本開示は、in vivoでミオスタチン前駆体または前駆体複合体に特異的に結合し、その成熟ミオスタチンへのタンパク質分解プロセシングを遮断し、それによりミオスタチンシグナル伝達を阻害して、in vivoで有益な効果を引き出すことができる抗体に関する。そのような抗体はミオスタチンシグナル伝達の低減が有益であるか、またはその必要があり得る被験体への投与のために有用である。
本発明によると、ミオスタチン阻害剤、例えば、本明細書に記載の抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体を被験体に有効量で投与することにより、in vivoでミオスタチンの活性化が特異的に阻害されることによって被験体において多数の有益な生物学的効果が生じ得る。そのような生物学的効果は、以下の利点:
a)被験体における筋肉の量および/または機能の増大;
b)被験体の代謝率の上昇;
c)被験体のインスリン感受性の増大;
d)被験体における褐色脂肪組織のレベルの上昇;
e)被験体におけるベージュ脂肪組織のレベルの上昇;
f)被験体における白色脂肪組織のレベルの低下;
g)被験体における内臓脂肪組織のレベルの低下;
h)被験体における脂肪組織対筋組織の比率の低下;
i)被験体における白色脂肪組織、生組織または血管組織によるグルコースの取り込みの増加;
j)被験体におけるタンパク質の筋肉での異化および/もしくはアミノ酸の筋肉からの放出の減少;
k)被験体におけるインスリン依存性血糖調節の増大;
l)被験体における筋肉内脂肪浸潤の減少;
m)標準化された生活の質の試験スコアにおける臨床的に意味がある改善;
(o)被験体における筋肉喪失または筋萎縮の防止;ならびに/または
(p)被験体における筋機能障害に関連する代謝制御不全の発症の防止
のうちの2つまたはそれよりも多く、例えば、3つまたはそれよりも多く、4つまたはそれよりも多く、5つまたはそれよりも多く、6つまたはそれよりも多く、2〜4つ、2〜5つ、2〜6つ、3〜5つまたは3〜6つを含む。
したがって、本発明は、被験体、例えば、ミオスタチンシグナル伝達の低減が有益であるヒト被験体における、ミオスタチン阻害剤、例えば、in vivoでプロミオスタチンおよび/または潜在型ミオスタチンに特異的に結合し、成熟ミオスタチンの活性化を遮断する抗体またはその抗原結合性断片の使用を含む。本発明は、ミオスタチン制御不全に関連する状態を、プロミオスタチンおよび/または潜在型ミオスタチンに特異的に結合し、ミオスタチンの活性化を遮断する抗体またはその抗原結合性断片を、そのような状態を処置または防止するのに有効な量で使用して処置または防止する方法を含む。ミオスタチン制御不全に関連する状態としては、筋疾患および障害、ならびにある特定の代謝制御不全が挙げられる。
本発明をより容易に理解することができるように、最初に特定の用語を定義する。さらに、パラメータの値または値の範囲が列挙されている場合はいつでも、列挙されている値の間に入る値および範囲も本発明の一部であることが意図されることに留意するべきである。
以下の記載では、説明目的で、本発明の詳細な理解を提供するために特定の数、材料および立体配置が記載されている。しかし、これらの特定の詳細を用いずに本発明を実施することができることが当業者には明らかになろう。一部の例では、本発明が不明瞭にならないように、周知の特徴が省略または簡易化され得る。さらに、本明細書では、「一実施形態」または「ある実施形態」などの句への言及は、実施形態に関連して記載されている特定の特徴、構造または特性が本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。本明細書の各所の「一実施形態では」などの句は、必ずしも全てが同じ実施形態について言及しているのではない。
定義
冠詞「1つの(a)」および「1つの(an)」は、本明細書では、その冠詞の文法上の目的語の1つ、または1つよりも多く(すなわち、少なくとも1つ)を指すために使用される。例として、「1つの(an)要素」とは、1つの要素、または1つよりも多くの要素を意味する。
操作例中または別段の指示がある場合を除き、本明細書において使用される成分の分量または反応条件を表す数字は、全ての場合に、用語「約」によって修飾されると理解されるべきである。用語「約」は、百分率に関連して使用される場合、平均±1%を意味し得る。さらに、用語「約」は、値の±1%以内を意味し得る。
「投与する(administer)」、「投与すること(administering)」または「投与(administration)」という用語は、抗体またはその抗原結合性断片、例えば、そのような抗体もしくは抗原結合性断片を含む医薬組成物、または薬剤を被験体の系または被験体内もしくは被験体上の特定の領域に送達する(それぞれ全身投与および局所投与)任意の方法を含む。
用語「抗体」は、本明細書において使用される場合、ジスルフィド結合によって相互接続した2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖の4つのポリペプチド鎖で構成される免疫グロブリン分子を指すことが意図される。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではHCVRまたはVHと略される)および重鎖定常領域で構成される。重鎖定常領域は、3つのドメイン、CH1、CH2およびCH3で構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではLCVRまたはVLと略される)および軽鎖定常領域で構成される。軽鎖定常領域は、1つのドメイン、CLで構成される。VH領域およびVL領域は、より保存されたフレームワーク領域(FR)と称される領域が散在する、相補性決定領域(CDR)と称される超可変性の領域にさらに細分することができる。各VHおよびVLは、アミノ末端からカルボキシ末端まで以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、およびFR4で配置された3つのCDRおよび4つのFRで構成される。本発明の抗体はそのそれぞれの内容全体が参照により本明細書に組み込まれる国際特許出願WO2016073853A1および2016年9月15日出願の国際出願第PCT/US2016/052014号にさらに詳細に記載されている。当技術分野で公知の抗体改変体も本発明に包含される。
抗体の「抗原結合性断片」、「抗原結合性断片」または「抗原結合性部分」(または単に「抗体断片」または「抗体部分」)という用語は、本明細書において使用される場合、抗原(例えば、プロ/潜在型ミオスタチン)に特異的に結合する能力を保持する、抗体の1つまたは複数の断片を指す。抗体の抗原結合性機能は、全長抗体の断片によって遂行され得ることが示されている。抗体の「抗原結合性断片」という用語の範囲内に包含される結合性断片の例は、(i)VLドメイン、VHドメイン、CLドメインおよびCH1ドメインからなる一価の断片であるFab断片;(ii)ヒンジ領域においてジスルフィド架橋によって連結した2つのFab断片を含む二価の断片であるF(ab’)2断片;(iii)VHドメインおよびCH1ドメインからなるFd断片;(iv)抗体の単一のアームのVLドメインおよびVHドメインからなるFv断片、(v)VHドメインからなるdAb断片(Wardら、(1989年)、Nature、341巻:544〜546頁);ならびに、(vi)単離された相補性決定領域(CDR)を含む。さらに、Fv断片の2つのドメイン、VLおよびVHは、別々の遺伝子によってコードされるが、組換え方法を使用して、それらをVL領域およびVH領域が対合して一価の分子(一本鎖Fv(scFv)として公知)を形成する単一のタンパク質鎖にすることが可能な合成リンカーによって接合され得る;例えば、Birdら(1988年)、Science、242巻:423〜426頁;および、Hustonら(1988年)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、85巻:5879〜5883頁を参照されたい)。そのような一本鎖抗体も抗体の「抗原結合性部分」という用語の範囲内に包含されることが意図される。ダイアボディなどの一本鎖抗体の他の形態も包含される。ダイアボディは、VHドメインおよびVLドメインが単一のポリペプチド鎖上に発現するが、同じ鎖上の2つのドメイン間の対形成が可能になるには短すぎるリンカーを使用し、それにより、ドメインを別の鎖の相補的なドメインと強制的に対合させ、2つの抗原結合部位を生じさせる二価の二重特異性抗体である(例えば、Holliger, P.ら(1993年)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、90巻:6444〜6448頁;Poljak, R. J.ら(1994年)、Structure、2巻:1121〜1123頁を参照されたい)。
本明細書において使用される場合、用語「含む(comprising)」または「含む(comprises)」は、本発明に必須の組成物、方法、およびそのそれぞれの構成成分(複数可)に関して使用されるが、それでもなお、必須であるか否かにかかわらず、不特定の要素の包含が受け入れられる。
「からなる(consisting of)」という用語は、本明細書に記載の組成物、方法、およびそのそれぞれの構成成分を指し、実施形態についての記載に列挙されていないあらゆる要素に対して排他的である。
用語「対照」または「対照試料」は、本明細書において使用される場合、例えば、健康な被験体からの試料、ある特定の疾患もしくは状態を引き起こすもしくは被験体をある特定の疾患もしくは状態にかかりやすくする欠乏を有する被験体からの試料、目的の疾患または状態を有する被験体、医薬担体で処置された被験体からの試料、処置前の被験体からの試料、偽または緩衝液で処置された被験体または試料、無処置の被験体または試料などを含めた、任意の臨床的にまたは科学的に関連する比較試料または対応物を指す。
「対照レベル」という用語は、生物学的マーカーの許容されるまたは所定のレベル、例えば、疾患の処置もしくは発病の前または薬物、例えば、抗体またはその抗原結合性部分の投与前に得られたマーカーのレベルを指す。1つまたは複数の特定の特性、例えば、特定の疾患または状態の存在または非存在を有する被験体または被験体の集団に存在する生物学的マーカーのレベル。
用語「低下/減少する(decrease)」は、本明細書において使用される場合、疾患の症状に関しては、そのようなレベルの統計学的に有意な低下を指す。低下は、例えば、検出方法での検出のレベルを少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%下回るものであり得る。低下はまた、例えば、検出方法での検出のレベルを約1〜10%、10〜20%、1〜30%、20〜50%、30〜60%、40〜70%、50〜80%、または60〜90%下回るものであり得る。ある特定の実施形態では、低減は、そのような障害を有さない個体に関する正常な範囲内として許容されるレベルまで下がることであり、レベルの正常化とも称され得る。
本明細書において使用される場合、「脱神経」という用語は、神経供給または筋組織などのその標的組織へのニューロン入力の喪失または撹乱を指す。脱神経の原因は、疾患(例えば、運動ニューロンの遺伝障害)、化学毒性、肉体的損傷、または意図的な神経の外科的遮断などを含む。脱神経は、部分的な脱神経(不完全な脱神経とも称される)または完全な脱神経であり得る。部分的な脱神経は、例えば、少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%の神経供給またはその標的組織へのニューロン入力の喪失または撹乱であり得る。いくつかの実施形態では、部分的な脱神経は、約1〜10%、10〜20%、1〜30%、20〜50%、30〜60%、40〜70%、50〜80%、60〜90%の神経供給またはその標的組織へのニューロン入力の喪失または撹乱を含む。
「決定すること(determining)」は、本明細書において使用される場合、誰かまたは何かの状態、例えば、ある特定の状態、バイオマーカー、病態、または生理的状態の存在、非存在、レベル、または程度を確認するためにアッセイを実施することまたは方法を使用することと理解される。
疾患の「発症」または「進行」とは、疾患の最初の顕在化および/または次いで起こる進行を意味する。疾患の発症は、標準の臨床的技術を使用して検出可能であり得、評価され得る。しかし、発症とは、検出不可能であり得る進行も指す。本開示の目的に関して、発症または進行とは、症状の生物学的経過を指す。「発症」は、出現、再発、および発病を含む。本明細書において使用される場合、ミオパチーに関連する疾患/障害の「発病」または「出現」は、最初の発病および/または再発を含む。
本開示の実施または試験では本明細書に記載のものと同様または同等である方法および材料が使用され得るが、好適な方法および材料が下に記載されている。略語「例えば(e.g.)」は、ラテン語のexempli gratiaに由来し、本明細書では、非限定的な例を示すために使用される。したがって、略語「例えば(e.g.)」は、用語「例えば(for example)」と同義である。
用語「エピトープ」は、免疫グロブリンまたはT細胞受容体に特異的に結合することができる任意のポリペプチド決定基を含む。ある特定の実施形態ではエピトープ決定基は、アミノ酸、糖側鎖、ホスホリル、またはスルホニルなどの分子の化学的に活性な表面群を含み、ある特定の実施形態では特定の三次元構造特性および/または特定の電荷特性を有してよい。エピトープは抗体が結合する抗原の領域である。ある特定の実施形態では抗体が、タンパク質および/または高分子の複合混合物中でその標的抗原を優先的に認識する場合に、抗体は抗原に特異的に結合すると称される。エピトープは、直鎖状エピトープまたはコンフォメーショナルエピトープであり得る。
本明細書において使用される場合、用語「有効量」および「有効用量」は、その意図された目的(複数可)、すなわち、組織または被験体において、許容されるベネフィット/リスク比で所望の生物学的または医学的応答を満たすために十分な、化合物または組成物の任意の量または用量を指す。例えば、本発明のある特定の実施形態では、意図された目的は、in vivoでミオスタチンの活性化を阻害してミオスタチン阻害に関連する臨床的に意味がある転帰を達成することであり得る。
関連する意図された目的の尺度は、客観的(すなわち、いくつかのアッセイもしくはマーカーによって測定可能である)または主観的(すなわち、被験体が効果の徴候を示すもしくは効果を感じる)であり得る。いくつかの実施形態では、治療有効量は、疾患、障害または状態に関するある特定の臨床的基準(例えば、顕在化した症状、疾患の進行/ステージ、遺伝学的プロファイルなどによって決定される)を満たす患者集団に投与された場合に、集団の中で統計学的に有意な治療応答が得られる量である。
いくつかの実施形態では、有効量は、特定のレジメンに従って投与された場合に、正の臨床転帰を生じ、有害作用(例えば、毒性)が合理的に許容されるレベルになり、したがって、有害作用が存在する場合、患者が治療レジメンを継続するのに十分に許容でき、治療の利点が毒性のリスクを超えるような量である。本発明のいくつかの実施形態では、単位投薬量は、正の転帰と相関する投薬量レジメンに関して投与に適した量を含有すれば、有効量を含有するとみなされ得ることが当業者には理解されよう。
治療有効量は、一般に、多数の単位用量を含み得る投薬レジメンで投与される。任意の特定の医薬品に関しては、治療有効量(および/または有効な投薬レジメン内の適切な単位用量)は、例えば、投与経路に応じて、他の医薬品との組み合わせに応じて、変動し得る。いくつかの実施形態では、任意の特定の患者に対する特定の治療有効量(および/または単位用量)は、処置される障害および障害の重症度;使用される特定の医薬品の活性;使用される特定の組成物;患者の年齢、体重、全体的な健康、性別および食事;投与時間、投与経路、および/または使用される特定の医薬品が排出もしくは代謝される速度;処置の持続時間;ならびに、医学の分野で周知の同様の因子を含めた種々の因子に依存し得る。
用語「ヒト抗体」は、本明細書において使用される場合、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列およびその断片に由来する可変領域および定常領域を有する抗体を含むことを意図している。本開示のヒト抗体は、例えばCDR、特にCDR3におけるヒト生殖系列免疫グロブリン配列によってコードされていないアミノ酸残基を含んでもよい(例えばin vitroにおけるランダムもしくは部位特異的変異誘発によって、またはin vivoにおける体細胞変異によって導入される変異)。しかし、用語「ヒト抗体」は、本明細書において使用される場合、マウスなどの別の哺乳類種の生殖系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列にグラフトされた抗体を含むことを意図していない。
例えば、疾患の症状、例えば、疾患に関連する機能喪失または量、例えば筋肉量の喪失などに関連した用語「上昇/増大する(increase)」は、そのようなレベルの統計学的に有意な上昇を指す。上昇は、例えば、検出方法での検出のレベルを少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%上回るものであり得る。上昇はまた、例えば、検出方法での検出のレベルを約1〜10%、10〜20%、1〜30%、20〜50%、30〜60%、40〜70%、50〜80%、または60〜90%上回るものであり得る。ある特定の実施形態では、上昇は、そのような障害を有さない個体に関する正常な範囲内として許容されるレベルまで上がることであり、レベルの正常化とも称され得る。ある特定の実施形態では、上昇は、疾患の徴候または症状のレベルの正常化、疾患の徴候の被験体のレベルと疾患に関する徴候の正常なレベルとの間の差異の増大である。ある特定の実施形態では、方法は、被験体をプロ/潜在型ミオスタチンに特異的に結合する抗体で処置した後の筋組織の量および/または機能の増大を含む。ある特定の実施形態では、方法は、プロミオスタチンの対照レベルと比較して標的筋肉中のプロミオスタチンのレベルの上昇を含む。
用語「単離された抗体」は、本明細書において使用される場合、異なった抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体を指すことを意図している(例えば、プロ/潜在型ミオスタチンに特異的に結合する単離された抗体は、プロ/潜在型ミオスタチン以外の抗原に特異的に結合する抗体を実質的に含まない)。しかし、プロ/潜在型ミオスタチンに特異的に結合する単離された抗体は、他の種からのプロ/潜在型ミオスタチン分子などの他の抗原に対する交差反応性を有してもよい。さらに、単離された抗体は他の細胞性材料および/または化学物質を実質的に含まなくてよい。
特に明記されていなければ、「成熟ミオスタチン」という用語は、特に明記されていなければ、完全にプロセシングされた生物学的に活性な形態のミオスタチンを指す。生物学的に活性な形態のミオスタチンは、ミオスタチン受容体への結合および/またはその活性化を行うことができる。成熟ミオスタチンの野生型配列は配列番号52として提供される。一部の場合では、成熟ミオスタチンは、構造/機能または安定性の変更を示し得る1つまたは複数の変異を含有し得る。
本明細書において使用される場合、「ミオスタチン阻害剤」という用語は、ミオスタチン、例えばプロ/潜在型ミオスタチンの活性または発現レベルを阻害するまたはそれと拮抗する任意の化合物を指す。いくつかの実施形態では、ミオスタチン阻害剤は、抗体(例えば、米国特許第6,291,158号;同第6,582,915号;同第6,593,081号;同第6,172,197号;および、同第6,696,245号に記載されているドメイン抗体(dAb)などのその断片を含む)、小分子阻害剤、アドネクチン(adnectin)、アフィボディ(affibody)、DARPin、アンチカリン(anticalin)、アビマー(avimer)、バーサボディ(versabody)または遺伝子治療であり得る。抗体またはその抗原結合性断片は、成熟ミオスタチン、ミオスタチン受容体、および/またはGDF11に結合し得る。いくつかの実施形態では、ミオスタチン阻害剤は、小分子阻害剤である。他の実施形態では、ミオスタチン阻害剤は、遺伝子治療を指す。一実施形態では、ミオスタチン阻害剤は、ミオスタチンに特異的に結合し、GDF11には結合しない。一実施形態では、ミオスタチン阻害剤は、代謝疾患、筋肉の状態もしくは障害、神経シグナル伝達の欠陥もしくは部分的な脱神経に関連する疾患もしくは障害または本明細書に記載の他の状態を処置するために使用され得る。別の実施形態では、ミオスタチン阻害剤は、本明細書に記載の速筋線維が関与する疾患を処置するために使用され得る。別の実施形態では、ミオスタチン阻害剤は、本明細書に記載のとおり病変の下に治療効果をもたらすために使用され得る。
本明細書において使用される場合、句「循環中の潜在型ミオスタチン」または「循環潜在型ミオスタチン」は、血液中、血漿中、または血清中の潜在型ミオスタチンを指す。
本明細書において使用される場合、「プロ/潜在型ミオスタチン」という用語は、プロミオスタチン、潜在型ミオスタチン、または両方(すなわち、ミオスタチンのプロ形態または前駆体)を指す。
「特異的な」および「特異性」とは、特異的な結合対のメンバー(例えば、リガンドと結合部位、抗体と抗原、ビオチンとアビジン)の間の相互作用に関しては相互作用の選択的な反応性を指す。句「に特異的に結合する」および類似の句は、抗体(または抗原に反応するその断片)の、抗原(またはその断片)に特異的に結合し、他の実体には特異的に結合しない能力を指す。特異的な結合は、ある特定の抗原、エピトープ、受容体リガンド、または結合パートナーとの結合の優先、例えば、対照の非特異的な抗原、エピトープ、受容体リガンド、または結合パートナーに対する少なくとも2倍、5倍、10倍、50倍、100倍、200倍、500倍、または1,000倍の優先と理解される。「特異的な結合」は、本明細書において使用される場合、Kon、Koff、およびKDなどの結合動態に基づいた結合対も指し得る。例えば、リガンドは、Koffが10−2sec−1またはそれ未満、10−3sec−1またはそれ未満、10−4sec−1またはそれ未満、10−5sec−1またはそれ未満、または10−6sec−1またはそれ未満である;および/またはKDが10−6Mまたはそれ未満、10−7Mまたはそれ未満、10−8Mまたはそれ未満、10−9Mまたはそれ未満、10−10Mまたはそれ未満、または10−11Mまたはそれ未満、または10−12Mまたはそれ未満であれば、その標的部位に特異的に結合すると理解され得る。種々のタンパク質が共通のエピトープまたは他の結合部位(例えば、キナーゼ反応性部位)を共有し得ることが理解される。ある特定の実施形態では、結合部位には、1つを超えるリガンドが結合し得るが、それでも、非特異的抗原と比較した結合優先性に基づいて、および/または、ある特定の結合動態パラメータを有することによって、特異性を有するとみなされ得る。適切な非特異的対照を選択する方法は、当業者の能力の範囲内である。結合アッセイは、一般には、生理的条件下で実施される。
本明細書において使用される場合、用語「遅筋」、「遅筋」、「1型筋」または「I型筋」は、I型筋線維に富む筋肉を指し、頻繁に使用され、より体位性であり、長距離走などの長い持久力を可能にするのに役立つ。本明細書において使用される場合、用語「速筋」、「速筋」、「2型筋」または「II型筋」は、より高いエネルギーの出力および強度をもたらし、短距離走のような強力な突発的な動作(movement)に使用されるが、そのような筋肉は、すぐに疲労し、反復して使用することができない。速筋は、2つの線維型のカテゴリー:中速筋線維(IIA型)および速筋線維(IIB型またはIIx型)に分類される。中速筋線維は、より厚く、より速く収縮し、また、遅筋線維よりも急速に消耗する。最も強力であり持久力が最も低い速筋線維は、身体が最大の労作に近づくと活性化される。大多数の筋肉は種々の線維型の混合物で構成される傾向にあるが、異なる筋肉は異なる比の線維型を含有する。発生の間にまたはある特定の事象(例えば、運動、疾患、損傷など)に応答して、筋肉または筋肉群内の線維型は線維型の切り替えを受け、その結果、筋肉生理の表現型が変更され得る。
本明細書において使用される場合、用語「被験体」および「患者」は、互換的に使用され得る。一実施形態では、被験体は、脊椎動物、特に、処置を必要とする哺乳動物、例えば、伴侶動物(例えば、イヌ、ネコなど)、家畜(例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、家禽など)および実験動物(例えば、ラット、マウス、モルモットなど)を指す。いくつかの実施形態では、被験体は、処置が有益であるか、または処置を必要とするヒトである。一実施形態では、被験体は、ヒト被験体である。
本明細書において使用される場合、句「持続的増加」は、筋肉量の増加に関しては、ミオスタチン阻害剤、例えば、本明細書に記載の抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体を治療有効量で投与した後の指定の時間にわたる筋肉量の増加を指す。持続的増加は、連続的または非連続的であってよいが、全体として、指定の時間にわたって筋肉量の増加がもたらされる。
疾患または障害を「処置すること(treating)」または「防止すること(preventing)」とは、そのような疾患または障害の発病を遅らせるまたは防止すること、そのような疾患または障害に関連する状態の進行、増悪または悪化、進行または重症度を逆転させること、緩和すること、回復させること、阻害すること、減速させることまたは停止させることを意味するが、必ずしも疾患または障害の完全な処置または防止が必要であるとは限らない。一実施形態では、疾患または障害の症状が少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%緩和される。
ミオスタチン
ミオスタチンは、GDF8としても公知であり、TGFβスーパーファミリーのメンバーであり、2つのメンバー:ミオスタチンおよびGDF11を含むサブファミリーに属する。TGFβスーパーファミリーの他のメンバーと同様に、ミオスタチンおよびGDF11はどちらも最初は不活性前駆体ポリペプチド(それぞれプロミオスタチンおよびプロGDF11と称される)として発現する。ドメイン構造および命名法は図1Aに示されている。図1Bは、成熟増殖因子が「潜在型ラッソ(latency lasso)」と称されるループによって繋がれた2個のアルファへリックスから構成されるケージに閉じ込められているプロミオスタチンの全体構造の模式図モデルを例示する。
ミオスタチンは、自己阻害性N末端プロドメインから2つの別々のプロテアーゼ切断ステップによって放出される、よく特徴付けられた骨格筋量の負の制御因子である。筋線維微小環境におけるこれらの切断事象は、例えば細胞上活性化と称され得る。活性化に続いて、成熟ミオスタチンは、その下流のシグナル伝達により筋萎縮が誘導されるI型およびII型細胞表面受容体(Alk4/5およびActRIIB)の複合体への結合によってシグナル伝達する。筋消耗の処置のための標的としてミオスタチンに関心が持たれている。ActRIIBシグナル伝達経路を標的化するいくつもの治療薬が、筋肉減少症、筋ジストロフィー、悪液質、および人工股関節置換術/股関節骨折を含めた筋消耗状態に関する臨床試験の初期〜中期まで完了している。現在まで、一次臨床戦略は、成熟ミオスタチンと細胞表面受容体の間の相互作用を遮断することに焦点を合わせている。しかし、いくつかの治療プログラムが特異性の欠如(許容されない毒性を導く)および/または効能の欠如に起因して中止されている。in vivoでは、ミオスタチンは主にその阻害性プロドメインと複合体を形成している。
本明細書で提供される開示の態様は、これらの阻害性プロドメイン複合体からのミオスタチンの細胞上活性化の遮断によりミオスタチン経路シグナル伝達を特異的に遮断するための手段がもたらされる程度の評価に関する。本開示の別の態様は、in vitroでタンパク質分解を介した活性化を阻害するサブセットを含めたミオスタチン前駆体の形態に選択的に結合するヒトモノクローナル抗体のパネルの評価に関する。いくつかの実施形態では、活性化を遮断する抗体が、マウスをデキサメタゾン誘導筋萎縮から保護することができることが見出されている。健康な動物由来およびデキサメタゾン誘導萎縮を受けている動物由来の血清試料および筋肉試料の評価により、萎縮中の前駆体の形態の体内分布の変更が実証され、これは、筋消耗病態の理解において重要な意味を有する独特の知見である。さらに、健康なマウスを強力な活性化遮断抗体のネズミバージョンで処置することにより、確固とした筋肉の成長が促進され、筋肉機能の有意な増大がもたらされた。本明細書で提供される結果は、骨格筋タンパク質恒常性におけるミオスタチンのプロセシングの重要性に関する洞察を提供する。さらに、前駆体の形態からの増殖因子の細胞上活性化を遮断することは、ミオスタチンシグナル伝達を防止するための強力な方法であり、これは、TGFβスーパーファミリーの他のメンバーにも適用することができる新規の治療戦略をもたらす技術である。
成熟ミオスタチンの活性化および放出は、いくつかの別個のプロテアーゼ切断事象によって達成される。プロミオスタチンおよびプロGDF11の第1の切断ステップは、プロドメインと成熟増殖因子の間の保存されたRXXR部位で切断する、プロタンパク質転換酵素によって行われる。この切断によって「潜在型ミオスタチン」が産生され、ここでは成熟ミオスタチンはプロドメインによりその受容体に対する結合から遮蔽されている。成熟した活性なミオスタチン増殖因子の活性化および放出は、潜在型ミオスタチンがmTLL−2などのBMP/トロイドファミリーのさらなるプロテアーゼによって切断された後に達成される。本明細書において使用される場合、用語「成熟ミオスタチン」は、全長成熟ミオスタチンならびに生物学的活性を保持する全長成熟ミオスタチンの断片の両方を指し得る。
用語「プロミオスタチン」は、「プロGDF8」としても公知であり、ジスルフィド連結ホモダイマーを含む成熟ミオスタチンの不活性前駆体を指し、ホモダイマーのそれぞれの分子はカルボキシル末端成熟ミオスタチンドメインに共有結合したアミノ末端プロドメインを含む。一実施形態では、「プロミオスタチン」は、プロタンパク質転換酵素またはBMP/トロイドファミリーのプロテアーゼのいずれによっても切断されていない。例示的なプロミオスタチン配列、その改変体、およびプロミオスタチンを産生する方法は当技術分野で周知であり、本明細書により詳細に記載されている。
本明細書において使用される場合、用語「潜在型ミオスタチン」は、ジスルフィド連結ホモダイマーを含む成熟ミオスタチンの不活性前駆体を指し、ホモダイマーのそれぞれの分子はカルボキシル末端成熟ミオスタチンドメインに非共有結合したアミノ末端プロドメインを含む。一実施形態では、「潜在型ミオスタチン」は、プロタンパク質転換酵素によって切断されたが、BMP/トロイドファミリーのプロテアーゼによっては切断されていないプロミオスタチンから産生される。別の実施形態では、「潜在型ミオスタチン」は、プロドメインとカルボキシ末端成熟ミオスタチンドメインをin vitroで組み合わせ、これらが適当に折り畳まれるようにすることによって産生することができる。例えば、Sengleら、J. Biol. Chem.、286巻(7号):5087〜5099頁、2011年を参照されたい。例示的な潜在型ミオスタチン配列、その改変体、および潜在型ミオスタチンを産生する方法は当技術分野で周知であり、本明細書により詳細に記載されている。
ヒト、ラット、マウスおよびカニクイザルにおける例示的プロGDF8配列は下に提供される。これらのプロGDF8配列において、プロタンパク質転換酵素切断部位は、太字で示され、トロイドプロテアーゼ部位は下線で示される。いくつかの実施形態ではプロタンパク質転換酵素切断部位は、配列番号52〜55のアミノ酸残基240から243を含む。いくつかの実施形態ではトロイドプロテアーゼ部位は、配列番号52〜55のアミノ酸残基74〜75を含む。本明細書で提供される例示的プロGDF8配列が限定的であることを意図せず、他の種由来の追加的プロGDF8配列が、その任意のアイソフォームを含め、本開示の範囲内であることは理解されるべきである。
プロGDF8(ヒト):
プロGDF8(ラット):
プロGDF8(マウス):
プロGDF8(カニクイザル):
ミオスタチンおよびGDF11は、90パーセントの同一性を有してそれらの成熟増殖因子ドメイン間で比較的高い程度の保存を共有するが、それらのプロドメイン領域では2個の間で50パーセント未満のアミノ酸同一性であり、十分に保存されていない。ミオスタチンおよびGDF11は、II型受容体(ACTRIIA/B)と会合しているI型受容体(ALK4/5)からなる同じ受容体に結合し、それを通じてシグナル伝達する。I型およびII型受容体とのミオスタチンの会合(engagement)は、SMADリン酸化および筋萎縮症遺伝子の転写活性化をもたらすシグナル伝達カスケードを開始させる。成熟増殖因子における比較的高い程度の保存は、成熟ミオスタチンとGDF11とを区別できるモノクローナル抗体などの試薬を同定することを困難なものにしている。
いくつかの実施形態では増殖因子ドメインおよびGDF11のN末端プロペプチド部分およびGDF8のプロペプチドのC末端部分を含有するキメラ構築物に特異的に結合するプロ/潜在型ミオスタチン抗体が本明細書で提供される。以下に記載するこのキメラ構築物はGDF11Arm8と称される。
GDF11Arm8(配列番号65)
筋肉恒常性および代謝制御におけるミオスタチンの役割
骨格筋は、体重のおよそ40%を占め、1日あたり1〜2%の率でターンオーバーする動的臓器である。ミオスタチンは、健康な状態および疾患状態のどちらにおいても筋肉の恒常性の維持において中心的な役割を果たすと考えられている。ミオスタチンは、筋芽細胞増殖を阻害することにより筋萎縮を誘導すること、ユビキチン−プロテアソーム活性を増大させること、およびIGF−Akt経路の活性を下方制御することができる。これらのよく認識された効果は、損傷、悪液質などの疾患、廃用性および宇宙飛行を含めた、萎縮が引き起こされる多数の状況において見られ、これにより、ミオスタチンシグナル伝達機構の重要性が実証される。この中心的な役割に基づいて、ミオスタチンの作用をin vivoで阻害するために著しい研究が推し進められてきた。実際に、ミオスタチンシグナル伝達への拮抗が筋肉の成長/増大に有利であることが示されている。
さらに、筋肉は、身体の主要なタンパク質リザーバーであり、したがって、アミノ酸恒常性に寄与することが公知である。グルコース(主に肝臓および筋肉においてグリコーゲンとして作られ、貯蔵される)ならびに脂質(脂肪組織に貯蔵される)と共に、筋肉中のタンパク質は、エネルギー源(すなわち、エネルギーを産生するために分解される)としての機能を果たし得る。体内のこれらのエネルギーシンクの利用または動員の欠陥または不均衡は、少なくとも一部において、種々の型の代謝制御不全の根底にあり得る。したがって、ミオスタチンは、体内のグルコース、脂肪および/または筋肉の分解と合成/貯蔵の間の平衡を協調させることによって代謝の制御において直接的な役割を果たし得ることが意図される。実際に、ミオスタチンは、1997年に発見されてから主に筋肉の成長/喪失の重要な制御因子と考えられているが、本明細書においてより詳細に示される知見から、ミオスタチンの代謝制御因子としてのより広範な役割が示唆される。
ミオスタチン経路阻害
いくつかのミオスタチン経路阻害剤、例えば小分子、抗体またはその抗原結合性部分、および遺伝子治療などが、筋肉に関連する状態の処置に向けた臨床開発の種々の段階にある。そのような経路アンタゴニストは、成熟増殖因子またはそのII型受容体のいずれかを標的化する。特に、これらのアンタゴニストの大部分は、ミオスタチン特異的ではなく、したがって、複数のTGFβファミリーメンバーのシグナル伝達と拮抗する。例えば、いくつもの現在の臨床的候補は、それぞれ生殖生物学、創傷治癒、赤血球生成および血管形成の制御因子であるアクチビンA、GDF11、ならびにBMP9およびBMP10などのさらなる増殖因子を遮断する。本開示の態様は、他の箇所に記載されているこれらのミオスタチンアンタゴニストにおいて観察される特異性の欠如から、これらのミオスタチンアンタゴニストは、ミオスタチンに加えて、上に列挙されているものなどのさらなる生物学的経路を遮断するので、ある特定の患者集団に対してより大きなリスクをもたらし得るという認識に関する。したがって、これにより、オフターゲットの抗体結合によって引き起こされる異常な出血、創傷治癒、または生殖の問題などの許容されない有害作用に起因して、安全に治療を受けることができる患者の集団が潜在的に限定される(Campbellら、Muscle Nerve、(2016年);David, L.、Blood、109巻、1953〜1961頁(2007年))。例えば、アクチビンAは、創傷治癒および生殖生物学の両方に関与し、したがって、アクチビンAへの結合により、最近外科手術もしくは損傷を受けた患者、または生殖年齢の女性における使用が限定される。そのような有害作用または毒性のリスクの増大は、特に、i)長期間にわたる処置が必要な患者集団(例えば、慢性の状態など);ならびに/または、ii)患者集団が、そのような有害作用および/もしくは毒性を受けやすい可能性がある小児患者であるもしくは小児患者を含む場合に懸念される。したがって、本発明は、潜在的により安全性の高いプロファイルでミオスタチンシグナル伝達をin vivoにおいて阻害するための新規の手法を含む。
したがって、ミオスタチン阻害剤、例えば、プロミオスタチンおよび/または潜在型ミオスタチンに結合し、それによりミオスタチン活性化を阻害することができる抗体またはその抗原結合性断片など、ならびに、ミオパチーに関連する疾患および障害を処置するためのその使用が本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、循環中の潜在的複合体が優勢であることを考慮して、成熟増殖因子よりむしろ、より豊富でより長く存在するミオスタチン前駆体、例えば、プロミオスタチンおよび潜在型ミオスタチンを特異的に標的化する処置が本明細書で提供される。いかなる特定の理論にも束縛されることを望まないが、本明細書で提供されるミオスタチン阻害剤、例えば抗体またはその抗原結合性断片などは、例えばI型(ALK4/5)およびII型(ACTRIIA/B)受容体に結合することによって、ミオスタチン経路を活性化できるミオスタチンの「活性」形態と考えられる成熟ミオスタチンへのタンパク質分解を介したプロミオスタチンおよび/または潜在型ミオスタチンの活性化を防止し得る。
本明細書において使用される場合、用語「プロ/潜在型ミオスタチン」は、プロミオスタチン、潜在型ミオスタチン、またはその両方を指す。いくつかの実施形態では、抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体またはその抗原結合性断片はプロミオスタチンに特異的に結合する。いくつかの実施形態では、抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体またはその抗原結合性断片は潜在型ミオスタチンに特異的に結合する。いくつかの実施形態では、抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体またはその抗原結合性断片は潜在型ミオスタチンとプロミオスタチンの両方に特異的に結合する。好ましい実施形態では、プロミオスタチンおよび/または潜在型ミオスタチンに特異的に結合する抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体またはその抗原結合性断片は成熟ミオスタチンには結合しない。好ましい実施形態では、プロミオスタチンおよび/または潜在型ミオスタチンに特異的に結合する抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体またはその抗原結合性断片はプロ/潜在型GDF11または成熟GDF11には結合しない。
抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体またはその抗原結合性断片、およびその産生
本開示は、少なくとも一部において、すでに活性なミオスタチンを標的化するよりも、ミオスタチンの活性化ステップを遮断することにより、in vivoでミオスタチンシグナル伝達を選択的に阻害する有利な方式がもたらされ得るという驚くべき発見に基づく。したがって、本発明には、in vivoにおけるミオスタチンシグナル伝達の選択的な低減が有益である任意の状態に関して治療薬としての有用性がある。より詳細には、本発明は、ミオスタチン活性化を特異的に阻害することにより、筋肉量の増加だけでなく、筋肉機能の増強、および代謝制御不全の防止も達成し得るという驚くべき知見を含む。予想外に、有利な治療効果はまた、ニューロンと標的筋肉などの標的組織との間のシグナル伝達の完全な喪失ではないが欠陥を有する被験体における病変の下でさえ達成され得る。
抗体(複数形と互換的に使用される)は、免疫グロブリン分子の可変領域に位置する少なくとも1つの抗原認識部位を通じて、炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質、ポリペプチドなどの標的に特異的に結合できる免疫グロブリン分子である。抗体は、IgD、IgE、IgG、IgAまたはIgMなどの任意のクラス(またはそのサブクラス)の抗体を含み、抗体はいずれかの特定のクラスである必要はない。その重鎖の定常ドメインの抗体アミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンは様々なクラスに割り当てられ得る。免疫グロブリンの5個の主なクラスがあり:IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgM、これらのいくつかはサブクラス(アイソタイプ)、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2にさらに分割され得る。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれアルファ、デルタ、イプシロン、ガンマおよびミューと呼ばれる。免疫グロブリンの様々なクラスのサブユニット構造および三次元構成は周知である。
本明細書に記載の抗体またはその抗原結合性断片は、プロ/潜在型ミオスタチンに結合でき、それによりタンパク質分解を介したプロ/潜在型ミオスタチンの成熟ミオスタチンへの活性化を阻害する。いくつかの場合では本明細書に記載の抗体またはその抗原結合性断片は、タンパク質分解を介したプロ/潜在型ミオスタチンの活性化を少なくとも20%、例えば30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%またはそれより高く阻害できる。いくつかの場合では本明細書に記載の抗体は、プロタンパク質転換酵素(例えばフューリン)によるタンパク質分解を介したプロミオスタチンの切断を少なくとも20%、例えば30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%またはそれより高く阻害できる。いくつかの場合では本明細書に記載の抗体またはその抗原結合性断片は、トロイドプロテアーゼ(例えばmTLL2)によるタンパク質分解を介したプロミオスタチンまたは潜在型ミオスタチンの切断を少なくとも20%、例えば30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%またはそれより高く阻害できる。
いくつかの実施形態では、トロイドプロテアーゼによるプロミオスタチンまたは潜在型ミオスタチンのタンパク質分解による切断の阻害の結果、筋肉量の漸進的増加がもたらされる。いくつかの実施形態では、被験体は、筋肉量の漸進的増加を少なくとも2週間、4週間、6週間、8週間、10週間、12週間、14週間、16週間、18週間、または20週間(またはこれらの値のいずれかに一括される任意の範囲)にわたって示す。抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体の阻害活性は、日常的方法によって、例えば、その内容全体が明白に参照により本明細書に組み込まれるWO2016/073853に開示されている実施例1および図3に記載されているウェスタンブロット分析によって測定され得る。しかし、プロ/潜在型ミオスタチンのタンパク質分解による切断に対する抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体の阻害活性を測定するためのさらなる方法が使用され得ることが理解されるべきである。いくつかの実施形態では、プロ/潜在型ミオスタチン切断(例えば、プロタンパク質転換酵素および/またはトロイドプロテアーゼによる)の阻害は、阻害剤効力の尺度を提供し、プロテアーゼ(例えば、プロタンパク質転換酵素またはトロイドプロテアーゼの)活性を半分に低減するために必要な阻害剤(例えば、抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体)の濃度であり、酵素にも基質濃度にも依存しない阻害定数(Ki)として反映され得る。
いくつかの実施形態ではプロタンパク質転換酵素は(i)プロタンパク質転換酵素切断部位を含有するタンパク質のペプチド結合を加水分解する触媒ドメイン、および(ii)プロタンパク質転換酵素切断部位を有するrTGFに結合する結合ポケットを含む。本開示による使用のためのプロタンパク質転換酵素の例は、非限定的にPCSK5/6、PACE4、PACE7およびPACE3(例えばフューリン)を含む。プロタンパク質転換酵素は、いくつかの実施形態では、非限定的にヒト、サルまたはげっ歯類(例えばマウス、ラット、ハムスター)を含む任意の哺乳動物から得られ、例えば、精製される。別の実施形態では、プロタンパク質転換酵素は組換え的に生産される。
いくつかの実施形態ではプロタンパク質転換酵素は、PCSK5/6、PACE4、PACE7およびPACE3(例えばフューリン)からなる群より選択されるプロタンパク質転換酵素に相同性である。例えばプロタンパク質転換酵素は、PCSK5/6、PACE4、PACE7またはPACE3(例えばフューリン)と少なくとも70%同一、少なくとも80%同一、少なくとも90%同一、少なくとも95%同一、少なくとも96%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一、少なくとも99%同一、少なくとも99.5%同一または少なくとも約99.9%同一であってよい。
プロタンパク質転換酵素切断部位は、いくつかの実施形態では、プロタンパク質転換酵素(例えばPCSK5/6、PACE4、PACE7およびPACE3)によって切断され得るアミノ配列である。いくつかの実施形態ではプロタンパク質転換酵素切断部位は、アミノ酸配列R−X−X−Rを含み、式中Rはアルギニンであり、Xは任意のアミノ酸である。いくつかの実施形態ではプロタンパク質転換酵素切断部位は、アミノ酸配列R−X−(K/R)−Rを含み、式中Rはアルギニンであり、Kはリシンであり、Xは任意のアミノ酸である。いくつかの実施形態ではプロタンパク質転換酵素切断部位は、R−V−R−R(配列番号57)であるアミノ酸配列を含み、式中Rはアルギニンであり、Vはバリンである。ヒト、ラット、マウスおよびカニクイザルミオスタチンについての例示的プロタンパク質転換酵素切断部位は、配列番号52〜55において太字で示される。いくつかの実施形態ではプロタンパク質転換酵素切断部位は、アミノ酸配列RSRR(配列番号56)を含む。
いくつかの実施形態では本開示による使用のためのトロイドプロテアーゼは、非限定的に、BMP−1、mTLL−1およびmTLL−2を含む。トロイドプロテアーゼは、非限定的にヒト、サルまたはげっ歯類(例えばマウス、ラット、ハムスター)を含む任意の哺乳動物から得ることができる。いくつかの実施形態ではトロイドプロテアーゼは、BMP−1、mTLL−1およびmTLL−2からなる群より選択されるトロイドプロテアーゼに相同性である。例えばトロイドプロテアーゼは、BMP−1、mTLL−1およびmTLL−2と少なくとも70%同一、少なくとも80%同一、少なくとも90%同一、少なくとも95%同一、少なくとも96%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一、少なくとも99%同一、少なくとも99.5%同一または少なくとも約99.9%同一であってよい。
トロイドプロテアーゼ切断部位は、いくつかの実施形態では、トロイド(例えばBMP−1、mTLL−1およびmTLL−2)によって切断され得るアミノ配列である。ヒト、ラット、マウスおよびカニクイザルミオスタチンについての例示的トロイドプロテアーゼ切断部位は、配列番号52〜55において下線で示される。いくつかの実施形態ではトロイド切断部位は、アミノ酸配列QRを含み、式中Qはグルタミンであり、Rはアルギニンである。
いくつかの実施形態では本明細書に記載の抗体またはその抗原結合性断片は、プロ/潜在型ミオスタチンに結合でき、それによりミオスタチン活性を阻害する。いくつかの場合では本明細書に記載の抗体またはその抗原結合性断片は、ミオスタチンシグナル伝達を少なくとも20%、例えば30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%またはそれより高く阻害できる。いくつかの実施形態ではミオスタチンシグナル伝達の阻害は、日常的方法によって、例えば、WO2016/073853(その内容全体が本明細書において明示的に参考として援用される)に開示される実施例1に記載のミオスタチン活性化アッセイを使用して測定され得る。しかし、追加的方法がミオスタチンシグナル伝達活性を測定するために使用され得ることは理解されるべきである。
例えばプロタンパク質転換酵素および/またはトロイドプロテアーゼによる、タンパク質分解を介したミオスタチンの切断の程度は、任意の好適な方法を使用して測定および/または定量され得ることは理解されるべきである。いくつかの実施形態ではタンパク質分解を介したミオスタチンの切断の程度は、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を使用して測定および/または定量される。例えばELISAは、放出された増殖因子(例えば成熟ミオスタチン)のレベルを測定するために使用され得る。別の例としてプロミオスタチン、潜在型ミオスタチンおよび/または成熟ミオスタチンに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片は、ミオスタチン(例えばプロ/潜在型/成熟ミオスタチン)の特定の形態のレベルを測定するため、タンパク質分解を介したミオスタチンの切断の程度を定量するためのELISAにおいて使用され得る。いくつかの実施形態ではタンパク質分解を介したミオスタチンの切断の程度は、免疫沈降に続いてトリプシンペプチドのSDS−PAGEもしくは質量分析、蛍光異方性に基づく技術、FRETアッセイ、水素−重水素交換質量分析、および/またはNMR分光法を使用して測定および/または定量される。
いくつかの実施形態では、免疫グロブリンとしても公知の抗体は、それぞれおよそ25kDaの2本の軽鎖(L)およびそれぞれおよそ50kDaの2本の重鎖(H)から構成される四量体グリコシル化タンパク質である。ラムダおよびカッパと呼ばれる2つの型の軽鎖が抗体において見出され得る。重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて免疫グロブリンは、5個の主なクラス:A、D、E、GおよびMに割り当てられてよく、これらのいくつかはサブクラス(アイソタイプ)、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2にさらに分割され得る。各軽鎖は、N末端可変(V)ドメイン(VL)および定常(C)ドメイン(CL)を典型的には含む。各重鎖は、N末端Vドメイン(VH)、3個または4個のCドメイン(CH1−3)およびヒンジ領域を典型的には含む。VHに最も近位のCHドメインはCH1と名付けられる。VHおよびVLドメインは、超可変配列(相補性決定領域、CDR)の3個の領域のための足場を形成するフレームワーク領域(FR1、FR2、FR3およびFR4)と呼ばれる比較的保存された配列の4個の領域からなる。CDRは、抗体と抗原との特異的相互作用に関与する残基の大部分を含有する。CDRは、CDR1、CDR2およびCDR3と称される。したがって、重鎖上のCDR構成成分はCDRH1、CDRH2およびCDRH3と称され、一方軽鎖上のCDR構成成分はCDRL1、CDRL2およびCDRL3と称される。CDRは、Sequences of Proteins of Immunological Interest、US Department of Health and Human Services(1991年)、Kabatら編に記載のKabat CDRを典型的には指す。抗原結合部位を特徴付けるための別の基準は、Chothiaによって記載の超可変ループを指す。例えばChothia, D.ら、(1992年)J. Mol. Biol. 227巻:799〜817頁およびTomlinsonら、(1995年)EMBO J. 14巻:4628〜4638頁を参照されたい。さらに別の基準は、Oxford Molecular’s AbM antibody modelingソフトウェアによって使用されるAbM定義である。一般に例えばAntibody Engineering Lab Manual (Duebel, SおよびKontermann, R.編, Springer−Verlag、Heidelberg)のProtein Sequence and Structure Analysis of Antibody Variable Domainsを参照されたい。Kabat CDRに関して記載された実施形態は、Chothia超可変ループにもしくはAbM定義ループに関して、またはこれらの方法のいずれかの組み合わせに関して同様に記載された関係を使用して代替的に実行され得る。
本発明の方法における使用に好適な抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体またはその抗原結合性断片としては、国際特許出願第PCT/US15/59468号および同第PCT/US16/52014号に記載されているものが挙げられる。前述の出願のそれぞれの全内容は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
いくつかの実施形態では、本開示の抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体またはその抗原結合性断片、ならびに抗体またはその抗原結合性断片をコードする本開示の核酸分子は、表1〜3に示すCDRアミノ酸配列を含む。
いくつかの実施形態では本開示の抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体、またはその抗原結合性部分は、表1〜3に示される抗体のいずれか1つに提供されるCDRH1、CDRH2、CDRH3、CDRL1、CDRL2もしくはCDRL3またはそれらの組み合わせを含む任意の抗体またはその抗原結合性断片を含む。いくつかの実施形態では抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体、またはその抗原結合性部分は、表1〜3に示される抗体のいずれか1つのCDRH1、CDRH2、CDRH3、CDRL1、CDRL2およびCDRL3を含む。本開示は、表1〜3に示される抗体のいずれか1つに提供されるCDRH1、CDRH2、CDRH3、CDRL1、CDRL2またはCDRL3を含む分子をコードする任意の核酸配列も含む。抗体重鎖および軽鎖CDR3ドメインは、抗原に対する抗体の結合特異性/親和性において特に重要な役割を演じる場合がある。したがって、本開示の抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体またはその抗原結合性部分、あるいはそれらの核酸分子は、表1〜3に示す抗体の少なくとも重鎖および/または軽鎖CDR3を含み得る。
本開示の態様は、プロ/潜在型ミオスタチンタンパク質に結合し、6個の相補性決定領域(CDR):CDRH1、CDRH2、CDRH3、CDRL1、CDRL2およびCDRL3を含むモノクローナル抗体または抗原結合性断片に関する。
いくつかの実施形態ではCDRH1は配列番号1〜3のいずれか1つに記載の配列を含む。いくつかの実施形態ではCDRH2は配列番号4〜9のいずれか1つに記載の配列を含む。いくつかの実施形態ではCDRH3は配列番号10〜11、66、71、76、81、86、91、96、101、106および111のいずれか1つに記載の配列を含む。CDRL1は配列番号12〜17のいずれか1つに記載の配列を含む。いくつかの実施形態ではCDRL2は配列番号18〜21のいずれか1つに記載の配列を含む。いくつかの実施形態ではCDRL3は配列番号22〜23、67、72、77、82、87、92、97、102、107および112のいずれか1つに記載の配列を含む。
いくつかの実施形態では(例えば表1に示される抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体Ab1について)CDRH1は配列番号1または2に記載の配列を含み、CDRH2は配列番号4または5に記載の配列を含み、CDRH3は配列番号10に記載の配列を含み、CDRL1は配列番号12または13に記載の配列を含み、CDRL2は配列番号18または19に記載の配列を含み、CDRL3は配列番号22に記載の配列を含み、抗体はプロ/潜在型ミオスタチンに結合する。
いくつかの実施形態では(例えば、表1に示されている抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体Ab2またはその抗原結合性部分に関して)、CDRH1は、配列番号1または2に記載の配列を含み、CDRH2は、配列番号4または5に記載の配列を含み、CDRH3は、配列番号66に記載の配列を含み、CDRL1は、配列番号12または13に記載の配列を含み、CDRL2は、配列番号18または19に記載の配列を含み、CDRL3は、配列番号67に記載の配列を含み、抗体またはその抗原結合性部分は、プロ/潜在型ミオスタチンに結合する。
いくつかの実施形態では(例えば表1に示される抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体Ab3またはその抗原結合性部分について)CDRH1は配列番号1または3に記載の配列を含み、CDRH2は配列番号6または7に記載の配列を含み、CDRH3は配列番号11に記載の配列を含み、CDRL1は配列番号14または15に記載の配列を含み、CDRL2は配列番号20または21に記載の配列を含み、CDRL3は配列番号23に記載の配列を含み、抗体またはその抗原結合性部分はプロ/潜在型ミオスタチンに結合する。
いくつかの実施形態では(例えば表1に示される抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体Ab5またはその抗原結合性部分について)CDRH1は配列番号1または3に記載の配列を含み、CDRH2は配列番号8または9に記載の配列を含み、CDRH3は配列番号11に記載の配列を含み、CDRL1は配列番号16または17に記載の配列を含み、CDRL2は配列番号20または21に記載の配列を含み、CDRL3は配列番号23に記載の配列を含み、抗体またはその抗原結合性部分はプロ/潜在型ミオスタチンに結合する。
いくつかの例では本開示の抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体またはその抗原結合性部分のいずれかは、CDRH1、CDRH2、CDRH3、CDRL1、CDRL2および/またはCDRL3に実質的に類似する1つまたは複数のCDR(例えばCDRHまたはCDRL)配列を有する任意の抗体または抗原結合性断片を含む。例えば抗体は、配列番号1〜23、66、67、71、72、76、77、81、82、86、87、91、92、96、97、101、102、106、107、111および112のいずれか1つの対応するCDR領域と比較して5個、4個、3個、2個または1個までのアミノ酸残基バリエーションを含有する、表1〜3(配列番号1〜23、66、67、71、72、76、77、81、82、86、87、91、92、96、97、101、102、106、107、111および112)に示される1つまたは複数のCDR配列を含んでよい。表1に列挙される抗体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域についての完全なアミノ酸および核酸配列は下に提供される。
いくつかの実施形態では本開示の抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体またはその抗原結合性部分は、配列番号24〜29、73、78、83、88、93、98、103、108および113のいずれか1つの重鎖可変ドメインまたは配列番号30〜35、74、79、84、89、94、99、104、109および114のいずれか1つの軽鎖可変ドメインを含む任意の抗体を含む。いくつかの実施形態では本開示の抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体またはその抗原結合性部分は、配列番号24および30;25および31;26および32;27および33;28および34;または29および35)の重鎖可変および軽鎖可変の対を含む任意の抗体を含む。
本開示の態様は、本明細書に記載のもののいずれかに相同性の重鎖可変および/または軽鎖可変アミノ酸配列を有する抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体またはその抗原結合性部分を提供する。いくつかの実施形態では抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体またはその抗原結合性部分は、配列番号24〜29、73、78、83、88、93、98、103、108および113のいずれかの重鎖可変配列または配列番号30〜35、74、79、84、89、94、99、104、109および114のいずれか1つの軽鎖可変配列と少なくとも75%(例えば80%、85%、90%、95%、98%または99%)同一である重鎖可変配列または軽鎖可変配列を含む。いくつかの実施形態では相同性重鎖可変および/または軽鎖可変アミノ酸配列は、本明細書で提供されるCDR配列のいずれの内でも変化していない。例えばいくつかの実施形態では配列バリエーションの程度(例えば75%、80%、85%、90%、95%、98%または99%)は本明細書で提供されるCDR配列のいずれかを除外して重鎖可変および/または軽鎖可変配列内で生じてよい。
2個のアミノ酸配列の「パーセント同一性」はKarlinおよびAltschul Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90巻:5873〜77頁、1993年のとおり改変されたKarlinおよびAltschul Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87巻:2264〜68頁、1990年のアルゴリズムを使用して決定される。そのようなアルゴリズムは、Altschulら、J.
Mol. Biol. 215巻:403〜10頁、1990年のNBLASTおよびXBLASTプログラム(バージョン2.0)に組み込まれる。BLASTタンパク質検索は、目的のタンパク質分子に相同性のアミノ酸配列を得るためにXBLASTプログラム、スコア=50、ワード長=3で実行され得る。2個の配列間にギャップが存在する場合、ギャップBLASTがAltschulら、Nucleic Acids Res.
25巻(17号):3389〜3402頁、1997年に記載のとおり利用され得る。BLASTおよびギャップBLASTプログラムを利用する場合、それぞれのプログラム(例えばXBLASTおよびNBLAST)のデフォルトパラメータが使用され得る。
いくつかの実施形態では保存的変異は、結晶構造に基づいて決定されるプロ/潜在型ミオスタチンとの相互作用に残基が関与しそうにない位置でCDRまたはフレームワーク配列に導入されてよい。本明細書において使用される場合、「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸置換が行われるタンパク質の相対電荷またはサイズの特徴を変更しないアミノ酸置換を指す。改変体は、そのような方法をまとめている参考文献、例えばMolecular Cloning: A Laboratory Manual、J. Sambrookら編、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、New York、1989年またはCurrent Protocols in Molecular Biology、F.M. Ausubelら編、John Wiley & Sons, Inc.、New Yorkにおいて見出されるような当業者に公知のポリペプチド配列を変更するための方法に従って調製されてよい。アミノ酸の保存的置換は、次の群:(a)M、I、L、V;(b)F、Y、W;(c)K、R、H;(d)A、G;(e)S、T;(f)Q、N;および(g)E、D内のアミノ酸の間で行われる置換を含む。
いくつかの実施形態では本明細書で提供される抗体またはその抗原結合性断片は、抗体またはその抗原結合性断片に望ましい特性を付与する変異を含む。例えば、天然IgG4 mAbで生じることが公知であるFabアーム交換による起こり得る困難な状況を回避するために、本明細書で提供される抗体またはその抗原結合性部分は、セリン228(EU番号付け、Kabat番号付け残基241)がプロリンに変換されてIgG1様(CPPCP(配列番号58))ヒンジ配列が生じる安定化「Adair」変異を含む場合がある(Angal S.ら、「A single amino acid substitution abolishes the heterogeneity of chimeric mouse/human (IgG4) antibody」Mol Immunol 30巻、105〜108頁;1993年)。したがって、抗体のいずれかは、安定化「Adair」変異またはアミノ酸配列CPPCP(配列番号58)を含んでよい。
本開示の抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体またはその抗原結合性部分は、任意選択で抗体定常領域またはその一部を含んでよい。例えばVLドメインは、そのC末端でCκまたはCλなどの軽鎖定常ドメインに付着され得る。同様にVHドメインまたはその一部は、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMならびに任意のアイソタイプサブクラスのような重鎖の全体または一部に付着され得る。抗体は、好適な定常領域を含み得る(例えばKabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第91〜3242号、National Institutes of Health Publications、Bethesda、Md.(1991年)を参照されたい)。したがって、この範囲内の抗体は、任意の好適な定常領域と組み合わされたVHおよびVLドメイン、またはその抗原結合性部分を含み得る。
ある特定の実施形態ではVHおよび/またはVLドメインは、生殖系列配列に復帰されてよく、例えばこれらのドメインのFRは、生殖系列細胞によって産生されるものに適合するように従来の分子生物学技術を使用して変異される。例えばVHおよび/またはVLドメインは、それぞれIgHV3−30(配列番号36)および/またはIgLV1−44(配列番号37)の生殖系列配列に復帰されてよい。VHおよび/またはVLドメインのいずれかが任意の好適な生殖系列配列に復帰され得ることは理解されるべきである。他の実施形態ではFR配列は、コンセンサス生殖系列配列から逸脱したままである。
IgHV3−30
IgLV1−44
いくつかの実施形態では抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体または抗原結合性断片は、配列番号24〜35に示す抗体のフレームワーク領域を含んでも含まなくてもよい。いくつかの実施形態では抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体は、ネズミ抗体であり、ネズミフレームワーク領域配列を含む。
いくつかの実施形態では抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体またはその抗原結合性断片は、比較的高い親和性で、例えば10−6M、10−7M、10−8M、10−9M、10−10M、10−11M未満またはそれより低いKdでプロ/潜在型ミオスタチンに結合できる。例えば抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体またはその抗原結合性断片は、5pMから500nMの間、例えば50pMから100nMの間、例えば500pMから50nMの間の親和性でプロ/潜在型ミオスタチンに結合できる。本発明は、プロ/潜在型ミオスタチンへの結合について本明細書に記載の抗体のいずれかと競合し、50nMまたはそれより低い(例えば20nMもしくはそれより低い、10nMもしくはそれより低い、500pMもしくはそれより低い、50pMもしくはそれより低い、または5pMもしくはそれより低い)親和性を有する抗体または抗原結合性断片も含む。抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体の親和性および結合動態は、これに限定されないがバイオセンサー技術(例えばOCTETまたはBIACORE)を含む任意の好適な方法を使用して試験されてよい。
いくつかの実施形態では、プロ/潜在型ミオスタチンに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片が本明細書で開示される。いくつかの実施形態では本明細書で提供される抗体またはその抗原結合性断片のいずれかは、プロ/潜在型ミオスタチンのトロイド切断部位にもしくはその近くにまたはトロイドドッキング部位にもしくはその近くに結合する。いくつかの実施形態では抗体は、トロイド切断部位またはトロイドドッキング部位の15またはそれより少ないアミノ酸残基内に結合する場合に、トロイド切断部位近く、またはトロイドドッキング部位近くに結合する。いくつかの実施形態では本明細書で提供される抗体またはその抗原結合性断片のいずれかは、トロイド切断部位またはトロイドドッキング部位の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15アミノ酸残基内に結合する。いくつかの実施形態では抗体は、GDF8のトロイド切断部位にまたはその近くに結合する。例えば抗体は、配列番号62 PKAPPLRELIDQYDVQRDDSSDGSLEDDDYHAT(配列番号62)に記載のアミノ配列に結合できる。他の実施形態では、本明細書で提供される抗体またはその抗原結合性断片のいずれかは、プロ/潜在型ミオスタチンのプロタンパク質転換酵素切断部位にもしくはその近くに、またはプロタンパク質転換酵素ドッキング部位にもしくはその近くに結合する。いくつかの実施形態では抗体は、プロタンパク質転換酵素切断部位またはプロタンパク質転換酵素ドッキング部位の15またはそれより少ないアミノ酸残基内に結合する場合、プロタンパク質転換酵素切断部位近くに、またはプロタンパク質転換酵素ドッキング部位近くに結合する。いくつかの実施形態では本明細書で提供する抗体またはその抗原結合性断片のいずれかは、プロタンパク質転換酵素切断部位またはプロタンパク質転換酵素ドッキング部位の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15アミノ酸残基内に結合する。いくつかの実施形態では抗体は、GDF8のプロタンパク質転換酵素切断部位にまたはその近くに結合する。例えば抗体は、配列番号63(GLNPFLEVKVTDTPKRSRRDFGLDCDEHSTESRC)に記載のアミノ酸配列に結合できる。
一例では本明細書に記載の抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体またはその抗原結合性断片は、ミオスタチンの他の形態および/または増殖因子のTGFβファミリーの他のメンバーと比較してプロ/潜在型ミオスタチンに特異的に結合する。増殖因子のTGFβファミリーのメンバーは、非限定的にAMH、ARTN、BMP10、BMP15、BMP2、BMP3、BMP4、BMP5、BMP6、BMP7、BMP8A、BMP8B、GDF1、GDF10、GDF11、GDF15、GDF2、GDF3、GDF3A、GDF5、GDF6、GDF7、GDF8、GDF9、GDNF、INHA、INHBA、INHBB、INHBC、INHBE、LEFTY1、LEFTY2、NODAL、NRTN、PSPN、TGFβ1、TGFβ2およびTGFβ3タンパク質を含む。そのような抗体またはその抗原結合性断片は、増殖因子のTGFβファミリーの他のメンバーと比較してはるかに高い親和性(例えば少なくとも2倍、5倍、10倍、50倍、100倍、200倍、500倍または1,000倍高い)でプロ/潜在型ミオスタチンに結合できる。いくつかの実施形態ではそのような抗体またはその抗原結合性断片は、増殖因子のTGFβファミリーの他のメンバーと比較して少なくとも000倍高い親和性でプロ/潜在型ミオスタチンに結合できる。いくつかの実施形態では本明細書で提供される抗体またはその抗原結合性断片は、GDF11または成熟ミオスタチンの1つまたは複数の形態と比較してはるかに高い(例えば少なくとも2倍、5倍、10倍、50倍、100倍、200倍、500倍または1,000倍高い)親和性でプロ/潜在型ミオスタチンに結合できる。いくつかの実施形態では本明細書で提供される抗体またはその抗原結合性断片は、GDF11(例えばプロGDF11、潜在型GDF11もしくは成熟GDF11)または成熟ミオスタチンの1つまたは複数の形態と比較して少なくとも1,000倍高い親和性でプロ/潜在型ミオスタチンに結合できる。代替的にまたはさらに抗体またはその抗原結合性断片は、プロ/潜在型GDF11などのTGFβファミリーの他のメンバーと比較して、タンパク質分解を介したプロ/潜在型ミオスタチンの切断(例えばプロタンパク質転換酵素またはトロイドプロテアーゼによる)に対してはるかに高い阻害活性(例えば少なくとも2倍、5倍、10倍、50倍、100倍、200倍、500倍、1,000倍高い)を示し得る。別の実施形態では、本明細書に開示されている抗体またはその抗原結合性断片はGDF11には結合しない。これにより、ミオスタチンとGDF11の両方に交差反応する抗体に関連する潜在的な毒性問題は回避される。
いくつかの実施形態では抗体は抗原に結合するが、抗原を血漿から有効に除去できない。したがって、いくつかの実施形態では血漿中の抗原の濃度は、抗原のクリアランスを低減することによって増加され得る。しかし、いくつかの実施形態では本明細書で提供される抗体(例えばスイーピング抗体)は、抗原への親和性がpHに感受性である。そのようなpH感受性抗体は、中性pHで血漿中の抗原に結合でき、酸性エンドソーム中で抗原から解離し、それにより抗体媒介抗原蓄積を低減し、および/または血漿からの抗原クリアランスを促進する。
本開示の態様は、スイーピング抗体に関する。本明細書において使用される場合、「スイーピング抗体」またはその抗原結合性断片は、pH感受性抗原結合および、中性または生理学的pHで細胞表面新生児Fc受容体(FcRn)への少なくとも閾値レベルの結合の両方を有する抗体またはその抗原結合性断片を指す。いくつかの実施形態ではスイーピング抗体またはその抗原結合性部分は、新生児Fc受容体FcRnに中性pHで結合する。例えば、スイーピング抗体は、7.0から7.6の範囲のpHでFcRnに結合できる。いくつかの実施形態ではスイーピング抗体またはその抗原結合性部分は、抗原に抗原結合部位で結合でき、細胞性FcRnに抗体のFc部分を介して結合できる。いくつかの実施形態では次いでスイーピング抗体またはその抗原結合性部分は、内部移行され、分解される場合がある抗原を酸性エンドソーム中に放出できる。いくつかの実施形態ではスイーピング抗体またはその抗原結合性部分は、もはや抗原に結合せず、次いで(例えばエキソサイトーシスによって)細胞によって血清に戻して放出され得る。
いくつかの実施形態では血管内皮(例えば被験体の)中のFcRnは、スイーピング抗体またはその抗原結合性部分の半減期を延ばす。いくつかの実施形態ではミオスタチン(例えばプロミオスタチン、潜在型ミオスタチンまたはプライムドミオスタチン(primed Myostatin))などの抗原に結合するスイーピング抗体またはその抗原結合性部分を、いくつかの実施形態では血管内皮細胞は内部移行させる。いくつかの実施形態ではスイーピング抗体またはその抗原結合性部分は、血流に戻って再循環される。いくつかの実施形態ではスイーピング抗体またはその抗原結合性部分は、その従来の対応物と比較して半減期(例えば被験体の血清中)が増加している。いくつかの実施形態ではスイーピング抗体の従来の対応物は、スイーピング抗体またはその抗原結合性部分の由来元である抗体またはその抗原結合性部分を指す(例えばpH7でより大きな親和性でFcRnに結合するように従来の抗体のFc部分を操作する前)。いくつかの実施形態ではスイーピング抗体またはその抗原結合性部分は、被験体の血清中でその従来の対応物と比較して少なくとも1%、5%、10%、15%、20%、25%、35%、50%、75%、100%、150%、200%または250%長い半減期を有する。
いくつかの実施形態ではスイーピング抗体のFc部分は、FcRnに結合する。いくつかの実施形態ではスイーピング抗体のFc部分は、FcRnに7.4のpHで10−3Mから10−8Mの範囲のKdで結合する。いくつかの実施形態ではスイーピング抗体は、FcRnに7.4のpHで10−3Mから10−7M、10−3Mから10−6M、10−3Mから10−5M、10−3Mから10−4M、10−4Mから10−8M、10−4Mから10−7M、10−4Mから10−6M、10−4Mから10−5M、10−5Mから10−8M、10−5Mから10−7M、10−5Mから10−6M、10−6Mから10−8M、10−6Mから10−7Mまたは10−7Mから10−8Mの範囲のKdで結合する。いくつかの実施形態ではFcRnは、スイーピング抗体のCH2−CH3ヒンジ領域に結合する。いくつかの実施形態ではFcRnは、プロテインAまたはプロテインGと同じ領域に結合する。いくつかの実施形態ではFcRnは、FcγRとは異なる結合部位に結合する。いくつかの実施形態ではスイーピング抗体Fc領域のアミノ酸残基AAは、FcRnへの結合のために必要である。いくつかの実施形態ではスイーピング抗体Fc領域のアミノ酸残基AAは、FcRnへの結合に影響を与える。
いくつかの実施形態では本明細書で提供される抗体またはその抗原結合性断片のいずれかは、より高い親和性でFcRnに結合するように操作される。いくつかの実施形態では本明細書で提供される抗体またはその抗原結合性断片のいずれかは、pH7.4でより高い親和性でFcRnに結合するように操作される。いくつかの実施形態では抗体またはその抗原結合性断片のFcRnへの親和性は、それらの従来の対応物と比較してそれらの薬物動態(PK)特性を伸ばすように増加される。例えばいくつかの実施形態ではスイーピング抗体またはその抗原結合性部分は、より低い用量での効能に起因してより少ない有害反応を誘発する。いくつかの実施形態ではスイーピング抗体またはその抗原結合性部分は、より少ない頻度で投与される。いくつかの実施形態ではスイーピング抗体またはその抗原結合性部分のある特定の組織型への経細胞輸送は増加される。いくつかの実施形態ではスイーピング抗体またはその抗原結合性部分は、経胎盤性送達の効率を増強する。いくつかの実施形態ではスイーピング抗体またはその抗原結合性部分は、産生するためにあまり費用がかからない。
いくつかの実施形態では本明細書で提供される抗体またはその抗原結合性断片のいずれかは、低親和性でFcRnに結合するように操作される。いくつかの実施形態では本明細書で提供される抗体またはその抗原結合性断片のいずれかは、pH7.4で、低親和性でFcRnに結合するように操作される。いくつかの実施形態ではスイーピング抗体またはその抗原結合性部分のFcRnへの親和性は、それらの従来の対応物と比較してそれらの薬物動態的(PK)特性を短くするように減少される。例えばいくつかの実施形態ではスイーピング抗体またはその抗原結合性部分は、画像化および/または放射免疫療法に関してさらに急速に排除される。いくつかの実施形態ではスイーピング抗体またはその抗原結合性部分は、自己免疫疾患に対する処置として内在性病原性抗体のクリアランスを促進する。いくつかの実施形態ではスイーピング抗体またはその抗原結合性部分は、材料胎児特異的抗体の経胎盤輸送によって生じる可能性がある有害な妊娠転帰のリスクを低減する。
いくつかの実施形態ではスイーピング抗体またはその抗原結合性部分は、中性または生理学的pH(例えばpH7.4)と比較して低いpHで抗原への親和性が減少する。いくつかの実施形態ではスイーピング抗体またはその抗原結合性部分は、生理学的pH(例えばpH7.4)と比較して酸性pH(例えば5.5から6.5の範囲のpH)で抗原への親和性が減少する。
本明細書で提供される抗体またはその抗原結合性断片のいずれかはpH変化に応じて抗原から解離するように操作されてよい(例えばpH感受性抗体)ことは理解されるべきである。いくつかの実施形態では本明細書で提供されるスイーピング抗体またはその抗原結合性部分は、pH依存的様式で抗原に結合するように操作される。いくつかの実施形態では本明細書で提供されるスイーピング抗体またはその抗原結合性部分は、pH依存的様式でFcRnに結合するように操作される。いくつかの実施形態では本明細書で提供されるスイーピング抗体またはその抗原結合性部分は、エンドサイトーシスによって内部移行される。いくつかの実施形態では本明細書で提供されるスイーピング抗体またはその抗原結合性部分は、FcRn結合によって内部移行される。いくつかの実施形態ではエンドサイトーシスされたスイーピング抗体またはその抗原結合性部分は、抗原をエンドソーム中に放出する。いくつかの実施形態ではスイーピング抗体またはその抗原結合性部分は、細胞表面に戻って再循環される。いくつかの実施形態ではスイーピング抗体は、細胞に結合したままである。いくつかの実施形態ではエンドサイトーシスされたスイーピング抗体またはその抗原結合性部分は、血漿に戻って再循環される。本明細書で提供される抗体またはその抗原結合性断片のいずれかのFc部分が、異なるFcRn結合活性を有するように操作されてよいことは理解されるべきである。いくつかの実施形態ではFcRn結合活性は、スイーピング抗体による抗原のクリアランス時間に影響を与える。いくつかの実施形態ではスイーピング抗体は、長時間作用型または速効型スイーピング抗体であってよい。
いくつかの実施形態では従来の治療用抗体またはその抗原結合性部分をスイーピング抗体またはその抗原結合性部分に変換することは、有効用量を低減する。いくつかの実施形態では従来の治療用抗体またはその抗原結合性部分をスイーピング抗体またはその抗原結合性部分に変換することは、有効用量を少なくとも1%、2%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または99%低減する。いくつかの実施形態では従来の治療用抗体またはその抗原結合性部分をスイーピング抗体またはその抗原結合性部分に変換することは、有効用量を少なくとも1/1.5、1/2、1/3、1/4、1/5、1/6、1/8、1/10、1/15、1/20、1/50または1/100に低減する。
いくつかの実施形態では治療のためのスイーピング抗体またはその抗原結合性部分の適切な用量を選択することは、経験的に実行され得る。いくつかの実施形態ではスイーピング抗体またはその抗原結合性部分の高用量は、FcRnを飽和する場合があり、血清中の抗原を内部移行することなく安定化する抗体を生じる。いくつかの実施形態では低用量のスイーピング抗体またはその抗原結合性部分は、治療的に有効でない場合がある。いくつかの実施形態ではスイーピング抗体またはその抗原結合性部分は、1日1回、1週間に1回、2週間ごとに1回、3週間ごとに1回、4週間ごとに1回、6週間ごとに1回、8週間ごとに1回、10週間ごとに1回、12週間ごとに1回、16週間ごとに1回、20週間ごとに1回または24週間ごとに1回投与される。
いくつかの実施形態では本明細書で提供される抗体またはその抗原結合性断片のいずれもスイーピング抗体になるように改変または操作されてよい。いくつかの実施形態では本明細書で提供される抗体またはその抗原結合性断片のいずれも任意の好適な方法を使用してスイーピング抗体に変換されてよい。例えばスイーピング抗体またはその抗原結合性部分を作製するための好適な方法はIgawaら、(2013年)「Engineered Monoclonal Antibody with Novel Antigen−Sweeping Activity In Vivo」、PLoS ONE 8巻(5号):e63236頁;およびIgawaら、「pH−dependent antigen−binding antibodies as a novel therapeutic modality」、Biochimica et Biophysica Acta 1844巻(2014年)1943〜1950頁に以前に記載されており、これらのそれぞれの内容は参照により本明細書に組み込まれる。しかし、本明細書で提供されるスイーピング抗体またはその抗原結合性部分を作製するための方法が限定されることを意味しないことは理解されるべきである。したがって、スイーピング抗体またはその抗原結合性部分を作製するための追加的方法は本開示の範囲内である。
本開示のいくつかの態様は、本明細書で提供される抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体またはその抗原結合性断片のいずれかの親和性(例えばKdとして表される)がpHの変化に感受性であるという認識に基づいている。いくつかの実施形態では本明細書で提供される抗体またはその抗原結合性断片は、比較的高いpH(例えば7.0〜7.4の範囲のpH)と比較して比較的低いpH(例えば4.0〜6.5の範囲のpH)でプロ/潜在型ミオスタチンへの結合のKdが増加している。いくつかの実施形態では本明細書で提供される抗体またはその抗原結合性断片は、pHが4.0から6.5の間である場合に、10−3M、10−4M、10−5M、10−6M、10−7M、10−8Mの範囲のプロ/潜在型ミオスタチンへの結合のKdを有する。いくつかの実施形態では本明細書で提供される抗体またはその抗原結合性断片は、pHが7.0から7.4の間である場合に、10−6M、10−7M、10−8M、10−9M、10−10M、10−11Mの範囲のプロ/潜在型ミオスタチンへの結合のKdを有する。いくつかの実施形態では本明細書で提供される抗体またはその抗原結合性断片は、pH7.0から7.4の間と比較してpH4.0から6.5の間で少なくとも2倍、少なくとも10倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍、少なくとも500倍、少なくとも1000倍、少なくとも5000倍または少なくとも10000倍大きいプロ/潜在型ミオスタチンへの結合のKdを有する。
いくつかの実施形態では(配列番号64)に記載されるアミノ酸配列の中のエピトープに特異的に結合しないプロ/潜在型ミオスタチン抗体またはその抗原結合性断片が本明細書で提供される。いくつかの実施形態では本明細書で提供されるプロ/潜在型ミオスタチン抗体またはその抗原結合性断片は、2015年12月18日に出願された国際特許出願第PCT/JP2015/006323号に基づいて2016年6月23日に公開された国際特許出願公開第WO2016/098357号の表2a、11a、11b、または13に記載された抗体と同じエピトープに特異的に結合しない。いくつかの実施形態では本明細書で提供されるプロ/潜在型ミオスタチン抗体またはその抗原結合性断片は、2015年12月18日に出願された国際特許出願第PCT/JP2015/006323号に基づいて2016年6月23日に公開された国際特許出願公開第WO2016/098357号の表2a、11a、11b、または13に記載された抗体と同じエピトープへの結合に関して競合または交差競合しない。いくつかの実施形態では本明細書で提供されるプロ/潜在型ミオスタチン抗体またはその抗原結合性断片は、2015年12月18日に出願された国際特許出願第PCT/JP2015/006323号に基づいて2016年6月23日に公開された国際特許出願公開第WO2016/098357号の表2a、11a、11b、または13に記載されたVHおよびVLの対を含む抗体と同じエピトープに特異的に結合しない。いくつかの実施形態では本明細書で提供されるプロ/潜在型ミオスタチン抗体またはその抗原結合性断片は、2015年12月18日に出願された国際特許出願第PCT/JP2015/006323号に基づいて2016年6月23日に公開された国際特許出願公開第WO2016/098357号の表2a、11a、11b、または13に記載されたVHおよびVLの対を含む抗体と同じエピトープへの結合に関して競合または交差競合しない。
ポリペプチド
本開示のいくつかの態様は、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28および配列番号29からなる群より選択される配列を有するポリペプチドに関する。いくつかの実施形態ではポリペプチドは可変重鎖ドメインである。いくつかの実施形態ではポリペプチドは、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28または配列番号29に記載のアミノ酸配列のいずれか1つと少なくとも75%(例えば80%、85%、90%、95%、98%または99%)同一である。
本開示のいくつかの態様は、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34および配列番号35からなる群より選択される配列を有するポリペプチドに関する。いくつかの実施形態ではポリペプチドは可変軽鎖ドメインである。いくつかの実施形態ではポリペプチドは、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34または配列番号35に記載のアミノ酸配列のいずれか1つと少なくとも75%(例えば80%、85%、90%、95%、98%または99%)同一である。
抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体またはその抗原結合性断片と競合する抗体またはその抗原結合性断片
本開示の態様は、本明細書で提供される抗体またはその抗原結合性断片のいずれかと競合または交差競合する抗体またはその抗原結合性断片に関する。抗体に関して本明細書において使用される用語「競合する」は、第1の抗体が、第2の抗体の結合と十分に類似した様式でタンパク質(例えば潜在型ミオスタチン)のエピトープに結合し、そのエピトープとの第1の抗体の結合の結果が、第2の抗体の非存在下での第1の抗体の結合と比較して第2の抗体の存在下で検出可能に減少されることを意味する。第2の抗体のそのエピトープへの結合も第1の抗体の存在下で検出可能に減少される別の場合が可能であるが、そうである必要はない。すなわち第1の抗体は第2の抗体のそのエピトープへの結合を、第2の抗体がそのそれぞれのエピトープへの第1の抗体の結合を阻害することなく阻害できる。しかし、各抗体がそのエピトープまたはリガンドとの他の抗体の結合を検出可能に阻害する場合、同じ程度、より大きい程度またはより小さい程度であるかに関わらず、抗体はそれらのそれぞれのエピトープ(複数可)の結合について互いに「交差競合する」といえる。競合するおよび交差競合する両方の抗体は、本開示の範囲内である。そのような競合または交差競合が生じる機構(例えば立体障害、コンフォメーション変化もしくは共通エピトープまたはそれらの部分への結合)に関わらず、当業者は、そのような競合および/または交差競合抗体が包含され、本明細書で提供される方法および/または組成物に有用であり得ることを理解する。
本開示の態様は、本明細書で提供される抗体またはその抗原結合性断片のいずれかと競合または交差競合する抗体またはその抗原結合性部分に関する。いくつかの実施形態では抗体またはその抗原結合性部分は、本明細書で提供される抗体のいずれかと同じエピトープにおいてまたはその近くに結合する。いくつかの実施形態では抗体またはその抗原結合性部分は、それがエピトープの15またはそれより少ないアミノ酸残基内に結合する場合にエピトープ近くに結合する。いくつかの実施形態では本明細書で提供される抗体またはその抗原結合性断片のいずれかは、本明細書で提供される抗体またはその抗原結合性断片のいずれかが結合するエピトープの1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15アミノ酸残基内に結合する。
別の実施形態では抗体またはその抗原結合性部分は、10−6M未満の抗体とタンパク質との間の平衡解離定数Kdで本明細書で提供される抗原のいずれか(例えばプロ/潜在型ミオスタチン)への結合について競合または交差競合する。他の実施形態では抗体またはその抗原結合性部分は、10−11Mから10−6Mの範囲のKdで、本明細書で提供される抗原のいずれかへの結合について競合または交差競合する。
本開示の態様は本明細書で提供される抗体またはその抗原結合性断片のいずれかとプロ/潜在型ミオスタチンへの結合について競合する抗体またはその抗原結合性部分に関する。いくつかの実施形態では抗体またはその抗原結合性部分は、本明細書で提供される抗体またはその抗原結合性部分のいずれかと同じエピトープにおいてプロ/潜在型ミオスタチンに結合する。例えば、いくつかの実施形態では本明細書で提供される抗体のいずれかは、プロ/潜在型ミオスタチンのトロイド切断部位にもしくはその近くにまたはトロイドドッキング部位にもしくはその近くに結合する。他の実施形態では本明細書で提供される抗体またはその抗原結合性断片のいずれかは、プロ/潜在型ミオスタチンのプロタンパク質転換酵素切断部位にもしくはその近くにまたはプロタンパク質転換酵素ドッキング部位にもしくはその近くに結合する。別の実施形態では抗体またはその抗原結合性部分は、10−6M未満の抗体またはその抗原結合性部分とプロ/潜在型ミオスタチンとの間の平衡解離定数Kdでプロ/潜在型ミオスタチンへの結合について競合する。他の実施形態では本明細書で提供される抗体またはその抗原結合性部分のいずれかと競合する抗体またはその抗原結合性部分は、10−11Mから10−6Mの範囲のKdでプロ/潜在型ミオスタチンに結合する。
本明細書で提供される抗体またはその抗原結合性断片のいずれかは、任意の好適な方法を使用して特徴付けられてよい。例えば1つの方法は、抗原が結合するエピトープを同定すること、すなわち「エピトープマッピング」である。例えばHarlowおよびLane、Using Antibodies、a Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.、1999年の11章に記載のとおり、抗体抗原複合体の結晶構造を解析すること、競合アッセイ、遺伝子断片発現アッセイおよび合成ペプチドに基づくアッセイを含む、タンパク質上のエピトープの位置をマッピングおよび特徴付けするための多数の好適な方法がある。追加的例ではエピトープマッピングは、抗体またはその抗原結合性部分が結合する配列を決定するために使用され得る。エピトープは、直鎖状エピトープであり得、すなわちアミノ酸の単一のストレッチに含有され得る、または必ずしも単一のストレッチ(一次構造直鎖状配列)に含有されていなくてもよいアミノ酸の三次元相互作用によって形成されるコンフォメーショナルエピトープ(conformational epitope)であってよい。多様な長さ(例えば少なくとも4〜6アミノ酸長)のペプチドは、単離または合成(例えば組換え的に)され、抗体との結合アッセイのために使用されてよい。別の例では抗体またはその抗原結合性部分が結合するエピトープは、標的抗原配列由来の重複ペプチドを使用し、抗体による結合を決定することによる系統的スクリーニングにおいて決定され得る。遺伝子断片発現アッセイにより、標的抗原をコードするオープンリーディングフレームは、無作為にまたは特異的な遺伝的構築によってのいずれかで断片化され、発現された抗原断片と試験される抗体との反応性が決定される。遺伝子断片は、例えばPCRによって産生され、次いで放射性アミノ酸の存在下でタンパク質へin vitroで転写および翻訳され得る。抗体またはその抗原結合性部分の放射性標識抗原断片への結合は、次いで免疫沈降およびゲル電気泳動によって決定される。ある特定のエピトープは、ファージ粒子の表面に提示された無作為ペプチド配列の大きなライブラリー(ファージライブラリー)を使用しても同定され得る。代替的に、重複ペプチド断片の規定のライブラリーは、簡単な結合アッセイにおいて試験抗体またはその抗原結合性部分への結合について試験され得る。追加的例では、抗原結合ドメインの変異誘発、ドメイン交換実験およびアラニンスキャンニング変異誘発は、エピトープ結合のために要求される、十分なおよび/または必要な残基を同定するために実施され得る。例えばドメイン交換実験は、プロ/潜在型ミオスタチンポリペプチドの種々の断片が、TGFβタンパク質ファミリーの別のメンバー(例えばGDF11)などの密接に関連しているが抗原性が異なるタンパク質由来の配列で置き換えられて(交換されて)いる標的抗原の変異体を使用して実施され得る。抗体またはその抗原結合性部分の変異体プロ/潜在型ミオスタチンへの結合を評価することによって、抗体またはその抗原結合性部分の結合への特定の抗原断片の重要性が評価され得る。
代替的に、競合アッセイは、抗体またはその抗原結合性部分が他の抗体またはその抗原結合性部分と同じエピトープに結合するかどうかを決定するために同じ抗原に結合することが公知である他の抗体を使用して実施されてよい。競合アッセイは当業者に周知である。
好適な方法のいずれか、例えば本明細書に記載のエピトープマッピング法は、抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体またはその抗原結合性部分が本明細書に記載のプロ/潜在型ミオスタチン中の特異的残基/セグメントの1つまたは複数に結合するかどうかを決定するために適用され得る。さらに抗体またはその抗原結合性部分と、プロ/潜在型ミオスタチン中のこれらの定義された残基の1つまたは複数との相互作用は、日常的技術によって決定され得る。例えば結晶構造を決定することができ、プロ/潜在型ミオスタチン中の残基と抗体またはその抗原結合性部分中の1つまたは複数の残基との間の距離はそれに従って決定され得る。そのような距離に基づいて、プロ/潜在型ミオスタチン中の特定の残基が抗体またはその抗原結合性部分中の1つまたは複数の残基と相互作用するかどうかが決定され得る。さらに、競合アッセイおよび標的変異誘発アッセイなどの好適な方法は、変異体プロ/潜在型ミオスタチンなどの別の標的と比較した、候補抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体またはその抗原結合性部分のプロ/潜在型ミオスタチンへの優先的な結合を決定するために適用され得る。
抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体またはその抗原結合性断片の産生
多数の方法は、本開示の抗体またはその抗原結合性断片を得るために使用され得る。例えば抗体およびその抗原結合性断片は、組換えDNA方法を使用して産生され得る。モノクローナル抗体およびその抗原結合性断片は、公知の方法によりハイブリドーマの生成によっても産生され得る(例えばKohlerおよびMilstein(1975年)Nature、256号:495〜499頁を参照されたい)。この様式で形成されたハイブリドーマは、次いで、特定の抗原に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性部分を産生する1つまたは複数のハイブリドーマを同定するために酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)および表面プラズモン共鳴(例えばOCTETまたはBIACORE)解析などの標準的方法を使用してスクリーニングされる。特定の抗原の任意の形態、例えば組換え抗原、天然に存在する形態、その任意の改変体または断片、およびその抗原性ペプチド(例えば直鎖状エピトープとしてまたはコンフォメーショナルエピトープとして足場内の本明細書に記載のエピトープのいずれか)は免疫原として使用され得る。抗体およびその抗原結合性部分を作製する1つの例示的方法は、抗体またはその断片(例えばscFv)を発現するタンパク質発現ライブラリー、例えばファージまたはリボソームディスプレイライブラリーをスクリーニングすることを含む。ファージディスプレイは、例えばLadnerら、米国特許第5,223,409号、Smith(1985年)Science 228巻:1315〜1317頁、Clacksonら、(1991年)Nature、352巻:624〜628頁、Marksら、(1991年)J. Mol. Biol.、222巻:581〜597頁、WO92/18619、WO91/17271、WO92/20791、WO92/15679、WO93/01288、WO92/01047、WO92/09690およびWO90/02809に記載されている。
ディスプレイライブラリーの使用に加えて、特定の抗原(例えばプロミオスタチン)は、非ヒト動物、例えばげっ歯類、例えばマウス、ハムスター、またはラットを免疫化するために使用されてよい。一実施形態では非ヒト動物はマウスである。
別の実施形態ではモノクローナル抗体は、非ヒト動物から得られ、次いで好適な組換えDNA技術を使用して改変される(例えばキメラ)。キメラ抗体を作製するための種々のアプローチは記載されている。例えばMorrisonら、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.81巻:6851頁、1985年、Takedaら、Nature 314巻:452頁、1985年、Cabillyら、米国特許第4,816,567号、Bossら、米国特許第4,816,397号、Tanaguchiら、欧州特許公開第EP171496号、欧州特許公開第0173494号、英国特許第GB2177096B号を参照されたい。
追加的な抗体産生技術についてAntibodies: A Laboratory Manual、Harlowら編、Cold Spring Harbor Laboratory、1988年を参照されたい。本開示は、抗体のいずれかの特定の供給源、産生の方法または他の特別な特徴に必ずしも限定されない。
本開示のいくつかの態様は、ポリヌクレオチドまたはベクターで形質転換された宿主細胞に関する。宿主細胞は、原核または真核細胞であってよい。宿主細胞に存在するポリヌクレオチドまたはベクターは、宿主細胞のゲノムに組み込まれていてもよく、または染色体外に維持されていてもよい。宿主細胞は、細菌性、昆虫、真菌、植物、動物またはヒト細胞などの任意の原核または真核細胞であってよい。いくつかの実施形態では真菌細胞は、例えばSaccharomyces属のもの、具体的にはS.cerevisiae種のものである。用語「原核生物」は、抗体または対応する免疫グロブリン鎖の発現のためにDNAまたはRNA分子で形質転換またはトランスフェクトされ得る全ての細菌を含む。原核生物の宿主は、例えばE.coli、S.typhimurium、Serratia marcescensおよびBacillus subtilisなどのグラム陰性およびグラム陽性細菌を含んでよい。用語「真核生物」は、酵母、高等植物、昆虫ならびに脊椎動物細胞、例えばNSOおよびCHO細胞などの哺乳動物細胞を含む。組換え産生手順において用いられる宿主に応じて、ポリヌクレオチドによってコードされる抗体または免疫グロブリン鎖は、グリコシル化されてよい、またはグリコシル化されなくてよい。抗体または対応する免疫グロブリン鎖は、開始メチオニンアミノ酸残基も含んでよい。
いくつかの実施形態では、ベクターが適切な宿主に組み込まれると、宿主はヌクレオチド配列の高レベル発現に好適な条件下に維持されてよく、所望により、免疫グロブリン軽鎖、重鎖、軽鎖/重鎖二量体もしくはインタクト抗体、抗原結合性断片または他の免疫グロブリン形態の回収および精製が続いてよい;Beychok、Cells of Immunoglobulin Synthesis、Academic Press、N.Y.、(1979年)を参照されたい。したがって、ポリヌクレオチドまたはベクターは、次に抗体または抗原結合性断片を産生する細胞に導入される。さらに、前述の宿主細胞を含むトランスジェニック動物、好ましくは哺乳動物は、抗体または抗体断片の大規模産生のために使用されてよい。
形質転換された宿主細胞は、発酵槽で増殖され、最適な細胞増殖を達成するための任意の好適な技術を使用して培養されてよい。発現されると、全抗体、それらの二量体、個々の軽鎖および重鎖、他の免疫グロブリン形態または抗原結合性断片は、硫酸アンモニウム沈殿法、親和性カラム、カラムクロマトグラフィー、ゲル電気泳動などを含む当技術分野の標準的手順により精製されてよい;Scopes、「Protein Purification」、Springer Verlag、N.Y.(1982年)を参照されたい。次いで抗体または抗原結合性断片は、増殖培地、細胞溶解物または細胞膜画分から単離されてよい。例えば微生物で発現された抗体または抗原結合性断片の単離および精製は、例えば調製用クロマトグラフィー分離および、例えば抗体の定常領域に対して指向されたモノクローナルまたはポリクローナル抗体の使用を含むものなどの免疫学的分離などの任意の従来の手段によってであってよい。
本開示の態様は、モノクローナル抗体の無期限に延長される供給源を提供するハイブリドーマに関する。ハイブリドーマの培養物から直接免疫グロブリンを得るための代替法として、不死化ハイブリドーマ細胞は、続く発現および/または遺伝子操作のための再編成重鎖および軽鎖遺伝子座の供給源として使用されてよい。再編成抗体遺伝子は、cDNAを産生するために適切なmRNAから逆転写されてよい。いくつかの実施形態では重鎖定常領域は、異なるアイソタイプのものと交換されるかまたは全体が除去されてよい。可変領域は、一本鎖Fv領域をコードするように連結されてよい。複数のFv領域は、1つより多い標的への結合能力を付与するために連結されてよく、またはキメラ重鎖および軽鎖組み合わせが用いられてよい。任意の適切な方法は、抗体可変領域のクローニングおよび組換え抗体およびその抗原結合性部分の生成のために使用されてよい。
いくつかの実施形態では、重鎖および/または軽鎖の可変領域をコードする適切な核酸が得られ、標準的組換え宿主細胞にトランスフェクトされ得る発現ベクターに挿入される。種々のそのような宿主細胞が使用されてよい。いくつかの実施形態では哺乳動物宿主細胞は、効率的なプロセシングおよび産生のために有利である場合がある。この目的のために有用な典型的な哺乳動物細胞株は、CHO細胞、293細胞またはNSO細胞を含む。抗体または抗原結合性断片の産生は、改変組換え宿主を宿主細胞の増殖およびコード配列の発現に適切な培養条件下で培養することによって実行されてよい。抗体または抗原結合性断片は、培養物からそれらを単離することによって回収され得る。発現系は、生じた抗体が培地に分泌されるように、シグナルペプチドを含める形で設計されてよいが;細胞内産生物も可能である。
本開示は、本明細書に記載の抗体の免疫グロブリン鎖の少なくとも可変領域をコードするポリヌクレオチドも含む。いくつかの実施形態ではポリヌクレオチドによってコードされる可変領域は、上に記載のハイブリドーマのいずれか1つによって産生された抗体の可変領域のVHおよび/またはVLの少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含む。
抗体または抗原結合性断片をコードするポリヌクレオチドは、例えばDNA、cDNA、RNAまたは合成的に産生されたDNAもしくはRNAまたはこれらのポリヌクレオチドのいずれかを単独もしくは組み合わせで含む組換え的に産生されたキメラ核酸分子であってよい。いくつかの実施形態ではポリヌクレオチドは、ベクターの一部である。そのようなベクターは、好適な宿主細胞においておよび好適な条件下でベクターの選択を可能にするマーカー遺伝子などのさらなる遺伝子を含んでよい。
いくつかの実施形態ではポリヌクレオチドは、原核または真核細胞での発現を可能にする発現調節配列に作動可能に連結される。ポリヌクレオチドの発現は、ポリヌクレオチドの翻訳可能なmRNAへの転写を含む。真核細胞、好ましくは哺乳動物細胞での発現を確実にする制御エレメントは、当業者に周知である。それらは、転写の開始を促進する制御配列ならびに任意選択で転写の終了および転写物の安定化を促進するポリAシグナルを含んでよい。追加的制御エレメントは、転写および翻訳エンハンサー、ならびに/または天然で関連するもしくは異種性のプロモーター領域を含んでよい。原核生物の宿主細胞での発現を可能にする可能性のある制御エレメントは例えばE.coliにおけるPL、Lac、TrpまたはTacプロモーターを含み、真核宿主細胞での発現を可能にする制御エレメントの例は、酵母におけるAOX1もしくはGAL1プロモーターまたは哺乳動物および他の動物細胞におけるCMVプロモーター、SV40プロモーター、RSVプロモーター(ラウス肉腫ウイルス)、CMVエンハンサー、SV40エンハンサーもしくはグロビンイントロンである。
転写の開始に関与するエレメント以外のそのような制御エレメントはSV40ポリA部位またはtkポリA部位などのポリヌクレオチドの下流の転写終結シグナルも含み得る。さらに、用いられる発現系に応じて、ポリペプチドを細胞コンパートメントに向かわせるまたはそれを培地に分泌することができるリーダー配列を、ポリヌクレオチドのコード配列に加えてよく、以前に記載されている。リーダー配列(複数可)は、翻訳、開始および終止配列と適切なフェーズ(phase)でアセンブルされ、好ましくは、リーダー配列は翻訳されたタンパク質またはその部分の例えば細胞外培地への分泌を導くことができる。望ましい特徴、例えば発現される組換え産物の安定化または精製の簡略化を与えるCまたはN末端識別ペプチドを含む融合タンパク質をコードする異種性ポリヌクレオチド配列を、任意選択で使用してもよい。
いくつかの実施形態では軽鎖および/または重鎖の少なくとも可変ドメインをコードするポリヌクレオチドは、両方の免疫グロブリン鎖または1つだけの可変ドメインをコードしてよい。同様にポリヌクレオチドは、同じプロモーターの調節下にあってよく、または発現のために別々に調節されてよい。さらにいくつかの態様は、抗体または抗原結合性断片の免疫グロブリン鎖の可変ドメインをコードするポリヌクレオチドを、任意選択で抗体の他の免疫グロブリン鎖の可変ドメインをコードするポリヌクレオチドとの組み合わせで含む、遺伝子工学において従来使用されるベクター、特にプラスミド、コスミド、ウイルスおよびバクテリオファージに関する。
いくつかの実施形態では発現調節配列は、真核宿主細胞を形質転換またはトランスフェクトできるベクター中の真核プロモーター系として提供されるが、原核生物の宿主のための調節配列も使用されてよい。レトロウイルス、ワクチニアウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルスまたはウシパピローマウイルスなどのウイルス由来の発現ベクターは、ポリヌクレオチドまたはベクターを標的化された細胞集団(例えば抗体または抗原結合性断片を発現するように細胞を操作するため)に送達するために使用されてよい。種々の適切な方法は、組換えウイルス性ベクターを構築するために使用されてよい。いくつかの実施形態ではポリヌクレオチドおよびベクターは、標的細胞への送達のためにリポソームに再構成されてよい。ポリヌクレオチド(例えば配列および発現調節配列をコードする免疫グロブリン鎖の重鎖および/または軽鎖可変ドメイン(複数可))を含有するベクターは、細胞宿主の種類に応じて変化する好適な方法によって宿主細胞に移行されてよい。
修飾
本開示の抗体および抗原結合性断片は、プロ/潜在型ミオスタチンの検出および単離のために、これらに限定されないが、酵素、補欠分子族、蛍光材料、発光材料、生物発光材料、放射性材料、ポジトロン放出金属、非放射性常磁性金属イオン、および親和性標識を含む検出可能な標識で修飾されてよい。検出可能な物質は、本開示のポリペプチドに直接または、好適な技術を使用して中間体(例えばリンカーなど)を通じて間接のいずれかでカップリングまたはコンジュゲートされてよい。好適な酵素の非限定的例は、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、グルコースオキシダーゼまたはアセチルコリンエステラーゼを含み;好適な補欠分子族複合体の非限定的例はストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンを含み;好適な蛍光材料の非限定的例はビオチン、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、塩化ダンシルまたはフィコエリトリンを含み;発光材料の例はルミノールを含み;生物発光材料の非限定的例はルシフェラーゼ、ルシフェリンおよびエクオリンを含み;好適な放射性材料の例は、例えばヨウ素(131I、125I、123I、121I)、炭素(14C)、イオウ(35S)、トリチウム(3H)、インジウム(115mIn、113mIn、112In、111In)およびテクネチウム(99Tc、99mTc)、タリウム(201Ti)、ガリウム(68Ga、67Ga)、パラジウム(103Pd)、モリブデン(99Mo)、キセノン(133Xe)、フッ素(18F)、153Sm、Lu、159Gd、149Pm、140La、175Yb、166Ho、90Y、47Sc、86R、188Re、142Pr、105Rh、97Ru、68Ge、57Co、65Zn、85Sr、32P、153Gd、169Yb、51Cr、54Mn、75Seおよびスズ(113Sn、117Sn)などの放射性金属イオン、例えばアルファ放射体または他の放射性同位元素を含む。検出可能な物質は、本開示の抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体またはその抗原結合性部分に直接または、好適な技術を使用して中間体(例えばリンカーなど)を通じて間接のいずれかでカップリングまたはコンジュゲートされてよい。検出可能な物質にコンジュゲートされた抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体またはその抗原結合性部分は、本明細書に記載の診断アッセイのために使用され得る。
ミオスタチン阻害剤、例えば抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体およびその抗原結合性断片などの生物学的効果
本開示に包含されるミオスタチン阻害剤、例えば抗体およびその抗原結合性断片などは、被験体に有効量で投与した場合に被験体において有益な効果(例えば、治療効果)を実現するための医薬として使用され得る。例示的なそのような生物学的に有益な効果は本明細書で提供される。被験体における有益な生物学的効果は、ミオスタチン阻害剤、例えば、プロ/潜在型ミオスタチンに特異的に結合する、本明細書に記載の抗体またはその抗原結合性断片の投与によって達成することができる。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合性部分は、下記の生物学的効果のうちの2個またはそれよりも多くを引き起こすのに有効な量で投与される。いくつかの実施形態では、ミオスタチン阻害剤、例えば、抗体またはその抗原結合性部分は、下記の生物学的効果のうちの3個またはそれよりも多くを引き起こすのに有効な量で投与される。いくつかの実施形態では、ミオスタチン阻害剤、例えば、抗体またはその抗原結合性部分は、下記の生物学的効果のうちの4個またはそれよりも多くを引き起こすのに有効な量で投与される。いくつかの実施形態では、ミオスタチン阻害剤、例えば、抗体またはその抗原結合性部分は、下記の生物学的効果のうちの5個またはそれよりも多くを引き起こすのに有効な量で投与される。いくつかの実施形態では、ミオスタチン阻害剤、例えば、抗体またはその抗原結合性部分は、下記の生物学的効果のうちの6個またはそれよりも多くを引き起こすのに有効な量で投与される。いくつかの実施形態では、ミオスタチン阻害剤、例えば、抗体またはその抗原結合性部分は、下記の生物学的効果のうちの7個またはそれよりも多くを引き起こすのに有効な量で投与される。いくつかの実施形態では、ミオスタチン阻害剤、例えば、抗体またはその抗原結合性部分は、下記の生物学的効果のうちの8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、または16個を引き起こすのに有効な量で投与される。
A.ヒト被験体における筋組織の量および/または機能に対する効果
ミオスタチン阻害剤、例えば、プロ/潜在型ミオスタチンに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片の投与により、ヒト被験体における筋組織の量および/または機能が増大する。いくつかの実施形態では、筋組織は、平滑筋組織、骨格筋組織および心筋組織からなる群より選択される。平滑筋組織は、長い先細の細胞で構成され、一般に、不随意であり、横紋筋とは、アクチン/ミオシン比がはるかに高いこと、顕著な筋節が存在しないこと、および静止状態の長さのほんの一部に収縮する能力により、異なる。平滑筋細胞は、特に、血管壁、腸の周囲および子宮において見出される。心筋組織は横紋筋であるが、脊椎動物の心臓のポンピング活性に関与する不随意組織である。個々の心筋細胞は横紋筋組織中にあるので、融合して多核構造にはならない。骨格筋組織は随意制御下にある。筋線維は、合胞体であり、筋原線維、筋節のタンデムなアレイを含有する。骨格筋線維には、それらの特定のミオシン重鎖(MHC)アイソフォームの発現に従って、遅筋(I型筋)および速筋(II型筋)の2つの一般的な型がある。遅筋は、好気的に働くためによりよく備わっており、長距離走などの長い持久力を可能にするのに役立つが、一方、速筋は、疲労が速いが、嫌気的に働くためによりよく備わっており、短距離走のような強力な突発的な動作に使用される。遅筋線維と速筋線維の区別は、ミオシンアデノシン−トリホスファターゼ(ATPアーゼ)についての組織化学的染色およびミオシン重鎖の型に基づく。遅筋線維(I型線維)は、MHCアイソフォームIであり、3つの速筋アイソフォーム(II型線維)は、MHCアイソフォームIIa、MHCアイソフォームIId、およびMHCアイソフォームIIbである(S. Schiaffino、J. Muscle Res. Cell. Motil.、10巻(1989年)、197〜205頁)。いくつかの実施形態では、ヒト被験体における速筋組織の量および/または機能が増大する。他の実施形態では、ヒト被験体における遅筋組織の量および/または機能が増大する。
本明細書で提供される医薬組成物の有効量の生物学的効果は、線維型の切り替えと称されるプロセスである筋線維型の表現型の変化に関連し得る。いくつかの実施形態では、線維型の切り替えは、損傷および飢餓などの事象によって誘発される。
一態様では、本開示は、被験体における線維型の切り替えを促進するための方法を提供する。方法は、被験体に、ミオスタチン阻害剤、例えば、プロ/潜在型ミオスタチンに特異的に結合し、成熟ミオスタチンの放出を遮断する抗体またはその抗原結合性断片を含む組成物を、線維型の切り替えを促進するのに有効な量で投与し、それにより被験体における線維型の切り替えを促進するステップを含む。
別の態様では、本開示は、被験体においてII型または速筋線維をI型または遅筋線維よりも優先的に増加させるための方法を提供する。方法は、
被験体に、ミオスタチン阻害剤、例えば、プロ/潜在型ミオスタチンに特異的に結合し、成熟ミオスタチンの放出を遮断する抗体またはその抗原結合性断片を含む組成物を、II型または速筋線維をI型または遅筋線維よりも優先的に増加させるのに有効な量で投与し、それにより被験体におけるII型または速筋線維をI型または遅筋線維よりも優先的に増加させるステップを含む。
いくつかの実施形態では、ミオスタチン阻害剤、例えば、本明細書に記載の抗体またはその抗原結合性断片を被験体に有効量で投与することにより、筋肉量の増加が引き起こされ得る。好ましくは、そのような筋肉量の増加は、被験体の健康状態に有益であるか、または他の点で改善するために臨床的に意味がある。例えば、臨床的に意味がある筋肉量の変化により、患者の可動性(mobility)、セルフケア、代謝などが改善され得る。いくつかの実施形態では、筋肉量の増加は、除脂肪筋肉(複数可)の増加である。いくつかの実施形態では、そのような筋肉量の増加は、全身効果であり、したがって、全身または実質的に全身の筋肉が測定可能な効果を示す。他の実施形態では、効果は、筋肉のある特定の群/型に局在する。いくつかの実施形態では、筋組織、例えば除脂肪筋組織の量が少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%または100%増加する。他の実施形態では、筋組織、例えば除脂肪筋組織の量が少なくとも約1〜5%、5〜10%、10〜20%、1〜30%、1〜40%、1〜50%、10〜50%、20〜30%、20〜60%、30〜80%、40〜90%、または50〜100%増加する。そのような筋肉量の増加は、MRIによる横断面積の測定(例えば、前腕横断面)、周径、横隔膜幅(例えば、超音波による)などを含めた任意の好適な公知の方法によって推定または測定され得る。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗体またはその抗原結合性断片を被験体に有効量で投与することにより、筋肉機能の増強が引き起こされ得る。筋肉機能は、非限定的に、力発生、握力(例えば、最大握力)、持久力、筋肉の酸化能力、動的把握持久力(dynamic grip endurance,)などを含めた種々の尺度によって評価され得る。いくつかの実施形態では、血清クレアチニンレベルが、感度が限定されているが、筋肉量を示す検証されたバイオマーカーとして使用される。
いくつかの実施形態では、筋組織の機能が少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%または100%増大する。他の実施形態では、筋組織の機能が少なくとも約1〜5%、5〜10%、10〜20%、1〜30%、1〜40%、1〜50%、10〜50%、20〜30%、20〜60%、30〜80%、40〜90%、または50〜100%増大する。いくつかの実施形態では、筋肉機能の増大は、例えば1から2へ、2から3へ、3から4へ、4から5へ、5から6へ、6から7へ、7から8へ、8から9へ、または9から10への評点の改善を含む。
いくつかの実施形態では、本発明の方法における使用のためのミオスタチン阻害剤、例えば、抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体またはその抗原結合性断片は、例えば脊髄損傷に起因する病変に罹患している被験体における筋組織の量および/または機能を増大し得る。いくつかの実施形態では、被験体は、完全損傷と不完全損傷との間で診断するのが一般に難しい損傷直後の急性脊髄損傷期にある。他の実施形態では、被験体は、完全脊髄損傷と不完全脊髄損傷に違いがあり、継続したリハビリテーションによって回復する可能性がある、亜急性脊髄損傷期にある。さらに別の実施形態では、被験体は、慢性脊髄損傷期にある。慢性SCI期は、損傷の日からおよそ4カ月または6カ月で、患者が回復速度の実質的な低下を示した場合または継続した標準治療の試みにもかかわらずリハビリテーションの試みがプラトーに達した場合に生じる。
いくつかの実施形態では、病変、例えば脊髄損傷に罹患している被験体において病変の下の筋組織の量および/または機能が増大する。他の実施形態では、病変、例えば脊髄損傷に罹患している被験体において病変の上の筋組織の量および/または機能が増大する。いくつかの実施形態では、筋肉は、ヒラメ筋、腓腹筋、二頭筋および三頭筋からなる群より選択される。いくつかの実施形態では、筋組織の量が少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%または100%増加する。他の実施形態では、筋組織の量が少なくとも約1〜5%、5〜10%、10〜20%、1〜30%、1〜40%、1〜50%、10〜50%、20〜30%、20〜60%、30〜80%、40〜90%、または50〜100%増加する。いくつかの実施形態では、筋組織の機能が少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%または100%増加する。他の実施形態では、筋組織の機能が少なくとも約1〜5%、5〜10%、10〜20%、1〜30%、1〜40%、1〜50%、10〜50%、20〜30%、20〜60%、30〜80%、40〜90%、または50〜100%増加する。
いくつかの実施形態では、ヒト被験体、例えば、病変に罹患している被験体において、ミオスタチン阻害剤、例えば、プロ/潜在型ミオスタチンに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片の投与により、自発運動機能が増大する。いくつかの実施形態では、ヒト被験体の自発運動機能が少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%または100%増大する。他の実施形態では、ヒト被験体の自発運動機能が少なくとも約1〜5%、5〜10%、10〜20%、1〜30%、1〜40%、1〜50%、10〜50%、20〜30%、20〜60%、30〜80%、40〜90%、または50〜100%増大する。
いくつかの実施形態では、ヒト被験体、例えば、病変に罹患している被験体において、ミオスタチン阻害剤、例えば、プロ/潜在型ミオスタチンに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片の投与により、運動協調性および平衡が増大する。いくつかの実施形態では、ヒト被験体の運動協調性および平衡が少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%または100%増大する。他の実施形態では、ヒト被験体の運動協調性および平衡が少なくとも約1〜5%、5〜10%、10〜20%、1〜30%、1〜40%、1〜50%、10〜50%、20〜30%、20〜60%、30〜80%、40〜90%、または50〜100%増大する。
別の実施形態では、ヒト被験体、例えば、病変に罹患している被験体において、ミオスタチン阻害剤、例えば、プロ/潜在型ミオスタチンに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片の投与により、筋力が増大する。いくつかの実施形態では、ヒト被験体の筋力が少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%または100%増大する。他の実施形態では、ヒト被験体の筋力が少なくとも約1〜5%、5〜10%、10〜20%、1〜30%、1〜40%、1〜50%、10〜50%、20〜30%、20〜60%、30〜80%、40〜90%、または50〜100%増大する。
いくつかの実施形態では、ミオスタチン阻害剤、例えば、プロ/潜在型ミオスタチンに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片の投与により、患者の機能性の増強に対応する、筋肉機能の臨床的に意味がある変化が引き起こされ得る。いくつかの実施形態では、機能性の増強は、患者の可動性、セルフケア、代謝などの改善を含む。いくつかの実施形態では、ミオスタチン阻害剤、例えば、プロ/潜在型ミオスタチンに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片を有効量で投与することにより、損傷、外科手術および他の医学的手技などの状態からの回復が容易になるまたは加速される。適切なそのような状態は、神経障害に関連する状態(損傷に起因するものであるか外科的または他の臨床的手技に起因するものであるかにかかわらず)を含み得る。
例えば、好適な被験体は、概して健康な個体、例えば、i)筋肉機能に影響を与える神経障害を伴う持続的な急性損傷を有する患者;ii)意図されたものではない神経損傷(例えば、運動ニューロン損傷)を引き起こす可能性がある外科手技(治療的または矯正的)を受ける予定の患者;iii)意図されたものではない筋機能障害を引き起こした外科手技を受けた患者;iv)特定の筋肉または筋肉群の固定化(例えば、ギプス固定など)を伴う処置を受ける患者;v)人工呼吸(例えば、急性損傷の結果として)の状態にある患者を含む。本明細書に記載のミオスタチン阻害剤の投与により、そのような患者における回復が加速され得る。いくつかの実施形態では、そのような投与は予防的であってよい。例えば、神経障害および付随する筋機能障害を引き起こす可能性がある外科手技を受ける前またはその直後に、筋機能障害を防止するために抗体を投与することができる。防止は、そのような機能障害の重症度を緩和または軽減することを含む。これらの実施形態では、投与は、例えば損傷、外科手術などの影響を受けた領域の部位またはその付近への局所投与であってよい。
B.ヒト被験体の代謝率に対する効果
ミオスタチン阻害剤、例えば、プロ/潜在型ミオスタチンに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片の投与により、ヒト被験体の代謝率が上昇する。いくつかの実施形態では、そのようなミオスタチン阻害剤、例えば、抗体またはその抗原結合性断片を有効量で投与することにより、被験体における基礎代謝率が上昇し得る。代謝率は、当技術分野で公知の任意の方法によって、例えば、酸素インプットおよび二酸化炭素アウトプットを調べることによって、または本出願の実施例11により実証される間接熱量測定法によって算出され得る。いくつかの実施形態では、代謝率が少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%または100%上昇する。他の実施形態では、代謝率が少なくとも約1〜5%、5〜10%、10〜20%、1〜30%、1〜40%、1〜50%、10〜50%、20〜30%、20〜60%、30〜80%、40〜90%、または50〜100%上昇する。
C.ヒト被験体のインスリン感受性に対する効果
ミオスタチン阻害剤、例えば、プロ/潜在型ミオスタチンに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片の投与により、ヒト被験体のインスリン感受性が増大する。インスリン感受性を測定するための方法は、当技術分野で公知であり、例えば、グルコース負荷試験、および空腹時インスリンまたはグルコース検査である。グルコース負荷試験中、絶食中の患者は75グラムの経口用量のグルコースを摂取し、次いで、血中グルコースレベルをその後の2時間にわたって測定する。血糖が7.8mmol/L(140mg/dl)未満であれば正常とみなされ、血糖が7.8mmol/Lから11.0mmol/Lの間(140〜197mg/dl)であれば耐糖能障害(IGT)とみなされ、血糖が11.1mmol/L(200mg/dl)を超えるまたはこれと等しければ糖尿病とみなされる。空腹時インスリン検査に関しては、空腹時血清インスリンレベルが25mIU/Lまたは174pmol/Lを超えるレベルであればインスリン抵抗性とみなされる。いくつかの実施形態では、代謝率が少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%または100%上昇する。他の実施形態では、代謝率が少なくとも約1〜5%、5〜10%、10〜20%、1〜30%、1〜40%、1〜50%、10〜50%、20〜30%、20〜60%、30〜80%、40〜90%、または50〜100%上昇する。
D.ヒト被験体における脂肪組織のレベルに対する効果
ミオスタチン阻害剤、例えば、プロ/潜在型ミオスタチンに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片の投与は、ヒト被験体における脂肪組織のレベルに影響を与える。本明細書において使用される場合、用語「脂肪組織」は、脂肪を貯蔵する結合組織を含めた脂肪を指す。脂肪組織は前脂肪細胞に由来する。その主要な役割は、エネルギーを脂質の形態で貯蔵することであるが、身体への衝撃を和らげかつ隔離も行う。脂肪組織の2つの型は、エネルギーを貯蔵する白色脂肪組織(WAT)、および体熱を発生させる褐色脂肪組織(BAT)である。
褐色脂肪組織(BAT)は、低温または過剰な摂食に応答した化学エネルギー放散において機能することが公知であり、また、エネルギー平衡を調節する能力も有する。褐色脂肪組織の活性化によりヒトにおけるグルコース恒常性およびインスリン感受性が改善されることが示されており、これにより、インスリン機能の欠陥を有するあらゆる人にBAT活性化が有益であることが示唆される(Stanfordら、J Clin Invest.、2013年、123巻(1号):215〜223頁)。
ベージュ脂肪組織は、ベージュ化(beiging)としても公知である、WATの褐変の結果として生じる。これは、WAT貯蔵所内の脂肪細胞にBATの特徴が発生すると起こる。ベージュ脂肪細胞は、多胞性の外観(いくつかの脂肪滴を含有する)を取り、脱共役タンパク質1(UCP1)の発現を増大させる。そうすることで、これらの通常はエネルギーを蓄える白色脂肪細胞がエネルギーを放出する脂肪細胞になる(Harmsら、Nature Medicine.、2013年、19巻(10号):1252〜63頁)。
内臓脂肪または腹部脂肪(臓器脂肪または腹腔内脂肪としても公知)は、腹腔の内側に位置し、臓器(胃、肝臓、腸、腎臓など)の間に詰まっている。内臓脂肪は、皮膚の下の皮下脂肪および骨格筋内に散在する筋肉内脂肪とは異なる。大腿および臀部のような下半身の脂肪は皮下脂肪であり、一貫して間隔のあいた組織ではなく、一方、腹部の脂肪は大部分が内臓脂肪であり、半流動性である。過剰な内臓脂肪は、腹部が過剰に突出している、中心性肥満、または「腹の脂肪(belly fat)」として公知であり、ボディ体積指数(Body Volume Index)(BVI)などの新しい開発物が腹部体積および腹部脂肪を測定するために特別に設計されている。過剰な内臓脂肪はまた、2型糖尿病、インスリン抵抗性、炎症性疾患および他の肥満に関連する疾患にも関連付けられる(Mokdadら、JAMA: The Journal of the American Medical Association.、2001年、289巻(1号):76〜9頁)。
脂肪組織の量は、当業者に公知の任意の方法によって決定され得る。例えば、脂肪組織は、本出願の実施例11において実証されている二重エネルギーX線吸光光度法(DXA)によって測定され得る。
ミオスタチン阻害剤、例えば、プロ/潜在型ミオスタチンに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片の投与により、ヒト被験体における褐色脂肪組織のレベルおよび/またはベージュ脂肪組織のレベルが上昇する。他方では、ミオスタチン阻害剤、例えば、抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体またはその抗原結合性部分の投与により、ヒト被験体における白色脂肪組織および内臓脂肪組織のレベルが低下する。
いくつかの実施形態では、褐色脂肪組織またはベージュ脂肪組織のレベルが少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%または100%上昇する。他の実施形態では、褐色脂肪組織またはベージュ脂肪組織のレベルが少なくとも約1〜5%、5〜10%、10〜20%、1〜30%、1〜40%、1〜50%、10〜50%、20〜30%、20〜60%、30〜80%、40〜90%、または50〜100%上昇する。
いくつかの実施形態では、白色脂肪組織または内臓脂肪組織のレベルが少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%または100%低下する。他の実施形態では、白色脂肪組織または内臓脂肪組織のレベルが少なくとも約1〜5%、5〜10%、10〜20%、1〜30%、1〜40%、1〜50%、10〜50%、20〜30%、20〜60%、30〜80%、40〜90%、または50〜100%低下する。
E.ヒト被験体における脂肪組織対筋組織の比率に対する効果
ミオスタチン阻害剤、例えば、プロ/潜在型ミオスタチンに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片の投与により、ヒト被験体における脂肪組織対筋組織の比率が低下する。いくつかの実施形態では、脂肪組織対筋組織の比率が少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%または100%低下する。他の実施形態では、脂肪組織対筋組織の比率が少なくとも約1〜5%、5〜10%、10〜20%、1〜30%、1〜40%、1〜50%、10〜50%、20〜30%、20〜60%、30〜80%、40〜90%、または50〜100%低下する。
F.ヒト被験体におけるグルコースの取り込みに対する効果
ミオスタチン阻害剤、例えば、プロ/潜在型ミオスタチンに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片の投与は、ヒト被験体における組織によるグルコースの取り込みに影響を与える。いくつかの実施形態では、筋組織によるグルコースの取り込みが増加する。例えば、筋組織によるグルコースの取り込みが少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%または100%増加する。いくつかの実施形態では、筋組織によるグルコースの取り込みが少なくとも約1〜5%、5〜10%、10〜20%、1〜30%、1〜40%、1〜50%、10〜50%、20〜30%、20〜60%、30〜80%、40〜90%、または50〜100%増加する。
他の実施形態では、白色脂肪組織、肝組織および血管組織によるグルコースの取り込みが減少する。いくつかの実施形態では、白色脂肪組織、肝組織および血管組織によるグルコースの取り込みが少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%または100%減少する。他の実施形態では、白色脂肪組織、肝組織および血管組織によるグルコースの取り込みが少なくとも約1〜5%、5〜10%、10〜20%、1〜30%、1〜40%、1〜50%、10〜50%、20〜30%、20〜60%、30〜80%、40〜90%、または50〜100%減少する。
G.ヒト被験体におけるタンパク質の筋肉での異化および/またはアミノ酸の筋肉からの放出に対する効果
ミオスタチン阻害剤、例えば、プロ/潜在型ミオスタチンに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片の投与により、ヒト被験体におけるタンパク質の筋肉での異化および/またはアミノ酸の筋肉からの放出が減少する。いくつかの実施形態では、タンパク質の筋肉での異化および/またはアミノ酸の筋肉からの放出が少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%または100%減少する。他の実施形態では、タンパク質の筋肉での異化および/またはアミノ酸の筋肉からの放出が少なくとも約1〜5%、5〜10%、10〜20%、1〜30%、1〜40%、1〜50%、10〜50%、20〜30%、20〜60%、30〜80%、40〜90%、または50〜100%減少する。
H.ヒト被験体におけるインスリン依存性血糖調節に対する効果
ミオスタチン阻害剤、例えば、プロ/潜在型ミオスタチンに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片の投与により、ヒト被験体におけるインスリン依存性血糖調節が増大する。いくつかの実施形態では、インスリン依存性血糖調節が少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%または100%増大する。他の実施形態では、インスリン依存性血糖調節が少なくとも約1〜5%、5〜10%、10〜20%、1〜30%、1〜40%、1〜50%、10〜50%、20〜30%、20〜60%、30〜80%、40〜90%、または50〜100%増大する。
I.ヒト被験体における筋肉内脂肪浸潤に対する効果
ミオスタチン阻害剤、例えば、プロ/潜在型ミオスタチンに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片の投与により、ヒト被験体における筋肉内脂肪浸潤が減少する。いくつかの実施形態では、筋肉内脂肪浸潤が少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%または100%減少する。他の実施形態では、筋肉内脂肪浸潤が少なくとも約1〜5%、5〜10%、10〜20%、1〜30%、1〜40%、1〜50%、10〜50%、20〜30%、20〜60%、30〜80%、40〜90%、または50〜100%減少する。
J.ヒト被験体の生活の質に対する効果
SCI患者などの重症または慢性の状態を有する患者における生活の質の評価は、身体的、精神的、社会的および他のパラメータの種々の態様を評価するための総合的な手法を伴い得る。一般に、より高い生活の質の程度は、支援技術の利用可能性;地域社会への復帰;下肢の機能性および歩行および/または車いす(wheeled mobility);精神健康;神経学的障害および自律神経障害の重症度;疼痛管理;機能的自立およびセルフケア;上肢の強度(upper limb strength);および、痙縮の調節などの因子に関連する。プロ/潜在型ミオスタチンに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片の投与により、ヒト被験体の生活の質が、標準化された生活の質の試験/システムによって測定される臨床的に意味がある改善が達成されるように増大する。以下を含め、患者における生活の質を評価するためのいくつもの好適な試験が当技術分野で公知である:Incontinence Quality of Life Questionnaire(I−QOL);Life Satisfaction Questionnaire(LISAT−9、LISAT−11);Quality of Life Index(QLI)− SCI Version;Quality of Life Profile for Adults with Physical Disabilities(QOLP−PD);Quality of Well Being(QWB)およびQuality of Well Being−Self−Administered(QWB−SA);Qualiveen;Satisfaction with Life Scale(SWLS、Deiner Scale);Short Form 36(SF−36);Sickness Impact Profile 68(SIP 68);ならびに、World Health Organization Quality of Life−BREF(WHOQOL−BREF)。
いくつかの実施形態では、生活の質は、検証されたスコアリングシステムであるSF−36 Quality of Life Scoring Systemに従って評価され、そこでは、8点の変化が臨床的に意味があるものとみなされる。一般には、SCI患者に関しては、値は、50台下位である。いくつかの実施形態では、プロ/潜在型ミオスタチンに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片を有効量で投与することにより、標準化された生活の質の試験スコアにおける臨床的に意味がある改善がもたらされる。本明細書で使用される場合、用語「臨床的に意味がある改善」は、標準レベルに対する有意な改善を指す。いくつかの実施形態では、SCI患者のSF−36 Quality of Lifeスコアは、本明細書に記載の抗体またはその抗原結合性断片を有効量で用いた処置後に、処置前の患者のスコアと比較して少なくとも8点増加する。いくつかの実施形態では、患者は、SF−36 Quality of Life Testによって評価してより高いスコア、例えば、SF−36 Quality of Life Scoring Systemのスコアの少なくとも9点、10点、11点、12点、13点、14点、15点、16点、17点、18点、19点、20点、30点、40点、または50点の増加を達成する。他の実施形態では、SF−36 Quality of Life Scoring Systemのスコアが少なくとも約8〜10、10〜15、15〜20、20〜30、30〜40、40〜50、8〜20、8〜30、8〜40、または8〜50増加する。
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されているミオスタチンシグナル伝達の阻害剤を用いた処置前および処置後の患者の生活の質を評価するためにSCI Neurological Quality of Life Testが使用される。この試験の利点は、i)管理が容易であること;ii)身体機能と精神健康の両方が評価されること;および、iii)いくつもの臨床的適応に対して高度に検証されていることを含む。
K.ヒト被験体における筋肉喪失または筋萎縮の防止に対する効果
ミオスタチン阻害剤、例えば、プロ/潜在型ミオスタチンに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片を有効量で投与することにより、筋肉喪失および/または萎縮が発症するリスクがあるヒト被験体における筋肉喪失または筋萎縮が防止される。いくつかの実施形態では、筋肉喪失または筋萎縮が少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%または100%低減または防止される。他の実施形態では、筋肉喪失または筋萎縮が少なくとも約1〜5%、5〜10%、10〜20%、1〜30%、1〜40%、1〜50%、10〜50%、20〜30%、20〜60%、30〜80%、40〜90%、または50〜100%低減または防止される。
いくつかの実施形態では、好適な被験体は、萎縮が発症していないが、萎縮が発症するリスクがあると考えられる被験体である。いくつかの実施形態では、被験体は、運動ニューロン機能を損なう神経学的欠損に関連する疾患または状態を有する。いくつかの実施形態では、そのような状態は筋ジストロフィーまたは萎縮によって引き起こされる。いくつかの実施形態では、神経学的欠損は、神経損傷によって引き起こされる。いくつかの実施形態では、神経損傷は、影響を受けた筋肉における機能の部分的な欠陥を引き起こす運動ニューロンの部分的な脱神経を伴う。いくつかの実施形態では、そのような状態は、SCIによって引き起こされる。いくつかの実施形態では、SCIの被験体は、SCIの急性期または亜急性期にある(例えば、まだ慢性期には達していない)。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のミオスタチンシグナル伝達の阻害剤を有効量で含む組成物を運動ニューロンの部分的な脱神経に関連する筋萎縮が発症するリスクがある患者の集団に投与すると、組成物により、i)患者集団の統計学的に有意な割合で筋萎縮の顕在化または増悪が防止される、または、ii)患者集団の統計学的に有意な割合で筋萎縮の重症度が低下する。
ミオスタチン阻害剤、例えば、本明細書に記載の抗体またはその抗原結合性断片を使用することによる筋肉喪失または筋萎縮の防止は、影響を受けた筋肉が関与する運動機能を評価するための任意の好適な方法によって容易にモニターまたは評価され得る。
いくつかの実施形態では、そのような抗体を有効量で投与することにより、影響を受けた肢における早期発症型軸索性多発ニューロパチーも防止されるまたは低減する。
L.被験体における代謝疾患の発症の防止に対する効果
ミオスタチン阻害剤、例えば、プロ/潜在型ミオスタチンに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片を有効量で投与することにより、被験体、例えば、ヒト被験体における代謝疾患の発症が防止される。いくつかの実施形態では、代謝疾患の発症は、少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%または100%減少する。他の実施形態では、代謝疾患の発症が少なくとも約1〜5%、5〜10%、10〜20%、1〜30%、1〜40%、1〜50%、10〜50%、20〜30%、20〜60%、30〜80%、40〜90%、または50〜100%減少する。
いくつかの実施形態では、好適な被験体は、代謝疾患が完全には発症していないが、そのような状態が発症するリスクがあると考えられる被験体である。いくつかの実施形態では、被験体は、筋機能障害に関連する疾患または状態を有する。いくつかの実施形態では、筋機能障害は、影響を受けた筋肉における機能の部分的な欠陥を引き起こす運動ニューロンの部分的な脱神経に関連する。いくつかの実施形態では、そのような状態は筋ジストロフィーまたは萎縮によって引き起こされる。いくつかの実施形態では、そのような状態は、SCIによって引き起こされる。いくつかの実施形態では、SCIの被験体は、SCIの急性期または亜急性期にある(例えば、まだ慢性期には達していない)。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のミオスタチンシグナル伝達の阻害剤を有効量で含む組成物を、筋機能障害に関連する代謝障害が発症するリスクがある患者の集団に投与すると、組成物により、i)患者集団の統計学的に有意な割合での代謝障害の顕在化または増悪が防止される、または、ii)患者集団の統計学的に有意な割合で代謝疾患の重症度が低下する。
いくつかの実施形態では、代謝に対する効果は、インスリン抵抗性、脂質パネル/マーカー(例えば、レプチン)、これらに限定されないが、IL−6、TNF、CRP、血漿総抗酸化状態、脂質の酸化および赤血球グルタチオンペルオキシダーゼ活性を含めた炎症マーカーおよび酸化ストレスマーカーによってモニターまたは測定され得る。
ミオスタチン阻害剤、例えば、抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体およびその抗原結合性断片の使用
医薬組成物
ミオスタチン阻害剤、例えば、本明細書に記載の抗体またはその抗原結合性断片は、ヒトまたは非ヒト被験体における投与に好適な医薬組成物に製剤化され得る。そのような医薬組成物は、治療的使用、または予防的使用を目的とし得る。ミオスタチン阻害剤、例えば、抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体の1つまたは複数は、in vivoでのミオスタチンシグナル伝達の低減が有益である可能性がある患者に投与するための医薬組成物を形成するために、緩衝液を含めた薬学的に許容される担体(賦形剤)と混合され得る。「薬学的に許容される」とは、担体が組成物の活性成分と適合性でなければならず(および、好ましくは、活性成分を安定化でき)、処置される被験体に有害でないことを意味する。緩衝液を含めた薬学的に許容される賦形剤(担体)の例は当業者には明らかであり、以前に記載されている。例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy 第20版(2000年)、Lippincott Williams and Wilkins、K. E. Hoover編を参照されたい。許容される担体、賦形剤または安定化剤は、使用される投薬量および濃度でレシピエントに無毒性であり、リン酸塩、クエン酸塩、または他の有機酸などの緩衝剤;アルコルビン酸およびメチオニンを含む抗酸化物質;保存剤(オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリドなど;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルもしくはベンジルアルコール;メチルもしくはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3−ペンタノール;およびm−クレゾール);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチンもしくは免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニンもしくはリシンなどのアミノ酸;単糖類、二糖類およびグルコース、マンノースもしくはデキストランを含む他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロースもしくはソルビトールなどの糖;ナトリウムなどの塩形成対イオン;金属錯体(例えばZnタンパク質錯体);ならびに/またはTWEEN(商標)、PLURONICS(商標)もしくはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤を含んでよい。薬学的に許容される賦形剤はさらに本明細書に記載される。
一実施例では、本明細書に記載の医薬組成物は、ミオスタチン阻害剤を1つより多く、例えば、標的抗原の異なるエピトープ/残基を認識する抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体またはその抗原結合性部分を1つより多く含有する。
一部の実施例では、本明細書に記載の医薬組成物は、Epsteinら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、82巻:3688頁(1985年);Hwangら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、77巻:4030頁(1980年);ならびに米国特許第4,485,045号および同第4,544,545号に記載されているものなどの任意の好適な方法によって調製され得る、ミオスタチン阻害剤、例えば、抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体またはその抗原結合性部分を含有するリポソームなどの、エマルジョンに基づくまたは脂質に基づく製剤を含む。循環時間が増強されたリポソームは米国特許第5,013,556号に開示されている。特に有用なリポソームは、ホスファチジルコリン、コレステロールおよびPEG誘導体化ホスファチジルエタノールアミン(PEG−PE)を含む脂質組成物での逆相蒸発法によって生成され得る。リポソームは、望ましい直径を有するリポソームを得るために規定のポアサイズのフィルターを通して押し出される。
ミオスタチン阻害剤、例えば、抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体またはその抗原結合性部分は、コロイド薬物送達系(例えばリポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子およびナノカプセル)またはマクロエマルジョン中の、例えばコアセルベーション技術によってまたは界面重合によって調製されたマイクロカプセル、例えばそれぞれヒドロキシメチルセロースもしくはゼラチンマイクロカプセルおよびポリ−(メチルメタクリレート(methacylate))マイクロカプセルにも捕捉され得る。例示的技術は、以前に記載されており、例えばRemington、The Science and Practice of Pharmacy 20th Ed. Mack Publishing(2000年)を参照されたい。
他の例では本明細書に記載の医薬組成物は、徐放性形式で製剤化されてよい。徐放性調製物の好適な例は、抗体またはその抗原結合性部分を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリクスを含み、マトリクスは成形品、例えばフィルムまたはマイクロカプセルの形態である。徐放性マトリクスの例は、ポリエステル、ハイドロゲル(例えばポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)または、ポリ(ビニルアルコール(v nylalcohol))、ポリラクチド乳酸(米国特許第3,773,919号)、L−グルタミン酸と7エチル−L−グルタメートとの共重合体、非分解性エチレン酢酸ビニル、LUPRON DEPOT(商標)(乳酸グリコール酸共重合体および酢酸ロイプロリドから構成される注射可能なミクロスフェア)などの分解性乳酸グリコール酸共重合体、スクロースアセテートイソブチレートおよびポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸を含む。
in vivo投与のために使用される医薬組成物は、無菌でなければならない。これは、例えば無菌濾過膜を通じた濾過によって容易に達成される。治療用抗体組成物は、一般に無菌アクセスポートを有する容器、例えば皮下注射針によって貫通できるストッパーを有する静脈内用溶液バッグまたはバイアルに入れられる。
本明細書に記載の医薬組成物は、経口、非経口もしくは直腸投与または吸入もしくは吹送法による投与のための錠剤、丸剤、カプセル、粉末、顆粒、溶液もしくは懸濁物または座薬などの単位投与形態であってよい。
錠剤などの固体組成物を調製するために主要活性成分は、医薬用担体、例えばコーンデンプン、ラクトース、スクロース、ソルビトール、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、リン酸二カルシウムもしくはガムなどの従来の錠剤化成分、および本開示の化合物の均一な混合物を含有する固体予備製剤組成物を形成するための他の医薬用希釈剤、例えば水、または無毒性の薬学的に許容されるそれらの塩と混合されてよい。これらの予備製剤組成物を均一と称する場合、活性成分が組成物全体に均質に分散されており、それにより組成物が錠剤、丸剤およびカプセルなどの同等に有効な単位投与形態に容易に分割され得ることを意味する。この固体予備製剤組成物は、次いで本開示の活性成分0.1mgから約500mgを含有する上に記載の種類の単位投与形態に分割される。新規組成物の錠剤または丸剤は、長期作用の利点をもたらす投与形態を提供するためにコーティングまたは他の方法で配合されてよい。例えば錠剤または丸剤は、内剤(inner dosage)および外剤(outer dosage)構成成分を含んでよく、後者は前者を覆うエンベロープの形態にある。2個の構成成分は、胃での崩壊に抵抗するために役立ち、内部の構成成分が十二指腸へインタクトなまま通過することまたは放出を遅らせることを可能にする腸溶性層(enteric layer)によって分離されてよい。種々の材料がそのような腸溶性層またはコーティングのために使用されてよく、そのような材料はいくつかのポリマー酸ならびにポリマー酸とセラック、セチルアルコールおよび酢酸セルロースなどの材料との混合物を含む。
好適な表面活性剤は、具体的にはポリオキシエチレンソルビタン(例えばTween(商標)20、40、60、80または85)および他のソルビタン(例えばSpan(商標)20、40、60、80または85)などの非イオン性剤を含む。表面活性剤を含む組成物は、好都合には0.05から5%の表面活性剤を含み、0.1から2.5%であってよい。必要に応じて他の成分、例えばマンニトールまたは他の薬学的に許容されるビヒクルが添加されてよいことは理解される。
好適なエマルジョンは、Intralipid(商標)、Liposyn(商標)、Infonutrol(商標)、Lipofundin(商標)およびLipiphysan(商標)などの商業的に入手できる脂肪エマルジョンを使用して調製されてよい。活性成分は、予め混合されたエマルジョン組成物に溶解されてよく、または代替的に油(例えばダイズ油、ベニバナ油、綿実油、ゴマ油、コーン油もしくはアーモンド油)およびリン脂質(例えば卵リン脂質、ダイズリン脂質もしくはダイズレシチン)と水とを混合して形成されたエマルジョンに溶解されてもよい。他の成分、例えばグリセロールまたはグルコースが、エマルジョンの張度を調整するために加えられてよいことは理解される。好適なエマルジョンは、典型的には20%まで、例えば5から20%の油を含有する。
エマルジョン組成物は、抗プロミオスタチン抗体をIntralipid(商標)とまたはその構成成分(ダイズ油、卵リン脂質、グリセロールおよび水)と混合することによって調製されるものであってよい。
吸入または吹送法のための医薬組成物は、薬学的に許容される水性もしくは有機溶媒またはそれらの混合物中の溶液および懸濁物ならびに粉末を含む。液体または固体組成物は、上に記載の好適な薬学的に許容される賦形剤を含有してよい。いくつかの実施形態では組成物は、局所または全身性効果のために経口または経鼻呼吸経路によって投与される。
好ましくは無菌の薬学的に許容される溶媒中の組成物は、ガスの使用によって噴霧されてよい。噴霧される溶液は、噴霧デバイスから直接吸われてよい、または噴霧デバイスはフェイスマスク、テントもしくは間欠的陽圧呼吸器に取り付けられてよい。溶液、懸濁物または粉末組成物は、好ましくは経口または経鼻で適切な様式で製剤を送達するデバイスから投与されてよい。
被験体
本明細書に記載の医薬組成物は、ヒトまたは非ヒト被験体における投与に好適である。したがって、ミオスタチン阻害剤、例えば、本明細書に記載の抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体およびその抗原結合性部分は、ミオスタチンシグナル伝達の低減が有益である可能性がある被験体に投与するための医薬として有用である。いくつかの実施形態では、好適な被験体は、健康であるにもかかわらず筋肉量/機能の増強、ならびに代謝の改善が有益である可能性がある個体を含み得る。いくつかの実施形態では、好適な被験体は、既存の筋肉の状態および/または付随する代謝機能障害を有する。いくつかの実施形態では、適切な被験体は、そのような状態(複数可)が発症するリスクがある。いくつかの実施形態では、好適な被験体は、筋肉/代謝に関する状態を処置するためのものであるが有害作用または毒性が伴う別の治療剤を含む治療を受けている被験体である。
いくつかの実施形態では、好ましい被験体は、以下の基準のうちの少なくとも2つを満たす:i)被験体が運動ニューロンの部分的な脱神経に関連する状態を有する;ii)状態が速筋線維を含有するか、または速筋線維に富む筋肉が関与するものである;ならびに、iii)被験体が同化能を保持する(例えば、一般に、損傷を有する健康な成人)および/もしくは成長期にある(例えば、若年小児など)。
いくつかの実施形態では、そのような医薬は、小児集団、成人集団、および/または高齢者集団における投与に好適である。
ミオスタチン阻害剤、例えば、本明細書に記載の抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体およびその抗原結合性部分を必要とする小児集団は、0カ月齢〜6カ月齢の間、0カ月齢〜12カ月齢の間、0カ月齢〜18カ月齢の間、0カ月齢〜24カ月齢の間、0カ月齢〜36カ月齢の間、0カ月齢〜72カ月齢の間、6カ月齢〜36カ月齢の間、6カ月齢〜36カ月齢の間、6カ月齢〜72カ月齢の間、12カ月齢〜36カ月齢の間、12カ月齢〜72カ月齢の間にわたり得る。いくつかの実施形態では、ミオスタチン阻害剤、例えば、本明細書に記載の抗体または抗原結合性断片を受けるのに好適な、そのような処置が有益である可能性がある小児集団は、0歳〜6歳の間、0歳〜12歳の間、3歳〜12歳の間、0歳〜17歳の間にわたり得る。いくつかの実施形態では、集団の年齢は、少なくとも5歳、例えば、6歳、7歳、8歳、9歳、10歳、11歳、12歳、13歳、14歳、15歳、16歳、または17歳である。いくつかの実施形態では、小児集団は、18歳未満であり得る。いくつかの実施形態では、小児集団は、(a)少なくとも5歳かつ(b)18歳未満であり得る。
ミオスタチン阻害剤、例えば、本明細書に記載の抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体およびその抗原結合性部分を必要とする成人集団の年齢は、少なくとも18歳、例えば、少なくとも19歳、20歳、25歳、30歳、35歳、40歳、45歳、50歳、55歳、60歳または65歳であり得る。いくつかの実施形態では、成人集団は、65歳未満であり得る。いくつかの実施形態では、成人集団は、(a)少なくとも18歳かつ(b)65歳未満であり得る。
ミオスタチン阻害剤、例えば、本明細書に記載の抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体およびその抗原結合性部分を必要とする高齢者集団の年齢は、65歳またはそれよりも上(すなわち、≧65歳)、例えば、少なくとも70歳、75歳または80歳であり得る。
処置が有益である可能性があるヒト被験体は、下記のものなどの、神経シグナル伝達の欠陥に関連する代謝疾患/障害を有するか、それらを発症するリスクがあるか、またはそれらを有すると疑われるヒト患者であり得る。プロ/潜在型ミオスタチン関連疾患または障害を有する被験体は、日常的医学的検査、例えば、臨床検査、臓器機能検査、CTスキャンまたは超音波によって同定され得る。そのような疾患/障害のいずれかを有すると疑われる被験体は、疾患/障害の1つまたは複数の症状を示す場合がある。疾患/障害のリスクがある被験体は、その疾患/障害についてのリスク因子の1つまたは複数を有する被験体であってよい。
本明細書に記載の対照被験体は、試験被験体または被験体の特定の処置または介入の効果を評価するための適切な参照を提供する被験体である。対照被験体は、試験被験体と同様の年齢、人種、性別、体重、身長、および/または他の特徴、またはそれらの任意の組み合わせの被験体であり得る。
いくつかの実施形態では、抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体での処置が必要な被験体を決定するために、ミオスタチンアッセイ(例えば、ミオスタチンELISA)が使用される。ミオスタチンをアッセイするための方法は、どちらも参照により本明細書に組み込まれるLakshmanら、Molecular and Cell Endocrinology、(2009年)302巻:26〜32頁(ミオスタチンELISA)およびBergenら、Skeletal Muscle、(2015年)5巻:21頁(タンデム質量分析を伴う液体クロマトグラフィー)に見出すことができる。
いくつかの実施形態では、被験体における筋肉性能を改善するための方法が提供される。被験体は、筋肉量の減少および/または筋肉機能の低下に関連する状態を有してもよく、それを有さなくてもよく、それを有するリスクがあってもよく、それを有するリスクがなくてもよい。本明細書において使用される場合、用語「筋肉性能」は、一般に、筋肉の収縮する能力および/または力を適用する(例えば、外部の物体に)能力を指す。いくつかの実施形態では、筋肉性能は、筋肉のエネルギーを消費する能力に関し得る。例えば、いくつかの実施形態では、筋肉性能は、筋肉の、筋肉収縮を容易にするためにアデノシン三リン酸(ATP)分子を生成するおよび/または消費する能力に関し得る。いくつかの実施形態では、筋肉性能は、筋肉の、特定の持続時間にわたって繰り返し収縮する能力を指す。いくつかの実施形態では、筋肉性能は、筋肉の、物体に力を適用する、例えば、物体を測定可能な距離にわたって移動させる能力を指す。いくつかの実施形態では、筋肉性能は、筋肉の、特定の持続時間にわたって物体に力を適用する(例えば、物体を特定の持続時間にわたり、測定可能な距離にわたって移動させる)能力を指す。
いくつかの実施形態では、ミオスタチン阻害剤、例えば、本明細書に記載の抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体およびその抗原結合性部分は、処置を必要とする被験体に、プロ/潜在型ミオスタチンの活性ミオスタチンへのタンパク質分解を介した活性化をin vivoで少なくとも20%(例えば、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%またはそれよりも大きく)阻害するのに十分な量で投与される。他の実施形態では、ミオスタチン阻害剤、例えば、抗体またはその抗原結合性部分は、プロ/潜在型ミオスタチンまたは潜在型ミオスタチンレベルを少なくとも20%(例えば、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%またはそれよりも大きく)低下させるのに有効な量で投与される。
いくつかの実施形態では、ミオスタチン阻害剤、例えば、本明細書に記載の抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体またはその抗原結合性部分は、筋肉量の増加が有益になる被験体に投与される。いくつかの実施形態では、ミオスタチン阻害剤、例えば、本明細書に記載の抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体またはその抗原結合性部分は、筋肉対脂肪の比率の増大が有益になる被験体に投与される。いくつかの実施形態では、ミオスタチン阻害剤、例えば、本明細書に記載の抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体またはその抗原結合性部分は、筋肉機能の増大が有益になる被験体に投与される。いくつかの実施形態では、被験体は、筋肉量の減少および/または筋肉機能の低下に関連する状態を有してもよく、それを有さなくてもよく、それを有するリスクがあってもよく、それを有するリスクがなくてもよい。いくつかの実施形態では、被験体は、筋肉量の減少および/または筋肉機能の低下に関連する状態を有するか、またはそれを有するリスクがある。
本発明の方法は、被験体を選択するステップをさらに含む。いくつかの実施形態では、被験体は、筋肉の状態または障害に罹患しているか、またはそれを発症するリスクがある。いくつかの実施形態では、被験体は、代謝障害に罹患しているか、またはそれを発症するリスクがある。いくつかの実施形態では、被験体は、神経シグナル伝達の欠陥に関連する疾患または障害に罹患しているか、またはそれを発症するリスクがある。
投与の経路
本明細書に記載の方法を実施するために、上に記載の医薬組成物の有効量は、処置を必要とする被験体(例えばヒト)に静脈内投与、例えばボーラスとしてまたは一定期間にわたる持続注入によって、筋肉内、腹腔内、脳脊髄内、皮下、関節内、滑液包内、髄腔内、経口、吸入または局所経路によって、などの好適な経路を介して投与され得る。ジェット噴霧器および超音波噴霧器を含む液体製剤のための商業的に入手できる噴霧器は、投与に有用である。液体製剤は、直接噴霧されてよく、凍結乾燥粉末は復元後に噴霧され得る。代替的に抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体は、フルオロカーボン製剤および定量吸入器を使用してエアロゾル化されてよく、または凍結乾燥され粉砕された粉末として吸入されてよい。
医学の当業者に公知である従来の方法は、処置される疾患の種類または疾患の部位に応じて被験体に医薬組成物を投与するために使用されてよい。本組成物は、他の従来の経路を介して投与されてもよく、例えば経口、非経口、吸入スプレーによって、局所的、直腸、鼻、頬側、膣または埋め込みリザーバーを介して投与され得る。本明細書において使用される用語「非経口」は、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、関節内、動脈内、滑液包内、胸骨内、髄腔内、病巣内および頭蓋内注射または注入技術を含む。さらに1、3または6ヵ月デポー注射可能なまたは生分解性材料および方法を使用するなどの投与の注射可能なデポー経路を介して被験体に投与されてもよい。
注射可能な組成物は、植物油、ジメチルアセトアミド(dimethylactamide)、ジメチルホルムアミド(dimethyformamide)、乳酸エチル、炭酸エチル、イソプロピルミリステート、エタノールおよびポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)などの種々の担体を含有してよい。静脈内注射用に水溶性抗体は、抗体および生理学的に許容される賦形剤を含有する医薬用製剤が注入される点滴方法によって投与されてよい。生理学的に許容される賦形剤は、例えば5%デキストロース、0.9%生理食塩水、リンゲル液または他の好適な賦形剤を含んでよい。筋肉内調製物、例えば抗体の好適な可溶性塩形態の無菌製剤は、注射用水、0.9%生理食塩水または5%グルコース溶液などの医薬用賦形剤に溶解され、投与されてよい。
一実施形態では、ミオスタチン阻害剤、例えば、抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体またはその抗原結合性部分は、部位特異的または標的化局所送達技術を介して投与される。部位特異的または標的化局所送達技術の例は、ミオスタチン阻害剤、例えば、抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体またはその抗原結合性部分の種々の埋め込み可能なデポー供給源、または注入カテーテル、留置カテーテルもしくは針カテーテルなどの局所送達カテーテル、合成移植片、外膜ラップ、シャントおよびステントまたは他の埋め込み可能なデバイス、部位特異的担体、直接注射、または直接適用を含む。例えばPCT公開第WO00/53211号および米国特許第5,981,568号を参照されたい。
本明細書に記載の方法において使用される特定の投与レジメン、例えば用量、タイミングおよび反復は、特定の被験体およびその被験体の医療歴に依存する。
ミオパチーを伴う疾患/障害に対する処置の効能は、任意の好適な方法を使用して評価され得る。例えばミオパチーを伴う疾患/障害に対する処置の効能は、筋脱力を評価すること(例えば脱力のパターンおよび重症度を評価すること)、筋電図検査、血液化学を評価すること(例えば電解質を評価する、内分泌的原因を評価すること、クレアチニンキナーゼレベルを測定すること、赤血球沈降速度を決定することおよび抗核抗体アッセイを実施すること)、ならびに生検を評価すること(例えば組織学的、組織化学的、電子顕微鏡、生化学および遺伝子解析によって)によって評価され得る。
「有効量」は、本明細書において使用される場合、単独または1つまたは複数の他の活性剤との組み合わせのいずれかで、被験体に治療効果を付与するために必要な各活性剤の量を指す。例えば、有効量は、生物学的効果、例えば、筋肉量もしくは筋線維直径の増加、筋線維型の切り替え、筋肉によって生成される力の量の増加、被験体における筋組織の量および/もしくは機能の増大;被験体の代謝率の上昇;被験体のインスリン感受性の増大;被験体における褐色脂肪組織のレベルの上昇;被験体におけるベージュ脂肪組織のレベルの上昇;被験体における白色脂肪組織のレベルの低下;被験体における内臓脂肪組織のレベルの低下;被験体における脂肪組織対筋組織の比率の低下;被験体における褐色脂肪組織、ベージュ脂肪組織、または筋組織によるグルコースの取り込みの増加;白色脂肪組織もしくは肝組織によるグルコースの取り込みの減少;被験体におけるタンパク質の筋肉での異化および/もしくはアミノ酸の筋肉からの放出の減少;被験体におけるインスリン依存性血糖調節の増大;または被験体における筋肉内脂肪浸潤の減少;もしくは臨床的に有意な転帰、例えば、損傷後に身体的課題を実施する能力の部分的なもしくは完全な回復;SF−36 Quality of Life Scoring Systemなどの標準化システムによって評価される、臨床的に意味がある生活の質の改善;被験体における筋肉喪失または筋萎縮の防止;ならびに/または被験体における代謝疾患の発症の防止を達成するのに十分なミオスタチン阻害剤、例えば、本開示の抗体またはその抗原結合性断片の量を指す。
当業者によって認識されるとおり、有効量は、処置される特定の状態、状態の重症度、年齢、身体状態、サイズ、性別および体重を含む個々の患者パラメータ、処置の期間、同時に行われている治療(ある場合)の性質、投与の特定の経路ならびに医療関係者の知識および専門的意見内の同様の要因などに応じて変化する。これらの要因は当業者に周知であり、日常的な実験程度で対処され得る。個々の構成成分またはその組み合わせの最大用量、すなわち正当な医学的判断による最高安全用量が使用されることは一般に好ましい。しかし患者が医学的根拠、心理的理由のためにまたは事実上任意の他の理由のためにより低い用量または許容できる用量を主張できることは、当業者によって理解される。
いくつかの実施形態では、標的筋肉中のプロミオスタチンのレベルの上昇に関して、上昇は、プロミオスタチンの対照レベルと比較して少なくとも1倍、1.2倍、1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、または10倍であるか、またはそれを超える(またはこれらの値のいずれかに一括される任意の範囲)。一実施形態では、標的筋肉中のプロミオスタチンのレベルの上昇は、プロミオスタチンの対照レベルと比較して1倍〜3倍、1.2倍〜10倍、2倍〜9倍、3倍〜8倍、4倍〜7倍、2倍〜7倍などの範囲の上昇である。
いくつかの実施形態では、投与するステップの後の標的筋肉中の潜在型ミオスタチンの増加に関して、増加は、投与するステップの後4時間以内、24時間以内、48時間以内、7日以内、14日以内、21日以内、28日以内または30日以内に(または列挙されている持続時間のいずれかに一括される任意の時間の範囲で)検出可能である。一実施形態では、投与するステップの後の標的筋肉中の潜在型ミオスタチンの増加は、投与するステップの後少なくとも5日、7日、14日、21日、28日、または30日(または列挙されている持続時間のいずれかに一括される任意の時間の範囲)にわたって検出可能である。一実施形態では、投与するステップの後の標的筋肉中の潜在型ミオスタチンのレベルの上昇は、投与するステップの前の標的筋肉中の潜在型ミオスタチンのレベルと比較して少なくとも1倍、1.2倍、1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、または10倍であるか、またはそれを超える(またはこれらの値のいずれかに一括される任意の範囲)。一実施形態では、投与するステップの後の標的筋肉中の潜在型ミオスタチンのレベルの上昇は、投与するステップの前の標的筋肉中の潜在型ミオスタチンのレベルと比較して1倍〜3倍、1.2倍〜10倍、2倍〜9倍、3倍〜8倍、4倍〜7倍、2倍〜7倍などの範囲の上昇である。
いくつかの実施形態では、投与するステップの後の循環中の潜在型ミオスタチンの増加に関して、増加は、投与するステップの後4時間以内、24時間以内、48時間以内、7日以内、14日以内、21日以内、28日以内、または30日以内に(または列挙されている持続時間のいずれかに一括される任意の時間の範囲で)検出可能である。一実施形態では、投与するステップの後の循環中の潜在型ミオスタチンの増加は、投与するステップの後少なくとも5日、7日、14日、21日、28日、または30日(または列挙されている持続時間のいずれかに一括される任意の時間の範囲)にわたって検出可能である。一実施形態では、投与するステップの後の循環中の潜在型ミオスタチンのレベルの上昇は、投与するステップの前の循環中の潜在型ミオスタチンのレベルと比較して少なくとも1倍、2倍、3倍、5倍、10倍、15倍、20倍、25倍、30倍、35倍、40倍、45倍、または50倍またはそれを超える(またはこれらの値のいずれかに一括される任意の範囲)。一実施形態では、投与するステップの後の標的筋肉中の潜在型ミオスタチンのレベルの上昇は、投与するステップの前の標的筋肉中の潜在型ミオスタチンのレベルと比較して1倍〜3倍、1.2倍〜10倍、2倍〜9倍、3倍〜8倍、4倍〜7倍、2倍〜7倍などの範囲の上昇である。
いくつかの実施形態では、循環中の潜在型ミオスタチンのレベルの低下に関して、低下は、潜在型ミオスタチンの対照レベルと比較して、多くとも1分の1、1.2分の1、1.5分の1、2分の1、2.5分の1、3分の1、4分の1、5分の1、6分の1、7分の1、8分の1、9分の1、または10分の1あるいはそれよりも小さい(またはこれらの値のいずれかに一括される任意の範囲の)ものである。一実施形態では、循環中の潜在型ミオスタチンのレベルの低下は、潜在型ミオスタチンの対照レベルと比較して1分の1〜3分の1、1.2分の1〜10分の1、2分の1〜9分の1、3分の1〜8分の1、4分の1〜7分の1、2分の1〜7分の1などの範囲の低下である。
上記のとおり、いくつかの実施形態では、ミオスタチン阻害剤、例えば、プロ/潜在型ミオスタチン抗体またはその抗原結合性断片の被験体への投与に関して、有効量は、被験体における標的筋肉の量を対照筋肉量と比較して増加させるのに有効な量である。いくつかの実施形態では、有効量の抗体で処置された筋肉は、有効量の抗体で処置されていない対照筋肉量と比較して少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、少なくとも10%、少なくとも11%、少なくとも12%、少なくとも13%、少なくとも14%、少なくとも15%、少なくとも16%、少なくとも17%、少なくとも18%、少なくとも19%、少なくとも20%など増加する。いくつかの実施形態では、そのような筋肉量の増加は、被験体における選択された筋肉の群または型で達成される。
いくつかの実施形態では、ミオスタチン阻害剤、例えば、プロ/潜在型ミオスタチン抗体またはその抗原結合性断片の被験体への投与に関して、有効量は、被験体における線維型を切り替えるのに有効な量である。いくつかの実施形態では、有効量の抗体により、I型からII型への線維型の切り替えが促進され得る。いくつかの実施形態では、有効量のミオスタチン阻害剤、例えば、抗体またはその抗原結合性部分により、I型からIIB型への線維型の切り替えが促進され得る。いくつかの実施形態では、有効量のミオスタチン阻害剤、例えば、抗体またはその抗原結合性部分により、他の型の線維と比べてII型線維が促進され得る。いくつかの実施形態では、有効量のミオスタチン阻害剤、例えば、抗体またはその抗原結合性部分により、他の型の線維と比べてIIB型線維が促進され得る。いくつかの実施形態では、そのような線維の表現型の切り替えは、全体的な筋肉量の有意な変化を伴わずに起こり得る。他の実施形態では、そのような線維の表現型の切り替えは、全体的な筋肉量の増加と同時に起こり得る。
いくつかの実施形態では、ミオスタチン阻害剤、例えば、プロ/潜在型ミオスタチン抗体またはその抗原結合性断片の被験体への投与に関して、有効量は、被験体における筋線維の直径を対照筋線維と比較して増大させるのに有効な量である。いくつかの実施形態では、筋線維の直径の増大は、対照筋線維と比較して少なくとも1.1倍、少なくとも1.2倍、少なくとも1.3倍、少なくとも1.4倍、少なくとも1.5倍、少なくとも1.6倍、少なくとも1.7倍、少なくとも1.8倍、少なくとも1.9倍、少なくとも2倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍またはそれを超える増大である。いくつかの実施形態では、筋線維の直径の増大は、対照筋線維と比較して1倍〜5倍、2倍〜10倍、1倍〜1.5倍、1倍〜2倍などの範囲の増大である。
いくつかの実施形態では、ミオスタチン阻害剤、例えば、プロ/潜在型ミオスタチン抗体またはその抗原結合性断片の被験体への投与に関して、有効量は、被験体における筋肉対脂肪の比率を対照筋肉量と比較して増大させるのに有効な量である。いくつかの実施形態では、筋肉対脂肪の比率の増大は、対照被験体と比較して少なくとも1.1倍、少なくとも1.2倍、少なくとも1.3倍、少なくとも1.4倍、少なくとも1.5倍、少なくとも1.6倍、少なくとも1.7倍、少なくとも1.8倍、少なくとも1.9倍、少なくとも2倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍またはそれを超える増大である。いくつかの実施形態では、筋肉対脂肪の比率の増大は、対照被験体と比較して1倍〜5倍、2倍〜10倍、1倍〜1.5倍、1倍〜2倍などの範囲の増大である。
いくつかの実施形態では、ミオスタチン阻害剤、例えば、プロ/潜在型ミオスタチン抗体またはその抗原結合性断片の被験体への投与に関して、有効量は、被験体における筋肉内脂肪浸潤を対照筋肉量と比較して減少させるのに有効な量である。いくつかの実施形態では、筋肉内脂肪浸潤の減少は、対照被験体と比較して多くとも1.1分の1、多くとも1.2分の1、多くとも1.3分の1、多くとも1.4分の1、多くとも1.5分の1、多くとも1.6分の1、多くとも1.7分の1、多くとも1.8分の1、多くとも1.9分の1、多くとも2分の1、多くとも4分の1、多くとも5分の1またはそれよりも小さいものとなる減少である。いくつかの実施形態では、筋肉内脂肪浸潤の減少は、対照被験体と比較して1分の1〜5分の1、2分の1〜10分の1、1分の1〜1.5分の1、1分の1〜2分の1などの範囲の減少である。
いくつかの実施形態では、ヒト被験体における筋肉量の低減を防止するおよび/または筋肉量を増加させる方法は、トロイドプロテアーゼによるタンパク質分解を介した成熟ミオスタチンの形成を阻害するミオスタチン阻害剤、例えば、プロ/潜在型ミオスタチン抗体またはその抗原結合性断片を被験体に投与するステップを含む。一実施形態では、トロイドプロテアーゼによるプロミオスタチンまたは潜在型ミオスタチンのタンパク質分解による切断の阻害の結果、筋肉量の漸進的増加がもたらされる。一実施形態では、被験体は、筋肉量の漸進的増加を少なくとも2週間、4週間、6週間、8週間、10週間、12週間、14週間、16週間、18週間、または20週間(またはこれらの値のいずれかに一括される任意の範囲)にわたって示す。いくつかの実施形態では、ヒト被験体における筋肉量の低減を防止するおよび/または筋肉量を増加させる方法は、2回よりも多くの用量を含む、ミオスタチン阻害剤、例えば、プロ/潜在型ミオスタチン抗体またはその抗原結合性断片を被験体に投与するステップを含む。一実施形態では、ミオスタチン阻害剤、例えば、プロ/潜在型ミオスタチン抗体またはその抗原結合性断片を投与するステップは、少なくとも第1の用量および第2の用量を含み、第1の用量および第2の用量は被験体に少なくとも約2週間空けて、4週間空けて、6週間空けて、8週間空けて、または12週間空けて投与される。
いくつかの実施形態では、ミオスタチン阻害剤、例えば、プロ/潜在型ミオスタチン抗体またはその抗原結合性断片の被験体への投与に関して、有効量は、被験体における標的筋肉の機能を対照筋肉機能と比較して増大させるのに有効な量である。いくつかの実施形態では、筋肉機能の増大は、対照筋肉機能と比較して少なくとも1.1倍、少なくとも1.2倍、少なくとも1.3倍、少なくとも1.4倍、少なくとも1.5倍、少なくとも1.6倍、少なくとも1.7倍、少なくとも1.8倍、少なくとも1.9倍、少なくとも2倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍またはそれを超える増大である。いくつかの実施形態では、筋肉機能の増大は、対照筋肉機能と比較して1倍〜5倍、2倍〜10倍、1倍〜1.5倍、1倍〜2倍などの範囲の増大である。
本明細書において使用される場合、用語「対照筋肉量」は、被験体における目標筋肉量に対する条件(例えば、ミオスタチン阻害剤、例えば、プロ/潜在型ミオスタチン抗体またはその抗原結合性断片による処置)の効果を評価するために有用な参照基準を指す。いくつかの実施形態では対照筋肉量は所定の値である。いくつかの実施形態では対照筋肉量は実験的に決定される。いくつかの実施形態では対照筋肉量は、ミオスタチン阻害剤、例えば、プロ/潜在型ミオスタチン抗体またはその抗原結合性断片を投与されなかった被験体における目標筋肉量である。いくつかの実施形態では対照筋肉量は、ミオスタチン阻害剤、例えば、プロ/潜在型ミオスタチン抗体またはその抗原結合性断片を投与されなかった被験体の集団における目標筋肉量(例えば平均量)である。いくつかの実施形態では対照筋肉量は、ミオスタチン阻害剤、例えば、プロ/潜在型ミオスタチン抗体またはその抗原結合性断片を投与される前(例えば直前)の被験体における目標筋肉量である。いくつかの実施形態では対照筋肉量は、ミオスタチン阻害剤、例えば、プロ/潜在型ミオスタチン抗体またはその抗原結合性断片の代わりにプロ/潜在型ミオスタチン抗体またはその抗原結合性断片が指向する抗原に曝露されなかった動物から得られた通常の抗体(例えばプロ/潜在型ミオスタチン抗体と同じアイソタイプの)を投与された被験体における目標筋肉量である。いくつかの実施形態では対照筋肉量は、ミオスタチン阻害剤、例えば、プロ/潜在型ミオスタチン抗体またはその抗原結合性断片の代わりにビヒクル、例えば生理食塩水を投与された被験体における目標筋肉量である。
いくつかの実施形態では、ミオスタチン阻害剤、例えば、プロ/潜在型ミオスタチン抗体またはその抗原結合性断片の被験体への投与の観点から、有効量は対照力発生能力と比較して被験体における目標筋肉の力発生能力(例えば水平潅流浴に適合させた筋肉レバーシステムを用いてin vitroで決定される最大力発生)を増加させるために効果的な量である。いくつかの実施形態では力発生能力の増加は、対照力発生能力と比較して少なくとも1.1倍、少なくとも1.2倍、少なくとも1.3倍、少なくとも1.4倍、少なくとも1.5倍、少なくとも1.6倍、少なくとも1.7倍、少なくとも1.8倍、少なくとも1.9倍、少なくとも2倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍またはそれを超える増加である。いくつかの実施形態では力発生能力の増加は、対照力発生能力と比較して1倍〜5倍、2倍〜10倍、1倍〜1.5倍、1倍〜2倍などの範囲の増加である。
本明細書において使用される場合、用語「対照力発生能力」は、被験体における筋肉の力発生能力に対する条件(例えばプロ/潜在型ミオスタチン抗体またはその抗原結合性断片による処置)の効果を比較するために有用な参照基準を指す。いくつかの実施形態では対照力発生能力は所定の値である。対照力発生能力は実験的に決定される。いくつかの実施形態では対照力発生能力は、ミオスタチン阻害剤、例えば、プロ/潜在型ミオスタチン抗体またはその抗原結合性断片を投与されなかった被験体における目標筋肉の力発生能力である。いくつかの実施形態では対照力発生能力は、ミオスタチン阻害剤、例えば、プロ/潜在型ミオスタチン抗体またはその抗原結合性断片を投与されなかった被験体の集団における目標筋肉の力発生能力(例えば平均力発生能力)である。いくつかの実施形態では対照力発生能力は、ミオスタチン阻害剤、例えば、プロ/潜在型ミオスタチン抗体またはその抗原結合性断片を投与される前(例えば直前)の被験体における目標筋肉の力発生能力である。いくつかの実施形態では対照筋肉力発生能力は、ミオスタチン阻害剤、例えば、プロ/潜在型ミオスタチン抗体の代わりにプロ/潜在型ミオスタチン抗体が指向する抗原に曝露されなかった動物から得られた通常の抗体(例えばプロ/潜在型ミオスタチン抗体と同じアイソタイプの)を投与された被験体における目標筋肉の力発生能力である。いくつかの実施形態では対照力発生能力は、ミオスタチン阻害剤、例えば、プロ/潜在型ミオスタチン抗体またはその抗原結合性断片の代わりにビヒクル、例えば生理食塩水を投与された被験体における目標筋肉の力発生能力である。
いくつかの実施形態では、標的筋肉は、足底屈筋である。いくつかの実施形態では、標的筋肉は、2型線維を含有する筋肉である。いくつかの実施形態では、標的筋肉は、高速酸化線維または高速解糖線維を含有する筋肉である。いくつかの実施形態では、標的筋肉は、IIB型線維を含有する筋肉である。いくつかの実施形態では、ミオスタチン阻害剤、例えば、プロ/潜在型ミオスタチン抗体またはその抗原結合性断片の投与の結果、IIB型線維の横断面積が投与するステップの前の横断面積と比較して少なくとも1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、または50%(またはこれらの値のいずれかに一括される任意の範囲)増大する。
投薬量
半減期などの経験的検討事項は、一般に投薬量の決定に寄与する。例えばヒト化抗体または完全ヒト抗体などのヒト免疫系に適合性である抗体およびその抗原結合性部分は、抗体の半減期を延長し、かつ宿主の免疫系によって抗体が攻撃されることを防ぐために使用されてよい。投与の頻度は、治療の経過にわたって決定および調整されてよく、一般に、必ずではないが、ミオパチーを伴う疾患/障害の処置および/または抑制および/または回復および/または遅延に基づく。代替的に、ミオスタチン阻害剤、例えば、抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体またはその抗原結合性部分の徐放性持続的放出(sustained continuous release)製剤も適切である場合がある。徐放を達成するための種々の製剤およびデバイスは、当業者に明らかであり、本開示の範囲内である。
一例では本明細書に記載のミオスタチン阻害剤、例えば、抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体またはその抗原結合性断片についての投薬量は、ミオスタチン阻害剤、例えば、抗体またはその抗原結合性断片の1回または複数回の投与を与えられた個体において経験的に決定され得る。個体は、漸増する投薬量のアンタゴニストを与えられる。アンタゴニストの効能を評価するために、疾患/障害の指標が追跡されてよい。
一般に、本明細書に記載した抗体またはその抗原結合性断片のいずれの投与についても、初回の候補用量は約2mg/kgであってよい。本開示の目的のため、典型的な日用量は上述の要素に応じて約0.1μg/kg〜3μg/kg〜30μg/kg〜300μg/kg〜3mg/kg〜30mg/kg〜100mg/kgまたはそれを超えるいずれかの範囲でよい。数日間またはそれよりも長い期間にわたる繰り返し投与のためには、病状に応じて、所望の症状の抑制が起こるまで、またはプロ/潜在型ミオスタチンに伴う疾患もしくは障害またはその症状を緩和するために十分な治療レベルが達成されるまで、処置を持続する。例示的な投与レジメンは、約2mg/kgの初回用量、続いて毎週の抗体またはその抗原結合性断片の約1mg/kgの維持用量、または続いて1週おきの約1mg/kgの維持用量の投与を含む。しかし、臨床医が達成したい薬力学的減衰のパターンに応じて他の投与レジメンも有用である。例えば、週1〜4回の投与が意図される。いくつかの実施形態では約3μg/mg〜約2mg/kg(例えば約3μg/mg、約10μg/mg、約30μg/mg、約100μg/mg、約300μg/mg、約1mg/kg、および約2mg/kg)が用いられる。いくつかの実施形態では、投与頻度は毎週、2週ごと、4週ごと、5週ごと、6週ごと、7週ごと、8週ごと9週ごと、もしくは10週ごとに1回、または毎月、2か月ごと、3か月ごと、4か月ごと、5か月ごと、6か月ごと、8か月ごと、10か月ごと、毎年、またはそれよりも長い期間に1回である。この治療の進行は従来の手技およびアッセイによって容易にモニターできる。投与レジメン(用いる抗体を含む)は時と共に変更してよい。
いくつかの実施形態では、ミオスタチン阻害剤、例えば、本明細書に記載の抗体またはその抗原結合性断片のいずれかの投与は、単回用量を含む。いくつかの実施形態では、ミオスタチン阻害剤、例えば、本明細書に記載の抗体またはその抗原結合性断片のいずれかの投与は、複数回用量(例えば、少なくとも2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、または10回の用量)を含む。投与するステップは、2回よりも多くの用量を含んでよい。いくつかの実施形態では、投与は、治療有効量のミオスタチン阻害剤、例えば、抗体またはその抗原結合性部分の少なくとも第1の用量および第2の用量を含む。一実施形態では、第1の用量および第2の用量は被験体に少なくとも約4週間空けて、6週間空けて、8週間空けて、または12週間空けて投与される。
いくつかの実施形態では正常体重の成人患者について、約0.3から5.00mg/kgの範囲の用量が投与され得る。特定の投与レジメン、例えば用量、タイミングおよび反復は、特定の個体およびその個体の医療歴および個々の薬剤の特性(薬剤の半減期および他の関連する検討事項など)に依存する。
本開示の目的のためにミオスタチン阻害剤、例えば、抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体またはその抗原結合性断片の適切な投薬量は、用いられる特異的抗体(またはその組成物)、疾患/障害の種類および重症度、抗体が予防または治療目的で投与されるか、以前の治療、患者の病歴およびアンタゴニストへの応答ならびに主治医の判断に依存する。いくつかの実施形態では、望ましい結果を達成する投薬量に到達するまで、臨床医は、ミオスタチン阻害剤、例えば、抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体またはその抗原結合性部分を投与する。ミオスタチン阻害剤、例えば、抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体またはその抗原結合性部分の投与は、投与の目的が治療的または予防的であるかに関わらず、例えばレシピエントの生理学的状態、および熟練した医師に公知である他の要因に応じて連続的または間欠的であってよい。ミオスタチン阻害剤、例えば、抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体またはその抗原結合性断片の投与は、予め選択した期間にわたって本質的に連続的であっても、または間隔をあけた一連の用量、例えばプロ/潜在型ミオスタチンに関連する疾患または障害が発症する前、その間またはその後のいずれかであってもよい。
本明細書において使用される場合、用語「処置する」は、ミオパチーを伴う疾患/障害、疾患/障害の症状または疾患/障害に対する素因を有する被験体への、障害、疾患の症状または疾患/障害に対する素因を治癒する(cure)、治す(heal)、緩和する、軽減する、変える、改善する(remedy)、回復させる、改善するまたは影響を与えるための1つまたは複数の活性剤を含む組成物の適用または投与を指す。
プロ/潜在型ミオスタチンに関連する疾患/障害を緩和することは、疾患の発症(development)もしくは進行を遅らせること、または疾患の重症度を低減することを含む。疾患を緩和することは、必ずしも治癒的結果を要求しない。本明細書で使用する場合、プロ/潜在型ミオスタチンに関連する疾患/障害の発症を「遅らせること」は、疾患の進行を遅らせる(defer)、妨げる(hinder)、遅くする(slow)、遅らせる(retard)、安定化するおよび/または先に延ばす(postpone)ことを意味する。この遅らせることは、病歴および/または処置される個体に応じて様々な時間の長さであってよい。疾患の発症を「遅らせる」もしくは緩和する、または疾患の発病(onset)を遅らせる方法は、方法を使用しない場合と比較して所与の時間枠において疾患の1つもしくは複数の症状の発症の可能性を低減するおよび/または所与の時間枠において症状の程度を低減する方法である。そのような比較は、統計学的に有意な結果をもたらすのに十分な数人の被験体を使用する臨床研究に典型的には基づく。
併用療法
本発明は、in vivoでのミオスタチン阻害が有益である可能性がある被験体を処置するための併用療法として使用される医薬組成物および関連する方法を包含する。これらの実施形態のいずれにおいても、そのような被験体は、少なくとも1つのミオスタチン阻害剤、例えば、本明細書に記載の抗体またはその抗原結合性部分を含む第1の組成物と、同じまたは重複する疾患または臨床的状態の処置を目的とする少なくとも1つのさらなる治療薬を含む第2の組成物とを併せて含む併用療法を受けることができる。第1の組成物および第2の組成物は、どちらも同じ細胞標的に作用するものであってもよく、別個の細胞標的に作用するものであってもよい。いくつかの実施形態では、第1の組成物および第2の組成物により、疾患または臨床的状態の症状または外観(aspect)の同じまたは重複するセットを処置または緩和することができる。いくつかの実施形態では、第1の組成物および第2の組成物により、疾患または臨床的状態の症状または外観の別々のセットを処置または緩和することができる。一例を挙げると、第1の組成物により疾患に関連するミオパチーを処置することができ、第2の組成物により同じ疾患に関連する炎症または線維症を処置することができる、などである。そのような併用療法は、互いと併せて投与することができる。句「と併せて」とは、併用療法に関しては、併用療法を受けている被験体において第1の治療の治療効果が第2の治療の治療効果と一時的におよび/または空間的に重複することを意味する。したがって、併用療法は、同時投与用の単一の製剤として製剤化されてもよく、療法の逐次的投与用の別々の製剤として製剤化されてもよい。
好ましい実施形態では、併用療法により、疾患の処置において相乗効果が生じる。「相乗的」という用語は、各単独療法を総計した相加効果よりも大きな効果(例えば、より大きな効能)を指す。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物を含む併用療法により、別の療法(例えば、第2の薬剤の単独療法など)によって生じる効能と全体的に同等の効能が生じるが、第2の薬剤の単独療法と比較して、第2の薬剤に付随する望ましくない有害作用がより少なくなるまたは毒性の重症度がより低くなる。いくつかの実施形態では、そのような併用療法により、第2の薬剤の投薬量をより少なくし、しかし全体的な効能を維持することが可能になる。そのような併用療法は、長期間にわたる処置が保証されているおよび/または小児患者を伴う患者集団に特に好適であり得る。
したがって、本発明は、筋肉量/機能を増強するため、ならびに糖尿病、肥満および脊髄損傷を含めた代謝疾患または神経シグナル伝達の欠陥に関連する疾患を処置または防止するための併用療法に使用するための医薬組成物および方法を提供する。したがって、方法または医薬組成物は、第2の治療をさらに含む。いくつかの実施形態では、第2の治療は、代謝疾患または神経シグナル伝達の欠陥に関連する疾患の処置または防止において有用であり得る。第2の治療は、標的化された疾患に関連する少なくとも1つの症状(複数可)を減弱または処置することができる。第1の治療と第2の治療はそれらの生物学的効果を同様の作用機構によってもしくは無関係の作用機構によって発揮し得る、または第1の治療と第2の治療の一方または両方がそれらの生物学的効果を多数の作用機構によって発揮し得る。
本明細書に記載の医薬組成物は、記載されている実施形態のそれぞれについて第1の治療と第2の治療を同じ薬学的に許容される担体中に、または異なる薬学的に許容される担体中に有してもよいことが理解されるべきである。第1の治療薬および第2の治療は、記載されている実施形態の範囲内で同時にまたは逐次的に投与され得ることがさらに理解されるべきである。
本発明の1つまたは複数の抗ミオスタチン抗体または他のミオスタチン阻害剤は、1つまたは複数のさらなる治療剤と併用され得る。本発明の抗ミオスタチン抗体と共に使用され得るさらなる治療剤の例は、これらに限定されないが、糖尿病処置薬剤、糖尿病の合併症処置薬剤、心血管疾患処置薬剤、抗高脂血症剤、降圧剤(hypotensive or antihypertensive agent)、抗肥満剤、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)処置薬剤、化学療法剤、免疫療法薬、免疫抑制剤など含む。そのような併用療法では、投与される治療剤のより少ない投薬量を有利に利用し、したがって、種々の単独療法に付随する、可能性がある毒性または合併症を回避することができる。
糖尿病を処置するための薬剤の例は、インスリン製剤(例えば、ウシまたはブタの膵臓から抽出された動物インスリン製剤;微生物または方法を使用して遺伝子工学技術によって合成されたヒトインスリン製剤)、インスリン感受性増強剤、その薬学的に許容される塩、水和物、または溶媒化合物(例えば、ピオグリタゾン、トログリタゾン、ロシグリタゾン、ネトグリタゾン(netoglitazone)、バラグリタゾン、リボグリタゾン、テサグリタザル、ファルグリタザル、CLX−0921、R−483、NIP−221、NIP−223、DRF−2189、GW−7282TAK−559、T−131、RG−12525、LY−510929、LY−519818、BMS−298585、DRF−2725、GW−1536、GI−262570、KRP−297、TZD18(Merck)、DRF−2655など)、アルファ−グリコシダーゼ阻害剤(例えば、ボグリボース、アカルボース、ミグリトール、エミグリテートなど)、ビグアナイド類(例えば、フェンホルミン、メトホルミン、ブホルミンなど)またはスルホニル尿素(例えば、トルブタミド、グリベンクラミド、グリクラジド、クロルプロパミド、トラザミド、アセトヘキサミド、グリクロピラミド、グリメピリドなど)ならびに他のインスリン分泌促進剤(例えば、レパグリニド、セナグリニド(senaglinide)、ナテグリニド、ミチグリニド、GLP−1など)、アミリンアゴニスト(例えば、プラムリンチドなど)、ホスホチロシンホスファターゼ阻害剤(例えば、バナジン酸など)などを含む。
糖尿病の合併症を処置するための薬剤例は、これらに限定されないが、アルドース還元酵素阻害剤(例えば、トルレスタット、エパルレスタット、ゼナレスタット、ゾポルレスタット、ミナルレスタット、フィダレスタット(fidareatat)、SK−860、CT−112など)、神経栄養因子(例えば、NGF、NT−3、BDNFなど)、PKC阻害剤(例えば、LY−333531など)、最終糖化産物(AGE)阻害剤(例えば、ALT946、ピマゲジン(pimagedine)、ピリドキサミン(pyradoxamine)、フェナシルチアゾリウムブロミド(ALT766)など)、活性酸素クエンチ剤(例えば、チオクト酸またはその誘導体、バイオフラボノイド、例えば、フラボン、イソフラボン、フラバノン(flavonones)、プロシアニジン、アントシアニジン、ピクノジェノール(pycnogenol)、ルテイン、リコピン、ビタミンE、補酵素Qなど)、脳血管拡張剤(例えば、チアプリド、メキシレチン(mexiletene)など)を含む。
抗高脂血症剤は、例えば、コレステロール合成阻害剤である、スタチンに基づく化合物(例えば、プラバスタチン、シンバスタチン、ロバスタチン、アトルバスタチン、フルバスタチン、ロスバスタチンなど)、トリグリセリド低下効果を有するスクアレンシンテターゼ阻害剤またはフィブラート化合物(例えば、フェノフィブラート、ゲムフィブロジル、ベザフィブラート、クロフィブラート、シンフィブラート、クリノフィブラートなど)、ナイアシン、PCSK9阻害剤、トリグリセリド低下剤またはコレステロール隔離剤を含む。
降圧剤は、例えば、アンジオテンシン変換酵素阻害剤(例えば、カプトプリル、エナラプリル、デラプリル、ベナゼプリル、シラザプリル、エナラプリル、エナラプリラート、ホシノプリル、リシノプリル、モエキシプリル、ペリンドプリル、キナプリル、ラミプリル、トランドラプリルなど)、またはアンジオテンシンIIアンタゴニスト(例えば、ロサルタン、カンデサルタン シレキセチル、オルメサルタンメドキソミル、エプロサルタン、バルサルタン、テルミサルタン、イルベサルタン、タソサルタン、ポミサルタン、リピサルタンフォラサルタン(ripisartan forasartan)など)またはカルシウムチャネル遮断薬(例えば、アムロジピン)またはアスピリンを含む。
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)処置薬剤は、例えば、ウルソジオール、ピオグリタゾン、オルリスタット、ベタイン、ロシグリタゾンを含む。
抗肥満剤は、例えば、中枢抗肥満剤(例えば、デクスフェンフルラミン、フェンフルラミン、フェンテルミン、シブトラミン、アンフェプラモン、デクスアンフェタミン、マジンドール、フェニルプロパノールアミン、クロベンゾレックスなど)、胃腸リパーゼ阻害剤(例えば、オルリスタットなど)、ベータ3−アドレナリン受容体アゴニスト(例えば、CL−316243、SR−58611−A、UL−TG−307、SB−226552、AJ−9677、BMS−196085など)、ペプチドベースの食欲抑制剤(例えば、レプチン、CNTFなど)、コレシストキニンアゴニスト(例えば、リンチトリプト(lintitript)、FPL−15849など)などを含む。
化学療法剤は、例えば、アルキル化剤(例えば、シクロホスファミド、イホスファミドなど)、代謝アンタゴニスト(例えば、メトトレキサート、5−フルオロウラシルなど)、抗がん抗生物質(例えば、マイトマイシン、アドリアマイシンなど)、植物由来の抗がん剤(例えば、ビンクリスチン、ビンデシン、タキソールなど)、シスプラチン、カルボプラチン、エトポシドなどを含む。これらの物質の中でも、フルツロンおよびネオフルツロン(neofurtulon)などの5−フルオロウラシル誘導体が好ましい。
免疫療法薬は、例えば、微生物または細菌構成成分(例えば、ムラミルジペプチド誘導体、ピシバニールなど)、免疫強化活性を有する多糖(例えば、レンチナン、シゾフィラン、クレスチンなど)、遺伝子工学技術によって得られるサイトカイン(例えば、インターフェロン、インターロイキン(IL)など)、コロニー刺激因子(例えば、顆粒球コロニー刺激因子、エリスロポエチンなど)などを含み、これらの中で好ましい物質は、IL−1、IL−2、IL−12などである。
免疫抑制剤は、例えば、カルシニューリン阻害剤/イムノフィリンモジュレーター、例えば、シクロスポリン(Sandimmune、Gengraf、Neoral)、タクロリムス(Prograf、FK506)、ASM981、シロリムス(RAPA、ラパマイシン、Rapamune)、またはその誘導体SDZ−RADなど、グルココルチコイド(プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、デキサメタゾンなど)、プリン合成阻害剤(ミコフェノール酸モフェチル、MMF、セルセプト(R)、アザチオプリン、シクロホスファミド)、インターロイキンアンタゴニスト(バシリキシマブ、ダクリズマブ、デオキシスパガリン)、リンパ球枯渇剤、例えば抗胸腺細胞グロブリン(サイモグロブリン、リンフォグロブリン)など、抗CD3抗体(OKT3)などを含む。
さらに、悪液質改善効果が動物モデルまたは臨床段階で確立されている薬剤、例えば、シクロオキシゲナーゼ阻害剤(例えば、インドメタシンなど)、プロゲステロン誘導体(例えば、酢酸メゲストロール)、グルコステロイド(glucosteroid)(例えば、デキサメタゾンなど)、メトクロプラミドに基づく薬剤、テトラヒドロカンナビノールに基づく薬剤、脂質代謝改善剤(例えば、エイコサペンタエン酸など)、成長ホルモン、IGF−1、TNF−α、LIF、IL−6およびオンコスタチンMに対する抗体なども、本発明による抗ミオスタチン抗体と同時に使用され得る。代謝障害および/または神経シグナル伝達の欠陥に関連する疾患または状態の処置において使用するためのさらなる治療剤は当業者には明らかであり、本開示の範囲内に入る。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗体との併用療法として投与するのに好適な第2の薬剤は、TGFβ1阻害剤などの抗線維化薬である。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗体との併用療法として投与するのに好適な第2の薬剤は、増殖因子のTGFβスーパーファミリー、例えば、BMP6、BMP7、GDF11、TGFβ2、TGFβ3、RGMcなどのある特定のメンバーのモジュレーター(例えば、アゴニストおよびアンタゴニスト)である。
上記の薬剤はいずれも、代謝疾患、またはニューロンと標的組織との間の神経シグナル伝達の欠陥に関連する疾患、例えば、脊髄損傷、筋萎縮症、および筋ジストロフィーを処置するために、本発明のミオスタチン抗体と組み合わせて投与され得る。
抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体およびその抗原結合性断片などのミオスタチン阻害剤の、疾患/障害を処置するための使用
本明細書に記載の医薬組成物は、ミオスタチンシグナル伝達の低減が望ましい疾患および状態を処置または防止するためにヒト患者に投与するのに好適である。そのような疾患および状態は、これらに限定されないが、筋肉の状態または障害、代謝障害、および神経シグナル伝達の欠陥に関連する疾患、例えば、脊髄損傷を含む。本発明の組成物および方法が有用であり得る例示的な状態は下でさらに説明されている。
A.筋肉の状態および障害
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、筋肉の状態および障害を処置または防止するのに好適である。本明細書において使用される場合、用語「筋肉の状態」または「筋障害」は、筋肉が正常に機能しない疾患、状態もしくは障害、または、筋肉の機能は正常であるが、利用可能な筋肉の量の低減に起因して筋肉によって生成される力が少ない疾患、状態もしくは障害を指す。筋肉の状態または障害は、非限定的にミオパチー、筋萎縮症、筋ジストロフィーなどを含み得る。そのような状態は、運動ニューロンの欠損(複数可)、遺伝子の変異、または神経損傷などの損傷によって引き起こされ得る。
一実施形態では、筋肉の状態はミオパチーである。本明細書において使用される場合、用語「ミオパチー」は、一般には筋力低下がもたらされる筋肉構造または機能の欠陥を特徴とする筋肉の状態を指す。「ミオパチー」は、筋肉構造が正常であるがニューロン入力に欠陥または異常があり、それにより今度は筋肉機能が影響を受けることを特徴とする筋肉の状態も含み得る。「ミオパチー」は、炎症性ミオパチーおよび/または自己免疫性ミオパチー、例えば、重症筋無力症も含み得る。
ミオパチーは、実際は神経筋性または筋骨格性である筋肉の状態を含む。いくつかの実施形態では、ミオパチーは遺伝性ミオパチーである。遺伝性ミオパチーは、非限定的にジストロフィー、筋緊張症、先天性ミオパチー(例えば、ネマリンミオパチー、マルチ/ミニコアミオパチー、および中心核ミオパチー)、ミトコンドリアミオパチー、家族性周期性ミオパチー、炎症性ミオパチーおよび代謝性ミオパチー(例えば、糖原病および脂質貯蔵障害)を含む。いくつかの実施形態では、ミオパチーは後天性ミオパチーである。後天性ミオパチーは、非限定的に外来物質誘導性ミオパチー(例えば、薬物誘発性ミオパチーおよびグルココルチコイドミオパチー、アルコール性ミオパチー、および他の毒性作用物質によるミオパチー)、筋炎(例えば、皮膚筋炎、多発性筋炎(polymositis)および封入体筋炎)、骨化性筋炎、横紋筋融解症、およびミオグロビン尿症、および非活動性萎縮症を含む。いくつかの実施形態では、ミオパチーは非活動性萎縮症であり、正常な筋肉機能の悪化を導く長期にわたる筋肉の非活動性によって引き起こされ得る。非活動性萎縮症は、入院、骨折(例えば股関節骨折)の結果または神経損傷によるものであり得る。いくつかの実施形態では、ミオパチーは、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、脊髄性筋萎縮症(SMA)、腎不全による悪液質症候群、AIDS、心臓の状態および/またはがんなどの疾患または障害に関連する。いくつかの実施形態では、ミオパチーは加齢に関連する。いくつかの実施形態では、ミオパチーは筋肉減少症に関連する。いくつかの実施形態では、ミオパチーは傍脊柱筋萎縮症(paraspinal muscle atrophy)(PMA)に関連する。
いくつかの実施形態では、ミオパチーは原発性ミオパチーである。一実施形態では、原発性ミオパチーは非活動性萎縮症を含む。いくつかの実施形態では、非活動性萎縮症は、股関節骨折、待機的関節置換術(elective joint replacement)、救命医療ミオパチー(critical care myopathy)、脊髄損傷または脳卒中に関連する。いくつかの実施形態では、ミオパチーは、例えば筋ジストロフィーに関連する遺伝的筋力低下である。
いくつかの実施形態では、ミオパチーは、筋肉喪失または機能障害が疾患病態に続発する二次性ミオパチーである。いくつかの実施形態では、二次性ミオパチーは、脱神経または悪液質を含む。いくつかの実施形態では、二次性ミオパチーは、運動ニューロン機能障害(monitor neuron dysfunction)に関連する脱神経によって引き起こされる。いくつかの実施形態では、運動ニューロン機能障害は、運動ニューロンに影響を与える遺伝子の変異(複数可)に起因する。運動ニューロンの変異を伴うことが公知の疾患は、これらに限定されないが、筋萎縮性側索硬化症(ALS)および脊髄性筋萎縮症(SMA)を含む。いくつかの実施形態では、二次性ミオパチーは、腎不全、AIDS、心臓の状態、がんまたは加齢に関連する悪液質である。いくつかの実施形態では、二次性ミオパチーは、外科手術などの医学的手技の間持続する望ましくない神経損傷を含めた神経損傷によって引き起こされる。そのような損傷の標的組織(例えば、標的筋肉)の機能に対する有害作用は、本明細書に記載のミオスタチン阻害剤の投与によって有効に処置され得る。例えば、そのような投与により、ミオパチーを防止および/もしくは緩和すること、ならびに/または回復を容易にすることができる。
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、声帯不全麻痺/麻痺を含めた筋肉の状態および障害を処置または防止するのに好適である。本明細書において使用される場合、用語「声帯不全麻痺/麻痺」は、喉頭筋(voice box muscle)(喉頭筋(laryngeal muscle))への異常な神経入力から生じる状態を指す。麻痺は、神経インパルスの完全な中断を伴う可能性があり、その結果、動かなくなる;不全麻痺は、神経インパルスの部分的な中断を伴う可能性があり、その結果、喉頭筋の動きが弱くなるまたは異常になる。いくつかの実施形態では、抗ミオスタチン抗体またはその抗原結合性断片は、例えば、影響を受けた声帯筋(複数可)への直接の局所的注射によって局所的に投与される。例えば片側の神経損傷に起因して声帯の片側のみが影響を受けている場合には、片側注射が必要である。他の実施形態では、両側の神経が損傷を受けている場合、声帯の両側が影響を受け、したがって、両側注射が好ましい。
本発明の方法における使用のための抗ミオスタチン抗体またはその抗原結合性断片は、2つの声帯ひだ間の間隙を閉じて機能を回復させるために、声帯筋量を局所的に増加することができる。間隙が非常に大きい重症の場合には、それを矯正するために外科手術が必要になる場合がある。重症の声帯不全麻痺/麻痺の場合には、抗ミオスタチン抗体またはその抗原結合性断片は、外科手術の補助的療法として間隙をさらに閉じるために使用され得る。いくつかの実施形態では、本発明の方法は、発声機能が影響を受けているが矯正的外科手術の必要はない軽度の声帯不全麻痺/麻痺を処置または防止するのに好適である。他の実施形態では、本発明の方法は、外科手術の補助としてまたは外科手術が実行不能であるもしくは非常に危険である状況の一次療法として、重症の声帯不全麻痺/麻痺を処置または防止するのに好適である。
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、傍脊柱筋萎縮症(PMA)を含めた筋肉の状態および障害を処置または防止するのに好適である。一実施形態では、本明細書に記載の抗体またはその抗原結合性断片は、術後傍脊柱筋萎縮症、すなわち、外科手術後の傍脊柱筋萎縮症である傍脊柱筋萎縮症を処置する方法において使用される。一実施形態では、処置の方法は、神経損傷依存性筋萎縮を処置することを含む。一実施形態では、本明細書に記載の処置の方法は、術後神経損傷依存性筋萎縮を処置することを含む。一実施形態では、処置の方法は、術後筋萎縮を処置することを含み、ここで、外科手術は脊椎外科手術である。一実施形態では、処置の方法は、術後筋萎縮を処置することを含み、ここで、脊椎外科手術は、腰椎外科手術または腰椎手技、例えば、腰椎固定手技、腰椎非固定手技、後腰椎固定手技(posterior lumbar fusion procedure)、前腰椎固定手技(anterior lumbar fusion procedure)、低侵襲(MIS)後腰椎除圧手技、低侵襲(MIS)後腰椎固定手技、非MIS等価手技などである。一実施形態では、処置の方法は、腰椎固定手技後の傍脊柱筋萎縮症を処置することを含む。一実施形態では、処置の方法は、後腰椎固定手技後の傍脊柱筋萎縮症を処置することを含む。一実施形態では、処置の方法は、非MIS腰椎固定手技後の傍脊柱筋萎縮症を処置することを含む。一実施形態では、ミオスタチン阻害剤、例えば、本明細書に記載の抗体またはその抗原結合性断片を用いた処置の方法により、術後傍脊柱筋萎縮症の少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、12%、15%、18%、20%、または25%の減少がもたらされる。一実施形態では、ミオスタチン阻害剤、例えば、本明細書に記載の抗体またはその抗原結合性断片を用いた処置の方法により、術後神経損傷依存性傍脊柱筋萎縮症の少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、12%、15%、18%、20%、または25%の減少がもたらされる。
本開示の別の態様は、先天性ミオパチーに関連する疾患または状態を有する被験体を処置する方法を含む。例示的な先天性ミオパチーは、非限定的に、X連鎖筋細管ミオパチー、常染色体優性中心核ミオパチー、常染色体性劣性中心核ミオパチー、ネマリンミオパチー、および先天性線維型不均衡ミオパチー(congenital fiber−type disproportion myopathy)を含む。
本開示の別の態様は、筋ジストロフィーに関連する筋疾患または状態を有する被験体を処置する方法を含む。例示的な筋ジストロフィーは、非限定的にデュシェンヌ型、ベッカー型、顔面肩甲上腕(FSH)、および肢帯筋ジストロフィーを含む。
本開示の別の態様は、泌尿婦人科関連疾患または状態、声門障害(狭窄)、眼球外ミオパチー(extraocular myopathy)、手根管(carpel tunnel)、ギランバレー、または骨肉腫を有する被験体を処置する方法を含む。
B.代謝障害および疾患
本発明は、被験体における代謝疾患を処置または防止するための方法を提供する。本明細書において使用される場合、用語「代謝疾患」は、代謝(同化および/または異化)の変更に起因する恒常性の正常な生理的状態の撹乱を伴う任意の望ましくない状態を指す。代謝障害は、身体が生理機能を行うために必要な物質をどのように処理するかに影響を与え、一般に、異常なグルコース、脂質および/またはタンパク質の代謝ならびにそのような障害から生じる病理学的結果が付随する。本発明のいくつもの代謝障害は、ある特定の特性を共有し、例えば、除脂肪筋肉量(fat−free or lean muscle mass)の減少、過剰な脂肪量、低い代謝率、インスリン抵抗性、血糖を制御する能力の欠如、体重増加、および/またはボディマス指数の増加が付随する。本明細書においてより詳細に考察されているとおり、代謝障害は、筋肉の状態または障害に続発して、またはその結果として生じる可能性がある。
本発明は、ミオスタチン阻害剤、例えば、プロ/潜在型ミオスタチン特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片を、代謝疾患を有する被験体に投与することにより、損傷を受けた被験体の生理的特性および機能的特性の両方が有意に改善されるという発見に少なくとも部分的に基づいている。具体的には、本発明者らは、驚いたことに、ミオスタチン阻害剤、例えば、抗ミオスタチン抗体またはその抗原結合性部分を投与することにより、代謝疾患を有する被験体において代謝率またはエネルギー消費が有意に増大することを発見した。また、ミオスタチン阻害剤、例えば、抗ミオスタチン抗体またはその抗原結合性部分の投与により、病変下筋肉量および全体重のSCI誘導低減も有意に減弱し、同時に、白色および内臓脂肪組織などの望ましくない脂肪組織の量が低減した。さらに、ミオスタチン阻害剤、例えば、抗ミオスタチン抗体またはその抗原結合性部分による処置を受けた被験体は、自発運動機能、筋力、ならびに運動協調性および平衡技能の有意な改善を示した。
したがって、本発明は、ヒト被験体における代謝疾患を処置または防止するための方法を提供する。方法は、代謝疾患に罹患しているヒト被験体を選択するステップ、および、ヒト被験体に、ミオスタチン阻害剤、例えば、ミオスタチンに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片を有効量で投与し、それによりヒト被験体における代謝疾患を処置または防止するステップを含む。好ましくは、抗体またはその抗原結合性断片は、プロ/潜在型ミオスタチンに特異的に結合するが、GDF11には結合しない。プロ/潜在型ミオスタチンを特異的に認識し、GDF11は認識しない抗体は、有益であり、被験体におけるGDF11への抗体のオフターゲットの結合によって引き起こされる望ましくない毒性が回避される。
本発明の方法によって処置または防止され得る代謝疾患の例は、これらに限定されないが、1型糖尿病、2型糖尿病、メタボリックシンドローム、糖尿病前症、肥満、心血管疾患、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、脊髄損傷(SCI)、代謝低下状態、二重糖尿病、クッシング病、肥満症候群、インスリン抵抗性、インスリン不足、高インスリン血症、耐糖能障害(IGT)、異常なグリコーゲン代謝、高脂血症、低アルブミン血症、高トリグリセリド血症、シンドロームXおよび脂肪肝疾患を含む。いくつかの実施形態では、代謝疾患は、神経シグナル伝達の欠陥または部分的な脱神経に関連する疾患を含む。
代謝障害および/または身体組成に関連するさらなる疾患または状態は当業者には明らかであり、本開示の範囲内に入る。
糖尿病とは、インスリン分泌または作用、またはその両方の欠損に起因する高血糖(グルコース)レベルを特徴とする代謝疾患の群を指す。糖尿病には最も一般的な2つの型、すなわち1型糖尿病および2型糖尿病があり、これらはどちらも、身体がインスリンを制御できないことに起因する。インスリンは、膵臓により、血液中の血糖(グルコース)のレベルの上昇に応答して放出されるホルモンである。
用語「1型糖尿病」は、本明細書において使用される場合、膵臓が、血糖レベルを適切に制御するには少なすぎるインスリンしか産生しない場合に生じる慢性疾患を指す。1型糖尿病は、インスリン依存性糖尿病、IDDM、および若年発症糖尿病とも称される。I型糖尿病(インスリン依存性糖尿病)の人は、インスリンをわずかにしか産生しないまたは全く産生しない。米国人口の約6パーセントが何らかの型の糖尿病を有し、全糖尿病患者のほんの10パーセント程度がI型障害を有する。I型糖尿病を有する大多数の人は当該障害を30歳よりも前に発症している。1型糖尿病は、膵臓のβ細胞の進行性の自己免疫破壊、その後のインスリン欠乏の結果である。膵臓のインスリン産生細胞(ベータ細胞)の90パーセント超が恒久的に破壊される。結果生じるインスリン欠乏は重症であり、I型糖尿病の人は、生存するためにインスリンを定期的に注射しなければならない。
II型糖尿病(インスリン非依存性糖尿病、NDDMとも称される)では、膵臓は、インスリンを時には正常なレベルよりも高くさえ製造し続ける。しかし、身体がその効果に対する抵抗性を生じ、その結果、相対的なインスリン欠乏がもたらされる。II型糖尿病は、小児および青年に生じる可能性があるが、通常は30歳よりも後に始まり、年齢と共に次第により一般的になる:70歳を超える人の約15パーセントがII型糖尿病を有する。肥満はII型糖尿病のリスク因子であり、この障害を有する人の80〜90パーセントが肥満である。
いくつかの実施形態では、糖尿病は糖尿病前症を含む。「糖尿病前症」は、グルコースの利用の欠陥、空腹時血糖レベルの異常または欠陥、耐糖能障害、インスリン感受性の欠陥およびインスリン抵抗性を含めた1つまたは複数の初期の糖尿病状態を指す。糖尿病前症は、2型糖尿病、心血管疾患および死亡率の主要なリスク因子である。糖尿病前症を処置することによって2型糖尿病の発症を防止する治療介入の開発に多くの焦点が当てられてきた。
いくつかの実施形態では、糖尿病は、インスリン抵抗性の特徴を有する1型糖尿病と2型糖尿病の組み合わせである二重糖尿病を含む。
糖尿病は、グルコース負荷試験を施行することによって診断され得る。臨床的に、糖尿病は、多くの場合、いくつかの基本的なカテゴリーに分類される。これらのカテゴリーの主な例は、自己免疫性糖尿病、インスリン非依存性糖尿病(1型NDDM)、インスリン依存性糖尿病(2型IDDM)、非自己免疫性糖尿病、インスリン非依存性糖尿病(2型NIDDM)、および若年発症成人型糖尿病(MODY)を含む。多くの場合二次性と称されるさらなるカテゴリーは、糖尿病症候群の発症を引き起こすまたは可能にするいくつかの同定可能な状態によってもたらされる糖尿病を指す。二次性カテゴリーの例は、膵疾患によって引き起こされる糖尿病、ホルモン異常、薬物または化学物質誘導糖尿病、インスリン受容体異常によって引き起こされる糖尿病、遺伝的症候群に関連する糖尿病、および他の原因の糖尿病を含む(例えば、Harrison’s(1996年)、第14版、New York、McGraw−Hillを参照されたい)。
肥満は、本発明の方法によって処置または防止され得る、別の蔓延している代謝疾患である。「肥満」は、体脂肪の量が過剰であることによって定義される慢性の状態を指す。体脂肪の正常な量(体重に対する百分率として表される)は、女性では25〜30%であり、男性では18〜23%である。体脂肪が30%を超える女性および体脂肪が25%を超える男性は肥満とみなされる。肥満は、任意の臨床的に意義がある定義を使用して定義され得る。例えば、成人における、ボディマス指数(BMI、kg/m2)は、過体重および肥満の尺度として頻繁に使用され、過体重は、BMIが25〜29.9kg/m2であると定義され、肥満は、BMIが30kg/m2と等しいまたはそれを超えると定義され、病的肥満は、BMIが40kg/m2を超えると定義される。肥満は、成人において、胴囲によって測定される中心脂肪蓄積(central adiposity)によっても定義され得、胴囲高値は男性では102cmと等しいまたはそれを超えると定義され、女性では88cmと等しいまたはそれを超えると定義される。肥満の被験体は、空腹時血漿グルコースの増加、空腹時血漿トリグリセリドの増加、空腹時高密度リポタンパク質(HDL)レベルの低下、および血圧の上昇などの他の症状を示し得る。肥満はまた、種々の整形外科的問題、皮膚障害および足およびくるぶしの腫大も引き起こす可能性がある。肥満の重症の合併症は、冠状動脈障害の非常に高いリスクおよびII型糖尿病、高脂血症および高血圧症のその主要なリスク因子を含む。肥満に関連する罹患率の大半は、不十分に調節された糖尿病および肥満により、シンドロームX、またはメタボリックシンドロームとして共に公知の一群の症状が導かれるので、II型糖尿病に関連する。いくつかの実施形態では、肥満は筋肉減少性肥満である。
本発明の方法は、メタボリックシンドロームなどの代謝疾患を処置または防止するためにも好適である。本明細書において使用される場合、「メタボリックシンドローム」は、単一の個体に共に生じ、糖尿病および/または心血管疾患の発症の高リスクを導く代謝的なリスク因子のクラスター化の概念を指す。メタボリックシンドロームの主要な特徴は、インスリン抵抗性、高血圧(高い血圧)、コレステロール異常、異脂肪血症(dyslipidemia)、トリグリセリド異常、特に腹部における凝固のリスクの増大および過剰な体重、または肥満を含む。American Heart Associationは、メタボリックシンドロームが以下の構成成分:(1)胴囲高値(男性、40インチ(102cm)と等しいまたはそれを超える;女性、35インチ(88cm)と等しいまたはそれを超える);(2)トリグリセリド高値(150mg/dLと等しいまたはそれを超える);(3)高密度リポタンパク質コレステロールまたはHDL低値(男性、40mg/dL未満;女性、50mg/dL未満);(4)血圧高値(130/85mm Hgと等しいまたはそれを超える);および、(5)空腹時血糖高値(100mg/dLと等しいまたはそれを超える)のうちの3つまたはそれよりも多くが存在することによって診断されることを提案している。
別の態様では、本発明の方法は、肥満症候群などの代謝疾患を処置または防止するのに好適である。用語「肥満症候群」は、被験体に著しい脂肪または過体重を生じさせる任意の障害または状態を指す。他の代謝疾患と同様に、肥満症候群の人には、通常、除脂肪筋肉量(fat−free or lean muscle mass)の減少、過剰な脂肪量、低代謝率、インスリン抵抗性、血糖を制御する能力の欠如、体重増加、およびボディマス指数の増大が付随する。いくつかの実施形態では、肥満症候群は、プラダー・ウィリー症候群、遺伝障害に関連する肥満症候群、および視床下部障害に関連する肥満症候群からなる群より選択される。
本発明の方法は、代謝低下状態に関連する代謝疾患を処置または防止するのにも好適である。「代謝低下状態」という用語は、身体が十分なエネルギーを産生していない、代謝または代謝活性が低減した状態を指す。代謝低下状態の患者は、一般に、低代謝率、除脂肪筋肉量(fat−free or lean muscle mass)の減少、脂肪量の過剰な増加、インスリン抵抗性、血糖を制御する能力の欠如、体重増加、およびボディマス指数の増大を有する。いくつかの実施形態では、代謝低下状態は、長期にわたる運動抑制に関連する状態、床上安静に関連する状態、ギプス固定に関連する状態、脳卒中に関連する状態、切断術に関連する状態、および外科手術後の状態からなる群より選択される。いくつかの実施形態では、代謝低下状態は、外科手術後の状態、例えば、腰椎外科手術後の傍脊柱筋萎縮症である。一実施形態では、傍脊柱筋萎縮症は神経損傷依存性筋萎縮である。一実施形態では、外科手術は脊椎外科手術である。一実施形態では、脊椎外科手術は腰椎外科手術または腰椎手技、例えば、腰椎固定術手技、腰椎非固定手技、後腰椎固定手技、前腰椎固定手技、低侵襲(MIS)後腰椎除圧手技、低侵襲(MIS)後腰椎固定手技、非MIS等価手技などである。
別の態様では、本発明の方法は、クッシング病などの代謝疾患を処置または防止するのに好適である。「クッシング病」という用語は、下垂体が過剰量の副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)を放出する状態を指す。クッシング病の症状は、上半身肥満(ウエストから上)および細い腕および脚、丸く赤い丸顔(満月様顔貌)および小児における遅い成長速度を含み得る。いくつかの実施形態では、クッシング病は、コルチコステロイド誘導クッシング病および腫瘍誘導クッシング病からなる群より選択される。
さらに別の態様では、本発明の方法は、心血管疾患などの代謝疾患を処置または防止するのに好適である。「心血管疾患」という用語は、心臓または血管の任意の疾患を指す。心血管疾患または心疾患は、これらに限定されないが、例えば狭心症、不整脈、冠動脈疾患(CAD)、冠動脈心疾患、心筋症(拡張型心筋症、拘束型心筋症、不整脈原性右室心筋症、および糖尿病性心筋症を含む)、心臓発作(心筋梗塞)、心不全、肥大性心筋症、僧帽弁逆流症、僧帽弁逸脱症、肺動脈弁狭窄症などを含む。血管疾患は、これらに限定されないが、例えば、末梢血管疾患、動脈疾患、頸動脈疾患、深部静脈血栓症、静脈疾患、およびアテローム性動脈硬化症を含む。
本開示の別の態様は、加齢に関連する代謝疾患または状態を有する被験体を処置する方法を含む。加齢に関連する例示的疾患および状態は、非限定的に、筋肉減少症(加齢性筋肉喪失)、虚弱、およびアンドロゲン欠乏症を含む。
本開示の別の態様は、非活動性萎縮症/外傷に関連する代謝疾患または状態を有する被験体を処置する方法を含む。非活動性萎縮症/外傷に関連する例示的疾患および状態は、非限定的に、集中治療室(ICU)で過ごした時間に関連する筋脱力、股関節置換術、股関節骨折、脳卒中、床上安静、SCI、回旋筋腱板損傷、膝関節置換術(knee replacement)、骨折、および熱傷を含む。
C.神経シグナル伝達の欠陥に関連する疾患
本開示は、ミオスタチンシグナル伝達の阻害が、筋肉とそれを神経支配するニューロンとの間の伝達の欠損を伴う状態への介入に特に有用であり得るという驚くべき発見に少なくとも部分的に基づいている。したがって、本開示は、被験体、例えば、ヒト被験体におけるニューロンとミオスタチンを発現する標的組織との間の神経シグナル伝達の欠陥に関連する疾患を処置または防止するための方法を提供する。いくつかの実施形態では、方法は、ニューロンと標的組織との間の神経シグナル伝達の欠陥に関連する疾患に罹患している被験体にミオスタチン阻害剤、例えば、ミオスタチンに特異的に結合し、ミオスタチンシグナル伝達を阻害する抗体またはその抗原結合性断片を有効量で投与し、それにより被験体における神経シグナル伝達の欠陥に関連する疾患を処置または防止するステップを含む。好ましくは、抗体またはその抗原結合性断片は、プロ/潜在型ミオスタチンに特異的に結合するが、GDF11には結合しない。
本明細書において使用される場合、用語「神経シグナル伝達の欠陥を伴う疾患」は、ニューロンとその標的組織(複数可)、例えば、筋組織、脳組織、肝組織、血管組織、または脂肪組織との間のシグナルトランスダクションの混乱または伝達の崩壊によって引き起こされるまたはそれに関連する任意の疾患または障害を指す。いくつかの実施形態では、神経シグナル伝達の欠陥は、ニューロンがシグナルをそれらの標的に伝達することができないニューロン構造の傷害によって生じる。他の実施形態では、ニューロンの構造はインタクトなままであるが、機能的混乱または欠損、例えば、神経筋接合部での遮断が存在し、したがって、ニューロンのシグナルを伝達する能力が影響を受ける。
いくつかの実施形態では、「神経シグナル伝達の欠陥を伴う疾患」は、脱神経、例えば、筋肉などの標的への神経供給またはニューロン入力の部分的な喪失または撹乱に関連する疾患または状態を指す。いくつかの実施形態では、脱神経は損傷によって誘導される。いくつかの実施形態では、脱神経は疾患に関連する。神経シグナル伝達の欠陥を伴う疾患の非限定的な例は、例えば、声帯不全麻痺/麻痺、脊髄損傷(SCI)、重症筋無力症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、および脊髄性筋萎縮症(SMA)を含む。
脊髄損傷
本発明の方法は、神経損傷に起因する神経シグナル伝達の欠陥を伴う状態を処置または防止するのにも好適である。いくつかの実施形態では、そのような状態は脊髄損傷(SCI)である。本明細書において使用される場合、用語「脊髄損傷」は、脊柱管の末端の脊髄または神経の任意の一部分への傷害を指す。脊髄損傷は、多くの場合、損傷の部位の下の力、感覚および他の身体機能の恒久的変化を引き起こす。毎年、脊髄損傷の新規の症例が12,500件あることが推定される(US)。有病数(prevalence)は、米国において275,000症例であり、およそ60%が対麻痺を有する。SCIにおける筋萎縮を逆転させるまたは低減させることを対象とする治療は開発されておらず、これはまだ対処されていない大きな必要性である。損傷からの時間、損傷のレベルおよび完全性、ならびに身体障害の程度に基づいて有意な患者不均一性が存在するが、筋肉機能および代謝的転帰を改善するための身体のリハビリテーションが標準治療である。
SCI患者は、レベル(対麻痺 対 四肢麻痺)および病変の完全性(完全 対 不完全)に基づいて層別化される。この層別化は、ASIAスケールに発展し、これは、以下のとおり定義される、麻痺のレベルに基づく2つの広範な群:完全(AISグレードA/B)および不完全(AISグレードC/D/E)を有する:
A:運動および感覚の完全な喪失
B:運動の喪失、知覚の保持(まだ接触、圧力を感じることができる)
CおよびD:不完全な運動の喪失
E:大多数の機能が回復:これが集団に占める割合は低い。
7つの頸椎(頸部)、12つの胸椎(胸部)、5つの腰椎(背部)、および5つの仙椎(尾部)が存在する。SCIにおける病変は、椎骨に沿ったあらゆる場所に生じる可能性がある。神経学的レベルを確立するために試験される必要がある主要筋肉は、以下のとおりである:
C5:肘屈筋(二頭筋、上腕筋)
C6:手首伸筋(長橈側手根伸筋および短橈側手根伸筋)
C7:肘伸筋(三頭筋)
C8:中指の屈筋(long finger flexor)(深指屈筋)
T1:小指の外転筋(small finger abductor)(小指外転筋)
L2:股関節の屈筋(腸腰筋)
L3:膝伸筋(四頭筋)
L4:くるぶしの背屈筋(ankle dorsiflexor)(前脛骨筋)
L5:長趾伸筋(long toe extensor)(長母趾伸筋)
S1:くるぶしの足底筋(ankle plantar flexor)(腓腹筋、ヒラメ筋)
完全な脊髄損傷では、脊髄は損傷のレベルの下にシグナルを送ることができない。結果として、患者は損傷の下が麻痺する。不完全損傷では、患者は損傷の下の動作および感覚をいくらか有する。
脊髄損傷に関連する多数の期が存在する。被験体は、損傷直後、一部において外傷および付随する炎症に起因して完全損傷と不完全損傷との間の診断が一般に難しい、急性脊髄損傷期にあり得る。一般には、急性期は、急性医学的/外科的ケアを受ける事象/損傷後の最初の院内期間と定義され、これは一般に、およそ約2週間である。被験体は、完全脊髄損傷と不完全脊髄損傷に違いがあり、また、継続したリハビリテーションによって回復の可能性がある、亜急性脊髄損傷期にあり得る。一般には、亜急性期は、損傷後約2週間から最大約18カ月まで(例えば、損傷後3〜6カ月)を構成する。さらに、被験体は、一般に、損傷時からおよそ6〜12カ月後に始まる、患者が回復速度の実質的な低下を示すまたは進行中の標準治療の試みにもかかわらずリハビリテーションの試みが安定な期(例えば、プラトー)に達した、慢性脊髄損傷期にあり得る。
筋力は常に、試験中どれだけ短時間その力が維持されるかを問わずに、達成された最大力に従って段階付けされるべきである。筋肉は、患者仰臥位で試験される。運動レベルは、3またはそれを超える筋力を有するが上の分節が正常である(=5)最も尾側の主要筋肉によって決定される。
運動指数スコアリング(motor index scoring)では、各主要筋肉の0〜5スコアリングを使用し、総合点は四肢ごとに25であり、可能性がある総スコアは100である。
下肢運動スコア(LEMS)では、両下肢にASIA主要筋肉を使用し、可能性がある総スコアは50である(すなわち、四肢ごとに各主要筋肉[L2、L3、L4、L5、およびS1]について最大スコアは5である)。20またはそれ未満のLEMSは、患者の歩行が限られる可能性があることを示す。30またはそれを超えるLEMSは、個体が屋内外を歩行できる可能性があることを示唆する。
ASIAは、脊髄損傷における運動力(motor strength)の評価のために以下の所見のスケールの使用を推奨している:
0:収縮または動作なし
1:最小の動作
2:重力に逆らわない能動的動作
3:重力に逆らった能動的動作
4:抵抗力(resistance)に逆らった能動的動作
5:完全な抵抗力(full resistance)に逆らった能動的動作
SCI患者における機能的転帰および生活の質をモニターすることは、適切な機能性尺度の選択が損傷の完全性およびレベルに依存するので、複雑な課題である。全ての患者に適用可能である1つの一般的な尺度は、患者の介護者に対する依存を定量するために設計された7点のスケールである、機能的自立尺度(FIM)である。最近注目されている生活の質を測定するためのさらなる測定基準は、患者の機能的な技能と感情的な健康の両方を組み込んだSCI−QOLである(Tulsky、2015年、J Spinal Cord Med.、38巻(3号):257〜69頁)。多くの他の機能的転帰尺度がSCIREプロジェクトによって概説されている。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のミオスタチン阻害剤をSCI患者に有効量で投与することによって達成される意味がある臨床効果は、例えば、第24週におけるASIA総運動スコアのベースラインから少なくとも6点(≧6)の増加に対応し得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のミオスタチン阻害剤をSCI患者に有効量で投与することによって達成される意味がある臨床効果は、112日目(+/−7日)における平均総SCIM IIIスコアの処置群と無処置/対照群との間の統計学的有意差に対応し得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のミオスタチン阻害剤をSCI患者に有効量で投与することによって達成される意味がある臨床効果は、自発運動についての機能的自立尺度(Functional Independence Measure for Locomotion)(FIM−L)スコアの4点を超える(>4)増加に対応し得る。
脊髄損傷を有する個体は、固定化、筋萎縮、および脂肪蓄積の増加に関連する炭水化物および脂質代謝の異常の有病率が上昇している。身体組成が実質的に変更され、代謝的に活性な筋肉量および骨が迅速に長期間にわたって減退し、中心脂肪蓄積が著しく増加することによって典型的に表される。後者は、損傷の2〜7カ月後に生じる体重の実質的な増加が有利な不適応の代謝プロファイルに寄与する。これらの併存リスク因子が共に生じることにより、あらゆる原因による心血管疾患、糖尿病、および心血管代謝疾患としてのリスククラスター化が刺激され、後者は、異脂肪血症、耐糖能障害およびインスリン抵抗性に関する構成成分ハザードを含む。
迅速かつ重大な筋消耗は、脊髄損傷を有するものに影響を与え、脱神経した肢だけでなく全身に影響を与える。筋肉喪失は、脱神経(麻痺した肢の)、固定化、炎症、麻痺した筋肉から放出される因子、ステロイドの使用、感染、および栄養の欠乏を含めた因子の組み合わせに起因すると考えられている。除脂肪筋肉量の大部分(約30%)が損傷後の最初の6週間(急性期)で喪失する。この加速された除脂肪量喪失率は、除脂肪量の減少(10年ごとに)が四肢麻痺では3%および対麻痺では2.4%(健康な対照において見られる1%の減少と比較して)である慢性の状態になるまで続く(Spungen、2003年)。この加速された筋萎縮は、早発性筋肉減少症に寄与する。
SCI患者では全身組成の重大な変化が生じる。具体的には、除脂肪筋肉量が脂肪量で置き換えられ、SCI患者は健康な対照よりも平均してBMI単位あたり13%多い脂肪組織を有し、筋肉内脂肪の有意な増加を伴う(Spungen、2003年、Gorgey、2007年)。この組成の全身変化(約60〜70%が肥満である)は、心血管疾患、II型糖尿病、および甲状腺障害の有病率の上昇によって証明される、代謝に対する重大な影響を有する。
脊髄損傷後の機械的負荷軽減(mechanical unloading)は骨恒常性の混乱にも転換される。SCI患者では、骨塩量(bone mineral content)が低減し、骨粗鬆症を発症し、骨折率が上昇する(50%ものSCI患者で損傷後骨折が生じる)(Battaglino、2013年)。骨折は、入院を導き、圧迫潰瘍、膝および股関節の拘縮が発症するリスク、および高血圧発症を経験するリスクが増大することによる重大な結果を有し得る。
SCI患者における全体的な除脂肪量の増加および脂肪量の減少は、磁気共鳴画像法による大腿もしくは上腕筋肉体積、または二重エネルギーX線吸光光度法もしくはDEXAによる全身組成など、いくつかの十分に検証された方法によってモニターすることができる。そのような測定は、当該分野で日常的に実施される。
治療の転帰または進行(例えば、全体的な臨床効果)は、SCI診療を評価するために一般に使用される任意のよく特徴付けられた試験を使用することによって測定され得る。これらの試験は、i)各尺度の臨床的な有用性および精神測定的性質に関する情報を提供するため;ii)臨床医が特定の患者(複数可)に対して調整された適切な尺度を選択するのを補助するため;iii)ある特定の治療が有益である可能性がある個体を同定するため;iv)進行をモニターするため;v)処置が有効であるかどうかを評価するため;ならびに/または、vi)プログラムにより患者および医療専門家に対するサービスを改善するのを補助するために有用である。患者に利用可能な好適な臨床的評価ツール/試験は、これらに限定されないが、以下を含む:
支援技術の評価に関して、有用な試験は以下を含む:Assistive Technology Device Predisposition Assessment(ATD−PA);Quebec User Evaluation of Satisfaction with Assistive Technology(QUEST 2.0);および、Wingate Anaerobic Testing(WAnT)。
地域社会への復帰の評価に関して、有用な試験は以下を含む:Assessment of Life Habits Scale(LIFE−H);Community Integration Questionnaire(CIQ);Craig Handicap Assessment&Reporting Technique(CHART);Impact on Participation and Autonomy Questionnaire(IPAQ);Physical Activity Recall Assessment for People with Spinal Cord injury PARA−SCI);Physical Activity Scale for Individuals with Physical Disabilities(PASIPD);および、Reintegration to Normal Living(RNL)Index。
下肢&歩行の評価に関して、有用な試験は以下を含む:10 Meter Walking Test(10 MWT);6−Minute Walk Test(6MWT);Berg Balance Scale(BBS);Clinical Outcome Variables Scale(COVS);Functional Standing Test(FST);Spinal Cord Injury Functional Ambulation Inventory(SCI−FAI);Timed Up and Go Test(TUG);ならびに、Walking Index for Spinal Cord Injury(WISCI)およびWISCI II。
精神健康の評価に関して、有用な試験は以下を含む:Beck Depression Inventory(BDI);Brief Symptom Inventory(BSI);CAGE Questionnaire;Center for Epidemiological Studies Depression Scale(CES−DおよびCES−D−10);Depression Anxiety Stress Scale−21(DASS−21);Fatigue Severity Scale(FSS);Hospital Anxiety and Depression Scale(HADS);Patient Health Questionnaire−9(PHQ−9);Scaled General Health Questionnaire−28(GHQ−28);Symptom Checklist−90−Revised(SCL−90−R);ならびに、Zung Self−Rating Depression Scale(SDS)。
神経学的障害および自律神経障害の評価に関して、有用な試験は以下を含む:American Spinal Injury Association Impairment Scale(AIS):International Standards for Neurological Classification of Spinal Cord Injury;および、Surface Electromyography(sEMG)。
影響を受けた生理学的システムについての他の有用な評価システムは以下を含む:Exercise Self−Efficacy Scale(ESES);Moorong Self−Efficacy Scale(MSES);Spinal Cord Injury Secondary Conditions Scale(SCI−SCS);Spinal Cord Lesion Coping Strategies Questionnaire(SCL CSQ);Spinal Cord Lesion Emotional Wellbeing Questionnaire(SCL EWQ);および、Wingate Anaerobic Testing(WAnT)。
疼痛の評価に関して、有用な試験は以下を含む:Brief Pain Inventory(BPI);Classification System for Chronic Pain in SCI;Donovan SCI Pain Classification System;Multidimensional Pain Inventory(MPI)−SCI version;Multidimensional Pain Readiness to Change Questionnaire(MPRCQ2);Quantitative Sensory Testing(QST);Tunk’s Classification Scheme;および、Wheelchair Users Shoulder Pain Index(WUSPI)。
生活の質および健康状態の評価に関して、有用な試験は以下を含む:Incontinence Quality of Life Questionnaire(I−QOL);Life Satisfaction Questionnaire(LISAT−9、LISAT−11);Quality of Life Index(QLI)−SCI Version;Quality of Life Profile for Adults with Physical Disabilities(QOLP−PD);Quality of Well Being(QWB)およびQuality of Well Being−Self−Administered(QWB−SA);Qualiveen;Satisfaction with Life Scale(SWLS、Deiner Scale);Short Form 36(SF−36);Sickness Impact Profile 68(SIP 68);ならびに、World Health Organization Quality of Life−BREF(WHOQOL−BREF)。
セルフケア&日常生活の評価に関して、有用な試験は以下を含む:Appraisals of DisAbility:Primary and Secondary Scale(ADAPSS);Barthel Index(BI);Frenchay Activities Index(FAI);Functional Independence Measure(FIM);Functional Independence Measure Self−Report(FIM−SR);Klein−Bell Activities of Daily Living Scale(K−B Scale);Lawton Instrumental Activities of Daily Living scale(IADL);Quadriplegia Index of Function(QIF);Quadriplegia Index of Function Modified(QIF−Modified);Quadriplegia Index of Function−Short Form(QIF−SF);Rivermead Mobility Index(RMI);Self Care Assessment Tool(SCAT);Self Reported Functional Measure(SRFM);Spinal Cord Independence Measure(SCIM);および、Spinal Cord Injury Lifestyle Scale(SCILS)。
性(sexuality)および生殖に関して、有用な試験は以下を含む:Emotional Quality of the Relationship Scale(EQR);Knowledge、Comfort、Approach and Attitude towards Sexuality Scale(KCAASS);Sexual Attitude and Information Questionnaire(SAIQ);Sexual Behaviour Scale(SBS);Sexual Interest and Satisfaction Scale(SIS);Sexual Interest、Activity an;および、Satisfaction(SIAS)/Sexual Activity and Satisfaction(SAS)Scales。
皮膚の健康の評価に関して、有用な試験は以下を含む:Abruzzese Scale;Braden Scale;Gosnell Measure;Norton Measure;Skin Management Needs Assessment Checklist(SMNAC);Spinal Cord Injury Pressure Ulcer Scale−Acute(SCIPUS−A);Spinal Cord Injury Pressure Ulcer Scale(SCIPUS)Measure;Stirling’s Pressure Ulcer Severity Scale;および、Waterlow Scale。
痙縮の評価に関して、有用な試験は以下を含む:Ashworth and Modified Ashworth Scale(MAS);Pendulum Test(Wartenberg);Penn Spasm Frequency Scale(PSFS);Spinal Cord Assessment Tool for Spastic Reflexes(SCATS);Spinal Cord Injury Spasticit;および、Evaluation Tool(SCI−SET)。
上肢の機能性の評価に関して、有用な試験は以下を含む:Box and Block Test(BBT);Capabilities of Upper Extremity Instrument(CUE);Graded Redefined Assessment of Strength, Sensibility and Prehension(GRASSP);Grasp and Release Test(GRT);Hand−Held Myometer;Jebsen Hand Function Test(JHFT);Modified Functional Reach Test(mFRT);Six−Minute Arm Test(6−MAT);Sollerman Hand Function Test;Tetraplegia Hand Activity Questionnaire(THAQ);および、Van Lieshout Test Short Version(VLT−SV)。
車いすの評価に関して、有用な試験は以下を含む:4 Functional Tests for Persons who Self−Propel a Manual Wheelchair(4FTPSMW);Timed Motor Test(TMT);Tool for assessing mobility in wheelchair−dependent paraplegics;Wheelchair Circuit(WC);および、Wheelchair Skills Test(WST)。
ミオスタチンの筋肉量および代謝に対する影響に基づいて、ミオスタチン阻害剤、例えば、抗ミオスタチン抗体またはその抗原結合性部分は、SCIを有して生存しているものに影響を与えるいくつもの長期的な健康上の結果(上に列挙されているものなどの1つまたは複数の標準化試験/ツールによって測定され得る)を強化することができ、また、損傷時および/または慢性の状態の患者に臨床的に意味がある利点を生じさせる。実際に、本発明者らは、驚いたことに、ミオスタチン阻害剤、例えば、抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体によってミオスタチン活性化を特異的に阻害することには、損傷または病変の下の筋肉を含め、被験体における筋肉機能に対する正の影響があることを発見した。具体的には、ミオスタチン阻害剤、例えば、抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体を部分的な脱神経の動物モデルに投与することにより、損傷を受けた被験体における筋萎縮が防止され筋肉量が増加しただけでなく、損傷を受けた筋肉の機能も増強され、ならびに、ニューロン損傷に関連する代謝制御不全が防止され、したがって、被験体の全体的な代謝的健康が改善され、これは、有意な長期的利点を提供するものであり得る。
D.他の疾患
本開示の別の態様は、悪液質に関連する疾患または状態を有する被験体を処置する方法を含む。悪液質に関連する例示的疾患および状態は、非限定的に、がん、慢性心不全、後天性免疫不全症候群(AIDS)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、および慢性腎疾患(CKD)を含む。
本開示の別の態様は、まれな疾患に関連する疾患または状態を有する被験体を処置する方法を含む。例示的なまれな疾患および状態は、非限定的に、骨形成不全症、散発性封入体筋炎、および急性リンパ芽球性白血病を含む。
キット
本開示は、ミオパチーを伴う疾患/障害を緩和することにおける使用のためのキットも提供する。そのようなキットは、ミオスタチン阻害剤、例えば、抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体またはその抗原結合性断片、例えば本明細書に記載のもののいずれかを含む1つまたは複数の容器を含んでよい。
いくつかの実施形態ではキットは、本明細書に記載の方法のいずれかによる使用のための指示を含んでよい。含まれる指示は、本明細書に記載の標的疾患を処置する、発病を遅らせるまたは緩和するためのミオスタチン阻害剤、例えば、抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体またはその抗原結合性断片の投与の記載を含み得る。キットは、個体が標的疾患を有するかどうかを同定することに基づいて処置に好適な個体を選択する記載をさらに含み得る。さらに他の実施形態では、指示は、標的疾患のリスクがある個体に抗体を投与する記載を含む。
ミオスタチン阻害剤、例えば、抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体またはその抗原結合性断片の使用に関する指示は、一般に目的の処置のための投薬量、投与スケジュールおよび投与の経路についての情報を含む。容器は、単位用量、バルクパッケージ(例えば複数用量パッケージ)または部分単位用量であってよい。本開示のキット中に供給される指示は、典型的にはラベルまたはパッケージ挿入物(例えばキットに含まれる紙のシート)上の指示書であるが、機械で読み取り可能な指示(例えば磁気または光学保存ディスク上に書き込まれた指示)も許容される。
ラベルまたはパッケージ挿入物は組成物がミオパチーを伴う疾患または障害を処置する、発病を遅らせるおよび/または緩和するために使用されることを示す。指示は、本明細書に記載の方法のいずれかを実施するために提供されてよい。
本開示のキットは、好適なパッケージ中にある。好適なパッケージは、これらに限定されないが、バイアル、ビン、ジャー、可撓性パッケージ(例えばシールされたマイラーまたはプラスチックバッグ)などを含む。吸入器、鼻投与デバイス(例えばアトマイザー)またはミニポンプなどの注入デバイスなどの特定のデバイスとの組み合わせでの使用のためのパッケージも検討される。キットは、無菌アクセスポートを有してよい(例えば容器は皮下注射針によって貫通できるストッパーを有する静脈内用溶液バッグまたはバイアルであってよい)。容器も無菌アクセスポートを有してよい(例えば容器は皮下注射針によって貫通できるストッパーを有する静脈内用溶液バッグまたはバイアルであってよい)。組成物中の少なくとも1つの活性剤は、本明細書に記載の抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体またはその抗原結合性断片である。
任意選択でキットは、緩衝剤および解釈の情報などの追加的構成成分を提供できる。通常キットは、容器および、容器上にまたは容器に付随してラベルまたはパッケージ挿入物(複数可)を含む。いくつかの実施形態では本開示は、上に記載のキットの内容物を含む製造品を提供する。
プロ/潜在型ミオスタチンを検出するためのアッセイ
いくつかの実施形態では本明細書で提供される方法および組成物は、被験体から得られた試料中のプロ/潜在型ミオスタチンを検出するための方法に関する。本明細書において使用される場合、「被験体」は、個々の生物、例えば個々の哺乳動物を指す。いくつかの実施形態では被験体はヒトである。いくつかの実施形態では被験体は非ヒト哺乳動物である。いくつかの実施形態では被験体は非ヒト霊長類である。いくつかの実施形態では被験体はげっ歯類である。いくつかの実施形態では被験体はヒツジ、ヤギ、ウシ、ネコまたはイヌである。いくつかの実施形態では被験体は、脊椎動物、両生類、は虫類、魚類、昆虫、ハエまたは線虫である。いくつかの実施形態では被験体は実験動物である。いくつかの実施形態では被験体は、遺伝子操作されており、例えば遺伝子操作された非ヒト被験体である。被験体は、いずれの性で任意の発達段階であってよい。いくつかの実施形態では被験体は、患者または健康なボランティアである。いくつかの実施形態では、被験体は、「健康な被験体」である(例えば、筋萎縮などの筋肉の状態が発症するリスクがないが、それにもかかわらず筋肉の量および/または機能の増大が有益である可能性がある)。いくつかの実施形態では、被験体は、筋萎縮または脱力を有するか、またはそれを発症するリスクがある。いくつかの実施形態では、被験体は、筋萎縮または脱力を有するか、またはそれを発症するリスクがあり、筋肉の量および/または機能の増大が有益である。
いくつかの実施形態では、被験体から得られた試料中のプロ/潜在型ミオスタチンを検出するための方法は(a)抗原が試料中に存在する場合、抗体の抗原への結合に好適な条件下で試料を抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体またはその抗原結合性断片と接触させ、それにより結合複合体を形成すること、および(b)抗原に結合した抗体または抗原結合性断片のレベルを決定すること(例えば結合複合体のレベルを決定すること)を含む。
本明細書において使用される場合、結合複合体は、抗原(例えばプロ/潜在型ミオスタチンタンパク質)に結合した抗体(抗原結合性断片を含む)の生体分子複合体を指す。結合複合体は、単一の特異性を有する抗体または異なる特異性を有する2つもしくはそれ超の抗体もしくは抗原結合性断片を含んでよい。一実施形態では結合複合体は、同じ抗原上の異なる抗原性部位を認識する2つまたはそれ超の抗体を含む。いくつかの場合では抗体は、RNA、DNA、多糖またはタンパク質などの他の生体分子に結合している抗原に結合できる。一実施形態では結合複合体は異なる抗原を認識する2つまたはそれ超の抗体を含む。いくつかの実施形態では結合複合体中の抗体(例えば抗原に結合した固定化抗体)は、それ自体が抗原として抗体(例えば検出可能に標識された抗体)に結合できる。したがって、結合複合体は、いくつかの場合では、複数の抗原および複数の抗体または抗原結合性断片を含む場合がある。
結合複合体中に存在する抗原は、in situでのそれらの天然のコンフォメーションであってもなくてもよい。いくつかの実施形態では結合複合体は、抗体と精製されたタンパク質抗原または抗原を含む単離されたタンパク質との間で形成され、その中で抗原はin situでのその天然のコンフォメーションではない。いくつかの実施形態では、結合複合体は、抗体と精製されたタンパク質抗原との間で形成され、その中で抗原はin situでのその天然のコンフォメーションではなく、固体支持体(例えばPVDF膜)に固定されている。いくつかの実施形態では結合複合体は、抗体と、例えばin situに天然のコンフォメーション(例えば細胞表面上)に存在する細胞表面タンパク質とで形成される。
結合複合体中の抗体は、検出可能に標識されてもされなくてもよい。いくつかの実施形態では結合複合体は、検出可能に標識された抗体および標識されていない抗体を含む。いくつかの実施形態では結合複合体は、検出可能に標識された抗原を含む。いくつかの実施形態では結合複合体中の抗体は、1つまたは複数の固体支持体に固定されている。いくつかの実施形態では結合複合体中の抗原は、1つまたは複数の固体支持体に固定されている。例示的な固体支持体は、本明細書に開示されており、当業者に明らかである。結合複合体の前述の例は限定を意図しない。結合複合体の他の例は当業者に明らかである。
検出、診断およびモニタリング方法のいずれにおいても抗体(抗原結合性断片を含む)または抗原は、固体支持体表面に直接または間接のいずれかでコンジュゲートされてよい。固体支持体へのコンジュゲーションのための方法は、標準的であり、共有結合的および非共有結合的相互作用を介して達成されてよい。コンジュゲーション方法の非限定的例は、吸着、架橋結合、プロテインA/G抗体相互作用およびストレプトアビジン−ビオチン相互作用を含む。コンジュゲーションの他の方法は、当業者に容易に明らかである。
いくつかの態様では、検出、診断およびモニタリング方法は、抗原(例えばプロ/潜在型ミオスタチン)に結合した抗体(抗原結合性断片を含む)のレベルを1つまたは複数の参照基準と比較することを含む。参照基準は、例えばプロ/潜在型ミオスタチンを有するまたは有さない被験体における対応するプロ/潜在型ミオスタチンのレベルであってよい。一実施形態では参照基準は、プロ/潜在型ミオスタチン(例えばバックグラウンドレベル)を含有しない試料において検出されるプロ/潜在型ミオスタチンのレベルである。代替的にバックグラウンドレベルは、特定のプロ/潜在型ミオスタチンを含有する試料から試料を非特異的抗体(例えば非免疫血清から得られた抗体)と接触させることによって決定され得る。再度参照基準は、プロ/潜在型ミオスタチンを含有する試料(例えば陽性対照)において検出されたプロ/潜在型ミオスタチンのレベルであってよい。いくつかの場合、参照基準は試料中のプロ/潜在型ミオスタチンの濃度の変動と関連する一連のレベルであってよく、試験試料中のプロ/潜在型ミオスタチンの濃度を定量するのに有用であり得る。参照基準の前述の例は、限定ではなく、他の好適な参照基準は、当業者に容易に明らかである。いくつかの実施形態ではプロ/潜在型ミオスタチンに結合する抗体のレベルは、成熟ミオスタチンのレベルと比較される。いくつかの場合ではプロ/潜在型ミオスタチンのレベルは、試料中の不活性ミオスタチン対活性ミオスタチンの比率を決定するために成熟ミオスタチンと比較される。
プロ/潜在型ミオスタチンのレベルは、生物学的試料から本明細書で提供されるとおり測定され得る。生物学的試料は、被験体または細胞から得られてよい任意の生物学的材料を指す。例えば生物学的試料は、全血、血漿、血清、唾液、脳脊髄液、尿、細胞(もしくは細胞溶解物)または組織(例えば正常組織もしくは腫瘍組織)であってよい。いくつかの実施形態では生物学的試料は、流体試料である。いくつかの実施形態では生物学的試料は、固形組織試料である。例えば組織試料は、非限定的に骨格筋、心臓の筋肉、脂肪組織および他の器官由来の組織を含んでよい。いくつかの実施形態では生物学的試料は、生検試料である。いくつかの実施形態では固形組織試料は、当技術分野における日常的方法を使用して流体試料にされてよい。
生物学的試料は、細胞株の1つまたは複数の細胞も含んでよい。いくつかの実施形態では細胞株は、ヒト細胞、霊長類細胞(例えばベロ細胞)、ラット細胞(例えばGH3細胞、OC23細胞)またはマウス細胞(例えばMC3T3細胞)を含む。非限定的にヒト胚性腎臓(HEK)細胞、HeLa細胞、National Cancer Instituteの60種のがん細胞株(NCI60)由来のがん細胞、DU145(前立腺がん)細胞、Lncap(前立腺がん)細胞、MCF−7(乳がん)細胞、MDA−MB−438(乳がん)細胞、PC3(前立腺がん)細胞、T47D(乳がん)細胞、THP−1(急性骨髄性白血病)細胞、U87(神経膠芽腫)細胞、SHSY5Yヒト神経芽細胞腫細胞(骨髄腫からのクローニング)およびSaos−2(骨がん)細胞を含む種々のヒト細胞株がある。
さらなる実施形態は、疾患または状態を有するまたはそれを有するリスクがある被験体において疾患、状態または任意のその処置(例えばミオパチーまたはミオパチー処置)をモニタリングするための方法であって、(a)生物学的試料を被験体から得ること、(b)プロ/潜在型ミオスタチンを検出する抗体を使用して生物学的試料中のプロ/潜在型ミオスタチンのレベルを決定すること、ならびに(c)1回または複数回の機会にステップ(a)および(b)を反復することを含む方法に関する。ミオスタチンは、筋萎縮症についてのバイオマーカーとして使用されているが、現在利用可能な商業的方法および試薬(例えばELISAおよびウエスタンブロットにおいて使用される抗体)は、ミオスタチンに対して特異的ではないか、成熟ミオスタチンだけを検出するか、またはミオスタチンを全く検出しないかのいずれかである。したがって、疾患および/または状態(例えば筋萎縮症)の文脈において診断目的でプロ/潜在型ミオスタチンを検出するための方法および試薬(例えば抗体)が本明細書で提供される。一例としてプロ/潜在型ミオスタチンのレベルは、被験体またはそれ由来の生物学的試料において疾患または状態の進行を検出またはモニタリングするために測定されてよい。別の例としてプロ/潜在型ミオスタチンのレベルは、被験体またはそれ由来の生物学的試料において疾患または状態に対する処置への応答をモニタリングするために測定されてよい。プロ/潜在型ミオスタチンのレベルが、被験体が有する疾患もしくは状態または被験体が供され得る任意の処置レジメンに応じて異なる場合がある任意の好適な期間にわたってモニタリングされてよいことは理解されるべきである。
別の実施形態は、上に記載の抗体、抗原結合性断片、ポリヌクレオチド、ベクターまたは細胞のいずれか1つおよび任意選択で検出のための好適な手段を含む診断用組成物に関する。抗体は、例えば、それらを液相でまたは固相担体に結合させて利用し得るイムノアッセイにおける使用に適する。抗体を利用する場合があるイムノアッセイの例は、直接または間接形式での競合的および非競合的イムノアッセイである。そのようなイムノアッセイの例は、酵素結合イムノアッセイ(ELISA)、放射イムノアッセイ(RIA)、サンドイッチ(免疫アッセイ(immunometric assay))、フローサイトメトリー、ウエスタンブロットアッセイ、免疫沈降アッセイ、免疫組織化学、免疫顕微鏡検査(immuno−microscopy)、側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ(lateral flow immuno−chromatographic assay)およびプロテオミクスアレイである。抗原および抗体は、多数の異なる固体支持体(例えば担体、膜、カラム、プロテオミクスアレイなど)に結合させてよい。固体支持体材料の例は、ガラス、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、デキストラン、ナイロン、アミロース、ニトロセルロースなどの天然および修飾セルロース、ポリアクリルアミド、アガロースおよびマグネタイトを含む。支持体の性質は、固定されているかまたは溶液中に懸濁されているか(例えばビーズ)のいずれであってもよい。
さらなる実施形態によって、本明細書で提供される抗体(抗原結合性断片を含む)は、組織試料、血液試料または任意の他の適切な体液試料であってよい被験体由来の生物学的試料を得ることによって、被験体におけるプロ/潜在型ミオスタチン発現を評価するための方法においても使用され得る。手順は、血液試料(全血、血清、血漿)、組織試料またはそれから単離されたタンパク質試料を、抗体と抗原との間の結合複合体の形成を可能にする条件下で抗体と接触させることを含み得る。次いでそのような結合複合体のレベルは、任意の好適な方法によって決定され得る。いくつかの実施形態では生物学的試料は、抗原が試料中に存在する場合に抗体のプロ/潜在型ミオスタチンタンパク質への結合、および抗原に結合した抗体からなる結合複合体の形成に好適な条件下で抗体と接触させる。この接触させるステップは、チューブ、プレートウェル、メンブレンバス、細胞培養皿、顕微鏡スライドなどの反応チャンバーにおいて典型的には実施される。いくつかの実施形態では抗体は固体支持体に固定される。いくつかの実施形態では抗原は固体支持体に固定される。いくつかの実施形態では固体支持体は、反応チャンバーの表面である。いくつかの実施形態では固体支持体は、ポリマー性膜(例えばニトロセルロースストリップ、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜など)である。他の適切な固体支持体は使用されてよい。
いくつかの実施形態では抗体は、抗原と接触させる前に固体支持体に固定される。他の実施形態では抗体の固定は、結合複合体の形成後に実施される。さらに他の実施形態では抗原は、結合複合体の形成の前に固体支持体に固定される。検出試薬は、固定化された結合複合体を検出するために反応チャンバーに加えられる。いくつかの実施形態では検出試薬は、抗原に対して指向される、検出可能に標識された二次抗体を含む。いくつかの実施形態では一次抗体は、それ自体が検出可能に標識され、そのため検出試薬である。
一態様では検出方法は、固体支持体に抗体を固定するステップ;試料(例えば生物学的試料または単離されたタンパク質試料)を、抗原が試料中に存在する場合に抗原の抗体への結合を可能にする条件下で固体支持体に適用するステップ;固体支持体から過剰な試料を除去するステップ;検出可能に標識された抗体を、検出可能に標識された抗体の抗原結合固定化抗体への結合を可能にする条件下で適用するステップ;固体支持体を洗浄するステップおよび固体支持体上の標識の存在をアッセイするステップを含む。
いくつかの実施形態では抗原は、反応チャンバー(例えばメンブレンバス)中の抗体と接触させる前に、PVDF膜などの固体支持体に固定される。検出試薬は、固定化された結合複合体を検出するために反応チャンバーに加えられる。いくつかの実施形態では検出試薬は、抗原に対して指向される、検出可能に標識された二次抗体を含む。いくつかの実施形態では検出試薬は、一次抗体に対して指向される、検出可能に標識された二次抗体を含む。本明細書で開示のとおり検出可能な標識は、例えば放射性同位元素、フルオロフォア、発光分子、酵素、ビオチン成分、エピトープタグまたは色素分子であってよい。いくつかの実施形態では一次抗体は、それ自体が検出可能に標識され、そのため検出試薬である。好適な検出可能な標識は、本明細書に記載され、当業者に容易に明らかである。
したがって、(a)抗原結合試薬(例えばプロ/潜在型ミオスタチン結合試薬)として、検出可能に標識された抗体および/または非標識抗体、(b)検出試薬、ならびに任意選択で(c)試料中の抗原を検出するための試薬を使用するための完全な指示を含む家庭内または臨床使用に好適な診断用キット(ポイントオブケアサービス)が提供される。いくつかの実施形態では診断キットは、固体支持体に固定された抗体および/またはプロ/潜在型ミオスタチンを含む。本明細書に記載の固体支持体のいずれかは、診断キットへの組み込みに好適である。好ましい実施形態では固体支持体は、プレートウェルの反応チャンバーの表面である。典型的にはプレートウェルは、6個、12個、24個、96個、384個および1536個から選択されるいくつかのウェルを有するマルチウェルプレート中にあるが、そのように限定されない。他の実施形態では診断キットは、検出可能に標識された抗体を提供する。診断キットは、これらの実施形態に限定されず、キット組成物における他のバリエーションは当業者に容易に明らかである。
本発明は、いかなる形でも限定されるものではない以下の実施例によってさらに例示される。本出願全体を通して引用されている全ての参考文献、特許および公開特許出願の全内容、ならびに図面および配列表は、これにより参照により本明細書に組み込まれる。
(実施例1:抗体の生成および選択)
抗体の概要
Ab2は、ヒトのプロミオスタチンおよび潜在型ミオスタチンに高い親和性(ForteBio BLIによりKd=3420pM)で結合するIgG4/ラムダアイソタイプの完全ヒト抗プロ/潜在型ミオスタチンモノクローナル抗体である。抗体は、0.5マイクロモル濃度の範囲のIC50値(アッセイの限界またはほぼ限界である)で、タンパク質分解を介したプロ/潜在型ミオスタチンの活性化を阻害することができる。ポリペプチドの理論的分子量は、144,736Daであり、その理論的pIは6.7である。抗体ディスプレイを使用する親和性の最適化を行って、より高い親和性の改変体Ab4およびAb6を同定した。親和性最適化改変体を、ヒトIgG4/ラムダアイソタイプフレームワークにおいて同様に構築する。
親抗体のプラットフォームおよび同定
親Ab1抗体は、選択のための一次抗原としてプロおよび潜在型ミオスタチンを使用したナイーブファージディスプレイライブラリーの選択を介して同定した。ファージ選択および初回スクリーニングは、McCaffertyら(McCaffertyら、1990年)によって記載される形式と類似の形式で従来のscFvをディスプレイするライブラリーを使用して実施した。各選択ラウンドは、事前除去(pre−clearing)(非特異的ファージ抗体を除去するため)、抗原とのインキュベーション、洗浄、溶出、および増幅からなった。選択は、固相(イムノチューブにコーティングされたビオチン化抗原)および溶液相(ストレプトアビジンコーティングビーズを使用して捕捉されたビオチン化抗原)パニング(panning)戦略の両方を使用して複数ラウンドを介して行われた。
全体で10,000個の個々のscFvクローンを、2つの別個の作戦を通してプロまたは潜在型ミオスタチンに対する結合に関してスクリーニングした。第1のプログラムは、抗原としてプロ/潜在型ミオスタチンを利用したが、第2の作戦は、抗原として潜在型ミオスタチンを使用した。目的のscFvクローンのDNAをシークエンシングして、独自のクローン216個を同定した。結合陽性のscFvクローンを、プロGDF11ならびに無関係なタンパク質のパネルに対する結合に関してカウンタースクリーニングして、プロ/潜在型ミオスタチンに関する特異性を確認した。独自のscFvクローンのパネルから101個(GDF8特異的クローン134個中)を、さらに特徴付けるために完全長のIgG(IgG1アイソタイプ)に変換した。
完全長のIgG抗体を、ヒトおよびネズミのプロおよび潜在型形態のミオスタチンならびにGDF11に対する結合に関してELISAによってさらに特徴付けた。ミオスタチンプロドメイン、プロTGFβ(ヒトおよびネズミ)、ミオスタチンの成熟増殖因子、GDF11成熟増殖因子、アクチビンA増殖因子、およびプロアクチビンAに対する結合に関しても、抗体をスクリーニングした。リード抗体を、ヒトおよびネズミのプロおよび潜在型ミオスタチンと交差反応するが、GDF11ともアクチビンともTGFβタンパク質とも相互作用しないことに基づいて選択した。
2つの形態のエピトープビニング(epitope binning)を使用した。第1に、ミオスタチンのプロドメインの一部とGDF11の一部とを交換したキメラ構築物を設計して生成した。これらのキメラタンパク質を、ELISAによって、スクリーニング抗体との相互作用に関してアッセイした。ビオチン化プロ/潜在型ミオスタチン抗体がストレプトアビジンコーティングバイオセンサーチップに固定されたForteBio BLI機器を使用してエピトープビニングを行い、センサー応答によって抗体の交差遮断を評価した。ELISA結合実験のデータと共に、これらのエピトープビニング実験により、本発明者らの機能的に活性なリード抗体(以下を参照されたい)を、3つの異なるエピトープ群(表5を参照されたい)に分離することができた。
*一元配置ANOVAとDunnettにより統計学的に有意。
Ab8は、潜在型ミオスタチンに結合せず、プロミオスタチンのみに結合する。ネズミプロ/潜在型ミオスタチン調製物は約40%の潜在型材料を有し、そのために機能的アッセイにおいて見かけの効能が低減する。
ND:決定していない
抗体がプロ/潜在型ミオスタチンに結合してその活性化を阻害する能力を評価するために、いくつかの生化学および細胞アッセイが確立された。プロおよび潜在型ミオスタチンに対する結合動態を、ビオチン化基質タンパク質がストレプトアビジンコーティングセンサーチップに固定されたForteBio Octetによって測定した。スクリーニングからの候補の平衡解離定数を表5に示す。
IgGがミオスタチンのシグナル伝達を阻害する能力を測定するために、ミオスタチン活性化アッセイを開発した。mTll2(トロイドプロテアーゼはミオスタチンの活性化を必要とする)またはフューリン(プロドメインから成熟増殖因子を切断するプロタンパク質転換酵素)のいずれかを過剰発現する細胞から馴化培地を生成した。試験抗体とのプレインキュベーション後、プロ/潜在型ミオスタチンまたは潜在型ミオスタチンを、mTll2およびフューリン馴化培地(プロミオスタチン)の混合物またはmTll2馴化培地(潜在型ミオスタチン)のいずれかと共にインキュベートした。一晩のタンパク質分解反応の後、成熟増殖因子の放出を、293T細胞におけるCAGAベースのレポーターアッセイを使用して測定した。抗体を、同じアッセイにおいて用量反応によってさらに確認し、その結果を表5に示す。
5つの親抗体(表5)は、上記のアッセイの全てにおいて一貫して強力な選択性および活性を示し、これらをin vivoでさらに特徴付けるためにさらに選択した(実施例2において考察される)。Ab8は、潜在型ミオスタチンを認識しないが、一貫性のために、プロ/潜在型ミオスタチンに対するこれらの抗体の結合および活性を要約する。
抗体候補の作用機序を決定するために、図3に示すようにミオスタチンのプロドメインに対して惹起されたポリクローナル抗体を使用してウエスタンブロットによって試料を分析した。これによって、mTll2切断後に生成されるミオスタチンプロドメインの断片(四角で囲った部分)の追跡が可能となった。Ab1の濃度が増加するにつれて、この断片の生成の用量依存的な減少が認められた。この実験は、エピトープビン1の抗体が、プロテアーゼのトロイドファミリーによるプロおよび潜在型ミオスタチンの切断を遮断することによって作用することを示している。
活性抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体のin vitroおよびin vivo活性に基づいて、Ab1を、親和性成熟、生殖系列化、および製造可能性分析を含むさらなる最適化のためのリードとして選択した。
Ab1の最適化
Ab1抗体をさらなる最適化のために選択した。プロ/潜在型ミオスタチンの親和性を、酵母ディスプレイを使用して最適化した。さらに、ヒト可変領域フレームワーク内の非生殖系列アミノ酸位置の起こり得る免疫原性傾向を低減させるために、Ab1の配列を生殖系列化した。
酵母ディスプレイによるAb1の親和性最適化
Ab1親抗体を、酵母に基づくscFvディスプレイアプローチを使用してプロ/潜在型ミオスタチンに対する結合に関して最適化した。簡単に説明すると、Ab1が利用するヒトフレームワークに対応する抗体ディープシークエンシングを使用して天然のヒト抗体レパートリーにおいて観察されるアミノ酸頻度に基づいて、選択されたCDR位置に点変異を導入する3つの異なるscFvライブラリーを作製した。それぞれのライブラリーは、得られた重鎖または軽鎖のそれぞれの改変体が、それぞれのCDRに1つの置換を有し、全体で3つの置換を有するように、それぞれのCDRに1つの点変異が導入されたAb1配列に基づくscFvを含有した。3つのライブラリーを、FACSベースのソーティングおよび選択のために使用して、プロ/潜在型ミオスタチンに対してより高い結合親和性を有するクローンのプールを同定した(図23)。酵母発現scFvクローンの直接結合を使用して、哺乳動物細胞培養物において発現される完全長のIgGに転換するための抗体を選択した。
酵母の作戦で同定された高親和性のscFvクローンの多くは、重鎖の28位で置換を含有した。いくつかのクローンでは、トレオニンのアスパラギンへの置換によって、CDRH1内で非標準のN−グリコシル化モチーフが組み込まれていた。抗体の可変領域内でのN−グリコシル化は望ましくないことがあるので、グリコシル化モチーフを含有するいかなるクローンも、この位置でアラニンを含有するようにさらに置換した。
次に、プロおよび潜在型ミオスタチンに対する結合動態を、親和性最適化構築物のそれぞれに関してoctetによって評価して、親Ab1の動態と比較した(実施例2において考察する)。クローンは全て、ミオスタチンに関して有意に増加した結合親和性を示し、GDF11と比較した選択的結合プロファイルに基づいて、Ab3およびAb5の2つを選択した。
抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体の一次配列および骨格
親Ab1の可変領域とその親和性最適化改変体との配列アラインメントを以下に示す。相補性決定領域(CDR)は、Kabat(下線)およびIMGT命名法(太字)を使用して定義される。親Ab1からの置換を、小文字の赤字で示す(下記および図24A〜24B)。
抗体操作およびアイソタイプ選択の根拠
いくつかの実施形態では、ミオスタチンの遮断にとって有用な抗体は、エフェクター機能を欠如する。このため、ヒト化構築物に関して、IgG4−Fc領域を選択した。IgG4アイソタイプの抗体は、補体C1qに対する結合が不良で、したがって補体を有意に活性化しない。これらの抗体はまた、Fcγ受容体に対する結合も弱く、そのため抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)は非効率的であるか、または存在しない。
ネイティブIgG4 mAbに関して起こることが知られているFabアーム交換による起こり得る困難な状況を回避するために、Ab1およびその改変体を、セリン228(EU番号付け:Kabat番号付け残基241)がプロリンに変換されてIgG1様(CPPCP(配列番号58))ヒンジ配列が生じる安定化「Adair」変異(Angal、1993年)により操作した。この操作したFc配列を、承認された抗体Keytruda、Mylotarg、およびTysabriの生成、ならびに現行のいくつかの後期臨床候補mAbに使用する。
生殖系列化および免疫原性のリスク評価
Ab1親抗体およびその改変体は、ファージディスプレイに由来する完全ヒトIgG4(S228P)、ラムダ抗体である。抗体のFc部分は、Fabアーム交換を防止するために1つの安定化変異を(上記)含有する。IgG4 Fcは、Fcガンマ受容体に対して測定可能な結合を有すると予想されない(実施例2を参照されたい)。完全ヒトナイーブファージライブラリーから単離されたAb1の可変フレームワーク領域は、5つの非生殖系列アミノ酸を含有する(以下および図22を参照されたい)。相補性決定領域(CDR)は、Kabatの命名法を使用して定義され、下線で示される。非生殖系列の残基を小文字で示す。
免疫原性の可能性を緩和するために、非生殖系列フレームワーク残基をその対応する生殖系列アミノ酸に置換するAb1分子のさらなる改変体を作製した。いくつかの実施形態では、Ab1に関する置換を、Ab3およびAb4、またはその生殖系列化が適切である本明細書に開示される任意の抗体に同様に適用することができる。
Ab1の可変領域と、その親和性最適化改変体との配列アラインメントを、以下に示す。A.)重鎖、B.)軽鎖。相補性決定領域(CDR)は、Kabat(下線)およびIMGT命名法(太字)を使用して定義する。親Ab1に存在するフレームワーク領域の置換を小文字で示す。
5つの置換のうち3つは、CDR領域から離れていることが見出され、したがって、結合に影響を及ぼさない。軽鎖の2位のプロリンはCDRL3に対してパッキングされていることから、このプロリンを生殖系列のセリンに置換すると、CDRのコンフォメーションを安定化させることによって、プロ/潜在型ミオスタチンに対する結合を実際に改善する。
抗体全体は、99%超がヒトである(100%から、CDRH3を除く非生殖系列AAの%を差し引くことによって算出した)。化学コンジュゲーションは存在しない。重鎖CDRH2配列は、生殖系列IgHV3−30配列にも存在する、起こり得る異性化傾向(Asp−Gly)を含有する。
(実施例2:薬理学的特徴付け)
in vitro薬理学アッセイ
全体で24個の最適化Ab1改変体を発現させて、IgG4として精製し、結合および機能的活性の改善に関してアッセイした。これらの分子に対する変化は、親和性成熟スクリーニングにおいてプロ/潜在型ミオスタチンに対する結合の増加を付与するCDRの変異と共に、親可変領域に対する生殖系列化変異を含んだ(実施例1を参照されたい)。
Ab1改変体を、プロミオスタチンおよび潜在型ミオスタチンタンパク質(ヒト、ネズミ、およびカニクイザル)に対する結合を、陰性対照タンパク質の大規模スクリーニングと共に再評価するいくつかの異なるELISAベースのアッセイにおいてスクリーニングして、親和性成熟の結果として非特異的結合が導入されないことを確認した。陰性対照は、GDF11タンパク質(プロGDF11、潜在型GDF11、および成熟GDF11)、TGFβタンパク質、ならびにアクチビンタンパク質(プロアクチビン)を含んだ。さらに、抗体を、既に公表されたスクリーニング(Hotzelら、2012年)と類似のスクリーニングにおいて多重特異性(急速なクリアランスが起こり得る)に関して評価した。多重特異性スクリーニングにおいて陰性対照タンパク質またはバキュロウイルス粒子と有意に相互作用するいかなる抗体も、開発プログラムの候補としてさらに考慮しなかった。
Ab1の24個の最適化改変体も、プロミオスタチン活性化アッセイにおいて評価して、その機能的効能を決定して、用量反応曲線からのEC50値を親Ab1抗体と比較した。ほとんどの抗体は同等であるか、または改善されたEC50値を有し、このアッセイにおいて効能の低減を示したのは少数であった。活性アッセイにおいて効能が低減した抗体をさらなる分析から除外した。
プロミオスタチンおよび潜在型ミオスタチンに対する結合が改善したが、プロミオスタチンおよび潜在型ミオスタチンに対して特異性を保持するAb1の3つの改変体を同定した。これらの3つの改変体および親Ab1分子の結合および活性データを、表4〜7に要約し、配列を実施例1に示す。
細胞ベースのex vivoおよびin vivoの生物活性アッセイ
Ab1最適化改変体を、GDF8活性化アッセイにおいて用量反応試験で評価した。これらの実験において、0.5μMプロミオスタチンを、漸増量の試験物質と共にプレインキュベートした。このプレインキュベーションステップの後、mTll2およびフューリンプロテアーゼを過剰発現するHEK293細胞由来の馴化培地を添加して、プロミオスタチンから成熟増殖因子を放出させた。30℃で一晩インキュベートした後、材料を、SMADベースのルシフェラーゼレポータープラスミドを有する293T細胞に添加して、放出された材料の活性を記録した。スクリーニングのデータを図4に示す。
他のTGFβファミリーメンバーよりも優先したミオスタチンに対する選択性
候補抗体の選択性も、結合および機能的アッセイの両方によって評価して、TGFβファミリーの他のメンバーに対して交差反応性がないことを確認した。ヒトミオスタチンとGDF11とは、成熟増殖因子ドメインにおいて90%の同一性を共有し、プロドメイン領域において47%の同一性を共有する。ELISAアッセイにより、ミオスタチンのプロドメインからなる構築物にこの抗体が結合することが示されていることから、エピトープマッピング試験から、親Ab1分子がプロミオスタチンおよび潜在型ミオスタチンのプロドメイン上のエピトープを認識することが決定された。ミオスタチンのプロドメインとGDF11は50%未満の同一性を共有し、有意な交差反応性は予想されないものの、リード抗体の特異性を注意深く評価した。
目的の抗体と陰性対照試薬との間の相互作用を検出する感度の良いアッセイを開発した。このアッセイにおいて、ビオチン化プロGDF11またはビオチン化プロミオスタチンを、抗体30μg/mLを含有するウェルに適用したForteBio BLIストレプトアビジンコーティングセンサーチップ上に固定した。検体と、チップ上に固定したタンパク質との相互作用を、バイオセンサーチップの応答の大きさによって測定する。会合5分後のバイオセンサー応答(プロGDF8の飽和シグナル)を2つの抗原の間で比較して、GDF8結合に関する応答率として表した。抗体は全て、プロミオスタチンに関して測定される確固とした結合事象と比較して、プロGDF11と最小限の相互作用を有した。
抗体候補もGDF11活性化アッセイにおいて評価した。このアッセイにおいて、50nMプロGDF11を、増加濃度の抗体と共にプレインキュベートする。プレインキュベーションの後、BMP−1(トロイドファミリープロテアーゼ)およびPCSK5(GDF11に対して特異的なフューリンファミリーメンバー)を過剰発現するHEK293細胞由来の馴化培地を添加して、タンパク質分解を介してプロGDF11を活性化した。30℃で一晩インキュベートした後、反応混合物をSMADベースのレポーター細胞株においてGDF11活性に関して評価する。表10に示すように、抗ミオスタチン抗体は、プロGDF11活性化を阻害しないが、陽性対照抗体は、GDF11活性化の用量依存的阻害を付与する。
抗体候補の結合親和性を、ForteBio Octet Qkeディップを使用して決定し、生体層干渉法(bio−layer interferometry)を利用して標識フリーのアッセイシステムを読み取った。それぞれの実験において抗原をバイオセンサー(プロGDF8、プロGDF11、およびプロアクチビンに関してストレプトアビジンコーティングバイオセンサー;他の全てに関して直接アミンカップリング)に固定して、抗体/構築物を、溶液中で高濃度(50μg/mL)で提示して、結合相互作用を測定した。
抗原結合試験からの結果を表11に要約する。不良な結合応答を有するデータにフィットさせたいくつかの算出されたKd値が存在し、これらは表において弱い非特異的結合として示す。
表11で使用したプロGDF8試料は約10〜15%の潜在型GDF8を含有していたので、ヒトおよびネズミのGDF8抗原へのプロGDF8の結合を特異的に確認するために別の実験を行った。さらに、プロGDF8がプロタンパク質転換酵素およびトロイドプロテアーゼの両方によってタンパク質分解を介して切断されたプライムドGDF8も、Ab2およびABMyoへの結合親和性について評価した。これらの実験のため、30μMのデカノイル−RVKR−CMVの存在下に培養して、安定的に組み込みが起きた293細胞から、ヒトプロGDF8の均一な調製物を精製した。プライムドヒトGDF8は、mTll2過発現細胞からの馴化培地および精製したフューリンプロテアーゼを利用するプロGDF8のin vitro切断によって産生した。これらのタンパク質を用いた結合実験において、150nMのAb2またはAbMyoを使用してヒトFcキャプチャーチップ(ForteBio)の固定化部位を飽和させ、150nMの分析物の会合および解離を評価した。
ネズミタンパク質に対する結合親和性の解析も評価し、表12に報告する。ネズミプロGDF8は、潜在型および成熟GDF8を厳密に認識する抗体(AbMyo2)を用いるネガティブセレクションによって試料から全ての成熟および潜在型ネズミGDF8を除去することによって産生した。抗ヒトFcキャプチャーチップ(ForteBio)を飽和するために50nMの抗体を使用した。最初に、単一の濃度200nMのネズミプロGDF8、ネズミ潜在型GDF8、および成熟GDF8に対して全ての抗体を試験した。結合が観察された場合には、既に述べたようにして抗体を固定化し、200〜0.82nMの3倍希釈による滴定で分析物を使用することによって、Kd値を決定した。Kdは、ForteBioのデータ解析ソフトウェア8.2によるグローバルフィットを使用して決定した。成熟ミオスタチンへの結合のため、pH5の酢酸緩衝液中で5μg/mLの増殖因子(R&D Systems)をアミン反応性センサーチップ(ForteBio)にカップリングした。このミオスタチンカップリングセンサーへの結合について、全ての抗体を最初に333nMで試験した。次いで結合を示した抗体を333〜1.37nMの範囲で3倍希釈した濃度で試験した。グローバルフィットを使用して、ForteBioのデータ解析ソフトウェア8.2によって相互作用のKdを決定した。
抗原結合試験からの結果を表12に要約する。検出される結合がない実験はマイナス符号(−)で示す。<1E−12とラベルしたいくつかの値は非常に遅い解離速度を有し、高い親和性を定量することができない。驚くべきことに、AbMyoは組換えプロGDF8を認識することができず、これはLatresら(2015年)が報告した結果と異なる。この報告ではアーチファクトを生じる可能性がある、抗体の投与を行ったマウスの血清からの免疫沈降実験におけるAbMyoとプロGDF8との会合が報告されている。別の驚くべき結果は、Ab2とプライムドGDF8、即ちGDF8とトロイドで切断されたプロドメインとの複合体との相互作用である。Ab2はプロドメインのトロイド切断を遮断するので、この結果は予想されないものであり、Ab2のプロGDF8および潜在型GDF8との相互作用はインタクトなトロイド切断部位を必要としないことを示唆している。
Fc領域の機能性の評価
いくつかの実施形態では抗プロ/潜在型ミオスタチン療法には、可溶性の標的(プロ/潜在型ミオスタチン)に結合することおよびタンパク質分解を介した活性化防止することが含まれる。いくつかの実施形態では抗体依存性細胞媒介性細胞傷害および補体結合は、このプロセスに含まれない。Ab1およびその関連する改変体を、IgG4−Fc領域を含有するように操作した。IgG4抗体は一般的に、補体成分C1qおよびFcγ受容体に対するその結合が弱いためにエフェクター機能を欠如すると理解される。
エフェクター機能の能力が低減されていることを証明するために、Ab1および関連する抗体を、ELISAによってCD64(FcgRI)およびC1qに対する結合に関して試験した。比較のために、Ab1のIgG1改変体も調製した。このアッセイにおいて、IgG4抗体は全て、IgG1と比較してCD64およびC1qに対して有意に弱い結合(1/10〜1/20)を示した。EC50での相対的結合値を表13に記載する。
Ab1およびその関連改変体のCD64およびC1qに対する見かけの結合親和性は、他のIgG4臨床候補抗体と類似であり、IgG1アイソタイプの抗体と比較してかなり低減されている。したがって、IgG4抗体の生物学に基づいて、抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体は、in vivoで認識可能なエフェクター機能を誘導しないと結論される。
動物モデルにおける効能
in vitro特徴付けに基づいて、4つの抗体(Ab7、Ab1、Ab8、およびAb9)を選択して、in vivo試験において試験した。試験の目的は、これらの4つの候補抗体がマウスの筋肉量を調節する能力を評価することであった。10匹の雌性SCIDマウスの5つの群に、試験物質を1週間に1回、0、7、14、21、28、および35日目に腹腔内(IP)注射によって投与した。試験物質の投与前(0日目)、全ての動物に握力評価を行った。握力評価はまた、試験の最終日(42日目)にも実施した。0日目に、全血球算定(CBC)評価のために血液を後眼窩出血を介して採取した。投与後、動物を体重および全身健康状態の観察について毎日評価した。42日目に、握力評価の後、動物をCO2過量投与によって屠殺して、CBC評価のために心穿刺によって血液を採取した。血漿を調製するために、さらなる血液を採取した。様々な組織を単離して重量を測定した。採取した筋肉は、腓腹筋、胸筋、ヒラメ筋、三頭筋、前脛骨筋、四頭筋(大腿直筋)、および横隔膜であった。採取した臓器は、心臓、腎臓、脾臓、肝臓、および鼠径部白色脂肪組織であった。組織は全て重量を測定して、瞬間凍結したが、腓腹筋は、組織学分析のためにホルマリン(脚1)およびOCT(脚2)で固定した。
要約
試験SCH−02における動物の平均一日体重変化率データを図6に示す。5群全ての動物の体重は、毎週増加した。抗体Ab1で処置した動物は、図6に描写するように、最大の体重増加(14.6%)を示した。Ab1で処置した動物のみが、ビヒクル(PBS)対照群の動物と比較して平均体重変化率の統計学的に有意な増加を示した(図6)。
切除した筋肉の重量を図7および8にプロットする。Ab1で処置した動物は、ビヒクル(PBS)対照処置動物と比較して腓腹筋(図7A)および横隔膜(図8B)重量の統計学的に有意な増加、それぞれ27.6%および49.8%を示した。Ab1処置動物からのさらなる筋肉は、PBS対照と比較して重量の増加を示したが、これらの差は統計学的に有意ではなかった。心臓、脾臓、腎臓、肝臓および脂肪組織の平均組織重量に関して処置群の間に統計学的有意差はなかった。
SCID用量反応試験
in vivo試験(上記)において、Ab1を25mg/kgで1週間に1回6週間投与した動物は、ビヒクル(PBS)を投与した動物と比較して、体重および筋重量(腓腹筋および横隔膜)の統計学的に有意な増加を示した。次に、Ab1のこの筋肉増強活性を、SCIDマウスの用量反応試験においてより詳細に調べた。この試験において、筋肉量に及ぼす効果の大きさを、Ab1の用量を60mg/kg/週もの高用量まで増加させることによって増加させることができるか否か、および筋肉量に及ぼす効果の大きさを、Ab1の用量を2mg/kg/週もの低用量に減少させることによって減少させることができるか否かを調べた。この試験において、Ab1の活性を、さらに2つの抗体(上記の試験で当初試験したAb8、およびAb10)と比較した。
10匹の雌性SCIDマウスの10個の群に試験物質を腹腔内(IP)注射(10ml/kg)によって週に2回、0、3、7、10、14、17、21、および24日目に投与した。試験物質の用量は以下のとおりであった:Ab1(30mg/kg、10mg/kg、3mg/kg、および1mg/kg)、Ab10(10mg/kgおよび3mg/kg)、ならびにAb8(10mg/kgおよび3mg/kg)。対照群にはPBSおよびIgG対照(30mg/kg)を投与した。処置群を表14に記載する。動物は、試験開始時10週齢であった。体重を−4日目に測定して、投与日に対応して試験を通し週に2回、測定した。身体組成パラメータ(脂肪量、除脂肪量、および水分含有量)を、EchoMRI(QNMR)によって−4、7、14、21、および28日目に測定した。抗体の初回用量から30日後に動物をCO
2の過量投与によって屠殺して、CBC評価および血漿調製のために心穿刺によって血液を採取した。さらに、試験終了時に、様々な組織を単離して重量を測定した。採取した筋肉は、腓腹筋、ヒラメ筋、前脛骨筋、四頭筋(大腿直筋)、および横隔膜であった。筋肉を、試験マウスの左右両方の脚から切除した。分析のために、両方の脚からの個々の筋肉の重量を合計してグラムでの平均筋重量を算出した。採取した他の組織は、心臓、腎臓、脾臓、肝臓、および脂肪組織であった。組織は全て、重量を測定して、次いで、瞬間凍結したが、腓腹筋は、組織学分析のためにホルマリン(左脚)およびOCT(右脚)で固定した。
ビヒクル(PBS)、IgG対照、およびAb1の異なる用量で処置した動物に関する平均体重変化率および平均除脂肪量変化率データを図9に示す。20および60mg/kg/週の用量のAb1で処置した動物は、IgG対照処置動物と比較して試験28日目に体重の有意な増加、それぞれ15.3%および14.4%を示した(図9A)。Ab1(60、20、6、および2mg/kg/週の用量)で処置した動物の4つ全ての群が、IgG対照処置動物と比較して試験28日目に除脂肪量の統計学的に有意な増加、それぞれ、14.1%、12.4%、17.1%、および15.5%を示した(図9B)。
4つの筋肉(四頭筋(大腿直筋)、腓腹筋、前脛骨筋、および横隔膜)の重量を図10にプロットする。ヒラメ筋も切除したが、筋肉のサイズが小さいために、データセットは極めて変動した。Ab1の全ての用量で処置した動物は、IgG対照動物と比較して筋重量の統計学的に有意な増加を示した(図10)。IgG対照と比較した筋肉量の平均変化率を、それぞれの筋肉グラフ上で対応する棒グラフの上に示す。四頭筋(大腿直筋)の重量の平均変化率は、最高用量の20.5%から最低用量の10.7%までの範囲であった(図10A)。腓腹筋重量の平均重量変化率は、最高用量の17.7%から最低用量の15.9%までの範囲であった(図10B)。前脛骨筋重量の平均重量変化率は、最高用量の24.0%から最低用量の18.0%までの範囲であった(図10C)。横隔膜筋重量の平均重量変化率は、全ての用量群に関して30%超であった(図10D)。心臓、脾臓、腎臓、肝臓、および脂肪組織の平均組織重量に関して処置群間で統計学的有意差はなかった。
デキサメタゾン誘導筋萎縮症モデルにおける抗ミオスタチン抗体処置
健康なSCIDマウスにおいて抗ミオスタチン抗体Ab1が筋肉量を構築する能力を考慮して、Ab1処置が、筋萎縮症を誘導する処置から動物を保護することもできるか否かを決定した。動物を、その飲料水中のデキサメタゾンで2週間処置することによって、コルチコステロイド誘導筋萎縮症モデルを確立した。選択した用量(2.5mg/kg/日)は、除脂肪体重および個々の後肢筋肉量の有意な減少を誘導することができた。以下の実験において、動物を、Ab1の異なる用量で処置して、このデキサメタゾン誘導筋萎縮症から動物を保護できるか否かを決定した。
この試験において、10匹の雄性マウス(C57BL/6)の8つの群を、13.5週齢で試験に登録した。試験0日目に開始して、マウスに、通常の飲料水(群1〜4)、またはデキサメタゾンを含有する水(群5〜8)のいずれかを与えた。試験物質を、週に2回、0、3、7、および10日目に腹腔内(IP)注射(10ml/kg)によって投与した。試験物質および用量は以下のとおりであった:PBS(群1および5)、10mg/kg IgG対照(群2および6)、10mg/kg Ab1(群3および7)、ならびに1mg/kg Ab1(群4および8)。処置群を表15に記載する。試験を通して少なくとも週に2回、体重を測定した。身体組成パラメータ(脂肪量、除脂肪量、および水分含有量)を、EchoMRI(QNMR)によって、−1、6、および13日目に測定した。抗体の初回用量から14日後、動物をCO
2の過量投与によって屠殺して、血漿を調製するために心穿刺によって血液を採取した。さらに、試験終了時、様々な組織を単離して重量を測定した。採取した筋肉は、腓腹筋、ヒラメ筋、前脛骨筋、四頭筋(大腿直筋)、および横隔膜であった。筋肉を、試験マウスの左右両方の脚から切除した。分析のために、両方の脚の個々の筋肉の重量を合計して、平均筋重量をグラムで算出した。採取した他の組織は、心臓、腎臓、脾臓、肝臓、および脂肪組織であった。組織は全て、重量を測定して、次いで、瞬間凍結したが、腓腹筋は、組織学分析のためにホルマリン(左脚)およびOCT(右脚)で固定した。
この実験において、抗ミオスタチン抗体Ab1によるマウスの処置が、コルチコステロイド誘導筋萎縮症から動物を保護できるか否かを決定した。試験中、体重を週に2回測定して、除脂肪量を−1、6および13日目にQNMRによって測定した。非疾患対照群(群1)およびデキサメタゾン処置群(群5〜8)の動物に関して、平均体重変化率および平均除脂肪量変化率データを図11に示す。14日目では、これらの処置群のいずれの間でも平均体重変化率に有意差は認められなかった(図11A)。デキサメタゾンで2週間マウスを処置すると、通常の飲料水を与えた対照群(群1)と比較して除脂肪体重は有意に減少した(群5および6)(図11B)。しかし、デキサメタゾンおよび20mg/kg/週の抗体Ab1の両方で処置したマウス(群7)は、対照群(群1)と比較して試験14日目に除脂肪体重変化率の有意差を示さなかった。20mg/kg/週のAb1で処置した動物は、デキサメタゾン処置対照群(群5および6)のいずれかと比較して、14日目に除脂肪体重変化率の有意差を示したが、2mg/kg/週は有意差を示さなかった。
デキサメタゾンおよび試験物質による2週間の処置の終了時、個々の筋肉を切除して、重量を測定した。2つの筋肉(腓腹筋と四頭筋(大腿直筋))の重量データを図12A〜12Bにプロットする。飲料水を通してデキサメタゾンを投与され、PBSまたはIgG対照抗体のいずれかを同様に投与された動物は、非疾患対照群(群1)と比較して、腓腹筋および四頭筋(大腿直筋)の有意な萎縮症を示した(群5および6)。デキサメタゾンと20mg/kg/週のAb1の両方で処置された動物(群7)は、デキサメタゾン処置対照群(群5および6)のいずれかと比較して筋重量の有意差を示したが、2mg/kg/週は、有意差を示さなかった。さらに、デキサメタゾンと20mg/kg/週の抗体Ab1の両方で処置したマウス(群7)は、非疾患対照群(群1)と比較して、腓腹筋および四頭筋重量(大腿直筋)の有意差を示さなかった。対照群(群1、PBSおよび水)の平均筋重量と比較した各群の平均筋重量の差の百分率を、図12C〜12Dに示す。PBSおよびIgG対照群におけるデキサメタゾン処置によって誘導された腓腹筋肉量の減少率は、それぞれ、16.5%および18.9%であった。これに対し、デキサメタゾンと20mg/kg/週のAb1の両方で処置した動物では、腓腹筋肉量の減少は4.0%に過ぎず、これは非疾患対照群(群1)と統計学的に異ならなかった。デキサメタゾンと2mg/kg/週のAb1の両方で処置した動物(群8)では、腓腹筋肉量の減少は10%に過ぎず、この群の筋肉量の減少は、PBSおよびIgG対照群(群5および6)の減少と統計学的に異ならなかった。類似の結果が四頭筋(大腿直筋)について見られた(図12D)。
ギプス固定誘導筋萎縮症モデルにおけるAb1処置
健康なSCIDマウスにおいて抗ミオスタチン抗体Ab1が筋肉量を構築する能力を考慮して、Ab1処置が、筋萎縮症を誘導する処置から動物を保護することもできるか否かを調べた。マウスの右脚をギプスで2週間固定することによって、非活動性萎縮症モデルを確立した。足を足底屈位置にして右脚をこの期間ギプスで固定することにより、個々の後肢筋肉量の有意な減少を誘導することができた。以下の実験において、動物を異なる用量のAb1で処置して、このギプス固定誘導筋萎縮症から動物を保護する程度を決定した。
この試験において、10匹の雄性マウス(C57BL/6)の8つの群を、14.5週齢で試験に登録した。試験0日目に開始して、マウスを麻酔下に置き、足を足底屈位置にして右後肢にギプスを固定した(群5〜8)。対照群(群1〜4)も麻酔下に置いたが、後肢のギプス固定を行わなかった。試験物質を、週に2回、0、3、7、および10日目に腹腔内(IP)注射(10ml/kg)によって投与した。試験物質および用量は以下のとおりであった:PBS(群1および5)、10mg/kg IgG対照(群2および6)、10mg/kg Ab1(群3および7)、ならびに1mg/kg Ab1(群4および8)。処置群を表16に記載する。試験を通して少なくとも週に2回、体重を測定した。身体組成パラメータ(脂肪量、除脂肪量、および水分含有量)を、EchoMRI(QNMR)によって、−1、7、および14日目に測定した。抗体の初回用量から14日後、動物をCO2の過量投与によって屠殺して、血漿を調製するために心穿刺によって血液を採取した。
さらに、様々な組織を単離して重量を測定した。採取した筋肉は、腓腹筋、ヒラメ筋、足底筋、前脛骨筋、および四頭筋(大腿直筋)であった。分析のために、動物の右後肢から個々の筋肉の重量を収集した。採取した他の組織は、心臓、脂肪組織、および脾臓であった。組織は全て、重量を測定して、次いで、瞬間凍結したが、腓腹筋は、組織学分析のためにホルマリンで固定した。
要約
この実験において、抗ミオスタチン抗体Ab1でのマウスの処置が、右後肢のギプス固定によって誘導された非活動性筋萎縮症からマウスを保護できるか否かを試験した。試験中、体重を週に2回測定して、除脂肪量を−1、7および14日目にQNMRによって測定した。非疾患対照群(群1)および2週間ギプス固定した群(群5〜8)の動物に関して、平均体重変化率および平均除脂肪量変化率データを図13に示す。右後肢のギプス固定は、体重増加に対していかなる負の効果も及ぼさず(図13A)、群の除脂肪量のいかなる差も有意ではなかった(図13B)。
2週間の試験の終了時、個々の筋肉を切除して、重量を測定した。2つの筋肉(腓腹筋と四頭筋(大腿直筋))の重量データを図14A〜14Bにプロットする)。脚をギプス固定して、同様にPBSまたはIgG対照抗体のいずれかを投与した動物は、非ギプス固定対照群(群1)と比較して、腓腹筋および四頭筋(大腿直筋)の有意な萎縮症を示した(群5および6)。ギプス固定して20mg/kg/週のAb1を投与した動物(群7)は、ギプス固定対照群(群5および6)のいずれかと比較して筋重量の有意差を示したが、2mg/kg/週は、有意差を示さなかった。さらに、20mg/kg/週の抗体Ab1で処置したギプス固定マウス(群7)は、非ギプス固定対照群(群1)と比較して、腓腹筋および四頭筋(大腿直筋)重量の有意差を示さなかった。非ギプス固定対照群(群1)の平均筋重量と比較して各群の平均筋重量の差の百分率を、図14C〜14Dに示す。PBSおよびIgG対照群におけるギプス固定によって誘導された腓腹筋肉量の減少率は、それぞれ、22.8%および23.5%であった。これに対し、20mg/kg/週のAb1で処置したギプス固定マウスでは、腓腹筋肉量の減少は10.0%に過ぎなかった。この差は、PBSおよびIgG対照抗体を投与したギプス固定対照群(群5および6)と統計学的に異なることが見出された。2mg/kg/週のAb1で処置したギプス固定マウスの筋肉量の減少は、PBSおよびIgG対照群(群5および6)の減少と統計学的に異ならなかった。類似の結果が四頭筋(大腿直筋)について見られた(図14D)。
プロミオスタチンおよび潜在型ミオスタチンのドメイン構造を、プロテアーゼ切断部位を示すと共に図16Aに示す。SDS PAGEゲルにおいて行った部分的プロタンパク質転換酵素切断プロミオスタチンの例を図16Bに示す。還元条件下では、タンパク質バンドは、プロミオスタチンモノマー(約50kD)、プロドメイン(約37kD)および増殖因子(12.5kD)からなっていた。
Ab1はプロミオスタチンおよび潜在型ミオスタチンに特異的に結合し、TGFβスーパーファミリーの他のメンバー、特にGDF11の対応する型に対する結合は観察されなかった(図17A)。Ab1を、表記の抗原でコーティングされたForteBio BLIチップに高濃度(50μg/mL)で投与して、オンレートおよびオフレートを測定して、およそのKd値を得た。結合事象を示すバイオセンサー応答の大きさを、黒色の棒グラフによってグラフ表示し、算出されたKdをオレンジ色で示す。さらに、Ab1はプロミオスタチンの活性化を遮断するが、プロGDF11は遮断しない(図17B)。
Ab1、Ab2、Ab4、およびAb6によるSCID用量反応試験
Ab1による以前のin vivo試験は、Ab1が、健康な動物において筋肉量を増加させることができ、ならびにマウス筋萎縮症モデル(デキサメタゾンおよびギプス固定誘導萎縮症)において筋肉喪失を予防することができることを証明した。抗体操作の努力により、Ab1より良好であるin vitro特徴を有する3つの抗体が同定された。この試験において、SCIDマウスにおいて、これらの抗体のin vivo活性を、3つの異なる用量で、既に確立されたAb1の活性と比較した。
8匹の雌性SCIDマウスの14個の群に、週に2回、0、3、7、10、14、17、21、および24日目に腹腔内(IP)注射(10ml/kg)によって試験物質を投与した。試験物質の用量は以下のとおりであった:Ab1、Ab2、Ab4、およびAb6は、3つの異なる用量(10mg/kg、1mg/kg、および0.25mg/kg)で投与し、IgG対照抗体は10mg/kgで投与した。処置群を表17に記載する。動物は、試験開始時10週齢であった。投与日に対応して試験を通し、週に2回、体重を測定した。身体組成パラメータ(脂肪量、除脂肪量、および水分含有量)を、EchoMRI(QNMR)によって、0、7、14、21および28日目に測定した。抗体の初回用量から28日後、動物をCO2の過量投与によって屠殺して、血漿を調製するために心穿刺によって血液を採取した。
さらに、様々な組織を単離して重量を測定した。採取した筋肉は、腓腹筋、ヒラメ筋、前脛骨筋、四頭筋(大腿直筋)、足の長趾伸筋、および横隔膜であった。筋肉を、試験マウスの左右両方の脚から切除した。分析のために、両方の脚の個々の筋肉の重量を合計して、平均筋重量をグラムで算出した。採取した他の組織は、心臓、腎臓、脾臓、肝臓、および脂肪組織であった。組織は全て、重量を測定して、次いで、瞬間凍結したが、左の腓腹筋は、組織学分析のためにホルマリンで固定した。
ビヒクル(PBS)、IgG対照、および異なる用量のAb1、Ab2、Ab4、およびAb6で処置した動物についての平均除脂肪量変化率(0日目からの)のデータを図15に示す。20mg/kg/週の用量レベルのAb1、Ab2、Ab4、およびAb6で処置した動物は、IgG対照およびビヒクル(PBS)で処置した動物と比較して実験の21日目および28日目で除脂肪量の有意な増加を有していた。2mg/kg/週の用量レベルのAb1およびAb2で処置した動物も、実験の21日目および28日目で除脂肪量の有意な変化を有していた。0.5mg/kg/週の用量レベルのAb1、Ab2、Ab4、およびAb6で処置した動物については、除脂肪量において対照群と有意な差はなかった。
試験の終了時(28日目)に筋肉を採取して秤量した。四頭筋(大腿直筋)および腓腹筋の重量を図18Aおよび18Bにプロットする。20mg/kg/週の用量レベルのAb1、Ab2、Ab4、およびAb6で処置した動物は、ビヒクル(PBS)で処置した動物と比較して腓腹筋および四頭筋(大腿直筋)重量において有意な増加を有していた。2mg/kg/週の用量レベルのAb2およびAb4で処置した動物も、腓腹筋重量において有意な変化を有していた。2mg/kg/週の用量レベルのAb2で処置した動物も、四頭筋重量において有意な変化を有していた。0.5mg/kg/週の用量レベルのAb1、Ab2、Ab4、およびAb6で処置した動物については、筋肉量において対照群と有意な変化はなかった。異なった用量のAb1、Ab2、Ab4、およびAb6で処置した動物の(ビヒクル群と比較した時の)腓腹筋および四頭筋(大腿直筋)重量の変化率を図18Cにまとめる。
SCIDマウスにおけるAb1を用いた作用試験の持続時間
SCIDマウスにおいて単回用量および1週ごとの3回投与の後に除脂肪量を増加させるAb1の能力を試験した。8匹の雌性SCIDマウスの7つの群に、試験物質を0日目に1回(群1〜4)、または0日目、7日目および14日目に週1回(群5〜7)、腹腔内(IP)注射(10ml/kg)によって投与した。表18を参照されたい。抗体(IgG対照、Ab1およびAbMyo)は10mg/kgの用量であった。動物は試験開始時に10〜11週令であった。投与日に対応して試験を通し週2回、体重を測定した。身体組成パラメーター(脂肪量、除脂肪量および水分含有量)を、Echo MRI(QNMR)によって0、7、14、および21日目に測定した。
ビヒクル(PBS)、IgG対照、Ab1、AbMyoで処置した動物の平均除脂肪変化率データを図19に示す。データは試験の0日目からの除脂肪量の変化として表わしている。試験物質の単回用量の後、21日目にAb1で処置した動物(群3)は(IgG対照動物−群1と比較して)除脂肪量の有意な増加を有し、これはAb1の3回投与後(群6)の除脂肪量の変化と区別がつかなかった。除脂肪量のこれらの変化は、AbMyoの単回用量(群4)または1週ごとの3回投与(群7)で処置した動物に見られた変化とも同程度であった。
(実施例3)
化学/製薬科学
Ab2は、228位でセリンをプロリンに置換したIgG4サブタイプのヒト化モノクローナル抗体である。これによって、IgG1様ヒンジ配列が生成され、IgG4の特徴である鎖間ジスルフィド架橋の不完全な形成を最小限にする。Ab2の重鎖および軽鎖の完全なアミノ酸配列を以下に示す。相補性決定領域(CDR)を下線で示す。紫:N−結合グリコシル化コンセンサス配列部位;水色:起こり得る切断部位;赤色:起こり得る脱アミド化部位;ライトグリーン:起こり得る異性化部位;ダークブルー:起こり得るメチオニン酸化部位;太字:予想されるN末端ピログルタミン酸(図21A〜21B)。
Ab1の分子モデリングにより、起こり得るいくつかの翻訳後改変部位が同定された。軽鎖における2つのアスパラギン、および重鎖における7つのアスパラギンは、脱アミド化を受けやすい。これらの残基の2つは、重鎖のCDR領域内に位置する。
ネイティブIgG4 mAbは、2つの半分子(それぞれが、1つの重鎖と1つの軽鎖とを含有する)が非共有結合的相互作用によってインタクト抗体構造において維持される重鎖間ジスルフィド架橋の不完全な形成を有し得る。IgG4分子は、in vitroおよびin vivoで半分子を交換する傾向があり得、半分子のレベルは、製造バッチ間で一貫していなければならない。IgG4構造の骨格におけるSerからProへの置換によって、IgG1様ヒンジ配列がもたらされ、それによって鎖間ジスルフィド結合の形成が可能となり、抗体構造を顕著に安定化させる。ヒンジ領域の完全性および安定性を、非還元性キャピラリー電気泳動および遊離のスルフヒドリルの定量などのアッセイを使用して、展開中に広範な特徴付けを行いながらモニタリングする。鎖交換の可能性をin
vivoでモニタリングする。
要約
プロミオスタチンおよび/または潜在型ミオスタチンの活性化を遮断するプロ/潜在型ミオスタチン特異的抗体を、本明細書に提供する。この活性化遮断抗体を健康なマウスに投与すると、除脂肪体重および筋肉のサイズを増加させ、筋肉増強効果を1ヵ月間維持するために単一の用量しか必要としない。さらに、抗体の投与は、2つの別個の筋消耗モデルにおいて健康なマウスを筋萎縮症から保護する。データは、ミオスタチン活性化の遮断が、確固とした筋成長を促進してin vivoで筋萎縮症を防止し、筋消耗の治療介入のための代替機構を表すことを証明する。
(実施例4)
筋萎縮症におけるプロおよび潜在型ミオスタチンの分析
筋萎縮症ならびに正常条件における筋肉組織および循環系中のプロおよび潜在型ミオスタチンの存在を決定するため、ウェスタンブロットを行った。筋萎縮症の標準モデルは、マウスを2.5mg/kg/週のデキサメタゾンで処置(飲料水で投与)することを含んでおり、2週間の処置の後に筋肉および血漿を採取した。このモデルは通常、処置の経過にわたって筋肉量の15〜25%の減少をもたらす。デキサメタゾンで処置しなかったマウスから同時に対照筋肉および血漿を採取した。大腿直筋、前脛骨筋、およびヒラメ筋を切除し、液体窒素中で瞬間凍結し、すぐに使用できるまで−80℃で保存した。筋肉溶解物は粉砕に続いてプロテアーゼおよびホスファターゼ阻害剤を加えたT−PER緩衝液で溶解することによって作製した。血漿は標準的な方法によって採取し、−80℃で保存した。
同じ濃度のタンパク質を含有する複数の試料をPAGEゲルで分離し、PVDF膜上にウェスタンブロットした。筋肉溶解物については、全タンパク量10〜50ngをゲルにロードした。血漿はPBSで1:10に希釈し、各試料10μlをゲルにロードした。大きさの標準として0.1〜1ngの組換えプロおよび潜在型ミオスタチンも、ゲルにロードした。ミオスタチンタンパク質の同定は、ミオスタチンのプロドメインを認識する抗体(AF1539、R&D Systems)を使用して達成した。この分析により、プロミオスタチンが筋肉中の主な形態である一方、潜在型ミオスタチンが血漿中の主な形態であることが示される(図25)。さらに、デキサメタゾンで誘導された筋萎縮症を有するマウスにおいて、筋組織中でプロミオスタチンが増加し、血漿中で潜在型ミオスタチンが減少することが示された。
これらの結果を確認するため、蛍光標識および検出(Azure Biosystems)を使用してウェスタンブロットを繰り返した。正常マウスおよびデキサメタゾン処置マウスの血漿ならびに大腿直筋および前脛骨筋中の各ミオスタチン形態の相対レベルを定量した。これらのデータによって上述の結果が確認され、両方の筋肉中におけるプロミオスタチンの2〜2.5倍の増加、および血漿中の潜在型ミオスタチンの2.3分の1の減少が示される(図26)。
これらのデータに基づき、正常筋肉と疾患筋肉におけるミオスタチン「フラックス」のモデルが得られる。示したように、正常筋肉(図28A)では、筋肉中でプロミオスタチンが産生され、フューリンプロテアーゼによる切断を介して潜在型ミオスタチンに転換される。これは細胞の内部または外部で起こり得る(Andersonら、2008年)。次いで筋肉中の潜在型ミオスタチンのある割合が循環系に放出され、潜在型ミオスタチンの循環プールを形成する。筋萎縮症では、活性ミオスタチン増殖因子が増加して筋萎縮症を駆動する。この増加は筋肉中のプロミオスタチンレベルの上方調節および潜在型ミオスタチンの活性増殖因子への転換の増加によって引き起こされると考えられる(図28B)。ここに概略を示したデータは、このモデルの第1のステップを直接支持し、筋肉中のプロミオスタチンの増加を示している。デキサメタゾン処置マウスにおいて筋肉量の減少が観察されたので、データは第2のステップをも支持しており、筋肉における潜在型ミオスタチンの増加が同時に起こることなしに成熟ミオスタチンの産生が増加することを示している。したがって、血漿中のミオスタチンレベルは減少し、成熟ミオスタチンへの転換が増加したことが示唆される。
(実施例5)
ネズミ血清および筋肉組織の免疫沈降
循環系中のプロミオスタチンの存在を決定し、血清および筋肉中の内因性ミオスタチン前駆体へのAb2およびAbMyoの結合を検討するため、免疫沈降を行った。Ab2は筋肉中のミオスタチンの主な形態を認識する。図27に示す結果より、血清プロミオスタチンのプールがAb2と共に沈降することが示され、in vivoで細胞外プロミオスタチンが存在することが示唆される。血清中のプロミオスタチン、潜在型ミオスタチン、およびその他の部分的にプロセシングされたミオスタチンの形態への結合に加えて、Ab2は筋肉抽出物からのプロミオスタチンを免疫沈降した。対照的に、AbMyoは血清中の潜在型ミオスタチンおよび部分的にプロセシングされた前駆体と効率的に結合するが、筋肉中のプロミオスタチンとの検出できる相互作用は伴わない。筋肉がミオスタチンのシグナル伝達が起こる部位であることを考えると、これによってAb2の作用機序に重要な利点が生じ得る。
ホモジナイズした筋肉溶解物を以下のようにして調製した。CryoPrep粉砕器(Covaris、Woburn、MA)を使用して凍結マウス四頭筋(大腿直筋)を粉砕した。次いで粉砕した筋肉をEDTAを含まない1xHalt(商標)プロテアーゼおよびホスファターゼ阻害剤カクテルと共にM−Per緩衝液(ThermoFisher Scientific)中、50mg/mLの濃度に再懸濁した。次いでプラスチックの乳棒(Bio−Plas Cat#4030−PB)を使用して組織を粉砕し、カットオフピペットチップを用いて繰り返しピペッティングすることによりさらにホモジナイズした。次いで筋肉試料を4℃で30分、転倒回転しながらインキュベートした。最後に試料を16,100gで10分遠心して不溶性画分をペレット化した。可溶性画分を吸引し、以下の実験に使用した。
免疫沈降のため、Thermo Scientific Pierce(商標)共免疫沈降キットを使用して、メーカーの説明書に従い、Ab2、IgG Ctl、またはAbMyo抗体をアガロースビーズに共有結合でコンジュゲートした。各抗体75μgを50μLのビーズスラリーにコンジュゲートし、各免疫沈降に30μgの抗体を利用した。3mLのプールした正常マウス血清(Bioreclamation)または上述のように調製した1.05mLのホモジナイズした可溶性マウス四頭筋に対して免疫沈降を行った。抗体をコンジュゲートしたビーズおよび試料を、4℃で終夜、転倒搖動させながらインキュベートした。インキュベーションの後、QIAvac24Plus真空マニフォールド(Qiagen)を使用して共免疫沈降キットに含まれたスピンフィルターを通して全試料体積を通過させることにより、ビーズを回収した。次いでビーズを、キットの説明書に従って200μLのIP溶解/洗浄緩衝液で3回、および100μLの1x調整緩衝液で1回、洗浄した。50μLの溶出緩衝液で5分間溶出し、次いで採取チューブの中で5μLの1M Tris、pH9.5と混合した。
試験抗体によって沈降したミオスタチン種を、AF1539、(R&D systems)ab124721(Abcam)、Alexa Fluor(登録商標)680AffiniPureロバ抗ヒツジIgG(H+L)、(Jackson ImmunoResearch)およびIRDye(登録商標)800CWロバ抗ウサギIgG(H+L)(LI−COR Biosciences)Thermo Scientificを利用するウェスタンブロットによって可視化した。ブロッキングおよび一次抗体インキュベーションにはSEA BLOCKブロッキング緩衝液を利用した。
(実施例6)
Ab2で処置したラットにおける筋肉量の増加およびミオスタチンタンパク質発現の変化
7〜8週令の雌性Sprague−Dawleyラットに、Ab2(10mg/kg)、非機能性ヒトIgG対照抗体(10mg/kg)、または等量のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を単回静脈内投与した。実験の経過中、1群あたり3匹のラットから投与の4時間後、48時間後、7日後、14日後、21日後、および28日後に血清を採取した。採取は標準的な方法で行い、試料は−80℃で保存した。除脂肪量をベースライン(0日目の投与前)ならびに7日目、14日目、21日目、および28日目(ラット8匹/群)で定量的核磁気共鳴(qNMR)によって測定し、実験の最後(28日目)に骨格筋(大腿直筋、前脛骨筋、およびヒラメ筋)を採取し、秤量し、−80℃における保存のため液体窒素で瞬間凍結した。
血清試料中の薬物曝露を、ヒトIgGに特異的なELISAを使用して、参照基準として使用した既知量の各薬物と共に測定した。図29に示すように、注射の4時間後にAb2とIgG対照抗体の両方がラット血清中で検出される。実験の進行と共にIgG対照と比較してAb2の循環薬物レベルが上昇し、実験の終了時には血清中薬物は平均17.1μg/mlとなった。
Ab2処置の薬力学的効果を、実験の経過中の(qNMRによる)除脂肪量の測定、および実験の終了時の切除した筋肉の重量の決定によって評価した。図30Aに実験の経過中の除脂肪量測定を示す。Ab2で処置したラットは、PBSで処理したラットまたはヒトIgG対照抗体で処置したラットと比較して除脂肪量の明らかな増加を示す。実験の終了時(28日目)に全部の骨格筋を採取して秤量することによって筋肉量を測定した。図30Bに示すように、Ab2で処置したラットは大腿直筋および前脛骨筋量がそれぞれ14%および11%増加したことを示す。併せて、これらのデータはAb2の単回用量によるラットの処置により、筋肉量の長期継続する増加がもたらされることを示している。
プロおよび潜在型ミオスタチンの相対レベルを、筋肉溶解物または血清試料の定量的ウェスタンブロットによって決定した。筋肉溶解物は瞬間凍結筋肉試料から粉砕に続いてプロテアーゼおよびホスファターゼ阻害剤を加えたT−PER緩衝液で溶解することによって作製した。溶解の後、同じ濃度のタンパク質を含有する試料をPAGEゲルで分離し、低蛍光PVDF膜上にウェスタンブロットした。筋肉溶解物については、全タンパク質10〜50ngをゲルにロードした。血漿はPBSで1:10に希釈し、各試料10μlをゲルにロードした。大きさの標準として0.1〜1ngの組換えプロおよび潜在型ミオスタチンも、ゲルにロードした。ミオスタチンタンパク質の同定は、潜在型ミオスタチンのプロドメインを認識する抗体(AF1539、R&D Systems)を使用し、続いて蛍光標識した二次抗体による検出によって達成した。全てのウェスタンブロット分析について、1群あたり最低3個の試料を分析した。
Ab2による処置によって、IgG対照で処置したラットと比較してラット血清中潜在型ミオスタチンレベルは約20倍に増加する(図31A)。これらのデータは他の抗体薬物で見られた効果と一致しており、循環系中の薬物ターゲットの結合を反映している。ラットの筋肉(大腿直筋)において、Ab2処置は(IgG対照処置ラットと比較して)ミオスタチンの潜在型において1.9倍の増加をもたらす。プロミオスタチンについては統計学的に有意な変化は観察されない。これらのデータはAb2がそのターゲットであるプロ/潜在型ミオスタチンに結合し、筋肉中ならびに循環系中のミオスタチンのプロセシングを変化させていることを示している。Ab2処置がラット筋肉中の潜在型ミオスタチンを増加させるが、プロミオスタチンを増加させないことも観察された(図31B)。
(実施例7)
Ab2で処置したマウスにおける筋肉量の増加およびミオスタチンタンパク質発現の変化ならびにコンパレーター抗ミオスタチン抗体との比較
10週令の雄性SCIDマウスに、Ab2、非機能性ヒトIgG対照抗体、またはミオスタチン/受容体相互作用を遮断することによって作用するコンパレーター抗体(AbMyo)のいずれかを単回腹腔内投与(5mg/kg)した。実験の経過中、投与の1時間後、4時間後、48時間後、7日後、14日後、21日後、28日後、および56日後に血清および骨格筋を採取した。血清採取は標準的な方法で行い、試料は−80℃で保存した。骨格筋(大腿直筋、前脛骨筋、およびヒラメ筋)を採取し、秤量し、−80℃における保存のため液体窒素で瞬間凍結した。除脂肪量はベースライン(0日目の投与前)ならびに実験の経過中毎週、定量的核磁気共鳴(qNMR)によって測定した。
Ab2処置の薬力学的効果を、実験の経過中の除脂肪量の(qNMRによる)測定によって評価した。図32に実験の経過中の除脂肪量測定を示す。Ab2で処置したマウスはヒトIgG対照抗体で処置したマウスと比較して除脂肪量の明らかな増加を示す。実験の最初の3週間の間、コンパレーター抗体(AbMyo)で処置したマウスはAb2群と同等の除脂肪量を示す。しかし、投与の28日後までにAbMyoで処置したマウスは増加した除脂肪量を維持しない。対照的に、Ab2処置群のマウスは実験の経過を通して増加した除脂肪量を維持する(56日)。これらのデータは、Ab2がAbMyoよりも長い作用期間を有していることを示唆している。
筋組織重量も測定した。四頭筋(大腿直筋)に関しては、投与の4週間後に2つの処置群において筋重量が増加した。投与の8週間後には、Ab2群およびAbMyo群の両方において四頭筋(大腿直筋)がIgG対照の四頭筋(大腿直筋)を超えて増加し、Ab2群はAbMyo群と比較してわずかな増加を示した(図42A)。腓腹筋に関しては、Ab2群およびAbMyo群は投与の1時間後にはIgG対照と比較してほぼ等しい筋重量を示した。4週間後には、Ab2群およびAbMyo群は処置の1時間後のIgG対照の重量よりも多い重量を示し、Ab2群はAbMyo群と比較してわずかな増加を示した。処置の8週間後には、Ab2群およびAbMyo群の腓腹筋はIgG対照群の腓腹筋よりも多かった(図42B)。
血清試料中の薬物曝露を、ヒトIgGに特異的なELISAを使用して、参照基準として使用した既知量の各薬物と共に測定した。図33に示すように、注射後1時間という早さで、Ab2とコンパレーター抗体(AbMyo)の両方が血清中に検出され、両方の抗体の1μg/mlを超えるレベルが実験を通して検出できる。しかし、Ab2はAbMyoよりも有意に長い半減期および推測曲線下面積(AUCINF)を示し、同様の用量でAb2はAbMyoよりも有意に大きな曝露を示すことが示唆される。
プロおよび潜在型ミオスタチンの相対レベルを、筋肉溶解物または血清試料の定量的ウェスタンブロットによって決定した。筋肉溶解物は瞬間凍結筋肉試料から粉砕に続いてプロテアーゼおよびホスファターゼ阻害剤を加えたT−PER緩衝液で溶解することによって作製した。溶解の後、同じ濃度のタンパク質を含有する試料をPAGEゲルで分離し、低蛍光PVDF膜上にウェスタンブロットした。筋肉溶解物については、全タンパク質10〜50ngをゲルにロードした。血漿はPBSで1:10に希釈し、各試料10μlをゲルにロードした。大きさの標準として0.1〜1ngの組換えプロおよび潜在型ミオスタチンも、ゲルにロードした。ミオスタチンタンパク質の同定は、潜在型ミオスタチンのプロドメインを認識する抗体(AF1539、R&D Systems)を使用し、続いて蛍光標識した二次抗体による検出によって達成した。全てのウェスタンブロット分析について、1群あたり最低3個の試料を分析した。
薬物処置したマウスおよび対照において、蛍光ウェスタンブロットによって血清ミオスタチンを測定した。Ab2の血清曝露が増加したにも関わらず、Ab2およびAbMyoで処置した両方のマウスにおける血清中潜在型ミオスタチンレベルは同様であった(図34)。これらのデータは、遊離薬物(標的に結合していない)の循環レベルは標的のレベルに対して十分に大きいので、Ab2の血清曝露が増加してもAbMyo群で観察されたよりも大きな循環潜在型ミオスタチンの増加はもたらされないことを示唆している。
筋肉(大腿直筋)中のミオスタチンレベルも、蛍光ウェスタンブロットによって評価した。潜在型およびプロミオスタチンの相対的レベルをマウス筋肉溶解物において蛍光ウェスタンブロットで測定した。潜在型ミオスタチンは、Ab2およびAbMyo処置筋肉の両方で上昇する(図35A)。しかし、AbMyo処置筋肉における潜在型ミオスタチンの上昇は28日目までにベースラインに戻る一方、Ab2処置筋肉の潜在型ミオスタチンは少なくともこの時までは上昇したままである(AbMyo処置に対してP<0.003)。プロミオスタチンについても同様の傾向が観察される(図35B)が、その差異は統計学的に有意ではない(P=0.068)。これらのデータは、薬物作用部位である骨格筋におけるAb2の作用期間がより長いことを示唆している。
(実施例8)
ミオスタチン活性化の遮断によりネズミデキサメタゾンモデルにおける萎縮が防止される
10種のミオスタチン前駆体特異的抗体のパネルを使用して、ミオスタチンへの結合がミオスタチンシグナル伝達を遮断するのに十分であるか否かまたはin vivoにおいて増殖因子の放出を防止することによりシグナル伝達が防止されるかどうかを調べた。この研究では、タンパク質分解を介したミオスタチンの前駆体の形態からの活性化を遮断することにより他の点では健康なマウスがデキサメタゾン誘導筋萎縮症から保護される程度を評価した。
グルココルチコイド誘導筋萎縮症のモデルを、雄C57/BL6マウスにその飲料水中のデキサメタゾンを2週間投与することによって確立した。筋萎縮症をモニターするために、除脂肪体重の変化を定量的NMR(QNMR)で追跡し、処置期間の最後に筋肉を秤量した。投与の2週間後に除脂肪体重の有意な減少(約10.9%)および個々の後肢の筋肉の量の有意な減少(大腿直筋および腓腹筋においてそれぞれ約24.5%および約21.9%)を誘導することができた用量を選択した(2.5mg/kg/日)(図36B、IgG対照、黒い白抜きの四角)。
動物に完全ヒト抗体を20mg/kg/週で2週間投与し、この期間内にこれらの抗体に対する免疫応答が開始されると仮定した。in vitroレポーターアッセイにおいて組換えミオスタチンの活性化を遮断した抗体だけでなく、in vitroにおいてミオスタチンの前駆体および/または成熟型に密接に結合し、ミオスタチンシグナル伝達を阻害しなかった抗体も含めた(図36A)。in vitroアッセイにおける機能活性を有する各抗体に対して、この機能活性を欠き、同様の結合プロファイルを有する別の抗体がパネル中に存在した。
デキサメタゾンおよび試験物を用いた2週間の処置の最後に、個々の筋肉を解剖し、秤量した。腓腹筋の重量の変化%を図36Bにプロットする。飲料水を通してデキサメタゾンを投与され、IgG対照抗体またはミオスタチンに結合するがin vitroミオスタチン活性化アッセイにおいてそのシグナル伝達を遮断しない抗体を同様に投与された動物は、非疾患対照群(黒のバー)と比較して腓腹筋(約20%)の有意な萎縮症を示した。
興味深いことに、in vitro機能活性を有する5種の抗体のうち4種がプロミオスタチンおよび潜在型ミオスタチンの両方を認識した。これらの抗体のうち3種、Ab2、Ab10、およびAb11は萎縮症を防止した(疾患IgG対照に対して、それぞれp=0.0003、p=0.0076、p=0.0309)。第4の抗体、Ab7は、統計学的有意性の傾向を示した(p=0.0572)。重要なことに、いずれの抗体も、2週間の期間の経過にわたって非疾患対照コホートからの腓腹筋の重量に関して統計学的に有意な偏差を有さず、これは、4種全ての抗体によるデキサメタゾン誘導萎縮症からの保護を反映する。
優勢な機能的エピトープ結合プロファイルに属さない機能活性を有した1つの抗体、Ab8は、このモデルにおいて萎縮症を防止しなかった(非疾患対照に対してp=0.0003、IgG対照に対してp=0.9991)。
ミオスタチンの成熟形態および潜在型の形態(およびGDF11)を認識する別の対照抗体、Ab−C5を含めた(表23)。この抗体は、ミオスタチンおよびGDF11シグナル伝達を、ミオスタチン増殖因子と細胞表面受容体との間の相互作用を遮断することによって阻害する。マウスをこの抗体で処置することによっても、デキサメタゾン誘導萎縮症がAb2と同程度に防止された(図36B)。同じく成熟および潜在型GDF8を認識し(しかしGDF11は認識しない)、活性化を遮断しないAb14は、このモデルにおける萎縮症を防止することはできなかった。これらのデータは、ミオスタチンの前駆体の形態からの活性化を遮断することが、少なくとも受容体−増殖因子認識を遮断するのと同様に効果的であることを示す。
(実施例9)
ミオスタチン活性化の遮断により筋肉性能が改善される。
Ab1の筋肉性能に対する影響を調査した。免疫適格性動物における免疫応答を回避するために、muAb1と称される、ネズミ定常領域を有するAb1のバージョン(配列番号116〜117)を使用した。9週齢のC57BL/6Jマウスを1週間にわたって順化させ、次いで、全群にわたってほぼ等しい体重を有する処置群に割り当てた。処置または対照(IgG(20mg/kg)およびPBS)を毎週ツベルクリンシリンジによってI.P.投与した。IgG対照についてのデータは、PBSのデータと同様であった(データは示していない)。4週間の処置後、動物の足底屈筋機能をin vivoで試験した。この試験後、動物を屠殺し、長指伸筋(EDL)機能をin vitroで試験した。
muAb1−重鎖定常領域
ASTTPPSVYPLAPGSAAQTNSMVTLGCLVKGYFPEPVTVTWNSGSLSSGVHTFPAVLQSDLYTLSSSVTVPSSTWPSETVTCNVAHPASSTKVDKKIVPRDCGCKPCICTVPEVSSVFIFPPKPKDVLTITLTPKVTCVVVDISKDDPEVQFSWFVDDVEVHTAQTQPREEQFNSTFRSVSELPIMHQDWLNGKEFKCRVNSAAFPAPIEKTISKTKGRPKAPQVYTIPPPKEQMAKDKVSLTCMITDFFPEDITVEWQWNGQPAENYKNTQPIMDTDGSYFVYSKLNVQKSNWEAGNTFTCSVLHEGLHNHHTEKSLSHSPG(配列番号116)
muAb1−軽鎖定常領域
GQPKSSPSVTLFPPSSEELETNKATLVCTITDFYPGVVTVDWKVDGTPVTQGMETTQPSKQSNNKYMASSYLTLTARAWERHSSYSCQVTHEGHTVEKSLSRADCS(配列番号117)
筋肉性能を、305C筋肉レバーシステム(Aurora Scientific Inc.、Aurora、CAN)を用いてin vivoで測定した。収縮を坐骨神経への経皮電気刺激によって引き出した。最適な等尺性単収縮トルクを、疲労を回避するために各収縮間に最低30秒を置きながら電流を増大させることによって決定した。次いで、刺激の周波数を増加させながら一連の刺激を行った(パルス0.2ms、連続継続時間(train duration)500ms)(1、10、20、40、60、80、100、150Hz、続いて1Hzで最後の刺激)。測定後、足を解放し、ピンを取り除き、マウスを別のきれいなケージ内で回復させた後、生存チャンバーに戻した。
4週間の処置後、足底屈筋群(腓腹筋、ヒラメ筋および足底筋群)の神経惹起機能をその活性化の範囲にわたってin vivoで分析した。muAb1で処置した動物では、60Hzを超える周波数で等尺性トルクの約19%の増大が観察された(肢の長さに対して正規化)(主効果p=0.003)(図37A)。この機能の増大に付随して、力・頻度応答のいかなる変化とも独立して生じた(図38B)最大収縮速度の31%の上昇を同定した(p=0.025)(図38A)。ミオスタチン阻害の同化効果と一致して、力の増大が腓腹筋の重量の22%の増加によって反映されることを見出した(p=0.009、図37B))。したがって、力を筋重量に対して正規化すると群間で差異はなく(図37C)、これは、Ab1によって誘導される肥大による筋肉の質、興奮性、または神経筋接合部への悪影響はなかったことを示唆する。
ミオスタチン遮断の筋肉に対する直接効果を確認するために、神経とは独立して、EDL筋を単離し、in vitroで力を測定した。水平灌流浴に適合させた305C筋肉レバーシステム(Aurora Scientific Inc.、Aurora、CAN)を使用してin vitroでEDLのin vitro筋肉性能を測定した。簡単に述べると、下肢の皮膚を膝までの半分の長さを剥ぎ、前脛骨筋を下にあるEDLから慎重に切り離した。EDLの遠位腱に絹縫合糸(4−0)を結び付け、腱を切断した。次いで、筋肉を脛骨および隣接する筋肉から慎重に切り離し、次いで、可視化した近位腱を切断した。筋肉を氷冷した生理学的緩衝溶液中に入れ、絹縫合糸を近位腱に結び付けた。筋肉を305C筋肉レバーシステムの水平浴に入れ、95%O2/5%CO2で酸素化して37℃に保った生理的緩衝液を灌流した。縫合糸は片側を固定したポストに結び付け、もう一方の側をレバーアームに結び付けた。縫合糸が堅く締り、発生した最大の力が安定であることを確実にするために、筋肉の側面に設けた白金電極を通して0.01Hzの周波数で一連の1Hzおよび100Hzの電場刺激(パルス0.2ms、持続時間100ms)を送達した。安定になったら、刺激の周波数を増加させながら一連の刺激を行った(パルス1ms、連続継続時間250ms)(1、10、20、40、60、80、100、150Hz、続いて1Hzで最後の刺激)。
muAb1での処置の結果、150hzにおける最大力が27%増大し(p=0.011、図37D)、収縮速度および弛緩速度にも変更はなく(図38C)、力・頻度関係にもいかなる差異もなかった(図38D)。やはり、ミオスタチン遮断の結果、EDLの重量が34%増加し(p=0.007、図37E)、したがって、力を筋重量に対して正規化すると、群間で差異はない(図37F)。図37Gは、nuAB2およびPBSのIIB型平均線維面積を示す。図37Hは、PBSおよびmuAb試料中の4つの筋線維型(%)を示す。
組織学のために足底屈筋群を凍結させ、容易な切片作製を可能にするために軟らかいコルク表面上でクリオマトリクスに包埋した。簡単に述べると、凍結および包埋した組織をクリオトームにマウントし、線維軸に対して垂直に連続的に切片作製した(厚さ10μm)。筋肉の異なる部分で多数のスライス(5〜10)を取得した。次いで、スライスを氷冷したパラホルムアルデヒド中に固定し、さらに使用するまで−80℃で保った。
横断面積を決定するために、筋肉の中腹部由来の固定切片をフルオロフォアとコンジュゲートしたコムギ胚芽凝集素で染色して細胞膜を可視化した。蛍光顕微鏡を使用して切片をデジタル化し、予測ソフトウェアを使用して細胞境界をたどり、不偏の自動測定によって横断面積を決定した。筋線維型決定のために、組織学的スライスをヒラメ筋および腓腹筋の中腹部から取得した。次いで、固定した組織切片を、4%ウシ血清アルブミン、0.01%Triton X−100および10μg/mlのFab断片を補充したトリス緩衝食塩水を使用して室温で1時間にわたってブロッキングした。次いで、スライドをPBSで洗浄し、MyHC−I、MyHC−IIa、またはMyHC−IIbのいずれかに対する一次抗体(1:20希釈;Developmental Studies Hybridoma Database)で覆い、4℃で終夜インキュベートした。次いで、スライドをPBSで洗浄し、適切な二次抗体を添加して室温で1時間置いた。蛍光顕微鏡測定のためにスライドを再度PBSで洗浄し、封入溶液で覆い、カバーガラスを使用して組織切片を密封した。蛍光顕微鏡(Nikon)を使用して蛍光標識した組織切片をデジタル化した。次いで、標準の計数ソフトウェアを使用して画像を細胞の数について分析した。体積あたりの細胞の数を切片体積および筋重量から推定した。
Treat−NMDプロトコールMDC1a_M1.2.004に従ってH&E染色を実施した。簡単に述べると、筋肉切片を4%パラホルムアルデヒド中で5分にわたって固定し、次いで、水道水で流しながら1分にわたってすすいだ。スライドをメイヤーヘマトキシリン溶液中に5分にわたって浸漬し、続いて温かい水道水で流しながら10分の青色染色期間を置いた。赤色染色は、1%酢酸を伴う0.5%エオシン溶液中で10分インキュベートし、次いで、ddH2Oで3回、1分にわたって洗浄し、次いで、70%、90%、100%エタノール、および100%キシレンで逐次的に脱水して達成された。スライドをキシレンに基づく封入剤にマウントした後、画像化した。
足底屈筋群の組織学的評価により、muAb1処置での総筋肉横断面積の27%の増加(p=0.019、図38E)、および平均線維横断面積の14%の増加(p=0.010、図38F)が明らかになった。この増加は、線維型の相対的な分布のいかなる変化からも(図38I)I型、IIA型、またはIIx型線維のCSA(図38G〜38I)からも独立した、IIB型線維の横断面積の29%の増加(p=0.009)によって支持された(図38G〜38H)。
(実施例10)
健康なカニクイザルにおけるAb2を用いた処置の除脂肪量、筋重量、および血清ミオスタチンに対する効果
Ab2を用いた処置の除脂肪量変化に対する効果を健康なカニクイザル(処置群あたりn=6)において評価した。健康な雄カニクイザル(平均年齢:試験開始時に34カ月)に、3つの異なる用量レベルのAb2(3mg/kg、10mg/kg、および30mg/kg)を週1回、8週間にわたって静脈内注射により投与し、4週間の回復期を伴った。対照動物にはビヒクル対照(20mMのクエン酸および150mMの塩化ナトリウムUSP、pH5.5)を投与した。除脂肪量をベースライン時および12週間の試験全体を通して時々、二重エネルギーX線吸収測定法(DEXA)によって測定した(図43A〜43D)。Ab2を用いた処置の結果、Ab2で処置したサルの肢の除脂肪量がビヒクル対照と比較して5〜9%増加した(図43A〜43Dおよび図45)。Ab2を用いた処置の、健康なカニクイザルの上腕二頭筋および腓腹筋由来の組織重量に対する効果も第12週に測定した(図44A〜44B)。Ab2処置の有意な効果はこれらの筋肉の重量で明白であった(図44A〜44Bおよび図45)。速筋線維に富む腓腹筋および上腕二頭筋は、Ab2で処置した動物においてビヒクル対照と比較して25%実質的に大きかった(図45)。したがって、Ab2処置には、筋肉の成長に対して注目すべき効果があった。さらに、Ab2処置には、速筋に富む筋線維に対して特に確固とした効果があった。
図46Aおよび46Bに示されているとおり、この試験全体を通して、血清ミオスタチンレベルを分析するための血清試料を試験2日目、4日目、8日目、15日目、22日目、29日目、36日目、43日目、64日目、および85日目に採取した。Ab2で処置した動物におけるミオスタチンレベルの上昇は試験15日目から29日目の間にピークに達し、プラトーになり、試験85日目までに低下した(図46A〜46B)。Ab2の全ての用量で血清中の潜在型ミオスタチンレベルの上昇が見られ、30mg/kgのAb2で処置した動物で最大の上昇が見られた(図46A〜46B)。
(実施例11)
抗ミオスタチン抗体による処置の脊髄損傷マウスに対する効果
脊髄損傷および試験物処置および試験尺度
マウスにおけるmu−Ab1の脊髄損傷に対する効果をマウス重症挫傷モデルにおいて試験した。成体雌C57BL/6マウス(生後8週間)を4つの試験群にランダム化した。マウスを、ケタミン(100mg/kg)およびキシラジン(10mg/kg)カクテルを使用して腹腔内(i.p.)注射によって麻酔し、次いで、胸椎T8とT10の間の椎弓切除術に供して脊髄の背側表面を露出させた。脊髄損傷を誘導するために、T9にある脊髄をInfinte Horizon Impactor(IH−0400 impactor、Precision Systems Instrumentation、LLC、Virginia、USA)の垂直方向のシャフトの下に直接置き、続いて、力変換器の応答ピークが所定のレベル(65kDyne)に到達するまでシャフトをゆっくりと下げた。対照群はT9レベルで椎弓切除術(のみ)に供した(偽操作)。損傷の直後に、動物に試験物−ビヒクル(20mMのクエン酸および150mMの塩化ナトリウム、pH5.5)、IgG(40mg/Kg)、またはGDF8(Mu−Ab1、40mg/Kg)のいずれかをi.p.注射によって投与した。試験物のフォローアップ注射をSCIから1週間後、同じ様式で投与した。2週間の試験の間、多数の身体および行動の尺度を使用して抗ミオスタチン薬物療法の効果を評価した。身体の尺度には、総体重、筋重量、全身組成(除脂肪体重(LBM)、脂肪量、および骨塩密度)ならびに間接熱量測定法を使用して決定される総代謝エネルギー消費を含めた。BMS運動スコア、ロータロッド試験、および握力試験を含めた行動の尺度も評価した。群間の差異を、一元配置ANOVAの後に、Tukey事後比較(GraphPad、プリズム)を使用して分析した。データは平均±SEMとして表されている。p<0.05の有意水準が対照とは異なるとして許容された。
結果およびデータ解析
体重、筋肉量、および身体組成
以下の時点で体重を測定した:0(ベースライン:生存外科手術前);外科手術の1週間後;および、外科手術の2週間後(図47)。ベースライン時点で質量に有意な群間の差異はなかった。SCI(および処置)の1週間後には、SCI−veh(P<0.0001)およびSCI−IgG(P<0.0001)群において偽対照と比較して体重の有意な低減があった。偽対照とSCI−GDF8(Mu−Ab1)群との間で体重に統計学的差異はなかったが(P=0.2805)、SCI−GDF8(Mu−Ab1)群の体重はSCI−veh群(P=0.004)およびSCI−IgG群(P=0.0003)よりも有意に多かった。SCIの2週間後、SCI−veh(P=0.0011)およびSCI−IgG(P=0.0009)における体重は偽対照よりも有意に少ないままであった。SCI−GDF8(Mu−Ab1)群における体重はSCI−veh(P=0.0152)群およびSCI−IgG(P=0.0123)群よりも有意に多いままであったが、偽対照と比較して異ならなかった(P=0.585)。
データは、SCIが、損傷を受けていないマウスと比較して全体重の有意な減少を誘導したことを示す。処置としてのGDF8(Mu−Ab1)は、SCIで観察された体重の減少を有意に減弱し、したがって、損傷を受けていないマウスとGDF8(Mu−Ab1)で処置したマウスとの間の群の平均は定性的に同様であり、統計学的に有意ではない。
SCIの2週間後の剖検時に、いくつかの筋組織(ヒラメ筋、腓腹筋、二頭筋および三頭筋)を抽出して、SCIおよび処置の湿重量に対する効果を評価した(図48)。ヒラメ筋の平均重量はSCI−veh群およびSCI−IgG群(どちらもP<0.0001)において偽対照よりも有意に少なかった。偽対照とSCI−GDF8(Mu−Ab1)群の間でヒラメ筋量に統計学的差異はなかったが(P=0.3129)、SCI−GDF8(Mu−Ab1)群のヒラメ筋量はSCI−vehおよびSCI−IgGのどちらよりも有意に多かった(どちらもP<0.0001)。同様に、腓腹筋の平均重量はSCI−vehおよびSCI−IgG(どちらもP<0.0001)において偽対照よりも有意に少なかった。偽対照とSCI−GDF8(Mu−Ab1)群の間でヒラメ筋量に統計学的差異はなかったが(P=0.3255)、SCI−GDF8(Mu−Ab1)群のヒラメ筋量はSCI vehおよびSCI−IgGのどちらよりも有意に多かった(どちらもP<0.0001)。
二頭筋筋肉の平均量も同様にSCI veh群(P=0.045)およびSCI−IgG群(P=0.04)で偽対照と比較して有意に少なかった。二頭筋量のSCI−GDF8(Mu−Ab1)群間の群平均傾向はSCI−veh群およびSCI−IgG群のどちらよりも多かった。三頭筋の平均量も同様にSCI−veh群(P=0.007)およびSCI−IgG群(P=0.0013)において偽対照と比較して有意に少なかった。SCI−GDF8(Mu−Ab1)群の三頭筋量はSCI−vehおよびSCI−IgGのどちらよりも有意に多かった(どちらもP<0.0001)。
データは、主に酸化性のヒラメ筋および主に解糖性の腓腹筋を含めた病変下筋肉量が、SCI後に、損傷を受けていないマウスと比較して有意に低減したことを示す。GDF8(Mu−Ab1)処置により、この筋肉喪失が驚いたことにかつ有意に減弱し、ヒラメ筋および腓腹筋のどちらの平均筋肉量も損傷を受けていないマウスの筋肉量と同等であり、これは、効果が筋肉表現型にわたることを示す。二頭筋および三頭筋を含めた病変上筋肉量を試験した場合にも同様に、SCIでは、損傷を受けていないマウスと比較して量が有意に低減した。これは、SCIでの生理的システムの全体的な抑制および量の全体的な減少(たとえ大きな割合の筋肉量減少が病変下のものでも)に起因する可能性がある。
SCIの2週間後、全ての実験群において身体組成(除脂肪量および脂肪量)を二重エネルギーX線吸光光度法(DXA)デンシトメトリー(Lunar PIXImus(商標)濃度計(GE Medical−Lunar、Madison、WI))によって評価した。体内総除脂肪量(total body fat−free(lean)mass)はSCI−veh群(P=0.0124)およびSCI−IgG群(P=0.056)において偽対照と比較して有意に少なかった。SCI−GDF8(Mu−Ab1)群の総除脂肪量は、SCI−veh群(P=0.0254)およびSCI−IgG群(P=0.0114)のどちらよりも有意に多く(図49)、群平均傾向は、SCI−veh群およびSCI−IgG群のどちらにおいても偽対照と比較して多くの脂肪量を示した(図49)。全身脂肪量についてのSCI−GDF8(Mu−Ab1)群平均傾向も同様にSCI−veh群およびSCI−IgG群のどちらよりも少なく、偽対照と同等であった。平均除脂肪量を体重に対する百分率として調査した場合、群間で識別可能な差異はなく、これは、SCI後の体重の変化、およびGDF8(Mu−Ab1)の処置効果が除脂肪体重の変化に限られることを示唆する(図50)。
これらのデータは、体内総除脂肪量または全身除脂肪量がSCI後に偽対照と比較して有意に低減したことを示す。GDF8(Mu−Ab1)処置により、このSCI後の除脂肪量の減少が有意に減弱し、平均除脂肪量は損傷を受けていないマウスと異ならず、これは、全体的な除脂肪組織への効果を示唆する。逆に、SCI後の総脂肪量は、群の平均を調査した場合、偽対照と比較して増加するようであった。病変下除脂肪量の低減、および脂肪蓄積(全体的および局部的な)の増加は、慢性SCI病態生理のよく特徴付けられた特徴である。
代謝および全エネルギー消費
マウスに対して、Comprehensive Lab Animal Monitoring System(CLAMS;Columbus Instruments、Columbus、OH、USA)の12チャンバー開回路Oxymaxシステムを使用して間接熱量測定法を実施した。マウスを、SCIの2週間後の分析時点の前(およびその時点を含む)3日間にわたり、個々の代謝チャンバーに移した。VO2およびVCO2を連続的に測定し、間接熱量測定法を使用して、エネルギー消費/時間(kcal/時間)および1日あたりの全エネルギー消費(TEE)を算出した(図51)。群平均傾向から、偽対照と比較したSCI−vehおよびSCI−IgGにおけるこれらの尺度の減少、および偽対照に対するSCI−veh群における代謝の低下が統計学的に有意に近づいたことが示唆される(P=0.075)。群の平均は、SCI−veh群およびSCI−IgG群と比較してSCI−GDF8(Mu−Ab1)群における上昇の傾向を示した。特に、SCI−vehと比較したSCI−GDF8(Mu−Ab1)における代謝の増大は、統計学的に有意に近づき(P=0.0530)、SCI−GDF8群平均の方向は偽対照と比較してわずかに上昇しているようであった。さらなる分析のために、GDF8(Mu−Ab1)処置薬を投与されていないSCI群(SCI−veh+SCI−IgG)を折り畳み(collapse)、SCI処置対照に群検出力(group power)を加えた。そうすることで、合体させたSCI処置対照群におけるkcal/時間およびTEEが偽対照よりも低い(P=0.0159)ことが見出された。偽対照とSCI−GDF8(Mu−Ab1)群の間でkcal/時間およびTEEに統計学的差異はなかったが(P=0.9764)、SCI−GDF8(Mu−Ab1)群のkcal/時間およびTEEは合体させたSCI処置対照群よりも有意に高かった(P=0.0106)。
結果は、代謝(エネルギー消費として)がSCI後に抑制されたこと、およびGDF8(Mu−Ab1)処置により安静時の代謝が損傷を受けていない対照に近づいたレベルに維持されたことを示す。これらの結果は、さらに、GDF8(Mu−Ab1)の除脂肪組織、特に筋肉に対する生物学的効果により、そうでなければSCI後に低減する安静時の代謝のレベルが保存されることを示唆する。
機能性尺度
BMSオープンフィールド自発運動試験
Basso Mouse Scale(BMS)オープンフィールド自発運動試験(0〜9の評点システムを使用)を使用して、これらに限定されないが、肢の位置、重みの支え、および関節の動きなどの変数を含めたSCI後の後肢の自発運動機能の回復を評価した。盲検条件下で、研究者2人のチームがマウスをベースライン時に4分間にわたり、SCI/偽の1日後、およびその後毎週評価した。アリーナを3つのゾーン(壁、間および中央)に分類し、マウス行動を5分間にわたって高分解能ビデオカメラを使用して記録した。横断した線の総数、各ゾーンで過ごした時間、ならびに毛づくろいおよび立ち上がりなどの常同的行動を分析し、事象の数として表した。
SCI−veh群およびSCI−IgG群ではSCIの1日後にBMS複合スコアが有意に低減した(どちらもP<0.0001)(図52)。SCI−veh群とSCI−IgG群はこの時点で一様であったので、これらを折り畳み、後の時点でのさらなる試験検出力をもたらした(SCI処置対照)。また、SCIの1日後には、SCI−GDF8(Mu−Ab1)群において偽対照と比較してBMSスコアが有意に低減した(P<0.0001)。SCIの1週間後、BMSスコアはSCI処置対照群(P<0.0001)およびSCI−GDF8群(Mu−Ab1)(P=0.0128)において偽対照と比較して有意に低減したままであった。しかし、SCI−GDF8(Mu−Ab1)(P=0.0148)群におけるBMSスコアはSCI処置対照と比較して有意に大きかった。同様に、SCIの2週間後、BMSスコアはSCI処置対照群(P<0.001)およびSCI−GDF8(Mu−Ab1)群(P=0.0182)のどちらにおいても有意に低減したままであったが、やはり、SCI−GDF8(Mu−Ab1)群はSCI処置対照よりも有意に高いBMSスコアを有した(P=0.0143)。
ロータロッド試験
運動協調性および平衡を、加速するロータロッドシリンダー(Rotamex 4/8、Columbus Instruments)で試験した。手順は、5日間の予備訓練(1日目〜5日目)、続いて、試験(SCI/偽の1週間後および2週間後)からなった。シリンダーを、一定の加速でスピードを増大させながら回転させた(10分間にわたって10〜60rpm)。落下する前にロッド上で過ごした総時間を記録し、ロッドへの受動的なしがみつきなどの非歩行行動は手で矯正した。各試行は平均4セッションからなった。
運動協調性および平衡の代用尺度としてロータロッド時間試行を使用して、この試験から、SCIの1週間後に、SCI−veh群、SCI−IgG群、およびSCI−GDF8群では偽対照と比較して平均ロータロッド時間が有意に減少した(全てP<0.0001)ことが示された(図53)。SCI−GDF8(Mu−Ab1)群平均はSCI−veh群およびSCI−IgG群のどちらよりも大きかった(P=0.118)。同様に、SCIの2週間後には、SCI−veh群、SCI−IgG群、およびSCI−GDF8(Mu−Ab1)群では偽対照と比較して平均ロータロッド時間の有意な減少が持続していた(全てP<0.0001)。やはり、SCI群のいずれの間にも統計学的差異はなかったが、SCI−GDF8(Mu−Ab1)群平均はSCI−veh群およびSCI−IgG群のどちらよりも大きかった(P=0.1708)。
握力試験
偽群およびSCI群からの全ての動物に、握力試験を使用して後肢ピーク力(筋力)の分析を行った。後肢握力を、デジタル力ゲージ(Chatillon DFIS2、Ametek)を使用して評価し、測定された力の単位をグラムとした最大筋力として神経筋機能の尺度を生じさせた。試験は、外科手術前のベースライン評価、続いて外科手術の1週間後および2週間後の試験日からなった。力の値は、5回の試行から算出された平均であった。
SCIの1週間後、SCI−veh群、SCI−IgG群、およびSCI−GDF8(Mu−Ab1)群では偽対照と比較して握力が有意に減少した(全てP<0.0001)(図54)。SCI−GDF8(Mu−Ab1)群の握力はSCI−veh(P=0.0006)およびSCI−IgG(P=0.0003)のどちらよりも有意に大きかったが、後者の2つの群は互いと異ならなかった。SCIの2週間後、SCI−veh群、SCI−IgG群、およびSCI−GDF8(Mu−Ab1)群では偽対照と比較して握力が有意に減少した(全てP<0.0001)。SCI−GDF8(Mu−Ab1)群の握力はSCI−veh群よりも有意に大きかったが(P=0.0124)、SCI−IgG群とは統計学的に異ならなかった(しかし群平均は力がより大きい傾向を示した;P=0.1856)。
結果は、SCIが、運動協調性および平衡(ロータロッド)、ならびに筋力(握力)の顕著な低減をもたらす後肢自発運動機能(BMS)の劇的な低減を引き起こすことを示す。GDF8についての複合BMSスコアは他の損傷群よりも有意に大きかったので、GDF8(Mu−Ab1)処置によりこの変化が防止された。GDF8(Mu−Ab1)で処置した動物はまた、ロータロッド時間試行による評価でも、より高い運動協調性および平衡を有した。
結論として、これらのデータから、GDF8(Mu−Ab1)処置の、SCIを有するマウスの人体計測的転帰尺度、生理的転帰尺度、および機能的転帰尺度に対する重大な効果が実証された。体重および病変下筋肉量のSCI誘導性低減はGDF8(Mu−Ab1)で減弱し、また、身体組成およびエネルギー消費に関連する、SCIに関連する代謝異常はGDF8(Mu−Ab1)処置後にはあまり明白ではなかった。さらに、GDF8(Mu−Ab1)処置の効果は、無処置SCI条件と比較した自発運動に関する利点および機能的利点に転換される。
(実施例12)
細胞内プロミオスタチン 対 分泌プロミオスタチン
方法
免疫蛍光法
前脛骨筋(TA)筋肉を氷冷した4%パラホルムアルデヒド(EMS)、PBS中に30分にわたって固定し、10%スクロース、PBS中4℃で終夜インキュベートし、次いで、20%スクロース、PBS中で終夜インキュベートした。次いで、筋肉を、凍結切片作製のために、トラガント(Sigma)を伴うコルク上にマウントし、液体窒素で冷却したイソペンタン(Sigma)中で凍結させた。TA筋の10μmの切片を0.1%Triton−X100(Sigma)、PBSで20分にわたって透過処理し、0.05%Triton−X100、PBS(PBS/T)で1回洗浄し、次いで、PBS/T 1.5mLあたり1滴に希釈したマウスIgGブロッキング試薬(Vector Lab)中で1時間インキュベートした。切片をPBS/Tで1回洗浄し、次いで、10%Normal Goat Serum(Sigma)、1% Blocking powder(Perkin Elmer)、PBS/T(NGB)中、室温で30分インキュベートした。一次抗体(ウサギ抗ラミニン、1:5000、Abcam;Ab10、50μg/mL;HuNeg、50μg/mL)をNGB中に希釈し、切片に4℃で終夜適用した。切片をPBS/Tで3回洗浄し、次いで、NGB中に希釈した二次抗体(Alexa Fluor 488とコンジュゲートしたヤギ抗ウサギ、1:1000、Invitrogen;Alexa Fluor 594とコンジュゲートしたヤギ抗ヒトIgG FCγ、1:500、Jackson ImmunoResearch)中で1時間インキュベートした。次いで、切片を350nMのDAPI(Thermo)、PBS/T中で5分インキュベートし、PBS/Tで2回洗浄し、次いで、Vectashield(Vector Laboratories)を用いてマウントした。組換えタンパク質吸収実験のために、50μg/mLのAb10を単独でまたは10×モル過剰のrGDF8またはrGDF11(どちらもネズミ)と共にNGB中で終夜インキュベートし、次いで、一次抗体として使用した。
顕微鏡検査
40×/.80 Fluotar対物レンズを備えたLeica DM4 Bを用い、Leica Application Suite Xソフトウェアを使用して蛍光画像を捕捉した。次いで、画像をFiji(Schindelin, J.;Arganda−Carreras. I.およびFrise, E.ら(2012年)、「Fiji: an open−source platform for biological−image analysis」、Nature methods、9巻(7号):676〜682頁、PMID 22743772)で処理した。
結果
以前のデータから、筋肉において見出される大多数のミオスタチンがプロミオスタチンとして貯蔵されていることが示唆された。しかし、これらの方法では、貯蔵プロミオスタチンの細胞内のものと分泌されたものとを識別することができない。これに取り組むために、健康なマウス由来のTA筋の凍結切片に対して、プロミオスタチンおよび潜在型ミオスタチンを特異的に検出する抗体Ab10を使用して免疫蛍光法を実施した。
抗プロ/潜在型GDF8抗体Ab10の特異性を試験するための対照実験を図39〜40に示す。図39A〜39Bは、抗プロ/潜在型GDF8抗体Ab10、または非特異的な標的化抗体を用いてプロービングしたTA筋の横断面を示す。Ab10を図39Aに示し、HuNegを図39Bに示し、図のそれぞれは、DAPIで対比染色されている。スケールバーは0.01cmである。図40A〜40Cは、ブロッキング緩衝液単独中でインキュベートした(図40A)、10倍モル過剰の組換えマウスGDF8を伴うブロッキング緩衝液中でインキュベートした(図40B)、または10倍モル過剰の組換えマウスGDF11を伴うブロッキング緩衝液中でインキュベートした(図40C)抗プロ/潜在型GDF8抗体Ab10を用いてプロービングしたTA筋の横断面を示す。図40A〜40Cは、DAPIで対比染色されている。
抗プロ/潜在型GDF8抗体Ab10と、細胞外マトリクスマーカーであるラミニンとの共染色により、筋肉中で検出される大多数のミオスタチン前駆体が細胞外空間にあり、細胞内で検出されるシグナルはわずかであることが実証された。図41A〜41C、および55は、抗プロ/潜在型GDF8抗体Ab10および抗ラミニンを用いてプロービングし、DAPIを用いて対比染色したTA筋の横断面を示す。プロ/潜在型GDF8およびラミニンは、筋線維の頂点にある間質腔内(矢印)、筋線維間(矢印の頭部)、および間質核周辺(アスタリスク)に共局在する。したがって、健康な筋肉ではプロミオスタチンは細胞上空間に休止状態で存在し、Ab10は、筋肉中に見出されるミオスタチンの主要な形態を認識する。
本開示のいくつかの実施形態を本明細書において記載し、説明してきたが、機能を行うための、ならびに/あるいは本明細書において記載される結果および/または1つもしくは複数の利点を得るための、多様な他の手段および/または構造は、当業者によって容易に想起され、そのような変更および/または改変のそれぞれは、本開示の範囲内であると考えられる。より一般的には、本明細書において記載される全てのパラメータ、寸法、材料、および構成は、例示的であることを意味し、実際のパラメータ、寸法、材料、および/または構成は、特定の応用または本開示の教示が使用される応用に依存することを、当業者は容易に理解するであろう。当業者は、単なる日常的実験を使用して、本明細書に記載される開示の特異的実施形態に対する多くの同等物を認識するまたは確認することができる。したがって、前述の実施形態は、単なる例として紹介され、添付の特許請求の範囲およびその同等物の範囲内で、本開示は具体的に記載および特許請求される以外に実践してもよいと理解すべきである。本開示は、本明細書において記載されるそれぞれの個々の特徴、システム、物品、材料、および/または方法を対象とする。さらに、2つまたはそれ超のそのような特徴、システム、物品、材料、および/または方法の任意の組み合わせは、そのような特徴、システム、物品、材料、および/または方法が相互に矛盾しない限り、本開示の範囲に含まれる。
(項目1)
被験体におけるミオスタチン活性化を阻害するための方法であって、
上記被験体に、プロ/潜在型ミオスタチンに特異的に結合し、成熟ミオスタチンの放出を遮断する抗体またはその抗原結合性断片を含む組成物を、上記被験体において、以下:
(a)上記被験体における筋組織の量および/もしくは機能の増大;
(b)上記被験体の代謝率の上昇;
(c)上記被験体のインスリン感受性の増大;
(d)上記被験体における褐色脂肪組織のレベルの上昇;
(e)上記被験体におけるベージュ脂肪組織のレベルの上昇;
(f)上記被験体における白色脂肪組織のレベルの低下;
(g)上記被験体における内臓脂肪組織のレベルの低下;
(h)上記被験体における脂肪組織対筋組織の比率の低下;
(i)上記被験体における褐色脂肪組織、ベージュ脂肪組織、もしくは筋組織によるグルコースの取り込みの増加;
(j)白色脂肪組織もしくは肝組織によるグルコースの取り込みの減少;
(k)上記被験体におけるタンパク質の筋肉での異化および/もしくはアミノ酸の筋肉からの放出の減少;
(l)上記被験体におけるインスリン依存性血糖調節の増大;
(m)上記被験体における筋肉内脂肪浸潤の減少;
(n)標準化された生活の質の試験によって評価される生活の質の改善;
(o)上記被験体における筋肉喪失または筋萎縮の防止;ならびに/または
(p)上記被験体における筋機能障害に関連する代謝制御不全の発症の防止
のうちの2つまたはそれよりも多くを引き起こすのに有効な量で投与するステップを含み、
上記被験体が、ミオスタチンシグナル伝達の低減が有益であるヒト被験体である、方法。
(項目2)
筋肉の状態または障害に罹患している被験体を選択するステップをさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目3)
代謝障害に罹患しているか、またはそれを発症するリスクがある被験体を選択するステップをさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目4)
上記量が、対照と比較して循環血清試料中の潜在型ミオスタチンのレベルの上昇を引き起こす量である、項目1から3のいずれか一項に記載の方法。
(項目5)
上記被験体が、ミオパチー、筋萎縮症、筋ジストロフィー、および神経損傷からなる群より選択される筋肉の状態を有する、項目1から4のいずれか一項に記載の方法。
(項目6)
上記筋萎縮症が運動ニューロンの欠損に関連する、項目5に記載の方法。
(項目7)
上記欠損が遺伝子の変異を含む、項目6に記載の方法。
(項目8)
上記筋萎縮症が脊髄性筋萎縮症(SMA)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、または重症筋無力症に関連する、項目7に記載の方法。
(項目9)
上記神経損傷が、筋肉を神経支配するニューロンの部分的な脱神経、または運動ニューロンと標的筋肉との間のシグナル伝達の欠陥を含む、項目5に記載の方法。
(項目10)
上記神経損傷がSCIである、項目5に記載の方法。
(項目11)
上記SCIが部分的/不完全SCIである、項目10に記載の方法。
(項目12)
上記SCIがi)T1〜T6;ii)T7〜L5;iii)C6〜C7;iv)C5〜C6;またはv)C3〜C8の間の病変を含む、項目11に記載の方法。
(項目13)
上記被験体が、SCIの急性期;SCIの亜急性期、またはSCIの慢性期にある、項目10から12のいずれか一項に記載の方法。
(項目14)
上記被験体が、SCIに関連する代謝障害を有するか、またはそれを発症するリスクがある、項目13に記載の方法。
(項目15)
上記代謝障害が、インスリン抵抗性、炎症、脂質代謝異常、または筋肉内脂肪浸潤の増加であるか、またはそれを含む、項目14に記載の方法。
(項目16)
上記筋萎縮が、グルココルチコイド誘導性筋萎縮を含む、項目5に記載の方法。
(項目17)
上記被験体が、I型糖尿病、II型糖尿病、肥満、メタボリックシンドローム/糖尿病前症、心血管疾患、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、脊髄損傷(SCI)、代謝低下状態、二重糖尿病、クッシング病、および肥満症候群からなる群より選択される代謝疾患を有する、項目1から4のいずれか一項に記載の方法。
(項目18)
上記被験体が第2の治療を用いて処置される、項目1から17のいずれか一項に記載の方法。
(項目19)
上記第2の治療が神経保護治療を含む、項目18に記載の方法。
(項目20)
上記神経保護治療が幹細胞治療を含む、項目19に記載の方法。
(項目21)
ヒト被験体におけるニューロンと標的組織との間の神経シグナル伝達の欠陥に関連する疾患を処置または防止する方法であって、
ニューロンとミオスタチン前駆体を発現している標的組織との間の神経シグナル伝達の欠陥に関連する疾患に罹患しているヒト被験体を選択するステップ;および、
上記ヒト被験体に、プロ/潜在型ミオスタチンに特異的に結合し、成熟ミオスタチンの放出を遮断する抗体またはその抗原結合性断片を含む組成物を、上記疾患を処置または防止するのに有効な量で投与するステップ
を含み、
それにより上記ヒト被験体における上記神経シグナル伝達の欠陥に関連する疾患を処置または防止する、方法。
(項目22)
上記標的組織が、筋肉、脂肪組織、脳組織、肝組織、および血管組織からなる群より選択される、項目21に記載の方法。
(項目23)
上記標的組織が骨格筋である、項目22に記載の方法。
(項目24)
被験体におけるニューロンと標的筋肉との間のシグナル伝達の完全な喪失ではないが欠陥を引き起こす病変を処置するための方法であって、
上記被験体に、ミオスタチン阻害剤を含む組成物を上記被験体において上記病変の下に位置する筋肉を処置するのに有効な量で投与するステップ
を含む、方法。
(項目25)
上記量が、上記病変の下の筋肉喪失または筋萎縮を防止するのに有効な量である、項目24に記載の方法。
(項目26)
上記量が、上記病変の下の筋肉の量および/または機能を増大させるのに有効な量である、項目24に記載の方法。
(項目27)
上記筋肉が速筋線維を含有する、項目24に記載の方法。
(項目28)
上記筋肉が遅筋線維を含有する、項目24に記載の方法。
(項目29)
上記病変の下に位置する筋肉が、ヒラメ筋、腓腹筋、二頭筋および三頭筋の群より選択される、項目24から28のいずれか一項に記載の方法。
(項目30)
上記量が、上記被験体における上記病変の上の筋肉の量および/または機能を増大させるのに有効である、項目24から29のいずれか一項に記載の方法。
(項目31)
上記ミオスタチン阻害剤が抗体もしくはその抗原結合性部分、小分子、または遺伝子治療である、項目24から30のいずれか一項に記載の方法。
(項目32)
上記抗体がi)成熟ミオスタチン;ii)ミオスタチン受容体;および/または、iii)GDF11に結合する、項目31に記載の方法。
(項目33)
上記被験体が不完全脊髄損傷(SCI)を有する、項目21から32のいずれか一項に記載の方法。
(項目34)
上記不完全SCIがi)T1〜T6;ii)T7〜L5;iii)C6〜C7;iv)C5〜C6;またはv)C3〜C8の間の病変を含む、項目32に記載の方法。
(項目35)
上記量が、上記被験体における代謝に関する状態を処置するのに有効である、項目21から34のいずれか一項に記載の方法。
(項目36)
上記量が、上記被験体において、
(a)上記被験体における筋組織の量および/もしくは機能の増大;
(b)上記被験体の代謝率の上昇;
(c)上記被験体のインスリン感受性の増大;
(d)上記被験体における褐色脂肪組織のレベルの上昇;
(e)上記被験体におけるベージュ脂肪組織のレベルの上昇;
(f)上記被験体における白色脂肪組織のレベルの低下;
(g)上記被験体における内臓脂肪組織のレベルの低下;
(h)上記被験体における脂肪組織対筋組織の比率の低下;
(i)上記被験体における褐色脂肪組織、ベージュ脂肪組織、もしくは筋組織によるグルコースの取り込みの増加;
(j)白色脂肪組織もしくは肝組織によるグルコースの取り込みの減少;
(k)上記被験体におけるタンパク質の筋肉での異化および/もしくはアミノ酸の筋肉からの放出の減少;
(l)上記被験体におけるインスリン依存性血糖調節の増大;
(m)上記被験体における筋肉内脂肪浸潤の減少;
(n)標準化された生活の質の試験によって評価される生活の質の改善;
(o)上記被験体における筋肉喪失または筋萎縮の防止;および/または、
(p)上記被験体における筋機能障害に関連する代謝制御不全の発症の防止
を引き起こすのに有効である、項目35に記載の方法。
一実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、IgG、IgG1、IgG2、IgG2A、IgG2B、IgG2C、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgD、IgM、およびIgE定常ドメインからなる群より選択される重鎖定常ドメインを含む。一実施形態では、抗体はIgG4の定常ドメインを含む。一実施形態では、抗体はIgG1様ヒンジが生成され、鎖間ジスルフィド結合の形成が可能になるSerからProへの骨格置換を有するIgG4の定常ドメインを含む。一実施形態では、抗体またはその抗原結合性部分は、GDF11には結合しない。
本発明の実施形態において、例えば、以下の項目が提供される。
(項目1)
被験体における筋肉の状態を処置するための方法における使用のための医薬組成物であって、
前記医薬組成物は、プロ/潜在型ミオスタチンに特異的に結合し、成熟ミオスタチンの放出を阻害する抗体またはその断片を含み、かつ
前記医薬組成物は、被験体において、以下:
(a)前記被験体における筋組織の量および/もしくは機能の増大;
(b)前記被験体の代謝率の上昇;
(c)前記被験体のインスリン感受性の増大;
(d)前記被験体における褐色脂肪組織のレベルの上昇;
(e)前記被験体におけるベージュ脂肪組織のレベルの上昇;
(f)前記被験体における白色脂肪組織のレベルの低下;
(g)前記被験体における内臓脂肪組織のレベルの低下;
(h)前記被験体における脂肪組織対筋組織の比率の低下;
(i)前記被験体における褐色脂肪組織、ベージュ脂肪組織、もしくは筋組織によるグルコースの取り込みの増加;
(j)白色脂肪組織もしくは肝組織によるグルコースの取り込みの減少;
(k)前記被験体におけるタンパク質の筋肉での異化および/もしくはアミノ酸の筋肉からの放出の減少;
(l)前記被験体におけるインスリン依存性血糖調節の増大;
(m)前記被験体における筋肉内脂肪浸潤の減少;
(n)標準化された生活の質の試験によって評価される生活の質の改善;
(o)前記被験体における筋肉喪失または筋萎縮の防止;ならびに/または
(p)前記被験体における筋機能障害に関連する代謝制御不全の発症の防止
のうちの2つまたはそれよりも多くを引き起こす、医薬組成物。
(項目2)
前記筋肉の状態が、ニューロンと標的筋肉との間の神経シグナル伝達の欠陥に関連する、項目1に記載の使用のための医薬組成物。
(項目3)
前記筋肉の状態が運動ニューロン機能障害を含む、項目2に記載の使用のための医薬組成物。
(項目4)
前記筋肉の状態が損傷によって引き起こされる、項目2に記載の使用のための医薬組成物。
(項目5)
前記損傷が不完全SCIを含む、項目2に記載の使用のための医薬組成物。
(項目6)
前記筋肉の状態が遺伝的欠損に関連する、項目2に記載の使用のための医薬組成物。
(項目7)
前記筋肉の状態が筋萎縮性側索硬化症(ALS)、脊髄性筋萎縮症(SMA)、または重症筋無力症である、項目2に記載の使用のための医薬組成物。
(項目8)
前記被験体が代謝障害を有するか、またはそれを発症するリスクがある、前記項目のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
(項目9)
前記抗体または断片が、成熟ミオスタチンにもGDF11にも結合しない、前記項目のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
(項目10)
前記抗体が完全ヒト抗体またはヒト化抗体である、前記項目のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
(項目11)
前記抗体がIgG 4 サブタイプである、前記項目のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
(項目12)
前記抗体がpH感受性抗体である、前記項目のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
(項目13)
前記方法が前記医薬組成物を前記抗体0.1〜30mg/kgの投薬量で投与することを含む、前記項目のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
(項目14)
前記方法が毎週、隔週または毎月の投与を含む、前記項目のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
(項目15)
前記方法がIV注射または皮下投与を含む、前記項目のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。