JP2019089146A - ダイヤモンド被覆切削工具 - Google Patents
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Abstract
【課題】CFRP材等の難削材に対して、長期にわたって十分な耐久性を有しているダイヤモンド被覆工具を提供する。【解決手段】WC基超硬合金工具基体表面に、総厚3〜25μmのダイヤモンド皮膜が被覆され、前記ダイヤモンド皮膜の工具基体表面直上からその法線方向に1.5〜2.5μmまでの範囲の下部領域において、ダイヤモンド皮膜を形成する結晶粒径が0.1〜1.0μmであり、当該領域の前記法線方向におけるラマン分光測定により求められたsp3結合/sp2結合のピーク強度比率が1.8〜5.0であり、かつsp3結合由来のラマンピークの半値幅は8.0〜13.0cm−1であって、B含有量が0.05〜0.50原子%であることを特徴とするダイヤモンド被覆切削工具。【選択図】図1
Description
この発明は、CFRP材等の難削材の切削加工において、長期にわたって優れた耐摩耗性を発揮するダイヤモンド被覆切削工具に関するものである。
近年、航空機や自動車の構造材として、炭素繊維を束ねてエポキシ系の樹脂で固めたCFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)材やCFRP/金属スタック材(以下、CFRP材と総称する)が構造材に占める割合が大きくなっている。CFRP材の切削加工には、主にダイヤモンド被覆切削工具が使用されており、加工時間の短縮やコストの低減のための更なる寿命向上が求められている。
ダイヤモンド被覆切削工具を用いて、CFRP材のような難削材を切削加工する際、ダイヤモンド皮膜の摩耗はアブレシブ摩耗が支配的である。このため、長期の使用により、脱粒に起因する摩耗面上の凹凸が大きくなり、これを起点としたチッピング等の異常損傷の発生、さらには、基体の露出が発生し、工具寿命をもたらす要因の一つとなったり、被削材の加工面品質を低下させてしまう虞がある。そこで、ダイヤモンド皮膜の耐摩耗性の向上のために、従来から多くの提案がなされている。
例えば、特許文献1には、切削対象として、鋳鉄や炭素鋼が例示された、加工部の表面に0.05〜2原子%のボロン(B)が添加されたダイヤモンド皮膜が設けられている切削工具が記載されており、B添加によりB酸化物が形成され、ダイヤモンド皮膜の耐酸化性、潤滑性が改善され耐久性が向上すると説明されている。
また、例えば、特許文献2には、Bが添加されたダイヤモンド皮膜が設けられている工具が記載されており、B添加による導電性付与により皮膜の電気加工が可能であることや、当該工具は耐欠損性に優れ、ドライプレス加工用の絞りダイス、引抜きダイス、打抜きダイス・ポンチ等のプレス金型、切削、旋削、彫刻などの除去加工用各種工具として好適であると説明されている。
さらに、例えば、特許文献3には、加工部の表面にBが添加されたダイヤモンド皮膜がコーティングされているとともに、当該ダイヤモンド皮膜の上には金属間化合物からなる表皮膜が設けられている硬質皮膜加工工具が記載されており、Bがダイヤモンド皮膜に添加されているために該表皮膜のダイヤモンド皮膜への付着強度が向上し、鉄系の材料を含む複合材料や切削点が高温となるTi等の耐熱合金に対する切削加工においても、優れた耐久性が得られると説明されている。
上記各特許文献に記載された工具では、これら文献に記載されたとおりダイヤモンド皮膜にBを添加したことによって、ダイヤモンド皮膜の耐久性が改善されているが、これら工具の切削対象は、鋼、鋳鉄、Ti合金にすぎず、近年、航空機や自動車の構造材として使用割合が高まっているCFRP材等の難削材に対して十分な耐久性を有していない。
そこで、本発明が解決しようとする課題、すなわち、本発明の目的は、CFRP材等の難削材に対して、長期にわたって十分な耐久性を有するダイヤモンド被覆工具を提供することにある。
上記課題を解決すべく本発明者は鋭意検討を行ったところ、ダイヤモンド皮膜中にBを添加しその膜中B量のみを調整しても当該課題は解決できないことが判明し、CFRP材等の難削材を切削したときに工具寿命に至る現象、すなわち、CFRP材等の難削材の切削において摩耗の進行過程を詳細に解析した結果、ダイヤモンド皮膜の基体直上部分における結晶粒径、sp3結合成分の比率、結晶性、および、膜中B量を所定値に制御すれば、工具寿命を飛躍的に延ばすことができるとの新規な知見を得た。
すなわち、本発明は、
「(1)WC基超硬合金工具基体表面に、総厚3〜25μmのダイヤモンド皮膜が被覆されたダイヤモンド被覆切削工具であって、
前記ダイヤモンド皮膜の工具基体表面直上からその法線方向に1.5〜2.5μmまでの範囲の下部領域において、
ダイヤモンド皮膜を形成する結晶粒径が0.1〜1.0μmであり、当該領域の前記法線方向におけるラマン分光測定により求められたsp3結合/sp2結合のピーク強度比率が1.8〜5.0であり、かつsp3結合由来のラマンピークの半値幅は8.0〜13.0cm−1であって、B含有量が0.05〜0.50原子%であること、
を特徴とするダイヤモンド被覆切削工具。
(2)前記ダイヤモンド皮膜の総厚が5〜15μmであることを特徴とする(1)に記載のダイヤモンド被覆切削工具。
(3)前記下部領域の直上のダイヤモンド皮膜が、単層または2層以上であることを特徴とする(1)または(2)に記載のダイヤモンド被覆切削工具。」
である。
「(1)WC基超硬合金工具基体表面に、総厚3〜25μmのダイヤモンド皮膜が被覆されたダイヤモンド被覆切削工具であって、
前記ダイヤモンド皮膜の工具基体表面直上からその法線方向に1.5〜2.5μmまでの範囲の下部領域において、
ダイヤモンド皮膜を形成する結晶粒径が0.1〜1.0μmであり、当該領域の前記法線方向におけるラマン分光測定により求められたsp3結合/sp2結合のピーク強度比率が1.8〜5.0であり、かつsp3結合由来のラマンピークの半値幅は8.0〜13.0cm−1であって、B含有量が0.05〜0.50原子%であること、
を特徴とするダイヤモンド被覆切削工具。
(2)前記ダイヤモンド皮膜の総厚が5〜15μmであることを特徴とする(1)に記載のダイヤモンド被覆切削工具。
(3)前記下部領域の直上のダイヤモンド皮膜が、単層または2層以上であることを特徴とする(1)または(2)に記載のダイヤモンド被覆切削工具。」
である。
本発明のダイヤモンド被覆切削工具は、ダイヤモンド皮膜に関し、工具基体表面直上からその法線方向に1.5〜2.5μmの範囲の下部領域おいて、sp3結合/sp2結合のピーク強度比率、sp3結合由来のラマンピークの半値幅で示される適切な応力と結晶性が与えられることにより、CFRP材等の難削材の切削加工において工具寿命を延ばすことができるという顕著な効果を奏する。
以下、本発明で規定する事項の最適な範囲の説明を含め、本発明を詳細に説明する。
・ ダイヤモンド皮膜の総厚
本発明においてダイヤモンド皮膜の総厚を前記下部領域とその直上部分(以下、上部領域という)との厚さの和とし、3〜25μmとする。下限値(3μm)は、後述する下部領域の厚さとして1.5〜2.5μmが必要であることに加え、CFRP材等の難削材の切削加工において満足する寿命を得るために必要な下限である。一方、上限値(25μm)は、工具刃先の鋭利さを確保して、加工精度を得てバリや層間剥離を防ぎ、加工面品位を低下させないための上限である。この下限値、上限値を規定した目的がより確実に達成されるために、このダイヤモンド皮膜の総厚は、5〜15μmとすることが望ましい。
ここで、ダイヤモンド皮膜の総厚は、工具基体に対して法線方向の断面(縦断面)の厚さであって、例えば、走査型電子顕微鏡によって、50μm×50μmに観察範囲を設定して、3視野観察し、各視野に任意で5点の観察点を設けて、各点における厚さを求めそれらの平均値を算出した値である。
本発明においてダイヤモンド皮膜の総厚を前記下部領域とその直上部分(以下、上部領域という)との厚さの和とし、3〜25μmとする。下限値(3μm)は、後述する下部領域の厚さとして1.5〜2.5μmが必要であることに加え、CFRP材等の難削材の切削加工において満足する寿命を得るために必要な下限である。一方、上限値(25μm)は、工具刃先の鋭利さを確保して、加工精度を得てバリや層間剥離を防ぎ、加工面品位を低下させないための上限である。この下限値、上限値を規定した目的がより確実に達成されるために、このダイヤモンド皮膜の総厚は、5〜15μmとすることが望ましい。
ここで、ダイヤモンド皮膜の総厚は、工具基体に対して法線方向の断面(縦断面)の厚さであって、例えば、走査型電子顕微鏡によって、50μm×50μmに観察範囲を設定して、3視野観察し、各視野に任意で5点の観察点を設けて、各点における厚さを求めそれらの平均値を算出した値である。
2.ダイヤモンド皮膜の下部領域
ダイヤモンド皮膜の下部領域は、工具基体表面直上からその法線方向に1.5〜2.5μmの範囲である。1.5μm未満であると、sp3結合量が著しく減少するため、下部領域の耐摩耗性と密着性が十分に発揮されない虞があるためである。一方、2.5μmを超えると、結晶粒が大きくなりすぎて、脱粒が支配的になるため、加工精度が得られずバリや層間剥離が生じ、加工面品位を低下させる虞があるためである。
ダイヤモンド皮膜の下部領域は、工具基体表面直上からその法線方向に1.5〜2.5μmの範囲である。1.5μm未満であると、sp3結合量が著しく減少するため、下部領域の耐摩耗性と密着性が十分に発揮されない虞があるためである。一方、2.5μmを超えると、結晶粒が大きくなりすぎて、脱粒が支配的になるため、加工精度が得られずバリや層間剥離が生じ、加工面品位を低下させる虞があるためである。
3.ダイヤモンド皮膜の下部領域の結晶粒径
下部領域におけるダイヤモンド皮膜の結晶粒径は、0.1〜1.0μmである。0.1μm未満であると、sp2結合量が多くなりすぎて、耐摩耗性が低下してしまう虞があるためである。一方、1.0μmを超えると、結晶粒が大きくなりすぎて、この結晶粒を起点としてチッピングが発生しやすくなる虞があるためである。
下部領域におけるダイヤモンド皮膜の結晶粒径は、0.1〜1.0μmである。0.1μm未満であると、sp2結合量が多くなりすぎて、耐摩耗性が低下してしまう虞があるためである。一方、1.0μmを超えると、結晶粒が大きくなりすぎて、この結晶粒を起点としてチッピングが発生しやすくなる虞があるためである。
ここで、結晶粒径は、以下のように測定される。すなわち、ダイヤモンド皮膜の下部領域において、工具基体表面に平行な15μm×15μmの領域を集束イオンビーム法により加工し、加工面を透過型電子顕微鏡により観察し、基体表面と平行な方向に5μmの線分を任意で5本画定し、それぞれの線分を横切る結晶粒の数で除した平均値とした。
4.ダイヤモンド皮膜の下部領域において、工具基体表面に対する法線方向におけるラマン分光測定により求められたsp3結合/sp2結合のピーク強度比率
ダイヤモンド皮膜の下部領域において、工具基体表面に対する法線方向におけるラマン分光測定により求められたsp3結合/sp2結合のピーク強度比率は、1.8〜5.0である。1.8未満であると、下部領域におけるsp2結合量が多くなりすぎて、ダイヤモンド皮膜と工具基体との密着力を低下させる虞があるためである。一方、5.0を超えると、下部領域におけるsp3結合成分が多くなりすぎて、工具基体界面に過度な圧縮応力が働き、ダイヤモンド皮膜が工具基体界面から剥離しやすくなるためである。そして、sp3結合/sp2結合のピーク強度比率は、2.1〜4.7が望ましい範囲である。
ダイヤモンド皮膜の下部領域において、工具基体表面に対する法線方向におけるラマン分光測定により求められたsp3結合/sp2結合のピーク強度比率は、1.8〜5.0である。1.8未満であると、下部領域におけるsp2結合量が多くなりすぎて、ダイヤモンド皮膜と工具基体との密着力を低下させる虞があるためである。一方、5.0を超えると、下部領域におけるsp3結合成分が多くなりすぎて、工具基体界面に過度な圧縮応力が働き、ダイヤモンド皮膜が工具基体界面から剥離しやすくなるためである。そして、sp3結合/sp2結合のピーク強度比率は、2.1〜4.7が望ましい範囲である。
ここで、sp3結合/sp2結合のピーク強度比率は、ラマン分光測定によって求められる。測定に使用した光源は波長532nmのレーザー光である。得られたラマンスペクトルを波形分離し、波形分離後の1332cm−1付近にみられるsp3結合のピーク強度と1580cm−1付近にみられるsp2結合のピーク強度を測定し、sp3結合/sp2結合のピーク強度比率を算出する。
5.ダイヤモンド皮膜の下部領域のsp3結合由来のラマンピークの半値幅
sp3結合由来のラマンピークの半値幅は、8.0〜13.0cm−1とする。8.0cm−1未満であると、下部領域のダイヤモンド皮膜の結晶性が高いため、ダイヤモンド皮膜に過大な圧縮応力が作用し、ダイヤモンド皮膜が工具基体界面から剥離しやすくなるためである。一方、13.0cm−1を超えると、下部領域のダイヤモンド皮膜の結晶性が低く、ダイヤモンド皮膜の耐摩耗性が低下するためである。そして、sp3結合由来のラマンピークの半値幅は9.0〜12.0cm−1が望ましい範囲である。
sp3結合由来のラマンピークの半値幅は、8.0〜13.0cm−1とする。8.0cm−1未満であると、下部領域のダイヤモンド皮膜の結晶性が高いため、ダイヤモンド皮膜に過大な圧縮応力が作用し、ダイヤモンド皮膜が工具基体界面から剥離しやすくなるためである。一方、13.0cm−1を超えると、下部領域のダイヤモンド皮膜の結晶性が低く、ダイヤモンド皮膜の耐摩耗性が低下するためである。そして、sp3結合由来のラマンピークの半値幅は9.0〜12.0cm−1が望ましい範囲である。
6.ダイヤモンド皮膜の下部領域の中のB量
下部領域のダイヤモンド皮膜中のB量は、0.05〜0.50原子%である。0.05原子%未満であると、下部領域のダイヤモンド皮膜における圧縮応力の緩和効果が不十分なためダイヤモンド皮膜が工具基体界面から剥離しやすくなるためである。一方、0.50原子%を超えると、下部領域のダイヤモンド皮膜の結晶性が低くなり、ダイヤモンド皮膜の耐摩耗性が低下するためである。そして、下部領域のダイヤモンド皮膜中のB量は、0.10〜0.40原子%が望ましい範囲である。なお、膜中に添加されたB量は、飛行時間型二次イオン質量分析法等により求めることができる。
下部領域のダイヤモンド皮膜中のB量は、0.05〜0.50原子%である。0.05原子%未満であると、下部領域のダイヤモンド皮膜における圧縮応力の緩和効果が不十分なためダイヤモンド皮膜が工具基体界面から剥離しやすくなるためである。一方、0.50原子%を超えると、下部領域のダイヤモンド皮膜の結晶性が低くなり、ダイヤモンド皮膜の耐摩耗性が低下するためである。そして、下部領域のダイヤモンド皮膜中のB量は、0.10〜0.40原子%が望ましい範囲である。なお、膜中に添加されたB量は、飛行時間型二次イオン質量分析法等により求めることができる。
7.下部領域直上(上部領域)のダイヤモンド皮膜
ダイヤモンド皮膜の上部領域は、CFRP材等の難削材と直接接触するものであり、公知のダイヤモンド皮膜であれば特に制約がない。例えば、上層部としては、Bはドープされていてもいなくてもよいし、柱状晶(単層の結晶層、または、結晶層ということがある)のみからなっていても、結晶粒の結晶成長方向の長さが所定の寸法以下である微結晶のみの積層構造、該柱状晶と該微結晶とからなる積層構造をしていてもよい。
具体的には、Bを含有しないまたはB含有量1.00原子%以下の柱状晶のみからなるもの、Bが1.00原子%以下添加され、縦断面の結晶粒径または該縦断面方向の結晶粒子の幅が0.5〜3.0μmであって、各層が10〜200nmの成長方向長さの微結晶のみからなるもの、さらに、Bがそれぞれ1.00原子%以下添加された3.0μm以下の成長方向長さを有する柱状晶と30〜400nmの成長方向長さの微結晶とからなる単位層を積層させたものが例示できる。
ダイヤモンド皮膜の上部領域は、CFRP材等の難削材と直接接触するものであり、公知のダイヤモンド皮膜であれば特に制約がない。例えば、上層部としては、Bはドープされていてもいなくてもよいし、柱状晶(単層の結晶層、または、結晶層ということがある)のみからなっていても、結晶粒の結晶成長方向の長さが所定の寸法以下である微結晶のみの積層構造、該柱状晶と該微結晶とからなる積層構造をしていてもよい。
具体的には、Bを含有しないまたはB含有量1.00原子%以下の柱状晶のみからなるもの、Bが1.00原子%以下添加され、縦断面の結晶粒径または該縦断面方向の結晶粒子の幅が0.5〜3.0μmであって、各層が10〜200nmの成長方向長さの微結晶のみからなるもの、さらに、Bがそれぞれ1.00原子%以下添加された3.0μm以下の成長方向長さを有する柱状晶と30〜400nmの成長方向長さの微結晶とからなる単位層を積層させたものが例示できる。
7.ダイヤモンド皮膜の製造方法
本発明のダイヤモンド被覆切削工具におけるダイヤモンド皮膜の製造は、熱フィラメントCVD法を用いることが望ましい。しかし、一般に広く知られている成膜法である高周波プラズマ法やマイクロ波プラズマ法等の合成法を用いても製造可能である。
本発明のダイヤモンド被覆切削工具におけるダイヤモンド皮膜の製造は、熱フィラメントCVD法を用いることが望ましい。しかし、一般に広く知られている成膜法である高周波プラズマ法やマイクロ波プラズマ法等の合成法を用いても製造可能である。
次に、実施例について説明する。
ここでは、本発明に係るダイヤモンド被覆切削工具の具体例として、ダイヤモンド被覆ドリルについて述べるが、本発明はこれに限られるものではなく、ダイヤモンド被覆エンドミル、ダイヤモンド被覆インサート等のダイヤモンド切削工具に適用できることは言うまでもない。
ここでは、本発明に係るダイヤモンド被覆切削工具の具体例として、ダイヤモンド被覆ドリルについて述べるが、本発明はこれに限られるものではなく、ダイヤモンド被覆エンドミル、ダイヤモンド被覆インサート等のダイヤモンド切削工具に適用できることは言うまでもない。
(a)工具基体の製造工程
原料粉末として、0.5〜0.9μmの範囲内の所定の平均粒径を有するWC粉末、Co粉末、TaC粉末、NbC粉末、Cr3C2粉末を、表1に示される割合に配合し、さらにバインダーとしてパラフィンと溶剤としてトルエン、またはキシレン、またはメシチレン、またはテトラリン、またはデカリンを加えてアセトン中で24時間ボールミル混合し、減圧乾燥した。その後、いずれも押出プレス成形し、直径が10mm、長さが150mmの丸棒圧粉体とし、これらの丸棒圧粉体を、1Paの真空雰囲気中、1380〜1500℃の温度で1〜2時間保持するという焼結条件で焼結して焼結体を得た。その後、前記焼結体を研磨加工することにより、WC基超硬合金焼結体を製造した。
次いで、前記WC基超硬合金焼結体を、溝形成部の外径寸法が7mmとなるように研削加工することにより、WC超硬合金製ドリル工具基体(以下、単に「ドリル基体」または「基体」という)A〜Bを製造した。
原料粉末として、0.5〜0.9μmの範囲内の所定の平均粒径を有するWC粉末、Co粉末、TaC粉末、NbC粉末、Cr3C2粉末を、表1に示される割合に配合し、さらにバインダーとしてパラフィンと溶剤としてトルエン、またはキシレン、またはメシチレン、またはテトラリン、またはデカリンを加えてアセトン中で24時間ボールミル混合し、減圧乾燥した。その後、いずれも押出プレス成形し、直径が10mm、長さが150mmの丸棒圧粉体とし、これらの丸棒圧粉体を、1Paの真空雰囲気中、1380〜1500℃の温度で1〜2時間保持するという焼結条件で焼結して焼結体を得た。その後、前記焼結体を研磨加工することにより、WC基超硬合金焼結体を製造した。
次いで、前記WC基超硬合金焼結体を、溝形成部の外径寸法が7mmとなるように研削加工することにより、WC超硬合金製ドリル工具基体(以下、単に「ドリル基体」または「基体」という)A〜Bを製造した。
前記ドリル基体にダイヤモンド皮膜を成膜する前に、化学処理にてドリル基体表面近傍に存在するCoを除去し、基体表面に微細な凹凸を形成させる。前記ドリル基体を、イソプロピルアルコールに粒径が0.5μm以下のダイヤモンド粉末と界面活性剤を添加した溶液で超音波処理を施すことにより傷つけ処理をする。
続いて、ドリル基体Aおよびドリル基体Bを熱フィラメントCVD装置に装入し、表2に記載された成膜条件で下部領域にBを添加したダイヤモンド皮膜を成膜し、引き続き表3に記載された成膜条件で上部領域にBを添加した、またはBを添加していない柱状晶ダイヤモンド皮膜を成膜した。Bの原料には水素ガス中にトリメチルボロン:B(CH3)3が1000ppm含有されている混合ガスを使用した。なお、以下の「%」は、「容量%」であって、以下の数値範囲は表2、3に記載されたものの範囲をおおよそ示したものである。
(下部領域の成膜条件)
ガス組成 CH4:1.0〜2.0%、(B(CH3)3+H2)混合ガス:0.5〜5.0% H2:残部
ガス流量 CH4:20〜40sccm、(B(CH3)3+H2)混合ガス+H2:2000sccm
圧力 700〜800Pa
フィラメント温度 2270〜2330℃
ドリル基体温度 930〜970℃
(上部領域の成膜条件)
ガス組成 CH4:0.9%、(B(CH3)3+H2)混合ガス:0または6.3%、H2:残部
ガス流量 CH4:18sccm、(B(CH3)3+H2)混合ガス+H2:2000sccm
圧力 1000Pa
フィラメント温度 2080〜2120℃
ドリル基体温度 780〜820℃
この条件で下部領域のダイヤモンド皮膜、上部領域の単層の結晶層ダイヤモンド皮膜を形成し、表5に示すダイヤモンド皮膜の総厚、下部領域における結晶粒径、法線方向におけるラマン分光測定により求められたsp3結合/sp2結合のピーク強度比率、かつsp3結合由来のラマンピークの半値幅、B含有量、を有する本発明被覆工具1〜11および1’〜11’を作製した。
続いて、ドリル基体Aおよびドリル基体Bを熱フィラメントCVD装置に装入し、表2に記載された成膜条件で下部領域にBを添加したダイヤモンド皮膜を成膜し、引き続き表3に記載された成膜条件で上部領域にBを添加した、またはBを添加していない柱状晶ダイヤモンド皮膜を成膜した。Bの原料には水素ガス中にトリメチルボロン:B(CH3)3が1000ppm含有されている混合ガスを使用した。なお、以下の「%」は、「容量%」であって、以下の数値範囲は表2、3に記載されたものの範囲をおおよそ示したものである。
(下部領域の成膜条件)
ガス組成 CH4:1.0〜2.0%、(B(CH3)3+H2)混合ガス:0.5〜5.0% H2:残部
ガス流量 CH4:20〜40sccm、(B(CH3)3+H2)混合ガス+H2:2000sccm
圧力 700〜800Pa
フィラメント温度 2270〜2330℃
ドリル基体温度 930〜970℃
(上部領域の成膜条件)
ガス組成 CH4:0.9%、(B(CH3)3+H2)混合ガス:0または6.3%、H2:残部
ガス流量 CH4:18sccm、(B(CH3)3+H2)混合ガス+H2:2000sccm
圧力 1000Pa
フィラメント温度 2080〜2120℃
ドリル基体温度 780〜820℃
この条件で下部領域のダイヤモンド皮膜、上部領域の単層の結晶層ダイヤモンド皮膜を形成し、表5に示すダイヤモンド皮膜の総厚、下部領域における結晶粒径、法線方向におけるラマン分光測定により求められたsp3結合/sp2結合のピーク強度比率、かつsp3結合由来のラマンピークの半値幅、B含有量、を有する本発明被覆工具1〜11および1’〜11’を作製した。
また、比較の目的で、上記ドリル基体に表4に記載された成膜条件でBを添加した下部領域のダイヤモンド皮膜を成膜し、引き続き表3に記載された成膜条件で上部領域にBを添加した、またはBを添加していない柱状晶ダイヤモンド皮膜を成膜して、表6に示す比較被覆工具1〜12および1’〜12’を作製した。下部領域の成膜において、トリメチルボロンの代わりにトリメトキシボロンを使用して一部の比較被覆工具を製造した。反応炉外において、液体であるトリメトキシボロンに水素をキャリアガスとしてバブリングしながら、ヒータにより加熱気化させ、水素中にトリメトキシボロンが1000ppm含有している混合ガスを、流量を制御しながら炉内に導入した。トリメトキシボロンには酸素原子が存在しており、これが成膜時にsp2成分を除去するため、トリメトキシボロン(B(OCH3)3)を使用して成膜したダイヤモンド皮膜はsp3結合/sp2結合のピーク強度比率が高くなりすぎてしまう。その結果、工具基体界面に過度な圧縮応力が働き、ダイヤモンド皮膜が工具基体界面から剥離しやすくなる。
次に、本発明被覆工具1〜11、1’〜11’および比較被覆工具1〜12、1’〜12’について、以下に示す被削材の貫通孔加工による切削試験を実施し、いずれも寿命到達切削穴数を測定した。
<切削試験1>
被削材:CFRP
CFRP(厚さ20mm)
送り:0.15mm/rev
切削速度:150m/min
<切削試験2>
被削材:CFRP/Al合金スタック材(上部がCFRP、下部がAl合金)
CFRP(厚さ20mm)
送り:0.15mm/rev
切削速度:150m/min
Al合金(A7075、厚さ10mm)
送り:0.1mm/rev
切削速度:60m/min
切削速度:150m/minで切削を開始し、CFRPを貫通する2.0mm手前から切削速度を低下させ、Al合金の切削時には60m/minになるようにした。
<切削試験3>
被削材:CFRP/Ti合金スタック材(上部がCFRP、下部がTi合金)
CFRP(厚さ:20mm)
送り:0.15mm/rev
切削速度:150m/min
Ti合金(Ti−6Al−4V合金、厚さ10mm)
送り:0.05mm/rev
切削速度:20m/min
切削速度:150m/minで切削を開始し、CFRPを貫通する2.0mm手前から切削速度を低下させ、Ti合金の切削時には20m/minになるようにした。
表7〜9に、切削試験1〜3の結果を示す。到達寿命穴数は、初回から10回までは1回の穴あけごとに、それ以降は10回の穴あけごとに、ドリル切れ刃の逃げ面を観察した結果である。なお、寿命は正常摩耗による摩滅と異常損傷によって判断した。
<切削試験1>
被削材:CFRP
CFRP(厚さ20mm)
送り:0.15mm/rev
切削速度:150m/min
<切削試験2>
被削材:CFRP/Al合金スタック材(上部がCFRP、下部がAl合金)
CFRP(厚さ20mm)
送り:0.15mm/rev
切削速度:150m/min
Al合金(A7075、厚さ10mm)
送り:0.1mm/rev
切削速度:60m/min
切削速度:150m/minで切削を開始し、CFRPを貫通する2.0mm手前から切削速度を低下させ、Al合金の切削時には60m/minになるようにした。
<切削試験3>
被削材:CFRP/Ti合金スタック材(上部がCFRP、下部がTi合金)
CFRP(厚さ:20mm)
送り:0.15mm/rev
切削速度:150m/min
Ti合金(Ti−6Al−4V合金、厚さ10mm)
送り:0.05mm/rev
切削速度:20m/min
切削速度:150m/minで切削を開始し、CFRPを貫通する2.0mm手前から切削速度を低下させ、Ti合金の切削時には20m/minになるようにした。
表7〜9に、切削試験1〜3の結果を示す。到達寿命穴数は、初回から10回までは1回の穴あけごとに、それ以降は10回の穴あけごとに、ドリル切れ刃の逃げ面を観察した結果である。なお、寿命は正常摩耗による摩滅と異常損傷によって判断した。
表7〜9に示される結果から明らかなように、本発明のダイヤモンド被覆切削工具(本発明被覆工具)は、総厚3〜25μmのダイヤモンド皮膜が被覆され、該ダイヤモンド皮膜の工具基体表面直上からその法線方向に1.5〜2.5μmまでの範囲の下部領域において、ダイヤモンド皮膜を形成する結晶粒径が0.1〜1.0μmであり、当該領域の前記法線方向におけるラマン分光測定により求められたsp3結合/sp2結合のピーク強度比率が1.8〜5.0であり、かつsp3結合由来のラマンピークの半値幅は8.0〜13.0 cm−1であって、B含有量が0.05〜0.50原子%であるため、上部領域のダイヤモンド皮膜のBの含有に関わらず、CFRP材等の難削材に対して、長期にわたって十分な耐久性を有している。
これに対して、本発明のダイヤモンド被覆切削工具を規定する事項を一つでも満足しない比較被覆工具は、上部領域のダイヤモンド皮膜のBの含有に関わらず、CFRP材等の難削材の切削加工において、短期で寿命に至っている。
これに対して、本発明のダイヤモンド被覆切削工具を規定する事項を一つでも満足しない比較被覆工具は、上部領域のダイヤモンド皮膜のBの含有に関わらず、CFRP材等の難削材の切削加工において、短期で寿命に至っている。
前述のように、本発明の被覆工具は、CFRP材等の難削材の切削加工だけでなく、各種の被削材の被覆工具として用いることができ、しかも、長期の使用にわたって優れた切削性能を発揮することで、切削装置の高性能化並びに切削加工の省力化および省エネ化、さらには低コスト化に十分に満足できる対応が可能である。
Claims (3)
- WC基超硬合金工具基体表面に、総厚3〜25μmのダイヤモンド皮膜が被覆されたダイヤモンド被覆切削工具であって、
前記ダイヤモンド皮膜の工具基体表面直上からその法線方向に1.5〜2.5μmまでの範囲の下部領域において、
ダイヤモンド皮膜を形成する結晶粒径が0.1〜1.0μmであり、当該領域の前記法線方向におけるラマン分光測定により求められたsp3結合/sp2結合のピーク強度比率が1.8〜5.0であり、かつsp3結合由来のラマンピークの半値幅は8.0〜13.0cm−1であって、B含有量が0.05〜0.50原子%であること、
を特徴とするダイヤモンド被覆切削工具。 - 前記ダイヤモンド皮膜の総厚が5〜15μmであることを特徴とする請求項1に記載のダイヤモンド被覆切削工具。
- 前記下部領域の直上のダイヤモンド皮膜が、単層または2層以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のダイヤモンド被覆切削工具。
Priority Applications (1)
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| JP2017218257A JP2019089146A (ja) | 2017-11-13 | 2017-11-13 | ダイヤモンド被覆切削工具 |
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| JP2019089146A true JP2019089146A (ja) | 2019-06-13 |
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|---|---|---|---|---|
| JP2021030361A (ja) * | 2019-08-23 | 2021-03-01 | 三菱マテリアル株式会社 | ダイヤモンド被覆切削工具 |
-
2017
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