以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態にかかる変速機の制御装置を備えた車両の構成例を示す概略図である。本実施形態の車両1は、図1に示すように、駆動源としてのエンジン(内燃機関)2及びモータ(電動機)3を備えたハイブリッド自動車の車両であって、さらに、モータ3を制御するためのインバータ(電動機制御手段)20と、バッテリ30と、トランスミッション(変速機)4と、ディファレンシャル機構5と、左右のドライブシャフト6R,6Lと、左右の駆動輪WR,WLとを備える。エンジン2とモータ3の回転駆動力は、変速機4、ディファレンシャル機構5およびドライブシャフト6R,6Lを介して左右の駆動輪WR,WLに伝達される。
また、車両1は、エンジン2、モータ3、変速機4、ディファレンシャル機構5、インバータ(電動機制御手段)20およびバッテリ30をそれぞれ制御するための電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)10を備える。電子制御ユニット10は、1つのユニットとして構成されるだけでなく、例えばエンジン2を制御するためのエンジンECU、モータ3やインバータ20を制御するためのモータジェネレータECU、バッテリ30を制御するためのバッテリECU、変速機4を制御するためのAT−ECUなど複数のECUから構成されてもよい。本実施形態の電子制御ユニット10は、エンジン2を制御するとともに、モータ3やバッテリ30、変速機4を制御する。
電子制御ユニット10は、各種の運転条件に応じて、モータ3のみを動力源とするモータ単独走行(EV走行)をするように制御したり、エンジン2のみを動力源とするエンジン単独走行をするように制御したり、エンジン2とモータ3の両方を動力源として併用する協働走行(HEV走行)をするように制御する。
また、電子制御ユニット10には、制御パラメータとして、アクセルペダル(図示せず)の踏込量を検出するアクセルペダル開度センサ31からのアクセルペダル開度、ブレーキペダル(図示せず)の踏込量を検出するブレーキペダルセンサ32からのブレーキペダル開度、車両の運転者によるシフトレバーの操作等によって選択(設定)されるシフトポジションを検出するシフトポジションセンサ33からのシフト位置、変速機4内の作動油(潤滑油)の温度(油温)を検出する油温センサ34からの油温、内側メインシャフトIMS、外側メインシャフトOMS、カウンタシャフトCSなど変速機4内の各回転軸の回転数を検出する回転軸センサ35からの回転数、車両の車室外(外部)の気温を計測する外気温センサ36からの温度(外気温)、イグニッションスイッチ37のオンオフ信号などの各種信号が入力されるようになっている。また、電子制御ユニット10は、前回イグニションスイッチ37をオフしたときから今回イグニッションスイッチ37をオンするまでの経過時間(ソーク時間)を計測する計時手段としての機能を有する。
なお、上記のシフトポジションセンサ33で検出されるシフトポジションとしては、例えば、Pポジション(パーキングポジション)、Dポジション(前進走行ポジション)、Nポジション(ニュートラルポジション)、Rポジション(後進走行ポジション)の4種類を挙げることができる。また、Dポジションは、自動変速モードと手動変速モードとがあってもよい。
エンジン2は、燃料を空気と混合して燃焼することにより車両1を走行させるための駆動力を発生する内燃機関である。モータ3は、エンジン2とモータ3との協働走行やモータ3のみの単独走行の際には、バッテリ30の電気エネルギーを利用して車両1を走行させるための駆動力を発生するモータとして機能するとともに、車両1の減速時には、モータ3の回生により電力を発電する発電機として機能する。モータ3の回生時には、バッテリ30は、モータ3により発電された電力(回生エネルギー)により充電される。
次に、本実施形態の車両が備える変速機4の構成を説明する。図2は、図1に示す変速機4のスケルトン図である。変速機4は、前進9速・後進1速の平行軸式トランスミッションであり、乾式のツインクラッチ式変速機である。
変速機4には、エンジン2及びモータ3の機関出力軸2aに接続される内側メインシャフト(第一入力軸)IMSと、この内側メインシャフトIMSの外筒をなす外側メインシャフトOMSと、内側メインシャフトIMSにそれぞれ平行なセカンダリシャフト(第二入力軸)SS、リバースシャフトRVSと、これらのシャフトに平行なカウンタシャフト(出力軸)CSと、ディファレンシャル機構5に繋がるアウトプットシャフトOPSとが設けられる。
これらのシャフトのうち、外側メインシャフトOMSがリバースシャフトRVSおよびセカンダリシャフトSSに常時係合し、カウンタシャフトCSがさらにアウトプットシャフトOPSを介してディファレンシャル機構5に常時係合するように配置される。
また、変速機4は、奇数段用の第一クラッチ(第一動力断接手段)C1と、偶数段用の第二クラッチ(第二動力断接手段)C2とを備える。第一クラッチC1は内側メインシャフトIMSに結合される。第二クラッチC2は、外側メインシャフトOMSに結合され、外側メインシャフトOMS上に固定されたギヤ42を介してリバースシャフトRVSおよびセカンダリシャフトSSに連結される。
内側メインシャフトIMSの外周には、図2において右側(第一クラッチC1側)から順に、3速駆動ギヤ43と、5速駆動ギヤ45と、7速駆動ギヤ47と、9速駆動ギヤ49と、1速駆動ギヤ41とが配置される。3速駆動ギヤ43、5速駆動ギヤ45、7速駆動ギヤ47、9速駆動ギヤ49はそれぞれ内側メインシャフトIMSに対して相対的に回転可能であり、1速駆動ギヤ41は、内側メインシャフトIMSに固定されている。更に、内側メインシャフトIMS上には、3速駆動ギヤ43と5速駆動ギヤ45との間に3−5速シンクロナイザー(同期係合装置)83のスリーブが軸方向にスライド可能に設けられ、かつ、7速駆動ギヤ47と9速駆動ギヤ49との間に7−9速シンクロナイザー(同期係合装置)87のスリーブが軸方向にスライド可能に設けられる。所望のギヤ段に対応するシンクロナイザー(同期係合装置)のスリーブをスライドさせて該ギヤ段のシンクロを入れることにより、該ギヤ段が内側メインシャフトIMSに連結される。内側メインシャフトIMSに関連して設けられたこれらのギヤ及びシンクロナイザーによって、奇数段の変速を行うための第一変速機構GR1が構成される。第一変速機構GR1の各駆動ギヤは、カウンタシャフトCS上に設けられた対応する従動ギヤに噛み合い、カウンタシャフトCSを回転駆動する。
セカンダリシャフトSSの外周には、図2において右側から順に、2速駆動ギヤ42と、4速駆動ギヤ44と、6速駆動ギヤ46と、8速駆動ギヤ48とが相対的に回転可能に配置される。更に、セカンダリシャフトSS上には、2速駆動ギヤ42と4速駆動ギヤ44との間に2−4速シンクロナイザー(同期係合装置)82のスリーブが軸方向にスライド可能に設けられ、かつ、6速駆動ギヤ46と8速駆動ギヤ48との間に6−8速シンクロナイザー(同期係合装置)86のスリーブが軸方向にスライド可能に設けられる。この場合も、所望のギヤ段に対応するシンクロナイザー(同期係合装置)のスリーブをスライドさせて該ギヤ段のシンクロを入れることにより、該ギヤ段がセカンダリシャフトSSに連結される。セカンダリシャフトSSに関連して設けられたこれらのギヤ及びシンクロナイザーによって、偶数段の変速を行うための第二変速機構GR2が構成される。第二変速機構GR2の各駆動ギヤも、カウンタシャフトCS上に設けられた対応する従動ギヤに噛み合い、カウンタシャフトCSを回転駆動する。なお、セカンダリシャフトSSに固定されたギヤ57は外側メインシャフトOMS上のギヤ55に結合しており、外側メインシャフトOMSを介して第二クラッチC2に結合される。
リバースシャフトRVSの外周には、リバース駆動ギヤ60が相対的に回転可能に配置される。また、リバースシャフトRVS上には、リバース駆動ギヤ60に対応してリバースシンクロナイザー(同期係合装置)85のスリーブが軸方向にスライド可能に設けられ、また、外側メインシャフトOMS上のギヤ42に係合するアイドルギヤ50が固定されている。リバース走行する場合は、シンクロナイザー85のシンクロを入れて、第二クラッチC2を係合することにより、第二クラッチC2の回転が外側メインシャフトOMS及びアイドルギヤ50を介してリバースシャフトRVSに伝達され、リバース駆動ギヤ60が回転される。リバース駆動ギヤ60はカウンタシャフトCS上のギヤ53に噛み合っており、リバース駆動ギヤ60が回転するときカウンタシャフトCSは前進時とは逆方向に回転する。カウンタシャフトCSの逆方向の回転はアウトプットシャフトOPS上のギヤ59を介してディファレンシャル機構5に伝達される。
カウンタシャフトCS上には、図2において右側から順に、2速駆動ギヤ42に噛み合う2速従動ギヤ52と、3速駆動ギヤ43に噛み合う3速従動ギヤ53と、4速駆動ギヤ44及び5速駆動ギヤ45に噛み合う4−5速従動ギヤ54と、6速駆動ギヤ46及び7速駆動ギヤ47に噛み合う6−7速従動ギヤ56と、8速駆動ギヤ48及び9速駆動ギヤ49に噛み合う8−9速従動ギヤ58が固定的に配置される。また、カウンタシャフトCS上には、1速駆動ギヤ41に噛み合う1速従動ギヤ51が1速ワンウェイクラッチ機構81を介して相対回転可能に設けられている。1速ワンウェイクラッチ機構81は、1速従動ギヤ51(内側メインシャフトIMS)とカウンタシャフトCSの相対回転速度に応じてその係合・非係合が切り替わるようになっている。また、3速従動ギヤ53は、アウトプットシャフトOPS上のギヤ59と噛み合っており、これにより、カウンタシャフトCSの回転がアウトプットシャフトOPSを介してディファレンシャル機構5に伝達される。また、カウンタシャフトCS上には、パーキングロック機構65が設けられている。パーキングロック機構65は、シフトポジションがパーキングポジション(Pポジション)のときにカウンタシャフトCSを変速機ケースなどの固定側にロックする。
上記構成の変速機4では、2−4速シンクロナイザー82のスリーブ(シンクロスリーブ)を右方向にスライドすると、2速駆動ギヤ42がセカンダリシャフトSSに結合され(2速インギヤ)、左方向にスライドすると、4速駆動ギヤ44がセカンダリシャフトSSに結合される(4速インギヤ)。また、6−8速シンクロナイザー86のスリーブを右方向にスライドすると、6速駆動ギヤ46がセカンダリシャフトSSに結合され(6速インギヤ)、左方向にスライドすると、8速駆動ギヤ48がセカンダリシャフトSSに結合される(8速インギヤ)。このように偶数の駆動ギヤ段を選択した状態で、第二クラッチC2を係合することにより、変速機4は偶数の変速段(2速、4速、6速、又は8速)に設定される。
また、1速ワンウェイクラッチ機構81が係合状態の場合、1速従動ギヤ51がカウンタシャフトCSに結合されて(1速インギヤ)、1速の変速段が選択される。一方、1速ワンウェイクラッチ機構81が非係合状態で、3−5速シンクロナイザー83のスリーブを右方向にスライドすると、3速駆動ギヤ43が内側メインシャフトIMSに結合されて3速の変速段が選択され(3速インギヤ)、左方向にスライドすると、5速駆動ギヤ45が内側メインシャフトIMSに結合されて5速の変速段が選択される(5速インギヤ)。また、7−9速シンクロナイザー87のスリーブを右方向にスライドすると、7速駆動ギヤ47が内側メインシャフトIMSに結合されて7速の変速段が選択され(7速インギヤ)、左方向にスライドすると、9速駆動ギヤ49が内側メインシャフトIMSに結合されて9速の変速段が選択される(9速インギヤ)。このように奇数の駆動ギヤ段を選択した状態で、第一クラッチC1を係合することにより、変速機4は奇数の変速段(1速、3速、5速、7速、又は9速)に設定される。
上記の第一クラッチC1と、内側メインシャフトIMS上に設けた1,3,5,7,9速駆動ギヤ41,43,45,47,49と、1速ワンウェイクラッチ機構81、3−5速シンクロナイザー83、7−9速シンクロナイザー87とで、奇数段の変速段を設定するための第一変速機構GR1が構成される。また、上記の第二クラッチC2と、セカンダリシャフトSS上に設けた2,4,6,8速駆動ギヤ42,44,46,48と、2−4速シンクロナイザー82及び6−8速シンクロナイザー86とで、偶数段の変速段を設定するための第二変速機構GR2が構成される。
この変速機4では、第一クラッチC1を係合すると、エンジン2及びモータ3の駆動力が第一クラッチC1から内側メインシャフトIMSを介して第一変速機構GR1に伝達される。一方、第二クラッチC2を係合すると、エンジン2及びモータ3の駆動力が第二クラッチC2から外側メインシャフトOMSを介してセカンダリシャフトSS上の第二変速機構GR2に伝達される。
よって、1速ワンウェイクラッチ機構81が係合した状態で第一クラッチC1を係合すると1速変速段が確立し、2−4速シンクロナイザー82を右動して2速駆動ギヤ42をセカンダリシャフトSSに結合した状態で第二クラッチC2を係合すると2速変速段が確立し、3−5速シンクロナイザー83を右動して3速駆動ギヤ43を内側メインシャフトIMSに結合した状態で第一クラッチC1を係合すると3速変速段が確立し、3−5速シンクロナイザー83を左動して5速駆動ギヤ45を内側メインシャフトIMSに結合した状態で第二クラッチC2を係合すると5速段が確立する。以降も同様に各シンクロナイザー82,83,86,87と第一、第二クラッチC1,C2の係合を切り換えることで、9速段までの各変速段を設定することができる。
そして、1速段側から9速段側へのシフトアップ時には、第一クラッチC1が係合して1速段が確立している間に2速段をプレシフトしておき、第一クラッチC1を係合解除して第二クラッチC2を係合することで2速段を確立し、第二クラッチC2が係合して2速段を確立している間に3速段をプレシフトしておき、第二クラッチC2を係合解除して第一クラッチC1を係合することで3速段を確立する。これを順に繰り返してシフトアップを行う。
一方、9速段側から1速段側へのシフトダウン時には、第一クラッチC1が係合して9速段が確立している間に8速段をプレシフトしておき、第一クラッチC1を係合解除して第二クラッチC2を係合することで8速段を確立し、第二クラッチC2が係合して8速段を確立している間に7速段をプレシフトしておき、第二クラッチC2を係合解除して第一クラッチC1を係合することで8速段を確立し、これを繰り返してシフトダウンを行う。これらにより、駆動力の途切れのないシフトアップ及びシフトダウンが可能になる。
なお、変速機4で実現すべき変速段の決定及び該変速段を実現するための制御(第一変速機構GR1及び第二変速機構GR2における変速段の選択(シンクロの切り替え制御)と、第一クラッチC1及び第二クラッチC2の係合及び係合解除の制御等)は、電子制御ユニット(制御手段)10によって、予め設定した車速及びアクセル開度と変速段との関係を示すシフトマップ(変速マップ)に応じて定められた目標変速段に基いて行われる。すなわち、現在の車速と運転者の意思などを含む運転状況に従って目標変速段への変速が行われる。
ここで、変速機4が備えるシンクロナイザー(同期係合装置)82,83,86,87の詳細な構造について説明する。シンクロナイザー(同期係合装置)82,83,86,87の基本的な構造は同じであるため、ここでは、3−5速シンクロナイザー83を例に説明する。図3は、3−5速シンクロナイザー83を示す側断面図である。同図に示す3−5速シンクロナイザー83は、内側メインシャフトIMSに相対回転可能に支持され外周にドグスプライン(ドグ歯)43a,45aが形成される3速駆動ギヤ43及び5速駆動ギヤ45と、軸方向における3速駆動ギヤ43と5速駆動ギヤ45との間において内側メインシャフトIMSに結合され外周端部130aに軸方向に延びるハブスプライン131(スプライン歯)を有するシンクロハブ130(同期ハブ)と、シンクロハブ130の軸方向の一方の内周側面130bに対向して配設され且つ3速駆動ギヤ43に対して摩擦係合が可能なブロッキングリング140と、シンクロハブ130の軸方向の他方の内周側面130cに対向して配設され且つ5速駆動ギヤ45に対して摩擦係合が可能なブロッキングリング145と、ドグスプライン43a,45aとハブスプライン131とブロッキングリング140,145のドグ歯140a,145aとに噛み合うスリーブスプライン151(スプライン歯)を内周側に有しシンクロハブ130の外周で軸方向へ移動可能にスプライン結合されたシンクロスリーブ150(同期スリーブ)と、を有する。シンクロスリーブ150は、図示しないシフトフォークの摺動により、図3に示すニュートラル位置から軸方向に沿って左右に移動する。そして、右側の3速位置への移動によりシンクロハブ130(内側メインシャフトIMS)と3速駆動ギヤ43とを同期係合させることで3速変速段が確立され、左側の5速位置への移動によりシンクロハブ130(内側メインシャフトIMS)と5速駆動ギヤ45とを同期係合させることで5速変速段が確立される。
また、ブロッキングリング140,145の外周には、環状のシンクロスプリング160,165が設置されている。シンクロスプリング160,165は、弾性金属製の線材を円形環状に形成した部品であって、ブロッキングリング140,145の外周において、ドグ歯140a,145aに対して軸方向でシンクロハブ130及びシンクロスリーブ150側に隣接して設置されている。これらシンクロスプリング160,165は、シンクロスリーブ150がニュートラル位置にあるとき、ブロッキングリング140,145のドグ歯140a,145aと、シンクロハブ130の軸方向の端面と、シンクロスリーブ150のスリーブスプライン151とに囲まれた位置にある。そして、シンクロスリーブ150が3速駆動ギヤ43側と5速駆動ギヤ45側それぞれに摺動すると、スリーブスプライン151で押圧されることで、ドグ歯140a,145a側に向かって軸心側(図の左右斜め下側)へ押し出されるようになっている。
3速駆動ギヤ43のシンクロハブ130側に延びたボス部43bの外周には、軸方向に対して円錐状に傾斜する傾斜面からなるテーパコーン面43cが形成される。テーパコーン面43cの外径側には、ブロッキングリング140が嵌合している。ブロッキングリング140は、所定幅を有する円形環状の部材で、その内周面には、ボス部43bのテーパコーン面43cに摺接する円錐状の傾斜面からなるテーパコーン面140cが形成される。これにより、ブロッキングリング140は3速駆動ギヤ43に対して摩擦係合が可能な構成となっている。また、5速駆動ギヤ45のシンクロハブ130側に延びたボス部45bの外周には、軸方向に対して円錐状に傾斜する傾斜面からなるテーパコーン面45cが形成される。テーパコーン面45cの外径側には、ブロッキングリング145が嵌合している。ブロッキングリング145は、所定幅を有する円形環状の部材で、その内周面には、ボス部45bのテーパコーン面45cに摺接する円錐状の傾斜面からなるテーパコーン面145cが形成される。これにより、ブロッキングリング145は5速駆動ギヤ45に対して摩擦係合が可能な構成となっている。
上記構成の3−5速シンクロナイザー83では、シンクロスリーブ150がニュートラル位置にあるとき、内側メインシャフトIMSが回転すると、当該内側メインシャフトIMSの回転がシンクロハブ130及びシンクロスリーブ150とブロッキングリング140,145に伝達されてこれらが共に回転する。その一方で、3速駆動ギヤ43及びそのドグスプライン43aと、5速駆動ギヤ45及びそのドグスプライン45aには内側メインシャフトIMSの回転は伝達されない。したがって、シンクロハブ130及びブロッキングリング140,145と左右のドグスプライン43a,45aとの間には回転差が生じた状態となる。
次に、本実施形態の変速機4の暖機制御について説明する。本実施形態の変速機4では、第二変速機構GR2のシンクロナイザー82,86がすべて中立位置であり、かつ、カウンタシャフト(出力軸)CSの回転が停止している状態で、第二クラッチC2を締結してセカンダリシャフトSSを回転させることで変速機4を暖機する暖機制御を行う。以下、この暖機制御について詳細に説明する。
図4は、第二クラッチC2を締結したときの変速機4の内部の状態を説明するための図である。エンジン2又はモータ3の駆動力で機関出力軸2aが回転している状態で、シフトポジションがPポジションで車両が停止しており(カウンタシャフトCSがパーキングロック状態であり)、第二変速機構GR2のシンクロナイザー82,86がいずれも中立位置(すなわち駆動ギヤ42,44,46,48がすべてオフギヤ状態)にあるときに、第一クラッチC1を解放し、第二クラッチC2を締結すると、図4に示すように、機関出力軸2aの回転が第二クラッチC2を介して外側メインシャフトOMSに伝達される。この外側メインシャフトOMSに伝達された回転はギヤ55及びギヤ50を介してリバースシャフトRVSに伝わり、リバースシンクロナイザー85のスリーブ及びハブを回転させる。また、外側メインシャフトOMSに伝達された回転は、ギヤ55及びギヤ57を介してセカンダリシャフトSSに伝達され、セカンダリシャフトSSと一体に設けられた2−4シンクロナイザー82のハブ及びブロッキングリングと6−8シンクロナイザー86のハブ及びブロッキングリングとを回転させる。これらにより、リバースシンクロナイザー85、2−4シンクロナイザー82、6−8シンクロナイザー86ではハブ及びブロッキングリングと駆動ギヤのドグスプライン(ドグ歯)との間に回転差が生じることで、当該回転差により周辺の作動油(潤滑油)が撹拌されて発熱エネルギーが生じる。この発熱エネルギーで、シンクロナイザー82,85,86の周囲の作動油の油温が上昇するので、これらシンクロナイザー82,85,86の引き摺りトルクを事前に低減することができる。
すなわち、上記の暖機制御によれば、次回インギヤする駆動ギヤ以外の駆動ギヤにかかる変速段(ギヤ段)のシンクロナイザーのハブ及びブロッキングリング、又は、次回インギヤする駆動ギヤにかかる変速段(ギヤ段)のシンクロナイザーのハブ及びブロッキングリングを事前に強制的に回転させることで、これらシンクロナイザ−のハブ及びブロッキングリングと駆動ギヤのドグ歯との間に回転差を与えることができる。これにより、変速機4内の作動油(特にシンクロナイザ−周辺の作動油)が攪拌されて発熱(昇温)する。その発熱エネルギーにより、当該シンクロナイザ−で生じる引摺りトルクを事前に低減することができる。したがって、変速機4の内部で生じる作動油の摩擦等による抵抗を低減できる。また、作動油(潤滑油)を昇温させることで作動油によるフリクションを低減することができるので、車両の燃費向上を図ることもできる。また、シンクロナイザ−で駆動ギヤにかかる変速段にインギヤする際のインギヤ時間(インギヤに要する時間)を短縮することができる。
次に、上記の暖機制御を行う際の手順について説明する。図5は、暖機制御を行う手順を説明するためのフローチャートである。暖機制御を行うには、まず、前回イグニッションオフ(IG OFF)時の油温センサ34で検出した変速機4内の作動油(潤滑油)の温度(油温)T1が所定温度T0以下(T1≦T0)であるか否かを判断する(ステップST1−1)。ここで、前回イグニッションオフ時の油温が所定値以下であることを条件とするのは、前回イグニッションオフ時の作動油の温度が所定温度以下であるときには、作動油の粘性が高いことでシンクロナイザーの引き摺りトルクが大きくなっているおそれが高いからである。
その結果、作動油の温度T1が所定温度T0以下でなければ(NO)、暖機制御を行わない。一方、作動油の温度T1が所定温度T0以下であれば(YES)、前回イグニッションオフ(IG OFF)時のシンクロナイザーの累積走行負荷値M1が所定値(設定値)M0以下(M1≦M0)であるか否かを判断する(ステップST1−2)。累積走行負荷値M1の算出方法については後述する。その結果、シンクロナイザーの累積走行負荷値M1が所定値M0以下でなければ(NO)、暖機制御を行わない。一方、シンクロナイザーの累積走行負荷値M1が所定値M0以下であれば(YES)、シフトポジションセンサ33で検出したシフトポジションがパーキングポジション(Pポジション)であるか否かを判断する(ステップST1−3)。
ここで、シフトポジションがパーキングポジションであることを判断する理由は下記の通りである。すなわち、シフトポジションがD(前進走行)ポジションやR(後進走行)ポジションなどの走行ポジションのときには、シンクロナイザ−に差回転が生じるため、暖機が行われてシンクロナイザーの引き摺りトルクが低下するので、本実施形態の暖機制御を実行する必要はない。そのため、シフトポジションがPポジション(非走行ポジション)であるときに限り本実施形態の暖機制御を実行する。また、シフトポジションがN(ニュートラル)ポジションでは、第二クラッチC2を締結してセカンダリシャフトSSを回転させると、シンクロナイザーの引き摺りトルクなどによりカウンタシャフトCSが僅かに回転することで車両が動く可能性があるため、そのようなおそれが無いシフトポジションがPポジションの場合に限定している。
その結果、ステップST1−3でシフトポジションがPポジションで無ければ(NO)、暖機制御を行わない。一方、シフトポジションがPポジションであれば(YES)、第二変速機構GR2の全変速段がオフギヤ状態であるか否かを判断する(ステップST1−4)。ここでいう変速段がオフギヤ状態とは、各変速段のシンクロナイザー82,86のスリーブが中立位置にあり、いずれの駆動ギヤにもインギヤしていない状態をいう。その結果、第二変速機構GR2の全変速段がオフギヤ状態で無ければ、すなわち少なくともいずれかの変速段がインギヤ状態であれば、(NO)、暖機制御を行わない。一方、第二変速機構GR2の全変速段がオフギヤ状態であれば(YES)、暖機制御を開始する(ステップST1−5)。具体的には、第一クラッチC1を開放し、第二クラッチC2を締結させることで、セカンダリシャフトSS(及びリバースシャフトRVS)を強制的に回転させる。
その後、暖機制御の開始から所定時間t1が経過したか否かを判断する(ステップST1−6)。ここでの所定時間t1は、例えば、今回イグニッションオン(始動)の前後の車両の走行状態に基づいて定めることができる。また、ここでいう走行状態には、今回イグニッションオン時の作動油の温度、今回イグニッションオン後の車両の走行に基づく車速分布、今回イグニッションオン後の車両の累積走行時間、前回イグニッションオフから今回イグニッションオンまでの経過時間(ソーク時間)の少なくともいずれかを含めることができる。
その結果、ステップST1−6で所定時間t1が経過するまで(NO)は、暖機制御を継続し、所定時間t1が経過したら(YES)、暖機制御を終了する(ステップST1−7)。具体的には、それまで締結していた第二クラッチC2を解放する。これにより、以降、機関出力軸2aの回転がセカンダリシャフトSS(及びリバースシャフトRVS、以下同じ。)に伝達されず、セカンダリシャフトSSの回転が停止する。
ここで、上記の累積走行負荷値M1の算出について説明する。図6は、車両の前回イグニッションオンから前回イグニッションオフまでの走行(一ドライブサイクルの走行)における累積走行負荷値を示す図で、同図のグラフの横軸は、前回イグニッションオン(IG ON)から前回イグニッションオフ(IG OFF)までの経過時間tであり、縦軸は、シンクロナイザーの累積走行負荷値M1である。シンクロナイザーの累積走行負荷値M1は、シンクロナイザーの差回転(ハブ及びブロッキングリングと駆動ギヤのドグ歯との差回転)と、当該差回転が生じた状態での経過時間とに基づいて算出される。シンクロナイザーの差回転は回転軸センサ35の検出値から算出される。そして、既述のように、この累積走行負荷値M1が所定値(閾値)M0以下であるか否かによって、暖機制御を行うか否かが判断される。すなわち、累積走行負荷値M1が所定値(閾値)M0以下であれば(L1)、変速機4内の作動油の引き摺りトルクが大きいと判断できるので、暖機制御を実行する一方、累積走行負荷値M1が所定値(閾値)M0より大きい場合(L2)には、変速機4内の作動油の引き摺りトルクが小さいと判断できるので、暖機制御を実行しない。
次に、上記の暖機制御を行う際の他の手順について説明する。図7は、暖機制御を行う他の手順を説明するためのフローチャートである。図7に示す手順は、図5に示す手順と比較して、ステップST1−1が他の内容のステップST1−1´に変更されている点のみが異なり、他のステップの内容は同じである。すなわち、図5の手順では、ステップST1−1で前回イグニッションオフ時の作動油の温度T1が所定値T0以下であるか否かを判断していたのに対して、図7に示す手順では、ステップST1−1´で前回イグニッションオフ時のシンクロナイザーの引き摺りトルクQ1が所定値Q0以下(Q1≦Q0)であるか否かを判断している。ここでのシンクロナイザーの引き摺りトルクQ1は、前回イグニッションオフ時の作動油の温度、外気温、今回イグニッションオン時の作動油の温度、外気温、前回イグニッションオフから今回イグニッションオンまでの経過時間(ソーク時間)に基づいて算出される値である。この引き摺りトルクQ1は、例えば、前回イグニッションオフ時の油温センサの検出値(油温)と外気温センサの検出値(外気温)とソーク時間とにより、ソーク状態ごとの引き摺りトルク推定マップを事前に実際の変速機の運転に基づいて検証(実機検証)することで作成し、当該マップから算出される値とすることができる。
そして、図7のステップST1−1´では、上記の算出したシンクロナイザーの引き摺りトルクQ1が所定値Q0以下で無い場合(NO)には暖機制御を行わず、引き摺りトルクQ1が所定値Q0以下である場合(YES)にのみ暖機制御を行う。
本実施形態の変速機4では、車両の始動直後に走行用の変速段にインギヤするときなどにおいて、インギヤする変速段(ギヤ段)以外の変速段のシンクロナイザ−のハブ及びブロッキングリングと変速ギヤのドグ歯との間に回転差が生じることで、これらハブ及びブロッキングリングと駆動ギヤのドグ歯との間に作動油(潤滑油)の摩擦抵抗などに起因する大きな抵抗(いわゆる引き摺りトルク)を生じる懸念がある。さらに、低温環境下で作動油の粘度が高い状態では上記の引き摺りトルクがより大きくなるおそれがある。また、インギヤする変速段(ギヤ段)のシンクロナイザーでは、同期後にスリーブがブロッキングリングまたはドグをかき分けるために要する時間が長くなり、インギヤに要する時間が長くなることが懸念される。
特に、車両の前進走行中にリバースギヤ(後進段)にインギヤするときは、インギヤする変速段(ギヤ段)以外の変速段のシンクロナイザ−のハブ及びブロッキングリングが前進走行時とは反対向きに回転することで、上記の引き摺りトルクの問題が顕著となる。
なお、本実施形態の変速機4の構造では、上記のようにリバースギヤのインギヤ時が主に問題となるが、前進変速段のインギヤ時にも同様に引き摺りトルク起因でインギヤ時間が遅くなることもある。例えば、前進変速時では、エンジン2(機関出力軸2a)の回転数よりも高い回転数から低い回転数に下げるシンクロナイザーの同期と、エンジン2(機関出力軸2a)の回転数よりも低い回転数から高い回転数に引き上げるシンクロナイザーの同期とがあるが、一般的に後者の方がインギヤ(同期係合)に要する時間が長くなる。リバースギヤのインギヤについては、変速機4の構造上、エンジン2(機関出力軸2a)回転と逆回転するリバース駆動ギヤ60を有するリバースシンクロナイザー85での引き摺りトルクが比較的に大きくなる傾向があるため、ここでは、これを本発明が解決すべき主課題として挙げている。
そして、本実施形態の変速機4の制御装置では、上記の課題に対処するため、先に説明した暖機制御を実施する。この暖機制御の実施によって、インギヤする駆動ギヤ以外の駆動ギヤにかかる変速段(ギヤ段)の同期係合装置(シンクロナイザ−)のハブ及びブロッキングリングを事前に強制的に回転させることで、当該シンクロナイザーのハブ及びブロッキングリングと駆動ギヤのドグ歯との間に回転差を与えることができる。これにより、変速機内の作動油(特にシンクロナイザー周辺の作動油)が攪拌されて発熱(昇温)する。その発熱エネルギーにより、当該シンクロナイザーで生じる引摺りトルクを事前に低減することができる。したがって、変速機の内部で生じる作動油の摩擦等による抵抗を低減できる。また、作動油(潤滑油)を昇温させることで作動油によるフリクションを低減することができるので、車両の燃費向上を図ることもできる。また、インギヤする駆動ギヤにかかる変速段(ギヤ段)のシンクロナイザ−のハブ及びブロッキングリングを事前に強制的に回転させることで、当該シンクロナイザーで駆動ギヤにかかる変速段にインギヤする際のインギヤ時間(インギヤに要する時間)を短縮することができる。
また、シンクロナイザーの同期後のインギヤ時間を短縮するためにシンクロナイザーのかき分け性能を向上させる構造(例えば、ブロッキングリングのチャンファ―角度を変更したり、同期係合装置の寸法を大きくしたり、あるいはダブルコーン型の同期係合装置とすることなど)を採用する必要がない。したがって、シンクロナイザー及び変速機4の構造の複雑化、重量増、コスト増、外形寸法の増大等を抑制することができる。
本実施形態の暖機制御では、低温環境下で特にシンクロナイザーで生じる引き摺りトルクが大きいため、低温環境下において長時間ソークされた場合、その後のイグニッションオン後に行われるシフトポジションの切替操作(P→R→D又はP→D→Rなどのシフトポジション切替)でのインギヤ時の引き摺りトルクを下げることが主目的となる。イグニッションオンの後、例えば、数分以内に車両の運転者が低車速走行を行った後にUターンをしたりすると、D→R→Dなどのシフトポジションの切り替えに伴う引き摺りトルクの影響により、Rインギヤの応答遅れが顕著となるおそれがある。また、Dポジションへの変速にも応答遅れの影響が出ることも考えられる。したがって、本実施形態の暖機制御は、ソーク後の車両の始動直後から数分間の間に行うことで最も効果を発揮することが期待できる。
また、再度ソークした場合に、外気温が低いと再度シンクロナイザーの引き摺りトルクが上昇することが考えられる。そのため、再ソーク前の累積走行負荷値を監視し、再ソーク状態を監視(外気温・時間などから推定)することで、シンクロナイザーの引き摺りトルクがどの程度の値になっているかを判断できるようにしておく必要がある。
なお、本実施形態の変速機4では、第一変速機構GR1において内側メインシャフトIMSに固定された1速駆動ギヤ41に噛み合う1速従動ギヤ51が1速ワンウェイクラッチ機構81を介してカウンタシャフトCSに繋がっている。この1速ワンウェイクラッチ機構81によって1速駆動ギヤ41を完全にオフギヤさせることができない構造となっている。そのため、上記の暖機制御は、第一変速機構GR1(第一クラッチC1の締結)では行うことができず、第二変速機構GR2(第二クラッチC2の締結)でのみ行うことができる。しかしながら、図示及び詳細な説明は省略するが、上記の1速ワンウェイクラッチ機構81を備える構成に代えて、1速駆動ギヤも他の奇数変速段の駆動ギヤと同様のシンクロナイザーを備える構造とすることで、1速駆動ギヤ41を完全にオフギヤさせることができるように構成すれば、第一変速機構GR1(第一クラッチC1の締結)でも本発明の暖機制御を行うことが可能となる。その場合、第一変速機構GR1の駆動ギヤを全てオフギヤさせ、その状態で、第一クラッチC1を締結し、第二クラッチC2を解放する。これにより、内側メインシャフトIMS及びそれに固定された駆動ギヤを強制的に回転させることで第一変速機構GR1のシンクロナイザーの構成部品に回転差を生じさせることができる。さらに、この構成の変速機では、第一変速機構GR1の駆動ギヤ及び第二変速機構GR2の駆動ギヤを全てオフギヤさせ、その状態で、第一クラッチC1と第二クラッチC2の両方を締結することによって、第一変速機構GR1と第二変速機構GR2の両方で本発明の暖機制御を行うことも可能である。
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。