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JP2019103400A - イソプレノイドの製造方法並びにそのためのタンパク質、遺伝子及び形質転換体 - Google Patents

イソプレノイドの製造方法並びにそのためのタンパク質、遺伝子及び形質転換体 Download PDF

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康子 荒木
Yasuko Araki
康子 荒木
潔 北
Kiyoshi Kita
潔 北
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Nagasaki University NUC
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Kikkoman Corp
Nagasaki University NUC
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Abstract

【課題】本発明が解決しようとする課題は、従来技術に比べて、アスコクロリン、アスコフラノン、イリシコリンA及びそれらの誘導体といったイソプレノイドを高収量で安定生産することができることから、工業的規模でのイソプレノイドの製造を可能にする、イソプレノイドの製造方法を提供することにある。【解決手段】上記課題は、アスコクロリン生合成遺伝子及び/又はアスコフラノン生合成遺伝子を有する糸状菌において、AscAタンパク質又は遺伝子ascAの発現を増強することにより、イソプレノイドを得る工程を含む、イソプレノイドの製造方法などによって解決される。【選択図】図13

Description

本発明は、アスコフラノン、アスコクロリン、イリシコリンAといったイソプレノイドを合成するための遺伝子並びに該遺伝子を利用したイソプレノイドの製造方法に関する。
人口が密集した地域が点在する日本国を含む先進国及び開発途上国においては、ウイルスや原虫などによる感染症がたびたび問題となる。また、2型糖尿病、高コレステロール血症、癌及びこれらの疾患に起因する合併症などの生活習慣病は、医療費の増大及び労働力の低下などを招き、とりわけ日本国では深刻な問題となっている。
そこで、これらの疾患の治療や予防に対して有効とされる物質の開発が望まれている。そのような物質の一つとして、イソプレノイド系の生理活性物質であるアスコクロリン及びアスコフラノンが知られている。アスコクロリン及びアスコフラノンは、電子伝達系を阻害して細胞内ATP濃度を低下することにより、例えば、ツエツエバエによって媒介される原虫トリパノソーマによる原虫感染症であるアフリカ睡眠病の治療や予防に際して有望視されている(例えば、特許文献1を参照)。
アフリカ睡眠病に罹患すると、感染初期に原虫が血流中で増殖する。慢性期に入ると中枢神経が侵されて、精神錯乱や全身の痙攣などの症状を呈し、最終的には嗜眠状態に陥って死に至る。アフリカ睡眠病によるアフリカでの死者は、年間1万人以上であり、潜在的に感染のリスクがある人口は7,000万人以上といわれている。現在のところ、アフリカ睡眠病に対してワクチンによる予防方法はなく、その治療は薬剤療法に頼っている。しかし、アフリカ睡眠病に対して効果的な治療薬は副作用が強いなどの問題点がある。
そこで、アスコクロリンやアスコフラノンにより、トリパノソーマの電子伝達系を特異的に阻害することによる、アフリカ睡眠病の予防や治療が期待されている。原虫は哺乳類体内に侵入すると、主にグリコソーム内の解糖系でATP合成を行い、これにはトリパノソーム・オルターネイティブ・オキシダーゼ(TAO)が触媒するNADの再生が必要であるところ、アスコクロリンやアスコフラノンはこのTAOの働きを阻害する。感染した哺乳類はTAOと同様の酵素を有していないことから、トリパノソーマを特異的に駆除することが可能となる。なお、特にアスコフラノン及びその誘導体は非常に低濃度であってもTAOを阻害することが報告されている。
また、アスコクロリン、アスコフラノン及びそれらの誘導体には、抗腫瘍活性、血糖低下作用、血中脂質低下作用、糖化阻害作用、抗酸化作用などが存在することが知られている(例えば、特許文献2を参照)。さらに、アスコクロリンやアスコフラノンの生合成経路の中間体にあるイリシコリンA(LL−Z1272α)もまた、高い抗原虫剤(特許文献3)や、免疫抑制剤、リウマチ治療剤、抗癌剤、拒絶反応治療薬、抗ウイルス薬、抗H.ピロリ薬および糖尿病治療薬等(特許文献4)の、新たな医薬品の有効成分として期待されている。さらに、イリシコリンAはアスコクロリンやアスコフラノンのみならず他のイソプレノイドの生合成の中間体としても知られており、それらの原料としても有用な化合物である。
イソプレノイドのうち、アスコフラノン及びアスコクロリンの製造方法としては、アスコキタ属(Ascochyta)糸状菌を培養し、菌糸中に蓄積したアスコフラノン及びアスコクロリンを分離採取する方法が知られている(例えば、特許文献5及び6を参照)。なお、アスコフラノンの生産株として知られていたアスコキタ・ビシア(Ascochyta viciae)は、正しくは、アクレモニウム・スクレロティゲナム(Acremonium sclerotigenum)であることが非特許文献1によって報告されている。
特開平09−165332号公報 特開2006−213644号公報 国際公開第2012/060387号 国際公開第2013/180140号 特公昭56−25310号公報 特公昭45−9832号公報
J Antibiot (Tokyo). 2016 Nov 2. Re−identification of the ascofuranone−producing fungus Ascochyta viciae as Acremonium sclerotigenum.
特許文献5及び6に記載の方法のような、アスコクロリンやアスコフラノンを生産することが知られている糸状菌を用いる方法によれば、これらの物質の収率は使用する糸状菌に大きく依存することになる。しかし、これまでに知られている微生物におけるアスコクロリンやアスコフラノンの含有量は工業生産としては少ないこと、さらに生産量が僅かな培養条件の違いで大きく異なってくることから、既存の方法では大量のアスコクロリンやアスコフラノンの安定生産が実現できないという課題がある。
例えば、アスコクロリン、アスコフラノン及びそれらの中間体であるイリシコリンA並びにそれらの誘導体といったイソプレノイドの大量生産を実現するためには、イソプレノイドを高濃度で安定的に生産する野生株を単離又は育種することや生物工学技術を駆使してイソプレノイドの生合成に関与する遺伝子を挿入した形質転換株を構築することが考えられる。しかし、イソプレノイドを高濃度で安定的に生産する野生株についてはこれまでにほとんど知られておらず、さらにイソプレノイドの生合成経路については不明な部分が依然として多い。
また、イソプレノイドのうち、アスコクロリン、アスコフラノン及びイリシコリンAの生合成遺伝子についても、未だ不明な部分が多い。
したがって、本発明が解決しようとする課題は、従来技術に比べて、アスコクロリン、アスコフラノン、イリシコリンA及びそれらの誘導体といったイソプレノイドを高収量で安定生産することができることから、工業的規模でのイソプレノイドの製造を可能にする、イソプレノイドの製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を積み重ねた結果、糸状菌の一種であるアクレモニウム・スクレロティゲナム(Acremonium sclerotigenum)において、アスコクロリンの生合成に関与する反応を触媒する酵素をコードする遺伝子群(遺伝子ascB〜遺伝子ascHの7遺伝子)に続いて、アスコフラノンの生合成に関与する反応を触媒する酵素をコードする遺伝子群(遺伝子ascI〜遺伝子ascKの3遺伝子)を特定することに成功した。
次に、本発明者らは、上記遺伝子群にコードされるタンパク質を過剰発現するためのDNAコンストラクトを作製し、次いで得られたDNAコンストラクトを宿主生物として、糸状菌の一種であるアスペルギルス(Aspergillus)属微生物に導入して形質転換することによって、上記遺伝子群にコードされるタンパク質を過剰発現する形質転換糸状菌を作製することに成功した。
上記形質転換糸状菌は、通常の糸状菌を培養する方法に準じて培養することができ、その増殖速度などについても宿主生物と格別相違がないものであった。そして、上記形質転換糸状菌を用いればアスコクロリン、アスコフラノン及びイリシコリンAを生産し得ることがわかった。
一方で、アスコクロリン生合成遺伝子クラスターにある遺伝子ascAは、転写因子であると考えられるため、遺伝子ascAを導入して発現させなくとも、アスコクロリンの生合成には影響しないと考えられた。実際に、上記したとおり、遺伝子ascAを有していないアスペルギルス属微生物に、遺伝子ascB〜遺伝子ascHの7遺伝子を導入した形質転換糸状菌を用いれば、アスコクロリンを生合成し得ることがわかっている。
かかる事実があるにもかかわらず、本発明者は、アスコクロリンやアスコフラノンの生合成遺伝子を有するアクレモニウム・スクレロティゲナムに遺伝子ascAを導入することにより、遺伝子ascAを強発現する形質転換糸状菌を作製することに成功した。そして、驚くべきことに、この遺伝子ascAを強発現する形質転換糸状菌を用いることにより、アスコクロリンだけではなく、アスコフラノンもまた大量に生産することができることを見出した。本発明はこのような成功例や知見に基づいて完成するに至った発明である。
したがって、本発明の一態様によれば、下記のタンパク質、遺伝子、形質転換体及び方法が提供される。
[1]下記(a)〜(c)のいずれかのアミノ酸配列を含み、かつ、アスコクロリン生合成遺伝子及び/又はアスコフラノン生合成遺伝子の発現を増強する活性を有する、AscAタンパク質。
(a)配列表の配列番号40に記載のアミノ酸配列
(b)配列表の配列番号40に記載のアミノ酸配列において、1から数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列
(c)配列表の配列番号40に記載のアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
[2]下記(A)〜(D)のいずれかの塩基配列であって、アスコクロリン生合成遺伝子及び/又はアスコフラノン生合成遺伝子の発現を増強する活性を有するタンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列を含む、遺伝子ascA。
(A)[1]に記載のタンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列
(B)配列表の配列番号37に記載の塩基配列
(C)配列表の配列番号37に記載の塩基配列に相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列
(D)配列表の配列番号37に記載の塩基配列からなる遺伝子と80%以上の同一性を有する塩基配列
[3]アスコクロリン生合成遺伝子及び/又はアスコフラノン生合成遺伝子を有する糸状菌において、[1]に記載のAscAタンパク質又は[2]に記載の遺伝子ascAの発現を増強することにより、該糸状菌によるイソプレノイドの産生を増大させる工程を含む、糸状菌によるイソプレノイドの産生を増大させる方法。
[4]イソプレノイドは、アスコフラノン、アスコクロリン及びイリシコリンAからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である、[3]に記載の方法。
[5][2]に記載の遺伝子ascAの発現が増強するように形質転換された形質転換体(ただし、ヒトを除く)。
[6]前記形質転換体は、宿主生物がアクレモニウム(Acremonium)属微生物である、[5]に記載の形質転換体。
[7]アスコクロリン生合成遺伝子及び/又はアスコフラノン生合成遺伝子を有する糸状菌において、[1]に記載のAscAタンパク質又は[2]に記載の遺伝子ascAの発現を増強することにより、イソプレノイドを得る工程を含む、イソプレノイドの製造方法。
[8][5]〜[6]のいずれか1項に記載の形質転換体を培養することにより、イソプレノイドを得る工程を含む、イソプレノイドの製造方法。
[9]イソプレノイドは、アスコフラノン、アスコクロリン及びイリシコリンAからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である、[7]又は[8]に記載の方法。
本発明によれば、高収量のアスコクロリン、アスコフラノン、イリシコリンAといったイソプレノイドを製造することができる。その結果、本発明によれば、工業的規模で、イソプレノイドを製造することが期待できる。
図1は、トランスクリプトーム解析により予測されたアスコクロリン生合成遺伝子クラスターを示した図である。 図2は、後述する実施例に記載されているとおりの、As−DBCE株抽出物及びイリシコリンA標準品のHPLC解析結果を示した図である。 図3は、後述する実施例に記載されているとおりの、As−DBCE株、As−DBCEF株、As−DBCEFG株及びAs−DBCEFGH株のそれぞれの抽出物のHPLC解析結果を示した図である。 図4Aは、後述する実施例に記載されているとおりの、野生株反応液及びAs−F反応液をそれぞれ用いた場合の反応物のLC/MS解析結果を示した図である。 図4Bは、後述する実施例に記載されているとおりの、As−F反応液及びAs−FG反応液をそれぞれ用いた場合の反応物のLC/MS解析結果を示した図である。 図5は、後述する実施例に記載されているとおりの、As−FG反応液及びAs−FGH反応液をそれぞれ用いた場合の反応物のLC/MS解析結果を示した図である。 図6は、イリシコリンA及びアスコクロリンの反応系における、各酵素反応と反応物との関係を示したスキーム図である。 図7は、トランスクリプトーム解析により予測されたアスコフラノン生合成遺伝子クラスターを示した図である。 図8は、後述する実施例に記載されているとおりの、As−F反応液、As−FI反応液、As−FIJ反応液、As−FIK反応液、As−FJK反応液、As−IJK反応液及びAs−FIJK反応液をそれぞれ用いた場合の反応物のLC/MS解析結果を示した図である。 図9は、後述する実施例に記載されているとおりの、As−FIJK反応液を用いた場合の反応物のLC/MS解析結果及びMS/MS解析結果を示した図である。 図10は、後述する実施例に記載されているとおりの、As−F反応液、As−FI反応液、As−FIJ反応液、As−FIK反応液、As−FJK反応液、As−IJK反応液及びAs−FIJK反応液をそれぞれ用いた場合の反応物のLC/MS解析結果を示した図である。 図11は、アスコフラノン、イリシコリンA及びアスコクロリンの反応系における、各酵素反応と反応物との関係を示した図である。 図12は、後述する実施例に記載されているとおりの、As−DBCEFIred株及びAs−DBCEFIJKred株のそれぞれの抽出物のHPLC解析結果を示した図である。 図13は、後述する実施例に記載されているとおりの、野生株及びAscA強制発現株のそれぞれの抽出物のHPLC解析結果を示した図である。
以下、本発明の一態様であるタンパク質、遺伝子、形質転換体及び方法の詳細について説明するが、本発明の技術的範囲は本項目の事項によってのみに限定されるものではなく、本発明はその目的を達成する限りにおいて種々の態様をとり得る。また、本発明の技術的範囲は、本明細書における、いかなる憶測や推論に拘泥されるわけではない。
(イソプレノイド)
本明細書における「イソプレノイド」は、通常知られているとおりのイソプレンを構成単位とする化合物であれば特に限定されず、例えば、イリシコリン酸B、イリシコリン酸A、LL−Z1272β、イリシコリンA(LL−Z1272α)、イリシコリンAエポキシド、イリシコリンC、アスコクロリン、アスコフラノン及びこれらの誘導体などが挙げられる。ただし、本明細書では、主として、アスコフラノン、イリシコリンA及びアスコクロリン並びにこれらの誘導体のことを「イソプレノイド」とよぶ場合がある。
(AscAタンパク質)
本発明の一態様のAscAタンパク質は、アスコクロリン生合成遺伝子、アスコフラノン生合成遺伝子又はこれらの両方の生合成遺伝子の発現を増強する活性を有する、タンパク質である。AscAタンパク質は、アスコクロリン生合成遺伝子及び/又はアスコフラノン生合成遺伝子の発現を増強することによって、これらの遺伝子を含む生物体におけるイソプレノイドの生合成が促進し、もって該生物体によるイソプレノイドの産生が増大する。AscAタンパク質はアスコクロリン生合成遺伝子やアスコフラノン生合成遺伝子の正の転写因子として機能し得る。なお、AscAタンパク質をコードする遺伝子は、アスコクロリン生合成遺伝子又はアスコフラノン生合成遺伝子に含まれ得る。
AscAタンパク質は、アスコクロリン生合成遺伝子及び/又はアスコフラノン生合成遺伝子の発現を増強する活性を有するものであれば、アミノ酸配列については特に限定されない。
例えば、アスコクロリン生合成遺伝子及び/又はアスコフラノン生合成遺伝子の発現を増強する活性を有するAscAタンパク質の一態様として配列番号40に示すアミノ酸配列がある。
配列番号40に示すアミノ酸配列を有するAscAタンパク質は、アクレモニウム属糸状菌の一種であるアクレモニウム・スクレロティゲナムに由来するものである。また、配列番号40に示すアミノ酸配列を有するAscAタンパク質をコードする遺伝子の塩基配列は配列番号37に示す塩基配列である。
配列番号40に示すアミノ酸配列を有するAscAタンパク質は、アクレモニウム属の染色体DNA上に存在するAscAタンパク質をコードする遺伝子によってコードされるものである。このような由来生物の染色体DNA上に存在する遺伝子及び該遺伝子によってコードされるタンパク質を、それぞれ「野生型遺伝子」及び「野生型タンパク質(酵素)」と本明細書ではよぶ場合がある。
AscAタンパク質のアミノ酸配列は、アスコクロリン生合成遺伝子及び/又はアスコフラノン生合成遺伝子の発現を増強する活性を有するものであれば、野生型タンパク質が有するアミノ酸配列において1から数個のアミノ酸の欠失、置換、付加などを有するアミノ酸配列からなるものであってもよい。ここで、アミノ酸配列の「1から数個のアミノ酸の欠失、置換、付加」における「1から数個」の範囲は特に限定されないが、例えば、アミノ酸配列におけるアミノ酸数100個を一単位とすれば、該一単位あたり、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20個、好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個程度、より好ましくは1、2、3、4又は5個程度を意味する。また、「アミノ酸の欠失」とは配列中のアミノ酸残基の欠落又は消失を意味し、「アミノ酸の置換」は配列中のアミノ酸残基が別のアミノ酸残基に置き換えられていることを意味し、「アミノ酸の付加」とは配列中に新たなアミノ酸残基が挿入するように付け加えられていることを意味する。
「1から数個のアミノ酸の欠失、置換、付加」の具体的な態様としては、1から数個のアミノ酸が別の化学的に類似したアミノ酸で置き換えられた態様がある。例えば、ある疎水性アミノ酸を別の疎水性アミノ酸に置換する場合、ある極性アミノ酸を同じ電荷を有する別の極性アミノ酸に置換する場合などを挙げることができる。このような化学的に類似したアミノ酸は、アミノ酸毎に当該技術分野において知られている。具体例を挙げると、非極性(疎水性)アミノ酸としては、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、プロリン、トリプトファン、フェニルアラニン、メチオニンなどが挙げられる。極性(中性)アミノ酸としては、グリシン、セリン、スレオニン、チロシン、グルタミン、アスパラギン、システインなどが挙げられる。陽電荷をもつ塩基性アミノ酸としては、アルギニン、ヒスチジン、リジンなどが挙げられる。また、負電荷をもつ酸性アミノ酸としては、アスパラギン酸、グルタミン酸などが挙げられる。
野生型タンパク質が有するアミノ酸配列において1から数個のアミノ酸の欠失、置換、付加などを有するアミノ酸配列としては、野生型タンパク質が有するアミノ酸配列と一定以上の配列同一性を有するアミノ酸配列が挙げられ、例えば、野生型タンパク質が有するアミノ酸配列と60%以上、好ましくは65%以上、好ましくは70%以上、好ましくは75%以上、好ましくは80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列が挙げられる。
AscAタンパク質を入手する方法は特に限定されないが、例えば、後述する遺伝子ascAの発現が増強するように形質転換された形質転換体を培養し、次いで培養物中のAscAタンパク質を回収することを含む方法などが挙げられる。培養物中からAscAタンパク質を回収する手段は特に限定されず、例えば、常法に従って、不純物を取り除いた培養物上清から、硫安沈殿などによりAscAタンパク質を含むタンパク質濃縮液を得て、次いでAscAタンパク質の分子量を指標としたゲルろ過クロマトグラフィーやSDS−PAGEなどを用いることによって、AscAタンパク質を単離することができる。なお、配列番号40に示すアミノ酸配列を有するAscAタンパク質の理論分子量は、約55,000である。
(遺伝子ascA)
本発明の一態様の遺伝子ascAは、アスコクロリン生合成遺伝子及び/又はアスコフラノン生合成遺伝子の発現を増強する活性を有するAscAタンパク質が有するアミノ酸配列をコードする塩基配列を含むものであれば特に限定されない。AscAタンパク質をコードする遺伝子が生物体内で発現することによりAscAタンパク質が生産される。本明細書における「遺伝子の発現」とは、転写や翻訳などを介して、遺伝子によってコードされるタンパク質や酵素が本来の機能や活性、特に酵素活性を有する態様で生産されることを意味する。また、「遺伝子の発現」には、遺伝子の高発現、すなわち、遺伝子が挿入されたことにより、宿主生物が本来発現する量を超えて、該遺伝子によってコードされるタンパク質や酵素が生産されることを包含する。
遺伝子ascAは、宿主生物に導入された際に、該遺伝子の転写後にスプライシングを経由してAscAタンパク質を生成し得る遺伝子であっても、該遺伝子の転写後にスプライシングを経由せずにAscAタンパク質を生成し得る遺伝子であっても、どちらでもよい。後述する遺伝子ascB〜遺伝子ascKについても同様である。
遺伝子ascAは、由来生物が本来保有する遺伝子(すなわち、野生型遺伝子)と完全に同一でなくともよく、アスコクロリン生合成遺伝子及び/又はアスコフラノン生合成遺伝子の発現を増強する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子である限り、野生型遺伝子の塩基配列に相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を有するDNAであってもよい。
本明細書における「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列」とは、野生型遺伝子の塩基配列を有するDNAをプローブとして使用し、コロニーハイブリダイゼーション法、プラークハイブリダイゼーション法、サザンブロットハイブリダイゼーション法などを用いることにより得られるDNAの塩基配列を意味する。
本明細書における「ストリンジェントな条件」とは、特異的なハイブリッドのシグナルが非特異的なハイブリッドのシグナルと明確に識別される条件であり、使用するハイブリダイゼーションの系と、プローブの種類、配列及び長さによって異なる。そのような条件は、ハイブリダイゼーションの温度を変えること、洗浄の温度及び塩濃度を変えることにより決定可能である。例えば、非特異的なハイブリッドのシグナルまで強く検出されてしまう場合には、ハイブリダイゼーション及び洗浄の温度を上げるとともに、必要により洗浄の塩濃度を下げることにより特異性を上げることができる。また、特異的なハイブリッドのシグナルも検出されない場合には、ハイブリダイゼーション及び洗浄の温度を下げるとともに、必要により洗浄の塩濃度を上げることにより、ハイブリッドを安定化させることができる。
ストリンジェントな条件の具体例としては、例えば、プローブとしてDNAプローブを用い、ハイブリダイゼーションは、5×SSC、1.0%(w/v) 核酸ハイブリダイゼーション用ブロッキング試薬(ベーリンガ・マンハイム社製)、0.1%(w/v) N−ラウロイルサルコシン、0.02%(w/v) SDSを用い、一晩(8〜16時間程度)で行う。洗浄は、0.1〜0.5×SSC、0.1%(w/v) SDS、好ましくは0.1×SSC、0.1%(w/v) SDSを用い、15分間、2回行う。ハイブリダイゼーション及び洗浄を行う温度は65℃以上、好ましくは68℃以上である。
ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を有するDNAとしては、例えば、コロニー若しくはプラーク由来の野生型遺伝子の塩基配列を有するDNA又は該DNAの断片を固定化したフィルターを用いて、上記したストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーションすることによって得られるDNAや0.5〜2.0MのNaCl存在下にて、40〜75℃でハイブリダイゼーションを実施した後、好ましくは0.7〜1.0MのNaCl存在下にて、65℃でハイブリダイゼーションを実施した後、0.1〜1×SSC溶液(1×SSC溶液は、150mM 塩化ナトリウム、15mM クエン酸ナトリウム)を用い、65℃条件下でフィルターを洗浄することにより同定できるDNAなどを挙げることができる。プローブの調製やハイブリダイゼーションの方法は、Molecular Cloning:A laboratory Manual,2nd−Ed.,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,NY.,1989、Current Protocols in Molecular Biology,Supplement 1−38,John Wiley&Sons,1987−1997(以下、これらの文献を「参考技術文献」ともよぶ。)などに記載されている方法に準じて実施することができる。なお、当業者であれば、このようなバッファーの塩濃度や温度などの条件に加えて、その他のプローブ濃度、プローブ長さ、反応時間などの諸条件を加味して、野生型遺伝子の塩基配列に相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を有するDNAを得るための条件を適宜設定することができる。
ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含むDNAとしては、プローブとして使用する野生型遺伝子の塩基配列を有するDNAの塩基配列と一定以上の配列同一性を有するDNAが挙げられ、例えば、野生型遺伝子の塩基配列と60%以上、好ましくは65%以上、好ましくは70%以上、好ましくは75%以上、好ましくは80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上の配列同一性を有するDNAが挙げられる。
野生型遺伝子の塩基配列に相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列としては、例えば、塩基配列における塩基数100個を一単位とすれば、野生型遺伝子の塩基配列において、該一単位あたり、1から数個、好ましくは1から40個、好ましくは1から35個、好ましくは1から30個、好ましくは1から25個、好ましくは1から20個、より好ましくは1から15個、さらに好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個、なおさらに好ましくは1、2、3、4又は5個の塩基の欠失、置換、付加などを有する塩基配列を含む。ここで、「塩基の欠失」とは配列中の塩基に欠落又は消失があることを意味し、「塩基の置換」は配列中の塩基が別の塩基に置き換えられていることを意味し、「塩基の付加」とは新たな塩基が挿入するように付け加えられていることを意味する。
野生型遺伝子の塩基配列に相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列によってコードされるタンパク質は、野生型遺伝子の塩基配列によってコードされるタンパク質が有するアミノ酸配列において1から数個のアミノ酸の欠失、置換、付加などを有するアミノ酸配列を有するタンパク質である蓋然性があるが、野生型遺伝子の塩基配列によってコードされるタンパク質と同じ活性を有するものである。
また、遺伝子ascAは、1つのアミノ酸に対応するコドンが数種類あることを利用して、野生型遺伝子がコードするタンパク質が有するアミノ酸配列と同一又は近似するアミノ酸配列をコードする塩基配列であって、野生型遺伝子と異なる塩基配列を含むものであってもよい。コドン改変が施された塩基配列としては、例えば、宿主生物において発現し易いようにコドン改変が施された塩基配列であることが好ましい。
(アスコクロリン・アスコフラノン生合成遺伝子がコードする酵素(1)乃至(10))
本発明者らがこれまでに得た知見によれば、アスコクロリン生合成遺伝子は遺伝子ascB、遺伝子ascC、遺伝子ascD、遺伝子ascE、遺伝子ascF、遺伝子ascG及び遺伝子ascHの7遺伝子である。同様に、本発明者らがこれまでに得た知見によれば、アスコフラノン生合成遺伝子は遺伝子ascI、遺伝子ascJ及び遺伝子ascKの3遺伝子である。ただし、アスコフラノン生合成遺伝子としては、イリシコリンAエポキシドを生合成するまでの遺伝子ascB、遺伝子ascC、遺伝子ascD、遺伝子ascE及び遺伝子ascFを包含し得る。また、上記したとおりに、遺伝子ascAは、アスコクロリン生合成遺伝子及びアスコフラノン生合成遺伝子の両方に含まれ得る。
遺伝子ascBは、o−オルセリン酸からイリシコリン酸Bを生成する反応を触媒する活性を有する酵素(以下、「酵素(1)」ともよぶ。)のアミノ酸配列をコードする塩基配列を含む。
遺伝子ascCは、イリシコリン酸BからLL−Z1272βを生成する反応を触媒する活性を有する酵素(以下、「酵素(2)」ともよぶ。)のアミノ酸配列をコードする塩基配列を含む。
遺伝子ascDは、アセチルCoAからo−オルセリン酸を生成する反応を触媒する活性を有する酵素(以下、「酵素(3)」ともよぶ。)のアミノ酸配列をコードする塩基配列を含む。
遺伝子ascEは、LL−Z1272β からイリシコリンAを生成する反応を触媒する活性を有する酵素(以下、「酵素(4)」ともよぶ。)のアミノ酸配列をコードする塩基配列を含む。
遺伝子ascFは、イリシコリンAのエポキシ化反応を触媒する活性を有する酵素(以下、「酵素(5)」ともよぶ。)のアミノ酸配列をコードする塩基配列を含む。
遺伝子ascGは、イリシコリンAエポキシドの環化反応を触媒する活性を有する酵素(以下、「酵素(6)」ともよぶ。)のアミノ酸配列をコードする塩基配列を含む。
遺伝子ascHは、イリシコリンAからAscFタンパク質及びAscGタンパク質の反応によって生成した化合物の脱水素化によりアスコクロリンを生成する反応を触媒する活性を有する酵素(以下、「酵素(7)」ともよぶ。)のアミノ酸配列をコードする塩基配列を含む。
遺伝子ascIは、イリシコリンAエポキシドの一原子酸素添加反応を触媒する活性を有する酵素(以下、「酵素(8)」ともよぶ。)のアミノ酸配列をコードする塩基配列を含む。イリシコリンAエポキシドの一原子酸素添加反応とは、イリシコリンAエポキシドの水素原子(−H)をヒドロキシ基(−OH)に置換する反応をいう。
遺伝子ascJ及びascKは、イリシコリンAエポキシドからAscIタンパク質の反応によって生成した化合物からアスコフラノンを生成する反応を触媒する活性を有する酵素(以下、それぞれ「酵素(9)」及び「酵素(10)」ともよぶ。)のアミノ酸配列をコードする塩基配列を含む。
酵素(1)はプレニル・トランスフェラーゼと同様の機能を有し;酵素(2)はオキシドリダクターゼと同様の機能を有し;酵素(3)はポリケチド・シンターゼと同様の機能を有し;酵素(4)はハロゲナーゼと同様の機能を有し;酵素(5)はエポキシダーゼとしてのp450/p450リダクターゼと同様の機能を有し;酵素(6)はテルペン・サイクラーゼと同様の機能を有し;酵素(7)はデヒドロゲナーゼとしてのp450と同様の機能を有し;酵素(8)はモノオキシゲナーゼとしてのp450と同様の機能を有し;酵素(9)はテルペン・サイクラーゼと同様の機能を有し;及び酵素(10)はデヒドロゲナーゼと同様の機能を有する蓋然性がある。ただし、後述する実施例に記載があるとおり、酵素(9)及び酵素(10)は、これらの酵素をコードする遺伝子の両方が発現することにより、AscIタンパク質の反応物からアスコフラノンを合成し得る。本明細書では、具体的な作用機序にかかわらず、2種の酵素をコードする遺伝子が発現することにより特定の反応が生じる場合において、一方の酵素は他方の酵素と「共役する」とよぶ。
酵素(1)乃至(10)は、上記した酵素活性を有するものであれば、アミノ酸配列については特に限定されない。
例えば、上記した酵素活性を有する酵素(1)の一態様として配列番号11に示すアミノ酸配列があり;上記した酵素活性を有する酵素(2)の一態様として配列番号12に示すアミノ酸配列があり;上記した酵素活性を有する酵素(3)の一態様として配列番号13に示すアミノ酸配列があり;上記した酵素活性を有する酵素(4)の一態様として配列番号14に示すアミノ酸配列があり;上記した酵素活性を有する酵素(5)の一態様として配列番号15に示すアミノ酸配列があり;上記した酵素活性する酵素(6)の一態様として配列番号16に示すアミノ酸配列があり;上記した酵素活性を有する酵素(7)の一態様として配列番号17に示すアミノ酸配列があり;上記した酵素活性を有する酵素(8)の一態様として配列番号18に示すアミノ酸配列;上記した酵素活性を有する酵素(9)の一態様として配列番号19に示すアミノ酸配列があり;上記した酵素活性を有する酵素(10)の一態様として配列番号20に示すアミノ酸配列がある。
配列番号11〜20に示すアミノ酸配列を有する酵素は、すべてアクレモニウム・スクレロティゲナムに由来するものであり、本発明者らによりそれぞれAscB、AscC、AscD、AscE、AscF、AscG、AscH、AscI、AscJ及びAscKタンパク質と名付けられる。また、これらの酵素をコードする遺伝子の塩基配列は配列番号1〜10に示す塩基配列である。
(アスコクロリン・アスコフラノン生合成遺伝子)
遺伝子ascB、ascC、ascD、ascE、ascF、ascG、ascH、ascI、ascJ及びascK(以下、これらを総称して「酵素(1)乃至(10)をコードする遺伝子」とよぶ場合がある。)は、上記した酵素活性を有する酵素(1)乃至(10)が有するアミノ酸配列をコードする塩基配列を含むものであれば特に限定されない。酵素(1)乃至(10)をコードする遺伝子が生物体内で発現することにより酵素(1)乃至(10)が生産される。
酵素(1)乃至(10)をコードする遺伝子は、遺伝子ascAと同様に、野生型遺伝子がコードする酵素が有するアミノ酸配列と同一又は近似するアミノ酸配列をコードする塩基配列であって、野生型遺伝子と異なる塩基配列を含むものであってもよい。このような野生型遺伝子の塩基配列に対してコドン改変が施された塩基配列としては、例えば、配列番号21〜24及び28〜30に記載の塩基配列などが挙げられる。
(配列同一性を算出するための手段)
塩基配列やアミノ酸配列の配列同一性を求める方法は特に限定されないが、例えば、通常知られている方法を利用して、野生型遺伝子や野生型遺伝子によってコードされるタンパク質や酵素のアミノ酸配列と対象となる塩基配列やアミノ酸配列とをアラインメントし、両者の配列の一致率を算出するためのプログラムを用いることにより求められる。
2つのアミノ酸配列や塩基配列における一致率を算出するためのプログラムとしては、例えば、Karlin及びAltschulのアルゴリズム(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2264−2268、1990;Proc.Natl.Acad.Sci. USA90:5873−5877、1993)が知られており、このアルゴリズムを用いたBLASTプログラムがAltschulなどによって開発されている(J.Mol.Biol.215:403−410、1990)。さらに、BLASTより感度よく配列同一性を決定するプログラムであるGapped BLASTも知られている(Nucleic Acids Res. 25:3389−3402、1997)。したがって、当業者は例えば上記のプログラムを利用して、与えられた配列に対し、高い配列同一性を示す配列をデータベース中から検索することができる。これらは、例えば、米国National Center for Biotechnology Informationのインターネット上のウェブサイト(http://blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgi)において利用可能である。
上記の各方法は、データベース中から配列同一性を示す配列を検索するために通常的に用いられ得るが、個別の配列の配列同一性を決定する手段としては、Genetyxネットワーク版 version 12.0.1(ゼネティックス社製)のホモロジー解析を用いることもできる。この方法は、Lipman−Pearson法(Science 227:1435−1441、1985)に基づくものである。塩基配列の配列同一性を解析する際は、可能であればタンパク質をコードしている領域(CDS又はORF)を用いる。
(遺伝子ascAの由来)
遺伝子ascAは、例えば、イソプレノイドの生産能がある生物種やAscAタンパク質の発現が見られる生物種などに由来する。遺伝子ascAの由来生物としては、例えば、微生物などが挙げられる。微生物の中でも糸状菌はイソプレノイド生産能があることが知られている菌種が多いことから好ましい。アスコクロリン生産能を有する糸状菌の具体例としては、アクレモニウム属糸状菌、トリコデルマ属(Trichoderma)糸状菌、フザリウム属(Fusarium)糸状菌、シリンドロカルポン属(Cylindrocarpon)糸状菌、バーティシリウム属(Verticillium)糸状菌、ネクトリア属(Nectria)糸状菌などが挙げられ;アスコフラノン生産能を有する糸状菌の具体例としては、アクレモニウム属糸状菌、ペシロマイセス属(Paecilomyces)糸状菌、バーティシリウム属糸状菌などが挙げられる。より具体的にはアクレモニウム・スクレロティゲナム、ペシロマイセス・バリオッティ(P.variotii)、バーティシリウム・ヘミプタリゲナム(V.hemipterigenum)などが挙げられる。
上記のとおり、遺伝子ascAの由来生物は特に限定されないが、形質転換体において発現されるascAタンパク質は、宿主生物の生育条件によって不活化せず、活性を示すことが好ましい。そこで、遺伝子ascAの由来生物は、遺伝子ascAを挿入することによって形質転換すべき宿主生物と生育条件が近似する微生物であることが好ましい。
(遺伝子工学的手法による遺伝子ascAのクローニング)
遺伝子ascAは、適当な公知の各種ベクター中に挿入することができる。さらに、このベクターを適当な公知の宿主生物に導入して、遺伝子ascAを含む組換えベクター(組換え体DNA)が導入された形質転換体を作製できる。遺伝子ascAの取得方法や、遺伝子ascAの塩基配列、AscAタンパク質のアミノ酸配列情報の取得方法、各種ベクターの製造方法や形質転換体の作製方法などは、当業者にとって適宜選択することができる。また、本明細書では、形質転換や形質転換体にはそれぞれ形質導入や形質導入体を包含する。遺伝子ascAのクローニングの一例を非限定的に後述する。
遺伝子ascAをクローニングするには、通常一般的に用いられている遺伝子のクローニング方法を適宜用いることができる。例えば、AscAタンパク質の生産能を有する微生物や種々の細胞から、常法、例えば、参考技術文献に記載の方法により、染色体DNAやmRNAを抽出することができる。抽出したmRNAを鋳型としてcDNAを合成することができる。このようにして得られた染色体DNAやcDNAを用いて、染色体DNAやcDNAのライブラリーを作製することができる。
例えば、遺伝子ascAは、該遺伝子を有する由来生物の染色体DNAやcDNAを鋳型としたクローニングにより得ることができる。遺伝子ascAの由来生物は上記したとおりのものであり、具体的な例としては、アクレモニウム・スクレロティゲナムなどを挙げることができる。例えば、アクレモニウム・スクレロティゲナムを培養し、得られた菌体から水分を取り除き、液体窒素中で冷却しながら乳鉢などを用いて物理的に磨砕することにより細かい粉末状の菌体片とし、該菌体片から通常の方法により染色体DNA画分を抽出する。染色体DNA抽出操作には、DNeasy Plant Mini Kit(キアゲン社製)などの市販の染色体DNA抽出キットが利用できる。
次いで、前記染色体DNAを鋳型として、5’末端配列及び3’末端配列に相補的な合成プライマーを用いてポリメラーゼ連鎖反応(以下、「PCR」と表記する)を行うことにより、DNAを増幅する。プライマーとしては、該遺伝子を含むDNA断片の増幅が可能であれば特に限定されない。別の方法として、5’RACE法や3’RACE法などの適当なPCRにより、目的の遺伝子断片を含むDNAを増幅させ、これらを連結させて全長の目的遺伝子を含むDNAを得ることができる。
遺伝子ascAを取得する方法は特に限定されず、遺伝子工学的手法によらなくとも、例えば、化学合成法を用いて遺伝子ascAを構築することが可能である。
PCRにより増幅された増幅産物や化学合成した遺伝子における塩基配列の確認は、例えば、次のように行うことができる。まず、配列を確認したいDNAを通常の方法に準じて適当なベクターに挿入して組換え体DNAを作製する。ベクターへのクローニングには、TA Cloning Kit(インビトロジェン社製)などの市販のキット;pUC19(タカラバイオ社製)、pUC18(タカラバイオ社製)、pBR322(タカラバイオ社製)、pBluescript SK+(ストラタジーン社製)、pYES2/CT(インビトロジェン社製)などの市販のプラスミドベクターDNA;λEMBL3(ストラタジーン社製)などの市販のバクテリオファージベクターDNAが使用できる。該組換え体DNAを用いて、宿主生物、例えば、大腸菌(Escherichia coli)、好ましくは大腸菌 JM109株(タカラバイオ社製)や大腸菌 DH5α株(タカラバイオ社製)を形質転換する。得られた形質転換体に含まれる組換え体DNAを、QIAGEN Plasmid Mini Kit(キアゲン社製)などを用いて精製する。
該組換え体DNAに挿入されている各遺伝子の塩基配列の決定は、ジデオキシ法(Methods in Enzymology、101、20−78、1983)などにより行う。塩基配列の決定の際に使用する配列解析装置は特に限定されないが、例えば、Li−COR MODEL 4200Lシークエンサー(アロカ社製)、370DNAシークエンスシステム(パーキンエルマー社製)、CEQ2000XL DNAアナリシスシステム(ベックマン社製)などが挙げられる。そして、決定された塩基配列を元に、翻訳されるタンパク質、すなわち、AscAタンパク質のアミノ酸配列を知り得る。
(遺伝子ascAを含む組換えベクターの構築)
遺伝子ascAを含む組換えベクター(組換え体DNA)は、遺伝子ascAのいずれかを含むPCR増幅産物と各種ベクターとを、遺伝子ascAの発現が可能な形で結合することにより構築することができる。例えば、適当な制限酵素で遺伝子ascAのいずれかを含むDNA断片を切り出し、該DNA断片を適当な制限酵素で切断したプラスミドと連結することにより構築することができる。または、プラスミドと相同的な配列を両末端に付加した該遺伝子を含むDNA断片と、インバースPCRにより増幅したプラスミド由来のDNA断片とを、In−Fusion HD Cloning Kit(クロンテック社製)などの市販の組換えベクター作製キットを用いて連結させることにより得ることができる。
(形質転換体の作製方法)
形質転換体の作製方法は特に限定されず、例えば、常法に従って、遺伝子ascAが発現する態様で宿主生物に挿入する方法などが挙げられる。具体的には、遺伝子ascAのいずれかを発現誘導プロモーター及びターミネーターの間に挿入したDNAコンストラクトを作製し、次いで遺伝子ascAを含むDNAコンストラクトで宿主生物を形質転換することにより、遺伝子ascAを過剰発現する形質転換体が得られる。本明細書では、宿主生物を形質転換するために作製された、発現誘導プロモーター−目的遺伝子−ターミネーターからなるDNA断片及び該DNA断片を含む組換えベクターをDNAコンストラクトと総称してよぶ。
遺伝子ascAが発現する態様で宿主生物に挿入する方法は特に限定されないが、例えば、相同組換えを利用することにより宿主生物の染色体上に直接的に挿入する手法;プラスミドベクター上に連結することにより宿主生物内に導入する手法などが挙げられる。
相同組換えを利用する方法では、染色体上の組換え部位の上流領域及び下流領域と相同な配列の間に、DNAコンストラクトを連結し、宿主生物のゲノム中に挿入することができる。高発現プロモーターは特に限定されないが、例えば、翻訳伸長因子であるTEF1遺伝子(tef1)のプロモーター領域、α−アミラーゼ遺伝子(amy)のプロモーター領域、アルカリプロテアーゼ遺伝子(alp)プロモーター領域、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(gpd)プロモーター領域などが挙げられる。
ベクターを利用する方法では、DNAコンストラクトを、常法により、宿主生物の形質転換に用いられるプラスミドベクターに組み込み、対応する宿主生物を常法により形質転換することができる。
そのような、好適なベクター−宿主系としては、宿主生物中でAscAタンパク質を生産させ得る系であれば特に限定されず、例えば、pUC19及び糸状菌の系、pSTA14(Mol.Gen.Genet.218、99−104、1989)及び糸状菌の系などが挙げられる。
DNAコンストラクトは宿主生物の染色体に導入して用いることが好ましいが、この他の方法として、自律複製型のベクター(Ozeki et al.Biosci.Biotechnol.Biochem.59,1133 (1995))にDNAコンストラクトを組み込むことにより、染色体に導入しない形で用いることもできる。
DNAコンストラクトには、形質転換された細胞を選択することを可能にするためのマーカー遺伝子が含まれていてもよい。マーカー遺伝子は特に限定されず、例えば、pyrG、pyrG3、niaD、adeAのような、宿主生物の栄養要求性を相補する遺伝子;ピリチアミン、ハイグロマイシンB、オリゴマイシンなどの薬剤に対する薬剤耐性遺伝子などが挙げられる。また、DNAコンストラクトは、宿主生物中で遺伝子ascAを過剰発現することを可能にするプロモーター、ターミネーターその他の制御配列(例えば、エンハンサー、ポリアデニル化配列など)を含むことが好ましい。プロモーターは特に限定されないが、適当な発現誘導プロモーターや構成的プロモーターが挙げられ、例えば、tef1プロモーター、alpプロモーター、amyプロモーター、gpdプロモーターなどが挙げられる。ターミネーターもまた特に限定されないが、例えば、alpターミネーター、amyターミネーター、tef1ターミネーターなどが挙げられる。
DNAコンストラクトにおいて、遺伝子ascAの発現制御配列は、挿入する遺伝子ascAを含むDNA断片が、発現制御機能を有している配列を含む場合は必ずしも必要ではない。また、共形質転換法により形質転換を行う場合には、DNAコンストラクトはマーカー遺伝子を有しなくてもよい場合がある。
DNAコンストラクトには精製のためのタグをつけることができる。例えば、遺伝子ascAの上流又は下流に適宜リンカー配列を接続し、ヒスチジンをコードする塩基配列を6コドン以上接続することにより、ニッケルカラムを用いた精製を可能にすることができる。
DNAコンストラクトにはマーカーリサイクリングに必要な相同配列が含まれていてもよい。例えばpyrGマーカーは、pyrGマーカーの下流に挿入部位(5’相同組み換え領域)の上流の配列と相同な配列を付加すること、又はpyrGマーカーの上流に挿入部位(3’相同組み換え領域)の下流の配列と相同な配列を付加することで、5−フルオロオロチン酸(5FOA)を含んだ培地上でpyrGマーカーを脱落させることが可能となる。マーカーリサイクリングに適した該相同配列の長さは0.5kb以上が好ましい。
DNAコンストラクトの一態様は、例えば、pUC19のマルチクローニングサイトにあるIn−Fusion Cloning Siteに、tef1遺伝子プロモーターであるPtef、遺伝子ascA、tef1遺伝子ターミネーターであるTtef及びpyrGマーカー遺伝子を連結させたDNAコンストラクトである。
相同組み換えにより遺伝子を挿入する場合のDNAコンストラクトの一態様は、5’相同組み換え配列、tef1遺伝子プロモーター、遺伝子ascA、alp遺伝子ターミネーター及びpyrGマーカー遺伝子、3’相同組み換え配列を連結させたDNAコンストラクトである。
相同組み換えにより遺伝子を挿入し、かつ、マーカーをリサイクルする場合のDNAコンストラクトの一態様は、5’相同組み換え配列、tef1遺伝子プロモーター、遺伝子ascA、alp遺伝子ターミネーター、マーカーリサイクリング用相同配列、pyrGマーカー遺伝子、3’相同組み換え配列を連結させたDNAコンストラクトである。
宿主生物が糸状菌である場合、糸状菌への形質転換方法としては、当業者に知られる方法を適宜選択することができ、例えば、宿主生物のプロトプラストを調製した後に、ポリエチレングリコール及び塩化カルシウムを用いるプロトプラストPEG法(例えば、Mol.Gen.Genet.218、99−104、1989、特開2007−222055号公報などを参照)を用いることができる。形質転換体を再生させるための培地は、用いる宿主生物と形質転換マーカー遺伝子とに応じて適切なものを用いる。例えば、宿主生物としてアスペルギルス・オリゼ(A.oryzae)、アスペルギルス・ソーヤ(A.sojae)を用い、形質転換マーカー遺伝子としてpyrG遺伝子を用いた場合は、形質転換体の再生は、例えば、0.5%寒天及び1.2Mソルビトールを含むCzapek−Dox最少培地(ディフコ社製)で行うことができる。
また、例えば、形質転換体を得るために、相同組換えを利用して、宿主生物が本来染色体上に有する遺伝子ascAのプロモーターをtef1などの高発現プロモーターへ置換してもよい。この際も、高発現プロモーターに加えて、pyrGなどの形質転換マーカー遺伝子を挿入することが好ましい。例えば、この目的のために、特開2011−239681号公報に記載の実施例や図1を参照して、遺伝子ascAの上流領域−形質転換マーカー遺伝子−高発現プロモーター−遺伝子ascAの全部又は部分からなる形質転換用カセットなどが利用できる。この場合、遺伝子ascAの上流領域及び遺伝子ascAの全部又は部分が相同組換えのために利用される。遺伝子ascAの全部又は部分は、開始コドンから途中の領域を含むものが使用できる。相同組換えに適した領域の長さは0.5kb以上あることが好ましい。
形質転換体が作製されたことの確認は、AscAタンパク質が有するアスコクロリン生合成遺伝子及び/又はアスコフラノン生合成遺伝子の発現を増強する活性が認められる条件下で形質転換体を培養し、次いで培養後に得られた培養物における目的産物、例えば、イソプレノイドが検出されること、又は検出された目的産物の量が、同じ条件下で培養した宿主生物の培養物における目的産物の量よりも多いことを確認することにより行うことができる。
また、形質転換体が作製されたことの確認は、形質転換体から染色体DNAを抽出し、これを鋳型としてPCRを行い、形質転換が起きた場合に増幅が可能なPCR産物が生じることを確認することにより行ってもよい。この場合、例えば、用いたプロモーターの塩基配列に対するフォワードプライマーと、形質転換マーカー遺伝子の塩基配列に対するリバースプライマーとの組み合わせでPCRを行い、想定の長さの産物が生じることを確認する。
相同組み換えにより形質転換を行う場合には、用いた上流側の相同領域より上流に位置するフォワードプライマーと、用いた下流側の相同領域より下流に位置するリバースプライマーとの組み合わせでPCRを行い、相同組み換えが起きた場合に想定される長さの産物が生じることを確認することが好ましい。
(宿主生物)
宿主生物としては、遺伝子ascAを含むDNAコンストラクトによる形質転換により、イソプレノイドを生産することができる生物であれば特に限定されず、例えば、微生物や植物などが挙げられ、微生物としては、アスペルギルス属微生物、アクレモニウム属微生物、ネオネクトリア属微生物、フザリウム属微生物、エシェリキア(Escherichia)属微生物、サッカロマイセス(Saccharomyces)属微生物、ピキア(Pichia)属微生物、シゾサッカロマイセス(Schizosaccharomyces)属微生物、ジゴサッカロマイセス(Zygosaccharomyces)属微生物、トリコデルマ(Trichoderuma)属微生物、ペニシリウム(Penicillium)属微生物、クモノスカビ(Rhizopus)属微生物、アカパンカビ(Neurospora)属微生物、ムコール(Mucor)属微生物、ネオサルトリア(Neosartorya)属微生物、ビッソクラミス(Byssochlamys)属微生物、タラロミセス(Talaromyces)属微生物、アジェロミセス(Ajellomyces)属微生物、パラコッシディオイデス(Paracoccidioides)属微生物、アンシノカルプス(Uncinocarpus)属微生物、コッシディオイデス(Coccidioides)属微生物、アルフロデルマ(Arthroderma)属微生物、トリコフィトン(Trichophyton)属微生物、エクソフィラ(Exophiala)属微生物、カプロニア(Capronia)属微生物、クラドフィアロフォラ(Cladophialophora)属微生物、マクロホミナ(Macrophomina)属微生物、レプトスファエリア(Leptosphaeria)属微生物、ビポラリス(Bipolaris)属微生物、ドチストローマ(Dothistroma)属微生物、ピレノフォラ(Pyrenophora)属微生物、ネオフシコッカム(Neofusicoccum)属微生物、セトスファエリア(Setosphaeria)属微生物、バウドイニア(Baudoinia)属微生物、ガエウマノミセス(Gaeumannomyces)属微生物、マルッソニナ(Marssonina)属微生物、スファエルリナ(Sphaerulina)属微生物、スクレロチニア(Sclerotinia)属微生物、マグナポルセ(Magnaporthe)属微生物、ヴェルチシリウム(Verticillium)属微生物、シュードセルコスポラ(Pseudocercospora)属微生物、コレトトリカム(Colletotrichum)属微生物、オフィオストーマ(Ophiostoma)属微生物、メタルヒジウム(Metarhizium)属微生物、スポロスリックス(Sporothrix)属微生物、ソルダリア(Sordaria)属微生物、アラビドプシス(Arabidopsis)属植物などが挙げられ、微生物及び植物が好ましい。宿主生物は遺伝子ascAをゲノムDNA上に有する生物であってもよい。
宿主生物は、イソプレノイドの生産能が認められる生物である。したがって、宿主生物がアスコクロリン生合成遺伝子やアスコフラノン生合成遺伝子を有さないことなどにより、イソプレノイドの生産能が認められない場合は、遺伝子ascAだけではなく、アスコクロリン生合成遺伝子やアスコフラノン生合成遺伝子により形質転換する。すなわち、アスコクロリン生合成遺伝子やアスコフラノン生合成遺伝子を導入して、イソプレノイドを異種発現するように形質転換した形質転換体、例えば、形質転換糸状菌も宿主生物として利用可能である。ただし、どのような場合であっても、宿主生物からヒトは除かれる。
イソプレノイドの生産能が認められる生物としては、アクレモニウム属糸状菌、トリコデルマ属糸状菌、フザリウム属糸状菌、シリンドロカルポン属糸状菌、バーティシリウム属糸状菌、ネクトリア属糸状菌、ペシロマイセス属糸状菌などが挙げられ、より具体的にはアクレモニウム・スクレロティゲナム、ペシロマイセス・バリオッティ、バーティシリウム・ヘミプタリゲナムなどが挙げられる。
糸状菌の中では、安全性や培養の容易性を加味すれば、アスペルギルス・オリゼ、アスペルギルス・ソーヤ、アスペルギルス・ニガー(A.niger)、アスペルギルス・タマリ(A.tamarii)、アスペルギルス・アワモリ(A.awamori)、アスペルギルス・ウサミ(A.usami)、アスペルギルス・カワチ(A.kawachii)、アスペルギルス・サイトイ(A.saitoi)などのアスペルギルス属微生物などが好ましい。
なお、アクレモニウム属微生物やアスペルギルス属微生物をはじめとして糸状菌は相同組換え頻度が低いことから、相同組換えで形質転換体を作製する場合には、非相同組換え機構に関与するKu70、Ku80などのKu遺伝子が抑制された形質転換糸状菌を使用することが好ましい。
このようなKu遺伝子の抑制は、当業者に公知の任意の方法で実施することができるが、例えば、Ku遺伝子破壊ベクターを使用したKu遺伝子を破壊することや、Ku遺伝子のアンチセンス発現ベクターを利用するアンチセンスRNA法によって、Ku遺伝子を不活化することなどによって達成可能である。こうして得られる形質転換アスペルギルス属微生物は、Ku遺伝子の抑制に関する遺伝子操作が施される前の元のアスペルギルス属微生物と比較して、相同組み換え頻度が顕著に上昇している。具体的には、少なくとも2倍、好ましくは少なくとも5倍、好ましくは少なくとも10倍、好ましくは少なくとも約50倍上昇している。
(遺伝子ascAの具体例)
アクレモニウム・スクレロティゲナム由来の遺伝子ascAとしては、例えば、配列番号37に記載の塩基配列を有するDNAが挙げられる。なお、配列番号37に記載の塩基配列を有するDNAがコードするAscAタンパク質のアミノ酸配列は配列番号40に記載のアミノ酸配列である。
アクレモニウム・スクレロティゲナム及びアクレモニウム・スクレロティゲナム以外の生物から遺伝子ascAを得る方法は特に限定されないが、例えば、遺伝子ascAの塩基配列(配列番号37)に基づいて、対象生物のゲノムDNAをBLAST相同性検索して、遺伝子ascAの塩基配列と配列同一性の高い塩基配列を有する遺伝子を特定することにより得ることができる。また、対象生物の総タンパク質を基に、AscAタンパク質のアミノ酸配列(配列番号40)と配列同一性の高いアミノ酸配列を有するタンパク質を特定し、該タンパク質をコードする遺伝子を特定することにより得ることができる。
アクレモニウム・スクレロティゲナムから得られた遺伝子ascA、又は遺伝子ascAと配列同一性を有する酵素をコードする遺伝子を、宿主生物としてアスペルギルス属微生物やアクレモニウム属微生物等の任意の宿主細胞に導入して形質転換することができる。
(形質転換体)
形質転換体の一態様は、糸状菌や植物などを宿主生物として、遺伝子ascAが挿入されており、かつ、該挿入された遺伝子を発現するように形質転換した形質転換体である。宿主生物が本来的に遺伝子ascAを含むアスコクロリン生合成遺伝子及び/又はアスコフラノン生合成遺伝子を有する生物である場合は、挿入された遺伝子ascAは恒常的に強制発現若しくは内在性の発現よりも高発現にすること、又は細胞増殖後の培養後期で条件発現させることなどして、遺伝子ascAの発現が増強するように形質転換された形質転換体であることが望ましい。このような形質転換体は、発現したAscAタンパク質の作用によって宿主生物では実質的に生産しない、又は生産したとしても微量であるイソプレノイドを検出可能又はそれ以上に生産することができる。
(方法)
本発明の一態様の方法は、アスコクロリン生合成遺伝子及び/又はアスコフラノン生合成遺伝子を有する糸状菌において、AscAタンパク質又は遺伝子ascAの発現を増強することにより、該糸状菌によるイソプレノイドの産生を増大させる工程を含む、糸状菌によるイソプレノイドの産生を増大させる方法である。本発明の別の一態様の方法は、アスコクロリン生合成遺伝子及び/又はアスコフラノン生合成遺伝子を有する糸状菌において、AscAタンパク質又は遺伝子ascAの発現を増強することにより、イソプレノイドを得る工程を含む、イソプレノイドの製造方法である。本発明の別の一態様の方法は、遺伝子ascAの発現が増強するように形質転換された形質転換体を培養することにより、イソプレノイドを得る工程を含む、イソプレノイドの製造方法である。
AscAタンパク質又は遺伝子ascAの発現を増強する手段は特に限定されないが、例えば、使用する糸状菌として、遺伝子ascAの発現が増強するように形質転換された形質転換体を用いること;遺伝子ascAを含むアスコクロリン生合成遺伝子及び/又はアスコフラノン生合成遺伝子を有する糸状菌について、培養条件を調整することや他の転写因子を導入するなどして、該糸状菌が本来有する遺伝子ascAの発現を増強することなどの手段が挙げられる。
糸状菌によるイソプレノイドの産生が増大しているか否かは、例えば、AscAタンパク質又は遺伝子ascAの発現を増強する手段を講じていないアスコクロリン生合成遺伝子及び/又はアスコフラノン生合成遺伝子を有する糸状菌のイソプレノイドの産生量と、AscAタンパク質又は遺伝子ascAの発現を増強する手段を講じたアスコクロリン生合成遺伝子及び/又はアスコフラノン生合成遺伝子を有する糸状菌のイソプレノイドの産生量とを比較することにより確認することができる。
遺伝子ascAの発現が増強するように形質転換された形質転換体の培養は、形質転換体の生育に適した培地を用いて、形質転換体の生育に適した培養条件下で形質転換体を培養することなどが挙げられる。培養方法は特に限定されず、例えば、宿主生物が糸状菌である場合は、通気又は非通気条件下で行う固体培養法や液体培養法などが挙げられる。
以下では、主として宿主生物や野生型生物が糸状菌である場合の製造方法について記載するが、本発明の各態様の方法は下記記載に限定されない。
培地は、宿主生物や野生型生物(以下では、これらを総称して「宿主生物等」ともよぶ。)を培養する通常の培地、すなわち炭素源、窒素源、無機物、その他の栄養素を適切な割合で含有するものであれば、合成培地及び天然培地のいずれでも使用できる。宿主生物等がアクレモニウム属微生物やアスペルギルス属微生物である場合は、後述する実施例に記載があるようなGPY培地などを利用することができるが、特に限定されない。
形質転換体の培養条件は、当業者により通常知られる宿主生物等の培養条件を採用すればよく、例えば、宿主生物等が糸状菌である場合、培地の初発pHは5〜10に調整し、培養温度は20〜40℃、培養時間は数時間〜数日間、好ましくは1〜7日間、より好ましくは2〜4日間など、適宜設定することができる。培養手段は特に限定されず、通気撹拌深部培養、振盪培養、静地培養などを採用することができるが、溶存酸素が十分になるような条件で培養することが好ましい。例えば、アクレモニウム属微生物やアスペルギルス属微生物を培養する場合の培地及び培養条件の一例として、後述する実施例に記載があるGPY培地を用いた、30℃、160rpmでの3〜5日間の振盪培養が挙げられる。
培養終了後に培養物から目的産物(イソプレノイド)を抽出する方法は特に限定されない。抽出には、培養物から濾過、遠心分離などの操作により回収した菌体をそのまま用いてもよく、回収した後に乾燥した菌体やさらに粉砕した菌体を用いてもよい。菌体の乾燥方法は特に限定されず、例えば、凍結乾燥、天日乾燥、熱風乾燥、真空乾燥、通気乾燥、減圧乾燥などが挙げられる。
抽出溶媒は目的産物が溶解するものであれば特に限定されず、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトンなどの有機溶媒;これらの有機溶媒と水とを混合させた含水有機溶媒;水、温水及び熱水などが挙げられる。溶媒を加えた後、適宜、菌体破砕処理を加えながら目的産物を抽出する。
また、上記加温処理に代えて、例えば、超音波破砕機、フレンチプレス、ダイノミル、乳鉢などの破壊手段を用いて菌体を破壊する方法;ヤタラーゼなどの細胞壁溶解酵素を用いて菌体細胞壁を溶解する方法;SDS、トリトンX−100などの界面活性剤を用いて菌体を溶解する方法などの菌体破砕処理に供してもよい。これらの方法は単独又は組み合わせて使用することができる。
得られた抽出液は、遠心分離、フィルターろ過、限外ろ過、ゲルろ過、溶解度差による分離、溶媒抽出、クロマトグラフィー(吸着クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィーなど)、結晶化、活性炭処理、膜処理などの精製処理に供することにより目的産物を精製することができる。
定性的分析又は定量的分析は、LC−MS、LC−ICP−MS、MS/MSなどにより行うことができる。これらの分析の条件は当業者であれば適宜選択することができ、例えば、後述する実施例に記載がある条件で実施できる。
本発明の各態様の製造方法では、本発明の課題を解決し得る限り、上記した工程の前段若しくは後段又は工程中に、種々の工程や操作を加入することができる。
(用途)
本発明の一態様のタンパク質、遺伝子、形質転換体及び方法を利用して得られたイソプレノイドは、抗原虫活性、抗腫瘍活性、血糖低下作用、血中脂質低下作用、糖化阻害作用、抗酸化作用などの種々の生理活性を有することが期待できる機能性生体物質であるとともに、その特徴を活かして、医薬品、医薬部外品などやこれらの製品を製造するための原料として利用可能である。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではなく、本発明の課題を解決し得る限り、本発明は種々の態様をとることができる。
(アスコクロリン生合成遺伝子の探索)
アスコフラノン産生菌であるアクレモニウム・スクレロティゲナム(Acremonium sclerotigenum F−1392株;J.Antibiot.70:304−307(2016)参照)を用いて、アスコフラノンの産生量が400倍以上異なる2つの培養サンプルを取得した。
それらのサンプルから、50〜100mgの菌体を回収し、TRIzol Reagent(Thermo Fisher Scientific社製)を用いて、標準プロトコールに従って全RNAを回収した。
回収した全RNAから、Dynabeads mRNA DIRECT Micro Kit(Thermo Fisher Scientific社製)を用いてmRNAを単離し、トランスクリプトームライブラリー(cDNAライブラリー)をIon Total RNA−seq Kit v2(Thermo Fisher Scientific社製)を用いて構築した。
なお、全RNA、mRNA及びcDNAの品質及びトランスクリプトームライブラリーの濃度測定は、Agilent RNA 6000 pico kit及びAgilent 2100 bioanalizer system(ともにAgilen社製)を用いて確認した。
得られたcDNAライブラリーのRNAシーケンス解析をThermo Fisher Scientific社のシステムを用いて以下のように行った。
得られたcDNAライブラリーをそれぞれ20pmol/Lに希釈し、Ion OneTouch 2を用いてエマルジョンPCRによってライブラリーの増幅を行った。増幅したライブラリーは、Ion OneTouch ESを用いて濃縮し、Ion PGM systemによってRNAシーケンス解析を行った。Ion OneTouch 2にはIon PGM Template OT2 200 Kitを用い、Ion PGMにはIon PGM sequencing 200 Kit v2を用いた。
RNAシーケンスにはIon PGM Ion 316 v2チップを使用した。得られたシーケンス情報をアクレモニウム・スクレロティゲナムのゲノム配列データベースにマッピングし、2つのサンプル間における遺伝子の発現量の違いを解析した。
マッピングされたcDNAのリード数をそれぞれの遺伝子の長さで補正した値(RPKM: reads per kilobase of exon per million mapped sequence reads)を基に、高生産サンプルと低生産サンプルとの間の発現倍率を計算した。
高生産サンプルの遺伝子のうち、低生産サンプルのものと比較して300倍以上の倍率で高発現している遺伝子の探索を行った結果、2遺伝子以上が連続しており、300倍以上の倍率で高発現している遺伝子が集中した唯一の領域を見出すことができた。これがアスコフラノン生合成遺伝子クラスターであると予測し、300倍以上の倍率で高発現していた遺伝子をascA〜Hと名付けた(図1を参照)。
また、それぞれの遺伝子のコードするタンパク質について、blast検索やPfamによるドメイン検索を行った結果、AscA〜Hは表1のような機能を持つことが予測された。このうち、AscAは、転写因子であると考えられたため、アスコフラノンの生合成には遺伝子ascB〜H(配列番号1〜7)がコードするAscB〜Hタンパク質(配列番号11〜17)が関与すると予想された。
(AscD、AscB、AscC及びAscE発現形質転換体の作製)
麹菌アスペルギルス・ソーヤ(Aspergillus sojae NRRC4239株)のpyrG破壊株/ku70破壊株に、麹菌発現用にコドンを改変した配列番号21〜24の遺伝子ascB、ascC、ascD及びascEのいずれかを含む発現カセットを導入した。
具体的には、各asc遺伝子を発現させるための発現カセットとして、翻訳伸長因子遺伝子tef1のプロモーター配列であるPtef(tef1遺伝子の上流748bp、配列番号25)をプロモーターとして用い、及びアルカリプロテアーゼ遺伝子alpのターミネーター配列であるTalp(alp遺伝子の下流800bp、配列番号26)をターミネーターとして用いた。また、選択マーカーとしてはウラシル/ウリジン要求性を相補する形質転換マーカー遺伝子pyrG(上流407bp、コード領域896bp及び下流5,35bpを含む1,838bp、配列番号27)を用いた。
例えば、ユーンらの文献(Appl Microbiol Biotechnol. 2009 Mar;82(4):691−701. doi: 10.1007/s00253−008−1815−5. Epub 2008 Dec 24. Construction of quintuple protease gene disruptant for heterologous protein production in Aspergillus oryzae.)で報告されているように、形質転換に用いるDNA中に遺伝子挿入位置(相同組み換え領域)の上流又は下流の配列と相同な配列が含まれている場合、5−フルオロオロチン酸(5FOA)を含む培地上でpyrGマーカーを脱落させることができ、何度もpyrGマーカーを使用すること(マーカーリサイクリング)が可能となる。よって、5’相同組み換え配列(5’arm)、Ptef、asc遺伝子、Talp、マーカーリサイクリング用相同配列(下流遺伝子との相同配列;loop out region)、pyrG、3’相同組み換え配列(3’arm)の順に連結したものを形質転換用DNAとして用いることでpyrGのマーカーリサイクルを行い、各asc遺伝子の発現カセットをアスペルギルス・ソーヤの染色体上へascD、ascB、ascC、ascEの順に挿入した。
また、それぞれのDNAの連結にはIn−Fusion HD Cloning Kit(クロンテック社製)を使用した。例えば、Ptefと遺伝子ascDとを連結させる場合には、Ptefは配列番号31及び32のプライマーを、ascDは配列番号33及び34のプライマーを用いてPCR反応によりそれぞれのDNA断片を増幅させた。このとき、遺伝子ascD用のフォワードプライマーには、5’末端にPtefと相同な配列が15bp付加されているため、In fusion反応により、Ptefと遺伝子ascDとの連結が可能となる。
以上のようにして調製した5’arm−Ptef−ascD−Talp−loop out region−pyrG−3’arm、5’arm−Ptef−ascB−Talp−loop out region−pyrG−3’arm、5’arm−Ptef−ascC−Talp−loop out region−pyrG−3’arm、5’arm−Ptef−ascE−Talp−loop out region−pyrG−3’armの形質転換用DNAを用いて、アスペルギルス・ソーヤ NRRC4239株のpyrG破壊株/ku70破壊株を形質転換することで、遺伝子ascD、ascB、ascC、及びascEのいずれかを含む発現カセットのそれぞれを順に1コピーずつ導入したAs−D株、As−DB株、As−DBC株及びAs−DBCE株を取得した。
次に、1%(w/v)NaClを添加したGPY培地(2%(w/v)グルコース、1%
(w/v)ポリペプトン、0.5%(w/v)酵母エキス、0.5%(w/v)リン酸2水素1カリウム、0.05%(w/v)硫酸マグネシウム・7水和物)にAs−D株、As−DB株、As−DBC株及びAs−DBCE株を植菌し、30℃で4日間培養した。培養後の菌体を濾紙上に回収した後、吸引濾過により水分を取り除いた。
回収した菌体をアセトンに1晩浸漬し、フィルター処理することでAs−DBCE株のアセトン抽出物を取得した。得られたアセトン抽出物を濃縮乾固し、メタノールに溶解した後、HPLC解析及びMS解析(ネガティブモード)を行ったところ、As−D株では宿主株(NBRC4239株)では見られなかった新たなピークがo−オルセリン酸の標準品と同じ溶出位置に確認された。また、As−DB株ではAs−D株では見られなかった新たなピークが確認され、MS解析の結果、該ピークのm/z値はイリシコリン酸Bに相当する371であることがわかった。また、As−DBC株ではAs−DB株では見られなかった新たなピークが確認され、MS解析の結果、該ピークのm/z値はL−Z1272βに相当する355であることがわかった。さらに、As−DBCE株ではAs−DBC株では見られなかった新たなピークがわずかながら確認され、該ピークはイリシコリンA(ilicicolin A)標準品と同じ溶出位置に見られた(図2を参照)。
なお、図2のHPLCは、メタノール:水:酢酸(450:50:10)を移動相(1ml/min)とし、粒子径3μm、4.6mm×100mmのTSKgel ODS−100V(TOSOH社製)のODSカラムを用いて実施した。
さらに、特願2016−209178号明細書に記載のpyrG3遺伝子(配列番号41)を用いて、遺伝子ascD、ascB、ascC及びascEをそれぞれ多コピーで導入したAs−DBCE−multi−copy株では、イリシコリンAが多く蓄積していることがわかった(図2を参照)。なお、pyrG3遺伝子は、糸状菌において、任意の遺伝子を多コピーで染色体に組み込むための、pyrG内のプロモーター領域を改変し、発現量を低下させた選択マーカー遺伝子である。
また、LC/MS解析により、該ピークの化合物がイリシコリンA標準品と同じm/z値389(negativeモード)を示すこと、LC/MS/MS解析においてもイリシコリンA標準品と同様のピークパターンを示したことから、発現したAscD、AscB、AscC及びAscEタンパク質によって、イリシコリンAが生合成されていることがわかった。なお、図2中で、約7分の溶出位置で見えているピークは、As−DBC株で確認されたピークと溶出位置が一致しており、MS解析の結果、LL−Z1272βのm/z値と一致していることがわかった。
(AscD、AscB、AscC、AscE、AscF、AscG及びAscH発現形質転換体の作製)
As−DBCE株と同様にして、麹菌発現用にコドンを改変した配列番号28〜30の遺伝子ascF、ascG及びascHのいずれかを含む発現カセットを順次導入することで、AscF発現カセットを導入したAs−DBCEF株;AscF及びAscGの発現カセットを導入したAs−DBCEFG株;及び、AscF、AscG及びAscHの発現カセットを導入したAs−DBCEFGH株を作製した。これらの株を上記と同様にして培養し、HPLC解析を行った。
なお、HPLCは、アセトニトリル+0.1%(v/v)ギ酸をA液、水+0.1%(v/v)ギ酸をB液とし、A液40〜100%(50min)のグラジエント条件下で、流速0.25ml/minで、L−column2 ODS(粒子径3μm、2.1mm×100mm;化学物質評価研究機構社製)のODSカラムを用いて解析を行った。
図3に示すとおり、As−DBCEF株ではAs−DBCE株では見られなかった新たなピークが確認された。また、As−DBCEFG株ではAs−DBCEF株では見られなかった新たなピークが確認された。さらに、As−DBCEFGH株ではAs−DBCEFG株では見られなかった新たなピークが確認された。
このことから、イリシコリンA以降は、AscF、AscG及びAscHタンパク質が順次作用して反応が進むことがわかった。
(粗酵素液を用いたin vitro解析)
アスペルギルス・ソーヤ NRRC4239株のpyrG破壊株に対し、麹菌発現用にコドンを改変した配列番号28〜30の遺伝子ascF、ascG及びascHの発現カセットのいずれかを多コピーで導入したAs−F株、As−G株及びAs−H株を作製した。これらの株の作製にあたっては、Ptef−asc遺伝子−Talp−pyrG3をpUC19に挿入したプラスミドDNAを形質転換用DNAとして用いた。
アスペルギルス・ソーヤ NRRC4239株(野生株)、As−F株、As−G株及びAs−H株のそれぞれをGPY培地で1日培養し、培養後の菌体の水分を取り除いた後、液体窒素で凍結させ、マルチビーズショッカーで菌体を破砕した。粉砕した菌体に、20mM HEPES−NaOH(pH7.0)を加えることで野生株、As−F株、As−G株及びAs−H株の粗酵素液を抽出した。
得られた粗酵素液(菌体5〜10mg分)を用いて以下の反応液(1)〜(4)を調製した:
(1)野生株反応液:野生株の粗酵素液、イリシコリンAの標準品、1mM NADPH、1mM NADH、1mM ATP及び3mM MgClの混合液
(2)As−F反応液:As−F株の粗酵素液、イリシコリンAの標準品、1mM NADPH、1mM NADH、1mM ATP及び3mM MgClの混合液
(3)As−FG反応液:As−F株の粗酵素液、As−G株の粗酵素液、イリシコリンAの標準品、1mM NADPH、1mM NADH、1mM ATP及び3mM MgClの混合液
(4)As−FGH反応液:As−F株の粗酵素液、As−G株の粗酵素液、As−H株の粗酵素液、イリシコリンAの標準品、1mM NADPH、1mM NADH、1mM ATP及び3mM MgClの混合液
上記反応液(1)〜(4)をそれぞれ室温で一晩反応させた。次いで、それぞれの反応液に対して、酢酸エチルで抽出を行い、得られた抽出物を濃縮乾固した後に、LC/MS解析を行った。
LC解析は、L−column2 ODS(粒子径3μm、2.1mm×100mm;化学物質評価研究機構社製)のカラムを用いて、アセトニトリル+0.1%(v/v)ギ酸をA液、水+0.1%(v/v)ギ酸をB液とし、A液40%〜100%(50min)のグラジエント条件下、流速0.25ml/minで行い、MS解析はnegativeモードで行った。
その結果、図4Aに示すとおり、As−F反応液ではm/z値423において野生株反応液では見えなかった新たなピークが確認された。また、図4Bに示すとおり、As−FG反応液ではm/z値405においてAs−F反応液では見られなかった新たなピークが確認された。さらに、図5に示すとおり、As−FGH反応液ではm/z値403においてAs−FG反応液やAs−FG反応液では見られなかった新たなピークが確認された。また、As−FGH反応液で確認されたピークはアスコクロリン標準品のピークと溶出時間が一致し、さらにアスコクロリンのm/z値は403であることから、これらの結果よりイリシコリンAからAscF、AscG及びAscHタンパク質が順次作用することによりアスコクロリンが生合成されることがわかった。
以上のように、アスコフラノン生合成に関与すると予測した遺伝子クラスターは、アスコクロリンの生合成遺伝子クラスターであることがわかった。予想されるアスコクロリンの生合成スキームを図6に示す。図6に示すとおり、アスコクロリンの生合成経路は、アスコフラノンの生合成経路とは、一部重複があるものの、全く別異なものであることがわかった。このことより、アスコクロリンの生合成遺伝子クラスターを導入した形質転換体により生産されるものは、アスコクロリンであってアスコフラノンではないことがわかった。
(アスコフラノン生合成遺伝子の探索)
図6に示すとおり、イリシコリンAエポキシドによりアスコフラノンが生合成されるためには、一原子酸素添加反応が必要であると想定し、この反応にはAscF以外の別のシトクロムP450モノオキシゲナーゼが関与していると予測した。そこで、上記のRNAシーケンス解析の結果を用いて、アスコフラノン高生産サンプルにおいて高発現しているP450遺伝子を探索した。その結果、アスコフラノン高生産サンプルにおいて、AscFの約6割の発現量を有し、且つ低生産サンプルではほとんど発現していないP450遺伝子を新たに見出した。また、該P450遺伝子の隣接する2つの遺伝子も同様にアスコフラノン高生産サンプルでのみ高発現していることがわかり、これら3つの遺伝子がクラスターを形成していることが示唆された(図7を参照)。該P450遺伝子に隣接する2つの遺伝子のコードするタンパク質について、blast検索やPfamによるドメイン検索を行った結果、一方は機能未知のタンパク質であり、もう一方はデヒドロゲナーゼであることがわかった。
(粗酵素液を用いたアスコフラノン合成)
上記にようにして見出した3つの遺伝子、P450遺伝子(配列番号8)、機能未知遺伝子(配列番号9)及びデヒドロゲナーゼ遺伝子(配列番号10)を、それぞれascI、ascJ及びascKと名付けた。また、これらの遺伝子がそれぞれコードするAscIタンパク質(配列番号18)、AscJタンパク質(配列番号19)及びAscKタンパク質(配列番号20)がアスコフラノンの生合成に関与する酵素であるかをin vitro解析で確認することにした。
アスペルギルス・ソーヤ NRRC4239株のpyrG破壊株に対し、配列番号8〜10の遺伝子ascI、ascJ及びascKの発現カセットのいずれかを導入したAs−I株、As−J株及びAs−K株を作製した。これらの株の作製にあたっては、Ptef−asc遺伝子−Talp−pyrGをpUC19に挿入したプラスミドDNAを形質転換用DNAとして用いた。
As−F株、As−I株、As−J株及びAs−K株のそれぞれをGPY培地で1日培養し、培養後の菌体の水分を取り除いた後、液体窒素で凍結させ、マルチビーズショッカーで菌体を破砕した。粉砕した菌体に、20mM HEPES−NaOH(pH7.4)を加えることでAs−F株、As−I株、As−J株及びAs−K株の粗酵素液を抽出した。
得られた粗酵素液(菌体5〜7.5mg分)を用いて以下の反応液(1)〜(7)を調製した:
(1)As−F反応液:As−F株の粗酵素液、イリシコリンAの標準品、1mM NADPH、1mM NADH、1mM ATP及び3mM MgClの混合液
(2)As−FI反応液:As−F株の粗酵素液、As−I株の粗酵素液、イリシコリンAの標準品、1mM NADPH、1mM NADH、1mM ATP及び3mM MgClの混合液
(3)As−FIJ反応液:As−F株の粗酵素液、As−I株の粗酵素液、As−J株の粗酵素液、イリシコリンAの標準品、1mM NADPH、1mM NADH、1mM ATP及び3mM MgClの混合液
(4)As−FIK反応液:As−F株の粗酵素液、As−I株の粗酵素液、As−K株の粗酵素液、イリシコリンAの標準品、1mM NADPH、1mM NADH、1mM ATP及び3mM MgClの混合液
(5)As−FJK反応液:As−F株の粗酵素液、As−J株の粗酵素液、As−K株の粗酵素液、イリシコリンAの標準品、1mM NADPH、1mM NADH、1mM ATP及び3mM MgClの混合液
(6)As−IJK反応液:As−I株の粗酵素液、As−J株の粗酵素液、As−K株の粗酵素液、イリシコリンAの標準品、1mM NADPH、1mM NADH、1mM ATP及び3mM MgClの混合液
(7)As−FIJK反応液:As−F株の粗酵素液、As−G株の粗酵素液、As−H株の粗酵素液、イリシコリンAの標準品、1mM NADPH、1mM NADH、1mM ATP及び3mM MgClの混合液
上記反応液(1)〜(7)をそれぞれ30℃で1時間反応させた。次いで、それぞれの反応液に対して、酢酸エチルで抽出を行い、得られた抽出物を濃縮乾固した後に、LC/MS解析を行った。
LC解析は、L−column2 ODS(粒子径3μm、2.1mm×100mm;化学物質評価研究機構社製)のカラムを用いて、アセトニトリル+0.1%(v/v)ギ酸をA液、水+0.1%(v/v)ギ酸をB液とし、A液40%〜100%(50min)のグラジエント条件下、流速0.25ml/minで行い、MS解析はnegativeモードで行った。LC/MS解析の結果を図8及び図10に示し、MS/MS解析の結果を図9に示す。
その結果、図8に示すとおり、(7)As−FIJK反応液でのみアスコフラノンに相当するm/z値419のピークがアスコフラノン標準品と同じ溶出時間に検出された。さらに、(7)で検出されたm/z値419のピークについて、コリジョンエネルギー45evでMS/MS解析を行ったところ、図9で示すようにアスコフラノン標準品と同様のフラグメンテーションパターンを示した。
また、図10に示すとおり、(2)As−FI反応液では、(1)As−F反応液では見られなかったm/z値439の新たなピークが検出され、さらに該ピークはAscF及びAscIの両方ともが反応液中に存在するときにのみ検出された。つまり、このm/z値439のピークは、イリシコリンAを基質としてAscF及びAscIが順に反応して生成した化合物(の加水分解産物)に由来すると考えられ、m/z値の差と、AscIがP450であることとから考慮すると、AscIは一原子酸素添加酵素(モノオキシゲナーゼ)として機能していることが強く示唆された。
以上より、図11に示すとおり、イリシコリンAを基質として、AscF、AscI、AscJ及びAscKが反応することにより、アスコフラノンが生成されることがわかった。
(AscD、AscB、AscC、AscE、AscF、AscI、AscJ及びAscK発現形質転換体の作製)
上記と同様にして、配列番号8〜10の遺伝子ascI、ascJ、ascK及び配列番号35のA.sojae NBRC4239株由来P450レダクターゼ遺伝子をそれぞれ含む発現カセットを、pyrGマーカーリサイクリング後のAs−DBCEF株に順次導入することで、AscI及びP450レダクターゼの発現カセットを導入したAs−DBCEFIred株;AscI、AscJ、AscK及びP450レダクターゼの発現カセットを導入したAs−DBCEFIJKred株をそれぞれ作製した。これらの株を5%(w/v)NaClを添加したGPY培地で培養し、上記と同様にしてHPLC解析を行った。
なお、HPLCは、アセトニトリル+0.1%(v/v)ギ酸をA液、水+0.1%(v/v)ギ酸をB液とし、A液40〜100%(50min)のグラジエント条件下で、流速0.25ml/minで、L−column2 ODS(粒子径3μm、2.1mm×100mm;化学物質評価研究機構社製)のODSカラムを用いて解析を行った。結果を図12に示す。
図12に示すとおり、As−DBCEFIJKred株ではAs−DBCEFIred株では見られなかったm/z値419のアスコフラノンに相当するピークが確認された。また、該ピークはアスコフラノン標準品のピークと溶出時間が一致した。これにより、ascB、ascC、ascD、ascE、ascF、ascI、ascJ及びascKはアスコフラノンの生合成遺伝子であることがわかった。
したがって、図6で予想したとおり、アスコフラノン及びアスコクロリンの生合成については、AscD、B、C、E及びFまでの反応は両者で共通しており、イリシコリンAエポキシド以降の反応が異なっていることがわかった。具体的には、イリシコリンAエポキシドにAscIが反応した場合はアスコフラノン生合成へ、イリシコリンAエポキシドにAscGが反応した場合はアスコクロリン生合成へつながることがわかった(図11を参照)。
(AscA強制発現ベクターの作製)
上記のとおり、遺伝子ascB〜遺伝子ascHはアスコクロリンの生合成遺伝子であることがわかった。また、遺伝子ascB〜遺伝子ascF及び遺伝子ascI〜遺伝子ascKはアスコフラノンの生合成遺伝子であることがわかった。次に、表1のクラスターに存在する転写因子をコードする遺伝子ascAがアスコクロリンやアスコフラノンの生合成遺伝子の発現を制御しているのかを以下のとおりに検証した。
RNAシーケンスの結果より、遺伝子ascAはアスコフラノン高生産培地において高発現していたことから、アスコクロリン生合成遺伝子群やアスコフラノン生合成遺伝子群を正に制御するのではないかと考えた。そこで、アクレモニウム・スクレロティゲナムにおいて、遺伝子ascAを強制発現させることでアスコクロリンやアスコフラノンの生産が誘導されるかどうかを調べるため、下記のようにしてAscA強制発現ベクターを作製した。
まず、アクレモニウム・スクレロティゲナム F−1392株のゲノムDNAを鋳型としてPCR反応を行い、配列番号36のtef1遺伝子プロモーター(Ptef)、配列番号37の遺伝子ascA、配列番号38のtef1遺伝子ターミネーター(Ttef)、配列番号39のpyrG遺伝子をクローニングし、In fusion反応によりそれぞれを連結することで、Ptef−ascA−Ttef−pyrGのascA強制発現カセットがpUC19に挿入されたascA強制発現ベクターを作製した。
なお、配列番号37の遺伝子ascAはイントロンを含んでいる塩基配列であるが、RNAシーケンスの結果、遺伝子ascAにコードされているAscAタンパク質は配列番号40のアミノ酸配列からなることがわかった。
(アクレモニウム・スクレロティゲナムF−1392株のpyrG破壊株の作製)
アクレモニウム・スクレロティゲナム F−1392株において、任意の遺伝子を導入することを可能とするため、pyrG破壊株を作製することにした。アクレモニウム・スクレロティゲナム F−1392株のゲノムDNAを鋳型としてPCR反応を行い、pyrG ORFの上流3kbのDNA断片(5’pyrG);pyrG ORFの147塩基目から下流1.7kbのDNA断片(3’pyrG)及びTtef(配列番号38)を増幅した。ハイグロマイシン耐性遺伝子(hygr)はLinear Hygromycin Marker(Takara社)を鋳型としてPCR反応を行い増幅させた。次に、増幅させた各DNA断片をIn fusion反応により連結することで、5’pyrG−hygr−Ttef−3’pyrGからなるpyrG破壊株作製用DNA断片を調製した。
次に、アクレモニウム・スクレロティゲナムF−1392株のプロトプラストを文献CYTOLOGIA,82(3):317−320 JUN 2017に記載の方法に従い調製した。そして、ポリエチレングリコール及び塩化カルシウムを用いるプロトプラストPEG法(例えば、文献Mol.Gen.Genet.218、99−104、1989を参照)により、5’pyrG−hygr−Ttef−3’pyrGを導入することでpyrG破壊株を作製した。なお、PEG処理後のプロトプラストは再生用寒天培地(3.5% Czapeck borth、1.2M ソルビトール、20mM ウラシル、20mM ウリジン、2% Agar)上に重層し、25℃で一晩培養した後、2mg/Lの5FOA及び100mg/Lのハイグロマイシンを含む再生用寒天培地(0.7% Agar) 5mLをさらに重層して、30℃で2〜3週間培養した。
(AscA強制発現株におけるアスコクロリン生産性及びアスコフラノン生産性の評価)
上記で作製したアクレモニウム・スクレロティゲナム F−1392株のpyrG破壊株に対し、AscA強制発現ベクターを導入することでAscA強制発現株を作製した。
アクレモニウム・スクレロティゲナム F−1392株(野生株)と、作製したAscA強制発現株とを、それぞれGPY液体培地中で4日間、30℃で培養し、上記と同様にしてHPLC解析を行った。結果を図13に示す。
図13に示すとおり、野生株はGPY培地中ではアスコクロリン及びアスコフラノンを全く生産しなかった。それに対して、AscA強制発現株ではアスコクロリン及びアスコフラノンの両方の生産が確認された。
これまで、野生株では限られた培地でしかアスコクロリン及びアスコフラノンが生産されず、僅かな培養条件の違いで生産量が大きく異なることが課題であった。しかし、AscA強制発現株を使用すれば、所定の培養条件に設定せずとも、アスコクロリン及びアスコフラノンの生産が可能となり、アスコクロリン、アスコフラノン、イリシコリンAといったイソプレノイドの安定的な工業生産が実現でき、産業上非常に有用である。
配列表に記載の配列は、以下のとおりである:
[配列番号1]ascB
[配列番号2]ascC
[配列番号3]ascD
[配列番号4]ascE
[配列番号5]ascF
[配列番号6]ascG
[配列番号7]ascH
[配列番号8]ascI
[配列番号9]ascJ
[配列番号10]ascK
[配列番号11]AscBタンパク質
[配列番号12]AscCタンパク質
[配列番号13]AscDタンパク質
[配列番号14]AscEタンパク質
[配列番号15]AscFタンパク質
[配列番号16]AscGタンパク質
[配列番号17]AscHタンパク質
[配列番号18]AscIタンパク質
[配列番号19]AscJタンパク質
[配列番号20]AscKタンパク質
[配列番号21]コドン改変ascB
[配列番号22]コドン改変ascC
[配列番号23]コドン改変ascD
[配列番号24]コドン改変ascE
[配列番号25]Ptef
[配列番号26]Talp
[配列番号27]pyrG
[配列番号28]コドン改変ascF
[配列番号29]コドン改変ascG
[配列番号30]コドン改変ascH
[配列番号31]Ptef−Fw
[配列番号32]Ptef−Rv
[配列番号33]ascD−Fw
[配列番号34]ascD−Rv
[配列番号35]A.sojae由来P450レダクターゼ遺伝子
[配列番号36]Ptef
[配列番号37]ascA
[配列番号38]Ttef
[配列番号39]pyrG
[配列番号40]AscAタンパク質
[配列番号41]pyrG3
本発明の一態様であるタンパク質、遺伝子、形質転換体及び方法は、アスコクロリン、アスコフラノン、イリシコリンAといったイソプレノイドを大量に製造するために利用することができる。したがって、本発明は、イソプレノイドを工業的規模で製造するために利用可能である。

Claims (9)

  1. 下記(a)〜(c)のいずれかのアミノ酸配列を含み、かつ、アスコクロリン生合成遺伝子及び/又はアスコフラノン生合成遺伝子の発現を増強する活性を有する、AscAタンパク質。
    (a)配列表の配列番号40に記載のアミノ酸配列
    (b)配列表の配列番号40に記載のアミノ酸配列において、1から数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列
    (c)配列表の配列番号40に記載のアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
  2. 下記(A)〜(D)のいずれかの塩基配列であって、アスコクロリン生合成遺伝子及び/又はアスコフラノン生合成遺伝子の発現を増強する活性を有するタンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列を含む、遺伝子ascA。
    (A)請求項1に記載のタンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列
    (B)配列表の配列番号37に記載の塩基配列
    (C)配列表の配列番号37に記載の塩基配列に相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列
    (D)配列表の配列番号37に記載の塩基配列からなる遺伝子と80%以上の同一性を有する塩基配列
  3. アスコクロリン生合成遺伝子及び/又はアスコフラノン生合成遺伝子を有する糸状菌において、請求項1に記載のAscAタンパク質又は請求項2に記載の遺伝子ascAの発現を増強することにより、該糸状菌によるイソプレノイドの産生を増大させる工程を含む、糸状菌によるイソプレノイドの産生を増大させる方法。
  4. イソプレノイドは、アスコフラノン、アスコクロリン及びイリシコリンAからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である、請求項3に記載の方法。
  5. 請求項2に記載の遺伝子ascAの発現が増強するように形質転換された形質転換体(ただし、ヒトを除く)。
  6. 前記形質転換体は、宿主生物がアクレモニウム(Acremonium)属微生物である、請求項5に記載の形質転換体。
  7. アスコクロリン生合成遺伝子及び/又はアスコフラノン生合成遺伝子を有する糸状菌において、請求項1に記載のAscAタンパク質又は請求項2に記載の遺伝子ascAの発現を増強することにより、イソプレノイドを得る工程を含む、イソプレノイドの製造方法。
  8. 請求項5〜6のいずれか1項に記載の形質転換体を培養することにより、イソプレノイドを得る工程を含む、イソプレノイドの製造方法。
  9. イソプレノイドは、アスコフラノン、アスコクロリン及びイリシコリンAからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である、請求項7又は8に記載の方法。

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