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JP2020172035A - 積層体 - Google Patents

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JP2020172035A
JP2020172035A JP2019073673A JP2019073673A JP2020172035A JP 2020172035 A JP2020172035 A JP 2020172035A JP 2019073673 A JP2019073673 A JP 2019073673A JP 2019073673 A JP2019073673 A JP 2019073673A JP 2020172035 A JP2020172035 A JP 2020172035A
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実央 山中
Mio Yamanaka
実央 山中
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Abstract

【課題】強度および透明性に優れ、柔軟性に優れた積層体を提供すること。
【解決手段】セロハンシートの少なくとも一面に、繊維幅が1,000nm以下の微細繊維状セルロースと水溶性高分子とを含有する微細繊維状セルロース含有層を有する積層体であって、該微細繊維状セルロース含有層の厚みが、10μm以上500μm以下であり、該積層体の厚みムラが50%以下である、積層体。
【選択図】なし

Description

本発明は、積層体に関する。
再生セルロースフィルムは一般にセロハン、セロハンフィルム等と称され、各種物品の包装資材、シートの基材等として利用されている。しかし、現状では、セロハンは、製造工程においてセルロースへの転化を含むため、膜厚を厚く製造することが困難である。通常、セロハンの厚みは、10μm乃至50μmである。セロハンは、透明性に優れ、適度な剛性を備える点で優れているものの、膜厚の制約により使用が限定されている。
特許文献1には、セロハンの帯電防止性能を最大限活かしつつ、厚さを増すことを可能とし、しかも生分解性能を高めた帯電防止積層セロハンを得るための製造方法を提供することを目的として、複数枚のセロハンフィルムを含水して水膨潤セロハン紙とし、前記水膨潤セロハン紙同士の間に水溶性接着剤を塗布して貼り合わせて積層し、その後乾燥することを特徴とする帯電防止積層セロハンの製造方法が記載されている。
特開2013−166362号公報
特許文献1に記載された積層セロハンの製造方法では、肉厚な積層セロハンは得られるものの、セロハンフィルム同士を積層するため、ヘーズが低下する傾向がある。
本発明は、強度および透明性に優れ、柔軟性に優れた積層体を提供することを目的とする。さらに、本発明は、前記積層体の生産性に優れた製造方法を提供することを目的とする。
本発明者等は、セロハンシートの少なくとも一面に、微細繊維状セルロースと水溶性高分子とを含有する微細繊維状セルロース含有層を有する積層体とすることにより、上記の課題が解決されることを見出した。
すなわち、本発明は、以下の<1>〜<6>に関する。
<1> セロハンシートの少なくとも一面に、繊維幅が1,000nm以下の微細繊維状セルロースと水溶性高分子とを含有する微細繊維状セルロース含有層を有する積層体であって、該微細繊維状セルロース含有層の厚みが、10μm以上500μm以下であり、該積層体の厚みムラが50%以下である、積層体。
<2> 前記微細繊維状セルロース含有層の固形分中の微細繊維状セルロースの含有量が5質量%以上95質量%以下である、<1>に記載の積層体。
<3> セロハンシート、および繊維幅が1,000nm以下の微細繊維状セルロースと水溶性高分子とを含有する微細繊維状セルロース含有シートを積層して、積層物を得る積層工程、および該積層物を乾燥する乾燥工程をこの順で有し、該積層物において、該セロハンシートおよび該微細繊維状セルロース含有シートの少なくともいずれか1つが湿潤状態である、積層体の製造方法。
<4> 該微細繊維状セルロース含有シートの厚みが、10μm以上500μm以下である、<3>に記載の積層体の製造方法。
<5> 前記積層工程の後、前記乾燥工程の前に、前記積層物を圧着する工程をさらに有する、<3>または<4>に記載の積層体の製造方法。
<6> 前記乾燥工程における乾燥温度が50℃以上である、<3>〜<5>のいずれかに記載の積層体の製造方法。
本発明によれば、強度および透明性に優れ、柔軟性に優れた積層体を提供することができる。さらに、本発明によれば、前記積層体の生産性に優れた製造方法を提供することができる。
図1は、リンオキソ酸基を有する繊維状セルロース含有スラリーに対するNaOH滴下量とpHの関係を示すグラフである。 図2は、カルボキシ基を有する繊維状セルロース含有スラリーに対するNaOH滴下量とpHの関係を示すグラフである。 図3は、実施例での折りワレの評価における試験片の概念図である。
[積層体およびその製造方法]
本発明の積層体は、セロハンシートの少なくとも一面に、繊維幅が1,000nm以下の微細繊維状セルロースと水溶性高分子とを含有する微細繊維状セルロース含有層を有する積層体であって、該微細繊維状セルロース含有層の厚みが、10μm以上500μm以下であり、該積層体の厚みムラが50%以下である。本発明の積層体によれば、強度および透明性に優れ、柔軟性に優れた積層体を提供することができる。さらに、本発明の積層体は、厚みムラが抑制されている。
また、本発明の積層体の製造方法は、セロハンシート、および繊維幅が1,000nm以下の微細繊維状セルロースと、水溶性高分子とを含有する微細繊維状セルロース含有シートを積層して、積層物を得る積層工程(以下、「工程1」ともいう。)、および該積層物を乾燥する乾燥工程(以下、「工程2」ともいう。)をこの順で有し、該積層物において、該セロハンシートおよび該微細繊維状セルロース含有シートの少なくともいずれか1つが湿潤状態である。
本発明の積層体の製造方法によれば、強度および透明性に優れ、さらに柔軟性に優れた積層体を、簡便かつ生産性高く製造することができる。さらに、厚みムラの発生が抑制された積層体が提供される。
上述した効果が得られる詳細な理由は不明であるが、一部は以下のように考えられる。微細繊維状セルロースは、フィラーとしても使用され、高い強度を有するとともに、透明性に優れる。本発明では、微細繊維状セルロースと水溶性高分子とを含有する微細繊維状セルロース含有層を、セロハンシートと積層することによって、透明性および強度に優れる積層体が得られたものと考えられる。また、微細繊維状セルロース含有層が水溶性高分子を含有することによって、セロハンシートと、微細繊維状セルロース含有層との接着性が向上し、柔軟性に優れた積層体を得ることができたものと考えられる。ここで、柔軟性に優れるとは、折り曲げ試験を実施した際に、折り割れが発生しないことを意味する。試験方法は、実施例に記載の通りである。
また、セロハンシートと、微細繊維状セルロース含有シートとを積層する、本発明の積層体の製造方法では、予め膜厚を一定にした微細繊維状セルロース含有シートとセロハンシートとを積層するため、塗布により微細繊維状セルロース含有層を設ける場合とは異なり、厚みムラの発生が抑制され、その結果、強度および柔軟性が向上したものと考えられる。
なお、セロハンシートに微細繊維状セルロースを含有する微細繊維状セルロース分散液を塗布した場合には、乾燥時にセロハンシート上の微細繊維状セルロース含有層が収縮やクラックを発生し、室温での乾燥等、温和な条件で乾燥させないと、厚みムラを十分に抑制することが困難である。しかし、温和な条件で乾燥させると、生産性が低下する傾向にある。本発明によれば、厚みムラが抑制され、強度および柔軟性に優れる積層体を生産性高く製造することができる。
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
<セロハンシート>
セロハンシートとしてはとくに限定されず、通常一般に使用されているセロハンシートを使用することができる。なお、一般にセロハンは、以下の方法により製造される。すなわち、綿花、パルプ、古紙等から得た繊維質(セルロース)をアルカリ存在下、二硫化炭素との反応によりビスコースに調製し、スラリー状になったビスコースを、硫酸、硫酸ナトリウムを含む凝固浴中にホッパー等により製膜しながら放出する。ここで、ビスコースはセルロースに転化される。このようにして、再生セルロース(セロハン)シートが生成する。その後、セロハンシートは、水洗、脱硫、漂白、柔軟仕上げ、乾燥等が行われて完成する。なお、一連の過程から把握されるように、天然セルロースが原料であるため、セロハンシートは生分解性に優れる。
セロハンシートの厚みはとくに限定されないが、製造上の観点および強度に優れた積層体を得る観点から、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上、さらに好ましくは30μm以上であり、そして、好ましくは50μm以下、より好ましくは45μm以下、さらに好ましくは40μm以下である。なお、前記膜厚は乾燥状態でのセロハンシートの厚みである。
セロハンシートの坪量はとくに限定されないが、製造上の観点、ならびに強度および透明性にすぐれた積層体を得る観点から、好ましくは10g/m以上、より好ましくは20g/m以上、さらに好ましくは40g/m以上であり、そして、好ましくは80g/m以下、より好ましくは70g/m以下、さらに好ましくは60g/m以下である。
セロハンシートのヘーズは、透明性に優れる積層体を得る観点、および入手容易性の観点から、好ましくは0.4%以上、より好ましくは0.8%以上、さらに好ましくは1.2%以上であり、そして、好ましくは2.5%以下、より好ましくは2.0%以下、さらに好ましくは1.5%以下である。
ヘーズは、実施例に記載の方法により測定される。
<微細繊維状セルロース含有層、および微細繊維状セルロース含有シート>
微細繊維状セルロース含有層は、微細繊維状セルロースと、水溶性高分子を含有する。また、微細繊維状セルロース含有シートは、微細繊維状セルロースと、水溶性高分子とを含有する。
微細繊維状セルロース含有層および微細繊維状セルロース含有シートが含有する、微細繊維状セルロースおよび水溶性高分子について以下に説明する。
〔微細繊維状セルロース〕
微細繊維状セルロースは、繊維幅が1000nm以下である繊維状セルロースである。なお、繊維状セルロースの繊維幅は、たとえば電子顕微鏡観察などにより測定することが可能である。
微細繊維状セルロースの繊維幅は、1000nm以下である。微細繊維状セルロースの繊維幅は、たとえば2nm以上1000nm以下であることが好ましく、2nm以上100nm以下であることがより好ましく、2nm以上50nm以下であることがさらに好ましく、2nm以上10nm以下であることがとくに好ましい。微細繊維状セルロースの繊維幅を2nm以上とすることにより、セルロース分子として水に溶解することを抑制し、微細繊維状セルロースによる強度や剛性、寸法安定性の向上という効果をより発現しやすくすることができる。
微細繊維状セルロースの平均繊維幅は、たとえば1000nm以下である。微細繊維状セルロースの平均繊維幅は、2nm以上1000nm以下であることが好ましく、2nm以上100nm以下であることがより好ましく、2nm以上50nm以下であることがさらに好ましく、2nm以上10nm以下であることがとくに好ましい。微細繊維状セルロースの平均繊維幅を2nm以上とすることにより、セルロース分子として水に溶解することを抑制し、微細繊維状セルロースによる強度や剛性、寸法安定性の向上という効果をより発現しやすくすることができる。なお、微細繊維状セルロースは、たとえば単繊維状のセルロースである。
微細繊維状セルロースの平均繊維幅は、たとえば電子顕微鏡を用いて以下のようにして測定される。まず、濃度0.05質量%以上0.1質量%以下の繊維状セルロースの水系懸濁液を調製し、この懸濁液を親水化処理したカーボン膜被覆グリッド上にキャストしてTEM観察用試料とする。幅の広い繊維を含む場合には、ガラス上にキャストした表面のSEM像を観察してもよい。次いで、観察対象となる繊維の幅に応じて1000倍、5000倍、10000倍あるいは50000倍のいずれかの倍率で電子顕微鏡画像による観察を行う。ただし、試料、観察条件や倍率は下記の条件を満たすように調整する。
(1)観察画像内の任意箇所に一本の直線Xを引き、該直線Xに対し、20本以上の繊維が交差する。
(2)同じ画像内で該直線と垂直に交差する直線Yを引き、該直線Yに対し、20本以上の繊維が交差する。
上記条件を満足する観察画像に対し、直線X、直線Yと交差する繊維の幅を目視で読み取る。このようにして、少なくとも互いに重なっていない表面部分の観察画像を3組以上得る。次いで、各画像に対して、直線X、直線Yと交差する繊維の幅を読み取る。これにより、少なくとも20本×2×3=120本の繊維幅を読み取る。そして、読み取った繊維幅の平均値を、繊維状セルロースの平均繊維幅とする。
微細繊維状セルロースの繊維長は、とくに限定されないが、たとえば0.1μm以上1000μm以下であることが好ましく、0.1μm以上800μm以下であることがより好ましく、0.1μm以上600μm以下であることがさらに好ましい。繊維長を上記範囲内とすることにより、微細繊維状セルロースの結晶領域の破壊を抑制できる。また、微細繊維状セルロースのスラリー粘度を適切な範囲とすることも可能となる。なお、微細繊維状セルロースの繊維長は、たとえばTEM、SEM、AFMによる画像解析より求めることができる。
微細繊維状セルロースはI型結晶構造を有していることが好ましい。ここで、微細繊維状セルロースがI型結晶構造を有することは、グラファイトで単色化したCuKα(λ=1.5418Å)を用いた広角X線回折写真より得られる回折プロファイルにおいて同定できる。具体的には、2θ=14°以上17°以下付近と2θ=22°以上23°以下付近の2箇所の位置に典型的なピークをもつことから同定することができる。
微細繊維状セルロースに占めるI型結晶構造の割合は、たとえば30%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましく、50%以上であることがさらに好ましい。これにより、耐熱性と低線熱膨張率発現の点でさらに優れた性能が期待できる。結晶化度については、X線回折プロファイルを測定し、そのパターンから常法により求められる(Seagalら、Textile Research Journal、29巻、786ページ、1959年)。
微細繊維状セルロースの軸比(繊維長/繊維幅)は、とくに限定されないが、たとえば20以上10000以下であることが好ましく、50以上1000以下であることがより好ましい。軸比を上記下限値以上とすることにより、微細繊維状セルロースを含有するシートを形成しやすい。また、溶媒分散体を作製した際に十分な増粘性が得られやすい。軸比を上記上限値以下とすることにより、たとえば微細繊維状セルロースを水分散液として扱う際に、希釈等のハンドリングがしやすくなる点で好ましい。
本実施形態における微細繊維状セルロースは、たとえばイオン性基および非イオン性基のうちの少なくとも1種を有する。分散媒中における繊維の分散性を向上させ、解繊処理における解繊効率を高める観点からは、微細繊維状セルロースがイオン性基を有することがより好ましい。イオン性基としては、たとえばアニオン性基およびカチオン性基のいずれか一方または双方を含むことができる。また、非イオン性基としては、たとえばアルキル基およびアシル基などを含むことができる。本実施形態においては、イオン性基としてアニオン性基を有することがとくに好ましい。
なお、微細繊維状セルロースには、イオン性基を導入する処理が行われていなくてもよい。
イオン性基としてのアニオン性基としては、たとえばリン酸基またはリン酸基に由来する置換基(単にリン酸基ということもある)、カルボキシ基またはカルボキシ基に由来する置換基(単にカルボキシ基ということもある)、およびスルホン基またはスルホン基に由来する置換基(単にスルホン基ということもある)から選択される少なくとも1種であることが好ましく、リン酸基およびカルボキシ基から選択される少なくとも1種であることがより好ましく、リン酸基であることがとくに好ましい。
リン酸基またはリン酸基に由来する置換基は、たとえば下記式(1)で表される置換基であり、リンオキソ酸基またはリンオキソ酸に由来する置換基として一般化される。
リン酸基は、たとえばリン酸からヒドロキシ基を取り除いたものにあたる、2価の官能基である。具体的には−POで表される基である。リン酸基に由来する置換基には、リン酸基の塩、リン酸エステル基などの置換基が含まれる。なお、リン酸基に由来する置換基は、リン酸基が縮合した基(たとえばピロリン酸基)として繊維状セルロースに含まれていてもよい。また、リン酸基は、たとえば、亜リン酸基(ホスホン酸基)であってもよく、リン酸基に由来する置換基は、亜リン酸基の塩、亜リン酸エステル基などであってもよい 。
式(1)中、a、bおよびnは自然数であり、mは任意の数である(ただし、a=b×mである)。α,α,・・・,αおよびα’のうちa個がOであり、残りはR,ORのいずれかである。なお、各αおよびα’の全てがOであっても構わない。Rは、各々、水素原子、飽和−直鎖状炭化水素基、飽和−分岐鎖状炭化水素基、飽和−環状炭化水素基、不飽和−直鎖状炭化水素基、不飽和−分岐鎖状炭化水素基、不飽和−環状炭化水素基、芳香族基、またはこれらの誘導基である。なお、式(1)におけるαは、セルロース分子鎖に由来する基であってもよい。
飽和−直鎖状炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、またはn−ブチル基等が挙げられるが、とくに限定されない。飽和−分岐鎖状炭化水素基としては、i−プロピル基、またはt−ブチル基等が挙げられるが、とくに限定されない。飽和−環状炭化水素基としては、シクロペンチル基、またはシクロヘキシル基等が挙げられるが、とくに限定されない。不飽和−直鎖状炭化水素基としては、ビニル基、またはアリル基等が挙げられるが、とくに限定されない。不飽和−分岐鎖状炭化水素基としては、i−プロペニル基、または3−ブテニル基等が挙げられるが、とくに限定されない。不飽和−環状炭化水素基としては、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられるが、とくに限定されない。芳香族基としては、フェニル基、またはナフチル基等が挙げられるが、とくに限定されない。
また、Rにおける誘導基としては、上記各種炭化水素基の主鎖または側鎖に対し、カルボキシ基、ヒドロキシ基、またはアミノ基などの官能基のうち、少なくとも1種類が付加または置換した状態の官能基が挙げられるが、とくに限定されない。また、Rの主鎖を構成する炭素原子数はとくに限定されないが、20以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましい。Rの主鎖を構成する炭素原子数を上記範囲とすることにより、リン酸基の分子量を適切な範囲とすることができ、繊維原料への浸透を容易にし、微細セルロース繊維の収率を高めることもできる。
βb+は有機物または無機物からなる1価以上の陽イオンである。有機物からなる1価以上の陽イオンとしては、脂肪族アンモニウム、または芳香族アンモニウムが挙げられ、無機物からなる1価以上の陽イオンとしては、ナトリウム、カリウム、もしくはリチウム等のアルカリ金属のイオンや、カルシウム、もしくはマグネシウム等の2価金属の陽イオン、または水素イオン等が挙げられるが、とくに限定されない。これらは1種または2種類以上を組み合わせて適用することもできる。有機物または無機物からなる1価以上の陽イオンとしては、βを含む繊維原料を加熱した際に黄変しにくく、また工業的に利用し易いナトリウム、またはカリウムのイオンが好ましいが、とくに限定されない。
微細繊維状セルロースに対するイオン性基の導入量は、たとえば微細繊維状セルロース1g(質量)あたり0.10mmol/g以上であることが好ましく、0.20mmol/g以上であることがより好ましく、0.50mmol/g以上であることがさらに好ましく、1.00mmol/g以上であることがとくに好ましい。また、微細繊維状セルロースに対するイオン性基の導入量は、たとえば繊維状セルロース1g(質量)あたり5.20mmol/g以下であることが好ましく、3.65mmol/g以下であることがより好ましく、3.50mmol/g以下であることがさらに好ましく、3.00mmol/g以下であることがよりさらに好ましい。イオン性基の導入量を上記範囲内とすることにより、繊維原料の微細化を容易とすることができ、微細繊維状セルロースの安定性を高めることが可能となる。また、イオン性基の導入量を上記範囲内とすることにより、微細繊維状セルロースの増粘剤などの種々用途において良好な特性を発揮することができる。
ここで、単位mmol/gにおける分母は、イオン性基の対イオンが水素イオン(H)であるときの微細繊維状セルロースの質量を示す。
微細繊維状セルロースに対するイオン性基の導入量は、たとえば中和滴定法により測定することができる。中和滴定法による測定では、得られた微細繊維状セルロースを含有するスラリーに、水酸化ナトリウム水溶液などのアルカリを加えながらpHの変化を求めることにより、導入量を測定する。
図1は、リン酸基を有する微細繊維状セルロースに対するNaOH滴下量とpHの関係を示すグラフである。
図1は、リンオキソ酸基を有する繊維状セルロース含有スラリーに対するNaOH滴下量とpHの関係を示すグラフである。繊維状セルロースに対するリンオキソ酸基の導入量は、たとえば次のように測定される。
まず、繊維状セルロースを含有するスラリーを強酸性イオン交換樹脂で処理する。なお、必要に応じて、強酸性イオン交換樹脂による処理の前に、後述の解繊処理工程と同様の解繊処理を測定対象に対して実施してもよい。
次いで、水酸化ナトリウム水溶液を加えながらpHの変化を観察し、図1の上側部に示すような滴定曲線を得る。図1の上側部に示した滴定曲線では、アルカリを加えた量に対して測定したpHをプロットしており、図1の下側部に示した滴定曲線では、アルカリを加えた量に対するpHの増分(微分値)(1/mmol)をプロットしている。この中和滴定では、アルカリを加えた量に対して測定したpHをプロットした曲線において、増分(pHのアルカリ滴下量に対する微分値)が極大となる点が二つ確認される。これらのうち、アルカリを加えはじめて先に得られる増分の極大点を第1終点と呼び、次に得られる増分の極大点を第2終点と呼ぶ。滴定開始から第1終点までに必要としたアルカリ量が、滴定に使用したスラリー中に含まれる繊維状セルロースの第1解離酸量と等しくなり、第1終点から第2終点までに必要としたアルカリ量が滴定に使用したスラリー中に含まれる繊維状セルロースの第2解離酸量と等しくなり、滴定開始から第2終点までに必要としたアルカリ量が滴定に使用したスラリー中に含まれる繊維状セルロースの総解離酸量と等しくなる。そして、滴定開始から第1終点までに必要としたアルカリ量を滴定対象スラリー中の固形分(g)で除して得られる値が、リンオキソ酸基導入量(mmol/g)となる。なお、単にリンオキソ酸基導入量(またはリンオキソ酸基量)と言った場合は、第1解離酸量のことを表す。
なお、図1において、滴定開始から第1終点までの領域を第1領域と呼び、第1終点から第2終点までの領域を第2領域と呼ぶ。たとえば、リンオキソ酸基がリン酸基の場合であって、このリン酸基が縮合を起こす場合、見かけ上、リンオキソ酸基における弱酸性基量(本明細書では第2解離酸量ともいう)が低下し、第1領域に必要としたアルカリ量と比較して第2領域に必要としたアルカリ量が少なくなる。一方、リンオキソ酸基における強酸性基量(本明細書では第1解離酸量ともいう)は、縮合の有無に関わらずリン原子の量と一致する。また、リンオキソ酸基が亜リン酸基の場合は、リンオキソ酸基に弱酸性基が存在しなくなるため、第2領域に必要としたアルカリ量が少なくなるか、第2領域に必要としたアルカリ量はゼロとなる場合もある。この場合、滴定曲線において、pHの増分が極大となる点は一つとなる。
なお、上述のリン酸基導入量(mmol/g)は、分母が酸型の繊維状セルロースの質量を示すことから、酸型の繊維状セルロースが有するリン酸基量(以降、リン酸基量(酸型)と呼ぶ)を示している。一方で、リン酸基の対イオンが電荷当量となるように任意の陽イオンCに置換されている場合は、分母を当該陽イオンCが対イオンであるときの繊維状セルロースの質量に変換することで、陽イオンCが対イオンである繊維状セルロースが有するリン酸基量(以降、リン酸基量(C型))を求めることができる。
すなわち、下記計算式によって算出する。
リン酸基量(C型)=リン酸基量(酸型)/{1+(W−1)×A/1000}
A[mmol/g]:繊維状セルロースが有するリン酸基由来の総アニオン量(リン酸基の強酸性基量と弱酸性基量を足した値)
W:陽イオンCの1価あたりの式量(たとえば、Naは23、Alは9)
なお、滴定法によるリンオキソ酸基量の測定においては、水酸化ナトリウム水溶液1滴の滴下量が多すぎる場合や、滴定間隔が短すぎる場合、本来より低いリンオキソ酸基量となるなど正確な値が得られないことがある。適切な滴下量、滴定間隔としては、たとえば、0.1N水酸化ナトリウム水溶液を5〜30秒に10〜50μLずつ滴定するなどが望ましい。また、繊維状セルロース含有スラリーに溶解した二酸化炭素の影響を排除するため、たとえば、滴定開始の15分前から滴定終了まで、窒素ガスなどの不活性ガスをスラリーに吹き込みながら測定するなどが望ましい。
なお、亜リン酸基に加えて、リン酸基、縮合リン酸基のいずれかまたは両方を含む場合において検出されるリンオキソ酸が、亜リン酸、リン酸、縮合リン酸のどれに由来するか区別する方法としては、たとえば、酸加水分解などの縮合構造を切断する処理を行ってから前記の滴定操作を行う方法、酸化処理などの亜リン酸基をリン酸基へ変換する処理を行ってから前記の滴定操作を行う方法などが挙げられる。
図2は、カルボキシ基を有する微細繊維状セルロースに対するNaOH滴下量とpHの関係を示すグラフである。
微細繊維状セルロースに対するカルボキシ基の導入量は、たとえば次のように測定される。
まず、微細繊維状セルロースを含有するスラリーを強酸性イオン交換樹脂で処理する。なお、必要に応じて、強酸性イオン交換樹脂による処理の前に、後述の解繊処理工程と同様の解繊処理を測定対象に対して実施してもよい。次いで、水酸化ナトリウム水溶液を加えながらpHの変化を観察し、図2に示すような滴定曲線を得る。なお、必要に応じて、後述の解繊処理工程と同様の解繊処理を測定対象に対して実施してもよい。
図2に示されるように、この中和滴定では、アルカリを加えた量に対して測定したpHをプロットした曲線において、増分(pHのアルカリ滴下量に対する微分値)が極大となる点が一つ観測される。この増分の極大点を第1終点と呼ぶ。ここで、図2における滴定開始から第1終点までの領域を第1領域と呼ぶ。第1領域で必要としたアルカリ量が、滴定に使用したスラリー中のカルボキシ基量と等しくなる。そして、滴定曲線の第1領域で必要としたアルカリ量(mmol)を、滴定対象の微細繊維状セルロース含有スラリー中の固形分(g)で除すことで、カルボキシ基の導入量(mmol/g)を算出した。
なお、上述のカルボキシ基導入量(mmol/g)は、カルボキシ基の対イオンが水素イオン(H)であるときの繊維状セルロースの質量1gあたりの置換基量(以降、カルボキシ基量(酸型)と呼ぶ)を示している。
なお、上述のカルボキシ基導入量(mmol/g)は、分母が酸型の繊維状セルロースの質量であることから、酸型の繊維状セルロースが有するカルボキシ基量(以降、カルボキシ基量(酸型)と呼ぶ)を示している。一方で、カルボキシ基の対イオンが電荷当量となるように任意の陽イオンCに置換されている場合は、分母を当該陽イオンCが対イオンであるときの繊維状セルロースの質量に変換することで、陽イオンCが対イオンである繊維状セルロースが有するカルボキシ基量(以降、カルボキシ基量(C型))(mmol/g)を求めることができる。
すなわち、下記計算式によって算出する。
カルボキシ基量(C型)=カルボキシ基量(酸型)/{1+(W−1)×(カルボキシ基量(酸型))/1000}
W:陽イオンCの1価あたりの式量(たとえば、Naは23、Alは9)
なお、滴定法による置換基量の測定においては、水酸化ナトリウム水溶液の滴定間隔が短すぎる場合、本来より低い置換基量となることがあるため、適切な滴定間隔、たとえば、0.1N水酸化ナトリウム水溶液を5〜30秒に10〜50μLずつ滴定するなどが望ましい。
微細繊維状セルロース含有層および微細繊維状セルロース含有シートの固形分中の微細繊維状セルロースの含有量は、強度および透明性に優れ、柔軟性に優れた積層体を得る観点から、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上であり、そして、好ましくは97質量%以下、より好ましくは95質量%以下、さらに好ましくは90質量%以下である。
〔微細繊維状セルロースの製造方法〕
(セルロースを含む繊維原料)
微細繊維状セルロースは、セルロースを含む繊維原料から製造される。
セルロースを含む繊維原料としては、とくに限定されないが、入手しやすく安価である点からパルプを用いることが好ましい。パルプとしては、たとえば木材パルプ、非木材パルプ、および脱墨パルプが挙げられる。木材パルプとしては、とくに限定されないが、たとえば広葉樹クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹クラフトパルプ(NBKP)、サルファイトパルプ(SP)、溶解パルプ(DP)、ソーダパルプ(AP)、未晒しクラフトパルプ(UKP)および酸素漂白クラフトパルプ(OKP)等の化学パルプ、セミケミカルパルプ(SCP)およびケミグラウンドウッドパルプ(CGP)等の半化学パルプ、砕木パルプ(GP)およびサーモメカニカルパルプ(TMP、BCTMP)等の機械パルプ等が挙げられる。非木材パルプとしては、とくに限定されないが、たとえばコットンリンターおよびコットンリント等の綿系パルプ、麻、麦わらおよびバガス等の非木材系パルプが挙げられる。脱墨パルプとしては、とくに限定されないが、たとえば古紙を原料とする脱墨パルプが挙げられる。本実施態様のパルプは上記の1種を単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
上記パルプの中でも、入手のしやすさという観点からは、たとえば木材パルプおよび脱墨パルプが好ましい。また、木材パルプの中でも、セルロース比率が大きく解繊処理時の微細繊維状セルロースの収率が高い観点や、パルプ中のセルロースの分解が小さく軸比の大きい長繊維の微細繊維状セルロースが得られる観点から、たとえば化学パルプがより好ましく、クラフトパルプ、サルファイトパルプがさらに好ましい。なお、軸比の大きい長繊維の微細繊維状セルロースを用いると粘度が高くなる傾向がある。
セルロースを含む繊維原料としては、たとえばホヤ類に含まれるセルロースや、酢酸菌が生成するバクテリアセルロースを利用することもできる。
また、セルロースを含む繊維原料に代えて、キチン、キトサンなどの直鎖型の含窒素多糖高分子が形成する繊維を用いることもできる。
上述のようなイオン性基を導入した微細繊維状セルロースを得るためには、上述したセルロースを含む繊維原料にイオン性基を導入するイオン性基導入工程、洗浄工程、アルカリ処理工程(中和工程)、解繊処理工程をこの順で有することが好ましく、洗浄工程の代わりに、または洗浄工程に加えて、酸処理工程を有していてもよい。イオン性基導入工程としては、リン酸基導入工程およびカルボキシ基導入工程が例示される。以下、それぞれについて説明する。
(イオン性基導入工程)
−リン酸基導入工程−
リン酸基導入工程は、セルロースを含む繊維原料が有する水酸基と反応することで、リン酸基を導入できる化合物から選択される少なくとも1種の化合物(以下、「化合物A」ともいう)を、セルロースを含む繊維原料に作用させる工程である。この工程により、リン酸基導入繊維が得られることとなる。
本実施形態に係るリン酸基導入工程では、セルロースを含む繊維原料と化合物Aの反応を、尿素およびその誘導体から選択される少なくとも1種(以下、「化合物B」ともいう)の存在下で行ってもよい。一方で、化合物Bが存在しない状態において、セルロースを含む繊維原料と化合物Aの反応を行ってもよい。
化合物Aを化合物Bとの共存下で繊維原料に作用させる方法の一例としては、乾燥状態または湿潤状態またはスラリー状の繊維原料に対して、化合物Aと化合物Bを混合する方法が挙げられる。これらのうち、反応の均一性が高いことから、乾燥状態または湿潤状態の繊維原料を用いることが好ましく、とくに乾燥状態の繊維原料を用いることが好ましい。繊維原料の形態は、とくに限定されないが、たとえば綿状や薄いシート状であることが好ましい。化合物Aおよび化合物Bは、それぞれ粉末状または溶媒に溶解させた溶液状または融点以上まで加熱して溶融させた状態で繊維原料に添加する方法が挙げられる。これらのうち、反応の均一性が高いことから、溶媒に溶解させた溶液状、とくに水溶液の状態で添加することが好ましい。また、化合物Aと化合物Bは繊維原料に対して同時に添加してもよく、別々に添加してもよく、混合物として添加してもよい。化合物Aと化合物Bの添加方法としては、とくに限定されないが、化合物Aと化合物Bが溶液状の場合は、繊維原料を溶液内に浸漬し吸液させたのちに取り出してもよいし、繊維原料に溶液を滴下してもよい。また、必要量の化合物Aと化合物Bを繊維原料に添加してもよいし、過剰量の化合物Aと化合物Bをそれぞれ繊維原料に添加した後に、圧搾や濾過によって余剰の化合物Aと化合物Bを除去してもよい。
本実施態様で使用する化合物Aとしては、リン原子を有し、セルロースとエステル結合を形成可能な化合物であればよく、リン酸もしくはその塩、亜リン酸もしくはその塩、脱水縮合リン酸もしくはその塩、無水リン酸(五酸化二リン)などが挙げられるが、とくに限定されない。リン酸としては、種々の純度のものを使用することができ、たとえば100%リン酸(正リン酸)や85%リン酸を使用することができる。亜リン酸としては、たとえば99%亜リン酸(ホスホン酸)が挙げられる。脱水縮合リン酸は、リン酸が脱水反応により2分子以上縮合したものであり、たとえばピロリン酸、ポリリン酸等を挙げることができる。リン酸塩、亜リン酸塩、脱水縮合リン酸塩としては、リン酸、亜リン酸または脱水縮合リン酸のリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩などが挙げられ、これらは種々の中和度とすることができる。
これらのうち、リン酸基の導入の効率が高く、後述する解繊工程で解繊効率がより向上しやすく、低コストであり、かつ工業的に適用しやすい観点から、リン酸、リン酸のナトリウム塩、リン酸のカリウム塩、またはリン酸のアンモニウム塩が好ましく、リン酸、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、またはリン酸二水素アンモニウムがより好ましい。
繊維原料に対する化合物Aの添加量は、とくに限定されないが、たとえば化合物Aの添加量をリン原子量に換算した場合において、繊維原料(絶乾質量)に対するリン原子の添加量が0.5質量%以上100質量%以下となることが好ましく、1質量%以上50質量%以下となることがより好ましく、2質量%以上30質量%以下となることがさらに好ましい。繊維原料に対するリン原子の添加量を上記範囲内とすることにより、微細繊維状セルロースの収率をより向上させることができる。一方で、繊維原料に対するリン原子の添加量を上記上限値以下とすることにより、収率向上の効果とコストのバランスをとることができる。
本実施態様で使用する化合物Bは、上述の通り尿素およびその誘導体から選択される少なくとも1種である。化合物Bとしては、たとえば尿素、ビウレット、1−フェニル尿素、1−ベンジル尿素、1−メチル尿素、および1−エチル尿素などが挙げられる。
反応の均一性を向上させる観点から、化合物Bは水溶液として用いることが好ましい。また、反応の均一性をさらに向上させる観点からは、化合物Aと化合物Bの両方が溶解した水溶液を用いることが好ましい。
繊維原料(絶乾質量)に対する化合物Bの添加量は、とくに限定されないが、たとえば1質量%以上500質量%以下であることが好ましく、10質量%以上400質量%以下であることがより好ましく、100質量%以上350質量%以下であることがさらに好ましい。
セルロースを含む繊維原料と化合物Aの反応においては、化合物Bの他に、たとえばアミド類またはアミン類を反応系に含んでもよい。アミド類としては、たとえばホルムアミド、ジメチルホルムアミド、アセトアミド、ジメチルアセトアミドなどが挙げられる。アミン類としては、たとえばメチルアミン、エチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ピリジン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどが挙げられる。これらの中でも、とくにトリエチルアミンは良好な反応触媒として働くことが知られている。
リン酸基導入工程においては、繊維原料に化合物A等を添加または混合した後、当該繊維原料に対して加熱処理を施すことが好ましい。加熱処理温度としては、繊維の熱分解や加水分解反応を抑えながら、リン酸基を効率的に導入できる温度を選択することが好ましい。加熱処理温度は、たとえば50℃以上300℃以下であることが好ましく、100℃以上250℃以下であることがより好ましく、130℃以上200℃以下であることがさらに好ましい。また、加熱処理には、種々の熱媒体を有する機器を利用することができ、たとえば撹拌乾燥装置、回転乾燥装置、円盤乾燥装置、ロール型加熱装置、プレート型加熱装置、流動層乾燥装置、気流乾燥装置、減圧乾燥装置、赤外線加熱装置、遠赤外線加熱装置、マイクロ波加熱装置、高周波乾燥装置を用いることができる。
本実施形態に係る加熱処理においては、たとえば薄いシート状の繊維原料に化合物Aを含浸等の方法により添加した後、加熱する方法や、ニーダー等で繊維原料と化合物Aを混練または撹拌しながら加熱する方法を採用することができる。これにより、繊維原料における化合物Aの濃度ムラを抑制して、繊維原料に含まれるセルロース繊維表面へより均一にリン酸基を導入することが可能となる。これは、乾燥に伴い水分子が繊維原料表面に移動する際、溶存する化合物Aが表面張力によって水分子に引き付けられ、同様に繊維原料表面に移動してしまう(すなわち、化合物Aの濃度ムラを生じてしまう)ことを抑制できることに起因するものと考えられる。
また、加熱処理に用いる加熱装置は、たとえばスラリーが保持する水分および化合物Aと繊維原料中のセルロース等が含む水酸基等との脱水縮合(リン酸エステル化)反応に伴って生じる水分を常に装置系外に排出できる装置であることが好ましい。このような加熱装置としては、たとえば送風方式のオーブン等が挙げられる。装置系内の水分を常に排出することにより、リン酸エステル化の逆反応であるリン酸エステル結合の加水分解反応を抑制できることに加えて、繊維中の糖鎖の酸加水分解を抑制することもできる。このため、軸比の高い微細繊維状セルロースを得ることが可能となる。
加熱処理の時間は、たとえば繊維原料から実質的に水分が除かれてから1秒以上300分以下であることが好ましく、1秒以上1000秒以下であることがより好ましく、10秒以上800秒以下であることがさらに好ましい。本実施形態では、加熱温度と加熱時間を適切な範囲とすることにより、リン酸基の導入量を好ましい範囲内とすることができる。
リン酸基導入工程は、少なくとも1回行えばよいが、2回以上繰り返して行うこともできる。2回以上のリン酸基導入工程を行うことにより、繊維原料に対して多くのリン酸基を導入することができる。本実施形態においては、好ましい態様の一例として、リン酸基導入工程を2回行う場合が挙げられる。
繊維原料に対するリン酸基の導入量は、たとえば微細繊維状セルロース1g(質量)あたり0.10mmol/g以上であることが好ましく、0.20mmol/g以上であることがより好ましく、0.50mmol/g以上であることがさらに好ましく、1.00mmol/g以上であることがとくに好ましい。また、繊維原料に対するリン酸基の導入量は、たとえば微細繊維状セルロース1g(質量)あたり5.20mmol/g以下であることが好ましく、3.65mmol/g以下であることがより好ましく、3.00mmol/g以下であることがさらに好ましい。リン酸基の導入量を上記範囲内とすることにより、繊維原料の微細化を容易にし、微細繊維状セルロースの安定性を高めることができる。
−カルボキシ基導入工程−
カルボキシ基導入工程は、セルロースを含む繊維原料に対し、オゾン酸化やフェントン法による酸化、TEMPO酸化処理などの酸化処理やカルボン酸由来の基を有する化合物もしくはその誘導体、またはカルボン酸由来の基を有する化合物の酸無水物もしくはその誘導体によって処理することにより行われる。
カルボン酸由来の基を有する化合物としては、とくに限定されないが、たとえばマレイン酸、コハク酸、フタル酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、イタコン酸等のジカルボン酸化合物やクエン酸、アコニット酸等のトリカルボン酸化合物が挙げられる。また、カルボン酸由来の基を有する化合物の誘導体としては、とくに限定されないが、たとえばカルボキシ基を有する化合物の酸無水物のイミド化物、カルボキシ基を有する化合物の酸無水物の誘導体が挙げられる。カルボキシ基を有する化合物の酸無水物のイミド化物としては、とくに限定されないが、たとえばマレイミド、コハク酸イミド、フタル酸イミド等のジカルボン酸化合物のイミド化物が挙げられる。
カルボン酸由来の基を有する化合物の酸無水物としては、とくに限定されないが、たとえば無水マレイン酸、無水コハク酸、無水フタル酸、無水グルタル酸、無水アジピン酸、無水イタコン酸等のジカルボン酸化合物の酸無水物が挙げられる。また、カルボン酸由来の基を有する化合物の酸無水物の誘導体としては、とくに限定されないが、たとえばジメチルマレイン酸無水物、ジエチルマレイン酸無水物、ジフェニルマレイン酸無水物等のカルボキシ基を有する化合物の酸無水物の少なくとも一部の水素原子が、アルキル基、フェニル基等の置換基により置換されたものが挙げられる。
カルボキシ基導入工程において、TEMPO酸化処理を行う場合には、たとえばその処理をpHが6以上8以下の条件で行うことが好ましい。このような処理は、中性TEMPO酸化処理ともいう。中性TEMPO酸化処理は、たとえばリン酸ナトリウム緩衝液(pH=6.8)に、繊維原料としてパルプと、触媒としてTEMPO(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル)等のニトロキシラジカル、犠牲試薬として次亜塩素酸ナトリウムを添加することで行うことができる。さらに亜塩素酸ナトリウムを共存させることによって、酸化の過程で発生するアルデヒドを、効率的にカルボキシ基まで酸化することができる。
また、TEMPO酸化処理は、その処理をpHが10以上11以下の条件で行ってもよい。このような処理は、アルカリTEMPO酸化処理ともいう。アルカリTEMPO酸化処理は、たとえば繊維原料としてのパルプに対し、触媒としてTEMPO等のニトロキシラジカルと、共触媒として臭化ナトリウムと、酸化剤として次亜塩素酸ナトリウムを添加することにより行うことができる。
繊維原料に対するカルボキシ基の導入量は、置換基の種類によっても変わるが、たとえばTEMPO酸化によりカルボキシ基を導入する場合、微細繊維状セルロース1g(質量)あたり0.10mmol/g以上であることが好ましく、0.20mmol/g以上であることがより好ましく、0.50mmol/g以上であることがさらに好ましく、0.90mmol/g以上であることがとくに好ましい。また、2.5mmol/g以下であることが好ましく、2.20mmol/g以下であることがより好ましく、2.00mmol/g以下であることがさらに好ましい。その他、置換基がカルボキシメチル基である場合、微細繊維状セルロース1g(質量)あたり5.8mmol/g以下であってもよい。
(洗浄工程)
本実施形態における微細繊維状セルロースの製造方法においては、必要に応じてイオン性基導入繊維に対して洗浄工程を行うことができる。洗浄工程は、たとえば水や有機溶媒によりイオン性基導入繊維を洗浄することにより行われる。また、洗浄工程は後述する各工程の後に行われてもよく、各洗浄工程において実施される洗浄回数は、とくに限定されない。
(アルカリ処理(中和処理)工程)
微細繊維状セルロースを製造する場合、イオン性基導入工程と、後述する解繊処理工程との間に、繊維原料に対してアルカリ処理(中和処理)を行ってもよい。アルカリ処理の方法としては、とくに限定されないが、たとえばアルカリ溶液中に、イオン性基導入繊維を浸漬する方法が挙げられる。
アルカリ溶液に含まれるアルカリ化合物は、とくに限定されず、無機アルカリ化合物であってもよいし、有機アルカリ化合物であってもよい。本実施形態においては、汎用性が高いことから、たとえば水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムをアルカリ化合物として用いることが好ましい。また、アルカリ溶液に含まれる溶媒は、水または有機溶媒のいずれであってもよい。中でも、アルカリ溶液に含まれる溶媒は、水、またはアルコールに例示される極性有機溶媒などを含む極性溶媒であることが好ましく、少なくとも水を含む水系溶媒であることがより好ましい。アルカリ溶液としては、汎用性が高いことから、たとえば水酸化ナトリウム水溶液、または水酸化カリウム水溶液が好ましい。
アルカリ処理工程におけるアルカリ溶液の温度は、とくに限定されないが、たとえば5℃以上80℃以下であることが好ましく、10℃以上60℃以下であることがより好ましい。アルカリ処理工程におけるイオン性基導入繊維のアルカリ溶液への浸漬時間は、とくに限定されないが、たとえば5分以上30分以下であることが好ましく、10分以上20分以下であることがより好ましい。アルカリ処理におけるアルカリ溶液の使用量は、とくに限定されないが、たとえばイオン性基導入繊維の絶対乾燥質量に対して100質量%以上100000質量%以下であることが好ましく、1000質量%以上10000質量%以下であることがより好ましい。
アルカリ処理工程におけるアルカリ溶液の使用量を減らすために、イオン性基導入工程の後であってアルカリ処理工程の前に、イオン性基導入繊維を水や有機溶媒により洗浄してもよい。アルカリ処理工程の後であって解繊処理工程の前には、取り扱い性を向上させる観点から、アルカリ処理を行ったイオン性基導入繊維を水や有機溶媒により洗浄することが好ましい。
(酸処理工程)
微細繊維状セルロースを製造する場合、イオン性基を導入する工程と、後述する解繊処理工程の間に、繊維原料に対して酸処理を行ってもよい。たとえば、イオン性基導入工程、酸処理工程、アルカリ処理工程および解繊処理工程をこの順で行ってもよい。
酸処理の方法としては、とくに限定されないが、たとえば酸を含有する酸性液中に繊維原料を浸漬する方法が挙げられる。使用する酸性液の濃度は、とくに限定されないが、たとえば10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。また、使用する酸性液のpHは、とくに限定されないが、たとえば0以上4以下であることが好ましく、1以上3以下であることがより好ましい。酸性液に含まれる酸としては、たとえば無機酸、スルホン酸、カルボン酸等を用いることができる。無機酸としては、たとえば硫酸、硝酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、次亜塩素酸、亜塩素酸、塩素酸、過塩素酸、リン酸、ホウ酸等が挙げられる。スルホン酸としては、たとえばメタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等が挙げられる。カルボン酸としては、たとえばギ酸、酢酸、クエン酸、グルコン酸、乳酸、シュウ酸、酒石酸等が挙げられる。これらの中でも、塩酸または硫酸を用いることがとくに好ましい。
酸処理における酸溶液の温度は、とくに限定されないが、たとえば5℃以上100℃以下が好ましく、20℃以上90℃以下がより好ましい。酸処理における酸溶液への浸漬時間は、とくに限定されないが、たとえば5分以上120分以下が好ましく、10分以上60分以下がより好ましい。酸処理における酸溶液の使用量は、とくに限定されないが、たとえば繊維原料の絶対乾燥質量に対して100質量%以上100000質量%以下であることが好ましく、1000質量%以上10000質量%以下であることがより好ましい。
(解繊処理工程)
イオン性基導入繊維を解繊処理工程で解繊処理することにより、微細繊維状セルロースが得られる。
解繊処理工程においては、たとえば解繊処理装置を用いることができる。解繊処理装置は、とくに限定されないが、たとえば高速解繊機、グラインダー(石臼型粉砕機)、高圧ホモジナイザーや超高圧ホモジナイザー、高圧衝突型粉砕機、ボールミル、ビーズミル、ディスク型リファイナー、コニカルリファイナー、二軸混練機、振動ミル、高速回転下でのホモミキサー、超音波分散機、またはビーターなどを使用することができる。上記解繊処理装置の中でも、粉砕メディアの影響が少なく、コンタミネーションのおそれが少ない高速解繊機、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザーを用いるのがより好ましい。
解繊処理工程においては、たとえばイオン性基導入繊維を、分散媒により希釈してスラリー状にすることが好ましい。分散媒としては、水、および極性有機溶媒などの有機溶媒から選択される1種または2種以上を使用することができる。極性有機溶媒としては、とくに限定されないが、たとえばアルコール類、多価アルコール類、ケトン類、エーテル類、エステル類、非プロトン極性溶媒等が好ましい。アルコール類としては、たとえばメタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブチルアルコール等が挙げられる。多価アルコール類としては、たとえばエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどが挙げられる。ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)等が挙げられる。エーテル類としては、たとえばジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。エステル類としては、たとえば酢酸エチル、酢酸ブチル等が挙げられる。非プロトン性極性溶媒としてはジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF),ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチル−2−ピロリジノン(NMP)等が挙げられる。
解繊処理時の微細繊維状セルロースの固形分濃度は適宜設定できる。
また、リン酸基導入繊維を分散媒に分散させて得たスラリー中には、たとえば水素結合性のある尿素などのリン酸基導入繊維以外の固形分が含まれていてもよい。
〔水溶性高分子〕
本発明において、微細繊維状セルロース含有層および微細繊維状セルロース含有シートは、水溶性高分子を含有する。
水溶性高分子としては、たとえばカルボキシビニルポリマー;ポリビニルアルコール;メタクリル酸アルキル・アクリル酸コポリマー;ポリビニルピロリドン;ポリアクリル酸ナトリウム;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール;ポリアクリルアミド;キサンタンガム、グアーガム、タマリンドガム、カラギーナン、ローカストビーンガム、クインスシード、アルギン酸、アルギン酸の金属塩、プルラン、カラギーナン、およびペクチンなどに例示される増粘性多糖類;カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、およびヒドロキシエチルセルロースなどに例示されるセルロース誘導体;カチオン化デンプン、生デンプン、酸化デンプン、エーテル化デンプン、エステル化デンプン、およびアミロースなどに例示されるデンプン類;ポリグリセリンなどのグリセリン類;ヒアルロン酸、ヒアルロン酸の金属塩等を挙げることができる。
水溶性高分子としては、セロハンシートとの接着性を向上させる観点、透明性および柔軟性に優れる積層体を得る観点から、これらの中でも、ポリビニルアルコール、ポリアルキレングリコール、ポリアクリルアミド、増粘性多糖類、セルロース誘導体、デンプン類、グリセリン類が好ましく、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、キサンタンガム、グアーガム、アルギン酸およびアルギン酸の金属塩、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カチオン化デンプン、酸化デンプンがより好ましく、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、キサンタンガム、アルギン酸およびアルギン酸の金属塩、カルボキシメチルセルロース、カチオン化デンプンがさらに好ましく、ポリビニルアルコール、アルギン酸およびアルギン酸の金属塩、カルボキシメチルセルロース、カチオン化デンプンがよりさらに好ましい。
微細繊維状セルロース含有層および微細繊維状セルロース含有シートの固形分中の水溶性高分子の含有量は、強度および透明性に優れ、柔軟性に優れた積層体を得る観点から、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上であり、そして、好ましくは97質量%以下、より好ましくは95質量%以下、さらに好ましくは90質量%以下である。
〔微細繊維状セルロース含有層および微細繊維状セルロース含有シートの製造方法〕
本発明の積層体は、微細繊維状セルロース含有層を有し、該微細繊維状セルロース含有層は、微細繊維状セルロース含有シートを積層にすることにより形成することが好ましい。なお、微細繊維状セルロース含有層を、塗布、乾燥により得ることも可能であるが、その場合には、積層体の厚みムラを50%以下にすることが困難である。
本実施形態においては、微細繊維状セルロース含有シート(以下、単に「シート」ともいう。)は、たとえば上述した微細繊維状セルロースおよび水溶性高分子を含有する液状の組成物を用いて、後述のシート化工程を実施することにより、得ることができる。
シートは、微細繊維状セルロース、および水溶性高分子の他に、たとえば界面活性剤、有機イオン、カップリング剤、無機層状化合物、無機化合物、レベリング剤、防腐剤、消泡剤、有機系粒子、潤滑剤、帯電防止剤、紫外線防御剤、染料、顔料、安定剤、磁性粉、配向促進剤、可塑剤、分散剤、および架橋剤から選択される1種または2種以上を含んでもよい。
シートは、溶媒を含んでいてもよい。溶媒としては、たとえば解繊処理工程において分散媒として例示したものを用いることができる。
シート中における溶媒の含有量は、たとえばシートの全質量に対して、0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましく、5質量%以上であることがさらに好ましい。これにより、シートに柔軟性を付与することができる。一方で、シート中における溶媒の含有量は、たとえばシートの全質量に対して25質量%以下とすることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましい。これにより、可とう性の良好なシートを得ることができる。
シート中における水の含有量(質量%)は、たとえば以下の手順で算出することができる。まず、100mm角のシートを温度23℃、相対湿度50%の条件下で24時間調湿した後、シートの質量W0を測定する。次いで、このシートを105℃の恒温乾燥機にて16時間乾燥させた後、シートの質量W1を測定する。測定した質量から、下記式2に従ってシート中における溶媒の含有量を算出する。
(式2)・・・シート中における水の含有量=(1−W1/W0)×100
シートの引張弾性率は、たとえば2.5GPa以上であることが好ましく、3.0GPa以上であることがより好ましく、3.5GPa以上であることがさらに好ましい。また、シートの引張弾性率の上限値は、とくに限定されないが、たとえば50GPa以下とすることができる。
ここで、シートの引張弾性率は、たとえばJIS P 8113に準拠し、引張試験機テンシロン(エー・アンド・デイ社製)を用いて測定した値である。引張弾性率を測定する際には、23℃、相対湿度50%で24時間調湿したものを測定用の試験片とし、23℃、相対湿度50%の条件下で測定を行う。
シートのヘーズは、たとえば2%以下であることが好ましく、1.5%以下であることがより好ましく、1%以下であることがさらに好ましい。一方で、シートのヘーズの下限値は、とくに限定されず、たとえば0%であってもよい。ここで、シートのヘーズは、たとえばJIS K 7136に準拠し、ヘーズメータ((株)村上色彩技術研究所製、HM−150)を用いて測定される値である。
シートの全光線透過率は、たとえば85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、91%以上であることがさらに好ましい。一方で、シートの全光線透過率の上限値は、とくに限定されず、たとえば100%であってもよい。ここで、シートの全光線透過率は、たとえばJIS K 7361に準拠し、ヘーズメータ((株)村上色彩技術研究所製、HM−150)を用いて測定される値である。
本発明の積層体において、微細繊維状セルロース含有層の厚みは、透明性、強度および柔軟性に優れる積層体を得る観点から、10μm以上であり、好ましくは20μm以上、より好ましくは30μm以上、さらに好ましくは40μm以上であり、そして、500μm以下、好ましくは400μm以下、より好ましくは300μm以下、さらに好ましくは200μm以下、よりさらに好ましくは150μm以下である。
微細繊維状セルロース含有層の厚みは、積層体の厚みと、セロハンシートの厚みとの差から算出してもよく、また、積層体の断面観察から求めてもよく、とくに限定されない。積層体の厚みおよびセロハンシートの厚みは、たとえば触針式厚さ計(マール社製、ミリトロン1202D)で測定することができる。
また、微細繊維状セルロース含有層の厚みは、積層する微細繊維状セルロース含有シートの厚みで近似され、微細繊維状セルロース含有シートの厚みを調整することによって、所望の微細繊維状セルロース含有層の厚みに調整することができる。
シートの坪量は、とくに限定されないが、たとえば10g/m以上であることが好ましく、20g/m以上であることがより好ましく、30g/m以上であることがさらに好ましい。また、シートの坪量は、とくに限定されないが、たとえば200g/m以下であることが好ましく、150g/m以下であることがより好ましい。ここで、シートの坪量は、たとえばJIS P 8124に準拠し、算出することができる。
シートの密度は、とくに限定されないが、たとえば0.1g/cm以上であることが好ましく、0.5g/cm以上であることがより好ましく、0.8g/cm以上であることがさらに好ましい。また、シートの密度は、とくに限定されないが、たとえば5.0g/cm以下であることが好ましく、3.0g/cm以下であることがより好ましく、1.5g/cm以下であることがさらに好ましい。ここで、シートの密度は、50mm角のシートを23℃、50%RH条件下で24時間調湿した後、シートの厚みおよび質量を測定することにより算出することができる。
<微細繊維状セルロース含有シートの製造工程>
シートの製造工程は、微細繊維状セルロースおよび水溶性高分子を含むスラリーを基材上に塗工する塗工工程、または当該スラリーを抄紙する抄紙工程を含む。これにより、微細繊維状セルロースおよび水溶性高分子を含む微細繊維状セルロース含有シートが得られることとなる。
(塗工工程)
塗工工程では、たとえば微細繊維状セルロースおよび水溶性高分子を含むスラリーを基材上に塗工し、これを乾燥して形成されたシートを基材から剥離することによりシートを得ることができる。また、塗工装置と長尺の基材を用いることで、シートを連続的に生産することができる。
塗工工程で用いる基材の材質は、とくに限定されないが、組成物(スラリー)に対する濡れ性が高いものの方が乾燥時のシートの収縮等を抑制することができてよいが、乾燥後に形成されたシートが容易に剥離できるものを選択することが好ましい。中でも樹脂製のフィルムや板または金属製のフィルムや板が好ましいが、とくに限定されない。たとえばアクリル、ポリエチレンテレフタレート、塩化ビニル、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニリデン等の樹脂のフィルムや板、アルミニウム、亜鉛、銅、鉄板の金属のフィルムや板、および、それらの表面を酸化処理したもの、ステンレスのフィルムや板、真ちゅうのフィルムや板等を用いることができる。
塗工工程において、スラリーの粘度が低く、基材上で展開してしまう場合には、所定の厚みおよび坪量のシートを得るため、基材上に堰止用の枠を固定して使用してもよい。堰止用の枠としては、とくに限定されないが、たとえば乾燥後に付着するシートの端部が容易に剥離できるものを選択することが好ましい。このような観点から、樹脂板または金属板を成形したものがより好ましい。本実施形態においては、たとえばアクリル板、ポリエチレンテレフタレート板、塩化ビニル板、ポリスチレン板、ポリプロピレン板、ポリカーボネート板、ポリ塩化ビニリデン板等の樹脂板や、アルミニウム板、亜鉛板、銅板、鉄板等の金属板、およびこれらの表面を酸化処理したもの、ステンレス板、真ちゅう板等を成形したものを用いることができる。
スラリーを基材に塗工する塗工機としては、とくに限定されないが、たとえばロールコーター、グラビアコーター、ダイコーター、カーテンコーター、エアドクターコーター等を使用することができる。シートの厚みをより均一にできることから、ダイコーター、カーテンコーター、スプレーコーターがとくに好ましい。
スラリーを基材へ塗工する際のスラリー温度および雰囲気温度(以下、スラリー温度および雰囲気温度を総称して、「塗工温度」という。)は、とくに限定されないが、たとえば5℃以上80℃以下であることが好ましく、10℃以上60℃以下であることがより好ましく、15℃以上50℃以下であることがさらに好ましく、20℃以上40℃以下であることがとくに好ましい。塗工温度が上記下限値以上であれば、スラリーをより容易に塗工できる。塗工温度が上記上限値以下であれば、塗工中の分散媒の揮発を抑制できる。
塗工工程においては、シートの仕上がり坪量が上述した好ましい範囲となるように、スラリーを基材に塗工することが好ましい。坪量が上記範囲内となるように塗工することで、より透明性、強度および柔軟性に優れたシートが得られる。
塗工工程は、上述の通り、基材上に塗工したスラリーを乾燥させる工程を含む。スラリーを乾燥させる工程は、とくに限定されないが、たとえば非接触の乾燥方法、もしくはシートを固定しながら乾燥する方法、またはこれらの組み合わせにより行われる。
非接触の乾燥方法としては、とくに限定されないが、たとえば熱風、赤外線、遠赤外線もしくは近赤外線により加熱して乾燥する方法(加熱乾燥法)、または真空にして乾燥する方法(真空乾燥法)を適用することができる。加熱乾燥法と真空乾燥法を組み合わせてもよいが、通常は、加熱乾燥法が適用される。赤外線、遠赤外線または近赤外線による乾燥は、とくに限定されないが、たとえば赤外線装置、遠赤外線装置または近赤外線装置を用いて行うことができる。
加熱乾燥法における加熱温度は、とくに限定されないが、たとえば20℃以上150℃以下とすることが好ましく、25℃以上105℃以下とすることがより好ましい。加熱温度を上記下限値以上とすれば、分散媒を速やかに揮発させることができる。また、加熱温度を上記上限値以下であれば、加熱に要するコストの抑制および繊維状セルロースの熱による変色の抑制を実現できる。
<抄紙工程>
抄紙工程は、抄紙機によりスラリーを抄紙することにより行われる。抄紙工程で用いられる抄紙機としては、とくに限定されないが、たとえば長網式、円網式、傾斜式等の連続抄紙機、またはこれらを組み合わせた多層抄き合わせ抄紙機等が挙げられる。抄紙工程では、手抄き等の公知の抄紙方法を採用してもよい。
抄紙工程は、スラリーをワイヤーにより濾過、脱水して湿紙状態のシートを得た後、このシートをプレス、乾燥することにより行われる。スラリーを濾過、脱水する際に用いられる濾布としては、とくに限定されないが、たとえば繊維状セルロースは通過せず、かつ濾過速度が遅くなりすぎないものであることがより好ましい。このような濾布としては、とくに限定されないが、たとえば有機ポリマーからなるシート、織物、多孔膜が好ましい。有機ポリマーとしてはとくに限定されないが、たとえばポリエチレンテレフタレートやポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のような非セルロース系の有機ポリマーが好ましい。本実施形態においては、たとえば孔径0.1μm以上20μm以下であるポリテトラフルオロエチレンの多孔膜や、孔径0.1μm以上20μm以下であるポリエチレンテレフタレートやポリエチレンの織物等が挙げられる。
抄紙工程において、スラリーからシートを製造する方法は、たとえば微細繊維状セルロースおよび水溶性高分子を含むスラリーを無端ベルトの上面に吐出し、吐出されたスラリーから分散媒を搾水してウェブを生成する搾水セクションと、ウェブを乾燥させてシートを生成する乾燥セクションとを備える製造装置を用いて行うことができる。搾水セクションから乾燥セクションにかけて無端ベルトが配設され、搾水セクションで生成されたウェブが無端ベルトに載置されたまま乾燥セクションに搬送される。
抄紙工程において用いられる脱水方法としては、とくに限定されないが、たとえば紙の製造で通常に使用している脱水方法が挙げられる。これらの中でも、長網、円網、傾斜ワイヤーなどで脱水した後、さらにロールプレスで脱水する方法が好ましい。また、抄紙工程において用いられる乾燥方法としては、とくに限定されないが、たとえば紙の製造で用いられている方法が挙げられる。これらの中でも、シリンダードライヤー、ヤンキードライヤー、熱風乾燥、近赤外線ヒーター、赤外線ヒーターなどを用いた乾燥方法がより好ましい。
〔積層体の製造方法〕
本発明の積層体は、上述したように、セロハンシート、および微細繊維状セルロース含有シートを積層して、積層物を得る積層工程(以下、「工程1」ともいう。)、ならびに該積層物を乾燥する乾燥工程(以下、「工程2」ともいう。)をこの順で有し、該積層物において、該セロハンシートおよび該微細繊維状セルロース含有シートの少なくともいずれか1つが湿潤状態である。以下、それぞれの工程について説明する。
(工程1)
工程1では、上述したセロハンシートおよび微細繊維状セルロース含有シートを積層して、積層物を得る。このとき、セロハンシートおよび微細繊維状セルロース含有シートの少なくともいずれか1つが湿潤状態である。
工程1においては、乾燥状態のセロハンシートおよび微細繊維状セルロース含有シートを積層してから湿潤状態としてもよいが、セロハンシートおよび微細繊維状セルロース含有シートの少なくともいずれか1つを湿潤状態としてから、積層して積層物を得ることが好ましい。
これらの中でも、積層時にセロハンシートを湿潤状態とすることが好ましく、セロハンシートのみを湿潤状態とすることがより好ましい。
セロハンシートおよび微細繊維状セルロース含有シートを湿潤状態とする方法はとくに限定されず、水をスプレー塗布する方法、水浴に浸漬する方法など、いずれの方法であってもよい。これらの中でも、十分にムラなく湿潤状態とする観点から、水浴に浸漬する方法が好ましい。
また、使用する水としては、水道水、イオン交換水、蒸留水等、とくに限定されないが、より透明性に優れた積層体を得る観点から、イオン交換水または蒸留水が好ましい。
工程1では、セロハンシートおよび微細繊維状セルロース含有シートの間に、空気などの隙間が生じないように積層することが好ましい。
また、工程1において積層したのち、工程2の前に、層間の泡抜きや、密着性のさらなる向上を目的として、積層物を圧着する工程を有することが好ましい。
圧着の際には、セロハンシートおよび微細繊維状セルロース含有シートに圧着時の傷を防ぐために、積層物の両面に他のシート、フィルム等を重ねることが好ましい。
圧着は、ロール圧着およびプレート圧着のいずれを用いてもよい。また、圧着時には、加熱または冷却してもよい。
圧着時の圧力、温度、および圧着温度は、所望の効果が得られるよう、適宜選択すればよい。
(工程2)
工程2では、工程1にて得られた積層物を乾燥する工程である。
工程2における乾燥温度は、積層体の収縮やクラックの発生を抑制し、柔軟性に優れる積層体を得る観点、および生産性の観点から、好ましくは50℃以上、より好ましくは70℃以上、さらに好ましくは90℃以上、よりさらに好ましくは100℃以上であり、そして、好ましくは200℃以下、より好ましくは150℃以下、さらに好ましくは125℃以下、よりさらに好ましくは110℃以下である。
また、工程2における乾燥時間は、積層体の収縮やクラックの発生を抑制し、柔軟性に優れる積層体を得る観点、および生産性の観点から、好ましくは1分以上、より好ましくは3分以上、さらに好ましくは5分以上であり、そして、好ましくは6時間以下、より好ましくは3時間以下、さらに好ましくは1時間以下、よりさらに好ましくは0.5時間以下である。
乾燥方法としてはとくに限定されないが、紙の製造で用いられている方法が挙げられ、たとえば、シリンダードライヤー、ヤンキードライヤー、熱風乾燥、赤外線ヒーターなどの方法が好ましい。
〔積層体の特性〕
本発明の積層体は、少なくともセロハンシートの少なくとも一面に微細繊維状セルロース含有層を有する。微細繊維状セルロース含有層をセロハンシートの片面に有していても、両面に有していてもよいが、透明性の観点から、片面に有することが好ましい。
また、セロハンシートと微細繊維状セルロース含有層との間に他の層を有していてもよいが、透明性および柔軟性の観点から、他の層を有していないことが好ましい。すなわち、セロハンシートおよび微細繊維状セルロース含有層のみからなることが好ましく、セロハンシートおよび微細繊維状セルロース含有層の2種2層の構成であることがより好ましい。本発明において、微細繊維状セルロース含有層が水溶性高分子を含有することにより、接着層等の他の層を設けることなく、柔軟性に優れる積層体を得られ、また、簡便に積層体を製造することができる。
本発明の積層体は、セロハンシートおよび微細繊維状セルロース含有層に加えて、他の層を有していてもよい。たとえば、セロハンシートおよび微細繊維状セルロース含有層を積層した2層の積層構造のセロハンシート側、または微細繊維状セルロース含有層側に、防塵層、防汚層、防曇層、帯電防止層、紫外線防止層、加飾層等の機能層を設け、積層構造の機能層を設けた面と反対面に接着剤層を設けることにより、種々の物品に貼付することで機能を付与できる積層シートとすることができる。また、前記2層の積層構造のセロハンシート側または微細繊維状セルロース含有層側に、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンなフタレート、ポリカーボネート等の樹脂層を基材層として設けてもよい。この場合、セロハンシートまたは微細繊維状セルロース含有層自体が、帯電防止層、防曇層等の機能層として機能してもよい。
積層体が、セロハンシートおよび微細繊維状セルロースからなる場合、積層体の厚みは、強度および透明性に優れ、柔軟性に優れる積層体とする観点から、好ましくは55μm以上、より好ましくは60μm以上、さらに好ましくは70μm以上であり、そして、好ましくは300μm以下、より好ましくは200μm以下、さらに好ましくは150μm以下である。
なお、上述した他の層(機能層、接着剤層等)を設けることにより、積層体全体としての厚みは適宜選択される。
積層体の厚みムラは、強度および透明性に優れる積層体得る観点、および製造上の観点から、50%以下、好ましくは30%以下、より好ましくは20%以下、さらに好ましくは10%以下であり、そして、好ましくは1%以上、より好ましくは2%以上である。
なお、厚みムラは、実施例に記載の方法により測定され、任意の10点以上で測定した厚みの平均値と、厚みの最大値および最小値から、下記の式で求める。
厚みムラ(%)={(最大値−最小値)/平均値}×100
本発明の積層体は、透明性に優れることが好ましく、積層体のヘーズは、好ましくは5.0%以下、より好ましくは3.0%以下、さらに好ましくは2.5%以下であり、製造容易性の観点から、好ましくは0.3%以上、より好ましくは0.5%以上である。
本発明の積層体は、セロハンシートおよび微細繊維状セルロース含有層の積層体として、透明性および強度にすぐれ、かつ、柔軟性にも優れる透明シートとして、各種用途に使用できる。たとえば、各種ケース等の包装材料が例示される。
また、各種機能層を設けることによって、防汚フィルム、防塵フィルム、防曇フィルム、紫外線防止フィルム、加飾フィルム等としても使用される。
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
[製造例1]
[リン酸化パルプ1の作製]
原料パルプとして、王子製紙(株)製の針葉樹クラフトパルプ(固形分93質量%、坪量208g/mシート状、離解してJIS P 8121に準じて測定されるカナダ標準濾水度(CSF)が700ml)を使用した。この原料パルプに対してリン酸化処理を次のようにして行った。まず、上記原料パルプ100質量部(絶乾質量)に、リン酸二水素アンモニウムと尿素の混合水溶液を添加して、リン酸二水素アンモニウム45質量部、尿素120質量部、水150質量部となるように調整し、薬液含浸パルプを得た。次いで、得られた薬液含浸パルプを165℃の熱風乾燥機で200秒加熱し、パルプ中のセルロースにリン酸基を導入し、リン酸化パルプ1を得た。
次いで、得られたリン酸化パルプ1に対して洗浄処理を行った。洗浄処理は、100g(絶乾質量)のリン酸化パルプ1に対して10Lのイオン交換水を注いで得たパルプ分散液を、パルプが均一に分散するよう撹拌した後、濾過脱水する操作を繰り返すことにより行った。ろ液の電気伝導度が100μS/cm以下となった時点で、洗浄終点とした。
次いで、洗浄後のリン酸化パルプ1に対して中和処理を次のようにして行った。まず、洗浄後のリン酸化パルプ1を10Lのイオン交換水で希釈した後、撹拌しながら1Nの水酸化ナトリウム水溶液を少しずつ添加することにより、pHが12以上13以下のリン酸化パルプスラリー1を得た。次いで、当該リン酸化パルプスラリー1を脱水して、中和処理が施されたリン酸化パルプ1を得た。
次いで、中和処理後のリン酸化パルプ1に対して、上記洗浄処理を行った。これにより得られたリン酸化パルプ1に対しFT−IRを用いて赤外線吸収スペクトルの測定を行った。その結果、1230cm−1付近にリン酸基に基づく吸収が観察され、パルプにリン酸基が付加されていることが確認された。
また、得られたリン酸化パルプ1を供試して、X線回折装置にて分析を行ったところ、2θ=14°以上17°以下付近と2θ=22°以上23°以下付近の2箇所の位置に典型的なピークが確認され、セルロースI型結晶を有していることが確認された。
[解繊処理]
得られたリン酸化パルプ1にイオン交換水を添加し、固形分濃度が2質量%のスラリーを調製した。このスラリーを、湿式微粒化装置((株)スギノマシン製、スターバースト)で200MPaの圧力にて2回処理し、微細繊維状セルロースを含む微細繊維状セルロース分散液1を得た。X線回折により、この微細繊維状セルロースがセルロースI型結晶を維持していることが確認された。また、微細繊維状セルロースの繊維幅を、下記の通り、透過型電子顕微鏡を用いて測定したところ、3〜5nmであった。なお、後述する測定方法で測定されるリン酸基量(第1解離酸量)は、1.45mmol/gであった。なお、総解離酸量は、2.45mmol/gであった。
[製造例2]
[リン酸化パルプ2の作製]
リン酸二水素アンモニウムの代わりに亜リン酸(ホスホン酸)33質量部を用いた以外は、製造例1と同様に操作を行い、リン酸化パルプ2を得た。
これにより得られたリン酸化パルプ2に対しFT−IRを用いて赤外線吸収スペクトルの測定を行った。その結果、1210cm−1付近に亜リン酸基の互変異性体であるホスホン酸基のP=Oに基づく吸収が観察され、パルプに亜リン酸基(ホスホン酸基)が付加されていることが確認された。
また、得られたリン酸化パルプ2を供試して、X線回折装置にて分析を行ったところ、2θ=14°以上17°以下付近と2θ=22°以上23°以下付近の2箇所の位置に典型的なピークが確認され、セルロースI型結晶を有していることが確認された。
[解繊処理]
リン酸化パルプ2に対し製造例1と同様に操作を行い、微細繊維状セルロースを含む微細繊維状セルロース分散液2を得た。X線回折により、この微細繊維状セルロースがセルロースI型結晶を維持していることが確認された。また、微細繊維状セルロースの繊維幅を、透過型電子顕微鏡を用いて測定したところ、3〜5nmの微細繊維状セルロースが観察された。なお、後述する測定方法で測定される(亜)リン酸基量(第1解離酸量)は1.51mmol/gだった。なお、総解離酸量は、1.54mmol/gであった。
[繊維幅の測定]
微細繊維状セルロースの繊維幅を下記の方法で測定した。
湿式微粒化装置にて処理をして得られた上記微細繊維状セルロース分散液の上澄み液を、微細繊維状セルロースの濃度が0.01質量%以上0.1質量%以下となるように水で希釈し、親水化処理したカーボングリッド膜に滴下した。これを乾燥した後、酢酸ウラニルで染色し、透過型電子顕微鏡(日本電子(株)製、JEOL−2000EX)により観察した。
[リン酸基量の測定]
微細繊維状セルロースのリン酸基量は、対象となる微細繊維状セルロースを含む微細繊維状セルロース分散液をイオン交換水で含有量が0.2質量%となるように希釈して作製した繊維状セルロース含有スラリーに対し、イオン交換樹脂による処理を行った後、アルカリを用いた滴定を行うことにより測定した。
イオン交換樹脂による処理は、上記繊維状セルロース含有スラリーに体積で1/10の強酸性イオン交換樹脂(アンバージェット1024;オルガノ(株)、コンディショニング済)を加え、1時間振とう処理を行った後、目開き90μmのメッシュ上に注いで樹脂とスラリーを分離することにより行った。
また、アルカリを用いた滴定は、イオン交換樹脂による処理後の繊維状セルロース含有スラリーに、0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液を5秒に10μLずつ加えながら、スラリーが示すpHの値の変化を計測することにより行った。なお、滴定開始の15分前から窒素ガスをスラリーに吹き込みながら滴定を行った。この中和滴定では、アルカリを加えた量に対して測定したpHをプロットした曲線において、増分(pHのアルカリ滴下量に対する微分値)が極大となる点が二つ観測される。これらのうち、アルカリを加えはじめて先に得られる増分の極大点を第1終点と呼び、次に得られる増分の極大点を第2終点と呼ぶ(図1)。滴定開始から第1終点までに必要としたアルカリ量が、滴定に使用したスラリー中の第1解離酸量と等しくなる。また、滴定開始から第2終点までに必要としたアルカリ量が滴定に使用したスラリー中の総解離酸量と等しくなる。なお、滴定開始から第1終点までに必要としたアルカリ量(mmol)を、滴定対象スラリー中の固形分(g)で除した値をリン酸基量(mmol/g)とした。
[実施例1]
[微細繊維状セルロース含有シートの作製]
製造例1で得られた微細繊維状セルロース分散液1を、固形分濃度が0.5質量%となるようイオン交換水を添加して濃度調整を行った。
次いで、この微細繊維状セルロース分散液85質量部に対して、カルボキシメチルセルロース(第一工業製薬(株)製、セロゲンEP)の0.5質量%水溶液を15質量部添加し、塗工液を得た。
次いで、得られるシート(上記塗工液の固形分から構成される層)の仕上がり坪量が50g/mになるように塗工液を計量して、市販のアクリル板に塗工し、50℃の恒温乾燥機にて乾燥した。なお、所定の坪量となるようアクリル板上には堰止用の金枠(内寸が180mm×180mm、高さ5cmの金枠)を配置した。次いで、上記アクリル板から乾燥後のシートをはく離し、微細繊維状セルロース含有シートを得た。
[積層体の作製]
得られた微細繊維状セルロース含有シート(180mm×180mm)を、アクリル板に置いた。セロハンシート(フタムラ化学(株)製、PL#500)をイオン交換水に10分浸漬して湿潤状態とし、微細繊維状セルロース含有シートの上に層間に隙間が生じないように重ねた。さらに市販のポリエステルフィルムを重ね、ポリエステルフィルム上からハンドクリーナー((株)オーディオテクニカ製、HC−715/30)を押し当てながら荷重2kgで転がし、微細繊維状セルロース含有シートとセロハンを圧着した。次いで、105℃の恒温乾燥機にて乾燥した。乾燥には10分を要した。23℃50%RH条件下で24時間調湿した後、上記アクリル板から乾燥後のシートをはく離し、積層体を得た。
使用したセロハンの物性を以下の表1に示す。
[実施例2]
[微細繊維状セルロース含有シートの作製]において、微細繊維状セルロース分散液50質量部に対して、カルボキシメチルセルロースの0.5質量%水溶液を50質量部添加した以外は実施例1と同様にして積層体を得た。
[実施例3]
[微細繊維状セルロース含有シートの作製]において、微細繊維状セルロース分散液10質量部に対して、カルボキシメチルセルロースの0.5質量%水溶液を90質量部添加した以外は実施例1と同様にして積層体を得た。
[実施例4]
[微細繊維状セルロース含有シートの作製]において、製造例2で得られた微細繊維状セルロース分散液2を、固形分濃度が0.5質量%となるようイオン交換水を添加して濃度調整を行い、この微細繊維状セルロース分散液85質量部に対して、デンプン(王子コーンスターチ(株)製、エースK)の0.5質量%水溶液を15質量部添加した以外は実施例1と同様にして積層体を得た。
[実施例5]
[微細繊維状セルロース含有シートの作製]において、微細繊維状セルロース分散液50質量部に対して、デンプンの0.5質量%水溶液を50質量部添加した以外は実施例4と同様にして積層体を得た。
[実施例6]
[微細繊維状セルロース含有シートの作製]において、微細繊維状セルロース分散液10質量部に対して、デンプンの0.5質量%水溶液を90質量部添加した以外は実施例4と同様にして積層体を得た。
[実施例7]
[微細繊維状セルロース含有シートの作製]において、微細繊維状セルロース分散液85質量部に対して、ポリビニルアルコール((株)クラレ製、ポバール105)の0.5質量%水溶液を15質量部添加し、微細繊維状セルロース含有シートの仕上がり坪量を120g/mとした以外は実施例1と同様にして積層体を得た。
[実施例8]
[微細繊維状セルロース含有シートの作製]において、微細繊維状セルロース分散液10質量部に対して、ポリビニルアルコールの0.5質量%水溶液を90質量部添加し、微細繊維状セルロース含有シートの仕上がり坪量を120g/mとした以外は実施例1と同様にして積層体を得た。
[実施例9]
[微細繊維状セルロース含有シートの作製]において、微細繊維状セルロース分散液85質量部に対して、アルギン酸ナトリウム((株)キミカ製、アルギテックスM)の0.5質量%水溶液を15質量部添加し、微細繊維状セルロース含有シートの仕上がり坪量を120g/mとした以外は実施例4と同様にして積層体を得た。
[実施例10]
[微細繊維状セルロース含有シートの作製]において、微細繊維状セルロース分散液10質量部に対して、アルギン酸ナトリウムの0.5質量%水溶液を90質量部添加し、微細繊維状セルロース含有シートの仕上がり坪量を120g/mとした以外は実施例4と同様にして積層体を得た。
[比較例1]
製造例1で得られた微細繊維状セルロース分散液1を、固形分濃度が1質量%となるようイオン交換水を添加して濃度調整を行った。この微細繊維状セルロース分散液85質量部に対して、カルボキシメチルセルロースの1質量%水溶液を15質量部添加し、塗工液を得た。
次いで、イオン交換水に10分間浸漬することで湿潤状態としたセロハンシートに、得られた塗工液をウェット膜厚5mmで塗工し、105℃の恒温乾燥機にて乾燥した。乾燥には1.5時間を要した。23℃50%RH条件下で24時間調湿し、積層体を得た。
[評価]
[折り割れ]
5cm角の試験片10を図3に示すように屈曲させ、図3におけるθが0°となるまで屈曲した際に割れないものは○、それ以外は×として評価した。試験片は、微細セルロース含有層が外側となるようにして屈曲させた。なお、評価には、23℃50%RH条件下で24時間調湿した試験片を用いた。結果を以下の表2に示す。
[坪量・厚み・厚みムラ]
積層体を10cm×10cmに切り出し、坪量および厚みを測定した。厚みは16点を測定した平均値とし、微細繊維状セルロース含有層の厚みを以下の式で算出した。なお、測定は、切り出した積層体に2cm幅で縦横に線を引いた時の交点である16点で行った。
微細繊維状セルロース含有層の厚み=積層体の厚み−セロハンの厚み
また、厚みムラを以下の式で算出した。
厚みムラ(%)=(最大値−最小値)/平均値×100
なお、評価には、23℃50%RH条件下で24時間調湿した試験片を用いた。結果を以下の表2に示す。
[ヘーズ]
JIS K 7136に準拠し、ヘーズメータ((株)村上色彩技術研究所製、HM−150)を用いてヘーズを測定した。結果を以下の表2に示す。
[比引張強度]
試験片の長さを75mm、チャック間距離を50mmとした以外はJIS P 8113に準拠し、引張試験機テンシロン((株)エー・アンド・デイ製)を用いて引張強さを測定した。以下の式で比引張強度を算出し、縦横両方向の比引張強度の相乗平均をとった。なお、評価には、23℃50%RH条件下で24時間調湿した試験片を用いた。結果を以下の表2に示す。
比引張強度[Nm/g]=強度[kN/m]/坪量[g/m]×1000
実施例では微細繊維状セルロース含有シートをセロハンシートと貼り合せることで、積層体作製時に要する乾燥時間が短く、セロハンへの乾燥負荷を低減しながら積層体を得ることができた。実施例で得られた積層体は厚みムラが小さく、折り割れが発生せず、強度が良好で、セロハンシートの透明性も損なわなかった。
一方、比較例ではセロハンシートに微細繊維状セルロース分散液を直接塗工し、積層体作製時に長い乾燥時間が必要であった。また、乾燥時の収縮によって厚みムラが大きく、折り割れや強度が劣っていた。また、クラックの発生も認められた。
本発明によれば、透明性および強度に優れ、さらに柔軟性に優れる積層体、ならびに該積層体の簡便な製造方法が得られる。本発明の積層体は、各種包装材料等、機能性シートとしての有用性が期待される。

Claims (6)

  1. セロハンシートの少なくとも一面に、繊維幅が1,000nm以下の微細繊維状セルロースと水溶性高分子とを含有する微細繊維状セルロース含有層を有する積層体であって、
    該微細繊維状セルロース含有層の厚みが、10μm以上500μm以下であり、
    該積層体の厚みムラが50%以下である、
    積層体。
  2. 前記微細繊維状セルロース含有層の固形分中の微細繊維状セルロースの含有量が5質量%以上95質量%以下である、請求項1に記載の積層体。
  3. セロハンシート、および繊維幅が1,000nm以下の微細繊維状セルロースと水溶性高分子とを含有する微細繊維状セルロース含有シートを積層して、積層物を得る積層工程、および
    該積層物を乾燥する乾燥工程をこの順で有し、
    該積層物において、該セロハンシートおよび該微細繊維状セルロース含有シートの少なくともいずれか1つが湿潤状態である、積層体の製造方法。
  4. 該微細繊維状セルロース含有シートの厚みが、10μm以上500μm以下である、請求項3に記載の積層体の製造方法。
  5. 前記積層工程の後、前記乾燥工程の前に、前記積層物を圧着する工程をさらに有する、請求項3または4に記載の積層体の製造方法。
  6. 前記乾燥工程における乾燥温度が50℃以上である、請求項3〜5のいずれかに記載の積層体の製造方法。
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