JP2022033711A - 金属含有液の処理方法、及び有機溶剤の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】有機溶剤の存在下で、金属イオンを含む処理対象液と、H型マガディアイトとを接触させ、前記金属イオンを前記H型マガディアイトに吸着させることにより、前記処理対象液から前記金属イオンの少なくとも一部が除去された処理済液を得る、金属含有液の処理方法;前記処理方法により、前記有機溶剤を含有する前記処理済液を得て、前記処理済液と、前記処理済液に接触した前記H型マガディアイトとを分離することにより、前記金属イオンの含有量が低減した有機溶剤を得ることを含む、有機溶剤の製造方法。
【選択図】なし
Description
その結果、層状ポリケイ酸塩を酸処理することにより得られるH型マガディアイトは、有機溶剤存在下で、層構造の厚さが増加すること、すなわち層内のチャンネル構造の内部空間が膨らむことを見出した。さらに検討を進めたところ、膨らんだチャンネル構造の中に金属イオンを吸着可能であることを見出し、本発明を完成させた。
[2] 前記H型マガディアイトはチャンネル構造を備え、前記金属イオンを前記チャンネル構造内に吸着させる、[1]に記載の金属含有液の処理方法。
[3] 前記チャンネル構造は、酸素八員環骨格を有する、[2]に記載の金属含有液の処理方法。
[4] 前記処理対象液に酸を含ませることにより、前記H型マガディアイトの層間が閉じた状態を維持し、前記金属イオンを前記チャンネル構造に対して優先的に吸着させる、[2]又は[3]に記載の金属含有液の処理方法。
[5] 前記金属イオンが、遷移金属、アルカリ金属、及びアルカリ土類金属から選択される1種以上のイオンを含む、[1]~[4]の何れか一項に記載の金属含有液の処理方法。
[6] 前記処理対象液に含まれる前記金属イオンが錯体を形成している、[1]~[5]の何れか一項に記載の金属含有液の処理方法。
[7] 前記錯体に水分子が含まれる、[6]に記載の金属含有液の処理方法。
[8] 前記有機溶剤が極性有機溶剤である、[1]~[7]の何れか一項に記載の金属含有液の処理方法。
[9] [1]~[8]の何れか一項に記載の処理方法により、前記有機溶剤を含有する前記処理済液を得て、前記処理済液と、前記処理済液に接触した前記H型マガディアイトとを分離することにより、前記金属イオンの含有量が低減した有機溶剤を得ることを含む、有機溶剤の製造方法。
[10] 有機溶剤と、H型マガディアイトとを含む金属吸着剤組成物。
[11] H型マガディアイトと、前記H型マガディアイトのチャンネル構造内に含まれる有機化合物と、を備えた金属吸着剤。
[12] [10]に記載の金属吸着剤組成物又は[11]に記載の金属吸着剤を収めた処理容器を備えた金属吸着装置。
[13] H型マガディアイトと、前記H型マガディアイトのチャンネル構造内に含まれる、Naイオン以外の金属イオンと、を備えた複合体。
[14] H型マガディアイトと、前記H型マガディアイトのチャンネル構造内に含まれるNaイオン以外の金属イオン及び溶媒化合物と、を備えた複合体に対して、前記チャンネル構造内から前記溶媒化合物を除去する処理を行うことにより、前記複合体中で、前記金属イオンの化学状態を変化させた金属含有物を得ることを含む、金属含有物の製造方法。
本発明の有機溶剤の製造方法によれば、金属イオンの少なくとも一部が除去された有機溶剤を得ることができる。
本発明に関連する金属吸着剤組成物および金属吸着剤によれば、処理対象液や処理対象ガスに含まれる金属イオンを吸着することができる。
本発明に関連する複合体は、チャンネル構造内に含まれる金属イオンを反応させる反応場として利用し得る。ただし、Naイオンはマガディアイトが本来的に有する金属イオンなので、本発明の複合体が有する金属イオンには該当しない。
本発明に関連する金属含有物の製造方法にあっては、H型マガディアイトを金属イオンの反応場として利用することにより、金属イオンの化学状態を変化させてなる金属含有物を得ることができる。
本発明の第一態様は、有機溶剤の存在下で、金属イオンを含む処理対象液と、H型マガディアイトとを接触させ、前記金属イオンを前記H型マガディアイトに吸着させることにより、前記処理対象液から前記金属イオンの少なくとも一部が除去された処理済液を得ることを含む、金属含有液の処理方法(但し、前記有機溶剤がPGMEAである場合を除く。)である。
処理対象液に含まれる有機溶剤は特に制限されず、接触したH型マガディアイトの層の厚さを増加させ得る有機溶剤が好ましく、例えば、極性有機溶剤が好ましい。
極性有機溶媒としては、例えば、アセトニトリル、アセトン、酢酸エチル、クロロホルム、ジクロロメタン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等の非プロトン性溶剤や、イソプロパノール、エタノール、メタノール、酢酸、プロピレングリコール1-モノメチルエーテル(PGME)等のプロトン性溶剤が挙げられる。
これらの有機溶剤の中でも、H型マガディアイトの層間が閉じた状態を維持し易く、チャンネル構造を優先的に拡げることが容易であることから、非プロトン性溶剤が好ましい。
具体的な金属イオンは特に制限されず、化学的な性質で分類すれば、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等のアルカリ金属;
カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウム等のアルカリ土類金属;
ベリリウム、マグネシウム、亜鉛、カドミウム、水銀等のマグネシウム族元素;
アルミニウム、ガリウム、インジウム等のアルミニウム族元素;
イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユウロピウム等の希土類元素;
チタン、ジルコニウム、スズ、ハフニウム、鉛、トリウム等のスズ族元素;
鉄、コバルト、ニッケル等の鉄族元素;
バナジウム、ニオブ、タンタル等の土酸族元素;
クロム、モリブデン、タングステン、ウラン等のクロム族元素;マンガン、レニウム等のマンガン族元素;
銅、銀、金等の貴金属;
ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金等の白金族元素;
ウラン、トリウム、ラジウム、ラドン、アクチノイド等の天然放射性元素;
ネプツニウム、プルトニウム、アメリシウム、キュリウム、バークリウム、カリホルニウム等の超ウラン元素;等のイオンが挙げられる。
錯体を構成する金属イオン以外の配位子は特に制限されず、有機物であってもよいし、無機物であってもよいし、水分子であってもよいし、その他の溶媒の分子であってもよい。
また、処理対象液には金属イオンのカウンターイオン(カウンターアニオン)が含まれてもよい。この場合、H型マガディアイトに吸着した金属イオンの近傍にはカウンターアニオンが存在してもよい。つまり、金属イオンと同時にカウンターアニオンが吸着してもよい。
処理対象液に含まれる水は、同じ処理対象液に含まれる有機溶剤と混和していることが好ましい。つまり、処理対象液に含まれる有機溶剤が極性である場合、その有機溶剤と混和した水を含んでいてもよい。
図1は、マガディアイト(Na-Mag)の第一層と第二層が積層した層構造の一例を表す模式図(便宜上、図示の化学結合は必ずしも正確ではない。)である。各層の表面にはシラノール基(≡Si-OH)と、層間カチオンであるNaイオンと電気的中性を保っているイオン化した酸素(≡Si-O-)が存在する。また、各層の内部には、酸素八員環からなるチャンネル構造が存在し、内部には水分子が存在すると考えられている。
酸処理に用いる酸としては、例えば、塩酸、硝酸等の無機酸が挙げられる。
具体的な酸処理の方法としては、マガディアイトを分散した水溶液中に酸を滴下して、イオン交換を行う方法が挙げられる。等量点まで酸を滴下することにより、上記の理論的な組成式に近いH型マガディアイトが得られる。
処理対象液の総質量に対するH型マガディアイトの添加量は特に制限されず、容易に攪拌する観点から、例えば、1~10質量%とすることができる。
また、別の接触方法として、H型マガディアイトを充填したカラムに、処理対象液を流通させる方法が挙げられる。この際、処理対象液を循環させてカラムに複数回接触させてもよい。
処理対象液とH型マガディアイトとの接触時間は特に制限されず、例えば、数分~数十時間の範囲で、金属イオンの吸着量に応じて適宜調整すればよい。
処理対象液とH型マガディアイトとを接触させる際の温度は特に制限されず、例えば、4℃~40℃の範囲で調整すればよい。
なお、後述するように、金属イオンを吸着したH型マガディアイトが酸濃度の高い酸性水に接触すると、酸の影響によりH型マガディアイトのチャンネル構造内から金属イオンが脱離する。この脱離を防ぐ観点から、水を含む処理対象液のpHは1以上が好ましい。
本発明の第二態様は、第一態様の処理方法により、前記有機溶剤を含有する前記処理済液を得て、前記処理済液と、前記処理済液に接触した前記H型マガディアイトとを分離することにより、前記金属イオンの含有量が低減した有機溶剤を得ることを含む、有機溶剤の製造方法である。
前記複合体から金属イオンを脱離させるために使用する酸性水溶液としては、硝酸、塩酸、硫酸等の無機酸水溶液が挙げられる。金属イオンの脱離を促進する観点から、酸性水溶液のpHは1未満であることが好ましい。また、上記無機酸水溶液の酸濃度としては、0.2N以上が好ましく、0.3N以上がより好ましく、0.6N以上がさらに好ましい。
本発明に関連する第三態様は、有機溶剤と、H型マガディアイトとを含む金属吸着剤組成物である。
金属吸着剤組成物にあっては、H型マガディアイトは有機溶剤と接触した状態にある。
この状態であると、前述したようにH型マガディアイトの層間は閉じ、有機溶剤が内部に入ったチャンネル構造は拡がった状態にある。このような金属吸着剤組成物に、金属イオンが接触した場合、金属イオンはH型マガディアイトのチャンネル構造内に吸着される。
金属吸着剤組成物を構成する有機溶剤としては、第一態様で例示したものが挙げられる。
金属吸着剤組成物に吸着させ得る金属イオンとしては、第一態様で例示したものが挙げられる。
金属吸収剤組成物を構成する有機溶剤の質量M1とH型マガディアイトの質量M2との質量比は特に制限されず、例えば、M1:M2=1:100~100:1とすることができる。少なくとも、金属吸着剤組成物を構成するH型マガディアイトの全体が有機溶剤によって湿る程度に互いに接触していることが好ましい。
金属吸着剤組成物の使用方法としては、例えば、金属吸着剤組成物と処理対象液とを接触させる方法、前述した処理対象液とは異なる「金属イオンを含む液体又はガス」を金属吸着剤組成物に接触させる方法等が挙げられる。上記液体は有機溶剤を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。上記液体が有機溶剤を含んでいる場合、その有機溶剤が、金属吸着剤組成物に含まれる前記有機溶剤と同じであると、H型マガディアイトのチャンネル構造の拡がりを維持し易いので好ましい。
本発明に関連する第四態様は、H型マガディアイトと、前記H型マガディアイトのチャンネル構造に含まれる有機化合物と、を備えた金属吸着剤である。
本態様の金属吸着剤が、第三態様の金属吸着剤組成物と異なる点は、バルクの有機化合物からなる有機溶剤を必ずしも含まなくてよい点である。つまり、H型マガディアイトのチャンネル構造内に有機化合物が含まれていればよく、H型マガディアイトの外側にこれを含む有機溶剤があってもよいし、なくてもよい。チャンネル構造内に有機化合物が含まれていることにより、チャンネル構造の内部空間が拡がった状態になっている。このように拡がったチャンネル構造を有するH型マガディアイトは、金属吸着剤として金属イオンを吸着し易い。
金属吸着剤を構成する有機化合物としては、第一態様で例示した有機溶剤を構成する有機化合物が挙げられる。
金属吸着剤に吸着させ得る金属イオンとしては、第一態様で例示したものが挙げられる。
金属吸着剤の使用方法としては、例えば、金属吸着剤と処理対象液とを接触させる方法、前述した処理対象液とは異なる「金属イオンを含む液体又はガス」を金属吸着剤に接触させる方法等が挙げられる。上記液体は有機溶剤を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。上記液体が有機溶剤を含んでいる場合、その有機溶剤を構成する有機化合物が、金属吸着剤に含まれる前記有機化合物と同じであると、H型マガディアイトのチャンネル構造の拡がりを維持し易いので好ましい。
本発明に関連する第五態様は、第三態様の金属吸着剤組成物又は第四態様の金属吸着剤を収めた処理容器を備えた金属吸着装置である。
処理容器としては、金属吸着剤と処理対象液とを接触させることが可能なものであれば特に制限されず、例えば、カラム、フラスコ等の液体やガスを取り扱う公知の処理容器が挙げられる。
装置構成の一例として、カラムと、前記カラムに充填した金属吸着剤組成物又は金属吸着剤と、前記カラムの流入口に接続された導入管と、前記カラムの流出口に接続された導出管と、前記導入管又は導出管に接続されたポンプと、を備えた金属吸着装置が挙げられる。
このような金属吸着装置の使用方法としては、例えば次の方法が挙げられる。まず、ポンプにより処理対象液を導入管からカラム内に流入させ、カラム内の金属吸着剤と処理対象液とを接触させ、処理対象液に含まれる金属イオンを金属吸着剤のH型マガディアイトに吸着させる。次に、カラムに接続された導出管から処理済液を排出することにより、金属イオンの少なくとも一部が除去された処理済液を得ることができる。
本発明に関連する第六態様は、H型マガディアイトと、前記H型マガディアイトのチャンネル構造に含まれる金属イオン(ただし、Naイオンを除く。)と、を備えた複合体である。
本態様の複合体は、例えば、第一態様の金属含有液の処理方法により、H型マガディアイトのチャンネル構造に金属イオンを吸着させたものとして得ることができる。
本態様の複合体において、H型マガディアイトのチャンネル構造内には、金属イオン以外のものが含まれていてもよいし、金属イオンのみが含まれていてもよい。金属イオン以外のものとしては、前記有機溶剤を構成する有機化合物、水分子等が挙げられる。チャンネル構造内に含まれる金属イオン以外のものは、チャンネル構造内に含まれる金属イオンに配位した配位子であってもよいし、配位しないで単に共存するものであってもよい。H型マガディアイトの単一のチャンネル構造内に含まれる金属イオンの数は1つでもよいし、2つ以上でもよい。複数の金属イオンが単一のチャンネル構造内に含まれる場合、それらの金属イオン同士は互いに結合していてもよいし、独立に離れて存在していてもよい。
本態様の複合体において、H型マガディアイトが有する複数のチャンネル構造の総数に対して、金属イオンが含まれるチャンネル構造の数は3%以上が好ましく、5%以上がより好ましく、10%以上がさらに好ましい。
本態様の複合体の総質量に対する金属イオンの含有量は、例えば、0.001質量%以上が好ましく、0.01質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上がさらに好ましく、1質量%以上が最も好ましい。
本態様の複合体に含まれる金属イオンの種類は、1種類でもよいし、2種類以上でもよい。
本発明に関連する第七態様は、H型マガディアイトと、前記H型マガディアイトのチャンネル構造内に含まれるNaイオン以外の金属イオン及び溶媒化合物と、を備えた複合体に対して、前記チャンネル構造内から前記溶媒化合物を除去する処理を行うことにより、前記複合体中で、前記金属イオンの化学状態を変化させた金属含有物を得ることを含む、金属含有物の製造方法である。
本態様の複合体は、チャンネル構造内に溶媒化合物を含むことが必須である点を除いて、第六態様の複合体と同様である。溶媒化合物としては、第一態様の有機溶剤を構成する有機化合物、水分子、それ以外の公知の溶媒を構成する化合物が挙げられる。ここで、溶媒化合物とは、1気圧、25℃の標準状態で液体である化合物をいう。
本態様で用いる複合体に含まれる金属イオンは1種類でもよいし、2種類以上でもよい。
本態様で用いる複合体に含まれる溶媒化合物は1種類でもよいし、2種類以上でもよい。
前記チャンネル構造に含まれる前記溶媒化合物を除去する処理としては、例えば、乾燥処理、加熱処理が挙げられる。乾燥や加熱により、溶媒化合物をチャンネル構造から脱離させることができる。
非特許文献(Y. Asakura, et al., Bull. Chem. Soc. Jpn., 2015, 88, 1241-1249)に記載の公知方法により、粉末状のNa型マガディアイト2gを得た。
Na型マガディアイト2gをイオン交換水に懸濁して、0.2Mの塩酸を200ml滴下し、しばらく攪拌した後、H型マガディアイト1.5gをろ取した。ここで滴下した塩酸の量は、酸塩基滴定で等量点となる量(約1.92mmol/g)としており、ろ液中のNaイオンの化学分析値から、マガディアイトの層間におけるNaイオンはプロトンによってほぼ完全に交換されていることを確認した。
H型マガディアイトの面間隔が有機溶剤の存在下で変化することを、X線回折装置(RIGAKU社製)を使用し、格子面間隔d(001)について、次のように確認した。
まず、乾燥した粉末状のH型マガディアイトの格子面間隔d(001)は、1.2nmであった。
次に、乾燥した粉末状のH型マガディアイトにアセトニトリルを少量滴下し、粉末の全体をアセトニトリルで湿らせた。このH型マガディアイトの格子面間隔d(001)は、1.32nmであった。
続いて、アセトニトリルで湿らせたH型マガディアイトを乾燥機に入れ、120℃、3時間で乾燥し、アセトニトリルを揮発させた。この乾燥した粉末状のH型マガディアイトの格子面間隔d(001)は、1.27nmであった。
また、アセトニトリルで湿らせたH型マガディアイトを室温(24℃)、48時間で自然に乾燥させ、少なくとも表面的にはアセトニトリルを除去した。この乾燥した粉末状のH型マガディアイトの格子面間隔d(001)は、1.23~1.30nmであった。
これらのXRD測定結果を図3のグラフに示す。
通常、H型マガディアイトの層表面にはシラノール基が存在し、これらが互いに水素結合することにより、層間は閉じている(狭まっている)。一方、アセトニトリルの存在下で格子面間隔d(001)が増加していることから、層間距離ではなく、層内のチャンネル構造(酸素八員環を有する構造)内に、アセトニトリル分子が入り、チャンネル構造の内部空間が拡がったことにより、層厚が増加したと考えられる。
まず、上述の通り塩酸滴下を行い、乾燥させ、H型マガディアイトの乾燥粉末を得た。
次に、下表の通り濃度調整した硝酸鉄水溶液0.5mlに対して、アセトニトリル5mlを加え、さらに濃硝酸1.5mlを添加して、処理対象液のpHが1未満になったことを確認した。この処理対象液にH型マガディアイトの乾燥粉末0.1gを加えて、室温(約24℃)で24時間攪拌した後、濾過し、分取したH型マガディアイトの試料を2等分した。
一方の試料Aは室温で48時間乾燥し、他方の試料Bは室温で2時間乾燥した後、乾燥機に入れて120℃、3時間で乾燥させた。
上記の試料A,Bについて、アセトニトリルの有無を調べるためにFT-IR測定を行った。その測定結果を図4,図5のグラフに示す。
FT-IR測定結果において、2100~2300cm-1の範囲にアセトニトリル基の伸縮振動に起因するピークは観察されないことから、室温乾燥および120℃乾燥により、アセトニトリルは試料から完全に除去されたと考えられる。
上記の試料Bについて、乾燥過程における色調変化を目視で観察した。
ろ液は基本的に薄い黄色であり、硝酸鉄濃度に応じてろ液の色合いが濃くなるが、分取直後のH型マガディアイトの乾燥粉末の色調は、ろ液の濃度に関係なく、H型マガディアイトの本来的な白色であった。
分取後に2時間の室温乾燥を行った後の各粉末の色合いも、全てH型マガディアイトの本来的な白色であった。
その後、120℃、3時間の高温乾燥を行った後の各粉末の色合いは、少し茶色味が増加した。茶色味が増したことは、チャンネル構造内の鉄イオンの水分子が除去されたことにより、酸化鉄又は鉄クラスターが形成されたことを示唆している。
上記の試料A,Bについて、X線回折装置(RIGAKU社製)を使用し、格子面間隔d(001)について確認した。その測定結果を図6,図7に示す。
XRD測定結果が示す通り、鉄イオンを含む処理対象液中で攪拌させたH型マガディアイトの単位層の厚さ(面間隔)が増加していることから、処理対象液に含まれる鉄イオンがH型マガディアイトのチャンネル構造内に吸着したと考えられる。
測定結果では、室温乾燥した試料Aの層の方が厚い。この理由は、試料Aのチャンネル構造内には鉄イオンと共に水分子が含まれているのに対して、試料Bにおいては高温乾燥によりチャンネル構造内の水分子が除去されたからであると考えられる。
H型マガディアイトのチャンネル構造内に含まれる鉄イオン及び水分子は、互いに独立して存在していると考えるのは不自然であり、鉄アコ錯体[Fe(H2O)6]3+を形成していると考えられる。
上記の試料Bについて、ガス吸着測定装置(マイクロトラックベル社製)を使用し、窒素ガスの吸着量から試料の比表面積を算出した。その測定結果を図8と、下記表2に示す。
試料BのH型マガディアイトのチャンネル構造内には鉄イオンに由来する反応生成物(酸化鉄又は鉄クラスター)が吸着していると考えられる。このため、何も吸着していないH型マガディアイト(H-Mag)の比表面積42.5m2g-1に比べて、試料Bの比表面積は小さくなっている。
なお、相対的に鉄イオン濃度が高い硝酸鉄溶液に添加した試料(H1.5-Fe305)の比表面積の方が、相対的に鉄イオン濃度が低い硝酸鉄溶液に添加した試料(H1.5-Fe101.5,H1.5-Fe152.3)よりも、大きい比表面積を有する理由は未解明である。
試験例2で得た試料Aを、0.2Mの硝酸水溶液30mlに添加し、室温で24時間攪拌した後、室温で5時間静置して、H型マガディアイトを沈殿させ、上澄み液の一部を回収し、ICP分析を行った。沈殿させたH型マガディアイトを濾過により回収し、その乾燥質量を測定した。
沈殿したH型マガディアイト0.025gに吸着していた鉄イオンの全てを脱離させて上澄み液に回収できたと仮定すると、吸着していた鉄イオンの質量は、ICP測定値(ppm)×0.2M硝酸水溶液30mlの積(単位:mg)で求められる。その計算結果を下記表3に示す。
また、試験例2において、H型マガディアイトを添加した各処理対象液に含まれる鉄イオンの量が理論的な最大吸着量であるとしたとき、その最大吸着量に対する実際に吸着した鉄イオンの割合(単位:%)の計算結果を下記表3に示す。
ここで、平衡濃度CおよびH型マガディアイトの1g当たりのFe3+の吸着量は、それぞれ下記の式1、式2で算出した。
平衡濃度C(mmol/L)=
Fe(NO3)3・9H2Oのモル数/CH3CN+H2O+HNO3の容量(L)
<式2>
H型マガディアイト1g当たりのFe3+の吸着量(mmol/g)=吸着したFe3+(mmol)/[0.1g×ICP分析に使用したH型マガディアイトの質量0.025g/鉄イオンが吸着したH型マガディアイトの試料の質量(mg)]
上記の硝酸水溶液中に沈殿したH型マガディアイトを濾過により回収し、室温にて48時間乾燥させた粉末試料について、格子面間隔d(001)のX線回折測定を行った。その測定結果を図12に示す。
XRD測定結果が示す通り、各試料の格子面間隔d(001)は硝酸水溶液に添加する前の1.34~1.36nmと比べて減少していた。
この結果からも、チャンネル構造に含まれていた鉄イオンが酸処理により脱離したことが分かった。
なお、試料(H1.5-Fe51)の格子面間隔d(001)が酸処理後においても減少していない理由は未解明である。
デシケータ内で室温乾燥したH型マガディアイト(H-mag)37mgに対して、イソプロパノール(IPA)、プロピレングリコール1-モノメチルエーテル(PGME)、又はプロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセテート(PGMEA)を約0.1mL滴下し、粉末X線回折(XRD)装置を使用して、試験例1と同様に、H-magの基本面間隔の変化を測定した。また、比較するために、Na型マガディアイト(Na-Mag)の基本面間隔も測定した。これらの測定結果である回折パターンを図13に示す。
図13の測定結果において、有機溶剤を滴下する前のH-magの基本面間隔は1.20nmであり、IPAを滴下した回折パターン(IPA H-mag)の基本面間隔は1.52nmに増大し、PGMEを滴下した回折パターン(PGME H-mag)の基本面間隔は1.57nmに増大した。一方、PGMEAを滴下した回折パターン(PGMEA H-mag)の基本面間隔はほとんど変化しなかった。
以上から、PGMEAは例外的にH-magのチャンネル構造を拡げることに寄与しないことが分かった。
AgNO3水溶液1.26mlに、IPAまたはPGME5.74mlを添加し、Ag濃度18mmol/Lに調整した溶液を得た。ここにデシケータ内で室温乾燥したH-Mag0.10gを添加し、室温で24時間攪拌した。その後、ろ過してH-Magを回収し、室温で48時間乾燥し、測定用の試料とした。
粉末X線回折装置を使用して、試料の基本面間隔を測定した。この結果を図14に示す。IPAを用いた回折パターン(H-Mag_IPA_Ag)の基本面間隔は1.38nmに増大し、PGMEを用いた回折パターン(H-Mag_PGME_Ag)の基本面間隔は1.40nmに増大した。比較のために、乾燥状態のH-Magの回折パターンも併記しており、その基本面間隔は1.20nmであった。
次に、試料のFT-IRの測定結果を図15に示す。IPAを使用した試料とPGMEを使用した試料の何れにおいても、溶媒に由来するC-H伸縮振動の吸収帯は観測されず、硝酸イオンの存在も確認されなかった。
以上から、銀イオンがH-Magのチャンネル構造内に吸着したことにより、基本面間隔が増大したことが分かった。また、チャンネル構造内に溶媒(IPA、PGME)は含まれていないことも分かった。
Fe(NO3)3・9H2Oと、Al(NO3)3・9H2Oに、IPAまたはPGME7.0mlをそれぞれ添加し、Fe濃度とAl濃度がそれぞれ18mmol/Lとなるように調整した溶液を得た。ここにデシケータ内で室温乾燥したH-Mag0.10gを添加し、室温で24時間攪拌した。その後、ろ過してH-Magを回収し、室温で48時間乾燥し、測定用の試料とした。
粉末X線回折装置を使用して、試料の基本面間隔を測定した。この結果を図16に示す。鉄イオンを含むIPAを用いた回折パターン(H-Mag_IPA_Fe)の基本面間隔は1.37nmに増大し、鉄イオンを含むPGMEを用いた回折パターン(H-Mag_PGME_Fe)の基本面間隔は1.42nmに増大した。Alイオンを含むIPAを用いた回折パターン(H-Mag_IPA_Al)の基本面間隔は1.38nmに増大し、Alイオンを含むPGMEを用いた回折パターン(H-Mag_PGME_Al)の基本面間隔は1.44nmに増大した。比較のために、乾燥状態のH-Magの回折パターンも併記しており、その基本面間隔は1.20nmであった。
次に、試料のFT-IRの測定結果を図17に示す。上記5種の試料の何れにおいても、溶媒に由来するC-H伸縮振動の吸収帯は観測されず、硝酸イオンの存在も確認されなかった。
以上から、鉄イオンまたはAlイオンがH-Magのチャンネル構造内に吸着したことにより、基本面間隔が増大したことが分かった。また、チャンネル構造内に溶媒(IPA、PGME)は含まれていないことも分かった。
表4の結果において、何も吸着してない試料のBET比表面積が最も大きく、鉄イオンを吸着した試料、Alイオンを吸着した試料の順にBET比表面積が減少している。これらの比表面積の減少は、試料の細孔(チャンネル構造)内に各金属イオンが吸着していることを示している。
表5の結果において、吸着量は1gのH-Mag当たりに吸着した各金属イオンのモル数である。鉄イオンよりもAlイオンの方が多く吸着されていることが分かった。
測定結果において270nm付近のピークは[Fe(H2O)6-x(OH)x](3―x)+の存在を示していると考えられる。ここで、xは1または2である。また、400nm以上のピークはFeのダイマーもしくはFe(III)クラスター、すなわち酸化鉄の存在を示していると考えられる。
測定結果において0ppmのピークは6配位のAlの存在を示しており、このシグナルがブロードであることは、Al13量体などの重縮合物の存在を示していると考えられる。
市販のICP標準水溶液にIPA又はPGMEを添加して、表6に記載の濃度に希釈した3種の金属イオン(Fe、Al、Ag)を含む処理対象液を調製した。
第一の処理方法として、処理対象液に予め乾燥したH-Magを表6に記載の量で添加し、室温で2時間攪拌した後、ろ過によりH-Magを除去し、得られた処理済液に含まれる各金属イオン量をICP分析により定量した。
第二の処理方法として、予め乾燥したH-MagをIPAに分散し、これを直径25mmで孔径1μmのメンブレンフィルターに通すことにより、メンブレンフィルター上にH-Magからなる吸着層(厚さ約1μm~100μm程度)を形成した。この吸着層を備えたメンブレンフィルターに処理対象液を1回通過させ、得られた処理済液に含まれる各金属イオン量をICP分析により定量した。これらの結果を表6に併記する。
なお、表中「~%以上」の表記は、処理液に含まれるイオン濃度が分析機器の検出限界を下回っていることを意味している。本試験例における鉄イオンと銀イオンの検出限界は0.02ppm、Alイオンの検出限界は0.01ppmである。
また、H-Magからなる薄い吸着層を1回通過しただけで、金属イオンを確実に捉えることができ、特に鉄イオンの除去において優れた効率を示すことが分かった。
以上の試験結果から、少なくとも次のことが理解される。
1.H型マガディアイトの単位層の厚さが有機溶剤の存在下で増加すること。つまり、有機溶剤存在下でH型マガディアイトのチャンネル構造が拡がること。(根拠;試験例1、試験例4)
2.H型マガディアイトのチャンネル構造内に有機溶剤が入り、その後の乾燥によりチャンネル構造内の有機溶剤を除去できること。(根拠;試験例1~2、試験例5~6)
3.有機溶剤の存在下で、金属イオンを含む処理対象液に、H型マガディアイトを接触させることにより、H型マガディアイトのチャンネル構造内に金属イオンを吸着させ得ること。(根拠;試験例2~3、試験例5~7)
4.H型マガディアイトに金属イオンを吸着させると、チャンネル構造が拡がることにより、層厚(格子面間隔d(001))が増加すること。(根拠;試験例2、試験例5~6)
5.H型マガディアイトに吸着させた鉄イオンは鉄アコ錯体を形成していると考えられること(根拠;試験例2、試験例6)
6.鉄アコ錯体を吸着したH型マガディアイトを加熱することにより、チャンネル構造内の水分子が脱離し、鉄イオンが酸化鉄になる又は鉄クラスターになり得ること。(根拠;試験例2、試験例6)
7.金属イオンを吸着したH型マガディアイトを酸性水溶液に接触させることにより、酸性水溶液中に金属イオンを溶出させ得ること、つまり、H型マガディアイトのチャンネル構造内の金属イオンを脱離させ得ること。(根拠;試験例3、試験例6)
Claims (9)
- 有機溶剤の存在下で、金属イオンを含む処理対象液と、H型マガディアイトとを接触させ、
前記金属イオンを前記H型マガディアイトに吸着させることにより、
前記処理対象液から前記金属イオンの少なくとも一部が除去された処理済液を得ることを含む、金属含有液の処理方法(但し、前記有機溶剤がPGMEAである場合を除く)。 - 前記H型マガディアイトはチャンネル構造を備え、前記金属イオンを前記チャンネル構造内に吸着させる、請求項1に記載の金属含有液の処理方法。
- 前記チャンネル構造は、酸素八員環骨格を有する、請求項2に記載の金属含有液の処理方法。
- 前記処理対象液に酸を含ませることにより、
前記H型マガディアイトの層間が閉じた状態を維持し、前記金属イオンを前記チャンネル構造に対して優先的に吸着させる、請求項2又は3に記載の金属含有液の処理方法。 - 前記金属イオンが、遷移金属、アルカリ金属、及びアルカリ土類金属から選択される1種以上のイオンを含む、請求項1~4の何れか一項に記載の金属含有液の処理方法。
- 前記処理対象液に含まれる前記金属イオンが錯体を形成している、請求項1~5の何れか一項に記載の金属含有液の処理方法。
- 前記錯体に水分子が含まれる、請求項6に記載の金属含有液の処理方法。
- 前記有機溶剤が極性有機溶剤である、請求項1~7の何れか一項に記載の金属含有液の処理方法。
- 請求項1~8の何れか一項に記載の処理方法により、前記有機溶剤を含有する前記処理済液を得て、前記処理済液と、前記処理済液に接触した前記H型マガディアイトとを分離することにより、前記金属イオンの含有量が低減した有機溶剤を得ることを含む、有機溶剤の製造方法。
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