実施形態1.
次に、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の第1の実施形態にかかる光学部材10の例を示す構成図である。図1に示す光学部材10は、赤外光を用いる光学装置等において、観察者に対して特定の色味を発現しつつ、装置内部に対しては、可視光を遮断し、かつ赤外光を透過する赤外光透過フィルタとして用いられる。光学部材10は、赤外光を透過させつつ、可視光のうち特定波長の光のみを反射散乱させることにより、少なくとも視認側として定めた第1の側から見ると、可視光の受光領域が所定の色に着色されたように観察される。なお、観察される色は、単色に限らず、例えば、斑模様や迷彩のような領域毎に異なる複数の色の組合せを含む。ここで、第1の側とは、光学部材10において赤外光の入射側もしくは出射側であるとともに可視光が入射する側のうち予め定めた一方の側である。また、本発明では、第1の側でない他方の側を、第2の側という。なお、以下では、第1の側を単に視認側と呼び、第2の側を単に反視認側と呼ぶ場合があるが、所望の色が観察される面(以下、単に観察面という)を第1の側に限定するものではない。例えば、第2の側も観察面となり得る。
図1に示す光学部材10は、基材14と、選択反射部13と、散乱部12と、特定可視光吸収部15とを備えている。
基材14は、赤外光に対して透過性を有する部材により構成されていればよい。なお、基材14は、例えば、ガラスや樹脂等によって作製された基板であってもよい。また、光学部材10が車等に設けられる場合には、基材14は、石飛び等の衝撃に対して割れるのを防止するため、衝撃耐性を有する樹脂基板でもよい。
選択反射部13は、可視光を一定割合以上反射し、赤外光を一定割合以上透過する機能を有する。選択反射部13の例としては、ダイクロイックミラーやコレステリック相液晶フィルムなどが挙げられる。より具体的には、選択反射部13は、ダイクロイックミラーのミラー層に用いられるような誘電体多層膜や、コレステリック相液晶フィルムに用いられるようなコレステリック相液晶層といった反射部材を有していればよい。
散乱部12は、可視光に対して、散乱能を発現させる機能を有する。なお、散乱部12は、可視光に対して、赤外光よりも高い散乱能を発現する機能を有しているのが好ましい。そのような散乱能を発現させる機能の実現例としては、任意の媒質界面(特に反射部材)に設けられる凹凸面や、微粒子を含有した樹脂によって形成される層である微粒子含有樹脂層や、回折構造等が挙げられる。
例えば、散乱部12が任意の媒質界面に形成される凹凸面である場合、該凹凸面での反射および屈折現象を利用して可視光を散乱させられる。特に、散乱部12が反射部材に設けられた凹凸面である場合、反射は屈折などに比べて光線の偏向量が大きいため、可視光の散乱を大きくできる。また、例えば、散乱部12が回折構造である場合、回折構造での回折現象を利用して可視光を散乱させられる。また、例えば、散乱部12が微粒子含有樹脂層である場合、バインダーである樹脂層内における微粒子との界面での屈折現象を主に利用して可視光を散乱させられる。
本発明において、可視光を、波長400nm〜750nmの光としてもよい。また、赤外光を、波長800nm以上の光としてもよい。なお、反射散乱させたい可視域(色味)や、赤外センサの検出帯域等が決まっている場合などには、可視光、赤外光ともに上記範囲内において、さらに対象波長帯を限定してもよい。ただし、可視光については対象波長帯を特に限定しなくても後述する特定可視光吸収部15により色味を調整できる。以下、とくにことわりがなく説明する場合、可視域は波長400nm〜780nmであり、赤外域は近赤外領域とされる波長780nm〜2000nm、特に波長800nm〜1000nmであり、可視光は該可視域の光であり、赤外光は該赤外域の光であるものとする。
図1では、選択反射部13と散乱部12とが異なる部材により構成され、かつ接しているように示されているが、例えば、選択反射部13を構成している部材の一部が散乱部12(例えば、凹凸面や回折構造等)を構成していてもよい。すなわち、選択反射部13と散乱部12とは、例えば、同一部材によって一体形成されていてもよい。また、選択反射部13と散乱部12との間に別の機能層が設けられるなど、これらは接していなくてもよい。
なお、選択反射部13と散乱部12とが接していない場合、選択反射部13と散乱部12の間の距離は短い方が好ましい。特に、散乱部12が回折構造によって実現される場合、該距離は3μm以下が好ましい。両者の距離が離れ過ぎると、可視光の反射光の位相項の係数が後述する2Δnd/λからずれてしまうため、好ましくない。
本実施形態において、散乱部12は、選択反射部13の視認側(少なくとも第1の側)に設けられていればよい。また、特定可視光吸収部15は、散乱部12の視認側に設けられていればよい。すなわち、選択反射部13と散乱部12と特定可視光吸収部15とは、視認側から見て、特定可視光吸収部15、散乱部12、選択反射部13の順に設けられていればよい。
特定可視光吸収部15は、入射する可視光の一部であって、人間が所望の色味を認識するための特定波長の光吸収率がそれ以外の波長域の光吸収率に比べて低い。
特定可視光吸収部15は、例えば、樹脂材料に着色材料を含有した着色樹脂材料であってもよい。樹脂材料としては、ポリカーボネート(PC)、シクロオレフィン(COP)などの熱可塑性樹脂や、ポリイミド(PI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアミド(PA)、ポリアミドイミド(PAI)等の熱硬化性樹脂、アクリルやエポキシなどのエネルギー線硬化性樹脂を用いることができる。
熱硬化性樹脂やエネルギー線硬化性樹脂を用いる場合には、オリゴマーやモノマーなどの重合前駆体化合物(以下、重合性化合物とも呼ぶ)の段階で、着色材料を添加し、その後硬化すればよい。これらの中でも、成形性の観点から実質的に溶剤を含まない、エネルギー線硬化性樹脂が好ましく用いられる。エネルギー線硬化樹脂を用いることで、カバー基材を被せて硬化することが可能になるため、着色樹脂材料の表面の平坦度を高くすることができる。
エネルギー線硬化樹脂としては、紫外線を照射することにより硬化する紫外線硬化樹脂等が挙げられる。このような重合性化合物としては、重合反応により硬化して硬化物となるような成分であれば、特に制限なく使用可能である。例えば、ラジカル重合型の硬化性樹脂、カチオン重合型の硬化性樹脂、ラジカル重合型の硬化性化合物(モノマー)が特に制限なく使用可能である。これらの中でも、重合速度や後述する成形性の観点から、ラジカル重合型の硬化性化合物(モノマー)が好ましい。ラジカル重合型の硬化性樹脂としては、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルアミノ基、(メタ)アクリロイル基、アリルオキシ基、アリル基、ビニル基、ビニルオキシ基等の炭素−炭素不飽和二重結合を有する基を有する樹脂等が挙げられる。
紫外線硬化を行う場合は、光重合開始剤を用いることが好ましく、例えば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ベンゾイン類、ベンジル類、ベンゾインアルキルエーテル類、ベンジルジメチルケタール類およびチオキサントン類などから適宜選択される光重合開始剤が好ましく用いられる。光重合開始剤は、1種または2種以上を組み合わせて使用できる。光重合開始剤の量は、重合性組成物の全体量に対して0.01質量%〜5質量%とすることが好ましく、0.1質量%〜2質量%とすることが特に好ましい。本実施の形態においては、重合性化合物は、特に限定されるものではないが、エトキシ化o-フェニルフェノールアクリレート、メタクリル酸2‐(パーフルオロヘキシル)エチル、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカン(メタ)アクリレート、トリシクロデカンメタノール(メタ)アクリレート、トリシクロデカンエタノール(メタ)アクリレート、1‐アダマンチルアクリレート、1‐アダマンチルメタノールアクリレート、1−アダマンチルエタノールアクリレート、2‐メチル‐2‐アダマンチルアクリレート、2‐エチル‐2‐アダマンチルアクリレート、2‐プロピル‐2‐アダマンチルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレートなどの単官能化合物や、9,9‐ビス[4‐(2‐アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3‐ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4‐ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、イソボニルジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジエタノールジ(メタ)アクリレート、アダマンタンジアクリレート、アダマンタンジメタノールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレートなどの二官能化合物や、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどの三官能化合物、ペンタエリスルトールテトラ(メタ)アクリレートなどの四官能化合物、ジペンタエリスルトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの六官能化合物等が挙げられる。
重合性化合物は1種類または2種類以上を含んでいても構わない。単官能化合物のみを用いる場合は、成形後の離型時に凝集破壊を起こす場合があるので、二官能以上の多官能化合物を含むことが好ましい。重合性化合物組中における多官能化合物は1重量%以上90重量%以下であることが好ましく、さらに10重量%以上80重量%以下であることが好ましい。多官能化合物の量が1重量%未満の場合は、凝集破壊を改善できる効果が不十分であり、90重量%を超える場合には、重合後の収縮が大きく問題になる場合がある。
また、上記の炭素−炭素不飽和二重結合を有する官能基以外にエポキシ基のような開環反応を起こす重合性化合物も用いることができる。このような化合物は重合収縮が小さいため、成形型により精密成形を可能にするだけでなく、反りを低減することができる。特に例示はしないが、この場合にも、単官能化合物のみでは、成形後の離型時に凝集破壊を起こす場合があるので、ニ官能以上の多官能化合物を含むことが好ましい。重合性化合物組中における多官能化合物は1重量%以上90重量%以下であることが好ましく、さらに10重量%以上80重量%以下であることが好ましい。
着色材料は、上述した樹脂材料に溶解した染料であってもよいし、樹脂材料に分散した有機顔料であってもよい。耐久性や光沢感などの要求に応じ適宜選択することができる。
有機顔料としては、参考文献1(相原次郎、大倉研監修、「機能性顔料の技術と応用展開」,株式会社シーエムシー出版,2004年9月,p.246)に記載の顔料を適宜用いることができる。その際、観測される色味を調整する目的で、複数の顔料を樹脂材料に添加することができる。
ここでは赤緑青の3色について、着色材料を例示する。
赤色着色材料としては、アントラセン系、ジケトピロロピロール系、キナクリドン系、アゾ(ビスアゾ)系、キサンテン系、ペリレン系、アントラキノン系などの着色材料を用いることができる。
ジケトピロロピロール系としては、pigment red 254、pigment red 255、pigment red 256、pigment red 270、pigment red 272、pigment orange 71、pigment orange 73等が挙げられる。キナクリドン系としては、pigment red 122、pigment red 202、pigment red 206、pigment red 207、pigment red 209、pigment orange 48、pigment orange 49等が挙げられる。アゾ(ビスアゾ)系としては、pigment red 17、pigment red 21、pigment red 22、pigment red 23、pigment red 31、pigment red 32、pigment red 37、pigment red 38、pigment red 60、pigment red 112、pigment red 114、pigment red 144、pigment red 146、pigment red 150、pigment red 166、pigment red 187、pigment red 188、pigment red 214、pigment red 220、pigment red 221、pigment red 253、pigment red 266、pigment red 268、pigment red 269などが挙げられる。キサンテン系としては、pigment red 81、pigment red 169等が挙げられる。ペリレン系としては、pigment red 123、pigment red 149、pigment red 178、pigment red 179、pigment red 190、pigment red 224、pigment red 242などが挙げられる。アントラキノン系としては、pigment red 168、pigment red 177、pigment red 216等が挙げられる。
緑色着色材料としては、フタロシアニン系、ナフトキノン系、アントラセン系、トリアリールメタン系などを用いることができる。また、黄色着色材料と青色着色材料を配合することで緑色としてもよい。
フタロシアニン系としては、pigment green 7、pigment green 36、pigment green 58などが挙げられる。ナフトキノン系としては、pigment green 8等が挙げられる。アントラセン系としては、pigment green 47、pigment green 54等が挙げられる。トリアリールメタン系としては、pigment green 1、pigment green 4等が挙げられる。
青色着色材料としては、トリアリールメタン系、フタロシアニン系、アントラキノン系などが挙げられる。
トリアリールメタン系としては、pigment blue 1、pigment blue 9、pigment blue 24、pigment blue 56、pigment blue 61などが挙げられる。フタロシアニン系としては、pigment blue 15、pigment blue 16などが挙げられる。アントラキノン系としては、pigment blue 60などが挙げられる。
顔料は、特定可視光吸収部15での赤外光に対する散乱を抑制するため、ある一定以下の粒径であることが好ましい。参考文献2(Bruce M. Novak, "Hybrid Nanocomposite Materials - Between Inorganic Glasses and Organic Polymers", Advanced materials, vol.5 Issue.6, 1993, p.422)によると、顔料の体積分率をVp[%]、光路長をχ[nm]、顔料の半径をr[nm]、波長をλ[nm]、顔料の屈折率をnp、樹脂材料の屈折率をnmとした場合、透過率(I/IO)は以下の式(1)のように表される。
式(1)によると、例えば、Vp=5%、χ=10000nm、λ=940nm、np=1.7、nm=1.52と仮定すると、顔料の粒径(半径の2倍)と透過率の関係は以下の表1のようになる。
したがって、不必要な散乱を有さない光学部材10を得るためには、顔料の粒径は500nm以下が好ましく、400nm以下がより好ましい。顔料等の粒子の粒径は、レーザ回折・散乱式の粒子径分布測定装置で測定することができる。なお、ここでいう粒径とは、メディアン径のことである。
特定可視光吸収部15をなす着色樹脂材料の膜厚は特に制限ないが、散乱部12が凹凸面によって実現される場合、該凹凸面のsagが3〜20μmであると仮定し、該膜厚は、10〜50μmが好ましい。これは、着色樹脂材料が10μmより薄い場合、凸部上の着色樹脂材料の厚みが薄くなるため、色ムラになるおそれがあるためである。また、着色樹脂材料が50μmより厚い場合、赤外領域において不必要な吸収や散乱が生じるおそれがあるため、好ましくない。
樹脂材料中における着色材料の割合(含有率)は、添加する着色材料の重量あたりの吸収の大きさとバインダーとなる樹脂材料の厚みとに依存するが、通常1重量%から20重量%である。1重量%より少ないと、所望の色が発現しないため好ましくない。また、20重量%より多いと、着色材料自体の屈折率により着色樹脂材料の屈折率が影響を受ける。その結果、例えば、特定可視光吸収部15と基材14とに屈折率差が生じて、赤外光の直進透過率が低下するおそれがあるため好ましくない。
以下、散乱部12と選択反射部13と特定可視光吸収部15とを併せて、吸収反射散乱部11という場合がある。この場合、吸収反射散乱部11は、可視光のうち特定波長の光を一定割合以上反射散乱させ、かつ可視光のうち特定波長以外の光を一定割合以上かつ特定波長の光よりも多く吸収し、かつ赤外光を一定割合以上直進透過させる機能を有する。
図1に示す例では、可視光102は、光学部材10の第1の側から+z方向で光学部材10に入射する。一方、赤外光は、光学部材10の第1の側から+z方向で光学部材10に入射してもよいし、第2の側から−z方向で入射してもよい。なお、図中の赤外光101aは前者の例であり、赤外光101bは後者の例である。
例えば、光学部材10に可視光102が入射すると、その一部が特定可視光吸収部15で吸収され、残った光が散乱部12および選択反射部13によって反射散乱される。このとき、可視光102のうち特定可視光吸収部15の吸収帯とされた波長以外の光(上記の特定波長の光)の多くの成分は、特定可視光吸収部15で吸収されることなく、散乱部12および選択反射部13によって反射散乱される。一方、可視光102のうち特定可視光吸収部15の吸収帯とされた波長の光は、その多くの成分が、入射した際と反射後の2回にわたって特定可視光吸収部15で吸収される。このため、光学部材10は、少なくとも第1の側から見ると、特定可視光吸収部15の吸収特性に応じて特定の色に着色して見える。図1の矢印1021は、入射した可視光102のうち、特定可視光吸収部15で吸収されずに反射散乱されて出射する特定波長の光を表している。
また、光学部材10に赤外光101aが入射すると、該赤外光101aは特定可視光吸収部15で一部吸収されたり散乱部12で一部散乱されるが、多くの成分は直進透過して、そのまま選択反射部13を透過する。また、光学部材10に赤外光101bが入射すると、該赤外光101bは選択反射部13を透過した後、散乱部12で一部散乱されたり特定可視光吸収部15で一部吸収されるが、多くの成分は散乱部12を直進透過する。
このように、可視光102のうち特定波長以外の光は、特定可視光吸収部15でその多くが吸収され、可視光102のうち特定波長の光1021は、特定可視光吸収部15および散乱部12を透過して選択反射部13に反射される。このとき、特定波長の光1021が、散乱部12を二回通る場合があるのに対して、赤外光101aおよび赤外光101bは散乱部12を1回しか通らない。したがって、光学部材10は、可視光102のうち特定波長以外の光を吸収しつつ、赤外光101aおよび赤外光101bに比べて可視光102のうち反射光となって出射される特定波長の光1021に対する散乱を大きくできる。また、後述するように散乱部12として選択反射部13の凹凸面を用いる場合、該凹凸面を利用して大きな散乱が得られる。これは、可視光102(特に、特定波長の光1021)に比べて赤外光101aおよび赤外光101bに対する散乱を小さくできることと同意である。したがって、光学部材10は、可視光102のうち特定波長以外の光を吸収し、かつ特定波長の光1021を散乱反射させつつ、赤外光101aおよび赤外光101bをより多く直進透過させることができる。
なお、図2(a)に示すように、光学部材10は、吸収反射散乱部11が2つの基材14(基材14a、14b)に挟持される構成であってもよい。また、図2(b)に示すように、第2の側(図中の−z方向)からも可視光が入射する場合には、選択反射部13の両側に散乱部12(散乱部12a、12b)が設けられ、それらの外側にそれぞれ特定可視光吸収部15(特定可視光吸収部15a、15b)が設けられていてもよい。そのような場合、第1の側および第2の側のいずれも視認側であるとして、第1の側および第2の側のそれぞれから見て、特定可視光吸収部15、散乱部12、選択反射部13の順に設けられればよい。このとき、特定可視光吸収部15が基材14の代わりを担ってもよい。
以下、光学部材10のより具体的な構成例をいくつか説明する。
まず、選択反射部13の凹凸面を利用して散乱部12を実現する例を説明する。図3(a)は、選択反射部の凹凸面を利用して散乱部12を実現する光学部材30の構成例を示す模式断面図である。また、図3(b)は、図3(a)に示す光学部材30の要部の分解断面図である。図3に示す光学部材30は、基材34と、選択反射膜33と、着色樹脂材料層35とを備える。本例の選択反射膜33の少なくとも第1の側には凹凸面331が形成されている。また、選択反射膜33に接する2つの部材、すなわち基材34および着色樹脂材料層35の選択反射膜33側の面にも、互いに略嵌合する形状の凹凸面351、341が形成されている。
本例では、選択反射膜33が選択反射部13に相当する。また、選択反射膜33の凹凸面331が散乱部12に相当する。また、着色樹脂材料層35が特定可視光吸収部15に相当する。なお、本例では、凹凸面331を有する選択反射膜33と着色樹脂材料層35とを併せて、吸収反射散乱部31と呼ぶ。また、選択反射膜33の凹凸面331と接する部材であって、対向側に平坦な面を有する部材を凹凸充填部材とも呼ぶ。図3に示す例では、基材34と着色樹脂材料層35とが凹凸充填部材に相当する。
選択反射膜33は、可視光を一定割合以上反射し、赤外光を一定割合以上透過するように構成されていればよい。選択反射膜33は、例えば、誘電体多層膜やコレステリック相液晶フィルム等が挙げられる。
選択反射膜33の凹凸面331は、例えば、基材34の表面に凹凸構造342を形成して得られる凹凸面341上に、略均一な膜厚hで選択反射膜33(誘電体多層膜等)を成膜(積層)することによって得られる。すなわち、該凹凸面331は、基材34の凹凸面341にならって形成されてもよい。
さらに、本例では、選択反射膜33の凹凸面331上に、対向表面(視認側表面)が略平坦な着色樹脂材料層35を備える。また、着色樹脂材料層35の選択反射膜33側の表面には、選択反射膜33の凹凸面331(さらには基材34の凹凸面341)と嵌合する形状の凹凸構造352が形成されている(図3(b)中の斜線網かけ部分参照)。そのような着色樹脂材料層35の凹凸構造352は、例えば、選択反射膜33の凹凸面331の凹部に着色樹脂材料層35の材料である着色樹脂材料を充填させることで形成できる。
ここで、基材34と選択反射膜33と着色樹脂材料層35の積層状態としては、隙間が無い状態で近接して配されていればよい。具体的には、これらが互いに直接接している場合だけでなく、例えば、間に数十μm以内(100μm以内)の膜厚の接着層や他の機能層として働く薄膜を含むなど間接的に接している場合も含む。なお、薄膜の機能は特に限定されない。以下、このような膜厚の合計が100μm以内で間接的に接している場合も含めて、単に「接している」と表現する場合がある。
基材34は、上述した基材14と同様である。また、着色樹脂材料層35は、上述した特定可視光吸収部14の機能を有していればよい。すなわち、着色樹脂材料層35は、赤外光に対して高い透過性を有するとともに、人間が所望の色味を認識するための特定波長の光吸収率がそれ以外の波長域の光吸収率よりも低くなるような機能(吸収帯)、すなわち光吸収係数の波長依存性を有していればよい。なお、着色樹脂材料層35の吸収帯波長は、含有させる顔料等で適宜調整可能である。
図3に示す例において、基材34と着色樹脂材料層35は、少なくとも赤外域の対象波長帯において、略一致した屈折率を有する。ここで、屈折率が略一致する状態として、対象波長帯における2つの材料の屈折率差またはその平均値は、0.05以下が好ましく、0.03以下がより好ましく、0.01以下がさらに好ましく、0.005以下が特に好ましい。このとき、着色樹脂材料層の屈折率としては平均屈折率を用いてもよいし、着色樹脂材料層に使用した樹脂材料の屈折率を用いることもできる。以下、屈折率の一致性について上記と同様とする。
このような構成により、可視光102のうちの特定波長の光1021に対して、選択反射膜33の傾斜した反射面(凹凸面331)を利用して大きい反射散乱を発現できるとともに、可視光102のうち特定波長以外の光に対して、特定波長の光1021よりも高い吸収を発現できるので、意匠性と内部への高い遮蔽性とを得ることができる。また、赤外光101aおよび赤外光101bに対して、凹凸面331を有する選択反射膜33の両側の部材(基材34と着色樹脂材料層35)の屈折率が略一致していることから、該部材の凹凸構造部分に起因する屈折を防ぐことができ、結果として高い直進透過性が得られる。これは、本構成が、赤外光に対して、入射口径内の位置の違いによる光路長差が生じないもしくは生じても小さく抑えられた構成となっているからである。
なお、図4(a)、(b)に示すように、光学部材30の第2の側も観察面とする場合、光学部材30は、基材34に加えてまたは基材34に代えて第2の着色樹脂材料層35(着色樹脂材料層35b)を備えていてもよい。このような場合であっても、一方の着色樹脂材料層35(例えば、着色樹脂材料層35b)の表面に凹凸構造352bを形成して得られる凹凸面351b上に、略均一な膜厚hで選択反射膜33(誘電体多層膜等)を成膜(積層)することによって、第1の側から入射する可視光102aに対する散乱部として作用する凹凸面331aと同時に、第2の側から入射する可視光102bに対する散乱部として作用する凹凸面331bが得られる。
本例の場合、選択反射膜33の両側の部材(凹凸充填部材)とされる着色樹脂材料層35aと着色樹脂材料層35bが、少なくとも赤外域の対象波長帯において、略一致した屈折率を有していればよい。このようにすれば、選択反射膜33が凹凸面を有していてもその両側に互いに嵌合する形状の凹凸構造352a、352bが配されているので、赤外光101a、101bに対して、入射側の着色樹脂材料層35で生じた入射口径内の位置の違いによる光路長差を出射側の着色樹脂材料層35で吸収できる。したがって、赤外光101a、101bに対して高い直進透過率が得られる。
なお、図4では、基材34a、34bを備える構成が示されているが、基材34a、34bは省略してもよい。また、片側のみ観察面とする場合であっても、着色樹脂材料層35の上に第2の基材34bを積層してもよい(図5(a)参照)。このとき、図5(b)に示すように、第2の基材34bと着色樹脂材料層35の積層順序を入れ替えることも可能である。図5(b)に示す構成では、選択反射膜33の両側に配される2つの基材34a、34bのそれぞれの選択反射膜33と接する側の表面に、凹凸構造が形成される。この場合、基材34aを含めて吸収反射散乱部31と呼んでもよく、このときの着色樹脂材料層35は対向する主面がいずれも平坦な平板形状でよい。
本例の散乱部としての凹凸面331(またはその土台となる基材34もしくは着色樹脂材料層35の凹凸面)の凹凸形状は、サンドブラストなどによって形成される粗面のような凹凸形状であってもよいが、滑らかな曲面(自由曲面、非球面、球面を含む)を多く有する形状がより好ましい。一般に、サンドブラストなどで形成した粗面は導関数が不連続な点を多く有する形状となり、例えば、そのような粗面上に選択反射膜33として誘電体多層膜を形成することを考えた場合、該多層膜が一様の厚さで成膜できず所望の特性が出ないおそれがあるためである。
そのような滑らかな曲面を形成する凹凸構造の例として、多数の微小な球面や非球面のレンズを配置したレンズアレイや、多数のプリズムを配置したプリズムアレイなどが挙げられる。なお、アレイ中のレンズもしくはプリズムは1種に限らず複数種であってもよく、また、これらは規則的に配置されていても不規則に配置されていてもよい。また、他の例として、サンドブラストなどによって形成される基材の粗面をフッ化水素酸などによってエッチングし、表面を滑らかにしたフロスト板の凹凸部や、そのようなフロスト板などの拡散素子の凹凸部を、基材の樹脂層などに転写してできる該樹脂層の凹凸部などが挙げられる。
また、選択反射膜33として誘電体多層膜を形成する場合、多層膜の厚さが数μmとなることがある。このため、誘電多層膜を基材34や着色樹脂材料層35の凹凸面上に成膜する際に、該凹凸面を構成している個々の凹部の幅(当該凹部の底部を通って当該凹部の端点を結ぶ直線の平面方向の長さ)wが小さすぎると、各層を所望の厚さで成膜できない場合がある。したがって、選択反射膜33と接する基材34もしくは着色樹脂材料層35の凹凸面は、凹部の幅wが5μm未満の領域が、可視光が入射する有効領域全体の10%未満であることが好ましく、有効領域内の全ての凹部の幅wが5μm以上であるとより好ましい。なお、当該凹凸面が凸部を含む場合には、凸部についても上記条件を満たしているとより好ましい。すなわち、凸部の幅wが5μm未満の領域が、可視光が入射する有効領域全体の10%未満であるとより好ましく、有効領域内の全ての凸部の幅wが5μm以上であるとさらに好ましい。なお、凸部の幅wは、凹部の幅wの説明における凹部の底部を、凸部の頂き部と読み替えればよい。
なお、とくにことわりがなく説明する場合、凹凸面を構成している凹部は、凹頂点を含むが凸頂点を含まないもしくは凸頂点を境界部として含む領域であり、特に凸稜線で囲まれた領域である。また、凸部は、凸頂点を含むが凹頂点を含まないもしくは凹頂点を境界部として含む領域であり、特に凹稜線で囲まれた領域である。なお、凹部の底部といった場合、凹部の凹頂点だけでなく凹稜線も含まれる。また、凸部の頂き部といった場合、凸部の凸頂点だけでなく凸稜線も含まれる。また、凹凸構造の断面形状がSINカーブ状や自由曲面であったり、凹凸が多段となっている場合など、凹部と凸部の境界があいまいな場合は、断面の変曲点を該断面における凹部と凸部の境界としてもよいし、当該凹凸面を形成している凹凸構造に対して最小二乗平面を求め、その最小二乗曲面よりも下に位置する部分を凹部、上に位置する部分を凸部としてもよい。
以下、選択反射膜33の成膜対象とされる部材が基材34である場合を考える。図6(a)に示すように、成膜対象とされる部材(基材34)の凹凸面をなす凹凸構造(図の例では凹凸構造342)が、複数の凹レンズ状のレンズ部343を隙間なく配置してなる凹レンズアレイの場合、レンズ部343の各々を凹部としてもよい。その場合、該凹凸面は凹部のみからなるとしてもよい。そのようにすれば、隣接するレンズ部343との境界部に相当するレンズ部343間の稜線(符号345)を基材上面から観察することで各凹部の幅wを求めることができる。ここで、図中の一点鎖線で囲った領域のようにレンズ部343の境界部に曲率が生じている場合、傾きが0となる位置を該境界部の頂点として、それら頂点群からなる稜線を基材上面から観察してもよい。図6(a)は、凹凸構造342の一部を切り出して示す平面図であり、図6(b)は、図6(a)に示す凹凸構造342を有する基材34のA−A’断面図である。
なお、凹凸面をなす凹凸構造は凸レンズ状のレンズ部343を隙間なく配置してなる凸レンズアレイであってもよい。その場合、レンズ部343の各々を凸部としてもよい。その場合、該凹凸面は凸部のみからなるとしてもよい。そのようにすれば、隣接するレンズ部343との境界部に相当するレンズ部343間の稜線345を基材上面から観察することで各凸部の幅wを求めることができる。なお、上述したようにレンズアレイは、規則的なものに限らずレンズ形状や配置に不規則性を有するものも含む。また、レンズ部343の代わりに、凸型のプリズムを配置してなる凸型のプリズムアレイや凹型のプリズムを配置してなる凹型のプリズムアレイの場合も、レンズアレイの場合と同様でよい。また、図6(a)に示す例では、成膜対象とされる基材の凹凸面をなす凹凸構造として、凹凸構造342を例示しているが、着色樹脂材料層35の凹凸構造352と読み替えてもよい。その場合、着色樹脂材料層35の凹凸面351側を上向きにして凸型/凹型を判断すればよい。
また、凹部の形状が閉じていない形状の場合、例えば、逆蒲鉾状や溝形状のように底部が伸長している場合には、いわゆる溝の幅(その伸長方向に垂直な方向の長さ)や、当該凹部の形状を楕円で近似した短軸方向の長さを、当該凹部の幅wとして求めてもよい。また、凹稜線が分岐しているような底部が2以上の方向に伸長する形状の場合には、分岐した先の各々で幅wを求めてもよいし、該凹部の形状を複数の多角形に分割して考え、各多角形において楕円近似して幅wを求めてもよい。また、底部をなす凹稜線が認められない場合や、閉じた形状であっても複雑な形状の場合、該凹部の形状を複数の多角形に分割して考え、各多角形において楕円近似して幅wを求めてもよい。
なお、凹凸面がサンドブラスト面のような粗面の場合の凹部および凸部並びにそれらの幅wについては、上記の限りではない。
また、意匠性の観点から、凹部および凸部の幅wが大きくなりすぎるとそれらが視認されるおそれがある。このため、凹部および凸部の各々において幅wの最小値は200μm以下が好ましく、100μm以下がより好ましい。なお、このとき、凹部の幅wに、底部が伸長している形状の伸長方向の長さや、楕円近似した場合の長軸方向の長さが含まれてもよく、凸部の幅wに、底部が伸長している形状の伸長方向の長さや、楕円近似した場合の長軸方向の長さが含まれてもよい。
次に、散乱部として機能する選択反射膜33の凹凸面331の傾斜角度αについて説明する。図7は、散乱部として機能する選択反射膜33の凹凸面331の傾斜角度αと、可視光102の反射散乱との関係を示す説明図である。なお、図7に示す例では、散乱部として第1の側の凹凸面331を例示しているが、第2の側も観察面とする場合は第2の側の凹凸面331(凹凸面331b等)も同様とする。なお、その場合、可視光の経路が逆方向となる点に注意が必要である。
とくに、選択反射膜33の凹凸面331の傾斜角度αが大きくなると、選択反射膜33の角度依存性により赤外光において意図しない反射光が生じたりするだけでなく、可視光102においても反射散乱強度を低下させる要因になる場合がある。ここで、傾斜角度αの基準(0°位置)となる面は、基板の平面方向(XY平面)としてもよい。なお、図7(a)および(b)では、光線が照射される部分の傾斜角度αを示している。
例えば、図7(a)に示すように、傾斜角度αが45°を超える場合、当該選択反射膜33により反射される可視光102は入射時の進行方向を前進させる方向の光となる(図中の白矢印参照)。当該選択反射膜33により反射される可視光全体の中で、このような前方に反射される光の割合が大きいと、入射時の進行方向を後退させる方向である後方に反射される光の割合が相対的に小さくなる。後方に反射される光の割合が小さいと、当該光学部材30の当該可視光の入射界面(出射界面でもある)に戻る光(反射光)の光量が低下したり、十分な散乱特性が得られないおそれがある。可視光に対する反射散乱が十分でない場合、当該光学部材30の着色すなわちユーザから見える色が所定の色相からずれる、明度が低下する、などの問題が生じる。また、反射光の光量が低下すると当該光学部材30の反視認側から出射される可視光の光量が大きくなり、赤外光に対する迷光が増える、などの問題も生じる。
また、図7(b)に示すように、傾斜角度αが0.5×asin(1/ns)を超える場合、当該選択反射膜33により反射される可視光102は、asin(1/ns)以上の角度βで、当該選択反射膜33に接している出射側部材の出射界面(図中の界面353)に至りやすい。ここで、nsは該部材の屈折率を表している。なお、該部材の凹凸構造部分と出射界面を構成している部分が異なる材料(例えば、図5(a)(b)の基材34aと着色樹脂材料層35の積層構造等)の場合は、該部材において出射界面を構成している部分が空気との界面を形成するため、nsとして該部分の屈折率を用いてもよい。
図7(b)に示すように、可視光102がasin(1/ns)以上の角度βで出射界面に至ると、該出射界面で全反射が起こるため、そのような可視光の割合が大きいと、上記の場合と同様、反射光の光量が低下したり、十分な散乱特性が得られないおそれがある。
したがって、選択反射膜33の凹凸面331は、可視光が入射する有効領域内において、傾斜角度αが45°以内の領域が90%以上であると好ましく、傾斜角度αが0.5×asin(1/ns)以内となる領域が90%以上であるとより好ましく、該有効領域内の全ての領域において傾斜角度αが45°以内であるとさらに好ましく、該有効領域内の全ての領域において傾斜角度αが0.5×asin(1/ns)以内であるとさらに好ましい。
また、上述した傾斜角度αの規定は選択反射膜33の凹凸面331の傾斜角度についてであるが、該選択反射膜33の凹凸面331の凹凸形状は、成膜対象とされる部材の凹凸面の凹凸形状が模されたものと見なせるため、上述した傾斜角度αの規定は、選択反射膜33の両側の部材の凹凸面にも適用可能である。なお、選択反射膜33の両側の部材のうち少なくとも成膜対象とされる部材の凹凸面が上述した傾斜角度αの規定を満たしていれば、緩やかな傾斜部分が多くなり、均一な膜厚で選択反射膜33を成膜しやすくなるため、好ましい。このとき、該部材の凹凸面をなす凹凸構造がレンズアレイのような一定の曲率半径が規定できる曲面を有するレンズ部を隙間なく配置した構成である場合、傾斜角度αに加えてもしくは傾斜角度αに代えて次のような条件を満たすと好ましい。
すなわち、レンズ部の曲率半径をRとし、レンズ部の中心から最も離れた該レンズ部の境界部の頂点までの距離を該レンズ部の半径rとした場合を考える。このとき、該曲率半径Rと半径rの比r/Rは、傾斜角度αが45°以上に対応する数値γ以上であると好ましく、傾斜角度αが0.5×asin(1/ns)以下に対応する数値ζ以下であるとより好ましい。ここで、r/Rについて、数値γおよび数値ζはともに屈折率nsに依存する。例えば、屈折率nsが1.51の場合、数値γは0.71となり、数値ζは0.35となる。より一般的な場合には、該レンズ部の傾斜はα=atan[(r/R)/{1−(r/R)2}0.5]となり、出射界面での全反射の条件がnssinβ=1であることと、2α=βの関係式により、r/R=tan{0.5×asin(1/ns)}/[1+tan2{{0.5×asin(1/ns)}]0.5により値を求められる。
また、意匠性、特に発色性能の観点から、光学部材30全体として、可視光の反射散乱角のFWHMは5°以上が好ましく、15°以上がより好ましく、30°以上がさらに好ましい。また、光学部材30全体として、可視光の対象波長帯のうちのある波長における、入射光量に対する反射散乱光の総光量の比は、50%以上が好ましく、75%以上がより好ましい。このようにすることで当該光学部材30の観察色における明度を上げることができる。
また、傾斜角度αの情報は選択反射膜33の両側の部材のうちの一方の部材を取りだし、それに対して光を入射し、その散乱特性を測定することでも得られる。例えば、図7(c)に示すように、片側の面が傾きαで傾斜しそれに対向する面の傾きが0°となる屈折率nsの基材に対して検査光103を入射するとスネルの法則により、sinα=nssinγとなる角度γの方向に屈折される。一方、屈折した光線は対向する面に対して角度(α―γ)で入射するため、対向する面から出射する光線の角度をδとすると、nssin(α―γ)=sinδとなる。以上により、δ=asin[sinα×{(ns 2−sin2α)0.5−cosα}]となる。したがって、当該部材の屈折率と凹凸面によって散乱される光の散乱特性を調べることで凹凸面の傾斜角αの情報が得られる。
例えば、検査光103に対する該部材の屈折率nsを1.51とする場合、αが45°とするとδは26.3°となるため、該部材に対して光を入射した場合、26.3°以上の角度で散乱される光線がある場合には、該部材の凹凸面は45°以上の傾斜を含む。また、αが0.5×asin(1/ns)=20.7°とすると、δは10.9°となるため、該部材に対して光を入射した場合、10.9°以上の角度で散乱される光線がある場合には、該部材の凹凸面は0.5×asin(1/ns)°以上の傾斜を含む。
図8は、赤外光の入射に対する、光学部材30による透過成分の光量分布の角度依存性の例を示すグラフである。図8において、横軸は透過成分の出射角度θ[°]を表し、縦軸は光強度を表している。なお、入射する赤外光はZ方向に進行するものと考える。図8に示すように、本例の光学部材30(例えば、図3の基材34、選択反射膜33および着色樹脂材料層35)を透過する赤外光は、直進透過光と透過散乱光とに大別できる。上述したように、選択反射膜33およびその両側の凹凸充填部材の複合作用により、当該光学部材30に入射した赤外光に対して大きな直進透過光が得られる。
しかし、このとき選択反射膜33の角度依存性によって透過光量の変調が発生したり、各凹凸構造が界面につくるエッジ部分によって散乱が生じる場合がある。したがって、当該光学部材30における赤外光の入射光量に対する直進透過光の光量の比をT0とすると、T0は、75%以上が好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましく、95%以上が最も好ましい。なお、T0の代わりにヘイズ値を用いてもよい。その場合、光学部材30の赤外光のヘイズ値は25%未満が好ましく、15%未満がより好ましく、10%未満がさらに好ましく、5%未満が最も好ましい。なお、ヘイズ値としては、JIS K 7136に記載されているように、試験片を通過する透過光のうち、前方散乱によって、入射光から0.044rad(2.5°)以上それた透過光の百分率として求めてもよい。JIS K 7136では直進透過光に対応する角度範囲が2.5°以内となっているが、例えば1.5°以下のように2.5°より狭い角度範囲の透過光を直進透過光としてもよい。
また、当該光学部材30を透過する赤外光のうち直進透過光以外の光を透過散乱光とした場合、当該光学部材30における赤外光の入射光量に対する透過散乱光の光量の総光量の比をT1とすると、T1’=T1/(T0+T1)×100[%]によって透過散乱光を評価できる。T1’は、10%以下が好ましく、5%以下がより好ましく、2%以下がさらに好ましい。このとき、T1’は、赤外光について全ての透過光を測定するのではなく、赤外光を扱う装置の仕様に応じて、所定の出射角θ2内に出射される光を対象にして測定してもよい。このように計測に用いる透過光の角度を限定する場合であって、θ2として10°以下とする場合、T1’は3%以下が好ましく、2%以下がより好ましく、1%以下がさらに好ましい。
本例の光学部材30の製造方法としては、上述したように、所望の凹凸形状を有する凹凸面を有する基材34に、選択反射膜33(誘電体多層膜等)を成膜後、着色樹脂材料を充填する方法が挙げられる。
図9は、本例の光学部材30の製造方法の例を示す説明図である。図9に示す例では、まず、微細な凹凸形状の凹凸面341bを有する基材(表面微細加工基材)34bを用意する(工程(a))。次いで、表面微細加工基材に多層膜(選択反射膜33)を成膜する(工程(b))。成膜された多層膜の表面は、凹凸面341bの凹凸形状にならった凹凸面331となる。次いで、成膜された多層膜の上に、着色樹脂材料35’を滴下する(工程(c))。次いで、着色樹脂材料の上面を平坦化させるために、ガラス等の第2の基材34aを被せ、必要に応じてプレスしながら着色樹脂材料を硬化させる(工程(d))。工程(d)では、着色樹脂材料の特性に応じ、加熱処理やUV処理をして、硬化させることができる。
また、図10は、本例の光学部材30の製造方法の他の例を示す説明図である。図10に示す例では、多層膜の上に着色樹脂材料35’を滴下後(工程(c))、フッ素やシリコーン等の離型処理が施されたガラス等の基材36を被せて、着色樹脂材料を硬化させる(工程(d))。硬化後、基材36を剥離する(工程(e))。本例では、光学装置を低背化することができる。
次に、選択反射部の凹凸面を利用して散乱部12を実現する他の例を説明する。図11(a)は、選択反射部の凹凸面を利用して散乱部12を実現する光学部材40の構成例を示す模式断面図である。また、図11(b)は、図11(a)に示す光学部材40の要部の分解断面図である。図11に示す光学部材40は、基材44と、コレステリック相液晶層43と、着色樹脂材料層45とを備える。本例のコレステリック相液晶層43の少なくとも第1の側には凹凸面431が形成されている。また、コレステリック相液晶層43に接する少なくとも第1の側の部材、すなわち着色樹脂材料層45のコレステリック相液晶層43側の面にも、凹凸面431と略嵌合する形状の凹凸面451が形成されている。
本例では、コレステリック相液晶層43が選択反射部13に相当する。また、コレステリック相液晶層43の凹凸面431が散乱部12に相当する。また、着色樹脂材料層45が特定可視光吸収部15に相当する。なお、本例では、凹凸面431を有するコレステリック相液晶層43と着色樹脂材料層45とを併せて、吸収反射散乱部41と呼ぶ。本例でも、コレステリック相液晶層43の凹凸面431と接する部材であって、対向側に平坦な面を有する部材を凹凸充填部材とも呼ぶ。図11に示す例では、着色樹脂材料層45が凹凸充填部材に相当する。
なお、本例は、上記の光学部材30において、凹凸面331を有する選択反射膜33の代わりに、凹凸面431を有するコレステリック相液晶層43を備える点以外は、基本的に光学部材30と同様でよい。したがって、図12(a)のように着色樹脂材料層45の上にさらに第2の基材44(図中の基材44a)を備える構成や、図12(b)のように、着色樹脂材料層45と基材44aの積層順序を入れ替えた構成や、図13のように、コレステリック相液晶層43の第2の側にも凹凸面431bが形成されるとともに、さらに第2の着色樹脂材料層45(着色樹脂材料層45b)を備える構成も可能である。なお、図12(b)に示す例では、基材44aが凹凸充填部材とされる。また、図13に示す例では、着色樹脂材料層45a、45bが凹凸充填部材とされる。
本例において、コレステリック相液晶層43の凹凸面431は、例えば、当該凹凸面431と接する一方の部材(図11および図12(a)の着色樹脂材料層45、図12(b)の基材44a等)の表面に凹凸構造を形成して凹凸面とし、該凹凸面を内側にして、他方の部材(図11の基材44、図12(a)(b)の基材44b等)との間にコレステリック相液晶層43を挟持することによって形成できる。このとき、他方の部材の表面にも凹凸構造を形成して凹凸面とし、両方の部材の凹凸面を内側にして挟持すれば、図13に示す構成が得られる。
本例では、コレステリック相液晶層43と、コレステリック相液晶層43の凹凸面431と接する部材(凹凸充填部材)とが、少なくとも赤外域の対象波長帯において、略一致した屈折率を有しているとよい。なお、コレステリック相液晶層43の屈折率は平均屈折率でよい。このようにすると、赤外光101aおよび赤外光101bに対して、コレステリック相液晶層43および凹凸充填部材の凹凸構造部分に起因する屈折を防ぐことができ、結果として高い直進透過性が得られる。
コレステリック相液晶層43は、可視光を一定割合以上反射し、赤外光を一定割合以上透過するように構成されている。コレステリック相液晶は、液晶分子の螺旋構造により選択反射帯を有しており、その選択反射帯を可視域に設けることで、可視光のみを選択的に反射できる。
より具体的には、コレステリック相液晶層43において、螺旋ピッチpや、液晶の平均屈折率ncを調整すればよい。一般に、コレステリック相液晶の選択反射波長λRは、以下の式(2)で与えられる。
λR=p・nc ・・・(2)
したがって、上記の式(2)において、選択反射波長λRが、選択反射させたい可視光の波長と同程度になるように、螺旋ピッチpや液晶の平均屈折率ncを調整すればよい。なお、螺旋ピッチpの調整方法としては、配向制御の他、キラル剤のHTP(Helical Twisting Power)や濃度を調整する方法が挙げられる。
なお、図11〜図13では光学部材40が1つのコレステリック相液晶層43を備える例を示したが、コレステリック相液晶層は、単層に限られない。例えば、光学部材40は、選択反射帯の異なるコレステリック相液晶層43を複数(厚さ方向(Z方向)に積層するように)備えていてもよい。このとき、基材44を含むコレステリック相液晶フィルム等を複数積層してもよい。一例として、選択反射帯の中心が430nm、530nm、630nmとなる3種類のコレステリック相液晶層もしくはコレステリック相液晶フィルムを積層してもよい。このような構成とすることで、広い帯域の可視光を反射散乱させつつ、赤外光を透過させることができる。そのような場合、着色樹脂材料層45は、最上層(最も第1の側にある層)のコレステリック相液晶層もしくはコレステリック相液晶フィルムより上に積層されればよい。
また、コレステリック相液晶には、螺旋の向きに対応した円偏光を反射する特徴があるため、図14に示すように、コレステリック相液晶層43の反視認側に、第2の選択反射部46をさらに設けてもよい。そのように構成することで、両方の円偏光の光に対して反射散乱させることができる。その場合、第2の選択反射部46を含めて吸収反射散乱部41としてもよい。
第2の選択反射部46は、コレステリック相液晶層43の選択反射帯を含む波長帯の可視光を一定割合以上反射して赤外光を一定割合以上透過するように構成されればよく、例えば、ダイクロイックミラーのミラー層に用いられるような誘電体多層膜であってもよい。なお、第2の選択反射部46は、コレステリック相液晶層43を挟持している部材の反視認側に限らず、例えば、該部材とコレステリック相液晶層43の間などに設けられていてもよい。例えば、コレステリック相液晶層43として、右円偏光の可視光102cに対して選択反射を示すコレステリック相液晶を用いる場合、透過する左円偏光の可視光102dを第2の選択反射部46で反射させてもよい。なお、第2の選択反射部46とコレステリック相液晶層43との関係は上述の特許文献3におけるそれと同様であるため、説明を省略する。このような構成においても、可視光102のうち特定波長の光1021に対して十分な反射散乱が得られるだけでなく、赤外光に対する散乱を大きく低減できる。
なお、本例の凹凸面431についても、滑らかな曲面(自由曲面、非球面、球面を含む)を多く有する形状であれば液晶の配向性がよくなるため、より好ましい。
他の点に関しては光学部材30と同様である。
なお、図15に示すように、凹凸面を有さないコレステリック相液晶層53を備える構成も可能である。コレステリック相液晶層53は、可視光を一定割合以上反射散乱し、赤外光を一定割合以上透過するように構成される。例えば、コレステリック相液晶層53は、当該層の面内に、配向軸の異なる複数の領域を有するコレステリック相液晶層であってもよい。このようなコレステリック相液晶層53は、例えば、選択反射帯を可視域に設定しつつ、コレステリック相液晶層を形成する際に液晶の配向処理を加えないことにより、形成できる。このような配向の乱れによって、設定した選択反射帯において反射散乱させることができる。なお、本例でも、散乱部12および選択反射部13としてコレステリック相液晶層53の少なくとも第1の側に、着色樹脂材料層55が備えられていればよい。なお、本例の着色樹脂材料層55のコレステリック相液晶層53側の表面は凹凸形状ではなく、平坦でよい。また、本例では、コレステリック相液晶層53と着色樹脂材料層55との間の屈折率差に関する上記限定は無視してよい。
他の点に関しては光学部材40と同様である。
次に、微粒子含有樹脂を利用して散乱部12を実現する例を説明する。図16は、散乱部12として微粒子含有樹脂層62を有する光学部材の例を示す模式断面図である。図16に示す光学部材60は、基材64と、選択反射部63と、微粒子含有樹脂層62と、着色樹脂材料層65とを備える。本例では、選択反射部63と微粒子含有樹脂層62と着色樹脂材料層65とを併せて、吸収反射散乱部61と呼ぶ。
微粒子含有樹脂層62は、可視光および赤外光に対して透光性を有する樹脂材料をバインダーとして用い、該樹脂材料に、少なくとも可視域において該樹脂とは異なる屈折率を有する微粒子を均一に分散させたものであってもよい。
このとき、上述したように、微粒子の粒径や、微粒子とバインダーとなる樹脂材料との屈折率の比を調整することにより、可視光に対する散乱を大きくし、赤外光に対する散乱を小さくできる。例えば、樹脂に、赤外域の近傍に吸収帯を有する色素や顔料を含有する材料を添加することにより、可視域の対象波長域と赤外域の対象波長域との間に大きな屈折率差を生じさせることができる。このような樹脂と、微粒子とで赤外域の対象波長域の屈折率差が小さくなるまたは屈折率が略一致するように調整してもよい。
なお、散乱部12として微粒子含有樹脂層62を備える以外の点は、上述した他の例と同様である。
また、図17に、上記の微粒子含有樹脂層62と着色樹脂材料層65とを一つの機能性樹脂層(以下、散乱吸収樹脂層76という)によって実現した光学部材70の例を示す。図17は、散乱部および特定可視光吸収部として散乱吸収樹脂層76を有する光学部材70の例を示す模式断面図である。図17に示す光学部材70は、基材74と、選択反射部73と、散乱吸収樹脂層76とを備える。本例では、選択反射部73と散乱吸収樹脂層76ととを併せて、吸収反射散乱部71と呼ぶ。
散乱吸収樹脂層76は、可視光および赤外光に対して透光性を有する樹脂材料をバインダーとして用い、該樹脂材料に、上述の微粒子含有樹脂層62に用いられる微粒子と、上述の着色樹脂材料層65に用いられる着色材料(染料や有機顔料等)を、均一に分散させたものであってもよい。
なお、散乱部12および特定可視光吸収部15として散乱吸収樹脂層76を備える以外の点は、上述した他の例と同様である。
次に、回折構造を利用して散乱部12を実現する例を説明する。図18(a)および(b)は、散乱部12として回折構造22を有する光学部材20の例を示す模式断面図である。図18(a)に示す光学部材20は、基材24と、選択反射部23と、回折構造22と、着色樹脂材料層25とを備える。本例において、回折構造22の少なくとも凹部222は、着色樹脂材料層25によって充填されている。本例では、選択反射部23と、回折構造22と、着色樹脂材料層25とを併せて、吸収反射散乱部21と呼ぶ。また、回折構造22と接する部材であって、対向側に平坦な面を有する部材を凹凸充填部材とも呼ぶ。図18(a)に示す例では、着色樹脂材料層25が凹凸充填部材に相当する。
また、図18(b)に示す光学部材20は、基材24と、選択反射部23と、回折構造22と、充填部26と、着色樹脂材料層25とを備える。本例において、回折構造22の少なくとも凹部222は、充填部26によって充填されている。本例では、選択反射部23と、回折構造22と、充填部26と、着色樹脂材料層25とを併せて、吸収反射散乱部21と呼ぶ。なお、図18(b)に示す例では、充填部26が凹凸充填部材に相当する。
回折構造22は、少なくとも可視光に対して回折作用を発現し、赤外光に対する回折作用の発現が可視光の回折作用の発現に対し抑制できる構造であれば、具体的な構成は問わない。なお、図18には、回折構造22として、断面が矩形の凹凸構造が示されているが、回折構造22は、断面が矩形の凹凸構造に限られない。
図18に示す例において、回折構造22の凹部222および凸部221の屈折率差をΔn、入射する波長をλ、凸部221の高さもしくは凹部222の深さをdとする。回折構造22の回折特性は、当該回折構造22の電場の位相項の係数となるΔnd/λによって変わる。
ここで、選択反射部23で反射される可視光102に対しては、回折構造22を往復するため、該係数を2Δnd/λとして計算する。一方、選択反射部23を透過する赤外光101aおよび赤外光101bに対しては、回折構造22を一度透過するのみなので、Δnd/λのままで計算すればよい。干渉条件により、これら係数の値は、0.5などの1/2に奇数を乗じた値に近いほど、0次回折光の光量が小さく、0もしくは1などの整数に近いほど、0次回折光の光量が大きくなる(図19(a)(b)参照)。なお、図19(a)および(b)では、d=270nm、Δn=0.45として、これら係数の値を計算した。
例えば、矩形の回折格子の0次回折効率すなわち入射光に対して直進透過する成分の比率は、位相項の係数をφとしてcos(πφ)2で計算できるが、0次回折効率η0を、φ=1回通過時(透過)の位相項の係数であるΔnd/λとした場合と、φ=2回透過時(反射)の位相項の係数である2Δnd/λとした場合とを比較すると、可視光では反射の位相項の係数である2Δnd/λ(図19の実線で示された特性)で決まる反射0次回折効率を30%未満に低減でき、赤外光では透過の位相項の係数であるΔnd/λで決まる透過0次回折効率を約80%以上にできる。
また、本例においては、凸部221の材料と凹凸充填部材とが、少なくとも赤外域の対象波長帯において、略一致した屈折率を有しているとよい。例えば、凸部221が、赤外域の近傍に反射帯を有する多層膜や、赤外域の近傍(可視域と赤外域の間もしくは赤外域の対象波長域よりも長波長側)に吸収を有する色素や顔料を含有する材料により形成され、凹部222が、該材料と赤外域(特に対象波長域)で屈折率が近いもしくは一致する材料で充填されていてもよい。一般に、反射帯を有する多層膜や吸収を有する材料は、屈折率の異常分散が生じており、特に反射帯や吸収帯の近傍の屈折率が急激に変化する。このような特性を利用すれば、可視域の対象波長域と赤外域の対象波長域との屈折率差が大きくなるよう調整できる。回折構造22が、このような材料と、該材料と赤外域の少なくとも対象波長域で屈折率が略一致する材料との組み合わせで形成されるよう調整できれば、可視光のみに回折作用を生じさせることも可能である。
また、回折構造22は、回折作用によって光(特に、可視光)を、例えば、X方向だけでなくY方向(成分)にも偏向させるなど、2次元的な散乱作用を付与できるものが好ましく、例えば、2次元の凹凸構造であってもよい。
図20は、赤外光の入射に対する、回折構造22による透過成分の光量分布の角度依存性の例を示すグラフである。図20において、横軸は透過成分の出射角度θ[°]を表し、縦軸は光強度を表している。一般に、回折作用を発現させる機能を有する回折構造に光が入射すると、直進透過光となる0次回折光と、いわゆる回折光、すなわち直進以外の方向に進む偏向光となる高次回折光という、大別して2種類の回折光を生じる。一般的に0次回折光は高次回折光よりも強度が十分に強い。このため、回折構造22に赤外光が入射して高次回折光が発生したとしても、図20に示すような強いコントラストが得られやすい。
当該光学部材20における赤外光の入射光量に対する0次回折光の光量の比をT0とした場合、T0が75%以上となるように回折構造22が調整されるのが好ましい。なお、T0は75%以上が好ましいが、85%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましく、95%以上が最も好ましい。なお、この場合の「0次回折光」には反射0次回折光は含まれない。以下、赤外光について「0次回折光」といった場合には、透過光のうちの0次回折光を指す。なお、上述したように、T0の代わりにヘイズ値を用いてもよい。
回折構造22は、当該光学部材20における赤外光の入射光量に対する高次回折光量の総光量の比をT1とし、T1’=T1/(T0+T1)×100[%]とした場合、T1’が10%以下となるよう調整されるのが好ましい。なお、T1’は10%以下が好ましいが、5%以下がより好ましく、2%以下がさらに好ましい。なお、上記の「高次回折光」には反射成分は含まれない。以下、赤外光について「高次回折光」といった場合には、透過成分のうちの0次以外の回折光、すなわち、1次回折光、2次回折光、3次回折光・・・を指す。また、計測に用いる透過光の角度を限定する場合であって、θ2として10°以下とする場合には、上述したように、T1’は3%以下が好ましく、2%以下がより好ましく、1%以下がさらに好ましい。
また、図示省略するが、選択反射部23の表面に溝を設けて凸部221の材料とするなど、選択反射部23と回折構造22とが一体形成されてもよく、このようにすると、回折構造22(より具体的には凸部221)から選択反射部13へ入射する際の反射を低減でき、赤外光の直進透過率を高められる。
また、一般に、高次回折光が発生し、回折構造22により発生する高次回折光の数をNとした場合、高次回折光の光量は1/Nに比例して小さくなる近似ができる。なお、発生する高次回折光の数Nは、散乱性を大きくできるので、100以上が好ましく、1000以上がより好ましい。また、一般に、高次回折光による回折角度を大きくしようとすると凹凸構造(格子ピッチ)を小さくできるので、素子面を視認した場合の均一性を上げることができる。したがって、回折構造22単体による回折特性として、可視光の高次回折光の光量分布の半値全幅(以下、FWHM)は、5°以上が好ましく、10°以上がより好ましく、20°以上がさらに好ましい。
以上のように、本実施形態によれば、可視光のうち所望の色を発現する特定波長の光に対して反射散乱性が高く、特定波長の光以外の光に対して高い吸収を有し、かつ赤外光の直進透過性が高い反射散乱部を含む光学部材を提供できる。
また、特定可視光吸収部15の吸収材料を組み合わせることにより容易に色味を調整できるので、複雑な設計を伴わずに色再現範囲の広い光学部材を提供できる。
なお、上記の各光学部材において、吸収反射散乱部またはそれを支える基材の反視認側に、可視光を吸収して赤外光を透過する吸収部材や、可視光を反射して赤外光を透過する反射部材のいずれかを有していてもよい。
図21(a)は、上記の吸収部材を備える光学部材10の例を示す構成図であり、図21(b)は、上記の反射部材を備える光学部材10の例を示す構成図である。図21(a)に示す例において、光学部材10は、吸収反射散乱部11の反視認側に、可視光を吸収して赤外光を透過する吸収部材16をさらに備えている。また、図21(b)に示す例において、光学部材10は、吸収反射散乱部11の反視認側に、可視光を反射して赤外光を透過する反射部材17とを備えている。
このような構成によれば、透過する可視光をさらに低減できる。また、吸収部材16は、上記の光学部材が備える基材(例えば、基材34、34a、34b、44、44a、54、64、74等)によって実現されてもよい。すなわち、該基材が吸収剤等を含むことによって、吸収部材16が構成されてもよい。
実施形態2.
次に、本発明の第2の実施形態を、図面を参照して説明する。図22は、本発明の第2の実施形態にかかる光学装置の例を示す構成図である。
図22に示す光学装置100は、筐体4内に、赤外光発光部2および/または赤外光受光部3を有している。また、光学装置100は、筐体4に設けられた開口部を覆うように光学部材1が設けられている。このような構成とすることにより、赤外光は、光学部材1を通して筐体4の外部へ受発光される。
光学装置100は、例えば、赤外光を用いて画像を撮影するカメラ装置や、赤外光を用いて、物体の距離や近くの物体の有無を検出する距離センサ、近接センサなどの計測装置や、赤外光を用いて情報通信などを行う通信装置や、赤外光を用いて虹彩や指紋、静脈の認証などの生態認証などを行う認証装置といった赤外光を利用した光学装置である。
また、筐体4は、赤外光発光部2や赤外光受光部3以外の他の機能を発揮する機器を囲っていてもよい。
赤外光発光部2は、ランプなどに限らず、LEDやレーザ光源を用いたものであってもよい。また、赤外光発光部2は、自身が赤外光を発光する機能を有するものに限らず、他で発光された赤外光を出力する送信部であってもよい。
また、赤外光受光部3は、フォトダイオードのような単一の受光素子に限らず、CMOSセンサなどのように、画像情報を取得するものであってもよい。
光学部材1は、赤外光を透過し、可視光のうち特定波長の光を反射散乱させ、特定波長以外の光を吸収する機能を有する赤外光透過フィルタであって、筐体4の外部から見た場合に特定の色に着色されたように見えるようになっている。光学部材1は、例えば、第1の実施形態で示した光学部材10〜70のいずれかであってもよい。
このような構成であれば、赤外光の送信感度および/または受信感度を低下させずに、かつ筐体の開口部が特定の色に着色されたように見える光学装置が得られる。
まず、赤色を発現するための特定可視光吸収部15としての赤色着色樹脂材料の調製例を示す。本例では、アクリロイルモルフォリン(KJケミカルズ社製、商品名ACMO)、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(新中村工業社製、商品名A−DCP)の等量組成物に、トクシキ社製赤色分散液(8649RED、pigment red 177、平均粒径86nm)を加えた。その後、溶剤を減圧留去し、さらに、光開始剤としてIC754(BASFジャパン株式会社製)を加え、赤色着色材料とした。このとき、赤色顔料と光開始剤の固形分濃度はそれぞれ5重量%、3重量%であった。10μmに成膜したときの分光透過率を図23に示す。なお、アクリロイルモルフォリンとトリシクロデカンジメタノールジアクリレートの等量混合物の940nmにおける屈折率は1.52であった。
また、緑色を発現するための特定可視光吸収部15としての緑色着色樹脂材料の調製例を示す。本例では、アクリロイルモルフォリン、トリシクロデカンジメタノールジアクリレートの等量組成物に、トクシキ社製緑色分散液(8438GREEN、pigment yellow 180とpigment blue 15:1の混合物、平均粒径340nm)を加えた。その後、溶剤を減圧留去し、さらに、光開始剤としてIC754を加え、緑色着色樹脂材料とした。このとき、緑色顔料と光開始剤の固形分濃度はともに3重量%であった。10μmに成膜したときの分光透過率を図23に示す。
また、青色を発現するための特定可視光吸収部15としての青色着色樹脂材料の調製例を示す。アクリロイルモルフォリン、トリシクロデカンジメタノールジアクリレートの等量組成物に、トクシキ社製緑色分散液(8537BLUE、pigment blue 15:1、平均粒径340nm)を加えた。その後、溶剤を減圧留去し、さらに、光開始剤としてIC754を加え、青色着色樹脂材料とした。このとき、青色顔料と光開始剤の固形分濃度はともに3重量%であった。10μmに成膜したときの分光透過率を図23に示す。
図23では、“R”が赤色着色樹脂材料の成膜後の分光透過率を表し、“G”が緑色着色樹脂材料の成膜後の分光透過率を表し、“B”が青色着色樹脂材料の成膜後の分光透過率を表す。
次に、上記の各着色樹脂材料を用いた光学部材の例を示す。本例は、図3に示す構成の光学部材30の実施例である。
まず、波長950nmにおいて屈折率が1.51となる厚さ0.7mmのガラス基板であって凹凸面341を有するガラス基板上に、選択反射膜33として、SiO2とTa2O5からなる表2に示す構成の多層膜を成膜した。
図24は、本例の多層膜の透過率特性を示すグラフである。図24に示すように、本例の多層膜は、可視域の光に対して低い透過率かつ、波長900nm以上の光に対して高い透過率特性を示した。
なお、ガラス基板は表面微細加工されており、図6に示すような不規則に配置された球面状の多数の凹型のレンズ部343を含む凹凸面341を有している。各々のレンズ部343は、基準となるピッチ60μmのハニカム配置に対して頂点位置がピッチの25%の半径内に位置するように配置されている。このような凹凸面は、ガラス基板の一方の面に対して、各々のレンズ部343の頂点位置に相当する位置に直径3μmの初期開口を有するMoマスクをウェットエッチングすることにより形成した。当該凹凸面におけるレンズ部343の平均的な曲率半径は100μmであり、隣り合うレンズ部343の境界部分すなわち各々のレンズ部343の端部における平均的な傾斜角度は18°と計算された。当該角度は、0.5×asin(1/1.51)よりも小さい値となっている。また、本例の基材の凹凸面は、可視光が入射する有効領域内において、傾斜角度が0.5×asin(1/1.51)以内となる領域が少なくとも97%以上となっている。なお、レンズ部343のr/Rの平均は0.32である。また、素子の平面図は図6に類似の稜線を持つ構造として観察され、可視光が入射する有効領域内の全ての凹部の幅wが5μm以上であった。また、当該凹凸面におけるレンズ部343の平均的なsag(深さ)は4.6μmであった。
ガラス基板の凹凸面上に上記多層膜を成膜すると、多層膜の表面も凹凸形状となる。すなわち、多層膜にもガラス基板の凹凸面と略同一形状の凹凸面331が形成される。このようにして、凹凸面331を有する多層膜を備えた基材を得た。このようにして得た20mm四方(20×20mm)の基材を用いて、次に示す3種の光学部材30(光学部材30R、30G、30B)を作製した。
光学部材30Rは、着色樹脂材料層35の材料に上記の赤色着色樹脂材料を用いた例である。また、光学部材30Gは、着色樹脂材料層35の材料に上記の緑着色樹脂材料を用いた例である。また、光学部材30Bは、着色樹脂材料層35の材料に上記の青色着色樹脂材料を用いた例である。
得られた20mm四方の基材の該多層膜上に、各着色樹脂材料をそれぞれ7μL滴下した。滴下後、厚さ0.21mmのD263ガラス(松浪ガラス工業社製)を被せ、着色樹脂材料の上面が平坦になるようにプレスした。その状態で、紫外線照射装置であるファイバー型UV露光機(浜松フォトニクス社製:スポット光LC6)により、300mW/cm2となるUV光を10秒間照射することにより、光学部材30R、30G、30Bを得た。なお、得られた各光学部材30R、30G、30Bそれぞれにおける着色樹脂材料層の面内での平均的厚みは15μmであり、ガラス基板上の多層膜に形成された凹凸面331における凹部を全て被覆した上で上面が平坦化されている。
得られた光学部材30R、30G、30Bの分光透過率を図25に示す。また、表3に、得られた光学部材30R、30G、30Bに対して、コニカミノルタ社製、分光色測計CM−2600dを用い、色成分の分析を行った結果を示す。
これより、可視光のいずれの波長においても透過率が低い一方、近赤外(例えば940nm)における透過率が高く、さらに、色測定の結果から、所望の色を発現していることがわかる。また、光学部材30R、30G、30Bに対して、視野角度を変化させて色味の確認をしたところ、どの角度から見ても色味の変化はなかった。