[式(1)で表される3HB骨格含有ジオール化合物]
(式中、R1は2価の基を示し、mは0または1を示す)。
前記式(1)において、R1で表される2価の基は、ジオールの残基であってもよく、例えば、脂肪族ジオール、脂環族ジオール、および芳香族ジオールから選択されたジオールの残基などが挙げられる。
本明細書および特許請求の範囲において、「ジオールの残基」とは、ジオールの化学構造から2つのヒドロキシル基(OH)を除いた2価の基を意味する。すなわち、2価の基R1は、後述する式(3)HO−R1−OHで表されるジオールの残基を意味する。
脂肪族ジオールとしては、例えば、アルキレングリコール、ポリアルキレングリコールなどが挙げられる。
アルキレングリコール(またはアルカンジオール)としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、テトラメチレングリコール(または1,4−ブタンジオール)、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオールなどの直鎖状または分岐鎖状C2−20アルキレングリコール(例えば、直鎖状または分岐鎖状C2−16アルキレングリコールなど)などが挙げられる。
ポリアルキレングリコール(またはポリアルカンジオール)としては、例えば、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールなどのジないしデカ直鎖状または分岐鎖状C2−20アルキレングリコール(例えば、ジないしデカ直鎖状または分岐鎖状C2−16アルキレングリコールなど)などが挙げられ、好ましくはジないしヘキサ直鎖状または分岐鎖状C2−12アルキレングリコール(例えば、ジないしヘキサ直鎖状または分岐鎖状C2−8アルキレングリコールなど)、さらに好ましくはジないしテトラ直鎖状または分岐鎖状C2−6アルキレングリコール(例えば、ジないしテトラ直鎖状または分岐鎖状C2−4アルキレングリコールなど)などが挙げられる。
脂環族ジオールとしては、例えば、シクロアルカンジオール(例えば、シクロヘキサンジオールなどのC3−12シクロアルカンジオール、好ましくはC4−10シクロアルカンジオール、さらに好ましくはC5−8シクロアルカンジオールなど);ビス(ヒドロキシアルキル)シクロアルカン[例えば、シクロヘキサンジメタノールなどのビス(ヒドロキシC1−6アルキル)C3−12シクロアルカンなど];ビフェノール類またはビスフェノール類の水添物(例えば、ビスフェノールAの水添物など);これらのアルキレンオキシド(または対応するアルキレンカーボネート、ハロアルカノール)付加体[例えば、C2−4アルキレンオキシド付加体、好ましくはエチレンオキシド付加体、プロピレンオキシド付加体などのC2−3アルキレンオキシド付加体など]などの後述する芳香族ジオールに対応する水添物などが挙げられる。
芳香族ジオールとしては、例えば、ジヒドロキシアレーン(例えば、ヒドロキノン、レゾルシノールなどのジヒドロキシC6−14アレーン、好ましくはジヒドロキシC6−10アレーンなど);ビス(ヒドロキシアルキル)アレーン[例えば、ベンゼンジメタノールなどのビス(ヒドロキシC1−6アルキル)C6−14アレーン、好ましくはビス(ヒドロキシC1−4アルキル)C6−10アレーンなど];ビフェノール類(例えば、p,p’−ビフェノールなど);ビスフェノール類(例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールC、ビスフェノールG、ビスフェノールSなど);これらのアルキレンオキシド(または対応するアルキレンカーボネート、ハロアルカノール)付加体[例えば、C2−4アルキレンオキシド付加体、好ましくはエチレンオキシド付加体、プロピレンオキシド付加体などのC2−3アルキレンオキシド付加体など]などが挙げられる。
これらのR1で表されるジオールの残基のうち、生分解性などの点から、脂肪族ジオールの残基または脂環族ジオールの残基、なかでも脂肪族ジオールの残基が好ましい。好ましい脂肪族ジオールの残基としては、直鎖状または分岐鎖状C2−12アルキレングリコール(例えば、直鎖状または分岐鎖状C2−8アルキレングリコールなど)などのアルキレングリコールの残基、さらに好ましくは直鎖状または分岐鎖状C2−6アルキレングリコール(例えば、直鎖状または分岐鎖状C2−4アルキレングリコールなど)の残基であり、特に好ましくはエチレングリコールなどの直鎖状または分岐鎖状C2−3アルキレングリコールの残基などが挙げられる。
また、取り扱い性(または生産性)や耐熱性の点からは、脂環族ジオールの残基が好ましい。好ましい脂環族ジオールの残基としては、ビス(ヒドロキシアルキル)シクロアルカンの残基、さらに好ましくはビス(ヒドロキシC1−4アルキル)C4−10シクロアルカンの残基[例えば、ビス(ヒドロキシC1−3アルキル)C5−8シクロアルカン]の残基、特に好ましくはベンゼンジメタノールなどのビス(ヒドロキシC1−2アルキル)C5−8シクロアルカンの残基などが挙げられる。
前記式(1)において、mは0(すなわち、3HBと、R1に対応するジオールとで形成される2量体)または1(すなわち、2つの3HBと、R1に対応するジオールとで形成される3量体)のいずれであってもよく、3HBに由来する骨格(または3HB単位)を樹脂に効率よく導入できる点から、mが1であるのが好ましい。
なお、本明細書および特許請求の範囲において、「3−ヒドロキシ酪酸由来の構成単位」または「3HB単位」とは、3HBのヒドロキシル基から水素原子を除き、かつカルボキシル基からヒドロキシル基を除いた下記式で表される単位(または2価の基)を意味する。
前記式(1)中の3HB単位の立体配置(不斉炭素原子における立体配置)は、R配置(R体)およびS配置(S体)のいずれであってもよいが、生分解性の観点から、R配置(R体)である3HB単位を少なくとも含むのが好ましい。特に、mが1である場合、2つの3HB単位の立体配置は、互いに同一または異なっていてもよいが、生分解性の観点から、双方ともR配置であるのが好ましい。
代表的な前記式(1)で表されるジオール化合物としては、例えば、mが1であり、R1が脂肪族ジオールの残基である3HBジオール、具体的には、ビス(3−ヒドロキシブタノイルオキシ)アルカン[例えば、1,2−ビス(3−ヒドロキシブタノイルオキシ)エタンなどのビス(3−ヒドロキシブタノイルオキシ)C2−6アルカン、好ましくはビス(3−ヒドロキシブタノイルオキシ)C2−4アルカンなど]など;mが1であり、R1が脂環族ジオールの残基である3HBジオール、具体的には、ビス(3−ヒドロキシブタノイルオキシアルキル)シクロアルカン[例えば、1,4−ビス(3−ヒドロキシブタノイルオキシメチル)シクロヘキサンなどのビス(3−ヒドロキシブタノイルオキシC1−4アルキル)C5−10シクロアルカン、好ましくはビス(3−ヒドロキシブタノイルオキシC1−3アルキル)C5−8シクロアルカンなど]などが挙げられる。
(式(1)で表されるジオール化合物の製造方法)
前記式(1)で表される3HB骨格含有ジオール化合物の製造方法は特に制限されないが、少なくとも下記反応工程(ii)を含んでいればよく、例えば、下記反応工程(i)〜(ii)によって製造できる。
(式中、L1は脱離基を示し、L2は脱離基またはヒドロキシル基を示し、R1およびmは好ましい態様を含めて前記記載と同じである)。
(i)式(2)で表される化合物の調製
前記式(2)で表される化合物は、前記式(3)で表されるジオールの少なくとも一方のヒドロキシル基を脱離基に変換することで調製できる。
代表的な前記式(3)で表されるジオールとしては、例えば、前記R1の項において例示した脂肪族ジオール、脂環族ジオール、芳香族ジオールなどが挙げられ、好ましくはエチレングリコールなどの脂肪族ジオール、シクロヘキサンジメタノールなどの脂環族ジオールなどが挙げられる。
L1、L2で表される脱離基としては、例えば、基[−O−SO2−R2](式中、R2は炭化水素基、フッ化炭化水素基、またはフッ素原子を示す。)、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、好ましくは臭素原子など)などが挙げられる。これらの脱離基のうち、基[−O−SO2−R2]、臭素原子などのハロゲン原子が好ましい。
基[−O−SO2−R2]において、R2で表される炭化水素基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、これらを二種以上組み合わせた基などが挙げられる。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基などのC1−6アルキル基などが挙げられる。シクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などのC5−10シクロアルキル基などが挙げられる。アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基などのC6−12アリール基などが挙げられる。これらを二種以上組み合わせた基としては、アルキルアリール基(例えば、トリル基、キシリル基などのモノないしトリC1−6アルキルC6−10アリール基など)、アラルキル基(例えば、ベンジル基、フェネチル基などのC6−10アリールC1−6アルキル基など)などが挙げられる。
基[−O−SO2−R2]において、R2で表されるフッ化炭化水素基としては、炭化水素基の少なくとも1つの水素原子をフッ素原子に置換した基であればよく、特に、全ての水素原子がフッ素原子に置換したパーフルオロ炭化水素基が好ましい。そのため、フッ化炭化水素基としては、例えば、上述したR2で表される炭化水素基の少なくとも1つ(好ましくは全て)の水素原子をフッ素原子に置換した基などが挙げられる。具体的なフッ化炭化水素基としては、例えば、フッ化アルキル基(例えば、トリフルオロメチル基、ノナフルオロブチル基などのC1−6パーフルオロアルキル基など)などが挙げられる。
好ましいR2としては、アルキル基(メチル基などのC1−4アルキル基など)、アリール基(フェニル基などのC6−10アリール基など)、アルキルアリール基(モノないしトリC1−4アルキルC6−10アリール基など)、パーフルオロアルキル基(トリフルオロメチル基、ノナフルオロブチル基などのC1−6パーフルオロアルキル基など)、フッ素原子が挙げられ、さらに好ましくはアルキルアリール基(特に、p−メチルフェニル基(p−トリル基)などのC1−4アルキルC6−10アリール基など)である。
なお、L2が脱離基である場合、L1およびL2で表される脱離基の種類は、互いに異なっていてもよいが、同一であるのが好ましい。
ヒドロキシル基を脱離基に変換する方法は特に制限されず、脱離基や式(3)で表されるジオールの種類などに応じて慣用の方法を選択してもよく、例えば、L1、L2で表される脱離基がハロゲン原子である場合、このハロゲン原子に対応するハロゲン化剤(例えば、塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素などのハロゲン化水素、塩化チオニルなどのハロゲン化チオニル、三塩化リン、三臭化リンなどの三ハロゲン化リン、塩化亜鉛などのハロゲン化亜鉛など)を式(3)で表されるジオールに反応させる方法であってもよく;L1、L2で表される脱離基が基[−O−SO2−R2]である場合、スルホニル化剤[例えば、式X1−SO2−R2(式中、X1はハロゲン原子を示し、R2は好ましい態様を含めて前記に同じ。)で表される化合物、式R2−SO2−O−SO2−R2(式中、R2は好ましい態様を含めて前記に同じ。)で表される化合物など]を式(3)で表されるジオールに反応させる方法であってもよく、通常、前記式(3)で表されるジオールが脂肪族ジオールである場合、前者のハロゲン化剤を反応させる方法がよく利用されるが、市販品などを利用することもできる。また、前記式(3)で表されるジオールが脂環族ジオールである場合、後者のスルホニル化剤を反応させる方法がよく利用される。
スルホニル化剤のうち、式X1−SO2−R2で表される化合物が好ましい。式X1−SO2−R2で表される化合物において、ハロゲン原子X1としては、例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられ、好ましくは塩素原子である。
代表的な式X1−SO2−R2で表される化合物としては、例えば、p−トルエンスルホニルクロリド(またはトシルクロリド)、メチルスルホニルクロリド(またはメシルクロリド)などの前記好ましいR2に対応するスルホニルクロリドなどが挙げられる。
スルホニル化剤の使用割合は、例えば、式(3)で表されるジオール1モルに対して、例えば0.1〜10モル(例えば1〜5モル)程度の範囲から選択してもよく、式(2)のL2が脱離基である場合、好ましくは2〜4モル、さらに好ましくは2.5〜3.5モル程度であってもよい。なお、式(2)のL2がヒドロキシル基である場合、スルホニル化剤の割合は少なくてもよく、例えば、式(3)で表されるジオール1モルに対して0.5〜1モル程度であってもよい。
式(3)で表されるジオールとスルホニル化剤との反応は、通常、塩基の存在下で反応させる場合が多い。塩基としては、例えば、アミン類などの有機塩基;金属水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物など)、金属炭酸塩または金属炭酸水素塩(例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属炭酸塩など)などの無機塩基などが挙げられる。これらの塩基は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用することもできる。これらの塩基のうち、アミン類などの有機塩基が好ましい。
アミン類としては、例えば、トリアルキルアミン(例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミンなどのトリC1−6アルキルアミン)、N,N,N’N’−テトラアルキルアルカンジアミン(例えば、N,N,N’N’−テトラメチル−1,6−ヘキサンジアミンなどのN,N,N’N’−テトラC1−6アルキルC2−12アルカンジアミン)、複素環式3級アミン(ピリジンなど)などの第3級アミン類などが挙げられる。
これらのアミン類は単独でまたは二種以上組み合わせて使用することもできる。これらのアミン類のうち、トリエチルアミンなどのトリアルキルアミン、N,N,N’N’−テトラメチル−1,6−ヘキサンジアミンなどのN,N,N’N’−テトラアルキルアルカンジアミンが好ましい。
アミン類の使用割合は、前記式(3)で表されるジオール1モルに対して、例えば2〜10モル、好ましくは2.5〜5モル、さらに好ましくは3〜3.5モル程度であってもよい。
式(3)で表されるジオールとスルホニル化剤との反応は溶媒の存在下で行ってもよい。溶媒としては、例えば、ニトリル類(アセトニトリルなど)、炭化水素類(トルエンなどの芳香族炭化水素類など)、ハロゲン化炭化水素類(ジクロロメタンなど)などが挙げられる。これらの溶媒は単独でまたは二種以上組み合わせて使用することもできる。これらの溶媒のうち、アセトニトリルなどのニトリル類が好ましい。
溶媒の割合は特に制限されず、前記式(3)で表されるジオール、スルホニル化剤および塩基の総量100質量部に対して、例えば100〜1000質量部程度であってもよい。
式(3)で表されるジオールとスルホニル化剤との反応において、反応温度は、例えば−30℃〜30℃、好ましくは−20℃〜10℃、さらに好ましくは−5℃〜5℃であってもよく、通常、氷冷下で反応させてもよい。反応時間は、例えば1〜48時間、好ましくは12〜36時間程度であってもよい。
式(3)で表されるジオールとスルホニル化剤との反応は、通常、不活性雰囲気(例えば、窒素ガス;アルゴンガスなどの希ガスなど)中で、攪拌しながら行うことができ、常圧下、加圧下または減圧下で行ってもよい。
式(3)で表されるジオールとスルホニル化剤との反応は、通常、式(3)で表されるジオールおよび塩基(および、必要に応じて溶媒)との混合物を低温に保持(例えば氷冷)しつつ、そこへスルホニル化剤(および、必要に応じて溶媒)をゆっくり(例えば0.5〜3時間程度かけて)滴下して行ってもよい。
反応終了後、慣用の方法、例えば、中和、洗浄、脱水、ろ過、吸着、濃縮、抽出、晶析、再沈殿、遠心分離、カラムクロマトグラフィーなどの分離精製手段や、これらを組み合わせた手段により分離精製してもよい。
(ii)式(1)で表される化合物の調製
前記式(1)で表される化合物は、前記式(2)で表される化合物と3HBとを反応させることで調製できる。なお、前記式(2)のL2が脱離基である場合、式(1)のmが1である化合物(3量体)が調製でき、L2がヒドロキシル基である場合、式(1)のmが0である化合物(2量体)が調製できる。
前記式(2)で表される化合物としては、例えば、前記式(3)で表されるジオールのスルホニル化物(例えば、トシル化物、メシル化物、トリフリル化物などの前記脱離基[−O−SO2−R2]に対応する誘導体)、ハロゲン化物などが挙げられ、具体的な前記スルホニル化物としては、1,4−ビス(p−トルエンスルホニルオキシメチル)シクロヘキサンなどの脂環族ジオールのスルホニル化物などが挙げられ;具体的な前記ハロゲン化物としては、1,2−ジブロモエタンなどの脂肪族ジオールのハロゲン化物などが挙げられる。
反応に用いる3HBは、光学異性体(R体またはS体)であってもよく、ラセミ体であってもよいが、生分解性の観点から、R体((R)−3−ヒドロキシ酪酸)を少なくとも含むのが好ましい。3HB中のR体の割合、すなわち光学純度(または光学異性体過剰率)は、例えば50%e.e.程度以上(例えば80%e.e.以上)、好ましくは90%e.e.以上(例えば95〜100%e.e.)、さらに好ましくは98〜100%e.e.(例えば99〜100%e.e.、特に実質的に100%e.e.)である。光学純度が低すぎると、機械的特性や生分解性が大きく低下するおそれがある。
3HBの使用割合は、前記式(2)で表される化合物1モルに対して、例えば1〜10モル程度の範囲から選択してもよく、好ましくは2〜3モル程度であってもよい。
前記式(2)で表される化合物と3HBとの反応は、通常、塩基の存在下で行ってもよい。塩基としては、例えば、前記(i)式(2)で表される化合物の調製の項で例示した塩基などが挙げられる。これらの塩基は単独でまたは二種以上組み合わせて使用することもできる。これらの塩基のうち、無機塩基が好ましく、より好ましくは金属炭酸塩または金属炭酸水素塩(例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属炭酸塩など)、さらに好ましくは炭酸カリウムなどのアルカリ金属炭酸塩などが挙げられる。
塩基の割合は、3HB 1モルに対して、例えば1〜2モル、好ましくは1〜1.2モ
ル程度であってもよい。
前記式(2)で表される化合物と3HBとの反応は、溶媒の存在下で行ってもよい。溶媒としては、例えば、アミド類(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのN,N−ジC1−4アルキルC1−3アシルアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどのN−C1−4アルキル−2−ピロリドンなど)などが挙げられる。溶媒は単独でまたは二種以上組み合わせて使用することもできる。溶媒の割合は、例えば、前記式(2)で表される化合物、3HBおよび塩基の総量100質量部に対して、100〜1000質量部程度であってもよい。
前記式(2)で表される化合物と3HBとの反応において、反応条件はL1、L2の種類に応じて適宜選択してもよく、L1、L2が基[−O−SO2−R2]である場合、反応温度は、例えば0〜100℃、好ましくは30〜70℃、さらに好ましくは40〜60℃であってもよく、通常、氷冷下で反応させてもよく、反応時間は、例えば1〜96時間、好ましくは24〜72時間程度であってもよい。また、L1、L2がハロゲン原子である場合、反応温度は、例えば30〜130℃、好ましくは60〜100℃、さらに好ましくは70〜90℃であってもよく、反応時間は、例えば1〜48時間、好ましくは12〜24時間程度であってもよい。
前記式(2)で表される化合物と3HBとの反応は、通常、不活性雰囲気(例えば、窒素ガス;アルゴンガスなどの希ガスなど)中で、攪拌しながら行うことができ、常圧下、加圧下または減圧下で行ってもよい。
反応終了後、慣用の方法、例えば、中和、洗浄、脱水、ろ過、吸着、濃縮、抽出、晶析、再沈殿、遠心分離、カラムクロマトグラフィーなどの分離精製手段や、これらを組み合わせた手段により分離精製してもよい。
[熱可塑性樹脂]
前記式(1)で表されるジオール化合物は、3HB骨格(または3HB単位)を有する熱可塑性樹脂を形成するための重合成分(モノマー)として有効に利用できる。前記式(1)で表されるジオール化合物を重合成分とすることにより、3HBの分解などを有効に抑制して高分子量化できる。
熱可塑性樹脂は、前記式(1)で表されるジオール化合物を少なくとも含むジオール成分を重合成分として含んでいればよく、例えば、ポリウレタン系樹脂(または熱可塑性ポリウレタン系樹脂)(例えば、ポリエステルウレタン樹脂など)、ポリエステル系樹脂(ポリエステル樹脂、ポリエステルカーボネート樹脂など)、ポリエーテル系樹脂などの逐次重合(重縮合または重付加)系熱可塑性樹脂であってもよく、好ましくはポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂である。
そのため、熱可塑性樹脂を形成する重合成分は、通常、ジオール成分とは異なる他の重合成分、例えば、ジイソシアネート成分、ジカルボン酸成分、カーボネート結合形成成分[例えば、ホスゲン、ホスゲン多量体(ジホスゲン、トリホスゲンなど)などのホスゲン類;ジフェニルカーボネートなどの炭酸ジエステルなど]などを含むことが多い。これらの他の重合成分は単独でまたは二種以上組み合わせることもできる。これらの他の重合成分のうち、反応性や生産性などの点から、ジイソシアネート成分、ジカルボン酸成分が好ましい。以下、ジオール成分に加えて、熱可塑性樹脂を形成する主要な重合成分となり得るジイソシアネート成分、ジカルボン酸成分について詳述する。
(ジオール成分)
ジオール成分は、少なくとも前記式(1)で表されるジオール化合物(第1のジオール成分ともいう)を含んでおり、第1のジオール成分は、前記式(1)で表される特定のジオール化合物単独で形成してもよく、二種以上組み合わせて形成してもよい。第1のジオール成分として好ましいジオール化合物は、前記式(1)の項における好ましい態様と同様である。
なお、前記式(1)で表されるジオール化合物を二種以上組み合わせる場合、例えば、前記式(1)において2価の基R1の種類や、3HB単位の立体配置などが異なるジオール化合物を二種以上組み合わせてもよく、mが0である化合物(2量体)と1である化合物(3量体)とを組み合わせてもよい(例えば、前記式(1)で表される所定のジオール化合物の製造において、前記2量体と3量体との混合物が得られた際に、いずれか一方に精製することなく、双方を重合成分に用いてもよい)。
ジオール成分は、得られる樹脂の機械的特性などの物性や生分解性とのバランスなどを考慮して、必要に応じて、第1のジオール成分とは異なる第2のジオール成分を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。代表的な第2のジオール成分としては、例えば、脂肪族ジオール成分、脂環族ジオール成分、芳香族ジオール成分などが挙げられ、具体的なジオールとしては、前記式(1)のR1の項で例示した脂肪族ジオール、脂環族ジオールおよび芳香族ジオールとそれぞれ対応して同様のジオール化合物が挙げられる。
これらの第2のジオール成分は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用することもできる。これらの第2のジオール成分のうち、アルキレングリコールなどの脂肪族ジオール成分が好ましく、さらに好ましくは直鎖状または分岐鎖状C2−12アルキレングリコール(例えば、直鎖状または分岐鎖状C2−8アルキレングリコールなど)、なかでも、直鎖状または分岐鎖状C2−6アルキレングリコール(例えば、直鎖状または分岐鎖状C2−4アルキレングリコールなど)、特にエチレングリコールなどの直鎖状または分岐鎖状C2−3アルキレングリコールなどが好ましい。
熱可塑性樹脂において、ジオール成分に由来する構成単位(ジオール単位ともいう)の割合は、熱可塑性樹脂の重合成分に由来する構成単位全体に対して、例えば1〜70モル%(例えば10〜60モル%)程度の範囲から選択してもよく、好ましくは30〜55モル%(例えば40〜53モル%)、さらに好ましくは45〜52モル%程度であってもよく、通常、ほぼ50モル%程度であってもよい。
また、熱可塑性樹脂において、第1のジオール成分に由来する構成単位(第1のジオール単位ともいう)の割合は、ジオール単位全体に対して、例えば1モル%以上(10〜100モル%)程度の範囲から選択してもよく、好ましくは30モル%以上(50〜100モル%)、より好ましくは60モル%以上(70〜100モル%)、さらに好ましくは80モル%以上(90〜100モル%)、特に95モル%以上などの実質的に100モル%であってもよい。第1のジオール単位が少なすぎると、樹脂の生分解性が低下するおそれがある。
第1のジオール単位は、前記式(1)においてmが0である2量体に由来する構成単位のみで形成されていてもよいが、3HB単位を効率よく導入できる点で、少なくともmが1である3量体に由来する構成単位を含むのが好ましい。そのため、前記3量体に由来する構成単位の割合は、第1のジオール単位全体に対して、例えば1〜100モル%(例えば10〜99モル%)程度の範囲から選択してもよく、好ましくは30〜100モル%(例えば50〜95モル%)、さらに好ましくは60〜100モル%(例えば70〜90モル%)、なかでも80〜100モル%(例えば90〜100モル%)、特に95〜100モル%(実質的に100モル%)程度であってもよい。
なお、熱可塑性樹脂中の3HB単位において、立体配置がR配置(R体)である3HB単位(または(R)−3HB単位)の割合は、3HB単位全体に対して、例えば1〜100モル%(例えば10〜99モル%)程度の範囲から選択してもよく、好ましくは30〜100モル%(例えば50〜95モル%)、さらに好ましくは70〜100モル%(例えば90〜100モル%)、なかでも95〜100モル%(例えば98〜100モル%)、特に99〜100モル%(例えば、99.5〜100モル%、特に実質的に100モル%)程度であってもよい。(R)−3HB単位の割合が少なすぎると、機械的特性や生分解性が大きく低下するおそれがある。
第1のジオール成分と、第2のジオール成分とを組み合わせる場合、第1のジオール単位と第2のジオール成分(特に、アルキレングリコールなどの脂肪族ジオール成分など)に由来する構成単位(第2のジオール単位)との割合は、機械的特性、生分解性などの樹脂の特性を考慮して調整でき、例えば、前者/後者(モル比)=1/99〜99/1程度の範囲から選択してもよく、機械的特性などの物性を大きく損なうことなく生分解性を付与する観点から、好ましくは1/99〜10/90程度であってもよい。第1のジオール単位が少なすぎると、樹脂の生分解性が低下するおそれがあり、第2のジオール単位が少なすぎると、樹脂の機械的特性などの特性を十分に向上できないおそれがある。
なお、本明細書および特許請求の範囲において、「ジオール単位」(「第1のジオール単位」なども含む)または「ジオール成分に由来する構成単位」は、対応するジオール成分の2つのヒドロキシル基から、水素原子を除いた単位(または2価の基)を意味し、「ジオール成分」(ジオール成分として例示される化合物を含む)は、対応する「ジオール単位」と同義に用いる場合がある。
(ジイソシアネート成分)
重合成分がジイソシアネート成分を含んでいると、第1のジオール成分(前記式(1)で表されるエステル結合を有するジオール化合物)などと組み合わせてポリウレタン系樹脂(ポリエステルウレタン樹脂など)などを形成できる。
ジイソシアネート成分としては、化学構造中に重合性基として2つのイソシアネート基を有するジイソシアネート化合物またはその誘導体であればよく、例えば、脂肪族ジイソシアネート成分、脂環族ジイソシアネート成分、芳香脂肪族ジイソシアネート成分、芳香族ジイソシアネート成分、二官能性ウレタンプレポリマーなどが挙げられる。
なお、本明細書および特許請求の範囲において、「ジイソシアネート成分」とは、ジイソシアネート化合物に加えて、その誘導体を含む意味に用いる。ジイソシアネート化合物の誘導体としては、例えば、二量体(ダイマーまたはウレットジオン)や三量体(トリマーまたはイソシアヌレート)などの多量体;ビウレット、アロファネート、カルボジイミドなどの変性体などが挙げられる。
脂肪族ジイソシアネート成分としては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)などの直鎖状または分岐鎖状C2−16アルカンジイソシアネート、およびこれらの誘導体などが挙げられる。
脂環族ジイソシアネート成分としては、例えば、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、水添キシリレンジイソシアネート(水添XDI)、水添ジフェニルメタンジイソシアネート(水添MDI)、ノルボルナンジイソシアネート、およびこれらの誘導体などが挙げられる。
芳香脂肪族ジイソシアネート成分としては、例えば、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、およびこれらの誘導体などが挙げられる。
芳香族ジイソシアネート成分としては、例えば、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート(TDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トルイジンジイソシアネート(TODI)、ジフェニルエーテルジイソシアネート、およびこれらの誘導体などが挙げられる。
二官能性ウレタンプレポリマーとしては、例えば、上記ジイソシアネート成分とジオール成分(例えば、前記第2のジオール成分など)との反応により生成し、遊離のイソシアネート基を2つ有するウレタンプレポリマーなどが挙げられる。
これらのジイソシアネート成分は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのジイソシアネート成分のうち、取り扱い性(成形性または生産性)および生分解性の観点から、HDIなどの脂肪族ジイソシアネート成分が好ましい。
熱可塑性樹脂において、ジイソシアネート成分に由来する構成単位(ジイソシアネート単位ともいう)の割合は、熱可塑性樹脂の重合成分に由来する構成単位全体に対して、例えば0〜70モル%(例えば10〜60モル%)程度の範囲から選択してもよく、好ましくは30〜55モル%(例えば40〜53モル%)、さらに好ましくは45〜52モル%程度であってもよく、通常、ほぼ50モル%程度であってもよい。
また、熱可塑性樹脂において、脂肪族ジイソシアネート成分に由来する構成単位(脂肪族ジイソシアネート単位ともいう)の割合は、ジイソシアネート単位全体に対して、例えば1モル%以上(例えば10〜100モル%)程度の範囲から選択してもよく、好ましくは30モル%以上(例えば50〜100モル%)、より好ましくは60モル%以上(例えば70〜100モル%)、さらに好ましくは80モル%以上(例えば90〜100モル%)、特に95モル%以上などの実質的に100モル%であってもよい。脂肪族ジイソシアネート単位が少なすぎると(芳香族ジイソシアネート単位などの他のジイソシアネート単位が多すぎると)、樹脂の生分解性が低下するおそれがある。
なお、本明細書および特許請求の範囲において、「ジイソシアネート単位」(「脂肪族ジイソシアネート単位」なども含む)または「ジイソシアネート成分に由来する構成単位」は、対応するジイソシアネート成分の2つのイソシアネート基[−N=C=O]を、樹脂中に組み込まれた状態、すなわち、基[−NH−C(=O)−]とした単位(または2価の基)を意味する。
(ジカルボン酸成分)
重合成分がジカルボン酸成分を含んでいると、第1のジオール成分などと組み合わせてポリエステル系樹脂などを形成できる。
ジカルボン酸成分としては、化学構造中に重合性基として2つのカルボキシル基を有するジカルボン酸化合物またはそのエステル形成性誘導体であればよく、例えば、脂肪族ジカルボン酸成分、脂環族ジカルボン酸成分、芳香族ジカルボン酸成分などが挙げられる。
なお、本明細書および特許請求の範囲において、「ジカルボン酸成分」とは、ジカルボン酸に加えて、そのエステル形成性誘導体を含む意味に用いる。エステル形成性誘導体としては、例えば、アルキルエステル、酸ハライド、酸無水物などが挙げられる。前記アルキルエステルとしては、低級アルキルエステル、例えば、メチルエステル、エチルエステル、t−ブチルエステルなどのC1−4アルキルエステルなどが挙げられる。なお、エステル形成性誘導体は、モノエステル(ハーフエステル)またはジエステルであってもよい。
脂肪族ジカルボン酸成分としては、例えば、アルカンジカルボン酸、具体的には、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸などのC2−12アルカン−ジカルボン酸など;不飽和脂肪族ジカルボン酸、具体的には、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのC2−10アルケン−ジカルボン酸;およびこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。
脂環族ジカルボン酸成分としては、例えば、シクロアルカンジカルボン酸、具体的には、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などのC5−10シクロアルカン−ジカルボン酸など;架橋環式シクロアルカンジカルボン酸、具体的には、デカリンジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸、アダマンタンジカルボン酸、トリシクロデカンジカルボン酸などのビまたはトリシクロアルカンジカルボン酸など;シクロアルケンジカルボン酸、具体的には、シクロヘキセンジカルボン酸などのC5−10シクロアルケン−ジカルボン酸など;架橋環式シクロアルケンジカルボン酸、具体的には、ノルボルネンジカルボン酸などのビまたはトリシクロアルケンジカルボン酸;およびこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。
芳香族ジカルボン酸成分としては、例えば、単環式芳香族ジカルボン酸、多環式芳香族ジカルボン酸、およびこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。単環式芳香族ジカルボン酸としては、例えば、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸などのベンゼンジカルボン酸;アルキルベンゼンジカルボン酸、具体的には、4−メチルイソフタル酸などのC1−4アルキル−ベンゼンジカルボン酸などが挙げられる。
多環式芳香族ジカルボン酸としては、例えば、縮合多環式芳香族ジカルボン酸、具体的には、ナフタレンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、フェナントレンジカルボン酸などの縮合多環式C10−24アレーン−ジカルボン酸、好ましくは縮合多環式C10−14アレーン−ジカルボン酸など;ビアリールジカルボン酸、具体的には、2,2’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、3,3’−ジカルボキシ−1,1’−ビナフチルなどのビC6−10アリール−ジカルボン酸など;ビス(カルボキシアルコキシ)ビC6−10アリール、具体的には、2,2’−ビス(カルボキシメトキシ)−1,1’−ビナフチルなどのビス(カルボキシC1−4アルコキシ)ビC6−10アリールなど;ビス[(カルボキシアルコキシ)−C6−10アリール]アルカン、具体的には、ビス[2−(カルボキシメトキシ)−1−ナフチル]メタンなどのビス[(カルボキシC1−4アルコキシ)−C6−10アリール]C1−6アルカンなど;ジアリールアルカンジカルボン酸、具体的には、4,4’−ジフェニルメタンジカルボン酸などのジC6−10アリールC1−6アルカン−ジカルボン酸など;ジアリールケトンジカルボン酸、具体的には、4.4’−ジフェニルケトンジカルボン酸などのジ(C6−10アリール)ケトン−ジカルボン酸など;ジアリールエーテルジカルボン酸、具体的には、4.4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸などのジ(C6−10アリール)エーテル−ジカルボン酸など;ジアリールスルホンジカルボン酸、具体的には、4.4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸などのジ(C6−10アリール)スルホン−ジカルボン酸などが挙げられる。
前記ナフタレンジカルボン酸としては、1,2−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、2,6−ナフタレンジカルボン酸であることが多い。
これらのジカルボン酸成分は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのジカルボン酸成分のうち、機械的特性の観点から、単環式芳香族ジカルボン酸成分(ベンゼンジカルボン酸など)、縮合多環式芳香族ジカルボン酸成分(ナフタレンジカルボン酸など)などの芳香族ジカルボン酸成分が好ましく、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などのC6−10アレーン−ジカルボン酸成分(特にテレフタル酸などのベンゼンジカルボン酸成分)が好ましい。また、生分解性の観点からは、脂肪族ジカルボン酸成分、例えば、アジピン酸などのC2−12アルカン−ジカルボン酸が好ましい。
熱可塑性樹脂において、ジカルボン酸成分に由来する構成単位(ジカルボン酸単位ともいう)の割合は、熱可塑性樹脂の重合成分に由来する構成単位全体に対して、例えば0〜70モル%(例えば10〜60モル%)程度の範囲から選択してもよく、好ましくは30〜55モル%(例えば40〜53モル%)、さらに好ましくは45〜52モル%程度であってもよく、通常、ほぼ50モル%程度であってもよい。
なお、本明細書および特許請求の範囲において、「ジカルボン酸単位」または「ジカルボン酸成分に由来する構成単位」は、対応するジカルボン酸の2つのカルボキシル基から、OH(ヒドロキシル基)を除いた単位(または2価の基)を意味する。
(熱可塑性樹脂の製造方法)
熱可塑性樹脂の製造方法は、第1のジオール成分を重合成分として重合する限り特に制限されず、熱可塑性樹脂(または重合成分)の種類に応じて触媒や反応条件などを適宜選択すればよく、慣用の方法を利用できる。また、重合反応は、重合成分の種類に応じて、1または複数回行ってもよく、例えば、1回目の重合で得られたオリゴマー(またはプレポリマー)を、2回目の重合の重合成分として用いて熱可塑性樹脂を調製してもよい。
なお、各重合における反応温度(重合温度)は、第1のジオール成分中の3HB単位の分解(熱分解など)を有効に抑制して高分子量化する観点から、例えば150℃以下(例えば30〜150℃)、好ましくは120℃以下(例えば50〜120℃)、さらに好ましくは100℃以下(例えば60〜100℃)、特に90℃以下(例えば70〜90℃、好ましくは75〜85℃)程度であってもよい。そのため、重合成分は、第1のジオール成分(特に3HB単位の2級アルコール)との反応性に優れ、比較的低温でも容易に重合可能な重合成分、例えば、ジイソシアネート成分、およびジカルボン酸の酸ハライド(酸塩化物など)または酸無水物を含むのが好ましい。
(i)重合成分がジイソシアネート成分を含む場合
ジオール成分と、ジイソシアネート成分とを含む重合成分を重合する場合、ジオール成分とジイソシアネート成分との使用割合(または仕込み割合)は、他の重合成分との関係で調整してもよく、例えば、前者/後者(モル比)=1/0.1〜1/10(例えば1/0.5〜1/5)程度の広い範囲から選択してもよく、通常(特にポリエステルウレタン樹脂などのポリウレタン系樹脂などを重合する場合)、1/0.8〜1/1.2、好ましくは1/0.9〜1/1.1、さらに好ましくは1/1〜1/1.1程度であってもよい。なお、ジオール成分などの重合成分は、例えば1〜12時間程度減圧乾燥したものを用いるのが好ましい。
反応は、必要に応じて触媒の存在下で行ってもよい。触媒としては、例えば、有機スズ系化合物、有機ジルコニウム化合物、有機チタン化合物、ナフテン酸金属塩などの有機金属触媒、第3級アミン類またはその塩などが挙げられる。
有機スズ化合物としては、オクチル酸スズ(II)(または2−エチルヘキサン酸スズ(II))などのアルカン酸スズ(II)(またはスズ(II)ビスアルカノエート);ジブチルスズアセテート、ジブチルスズジラウレート(またはジラウリン酸ジブチルスズ(IV))などのジアルキルスズ(IV)ジアシレート;ジブチルジメトキシスズ(IV)などのジアルキルジアルコキシスズ(IV)などが挙げられる。
有機ジルコニウム化合物としては、例えば、ジルコニウム(IV)テトラn−ブトキシドなどのジルコニウム(IV)テトラアルコキシド、ジルコニウム(IV)テトラアセチルアセトナト、ジルコニウム(IV)ジブトキシビス(エチルアセトアセテート)などのジルコニウム(IV)キレート錯体などが挙げられる。
有機チタン化合物としては、例えば、チタン(IV)テトラn−ブトキシド、チタン(IV)テトラ2−エチルヘキシルオキシドなどのチタン(IV)テトラアルコキシド、チタン(IV)テトラアセチルアセトナトなどのチタン(IV)キレート錯体などが挙げられる。
ナフテン酸金属塩としては、ナフテン酸銅、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルトなどが挙げられる。
第3級アミン類としては、鎖状第3級アミン(または非複素環式アミン類)、複素環式アミン類などが挙げられる。
鎖状第3級アミンとしては、例えば、トリエチルアミンなどのトリアルキルアミン;シクロヘキシルジメチルアミンなどのシクロアルキル−ジアルキルアミン;N−メチルジシクロヘキシルアミンなどのN−アルキル−ジシクロアルキルアミン;ベンジルジメチルアミンなどのアラルキル−ジアルキルアミン;2−ヒドロキシエチルジメチルアミン、2−ヒドロキシエチルジエチルアミンなどのヒドロキシアルキル−ジアルキルアミン;2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルジメチルアミンなどのヒドロキシアルコキシアルキル−ジアルキルアミン;N,N,N,N−テトラメチル−1,4−ブタンジアミン、N,N,N,N−テトラメチル−1,6−ヘキサンジアミンなどのN,N,N,N−テトラアルキル−アルカンジアミン;N,N−ビス[3−(ジメチルアミノ)プロピル]アミンなどのN,N−ビス[(ジアルキルアミノ)アルキル]アミン;N,N,N’,N’’,N’’−ペンタメチルジエチレントリアミン、N−メチル−N,N−ビス[3−(ジメチルアミノ)プロピル]アミンなどのN−アルキル−N,N−ビス[(ジアルキルアミノ)アルキル]アミン;ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテルなどのビス(ジアルキルアミノアルキル)エーテル;N,N,N’−トリメチル−N’−(2−ヒドロキシエチル)−ビス(2−アミノエチル)エーテルなどのN,N,N’−トリアルキル−N’−(ヒドロキシアルキル)−ビス(アミノアルキル)エーテルなどが挙げられる。
複素環式第3級アミンとしては、例えば、ピリジン、N,N−ジメチルピペラジン、モルホリン類[例えば、N−アルキルモルホリン(N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリンなど)、ビス(2−モルホリノエチル)エーテルなど]、トリエチレンジアミン類[例えば、トリエチレンジアミン(DABCO)、ヒドロキシメチルトリエチレンジアミンなど]、環状アミジン類[例えば、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン(DBN)、1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)など]などが挙げられる。
第3級アミン類(例えば、環状アミジン類)は塩であってもよく、例えば、カルボン酸塩(ギ酸塩、オクチル酸塩、など)、スルホン酸塩(p−トルエンスルホン酸塩など)などの有機酸塩、フェノール塩などが挙げられる。
これらの触媒は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらの触媒のうち、有機金属触媒(ジラウリン酸ジブチルスズ(IV)などの有機スズ化合物など)がよく利用される。
触媒の使用量は、ジイソシアネート成分1モルに対して、例えば0.00001〜0.1モル、好ましくは0.0001〜0.01モル、さらに好ましくは0.0005〜0.005モル程度であってもよい。
反応は、溶媒の存在下または非存在下で行ってもよい。溶媒としては、ジイソシアネートに対して不活性または非反応性の溶媒であれば特に制限されず、例えば、エーテル類、ケトン類、エステル類、炭化水素類、ハロゲン系溶媒、ニトリル類、アミド類、スルホキシド類などが挙げられる。
エーテル類としては、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテルなどのジアルキルエーテル;1,4−ジオキサン、テトラヒドロフランなどの環状エーテル類などが挙げられる。
ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン(エチルメチルケトン)、ジイソプロピルケトン、イソブチルメチルケトンなどのジアルキルケトンなどが挙げられる。
エステル類としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどの酢酸エステル類などが挙げられる。
炭化水素類としては、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素類、シクロヘキサンなどの脂環族炭化水素類、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類などが挙げられる。
ハロゲン系溶媒としては、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素類などが挙げられる。
ニトリル類としては、アセトニトリルなどが挙げられる。
アミド類としては、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチル−2−ピロリドンなどが挙げられる。
スルホキシド類としては、ジメチルスルホキシド(DMSO)などが挙げられる。
これらの溶媒は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらの溶媒のうち、DMFなどのアミド類が好ましい。溶媒は脱水した溶媒であるのが好ましい。
また、反応は空気中または不活性ガス雰囲気下で行ってもよい。不活性ガスとしては、窒素ガス、希ガス(アルゴンガスなど)などが挙げられる。また、反応は、減圧下で行ってもよいが、通常、加圧下または常圧で行う場合が多い。また、反応温度は、前述した重合温度の範囲であるのが好ましく、反応時間は、例えば1〜48時間、好ましくは12〜36時間程度であってもよい。
なお、反応終了後、慣用の分離方法、例えば、濾過、濃縮、乾燥、抽出、晶析、再結晶、再沈殿、カラムクロマトグラフィーなどの分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により分離精製できる。
(ii)重合成分がジカルボン酸成分を含む場合
ジオール成分と、ジカルボン酸成分とを含む重合成分を重合する場合、例えば、エステル交換法、直接重合法などの溶融重合法、溶液重合法、界面重合法などで調製でき、溶液重合法が好ましい。なお、反応は、重合方法に応じて、溶媒の存在下または非存在下で行ってもよい。
ジオール成分とジカルボン酸成分との使用割合(または仕込み割合)は、他の重合成分との関係で調整してもよく、例えば、前者/後者(モル比)=1/0.1〜1/10(例えば1/0.5〜1/5)程度の広い範囲から選択してもよく、通常(特にポリエステル樹脂などのポリエステル系樹脂などを重合する場合)、1/0.8〜1/1.2、好ましくは1/0.9〜1/1.1、さらに好ましくは1/1〜1/1.1程度であってもよいが、必ずしもこの範囲である必要はなく、各ジオール成分および各ジカルボン酸成分から選択される少なくとも一種の成分を、予定する導入割合に対して過剰に用いて反応させてもよい。例えば、反応系から留出可能なエチレングリコールなどのジオール成分を重合成分に含む場合、ポリエステル系樹脂中に導入される割合(または導入割合)よりも過剰に使用してもよい。
反応は、触媒の存在下で行ってもよい。触媒としては、慣用のエステル化触媒、例えば、金属触媒などが利用できる。金属触媒としては、例えば、ナトリウムなどのアルカリ金属;マグネシウム、カルシウム、バリウムなどのアルカリ土類金属;チタン、マンガン、コバルトなどの遷移金属;亜鉛、カドミウムなどの周期表第12族金属;アルミニウムなどの周期表第13族金属;ゲルマニウム、鉛などの周期表第14族金属;アンチモンなどの周期表第15族金属などを含む金属化合物が用いられる。金属化合物としては、例えば、アルコキシド;酢酸塩、プロピオン酸塩などの有機酸塩;ホウ酸塩、炭酸塩などの無機酸塩;金属酸化物などであってもよく、これらの水和物であってもよい。代表的な金属化合物としては、例えば、二酸化ゲルマニウム、水酸化ゲルマニウム、シュウ酸ゲルマニウム、ゲルマニウムテトラエトキシド、ゲルマニウム−n−ブトキシドなどのゲルマニウム化合物;三酸化アンチモン、酢酸アンチモン、アンチモンエチレングリコレートなどのアンチモン化合物;テトラ−n−プロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート(チタン(IV)テトラブトキシド)、シュウ酸チタン、シュウ酸チタンカリウムなどのチタン化合物;酢酸マンガン・4水和物などのマンガン化合物;酢酸カルシウム・1水和物などのカルシウム化合物などが挙げられる。
これらの触媒は単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。複数の触媒を用いる場合、反応の進行に応じて、各触媒を添加することもできる。これらの触媒のうち、酢酸マンガン・4水和物、酢酸カルシウム・1水和物、二酸化ゲルマニウム、チタン(IV)テトラブトキシドなどが好ましい。触媒の使用量は、例えば、ジカルボン酸成分1モルに対して、0.01×10−4〜100×10−4モル、好ましくは0.1×10−4〜40×10−4モルである。
また、反応は、必要に応じて、熱安定剤や酸化防止剤などの安定剤の存在下で行ってもよい。通常、熱安定剤がよく利用され、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、ジブチルホスフェート(リン酸ジブチル)、亜リン酸、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイトなどのリン化合物などが挙げられる。これらの熱安定剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用することもできる。これらの熱安定剤のうち、リン酸ジブチルがよく利用される。熱安定剤の使用量は、例えば、ジカルボン酸成分1モルに対して、0.01×10−4〜100×10−4モル、好ましくは0.1×10−4〜40×10−4モルである。
なお、重合温度を低く調整し易く3HB単位の分解を有効に抑制できる観点から、ジカルボン酸成分として酸クロリドなどの酸ハライドを用いてジオール成分と反応させるのが好ましい。ジカルボン酸成分として酸ハライドを用いる場合、反応で生成するハロゲン化水素をトラップするために塩基の存在下で反応させてもよい。塩基としては、例えば、金属水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カルシウムなどのアルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物など)、金属炭酸塩(炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどの炭酸アルカリ金属またはアルカリ土類金属塩など)などの無機塩基;アミン類(トリエチルアミンなどのトリアルキルアミン、ベンジルジメチルアミンなどの芳香族第3級アミン、ピリジンなどの複素環式第3級アミンなど)などの有機塩基などが挙げられる。塩基は、単独でまたは二種以上組み合わせてもよい。塩基の使用量は、酸ハライド1モルに対して、例えば0.8〜20モル(例えば1〜10モル)、好ましくは1.2〜5モル、さらに好ましくは1.5〜3モル程度であってもよい。
反応は、通常、不活性ガス、例えば、窒素ガス;ヘリウムガス、アルゴンガスなどの希ガスなどの雰囲気中で行われる。また、反応は、減圧下、例えば、1×102〜1×104Pa程度で行うこともできる。通常、エステル交換反応は、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下で行うことが多く、重縮合反応は、減圧下で行うことが多い。反応温度は、前述した重合温度の範囲であるのが好ましく、反応時間は、例えば1〜48時間、好ましくは12〜36時間程度であってもよい。
なお、反応終了後、慣用の分離方法、例えば、濾過、濃縮、乾燥、抽出、晶析、再結晶、再沈殿、カラムクロマトグラフィーなどの分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により分離精製できる。
(熱可塑性樹脂の特性および用途)
前記熱可塑性樹脂は、3HBに由来する骨格(3HB単位)を有するにもかかわらず、化学合成により調製しても意外にも分子量を大きく向上できるため、機械的特性や成形性(生産性)に優れている。
熱可塑性樹脂の平均分子量はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)などによりポリスチレン換算で測定でき、重量平均分子量Mwは、例えば30000以上(例えば、30000〜300000)程度の範囲から選択してもよく、好ましくは50000以上(例えば、80000〜200000)、さらに好ましくは100000以上(例えば、110000〜180000)、特に120000以上(例えば、130000〜150000)程度であってもよい。また、数平均分子量Mnは、例えば10000以上(例えば、20000〜200000)程度の範囲から選択してもよく、好ましくは30000以上(例えば、40000〜100000)、さらに好ましくは50000以上(例えば、55000〜80000)、特に60000以上(例えば、60000〜65000)程度であってもよい。多分散度Mw/Mnは、例えば1〜10(例えば1.2〜5)程度の範囲から選択してもよく、好ましくは1.5〜3(例えば2〜2.5)程度であってもよい。
重量平均分子量Mw、数平均分子量Mnなどの平均分子量が低すぎると、機械的特性や成形性(生産性)が低下し易く、フィルム状などに成形できなくなるおそれがある。
なお、本明細書および特許請求の範囲において、重量平均分子量Mw、数平均分子量Mnおよび多分散度Mw/Mnは、後述する実施例に記載の方法により測定できる。
また、前記式(1)で表される第1のジオール成分を重合成分に含む前記熱可塑性樹脂は、好気性および嫌気性のいずれの条件下(特に嫌気性条件下)であっても3HB単位に由来する高い生分解性を示し易いため、生分解性樹脂を調製することもできる。すなわち、前記式(1)で表される第1のジオール成分を重合成分に利用することで、得られる樹脂の生分解性を向上することができる。さらに、前述の機械的特性や成形性(または生産性)と、生分解性とを両立することもできる。
そのため、前記熱可塑性樹脂を少なくとも含む成形体は、優れた機械的特性や成形性(または生産性)を活かして様々な用途に利用できるのみならず、特に生分解性を示すこともできるため、使い捨て製品(ディスポーザブル製品)などにも有効に利用できる。
前記成形体は、前記熱可塑性樹脂とは異なる他の熱可塑性樹脂(前記式(1)で表されるジオール化合物を重合成分に含まない熱可塑性樹脂)や、慣用の添加剤などを含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、充填剤または補強剤、染顔料などの着色剤、導電剤、難燃剤、可塑剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤、分散剤、流動調整剤、レベリング剤、消泡剤、表面改質剤、加水分解抑制剤、炭素材、安定剤、低応力化剤などを含んでいてもよい。安定剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤などが挙げられる。低応力化剤としては、例えば、シリコーンオイル、シリコーンゴム、各種プラスチック粉末、各種エンジニアリングプラスチック粉末などが挙げられる。これらの添加剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用してもよい。
成形体は、例えば、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法、トランスファー成形法、ブロー成形法、加圧成形法、キャスティング成形法などを利用して製造することができる。
また、成形体の形状は、特に限定されず、例えば、線状、繊維状、糸状などの一次元的構造、フィルム状、シート状、板状などの二次元的構造、凹または凸レンズ状、棒状、中空状(管状)、容器または袋状などの三次元的構造などが挙げられる。
特に、熱可塑性樹脂は、機械的特性や成形性に優れているため、容易にフィルム状に形成でき、薄くても十分な強度を有しており取り扱い性も高い。そのため、本発明には、前記熱可塑性樹脂で形成されたフィルム(またはシート)も含まれる。
このようなフィルムの平均厚みは、1〜1000μm程度の範囲から用途に応じて選択でき、例えば1〜200μm、好ましくは5〜150μm、さらに好ましくは10〜120μm(例えば80〜120μm)程度である。
このようなフィルムは、前記熱可塑性樹脂を、慣用の成膜方法、例えば、キャスティング法(溶剤キャスト法)、溶融押出法、カレンダー法などを用いて成膜(または成形)することにより製造できる。
フィルムは、未延伸または延伸フィルムであってもよい。なお、延伸フィルムは、一軸延伸フィルムまたは二軸延伸フィルムのいずれであってもよい。延伸倍率は、一軸延伸または二軸延伸において各方向にそれぞれ、例えば1.1〜10倍、好ましくは1.2〜8倍、さらに好ましくは1.5〜6倍である。なお、二軸延伸の場合、等延伸、例えば、縦横両方向に1.5〜5倍延伸であってもよく、偏延伸、例えば、縦方向に1.1〜4倍、横方向に2〜6倍延伸であってもよい。また、一軸延伸の場合、縦延伸、例えば、縦方向に2.5〜8倍延伸であってもよく、横延伸、例えば、横方向に1.2〜5倍延伸であってもよい。延伸フィルムの平均厚みは、例えば、1〜150μm、好ましくは3〜120μm、さらに好ましくは5〜100μmである。
なお、このような延伸フィルムは、成膜後のフィルム(または未延伸フィルム)に、延伸処理を施すことにより得ることができる。延伸方法は、特に制限されず、一軸延伸の場合、湿式延伸法または乾式延伸法のいずれであってもよく、二軸延伸の場合、テンター法(フラット法)であってもチューブ法であってもよいが、延伸厚みの均一性に優れるテンター法が好ましい。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、評価方法について下記に示す。
[評価方法]
(NMR)
核磁気共鳴装置(日本分光(株)製「JNM−GSX270」)を用いて、試料をCDCl3に溶解して、1H−NMRスペクトル(270MHz)および13C−NMRスペクトル(67.5MHz)を測定した。
(GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ))
GPC測定装置(日本分光(株)製「GL−7400シリーズ」)を用いて、試料をテトラヒドロフラン(THF)に溶解して1mL/分の条件下、RIで検出して測定し、数平均分子量Mn、重量平均分子量Mw、多分散度Mw/Mnを標準ポリスチレン換算で算出した。
(生分解試験)
ISO 15985に従って、嫌気条件下で生分解性を評価した。
(FT−IR)
フーリエ変換赤外分光光度計(サーモフィッシャーサイエンティフィック(株)製「Nicolet iS5」)を用いて、ATR法(分解能4cm−1、積算回数64回)にて測定した。
[実施例1]
(シクロヘキサンジメタノールのトシル化)
(式中、Tsはトシル基(p−トルエンスルホニル基)を示す)。
アルゴン気流下、フラスコに上記式(3-1)で表されるシクロヘキサンジメタノール3.51g(24.3mmol)、トリエチルアミン7.39g(73.0mmol)、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,6−ヘキサンジアミン0.84g(4.87mmol)、アセトニトリル100mLを添加し、氷冷した。p−トルエンスルホニルクロリド13.92g(73.0mmol)とアセトニトリル100mLの混合液を1時間かけて滴下し、氷冷下で1時間撹拌後、室温で24時間撹拌した。N,N−ジメチルエチレンジアミン21.8g(24.7mmol)を添加したのち、水100mLを投入し、濾別後1Lの水で洗浄、減圧乾燥した。得られた反応物にジクロロメタン/メタノール混合液(50/50、vol/vol)約200mLを添加し、加温して溶解した。放冷後、析出物を濾別して減圧乾燥し、白色固体の上記式(2-1)で表される1,4−ビス(p−トルエンスルホニルオキシメチル)シクロヘキサン(CHDM−Ts:収量9.89g、単離収率89.9%)を得た。
得られたCHDM−Tsの1H−NMRスペクトルおよび13C−NMRスペクトルの測定結果を図1〜2および以下に示す。
1H−NMR(270MHz,CDCl3):δ=0.86−1.75(10H,−CH−CH 2−CH 2−CH−)、2.45(s,6H,CH 3−Ar−)、3.78−3.87(d,4H,−SO3−CH 2−CH−)、7.35(d,4H,ArH)、7.76(d,4H,ArH)。
13C−NMR(67.5MHz,CDCl3):δ=21.74、24.61(−CH−CH2−CH2−)、28.10(CH3−Ar−)、34.46、37.01(−CH2−CH(CH2−)−CH2−)、127.73、127.76、129.71、129.76、132.87、132.89、144.58、144.66(ArC)。
(3HBジオールの合成)
(式中、Tsはトシル基(p−トルエンスルホニル基)を示す)。
アルゴン気流下、フラスコに式(2-1)で表されるCHDM−Ts 9.20g(20.3mmol)、(R)−3−ヒドロキシ酪酸((R)−3HB、99%e.e.以上)4.66g(44.8mmol)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)150mLを添加し溶解させたのち、炭酸カリウム6.18g(44.8mmol)を加え、50℃で48時間撹拌した。水500mLを投入し、ヘキサン/酢酸エチル(3/1,vol/vol)500mL×3で抽出後、ブライン500mLで洗浄した。硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を留去し、カラム精製(ヘキサン/酢酸エチル(体積比):1/1→1/2)して薄黄色オイルの上記式(1-1)で表される3HBジオール(1,4−ビス(3−ヒドロキシブタノイルオキシメチル)シクロヘキサン:収量4.12g、単離収率44.8%)を得た。
得られた式(1-1)で表される3HBジオールの1H−NMRスペクトルおよび13C−NMRスペクトルの測定結果を図3〜4および以下に示す。
1H−NMR(270MHz,CDCl3):δ=0.93−2.04(10H,−CH−CH 2−CH 2−CH−)、1.23(d,6H,CH 3−CH−)、2.51(d,4H,−CH 2−C(=O)−O−)、3.10(s,2H,−OH)、4.00(d,4H,−CH−CH 2−O−)、4.10−4.30(m,2H,CH3−CH(−OH)−CH2−)。
13C−NMR(67.5MHz,CDCl3):δ=22.48、25.22(−CH−CH2−CH2−)、28.75(CH3−CH−)、34.32、36.90(−CH−CH2−O−)、42.75(−CH2−C(=O)−O−)、60.33、64.17(CH3−CH(−OH)−CH2−)、67.22、69.40(−CH−CH2−O−)。
なお、式(1-1)で表される3HBジオールが異性体混合物であるため、13C−NMRスペクトルでは2種類のピーク(上記帰属のうち、化学シフト値を2つ記載したものに対応するピーク)として観測された炭素が見られた。
[実施例2]
(3HBポリエステルウレタンの重合)
実施例1で得られた式(1-1)で表されるジオール3HBジオール4.86g(15.36mmol)を60℃で4時間減圧乾燥したのち、ジラウリン酸ジブチルすず10.2mg(0.016mmol)を添加し、アルゴン置換をした。脱水したDMF 15mLとヘキサメチレンジイソシアネート2.7269g(16.21mmol)を添加し、80℃で24時間撹拌して高粘度の薄黄色溶液を得た。得られた反応液をDMF 20mLで希釈したのち、水800mLへ投入し、濾別後、60℃で6時間減圧乾燥した。テトラヒドロフラン100mLを添加し、加温して溶解させ、水1Lへ投入して再沈殿させた。濾別後、60℃で8時間減圧乾燥して白色固体として上記式中の下段に示される3HBポリエステルウレタンを得た。
得られた3HBポリエステルウレタンの1H−NMRスペクトルおよび13C−NMRスペクトルの測定結果を図5〜6および以下に示す。
1H−NMR(270MHz,CDCl3):δ=0.91−1.89(18H,−NH−CH2−CH 2−CH 2−,−CH2−CH(−CH 2)−CH 2−)、1.30(d,6H,CH 3−CH−)、2.44−2.68(m,4H,−CH−CH 2−C(=O)−O−)、3.07−3.16(m,4H,−NH−CH 2−CH2−CH2−)、3.85−3.98(d,4H,−CH−CH 2−O−)、4.60−5.00(br,2H,−NH−)、5.11−5.18(m,2H,CH3−CH−)。
13C−NMRスペクトルにおいて、エステル結合由来の炭素(170.31ppmのC=O)、およびウレタン結合由来の炭素(155.54ppmのC=O)の2種類のピークが観測されたことから、目的とする3HBポリエステルウレタンが得られたことを確認した。
得られた3HBポリエステルウレタンのGPCの測定したところ、数平均分子量Mnが63000、重量平均分子量Mwが142000、多分散度Mw/Mnが2.256であり、高分子量のポリエステルウレタンが得られていることが分かった。
また、得られた3HBポリエステルウレタンを用いて、120℃、1MPaの条件でプレス機(アズワン(株)製「AH−2003」)により2分間プレスした後、室温、1MPaの条件で冷却して、平均厚み100μmのフィルムを作製した。フィルムは十分な強度を有しており、簡便に調製できて成形性も高かった。
[実施例3]
(3HBジオールの合成)
アルゴン気流下、(R)−3−ヒドロキシ酪酸((R)−3HB、99%e.e.以上)8.75g(84.05mmol)、上記式(2-2)で表される1,2−ジブロモエタン7.17g(38.17mmol)、DMF 40mLを添加し、室温で攪拌した。炭酸カリウム11.62g(84.07mmol)を加えて攪拌したところ、CO2の発生を伴いおよそ30分後にゲル化した。DMFをさらに40mL追加し、80℃で18時間加熱攪拌し、白色スラリーを得た。この白色スラリーをセライトろ過し、60℃、0.2kPaで溶媒を留去し、薄黄色オイルを得た。得られた薄黄色オイルをカラム精製(CHCl3/MeOH(体積比)=75:1→10:1)することで上記式(1-2)で表される3HBジオール(1,2−ビス(3−ヒドロキシブタノイルオキシメチル)エタン:収量5.05g、収率56.5%)を薄茶色オイルとして得た。
得られた式(1-2)で表される3HBジオールの1H−NMRスペクトルおよび13C−NMRスペクトルの測定結果を図7〜8および以下に示す。
1H−NMR(270MHz,CDCl3):δ=1.23(d,6H,CH 3−CH−)、2.41−2.57(dd,4H,−CH 2−C(=O)−O−)、2.85−3.15(br,2H,−OH)、4.16−4.27(m,2H,CH3−CH−)、4.33(t,4H,−O−CH 2−)。
13C−NMR(67.5MHz,CDCl3):δ=22.59(CH3−CH−)、42.91(−CH2−C(=O)−O−)、62.17(−O−CH2−)、64.19(CH3−CH−)、172.23(−CH2−C(=O)−O−)。
なお、式(1-2)で表される3HBジオールでは、異性体混合物は確認されなかった。
[比較例1]
(ポリウレタンの重合およびその生分解性)
シクロヘキサンジメタノール(CHDM、60℃で1.5時間真空乾燥)0.74gおよび約1mgのエチルヘキサン酸すずを、DMF 5mLに加えて窒素置換した。ここにヘキサメチレンジイソシアネート0.91gを添加し、80℃に加熱して7時間反応した。得られた反応液にDMF 10.0mLを加え、さらに蒸留水を300.55mL加えて析出した白色固体を濾過し、60℃で乾燥して、3HB単位を含まないポリウレタンを得た。得られたポリウレタンのMnは5500、Mwは11000であった。
この3HB単位を含まないポリウレタンを用いて、180℃、1MPaの条件でプレス機(アズワン(株)製「AH−2003」)により2分間プレスした後、室温、1MPaの条件で冷却して、平均厚み100μmのフィルムを作製した。得られたポリウレタンフィルムを用いて生分解試験を行ったところ、77日後もバイオガス化する傾向は見られず、分子量もほとんど変化しなかった(Mn=4900、Mw=9800)。
[実施例4]
(3HBポリエステルウレタンの生分解性)
実施例2で得られた3HBポリエステルウレタンを用いて、180℃、1MPaの条件でプレス機(アズワン(株)製「AH−2003」)により2分間プレスした後、室温、1MPaの条件で冷却して、平均厚み100μmのフィルムを作製した。得られた3HBポリエステルウレタンフィルムを用いて生分解試験を行ったところ、77日後に約5%がバイオガス化し、Mnが63000から880に、Mwが142000から2200にそれぞれ低下していた。
また、生分解試験前後における3HBポリエステルウレタンのFT−IRスペクトルを図9に示す。図9から明らかなように、ウレタン結合のピークトップで規格化した際に、生分解試験後のエステル結合の吸収ピークが相対的に小さくなっていることから、3HB単位とCHDM単位とのエステル結合が選択的(または優先的)に切断されていることが分かった。
[比較例2]
(CHDMの生分解性)
モノマーであるCHDMの生分解性を評価した結果を図10に示す。図10から明らかなように、35日経過後もバイオガス化する傾向は見られず、CHDMは生分解性を示さないことが分かった。
この結果から、実施例4の3HBポリエステルウレタンの生分解試験後にもCHDMは残存していると考えられるが、水溶性のために試験後の汚泥中に溶解した状態で残存していると推測される。実施例4の生分解試験後の平均分子量の値(Mn=880、Mw=2200)には、汚泥中に溶解したCHDMの影響が反映されていないため、実際にはより一層低い値になると考えられる。