近年、芝刈り機、発電機、水上レジャー用動力機などに用いられる複数気筒の汎用エンジンにおいても、燃費向上や排ガス規制などの環境対策の要求に対応するため、キャブレータ(気化器)を用いた燃料供給システムから気筒毎の空燃比の制御性に優れているインジェクタを用いた燃料供給システム(燃料噴射システム:FI)に移行しつつある。
しかし、汎用エンジンは、その多くが作業機の動力目的で使用されるため最終消費者の利便性を考慮してコンパクトかつ低価格であることが求められているところ、現在流通している汎用エンジンでは、エアクリーナと吸気マニホルドの間にキャブレータを介装することを前提としており、FIに移行する際には燃料供給装置の変更に伴い、エンジンシステムの構成要素である吸気マニホルドの接続構造とエアクリーナの接続構造を全面的に変更する必要が生じて、エンジンシステム全体として製造コストの高騰を招いてしまうことになる。
また、汎用エンジンの多くを占めるV型2気筒エンジンでは、それに用いるキャブレータに各気筒を独立で制御する2ボア式と1つのボアで両気筒を制御する単ボア式の2タイプがあるため、適用していたキャブレータのボア数に応じて、新たな燃料供給装置における吸気マニホルドへの接続構造とエアクリーナへの接続構造を変更する必要が生じるとともに、2ボア式の場合は高価なインジェクタが2基必要となるため、さらなる製造コストの高騰を招くことになる。
これに対し、本願発明者・出願人らは、先に特開2003−106246号公報において、2気筒汎用エンジンの各気筒に接続される2つの吸気通路の間の領域に接する1基のインジェクタで燃料を供給する方式の燃料供給装置を提案しており、インジェクタ数の削減によりコストの低減を実現している。しかしながら、この燃料供給装置においても、2つのスロットルバルブを配置したスロットルボディが必要であることに加え、様々な方式の既存の汎用エンジンにそのまま接続することが出来ない構造であることから、コストの低減効果は不充分と言わざるを得ない。
さらに近年では、ランニングコストの低減を目的として電子制御によるモータで駆動するスロットル(電制スロットル)を用いた燃料供給システムも普及しつつあり、芝刈り機や発電器等に用いられる汎用エンジンにおいても、斯かる電制スロットルを用いて高効率領域での運転を実現させたいというニーズも高まっている。
上述したような要求を総て考慮してFIによる燃料供給装置を現状の汎用エンジンに導入する場合は、単ボア式で機械式スロットル、単ボア式で電制スロットル、2ボア式で機械制御スロットル、2ボア式で電制スロットルの4タイプのエンジンに適用することが想定され、少なくとも4タイプの燃料供給装置を用意する必要が生じることから、その低コスト化の達成は極めて困難と考えられる。
本発明は、上記のような問題を解決しようとするものであり、多様な2気筒汎用エンジンに対し燃料噴射システムを低コストで適用できるようにすることを課題とする。
そこで、本発明は、インジェクタとスロットルバルブをスロットルボディに備えて2気筒汎用エンジンの吸気マニホルドとエアクリーナの間に配設され、1基のインジェクタで2気筒汎用エンジンの両気筒に対し所定の空燃比に調整した燃料を供給する燃料供給装置において、前記スロットルボディは、インジェクタを有した燃料供給部とスロットルバルブを有した空気量制御部で構成されており、その燃料供給部と空気量制御部が分離・結合可能な別部品からなる、ことを特徴とするものとした。
このように、FI方式による燃料供給装置のスロットルボディを、インジェクタを有した部分とスロットルバルブを有した部分が別部品からなるものとして、その分離・結合を可能としたことにより、適用する汎用エンジンのタイプに応じてインジェクタ側またはスロットルバルブ側の部品を交換して組み合わせながら容易に適合可能なものとなるため、汎用エンジンのタイプ毎に異なる態様の吸気マニホルドとエアクリーナに各々対応した構造とともに機械式または電制式のスロットルバルブを一体的に備えた燃料供給装置を全タイプ用意する場合と比べ、低廉な製造コストで多様な汎用エンジンに対し燃料噴射システムを適用できるようになる。
また、この燃料供給装置において、その燃料供給部は、空気量制御部の下流側に配置されているとともにその下流側端部に吸気マニホルドに接続するための接合端面が形成されており、その空気量制御部には、上流側端部にエアクリーナに接続するための接合端面が形成されている、ことを特徴としたものとすれば、燃料供給装置を吸気マニホルドとエアクリーナの間に容易に配設可能なものとなる。
この場合、その空気量制御部のエアクリーナ側の接合端面には、単ボア用エアクリーナの2孔式取付けフランジと2ボア用エアクリーナの4孔式取付けフランジの両方に取付け可能とするための5つのボルト孔が貫通して開口しており、その5つのボルト孔は、前記4孔式取付けフランジの各ボルト孔に連通するように方形に配置した4つのボルト孔のうちの1つのボルト孔が、前記2孔式取付けフランジの2つのボルト孔のうち一方に連通するボルト孔を兼ねており、このボルト孔の吸気通路を挟んだ対向側に前記2つのボルト孔の他方に連通する5つ目のボルト孔が貫通して開口してなるものである、ことを特徴としたものとすれば、1つの空気量制御部で単ボア用と2ボア用の両タイプのエアクリーナにそのまま接続可能なものとなる。
更に、上述した燃料供給装置において、その燃料供給部は、1本の直線状の吸気通路を有した単ボア用吸気マニホルド対応型のものまたは1本の吸気通路がインジェクタ下流側で拡径して2ボア用吸気マニホルドの2本の吸気通路の両方に接続する2ボア用吸気マニホルド対応型のものとされている、ことを特徴としたものとすれば、2タイプの燃料供給部を構成する部品を用意しておけば、単ボア用と2ボア用の両タイプの吸気マニホルドに対し容易に対応して接続可能なものとなる。
更にまた、上述した燃料供給装置において、その空気量制御部のスロットルバルブは、機械制御式または電子制御式のものが使用可能とすることを特徴としたものとすれば、機械制御式と電子制御式の2タイプの空気量制御部を用意して前述した燃料供給部に適宜組み合わせることで、機械制御式と電子制御式の両方の要求に対応しながら様々なタイプのエンジンに対応可能なものとなる。
加えて、上述した燃料供給装置において、その適用対象がV型エンジンであることを特徴としたものとすれば、エンジンヘッドの間隔が狭く燃料供給装置の配置の自由度が低い状況において、上述した本発明によるメリットが一層顕著なものとなる。
燃料供給装置のスロットルボディにおいてインジェクタを備えた部分とスロットルバルブを備えた部分を別部品にしてその分離・結合を可能にした本発明によると、多様な2気筒汎用エンジンに対し燃料噴射システムを低コストで適用できるものである。
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための形態を説明する。
図1は、本実施の形態である燃料供給装置1Aを示している。この燃料供給装置1Aは、V型の2気筒汎用エンジンに使用することを想定したものであるが、このような汎用エンジンに燃料供給装置を配設する場合、従来は図6に示すようにレギュレータ200を吸気マニホルド5Aとエアクリーナ4Aの間に介装して長いボルト100でこれらを一体的に締結・固定するのが一般的であった。
そのため、本実施の形態の燃料供給装置1Aにおけるスロットルボディ10Aは、既存のエンジンシステムのレギュレータ200と置き換えて配設することを考慮して、レギュレータ200のスロットルボディ10Eの幅Xと同等の幅Yにするとともに、その両端側の接続端面にレギュレータ200とほぼ共通したボルト孔位置の接続構造を採用して、既存の吸気マニホルド5Aとエアクリーナ4Aの間にそのまま配設できるようにしている。
また、この燃料供給装置1Aは、1基のインジェクタ35で2気筒汎用エンジンの両気筒に対し所定の空燃比に調整した燃料を噴射・供給するFI方式を採用したものであるが、そのスロットルボディ10Aは、図示しないスロットルバルブを有した空気量制御部2Aの下流側に、インジェクタ35を有した燃料供給部3Aを備えており、その空気量制御部2Aと燃料供給部3Aとが、ボアセンタ(吸気通路の中心線)に対し直角な面で分離した別部品により構成されている点が、本発明における特徴部分となっている。
このように、通常は1ピースで構成されるスロットルボディ10Aを、インジェクタ35を有した部分とスロットルバルブを有した部分が別部品からなるものとして、その分離・結合を容易に行えるようにしたことで、適用するエンジンのタイプに応じてインジェクタ側またはスロットルバルブ側の部品を適宜組み合わせながら適合させる方式を実現したものである。
即ち、2気筒汎用エンジンにおいては、以下の表1の上段に示すように、その燃料供給御方式に単ボア式(S)と2ボア式(T)の2タイプ、その空気量制御方式に機械式(M)と電制式(E)の2タイプ、合計4タイプが存在する。そのため、これらに対応して燃料を供給するには4タイプの燃料供給装置が必要になるところ、上述したようにインジェクタを有した燃料供給部とスロットルバルブを有した空気量制御部を別部品とし、その組み合わせにより既存のエンジンに対応する方式を採用したことにより、生産コストの大幅な低減効果が期待できるものである。
図2(a)は、前述した燃料供給装置1Aにおける空気量制御部2Aの左側面図、図2(b)はその正面図を示している。この空気量制御部2Aは、電動モータによる駆動部25を電子的に作動制御する電制式スロットルを採用しており、吸気通路50aに配設したスロットルバルブ28を電子制御で開閉操作しながら、最適な空気流量を確保して理想的な空燃比を実現しようとするものである。
その空気量制御部2Aを構成しているボディ20には、そのエアクリーナ側の接合端面から燃料供給部3A側の接合端面まで貫通した5つのボルト孔21a,21b,21c,21d,21eが設けられている。そして、そのボルト孔21a,21b,21c,21d,21eが、エアクリーナ側における単ボア用2孔式取付けフランジと2ボア用4孔式取付けフランジの両方に取付け可能とされており、その点が本実施の形態における重要な特徴部分となっている。
即ち、エアクリーナの4孔式取付けフランジの各ボルト孔に連通するように、ボディ20に長方形に配置した4つのボルト孔21a,21b,21c,21dのうち、1つのボルト孔21bが、エアクリーナが2孔式取付けフランジの場合にその2つのボルト孔の一方に連通するボルト孔を兼ねており、このボルト孔21bの吸気通路50aを挟んだ対向側に前記2つのボルト孔の他方に連通する5つ目のボルト孔21eが、貫通して開口した構成となっている。尚、ボルト孔21bがボアセンタを中心にした回転方向に拡径されているのは、2孔式フランジの配置角度と2孔式フランジの配置角度のズレに対応可能とするためである。
斯かる構成を採用したのは、表1の上段に記載した4タイプのエンジンに対応するために、単ボア式または2ボア式で機械式または電制式の4タイプの空気量制御部を用意する必要があるところ、そのエアクリーナ側の接合端面の構成を、上述のように単ボア用の2孔式と2ボア用の4孔式の両方に1つで対応可能としたことにより、表1の下段に記載したように、2タイプの空気量制御部(M),(E)を用意すれば足りるからである。
また、上述した4タイプのエンジンの生産数量が均等になることは考えにくいことから、4タイプの燃料供給装置を用意する場合は、少量生産のものについてスロットルボディの金型を初めとする設備の償却が進みにくい事態が生じやすいところ、本発明による組み合わせ方式を採用すれば、その可能性は単純計算で2分の1となるため、生産コストの低減において極めて有利と考えられる。
一方、図3(a)は、機械式のスロットルを採用した空気量制御部2Bの左側面図を示し、図3(b)はその正面図を示している。この空気量制御部2Bは、ボディ22を貫通している吸気通路50b内に配設したスロットルバルブ29を、エンジンのガバナー(調速機)とリンクしながら機械的に開閉制御し、最適な空気流量を確保して理想的な空燃比を実現しようとするものである。
この空気量制御部2Bも、前述した空気量制御部2Aと同様に、ボディ22を貫通して方形に配置した4つのボルト孔23a,23b,23c,23dのうち、1つのボルト孔23bがエアクリーナの2孔式取付けフランジの2つのボルト孔の一方に連通するボルト孔を兼ねており、このボルト孔23bの吸気通路50bを挟んだ対向側に前記2つのボルト孔の他方に連通する5つ目のボルト孔23eが貫通して開口しており、前述と同様に4孔式と2孔式の両方に対応してボルトで締結・固定できるようになっている。
図4(a)は、図1の燃料供給装置1Aを、単ボア用2孔式の吸気マニホルド5Aと単ボア用2孔式のエアクリーナ4Aの間に介装した状態を示す縦断面図、図4(b)はその燃料供給装置1Aの左側面図を示している。エアクリーナ4Aに形成された1本の吸気通路5aは、スロットルバルブ28を有した空気量制御部2Aの吸気通路50a、図示しないインジェクタ35を有した燃料供給部3Aの吸気通路50c、吸気マニホルド5Aに形成された1本の吸気通路5bに連通しており、これらの4部品が2本のボルト100,100で一体的に締結・固定されている。
その2本のボルト100,100は、図4(b)に示すように、空気量制御部2Aの5つのボルト孔21a,21b,21c,21d,21eのうち、ボルト孔21b,21e及び、燃料供給部3Aのボルト孔31a,31bを挿通して締結・固定されており、空気量制御部2Aのボルト孔21a,21c,21dは使用されていない。
これに対し、図5(a)は、2ボア用4孔式の吸気マニホルド5Bと2ボア用4孔式のエアクリーナ4Bの間に、本発明による燃料供給装置1Cを介装した状態の縦断面図を示している。この実施の形態では、燃料供給装置1Aにおける空気量制御部2Aはそのままで、1本の直線状の吸気通路50cを有した単ボア用吸気マニホルド対応型の燃料供給部3Aに代えて、1本の吸気通路50dがインジェクタ下流側で拡径して吸気マニホルド5Bで2本並列して開口した吸気通路5e,5fの両方に接続する2ボア用吸気マニホルド対応型の燃料供給部3Bを配設したものとなっている。
この燃料供給装置1Cの場合、図4(b)の燃料供給装置1Aにおいて2孔式で固定していた空気量制御部2Aを、その4つのボルト孔21a,21b,21c,21dが、4孔式のエアクリーナ4Bの取付けフランジに設けた4つのボルト孔の位置に一致するまで、図5(b)に示すようにボアセンタ(吸気通路50aの中心線)を中心として矢印方向に回転させて位置合わせを行い、それに対し4孔式の燃料供給部3Bのボディ32に設けた4つのボルト孔32a,32b,32c,32dを一致させ、それらと4孔式の吸気マニホルド5Bの取付けフランジに設けた4つのボルト孔を位置合わせした状態で、4本のボルト100で一体的に締結・固定している。
このように、電制式のスロットルバルブ28を備えた空気量制御部2Aは、そのエアクリーナ側の接合端面が単ボア用2孔式と2ボア用4孔式の両方のエアクリーナ4A,4Bに接続することができ、また、単ボア用の燃料供給部3Aと2ボア用の燃料供給部3Bの両方にそのまま接続することができる。また、図示は省略するが、機械式のスロットルバルブ29を有した空気量制御部2Bを組み合わせる場合も同様である。
上述したように、従来、表1上段に記載した4タイプのエンジンに燃料供給装置を設ける場合は専用の4つのスロットルボディが必要であったのに対し、本発明による燃料供給装置においては、表1下段に記載したように2つの空気系部品と2つの燃料供給系部品を組み合わせて対応する構成であることから、単純計算で各部品の生産数量は倍になるため、生産コストの大幅な低減効果が期待できるものであり、且つ、既存のエンジンにおける吸気マニホルド及びエアクリーナがそのまま使用できるというメリットもある。
また、上述した4タイプのエンジンの生産数量が均等であることは稀であるため、数量の少ないものにあってはスロットルボディの金型を初めとする製造設備の償却が進みにくくなるというリスクがあったが、本発明による組み合わせ方式を採用すれば、前記リスクは単純計算で2分の1になるため、長期的な意味における製造コストの削減効果も大いに期待できるものである。
以上、述べたように、本発明により多様な2気筒汎用エンジンに対し燃料噴射システムを低コストで適用できるようになった。