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JP2019161946A - 回転子、回転電機、及び車両 - Google Patents

回転子、回転電機、及び車両 Download PDF

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JP2019161946A JP2018048276A JP2018048276A JP2019161946A JP 2019161946 A JP2019161946 A JP 2019161946A JP 2018048276 A JP2018048276 A JP 2018048276A JP 2018048276 A JP2018048276 A JP 2018048276A JP 2019161946 A JP2019161946 A JP 2019161946A
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Yoshiko Okamoto
佳子 岡本
直幸 眞田
Naoyuki Sanada
直幸 眞田
将也 萩原
Masaya Hagiwara
将也 萩原
桜田 新哉
Shinya Sakurada
新哉 桜田
真琴 松下
Makoto Matsushita
真琴 松下
則雄 高橋
Norio Takahashi
則雄 高橋
徳増 正
Tadashi Tokumasu
正 徳増
寿郎 長谷部
Toshiro Hasebe
寿郎 長谷部
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  • Permanent Magnet Type Synchronous Machine (AREA)
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Abstract

【課題】トルク性能を向上できる回転子、回転電機、及び車両を提供することである。
【解決手段】実施形態の回転子は、シャフトと、収納孔と、磁石複合体と、を持つ。シャフトは、回転軸線回りに回転する。回転子鉄心は、シャフトに固定される。収納孔は、回転子鉄心に形成されている。磁石複合体は、収納孔に収納される。また、磁石複合体は、永久磁石と、嵩上体と、を持つ。永久磁石は、板状である。嵩上体は、永久磁石の回転軸線方向に直交する方向で、かつ磁化方向の一面に取り付けられる。
【選択図】図1

Description

本発明の実施形態は、回転子、回転電機、及び車両に関する。
例えば、回転電機として車両(例えば、自動車や鉄道車両)に搭載された車両駆動用モータが挙げられる。車両駆動用モータとしては、永久磁石同期モータ(PMSM;permanent Magnet Synchronous Motor)がある。永久磁石同期モータは、電機子巻線が巻装された固定子と、この固定子に対し回転自在に設けられ、回転子鉄心に永久磁石が埋め込まれている回転子と、を備えている。そして、所望の電機子巻線に所望の電圧を印加すると、電機子巻線に磁場が発生する。この磁場と永久磁石との間で生じる磁気的な吸引力や反発力によって、回転子が回転する。
ところで、回転子鉄心に永久磁石を埋め込む場合、回転子鉄心に着磁前の永久磁石を埋め込んだ後、永久磁石の着磁を行う場合、又は回転子鉄心に予め着磁した永久磁石を埋め込む場合のいずれかの方法を採用することができる。また、回転電機の低コスト化や回転子鉄心の機械的強度を確保するために、永久磁石の厚さをできる限り薄くすることが望ましい。
しかしながら、永久磁石は、形状パーミアンスの影響から反磁界が生じ、自己減磁してしまう。反磁界の大きさは、永久磁石の厚さに比例するので、永久磁石の厚さを薄くしようとすると、永久磁石が自己減磁しやすくなってしまう。この結果、磁石の残留磁束密度が減少し、回転電機のトルク特性が低下してしまう可能性があった。
特開2001−251796号公報
本発明が解決しようとする課題は、トルク性能を向上できる回転子、回転電機、及び車両を提供することである。
実施形態の回転子は、シャフトと、収納孔と、磁石複合体と、を持つ。シャフトは、回転軸線回りに回転する。回転子鉄心は、シャフトに固定される。収納孔は、回転子鉄心に形成されている。磁石複合体は、収納孔に収納される。また、磁石複合体は、永久磁石と、嵩上体と、を持つ。永久磁石は、板状である。嵩上体は、永久磁石の回転軸線方向に直交する方向で、かつ磁化方向の一面に取り付けられる。
実施形態の回転電機を示す回転軸線に直交する断面図。 実施形態の高いリコイル透磁率をもつ永久磁石と通常のNd磁石との磁束密度の変化を示すグラフ。 実施形態の高いリコイル透磁率をもつ永久磁石とNd磁石とのパーミアンス係数に対する減磁率の変化を示すグラフ。 実施形態の複合体と比較例との効果の違いを示す説明図であり、(a)は、第1実施例を示し、(b)は、第2実施例を示し、(c)は、第1比較例を示し、(d)は、第2比較例を示す。 図4の各実施例と各比較例の測定結果を示す表。 実施形態の回転子の回転トルクの変化を示すグラフ。 実施形態の回転電機が搭載された発電機の概略構成図。 実施形態の回転電機が搭載された鉄道車両の概略構成図。 実施形態の回転電機が搭載された自動車の概略構成図。
以下、実施形態の回転子、回転電機、及び車両を、図面を参照して説明する。
図1は、回転電機1を示し、回転軸線Pに直交する断面図である。なお、回転電機1の回転子2は8極であり、図1では、1極分、つまり、1/8周の周角度領域分のみを示している。
回転電機1は、略円筒状の固定子20と、固定子20よりも径方向内側に設けられ、固定子20に対して回転自在に設けられた回転子2と、を備えている。なお、固定子20及び回転子2は、それぞれの中心軸線が共通軸上に位置した状態で配置されている。以下、共通軸を回転軸線Pと称し、回転軸線P回りに周回する方向を周方向と称し、回転軸線P方向及び周方向に直交する方向を径方向と称する。
固定子20は、略円筒状の固定子鉄心21を有している。固定子鉄心21は、電磁鋼板を複数枚積層したり、軟磁性粉を加圧成形したりして形成することが可能である。固定子鉄心21の内周面には、回転軸線Pに向かって突出し、周方向に等間隔で配列された複数(例えば、本実施形態では48個)のティース22が一体成形されている。ティース22は、断面略長方形状に形成されている。そして、隣接する各ティース22間には、それぞれスロット23が形成されている。これらスロット23を介し、各ティース22に電機子巻線24が巻回されている。この電機子巻線24に電流を供給することにより、固定子20(ティース22)に所定の鎖交磁束が形成される。
回転子2は、回転軸線Pに沿って延び、この回転軸線P回りに回転するシャフト3と、シャフト3に外嵌固定された略円柱状の回転子鉄心4と、を備えている。回転子鉄心4の径方向中央には、シャフト3を挿入、又は圧入可能な貫通孔5が形成されている。
ここで、本実施形態の回転子鉄心4において、固定子20によって形成される鎖交磁束の流れ易い方向をq軸と称する。また、q軸に対して電気的、磁気的に直交する径方向に沿った方向をd軸と称する。すなわち、回転子鉄心4の外周面4aの任意の周角度位置に正の磁位(例えば磁石のN極を近づける)、これに対して1極分(本実施形態の場合は機械角で45度)ずれた他の任意の周角度位置に負の磁位(例えば磁石のS極を近づける)を与え、任意の位置を周方向へずらしていった場合に最も多くの磁束が流れる時の回転軸線Pから任意の位置に向かう方向をq軸と定義する。そして、このq軸に対して電気的、磁気的に直交する径方向に沿った方向をd軸と定義する。
つまり、回転子鉄心4の1極分とは、q軸間の領域(1/8周の周角度領域)をいう。このため、回転子鉄心4は、8極に構成されている。また、本実施形態の回転子鉄心4では、1極のうちの周方向中央がd軸となる。
なお、以下の説明では、d軸を極中心E1と称し、q軸(1/8周の周角度領域の周方向両端)を極端E2と称して説明する。
回転子鉄心4は、電磁鋼板を複数枚積層したり、軟磁性粉を加圧成形したりして形成することが可能である。回転子鉄心4は、透磁率が10以上であることが望ましい。
回転子鉄心4には、1極ごとに、2つの磁石複合体30が設けられている。すなわち、2つの磁石複合体30は、回転子鉄心4に磁石複合体30の形状に対応するように形成された2つの収納孔6をそれぞれ埋めるように配置されている。そして、収納孔6に、例えば接着剤等により磁石複合体30が固定されている。
磁石複合体30は、回転軸線P方向からみて長方形の板状の永久磁石7と、永久磁石7の回転軸線P方向に直交する厚さ方向の一面7aに取り付けられる嵩上体8と、からなる。
なお、以下の説明では、回転軸線P方向からみた永久磁石7の長手方向を単に長手方向と称する。永久磁石7の厚さ方向とは、回転軸線P方向からみて永久磁石7の短手方向をいう。
2つの磁石複合体30は、極中心E1を中心に線対称に配置されている。また、各磁石複合体30の各永久磁石7は、長手方向で極中心E1側の第1端部7bに対し、この第1端部7bとは反対側の第2端部7cが径方向外側に位置するように配置されている。さらに、2つの永久磁石7は、第1端部7bから第2端部7cに向かうに従って漸次極中心E1から離間するように配置されている。さらに、2つの永久磁石7は、回転子鉄心4の外周面4aとは反対側が、嵩上体8が取り付けられる一面7aとなるように配置されている。
このように配置された永久磁石7は、各永久磁石7における回転子鉄心4の外周面4a側の磁束密度が高くなり、回転子鉄心4の表面磁束密度の高調波を低減できる。また、極中心E1に永久磁石7の磁束が集中し易くなる。すなわち、1/8周の周角度領域のそれぞれに配置された2つの永久磁石7は、磁化方向が同じとなる。つまり、例えば、1/8周の周角度領域のそれぞれに配置された2つの永久磁石7は、それぞれ径方向外側の面がN極に着磁されているとする。この場合、周方向で隣り合う別の1/8周の周角度領域に配置された2つの永久磁石7は、それぞれ径方向外側の面がS極に着磁されている。
永久磁石7の一面7aに取り付けられた嵩上体8は、回転子鉄心4と同一の材料により形成されている。例えば、回転子鉄心4が電磁鋼板を積層して形成されている場合、嵩上体8も電磁鋼板を積層して形成される。この場合、嵩上体8における電磁鋼板の積層方向は、回転軸線P方向であってもよいし、永久磁石7の厚さ方向であってもよい。また、回転子鉄心4が軟磁性粉を加圧することにより形成されている場合、嵩上体8も軟磁性粉を加圧することにより形成される。しかしながら、これに限られるものではなく、回転子鉄心4を電磁鋼板で積層し、嵩上体8を、軟磁性粉を加圧して成形してもよい。また、この逆でもよい。
また、回転子鉄心4には、永久磁石7の長手方向両端部7b,7c(第1端部7b、第2端部7c)に接するように、フラックスバリア9,10(第1フラックスバリア9、第2フラックスバリア10)が形成されている。各フラックスバリア9,10は、回転子鉄心4を軸方向に貫通する空洞部である。各フラックスバリア9,10は、永久磁石7の長手方向両端部7b,7cから回転子鉄心4への磁束漏れを抑制する。
第1フラックスバリア9は、永久磁石7の第1端部7bから極中心E1側に向かって延びた後、シャフト3に向かって屈曲延出するように形成されている。2つの第1フラックスバリア9の間には、極中心E1上に位置する第1ブリッジ部40が形成される。第1ブリッジ部40は、回転子鉄心4を構成するものである。
一方、第2フラックスバリア10は、永久磁石7の第2端部7cから回転子鉄心4の外周面4aに向かって延出するように形成されている。第2フラックスバリア10の径方向外側には、回転子鉄心4の外周面4aの一部を構成している第2ブリッジ部41が形成されている。
この他、回転子鉄心4には、極中心E1上の外周面4a寄りに、第3フラックスバリア11が形成されている。また、回転子鉄心4には、極端E2上のシャフト3寄りに、第4フラックスバリア12が形成されている。これらフラックスバリア11,12は、固定子20の鎖交磁束の流れや永久磁石7の磁束の流れを規制する。また、第3フラックスバリア11や第4フラックスバリア12を形成することにより、回転子鉄心4の軽量化を図ることができる。
次に、図2〜図5に基づいて、磁石複合体30についてより詳しく説明する。
まず、永久磁石7について詳述する。
永久磁石7は、いわゆる高いリコイル透磁率をもつ永久磁石である。
ここで、回転子2が回転することによる磁気変化によって、電機子巻線24に誘起電圧(逆起電圧)が生じてしまう。とりわけ回転子2が高速回転すると、電機子巻線24に大きな誘起電圧が生じ、電機子巻線24に電流を供給できずに、それ以上回転子を高速回転させることができなくなるという事象が発生する場合があった。また、永久磁石同期モータを回転させるためには、インバータ等の補機が設けられている。このインバータ等の補機が制御できる電圧(制御電圧)を超える誘起電圧が生じると、急激に回転トルクが減少したり補機が損傷したりする可能性があった。
このため、制御電流(弱め界磁電流)によって回転子の高速回転時の誘起電圧を低減させる技術が提案されている。しかしながら、制御電流は、永久磁石同期モータの出力に直接寄与しないので、この永久磁石同期モータの高速域でのモータ効率を低下させてしまう可能性があった。
そこで、外部からの磁場(以下、外部磁場という)に応答して磁化が容易に変化する高いリコイル透磁率をもつ永久磁石7を使用することが考えられる。このような永久磁石7を使用することにより、回転電機1の低速回転時でのモータ効率を維持しつつ、高速回転時でのモータ効率を向上させることが可能になる。
永久磁石7としては、例えば、Sm−Co系永久磁石が用いられる。Sm−Co系永久磁石としては、例えば、組成式:RFeCuCo100(式中、Rは希土類元素から選ばれる少なくとも1種の元素、MはTi(チタン),Zr(ジルコニウム)及びHf(ハフニウム)から選ばれる少なくとも1種の元素であり、及びはそれぞれ原子%で、10.8≦p≦11.6、25≦q≦40、0.88≦r≦4.5、0.88≦t≦13.5を満たす)で表されるものが挙げられる。上記組成式の原子比は、R、Fe、M,Cu、及びCoの合計を100原子%としたときの原子比であり、焼結体は微量酸素、及び炭素を含む。
上記組成式におけるRは、磁石材料の磁気異方性を高める元素である。元素Rの例として、Y(イットリウム)を含む希土類から選ばれる1つ、又は複数の元素などを用いることができる。例えば、Sm,Ce(セリウム),Nd(ネオジム),Pr(プラセオジム)等を用いることができ、特に、Smを用いることが好ましい。
また、例えば、元素RとしてSmを含む複数の元素を用いる場合、Sm濃度を元素Rとして適用可能な元素全体の50原子%以上とすることにより、磁石材料の性能を高めることができる。なお、元素Rとして適用可能な元素の70原子%以上、さらには90原子%以上をSmとすると、より好ましい。
元素Rとして適用可能な元素の濃度を、例えば10.8原子%以上、12.5原子%以下とすることにより、保磁力を大きくすることが可能となる。元素Rとして適用可能な元素濃度が、10.8原子%未満の場合、多量のα−Feが析出するため、十分な保磁力を得られなくなり、12.5原子%より多い場合は飽和磁化の低下がみられる。元素Rとして適用可能な元素の濃度は、11.0原子%以上11.2原子%以下であることがより好ましい。
上記組成式におけるMは、Feの濃度が高い場合の組成にて、大きな保磁力を発現させるために必要な元素である。元素Mには、例えば、Ti,Zr、及びHfから成る群より選ばれる1つないし複数の元素が用いられる。元素Mの含有量が、4.5原子%より大きい場合、元素Mを過剰に含有する異相が生成しやすくなり、磁気特性の低下を引き起こす。また、元素Mの含有量が0.88原子%未満であると、Fe濃度を高め、磁化を向上させる効果が得られにくくなる。よって、元素Mの含有量rは、1.15原子%以上3.57原子%以下であることが好ましい。より好ましくは、1.49原子%よりも大きく2.24原子%以下であること、さらには1.55原子%以上2.23原子%以下であることがもっとも好ましい。
元素Mは、少なくともZrを含むことが好ましい。特に、元素Mの50原子%以上をZrとすることにより、永久磁石の保磁力を高めることが可能となる。一方、元素Mの中で、Hfは高価なため、Hf使用量は可能な限り少ないことが好ましい。例えば、Hfの含有量は、元素Mの20原子%未満であることが好ましい。
Cu(銅)は、磁石材料において高い保磁力の発現機構に欠かせない元素である。Cuの含有量は、例えば3.5原子%以上13.5原子%以下であることが好ましい。これよりも含有量が多いと、磁化の低下を著しく起こしてしまう。また、これよりも少量であると、良好な磁気特性を得ることが困難となる。Cuの含有量tは、3.9原子%以上9.0原子%以下であることがより好ましく、さらに4.4原子%以上5.7原子%以下であることがより好ましい。
Feは、主として磁化を担う元素である。Feを多量に配合することにより、磁石材料の飽和磁化を高めることができるが、過剰に配合するとα−Feの析出や、相分離により所望の結晶相が得られにくくなり、よって保磁力低下を招くおそれもある。Feの含有量qは、25原子%以上40原子%以下であることが好ましい。Feの含有量qは、28原子%以上36原子%以下であることがより好ましく、もっとも好ましいのは30原子%以上33原子%以下である。
Coは、磁化発現を担うとともに、高い保磁力を発現させる元素である。また、Coを多く配合することで、高いキュリー温度が得られ、耐熱性を高めることができる。Coの配合量が少ないと、先述の効果が低くなるが、過剰に添加すると、相対的にFeの割合が減少し、磁化低下を招くおそれがある。また、Coの20原子%以下を、Ni(ニッケル),V(バナジウム),Cr(クロム),Mn(マンガン),Al(アルミニウム),Si(ケイ素),Ga(ガリウム),Nb(ニオブ),Ta(タンタル),W(タングステン)から成る群より選ばれる1つないし複数の元素で置換することにより、磁石特性である保磁力を高めることが可能となる。
また、永久磁石7は、六方晶系Th2Zn17型結晶相(2−17型結晶相)を有する主相と、主相と主相の境界となる粒界相からなる2次元金属組織を有する。さらに、主相は、2−17型結晶相を有するセル相と、六方晶系のCaCu5型結晶相(1−5型結晶相)を有するCuリッチ相から成る。Cuリッチ相は、ひとつのセル相を包括する形態をとっていることが好ましい。上記構造をセル構造ともいう。また、Cuリッチ相には、セル相を分断するセル壁相も含まれている。
Cuリッチ相は、Cu濃度が周囲と比較し高い相をいう。例えば、Cuリッチ相のCu濃度は、Th2Zn17型結晶相のCu濃度の1.2倍以上であることが好ましい。Cuリッチ相は、例えばTh2Zn17型結晶相におけるc軸を含む断面において、線状又は板状に存在する。Cuリッチ相の構造定義は特になさないが、六方晶系のCaCu5型結晶相(1−5型結晶相)等が一例としてあげられる。また、永久磁石は、相の異なる複数のCuリッチ相を有していてもよい。
Cuリッチ相の磁壁エネルギーは、Th2Zn17型結晶相の磁壁エネルギーよりも高く、この磁壁エネルギーの差が磁壁移動の障壁となる。よって、Cuリッチ相がピニングサイトとして機能することにより、複数のセル相間での磁壁移動の抑制となる。これをピニング効果とも称する。これより、セル相を囲むようにCuリッチ相が形成されることがより好ましくなる。
25原子%以上のFeを含むSm−Co系磁石において、Cuリッチ相のCu濃度は、10原子%以上60原子%以下であることが好ましい。Cuリッチ相でのCu濃度を高くすることで、より良好な磁気特性を得ることが可能となる。Fe濃度が高い組成域では、Cuリッチ相のCu濃度にばらつきが生じてしまう。このため、ピニング効果が得られにくくなり、磁気特性を良好なものに保てなくなる。
ピニングサイトを外れた磁壁の移動にともない磁化反転が生じ、磁化が低下してしまう。外部磁場を印加した際、その磁石の保磁力より低い磁場にて磁壁移動が生じてしまうと、磁化が低下し、磁石特性がおちてしまう。ゆえに、セル構造領域を増やすことにより、磁化の低下抑制を促す。
Th2Zn17型結晶相やCuリッチ相からなるセル構造の観察及びセルの組成分析には、STEM(走査透過型電子顕微鏡:Scanning Transmission Electron Microscope)、STEM−EDX(走査透過型電子顕微鏡−エネルギー分散型X線分光法:STEM−Energy Dispersive X−ray Spectroscop)にて観察を行う。
STEM観察用サンプルの前処理として、まず収束イオンビーム(FIB:Focused Ion Beam)を用いて、粒界相が視野に入るよう加工を施す。なお、上記サンプルは未着磁であることが好ましい。STEM−EDXにて元素濃度測定を行うサンプルの前処理として、サンプルの表面から1mm以上内部を切り出し、測定用サンプルとする。また、磁化容易軸(c軸)に平行な面に対し、倍率100,000倍にて観察を行う。また、Cuと元素Mのマッピング像を同視野にてとる。
Cuマッピング像と元素Mマッピング像を重ねた際、Cu濃度が高い領域がCuリッチ相に相当する。また、Cu濃度及び元素M濃度の両方が高い領域をCuリッチ異相という。
上記セル構造は、保磁力の大きさを決定する主要因であり、かつリコイル透磁率を決める要因のひとつでもある。リコイル透磁率は、減磁曲線の平均的な傾きで、次式にて定義される。
リコイル透磁率μ=残留磁束密度Br/保磁力HcB・・・(1)
ここで、リコイル透磁率が高いとは、印加される外部磁場に応答して磁化が容易に変化することをいう。外部磁場に対して磁化が可逆的に応答する条件として、減磁曲線の変曲点(クニック)を動作点が超えない範囲である事があげられる。動作点とは、磁束密度Bと磁場Hの関数で表され、ある外部磁場に対して磁性材料が応答した際の磁気特性をさす。外部磁場により動作点がクニックを超えた場合、磁化は不可逆的となる。すなわち減磁し、これまでとは異なる減磁曲線をもつことになり、その上を動作点が動くことになる。したがって、高いリコイル透磁率をもつ永久磁石とは、具体的には、以下の通りである。
図2は、縦軸を磁束密度[T]とし、横軸を磁場[kA/m]としたときの磁束密度の変化を示すグラフであり、通常のNd磁石と、高いリコイル透磁率をもつ永久磁石(高μ磁石)とを比較している。
図2に示すように、高いリコイル透磁率をもつ磁石とは、上記クニックが第2象限に現れないような高い保磁力をもち、かつ外部磁場に対する磁化応答性が優れているものが好ましい。すなわち、残留磁化Brが1.16T以上、保磁力Hcjが1500kA/m以上、リコイル透磁率が1.2以上である。さらに、残留磁化Brが1.16T以上、保磁力Hcjが1500kA/m以上、保磁力HcBが700kA/m以上、リコイル透磁率が1.1を超え1.8以下である。なお、リコイル透磁率の設定値についての理由の詳細については後述するが、永久磁石7のリコイル透磁率の上限値が1.8以下であるのは、永久磁石を製造するにあたっての上限に起因するところが大きい。したがって、永久磁石7のリコイル透磁率は1.8以下でなくてもよい。
そして、このように保磁力を維持したまま磁化に応答性をもたせた磁性材が必要となる。保磁力発生には、セル構造の存在が必至であるが、角型のよいままでは、外部磁場にたいする磁化の応答性が損なわれる。そこで、角型をおとすため、粒内異相の存在が重要となる。異相は元素MとCuから成り、そのCu濃度は粒界のこれまで粒界に多く分布していたCuリッチ相が、粒内にある濃度内で分布することで、保磁力を維持したまま角型をおさえる、すなわち磁化の応答性を上げることが可能となる。
粒内異相には、Cuリッチ相、Cu及び元素Mからなる相があげられる。ここでいう粒内異相とは、粒界相に重ならない、又は粒界相端部に接することのない異相をいう。粒内異相の有無確認及び濃度と分布状態は、焼結体のSEM(走査型電子顕微鏡:Scanning Electron Microscope)の観察、SEM−EDX(走査型電子顕微鏡−エネルギー分散型X線分光法:SEM−Energy Dispersive X−ray Spectroscop)での測定によって調べる。
粒内異相の存在をSEMで確認できた場合、その濃度を面積比にて定量化する。例えば1視野におけるSEM像全面に対する異相面積の占有率にて表す。例えば、倍率3000倍のSEM像にて、磁化1.20T、保磁力1800kA/m、リコイル透磁率1.08の焼結体では、異相の面積占有率は0.1%であるのに対し、磁化1.18T、保磁力1700kA/m、リコイル透磁率1.28の焼結体では異相の面積占有率は0.8%であった。また、異なる熱処理条件を施した結果、保磁力が100kA/m以下となった焼結体の異相の面積占有率は、3.0%と非常に大きい。このように磁気特性と異相濃度には相関があり、保磁力や磁化を保ちつつ高いリコイル透磁率を必須特性として加えるためには、粒内異相の存在が重要といえる。
次に、永久磁石7の製造方法について説明する。
永久磁石7は、上記磁気特性を有する合金粉末を加圧成形して成る焼結体により形成されている。
合金粉末は、例えばアーク溶解法や高周波溶解法による溶湯を鋳造し、固まった母合金を粉砕することで調整することができる。合金粉末は、組成が異なる複数の粉末を混ぜ合わせ、組成調整してもよい。また、メカニカルアロイング法、メカニカルグラインディング法、ガスアトマイズ法、置換拡散法などを用いて合金粉末を調整してもよい。ストリップキャスト法を用いた合金薄帯作製では、フレーク状の合金薄帯を作製、その後合金薄帯を粉砕することで合金粉末を調整する。
例えば、周速0.1m/秒以上20m/秒以下で回転する銅製冷却ロールに合金溶湯を傾注、ロール表面から剥離することにより、厚さ1mm以下の薄帯を作製することができる。周速が0.1m/秒未満の場合、薄帯において組成のばらつきが大きくなる。また、周速20m/秒を超える場合、結晶粒が微細化過ぎてしまい、磁気特性が低下する場合がある。このため、冷却ロールの周速は0.3m/秒以上15m/秒以下、さらに好ましくは0.5m/秒以上12m/秒以下である。合金粉末の平均粒径は2μm以上5μm以下であることが好ましく、また粒径が2μm以上10μm以下の粒子が体積割合にて80%以上であることが好ましい。
このような合金粉末又は粉砕前の合金に対して、必要であれば均質化を目的とした熱処理をしてもよい。粉砕にはジェットミルやボールミル等を用い実施される。粉砕は合金の酸化防止のため、乾式では不活性ガス雰囲気下、湿式では有機溶媒中にて行うことが好ましい。
次に上記粉砕粉を、電磁石の中に設置した金型へ合金粉末を充填し、磁場中にて加圧成形する。磁場を印加することにより、結晶軸を配向させた圧粉体を製造する。製造した圧粉体の焼結を行うことにより、焼結体を形成する。
焼結は、例えばArガスなどの不活性ガス雰囲気や真空下で行われる。不活性ガス雰囲気中で焼結した場合、蒸気圧が高いSm等の元素Rの蒸発抑制を促すことができる。これによって、組成のずれが生じにくくなる効果がある。しかしながら、不活性ガス雰囲気中では、異相生成や圧粉体中に存在する空孔へ不活性ガスが残存し、焼きしまらず密度をあげることができない可能性がでてくる。一方、真空下で焼結した場合、異相生成の抑制や焼結体の高密度化はかなうが、蒸気圧の高い元素Rの蒸散量が多くなり、組成ずれが生じ、永久磁石として適切な合金組成制御が困難となる。
また、焼結炉内の水分量や、圧粉体又は合金粉末に付着、混入している水分によって、熱処理にて分解され、酸素分子及び水素分子が生じる。酸素分子は元素Rと結合し、元素Rの酸化物を生成される。元素Rの酸化物は、磁石特性全般を低下させる要因となる。一方、水素分子は、微量混入した炭素と結合し、炭化水素を生成する。この炭化水素が、元素Mと反応し、元素Mの炭化物が生成される。よって、炉内水分量、及び合金粉末や圧粉体に付着、又は含有している水分は可能な限り制御することが重要である。
以上の点に対し、真空下で前処理工程(仮焼結工程)を実施後、Arガス等の不活性ガス雰囲気中で焼結工程(本焼結工程)を行うことが有効である。このような真空下での前処理工程と不活性ガス雰囲気中での本焼結工程とを有する焼結工程を手教することによって、圧粉体に付着、又は含有している水分を減らし、酸化物及び炭化物の生成を低減する。また、蒸気圧の高いSm等の元素Rの蒸発を抑制することができる。また、所圧粉体内に存在する空孔を低減させ焼きしまった高い密度をもつ焼結体がえられる。
25原子%以上のFe濃度を有する磁性粉末(合金粉末)を焼結する場合には、本焼結工程温度に至るまでは、真空下にて維持することが好ましい。本焼結温度に達すると同時に不活性ガス雰囲気へ切り替えることで、焼結中のSm等の元素Rの蒸散を極力抑えることが可能となる。
また、真空下から不活性ガスへ切り替える温度を温度TV−Gとし、本焼結工程の保持温度を温度Tとしたとき、TV−G>T−61℃を満たすことが好ましい。T−61℃以下では、異相が焼結体中に残存し、磁石特性低下を引き起こす。さらに十分焼きしめることができず、高密度化が困難となる。また、TV−G>T−50℃、さらにはTV−G≧T−40℃、さらにはTV−G≧T−30℃を満たすことが好ましい。
真空下での焼結(仮焼結工程)時の真空度は、9×10−2Pa以下であることが好ましい。9×10−2Paを超える場合、元素Rの酸化物が過剰に形成し、磁気特性劣化の要因となる。また、元素Mの炭化物相が過剰に生成されやすくなる。仮焼結工程の真空度は、5×10−2Pa以下とすることがより好ましく、1×10−2Pa以下ではより好ましい。
本焼結工程における保持温度は、1230℃以下であることが好ましい。これは、Fe濃度が高くなると、融点降下が起こるため、焼結時の元素Rの蒸散を最小限にするためである。より好ましくは、1215℃以下、さらに1205℃以下、さらには1195℃以下が好ましい。本焼結工程における保持時間を、30分以上15時間以下とすることにより、高密度な焼結体を得ることが可能となる。保持時間が30分未満の場合、十分に焼きしまらず、焼結体の密度が十分でなくなる。また、保持時間が15時間以上の場合、Smが著しく蒸発してしまうため、良好な磁気特性を得るのが困難となる。保持時間は、1時間以上10時間以下であり、さらには1時間以上4時間以下であることがより好ましい。
次に溶体化処理を行う。溶体化処理は、相分離組織の前駆体となるTbCu7型結晶相(1−7型結晶相)を形成する熱処理である。溶体化処理では、1100℃以上1190℃以下の温度で、30分以上24時間以下の保持時間を要する。溶体化処理の際、保持温度は1100℃未満の場合、及び1190℃以上の場合、溶体化処理後の焼結体のTbCu7型結晶相の割合が小さく、磁気特性が低下する可能性が高くなる。保持温度は、1120℃以上1180℃以下は好ましく、さらには1120℃以上1170℃以下がより好ましい。
また、溶体化処理の保持時間が30分未満の場合、構成相の不均一化が起こり、保磁力が低下する。また、溶体化処理の保持時間が24時間を超える場合、焼結体中の元素Rの蒸発量が多くなり、良好な磁気特性を得ることが困難となる。このため、溶体化処理の保持時間は、1時間以降12時間以下が好ましく、さらには1時間以上8時間以下が好ましい。なお、真空下やArガス等の不活性ガス雰囲気中での溶体化処理を行うことも、粉末中の元素Rの酸化抑制を促すことになる。
先述した焼結工程と溶体化処理との間に、両熱処理の保持温度の中間温度程度にて、一定時間保持する熱処理を行ってもよい。この工程を高質化処理、又は中間熱処理という。高質化処理は、金属組織、特にマクロ組織を制御することを目的とした処理である。高質化処理では、例えば本焼結工程における保持温度より10℃以上の低温、かつ溶体化処理における保持温度より10℃以上の高温で、2時間以上12時間以下の保持時間を有することが好ましい。元素の拡散速度の観点から、溶体化処理だけでは、焼結中に生成した異相を完全に除去するのは不可能である。また、粒成長を確実に十分なものとするには溶体化処理だけでは不十分な可能性がある。そこで、高質化処理をほどこし、異相の除去及び粒成長をより助長することができる。
高質化処理時の保持温度は、例えば1140℃以上1190℃以下であることが好ましい。1140℃未満の場合、及び1190℃を超える場合は、磁気特性が低下する可能性がある。また、高質化処理の保持時間が2時間未満の場合、元素拡散が不十分となり、異相の除去が十分になされず、磁気特性の改善への効果が小さくなる。また、保持時間が12時間を超える場合、元素Rの蒸発量が多くなり、良好な磁気特性を得ることが困難となる。なお、高質化処理における熱処理時間は4時間以上10時間以下であることが好ましく、さらには6時間以上8時間以下であることがより好ましい。また、高質化処理は酸化防止のため、真空下又はArガス等の不活性ガス雰囲気中での処理がより好ましい。
次に焼結体の時効処理を行う。時効処理は、金属組織の制御を行い、磁石の保磁力を高めることを目的に行う処理である。よって、時効処理によって、磁石の金属組織を複数相へ相分離させる。保磁力向上を目的とした場合の時効処理温度は、700℃以上900℃以下まで昇温させ、保持温度にて30分以降80時間以下処理を行う。その後、降温速度を0.2℃/分以上2.0℃/分以下で冷却を行い、400℃以上650℃以下の温度まで徐冷し、到達温度にて30分以上8時間以下で保持する。
高い保磁力を維持し、かつ高いリコイル透磁率を有する金属組織を形成させるためには、上記時効処理温度と異なる熱処理条件を必要とする。例えば、第1保持にて保持温度を900℃以上にし、これまで懸念していた異相の存在を適度に促す。例えば、910℃にて40時間保持すると、これまで粒内にみられなかった異相が生じる。この異相の存在により、角型が低下、高いリコイル透磁率を有する磁石がえられる。930℃以上の保持温度では、保磁力が急激に減少し、良好な磁気特性を有する高いリコイル透磁率磁石の作製は望めない。時効処理の保持温度は900℃以上930℃未満であることが好ましい。また、保持時間は、30分以上80時間以下が好ましい。保持温度が900℃未満では、角型比が高くなり、リコイル透磁率が小さくなってしまう。一方、保持温度が930℃を超えると、保磁力が急激に低減してしまう。
また、時効処理での保持温度へ到達させる際の昇温速度は、5.0℃/分以上15℃/分以下で行う。これは金属組織中の異相濃度、及び分布形態を制御し、磁気特性のばらつきを低減させることで、十分な保磁力とリコイル透磁率を兼ねた磁石を、再現性高く作製するためである。保持温度への昇温速度を15℃/分以上35℃/分以下であることが好ましい。昇温速度は、元素の拡散速度と拡散度に作用するため、形成相の分布へ影響を及ぼす。例えば、昇温速度30℃/分では、ばらつきがほぼなく一様な特性を持った磁石を作製できる。
最初の保持温度から次の保持温度までの徐冷時、冷却速度は0.2℃/分未満の場合、セル壁相の厚さが増し、磁化が減少しやすくなる。また、2.0℃/分を超える場合、セル相とセル壁相とのCu濃度勾配が十分につかず、保磁力の低下が著しくなる。徐冷時の冷却速度は、例えば0.4℃/分以上1.5℃/分以下、さらには0.5℃/分以上1.3℃/分以下であることがより好ましい。また、400℃未満まで冷却する場合、異相が形成されやすくなる。650℃を超える温度まで徐冷する場合、Cuリッチ相でのCu濃度が適当でなくなり、十分な保磁力が得られないことがある。また、第2保持での保持時間が、30分未満、又は8時間を超える場合、異相濃度が過剰となり、十分な磁気特性が得られなくなる可能性がある。
以上の工程により永久磁石を製造することができる。上記製造法では、適度な保磁力を維持したまま、高いリコイル透磁率もかね、外部磁場に対する応答性の高い永久磁石を製造することができる。
ここで、高いリコイル透磁率をもつ永久磁石7は、Nd磁石等と比較して着磁しにくい。このため、回転子鉄心4に永久磁石7を埋め込む前に予め永久磁石7に着磁を行い、この後、回転子鉄心4に永久磁石7を埋め込む。
また、永久磁石7は、磁化と反対方向の磁場(以下、反磁場)が常に発生する。ここで、反磁場をHdとし、反磁場係数をNとしたとき、反磁場Hdは、
Hd=−NJ ・・・(2)
で表せられる。なお、反磁場係数とは、磁石の形状に由来する数値である。一般的に、反磁場係数Nを用いず、パーミアンス係数:Pcを以下の式で定義し、磁場解析等を行う。
Pc=−Bd/Hd ・・・(3)
ここで、磁化方向と垂直な断面積が大きいほど、又は磁化方向に厚みが薄いほど反磁場Hdが大きくなるため、パーミアンス係数Pcは小さくなる。とりわけ、高いリコイル透磁率をもつ永久磁石は、外部磁場への応答性には優れている一方、形状パーミアンスの影響による反磁界の影響を受け、自己減磁してしまう。
図3は、縦軸を減磁率(Bx/Br)とし、横軸をパーミアンス係数としたときのパーミアンス係数に対する減磁率の変化を、高いリコイル透磁率をもつ永久磁石(高リコイル透磁率磁石)とNd磁石とで比較したグラフである。
図3に示すように、Nd磁石は、パーミアンス係数によって減磁率が殆ど変化しないことが確認できる。これに対し、高いリコイル透磁率をもつ永久磁石は、パーミアンス係数によって減磁率が大きく変化する。とりわけ、パーミアンス係数が2よりも小さい場合、減磁率が急激に小さくなることが確認できる。
上記のようなことより、高いリコイル透磁率をもつ永久磁石7においては、形状パーミアンスによる自己減磁の影響をできるだけ低減、抑制する必要がある。減磁抑制にて、入力電流を増加することなく。低速運転時の回転子鉄心内の磁石磁束によるトルクを確保できる。形状パーミアンス係数を大きくするため、磁化方向の厚み(以下、磁石厚)を厚くするために、永久磁石7の一面7aに嵩上体8を取り付けて磁石複合体30としている。そして、磁石複合体30に着磁を行う。これにより、永久磁石7は、磁石複合体30となって疑似的に形状パーミアンス係数が大きくなる。そして、永久磁石7の反磁界の影響が小さくなり、自己減磁による磁束量低減が抑制される。
図4、図5に基づいて、実施例と比較例とを挙げながら、磁石複合体30の形状について具体的に説明する。
図4は、磁石複合体30と、比較例との効果の違いについての説明図であって、(a)は、磁石複合体30の第1実施例を示し、(b)は、磁石複合体30の第2実施例を示し、(c)は、第1比較例を示し、(d)は、第2比較例を示す。図5は、図4の各実施例と各比較例の測定結果を示す表である。なお、以下の説明で、厚さ方向とは、図1に示す回転軸線P方向からみた永久磁石7の厚さ方向(短手方向)と一致する。また、永久磁石7の磁化方向は、厚さ方向(短手方向)とする。
ここで、図4(a)、図5に示すように、磁石複合体30の第1実施例は、永久磁石7の厚さT1を5mmとし、嵩上体8の厚さを6mmとしている。また、図4(b)、図5に示すように、磁石複合体30の第2実施例は、永久磁石7の厚さT1を5mmとし、嵩上体8の厚さを2.5mmとしている。
これに対し、図4(c)、図5に示すように、第1比較例は、永久磁石7のみで嵩上体8が取り付けられておらず、永久磁石7の厚さT1を11mmとしている。また、図4(d)、図5に示すように、第2比較例は、永久磁石7のみで嵩上体8が取り付けられておらず、永久磁石7の厚さT1を5mmとしている。
上記のような構成のもと、第1実施例、第2実施例、第1比較例、及び第2比較例の磁束量:Φを測定した。測定方法は、磁石の容易面にガウスメータのプローブセンサを、磁石容易面(磁化方向に垂直な面)を正方に9等分した各箇所にあて、測定を行った。
測定結果は、図5に示すように、比較例1では、Φ=140[Gauss]という結果となり、比較2ではΦ=110[Gauss]という結果となった。つまり、磁石厚の小さい方が、より反磁界の影響を受け減磁することが確認できた。
これに対し、実施例1では、比較例2と同等の大きさの磁石でありながら、その磁束量:Φは比較例1と同等の結果となった。また、実施例2でも、比較例2と同等の大きさの磁石でありながら、比較例2よりも磁束量が多い結果となった。すなわち、嵩上体8を取り付けることにより、反磁界の影響を抑制し、磁束量が保たれることが確認できた。
次に、回転電機1の動作について説明する。
固定子20の電機子巻線24に電流を供給すると、鎖交磁束が形成される。この鎖交磁束と回転子2の永久磁石7による磁束との間で磁気的な吸引力や反発力が生じ、回転子2が回転する。
また、回転子2には、永久磁石7の長手方向に沿ってq軸磁路が形成される。一方、d軸は、永久磁石7や第3フラックスバリア11、第4フラックスバリア12により、殆ど磁路が形成されない。このため、回転子鉄心4に固定子20の鎖交磁束が流れやすい方向と流れにくい方向とが形成される。そして、これにより発生するリラクタンストルクが、回転子2の回転に寄与される。
このように、回転子2は、永久磁石7による磁束と、リラクタンストルクにより、効率よく回転する。そして、回転子2の回転トルクを向上させることができる。
また、回転子鉄心4に埋め込まれた嵩上体8は、回転子鉄心4と同一の材料に形成されている。このため、嵩上体8が永久磁石7の磁束の磁路や固定子20の鎖交磁束の磁路を妨げることがない。しかも、回転子鉄心4や嵩上体8の透磁率が10以上であるので、固定子20の鎖交磁束が通りやすく、回転トルクを向上させやすい。
図6は、縦軸を回転子2の回転トルクとし、横軸を回転子2の回転速度とした場合の回転トルクの変化を示すグラフであって、永久磁石7に高いリコイル透磁率をもつ永久磁石(本実施形態)を使用した場合と、Nd磁石等の従来の永久磁石(従来)を使用した場合とで比較している。
図6に示すように、本実施形態の回転電機1によれば、従来と比較して、低速回転時及び高速回転時のいずれの場合も回転電機1の回転トルクを向上できる。
このように、上述の実施形態では、回転子鉄心4に収納孔6を形成し、この収納孔6を埋めるように、磁石複合体30を設けている。磁石複合体30は、永久磁石7と、永久磁石7の一面7a、つまり、永久磁石7の磁化方向の一面7aに取り付けられる嵩上体8と、からなる。このため、永久磁石7を着磁する際、磁石複合体30に着磁を行うことにより、疑似的に形状パーミアンス係数を大きくできる。この結果、永久磁石7の反磁界の影響が小さくなり、自己減磁による磁束量低減が抑制され、永久磁石7の一面7aに嵩上体8を取り付けない場合と比較して永久磁石7の磁束量を増大させることができる。よって、回転電機1の回転トルクを向上できる。
また、嵩上体8は、回転子鉄心4と同一の材料により形成されている。このため、嵩上体8が永久磁石7の磁束の磁路や固定子20の鎖交磁束の磁路を妨げてしまうことを防止できる。よって、回転電機1の回転トルクを安定して向上できる。
さらに、回転子鉄心4や嵩上体8の透磁率が10以上であるので、固定子20の鎖交磁束が通りやすく、回転トルクをさらに向上できる。
また、永久磁石7として、リコイル透磁率が1.1を超える高いリコイル透磁率をもつ永久磁石を用いている。このような永久磁石7に、十分な磁束量を得ることができるというとりわけ顕著な効果を奏する。さらに、従来と比較して、低速回転時及び高速回転時のいずれの場合も回転電機1の回転トルクを向上できる。
また、磁石複合体30は、パーミアンス係数が2.0以上である。このため、図3に示すように、永久磁石7の減磁率が著しく低下してしまうことを防止できる。
なお、上述の実施形態では、嵩上体8として、回転子鉄心4と同一の材料を用いた場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、嵩上体8としてさまざまな材料を用いることが可能である。例えば、嵩上体8として樹脂等を用いても形状パーミアンス係数を大きくすることは可能である。しかしながら、嵩上体8として樹脂を用いた場合、永久磁石7の磁束の磁路や固定子20の鎖交磁束の磁路を妨げてしまう可能があるので、回転子鉄心4の磁路の最適設計が必要になる。
また、上述の実施形態では、回転子鉄心4に磁石複合体30を埋め込む前に、予め磁石複合体30に着磁を行い、この後、回転子鉄心4に磁石複合体30を埋め込む場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、回転子鉄心4に磁石複合体30を埋め込んだ後、磁石複合体30に着磁を行ってもよい。この場合であっても、回転子鉄心4と磁石複合体30との間に界面が形成されることになるので、永久磁石7を単体で着磁させる場合と比較して永久磁石7の磁束量を増大させることができる。
また、上述の実施形態では、磁石複合体30は、永久磁石7の回転子鉄心4の外周面4aとは反対側が、嵩上体8が取り付けられる一面7aとなるように配置されている場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、永久磁石7の嵩上体8が取り付けられる一面7aが、回転子鉄心4の外周面4a側を向くように、回転子鉄心4内に磁石複合体30を配置してもよい。
また、上述の実施形態では、永久磁石7の短手方向を厚さ方向とし、この厚さ方向が磁化方向である場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、永久磁石7の長手方向を磁化方向としてもよい。この場合、長手方向の両端部7a,7bのいずれかに、嵩上体8を設ける。
また、上述の実施形態における回転電機1は、例えば、以下の発電機100に搭載されていてもよい。
図7は、発電機100の概略構成図である。
すなわち、図7に示すように、発電機100は、回転電機1を備えている。回転子2は、発電機100の一端に設けられたタービン101とシャフト102とを介して接続されている。このシャフト102が、回転子2のシャフト3に接続されている。タービン101は、例えば外部から供給される流体により回転する。
なお、流体により回転するタービン101に代えて、自動車の回生エネルギー等の動的な回転を伝達することによって、シャフト102を回転させることも可能である。
また、シャフト102は、回転子2に対してタービン101とは反対側に配置された整流子(不図示)と接触している。そして、回転子2の回転により発生した起電力が発電機100の出力として相分離母線、及び主変圧器(不図示)を介して、系統電圧に昇圧されて送電される。
発電機100は、通常の発電機、及び可変磁束発電機のいずれであってもよい。なお、回転子2には、タービン101からの静電気や発電に伴う軸電流による帯電が発生する。このため、発電機100は、回転子2の帯電を放電させるためのブラシ103を備えている。
また、上述の実施形態における回転電機1は、例えば、以下の鉄道車両(車両の一例)200に搭載されていてもよい。
図8は、鉄道交通に利用される鉄道車両200の概略構成図である。
図8に示すように、鉄道車両200には、回転電機1が搭載されている。回転電機1は、例えば、架線から供給される電力や、鉄道車両200に搭載された二次電池から供給される電力を利用することによって駆動力を出力する電動機(モータ)として利用されてもよい。また、回転電機1は、例えば、運動エネルギーを電力に変換して、鉄道車両200内の各種負荷に電力を供給する発電機(ジェネレータ)として利用されてもよい。このように、高効率な回転電機1を利用することにより、省エネルギーで鉄道車両を走行させることができる。
また、上述の実施形態における回転電機1は、例えば、以下の自動車(車両の他の例)300に搭載されていてもよい。
図9は、ハイブリッド自動車や電気自動車などの自動車300の概略構成図である。
図9に示すように、自動車300に回転電機1が搭載された場合、回転電機1は、自動車300の駆動力を出力する電動機、又は自動車300の走行時の運動エネルギーを電力に変換する発電機としても利用されてよい。
また、上述の回転電機1は、例えば、産業機器(産業用モータ)、空調機器(エアコンディショナ・給湯器コンプレッサモータ)、風力発電機、又はエレベータ(巻上機)に搭載されていてもよい。
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、回転子鉄心4に収納孔6を形成し、この収納孔6を埋めるように、磁石複合体30を設けている。磁石複合体30は、永久磁石7と、永久磁石7の一面7aに取り付けられる嵩上体8と、からなる。このため、永久磁石7を着磁する際、磁石複合体30に着磁を行うことにより、疑似的に形状パーミアンス係数を大きくできる。この結果、永久磁石7の反磁界の影響が小さくなり、自己減磁による磁束量低減が抑制され、永久磁石7の一面7aに嵩上体8を取り付けない場合と比較して永久磁石7の磁束量を増大させることができる。よって、回転電機1の回転トルクを向上できる。
また、嵩上体8は、回転子鉄心4と同一の材料により形成されている。このため、嵩上体8が永久磁石7の磁束の磁路や固定子20の鎖交磁束の磁路を妨げてしまうことを防止できる。よって、回転電機1の回転トルクを安定して向上できる。
さらに、回転子鉄心4や嵩上体8の透磁率が10以上であるので、固定子20の鎖交磁束が通りやすく、回転トルクをさらに向上できる。
また、永久磁石7として、リコイル透磁率が1.1を超える高いリコイル透磁率をもつ永久磁石を用いている。このような永久磁石7に、十分な磁束量を得ることができるというとりわけ顕著な効果を奏する。さらに、従来と比較して、低速回転時及び高速回転時のいずれの場合も回転電機1の回転トルクを向上できる。
また、磁石複合体30は、パーミアンス係数が2.0以上である。このため、図3に示すように、永久磁石7の減磁率が著しく低下してしまうことを防止できる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
1…回転電機、2…回転子、3…シャフト、4…回転子鉄心、6…収納孔、7…永久磁石、8…嵩上体、20…固定子、24…電機子巻線、30…磁石複合体、100…発電機、200…鉄道車両(車両)、300…自動車(車両)、P…回転軸線

Claims (7)

  1. 回転軸線回りに回転するシャフトと、
    前記シャフトに固定される回転子鉄心と、
    前記回転子鉄心に形成された収納孔と、
    前記収納孔に収納される磁石複合体と、
    を備え、
    前記磁石複合体は、
    板状の永久磁石と、
    前記永久磁石の前記回転軸線方向に直交する方向で、かつ磁化方向の一面に取り付けられる嵩上体と、
    からなる
    回転子。
  2. 前記嵩上体は、前記回転子鉄心と同一の材料により形成されている
    請求項1に記載の回転子。
  3. 前記回転子鉄心、及び前記嵩上体は、透磁率が10以上である
    請求項2に記載の回転子。
  4. 前記永久磁石は、リコイル透磁率が1.1を超える
    請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の回転子。
  5. 前記磁石複合体は、パーミアンス係数が2.0以上である
    請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の回転子。
  6. 請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の回転子と、
    電機子巻線が巻回され、前記回転子に回転力を付与する固定子と、
    を備えた回転電機。
  7. 請求項6に記載の回転電機を備えた
    車両。
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