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JP2019115300A - 油性組成物、油性組成物を用いた方法、試料の分析方法及び液滴生成装置 - Google Patents

油性組成物、油性組成物を用いた方法、試料の分析方法及び液滴生成装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 液滴同士の合一を低減する油性組成物を提供する。【解決手段】 油中水型エマルジョンの水相に含まれる試料の分析を行うための油性組成物であって、無機アルコキシド、及び無機ハライドの少なくともいずれか1つの化合物と、炭素原子数7以上30以下の脂肪族炭化水素、シリコーンオイル、及びフッ素系オイルの少なくともいずれか1つと、を含むことを特徴とする油性組成物。【選択図】 図1

Description

本発明は、油性組成物、油性組成物を用いた方法、試料の分析方法及び液滴生成装置に関する。
試料の分析や医薬品、化粧品等の分野において、エマルジョンに関する技術が活用されている。エマルジョンを利用した試料の分析として、油中水型エマルジョンを反応場として核酸試料を分析するデジタルPCR(dPCR:digital polymerase chain reaction)法が提案されている(特許文献1)。
特表2012−503773号公報
エマルジョン同士が合一すると、エマルジョンを利用した分析やエマルジョンの保存に影響を与えるおそれがある。
本発明の実施形態の一つに係る油性組成物は、油中水型エマルジョンの水相に含まれる試料の分析を行うための油性組成物であって、無機アルコキシド、及び無機ハライドの少なくともいずれか1つの化合物と、炭素原子数7以上30以下の脂肪族炭化水素、シリコーンオイル、及びフッ素系オイルの少なくともいずれか1つと、を含むことを特徴とする。
本発明の一つの実施形態によれば、油性組成物により形成される無機酸化物により、エマルジョン同士の合一を低減することができる。
本発明の実施形態に係る方法の一例を示す図。 本発明の実施例1における、合一耐性の評価の結果を示す図。 本発明の実施例1における、合一耐性の評価後の油中水型エマルジョンの透過光顕微鏡画像を示す図。 本発明の比較例1における、合一耐性の評価の結果を示す図。 本発明の実施例2における、合一耐性の評価の結果を示す図。 本発明の実施例2における、合一耐性の評価後の油中水型エマルジョンの透過光顕微鏡画像を示す図。 本発明の実施例2における、核酸の増幅反応を行った後の油中水型エマルジョンの顕微鏡画像を示す図。 本発明の比較例2−2における、核酸の増幅反応を行った後の油中水型エマルジョンの顕微鏡画像を示す図。 本発明の実施例3における、合一耐性の評価の結果を示す図。 本発明の実施例3における、合一耐性の評価後の油中水型エマルジョンの透過光顕微鏡画像を示す図。 本発明の実施例3における、油性組成物を添加した後の油中水型エマルジョンの顕微鏡画像を示す図。 本発明の第1の実施形態に係る方法の一例を示す図。 本発明の実施形態に係る液滴生成装置の一例を示す図。 本発明の第2の実施形態に係る方法の一例を示す図。 本発明の第3の実施形態に係る方法の一例を示す図。
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
[第1の実施形態]
エマルジョン及びエマルジョンを生成する乳化技術は、試料の分析や、医薬品、化粧品の製造に利用されている。試料の分析の一例として、核酸の濃度を推定するdPCRが知られている。dPCRでは、分析の対象とする核酸を含む試料を、核酸を増幅するための増幅試薬、核酸を検出するための蛍光試薬などと混合して希釈し、物理的に独立した多数の反応場に分割する。このとき、核酸を含む試料を十分に希釈しておくことで、それぞれの反応場に含まれる核酸の数が1個または0個のいずれかとなるようにしておく。エマルジョンに含まれるそれぞれの液滴はdPCRにおいて反応場として用いられることがある。そして、多数の反応場のそれぞれにおいて独立にPCRが行われ、核酸が増幅される。増幅後に蛍光試薬により核酸を検出し、当該蛍光試薬のシグナルが検出された反応場の数(陽性反応場数)と、増幅後にシグナルが検出されなかった反応場の数(陰性反応場数)とに基づいて、試料中の核酸の濃度を推定することができる。
エマルジョンを用いたdPCRにおいて、シグナルの検出が完了する前にエマルジョンが壊れたり、合一したりすると、濃度の推定の精度に影響を及ぼすおそれがある。第1の実施形態は油性組成物により形成される無機酸化物によりエマルジョンの合一を低減させることを目的とする。
図1はdPCRを説明するための図である。本実施形態に係る方法は、油中水型エマルジョン(1)の水相(2)内で生物学的反応を行うことにより試料(3)の分析を行うものである。そして、油相(4)に含まれる油性組成物が水相(2)との反応により無機高分子(無機酸化物)(5)を油水界面に形成する。以下、詳述する。
図12はdPCRにおいて行われる処理の一例を示すフローチャートである。
<試料調製>
ステップS121は分析の対象とする試料を調製する工程である。試料と増幅試薬と蛍光試薬とが混合され、ステップS122の液滴生成に供される。
<試料>
本明細書において試料とは、本実施形態に係る分析に供するものをいい、本実施形態では、試料中の分析対象物の濃度が測定される。試料は、検体そのものであってもよいし、検体に対して精製や濃縮、分析対象物の化学修飾や断片化など、分析のための前処理や調整を施したものであってもよい。分析対象物は、たとえば、核酸、ペプチド、タンパク質、酵素などが挙げられ、これらが共存していてもよい。分析対象物は、核酸、ペプチド、タンパク質、酵素の少なくともいずれかが共有結合等で結合または付着した分子、マイクロ粒子、ナノ粒子、さらにはウイルス、細菌、細胞などであってもよい。
本明細書において検体とは、たとえば、ヒトから採取した血液や、そこから抽出された核酸、微生物のコロニー、培養細胞のペレット、土壌、水を含む。ヒト等生体から採取した検体の分析により、たとえばがんや感染症などの疾病に関わる遺伝子の情報など、当該疾病の診断や治療に有用な情報が得られると期待できる。また、食品を検体とする場合は、遺伝子組換え作物(GMO)の評価などの食品検査を行うことができる。また、環境中の土壌や水を検体とする場合は、環境モニタリングを行うことができる。生体組織を検体とする場合、アルカリ溶解法等で得たライセートを試料としてよい。また、検体からエタノール沈殿法等により生成された核酸を試料としてよい。
本実施形態において核酸を分析対象物とする場合、核酸は、増幅の対象になる鋳型核酸であれば特に限定されず、DNA(DeoxyriboNucleic Acid)であってもよいし、RNA(RiboNucleic Acid)であってもよい。核酸の形態も特に限定されず、直鎖状の核酸であってもよく、また環状の核酸であってもよい。また、核酸は単一の塩基配列を有する1種類の核酸であってもよく、また、種々の塩基配列をそれぞれ有する複数種類の核酸(例えば相補的DNAライブラリーなど)であってもよい。
試料中の分析対象物の含有量は特に限定はされないが、生成されたそれぞれの液滴において液滴中に含まれる分析対象物の数が1個または0個となるような量であることが好ましい。液滴中の分析対象物の数を1個または0個とすることで、液滴を用いたdPCRの定量の精度を向上させることができる。
<増幅試薬>
増幅試薬は、分析対象物である標的核酸の有する所定の塩基配列に相補的な塩基配列を有する1つまたは一対のプライマー(フォワードプライマーおよびリバースプライマー)と、核酸合成反応を促進する生体触媒であるポリメラーゼと、を含有する。ポリメラーゼは、耐熱ポリメラーゼであることが好ましく、耐熱DNAポリメラーゼであることがより好ましい。また、増幅試薬は、核酸の原料としてのdNTP(DeoxyriboNucleotide−5’−TriPhosphate)などのリボ核酸を含有する。さらに、増幅試薬は、反応液中の水素イオン濃度(pH)をコントロールするための緩衝液または緩衝剤や、塩を含むことが好ましい。なお、増幅試薬は、上記各成分を含む市販のキットを用いてもよい。
プライマーとしては、標的核酸の一部の領域の塩基配列とストリンジェントな条件でハイブリダイズし、核酸増幅反応に用いることができるオリゴヌクレオチドであれば特に限定されない。ここで、ストリンジェントな条件とは、プライマーと鋳型核酸との間に少なくとも90%以上、好ましくは95%以上の配列同一性があるときに、該プライマーが鋳型核酸に特異的にハイブリダイズできる条件である。プライマーは、標的核酸の塩基配列に基づいて適宜設計できる。また、プライマーは、核酸増幅法の種類に応じて設計されることが望ましい。プライマーの長さは、通常、5〜50ヌクレオチド、好ましくは、10〜40ヌクレオチドである。なお、プライマーは、分子生物学領域において一般に用いられる核酸合成方法により生成することができる。
緩衝液または緩衝剤としては、任意の適切な緩衝液または緩衝剤を用いることができる。緩衝液または緩衝剤は、反応液の水素イオン濃度(pH)を、所望の反応が効率的に起こり得るpH、または、その近傍に維持するよう構成することが好ましい。PCRを実施する場合、反応液のpHは、例えば6.5〜9.0の間で、使用する増幅試薬の各成分にあわせて任意に選択することができる。緩衝液または緩衝剤の種類は、分子生物学領域で一般に使用されるものを使用することができ、例えば、Tris(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)バッファー、HEPES(4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルフォン酸)バッファー、MES(2−モルホリノエタンスルホン酸)バッファーなどを使用することができる。
塩としては、例えば、CaCl、KCl、MgCl、MgSO、NaCl、およびこれらの組み合わせから適宜選択されたものを使用することができる。
<蛍光試薬>
蛍光試薬は、核酸と相互作用して蛍光を発する薬剤である。蛍光試薬はたとえば、蛍光インターカレーター(蛍光色素)やプローブアッセイ用のプローブ(蛍光標識プローブ)である。蛍光インターカレーターとしては、エチジウムブロマイド、SYBR Green I(「SYBR」はモレキュラープローブスの登録商標)、LC Greenなどを好適に用いることができる。蛍光標識プローブとしては、標的核酸に特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチド(プローブ)であって、一方の末端(5´末端)がレポーターで修飾され、もう一方の末端(3´末端)がクエンチャーで修飾されたものを用いることができる。レポーターとしてはFITC(Fluorescein−5−IsoThioCyanate)やVICなどの蛍光物質を、クエンチャーとしてTAMRAなどの蛍光物質や、Eclipse、DABCYL、MGBなどを用いることができる。蛍光標識プローブとしては、TaqMan(「TaqMan」はロシュダイアグノスティックスの登録商標)プローブなどを用いることができる。なお、ここでは蛍光試薬を用いる場合について説明したが、蛍光以外の発光を利用する発光試薬を使用してもよい。
一方、分析対象物がペプチドやタンパク質等である場合は、ELISA法のような、分析対象物を特異的に反応する抗体(または抗原)と酵素を用いた抗原抗体反応および酵素反応により、分析対象物を検出可能にすることができる。より具体的には、例えば、分析対象物に酵素で標識された抗体(または抗原)を抗原抗体反応によって複合化させ、この酵素の酵素反応によって生じる発色または発光物質を検出する。なお、分析対象物と抗原抗体反応を生じさせる抗体(または抗原)は予め酵素標識されていなくてもよく、抗原抗体反応後に酵素によって標識されてもよい。ELISA法を用いる場合は、抗体(または抗原)と酵素を含む試薬を、分析対象物を検出可能にするための薬剤として用いる。ELISA法に用いる試薬として市販されているキットを用いてもよい。
なお、発生させる蛍光の波長が異なるなど、複数の分析対象物を区別できるようにそれぞれ検出可能にする複数種類の薬剤を用いることにより、複数種類の分析対象物を一度の分析でまとめて検出する構成としてもよい。
<液滴生成>
ステップS122において、ステップS121で調製された試料を含む油中水型エマルジョンが生成される。ここで、試料は油中水型エマルジョンにおける水相に含まれる。以下では、水相を構成し、試料を含む水溶液を反応液と称する。
本実施形態に係る油中水型エマルジョンの生成方法は特に限定はされない。例えば、撹拌装置や超音波破砕装置などにより機械的エネルギーを付与することでエマルジョンを生成する機械的乳化法を用いてもよい。別の例では、マイクロチャネル乳化法やマイクロ流路分岐乳化法などのマイクロ流路デバイスを用いた方法、乳化膜を用いる膜乳化法などが挙げられる。これらの方法は、単独で用いてもよいし、複数を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも機械的乳化法や膜乳化法は、マイクロ流路デバイスを用いた方法に比べて液滴のサイズのばらつき(分散)が大きくなる傾向にあるものの、スループット良くエマルジョンを生成できるため好ましい。また、エマルジョンを生成する装置の装置構成を単純にできること、液滴のサイズのばらつきが比較的低いエマルジョンを生成できることなどから、膜乳化法が特に好ましい。以下では、膜乳化法により液滴を生成する場合を例に説明する。
<液滴生成装置>
図13は油中水型エマルジョンを生成する液滴生成装置の一例を示す図である。液滴生成装置130は、試料注入部131と、液滴生成部132と、容器133とを含む。
試料注入部131は、液滴を生成するために試料を含む反応液を液滴生成装置130に注入するための部材である。試料注入部131から注入された水相は、液滴生成部132へと送液される。このとき、液は、ポンプ等の送液手段(不図示)によって送液されてもよい。また、試料注入部131から注入された反応液は、液滴生成部132へと送液される間に、エマルジョンを形成するための油相としてのオイルと混合されてもよい。あるいは、試料注入部131から試料のみが注入され、液滴生成部132へと送液される間に、増幅試薬や蛍光試薬と混合されて反応液を生成してもよい。
液滴生成部132は注入された反応液を分割して、互いに物理的に独立した、複数の反応場としての液滴を生成する。液滴生成部132はたとえば乳化膜である。容器133は、液滴生成部132で生成された複数の液滴を保持する容器である。
<水相>
水相は反応液で構成される。反応液は水と試料と増幅試薬と蛍光試薬とを含有する。反応液における水の含有量は特に限定されないが、反応液全体を100質量%としたときに、60質量%以上99.9質量%以下であることが好ましく、80質量%以上99.5%以下であることがより好ましい。
<油相>
油相はオイルと、界面活性剤とを含む。油相は水相と相溶せず分離する溶剤から成り、典型的には脂肪族炭化水素やシリコーンオイル等のオイルから成る。オイルとしては、炭化水素系オイル(脂肪族炭化水素)、シリコーンオイル、フッ素系オイルなどを用いることができる。脂肪族炭化水素は、好ましくは炭素原子数が7以上30以下の脂肪族炭化水素である。炭素原子数が7以上30以下であることで、油相の動粘度を低くすることができる。これにより、油相を用いて形成される油中水型エマルジョンの流動性を向上させることができる。炭化水素系オイル(脂肪族炭化水素)としては、ミネラルオイル;スクワランオイル、オリーブオイルなどの動植物由来のオイル;n−ヘキサデカンなどの炭素原子数10〜20のパラフィン系炭化水素;炭素原子数10〜20のオレフィン系炭化水素などを用いることができる。炭化水素系オイルの市販品としては、例えば、TEGOSOFT DEC(炭酸ジエチルヘキシル)(エボニック製、「TEGOSOFT」はエボニックの登録商標)を用いることができる。フッ素系オイルとしては、HFE−7500(2−(トリフルオロメチル)−3−エトキシドデカフルオロヘキサン)などを用いることができる。フッ素系オイルの市販品としては、例えば、FLUORINERT FC−40、FLUORINERT FC−40、FLUORINERT FC−3283(スリーエム製、「FLUORINERT」はスリーエムの登録商標)などを用いることができる。また、炭化水素系オイル、シリコーンオイル、フッ素系オイルを適宜組み合わせて用いてもよい。
界面活性剤としては、乳化処理において一般的に用いられている従来公知の界面活性剤を用いることができ、例えば、非イオン性界面活性剤、フッ素系樹脂、ホスホコリン含有樹脂などを用いることが好ましい。非イオン系界面活性剤としては炭化水素系界面活性剤や、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤を用いることができる。界面活性剤を添加することで、エマルジョン中の液滴のサイズの制御やエマルジョンを安定に維持するなどの効果が期待できる。水相での生物学的反応を阻害することなく油中水型エマルジョンを生成できる点で、HLB(Hydrophilic−Lipophilic Balance)値が6以下の油溶性の界面活性剤を油相に添加するのが好適である。
炭化水素系非イオン性界面活性剤の市販品としては、例えば、Pluronic F−68(ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン ブロックコポリマー)(シグマ−アルドリッチ製、「Pluronic」はBASFの登録商標)、Span 60(ソルビタンモノステアラート)(東京化成工業製、「Span」はクローダインターナショナルの登録商標)、Span 80(ソルビタンモノオレアート)(シグマ−アルドリッチ製、「Span」はクローダインターナショナルの登録商標)、Triton−X100(ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル)(シグマ−アルドリッチ製、「Triton」はユニオンカーバイドの登録商標)、Tween 20(ポリオキシエチレンソルビタンモノラウラート)、Tween 80(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート)(以上、シグマ−アルドリッチ製、「Tween」はクローダインターナショナルの登録商標)、などを用いることができる。シリコーン系非イオン性界面活性剤としては、ABIL EM90(セチルジメチコンコポリオール(セチルPEG/PPG10−1ジメチコン))、ABIL EM120(ビス−(グリセリル/ラウリル)グリセリルラウリルジメチコン)、ABIL EM180(セチルPEG/PPG10−1ジメチコン)、ABIL WE09(イソステアリン酸ポリグリセリル−4、セチルジメチコンコポリオール、ラウリン酸ヘキシル)(以上、エボニック製、「ABIL」はエボニックの登録商標)、などを用いることができる。フッ素系樹脂としては、Krytox−AS(「Krytox」はケマーズの登録商標)などを用いることができる。ホスホコリン含有樹脂としては、Lipidure−S(日油製、「Lipidure」は日油の登録商標)などを用いることができる。
エマルジョンにおける界面活性剤の濃度は、特に限定はされないが、0.01質量%以上10質量%以下とすることが好ましく、0.1質量%以上8質量%以下とすることがより好ましく、1質量%以上4質量%以下とすることがさらに好ましい。
エマルジョンにおける、反応液(水相)に対するオイル(油相)の体積比は特に限定はされないが、1以上300以下であることが好ましく、1以上150以下であることがより好ましい。
エマルジョン中の液滴のサイズは特に限定はされないが、直径で、1μm以上300μm以下であることが好ましく、1μm以上200μm以下であることがより好ましく、20μm以上150μm以下であることがさらに好ましい。液滴の直径を300μm以下とすることで、臨床検査などのように、検体量やサンプル量が数十〜数百μL程度と少ない場合であっても、液滴の数(反応場の数)を多くすることができ、分析の精度が高めることができる。また、液滴の直径を300μm以下とすることで、エマルジョンの安定性を高めることができる。
エマルジョン中の液滴の数は、100個以上1,000,000,000個以下であることが好ましく、100個以上20,000,000個以下であることがより好ましく、2,000個以上20,000,000個以下であることがより好ましい。デジタル分析において分析結果の信頼度を確保するためには、少なくとも100個以上の液滴が分析対象物を含むと判定されることが好ましいため、液滴の数は100個以上であることが好ましい。例えば、臨床検査の場合、反応液の量は一般に、0.01mL〜0.5mL程度で設定される場合が多く、液滴のサイズが10μm〜200μm程度である場合は、液滴の数としておよそ2,000個〜1,000,000,000個の間で設定されることになる。
<PCR>
ステップS123において、ステップS122で生成された液滴に含まれる核酸試料に対するPCRが行われる。核酸の増幅反応としては、反応場をサーマルサイクルに供することで反応を進行させるPCR法やLCR(Ligase Chain Reaction)法や、反応場をサーマルサイクルに供さずに温度調整することで反応を進行させるSDA(Strand Displacement Amplification)法、ICAN(Isothermal andChimeric primer−initiated Amplificationof Nucleic acids)法、LAMP(Loop−Mediated Isothermal Amplification)法などを好ましく使用することができる。
<計測>
ステップS124において、蛍光などの光が計測される。すなわち、試料中の分析対象物の分析が行われる。蛍光は光源(不図示)と検出器(不図示)とで計測され、光源(不図示)は所定の波長の光を容器133に保持された複数の液滴に照射する。検出器(不図示)は、光が照射された複数の液滴のそれぞれから発せられたシグナルを検出する。検出器(不図示)としては、フォトダイオードやラインセンサ、イメージセンサ(撮像素子)等を用いることができ、中でも、多数の液滴について一括してシグナルの検出ができる点で、イメージセンサを用いることが好ましい。イメージセンサとしては、CCD(電荷結合素子)、CMOS(相補型金属酸化膜半導体)イメージセンサを用いることができる。検出器(不図示)は、イメージセンサを備えたデジタルカメラであってもよい。
<油性組成物>
本実施形態にかかる油性組成物は、油中水型エマルジョンにおける油相に含まれる。本実施形態にかかる油性組成物は液滴の表面に無機酸化物を形成し、液滴の合一を低減することに寄与する。油性組成物は、図12に示すフローのいずれのステップにおいてオイル(油相)に混合されてもよい。油性組成物は、上述の液滴生成装置に予め充填されていてもよい。
油性組成物は、無機アルコキシド、無機ハライド及び無機酸化物ゾルの少なくともいずれか1つの化合物と、炭素原子数7以上30以下の脂肪族炭化水素、シリコーンオイル、及びフッ素系オイルの少なくともいずれか1つとを含む。炭素原子数7以上30以下の脂肪族炭化水素、シリコーンオイル、及びフッ素系オイルの少なくともいずれか1つは、上記の油中水型エマルジョンの油相に含まれるオイルと同一であってよい。脂肪族炭化水素は、炭素原子数が7以上30以下であることで、油相の動粘度を低くすることができる。これにより、油相を用いて形成される油中水型エマルジョンの流動性を向上させることができる。
油性組成物は、水相に含まれる成分との作用により、液滴の水相と油相との界面に無機酸化物を形成する。一般的なエマルジョンにおいては、水相と油相の界面は界面活性剤分子同士の非共有結合的な分子間力により維持されている。このため、界面活性剤分子同士の相互作用が比較的弱く、外部からの刺激によるエマルジョンの合一が起こりやすい。一方で、本実施形態においては、水相と油相の界面に強固な共有結合のネットワークから成る無機酸化物を形成することで、エマルジョンを安定化する。無機酸化物の形成は、例えばSEM−EDX(Scanning Electron Microscope−Energy Dispersive X−ray Spectroscopy)を用いるなどして確認できる。
<油水界面における無機高分子の形成>
無機ハライド(無機ハロゲン化物)・無機アルコキシドや無機酸化物ゾルを原料とした水共存下でのゾルゲル反応を利用して、温和な条件下で無機高分子として無機酸化物を形成できる。ここで、ゾルゲル反応とは、無機ハロゲン化物・無機アルコキシドの加水分解と重縮合、あるいは無機酸化物ゾルの表面官能基の加水分解と重縮合により、共有結合ネットワークを有する無機酸化物が生成する反応を指す。
さらには、無機ハライド・無機アルコキシドや無機酸化物ゾルの中でも、油溶性のものを用いることが好適である。これにより、水相と油相の界面で選択的にゾルゲル反応が起こり、生物学的反応を阻害しにくいという利点がある。ここで、油溶性とは、n−ヘキサンに対する溶解度が水に対する溶解度より大きい、またはさらに好ましくはn−ヘキサンに対する溶解度が水に対する溶解度の5倍より大きいものを指す。無機酸化物は、対応する無機ハロゲン化合物(例えばテトラクロロシラン)を原料としても形成できるが、水相との反応で酸が発生し水素イオン濃度(pH)が変化する可能性がある。この点から、無機アルコキシドや無機酸化物ゾルを原料とするのがより好ましい。
<無機アルコキシド>
無機アルコキシドはたとえば、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、チタン、スズのアルコキシドであり、これらにより油水界面の無機酸化物として酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化スズがそれぞれ形成される。アルコキシドは別の置換基を有していても良く、例えばアルキルトリアルコキシシラン類も好適に用いられる。共有結合のネットワークから成る無機酸化物を形成するためには、これらアルコキシドの組成式において、アルコキシドの当量が中心金属元素または中心半金属元素の2倍より大きいものが望ましい。油中水型エマルジョン中における無機アルコキシドの含有量は特に限定はされず、無機酸化物の形成反応の活性に応じて濃度を調節するのが望ましい。
無機アルコキシドは、好ましくはアルコキシシランであり、より好ましくはテトラアルコキシシラン又はアルキルトリアルコキシシランである。これらのシラン類のゾルゲル反応により油水界面に酸化ケイ素を形成できるが、これらのシラン類は比較的反応性が低く安定な化合物で、取り扱いが容易であるという利点がある。また、酸化ケイ素の形成反応が穏やかに進むため、核酸や増幅反応の酵素を変性しにくいという利点がある。
なお、ゾルゲル反応による酸化ケイ素の形成は、酸触媒や塩基触媒の存在下で進行するが、水相での生物学的反応を阻害しないためにもこれらの触媒は油相に添加するのが望ましい。本実施形態においては、好適には、触媒として油溶性の脂肪族アミン類が用いられる。ここで、油溶性の脂肪族アミン類とは、n−ヘキサンに対する溶解度が水に対する溶解度より大きい、またはさらに好ましくはn−ヘキサンに対する溶解度が水に対する溶解度の5倍より大きい脂肪族アミン類を指す。これらのアルコキシシランや脂肪族アミンの添加量は特に限定はされないが、好適な添加量は、最終的な油中水型エマルジョンの体積に対し、アルコキシシランが5体積%以上20体積%以下、脂肪族アミンが0.2体積%以上1体積%以下である。なお、無機酸化物中の酸化ケイ素の含有量は特に限定されないが、好ましくは60重量%以上、より好ましくは80重量%以上である。
<無機ハライド>
無機ハライドはたとえば、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、チタン、スズのハロゲン化物であり、これらにより油水界面の無機酸化物として酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化スズがそれぞれ形成される。油中水型エマルジョン中における無機ハライドの含有量は特に限定はされず、無機酸化物の形成反応の活性に応じて濃度を調節するのが望ましい。
<無機酸化物ゾル>
無機酸化物ゾルは、たとえばケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、チタン、スズの無機酸化物ゾルであり、これらにより油水界面の無機酸化物として酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化スズがそれぞれ形成される。油中水型エマルジョン中における無機酸化物ゾルの含有量は特に限定はされず、無機酸化物の形成反応の活性に応じて当該含有量を調節するのが望ましい。
無機酸化物ゾルは、好ましくは酸化アルミニウムゾルである。本実施形態に係る酸化アルミニウムゾルは、例えば特許文献;特開2011−251890、特開2013−227209に従って合成できる。油水界面に酸化アルミニウムを形成するには、アルミニウムアルコキシドや、酸化アルミニウムゾルのゾルゲル反応が用いられるが、アルミニウムアルコキシドはやや反応性が高くハンドリングが容易ではないので、酸化アルミニウムゾルのゾルゲル反応が好適に用いられる。なお、無機酸化物中の酸化アルミニウムの含有量は特に限定されないが、好ましくは60重量%以上、より好ましくは80重量%以上である。
[第2の実施形態]
第1の実施形態においては油中水型エマルジョンの油相に油性組成物を混合する場合を例に説明した。第2の実施形態においては、dPCRのフローにおいて、液滴生成後に油性組成物を混合する場合を例に説明する。
図14は第2の実施形態にかかるdPCRの処理の一例を示すフローチャートである。第1の実施形態と同一の処理については図12と同一の符号を付し、上述した説明を援用することによりここでの詳しい説明を省略する。第1の実施形態と異なる点は、ステップS122とステップS123との間に、油性組成物を油相に混合するステップS140が行われる点である。
<油性組成物の混合>
ステップS140において、油中水型エマルジョンの油相に上述の油性組成物が混合される。油性組成物は試料注入部131を介して油相に混合されてもよいし、容器133に注入されてもよく、適宜撹拌等が行われてもよい。
液滴生成後に油性組成物を混合する方法は、特に油性組成物に酸化ケイ素を油水界面に形成するための化合物(たとえばアルコキシシラン)が含まれる場合に好適である。酸化ケイ素の形成には、油溶性の脂肪族アミン類が触媒として好適に用いられるが、界面活性剤様の性質を持つ油溶性の脂肪族アミン類をエマルジョンの生成より前に添加すると、エマルジョンを生成した際に脂肪族アミン類が水相と油相との界面に局在化し易くなる。結果として、水相と油相の界面はアミノ基による正電荷を有することとなり、静電相互作用によりポリアニオンの核酸が水相と油相の界面に集まってしまい核酸の増幅反応を阻害してしまう場合がある。第2の実施形態によれば、核酸の増幅反応の阻害が起こりにくく、試料の分析に好適である。
[第3の実施形態]
第1の実施形態においては油中水型エマルジョンの油相に油性組成物を混合する場合を例に説明した。第3の実施形態においては、dPCRのフローにおいて、PCR後に油性組成物を混合する場合を例に説明する。
図15は第3の実施形態にかかるdPCRの処理の一例を示すフローチャートである。第1の実施形態と同一の処理については図12と同一の符号を付し、上述した説明を援用することによりここでの詳しい説明を省略する。第1の実施形態と異なる点は、ステップS123とステップS124との間に、油性組成物を油相に混合するステップS150が行われる点である。
<油性組成物の混合>
ステップS150において、油中水型エマルジョンの油相に上述の油性組成物が混合される。油性組成物は試料注入部131を介して油相に混合されてもよいし、容器133に注入されてもよく、適宜撹拌等が行われてもよい。
PCR後に油性組成物を混合する方法は、特に油性組成物に酸化アルミニウムを油水界面に形成するための化合物(たとえば酸化アルミニウムゾル)が含まれる場合に好適である。核酸の増幅反応は、反応物をサーマルサイクルに供するPCR法により行う場合が多いが、サーマルサイクルの加熱時に酸化アルミニウムの形成反応が無秩序に起こりエマルジョンが解乳化してしまうことがある。このような場合には、酸化アルミニウムの形成に必須な物質を、核酸の増幅反応より後に添加するのが好適である。第3の実施形態によれば、核酸の増幅反応より後のプロセスでの液滴の合一を抑制することができる。
[実施例]
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は以下の実施例に限定されるものではない。なお、濃度条件において以下に使用される「%」は、特に示さない限りすべて質量基準である。
<実施例1>
(水相と油相の界面に無機酸化物を形成した油中水型エマルジョンの調製)
界面活性剤であるKF−6038(信越化学工業製)をイソパラフィン系脂肪族炭化水素であるアイソパーL(エクソンモービル製)に4%の濃度で溶解した。この溶液5mlに対し、テトラエトキシシラン(キシダ化学製)500μLとn−オクチルアミン(東京化成工業製)25μLを加え、油相を調製した。
水相は、1×PBSバッファー(pH7.4、サーモフィッシャーサイエンティフィック製)を用いた。なお、実際に生物学的反応による試料の分析を行う場合には、生物学的反応を媒介する酵素や、生物学的反応の原料などを必要に応じて水相に加えると良い。
次に、上記水相100μLを採取したシリンジの先端に、乳化膜であるシラス多孔質ガラス(SPG)膜(DC20U、細孔径20μm、SPGテクノ製)を接続した。シリンジをシリンジポンプ(SPS−1、アズワン製)にセットし、シリンジの先端の乳化膜を上記油相中に浸し、油相を少量吸い上げてから、5mL/hの乳化流速(水相注入速度)で水相を注入した。これにより、油中水型エマルジョンを調製した。
次いで、水相と油相の界面における無機酸化物の形成を促進するために、95℃で10分間加熱した。なお、反応温度や反応時間は、油相に添加する無機酸化物原料や触媒の量に応じて適宜調節する。
(合一耐性の評価)
上記により調製した油中水型エマルジョンから、沈殿した液滴層を10μL採取し、反応チャンバチップ(microfluidic ChipShop GmbH製)のチャンバに投入した。ニトリルゴム製手袋をはめた指でチャンバチップの裏を摩擦し、合一の具合を目視および顕微鏡で観察した。エマルジョンの合一を引き起こす原因となる外部からの刺激は静電気の発生であると考えられるため、これにより合一への耐性を評価することができる。本明細書において、静電気等によりエマルジョンの合一を引き起こし得る状況を形成する処理を合一処理と称する。
(結果)
図2に、合一処理前および合一処理後の油中水型エマルジョンの様子を示す。無機酸化物を形成した場合には液滴の合一が抑制され、油中水型エマルジョンに大きな変化は見られなかった。
図3に、無機酸化物を形成し、合一処理を行った油中水型エマルジョンの透過光顕微鏡画像を示す。ミクロにもエマルジョン状態を保っていることが確認された。さらに、この透過光顕微鏡画像においては、所々にやや扁平な液滴が見られる。これは、油相と水相の界面に共有結合のネットワークによる無機酸化物が形成されることで、液滴が扁平な形状を維持できるためだと考えられる。一方で、界面活性剤のみで調製した油中水型エマルジョンではほぼ真円の液滴が観察され(data not shown)、この考察と矛盾しない。
<比較例1>
(水相と油相の界面に無機酸化物を形成していない油中水型エマルジョンの調製)
実施例1の手順を参考に、テトラエトキシシランとn−オクチルアミンを添加していない油相を用い、水相と油相の界面に無機酸化物を形成していない油中水型エマルジョンを調製した。
(合一耐性の評価)
実施例1に記載の方法により行った。
(結果)
図4に、合一処理前および合一処理後の油中水型エマルジョンの様子を示す。無機酸化物を形成していない場合には、合一処理により液滴が合一し油中水型エマルジョンが相分離してしまった。
<実施例2>
(油中水型エマルジョンの調製)
界面活性剤であるKF−6038をアイソパーLに4%の濃度で溶解し、油相を調製した。
次に、Internal DNA extraction control kits(PrimerDesign製)付属のControl DNA溶液80μL、primer/probe(VIC)溶液20μL、さらに滅菌蒸留水100μL、Premix Ex Taq(probe qPCR)(タカラバイオ製)200μLを混合し、水相を調製した。
次に、上記で調製した水相400μLを採取したシリンジの先端に、乳化膜であるシラス多孔質ガラス(SPG)膜を接続した。シリンジをシリンジポンプにセットし、シリンジの先端の乳化膜を上記油相5mL中に浸し、油相を少量吸い上げてから、5mL/hの乳化流速で水相を注入した。これにより、油中水型エマルジョンを調製した。
(無機酸化物の原料および触媒の添加)
上記で調製した油中水型エマルジョンを穏やかに撹拌した後に、800μLのエマルジョン液を採取した。これに対し、テトラエトキシシラン80μLとn−オクチルアミン4μLを加え、穏やかに撹拌した。
(核酸の増幅反応)
上記で調製した無機酸化物原料入りの油中水型エマルジョンから、沈殿した液滴層を60μL、上澄みの油相を60μL採取し、PCR用のチューブに移した。さらに、下記のステップからなるサーマルサイクルを施し、核酸を増幅した。なお、無機酸化物の形成はこの核酸の増幅反応と同時に進行する。
(1)95℃で3分間
(2)95℃で15秒間の後60℃で30秒間のサイクルを30サイクル
(3)4℃に下げる
(合一耐性の評価)
合一耐性の評価は、実施例1に記載の方法により行った。
(増幅産物の検出)
上記の核酸の増幅反応を行った油中水型エマルジョンから、沈殿した液滴層を20μL採取し、沈渣用プレートMUR−300(松浪硝子工業製)に投入し、蛍光顕微鏡BZ8000(キーエンス製)で透過光画像と蛍光画像を取得した。
(結果)
図5に、合一処理前および合一処理後の油中水型エマルジョンの様子を示す。無機酸化物を形成した場合には液滴の合一が抑制され、油中水型エマルジョンに大きな変化は見られなかった。
図6に、無機酸化物を形成し、合一処理を行った油中水型エマルジョンの透過光顕微鏡画像を示す。ミクロにもエマルジョン状態を保っていることが確認された。さらに、この透過光顕微鏡画像においては、所々にやや扁平な液滴が見られる。これは、油相と水相の界面に共有結合のネットワークによる無機酸化物が形成されることで、液滴が扁平な形状を維持できるためだと考えられる。
図7に、無機酸化物を形成した油中水型エマルジョンにおける、核酸増幅産物の検出結果を示す。(A)が透過光顕微鏡画像、(B)が蛍光顕微鏡画像である。図7(B)より、一部の液滴においてプローブ由来の蛍光が強く観察された。これにより、無機酸化物の形成は核酸の増幅反応やプローブの蛍光発光を阻害せず、良好に増幅産物を検出できることが分かった。
以上により、油中水型エマルジョンの水相内で生物学的反応を行うことにより試料の分析を行う方法において、水相と油相の界面に無機酸化物を形成することでエマルジョンの合一を抑制できることが分かった。
<比較例2−1>
実施例2の手順を参考に、無機酸化物の原料と触媒であるテトラエトキシシランとn−オクチルアミンを添加していない油相を用い、一連の操作を行った。その結果、比較例1の場合と同様に、合一処理により液滴が合一し相分離が起こってしまった。
<比較例2−2>
実施例2と同様に調製した油相5mLに対し、油中水型エマルジョンの生成前にテトラエトキシシラン500μLとn−オクチルアミン25μLを加え、無機酸化物の原料および触媒を含む油相を調製した。これに対し、同じく実施例2と同様に調製した水相を用い、油中水型エマルジョンの調製、核酸の増幅反応を行った。核酸増幅産物の検出結果を図8に示す。図8(B)に示すように、水相と油相の界面に蛍光が局在化してしまい、試料の分析が妨げられることが分かった。
<実施例3>
(油中水型エマルジョンの調製、核酸の増幅反応)
まず、実施例2と同様に油中水型エマルジョンの調製を行い、無機酸化物の原料および触媒の添加を行わずに核酸の増幅反応を実施した。
(無機酸化物の原料の添加)
さらに、上記で調製した核酸の増幅反応後の油中水型エマルジョン(120μL)に対し、酸化アルミニウムゾル(特許文献;特開2013−227209の実施例1に記載の酸化アルミニウム前駆体ゾル2を、当該特許文献に記載の方法により合成して得たもの)を12μL添加し、穏やかに混合した。
(合一耐性の評価、増幅産物の検出)
上記の無機酸化物の原料の添加を行った油中水型エマルジョンを用い、実施例2と同様に合一耐性の評価、および増幅産物の検出を行った。
(結果)
図9に、合一処理前および合一処理後の油中水型エマルジョンの様子を示す。無機酸化物を形成することで油中水型エマルジョンの合一が抑制され、チャンバ内の様子に大きな変化は見られなかった。
図10に、無機酸化物を形成し、合一処理を行った油中水型エマルジョンの透過光顕微鏡画像を示す。ミクロにもエマルジョン状態を保っていることが確認された。さらに、この透過光顕微鏡画像においては、所々にやや扁平な液滴が見られる。これは、油相と水相の界面に共有結合のネットワークによる無機酸化物が形成されることで、液滴が扁平な形状を維持できるためだと考えられる。
図11に、無機酸化物を形成した油中水型エマルジョンにおける、核酸増幅産物の検出結果を示す。(A)が透過光顕微鏡画像、(B)が蛍光顕微鏡画像である。図11(B)より、一部の液滴においてプローブ由来の蛍光が強く観察された。これにより、無機酸化物の形成はプローブの蛍光発光を阻害せず、良好に増幅産物を検出できることが分かった。
以上により、油中水型エマルジョンの水相内で生物学的反応を行うことにより試料の分析を行う方法において、水相と油相の界面に無機酸化物を形成することでエマルジョンの合一を抑制できることが分かった。
<比較例3>
実施例3の手順を参考に、無機酸化物の原料である酸化アルミニウムゾルを添加していない油相を用い、一連の操作を行った。その結果、比較例1の場合と同様に、合一処理により液滴が合一し相分離が起こってしまった。

Claims (20)

  1. 油中水型エマルジョンの水相に含まれる試料の分析を行うための油性組成物であって、無機アルコキシド、及び無機ハライドの少なくともいずれか1つの化合物と、炭素原子数7以上30以下の脂肪族炭化水素、シリコーンオイル、及びフッ素系オイルの少なくともいずれか1つと、を含むことを特徴とする油性組成物。
  2. 前記油性組成物は、前記無機アルコキシドとしてアルコキシシランを含むことを特徴とする請求項1に記載の油性組成物。
  3. 前記油性組成物は、前記無機アルコキシドとしてテトラアルコキシシランを含むことを特徴とする請求項2に記載の油性組成物。
  4. 前記油性組成物は、前記無機アルコキシドと前記水相との反応に関わる触媒をさらに含むことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の油性組成物。
  5. 前記触媒は、油溶性の脂肪族アミン類であることを特徴とする請求項4に記載の油性組成物。
  6. 前記触媒は、n−オクチルアミンであることを特徴とする請求項5に記載の油性組成物。
  7. 油中水型エマルジョンの水相に含まれる試料の分析を行うための油性組成物であって、無機酸化物ゾルと、炭素原子数7以上30以下の脂肪族炭化水素、シリコーンオイル、及びフッ素系オイルの少なくともいずれか1つとを含むことを特徴とする油性組成物。
  8. 前記無機酸化物ゾルは酸化アルミニウムゾルであることを特徴とする請求項7に記載の油性組成物。
  9. 無機酸化物、無機アルコキシド、及び無機ハライドのうち少なくともいずれか1つの化合物と、炭素原子数7以上30以下の脂肪族炭化水素、シリコーンオイル、及びフッ素系オイルの少なくともいずれか1つとを含む油性組成物を、試料が含まれる水溶液と混合することで、油中水型エマルジョンを生成する第1の工程と、
    前記油中水型エマルジョンを構成する水相に含まれる前記試料中の分析対象物の分析を行う第2の工程と、
    を有することを特徴とする試料の分析方法。
  10. 前記第1の工程は、前記化合物と前記水溶液が反応することにより、前記油中水型エマルジョンを構成する油相と水相との界面に無機高分子を生成する工程を含むことを特徴とする請求項9に記載の試料の分析方法。
  11. 前記第1の工程は、前記油中水型エマルジョンに、前記化合物のゾルゲル反応をさせるための触媒を添加することで、前記無機高分子を生成する工程を含むことを特徴とする請求項10に記載の試料の分析方法。
  12. 炭素原子数7以上30以下の脂肪族炭化水素、シリコーンオイル、及びフッ素系オイルの少なくともいずれか1つを含む油性組成物と、試料が含まれる水溶液と、を混合することで油中水型エマルジョンを生成する第1の工程と、
    前記油中水型エマルジョンに、無機酸化物、無機アルコキシド、及び無機ハライドのうち少なくともいずれか1つの化合物を添加する第2の工程と、
    前記油中水型エマルジョンを構成する水相に含まれる前記試料中の分析対象物の分析を行う第3の工程と、
    を有することを特徴とする試料の分析方法。
  13. 前記第2の工程は、前記化合物と前記水溶液が反応することにより、前記油中水型エマルジョンを構成する油相と水相との界面に無機高分子を生成する工程を有することを特徴とする請求項12に記載の試料の分析方法。
  14. 前記第2の工程は、前記油中水型エマルジョンに、前記化合物のゾルゲル反応をさせるための触媒を添加することで、前記無機高分子を生成する工程を含むことを特徴とする請求項13に記載の試料の分析方法。
  15. 前記油性組成物は、前記触媒として油溶性の脂肪族アミン類をさらに含むことを特徴とする請求項11または請求項14に記載の試料の分析方法。
  16. 前記油性組成物は前記無機アルコキシドとしてアルコキシシランを含むことを特徴とする請求項9乃至請求項15のいずれか1項に記載の試料の分析方法。
  17. 前記油性組成物は、前記無機アルコキシドとしてテトラアルコキシシランを含むことを特徴とする請求項16に記載の試料の分析方法。
  18. 前記油性組成物は、前記無機酸化物として酸化アルミニウムゾルを含むことを特徴とする請求項9乃至請求項15のいずれか1項に記載の試料の分析方法。
  19. 無機酸化物と、無機アルコキシド、及び無機ハライドの少なくともいずれか1つの化合物と、炭素原子数7以上30以下の脂肪族炭化水素、シリコーンオイル、フッ素系オイルの少なくともいずれか1つと、を含む油性組成物が充填された液滴生成装置。
  20. 前記液滴生成装置は、試料が含まれる水溶液を前記油性組成物と混合するための試料注入部をさらに有することを特徴とする請求項19に記載の液滴生成装置。
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