以下、図面を参照して、本発明の実施形態による有機ELデバイスおよびその製造方法を説明する。以下では、有機ELデバイスとして、OLED表示装置を例示する。なお、本発明の実施形態は、以下に例示する実施形態に限定されない。
まず、図1(a)および図1(b)を参照して、本発明の実施形態によるOLED表示装置100の基本的な構成を説明する。図1(a)は、本発明の実施形態によるOLED表示装置100のアクティブ領域の模式的な部分断面図であり、図1(b)は、OLED3上に形成されたTFE構造10の部分断面図である。後に説明する実施形態1によるOLED表示装置100Aおよび実施形態2によるOLED表示装置も基本的に同じ構成を有しており、特に、TFE構造に関する構造以外の構造はOLED表示装置100と同じであってよい。
OLED表示装置100は、複数の画素を有し、画素ごとに少なくとも1つの有機EL素子(OLED)を有している。ここでは、簡単のために、1つのOLEDに対応する構造について説明する。
図1(a)に示すように、OLED表示装置100は、基板(例えばフレキシブル基板。以下、単に「基板」ということがある。)1と、基板1上に形成されたTFTを含む回路(バックプレーン)2と、回路2上に形成されたOLED3と、OLED3上に形成されたTFE構造10とを有している。OLED3は例えばトップエミッションタイプである。OLED3の最上部は、例えば、上部電極またはキャップ層(屈折率調整層)である。基板1と、基板1に支持された回路2およびOLED3とを含めて素子基板20ということがある。TFE構造10は、素子基板20上に形成されている。TFE構造10の上にはオプショナルな偏光板4が配置されている。以下では、基板1がフレキシブル基板である例を説明する。
基板1は、例えば厚さが15μmのポリイミドフィルムである。TFTを含む回路2の厚さは例えば4μmであり、OLED3の厚さは例えば1μmであり、TFE構造10の厚さは例えば1.5μm以下である。
図1(b)は、OLED3上に形成されたTFE構造10の部分断面図である。TFE構造10は、第1無機バリア層(例えばSiN層)12と、第1無機バリア層12の上面に接する有機バリア層(例えばアクリル樹脂層)14と、第1無機バリア層12の上面および有機バリア層14の上面に接する第2無機バリア層(例えばSiN層)16とを有する。第1無機バリア層12は、OLED3の直上に形成されている。
TFE構造10は、OLED表示装置100のアクティブ領域(図2中のアクティブ領域R1参照)を保護するように形成されており、少なくともアクティブ領域には、上述したように、OLED3に近い側から順に、第1無機バリア層12、有機バリア層14、および第2無機バリア層16を有している。
(実施形態1)
図2から図4を参照して、本発明の実施形態1によるOLED表示装置100Aの構造およびその製造方法を説明する。
図2は、本発明の実施形態によるOLED表示装置100Aの模式的に示す平面図である。図3(a)および(b)は、図2中の3A−3A’線に沿った断面図である。図3(a)および(b)は、それぞれ、突状構造体22aの例として、突状構造体22a1および突状構造体22a2を有するOLED表示装置100A1および100A2を模式的に示す断面図である。突状構造体22a1および22a2を総称して突状構造体22aということがある。OLED表示装置100A1および100A2を総称してOLED表示装置100Aということがある。
図2に示すように、OLED表示装置100Aは、フレキシブル基板1と、フレキシブル基板1上に形成された回路(バックプレーン)2と、回路2上に形成された複数のOLED3と、OLED3上に形成されたTFE構造10Aとを有している。複数のOLED3が配列されている層をOLED層3ということがある。なお、回路2とOLED層3とが一部の構成要素を共有してもよい。TFE構造10Aの上にはオプショナルな偏光板(図1中の参照符号4を参照)がさらに配置されてもよい。また、例えば、TFE構造10Aと偏光板との間にタッチパネル機能を担う層が配置されてもよい。すなわち、OLED表示装置100は、オンセル型のタッチパネル付き表示装置に改変され得る。
回路2は、複数のTFT(不図示)と、それぞれが複数のTFT(不図示)のいずれかに接続された複数のゲートバスライン(不図示)および複数のソースバスライン(不図示)とを有している。回路2は、複数のOLED3を駆動するための公知の回路であってよい。複数のOLED3は、回路2が有する複数のTFTのいずれかに接続されている。OLED3も公知のOLEDであってよい。
OLED表示装置100Aは、さらに、複数のOLED3が配置されているアクティブ領域(図2中の破線で囲まれた領域)R1の外側の周辺領域R2に配置された複数の端子38と、複数の端子38と複数のゲートバスラインまたは複数のソースバスラインのいずれかとを接続する複数の引出し配線30を有しており、TFE構造10Aは、複数のOLED3の上および複数の引出し配線30のアクティブ領域R1側の部分の上に形成されている。すなわち、TFE構造10Aはアクティブ領域R1の全体を覆い、かつ、複数の引出し配線30のアクティブ領域R1側の部分の上に選択的に形成されており、引出し配線30の端子38側および端子38は、TFE構造10Aでは覆われていない。
以下では、引出し配線30と端子38とが同じ導電層を用いて一体に形成された例を説明するが、互いに異なる導電層(積層構造を含む)を用いて形成されてもよい。
図2および図3に示すように、OLED表示装置100Aの周辺領域R2は、アクティブ領域R1の少なくとも1つの辺に沿って延びる突状構造体22aと、突状構造体22aの上に延設された、第1無機バリア層12の延設部12eとを有する。図3(a)および図3(b)にそれぞれ示す突状構造体22a1および22a2は、ともに以下のような形状を有する。突状構造体22aは第1部分および第2部分を含み、第1部分は第2部分よりも突状構造体22aの頂部に近く、基板1の法線方向から見たとき、第1部分の基板面に平行な第1断面は、第2部分の基板面に平行な第2断面と重ならない部分を含む。
具体的には、例えば、図3(a)に示すように、突状構造体22a1は、突状構造体22a1が延びる方向と直交する断面(例えば図3(a)に示す断面)を見たとき、その側面のテーパー角θpが90°超である逆テーパー部STを含む。逆テーパー部STは上記の第1部分および/または第2部分を含む。
あるいは、図3(b)に示すように、突状構造体22a2は、突状構造体22a2が延びる方向と直交する断面(例えば図3(b)に示す断面)を見たとき、突状構造体22a2は突状構造体22a2の高さ方向と略直交する方向に突き出ている突出部PPを含む。突出部PPは上記の第1部分を含む。
図4を参照しながら、OLED表示装置100Aの製造方法を説明する。図4は、OLED表示装置100Aを形成するためのマザーパネル200Aを模式的に示す図である。
図4に示すように、マザーパネル200Aは、素子基板20’と、素子基板20’上に形成された薄膜封止構造10Aとを有する。素子基板20’は、マザーガラス基板(不図示。例えばG4.5(730mm×920mm))上に形成される。素子基板20’は、それぞれがOLED表示装置100Aとなる複数のOLED表示装置部100Apを有している。素子基板20’は、基板1’と、基板1’に支持された回路2および複数の有機EL素子3とを有する。回路2および複数の有機EL素子3は、OLED表示装置部100Apのそれぞれに設けられ、共通の基板1’に支持されている。薄膜封止構造10Aは、それぞれのOLED表示装置部100Apのアクティブ領域R1を保護するように形成されている。マザーパネル200Aは、分断線CLで個々のOLED表示装置部100Apに分断され、その後、必要に応じて行われる後工程を経て、OLED表示装置100Aが得られる。基板1’が分断されることで、それぞれのOLED表示装置100Aの基板1となり、それぞれのOLED表示装置100Aが有する素子基板20が得られる。
すなわち、本発明の実施形態によるOLED表示装置100Aを製造する方法は、以下の工程を包含する。
工程(1):基板1’と、基板1’に支持された、それぞれが複数の有機EL素子3を含む複数のアクティブ領域R1とを有する素子基板20’を用意する工程
工程(2):複数のアクティブ領域R1のそれぞれに複数の有機EL素子3を覆う薄膜封止構造10Aを形成する工程
工程(3):工程(2)の後に、複数のアクティブ領域R1のそれぞれを分断する工程
工程(1)は、複数のアクティブ領域R1のそれぞれに、該アクティブ領域R1の少なくとも1つの辺に沿って延びる部分を含む突状構造体22aを形成する工程を包含する。
工程(2)は、以下の工程を包含する。
工程A:突状構造体22aの上に、突状構造体22aを覆うように、第1無機バリア層12を形成する工程
工程B:工程Aの後で、第1無機バリア層12の上に有機バリア層14を形成する工程
工程C:工程Bの後で、第1無機バリア層12および有機バリア層14の上に、第2無機バリア層16を形成する工程
工程(3)は、複数のアクティブ領域R1のそれぞれに形成された突状構造体22aおよび該アクティブ領域R1を含むように、基板1’および第1無機バリア層12を切断する工程を包含する。
量産においては、複数の素子基板20がマザーガラス基板上に形成される。工程(3)は、マザーガラス基板を切断する工程またはマザーガラス基板を部分的に(例えば表面からある深さまで)削る工程をさらに包含してもよい。基板(例えばフレキシブル基板)1’の切断は、例えばレーザビームの照射によって行われる。レーザビームの波長は、赤外、可視光、紫外のいずれの領域にあってもよい。マザーガラス基板に及ぶ切断の影響を小さくする観点からは、波長が緑から紫外域に含まれるレーザビームが望ましい。
本発明の実施形態によるOLED表示装置100Aを製造する方法は、例えば、基板1’および第1無機バリア層12を切断する工程の後に、マザーガラス基板から素子基板20を剥離する工程をさらに包含する。
マザーガラス基板から素子基板20を剥離する前に、例えば、マザーガラス基板を透過する紫外線レーザ光を基板1’(または基板1)に照射するレーザリフトオフが行われる。基板1’(または基板1)の一部は、マザーガラス基板との界面において、このような紫外線レーザ光を吸収して分解(消失)する必要がある。レーザリフトオフ後、マザーガラス基板から素子基板20を剥離する。レーザリフトオフは、基板1’および第1無機バリア層12を切断する工程の前に行ってもよいし、基板1’および第1無機バリア層12を切断する工程の後に行ってもよい。ここで、「レーザリフトオフ」の用語は、レーザ照射によって、マザーガラス基板と素子基板20との接合(接着)を弱めることをいい、物理的に剥離することを含まない。
第1無機バリア層12および第2無機バリア層16は、例えば、マスクを用いたプラズマCVD法で、それぞれのOLED表示装置部100Apのアクティブ領域R1を覆うように所定の領域だけに選択的に形成される。それぞれのOLED表示装置部100Apのアクティブ領域R1は、第1無機バリア層12と第2無機バリア層16とが直接接触している部分(以下、「無機バリア層接合部」という。)で完全に包囲されていることが好ましい。アクティブ領域R1が無機バリア層接合部で完全に包囲されている限り、第1無機バリア層12および第2無機バリア層16の形状は任意であってよい。例えば、第2無機バリア層16は、第1無機バリア層12と同じ(外縁が一致する)であってもよいし、第1無機バリア層12の全体を覆うように形成されていてもよい。第1無機バリア層12が、第2無機バリア層16の全体を覆うように形成されていてもよい。TFE構造10Aの外形は、例えば、第1無機バリア層12および第2無機バリア層16によって形成される無機バリア層接合部によって画定される。
図2および図4の平面図には、TFE構造10Aが形成されるべき領域のみをTFE構造10Aとして図示している。TFE構造10Aが形成されるべき領域は、少なくともアクティブ領域R1を覆い、無機バリア層接合部を含む領域であり、かつ、分断線CLの内側にある。第1無機バリア層12および/または第2無機バリア層16が分断線CL上に存在すると、素子基板20'を分断する工程で切断する層の数が増加し、製造コストが増加し得るからである。図2および図4に図示する、TFE構造10Aが形成されるべき領域は、例えば、第1無機バリア層12および/または第2無機バリア層16を形成するためのCVDマスクの形状に相当する。
しかしながら、実際には、図3の断面図に示すように、例えばマスクCVD装置の寸法精度に起因して、TFE構造10Aが形成されるべき領域よりも、第1無機バリア層12および/または第2無機バリア層16が形成される領域が大きいことがある。また、第1無機バリア層12のマスクと素子基板20'とのアライメント誤差を考慮し、薄膜封止構造10Aを形成すべき領域よりも広く第1無機バリア層12を形成することがある。OLED表示装置の量産性を向上させる観点から、マザーガラス基板上に形成されたOLED表示装置部100Apの隣接間距離が小さい(例えば数mm(例えば3mm))ことが好ましい。これらのような場合に、第1無機バリア層12および/または第2無機バリア層16が分断線CL上に存在することがある。本明細書において、第1無機バリア層12のうち、TFE構造10Aが形成されるべき領域以外の領域に形成された部分を延設部12eということがある。第2無機バリア層16についても同様に、第2無機バリア層16のうち、TFE構造10Aが形成されるべき領域以外の領域に形成された部分を延設部16eということがある。
図3(a)および(b)に示すように、得られたOLED表示装置100Aにおいて、切断された箇所(分断線CL)から第1無機バリア層12に亀裂(クラック)12dが発生することがある。クラック12dは、熱履歴等によって経時的に進展する。突状構造体22aがなければ、クラック12dは、第1無機バリア層12を通じてアクティブ領域R1にまで達し得る。しかしながら、OLED表示装置100Aは第1無機バリア層12の下に形成された突状構造体22aを有することによって、クラック12dがアクティブ領域R1に達することを抑制することができる。OLED表示装置100Aは、耐湿信頼性が改善される。
図3(a)に示すように、突状構造体22a1が形成されている平坦面と突状構造体22a1の側面との境界において、第1無機バリア層12(延設部12e)に欠陥12f1が形成されやすい。欠陥12f1は、突状構造体22a1の側面の逆テーパー部PTにおいて特に形成されやすい。これは、平坦面から成長するSiN膜と、側面から成長するSiN膜とがインピンジ(衝突)する箇所において、(膜)密度が低い部分が形成されるからである。この欠陥は、極端な場合にはクラックとなることもある。欠陥12f1は、突状構造体22a1が延びる方向に沿って線状に形成される。分断工程において、第1無機バリア層12内に発生したクラック12dが、アクティブ領域R1に向けて進展すると、クラック12dの先端が、突状構造体22aが延びる方向に沿って形成された線状の欠陥12f1に到達する。そうすると、クラック12dの先端における応力が解放され、クラック12dが線状欠陥12f1を超えて進展することが防止される。
図3(b)に示す例では、突状構造体22a2の突出部PPにおいて、第1無機バリア層12(延設部12e)に欠陥12f2が形成されやすい。欠陥12f2は、例えば第1無機バリア層12の不連続部分であってもよい。欠陥12f2も、突状構造体22a2が延びる方向に沿って線状に形成されるので、クラック12dが線状欠陥12f2を超えて進展することが防止される。
図示する例では、第2無機バリア層16も分断線CL上に形成されている。従って、図3(a)および(b)に示すように、得られたOLED表示装置100Aにおいて、切断された箇所(分断線CL)から第2無機バリア層16にも亀裂(クラック)16dが発生し得る。第2無機バリア層16は、第1無機バリア層12の延設部12e上に形成された延設部16eを有する。第2無機バリア層16は、下地である第1無機バリア層12の欠陥12f1または12f2による段差を反映するので、第2無機バリア層16の延設部16eは欠陥16f1または16f2を有する。これにより、第2無機バリア層16はクラック16dがアクティブ領域R1に達することを抑制することができる。
ここでは、第1無機バリア層12および第2無機バリア層16が、アクティブ領域R1を覆うように所定の領域だけに選択的に形成される場合を説明したが、本実施形態はこの例に限られない。マザーガラス基板上に形成された素子基板20’の全面に第1無機バリア層12および/または第2無機バリア層16を形成してもよい。この場合においても、上述したように、突状構造体22aを有することによって、得られたOLED表示装置の耐湿信頼性が改善される。
なお、第1無機バリア層12および/または第2無機バリア層16の突状構造体22aよりもアクティブ領域R1側に、突状構造体22aに起因した欠陥(線状欠陥)が形成されても、それぞれのアクティブ領域R1が無機バリア層接合部で完全に包囲されていれば、OLED表示装置の耐湿信頼性に影響はない。
突状構造体22aの形状は図示する例に限られない。上述したように、突状構造体22aは以下のような形状を有すればよい。突状構造体22aは第1部分および第2部分を含み、第1部分は第2部分よりも突状構造体22aの頂部に近く、基板1の法線方向から見たとき、第1部分の基板面に平行な第1断面は、第2部分の基板面に平行な第2断面と重ならない部分を含む。このような形状を有する突状構造体22aを有すると、第1無機バリア層12(延設部12e)に欠陥が形成されるので、クラック12dが線状欠陥を超えて進展することが防止される。
例えば、図3(a)に示す突状構造体22a1は、突状構造体22a1が延びる方向と直交する断面において、両側面が逆テーパー部を有するが、突状構造体は側面の一部のみに逆テーパー部を有してもよい。すなわち、側面の一部のみのテーパー角が90°超であってもよい。
図3(b)に示す突状構造体22a2は、下側層LLと、下側層LL上に形成された上側層TLとを含む。突状構造体22a2が延びる方向と直交する断面において、上側層TLの底部の幅Dpは下側層LLの頂部の幅Dlよりも大きい。これにより、突出部PPが形成される。すなわち、突出部PPは、上側層TLの底部のうち下側層LLの頂部からはみ出している部分を含む。突状構造体22a2を基板1の法線方向から見ると、上側層TLの底部の断面は、下側層LLの頂部の断面と重ならない部分を含む。ここで、上側層TLの底部は下側層LLの頂部よりも、突状構造体22a2の頂部に近い。
突状構造体22a2が延びる方向と直交する断面において、上側層TLの底部の幅Dpは、下側層LLの高さHlの2.5倍以上であることが好ましく、3倍以上であることがさらに好ましい。突状構造体22a2が延びる方向と直交する断面において、下側層LLは例えば略台形状であり、上側層TLは例えば略矩形状である。ここでは例えば、上側層TLの底部の幅Dpは、上側層TLの頂部の幅(すなわち突状構造体22a2の頂部の幅)Dtとほぼ等しい。図3(b)に示す例では、突状構造体22a2は、図3(b)に示す断面において、突出部PPを左右両側に有する。これに限られず、例えば、突状構造体は、突出部を片側にのみ有してもよい。また、突出部は、突状構造体上に形成された第1無機バリア層12(延設部12e)に欠陥を生じさせるものであればよく、突出部が突き出る方向は突状構造体の高さ方向に直交する方向に限られない。
突状構造体22aの高さHpは、例えば、第1無機バリア層12の厚さD12よりも大きい。突状構造体22aの高さHpが、第1無機バリア層12の厚さD12の3倍以上であると、第1無機バリア層12(延設部12e)に欠陥がより形成されやすくなるので好ましい。第2無機バリア層16が、第1無機バリア層12の延設部12e上に形成された延設部16eを有する場合は、突状構造体22aの高さHpは、第1無機バリア層12の厚さD12および第2無機バリア層16の厚さD16の和の3倍以上であることがさらに好ましい。ここで、第1無機バリア層12の厚さD12は、第1無機バリア層12のうちのアクティブ領域R1に形成されている部分の厚さを指し、第2無機バリア層16の厚さD16は、第2無機バリア層16のうちのアクティブ領域R1に形成されている部分の厚さを指す。ただし、突状構造体22aの高さHpは、第1無機バリア層12の厚さD12以下であってもよい。この場合でも、突状構造体22aが上述したような断面形状を有することによって、第1無機バリア層12(延設部12e)に欠陥が形成され得る。
なお、第1無機バリア層12の延設部12eの厚さは、例えば、アクティブ領域R1の第1無機バリア層12の厚さD12とほぼ同じであり得る。同様に、第2無機バリア層16の延設部16eの厚さは、例えば、アクティブ領域R1の第2無機バリア層16の厚さD16とほぼ同じであり得る。ただし、本実施形態はこれに限られない。例えば、第1無機バリア層12の延設部12eの厚さは、アクティブ領域R1の第1無機バリア層12の厚さD12よりも小さくてもよく、第2無機バリア層16の延設部16eの厚さは、アクティブ領域R1の第2無機バリア層16の厚さD16よりも小さくてもよい。第1無機バリア層12の延設部12eの厚さが小さい場合は、突状構造体22aの頂面においても、第1無機バリア層12に欠陥が形成される場合がある。
突状構造体22aの、突状構造体22aが延びる方向と直交する断面における幅Daは、例えば10μm以下である。この場合、突状構造体22aを設けてもOLED表示装置100Aの狭額縁化に大きく影響を与えない。突状構造体22aの幅Daは、突状構造体22aの高さ方向に直交する方向における幅とする。
逆テーパー部を側面に有する突状構造体22a1は、例えば、ネガ型の感光性樹脂を用いてフォトリソグラフィプロセスで形成される。ネガ型の感光性樹脂で形成した樹脂膜をアンダー露光となるような条件で露光し、その後、オーバー現像することで、逆テーパー側面を有する突状構造体22a1を形成することができる。ネガ型の感光性樹脂に紫外線吸収剤を添加した樹脂組成物を用いて、アンダー露光となるように露光条件を調節してもよい。この例に限られず、公知のフォトリソグラフィプロセスを用いて逆テーパー側面を形成することができる。
突状構造体22a1を形成する工程は、例えば、複数の画素のそれぞれを規定するバンク層(「PDL(Pixel Defining Layer)」と呼ばれることもある。)(不図示)を形成する工程と同じ工程で製造されてもよい。すなわち、突状構造体22a1およびバンク層は、同じ樹脂膜をパターニングすることによって形成されてもよい。突状構造体22a1を形成する工程およびバンク層を形成する工程は、同じ樹脂膜をパターニングする工程を包含してもよい。バンク層のテーパー角は90°以下であることが好ましいので、突状構造体22a1およびバンク層のパターニング(露光および現像を含む)は異なる条件で行うことが好ましい。この場合、突状構造体22a1およびバンク層のパターニングは、異なるフォトマスクを用いて別々の工程で行うことができる。また、例えば多階調マスク(ハーフトーンマスクまたはグレートーンマスク)を用いることにより、同一のフォトマスクおよび/または同一のエッチャントを用いて、突状構造体22a1およびバンク層をパターニングすることもできる。多階調マスクとは、3レベル(最小値、最大値およびこれらの間の中間値)以上の異なる透過率を有する領域を含むフォトマスクである。例えば、ネガ型の感光性樹脂を用いて樹脂膜を形成した後、突状構造体22a1に対応する領域とバンク層に対応する領域との露光量を互いに異ならせるフォトマスクを用いて、樹脂膜を露光すればよい。ここで、突状構造体22a1に対応する領域の露光量が、バンク層に対応する領域の露光量よりも少なくなるようにフォトマスクを用いればよい。さらに、バンク層に対応する領域のうち、側面のテーパー角を小さくしたい領域の露光量を他の領域よりも少なくしてもよい。このようなフォトマスクは、バンク層に対応する多階調マスク部と、突状構造体22a1に対応するバイナリーマスク部とを有するということもできる。
バンク層は、例えば、OLED3の陽極を構成する下部電極と、下部電極上に形成された有機層(有機発光層)との間に形成される。バンク層の厚さは、数μm(例えば1μm〜2μm)であるので、突状構造体22a1の高さをバンク層の高さと同じとしてもよい。上述したような多階調マスクを用いるフォトリソグラフィプロセスによって、突状構造体22a1の高さをバンク層の高さと異ならせることもできる。あるいは、突状構造体22a1は、回路(バックプレーン)2を形成する工程のいずれかと同じ工程を用いて形成されてもよい。例えばOLED3の下部電極の下地となる平坦化層と、同じ樹脂膜から突状構造体22a1を形成することができる。もちろん、回路(バックプレーン)2を形成する工程とは異なる工程において、突状構造体22a1が形成されてもよい。
図5(a)〜(c)を参照して、突出部PPを有する突状構造体22a2の形成方法の例を説明する。
まず、図5(a)に示すように、基板1上に下側樹脂膜LF’を付与し、下側樹脂膜LF’の上に例えばプラズマCVD法で上側膜TF’(例えばSiN膜)を形成する。その後、上側膜TF’の上に、フォトレジスト(例えばネガ型)を用いてレジスト層50を形成する。ここでは、下側樹脂膜LF’はバンク層を形成した後に形成する。下側樹脂膜LF’としては、例えばネガ型の感光性樹脂(例えばアクリル樹脂)を用いる。上側膜TF’を形成する前に、下側樹脂膜LF’に熱処理(プリベーク)を施してもよい。上側膜TF’の堆積は、低温(例えば80℃以下)かつ常圧で行うことが好ましい。
次いで、図5(b)に示すように、レジスト層50をエッチングマスクとして、上側膜TF’をパターニングすることによって、上側層TLを形成する。上側膜TF’のパターニングは、例えばエッチャントとしてフッ酸を用いて行う。下側樹脂膜LF’が上側膜TF’のエッチャントに対する耐性を有することが好ましい。すなわち、下側樹脂膜LF’のエッチングレートが上側膜TF’のエッチングレートよりも低いことが好ましい。例えば、アクリル樹脂はフッ酸耐性を有する。
次いで、レジスト層50を除去し、その後、上側層TLをエッチングマスクとして下側樹脂膜LF’をパターニングすることによって、図5(c)に示すように、下側層LLを形成する。下側樹脂膜LF’のパターニングはウェットエッチングによって行う。下側樹脂膜LF’のパターニングは、下側樹脂膜LF’のうち、エッチングマスクである上側層TLの下の部分もエッチングされる(アンダーカット)ようにオーバーエッチする。このようにして、下側層LLと上側層TLとを有する突状構造体22a2が形成される。下側層LLの頂部の幅Dlは、上側層TLの底部の幅Dpよりも小さい。上側層TLの底部の幅Dpは、下側層LLの高さHlの2.5倍以上であることが好ましく、3倍以上であることがさらに好ましい。なお、レジスト層50の除去は、下側層LLを形成した後に行ってもよい。
突状構造体22a2は以下の方法でも形成される。突状構造体22a2の下側層LLおよびバンク層は、同じ樹脂膜(つまり下側樹脂膜LF’)をパターニングすることによって形成されてもよい。この場合、上側層TLを形成し、レジスト層50を除去した後、下側層LLおよびバンク層に対応した開口部を有するレジスト層を、下側樹脂膜LF’のエッチングマスクとして新たに形成すればよい。
あるいは、光に対する感度が互いに異なる2種類の感光性樹脂を用いて、突状構造体22a2を形成してもよい。この場合、上側層TLおよび下側層LLはともに樹脂層であり、上側樹脂膜TF’は下側樹脂膜LF’よりも光に対する感度が高い感光性樹脂を用いて形成される。感光性樹脂の感度は、例えば樹脂に含まれる光重合開始剤の量を変えることで調整できる。基板1上に下側樹脂膜LF’を付与した後、上側樹脂膜TF’を付与する前に、下側樹脂膜LF’に熱処理(プリベーク(例えば130℃で2分間))を施してもよい。上側樹脂膜TF’を付与した後、下側樹脂膜LF’および上側樹脂膜TF’をフォトリソグラフィプロセスによってパターニングする。下側樹脂膜LF’および上側樹脂膜TF’は、その感度の違いに起因して異なる形状にパターニングされる。
突状構造体22aは、OLED3の有機発光層をマスク蒸着法で形成する場合に、蒸着マスクが素子基板の表面と所望の間隙を形成するためのスペーサを兼ねてもよい。あるいは、TFE構造10A上に配置されるタッチセンサ層または基板(保護層)を支持するためのスペーサを兼ねてもよい。突状構造体22aがスペーサを兼ねる場合は、突状構造体22aの高さは、バンク層の厚さと同じまたはバンク層の厚さよりも大きいことが好ましい。また、突状構造体22aがスペーサを兼ねる場合は、突状構造体22aが延びる方向と直交する断面において、突状構造体22aの頂部の幅Dtは、5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがさらに好ましい。
突状構造体22aは、図2に示すように、アクティブ領域R1の4つの辺のうち、複数の端子38および複数の引出し配線30が設けられている辺(x軸方向に延びる辺のうちの図2の下側の辺)を除く3つの辺に沿って延びる部分を含む。例えば中小型のOLED表示装置においては、アクティブ領域R1の上下左右4つの周辺領域のうち、配線の端子を取り出す1つの周辺領域を除く他の3つの周辺領域の幅を小さくすることが求められている。従って、他の3つの周辺領域においては、上述したように、分断線CL上に無機バリア層が形成され易いので、突状構造体22aを設けることにより、耐湿信頼性を改善することができる。これに比べると、配線の端子を取り出す周辺領域については、求められる狭額縁化の程度が小さいので、分断線CL上に重ならないように無機バリア層を形成することが容易である。従って、突状構造体22aを省略することができる。図2に示すように、複数の端子38が設けられている部分を除いて、アクティブ領域R1の4つの辺に沿って、突状構造体22aが設けられていてもよい。複数の端子38が設けられている部分を除いて、分断線CLとアクティブ領域R1の外縁とを結ぶ線(例えば直線)を遮るように、突状構造体22aが設けられていることが好ましい。
突状構造体の平面形状(基板の法線方向から見たときの形状)は、例示するものに限られない。突状構造体は、アクティブ領域R1の4つの辺のうち、複数の端子が設けられている2つの辺を除く他の2つの辺に沿って延びていてもよい。例えば、大型のOLED表示装置において、アクティブ領域R1の上下左右4つの周辺領域のうち、対向する2つ(上下または左右)の周辺領域において配線の端子を取り出す構成とすることがある。また、突状構造体は、必ずしも一体として形成されている必要はなく、複数のサブ構造体から構成されていてもよい。複数のサブ構造体全体として、分断線CLとアクティブ領域R1の外縁との間を遮る構成となっていればよい。突状構造体の配置および平面形状の例は後述する。
次に、図6(a)〜(c)を参照して、OLED表示装置100AのTFE構造10Aを説明する。図6(a)に図2中の6A−6A’線に沿った断面図を示し、図6(b)に図2中の6B−6B’線に沿った断面図を示し、図6(c)に図2中の6C−6C’線に沿った断面図を示す。
図6(a)および図6(b)に示すように、TFE構造10Aは、OLED3上に形成された第1無機バリア層12と、有機バリア層14と、第1無機バリア層12および有機バリア層14に接する第2無機バリア層16とを有している。ここでは、有機バリア層14は、第1無機バリア層12の上面に接し、かつ、離散的に分布する複数の中実部を有する。第2無機バリア層16は、第1無機バリア層12の上面および有機バリア層14の複数の中実部の上面に接する。有機バリア層14は、アクティブ領域の全面を覆う膜として存在しているのではなく、開口部を有している。有機バリア層14の内、開口部を除く、実際に有機膜が存在する部分を「中実部」ということにする。また、「開口部」(「非中実部」ということもある。)は、中実部で包囲されている必要はなく、切欠きなどを含み、開口部においては、第1無機バリア層12と第2無機バリア層16とが直接接触している。有機バリア層14が有する開口部は、少なくとも、アクティブ領域R1を包囲するように形成された開口部を含み、アクティブ領域R1は、第1無機バリア層12と第2無機バリア層16とが直接接触している部分(無機バリア層接合部)で完全に包囲されている。
例えば、第1無機バリア層12および第2無機バリア層16は、例えば厚さが400nmのSiN層であり、有機バリア層14は厚さが100nm未満のアクリル樹脂層である。第1無機バリア層12および第2無機バリア層16の厚さはそれぞれ独立に、200nm以上1000nm以下であり、有機バリア層14の厚さは50nm以上200nm未満である。TFE構造10Aの厚さは400nm以上2μm未満であることが好ましく、400nm以上1.5μm未満であることがさらに好ましい。
第1無機バリア層12および第2無機バリア層16は、上述したように、マスクを用いたプラズマCVD法で、アクティブ領域R1を覆うように所定の領域だけに選択的に形成される。一般に、薄膜堆積法(例えばCVD法、スパッタ法、真空蒸着法)によって形成される層の表面は、下地の段差を反映する。有機バリア層(中実部)14は、第1無機バリア層12の表面の凸部の周辺にのみ形成される。第1無機バリア層12は、突状構造体22aの上に、突状構造体22aを覆うように形成される。
有機バリア層14は、例えば、上記特許文献1または2に記載の方法で形成され得る。例えば、チャンバー内で、蒸気または霧状の有機材料(例えばアクリルモノマー)を、室温以下の温度に維持された素子基板上に供給し、素子基板上で凝縮させ、液状になった有機材料の毛細管現象または表面張力によって、第1無機バリア層12の凸部の側面と平坦部との境界部に偏在させる。その後、有機材料に例えば紫外線を照射することによって、凸部の周辺の境界部に有機バリア層(例えばアクリル樹脂層)14の中実部を形成する。この方法によって形成される有機バリア層14は、平坦部には中実部が実質的に存在しない。有機バリア層の形成方法に関して、特許文献1および2の開示内容を参考のために本明細書に援用する。
図3に示す例のように、第2無機バリア層16が突状構造体22aの上に形成されている場合、突状構造体22aの上に形成された第1無機バリア層12(延設部12e)の上に、有機バリア層14が形成されないことが好ましい。第1無機バリア層12の欠陥12f1、12f2を充填するように有機バリア層14が形成されると、第1無機バリア層12の欠陥12f1、12f2に起因した段差が第2無機バリア層16に反映されない。この場合、第2無機バリア層16に欠陥16f1、16f2が形成されず、第2無機バリア層16に生じたクラック16dがアクティブ領域R1に達することを抑制することができないおそれがある。従って、上記特許文献1または2に記載の方法に、例えば以下に説明する方法のいずれかを組み合わせて、突状構造体22aの頂面および側面の上に形成された第1無機バリア層12(延設部12e)の上に、有機バリア層14が形成されないようにすることが好ましい。以下に説明する方法のいずれか複数を組み合わせてもよい。
なお、第2無機バリア層16に生じたクラックが、アクティブ領域R1に達しても、アクティブ領域R1が第1無機バリア層12で十分に覆われていれば、OLED表示装置の耐湿信頼性が低下する可能性は小さい。第2無機バリア層16に生じたクラックがアクティブ領域R1に達することの耐湿信頼性への影響は、第1無機バリア層12に生じたクラックがアクティブ領域R1に達することの耐湿信頼性への影響に比べると小さい。従って、以下に説明する方法で、突状構造体22aの頂面および側面の上に形成された第1無機バリア層12の上に、有機バリア層14が形成されないようにすることはオプショナルであり、省略可能である。また、以下の方法は、突状構造体22aの頂面および側面の上に形成された第1無機バリア層12の上に有機バリア層14が形成されることを完全に防ぐ場合だけでなく、部分的に防ぐ(例えばある厚さ以上の有機バリア層14が形成されることを防ぐ)場合にも用いられる。
例えば、上記特許文献1または2に記載の方法で光硬化樹脂層を形成した後に、光硬化樹脂層をドライプロセスで部分的に除去する工程を行ってもよい。「有機物をドライプロセスで除去する」とは、アッシングに限られず、アッシング以外の方法(例えば、スパッタ法)のドライプロセスで、有機物を除去することをいい、有機物は表面から除去される。有機物を完全に除去する場合だけでなく、部分的に(例えば表面からある深さまで)除去することを含む。なお、ドライプロセスとは、剥離液や溶剤などの液体を用いるウェットプロセスでないことをいう。アッシングは、例えば、N2O、O2およびO3の内の少なくとも1種を含む雰囲気で行われ得る。アッシングは、前述したいずれかの雰囲気ガスを高周波でプラズマ化し、そのプラズマを利用するプラズマアッシング(またはコロナ放電処理)と、雰囲気ガスに紫外線等の光を照射して行われる光励起アッシングに大別され、例えば、公知のプラズマアッシング装置、コロナ放電を利用したアッシング処理装置、光励起アッシング装置、UVオゾンアッシング装置等を用いて行い得る。第1無機バリア層12および第2無機バリア層16としてSiN膜をCVD法で成膜する場合、原料ガスとして、N2Oを用いるので、N2Oをアッシングに用いると装置を簡略化できるという利点が得られる。
あるいは、光硬化性樹脂を硬化させる際に、マスク露光等の選択露光を行ってもよい。フォトマスクの遮光部に対応した領域に有機バリア層14の開口部が形成される。したがって、例えば、基板の法線方向から見たときに突状構造体22aと重なる領域に遮光部を有するフォトマスクを介して光硬化性樹脂を露光することによって、突状構造体22aと重なる領域に開口部を有する有機バリア層14を得ることができる。
光硬化性樹脂を硬化させる際に、波長400nm以下のレーザビームによって、所定の領域の光硬化性樹脂を照射することで選択露光を行うこともできる。例えば半導体レーザ素子から出射されるコヒーレントなレーザビームを用いるので、光線の直進性が高く、素子基板上にマスクを密着させることなく選択的な露光が実現する。
また、特定の領域に選択的に赤外線を照射することによって、その領域に光硬化樹脂層が形成されないようにすることもできる。有機バリア層14を形成する工程は、基板上に光硬化性樹脂の液膜を形成する工程Aと、突状構造体22aと重なる第1領域に選択的に例えば赤外線を照射することによって、第1領域内の光硬化性樹脂を気化させる工程Bと、工程Bの後で、光硬化性樹脂が感光性を有する光(例えば紫外線)を基板上の第1領域を含む第2領域(例えば基板の全面)に照射し、第2領域内の光硬化性樹脂を硬化させることによって、光硬化樹脂層を得る工程Cとを包含してもよい。赤外線に代えて、また、赤外線とともに照射する可視光の波長は550nm超が好ましい。突状構造体22aを、熱容量の大きな材料で形成してもよい。
突状構造体22aの表面(例えば頂部および側面)が、光硬化性樹脂に対して撥液性を有してもよい。例えばフォトリソグラフィプロセスを使って、シランカップリング剤を用いて、突状構造体22aの表面の特定の領域を疎水性に改質してもよい。あるいは、突状構造体22aを、光硬化性樹脂に対して撥液性を有する樹脂材料で形成してもよい。
図6(a)は、図2中の6A−6A’線に沿った断面図であり、パーティクルPを含む部分を示している。パーティクルPは、OLED表示装置の製造プロセス中に発生する微細なゴミで、例えば、ガラスの微細な破片、金属の粒子、有機物の粒子である。マスク蒸着法を用いると、特にパーティクルPが発生しやすい。
図6(a)に示すように、有機バリア層(中実部)14は、パーティクルPの周辺に形成された部分14bを含む。これは、第1無機バリア層12を形成した後に付与されたアクリルモノマーが、パーティクルP上の第1無機バリア層12aの表面(テーパー角が90°超)の周辺に凝縮され、偏在するからである。第1無機バリア層12の平坦部上は、有機バリア層14の開口部(非中実部)となっている。
ここで、図7(a)〜(c)を参照して、パーティクルPを含む部分の構造を説明する。図7(a)は図6(a)のパーティクルPを含む部分の拡大図であり、図7(b)はパーティクルPと、パーティクルPを覆う第1無機バリア層(SiN層)12と、有機バリア層14との大きさの関係を示す模式的な平面図であり、図7(c)はパーティクルPを覆う第1無機バリア層12の模式的な断面図である。
図7(c)に示すように、パーティクル(例えば直径が約1μm以上)Pが存在すると、第1無機バリア層12に欠陥(クラック)12cが形成されることがある。これは、パーティクルPの表面から成長するSiN層12aと、OLED3の表面の平坦部分から成長するSiN層12bとが衝突(インピンジ)するために生じたと考えられる。この欠陥12cは、(膜)密度が低い部分であり、極端な場合にはクラック12cとなることもある。このような欠陥12cが存在すると、TFE構造10Aのバリア性が低下する。
OLED表示装置100AのTFE構造10Aでは、図7(a)に示すように、有機バリア層14が、第1無機バリア層12の欠陥12cを充填するように形成し、かつ、有機バリア層14の表面は、パーティクルP上の第1無機バリア層12aの表面と、OLED3の平坦部上の第1無機バリア層12bとの表面を連続的に滑らかに連結する。有機バリア層14は、上述したように、液状の光硬化性樹脂を硬化することによって形成されるので、表面張力によって凹状の表面を形成する。このとき、光硬化性樹脂は、第1無機バリア層12に対して良好な濡れ性を示している。光硬化性樹脂の第1無機バリア層12に対する濡れ性が悪いと、逆に凸状になることがある。なお、有機バリア層14がパーティクルP上の第1無機バリア層12aの表面にも薄く形成されることがある。
凹状の表面を有する有機バリア層(中実部)14によって、パーティクルP上の第1無機バリア層12aの表面と、平坦部上の第1無機バリア層12bとの表面が連続的に滑らかに連結されるので、この上に、欠陥の無い、緻密な膜で第2無機バリア層16を形成することができる。このように、有機バリア層14によって、パーティクルPが存在しても、TFE構造10Aのバリア性を維持することができる。
有機バリア層(中実部)14は、図7(b)に示す様に、パーティクルPの周りにリング状に形成される。法線方向から見たときの直径(面積円相当径)が例えば1μm程度のパーティクルPに対して、例えば、リング状の中実部の直径(面積円相当径)Doは2μm以上である。
ここでは、有機バリア層14が、パーティクルP上に形成された第1無機バリア層12の不連続部分にのみ形成された例について、パーティクルPがOLED3上に第1無機バリア層12を形成する前に存在していた例を説明したが、パーティクルPは、第1無機バリア層12上に存在することもある。この場合には、有機バリア層14は、第1無機バリア層12上に存在するパーティクルPと第1無機バリア層12との境界の不連続部分にのみ形成され、上記と同様に、TFE構造10Aのバリア性を維持することができる。有機バリア層14はパーティクルP上の第1無機バリア層12aの表面、または、パーティクルPの表面にも薄く形成されることがある。本明細書では、これらすべての態様を含む意図で、有機バリア層14がパーティクルPの周辺に存在するという。
図6(a)に示す例に限られず、有機バリア層(中実部)14は、上記と同様の理由で、第1無機バリア層12の表面の凸部の周辺にのみ形成される。有機バリア層(中実部)14が形成される箇所の他の例を以下に示す。
次に、図6(b)を参照して、引出し配線30上のTFE構造10Aの構造を説明する。図6(b)は、図2中の6B−6B’線に沿った断面図であり、引出し配線30のアクティブ領域R1側の部分32の断面図である。
図6(b)に示すように、有機バリア層(中実部)14は、引出し配線30の部分32の断面形状を反映した第1無機バリア層12の表面の凸部の周辺に形成された部分14cを含む。
引出し配線30は、例えば、ゲートバスラインまたはソースバスラインと同じプロセスでパターニングされるので、ここでは、アクティブ領域R1内に形成されるゲートバスラインおよびソースバスラインも、図6(b)に示した引出し配線30のアクティブ領域R1側の部分32と同じ断面構造を有する。ただし、典型的には、アクティブ領域R1内に形成されるゲートバスラインおよびソースバスラインの上には平坦化層が形成され、ゲートバスラインおよびソースバスライン上の第1無機バリア層12の表面には段差が形成されない。
引出し配線30の部分32は、例えば、側面のテーパー角が90°未満である順テーパー側面部分(傾斜側面部分)を有してもよい。引出し配線30が順テーパー側面部分を有すると、その上に形成される第1無機バリア層12および第2無機バリア層16に欠陥が形成されることを防止することができる。すなわち、TFE構造10Aの耐湿信頼性を向上させることができる。順テーパー側面部分のテーパー角は、70°以下であることが好ましい。
OLED表示装置100のアクティブ領域R1は、有機バリア層14が選択的に形成されている部分を除いて、第1無機バリア層12と第2無機バリア層16とが直接接触する無機バリア層接合部によって実質的に覆われている。したがって、有機バリア層14が水分の侵入経路となって、OLED表示装置のアクティブ領域R1に水分が到達することがない。
本発明の実施形態によるOLED表示装置100は、例えば、高精細の中小型のスマートフォンおよびタブレット端末に好適に用いられる。高精細(例えば500ppi)の中小型(例えば5.7型)のOLED表示装置では、限られた線幅で、十分に低抵抗な配線(ゲートバスラインおよびソースバスラインを含む)を形成するために、アクティブ領域R1内における配線の線幅方向に平行な断面の形状は矩形(側面のテーパー角が約90°)に近いことが好ましい。したがって、低抵抗な配線を形成するためには、順テーパー側面部分TSFのテーパー角を70°超90°未満としてもよいし、順テーパー側面部分TSFを設けず、配線の全長にわたってテーパー角を約90°としてよい。
次に、図6(c)を参照する。図6(c)は、TFE構造10Aが形成されていない領域の断面図である。ここでは、端子38も、図6(c)に示した引出し配線30の部分36と同じ断面構造を有する。図6(c)に示す引出し配線30の部分36は、例えば、テーパー角が約90°であってよい。
図8を参照しながら、本発明の実施形態1による他のOLED表示装置100Bの構造を説明する。図8は、OLED表示装置100Bの模式的な断面図である。
図8に示すように、OLED表示装置100Bの第2無機バリア層16は、基板の法線方向から見たとき、突状構造体22aと重ならないように形成されている点において、OLED表示装置100Aと異なる。第2無機バリア層16の外縁は、突状構造体22aの内側にある。
このような構造を有するOLED表示装置100Bにおいても、OLED表示装置100Aと同様の効果が得られる。
なお、上述したように、アクティブ領域R1が無機バリア層接合部で完全に包囲されている限り、第1無機バリア層12および第2無機バリア層16の形状は任意であってよい。
図8には、逆テーパー側面を有する突状構造体22a1を有するOLED表示装置100Bを示しているが、これに限られず、上述の突状構造体のいずれをも適用することができる。
以下で、突状構造体の変形例を説明する。以下で例示するOLED表示装置100C〜100Eは、突状構造体の平面形状(基板の法線方向から見たときの形状)に特徴を有する。OLED表示装置100C〜100Eは、上述のOLED表示装置のいずれにも適用できる。また、OLED表示装置100C〜100Eが有する突状構造体の断面形状(突状構造体が延びる方向と直交する断面の形状)として、上述の突状構造体のいずれをも適用することができる。
図9および図10を参照しながら、本発明の実施形態1によるさらに他のOLED表示装置100Cの構造を説明する。図9は、OLED表示装置100Cの模式的な平面図であり、図10は、OLED表示装置100Cの模式的な断面図である。なお、簡単のため、図10においては無機バリア層に生じたクラックおよび欠陥の図示を省略している。
図9および図10に示すように、OLED表示装置100Cは、突状構造体22a(「第1突状構造体22a」ということがある。)とアクティブ領域R1との間に、アクティブ領域R1の少なくとも1つの辺に沿って延びる部分を含む突状構造体22b(「第2突状構造体22b」ということがある。)をさらに有する点において、OLED表示装置100Aと異なる。
OLED表示装置100Cは、第1突状構造体22aおよび第2突状構造体22bを有することで、OLED表示装置100Aよりもさらに効果的にクラックがアクティブ領域R1に達することを防ぐことができる。
第1突状構造体22aおよび第2突状構造体22bは、それぞれ、アクティブ領域R1の4つの辺のうち、複数の端子が設けられている辺を除く3つの辺に沿って延びる部分を含む。ここでは、第1突状構造体22aおよび第2突状構造体22bは、互いに略平行に延びる部分を含む。
第1突状構造体22aおよび第2突状構造体22bが設けられている領域の幅Dcは例えば数100μm程度である。従って、第1突状構造体22aおよび第2突状構造体22bを有してもOLED表示装置の狭額縁化に大きく影響を与えない。
第1突状構造体22aおよび第2突状構造体22bの断面形状は、それぞれ、上述した条件を満たすことが好ましい。第1突状構造体22aおよび第2突状構造体22bの断面形状は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。例えば、第1突状構造体22aのテーパー角θp1および第2突状構造体22bのテーパー角θp2は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
図10に示すように、アクティブ領域R1から遠い方の第1突状構造体22aの高さは、アクティブ領域R1から近い方の第2突状構造体22bの高さよりも大きくてもよい。この場合、第1突状構造体22aは、上述したようにスペーサを兼ねることができる。
本実施形態のOLED表示装置は、3個以上の突状構造体を有してももちろんよい。
図11を参照しながら、本発明の実施形態1によるさらに他のOLED表示装置100Dの構造を説明する。図11は、OLED表示装置100Dの模式的な平面図である。
図11に示すように、OLED表示装置100Dが有する突状構造体22Dは、複数のサブ構造体22s1、22s2、22s3、22s4、および22s5を含む。複数のサブ構造体22s1〜22s5をあわせて突状構造体22Dということがある。突状構造体22Dは、アクティブ領域R1のy軸方向に延びる辺のそれぞれに沿って延びるサブ構造体22s1および22s3と、アクティブ領域R1のx軸方向に延びる辺のうちの、複数の端子38および複数の引出し配線30が設けられていない辺に沿って延びるサブ構造体22s2と、アクティブ領域R1のx軸方向に延びる辺のうちの、複数の端子38および複数の引出し配線30が設けられている辺に沿って延びるサブ構造体22s4および22s5とを有する。
図12を参照しながら、本発明の実施形態1によるさらに他のOLED表示装置100Eの構造を説明する。図12は、OLED表示装置100Eの模式的な平面図である。
図12に示すように、OLED表示装置100Eが有する突状構造体22Eは、複数のサブ構造体22pを含む。複数のサブ構造体22pを総称して突状構造体22Eということがある。複数のサブ構造体22pは、複数の端子38が設けられている部分を除いて、分断線CLとアクティブ領域R1の外縁とを結ぶ線を遮るように配置されている。
基板の法線方向から見たときの複数のサブ構造体22pのそれぞれの平面形状は、任意であってよい。2以上のサブ構造体22pを互いに連結してもよい。また、サブ構造体22pの上面の大きさは、実質的に等しくてもよいし、異なってもよい。同じ平面形状で同じ大きさのサブ構造体とすれば、例えば、フォトリソグラフィプロセスを用いて突状構造体22Eを形成する際のフォトマスクを単純にできるというメリットが得られる。
(実施形態2)
本実施形態のOLED表示装置は、薄膜封止構造の構成において、先の実施形態と異なる。本実施形態のOLED表示装置は、薄膜封止構造に特徴を有する。本実施形態の薄膜封止構造は、上述のOLED表示装置のいずれにも適用できる。
図13は、本発明の実施形態2のOLED表示装置が有するTFE構造10Bを模式的に示す断面図である。先の実施形態においては、TFE構造10Aを構成する有機バリア層14が、離散的に分布する複数の中実部を有する。本実施形態のOLED表示装置が有するTFE構造10Bは、図13に示すように、比較的厚い有機バリア層14(例えば、厚さ約5μm超約20μm以下)を有する。有機バリア層14は、例えば厚さが5μm以上の平坦化層を兼ねる。比較的厚い有機バリア層14は、例えば素子基板に形成されたそれぞれのOLED表示装置部のアクティブ領域を覆うように形成されている。
図13において、第1無機バリア層12または第2無機バリア層16を成膜する前から存在するパーティクルをP1で表し、第1無機バリア層12または第2無機バリア層16を成膜している間に発生するパーティクルをP2で表すことにする。
第1無機バリア層12を成膜する前から存在していたパーティクルP1上に第1無機バリア層12を成膜すると、パーティクルP1の表面から成長する部分12aと、OLED3の平坦部分から成長する部分12bとが衝突し、欠陥12cが形成される。同様に、第2無機バリア層16を成膜する過程でパーティクルP2が発生すると、第2無機バリア層16に欠陥(例えばクラック)16cが形成される。なお、パーティクルP2は、第2無機バリア層16の成膜中に発生するので、パーティクルP2上に形成される第2無機バリア層16の部分16aの厚さは、平坦部上に形成される部分16bの厚さよりも小さく図示している。
このような比較的厚い有機バリア層14は、例えばインクジェット法を用いて形成することができる。インクジェット法などの印刷法を用いて有機バリア層を形成する場合、有機バリア層は、素子基板上のアクティブ領域にのみ形成され、突状構造体と重なる領域には形成されないようにすることができる。