以下に、本発明の各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
(第1の実施形態)
図1(a)および図1(b)は、第1の実施形態にかかる歪検知素子を例示する模式図である。
図1(a)は、歪検知素子が用いられる圧力センサを例示する模式的断面図である。図1(b)は、歪検知素子の模式的斜視図である。
図1(a)に表したように、歪検知素子100は、圧力センサ200に用いられる。圧力センサ200は、基板210と、歪検知素子100と、を含む。基板210は、可撓性の領域を有する。基板210は、変形可能である。歪検知素子100は、基板210に固定される。本願明細書において、固定される状態は、直接的に固定される状態と、別の要素のよって間接的に固定される状態と、を含む。例えば、歪検知素子100が基板210に固定される状態は、歪検知素子100と基板210との間の相対的な位置が固定される状態を含む。歪検知素子100は、例えば、基板210の一部の上に設けられる。
本願明細書において、「上に設けられる」状態は、直接接して設けられる状態の他に、間に他の要素が挿入されて設けられる状態も含む。
基板210に力801が加わると、基板210は変形する。基板210の変形に伴い、歪検知素子100に歪みが生ずる。
実施形態にかかる歪検知素子100において、例えば、外部からの力に対して基板210が変形すると、歪検知素子100に歪みが生ずる。歪検知素子100は、この歪の変化を電気抵抗の変化に変換する。
図1(b)に表したように、実施形態にかかる歪検知素子100は、第1磁性層10と、第2磁性層20と、中間層30と、バイアス層40と、を含む。
例えば、第1磁性層10から第2磁性層20に向かう方向をZ軸方向(積層方向)とする。Z軸方向に対して垂直な1つの方向をX軸方向とする。Z軸方向とX軸方向とに対して垂直な方向をY軸方向とする。
バイアス層40は、積層方向において第1磁性層10とは離隔して設けられる。第1磁性層10とバイアス層40との間に、第2磁性層20が設けられる。第1磁性層10と第2磁性層20との間に、中間層30が設けられる。バイアス層40は、第2磁性層20に接する。
第1磁性層10は、例えば参照層である。参照層として、磁化固定層、または、磁化自由層が用いられる。
第2磁性層20は、例えば、磁化自由層である。歪検知素子100に応力が加わり、歪検知素子100に歪が生ずると、第2磁性層20の磁化が変化する。例えば、第2磁性層20の磁化の変化は、第1磁性層10の磁化の変化よりも容易である。これにより、第1磁性層10の磁化と第2磁性層10の磁化との間の相対角度は、変化する。
次に、歪検知素子100の動作の例について説明する。
図2(a)〜図2(c)は、第1の実施形態に係る歪検知素子の動作を例示する模式図である。
図2(a)は、歪検知素子100に引張応力tsが印加されたときの状態(引張状態STt)に対応する。図2(b)は、歪検知素子100が歪を有しないときの状態(無歪状態ST0)に対応する。図2(c)は、歪検知素子100に圧縮応力csが印加されたときの状態(圧縮状態STc)に対応する。
図2(a)〜図2(c)においては、図を見やすくするために、第1磁性層10と、第2磁性層20と、中間層30と、が描かれ、バイアス層40は省略されている。この例では、第2磁性層20は磁化自由層であり、第1磁性層10は磁化固定層である。
歪検知素子100が歪センサとして機能する動作は、「逆磁歪効果」と「磁気抵抗効果」との応用に基づく。「逆磁歪効果」は、磁化自由層に用いられる強磁性層において得られる。「磁気抵抗効果」は、磁化自由層と中間層と参照層(例えば磁化固定層)との積層膜において発現する。
「逆磁歪効果」は、強磁性体の磁化が強磁性体に生じた歪によって変化する現象である。すなわち、歪検知素子100の積層体に外部歪が印加されると、磁化自由層の磁化方向が変化する。その結果、磁化自由層の磁化と参照層(例えば磁化固定層)の磁化との間の相対角度が変化する。この際に「磁気抵抗効果(MR効果)」により、電気抵抗の変化が引き起こされる。MR効果は、例えば、GMR(Giant magnetoresistance)効果、または、TMR(Tunneling magnetoresistance)効果などを含む。積層体に電流を流すことで、磁化の向きの相対角度の変化を電気抵抗変化として読み取ることで、MR効果が発現する。例えば、積層体(歪検知素子100)に歪が生じ、歪によって磁化自由層の磁化の向きが変化し、磁化自由層の磁化の向きと、参照層(例えば磁化固定層)の磁化の向きと、の相対角度が変化する。すなわち、逆磁歪効果によりMR効果が発現する。
磁化自由層に用いられる強磁性材料が正の磁歪定数を有する場合は、磁化の方向と引張歪の方向との角度が小さくなり、磁化の方向と圧縮歪の方向との角度が大きくなるように、磁化の方向が変化する。磁化自由層に用いられる強磁性材料が負の磁歪定数を有する場合は、磁化の方向と引張歪の方向との角度が大きくなり、磁化の方向と圧縮歪の方向との角度が小さくなるように、磁化の方向が変化する。
磁化自由層と中間層と参照層(例えば磁化固定層)との積層体の材料の組み合わせが正の磁気抵抗効果を有する場合は、磁化自由層と磁化固定層の相対角度が小さい場合に電気抵抗が減少する。磁化自由層と中間層と参照層(例えば磁化固定層)との積層体の材料の組み合わせが負の磁気抵抗効果を有する場合は、磁化自由層と磁化固定層の相対角度が小さい場合に電気抵抗が増大する。
以下、磁化自由層と、参照層(例えば磁化固定層)と、に用いられる強磁性材料が、それぞれ正の磁歪定数を有し、磁化自由層と中間層と参照層(例えば磁化固定層)とを含む積層体が正の磁気抵抗効果を有する場合の例に関して、磁化の変化の例について説明する。
図2(b)に表したように、歪が無い無歪状態ST0(例えば初期状態)においては、第2磁性層20の磁化20mと、第1磁性層10(例えば磁化固定層)の磁化10mと、間の相対角度は、所定の値に設定されている。初期状態の磁性層の磁化の方向は、例えば、ハードバイアス、または、磁性層の形状異方性などにより、設定される。この例では、第2磁性層20(磁化自由層)の磁化20mと、第1磁性層10(例えば磁化固定層)の磁化10mと、は交差している。
図2(a)に表したように、引張状態STtにおいて、引張応力tsが印加されると、歪検知素子100に引張応力tsに応じた歪が生じる。このとき、第2磁性層20(磁化自由層)の磁化20mは、磁化20mと引張応力tsの方向との角度が小さくなるように、無歪状態ST0から変化する。図2(a)に示した例では、引張応力tsが加わった場合は、無歪状態ST0に比べて、第2磁性層20(磁化自由層)の磁化20mと、第1磁性層10(例えば磁化固定層)の磁化10mと、の間の相対角度が小さくなる。これにより、歪検知素子100における電気抵抗は、無歪状態ST0の時の電気抵抗に比べて減少する。
図2(c)に表したように、圧縮状態STcにおいて、圧縮応力csが印加されると、第2磁性層20(磁化自由層)の磁化20mは、磁化20mと圧縮応力csの方向との角度が大きくなるように、無歪状態ST0から変化する。図2(c)に示した例では、圧縮応力csが加わった場合は、無歪状態ST0に比べて、第2磁性層20(磁化自由層)の磁化20mと、第1磁性層10(例えば磁化固定層)の磁化10mと、の間の相対角度が大きくなる。これにより、歪検知素子100における電気抵抗は、増大する。
このように、歪検知素子100においては、歪検知素子100に生じた歪の変化が、電気抵抗の変化に変換される。上記の動作において、単位歪(dε)あたりの、電気抵抗の変化量(dR/R)をゲージファクター(GF:gauge factor)という。ゲージファクターの高い歪検知素子を用いることで、高感度な歪センサが得られる。
図1(b)に示すように、第2磁性層20(磁化自由層)に接して設けられたバイアス層40を含む歪検知素子100では、バイアス層40から第2磁性層20(磁化自由層)への磁気結合によって、第2磁性層20(磁化自由層)の異方性磁界を適切な値に向上させることができる。第2磁性層20(磁化自由層)の異方性磁界を向上させることで、第2磁性層20(磁化自由層)の磁化20mの変化の可逆性を高めることができ、高いゲージファクターを得ることができる。歪に対する磁化自由層の磁化の変化の可逆性の向上の詳細については、後述する。
歪検知素子100の寸法が小さくなった場合に、第2磁性層20(磁化自由層)の素子端部における磁極の影響によって、第2磁性層20(磁化自由層)の内部に反磁界が発生し、磁化20mが乱れることがある。磁化20mが乱れると、歪検知素子100の歪による、第1磁性層(例えば磁化固定層)の磁化10mと、第2磁性層(磁化自由層)の磁化20mと、の間の相対角度の変化が低減することがある。第2磁性層20(磁化自由層)の反磁界を低減することは、比較的小さい寸法の歪検知素子100において高感度な歪センサを提供する上で重要な事項の1つである。第2磁性層20(磁化自由層)の異方性磁界を向上させることは、このような反磁界の影響を低減することにおいても有効である。これにより、比較的小さい寸法の歪検知素子100においても高い歪検知感度を実現することができる。ひいては、高分解能と高感度を両立した歪検知素子100を提供することができる。
第1の実施形態にかかる歪検知素子100の例について説明する。
以下において、「材料A/材料B」の記載は、材料Aの層の上に、材料Bの層が設けられている状態を示す。
図3は、第1の実施形態に係る歪検知素子を例示する模式的斜視図である。
図3に表したように、実施形態に用いられる歪検知素子100aは、第1電極E1と、下地層50と、ピニング層60と、第2磁化固定層12と、磁気結合層13と、第1磁化固定層11と、中間層30と、第2磁性層20と、バイアス層40と、キャップ層70と、第2電極E2と、を含む。第1磁化固定層11は、第1磁性層10に相当する。第1電極E1と第2電極E2との間に、下地層50が設けられる。下地層50と第2電極E2との間に、ピニング層60が設けられる。ピニング層60と第2電極E2との間に、第2磁化固定層12が設けられる。第2磁化固定層12と第2電極E2との間に、磁気結合層13が設けられる。磁気結合層13と第2電極E2の間に、第1磁化固定層11が設けられる。第1磁化固定層11と第2電極E2との間に、中間層30が設けられる。中間層30と第2電極E2との間に、第2磁性層20が設けられる。第2磁性層20と第2電極E2との間に、バイアス層40が設けられる。バイアス層40と第2電極E2との間に、キャップ層70が設けられる。
下地層50には、例えば、Ta/Ruが用いられる。このTa層の厚さ(Z軸方向の長さ)は、例えば、3ナノメートル(nm)である。このRu層の厚さは、例えば、2nmである。
ピニング層60には、例えば、7nmの厚さのIrMn層が用いられる。
第2磁化固定層12には、例えば、2.5nmの厚さのCo75Fe25層が用いられる。
磁気結合層13には、例えば、0.9nmの厚さのRu層が用いられる。
第1磁化固定層11には、例えば、3nmの厚さのCo40Fe40B20層が用いられる。 中間層30には、例えば、2.0nmの厚さのMgO層が用いられる。
第2磁性層20には、例えば、4nmの厚さのCo40Fe40B20が用いられる。
バイアス層40には、例えば、Cu(5nm)/Fe50Co50(2nm)/Ru(0.9nm)/Fe50Co50(2nm)/IrMn(7nm)が用いられる。
キャップ層70には、例えばTa/Ruが用いられる。このTa層の厚さは、例えば、1nmである。このRu層の厚さは、例えば、5nmである。
第1電極E1及び第2電極E2には、例えば、アルミニウム(Al)、アルミニウム銅合金(Al−Cu)、銅(Cu)、銀(Ag)、及び、金(Au)の少なくともいずれかが用いられる。第1電極E1及び第2電極E2として、このような電気抵抗が比較的小さい材料を用いることで、歪検知素子100aに効率的に電流を流すことができる。第1電極E1には、非磁性材料を用いることができる。
第1電極E1は、例えば、第1電極E1用の下地層(図示せず)と、第1電極E1用のキャップ層(図示せず)と、それらの間に設けられた、Al、Al−Cu、Cu、Ag、及び、Auの少なくともいずれかの層と、を含んでもよい。例えば、第1電極E1には、タンタル(Ta)/銅(Cu)/タンタル(Ta)などが用いられる。第1電極E1用の下地層としてTaを用いることで、例えば、基板210と第1電極E1との密着性が向上する。第1電極E1用の下地層として、チタン(Ti)、または、窒化チタン(TiN)などを用いてもよい。
第1電極E1のキャップ層としてTaを用いることで、そのキャップ層の下の銅(Cu)などの酸化を防ぐことができる。第1電極E1用のキャップ層として、チタン(Ti)、または、窒化チタン(TiN)などを用いてもよい。
下地層50には、例えば、バッファ層(図示せず)と、シード層(図示せず)と、を含む積層構造を用いることができる。このバッファ層は、例えば、第1電極E1または基板210の表面の荒れを緩和し、このバッファ層の上に積層される層の結晶性を改善する。バッファ層として、例えば、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、タングステン(W)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)及びクロム(Cr)よりなる群から選択された少なくともいずれかが用いられる。バッファ層として、これらの材料から選択された少なくとも1つの材料を含む合金を用いてもよい。
下地層50のうちのバッファ層の厚さは、1nm以上10nm以下が好ましい。バッファ層の厚さは、1nm以上5nm以下がより好ましい。バッファ層の厚さが薄すぎると、バッファ効果が失われる。バッファ層の厚さが厚すぎると、歪検知素子100aの厚さが過度に厚くなる。バッファ層の上にシード層が形成され、そのシード層がバッファ効果を有することができる。この場合、バッファ層は省略してもよい。バッファ層には、例えば、3nmの厚さのTa層が用いられる。
下地層50のうちのシード層は、このシード層の上に積層される層の結晶配向を制御する。このシード層は、このシード層の上に積層される層の結晶粒径を制御する。このシード層として、fcc構造(face-centered cubic structure:面心立方格子構造)、hcp構造(hexagonal close-packed structure:六方最密格子構造)またはbcc構造(body-centered cubic structure:体心立方格子構造)の金属等が用いられる。
下地層50のうちのシード層として、hcp構造のルテニウム(Ru)、または、fcc構造のNiFe、または、fcc構造のCuを用いることにより、例えば、シード層の上のスピンバルブ膜の結晶配向をfcc(111)配向にすることができる。シード層には、例えば、2nmの厚さのCu層、または、2nmの厚さのRu層が用いられる。シード層の上に形成される層の結晶配向性を高める場合には、シード層の厚さは、1nm以上5nm以下が好ましい。シード層の厚さは、1nm以上3nm以下がより好ましい。これにより、結晶配向を向上させるシード層としての機能が十分に発揮される。
一方、例えば、シード層の上に形成される層を結晶配向させる必要がない場合(例えば、アモルファスの磁化自由層を形成する場合など)には、シード層は省略してもよい。シード層としては、例えば、2nmの厚さのCu層が用いられる。
ピニング層60は、例えば、ピニング層60の上に形成される第2磁化固定層12(強磁性層)に、一方向異方性(unidirectional anisotropy)を付与して、第2磁化固定層12の磁化を固定する。ピニング層60には、例えば、反強磁性層が用いられる。ピニング層60には、例えば、IrMn、PtMn、PdPtMn及びRuRhMnよりなる群から選択された少なくともいずれかが用いられる。十分な強さの一方向異方性を付与するために、ピニング層60の厚さは適切に設定される。
ピニング層60として、PtMnまたはPdPtMnが用いられる場合には、ピニング層60の厚さは、8nm以上20nm以下が好ましい。ピニング層60の厚さは、10nm以上15nm以下がより好ましい。ピニング層60としてIrMnを用いる場合には、ピニング層60としてPtMnを用いる場合よりも薄い厚さで、一方向異方性を付与することができる。この場合には、ピニング層60の厚さは、4nm以上18nm以下が好ましい。ピニング層60の厚さは、5nm以上15nm以下がより好ましい。ピニング層60には、例えば、7nmの厚さのIr22Mn78層が用いられる。
ピニング層60として、ハード磁性層を用いてもよい。ハード磁性層として、例えば、CoPt(Coの比率は、50at.%以上85at.%以下)、(CoxPt100−x)100−yCry(xは、50at.%以上85at.%以下であり、yは、0at.%以上40at.%以下)、または、FePt(Ptの比率は、40at.%以上60at.%以下)などを用いてもよい。
第2磁化固定層12には、例えば、CoxFe100−x合金(xは、0at.%以上100at.%以下)、NixFe100−x合金(xは、0at.%以上100at.%以下)、または、これらに非磁性元素を添加した材料が用いられる。第2磁化固定層12として、例えば、Co、Fe及びNiよりなる群から選択された少なくともいずれかが用いられる。第2磁化固定層12として、これらの材料から選択された少なくとも1つの材料を含む合金を用いても良い。第2磁化固定層12として、(CoxFe100−x)100−yBy合金(xは、0at.%以上100at.%以下であり、yは、0at.%以上30at.%以下)を用いることもできる。第2磁化固定層12として、(CoxFe100−x)100−yByのアモルファス合金を用いることで、歪検知素子100aのサイズが小さい場合にも、歪検知素子100aの特性のばらつきを抑えることができる。
第2磁化固定層12の厚さは、例えば、1.5nm以上5nm以下が好ましい。これにより、例えば、ピニング層60による一方向異方性磁界の強度をより強くすることができる。例えば、第2磁化固定層12の上に形成される磁気結合層13を介して、第2磁化固定層12と第1磁化固定層11との間の反強磁性結合磁界の強度をより強くすることができる。例えば、第2磁化固定層12の磁気膜厚(飽和磁化Bsと厚さtとの積(Bs・t))は、第1磁化固定層11の磁気膜厚と、実質的に等しいことが好ましい。
薄膜でのCo40Fe40B20の飽和磁化は、約1.9T(テスラ)である。例えば、第1磁化固定層11として、3nmの厚さのCo40Fe40B20層を用いると、第1磁化固定層11の磁気膜厚は、1.9T×3nmであり、5.7Tnmとなる。一方、Co75Fe25の飽和磁化は、約2.1Tである。上記と等しい磁気膜厚が得られる第2磁化固定層12の厚さは、5.7Tnm/2.1Tであり、2.7nmとなる。この場合、第2磁化固定層12には、約2.7nmの厚さのCo75Fe25層を用いることが好ましい。第2磁化固定層12として、例えば、2.5nmの厚さのCo75Fe25層が用いられる。
歪検知素子100aにおいては、第2磁化固定層12と磁気結合層13と第1磁化固定層11とにより、シンセティックピン構造が用いられている。その代わりに、1層の磁化固定層からなるシングルピン構造を用いても良い。シングルピン構造を用いる場合には、磁化固定層として、例えば、3nmの厚さのCo40Fe40B20層が用いられる。シングルピン構造の磁化固定層に用いる強磁性層として、上述した第2磁化固定層12の材料と同じ材料を用いても良い。
磁気結合層13は、第2磁化固定層12と第1磁化固定層11との間において、反強磁性結合を生じさせる。磁気結合層13は、シンセティックピン構造を形成する。磁気結合層13として、例えば、Ruが用いられる。磁気結合層13の厚さは、例えば、0.8nm以上1nm以下であることが好ましい。第2磁化固定層12と第1磁化固定層11との間に十分な反強磁性結合を生じさせる材料であれば、磁気結合層13としてRu以外の材料を用いても良い。磁気結合層13の厚さは、RKKY(Ruderman-Kittel-Kasuya-Yosida)結合のセカンドピーク(2ndピーク)に対応する0.8nm以上1nm以下の厚さに設定することができる。さらに、磁気結合層13の厚さは、RKKY結合のファーストピーク(1stピーク)に対応する0.3nm以上0.6nm以下の厚さに設定しても良い。磁気結合層13として、例えば、0.9nmの厚さのRuが用いられる。これにより、高信頼性の結合がより安定して得られる。
第1磁化固定層11に用いられる磁性層は、MR効果に直接的に寄与する。第1磁化固定層11として、例えば、Co−Fe−B合金が用いられる。具体的には、第1磁化固定層11として、(CoxFe100−x)100−yBy合金(xは、0at.%以上100at.%以下であり、yは、0at.%以上30at.%以下)を用いることもできる。第1磁化固定層11として、(CoxFe100−x)100−yByのアモルファス合金を用いた場合には、例えば、歪検知素子100aのサイズが小さい場合においても、結晶粒に起因した素子間のばらつきを抑えることができる。
第1磁化固定層11の上に形成される層(例えばトンネル絶縁層(図示せず))を平坦化することができる。トンネル絶縁層の平坦化により、トンネル絶縁層の欠陥密度を減らすことができる。これにより、より低い面積抵抗で、より大きいMR変化率が得られる。例えば、トンネル絶縁層の材料としてMgOを用いる場合には、第1磁化固定層11として、(CoxFe100−x)100−yByのアモルファス合金を用いることで、トンネル絶縁層の上に形成されるMgO層の(100)配向性を強めることができる。MgO層の(100)配向性をより高くすることで、より大きいMR変化率が得られる。(CoxFe100−x)100−yBy合金は、アニール時にMgO層の(100)面をテンプレートとして結晶化する。このため、MgOと(CoxFe100−x)100−yBy合金との良好な結晶整合が得られる。良好な結晶整合を得ることで、より大きいMR変化率が得られる。
第1磁化固定層11として、Co−Fe−B合金以外に、例えば、Fe−Co合金を用いてもよい。
第1磁化固定層11がより厚いと、より大きなMR変化率が得られる。より大きな固定磁界を得るためには、第1磁化固定層11は、薄いほうが好ましい。MR変化率と固定磁界との間には、第1磁化固定層11の厚さにおいてトレードオフの関係が存在する。第1磁化固定層11としてCo−Fe−B合金を用いる場合には、第1磁化固定層11の厚さは、1.5nm以上5nm以下が好ましい。第1磁化固定層11の厚さは、2.0nm以上4nm以下がより好ましい。
第1磁化固定層11には、上述した材料の他に、fcc構造のCo90Fe10合金、または、hcp構造のCo、または、hcp構造のCo合金が用いられる。第1磁化固定層11として、例えば、Co、Fe及びNiよりなる群から選択された少なくとも1つが用いられる。第1磁化固定層11として、これらの材料から選択された少なくとも1つの材料を含む合金が用いられる。第1磁化固定層11として、bcc構造のFeCo合金材料、50at.%以上のコバルト組成を含むCo合金、または、50at.%以上のNi組成の材料(Ni合金)を用いることで、例えば、より大きなMR変化率が得られる。
第1磁化固定層11として、例えば、Co2MnGe、Co2FeGe、Co2MnSi、Co2FeSi、Co2MnAl、Co2FeAl、Co2MnGa0.5Ge0.5、及び、Co2FeGa0.5Ge0.5などのホイスラー磁性合金層を用いることもできる。例えば、第1磁化固定層11として、例えば、3nmの厚さのCo40Fe40B20層が用いられる。
中間層30は、例えば、第1磁性層10と第2磁性層20との磁気的な結合を分断する。中間層30には、例えば、金属または絶縁体または半導体が用いられる。この金属としては、例えば、Cu、AuまたはAg等が用いられる。中間層30として金属を用いる場合、中間層30の厚さは、例えば、1nm以上7nm以下程度である。この絶縁体または半導体としては、例えば、マグネシウム酸化物(MgO等)、アルミニウム酸化物(Al2O3等)、チタン酸化物(TiO等)、亜鉛酸化物(ZnO等)、または、ガリウム酸化物(Ga−O)などが用いられる。中間層30として絶縁体または半導体を用いる場合は、中間層30の厚さは、例えば0.6nm以上2.5nm以下程度である。中間層30として、例えば、CCP(Current-Confined-Path)スペーサ層を用いてもよい。スペーサ層としてCCPスペーサ層を用いる場合には、例えば、酸化アルミニウム(Al2O3)の絶縁層中に銅(Cu)メタルパスが形成された構造が用いられる。例えば、中間層30として、1.6nmの厚さのMgO層が用いられる。
第2磁性層20には、強磁性体材料が用いられる。第2磁性層20には、例えば、Fe、Co、Niを含む強磁性体材料を用いることができる。第2磁性層20の材料として、例えばFeCo合金、NiFe合金等が用いられる。さらに、第2磁性層20には、Co−Fe−B合金、Fe−Co−Si−B合金、λs(磁歪定数)が大きいFe−Ga合金、Fe−Co−Ga合金、Tb−M−Fe合金、Tb−M1−Fe−M2合金、Fe−M3−M4−B合金、Ni、Fe−Al、または、フェライト等が用いられる。前述したTb−M−Fe合金において、Mは、Sm、Eu、Gd、Dy、Ho及びErよりなる群から選択された少なくとも1つである。前述したTb−M1−Fe−M2合金において、M1は、Sm、Eu、Gd、Dy、Ho及びErよりなる群から選択された少なくとも1つである。M2は、Ti、Cr、Mn、Co、Cu、Nb、Mo、W及びTaよりなる群から選択された少なくとも1つである。前述したFe−M3−M4−B合金において、M3は、Ti、Cr、Mn、Co、Cu、Nb、Mo、W及びTaよりなる群から選択された少なくとも1つである。M4は、Ce、Pr、Nd、Sm、Tb、Dy及びErよりなる群から選択された少なくとも1つである。前述したフェライトとしては、Fe3O4、(FeCo)3O4)などが挙げられる。第2磁性層20の厚さは、例えば2nm以上である。
第2磁性層20には、ホウ素を含有した磁性材料が用いられてよい。第2磁性層20には、例えば、Fe、Co及びNiよりなる群から選択される少なくとも一つの元素と、ホウ素(B)と、を含む合金が用いられてもよい。例えば、Co−Fe−B合金やFe−B合金を用いることができる。例えば、Co40Fe40B20合金を用いることができる。第2磁性層20に、Fe、Co及びNiよりなる群から選択される少なくとも一つの元素と、ホウ素(B)と、を含む合金を用いる場合、高磁歪を促進する元素として、Ga、Al、Si、または、Wなどを添加してもよい。例えば、Fe−Ga−B合金、Fe−Co−Ga−B合金、または、Fe−Co−Si−B合金を用いてもよい。このようなホウ素を含有する磁性材料を用いることで第2磁性層20の保磁力(Hc)が低くなり、歪に対する磁化20mの変化が容易となる。これにより、高い歪感度を得ることができる。
第2磁性層20におけるホウ素濃度(例えば、ホウ素の組成比)は、5at.%(原子パーセント)以上が好ましい。これにより、アモルファス構造が得易くなる。第2磁性層20におけるホウ素濃度は、35at.%以下が好ましい。ホウ素濃度が高すぎると、例えば、磁歪定数が減少する。第2磁性層20におけるホウ素濃度は、例えば、5at.%以上35at.%以下が好ましく、10at.%以上30at.%以下がさらに好ましい。
第2磁性層20の磁性層の一部に、Fe1−yBy(0<y≦0.3)、または(FeaX1−a)1−yBy(X=CoまたはNi、0.8≦a<1、0<y≦0.3)用いる場合、大きい磁歪定数λと低い保磁力を両立することが容易となるため、高いゲージファクターを得る観点で特に好ましい。例えば、第2磁性層20として、Fe80B20(4nm)を用いることができる。第2磁性層20として、Co40Fe40B20(0.5nm)/Fe80B20(4nm)を用いることができる。
第2磁性層20は、多層構造を有してもよい。中間層30としてMgOのトンネル絶縁層を用いる場合には、第2磁性層20のうちの中間層30に接する部分には、Co−Fe−B合金の層を設けることが好ましい。これにより、高い磁気抵抗効果が得られる。この場合、中間層30の上には、Co−Fe−B合金の層が設けられ、そのCo−Fe−B合金の層の上には、磁歪定数の大きい他の磁性材料が設けられる。第2磁性層20が多層構造を有する場合、第2磁性層20には、例えば、Co−Fe−B(2nm)/Fe−Co−Si−B(4nm)などが用いられる。
実施形態では、第2磁性層20の上に、バイアス層40が設けられる。バイアス層40の詳細については、後述する。
キャップ層70は、キャップ層70の下に設けられる層を保護する。キャップ層70には、例えば、複数の金属層が用いられる。キャップ層70には、例えば、Ta層とRu層との2層構造(Ta/Ru)が用いられる。このTa層の厚さは、例えば1nmであり、このRu層の厚さは、例えば5nmである。キャップ層70として、Ta層やRu層の代わりに他の金属層を設けてもよい。キャップ層70の構成は、任意である。例えば、キャップ層70として、非磁性材料を用いることができる。キャップ層70の下に設けられる層を保護可能なものであれば、キャップ層70として、他の材料を用いても良い。
図4(a)〜図4(e)は、第1の実施形態のバイアス層を例示する模式的斜視図である。
図4(a)〜図4(e)は、第1磁性層10(参照層)/中間層30/第2磁性層20(磁化自由層)の積層体に対して設けられるバイアス層40であって、中間層30とバイアス層40との間に第2磁性層20が設けられるバイアス層40の構造のバリエーションの例を表す。なお、これらの例では、第1磁性層10は、第1磁化固定層11に相当する。
図4(a)に表したバイアス層40aは、第1バイアス磁性層41aと、バイアスピニング層42と、分離層43と、を含む。第2磁性層20とバイアスピニング層42との間に、分離層43が設けられる。分離層43とバイアスピニング層42との間に、第1バイアス磁性層41aが設けられる。
第1バイアス磁性層41aは、例えば、磁性材料によって形成される。第1バイアス磁性層41aの磁化は、バイアスピニング層42によって一方向に固定される。一方向に磁化が固定された第1バイアス磁性層41aは、交換結合などの磁気的結合によって、第2磁性層20にバイアスを加える。分離層43は、例えば、非磁性材料などから形成され、第1バイアス磁性層41aと第2磁性層20とを物理的に分離することで、第1バイアス磁性層41aと第2磁性層20との間の磁気的結合の強度を調整する。なお、第1バイアス磁性層41aの材料によっては、分離層43は必ずしも設けられなくともよい。
分離層43には、例えば、5nmのCuが用いられる。第1バイアス磁性層41aには、例えば、3nmのFe50Co50が用いられる。バイアスピニング層42には、例えば、7nmのIrMnが用いられる。
第1バイアス磁性層41aには、例えば、Co、Fe及びNiよりなる群から選択された少なくともいずれかを用いることができる。第1バイアス磁性層41aとして、Co、Fe及びNiよりなる群から選択された少なくとも1つの材料を含む合金を用いてもよい。例えば、第1バイアス磁性層41aには、CoxFe100−x合金(xは0at.%以上100at.%以下)、NixFe100−x合金(xは0at.%以上100at.%以下)、または、これらに非磁性元素を添加した材料が用いられる。第1バイアス磁性層41aとして、(CoxFe100−x)100−yBy合金(xは0at.%以上100at.%以下、yは0at.%以上30at.%以下)が用いられてもよい。第1バイアス磁性層41aとして、(CoxFe100−x)100−yByのアモルファス合金を用いることで、歪検知素子100aのサイズが小さい場合にも歪検知素子100a間のばらつきを抑えることができる。第1バイアス磁性層41aの厚さは、例えば、1.5nm以上5nm以下が好ましい。これにより、例えば、バイアスピニング層42による一方向異方性磁界の強度を十分に得ることができる。第1バイアス磁性層41aとして、例えば、3nmのFe50Co50が用いられる。
分離層43には、例えば、非磁性材料が用いられる。分離層43は、例えば、Cu、Ru、Rh、Ir、V、Cr、Nb、Mo、Ta、W、Rr、Au、Ag、Pt、Pd、Ti、Zr、Hf、及び、Hfの群から選択された少なくとも一つの元素を含む層を用いることができる。例えば、分離層43として、5nmのCuが用いられる。
バイアスピニング層42は、バイアスピニング層42に接して形成される第1バイアス磁性層41aに、一方向異方性(unidirectional anisotropy)を付与して第1バイアス磁性層41aの磁化を固定する。バイアスピニング層42には、例えば、反強磁性層が用いられる。バイアスピニング層42には、例えば、Ir−Mn、Pt−Mn、Pd−Pt−Mn及びRu−Rh−Mnよりなる群から選択された少なくともいずれかが用いられる。十分な強さの一方向異方性を付与するために、バイアスピニング層42の厚さは適切に設定される。
バイアスピニング層42としてPtMnまたはPdPtMnが用いられる場合には、バイアスピニング層42の厚さは、8nm以上20nm以下が好ましい。バイアスピニング層42の厚さは、10nm以上15nm以下がより好ましい。バイアスピニング層42としてIrMnが用いられる場合には、バイアスピニング層42としてPtMnが用いられる場合よりも薄いバイアスピニング層42で、一方向異方性を第1バイアス磁性層41aに付与することができる。この場合には、バイアスピニング層42の厚さは、4nm以上18nm以下が好ましい。バイアスピニング層42の厚さは、5nm以上15nm以下がより好ましい。バイアスピニング層42には、例えば、7nmの厚さのIr22Mn78層が用いられる。
バイアスピニング層42として、ハード磁性層が用いられてもよい。ハード磁性層として、例えば、CoPt(Coの比率は、50at.%以上85at.%以下)、(CoxPt100−x)100−yCry(xは50at.%以上85at.%以下、yは0at.%以上40at.%以下)、または、FePt(Ptの比率は40at.%以上60at.%以下)などが用いられてもよい。
図4(b)は、第1の実施形態の別のバイアス層を示す模式的斜視図である。
図4(b)に表したバイアス層40bは、第1バイアス磁性層41aと、第2バイアス磁性層41bと、バイアスピニング層42と、分離層43と、第1磁気結合層44aと、を含む。第2磁性層20とバイアスピニング層42との間に、分離層43が設けられる。分離層43とバイアスピニング層42との間に、第1バイアス磁性層41aが設けられる。第1バイアス磁性層41aとバイアスピニング層42との間に、第1磁気結合層44aが設けられる。第1磁気結合層44aとバイアスピニング層42との間に、第2バイアス磁性層41bが設けられる。
図4(a)に表したバイアス層40aでは、単層のバイアス磁性層(第1バイアス磁性層41a)が設けられている。これに対して、図4(b)に表したバイアス層40bでは、第1磁気結合層44aを介して、2層のバイアス磁性層(第1バイアス磁性層41aおよび第2バイアス磁性層41b)が設けられている。この点において、図4(b)に表したバイアス層40bは、図4(a)に表したバイアス層40aと異なる。
第1バイアス磁性層41aの磁化は、第1磁気結合層44aを介して隣り合う第2バイアス磁性層41bの磁化とは反対に設定される。このように、複数のバイアス磁性層の磁化を反平行(180°)とすることで、バイアス磁性層から外部への漏洩磁界を抑え、第2磁性層20への交換結合によるバイアス印加以外の磁気的干渉を抑えることができる。なお、分離層43は、必ずしも設けられなくともよい。
第1磁気結合層44aは、第1バイアス磁性層41aと第2バイアス磁性層41bとの間に反強磁性結合を生じさせる。第1磁気結合層44aは、シンセティックピン構造を形成する。第1磁気結合層44aとして、例えば、Ruが用いられる。第1磁気結合層44aの厚さは、0.8nm以上1nm以下であることが好ましい。第1バイアス磁性層41aと第2バイアス磁性層41bとの間に十分な反強磁性結合を生じさせる材料であれば、第1磁気結合層44aとしてRu以外の材料を用いてもよい。第1磁気結合層44aの厚さは、RKKY(Ruderman-Kittel-Kasuya-Yosida)結合のセカンドピーク(2ndピーク)に対応する0.8nm以上1nm以下の厚さに設定することができる。さらに、第1磁気結合層44aの厚さは、RKKY結合のファーストピーク(1stピーク)に対応する0.3nm以上0.6nm以下の厚さに設定してもよい。第1磁気結合層44aとして、例えば、0.9nmの厚さのRuが用いられる。これにより、高信頼性の結合がより安定して得られる。
第1バイアス磁性層41aの厚さは、例えば、1.5nm以上5nm以下が好ましい。第2バイアス磁性層41bの厚さは、例えば、1.5nm以上5nm以下が好ましい。これにより、例えば、バイアスピニング層42による一方向異方性磁界の強度をより強くすることができる。第1バイアス磁性層41aの磁気膜厚(飽和磁化Bsと厚さtとの積(Bs・t))は、第2バイアス磁性層41bの磁気膜厚と実質的に等しいことが好ましい。
第1バイアス磁性層41aと第2バイアス磁性層41bとに同じ磁性材料を用いる場合は、第1バイアス磁性層41aの厚さを第2バイアス磁性層41bの厚さにそろえることが好ましい。第1バイアス磁性層41aと第2バイアス磁性層41bとに異なる磁性材料を用いる場合、例えば、第1バイアス磁性層41aにCo40Fe40B20、第2バイアス磁性層41bにCo75Fe25を用いる場合、薄膜でのCo40Fe40B20の飽和磁化は、約1.9T(テスラ)であり、Co75Fe25の飽和磁化は、約2.1Tである。例えば、第1バイアス磁性層41aとして、3nmの厚さのCo40Fe40B20層を用いる場合には、第1バイアス磁性層41aの磁気膜厚は、1.9T×3nmであり、5.7Tnmとなる。上記と等しい磁気膜厚が得られる第2バイアス磁性層41bの厚さは、5.7Tnm/2.1Tであり、2.7nmとなる。この場合、第2バイアス磁性層41bには、約2.7nmの厚さのCo75Fe25を用いることが好ましい。
図4(b)に表したバイアス層40bに含まれる各層の材料としては、図4(a)に表したバイアス層40aに含まれる各層の材料と同様の材料をそれぞれ用いることができる。
分離層43には、例えば、5nmのCuが用いられる。第1バイアス磁性層41aには、例えば、2nmのFe50Co50が用いられる。第1磁気結合層44aには、例えば、0.9nmのRuが用いられる。第2バイアス磁性層41bには、例えば、2nmのFe50Co50が用いられる。バイアスピニング層42には、例えば、7nmのIrMnが用いられる。
図4(c)は、第1の実施形態の別のバイアス層を示す模式的斜視図である。
図4(c)に表したバイアス層40cは、第1バイアス磁性層41aと、第2バイアス磁性層41bと、第3バイアス磁性層41cと、バイアスピニング層42と、分離層43と、第1磁気結合層44aと、第2磁気結合層44bと、を含む。第2磁性層20とバイアスピニング層42との間に、分離層43が設けられる。分離層43とバイアスピニング層42との間に、第1バイアス磁性層41aが設けられる。第1バイアス磁性層41aとバイアスピニング層42との間に、第1磁気結合層44aが設けられる。第1磁気結合層44aとバイアスピニング層42との間に、第2バイアス磁性層41bが設けられる。第2バイアス磁性層41bとバイアスピニング層42との間に、第2磁気結合層44bが設けられる。第2磁気結合層44bとバイアスピニング層42との間に、第3バイアス磁性層41cが設けられる。
図4(a)に表したバイアス層40aでは、単層のバイアス磁性層(第1バイアス磁性層41a)が設けられている。図4(c)に表したバイアス層40cでは、第1磁気結合層44aおよび第2磁気結合層44bを介して、3層のバイアス磁性層(第1バイアス磁性層41a、第2バイアス磁性層41bおよび第3バイアス磁性層41c)が設けられている。この点において、図4(c)に表したバイアス層40cは、図4(a)に表したバイアス層40aとは異なる。
第1バイアス磁性層41aの磁化は、第1磁気結合層44aを介して隣り合う第2バイアス磁性層41bの磁化とは反対に設定される。第2バイアス磁性層41bの磁化は、第2磁気結合層44bを介して隣り合う第3バイアス磁性層41cの磁化とは反対に設定される。このように、複数のバイアス磁性層の磁化方向を反平行とすることで、バイアス磁性層から外部への漏洩磁界を抑え、第2磁性層20への交換結合によるバイアス印加以外の磁気的干渉を抑えることができる。後述するように、バイアス磁性層の層数を奇数および偶数のいずれかに適宜設定することよって、バイアス方向を適切に選択することができる。なお、分離層43は、必ずしも設けられなくともよい。
図4(c)に示すように3層のバイアス磁性層を用いる場合、第1バイアス磁性層41aの磁化は、第3バイアス磁性層41cの磁化と同じになる。第2バイアス磁性層41bの磁化は、第1バイアス磁性層41aの磁化および第3バイアス磁性層41cの磁化と逆向きになる。奇数で複数のバイアス磁性層を用いる場合、同一方向を向いているバイアス磁性層の磁気膜厚の和を、逆方向を向いているバイアス磁性層の磁気膜厚の和と等しくすることが好ましい。これによれば、漏洩磁界を低減することができる。例えば、図4(c)に示すように3層のバイアス磁性層を用いる場合、第1バイアス磁性層41aと第3バイアス磁性層41cの磁気膜厚の和を、第2バイアス磁性層41bの磁気膜厚と等しくすることが好ましい。
なお、バイアス層は、4層以上のバイアス磁性層を含んでいてもよい。
図4(c)に表したバイアス層40cに含まれる各層の材料としては、図4(a)に表したバイアス層40aに含まれる各層の材料と同様の材料をそれぞれ用いることができる。
分離層43には、例えば、5nmのCuが用いられる。第1バイアス磁性層41aには、例えば、2nmのFe50Co50が用いられる。第1磁気結合層44aには、例えば、0.9nmのRuが用いられる。第2バイアス磁性層41bには、例えば、4nmのFe50Co50が用いられる。第2磁気結合層44bには、例えば、0.9nmのRuが用いられる。第3バイアス磁性層41cには、例えば、2nmのFe50Co50が用いられる。バイアスピニング層42には、例えば、7nmのIrMnが用いられる。
図4(d)は、第1の実施形態の別のバイアス層を示す模式的斜視図である。
図4(d)に表したバイアス層40dは、第1バイアス磁性層41aと、分離層43と、を含む。第2磁性層20と第1バイアス磁性層41aとの間に、分離層43が設けられる。
図4(a)に表したバイアス層40aでは、第1バイアス磁性層41aに接してバイアスピニング層42が設けられている。図4(d)に表したバイアス層40dでは、バイアスピニング層42が設けられていない。この点において、図4(d)に表したバイアス層40dは、図4(a)に表したバイアス層40aとは異なる。なお、分離層43は、必ずしも設けられなくともよい。
図4(d)に示すようにバイアスピニング層42を設けない場合、第1バイアス磁性層41aには、例えば、ハード磁性層が用いられる。ハード磁性層として、例えば、CoPt(Coの比率は、50at.%以上85at.%以下)、(CoxPt100−x)100−yCry(xは50at.%以上85at.%以下、yは0at.%以上40at.%以下)、または、FePt(Ptの比率は40at.%以上60at.%以下)などを用いてもよい。
図4(e)は、第1の実施形態の別のバイアス層を示す模式的斜視図である。
図4(e)に表したバイアス層40eは、第1バイアス磁性層41aと、第2バイアス磁性層41bと、分離層43と、第1磁気結合層44aと、を含む。第2磁性層20と第2バイアス磁性層41bとの間に、分離層43が設けられる。分離層43と第2バイアス磁性層41bの間に、第1バイアス磁性層41aが設けられる。第1バイアス磁性層41aと第2バイアス磁性層41bとの間に、第1磁気結合層44aが設けられる。
図4(e)に示すように、バイアスピニング層42を設けない場合においても、磁気結合層を介して複数のバイアス磁性層を設けてもよい。磁気結合層を介して複数のバイアス磁性層を設け、複数のバイアス磁性層の磁化を反平行に結合させることによって、外部へ漏洩磁界を抑えることができる。
図5(a)および図5(b)は、実施形態のバイアス方向の違いを示す模式的斜視図である。
図5(a)は、第1バイアス磁性層41aの磁化が第1バイアス磁性層から第2磁性層20に加えるバイアス方向と平行(0°)方向である状態を表す。図5(b)は、第1バイアス磁性層41aの磁化が第1バイアス磁性層から第2磁性層20に加えるバイアス方向と反平行方向である状態を表す。
図5(a)および図5(b)に表した歪検知素子は、図4(b)に関して前述したバイアス層40bを含む。図5(a)および図5(b)に表した矢印41amは、第1バイアス磁性層41aの磁化を表す。図5(a)および図5(b)に表した矢印41bmは、第2バイアス磁性層41bの磁化を表す。図5(a)および図5(b)に表した矢印20pは、第2磁性層20に加えられるバイアスの向きを表す。
図5(a)に示すとおり、分離層43に正の磁気結合となる構成が用いられる場合には、分離層43を介して第2磁性層20に隣接する第1バイアス磁性層41aの磁化41amと平行方向に、バイアス20pが第2磁性層20に加わる。図5(b)に示すとおり、分離層43に負の磁気結合となる構成が用いられる場合には、分離層43を介して第2磁性層20に隣接する第1バイアス磁性層41aの磁化41amと反平行方向に、バイアス20pが第2磁性層20に加わる。
正の磁気結合となるか、あるいは負の磁気結合となるかは、分離層43に含まれる材料と、その材料の厚さと、により決定される。各材料の厚さにおいて、RKKY(Ruderman-Kittel-Kasuya-Yosida)結合が正となる場合には、正の磁気結合が生ずる。各材料の厚さにおいて、RKKY(Ruderman-Kittel-Kasuya-Yosida)結合が負となる場合には、負の磁気結合が生ずる。
分離層43に用いる材料として、例えば、RKKY結合を示すCu、Ru、Rh、Ir、V、Cr、Nb、Mo、Ta、W、Rrなどが用いられる。これらの元素については、分離層43の厚さに応じて、正の磁気結合と負の磁気結合とを使い分けることができる。これらの元素のほかに、Au、Ag、Pt、Pd、Ti、Zr、Hfなどが用いられてもよい。これらの元素を分離層43として用いた場合は、主に正の磁気結合が得られる。負の磁気結合を用いる場合には、Ru、Rh、Irを用いることができる。
バイアス層40bによるバイアス20pの強さが強すぎると、第2磁性層20(磁化自由層)の異方性磁界が高くなりすぎて、歪に対する磁化20mの回転が鈍る。可逆性の向上効果を得て、かつ、歪に対する磁化20mの回転の感度を低減しないために、バイアス層40bからのバイアス20pの強さは適切に設定することが好ましい。バイアス層40bからのバイアス20pの強さを適度にコントロールするためには、RKKYの交換結合定数が極端には高くないCuを用いることが好ましい。Cuにおいては、厚さに対する磁気結合の変化がなだらかなため、コントロールしやすいため好ましい。
図6は、第1の実施形態に係る別の歪検知素子を例示する模式的斜視図である。
図6に表したように、実施形態に用いられる歪検知素子100bは、第1電極E1と、下地層50と、バイアス層40と、第2磁性層20と、中間層30と、第1磁化固定層11と、磁気結合層13と、第2磁化固定層12と、ピニング層60と、キャップ層70と、第2電極E2と、を含む。第1磁化固定層11は、第1磁性層10に相当する。
第1電極E1と第2電極E2との間に、下地層50が設けられる。下地層50と第2電極E2との間に、バイアス層40が設けられる。バイアス層40と第2電極E2との間に、第2磁性層20が設けられる。第2磁性層20と第2電極E2との間に、中間層30が設けられる。中間層30と第2電極E2との間に、第1磁化固定層11が設けられる。第1磁化固定層11と第2電極E2との間に、磁気結合層13が設けられる。磁気結合層13と第2電極E2との間に、第2磁化固定層12が設けられる。第2磁化固定層12と第2電極E2との間に、ピニング層60が設けられる。ピニング層60と第2電極E2との間に、キャップ層70が設けられる。
この例では、歪検知素子100bは、トップスピンバルブ型の構造を有する。
下地層50には、例えば、Ta/Ruが用いられる。このTa層の厚さは、例えば、3nmである。このRu層の厚さは、例えば、2nmである。
バイアス層40は、例えば、IrMn(7nm)/Fe50Co50(2nm)/Ru(0.9nm)/Fe50Co50(2nm)/Cu(5nm)が用いられる。
第2磁性層20(磁化自由層)には、例えば、Co40Fe40B20(4nm)が用いられる。
中間層30には、例えば、2.0nmの厚さのMgO層が用いられる。
第1磁化固定層11には、例えば、Co40Fe40B20/Fe50Co50が用いられる。このCo40Fe40B20層の厚さは、例えば2nmである。このFe50Co50層の厚さは、例えば1nmである。
磁気結合層13には、例えば、0.9nmの厚さのRu層が用いられる。
第2磁化固定層12には、例えば、2.5nmの厚さのCo75Fe25層が用いられる。 ピニング層60には、例えば、7nmの厚さのIrMn層が用いられる。
キャップ層には、Ta/Ruが用いられる。このTa層の厚さは、例えば、1nmである。このRu層の厚さは、例えば、5nmである。
上述した例では、バイアス層40の構造は、図4(b)に示したバイアス層40bの構造を有する。トップスピンバルブで、バイアス層40が第2磁性層20(磁化自由層)よりも下(−Z軸方向)に形成される場合は、図4(b)に示したバイアス層40bの構造を上下反転させた構造を用いることができる。歪検知素子100bに含まれる層のそれぞれには、例えば、図3に示した歪検知素子100aに関して説明した材料を用いることができる。
図7は、第1の実施形態に係る別の歪検知素子を例示する模式的斜視図である。
図7に表したように、実施形態に用いられる歪検知素子100cは、第1電極E1と、下地層50と、ピニング層60と、第1磁性層10と、中間層30と、第2磁性層20と、バイアス層40と、キャップ層70と、第2電極E2と、を含む。第1電極E1と第2電極E2との間に、下地層50が設けられる。下地層50と第2電極E2との間に、ピニング層60が設けられる。ピニング層60と第2電極E2との間に、第1磁性層10(参照層)が設けられる。第1磁性層10と第2電極E2との間に、中間層30が設けられる。中間層30と第2電極E2との間に、第2磁性層20が設けられる。第2磁性層20と第2電極E2との間に、バイアス層40が設けられる。バイアス層40と第2電極E2との間に、キャップ層70が設けられる。
既に説明した歪検知素子100a、100bにおいては、第1磁化固定層11と磁気結合層13と第2磁化固定層12とを用いた構造が適用されている。図7に表した歪検知素子100cにおいては、単一の磁化固定層を用いたシングルピン構造が適用されている。
下地層50には、例えば、Ta/Ruが用いられる。このTa層の厚さは、例えば、3nmである。このRu層の厚さは、例えば、2nmである。
ピニング層60には、例えば、7nmの厚さのIrMn層が用いられる。
第1磁性層(参照層)には、例えば、3nmの厚さのCo40Fe40B20層が用いられる。
中間層30には、例えば、2.0nmの厚さのMgO層が用いられる。
第2磁性層20(磁化自由層)には、例えば、Co40Fe40B20(4nm)が用いられる。
バイアス層40には、Cu(5nm)/Fe50Co50(2nm)/Ru(0.9nm)/Fe50Co50(2nm)/IrMn(7nm)が用いられる。
キャップ層70には、Ta/Ruが用いられる。このTa層の厚さは、例えば、1nmである。このRu層の厚さは、例えば、5nmである。
上述した例では、バイアス層40の構造は、図4(b)に示したバイアス層40bの構造を有する。歪検知素子100cに含まれる層のそれぞれには、例えば、図3に示した歪検知素子100aに関して説明した材料を用いることができる。
図8(a)〜図8(f)は、磁化固定層の磁化の固着方向、バイアス磁性層の磁化の固着方向、および磁化自由層に加わるバイアス方向を表す模式的断面図である。
図8(a)〜図8(c)は、図3に示した歪検知素子100aを例示する。
図8(d)〜図8(e)は、図7に示した歪検知素子100cを例示する。
図8(a)〜図8(f)では、分離層43を介した磁気結合が正の場合を例に挙げて説明する。
図8(a)は、図4(a)に示したバイアス層40aが設けられる例を示す。
図8(a)に示したバイアス層40aは、単層のバイアス磁性層(第1バイアス磁性層41a)を含む。図8(a)では、第2磁化固定層12の磁化12m、第1磁化固定層11の磁化11m、および第1バイアス磁性層41aの磁化41amの固着が、歪検知素子100dとなる積層体を成形後に、一度の磁界中熱処理により行われる例を示す。図8(a)は、磁界中熱処理が紙面右向き(X軸方向)に磁場を加えて行われる場合の例を示す。
紙面右向きの磁界中熱処理を行うことにより、ピニング層60に接する第2磁化固定層12の磁化12mは、右向き(X軸方向)に固着される。同時に、バイアスピニング層42に接する第1バイアス磁性層41aの磁化41amは、右向きに固着される。磁気結合層13を介して第2磁化固定層12と隣り合う第1磁化固定層11は、磁気結合層13を介して第2磁化固定層12と反平行に磁気結合する。そのため、第1磁化固定層11の磁化11mは、左向きに固着される。その結果、図8(a)に示す歪検知素子100dでは、第1バイアス磁性層41aから第2磁性層20(磁化自由層)に加えられるバイアス20pの方向は、右向きとなり、第1磁化固定層11の磁化11mの固着方向とは反平行の方向となる。
図8(b)は、図4(b)に示したバイアス層40bが設けられる例を示す。
図8(b)に示したバイアス層40bは、2層のバイアス磁性層(第1バイアス磁性層41aおよび第2バイアス磁性層41b)を含む。図8(a)に表した歪検知素子100dは、単層のバイアス磁性層(第1バイアス磁性層41a)を含むことに対して、図8(b)に表した歪検知素子100eは、2層のバイアス磁性層(第1バイアス磁性層41aおよび第2バイアス磁性層41b)を含む。そのため、分離層43を介して第2磁性層20(磁化自由層)と隣り合う第1バイアス磁性層41aの磁化41amは、左向き(−X軸方向)に固着される。これにより、第2磁性層20(磁化自由層)には、左向きのバイアス20pが加えられる。よって、第2磁性層20(磁化自由層)に加わるバイアス20pの方向は、第1磁化固定層11の磁化11mの固着方向と平行の方向となる。
図8(c)は、図4(c)に示したバイアス層40cが設けられる例を示す。
図8(c)に示したバイアス層40cは、3層のバイアス磁性層(第1バイアス磁性層41a、第2バイアス磁性層41b、および第3バイアス磁性層41c)を含む。図8(a)に表した歪検知素子100dは、単層のバイアス磁性層(第1バイアス磁性層41a)を含むことに対して、図8(c)に表した歪検知素子100fは、3層のバイアス磁性層(第1バイアス磁性層41a、第2バイアス磁性層41b、および第3バイアス磁性層41c)を含む。図8(c)に表した歪検知素子100fのバイアス磁性層の数が奇数であることは、図8(a)に表した歪検知素子100dのバイアス磁性層の数が奇数であることと同じである。そのため、分離層43を介して第2磁性層20(磁化自由層)と隣り合う第1バイアス磁性層41aの磁化41amは、右向きに固着される。第2磁性層20(磁化自由層)には、右向きのバイアス20pが加えられる。よって、第2磁性層20(磁化自由層)に加わるバイアス20pの方向は、第1磁化固定層11の磁化11mの固着方向と反平行の方向となる。
図8(a)〜図8(c)に関して上述した例にて、バイアス磁性層の層数に応じて、第2磁性層20(磁化自由層)に加わるバイアス20pの方向が、第1磁化固定層11の磁化11mと平行または反平行のどちらかに選択される。ここで、バイアス層40による第2磁性層20(磁化自由層)の異方性磁界の向上は、バイアス20pの方向が第1磁化固定層11の磁化11mと平行の場合でも反平行の場合でもどちらでも得ることができる。そして、ゲージファクターを向上させることができる。
なお、中間層30に絶縁層が用いられるトンネル型の歪検知素子100の場合には、バイアス20pの方向は、第1磁化固定層11の磁化11mの方向と反平行であることがより好ましい。その理由については、後述する。つまり、2層の磁化固定層(第2磁化固定層12および第1磁化固定層11)を含むシンセティックピン型の歪検知素子100a、100bにバイアス層40を設ける場合には、バイアス層40に含まれるバイアス磁性層の層数を奇数とすることがより好ましい。
図8(d)は、図4(a)に示したバイアス層40aが設けられる例を示す。
図8(d)に示したバイアス層40aは、単層のバイアス磁性層(第1バイアス磁性層41a)を含む。図8(d)では、第1磁性層10の磁化10mおよび第1バイアス磁性層41aの磁化41amの固着が、歪検知素子100gとなる積層体を成形後に、一度の磁界中熱処理により行われる例を示す。図8(d)は、磁界中熱処理が紙面右向き(X軸方向)に磁場を加えて行われる場合の例を示す。
紙面右向きの磁界中熱処理を行うことにより、ピニング層60に接する第1磁性層10の磁化10mは、右向き(X軸方向)に固着される。同時に、バイアスピニング層42に接する第1バイアス磁性層41aの磁化41amは、右向きに固着される。その結果、図8(d)に示す歪検知素子100gでは、第1バイアス磁性層41aから第2磁性層20(磁化自由層)に加えられるバイアス20pの方向は、右向きとなり、第1磁性層10の磁化10mの固着方向と平行の方向となる。
図8(e)は、図4(b)に示したバイアス層40bが設けられる例を示す。
図8(e)に示したバイアス層40bは、2層のバイアス磁性層(第1バイアス磁性層41aおよび第2バイアス磁性層41b)を含む。図8(d)に表した歪検知素子100gは、単層のバイアス磁性層(第1バイアス磁性層41a)を含むことに対して、図8(e)に表した歪検知素子100hは、2層のバイアス磁性層(第1バイアス磁性層41aおよび第2バイアス磁性層41b)を含む。そのため、分離層43を介して第2磁性層20(磁化自由層)と隣り合う第1バイアス磁性層41aの磁化41amは、左向き(−X軸方向)に固着される。これにより、第2磁性層20(磁化自由層)には、左向きのバイアス20pが加えられる。よって、第2磁性層20(磁化自由層)に加わるバイアス20pの方向は、第1磁性層10の磁化10mの固着方向と反平行の方向となる。
図8(f)は、図4(c)に示したバイアス層40cが設けられる例を示す。
図8(f)に示したバイアス層40cは、3層のバイアス磁性層(第1バイアス磁性層41a、第2バイアス磁性層41b、および第3バイアス磁性層41c)を含む。図8(d)に表した歪検知素子100gは、単層のバイアス磁性層(第1バイアス磁性層41a)を含むことに対して、図8(f)に表した歪検知素子100iは、3層のバイアス磁性層(第1バイアス磁性層41a、第2バイアス磁性層41b、および第3バイアス磁性層41c)を含む。図8(f)に表した歪検知素子100iのバイアス磁性層の数が奇数であることは、図8(d)に表した歪検知素子100gのバイアス磁性層の数が奇数であることと同じである。そのため、分離層43を介して第2磁性層20(磁化自由層)と隣り合う第1バイアス磁性層41aの磁化41amは、右向きに固着される。第2磁性層20(磁化自由層)には、右向きのバイアス20pが加えられる。よって、第2磁性層20(磁化自由層)に加わるバイアス20pの方向は、第1磁性層10の磁化10mの固着方向と平行の方向となる。
図8(d)〜(f)に示したとおり、シングルピンの磁化固定層を用いる場合には、バイアス層40に含まれるバイアス磁性層の層数が偶数の場合に、バイアス20pの方向は、中間層30と接した第1磁性層10の磁化10mの方向と反平行となる。
このように、第2磁性層20(磁化自由層)に加わるバイアス20pの方向を、第1磁性層10のうちの中間層30と接する磁化固定層と反平行とする場合には、第1磁性層10の磁化固定層の層数が偶数のときに、バイアス層40に含まれるバイアス磁性層の層数を奇数とする。一方で、第1磁性層10の磁化固定層の層数が奇数のときに、バイアス層40に含まれるバイアス磁性層の層数を偶数とする。
第2磁性層20(磁化自由層)に加わるバイアス20pの方向を、第1磁性層10のうちの中間層30と接する磁化固定層と平行とする場合には、第1磁性層10の磁化固定層の層数が偶数のときに、バイアス層40に含まれるバイアス磁性層の層数を偶数とする。一方で、第1磁性層10の磁化固定層の層数が奇数のときに、バイアス層40に含まれるバイアス磁性層の層数を奇数とする。
なお、バイアス層は、4層以上のバイアス磁性層を含んでいてもよい。
実施形態に係る第1の実施例として、下記の構造を有する歪検知素子100を作製する。
(第1の実施例)
下地層50:Ta(1nm)/Ru(2nm)
ピニング層60:Ir22Mn78(7nm)
第2磁化固定層12:Co75Fe25(2.5nm)
磁気結合層13:Ru(0.9nm)
第1磁化固定層11:Co40Fe40B20(3nm)
中間層30:MgO(2nm)
第2磁性層20(磁化自由層):Co40Fe40B20(4nm)
バイアス層40:Cu(5nm)/Fe50Co50(2nm)/Ru(0.9nm)/Fe50Co50(2nm)/IrMn(7nm)
キャップ層70:Cu(1nm)/Ta(2nm)/Ru(5nm)
第1の実施例の歪検知素子100の構造は、図3に示した歪検知素子100aの構造と同様である。バイアス層40の構造は、図4(b)に示したバイアス層40bの構造と同様である。つまり、第1の実施例のバイアス層40は、分離層43/第1バイアス磁性層41a/第1磁気結合層44a/第2バイアス磁性層41b/バイアスピニング層42の構造を有する。
第1の比較例として、下記の構造を有する歪検知素子を作製する。
(比較例1)
下地層50:Ta(1nm)/Ru(2nm)
ピニング層60:Ir22Mn78(7nm)
第2磁化固定層12:Co75Fe25(2.5nm)
磁気結合層13:Ru(0.9nm)
第1磁化固定層11:Co40Fe40B20(3nm)
中間層30:MgO(2nm)
第2磁性層20(磁化自由層):Co40Fe40B20(4nm)
キャップ層70:Cu(10nm)/Ta(2nm)/Ru(5nm)
第1の比較例では、バイアス層40は設けられていない。
第1の実施例の積層体および第1の比較例の積層体については、成形後、320℃1Hで6500エルステッド(Oe)の磁界印加中でのアニールを行う。これにより、第2磁化固定層11の磁化12mおよび第1磁化固定層11の磁化11mの固着を行う。第1の実施例においては、第1バイアス磁性層41aの磁化41amおよび第2バイアス磁性層41bの磁化41bmの固着を行う。
図9(a)〜図9(d)は、第1の実施例および第1の比較例の積層体の素子加工前の磁気特性の結果の例を示すグラフ図である。
図9(a)は、第1の実施例において、磁界中熱処理を行う方向に磁場をかける場合を正の磁場として評価したBHループの例を表す。図9(b)は、第1の実施例において、磁界中熱処理方向と面内で垂直方向に磁場を印加して評価したBHループの例を表す。図9(c)は、第1の比較例において、磁界中熱処理を行う方向に磁場をかける場合を正の磁場として評価したBHループの例を表す。図9(d)は、第1の比較例において、磁界中熱処理方向と面内で垂直方向に磁場を印加して評価したBHループの例を表す。
図9(a)に表したBHループでは、角型性のよい磁化容易軸のループ形状が得られている。図9(b)に表したBHループでは、典型的な磁化困難軸のループ形状が得られている。この結果より、第2磁性層20(磁化自由層)には、磁界中熱処理方向を容易軸とした面内の誘導磁気異方性が得られていることがわかる。図9(a)に表したBHループより、第2磁性層20(磁化自由層)のヒステリシスループは、正の磁場方向に4.7OeのHshiftが確認される。これは、バイアス層40によって、マイナス磁場側にバイアス20pが加わっているため、第2磁性層20(磁化自由層)を反転するために4.7Oe分プラス側の磁場が必要になっていることを意味する。この誘導磁気異方性の強さと関係する、図9(b)に表したBHループから算出される異方性磁界Hkは、22.5Oeと見積もられる。これにより、第1の比較例に対してバイアス層40を設けることで異方性磁界が向上していることが確認される。図9(a)に表したBHループから見積もられる保磁力Hcは、3.7Oeである。磁歪定数は、20ppmである。磁歪定数については、第1の比較例と同等の値が見積もられる。
図9(c)に表したBHループでは、角型性のよい磁化容易軸のループ形状が得られている。図9(d)に表したBHループでは、典型的な磁化困難軸のループ形状が得られている。この結果より、第2磁性層20(磁化自由層)には、磁界中熱処理方向を容易軸とした面内の誘導磁気異方性が得られていることがわかる。この誘導磁気異方性の強さと関係する、図9(d)に表したBHループから算出される異方性磁界Hkは、18.3Oeと見積もられる。図9(c)に表したBHループから、第1の比較例の第2磁性層20(磁化自由層)の保磁力Hcは、3.7Oeと見積もられる。保磁力Hcは、磁化回転の容易さを示す特性指標である。3.7Oeの保磁力Hcは、逆磁歪効果による磁化回転が十分に起こりやすい値といえる。なお、第1の比較例の磁歪定数を評価した結果、その磁歪定数は、20ppmである。この値は、歪に対する磁化回転を引き起こすのに十分高い値といえる。
図9(a)〜図9(d)の結果より、第1の実施例の第2磁性層20(磁化自由層)の構成は、第1の比較例の第2磁性層20(磁化自由層)の構成と同じである。第1実施例の保磁力Hcは、第1の比較例の保磁力Hcと略同じである。第1実施例の磁歪定数は、第1の比較例の磁歪定数と略同じである。一方で、第1の実施例では、バイアス層40を設けることによって、第1の比較例に比べて、異方性磁界Hkが向上していることがわかる。
第1の実施例1および第1の比較例の積層体をフォトリソグラフィおよびミリングによって垂直通電素子に加工する。垂直通電素子の素子サイズについては、20μm×20μmとする。
図10(a)〜図10(e)は、第1の実施例の歪検知素子100の歪センサ特性の結果の例を示すグラフ図である。
図10(a)〜図10(e)に示す歪センサ特性の評価については、基板ベンディング法により行う。試作する歪検知素子100のウェーハを短冊状にカットしたウェーハ(短冊ウェーハ)を、ナイフエッジによる4点ベンディング法により歪印加を行う。短冊ウェーハを曲げるナイフエッジにロードセルを組み込んでおり、そのロードセルにて計測された荷重により、ウェーハ表面の歪検知素子100に加わる歪を計算する。歪の計算には、次式で表される一般的な2辺支持梁の理論式を用いる。
式1中において、esは、ウェーハのヤング率を表す。L1は、外側ナイフエッジのエッジ間長を表す。L2は、内側ナイフエッジのエッジ間長を表す。Wは、短冊ウェーハの幅を表す。tは、短冊ウェーハの厚みを表す。Gは、ナイフエッジに加える荷重を表す。ナイフエッジに加わる荷重については、モーター制御で連続的に変化させることができる。
歪印加の方向については、同一平面内で第1磁化固定層11の磁化11mの方向と垂直な方向に加える。本願明細書において、正の値の歪は引張歪であり、負の値の歪は圧縮歪である。
図10(a)に表した例では、素子サイズが20μm×20μmの第1の実施例の歪検知素子100について、歪検知素子100に加わる歪を−0.8(%0)以上0.8(%0)以下の間で、0.2(%0)刻みで固定値として設定する。図10(a)は、それぞれの歪で電気抵抗の磁場依存性を測定した結果の例をそれぞれ示している。測定時の外部磁場方向は、第2磁化固定層12と平面内で平行な方向に加えられている。正の外部磁場は、第2磁化固定層12の磁化12mと反対側に磁場を加える場合である。図10(a)より、印加歪の値によりR−Hループ形状が変化していることがわかる。これは、逆磁歪効果によって、第2磁性層20(磁化自由層)の面内磁気異方性が変化していることを示している。
図10(b)〜図10(e)は、第1の実施例の歪検知素子100について、外部磁場を固定し、歪を−0.8(%0)以上0.8(%0)以下の間で連続的に掃引する場合の電気抵抗の変化を示す。歪については、−0.8(%0)から0.8(%0)へ掃引させ、続いて、0.8(%0)から−0.8(%0)へ掃引させる。これらの結果が、歪センサ特性を示している。図10(b)では、15Oeの外部磁場を加えて評価を行う。図10(c)では、10Oeの外部磁場を加えて評価を行う。図10(d)では、7.5Oeの外部磁場を加えて評価を行う。図10(e)では、5Oeの外部磁場を加えて評価を行う。
実施形態の歪検知素子100では、適切なバイアス磁界を加えることで高いゲージファクターを得ることができる。外部磁界については、後述するハードバイアスを歪検知素子100の側壁に設けることによっても加えることができる。第1の実施例の歪検知素子100では、簡易的に外部磁場をコイルによって与えて評価する。図10(b)〜図10(e)より、第1の実施例の各バイアス磁界におけるゲージファクターを、歪に対する電気抵抗の変化から見積もる。
ゲージファクターは、次式で表される。
GF=(dR/R)/dε ・・・式(2)
図10(b)より、第1の実施例において、外部磁界が15Oeであるときのゲージファクターは、1642である。図10(c)より、第1の実施例において、外部磁界が10Oeであるときのゲージファクターは、2147である。図10(d)より、第1の実施例において、外部磁界が7.5Oeであるときのゲージファクターは、3063である。
一方で、図10(e)に示すように、外部磁界が6Oeのときにおいては、歪を、−0.8(%0)から0.8(%0)へ掃引させ、続いて、0.8(%0)から−0.8(%0)へ掃引させるときの電気抵抗の変化は、非可逆である。この結果より、第1の実施例では、バイアス磁界が7.5Oeの場合に、最大ゲージファクター(3063)が得られる。
図11(a)〜図11(e)は、第1の比較例の歪検知素子の歪センサ評価結果の例を示すグラフ図である。
図11(a)に表した例では、素子サイズが20μm×20μmの第1の比較例の歪検知素子について、歪検知素子に加わる歪を−0.8(%0)以上0.8(%0)以下の間で、0.2(%0)刻みで固定値として設定する。図11(a)は、それぞれの歪で電気抵抗の磁場依存性を測定した結果の例をそれぞれ示している。図11(a)においても図10(a)と同様に、印加歪の値によりR−Hループ形状が変化していることがわかる。これは、逆磁歪効果によって、第2磁性層20(磁化自由層)の面内磁気異方性が変化していることを示している。
図11(b)〜図11(e)は、第1の比較例の検知素子について、外部磁場を固定し、歪を−0.8(%0)以上0.8(%0)以下の間で連続的に掃引する場合の電気抵抗の変化を示す。図11(b)では、15Oeの外部磁場を加えて評価を行う。図11(c)では、10Oeの外部磁場を加えて評価を行う。図11(d)では、7.5Oeの外部磁場を加えて評価を行う。図11(e)では、5Oeの外部磁場を加えて評価を行う。
図11(b)より、第1の比較例において、外部磁界が15Oeであるときのゲージファクターは、1357である。図11(c)より、第1の比較例において、外部磁界が10Oeであるときのゲージファクターは、1580である。図11(d)より、外部磁界が7.5Oeであるときのゲージファクターは、2087である。
一方で、図11(e)示すように、外部磁界が5Oeのときにおいては、−0.8(%0)から0.8(%0)へ掃引させ、続いて、0.8(%0)から−0.8(%0)へ掃引させるときの電気抵抗の変化は、非可逆である。この結果より、第1の実施例では、バイアス磁界が7.5Oeの場合に、最大ゲージファクター(2087)が得られる。
図10(a)〜図10(e)および図11(a)〜図11(e)の結果より、バイアス層40が設けられた第1の実施例では、第1の比較例と比較して、高いゲージファクターが確認される。
図12は、様々なバイアス磁界におけるゲージファクターの評価結果の例を表すグラフ図である。
図10(a)〜図10(e)および図11(a)〜図11(e)に関して上述した結果を考察するために、第1の実施例と第1の比較例について、様々なバイアス磁界でゲージファクターを評価する。図12のグラフ図の横軸は、評価に用いるバイアス磁界と、図10(a)および図11(a)のゼロ歪におけるRHループのHshiftと、の差分を表す。
実施形態に係る歪検知素子100では、ゼロ歪におけるRHループのヒステリシスループの中央位置(Hshiftの位置)に相対的に近い磁界において、相対的に高いゲージファクターが得られる。これは、図10(a)および図11(a)に示すように、異なる歪を印加して評価したRHループの形状からわかる。すなわち、H−Hshiftが小さくなるバイアス磁界を加えると、より高いゲージファクターが得られる。
図12に表した曲線CL2からわかるように、第1の比較例では、H−Hshiftが5.5Oe付近でゲージファクターの最大値(2087)が得られる。5.5Oe以下のバイアス磁界では、歪に対する第2磁性層の磁化の動きは、非可逆となる。一方、図12に表した曲線CL1からわかるように、第1の実施例では、H−Hshiftが1.5Oe付近において、可逆な歪センサ特性が得られる。その結果、H−Hshiftが1.5Oe付近において、ゲージファクターの最大値(3063)が得られる。第1の実施例のゲージファクターの最大値(3063)は、第1の比較例のゲージファクターの最大値(2087)よりも大きい。このように、バイアス層40を設けることによって、可逆な歪センサ特性が得られるバイアス磁界を低減することができ、ゲージファクターが向上することが確認される。
バイアス層40を設けることにより歪センサ特性の可逆性を向上させることができる原理について、図面を参照しつつ説明する。
図13(a)〜図13(f)は、実施形態の磁化自由層の自由エネルギーの面内角度依存性を表す模式図である。
図14(a)〜図14(f)は、比較例の磁化自由層の自由エネルギーの面内角度依存性を表す模式図である。
図13(a)、図13(c)、図13(e)、図14(a)、図14(c)および図14(e)は、磁化自由層の自由エネルギーの面内角度依存性を表すグラフ図である。図13(b)、図13(d)、図13(f)、図14(b)、図14(d)および図14(f)は、磁化自由層の磁化および磁化自由層に生ずる歪を例示する。
図13(a)〜図13(f)および図14(a)〜図14(f)に表した例では、第1磁性層10(磁化固定層)の磁化10mと平行方向を0°と定義し、反平行方向を180°と定義する。図9(a)〜図9(d)に関して説明したように、第2磁性層20(磁化自由層)は、磁界中熱処理による誘導磁気異方性によって、0°、180°方向を磁化容易軸MA1とし、90°、270°を磁化困難軸MA2とする面内の磁気異方性を有する。これは、図13(a)に示すとおり、第1の磁性層10の磁化10mと第2磁性層20の磁化20mとの間の相対角度が90°(もしくは270°)である場合に、第2磁性層20(磁化自由層)の自由エネルギーが最大となる分布を持つことを意味する。
図13(a)および図13(b)に示すとおり、第2磁性層20(磁化自由層)の初期磁化20mfを180°に設定する。図13(c)〜図13(f)を参照しつつ、第2磁性層20に応力を加える場合において、自由エネルギーの変化による磁化20mの回転の様子を説明する。図13(c)に表した曲線CL3が曲線CL4に変化するように、90°(もしくは270°)方向に引張応力tsを加えると、0°、180°方向における磁歪エネルギーによる自由エネルギーの増大が起こる。すると、第2磁性層20の磁化20mは、180°から90°(もしくは270°)方向に変化する。
図13(a)および図13(b)において曲線CL3で示した誘導磁気異方性のエネルギー分布のピークの高さPH1は、前述した異方性磁界Hkに比例する。図13(a)、図13(c)および図13(e)に表したように、異方性磁界Hkがある程度大きい場合には、90°付近の誘導磁気異方性のエネルギー分布のピークの高さPH1が十分に大きい。そのため、引張応力tsによって180°から90°付近に変化した第2磁性層20の磁化20mは、引張応力tsを取り除くと180°に戻りやすい。すなわち、歪に対する電気抵抗変化の可逆性が高まる。
これに対して、図14(c)に示すとおり、異方性磁界Hkが低い場合、第2磁性層20の磁化20mは、90°付近の誘導磁気異方性のエネルギー分布のピークの高さPH2を通り越し、引張応力tsを取り除いた後に180°に戻らず0°にいく成分を有する。これが、図10(e)、図11(e)および12に関して説明した、歪に対して電気抵抗変化が非可逆となる状況に対応する。
第1の実施例と第1の比較例との間の比較で、バイアス層40を設けて異方性磁界Hkを向上させた第1の実施例の磁歪定数、保磁力HcおよびMR変化率が第1の比較例の磁歪定数、保磁力HcおよびMR変化率とそれぞれ同等であるのにもかかわらず、第1の実施例のゲージファクターが高い値を示したのは、図13(a)〜図14(f)にて説明した原理に基づくと考えられる。すなわち、第1の実施例のゲージファクターが高い値を示したのは、異方性磁界Hkの向上によって、余分なバイアス磁界が無くとも可逆な歪センサ特性が得られるためであると考えられる。
実施形態に係る第2〜4の実施例として、下記の構造を有する歪検知素子100を作製する。
(第2の実施例)
下地層50:Ta(1nm)/Ru(2nm)
ピニング層60:Ir22Mn78(7nm)
第2磁化固定層12:Co75Fe25(2.5nm)
磁気結合層13:Ru(0.9nm)
第1磁化固定層11:Co40Fe40B20(3nm)
中間層30:MgO(2nm)
第2磁性層20(磁化自由層):Co40Fe40B20(4nm)
バイアス層40:Cu(2.4nm〜5nm)/Fe50Co50(3nm)/IrMn(7nm)
キャップ層70:Cu(1nm)/Ta(2nm)/Ru(5nm)
(第3の実施例)
下地層50:Ta(1nm)/Ru(2nm)
ピニング層60:Ir22Mn78(7nm)
第2磁化固定層12:Co75Fe25(2.5nm)
磁気結合層13:Ru(0.9nm)
第1磁化固定層11:Co40Fe40B20(3nm)
中間層30:MgO(2nm)
第2磁性層20(磁化自由層):Co40Fe40B20(4nm)
バイアス層40:Cu(2.4nm〜5nm)/Fe50Co50(2nm)/Ru(0.9nm)/Fe50Co50(2nm)/IrMn(7nm)
キャップ層70:Cu(1nm)/Ta(2nm)/Ru(5nm)
(第4の実施例)
下地層50:Ta(1nm)/Ru(2nm)
ピニング層60:Ir22Mn78(7nm)
第2磁化固定層12:Co75Fe25(2.5nm)
磁気結合層13:Ru(0.9nm)
第1磁化固定層11:Co40Fe40B20(3nm)
中間層30:MgO(2nm)
第2磁性層20(磁化自由層):Co40Fe40B20(4nm)
バイアス層40:Cu(2.4nm〜5nm)/Fe50Co50(2nm)/Ru(0.9nm)/Fe50Co50(4nm)/Ru(0.9nm)/Fe50Co50(2nm)/IrMn(7nm)
キャップ層70:Cu(1nm)/Ta(2nm)/Ru(5nm)
第3の実施例の歪検知素子100の構造は、第1の実施例のように、図3に示した歪検知素子100aの構造と同様である。バイアス層40の構造は、図4(b)に示したバイアス層40bの構造と同様である。つまり、第3の実施例のバイアス層40は、分離層43/第1バイアス磁性層41a/第1磁気結合層44a/第2バイアス磁性層41b/バイアスピニング層42の構造を有する。
第2の実施例の歪検知素子100の構造は、図3に示した歪検知素子100aの構造と同様である。バイアス層40の構造は、図4(a)に示したバイアス層40aの構造と同様である。つまり、第2の実施例のバイアス層40は、分離層43/第1バイアス磁性層41a/バイアスピニング層42の構造を有する。
第4の実施例の歪検知素子100の構造は、図3に示した歪検知素子100aの構造と同様である。バイアス層40の構造は、図4(c)に示したバイアス層40cの構造と同様である。つまり、第4の実施例のバイアス層40は、分離層43/第1バイアス磁性層41a/第1磁気結合層44a/第2バイアス磁性層41b/第2磁気結合層44b/第3バイアス磁性層41c/バイアスピニング層42の構造を有する。
第2〜4の実施例の歪検知素子100の積層体について、分離層43のCuの厚さを変えて第2〜4の実施例のそれぞれで複数の積層体を作成する。その後、図9(a)〜図9(d)に示した結果と同様に、素子加工前の磁気特性の評価を行う。
図15(a)〜図15(d)は、第2〜4の実施例の積層体の素子加工前の磁気特性の結果の例を示すグラフ図である。
図15(a)は、図9(a)〜図9(d)に示した方法で同様に解析を行い、HshiftとHkとを見積もり、Hshiftを横軸とし、Hkを縦軸としてプロットした結果の例を示す。
図15(a)には、バイアス層40を設けていない第1の比較例の結果をあわせてプロットしている。図15(a)では、第3の実施例の結果を「■」で表す。図15(a)では、第2の実施例の結果を「◆」で表す。図15(a)では、第4の実施例の結果を「▲」で表す。図15(a)では、第1の比較例の結果を「○」で表す。
図15(a)からわかるように、奇数のバイアス磁性層を有する第2の実施例および実施例4では、Hshiftが負となっていることがわかる。偶数のバイアス磁性層を有する第3の実施例では、Hshiftが正となっていることがわかる。第2〜4の実施例では、分離層43のCuの厚さを変えることで、異なる絶対値を有するHshiftを有する積層体が実現されている。第2〜4の実施例のそれぞれにおいて、分離層43のCuの厚さが薄いほど、絶対値の大きいHshiftが確認される。
図15(a)より、Hshiftの絶対値が大きいほど、異方性磁界が向上していることがわかる。この結果より、分離層43のCuの厚さを調整することで、異方性磁界Hkの向上量を制御することができることがわかる。ここで、異方性磁界Hkを向上させると、歪に対する第2磁性層20の磁化20mの可逆性が向上する一方で、必要以上に高い異方性磁界Hkを付与すると、歪に対する第2磁性層20の磁化20mの変化が起こりずらくなる。そのため、異方性磁界Hkの向上量については、適量とすることがより好ましい。異方性磁界Hkは、例えば20Oe以上30Oe以下程度とすることが好ましい。
図15(b)は、第2の実施例のうちのHshiftが−19Oe程度である例2Aについて、磁界中熱処理を行う方向に磁場をかける場合を正の磁場として評価したBHループの例を表す。
図15(c)は、第1の比較例について、磁界中熱処理を行う方向に磁場をかける場合を正の磁場として評価したBHループの例を表す。
図15(d)は、第3の実施例のうちのHshiftが18Oe程度である例3Aについて、磁界中熱処理を行う方向に磁場をかける場合を正の磁場として評価したBHループの例を表す。
まず、比較例1の図15(c)を見ると、第2磁性層20(磁化自由層)のヒステリシスループは、上下対称で角型性のよいものであることがわかる。一方で、図15(b)に示す例2Aでは、第2磁性層20(磁化自由層)のヒステリシスループの上側では角型性がよい一方で、下側では角型性が若干くずれていることがわかる。これは、バイアス層40から第2磁性層20(磁化自由層)に加えられるバイアス方向と反平行側における磁化の安定性が若干落ちていることを意味する。例2Aで角型性が崩れているのは、図8(a)から分かるとおり、第2磁性層20(磁化自由層)が第1磁化固定層11と平行な場合に、磁化の安定性が若干落ちているともいえる。
一方で、図15(c)に示す例3Aでは、第2磁性層20(磁化自由層)のヒステリシスループの下側では角型性がよい一方で、上側では角型性が若干くずれていることがわかる。これについても、バイアス層40から第2磁性層20(磁化自由層)に加えられるバイアス方向と反平行側における磁化の安定性が若干落ちていることを意味する。例3Aで角型性が崩れているのは、図8(b)から分かるとおり、第2磁性層20(磁化自由層)が第1磁化固定層11と反平行な場合に、磁化の安定性が若干落ちているともいえる。
ここで、中間層30に絶縁層を用いたトンネル型の歪検知素子の場合には、バイアス20pの方向は、第1磁化固定層11の磁化11mと反平行としたほうがより好ましい。これは、トンネル型の歪検知素子では、ピン層とフリー層との間の相対角度が0°と90°との間で変化する場合よりも、90°と180°との間で変化する場合のほうが電気抵抗の変化が大きくとれるため、90°と180°との間で歪センサとして駆動したほうが高いゲージファクターを得やすいためである。
よって、第2〜4の実施例のように、2層の磁化固定層を含むシンセティックピン型の歪検知素子にバイアス層40を設ける場合は、バイアス層40に含まれるバイアス磁性層の層数を奇数とするとより好ましい。これは、図15(a)〜図15(d)にて説明したとおり、奇数のバイアス磁性層としたほうが、第1磁化固定層11と反平行方向において磁化の安定性が良好なためである。
ただし、偶数のバイアス磁性層を用いた場合でも、分離層43のCuの厚さを適切なものとし、Hshiftの絶対値をあまり大きすぎないようにすることで、反平行方向における磁化の安定性を崩さずキープすることは可能である。
バイアス層40から第2磁性層(磁化自由層)に加わるバイアスの方向が第1磁化固定層11の磁化11mの固着の方向と180°とすることが好ましい。
図16(a)〜図16(d)は、実施形態に係る別の歪検知素子について説明する模式図である。
前述してきた実施形態では、バイアス層40cから第2磁性層20(磁化自由層)に加えられるバイアス方向が、第1磁化固定層11と平行もしくは反平行の場合について説明してきた。但し、バイアス方向は、第1磁化固定層11と平行・反平行に限定されるものではない。任意の方向にバイアスを加えることが可能である。
例えば、図16(a)に示すように、第1磁化固定層11の磁化11mの方向に対して、バイアス20pの方向を135°(もしくは225°)に設定することも可能である。このようなバイアス20pの方向の設定は、図16(b)および図16(c)に示すような2段階の磁界中アニールと、ピニング層60に用いられる材料の選定と、バイアスピニング層42に用いられる材料の選定と、によって可能となる。
ピニング層60またはバイアスピニング層42に用いられる反強磁性材料については、その組成によって磁化固着が生ずる温度が異なる。例えば、PtMnなど規則合金系の材料については、IrMnなどの不規則でも磁化固着を生ずる材料にくらべて、磁化固着が行われる温度が高い。例えば、図16(a)に示す歪検知素子100jのピニング層60にPtMnを用い、バイアスピニング層42にIrMnを用いて、図16(b)および図16(c)に示すような2段階の磁界中熱処理を行う。すると、図16(b)に表した320°C―10Hアニールにおいて、ピニング層60に接した第2磁化固定層12は、右向きに固着される。バイアスピニング層42に接した第3バイアス磁性層41cは、いったん右向きに固着される。
その後、例えば、図16(c)に表したような250°C―1Hアニールで磁場MFの方向を変えると、ピニング層60に接した第2磁化固定層12の磁化12mは、右向きのままで、バイアスピニング層42に接した第3バイアス磁性層41cの磁化41cmは、右上を向く、といった設定が可能となる。この磁化の向きは、図16(d)に示すように、室温に戻した後も保持される。
このように、磁界中アニールの方法と、ピニング層60の材料選定と、バイアスピニング層42の材料選定と、によって、第1磁化固定層11と第2磁性層20(磁化自由層)へのバイアス20pの方向を任意に設定することが可能である。ここで、前述したように、中間層30に絶縁層を用いたトンネル型の歪検知素子を用いる場合、バイアス20pの方向は第1磁化固定層11の磁化11mと反平行側としたほうがより好ましい。具体的には、第1磁化固定層11の磁化11mとバイアス20pの方向との間の相対角度を、90°以上270°以下にすることが好ましく、135°以上225°以下とすることがさらに好ましい。
図17(a)〜図17(d)は、実施形態に係る別の歪検知素子について説明する模式図である。
図4(d)、(e)に示すように、ピニング層60を用いないバイアス層40d、40eを含む歪検知素子においても、第1磁化固定層11とバイアス20pの方向については、任意に設定することが可能である。例えば、図17(a)に示すように、第1磁化固定層11の磁化11mの方向に対して、バイアス20pの方向を135°(もしくは225°)に設定することも可能である。このようなバイアス20pの方向の設定は、図17(b)および図17(c)に示すような磁界中アニール後に、室温付近の低い温度で異なる方向に着磁することによって可能となる。
図17(a)〜図17(d)に示すような構成では、第1磁化固定層11の固着はピニング層60によって行われている。一方で、第1バイアス磁性層41aはバイアスピニング層を伴っていないため、磁気特性がハードの永久磁石のような材料が用いられる。このような歪検知素子100kの場合は、第1バイアス磁性層41aの磁化41amの設定に熱処理は必要ない。そのため、第1磁化固定層11の磁化11mの固着を磁界中熱処理によって行い、その後に、ハード磁性材料の第1バイアス磁性層41aを熱処理後に磁場をかけて着磁すればよい。ここで、中間層30に絶縁層を用いたトンネル型の歪検知素子を用いる場合は、例えば、バイアス20pの方向は第1磁化固定層11の磁化11mと反平行側としたほうがより好ましい。具体的には、第1磁化固定層11とバイアス20pの方向との間の相対角度を、90°以上270°以下にすることが好ましく、135°以上225°以下とすることがさらに好ましい。
一方、抵抗変化する歪のダイナミックレンジを広くとる目的においては、第1磁化固定層11とバイアス20pの方向との間の相対角度は、30°以上60°以下、もしくは120°以上150°以下とすることが望ましい。
図18は、実施形態に用いられる別の歪検知素子を例示する模式的斜視図である。
図18に例示したように、歪検知素子100lにおいては、絶縁層が設けられる。すなわち、第1電極E1と第2電極E2との間に、互いに離間する2つの絶縁層81(絶縁部分)が設けられている。第1電極E1と第2電極E2との間に、下地層50/ピニング層60/第2磁化固定層12/磁気結合層13/第1磁化固定層11(第1磁性層10)/中間層30/第2磁性層20/バイアス層40/キャップ層70の積層体が配置される。この積層体は、第1電極E1と第2電極E2との間に配置されている。
この積層体は、歪検知素子100lの場合には、下地層50と、第1磁性層10(第1磁化自由層)と、中間層30と、第2磁性層20(第2磁化自由層)と、キャップ層70と、を含む。すなわち、この積層体の側壁に対向して、絶縁層81が設けられる。
絶縁層81には、例えば、アルミニウム酸化物(例えば、Al2O3)、または、シリコン酸化物(例えば、SiO2)などを用いることができる。絶縁層81により、積層体の周囲におけるリーク電流を抑制することができる。
図19は、実施形態に用いられる別の歪検知素子を例示する模式的斜視図である。
図19に例示したように、歪検知素子100mにおいては、ハードバイアス層83がさらに設けられる。すなわち、第1電極E1と第2電極E2との間に、互いに離間する2つのハードバイアス層83(ハードバイアス部分)が設けられる。第1電極E1と第2電極E2との間に、下地層50/ピニング層60/第2磁化固定層12/磁気結合層13/第1磁化固定層11(第1磁性層10)/中間層30/第2磁性層20/バイアス層40/キャップ層70の積層体が配置される。ハードバイアス層83とこの積層体との間に、絶縁層81が配置される。この例では、ハードバイアス層83と第1電極E1との間に、絶縁層81が延在している。
ハードバイアス層83の磁化により、第1磁性層10の磁化10m及び第2磁性層20の磁化20mの少なくともいずれかが、所望の方向に設定される。ハードバイアス層83により、力が基板に印加されていない状態において、第1磁性層10の磁化10m及び第2磁性層20の磁化20mの少なくともいずれかを所望の方向に設定できる。
ハードバイアス層83には、例えば、CoPt、CoCrPt、または、FePt等の磁気異方性が比較的高い硬質強磁性材料が用いられる。ハードバイアス層83には、FeCoまたはFeなどの軟磁性材料の層と、反強磁性層と、を積層した構造を用いることができる。この場合には、交換結合により、磁化が所定の方向に沿う。ハードバイアス層83の厚さ(例えば、第1電極E1から第2電極E2に向かう方向に沿った長さ)は、例えば5nm以上50nm以下である。
上記のハードバイアス層83及び絶縁層81は、後述する歪検知素子のいずれにも適用できる。
図20は、バイアス層のバイアス方向、ハードバイアスのバイアス方向の例を示す模試的平面図である。
図20に示す例では、第1磁化固定層11に対して第1バイアス磁性層41aのバイアス20pbの方向は反平行に設定されている。第1磁化固定層11に対するハードバイアス層83の磁界バイアス20phの方向は、135°(もしくは225°)に設定されている。
第2磁性層20(磁化自由層)の初期磁化20mf(バイアス20pの方向)は、第1バイアス磁性層41aからのバイアス20pbと、ハードバイアス層83からの磁界バイアス20phと、の競合から、135°と180°の間(もしくは180°から225°の間)に設定される。このように、バイアス層40を含む実施形態の歪検知素子にハードバイアス層83を設ける場合、第2磁性層20(磁化自由層)の初期磁化20mf(バイアス20pの方向)が第1磁化固定層11に対して、90°以上270°以下に設定することが好ましく、135°以上225°以下に設定することがさらに好ましい。ここで、図20に表した矢印A101および矢印A102のように、実施形態の歪検知素子に加わる歪の方向が第1磁化固定層11の磁化11mの方向に対して平行または垂直である場合に、第2磁性層20(磁化自由層)が歪によって回転する磁化のダイナミックレンジである90°の範囲で、単調増加、もしくは単調減少の電気抵抗変化を得ることができる。そのため、好ましい。
(第2の実施形態)
図21(a)および図21(b)は、第2の実施形態に係る歪検知素子を例示する模式図である。
図21(a)は、歪検知素子が用いられる圧力センサを例示する模式的断面図である。図21(b)は、歪検知素子の模式的斜視図である。
図21(a)に表したように、歪検知素子300は、圧力センサ200aに用いられる。圧力センサ200aは、基板210と、歪検知素子300と、を含む。基板210は、可撓性の領域を有する。歪検知素子300は、基板210の一部の上に設けられる。圧力センサ200aは、図1(a)に関して前述した圧力センサ200と同様である。
図21(b)に表したように、実施形態にかかる歪検知素子300は、下部バイアス層110と、下部磁性層10と、中間層30と、上部磁性層20と、上部バイアス層120と、を含む。
上部バイアス層120は、積層方向において下部バイアス層110と離隔して設けられる。下部バイアス層110と上部バイアス層120との間に、下部磁性層10が設けられる。下部磁性層10と上部バイアス層120との間に、中間層30が設けられる。中間層30と上部バイアス層120との間に、上部磁性層20が設けられる。
下部磁性層10は、例えば、基板210の撓みに応じて磁化が変化する第1磁化自由層である。上部磁性層20は、例えば、基板210の撓みに応じて磁化が変化する第2磁化自由層である。後述するように、基板210に力が加わって基板210が曲がった際に、下部磁性層10(第1磁化自由層)の磁化と上部磁性層20(第2磁化自由層)の磁化との相対角度に変化を生じさせることができる。
次に、歪検知素子300の作用について例示する。
図22(a)〜図22(c)は、第2の実施形態に係る歪検知素子の動作を例示する模式図である。
図22(a)〜図22(c)では、下部磁性層10として第1磁化自由層を用い、上部磁性層20として第2磁化自由層を用いる場合を例にとっている。図22(a)〜図22(c)では、見易さのために、歪検知素子300の各層の中で、下部磁性層10(第1磁化自由層)と中間層30と上部磁性層20(第2磁化自由層)を示している。
歪検知素子300が歪センサとして機能する動作は、「逆磁歪効果」と「磁気抵抗効果」との応用に基づく。「逆磁歪効果」は、磁化自由層に用いられる強磁性層において得られる。「磁気抵抗効果」は、第1磁化自由層と中間層と第2磁化自由層との積層膜において発現する。
「逆磁歪効果」は、図2(a)〜図2(c)に関して前述した通りである。すなわち、歪によって、第1磁化自由層の磁化の向きおよび第2磁化自由層の磁化の向きが変化し、第1磁化自由層の磁化の向きと、第2磁化自由層の磁化の向きと、の相対角度が変化する。すなわち、逆磁歪効果によりMR効果が発現する。
第1磁化自由層および第2磁化自由層に用いられる強磁性材料が正の磁歪定数を有する場合は、磁化の方向と引張歪の方向との角度が小さくなり、磁化の方向と圧縮歪の方向との角度が大きくなるように、磁化の方向が変化する。第1磁化自由層および第2磁化自由層に用いられる強磁性材料が負の磁歪定数を有する場合は、磁化の方向と引張歪の方向との角度が大きくなり、磁化の方向と圧縮歪の方向との角度が小さくなるように、磁化の方向が変化する。
第1磁化自由層と中間層と第2磁化自由層との積層膜の材料の組み合わせが正の磁気抵抗効果を有する場合は、第1磁化自由層と第2磁化自由層との相対角度が小さい場合に電気抵抗が減少する。第1磁化自由層と中間層と第2磁化自由層との積層膜の材料の組み合わせが負の磁気抵抗効果を有する場合は、第1磁化自由層と第2磁化自由層との相対角度が小さい場合に電気抵抗が増大する。
以下、第1磁化自由層と、第2磁化自由層と、に用いられる強磁性材料が、それぞれ正の磁歪定数を有し、第1磁化自由層と中間層と第2磁化自由層との積層膜が正の磁気抵抗効果を有する場合の例に関して、磁化の変化の例について説明する。
図22(b)に表したように、歪が無い初期状態の磁化自由層内に含まれる下部磁性層10(第1磁化自由層)と上部磁性層20(第2磁化自由層)との相対角度は、下部バイアス層110および上部バイアス層120からのバイアス方向、またはハードバイアスからのバイアス磁界によって任意に設定することができる。
図22(a)〜図22(c)に示す例では、下部バイアス層110から下部磁性層10(第1磁化自由層)に加えられるバイアス方向と、上部バイアス層120から上部磁性層20(第2磁化自由層)に加えられるバイアス方向と、を反平行とし、下部バイアス層110および上部バイアス層120からのバイアス方向と面内で垂直方向にハードバイアスを加えて、初期状態の下部磁性層10(第1磁化自由層)と、初期状態の上部磁性層20(第2磁化自由層)と、の相対角度が0°よりも大きく180°よりも小さくした状態を例示している。初期磁化方向の設定方法の詳細については後述する。
図22(a)において、矢印の方向の引張応力tsに応じた引張歪が生じた場合、下部磁性層10(第1磁化自由層)の磁化10mと上部磁性層20(第2磁化自由層)の磁化20mとは、引張応力tsが加わった方向との角度が小さくなるように、歪なしの初期磁化方向から変化する。図22(a)に示した例では、引張応力tsが加わった場合は、歪なしの初期磁化方向に比べて、下部磁性層10(第1磁化自由層)の磁化10mと上部磁性層20(第2磁化自由層)の磁化20mとの相対角度が小さくなり、歪検知素子300の電気抵抗は減少する。
一方で、図22(c)において、矢印の方向に圧縮応力csに応じた圧縮歪が生じた場合、下部磁性層10(第1磁化自由層)の磁化10mと上部磁性層20(第2磁化自由層)の磁化20mとは、圧縮応力csが加わった方向との角度が大きくなるように、歪なしの初期磁化方向から変化する。図22(c)に示した例では、圧縮応力csが加わった場合は、歪なしの初期磁化方向に比べて、下部磁性層10(第1磁化自由層)の磁化10mと上部磁性層20(第2磁化自由層)の磁化20mとの相対角度が大きくなり、歪検知素子300の電気抵抗は増大する。
図21(b)に示すように、下部磁性層10(第1磁化自由層)に接して設けた下部バイアス層110と、上部磁性層20(第2磁化自由層)に接して設けた上部バイアス層120、を含む歪検知素子300では、下部バイアス層110から下部磁性層10(第1磁化自由層)への磁気結合および上部バイアス層120から上部磁性層20(第2磁化自由層)への磁気結合によって、下部磁性層10(第1磁化自由層)の異方性磁界および上部磁性層20(第2磁化自由層)の異方性磁界を適切な値まで高めることができる。下部磁性層10(第1磁化自由層)の異方性磁界および上部磁性層20(第2磁化自由層)の異方性磁界を高めることで、下部磁性層10(第1磁化自由層)の磁化10mおよび上部磁性層20(第2磁化自由層)の磁化20mの変化の可逆性を高めることができ、高いゲージファクターを得ることができる。下部磁性層10(第1磁化自由層)および上部磁性層20(第2磁化自由層)の歪に対する磁化10m、20mの変化の可逆性の向上の原理は、第1の実施形態において説明したものと同じである。
歪検知素子300の寸法が小さくなった場合に、下部磁性層10(第1磁化自由層)および上部磁性層20(第2磁化自由層)の素子端部における磁極の影響によって、下部磁性層10(第1磁化自由層)および上部磁性層20(第2磁化自由層)の内部に反磁界が発生し、下部磁性層10(第1磁化自由層)の磁化10mおよび上部磁性層20(第2磁化自由層)の磁化20mが乱れることがある。下部磁性層10(第1磁化自由層)の磁化10mおよび上部磁性層20(第2磁化自由層)の磁化20mが乱れると、歪検知素子300の歪による、下部磁性層10(第1磁化自由層)の磁化10mと上部磁性層20(第2磁化自由層)の磁化20mとの相対角度の変化を低減することがある。下部磁性層10(第1磁化自由層)および上部磁性層20(第2磁化自由層)の反磁界を低減することは、小さい寸法の歪検知素子300において高感度な歪センサを提供する上で重要な事項の1つである。下部磁性層10(第1磁化自由層)および上部磁性層20(第2磁化自由層)の異方性磁界を高めることは、このような反磁界の影響を低減することにも有効である。これにより、比較的小さい寸法の歪検知素子300においても高い歪検知感度を実現することができる。ひいては、高分解能と高感度を両立した歪検知素子300を提供することができる。
図21(b)に示すように、下部磁性層10と上部磁性層20とに対して、それぞれ独立の下部バイアス層110と上部バイアス層120とを設けることにより、下部磁性層10と上部磁性層20との初期磁化方向を任意に設定できるメリットがある。
第2の実施形態に係る歪検知素子300の例について説明する。
図23は、第2の実施形態に用いられる歪検知素子を例示する模式的斜視図である。
図23に表したように、実施形態に用いられる歪検知素子300aは、第1電極E1と、下地層50と、下部バイアス層110と、下部磁性層10と、中間層30と、上部磁性層20と、上部バイアス層120と、キャップ層70と、第2電極E2と、を含む。第1電極E1と第2電極E2との間に、下地層50が設けられる。下地層50と第2電極E2との間に、下部バイアス層110が設けられる。下部バイアス層110と第2電極E2との間に、下部磁性層10が設けられる。下部磁性層10と第2電極E2との間に、中間層30が設けられる。中間層30と第2電極E2との間に、上部磁性層20が設けられる。上部磁性層20と第2電極E2との間に、上部バイアス層120が設けられる。上部バイアス層120と第2電極E2との間に、キャップ層70が設けられる。
下地層50には、例えば、Ta/Ruが用いられる。このTa層の厚さ(Z軸方向の長さ)は、例えば、3nmである。このRu層の厚さは、例えば、2nmである。
下部バイアス層110には、例えば、IrMn(7nm)/Fe50Co50(3nm)/Cu(2.5nm)が用いられる。
下部磁性層10(第1磁化自由層)には、例えば、Co40Fe40B20(4nm)が用いられる。
中間層30には、例えば、MgO(2nm)が用いられる。
上部磁性層20(第2磁化自由層)には、例えば、Co40Fe40B20(4nm)が用いられる。上部バイアス層120には、例えば、Cu(2.5nm)/Fe50Co50(2nm)/Ru(0.9nm)/Fe50Co50(2nm)/IrMn(7nm)が用いられる。
キャップ層70には、例えば、Ta(2nm)/Ru(5nm)が用いられる。
第2の実施形態における各層の材料は、第1の実施形態で同様の名称の層と同じ材料を用いることができる。すなわち、第2の実施形態の下部磁性層(第1磁化自由層)および上部磁性層(第2磁化自由層)には、第1の実施形態の磁化自由層と同じ材料を用いることができる。第2の実施形態の下部バイアス層および上部バイアス層には、第1の実施形態のバイアス層と同じ材料を用いることができる。
(第2の実施形態のバイアス層の詳細)
図24(a)および図24(b)は、第2の実施形態のバイアス層を例示する模式的斜視図である。
図24(a)および図24(b)は、下部磁性層10(第1磁化自由層)/中間層30/上部磁性層20(第2磁化自由層)の積層体に対して設けられる下部バイアス層110および上部バイアス層120であって、中間層30と下部バイアス層110との間に下部磁性層10が設けられる下部バイアス層110、および、中間層30と上部バイアス層120との間に上部磁性層20が設けられる上部バイアス層120の構造のバリエーションの例を表す。
図24(a)に表した下部バイアス層110aは、下部バイアスピニング層42aと、下部第1バイアス磁性層111a(第1バイアス磁性層)と、下部分離層43aと、を含む。下部バイアスピニング層42aと下部分離層43aとの間に、下部第1バイアス磁性層111aが設けられる。
図24(a)に表した上部バイアス層120aは、上部分離層43bと、上部第1バイアス磁性層121a(第2バイアス磁性層)と、上部第1磁気結合層124a(第1磁気結合層)と、上部第2バイアス磁性層121b(第3バイアス磁性層)と、上部バイアスピニング層42bと、を含む。上部分離層43bと上部バイアスピニング層42bとの間に、上部第1バイアス磁性層121aが設けられる。上部第1バイアス磁性層121aと上部バイアスピニング層42bとの間に、上部第1磁気結合層124aが設けられる。上部第1磁気結合層124aと上部バイアスピニング層42bとの間に、上部第2バイアス磁性層121bが設けられる。
下部第1バイアス磁性層111aは、例えば、磁性材料によって形成され、その磁化111amの方向は、下部バイアスピニング層42aによって一方向に固定される。一方向に磁化が固定された下部バイアス層110aから、下部磁性層10(第1磁化自由層)に交換結合などの磁気的結合によって、下部磁性層10(第1磁化自由層)にバイアス10pが加えられる。
上部第2バイアス磁性層121bは、例えば、磁性材料によって形成され、その磁化121bmの方向は、上部バイアスピニング層42bによって一方向に固定される。一方向に磁化が固定された上部第2バイアス磁性層121bと上部第1バイアス磁性層121aは、上部磁気結合層124aを介して反平行に磁気結合し、上部第1バイアス磁性層121aから上部磁性層20(第2磁化自由層)に交換結合などの磁気的結合によって、上部磁性層10(第2磁化自由層)にバイアス20pが加えられる。
下部分離層43aは、例えば、非磁性材料などから形成され、下部第1バイアス磁性層111aと下部磁性層10(第1磁化自由層)を物理的に分離することで、下部第1バイアス磁性層111aと下部磁性層10(第1磁化自由層)との間の磁気的結合の強度を調整するために配置される。ここで、下部第1バイアス磁性層111aの材料によっては、下部分離層43aは必ずしも設けなくてもよい。
下部分離層43aには、例えば、Cu(2.5nm)を用いることができる。上部分離層43bには、例えば、Cu(2.5nm)を用いることができる。下部第1バイアス磁性層111aには、例えば、3nmのFe50Co50を用いることができる。上部第1バイアス磁性層121aには、例えば、2nmのFe50Co50を用いることができる。上部第1磁気結合層124aには、例えば、0.9nmのRuを用いることができる。上部第2バイアス磁性層121bには、例えば、2nmのFe50Co50を用いることができる。下部バイアスピニング層42aには、例えば、7nmのIrMnを用いることができる。上部バイアスピニング層42bには、例えば、7nmのIrMnを用いることができる。
下部第1バイアス磁性層111a、上部第1バイアス磁性層121aおよび上部第2バイアス磁性層121bのそれぞれには、例えば、Co、Fe及びNiよりなる群から選択された少なくともいずれかが用いられる。下部第1バイアス磁性層111a、上部第1バイアス磁性層121aおよび上部第2バイアス磁性層121bのそれぞれとして、これらの材料から選択された少なくとも1つの材料を含む合金を用いてもよい。例えば、CoxFe100−x合金、NixFe100−x合金、または、これらに非磁性元素を添加した材料が用いられる。CoxFe100−x合金において、xは0at.%以上100at.%以下である。NixFe100−x合金において、xは0at.%以上100at.%以下である。
下部第1バイアス磁性層111a、上部第1バイアス磁性層121aおよび上部第2バイアス磁性層121bのそれぞれとして、(CoxFe100−x)100−yBy合金を用いることもできる。(CoxFe100−x)100−yBy合金において、xは0at.%以上100at.%以下であり、yは0at.%以上30at.%以下である。下部第1バイアス磁性層111a、上部第1バイアス磁性層121aおよび上部第2バイアス磁性層121bのそれぞれとして、(CoxFe100−x)100−yByのアモルファス合金を用いることで、検知素子のサイズが小さい場合にも歪検知素子300間のばらつきを抑えることができる。
下部第1バイアス磁性層111a、上部第1バイアス磁性層121aおよび上部第2バイアス磁性層121bのそれぞれの厚さは、例えば、1.5nm以上5nm以下が好ましい。これにより、例えば、下部バイアスピニング層42aおよび上部バイアスピニング層42bによる一方向異方性磁界の強度を十分に得ることができる。下部第1バイアス磁性層111a、上部第1バイアス磁性層121aおよび上部第2バイアス磁性層121bのそれぞれとして、例えば、3nmのFe50Co50を用いることができる。
下部分離層43aおよび上部分離層43bのそれぞれには、例えば、非磁性材料を用いることができる。下部分離層43aおよび上部分離層43bのそれぞれとして、Cu、Ru、Rh、Ir、V、Cr、Nb、Mo、Ta、W、Rr、Au、Ag、Pt、Pd、Ti、Zr、Hf及び、Hfの群から選択された少なくとも一つの元素を含む層を用いることができる。例えば、下部分離層43aおよび上部分離層43bのそれぞれとして、5nmのCuを用いることができる。
下部バイアスピニング層42aは、下部バイアスピニング層42aに接して形成される下部第1バイアス磁性層111aに、一方向異方性(unidirectional anisotropy)を付与して磁化111amを固定する。下部バイアスピニング層42aには、例えば、反強磁性層が用いられる。下部バイアスピニング層42aには、例えば、IrMn、PtMn、PdPtMn及びRuRhMnよりなる群から選択された少なくともいずれかが用いられる。十分な強さの一方向異方性を付与するために、下部バイアスピニング層42aの厚さが適切に設定する。
上部バイアスピニング層42bは、上部バイアスピニング層42bに接して形成される上部第2バイアス磁性層121bに、一方向異方性(unidirectional anisotropy)を付与して磁化121bmを固定する。上部バイアスピニング層42bには、例えば、反強磁性層が用いられる。上部バイアスピニング層42bには、例えば、IrMn、PtMn、PdPtMn及びRuRhMnよりなる群から選択された少なくともいずれかが用いられる。十分な強さの一方向異方性を付与するために、上部バイアスピニング層42bの厚さが適切に設定する。
下部バイアスピニング層42aおよび上部バイアスピニング層42bのそれぞれとして、PtMnまたはPdPtMnが用いられる場合には、下部バイアスピニング層42aおよび上部バイアスピニング層42bのそれぞれの厚さは、8nm以上20nm以下が好ましい。下部バイアスピニング層42aおよび上部バイアスピニング層42bのそれぞれの厚さは、10nm以上15nm以下がより好ましい。下部バイアスピニング層42aおよび上部バイアスピニング層42bのそれぞれとしてIrMnを用いる場合には、下部バイアスピニング層42aおよび上部バイアスピニング層42bのそれぞれとしてPtMnを用いる場合よりも薄いピニング層で、一方向異方性を付与することができる。この場合には、下部バイアスピニング層42aおよび上部バイアスピニング層42bのそれぞれの厚さは、4nm以上18nm以下が好ましい。下部バイアスピニング層42aおよび上部バイアスピニング層42bのそれぞれの厚さは、5nm以上15nm以下がより好ましい。下部バイアスピニング層42aおよび上部バイアスピニング層42bのそれぞれには、例えば、7nmの厚さのIr22Mn78層が用いられる。
下部バイアスピニング層42aおよび上部バイアスピニング層42bのそれぞれとして、ハード磁性層を用いてもよい。ハード磁性層として、例えば、CoPt、(CoxPt100−x)100−yCry、または、FePtなどを用いてもよい。CoPtにおいて、Coの比率は、50at.%以上85at.%以下である。(CoxPt100−x)100−yCryにおいて、xは50at.%以上85at.%以下であり、yは0at.%以上40at.%以下である。FePtにおいて、Ptの比率は40at.%以上60at.%以下である。
上部第1磁気結合層124aは、上部第1バイアス磁性層121aと上部第2バイアス磁性層121bとの間に反強磁性結合を生じさせる。上部第1磁気結合層124aは、シンセティックピン構造を形成する。上部第1磁気結合層124aとして、例えば、Ruが用いられる。上部第1磁気結合層124aの厚さは、0.8nm以上1nm以下であることが好ましい。上部第1バイアス磁性層121aと上部第2バイアス磁性層121bとの間に十分な反強磁性結合を生じさせる材料であれば、上部第1磁気結合層124aとしてRu以外の材料を用いてもよい。上部第1磁気結合層124aの厚さは、RKKY(Ruderman-Kittel-Kasuya-Yosida)結合のセカンドピーク(2ndピーク)に対応する0.8nm以上1nm以下の厚さに設定することができる。さらに、上部第1磁気結合層124aの厚さは、RKKY結合のファーストピーク(1stピーク)に対応する0.3nm以上0.6nm以下の厚さに設定してもよい。上部第1磁気結合層124aとして、例えば、0.9nmの厚さのRuが用いられる。これにより、高信頼性の結合がより安定して得られる。
上部第1バイアス磁性層121aおよび上部第2バイアス磁性層121bのそれぞれの厚さは、例えば、それぞれ1.5nm以上5nm以下が好ましい。これにより、例えば、上部バイアスピニング層42bによる一方向異方性磁界の強度をより強くすることができる。上部第1バイアス磁性層121aの磁気膜厚(飽和磁化Bsと厚さtとの積(Bs・t))は、上部第2バイアス磁性層121bの磁気膜厚と実質的に等しいことが好ましい。
上部第1バイアス磁性層121aと上部第2バイアス磁性層121bとに同じ磁性材料を用いる場合は、それらの膜厚をそろえることが好ましい。上部第1バイアス磁性層121aと上部第2バイアス磁性層121bに異なる磁性材料を用いる場合、例えば、上部第1バイアス磁性層121aにCo40Fe40B20を用い、上部第2バイアス磁性層121bにCo75Fe25を用いる場合、薄膜でのCo40Fe40B20の飽和磁化は、約1.9T(テスラ)であり、Co75Fe25の飽和磁化は、約2.1Tである。例えば、上部第1バイアス磁性層121aとして、3nmの厚さのCo40Fe40B20層を用いる場合には、上部第1バイアス磁性層121aの磁気膜厚は、1.9T×3nmであり、5.7Tnmとなる。上記と等しい磁気膜厚が得られる上部第2バイアス磁性層121bの厚さは、5.7Tnm/2.1Tであり、2.7nmとなる。この場合、上部第2バイアス磁性層121bには、約2.7nmの厚さのCo75Fe25を用いることが好ましい。
図24(b)は、第2の実施形態の別のバイアス層を示す模式的斜視図である。
図24(b)に表した下部バイアス層110bは、下部バイアスピニング層42aと、下部第3バイアス磁性層111cと、下部第2磁気結合層114b(第2磁気結合層)と、下部第2バイアス磁性層111b(第4バイアス磁性層)と、下部第1磁気結合層114aと、下部第1バイアス磁性層111aと、下部分離層43aと、を含む。下部バイアスピニング層42aと下部分離層43aとの間に、下部第3バイアス磁性層111cが設けられる。下部第3バイアス磁性層111cと下部分離層43aとの間に、下部第2磁気結合層114bが設けられる。下部第2磁気結合層114bと下部分離層43aとの間に、下部第2バイアス磁性層111bが設けられる。下部第2バイアス磁性層111bと下部分離層43aとの間に、下部第1磁気結合層1114aが設けられる。下部第1磁気結合層114aと下部分離層43aとの間に、下部第1バイアス磁性層111aが設けられる。
図24(b)に表した上部バイアス層120bは、上部分離層43bと、上部第1バイアス磁性層121aと、上部第1磁気結合層124aと、上部第2バイアス磁性層121bと、上部バイアスピニング層42bと、を含む。上部分離層43bと上部バイアスピニング層42bとの間に、上部第1バイアス磁性層121aが設けられる。上部第1バイアス磁性層121aと上部バイアスピニング層42bとの間に、上部第1磁気結合層124aが設けられる。上部第1磁気結合層124aと上部バイアスピニング層42bとの間に、上部第2バイアス磁性層121bが設けられる。
図24(a)では、下部バイアス層110aにおけるバイアス磁性層は単層であったのに対して、図24(b)では、下部バイアス層110bにおいて、下部第1磁気結合層114aおよび下部第2磁気結合層114bを介して、3層のバイアス磁性層が設けられている点が異なる。複数層のバイアス磁性層は、磁気結合層を介して、隣り合うバイアス磁性層の磁化方向が反対となるように設定することができる。このように、複数のバイアス磁性層を用いて、それらの磁化方向を反平行とすることで、バイアス磁性層から外部への漏洩磁界を抑え、磁化自由層への交換結合によるバイアス印加以外の磁気的干渉を抑えることができる。
図24(b)では、下部バイアス層110bと上部バイアス層120bとの両方で、複数層のバイアス磁性層を用いているので、バイアス磁性層から外部への漏洩磁界を、両方のバイアス層(下部バイアス層110bおよび上部バイアス層120b)で抑えることができる。
図24(b)の下部バイアス層110bに示すように、3層のバイアス磁性層を用いる場合、下部第1バイアス磁性層111aの磁化111amと下部第3バイアス磁性層111cの磁化111cmは同じ向きとなり、下部第2バイアス磁性層111bの磁化111bmのみ逆向きとなる。このような奇数で複数のバイアス磁性層を用いる場合、漏洩磁界を低減する観点では、同一方向を向いているバイアス磁性層の磁気膜厚の和が逆方向を向いているバイアス磁性層の磁気膜厚の和と等しくすることが好ましい。例えば、図24(b)に示すような、3層のバイアス磁性層を用いる場合、下部第1バイアス磁性層111aの磁気膜厚と下部第3バイアス磁性層111cの磁気膜厚との和が、下部第2バイアス磁性層111bの磁気膜厚と等しくなるように設定することが好ましい。
図24(b)に含まれる各層の材料は、図24(a)と同様のものを用いることができる。
下部バイアスピニング層42aには、例えば7nmのIrMnを用いることができる。下部第3バイアス磁性層111cには、例えば、2nmのFe50Co50を用いることができる。下部第2磁気結合層114bには、例えば、0.9nmのRuを用いることができる。下部第1バイアス磁性層111aには、例えば、4nmのFe50Co50を用いることができる。下部第1磁気結合層114aには、例えば、0.9nmのRuを用いることができる。下部第1バイアス磁性層111aには、例えば、2nmのFe50Co50を用いることができる。下部分離層43aには、例えば、2.5nmのCuを用いることができる。
上部分離層43bには、例えば、2.5nmのCuを用いることができる。上部第1バイアス磁性層121aには、2nmのFe50Co50を用いることができる。上部第1磁気結合層124aには、例えば、0.9nmのRuを用いることができる。上部第2バイアス磁性層121bには、2nmのFe50Co50を用いることができる。上部バイアスピニング層42bには、例えば7nmのIrMnを用いることができる。
図24(a)には、下部バイアス層110aに単層のバイアス磁性層を用い、上部バイアス層120aに2層のバイアス磁性層を用いた場合を例示した。図24(b)には、下部バイアス層110bに3層のバイアス磁性層を用い、上部バイアス層120bに2層のバイアス磁性層を用いた場合を例示した。下部バイアス層110a、110bと上部バイアス層120a、120bとに含まれるバイアス磁性層の層数については、適宜調整することができる。
なお、バイアス層は、4層以上のバイアス磁性層を含んでいてもよい。
下部バイアス層110と上部バイアス層120とのそれぞれに含まれるバイアス磁性層の層数を奇数―偶数、偶数―奇数とした場合は、下部磁性層10(第1磁化自由層)と上部磁性層20(第2磁化自由層)とのそれぞれに加わるバイアス方向は反平行となる。下部バイアス層110と上部バイアス層120とのそれぞれに含まれるバイアス磁性層の層数を奇数―奇数、偶数―偶数とした場合は、下部磁性層10(第1磁化自由層)と上部磁性層20(第2磁化自由層)とのそれぞれに加わるバイアス方向は平行となる。いずれの場合でも、歪センサとして機能させることができる。下部磁性層10(第1磁化自由層)と上部磁性層20(第2磁化自由層)とのそれぞれに加わるバイアス方向はお互いに反平行としたほうが、反平行の磁化アライメントがひずみによって鋏のように閉じる動作が得られ、高いゲージファクターを実現できるのでより好ましい。
ここで、中間層30に絶縁層を用いたトンネル型の歪検知素子を用いる場合、電気抵抗変化を大きく取る観点で、下部磁性層10(第1磁化自由層)と上部磁性層20(第2磁化自由層)とに加わるバイアス方向はお互いに反平行としたほうがより好ましい。これは、トンネル型の歪検知素子では、ピン層とフリー層との間の相対角度が0°と90°との間で変化する場合よりも、90°と180°との間で変化する場合のほうが電気抵抗の変化が大きくとれるため、90°と180°との間で歪センサとして駆動したほうが高いゲージファクターを得やすいためである。ピン層とフリー層との間の相対角度が180°に近いほど、単位あたりの相対角度変化に対する電気抵抗変化が大きくなる。よって、下部磁性層10(第1磁化自由層)と上部磁性層20(第2磁化自由層)とのそれぞれに含まれるバイアス磁性層の層数を奇数―偶数、偶数―奇数することが好ましい。
実施形態に係る第5の実施例として、下記の構造を有する歪検知素子300を作製する。
(第5の実施例)
下地層50:Ta(1nm)/Ru(2nm)
下部バイアス層110:Ir22Mn78(7nm)/Fe50Co50(3nm)/Cu(2.5nm)
下部磁性層10(第1磁化自由層):Co40Fe40B20(4nm)
中間層30:MgO(2nm)
上部磁性層20(第2磁化自由層):Co40Fe40B20(4nm)
上部バイアス層120:Cu(2.5nm)/Fe50Co50(2nm)/Ru(0.9nm)/Fe50Co50(2nm)/IrMn(7nm)
キャップ層70:Ta(2nm)/Ru(5nm)
第5の実施例の歪検知素子300の構造は、図23に示す歪検知素子300aと同様である。下部バイアス層110の構造は、図24(a)に示した下部バイアス層110aと同様である。下部バイアス層110は、下部バイアスピニング層42a/下部第1バイアス磁性層111a/下部分離層43aである。上部バイアス層120の構造は、図24(a)に示した上部バイアス層120aと同様である。上部バイアス層120は、上部分離層43b/上部第1バイアス磁性層121a/上部第1磁気結合層124a/上部第2バイアス磁性層121b/上部バイアスピニング層42bである。
第2の比較例として、下記の構造を有する歪検知素子を作製する。
(比較例2)
下地層50:Ta(1nm)/Cu(15nm)
下部磁性層10(第1磁化自由層):Co40Fe40B20(4nm)
中間層30:MgO(2nm)
上部磁性層20(第2磁化自由層):Co40Fe40B20(4nm)
キャップ層70:Cu(15nm)/Ta(2nm)/Ru(5nm)
第2の比較例では、バイアス層を設けていない。
第5の実施例の積層体については、成形後、320℃1Hで6500Oeの磁界印加中でのアニールを行い、下部バイアス層110および上部バイアス層120の磁化の固着を行う。
図25(a)〜図25(d)は、第5の実施例の積層体の素子加工前の磁気特性の結果の例を示すグラフ図である。
図25(a)は、第5の実施例において、磁界中熱処理を行う方向に磁場をかけた場合を正の磁場として評価したBHループの例を表す。図25(b)は、第5の実施例において、磁界中熱処理方向と面内で垂直方向に磁場を印加して評価したBHループの例を表す。図25(c)は、第2の比較例において、磁界中熱処理を行う方向に磁場をかけた場合を正の磁場として評価したBHループの例を表す。図25(d)は、第2の比較例において、磁界中熱処理方向と面内で垂直方向に磁場を印加して評価したBHループの例を表す。
図25(a)に表したBHループでは、角型性のよい磁化容易軸のループ形状が、負側の磁場において1つ、正側の磁場において1つ得られており、ゼロ磁界で反平行となっていることがわかる。図25(b)に表したBHループでは、典型的な磁化困難軸のループ形状が得られている。この結果より、第5の実施例の各々の磁化自由層には磁界中熱処理方向を容易軸とした面内の誘導磁気異方性が得られていることがわかる。
図25(c)に表したBHループでは、角型性のよい磁化容易軸のループ形状が得られている。図25(b)に表したBHループでは、典型的な磁化困難軸のループ形状が得られている。この結果より、磁化自由層には磁界中熱処理方向を容易軸とした面内の誘導磁気異方性が得られていることがわかる。図25(c)から分かるように、バイアス層を設けていない第2の比較例において、下部磁性層10および上部磁性層20は同時に反転しており、ゼロ磁界で平行であることがわかる。面内の誘導磁気異方性の強さを示す異方性磁界Hkは、下部磁性層10および上部磁性層20の平均値として16.9Oeと見積もられる。
図25(a)のBHループから、下部磁性層10(第1磁化自由層)は負の磁場側にバイアスされている。Hshiftは−8.8Oeと見積もられる。保磁力Hcは、3.4Oeと見積もられる。図25(a)のBHループから、上部磁性層20(第2磁化自由層)は正の磁場側にバイアスされている。Hshiftは10.5Oeと見積もられる。保磁力Hcは、3.1Oeと見積もられる。
保磁力は、磁化回転の容易さを示す特性指標である。3Oe程度の保磁力は、逆磁歪効果による磁化回転も十分に起こりやすい値といえる。なお、第5の実施例の磁歪定数を評価した結果、2層の磁化自由層の磁歪定数の平均値は20ppmと算出される。この値は高い歪に対する磁化回転を引き起こすのに十分高い値といえる。この誘導磁気異方性の強さと関係する図25(b)のBHループから算出される異方性磁界Hkは18.7Oeと見積もられ、第2の比較例に対してバイアス層を設けることで異方性磁界が向上していることが確認される。
図25(a)〜図25(d)の結果より、第5の実施例の磁化自由層の構成は、第2の比較例の磁化自由層の構成と同じである。第5の実施例の保磁力は、第2の比較例の保磁力と同等である。第5の実施例の磁歪定数は、第2の比較例の磁歪定数と同等である。 第5の実施例では、バイアス層を設けることによって第2の比較例2に比べて異方性磁界が向上していることがわかる。第5の実施例では、下部バイアス層110から下部磁性層10にバイアスを加えている。上部バイアス層120から上部磁性層20にバイアスを加えている。下部バイアス層110から下部磁性層10に加えるバイアスの方向は、上部バイアス層120から上部磁性層20に加えるバイアスの方向と反平行である。これにより、ゼロ磁界で、下部磁性層10(第1磁化自由層)の磁化10mが上部磁性層20(第2磁化自由層)の磁化20mと反平行となっていることがわかる。
第5の実施例の積層体をフォトリソグラフィおよびミリングによって垂直通電素子に加工する。垂直通電素子の素子サイズについては、20μm×20μmとする。
図26(a)〜図26(d)は、第5の実施例の歪検知素子の歪センサ特性の結果の例を示すグラフ図である。
図26(a)〜図26(d)に示す歪センサ特性の評価については、基板ベンディング法により行う。試作する歪検知素子300のウェーハを短冊状にカットしたウェーハを、ナイフエッジによる4点ベンディング法により歪印加を行う。短冊ウェーハを曲げるナイフエッジにロードセルを組み込んでおり、そのロードセルにて計測された荷重により、ウェーハ表面の歪検知素子300に加わる歪を計算する。歪の計算には、図10(a)〜図10(e)に関して前述した式(1)で表される一般的な2辺支持梁の理論式を用いる。 歪印加の方向については、図10(a)〜図10(e)に関して前述した通りである。
図26(a)に表した例では、素子サイズが20μm×20μmの第5の実施例の歪検知素子300について、歪検知素子300に加わる歪を−0.8(%0)以上0.8(%0)以下の間で、0.2(%0)刻みで固定値として設定する。図26(a)は、それぞれの歪で電気抵抗の磁場依存性を測定した結果の例をそれぞれ示している。測定時の外部磁場方向は、各バイアス層の磁化の方向と面内で垂直な方向に加えている。図26(a)より、印加歪の値によりR−Hループ形状が変化していることがわかる。これは、逆磁歪効果によって、磁化自由層の面内磁気異方性が変化していることを示している。
図26(b)〜図26(d)は、第5の実施例の歪検知素子300について、外部磁場を固定し、歪を−0.8(%0)以上0.8(%0)以下の間で連続的に掃引する場合の電気抵抗の変化を示す。歪については、−0.8(%0)から0.8(%0)へ掃引させ、続いて、0.8(%0)から−0.8(%0)へ掃引させる。これらの結果が、歪センサ特性を示している。図26(b)では、5Oeの外部磁場を加えて評価を行う。図26(c)では、2Oeの外部磁場を加えて評価を行う。図26(d)では、0Oeの外部磁場を加えて評価を行う。
実施形態の歪検知素子300では、適切なバイアス磁界を加えることで高いゲージファクターを得ることができる。外部磁界については、ハードバイアスを歪検知素子の側壁に設けることによっても加えることができる。第5の実施例の歪検知素子300では、簡易的に外部磁場をコイルによって与えて評価する。図26(b)〜図26(d)より、第5の実施例のゲージファクターを、歪に対する電気抵抗の変化から見積もる。
ゲージファクターは、図10(a)〜図10(e)に関して前述した式(2)で表される。図26(b)より、第5の実施例において、外部磁界が5Oeであるときのゲージファクターは、1713である。図26(c)より、第5の実施例において、外部磁界が2Oeであるときのゲージファクターは、2587である。図26(d)より、第5の実施例において、外部磁界が0Oeであるときのゲージファクターは、3570である。この結果より、第5の実施例では、バイアス磁界が0Oeの場合に、最大ゲージファクター(3570)が得られる。
図26(a)〜図26(d)の結果より、バイアス層を設けた第5の実施例において、高いゲージファクターが外部磁界ゼロで確認される。これは、バイアス層を設けることにより、ゼロ磁界で、下部磁性層10(第1磁化自由層)および上部磁性層20(第2磁化自由層)に適切な反平行のバイアスが加えられ、歪センサ特性の可逆性を向上できるためと考えられる。バイアス層を設けることによる可逆性の向上は、図13(a)〜図13(f)にて説明したものと同様の原理に基づくと考えられる。異方性磁界の向上によって、余分なバイアス磁界が無くとも可逆な歪センサ特性が得られるためであると考えられる。
実施形態に係る第6の実施例として、下記の構造を有する歪検知素子300を作製する。
(第6の実施例)
下地層50:Ta(1nm)/Ru(2nm)
下部バイアス層110:Ir22Mn78(7nm)/Fe50Co50(2nm)/Ru(0.9nm)/Fe50Co50(4nm)/Ru(0.9nm)/Fe50Co50(2nm)/Cu(2.5nm)
下部磁性層10(第1磁化自由層):Co40Fe40B20(4nm)
中間層30:MgO(2nm)
上部磁性層20(第2磁化自由層):Co40Fe40B20(4nm)
上部バイアス層120:Cu(2.5nm)/Fe50Co50(2nm)/Ru(0.9nm)/Fe50Co50(2nm)/IrMn(7nm)
キャップ層70:Ta(2nm)/Ru(5nm)
第6の実施例の歪検知素子300の構造は、図23に示す歪検知素子300aと同様である。下部バイアス層110の構造は、図24(b)に示した下部バイアス層110bと同様である。下部バイアス層110は、下部バイアスピニング層42a/下部第3バイアス磁性層111c/下部第2磁気結合層114b/下部第2バイアス磁性層111b/下部第1磁気結合層114a/下部第1バイアス磁性層111a/下部分離層43aである。上部バイアス層120の構造は、図24(b)に示した上部バイアス層120bと同様である。上部バイアス層120は、上部分離層43b/上部第1バイアス磁性層121a/上部第1磁気結合層124a/上部第2バイアス磁性層121b/上部バイアスピニング層42bである。第5の実施例との違いは、第5の実施例の下部バイアス層110が単層のバイアス磁性層を含んでいるのに対して、第6の実施例では、下部バイアス層110が3層のバイアス磁性層を含んでいる。
図27(a)〜図27(d)は、第6の実施例の歪検知素子の歪センサ特性の結果の例を示すグラフ図である。
第5の実施例と同様に、歪センサ特性を評価する。
図27(a)に表した例では、素子サイズが20μm×20μmの第6の実施例の歪検知素子300について、歪検知素子300に加わる歪を−0.8(%0)以上0.8(%0)以下の間で、0.2(%0)刻みで固定値として設定する。図27(a)は、それぞれの歪で電気抵抗の磁場依存性を測定した結果の例をそれぞれ示している。測定時の外部磁場方向は、各バイアス層の磁化の方向と面内で垂直な方向に加えている。図27(a)より、印加歪の値によりR−Hループ形状が変化していることがわかる。これは、逆磁歪効果によって、磁化自由層の面内磁気異方性が変化していることを示している。
図27(b)〜図27(d)は、第6の実施例の歪検知素子300について、外部磁場は固定し、歪を−0.8(%0)以上0.8(%0)以下の間で連続的に掃引する場合の電気抵抗の変化を示す。歪については、−0.8(%0)から0.8(%0)へ掃引させ、続いて、0.8(%0)から−0.8(%0)へ掃引させる。これらの結果が、歪センサ特性を示している。図27(d)では、0Oeの外部磁場を加えて評価を行う。
実施形態の歪検知素子300では、適切なバイアス磁界を加えることで高いゲージファクターを得ることができる。外部磁界については、ハードバイアスを歪検知素子の側壁に設けることによっても加えることができる。第6の実施例の歪検知素子300では、簡易的に外部磁場をコイルによって与えて評価している。図27(b)〜図27(d)より、第6の実施例のゲージファクターを、歪に対する電気抵抗の変化から見積もる。
ゲージファクターは、図10(a)〜図10(e)に関して前述した式(2)で表される。図27(b)より、第6の実施例において、外部磁界が5Oeであるときのゲージファクターは、2276である。図27(c)より、第6の実施例において、外部磁界が2Oeであるときのゲージファクターは、4270である。図27(d)より、第6の実施例において、外部磁界が0Oeであるときのゲージファクターは、4980である。この結果より、第6の実施例では、バイアス磁界が0Oeの場合に、最大ゲージファクター(4980)が得られる。
第6の実施例のゲージファクターは、第5の実施例のゲージファクターよりも高い。これは、第6の実施例においては、下部バイアス層110および上部バイアス層120の両方が複数のバイアス磁性層を含むため、バイアス磁性層からの漏洩磁界の影響を低減できるために、高いゲージファクターを確認できると考えられる。このように、バイアス層の層数は複数層とすることが好ましい。
実施形態に係る第7の実施例として、下記の構造を有する歪検知素子300を作製する。
(第7の実施例)
下地層50:Ta(1nm)/Ru(2nm)
下部バイアス層110:Ir22Mn78(7nm)/Fe50Co50(3nm)/Cu(2.5nm)
下部磁性層10(第1磁化自由層):Fe80B20(4nm)/Co40Fe40B20(0.5nm)
中間層30:MgO(2nm)
上部磁性層20(第2磁化自由層):Co40Fe40B20(0.5nm)/Fe80B20(4nm)
上部バイアス層120:Cu(2.5nm)/Fe50Co50(2nm)/Ru(0.9nm)/Fe50Co50(2nm)/IrMn(7nm)
キャップ層70:Ta(2nm)/Ru(5nm)
第7の実施例の歪検知素子300の構造は、図23に示す歪検知素子300aと同様である。下部バイアス層110の構造は、図24(a)に示した下部バイアス層110aと同様である。下部バイアス層110は、下部バイアスピニング層42a/下部第1バイアス磁性層111a/下部分離層43aである。上部バイアス層120の構造は、図24(a)に示した上部バイアス層120aと同様である。上部バイアス層120aは、上部分離層43b/上部第1バイアス磁性層121a/上部第1磁気結合層124a/上部第2バイアス磁性層121b/上部バイアスピニング層42bである。第5の実施例との違いは、第5の実施例では下部磁性層10および上部磁性層20にCo40Fe40B20(4nm)を用いているのに対して、第7の実施例では下部磁性層10および上部磁性層20に上下を反転したCo40Fe40B20(0.5nm)/Fe80B20(4nm)を用いている点である。
Fe40B20(0.5nm)/Fe80B20(4nm)を含む第7の実施例の磁化自由層の磁気特性を評価したところ、保磁力Hcは3Oeであり、磁歪定数は26ppmである。第7の実施例の保磁力は、第5の実施例のCo40Fe40B20(4nm)に比べて小さい。第7の実施例の磁歪定数は、第5の実施例の磁歪定数比べて大きい。このように、FeとBとを含む合金を含むアモルファス磁性層を磁化自由層に用いることで、低いHcと高い磁歪定数を両立できる。
図28(a)〜図28(d)は、第7の実施例の歪検知素子の歪センサ特性の結果の例を示すグラフ図である。
第5の実施例と同様に、歪センサ特性を評価する。
図28(a)に表した例では、素子サイズが20μm×20μmの第7の実施例の歪検知素子300について、歪検知素子300に加わる歪を−0.8(%0)以上0.8(%0)以下の間で、0.2(%0)刻みで固定値として設定する。図28(a)は、それぞれの歪で電気抵抗の磁場依存性を測定した結果の例をそれぞれ示している。測定時の外部磁場方向は、各バイアス層の磁化の方向と面内で垂直な方向に加えている。図28(a)より、印加歪の値によりR−Hループ形状が変化していることがわかる。これは、逆磁歪効果によって、磁化自由層の面内磁気異方性が変化していることを示している。
図28(b)〜図28(d)は、第7の実施例の歪検知素子300について、外部磁場は固定し、歪を−0.8(%0)以上0.8(%0)以下の間で連続的に掃引する場合の電気抵抗の変化を示す。歪については、−0.8(%0)から0.8(%0)へ掃引させ、続いて、0.8(%0)から−0.8(%0)へ掃引させる。これらの結果が、歪センサ特性を示している。図28(b)では、5Oeの外部磁場を加えて評価を行う。図28(c)では、2Oeの外部磁場を加えて評価を行う。図28(d)では、0Oeの外部磁場を加えて評価を行う。
実施形態の歪検知素子300では、適切なバイアス磁界を加えることで高いゲージファクターを得ることができる。外部磁界については、ハードバイアスを歪検知素子の側壁に設けることによっても加えることができる。第7の実施例の歪検知素子300では、簡易的に外部磁場をコイルによって与えて評価する。図28(b)〜図28(d)より、第7の実施例のゲージファクターを、歪に対する電気抵抗の変化から見積もる。
ゲージファクターは、図10(a)〜図10(e)に関して前述した式(2)で表される。図28(b)より、第7の実施例において、外部磁界が5Oeであるときのゲージファクターは、3086である。図28(c)より、第7の実施例において、外部磁界が2Oeであるときのゲージファクターは、4418である。図28(d)より、第7の実施例において、外部磁界が0Oeであるときのゲージファクターは、5290である。この結果より、第7の実施例では、バイアス磁界が0Oeの場合に、最大ゲージファクター(5290)が得られる。
第7の実施例のゲージファクターは、第5の実施例のゲージファクターよりも高い。これは、第7の実施例においては、下部磁性層10および上部磁性層20に低い保磁力Hcおよび高い磁歪定数を両立したFe−B合金を含む磁化自由層を用いるためである。
図29(a)〜図29(d)は、実施形態に係る別の歪検知素子について説明する模式図である。
前述してきた実施形態では、下部バイアス層110から下部磁性層10(第1磁化自由層)に加えられるバイアス方向が、上部バイアス層120から上部磁性層20(第2磁化自由層)に加えられるバイアス方向と平行もしくは反平行の場合について説明してきた。但し、その方向は平行・反平行に限定されるものではない。任意の方向にバイアスを加えることが可能である。
例えば、図29(a)に示すように、下部バイアス層110bのバイアス方向と上部バイアス層120bのバイアス方向との間の相対角度を90°に設定することも可能である。このようなバイアス方向の設定は、図29(b)および図29(c)に示すような2段階の磁界中アニールと、下部バイアスピニング層42aおよび上部バイアスピニング層42bのそれぞれに用いられる材料の選定と、によって可能となる。
下部バイアスピニング層42aおよび上部バイアスピニング層42bに用いられる反強磁性材料については、その組成によって磁化固着が生ずる温度が異なる。例えば、PtMnなど規則合金系の材料については、IrMnなどの不規則でも磁化固着を生ずる材料にくらべて磁化固着が行われる温度が高い。例えば、図29(a)に示す歪検知素子300bの下部バイアスピニング層42aにPtMnを用い、上部バイアスピニング層42bにIrMnを用いて、図29(b)および図29(c)に示すような2段階の磁界中熱処理を行う。すると、図29(b)に表した320°C―10Hアニールにおいて、下部バイアスピニング層42aに接した下部第3バイアス磁性層111cは右下向きに固着される。上部バイアスピニング層42bに接した上部第2バイアス磁性層125bは、いったん右下向きに固着される。
その後、例えば、図29(c)に表した250°C―1Hアニールで磁場MFの方向を変えると、下部バイアスピニング層42aに接した下部第1バイアス磁性層111cの磁化111cmは右下向きのままで、上部バイアスピニング層42bに接した上部第2バイアス磁性層125bの磁化125bmの向きは右上を向く、といった設定が可能となる。磁化111cm、125bmの向きは、図29(d)に示すように室温に戻した後も保持される。
このように、磁界中アニールの方法と、下部バイアスピニング層42aおよび上部バイアスピニング層42bの材料選定によって、下部磁性層10(第1磁化自由層)と上部磁性層20(第2磁化自由層)へのバイアス方向は任意に設定することが可能である。ここで、前述したように、中間層30に絶縁層を用いたトンネル型の歪検知素子を用いる場合、下部磁性層10(第1磁化自由層)へのバイアス方向は、上部磁性層20(第2磁化自由層)へのバイアス方向と反平行側としたほうがより好ましい。具体的には、下部磁性層10(第1磁化自由層)へのバイアス方向と、上部磁性層20(第2磁化自由層)へのバイアス方向と、の間の相対角度を、90°以上270°以下にすることが好ましく、135°以上225°以下とすることがさらに好ましい。
一方、抵抗変化する歪のダイナミックレンジを広くとる目的においては、下部磁性層10(第1磁化自由層)へのバイアス方向と、上部磁性層20(第2磁化自由層)へのバイアス方向と、の間の相対角度を、45°以上135°以下とすることが望ましい。
図では示さないが、図29(a)〜図29(d)で示したような任意のバイアス方向の設定は、図16(a)〜図16(d)と、図17(a)〜図17(d)と、の間の関係と同様に、バイアスピニング層を用いないバイアス層でも可能である。
また、第2の実施形態においても、第1の実施形態の図18および第1の実施形態の図19と同様に、歪検知素子の周辺の埋め込み絶縁層、ハードバイアスを用いることができる。
図30は、第2の実施形態における各バイアス層のバイアス方向、ハードバイアスのバイアス方向の例を示す模式的平面図である。
図30に示す例では、下部バイアス層110のバイアス方向に対して上部バイアス層120のバイアス方向は反平行に設定されている。上部第1バイアス磁性層125aに対するハードバイアス層83の磁界バイアス方向は90°(もしくは270°)に設定されている。下部第1バイアス磁性層111aに対するハードバイアス層83の磁界バイアス方向は90°(もしくは270°)に設定されている。
下部磁性層10(第1磁化自由層)の初期磁化10mf(バイアス10pの方向)は、下部第1バイアス磁性層111aからのバイアス10pbと、ハードバイアス層83からの磁界バイアス10phと、の競合から、0°から90°の間で、例えば45°に設定されている。上部磁性層20(第2磁化自由層)の初期磁化20mf(バイアス20pの方向)は、上部第1バイアス磁性層125aからのバイアス20pbと、ハードバイアス層83からの磁界バイアス20phと、の競合から、90°から180°の間で、例えば135°に設定されている。下部磁性層10(第1磁化自由層)の初期磁化10mf(バイアス10pの方向)と、上部磁性層20(第2磁化自由層)の初期磁化20mf(バイアス20pの方向)と、の間の相対角度は、例えば90°に設定される。
このように、下部バイアス層110および上部バイアス層120を含む実施形態の歪検知素子にハードバイアス層83を設ける場合、下部磁性層10(第1磁化自由層)の初期磁化10mf(バイアス10pの方向)と、上部磁性層20(第2磁化自由層)の初期磁化20mf(バイアス20pの方向)と、の間の相対角度を、90°以上270°以下に設定することが好ましく、135°以上225°以下に設定することがさらに好ましい。ここで、図30に表した矢印A103および矢印A104のように、実施形態の歪検知素子に加わる歪の方向が両バイアス層のバイアス磁性層の磁化の方向に対して、平行または垂直である場合に、磁化自由層が歪によって回転する磁化のダイナミックレンジである90°の範囲で、単調増加、もしくは単調減少の電気抵抗変化を得ることができる。そのため、好ましい。
(第3の実施形態)
図31は、第3の実施形態に係る圧力センサを例示する模式的斜視図である。
図31に表したように、実施形態に係る圧力センサ200は、支持部201と、基板210と、歪検知素子100と、を含む。実施形態に係る圧力センサ200は、第1の実施形態に係る歪検知素子100の代わりに、第2の実施形態に係る歪検知素子300を含んでいてもよい。
基板210は、支持部201に支持される。基板210は、例えば、可撓性領域を有する。基板210は、例えば、ダイアフラムである。基板210は、支持部201と一体的でも良く、別体でも良い。基板210には、支持部201と同じ材料を用いても良く、支持部201とは異なる材料を用いても良い。支持部201の一部を除去して、支持部201のうちの厚さが薄い部分が基板210となっても良い。
基板210の厚さは、支持部201の厚さよりも薄い。基板210と支持部201とに同じ材料が用いられ、これらが一体的である場合は、厚さが薄い部分が基板210となり、厚い部分が支持部201となる。
支持部201が、支持部201を厚さ方向に貫通する貫通孔201hを有しており、貫通孔201hを覆うように基板210が設けられても良い。このとき、例えば、基板210となる材料の膜が、支持部201の貫通孔201h以外の部分の上にも延在している場合がある。このとき、基板210となる材料の膜のうちで、貫通孔201hと重なる部分が基板210となる。
基板210は、外縁210rを有する。基板210と支持部201とに同じ材料が用いられ、これらが一体的である場合は、厚さが薄い部分の外縁が、基板210の外縁210rとなる。支持部201が、支持部201を厚さ方向に貫通する貫通孔201hを有しており、貫通孔201hを覆うように基板210が設けられている場合は、基板210となる材料の膜のうちで、貫通孔201hと重なる部分の外縁が基板210の外縁210rとなる。
支持部201は、基板210の外縁210rを連続的に支持しても良く、基板210の外縁210rの一部を支持しても良い。
歪検知素子100は、基板210の上に設けられる。例えば、歪検知素子100は、基板210の一部の上に設けられる。この例では、基板210上に、複数の歪検知素子100が設けられる。膜部上に設けられる歪検知素子の数は、1でも良い。
図31に表した圧力センサ200においては、第1配線221及び第2配線222が設けられている。第1配線221は、歪検知素子100に接続される。第2配線222は、歪検知素子100に接続される。例えば、第1配線221と第2配線222との間には、層間絶縁膜が設けられ、第1配線221と第2配線222とが電気的に絶縁される。第1配線221と第2配線222との間に電圧が印加され、この電圧が、第1配線221及び第2配線222を介して、歪検知素子100に印加される。圧力センサ200に圧力が加わると、基板210が変形する。歪検知素子100においては、基板210の変形に伴って電気抵抗Rが変化する。電気抵抗Rの変化を第1配線221及び第2配線222を介して検知することで、圧力を検知できる。
支持部201には、例えば、板状の基板を用いることができる。基板の内部には、例えば、空洞部(貫通孔201h)が設けられている。
支持部201には、例えば、シリコンなどの半導体材料、金属などの導電材料、または、絶縁性材料を用いることができる。支持部201は、例えば、酸化シリコンや窒化シリコンなどを含んでも良い。空洞部(貫通孔201h)の内部は、例えば減圧状態(真空状態)である。空洞部(貫通孔201h)の内部に、空気などの気体、または、液体が充填されていても良い。空洞部(貫通孔201h)の内部は、基板210が撓むことができるように設計される。空洞部(貫通孔201h)の内部は、外部の大気とつながっていてもよい。
空洞部(貫通孔201h)の上には、基板210が設けられている。基板210には、例えば、支持部201の一部が薄く加工され部分が用いられる。基板210の厚さ(Z軸方向の長さ)は、支持部201の厚さ(Z軸方向の長さ)よりも薄い。
基板210に圧力が印加されると、基板210は変形する。この圧力は、圧力センサ200が検知すべき圧力に対応する。印加される圧力は、音波または超音波などによる圧力も含む。音波または超音波などによる圧力を検知する場合は、圧力センサ200は、マイクロフォンとして機能する。
基板210には、例えば、絶縁性材料が用いられる。基板210は、例えば、酸化シリコン、窒化シリコン及び酸窒化シリコンの少なくともいずれかを含む。基板210には、例えば、シリコンなどの半導体材料を用いても良い。基板210には、例えば、金属材料を用いても良い。
基板210の厚さは、例えば、0.1マイクロメートル(μm)以上3μm以下である。この厚さは、0.2μm以上1.5μm以下であることが好ましい。基板210には、例えば、厚さが0.2μmの酸化シリコン膜と、厚さが0.4μmのシリコン膜と、の積層体を用いても良い。
図32(a)〜図32(d)は、基板の形状と、第1の実施形態のバイアス層の方向と、の関係を示す模式的平面図である。
図32(a)は、基板210を表す模式的平面図である。図32(b)および図32(c)は、図32(a)に表した領域A201の模式的拡大図である。図32(d)は、歪検知素子100が設けられた部分を拡大した模式的拡大図である。
基板210が円形のダイアフラムの場合、歪εは重心からの放射線方向に加わる。図32(a)および図32(b)に示すように、例えば、第1磁化固定層11の磁化11mと、第1バイアス磁性層41aの磁化41amと、を歪εの方向に対して垂直とすることができる。言い換えれば、図32(b)および図32(d)に示すように、第1磁化固定層11の磁化11mと、第1バイアス磁性層41aの磁化41amと、を外縁210rと、歪検知素子100の重心100gcと、を最短距離で結ぶ第1直線181とのなす角度を垂直(90°)とすることができる。例えば、この角度を75°以上105°以内とすれば、0°の場合と同様の特性を得ることができる。あるいは、図32(a)および図32(b)に示すように、第1磁化固定層11の磁化11mと、第1バイアス磁性層41aの磁化41amと、を基板210の重心210gcと、歪検知素子100の重心100gcと、を最短距離で結ぶ第2直線182とのすく角度を垂直(90°)とすることができる。例えば、この角度を75°以上105°以内とすれば、0°の場合と同様の特性を得ることができる。ハードバイアス83mの方向を、歪εの方向に対して平行方向と垂直方向からずらして設定することができる。例えば、45°もしくは135°にすることができる。このように設定することで、第2磁性層20(磁化自由層)の初期磁化20mf(バイアス20pの方向)を歪εの方向に対して平行方向と垂直方向からずらすことができ、正負の圧力に対して電気抵抗Rの変化を得ることができる。好ましくは、第1バイアス磁性層41aからのバイアス20pbと、ハードバイアス層83からの磁界バイアス20phと、で第2磁性層20(磁化自由層)の初期磁化20mf(バイアス20pの方向)を調整して、第2磁性層20(磁化自由層)の初期磁化20mf(バイアス20pの方向)を歪εの方向に対して、45°付近もしくは135°付近とすることが好ましい。
図32(a)および図32(c)に示すように、例えば、第1磁化固定層11の磁化11mと第1バイアス磁性層41aの磁化41amを、歪εの方向に対して平行とすることができる。言い換えれば、図32(c)および図32(d)に示すように、第1磁化固定層11の磁化11mと、第1バイアス磁性層41aの磁化41amと、を外縁210rと、歪検知素子100の重心100gcと、を最短距離で結ぶ第1直線181とのなす角度を平行(0°)とすることができる。例えば、この角度を0°以上15°以内とすれば、0°の場合と同様の特性を得ることができる。あるいは、図32(a)および図32(c)に示すように、第1磁化固定層11の磁化11amと、第1バイアス磁性層41aの磁化41amと、を基板210の重心210gcと、歪検知素子100の重心100gcと、を最短距離で結ぶ第2直線182とのなす角度を平行(0°)とすることができる。例えば、この角度を0°以上15°以内とすれば、0°の場合と同様の特性を得ることができる。ハードバイアス83mの方向を、歪εの方向に対して平行方向と垂直方向からずらすことができる。例えば、45°もしくは135°にすることができる。このように設定することで、第2磁性層20(磁化自由層)の初期磁化20mf(バイアス20pの方向)を歪εの方向に対して平行方向と垂直方向からずらすことができ、正負の圧力に対して電気抵抗Rの変化を得ることができる。好ましくは、第1バイアス磁性層41aからのバイアス20pbと、ハードバイアス層83からの磁界バイアス20phと、で第2磁性層20(磁化自由層)の初期磁化20mf(バイアス20pの方向)を調整して、第2磁性層20(磁化自由層)の初期磁化20mf(バイアス20pの方向)を歪εの方向に対して、45°付近もしくは135°付近とする。
図32(a)〜図32(d)では、基板210が円形ダイアフラムの例を示したが、他の形状のダイアフラムにおいても、外縁210rに対して、垂直方向に歪εが生ずると考えて、上記の磁化方向の設計が可能である。外縁210rが直線ではなく、曲線の場合には微小範囲において直線と見なすことができる外縁210rに対する垂直方向を歪が生ずる方向と考えれることができる。
図33(a)〜図33(d)は、基板の形状と、第2の実施形態のバイアス層の方向と、の関係を示す模式的平面図である。
図33(a)は、基板210を表す模式的平面図である。図33(b)および図33(c)は、図33(a)に表した領域A202の模式的拡大図である。図33(d)は、歪検知素子100が設けられた部分を拡大した模式的拡大図である。
基板210が円形のダイアフラムの場合、歪εは重心からの放射線方向に加わる。図33(a)および図33(b)に示すように、例えば、下部第1バイアス磁性層111aの磁化111amと、上部第1バイアス磁性層121aの磁化121amと、を歪εの方向に対して垂直とすることができる。言い換えれば、図33(b)および図33(d)に示すように、下部第1バイアス磁性層111aの磁化111amと、上部第1バイアス磁性層121aの磁化121amと、を外縁210rと、歪検知素子100の重心100gcと、を最短距離で結ぶ第1直線181とのなす角度を垂直(90°)とすることができる。例えば、この角度を75°以上105°以内とすれば、90°の場合と同様の特性を得ることができる。あるいは、図33(a)および図33(b)に示すように、下部第1バイアス磁性層111aの磁化111amと、上部第1バイアス磁性層121aの磁化121amと、を基板210の重心210gcと歪検知素子100の重心100gcと、を最短距離で結ぶ第2直線182とのなす角度を垂直(90°)とすることができる。例えば、この角度を75°以上105°以内とすれば、90°の場合と同様の特性を得ることができる。ハードバイアス83mの方向を、歪εの方向に対して、例えば、平行にすることができる。このように設定することで、下部磁性層10(第1磁化自由層)の初期磁化10mf(バイアス10pの方向)および上部磁性層20(第2磁化自由層)の初期磁化20mf(バイアス20pの方向)を歪εの方向に対して平行方向と垂直方向からずらすことができ、正負の圧力に対して電気抵抗Rの変化を得ることができる。好ましくは、下部第1バイアス磁性層111aからのバイアス10pbと、上部第1バイアス磁性層121aからのバイアス20pbと、ハードバイアス層83からの磁界バイアス10ph、20phと、で下部磁性層10(第1磁化自由層)の初期磁化10mf(バイアス10pの方向)および上部磁性層20(第2磁化自由層)の初期磁化20mf(バイアス20pの方向)を調整して、下部磁性層10(第1磁化自由層)の初期磁化10mf(バイアス10pの方向)および上部磁性層20(第2磁化自由層)の初期磁化20mf(バイアス20pの方向)と、歪εの方向と、の間の相対角度を、例えば、0°よりも大きく90°よりも小さくすることができる。例えば、45°付近とすることができる。
図33(a)および図33(c)に示すように、例えば、下部第1バイアス磁性層111aの磁化111amと、上部第1バイアス磁性層121aの磁化121amと、を歪εの方向に対して平行とすることができる。言い換えれば、図33(c)および図33(d)に示すように、下部第1バイアス磁性層111aの磁化111amと、上部第1バイアス磁性層121aの磁化121amと、を外縁210rと、歪検知素子100の重心100gcと、を最短距離で結ぶ第1直線181とのなす角度を平行(0°)とすることができる。例えば、この角度を0°以上15°以内とすれば、0°の場合と同様の特性を得ることができる。あるいは、図33(a)および図33(c)に示すように、下部第1バイアス磁性層111aの磁化111amと、上部第1バイアス磁性層121aの磁化121amと、を基板210の重心210gcと、歪検知素子100の重心100gcと、を最短距離で結ぶ第2直線182とのなす角度を平行(0°)とすることができる。例えば、この角度を0°以上15°以内とすれば、0°の場合と同様の特性を得ることができる。ハードバイアス83mの方向を、歪εの方向に対して垂直とすることができる。このように設定することで、下部磁性層10(第1磁化自由層)の初期磁化10mf(バイアス10pの方向)および上部磁性層20(第2磁化自由層)の初期磁化20mf(バイアス20pの方向)を歪εの方向に対して平行方向と垂直方向からずらすことができ、正負の圧力に対して電気抵抗Rの変化を得ることができる。好ましくは、下部第1バイアス磁性層111aからのバイアス10pbと、上部第1バイアス磁性層121aからのバイアス20pbと、ハードバイアス層83からの磁界バイアス10ph、20phと、で下部磁性層10(第1磁化自由層)の初期磁化10mf(バイアス10pの方向)および上部磁性層20(第2磁化自由層)の初期磁化20mf(バイアス20pの方向)を調整して、下部磁性層10(第1磁化自由層)の初期磁化10mf(バイアス10pの方向)および上部磁性層20(第2磁化自由層)の初期磁化20mf(バイアス20pの方向)と、歪εの方向と、の間の相対角度を、例えば、0°よりも大きく90°よりも小さくすることができる。例えば、45°付近とすることができる。
図33(a)〜図33(d)では、基板210が円形ダイアフラムの例を示したが、他の形状のダイアフラムにおいても、外縁210rに対して、垂直方向に歪εが生ずると考えて、上記の磁化方向の設計が可能である。外縁210rが直線ではなく、曲線の場合には微小範囲において直線と見なすことができる外縁210rに対する垂直方向を歪が入る方向と考えれることができる。
図34(a)および図34(b)は、第3の実施形態に係る別の圧力センサを例示する模式図である。
図34(a)および図34(b)に表したように、歪検知素子100は、基板210の上に複数配置されてもよい。すなわち、図34(a)および図34(b)に表した圧力センサ200bは、第1歪検知素子部101と、第2歪検知素子部102と、第3歪検知素子部103と、第4歪検知素子部104と、を含む。第1歪検知素子部101、第2歪検知素子部102、第3歪検知素子部103および第4歪検知素子部104は、複数の歪検知素子100を含む。複数の歪検知素子100で圧力に対して同等の電気抵抗Rの変化を得ることは、後述するように、複数の歪検知素子100を直並列に接続することでSN比を増大することができる。
図34(a)および図34(b)の例では、歪検知素子100を複数配置しているが、1つでもよい。図34(a)および図34(b)の例では、円形の基板210の上への配置のバリエーションを示している。
歪検知素子100は、極めて小さいサイズを有していれば十分である。
そのため、歪検知素子100の面積については、圧力によって変形する基板210の面積よりも十分に小さくすることができる。例えば、歪検知素子100の面積については、基板210の面積の1/5以下とすることができる。
例えば、基板210の直径寸法が60μm程度の場合には、歪検知素子100の寸法は、12μm以下とすることができる。例えば、基板210の直径寸法が600μm程度の場合には、歪検知素子100の寸法は、120μm以下とすることができる。
この場合、歪検知素子100の加工精度などを考慮すると、歪検知素子100の寸法をそれぞれを過度に小さくする必要はない。そのため、歪検知素子100の寸法については、例えば、0.05μm以上、30μm以下とすることができる。
図34(a)において例示をしたものは、基板210の平面形状が円の場合であるが、基板210の平面形状は円に限定されるわけではない。基板210の平面形状は、例えば、楕円、正方形や長方形などの正多角形などとすることができる。
基板210上に設けられた複数の歪検知素子100は、直列に接続することができる。複数の歪検知素子100が直列に接続されている歪検知素子100の数をNとしたとき、得られる電気信号は、歪検知素子100の数が1である場合のN倍となる。その一方で、熱ノイズ及びショットキーノイズは、N1/2倍になる。すなわち、SN比(signal-noise ratio:SNR)は、N1/2倍になる。直列に接続する歪検知素子100の数Nを増やすことで、基板210のサイズを大きくすることなく、SN比を改善することができる。
1つの歪検知素子100に加えられるバイアス電圧は、例えば、50ミリボルト(mV)以上150mV以下である。N個の歪検知素子100を直列に接続した場合は、バイアス電圧は、50mV×N以上150mV×N以下となる。例えば、直列に接続されている歪検知素子100の数Nが25である場合には、バイアス電圧は、1V以上3.75V以下となる。
バイアス電圧の値が1V以上であると、歪検知素子100から得られる電気信号を処理する電気回路の設計は容易になり、実用的に好ましい。
バイアス電圧(端子間電圧)が10Vを超えると、歪検知素子100から得られる電気信号を処理する電気回路においては、望ましくない。実施形態においては、適切な電圧範囲になるように、直列に接続される歪検知素子100の数N、及び、バイアス電圧が設定される。
例えば、複数の歪検知素子100を電気的に直列に接続したときの電圧は、1V以上10V以下となるのが好ましい。例えば、電気的に直列に接続された複数の歪検知素子100の端子間(一方の端の端子と、他方の端の端子と、の間)に印加される電圧は、1V以上10V以下である。
この電圧を発生させるためには、1つの歪検知素子100に印加されるバイアス電圧が50mVである場合、直列に接続される歪検知素子100の数Nは、20mV以上200mV以下が好ましい。1つの歪検知素子100に印加されるバイアス電圧が150mVである場合、直列に接続される歪検知素子100の数Nは、6以上200以下であることが好ましく、7以上66以下であることがより好ましい。
複数の歪検知素子100の少なくとも一部は、電気的に並列に接続されても良い。
図34(b)に示すように、複数の歪検知素子100がホイートストンブリッジ回路を形成するように、複数の歪検知素子100を接続しても良い。これにより、例えば、検出特性の温度補償を行うことができる。
図35(a)〜図35(c)は、第3の実施形態に係る圧力センサを例示する模式的斜視図である。
図35(a)〜図35(c)は、複数の歪検知素子100の接続の例を示している。
図35(a)に表したように、複数の歪検知素子100が電気的に直列に接続される場合において、第1電極E1(例えば第2配線222)と、第2電極E2(例えば第1配線221)と、の間に歪検知素子100及びビアコンタクト230を設ける。これにより、通電方向は、一方向となる。複数の歪検知素子100に通電される電流は、下向き、または、上向きである。この接続においては、複数の歪検知素子100のそれぞれのシグナル・ノイズ特性を互いに近い特性にできる。
図35(b)に表したように、ビアコンタクト230が設けられずに、第1電極E1と、第2電極E2と、の間に歪検知素子100が配置されている。この例では、隣り合う2つの歪検知素子100のそれぞれに通電される電流の方向は、互いに逆である。この接続においては、複数の歪検知素子100の配置の密度が高い。
図35(c)に表したように、1つの第1電極E1と、1つの第2電極E2と、の間に、複数の歪検知素子100が設けられている。複数の歪検知素子100は、並列に接続されている。
以下、実施形態に係る圧力センサの製造方法の例について説明する。以下は、圧力センサの製造方法の例である。
図36(a)〜図36(e)は、実施形態に係る圧力センサの製造方向を例示する工程順模式的断面図である。
図36(a)に表したように、基体241(例えばSi基板)の上に薄膜242を形成する。基体241は、支持部201となる。薄膜242は、基板210となる。
例えば、Si基板上に、SiOx/Siの薄膜242をスパッタにより形成する。薄膜242として、SiOx単層、SiN単層、または、Alなどの金属層を用いても良い。また、薄膜242として、ポリイミドまたはパラキシリレン系ポリマーなどのフレキシブルプラスティック材料を用いても良い。SOI(Silicon On Insulator)基板を、基体241及び薄膜242として用いても良い。SOIにおいては、例えば、基板の貼り合わせによってSi基板上にSiO2/Siの積層膜が形成される。
図36(b)に表したように、第2配線222を形成する。この工程においては、第2配線222となる導電膜を形成し、その導電膜を、フォトリソグラフィー及びエッチングにより加工する。第2配線222の周辺を絶縁膜で埋め込む場合、リフトオフ処理を適用しても良い。リフトオフ処理においては、例えば、第2配線222のパターンのエッチング後、レジストを剥離する前に、絶縁膜を全面に成膜して、その後レジストを除去する。
図36(c)に表したように、歪検知素子100を形成する。この工程においては、歪検知素子100となる積層体を形成し、その積層体を、フォトリソグラフィー及びエッチングにより加工する。歪検知素子100の積層体の側壁を絶縁層81で埋め込む場合、リフトオフ処理を適用しても良い。リフトオフ処理において、例えば、積層体の加工後、レジストを剥離する前、絶縁層81を全面に成膜して、その後レジストを除去する。
図36(d)に表したように、第1配線221を形成する。この工程においては、第1配線221となる導電膜を形成し、その導電膜を、フォトリソグラフィー及びエッチングにより加工する。第1配線221の周辺を絶縁膜で埋め込む場合、リフトオフ処理を適用しても良い。リフトオフ処理において、第1配線221の加工後、レジストを剥離する前に、絶縁膜を全面に成膜して、その後レジストを除去する。
図36(e)に表したように、基体241の裏面からエッチングを行い、空洞部201aを形成する。これにより、基板210及び支持部201が形成される。例えば、基板210となる薄膜242として、SiOx/Siの積層膜を用いる場合は、薄膜242の裏面(下面)から表面(上面)へ向かって、基体241の深堀加工を行う。これにより、空洞部201aが形成される。空洞部201aを形成においては、例えば両面アライナー露光装置を用いることができる。これにより、表面の歪検知素子100の位置に合わせて、レジストのホールパターンを裏面にパターニングできる。
Si基板のエッチングにおいて、例えばRIEを用いたボッシュプロセスが用いることができる。ボッシュプロセスでは、例えば、SF6ガスを用いたエッチング工程と、C4F8ガスを用いた堆積工程と、を繰り返す。これにより、基体241の側壁のエッチングを抑制しつつ、基体241の深さ方向(Z軸方向)に選択的にエッチングが行われる。エッチングのエンドポイントとして、例えば、SiOx層が用いられる。すなわち、エッチングの選択比がSiとは異なるSiOx層を用いてエッチングを終了させる。エッチングストッパ層として機能するSiOx層は、基板210の一部として用いられても良い。SiOx層は、エッチングの後に、例えば、無水フッ化水素及びアルコールなどの処理などで除去されても良い。
このようにして、実施形態に係る圧力センサ200が形成される。実施形態に係る他の圧力センサも同様の方法により製造できる。
(第4の実施形態)
図37(a)〜図37(c)は、実施形態に係る圧力センサを例示する模式図である。 図37(a)は、模式的斜視図であり、図37(b)及び図37(c)は、圧力センサ640を例示するブロック図である。
図37(a)及び図37(b)に示すように、圧力センサ640には、基部671、検知部650、半導体回路部630、アンテナ615、電気配線616、送信回路617、及び、受信回路617rが設けられている。
アンテナ615は、電気配線616を介して、半導体回路部630と電気的に接続されている。
送信回路617は、検知部650に流れる電気信号に基づくデータを無線で送信する。送信回路617の少なくとも一部は、半導体回路部630に設けることができる。
受信回路617rは、電子機器618dからの制御信号を受信する。受信回路617rの少なくとも一部は、半導体回路部430に設けることができる。受信回路617rを設けるようにすれば、例えば、電子機器618dを操作することで、圧力センサ640の動作を制御することができる。
図37(b)に示すように、送信回路617には、例えば、検知部650に接続されたADコンバータ617aと、マンチェスター符号化部617bと、を設けることができる。切替部617cを設け、送信と受信を切り替えるようにすることができる。この場合、タイミングコントローラ617dを設け、タイミングコントローラ617dにより切替部617cにおける切り替えを制御することができる。またさらに、データ訂正部617e、同期部617f、判定部617g、電圧制御発振器617h(VCO;Voltage Controlled Oscillator)を設けることができる。
図37(c)に示すように、圧力センサ640と組み合わせて用いられる電子機器618dには、受信部618が設けられる。電子機器618dとしては、例えば、携帯端末などの電子装置を例示することができる。
この場合、送信回路617を有する圧力センサ640と、受信部618を有する電子機器618dと、を組み合わせて用いることができる。
電子機器618dには、マンチェスター符号化部617b、切替部617c、タイミングコントローラ617d、データ訂正部617e、同期部617f、判定部617g、電圧制御発振器617h、記憶部618a、中央演算部618b(CPU;Central Processing Unit)を設けることができる。
この例では、圧力センサ640は、固定部667をさらに含んでいる。固定部667は、膜部664を基部671に固定する。固定部667は、外部圧力が印加されたときであっても撓みにくいように、膜部664よりも厚み寸法を厚くすることができる。
固定部667は、例えば、膜部664の周縁に等間隔に設けることができる。
膜部664の周囲をすべて連続的に取り囲むように固定部667を設けることもできる。
固定部667は、例えば、基部671の材料と同じ材料から形成することができる。この場合、固定部667は、例えば、シリコンなどから形成することができる。
固定部667は、例えば、膜部664の材料と同じ材料から形成することもできる。
実施形態に係る圧力センサの製造方法の例について説明する。
図38(a)、図38(b)、図39(a)、図39(b)、図40(a)、図40(b)、図41(a)、図41(b)、図42(a)、図42(b)、図43(a)、図43(b)、図44(a)、図44(b)、図45(a)、図45(b)、図46(a)、図46(b)、図47(a)、図47(b)、図48(a)、図48(b)、図49(a)及び図49(b)は、実施形態に係る圧力センサの製造方法を例示する模式図である。
なお、図38(a)〜図49(a)は、模式的平面図であり、図38(b)〜図49(b)は、模式的断面図である。
図38(a)及び図38(b)に示すように、半導体基板531の表面部分に半導体層512Mを形成する。続いて、半導体層512Mの上面に素子分離絶縁層512Iを形成する。続いて、半導体層512Mの上に、図示しない絶縁層を介して、ゲート512Gを形成する。続いて、ゲート512Gの両側に、ソース512Sとドレイン512Dとを形成することで、トランジスタ532が形成される。続いて、この上に層間絶縁膜514aを形成し、さらに層間絶縁膜514bを形成する。
続いて、非空洞部となる領域において、層間絶縁膜514a、514bの一部に、トレンチ及び孔を形成する。続いて、孔に導電材料を埋め込んで、接続ピラー514c〜514eを形成する。この場合、例えば、接続ピラー514cは、1つのトランジスタ532のソース512Sに電気的に接続され、接続ピラー514dはドレイン512Dに電気的に接続される。例えば、接続ピラー514eは、別のトランジスタ532のソース512Sに電気的に接続される。続いて、トレンチに導電材料を埋め込んで、配線部514f、514gを形成する。配線部514fは、接続ピラー514c及び接続ピラー514dに電気的に接続される。配線部514gは、接続ピラー514eに電気的に接続される。続いて、層間絶縁膜514bの上に、層間絶縁膜514hを形成する。
図39(a)及び図39(b)に示すように、層間絶縁膜514hの上に、酸化シリコン(SiO2)からなる層間絶縁膜514iを、例えば、CVD(Chemical Vaper Deposition)法を用いて形成する。続いて、層間絶縁膜514iの所定の位置に孔を形成し、導電材料(例えば、金属材料)を埋め込み、上面をCMP(Chemical Mechanical Polishing)法を用いて平坦化する。これにより、配線部514fに接続された接続ピラー514jと、配線部514gに接続された接続ピラー514kと、が形成される。
図40(a)及び図40(b)に示すように、層間絶縁膜514iの空洞部570となる領域に凹部を形成し、その凹部に犠牲層514lを埋め込む。犠牲層514lは、例えば、低温で成膜できる材料を用いて形成することができる。低温で成膜できる材料は、例えば、シリコンゲルマニウム(SiGe)などである。
図41(a)及び図41(b)に示すように、層間絶縁膜514i及び犠牲層514lの上に、膜部564となる絶縁膜561bfを形成する。絶縁膜561bfは、例えば、酸化シリコン(SiO2)などを用いて形成することができる。絶縁膜561bfに複数の孔を設け、複数の孔に導電材料(例えば、金属材料)を埋め込み、接続ピラー561fa、接続ピラー562faを形成する。接続ピラー561faは、接続ピラー514kと電気的に接続され、接続ピラー562faは、接続ピラー514jと電気的に接続される。
図42(a)及び図42(b)に示すように、絶縁膜561bf、接続ピラー561fa、接続ピラー562faの上に、配線557となる導電層561fを形成する。
図43(a)及び図43(b)に示すように、導電層561fの上に、積層膜550fを形成する。
図44(a)及び図44(b)に示すように、積層膜550fを所定の形状に加工し、その上に、絶縁層565となる絶縁膜565fを形成する。絶縁膜565fは、例えば、酸化シリコン(SiO2)などを用いて形成することができる。
図45(a)及び図45(b)に示すように、絶縁膜565fの一部を除去し、導電層561fを所定の形状に加工する。これにより、配線557が形成される。このとき、導電層561fの一部は、接続ピラー562faに電気的に接続される接続ピラー562fbとなる。さらに、この上に、絶縁層566となる絶縁膜566fを形成する。
図46(a)及び図46(b)に示すように、絶縁膜566fに開口部566pを形成する。これにより、接続ピラー562fbが露出する。
図47(a)及び図47(b)に示すように、上面に、配線558となる導電層562fを形成する。導電層562fの一部は、接続ピラー562fbと電気的に接続される。 図48(a)及び図48(b)に示すように、導電層562fを所定の形状に加工する。これにより、配線558が形成される。配線558は、接続ピラー562fbと電気的に接続される。
図49(a)及び図49(b)に示すように、絶縁膜566fに所定の形状の開口部566oを形成する。開口部566oを介して、絶縁膜561bfを加工し、さらに開口部566oを介して、犠牲層514lを除去する。これにより、空洞部570が形成される。犠牲層514lの除去は、例えば、ウェットエッチング法を用いて行うことができる。
なお、固定部567をリング状とする場合には、例えば、空洞部570の上方における非空洞部の縁と、膜部564と、の間を絶縁膜で埋める。
以上の様にして圧力センサが形成される。
(第5の実施形態)
図50は、第4の実施形態に係るマイクロフォンを例示する模式的平面図である。
図50に示すように、マイクロフォン410は、前述した各実施形態に係る任意の圧力センサ(例えば、圧力センサ200)や、それらの変形に係る圧力センサを有する。以下においては、一例として、圧力センサ200を有するマイクロフォン410について例示をする。
マイクロフォン410は、携帯情報端末420の端部に組み込まれている。マイクロフォン410に設けられた圧力センサ200の基板210は、例えば、携帯情報端末420の表示部421が設けられた面に対して実質的に平行とすることができる。なお、基板210の配置は例示をしたものに限定されるわけではなく、適宜変更することができる。
マイクロフォン410は、圧力センサ200などを備えているので、広域の周波数に対して高感度とすることができる。
なお、マイクロフォン410が携帯情報端末420に組み込まれている場合を例示したがこれに限定されるわけではない。マイクロフォン410は、例えば、ICレコーダーやピンマイクロフォンなどにも組み込むことができる。
(第6の実施形態)
実施形態は、上記の各実施形態の圧力センサを用いた音響マイクに係る。
図51は、第5の実施形態に係る音響マイクを例示する模式的断面図である。
実施形態に係る音響マイク430は、プリント基板431と、カバー433と、圧力センサ200と、を含む。プリント基板431は、例えばアンプなどの回路を含む。カバー433には、アコースティックホール435が設けられる。音439は、アコースティックホール435を通って、カバー433の内部に進入する。
圧力センサ200として、上記の各実施形態に関して説明した圧力センサのいずれか、及び、その変形が用いられる。
音響マイク430は、音圧に対して感応する。高感度な圧力センサ200を用いることにより、高感度な音響マイク430が得られる。例えば、圧力センサ200をプリント基板431の上に搭載し、電気信号線を設ける。圧力センサ200を覆うように、プリント基板431の上にカバー433を設ける。
実施形態によれば、高感度な音響マイクを提供することができる。
(第7の実施形態)
実施形態は、上記の各実施形態の圧力センサを用いた血圧センサに係る。
図52(a)及び図52(b)は、第6の実施形態に係る血圧センサを例示する模式図である。
図52(a)は、ヒトの動脈血管の上の皮膚を例示する模式的平面図である。図52(b)は、図52(a)のH1−H2線断面図である。
実施形態においては、圧力センサ200は、血圧センサ440として応用される。この圧力センサ200には、上記の各実施形態に関して説明した圧力センサのいずれか、及び、その変形が用いられる。
これにより、小さいサイズの圧力センサで高感度な圧力検知が可能となる。圧力センサ200を動脈血管441の上の皮膚443に押し当てることで、血圧センサ440は、連続的に血圧測定を行うことができる。
本実施形態によれば、高感度な血圧センサを提供することができる。
(第8の実施形態)
実施形態は、上記の各実施形態の圧力センサを用いたタッチパネルに係る。
図53は、第7の実施形態に係るタッチパネルを例示する模式的平面図である。
実施形態においては、圧力センサ200が、タッチパネル450として用いられる。この圧力センサ200には、上記の各実施形態に関して説明した圧力センサのいずれか、及び、その変形が用いられる。タッチパネル450においては、圧力センサ200が、ディスプレイの内部及びディスプレイの外部の少なくともいずれかに搭載される。
例えば、タッチパネル450は、複数の第1配線451と、複数の第2配線452と、複数の圧力センサ200と、制御部453と、を含む。
この例では、複数の第1配線451は、Y軸方向に沿って並ぶ。複数の第1配線451のそれぞれは、X軸方向に沿って延びる。複数の第2配線452は、X軸方向に沿って並ぶ。複数の第2配線452のそれぞれは、Y軸方向に沿って延びる。
複数の圧力センサ200のそれぞれは、複数の第1配線451と複数の第2配線452とのそれぞれの交差部に設けられる。圧力センサ200の1つは、検出のための検出要素200eの1つとなる。ここで、交差部は、第1配線451と第2配線452とが交差する位置及びその周辺の領域を含む。
複数の圧力センサ200のそれぞれの一端251は、複数の第1配線451のそれぞれと接続される。複数の圧力センサ200のそれぞれの他端252は、複数の第2配線452のそれぞれと接続される。
制御部453は、複数の第1配線451と複数の第2配線452とに接続される。
例えば、制御部453は、複数の第1配線451に接続された第1配線用回路453aと、複数の第2配線452に接続された第2配線用回路453bと、第1配線用回路453aと第2配線用回路453bとに接続された制御回路455と、を含む。
圧力センサ200は、小型で高感度な圧力センシングが可能である。そのため、高精細なタッチパネルを実現することが可能である。
上記の各実施形態に係る圧力センサは、上記の応用の他に、気圧センサ、または、タイヤの空気圧センサなどのように、様々な圧力センサデバイスに応用することができる。
実施形態によれば、高感度の歪検知素子、圧力センサ、マイクロフォン、血圧センサ及びタッチパネルを提供することができる。
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、歪検知素子、圧力センサ、マイクロフォン、血圧センサ及びタッチパネルに含まれる基板、歪検知素子、第1磁性層、第2磁性層、中間層およびバイアス層などの各要素の具体的な構成に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
また、各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
その他、本発明の実施の形態として上述した歪検知素子、圧力センサ、マイクロフォン、血圧センサ及びタッチパネルを基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての歪検知素子、圧力センサ、マイクロフォン、血圧センサ及びタッチパネルも、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。