の硬度よりも低いことを意味するものである。
研磨パッド5の構造の一例を、図2の(a)、(b)に基づいて説明する。図2(a)は研磨パッド5の斜視図、図2(b)は図2(a)のA-A断面図である。
研磨パッド5は、硬質の層140と、軟質の層150とを含む2層構造を有してもよい。硬質の層140は、例えば研磨パッド5の研磨面130を有する。研磨パッド5のうち、少なくとも硬質の層140は研磨面に対して垂直に見て円形に形成される。
軟質の層150は、硬質の層140を支持し、且つ研磨面130が樹脂塗装面の曲面に押し当てられた場合に曲面に応じて歪む。このため、硬質の層140が曲面に沿って撓み、研磨面130が樹脂塗装面の曲面に追従する傾向がある。
(硬質の層について)
硬質の層140は、不織布からなる場合、研磨面130の疎部の面積率が52%以上96%以下であるシート素材で構成されてもよく、疎部の面積率が54%以上96%以下であるシート素材で構成されていれば好ましく、60%以上96%以下であるシート素材で構成されていればより好ましい。このような範囲であれば、研磨パッドの研磨面及び研磨対象物の被研磨面の界面への、後述する研磨用組成物の保持力が向上し、十分な研磨速度を得ることが可能である。以降、研磨パッドの研磨面及び研磨対象物の被研磨面の界面を、研磨界面と記す場合がある。なお、疎部の面積率が52%未満では、研磨用組成物の研磨界面への保持力が低下し、研磨速度が低下する傾向がある。シート素材に、図3(a)に示すような溝部131を形成する場合には、溝部131の無い研磨接触面の疎部の面積率が52%以上96%以下であればよい。
疎部の面積率の調整方法は特に限定させるものではなく、例えば不織布シートの場合、繊維の太さ、繊維の含有量、含浸される樹脂の量、表面のパターニング等によって調整してもよく、細長い材料を交差するように並べた構造であるメッシュ構造の場合、構造材の直径、構造の間隔、積層条件等により調整してもよく、発泡剤等を用いて内部に空隙を発生させる発泡構造体の場合、発泡剤の種類、量等によって調整してもよく、湿式製膜方法により形成されるスウェードの場合、製膜条件、バフィング条件によって調整してもよい。
硬質の層140の疎部の面積率は、例えば、研磨パッドの表面を顕微鏡で測定したものを画像解析することによって求めることができる。具体的には、研磨パッドの表面を形状解析レーザ顕微鏡(例えば、株式会社キーエンス製のVK-X200)を用いて観察し、視野角1.4mm×1.4mm、高さ方向0.1mmの範囲を倍率200倍(対物10倍、接眼20倍)で任意の10点を測定し、画像解析ソフトウェア(例えば、三谷商事株式会社製のWinROOF2018)を用いてモノクロ化し、自動での2値化をしたものの全体の面積に対する空白の面積の割合を算出することで求めることができる。つまり、上記「疎部」とは、研磨パッド5の最表面から深さ0.1mmの範囲内に研磨パッド5を構成する繊維等が存在していない部分である。換言すると、研磨面130を有する層は、その最表面から厚さ0.1mmの範囲内における空隙部の面積の割合が52%以上96%以下であってもよい。ここで、上記「面積」とは、研磨面130を有する層を厚さ方向に見た場合の面積をいう。
硬質の層140の硬度は、JIS K 6253に準ずる方法で測定されたA硬度で30以上であればよく、40以上であることがより好ましい。このような範囲であれば、研磨パッド5による樹脂塗装面の曲面の研磨が、樹脂塗装面の微細な凹凸形状にまで追従するならい研磨になりにくくなり、樹脂塗装面の表面のうねりを取り除くことが可能になる。なお、硬質の層140のA硬度が30未満では、硬質の層140のうねり解消性が低下し良好な表面状態とならない傾向がある。また、JIS K 6253に準ずる方法で測定されるA硬度の最大値は、100である。
なお、A硬度は、不織布シートの場合、繊維の材質、繊維の太さ、繊維の含有量、含浸される樹脂の量、含浸される樹脂の硬さ等によって調整することができる。
硬質の層140のA硬度は、JIS K 6253に準ずる方法で測定することができる。例えば、ゴム硬度計(ASKER社製 AL型)を定圧荷重器(ASKER社製 CL-150L)に装着して、定圧荷重器に試験片を平行に維持されるように置き、衝撃を与えないようにゴム硬度計AL型を試験片に接触させる。この時の加圧面に加える質量は1kgとし、接触後15秒後のゴム硬度計AL型の数値を読み取り、3mm間隔で5点測定した中の最も小さい値を採用することにより測定することができる。
硬質の層140の材質は特に限定されず、硬質の層140としては、例えば、ポリウレタンタイプ、発泡ポリウレタンタイプ、不織布タイプ、スウェードタイプ等の材質の違いの他、その硬度や厚みなどの物性の違い、さらに砥粒を含むもの、砥粒を含まないものなど種々あるが、これらを制限なく使用することができる。特に、硬質の層140の材質は、例えば、不織布であってもよく、樹脂繊維を含むシート状物が好ましい。換言すると、研磨面130の密の部分は繊維と樹脂を含む材質で構成されていてもよい。
また、硬質の層140の材質は、合成樹脂を含んだ材質であってもよい。硬質の層140に含まれる合成樹脂は、例えば、ナイロン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アラミド樹脂、ポリイミド樹脂、又はポリエチレン樹脂の少なくとも1種を含有する素材で構成されていてもよい。上記の材質であれば、研磨対象物の被研磨面に対し、深いキズ(スクラッチ)を低減させることができる。硬質の層140の樹脂繊維の具体例としては、ナイロン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエチレン樹脂が好ましく、ナイロン樹脂、ポリエステル樹脂がより好ましい。また、硬質の層140の合成樹脂の硬化は、硬化剤により行ってもよいし、熱により行ってもよい。
硬質の層140の樹脂繊維の太さは、特に限定されるものではないが、1デニール以上であることが好ましく、10デニール以下であることが好ましい。また、樹脂繊維の太さの種類は1種でもよいし、樹脂繊維の太さの種類が異なるものを2種以上混合させてもよい。
硬質の層140の厚さは、特に限定されるものではないが0.05cm以上であることが好ましい。また、0.5cm以下であることが好ましい。硬質の層140の厚さはこのような範囲であれば、研磨面130が樹脂塗装面の曲面に押し当てられた場合に硬質の層140が樹脂塗装面の曲面に沿って撓みやすくなり、研磨対象物の曲面に対する研磨面130の追従性が向上する傾向がある。このため、研磨対象物の表面形状のうねり成分を取り除くことができ、且つ研磨面130と曲面との接触面積が増えて研磨効率が向上する傾向がある。
(軟質の層について)
軟質の層150は、例えば、硬質の層140の研磨面130とは反対側の面に硬質の層140を支持するように設けられた層である。軟質の層150は、弾性体であってもよく、樹脂製の弾性体であることが好ましい。
軟質の層150の硬度は、JIS K 6253に準ずる方法で測定されたA硬度で60未満であることが好ましく、30以下であることがより好ましい。つまり、軟質の層150のA硬度は、硬質の層140のA硬度よりも低い。このような範囲であれば、研磨面130が樹脂塗装面の曲面に押し当てられた場合に軟質の層150が歪みやすくなる。この結果、硬質の層140が樹脂塗装面の曲面に沿って撓みやすくなり、研磨対象物の曲面に対する研磨面130の追従性が向上する傾向がある。その結果、研磨面130と曲面との接触面積が増えて研磨効率が向上しやすくなる。
軟質の層150のA硬度は、例えば、ゴム硬度計(ASKER社製 A型)を定圧荷重器(ASKER社製 CL-150L)に装着して、JIS K 6253に準ずる方法で、3mm間隔で5点測定した中の最も大きい値を採用することにより測定することができる。
また、軟質の層150の硬さはF硬度(高分子計器株式会社製「アスカーゴム硬度計F型」で測定した硬度)で30以上90以下であることが好ましく、30以上70未満であることがより好ましく、40以上60以下であることがさらに好ましい。アスカーゴム硬度計F型は、特に軟らかい試料の硬さ測定で適切な指示値が得られるよう、大きなインデンタと加圧面を持ったデュロメータであり、押針の形状は高さ2.54mm直径25.2mmの円筒形である。
軟質の層150の厚さは、特に限定されるものではないが0.50cm以上であることが好ましい。また、軟質の層150の厚さは、5.0cm以下であることが好ましい。このような範囲であれば、研磨面130が樹脂塗装面の曲面に押し当てられた場合に、軟質の層150の歪み量と硬質の層140の撓み量を確保することができる。
軟質の層150の材質は、特に限定されないが、上記の硬度を有する材質を用いることができる。軟質の層150の材質は、例えば、ポリウレタン発泡体又はポリエチレン発泡体等の樹脂発泡体であってもよい。
(その他の研磨パッドの特徴)
研磨パッド5の研磨面130を有する層(硬質の層140)の径の大きさは特に限定されるものではなく、研磨パッド取り付け部4の径と同じでも、研磨パッド取り付け部4の径より大きくても良い。研磨パッド5の径が研磨パッド取り付け部4の径よりも大きい場合は、研磨対象物を研磨する際の圧力分布がより均一となり、また研磨時の取扱いの容易性が向上するため好ましい。例えば、研磨パッド5の径の研磨パッド取り付け部4の径に対する比が1.04倍以上2倍以下であることが好ましく、1.04倍以上1.6倍以下であることがより好ましく、1.1倍以上1.3倍以下であることがさらに好ましい。
研磨パッド5を研磨パッド取り付け部4に固定する方法は特に限定されるものではないが、例えば、両面接着テープ、接着剤、面ファスナー等を用いる固定方法が挙げられる。
研磨パッド5のうち、研磨パッド取り付け部4と接触する箇所の断面形状は、特に限定されるものではないが、例えば、直線状、曲線状、又はこれらを組み合わせた形状などが挙げられる。
研磨パッド5のうち、研磨パッド取り付け部4と接触する箇所の外周形状は、特に限定されるものではないが、例えば、円形状、多角形状、花弁状、星型などが挙げられる。
研磨パッド5のうち、研磨パッド取り付け部4と接触する箇所の表面には、溝加工、孔加工、エンボス加工等の加工を施してもよいが、これら以外の加工を施してもよい。
研磨パッド5の研磨面130には、溝部131が形成されていてもよい。溝部131の形状は特に限定されるものではないが、例えば図3(a)のような格子状131、図3(b)のようなストライプ状132、図3(c)のようなスパイラル状133、図3(d)のような放射線状134、図3(e)のような三角形状135、図3(f)のような六角形状136の溝を形成することができる。溝部131により、研磨用組成物が研磨面全面に行き渡りやすくなり、また研磨対象物に追従しやすくなる。
また、溝の深さは特に限定されるものではない。例えば、硬質の層140の厚さと同じでもよく、硬質の層140の厚さよりも浅くてもよく、硬質の層140の厚さよりも深くてもよい。
また、溝の幅は特に限定されるものではないが、例えば0.5mm以上であることが好ましく、1.0mm以上がより好ましい。また、5.0mm以下であることが好ましく、2.0mm以下がより好ましい。
このような範囲であれば、溝の形成による研磨面130と樹脂塗装面との接触面積の減少を抑えながら、研磨面130が樹脂塗装面の曲面に押し当てられた場合の硬質の層140の変位量を確保し研磨面130を撓みやすくすることができる。
また、溝の端部が研磨面の外縁部に達し開放していると、不要になった研磨用組成物や研磨くずなどの粒子状物質を研磨面の外方に排出しやすくなる。これは、研磨熱上昇の抑制に寄与し得る。
研磨パッド5の研磨面130の端部には、研磨対象物の特に凹曲面を研磨する際に傷を入りにくくするため、面取り部141~145が形成されていてもよい。面取り部の形状は特に限定されるものではないが、例えば図4(a)のような斜面状141、図4(b)のような曲面状142、図4(c)のような複数段の斜面状143、図4(d)、(e)のような斜面状と曲面状の組み合わせた形状144、145の面取り部を形成することができる。
また、面取り部の角度は特に限定されるものではないが、例えば面取り部が斜面状の場合、面取り部141と研磨面130とでなす角度θが125°以上180°未満であると好ましく、140°以上165°以下であるとより好ましい。この範囲であれば、凹面の研磨をした際に一層傷が入りにくくなる傾向がある。
研磨パッド5は、研磨面130の外縁よりも内側(中心側)の領域に、硬質の層140を厚さ方向に貫通する孔である貫通部101aが形成されていてもよい。すなわち、貫通部101aの開口部は硬質の層140の外縁において開放しておらず、閉鎖した開口部となっている。なお、貫通部101aは、研磨面130の外縁よりも内側の領域に形成されていれば、硬質の層140の厚さ方向に平行に延びる孔でもよいし、硬質の層140の厚さ方向に対して傾斜する方向に延びる孔でもよい。
また、詳細は後述するが、貫通部101aは、図5(a)に示すように、研磨面130の周方向に沿って連続して環状をなしており、貫通部1aによって研磨面130が貫通部1aの外側の環状の研磨面130cと、貫通部1aの内側の円形状の研磨面130dとに分断されるような形状をなしていてもよい。あるいは、貫通部101aは、図5(b)や図5(c)に示すように、研磨面130の周方向に沿って連続しておらず、貫通部1aによって研磨面130が複数に分断されないような形状(以下「非環状」と記すこともある)をなしていてもよい。
貫通部101aの開口部の平面形状、すなわち、研磨面130に対して垂直をなす位置の視点から貫通部101aの開口部を見た場合の垂直投影図における貫通部101aの開口部の形状は、特に限定されない。貫通部101aの開口部の平面形状としては、例えば、環状(図5(a)を参照)、非環状が挙げられる。非環状としては、円形(図5(b)を参照)、繭形(図5(c)を参照)、楕円形、多角形(三角形、四角形、五角形、六角形、八角形等)、直線形(帯形)、曲線形(円弧形、C字形、U字形、S字形等)、不定形等が挙げられる。貫通部1aの開口部が角部を有すると、その部分に欠け等の破損が生じやすくなるので、環状、円形等の角部を有しない形状が好ましい。複数の貫通部101aの開口部の形状は、全て同一でもよいし、その一部又は全部が異なっていてもよい。
貫通部101aの開口部の大きさ及び貫通部101aの個数は、研磨面130の面積(貫通部101aの開口部も含めた、研磨面130の外縁よりも内側の領域の全面積)に対する貫通部101aの開口部の総面積の割合が3%以上35%以下となるように設定することが好ましい。すなわち、研磨面130に対して垂直をなす位置の視点から研磨面130を見た場合の垂直投影図において、研磨面130の面積と貫通部101aの開口部の面積を測定する。そして、全ての貫通部101aの開口部の面積を合計し、この合計した貫通部101aの開口部の総面積を研磨面130の面積で除して、研磨面130の面積に対する貫通部101aの開口部の総面積の割合を算出する。
研磨面130の面積に対する貫通部101aの開口部の総面積の割合が3%以上であれば、硬質の層140の柔軟性が良好となるため、研磨対象物の表面に追従しやすくなる。一方、研磨面130の面積に対する貫通部101aの開口部の総面積の割合が35%以下であれば、硬質の層140の研磨性能が良好となり、研磨対象物の表面のうねりが除去されやすい。なお、研磨面130の面積に対する貫通部101aの開口部の総面積の割合は、6%以上20%となるように設定することがより好ましい。
研磨面130における貫通部101aの開口部の配置の態様は、特に限定されるものではないが、硬質の層140の柔軟性及び研磨性能が好適となるように、研磨面130の外縁からの距離、研磨面130の中心からの距離、貫通部101aの開口部同士の間の間隔等を適宜設定することが好ましい。
貫通部101aの開口部の平面形状が環状である場合は、研磨面130は、貫通部101aの外側の環状の研磨面130cと貫通部101aの内側の円形状の研磨面130dとに分かれる。このときの貫通部101aの形状は特に限定されるものではなく、正円形状でもよいし、楕円形状でもよい。
また、研磨面130の直径に対する環状の貫通部101aの幅の割合が2.5%以上15%以下となるように設定することが好ましく、8%以上13%以下であることがより好ましい。この範囲内であれば、研磨面130が研磨対象物の表面に追従しやすい上に、研磨対象物の表面のうねりが除去されやすい。
研磨面130における環状の貫通部101aの位置は、研磨面130の外縁よりも内側(中心側)の領域であれば特に限定されるものではないが、貫通部101aの外側の環状の研磨面130cの中心と貫通部101aの内側の円形状の研磨面130dの中心とが共通となる位置に、環状の貫通部101aを配置することが好ましい。
貫通部101aの外側の環状の研磨面130cを有する硬質の層140と、貫通部101aの内側の円形状の研磨面130dを有する硬質の層140は、同一の素材で形成されていてもよいし、異なる素材で形成されていてもよい。
貫通部101aの外側の環状の研磨面130cを有する硬質の層140のA硬度に比べて、貫通部101aの内側の円形状の研磨面130dを有する硬質の層140のA硬度が大きいと、より効率的に研磨対象物の表面のうねりを除去できるので好ましい。
貫通部101aの開口部の平面形状が非環状である場合は、貫通部101aの開口部の大きさや貫通部101aの個数は特に限定されるものではないが、貫通部101aの個数は3個以上16個以下であることが好ましく、5個以上10個以下であることがより好ましい。貫通部101aの個数が3個以上であれば硬質の層140の柔軟性が良好となるため、研磨対象物の表面に追従しやすくなる。一方、貫通部101aの個数が16個以下であれば、硬質の層140の研磨性能が良好となり、研磨対象物の表面のうねりが除去されやすい。複数の貫通部101aの開口部の大きさは、全て同一でもよいし、その一部又は全部が異なっていてもよい。
非環状の貫通部101aの配置の態様は特に限定されるものではなく、例えば、複数の非環状の貫通部101aの開口部を、研磨面130に直線状に並べてもよいし、曲線状に並べてもよいし、環状に並べてもよい。複数の非環状の貫通部101aが環状に並んでいる場合は、研磨面130が、環状の貫通部101aによって分断された貫通部101aの外側の環状の研磨面130cと、貫通部101aの内側の円形状の研磨面130dとを、複数箇所で連結して繋いだ形状をなしているともみなすことができ、研磨面130が研磨対象物の表面に追従しやすい上に、研磨対象物の表面のうねりが除去されやすい。
また、複数の非環状の貫通部101aの開口部が直線状、曲線状、又は環状に並んでなる開口部群を、研磨面130に規則的に又は不規則的に複数群設けてもよい。例えば、複数の非環状の貫通部101aの開口部が直線状又は曲線状に並んでなる開口部群を、研磨面130に平行に複数並べてもよい。また、複数の非環状の貫通部101aの開口部が環状に並んでなる開口部群を、研磨面130に同心円状又は列状に複数並べてもよい。
隣り合う二つの非環状の貫通部101aの開口部の互いに対向する端部から研磨面130の中心へそれぞれ仮想直線(図5(b)における点線)を引いた場合に、これら2つの仮想直線のなす角度θは、20度以上85度以下であることが好ましく、20度以上40度以下であることがより好ましい。この範囲内であれば、研磨面130が研磨対象物の表面に追従しやすい上に、研磨対象物の表面のうねりが除去されやすい。
これら複数の非環状の貫通部101aの開口部は、全体として、線対称、点対称等の対称性を有するように研磨面130に配置されていることが好ましい。例えば、隣接する非環状の貫通部101aの開口部の中心を順次結んだ仮想直線が、正方形、正六角形、正八角形等の正多角形をなすように、非環状の貫通部101aの開口部が配置されていることが好ましい。換言すれば、研磨面130に仮想的に配置した正多角形の頂点に相当する位置に、複数の非環状の貫通部101aの開口部の中心がそれぞれ配置されていることが好ましい。この場合、研磨面130の中心と上記正多角形の中心とが一致することが好ましい。
図5(b)に示す研磨パッド5が、8個の非環状の貫通部101aの開口部が正八角形の頂点に相当する位置にそれぞれ配置されている例であり、図5(c)に示す研磨パッド5が、6個の非環状の貫通部101aの開口部が正六角形の頂点に相当する位置にそれぞれ配置されている例である。
貫通部が研磨パッドに設けられていると、研磨熱上昇の抑制に寄与し得る。
軟質の層150の側面は、軟質の層150が円柱状又は円錐台状である場合は円柱面又は円錐面となり、角柱状又は角錐台状である場合は平面となるが、これら側面は平坦な面に限定されず、軟質の層150の外部側に向かって突出した凸面又は軟質の層150の内部側に向かって窪んだ凹面としてもよい。軟質の層150の形状が錐台状である場合は、錐台の中心軸線に対する軟質の層150の側面の傾斜角度は特に限定されるものではないが、この傾斜角度によって硬質の層140の柔軟性を調整することができる。
このような構成の研磨パッド5を用いて、研磨対象物が有する曲面状の表面の研磨を行えば、研磨パッド5の研磨面130が三次元的に変形し、研磨対象物の表面に追従するので、研磨対象物の表面のうねりを十分に除去することが可能であり、また研磨パッド110に欠け等の破損が生じにくいため好ましい。
<研磨用組成物>
上記の研磨方法において使用される研磨用組成物の例について説明する。
研磨用組成物は特に限定されるものではないが、研磨用組成物は、砥粒と、油剤、乳化安定剤、及び増粘剤から選ばれる少なくとも一種の添加剤と、を含むエマルションで構成されていることが好ましい。このような添加剤を含むことで、粘性の高い研磨用組成物を得やすい。粘性の高い研磨用組成物は、地面に対して垂直または傾斜した被研磨面に塗布した場合に液だれしにくく、三次元形状の研磨対象物の研磨に有利である。なお、粘性の高い研磨用組成物は、上記液だれしにくい程度の粘性を有するものであれば特に限定されないが、例えば1mPa・s以上であることが好ましく、2000mPa・s以上であることがより好ましく、4000mPa・s以上であることがさらにより好ましく、5000mPa・s以上であることがさらにより好ましい。また粘性の高い研磨用組成物は、40000mPa・s以下であることが好ましく、30000mPa・s以下であることがより好ましく、13000mPa・s以下であることがさらにより好ましく、10000mPa・s以下であることがさらにより好ましい。また、このような特性を示す研磨用組成物であれば、上述の添加剤を含まなくてもよい。以下、研磨用組成物の詳細について説明する。
研磨用組成物は、特に限定されるものではない。研磨用組成物としては、例えば、炭化ケイ素等のケイ素の炭化物からなる粒子や、二酸化ケイ素即ちシリカ、酸化アルミニウム即ちアルミナ、セリア、チタニア、ジルコニア、酸化鉄及び酸化マンガン等のケイ素または金属元素の酸化物からなる粒子や、ジルコンなどのケイ酸塩化合物、熱可塑性樹脂からなる有機粒子、又は有機無機複合粒子などから選ばれる砥粒、特に酸化アルミニウム、酸化セリウム、及び酸化ジルコニウムの少なくとも一種で構成される砥粒を含むスラリーを用いることができる。
例えば研磨用組成物には、高研磨速度を可能にし、且つ容易に入手が可能であるアルミナスラリーを用いることがさらに好ましい。
アルミナには、例えば、α-アルミナ、β-アルミナ、γ-アルミナ、θ-アルミナなどの結晶形態が異なるものがあり、また水和アルミナと呼ばれるアルミニウム化合物も存在する。研磨速度の観点からは、α-アルミナを主成分とするものが砥粒としてより好ましい。
また、アルミナとジルコンとの混合物なども砥粒として好ましく使用できる。
α-アルミナを用いる場合、そのα化率は特に制限はないが、30%以上が好ましく、40%以上がより好ましく、50%以上がさらに好ましい。この範囲であれば、良好な表面形状を保ちながら高い研磨速度を有することができる。なお、α化率は例えばX線回折測定による(113)面回折線の積分強度比から求めることができる。
砥粒の平均二次粒子径は、特に限定されるものではないが、15.0μm以下であることが好ましく、より好ましくは5.0μm以下である。平均二次粒子径が小さくなるにつれて、研磨用組成物の分散安定性は向上し、被研磨面のスクラッチ発生が抑制される。
砥粒の平均二次粒子径は、細孔電気抵抗法(測定機:ベックマン・コールター株式会社製 マルチサイザーIII型)により測定することができる。
研磨用組成物中の砥粒の含有量は、特に限定されるものではないが、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは5質量%以上であり、さらに好ましくは10質量%以上である。砥粒の含有量が多くなるにつれて、研磨速度は向上する傾向がある。砥粒の含有量が上記の範囲内にある場合、研磨速度を実用上特に好適なレベルにまで向上させることが容易となる。
また、砥粒の含有量は、特に限定されるものではないが、50質量%以下であることが好ましく、より好ましくは35質量%以下であり、さらに好ましくは30質量%以下である。砥粒の含有量が上記の範囲内にある場合、研磨用組成物のコストを抑えることができる。また、研磨用組成物を用いて研磨した後の研磨対象物の表面に表面欠陥が生じることをより抑えることができる。なお、研磨対象物は、樹脂材料、合金材料、金属、半金属、金属の酸化物材料、炭化物材料、窒化物材料、半金属の酸化物材料及びガラス材料からなる群より選択される少なくとも1種を含むものであってもよい。
本実施形態に係る研磨用組成物は、添加剤を含む。該添加剤の具体的な例としては、たとえば、油剤、乳化安定剤、増粘剤が挙げられる。該添加剤は、単独でもまたは2種以上混合して用いてもよい。該添加剤を添加することで、エマルションの安定性が向上する傾向がある。なお、添加剤として、後述する表面改質剤及びアルカリ等を用いてもよい。
油剤の例としては、流動パラフィン、ポリブテン、α-オレフィンオリゴマー、アルキルベンゼン、ポリオールエステル、リン酸エステル、シリコーン油などの合成油、スピンドル油、ニュートラル油、ブライトストックなどの鉱物油、ヒマシ油、大豆油、ヤシ油、亜麻仁油、綿実油、ナタネ油、キリ油、オリーブ油などの植物性油脂、牛脂、スクワラン、ラノリンなどの動物性油脂等が挙げられる。
乳化安定剤の例としては、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール等の多価アルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール等の脂肪族アルコール等が挙げられる。
増粘剤の例としては、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム(例えば、完全中和物、部分中和物、会合型のアルカリ可溶性のポリアクリル酸(アクリルポリマー)など)等の合成系増粘剤、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース等のセルロース系増粘剤(半合成系増粘剤)、寒天、カラギーナン、層状ケイ酸塩化合物、キサンタンガム、アラビアゴム等の天然系増粘剤等が挙げられる。会合型のアルカリ可溶性のポリアクリル酸を用いる場合には、ポリアクリル酸とアルカリとが併用される。アルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等の無機アルカリ、トリエタノールアミン等の有機アルカリなどが挙げられる。アルカリを添加することにより、ポリアクリル酸が増粘作用を発揮する。また、増粘剤は、ニュートン流体であってもよいし、非ニュートン流体であってもよい。
研磨用組成物は、上記の成分の他、必要に応じて潤滑油、有機溶剤、界面活性剤などの他の成分を適宜含んでもよい。
潤滑油は、例えば、合成油、鉱物油、植物性油脂又はそれらの組み合わせであってもよい。
有機溶剤は、例えば、炭化水素系溶剤の他、アルコール、エーテル、グリコール類やグリセリン等であってもよい。
界面活性剤は、例えば、いわゆるアニオン、カチオン、ノニオン、両性界面活性剤であってもよい。
なお、研磨用組成物は、例えば研磨パッド5に研磨用組成物を供給すること、或いは、被研磨面に直接研磨用組成物を供給する図示しない研磨用組成物供給装置を設けること等によって、被研磨面と研磨パッド5との間に介在するようになっている。
ところで、粘性の高い粘性の高いエマルションからなる研磨用組成物を用いる場合、粘性の低い研磨用組成物に比較して、研磨パッドの研磨面からの排出性が悪く、研磨熱の上昇が起きやすい。また、粘性の高いエマルションを用いた場合、その供給量が少ないので、冷却した研磨用組成物を用いることにより、被研磨面を冷却することは難しい。一方、本開示の研磨装置によれば、粘性の高いエマルションが適用された場合に、研磨時の研磨面の温度を冷却するのに好適に用いることができる。
<冷却装置>
冷却装置7は、例えばエアクーラーで構成される。冷却装置7は、冷却装置支持部6を介して駆動部2の一端に取り付けられ、冷却装置7の冷風の吐出口7aが研磨パッド取り付け部4の伸びる方向と平行となるように取り付けられている。ここで、研磨パッド5の位置を基準とする、冷却装置7による冷却領域が存在する方向を研磨パッド5の冷却方向とする。駆動部2に取り付けられたハンド部3a、3bを把持し、研磨パッド5が研磨対象物Wの被研磨面に接するように位置決めすると、吐出口7aは研磨対象物Wの被研磨面を向き、冷却装置7は、研磨パッド5の位置を基準として冷却方向にある被研磨面上の領域を直接冷却することになる。この状態で、研磨装置1を冷却方向に移動させると、研磨パッド5と冷却装置7とは一体に移動するようになっているため、研磨パッド5は被研磨面の、冷却装置7による冷却後の冷却領域上を移動する。そのため、研磨パッド5は冷却された被研磨面を研磨することになる。つまり、研磨パッド5を冷却方向に移動させると、冷却装置7は、研磨パッド5による研磨領域の周辺領域のうち、研磨パッド5による研磨領域の移動方向前方の領域つまり研磨予定領域を冷却することになり、研磨パッド5は、冷却装置7によって温度調整が行われた後の研磨予定領域を研磨することになる。
ここで、発明者らは、研磨後の被研磨面の温度を測定したところ、研磨後の被研磨面の温度が高いときほど研磨速度が低下するとの知見、及び研磨時の被研磨面の温度が低いときほど研磨速度の低下が抑制されるという知見を得ている。また、発明者らは、被研磨面の温度が高くなるほど、表面状態が悪化するとの知見を得ている。表面状態の評価方法の一例としては、L値が挙げられる。ここで、L値は、JIS Z 8781-4に準ずる方法で測定され、色彩の明度を示す。L値は、色彩が暗く(黒く)なるほど値が小さくなり、色彩が明るく(白く)なるほど値が大きくなる。本実施形態では、黒色の塗膜を用いて測定されているため、表面状態が良好であると、塗膜のL値が小さくなる。一方、表面状態が悪化すると、表面の微細なスクラッチにより塗膜のL値が大きくなる。この傾向は、黒色の塗膜で顕著である。
そのため、被研磨面を冷却し、被研磨面の温度がある程度低い状態で研磨を行うことによって、研磨速度の低下を抑制することができる。これは、研磨パッド5を構成する素材として不織布及びスウェードのいずれを用いた場合であっても、同様の特性を有することが確認されている。
研磨速度の低下を抑制する観点から、研磨時の被研磨面の温度を、45℃以下とすることが好ましく、30℃以下とすることがさらに好ましく、これにより、良好な研磨速度を維持することができる。また、このような温度範囲であれば、良好な表面に仕上げられる。換言すれば、研磨速度及びL値の観点から、良好な研磨速度及び良好な表面状態を得ることができる研磨時の被研磨面の温度として45℃以下が好ましく、30℃以下がさらに好ましい。また、研磨用組成物の凝固、凍結を抑制する観点から研磨パッド5による研磨時の被研磨面の温度を、-10℃以上とすることが好ましく、0℃以上とすることがさらに好ましい。また、研磨時の被研磨面の温度の下限は、省エネルギーの観点から過度な冷却を抑えるように設定され得る。
このように、冷却装置7によって、被研磨面の温度が45℃以下となるように冷却すれば、良好な研磨速度と良好な表面状態との両立を図ることができる。特に、研磨対象物が樹脂である場合、冷却装置7による研磨対象物の冷却によって、研磨速度及び表面状態が向上しやすい。すなわち、本実施形態の研磨装置は、樹脂からなる研磨対象物の研磨に有利である。
なお、冷却装置7の吐出口7aは、図1に示すように、被研磨面に対して垂直に冷風を吐出するように配置してもよく、また、冷却装置7の冷却領域が、研磨パッド5から見て冷却方向のより遠くの領域を照射するように配置してもよい。例えば、冷却装置7から吐出される冷風によって被研磨面上に供給された研磨用組成物が意図しない方向に移動する場合等には、冷風による研磨用組成物の移動を考慮して吐出口7aを例えば冷却方向に傾ける等、予め調整するようにしてもよい。
冷却装置7は、図1に示すように研磨対象物Wの被研磨面側を冷却するものに限らない。冷却装置7は、例えば、図6に示すように、研磨対象物Wの被研磨面とは逆側の面つまり、被研磨面の裏側の面を冷却する構成であってもよい。被研磨面とは逆側の面を冷却する場合、図1と同様に、研磨対象物Wの被研磨面とは逆側に直接冷風を吐出して冷却するようにしてもよい。
また、冷却装置7として、研磨対象物Wに対して冷風を吐出するものに限るものではなく、気体又は液体からなる冷却用流体を吐出し、冷却用流体を研磨対象物Wに吹きつけることで冷却するようにしてもよい。また、冷却装置7として、図7に示すように、裏面側を保冷剤等の固体又は半固体の冷却材8を研磨対象物Wに接触させることで冷却するようにしてもよい。また、被研磨面をエアクーラーで冷却し、裏面側を、冷却材8で冷却するようにしてもよい。
また、冷却装置7は、研磨予定領域において複数個所に冷風を吐出するように構成されていてもよい。冷却装置7は、図8に示すように、研磨パッド5の周囲を囲むように複数の吐出口7aを配置し、研磨パッド5の周方向に沿って、複数個所に冷風を吐出するようにしてもよい。研磨パッド5の全周を囲うように研磨対象物Wを冷却することで、研磨パッド5が前後左右のどちらに移動するとしても、研磨予定領域を研磨に先立って冷却することができる。
なお、上記実施形態においては、手動用ポリッシャーを含む研磨装置1に適用した場合について説明したが、これに限るものではない。例えば、図9に示すような、研磨ロボット(産業用ロボット)11に冷却装置7を適用することも可能である。なお、図9は、研磨ロボット11としての6軸多関節ロボットの一例であって、研磨ロボット11は、ベース部12、下腕部14、上腕部16、及び手首部18を有し、ベース部12と下腕部14との間に設けられ、下腕部14の伸びる方向に旋回中心を有し、ベース部12より上方を旋回させるS軸モータ13Sと、下腕部14の伸びる方向と直交する方向に旋回中心を有し、ベース部12に対して下腕部14を前後に傾斜させるL軸モータ13Lと、下腕部14の伸びる方向と直交する方向に旋回中心を有し、下腕部14に対して上腕部16を前後に傾斜させるU軸モータ15Uと、U軸モータ15Uの回転軸と直交する方向に回転軸を有し、上腕部16をU軸モータ15Uに対して回転させるR軸モータ15Rと、上腕部16の回転軸に対して直交する方向に旋回中心を有し手首部18を回転させるB軸モータ17Bと、B軸モータ17Bの回転軸と直交する方向に回転軸を有し、圧力制御部20を回転させるT軸モータ17Tと、を有する。図9中、30は圧力制御部20によって駆動制御されるポリッシャーであり、ポリッシャー30の研磨パッド取り付け部40に研磨パッド5が取り付けられ、さらに圧力制御部20に、冷却装置支持部6を介して冷却装置7が取り付けられている。これら各部はロボット制御部60によって制御され、研磨パッド5は定圧制御又は位置制御される。
図10に示すように、研磨後の被研磨面(塗膜)の温度が低いときほど研磨速度は向上する。同図では、黒色の塗膜を、異なる研磨温度となるように温度調整しつつ研磨した結果又は温度調整なしで研磨した結果を示す。研磨には、手動用のダブル回転のポリッシャーに、スウェードからなる研磨面を有する研磨パッドを装着したものを用いた。温度調整は、被研磨面の裏面側を、固体冷却材により冷却又はホットプレートにより加熱することにより行われた。この結果から、研磨時の被研磨面の温度が高いときほど研磨速度が低下し、研磨時の被研磨面の温度が低いときほど研磨速度の低下が抑制されることがわかる。
また、研磨後の被研磨面(塗膜)の温度が低いときほどL値が低下する。すなわち、研磨面の表面状態が良好になる。この結果から、研磨時の被研磨面の温度が高い時ほど表面状態が悪化し、研磨時の被研磨面の温度が低いときほど表面状態が良好になることがわかる。
本実施形態の冷却装置7を備えた研磨装置1は、研磨パッド5による研磨予定領域を予め冷却装置7により冷却するようにしているため、冷却装置7により冷却された領域を研磨パッド5によって研磨することになる。その結果、被研磨面の温度が高いことに起因する研磨速度の低下を抑制することができる。また、被研磨面の温度が高いことに起因する表面状態の悪化を抑制することができる。
また、冷却装置7によって、被研磨面の温度が45℃以下となるように冷却すれば、良好な研磨速度を維持することができる。特に、研磨パッド5としてスウェードを適用した場合には、被研磨面の温度が高くなるほどL値が上昇し、表面状態が悪化する傾向にあるが、45℃以下となるように被研磨面の温度を冷却すれば、研磨速度の維持と良好な表面状態との両立を図ることができる。また、冷却装置7によって、被研磨面の温度が30℃以下となるように冷却すれば、さらに好適に研磨速度の向上及び良好な表面状態を両立することができる。
ここで、粘性の高い研磨用組成物を用いる場合を考える。エマルションからなる粘性の高い研磨用組成物は、粘性の低い研磨用組成物と比較して流動性が低い。そのため、研磨時、研磨パッドに付着した研磨用組成物及び/又は研磨くずが研磨パッドの外に排出されづらい。研磨パッドの外に排出されずに残留した砥粒や研磨くずなどの固形物は、研磨速度低下の原因となり得る。
また、研磨用組成物が研磨パッド外に排出されないことは、研磨界面における研磨熱の上昇につながる。さらに、粘性の高い研磨用組成物は、油分を含んでいたり、含まれる水分量が少なったりする。また、粘性の高い研磨用組成物は、粘性の低い研磨用組成物と比較して、研磨時に研磨面へ供給される量が少ない。このような粘性の高い研磨用組成物を用いた場合、粘性の低い研磨用組成物と比較して、研磨界面がドライな状態となりやすく、研磨熱の上昇が著しい。また、被研磨面が研磨パッドの研磨面よりも大きいことで、研磨中、研磨面全域が被研磨面に接触している状態が長く続くために、研磨面からの熱の放出が困難となりやすい。これらの結果、研磨用組成物中の液体成分が蒸発しやすくなり、研磨用組成物中の砥粒や研磨くずなどの固形物の排出がさらに困難になる。また、研磨面が高温となることで、樹脂からなる研磨くずが研磨パッドの固着を発生させる。これらにより、さらに研磨速度の低下が発生しやすい状況になり得る。
このような粘性の高い研磨用組成物を用いる場合であっても、本実施形態の研磨装置を用いることによって、冷却装置によって研磨熱の上昇抑制が可能である。したがって、本実施形態の研磨装置は、粘性の高い研磨用組成物を用いる研磨に適用された場合に、優れた研磨速度低減の抑制効果を奏する。また、本実施形態の研磨装置は、揮発性の高い分散媒を使用しておりドライになりやすい研磨用組成物を用いる場合や、砥粒濃度が高く固形物が残留しやすい研磨用組成物を用いる場合にも、好適に用いることができる。
また、被研磨面を冷却する方法として、系全体を冷却する方法等も考えられるが、特に車両の車体塗装面等といった比較的大きな研磨対象物の研磨を行う場合には、系全体を冷却することは非効率となる懸念があった。一方で、上記のように冷却装置7は研磨予定領域を効率的に冷却することができる。また、このように、ポリッシャーに冷却装置7を取り付けるだけでよいため、特に車両の車体塗装面等の比較的大きな研磨対象物の研磨を行う場合、或いは複雑な立体形状の研磨対象物の研磨を行う場合であっても、容易に実現することができる。