以下で、図面を参照して、本発明の実施形態による反射防止膜、反射防止膜の製造方法、反射防止膜を形成するための型および型の製造方法を説明する。なお、本発明は以下で例示する実施形態に限られない。以下の図面において、実質的に同じ機能を有する構成要素は共通の参照符号で示し、その説明を省略することがある。
図1および図2を参照して、本発明の実施形態による型の製造方法を説明する。
まず図1を参照する。図1(a)〜(d)は、本発明の実施形態によるモスアイ用型100の製造方法を説明するための模式的な断面図である。図1(a)は、アルミニウム基材12の模式的な断面図であり、図1(b)は、反転されたアンチグレア構造を有するアルミニウム基材12の表面構造を模式的に示す断面図であり、図1(c)は、アルミニウム基材12の表面に無機材料層16およびアルミニウム膜18を形成することによって得られる型基材10の模式的な断面図であり、図1(d)は、反転されたアンチグレア構造と、反転されたアンチグレア構造に重畳された反転されたモスアイ構造とを有するモスアイ用型100の模式的な断面図である。図1(d)は、図1(c)の一部分(破線に挟まれた領域)に対応する断面図である。
本明細書において、型基材とは、型の製造工程において、陽極酸化およびエッチングされる対象をいう。また、アルミニウム基材とは、自己支持が可能なバルク状のアルミニウムをいう。
図1には、モスアイ用型100の一部を拡大して示すが、本発明の実施形態によるモスアイ用型100は、例えば円筒状(ロール状)である。国際公開第2011/105206号に開示されているように、円筒状のモスアイ用型を用いると、ロール・ツー・ロール方式により反射防止膜を効率良く製造することができる。参考のために、国際公開第2011/105206号の開示内容の全てを本明細書に援用する。以下では円筒状の型を例に説明するが、本発明の実施形態による型は、円筒状に限られない。
まず、図1(a)に示すように、円筒状の基材12を用意する。円筒状の基材12は、例えばアルミニウムで形成されている。以下では、アルミニウム基材12の例を説明する。アルミニウム基材12には、機械的な鏡面加工が施されている。円筒状のアルミニウム基材12は、例えば、Al−Mg−Si系のアルミニウム合金で形成されている。
アルミニウム基材12としては、アルミニウムの純度が99.50mass%以上99.99mass%未満である比較的剛性の高いアルミニウム基材を用いる。アルミニウム基材12に含まれる不純物としては、鉄(Fe)、ケイ素(Si)、銅(Cu)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、鉛(Pb)、スズ(Sn)およびマグネシウム(Mg)からなる群から選択された少なくとも1つの元素を含むことが好ましく、特にMgが好ましい。エッチング工程におけるピット(窪み)が形成されるメカニズムは、局所的な電池反応であるので、理想的にはアルミニウムよりも貴な元素を全く含まず、卑な金属であるMg(標準電極電位が−2.36V)を不純物元素として含むアルミニウム基材12を用いることが好ましい。アルミニウムよりも貴な元素の含有率が10ppm以下であれば、電気化学的な観点からは、当該元素を実質的に含んでいないと言える。Mgの含有率は、全体の0.1mass%以上であることが好ましく、約3.0mass%以下の範囲であることがさらに好ましい。Mgの含有率が0.1mass%未満では十分な剛性が得られない。一方、含有率が大きくなると、Mgの偏析が起こり易くなる。モスアイ用型を形成する表面付近に偏析が生じても電気化学的には問題とならないが、Mgはアルミニウムとは異なる形態の陽極酸化膜を形成するので、不良の原因となる。不純物元素の含有率は、アルミニウム基材12の形状、厚さおよび大きさに応じて、必要とされる剛性に応じて適宜設定すればよい。例えば圧延加工によって板状のアルミニウム基材12を作製する場合には、Mgの含有率は約3.0mass%が適当であるし、押出加工によって円筒などの立体構造を有するアルミニウム基材12を作製する場合には、Mgの含有率は2.0mass%以下であることが好ましい。Mgの含有率が2.0mass%を超えると、一般に押出加工性が低下する。
機械的な鏡面加工としては、バイト切削が好ましい。アルミニウム基材12の表面に、例えば砥粒が残っていると、砥粒が存在する部分において、アルミニウム膜18とアルミニウム基材12との間で導通しやすくなる。砥粒以外にも、凹凸が存在するところでは、アルミニウム膜18とアルミニウム基材12との間で局所的に導通しやすくなる。アルミニウム膜18とアルミニウム基材12との間で局所的に導通すると、アルミニウム基材12内の不純物とアルミニウム膜18との間で局所的に電池反応が起こる可能性がある。
円筒状のアルミニウム基材12は、典型的には、熱間押出し法によって形成される。熱間押出し法には、マンドレル法とポートホール法があるが、マンドレル法で形成されたアルミニウム基材12を用いることが好ましい。ポートホール法で形成された円筒状のアルミニウム基材12には外周面に継ぎ目(ウェルドライン)が形成され、継ぎ目がモスアイ用型100に反映される。したがって、モスアイ用型100に求められる精度によっては、マンドレル法で形成されたアルミニウム基材12を用いることが好ましい。
なお、ポートホール法で形成されたアルミニウム基材12に対して、冷間引抜き加工を施すことにより、継ぎ目の問題を解消することができる。もちろん、マンドレル法で形成されたアルミニウム基材12に対しても、冷間引抜き加工を施してもよい。
次に、アルミニウム基材12の表面に投射材を吹き付けることによって、図1(b)に示すように、アルミニウム基材12の表面12sに反転されたアンチグレア構造を形成する。投射材を吹き付けることによって形成された反転されたアンチグレア構造は、複数の第1凹部12aを有する。
ここで、図2を参照して、アルミニウム基材12の表面12sに反転されたアンチグレア構造を形成する方法を説明する。図2は、本発明の実施形態によるモスアイ用型100の製造工程の内、アルミニウム基材12の表面に投射材を吹き付けることによって、反転されたアンチグレア構造を形成する工程(吹き付け処理工程ということがある。)を説明するための模式的な図である。
まず、図1(a)に示したアルミニウム基材12を用意する。円筒状のアルミニウム基材は、例えば、長軸方向が鉛直方向とほぼ平行となるように立てて配置される。
次に、ノズル82からアルミニウム基材12の表面に向かって、投射材を吹き付けることによって、アルミニウム基材12の表面に反転されたアンチグレア構造を形成する。投射材は略球状であり、投射材はアルミナ粒子を含み、投射材の平均粒径は10μm以上40μm以下である。
投射材の条件に加えて、投射材を吹き付ける条件を調節することで、アルミニウム基材12の表面に形成される反転されたアンチグレア構造の形状を変化させることができる。例えば、投射材を吹き付ける工程において、アルミニウム基材12を、アルミニウム基材12の長軸を中心に回転させてもよい。これにより、アルミニウム基材12の表面(円筒状のアルミニウム基材12の側面)にむらなく投射材を吹き付けることができ、アルミニウム基材12の表面にむらなく反転されたアンチグレア構造を形成することができる。図2では、アルミニウム基材12が、アルミニウム基材12の長軸を中心に回転する速度をvrとして示している。例えば、ノズル82をアルミニウム基材12の長軸方向に沿って移動させてもよい。図2では、ノズル82が、アルミニウム基材12の長軸方向に沿って移動する速度をvvとして示している。
投射材を吹き付ける条件は、例えば、ノズル82からアルミニウム基材12の表面までの距離d、投射材の吐出圧力およびノズル82の移動速度vvを含む。アルミニウム基材12の回転速度vrおよび投射材を吹き付ける時間は、処理面積(アルミニウム基材12の表面の内、吹き付け処理を施す面積)に応じて適宜調整される。
本発明の実施形態において、投射材の平均粒径は10μm以上35μm未満であってもよい。投射材の粒度分布は、例えば、平均粒径から±10%以内の範囲内にピークを有してもよい。
吹き付け処理によって形成された反転されたアンチグレア構造については、実験例を参照して後述する。
次に、図1(c)に示すように、アルミニウム基材12の表面に無機材料層16を形成し、無機材料層16の上にアルミニウム膜18を形成することによって、型基材10を作製する。
アルミニウム膜18の表面には、アルミニウム基材12の表面に吹き付け処理を行うことによって形成された反転されたアンチグレア構造を反映した構造が形成されている。なお、アルミニウム膜18の表面18sに形成された反転されたアンチグレア構造は、アルミニウム基材12の表面12sに形成された反転されたアンチグレア構造よりもなだらかである。ここでは、アルミニウム膜18に形成された構造も反転されたアンチグレア構造という。アルミニウム膜18の表面に形成された反転されたアンチグレア構造は、複数の第3凹部18aを有する。複数の第3凹部18aおよび複数の第1凹部12aの詳細については、図4を参照して後述する。
無機材料層16の材料としては、例えば酸化タンタル(Ta2O5)または二酸化シリコン(SiO2)を用いることができる。無機材料層16は、例えばスパッタ法により形成することができる。無機材料層16として、酸化タンタル層を用いる場合、酸化タンタル層の厚さは、例えば、200nmである。
無機材料層16の厚さは、100nm以上500nm未満であることが好ましい。無機材料層16の厚さが100nm未満であると、アルミニウム膜18に欠陥(主にボイド、すなわち結晶粒間の間隙)が生じることがある。また、無機材料層16の厚さが500nm以上であると、アルミニウム基材12の表面状態によって、アルミニウム基材12とアルミニウム膜18との間が絶縁されやすくなる。アルミニウム基材12側からアルミニウム膜18に電流を供給することによってアルミニウム膜18の陽極酸化を行うためには、アルミニウム基材12とアルミニウム膜18との間に電流が流れる必要がある。円筒状のアルミニウム基材12の内面から電流を供給する構成を採用すると、アルミニウム膜18に電極を設ける必要がないので、アルミニウム膜18を全面にわたって陽極酸化できるとともに、陽極酸化の進行に伴って電流が供給され難くなるという問題も起こらず、アルミニウム膜18を全面にわたって均一に陽極酸化することができる。
また、厚い無機材料層16を形成するためには、一般的には成膜時間を長くする必要がある。成膜時間が長くなると、アルミニウム基材12の表面温度が不必要に上昇し、その結果、アルミニウム膜18の膜質が悪化し、欠陥(主にボイド)が生じることがある。無機材料層16の厚さが500nm未満であれば、このような不具合の発生を抑制することもできる。
アルミニウム膜18は、例えば、国際公開第2011/125486号に記載されているように、純度が99.99mass%以上のアルミニウムで形成された膜(以下、「高純度アルミニウム膜」ということがある。)である。アルミニウム膜18は、例えば、真空蒸着法またはスパッタ法を用いて形成される。アルミニウム膜18の厚さは、約500nm以上約1500nm以下の範囲にあることが好ましく、例えば、約1μmである。参考のために、国際公開第2011/125486号の開示内容の全てを本明細書に援用する。
また、アルミニウム膜18として、高純度アルミニウム膜に代えて、国際公開第2013/183576号に記載されている、アルミニウム合金膜を用いてもよい。国際公開第2013/183576号に記載のアルミニウム合金膜は、アルミニウムと、アルミニウム以外の金属元素と、窒素とを含む。本明細書において、「アルミニウム膜」は、高純度アルミニウム膜だけでなく、国際公開第2013/183576号に記載のアルミニウム合金膜を含むものとする。参考のために、国際公開第2013/183576号の開示内容の全てを本明細書に援用する。
上記アルミニウム合金膜を用いると、反射率が80%以上の鏡面を得ることができる。アルミニウム合金膜を構成する結晶粒の、アルミニウム合金膜の法線方向から見たときの平均粒径は、例えば、100nm以下であり、アルミニウム合金膜の最大表面粗さRmaxは60nm以下である。アルミニウム合金膜に含まれる窒素の含有率は、例えば、0.5mass%以上5.7mass%以下である。アルミニウム合金膜に含まれるアルミニウム以外の金属元素の標準電極電位とアルミニウムの標準電極電位との差の絶対値は0.64V以下であり、アルミニウム合金膜中の金属元素の含有率は、1.0mass%以上1.9mass%以下であることが好ましい。金属元素は、例えば、TiまたはNdである。但し、金属元素はこれに限られず、金属元素の標準電極電位とアルミニウムの標準電極電位との差の絶対値が0.64V以下である他の金属元素(例えば、Mn、Mg、Zr、VおよびPb)であってもよい。さらに、金属元素は、Mo、NbまたはHfであってもよい。アルミニウム合金膜は、これらの金属元素を2種類以上含んでもよい。アルミニウム合金膜は、例えば、DCマグネトロンスパッタ法で形成される。アルミニウム合金膜の厚さも約500nm以上約1500nm以下の範囲にあることが好ましく、例えば、約1μmである。
反転されたアンチグレア構造を形成した後、陽極酸化とエッチングとを交互に繰り返し、反転されたモスアイ構造を形成することによって、図1(d)に示すモスアイ用型100が得られる。すなわち、反転されたモスアイ構造を形成するプロセスは、アルミニウム膜18の表面を陽極酸化することによって、複数の第2凹部14pを有するポーラスアルミナ層14を形成する工程と、その後に、ポーラスアルミナ層14を、エッチング液に接触させることによって、ポーラスアルミナ層14の複数の第2凹部14pを拡大させる工程と、その後に、さらに陽極酸化することによって、複数の第2凹部14pを成長させる工程とを包含する。陽極酸化に用いる電解液は、例えば、蓚酸、酒石酸、燐酸、硫酸、クロム酸、クエン酸およびリンゴ酸からなる群から選択される酸を含む水溶液である。エッチング液として、蟻酸、酢酸、クエン酸などの有機酸や硫酸の水溶液、クロム酸燐酸混合水溶液、または水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリの水溶液を用いることができる。
陽極酸化とエッチングとを繰り返す一連の工程は、陽極酸化工程で終わることが好ましい。陽極酸化工程で終わる(その後のエッチング工程を行わない)ことによって、第2凹部14pの底部を小さくすることができる。このような反転されたモスアイ構造を形成する方法は、例えば、特許文献3に開示されている。
例えば、陽極酸化工程(電解液:蓚酸水溶液(濃度0.3mass%、液温10℃)、印加電圧:80V、印加時間:55秒間)とエッチング工程(エッチング液:燐酸水溶液(10mass%、30℃)、エッチング時間:20分間)とを交互に複数回(例えば5回:陽極酸化を5回とエッチングを4回)繰り返すことによって、図1(d)に示すように、第2凹部14pを有するポーラスアルミナ層14を有するモスアイ用型100が得られる。ここで例示した条件で形成されたポーラスアルミナ層14は、Dp=Dintが10nm以上500nm未満で、深さが10nm以上1000nm(1μm)未満程度の第2凹部14pが密に不規則に配列した構造を有している。第2凹部14pは略円錐状であり、鞍部を形成するように隣接している。
なお、第2凹部14pの下には、バリア層が形成されており、ポーラスアルミナ層14は、第2凹部14pを有するポーラス層と、ポーラス層の下(アルミニウム膜側)に存在するバリア層(凹部14pの底部)とから構成されている。隣接する第2凹部14pの間隔(中心間距離)は、バリア層の厚さのほぼ2倍に相当し、陽極酸化時の電圧にほぼ比例することが知られている。また、ポーラスアルミナ層14の下には、アルミニウム膜18のうち、陽極酸化されなかったアルミニウム残存層18rが存在している。
図1(d)に模式的に示したように、第2凹部14pで構成される反転されたモスアイ構造は、反転されたアンチグレア構造に重畳されて形成される。第2凹部14pの「2次元的な大きさ」とは、表面の法線方向から見たときの凹部の面積円相当径を指す。例えば、凹部が円錐形の場合には、凹部の2次元的な大きさは、円錐の底面の直径に相当する。凸部の「2次元的な大きさ」も同様である。図1(d)に例示したように、第2凹部(微細な凹部)14pが密に配列されており、隣接する第2凹部14p間に間隙が存在しない(例えば、円錐の底面が部分的に重なる)場合には、互いに隣接する2つの第2凹部14pの平均隣接間距離Dint(隣接する第2凹部14pの中心間距離)は、第2凹部14pの2次元的な大きさDpとほぼ等しい。
このようにして、モスアイ用型100を製造することができる。後に実験例を示すように、本発明の実施形態によるモスアイ用型100によると、クリア性を保ちつつ、防眩性を発現し、かつ、斜め視角から見たときに白濁して見えることが抑制された反射防止膜を形成することができる。本発明の実施形態によるモスアイ用型100の製造方法によると、クリア性を保ちつつ、防眩性を発現し、かつ、斜め視角から見たときに白濁して見えることが抑制された反射防止膜を形成するための型を効率よく得ることができる。反射防止膜が「斜め視角から見たときに白濁して見える」とは、反射防止膜を斜め視角から見たときに白茶けて見えること(斜め白茶け)、および/または、反射防止膜を斜め視角から見たときに白っぽく見えることを指してもよい。
特許文献5は、アルミニウム基材の表面をブラスト処理した後、ブラスト処理されたアルミニウム基材の表面を陽極酸化することによる型の製造方法を開示している。特許文献5の型の製造方法において陽極酸化される対象は、アルミニウム基材であり、アルミニウム基材上に無機材料層およびアルミニウム膜を有しない。特許文献5の型の製造方法においては、投射材(特許文献5では「ブラスト処理に使用する研磨材」と呼ばれている。)として、鋭利な形状を有しない球状の投射材を用いることで、反射防止性および防眩性を有し、かつ、ぎらつきの発生が抑制された反射防止膜を形成するための型が得られると記載されている。特許文献5の実施例では、鋭利な形状を有しない球状の投射材としてガラスビーズが用いられている。特許文献5には、投射材の中心粒径は35μm〜150μmが好ましいことが記載されている。
しかしながら、本発明者の検討によると、特許文献5の方法で製造した型を用いて作製しても、得られた反射防止膜においては、斜め視角から見たときに白濁して見えることが抑制されないことが分かった。本発明者は、種々検討した結果、以下の方法で型を製造することによって、クリア性を保ちつつ、防眩性を発現し、かつ、斜め視角から見たときに白濁して見えることが抑制された反射防止膜を形成するための型を得ることができることに想到した。まず、アルミニウム基材12の表面に、略球状であり、アルミナ粒子を含み、平均粒径が10μm以上40μm以下である投射材を用いて吹き付け処理を行うことによってアルミニウム基材12の表面に反転されたアンチグレア構造を形成し、その後、アルミニウム基材12の上にアルミニウム膜18を形成する。これにより、アルミニウム膜18の表面(すなわち型基材10の表面)になだらかな反転されたアンチグレア構造を形成することができるので、クリア性を保ちつつ、防眩性を発現し、かつ、斜め視角から見たときに白濁して見えることが抑制された反射防止膜を形成するための型を得ることができる。
本発明の実施形態によるモスアイ用型100の製造方法において、アルミニウム基材12の表面の吹き付け処理に用いる投射材の平均粒径は、特許文献5の製造方法に比べて小さい。従って、アルミニウム基材12の表面にアルミニウム膜18を形成することによって、型基材10の表面の反転されたアンチグレア構造をなだらかにする効果が顕著にあらわれる。
さらに、本発明の実施形態によるモスアイ用型100は以下の利点を有する。上述したように、アルミニウム基材12の表面には、継ぎ目(ウェルドライン)や切削痕が形成されていることがある。例えばポートホール法で形成された円筒状のアルミニウム基材の表面には継ぎ目が形成され得る。また、加工変質層の形成を伴う鏡面加工(例えばバイト切削)が施されたアルミニウム基材の表面には切削痕が形成されることがある。本発明の実施形態によるモスアイ用型100においては、アルミニウム基材12上にアルミニウム膜18が形成される。アルミニウム膜18の表面には、アルミニウム基材12の表面に形成された継ぎ目や切削痕が反映され得るが、アルミニウム膜18の表面(すなわち型基材10の表面)に反映される継ぎ目や切削痕は、アルミニウム基材12の表面に形成されているものよりもなだらかになり、目立ち難い。また、本発明の実施形態によるモスアイ用型100の製造方法においては、アルミニウム膜18の表面に投射材を吹き付けないので、投射材によってアルミニウム膜18が局所的に破壊されることがない。従って、アルミニウム膜18の厚さを小さくすることができる(例えば約500nm以上約1500nm以下)。
続いて、図3を参照して、モスアイ用型100を用いた反射防止膜の製造方法を説明する。図3は、ロール・ツー・ロール方式により反射防止膜を製造する方法を説明するための模式的な断面図である。
まず、円筒状のモスアイ用型100を用意する。なお、円筒状のモスアイ用型100は、上述の製造方法で製造される。
図3に示すように、紫外線硬化樹脂32’が表面に付与された被加工物42を、モスアイ用型100に押し付けた状態で、紫外線硬化樹脂32’に紫外線(UV)を照射することによって紫外線硬化樹脂32’を硬化する。紫外線硬化樹脂32’としては、例えばアクリル系樹脂を用いることができる。被加工物42は、例えば、TAC(トリアセチルセルロース)フィルムである。被加工物42は、図示しない巻き出しローラから巻き出され、その後、表面に、例えばスリットコータ等により紫外線硬化樹脂32’が付与される。被加工物42は、図3に示すように、支持ローラ46および48によって支持されている。支持ローラ46および48は、回転機構を有し、被加工物42を搬送する。また、円筒状のモスアイ用型100は、被加工物42の搬送速度に対応する回転速度で、図3に矢印で示す方向に回転される。
その後、被加工物42からモスアイ用型100を分離することによって、モスアイ用型100の凹凸構造(反転されたモスアイ構造および反転されたアンチグレア構造)が転写された硬化物層32が被加工物42の表面に形成される。表面に硬化物層32が形成された被加工物42は、図示しない巻き取りローラにより巻き取られる。
なお、紫外線硬化樹脂32’が表面に付与された被加工物42をモスアイ用型100に押し付ける前に、モスアイ用型100の表面に離型剤を付与することによってモスアイ用型100に離型処理を施してもよい。
離型剤としては、(パー)フルオロポリエーテル基と、加水分解可能な基(例えば、アルコキシ基)と、Si原子とを有する化合物であることが好ましい。さらに、離型剤としては、少なくとも1つの化合物(パーフルオロポリエーテル系化合物)に加えて、パーフルオロアルキル系化合物を含んでいてもよい。パーフルオロアルキル系化合物としては、例えば、C8F17CH2CH2Si(OMe)3、C6F13CH2CH2Si(OMe)3、C4F9CH2CH2Si(OMe)3等が挙げられる。このような離型剤をモスアイ用型100の表面に付与しておくと、紫外線硬化樹脂32’に紫外線を照射した後に、硬化物層32からモスアイ用型100を容易に剥離することができる。
上述したロール・ツー・ロール方式で反射防止膜32を形成するとき、反射防止膜32を形成するフィルム基材(TACフィルムまたはPETフィルム)42と、反射防止膜32との密着性を向上させるために、以下のような工程を経ることが好ましい。
TACフィルム上に、溶剤を含む紫外線硬化性樹脂(例えばアクリル樹脂)を付与する(厚さは例えば2μm〜20μm)。このとき、溶剤は、TACフィルムの表面を溶解するもの(例えばケトン系)を選択する。溶剤がTACフィルムの表面を溶解することによって、TACと紫外線硬化性樹脂とが混合した領域が形成される。
この後、溶剤を除去し、モスアイ用型の外周面に、紫外線硬化性樹脂が密着するように、TACフィルムを巻きつける。
続いて、紫外線を照射し、紫外線硬化性樹脂を硬化させる。このとき、紫外線硬化性樹脂の温度を30℃から70℃に保持する。
その後、TACフィルムをモスアイ用型から剥離し、必要に応じて、紫外線を再度照射する。
後述する図8(a)に示すように、TACフィルム上にハードコート層を形成する場合には、ハードコート層を形成する材料に、TACフィルムの表面を溶解する溶剤を含有させておいてもよい。この場合、反射防止膜を形成するための紫外線硬化性樹脂に溶剤を含有させる必要はない。
また、PETフィルムを用いる場合には、紫外線硬化性樹脂を付与する前に、水系のプライマー(例えば、ポリエステル系樹脂やアクリル系樹脂)の層(厚さ2μm〜20μm)を形成することが好ましい。この場合も、反射防止膜を形成するための紫外線硬化性樹脂に溶剤を含有させる必要はない。
以下に、実験例を示して、本発明の実施形態によるモスアイ用型およびモスアイ用型の製造方法をさらに詳細に説明する。
[アルミニウム小片を用いた実験]
図4(a)および(b)を参照して、吹き付け処理によってアルミニウム基材12の表面に形成された反転されたアンチグレア構造を説明する。アルミニウム小片の表面に吹き付け処理工程を施すことによって、反転されたアンチグレア構造を形成した。図4(a)および(b)は、投射材を吹き付けることによって形成された反転されたアンチグレア構造を有するアルミニウム小片の表面のSEM像(SEM像中のフルスケール20.0μm)である。
図4(a)および(b)は、鏡面加工が施されたアルミニウム小片の表面に形成された、反転されたアンチグレア構造である。図1(a)のアルミニウム基材12に相当するアルミニウム小片の表面に反転されたアンチグレア構造を形成した。ここでは、Al−Mg−Si系のアルミニウム合金として、JIS A6063で形成され、厚さ15mm、約5cm角のアルミニウム小片を用いた。JIS A6063は、下記の組成(mass%)を有している。
Si:0.20〜0.60%、Fe:0.35%以下、Cu:0.10%以下、Mn:0.10%以下、Mg:0.45〜0.9%、Cr:0.10%以下、Zn:0.10%以下、Ti:0.10%以下、その他:個々は0.05%以下で、全体は0.15%以下、残部:Al
条件を変えて吹き付け処理を行うことにより、図4(a)の反転されたアンチグレア構造および図4(b)の反転されたアンチグレア構造を得た。図4(a)および(b)の反転されたアンチグレア構造を得るために行った吹き付け処理工程の条件(投射材を吹き付ける条件および投射材の種類)は、表6に示す。表6には、明細書中の実験例の吹き付け処理工程の条件および吹き付け処理を行った対象(すなわちアルミニウム基材12)のアルミニウムの種類をまとめて示している。
図4(a)および(b)のSEM像から分かるように、アルミニウム基材12の表面に投射材を吹き付けることによって形成された反転されたアンチグレア構造は、複数の第1凹部12aを有する。複数の第1凹部12aの配置に規則性は見られない。また、複数の第1凹部12aの2次元的な大きさの分布が広いことが分かる。ここで、第1凹部12aの「2次元的な大きさ」とは、面積円相当径を指す。図4(a)のSEM像からは、複数の第1凹部12aの2次元的な大きさは、2μm〜10μmにおよび、複数の第1凹部12aの2次元的な大きさの平均は5μm、複数の第1凹部12aの隣接間距離(隣接する第1凹部12aの中心間距離)は2μm以上10μm以下と見積もることができる。図4(b)のSEM像からは、複数の第1凹部12aの2次元的な大きさは、5μm〜20μmにおよび、複数の第1凹部12aの2次元的な大きさの平均は10μm、複数の第1凹部12aの隣接間距離(隣接する第1凹部12aの中心間距離)は1μm以上10μm以下と見積もることができる。
例えば、図4(a)の反転されたアンチグレア構造が有する複数の第1凹部12aの2次元的な大きさは、投射材の平均粒径よりも小さい。図4(b)の反転されたアンチグレア構造において、複数の第1凹部12aの2次元的な大きさの平均は、投射材の平均粒径よりも小さい。
第1凹部12aは、例えば図1(b)に模式的に示すように、密に不規則に配列され、反転されたアンチグレア構造は、第1凹部12a間に平坦な部分を有しない。アルミニウム基材12の表面に投射材を吹き付けることによって形成された反転されたアンチグレア構造を有する表面12sの算術平均粗さRaは、例えば0.05μm以上0.3μm以下である。
図1(c)を参照して説明したように、反転されたアンチグレア構造を有するアルミニウム基材12の表面に無機材料層16を形成し、無機材料層16の上にアルミニウム膜18を形成する。これにより、アルミニウム膜18の表面18sに、アルミニウム基材12の表面12sの反転されたアンチグレア構造が反映された構造が形成される。アルミニウム膜18は、複数の第3凹部18aを含む反転されたアンチグレア構造を有する。複数の第3凹部18aは、複数の第1凹部12aを反映しているので、複数の第3凹部18aの形状(例えば、2次元的な大きさ、深さ、隣接間距離等)は、複数の第1凹部12aのそれと同じであり得る。ただし、アルミニウム膜18の表面18sに形成された反転されたアンチグレア構造は、アルミニウム基材12の表面12sに形成された反転されたアンチグレア構造よりもなだらかである。例えば、複数の第3凹部18aが有する稜線は、複数の第1凹部12aが有する稜線よりも緩やかである(尖っていない)。従って、反転されたアンチグレア構造を有するアルミニウム膜18の表面18sは、反転されたアンチグレア構造を有するアルミニウム基材12の表面12sよりもなだらかである。例えば、アルミニウム膜18の表面18sの表面粗さは、アルミニウム基材12の表面12sの表面粗さよりも小さくてもよい。
複数の第3凹部18aの2次元的な大きさも、面積円相当径を指す。第3凹部18aが反転された凸部の「2次元的な大きさ」も同様である。
本発明の実施形態による型が有する反転されたアンチグレア構造において、複数の第3凹部18aの2次元的な大きさは、例えば1μm以上12μm以下であり、例えば3μm以上12μm以下であってもよい。複数の第3凹部18aの深さは、例えば1μm以上4μm以下である。複数の第3凹部18aの、2次元的な大きさに対する深さのアスペクト比は、例えば0.05以上0.5以下である。
[吹き付け処理工程の条件の検討]
クリア性を保ちつつ、防眩性を発現し、かつ、斜め視角から見たときに白濁して見えることが抑制された反射防止膜を形成するための型を製造するのに適した吹き付け処理工程の条件(投射材を吹き付ける条件および投射材の種類)の検討を行った。
アルミニウム基材12の表面に吹き付け処理工程を行うことで、表面に反転されたアンチグレア構造を有するアルミニウム基材12を製造した。ここでは、アルミニウム基材12上に無機材料層およびアルミニウム膜を形成せずに型試料を作製した。アルミニウム基材12の表面に施す吹き付け処理工程の条件を変えて型試料を製造し、型試料の表面には、離型剤を塗布することで、離型処理を施した。離型処理は、具体的には以下のように行った。まず、離型剤(ダイキン工業株式会社製のオプツールDSX)をフロロテクノロジー社製の「S−135」で希釈した希釈液を作製した。希釈液中の離型剤の濃度は0.1%であった。そして、型試料を離型剤の希釈液に3分間浸漬することによって、型試料の表面に離型剤を付与した。その後、離型剤が表面に塗布された型試料に対して、150℃で1時間アニールを行い、フロロテクノロジー社製の「S−135」で3分間リンスした。離型処理の後、型試料の表面にアクリル系の紫外線硬化樹脂を塗布し、TACフィルム上に転写した状態で紫外線を照射して硬化させた。得られたアンチグレア構造を有する試料フィルムNo.1〜No.4について、アンチグレア機能を評価した。
ここで用いた試料フィルムのように、モスアイ構造を有さず、アンチグレア構造だけを有する膜を、アンチグレア膜ということがある。アンチグレア膜No.1〜No.4を得るための型試料に施された吹き付け処理工程の条件は、表6に示す。
表1に、アンチグレア膜No.1〜No.4について、アンチグレア機能を評価した結果を示す。
表1中の「ぎらつき」、「モアレ」および「白濁感」は、反射防止フィルムを、液晶テレビ(AQUOS LC−60UD1、シャープ株式会社製、60インチ)のディスプレイパネルの観察者側の表面に貼りつけ、目視による主観評価を行った結果である。主観評価は、10人に対して聞き取りを行うことで行った。「ぎらつき」は、表面の法線方向から見たときに、表示面のぎらつきが気になるか否かを評価した結果を示す。「モアレ」は、表面の法線方向から見たときに、表示面にモアレが発生しているか否かを評価した結果を示す。「白濁感」は、表面の法線方向からの極角80°から見たときに、反射防止フィルムが白濁して(白茶けて)見えるか否かを評価した結果である。
表1中の「反射防止フィルムのヘイズ値」は、反射防止フィルムのヘイズ値を日本電色工業株式会社製の積分球式濁度計NDH−2000を用いて測定した結果である。投光は平行光とした。直進透過光と拡散透過光との和を全光線透過光とし、全光線透過光に対する拡散透過光の比をヘイズ値とした。
表1中の「型の表面の算術平均粗さRa」は、型の表面の算術平均粗さRaを表面粗さ測定機(株式会社東京精密製、製品名:サーフコム480A)を用いて測定した結果である。
アンチグレア膜No.1およびNo.2においては、斜め視角から見たときに白濁して見えることが抑制され、かつ、正面方向から見たときのぎらつきの発生が抑制されていた。アンチグレア膜No.3は、アンチグレア膜No.1およびNo.2よりも大きいヘイズ値を有し、斜め視角から見たときに白濁して見えた。
アンチグレア膜No.3とアンチグレア膜No.4とを比較すると、型の表面の算術平均粗さRaが同程度であるにもかかわらず、ぎらつきの発生を抑制する効果において違いがみられた。ぎらつきの発生を抑制するためには、投射材としてアルミナ粒子を用いることが好ましい可能性が考えられる。あるいは、ここで用いた投射材の平均粒径を比較すると、ガラスビーズの方がアルミナ粒子よりも大きい平均粒径を有するので、ぎらつきの発生を抑制できなかった可能性も考えられる。表6に示すように、アンチグレア膜No.1〜3を形成するための型試料を製造するために用いたアルミナ粒子の平均粒径は17μmであったのに対し、アンチグレア膜No.4を形成するための型試料を製造するために用いたガラスビーズの平均粒径は23μmであった。
また、投射材としてアルミナ粒子を用いたアンチグレア膜No.1〜No.3の結果から、反射防止フィルムのヘイズ値と、型の表面の算術平均粗さRaとの間に相関関係があることが分かった。
[本発明の実施形態による反射防止膜の作製]
上記表1に示す結果を参照することにより吹き付け処理工程の条件を決定し、実施例1の反射防止フィルムと参考例1の反射防止フィルムとを作製した。
図5および表2を参照して、本発明の実施形態による反射防止膜の特性を説明する。図5(a)および(b)は、実施例1の反射防止フィルム(中央)と、参考例1の反射防止フィルム(右)と、比較例1の反射防止フィルム(左)とを表面に貼り付けた表示パネル(液晶テレビ、製品名:AQUOS LC−60UD1、シャープ株式会社製、60インチ)の光学像を示す図であり、図5(a)は、表面の法線方向から見た光学像を示す図であり、図5(b)は、斜め視角(極角60°)から見た光学像を示す図である。
実施例1および参考例1の反射防止フィルムは、図1および図2を参照して説明した方法で製造されたモスアイ用型100を用いて、図3を参照して説明した方法で形成した。実施例1の反射防止フィルムを形成するためのモスアイ用型は、上述したアンチグレア膜No.2を形成するための型試料に施された吹き付け処理工程と同じ条件で吹き付け処理を行うことで得られ、参考例1の反射防止フィルムを形成するためのモスアイ用型は、上述したアンチグレア膜No.3を形成するための型試料に施された吹き付け処理工程と同じ条件で吹き付け処理を行うことで得られた。
実施例1および参考例1の反射防止フィルムは、後述する図8(a)に示す反射防止フィルム50と同様の構造を有する。すなわち、実施例1および参考例1の反射防止フィルムは、ベースフィルム(TACフィルム)と、ベースフィルム上に形成されたハードコート層と、表面にアンチグレア構造およびモスアイ構造を有する反射防止膜とを有する。
比較例1の反射防止フィルムは、現在市販されている、反射防止機能およびアンチグレア機能を有する反射防止フィルムである。比較例1の反射防止フィルムは、モスアイ構造を有しない。
表2に、実施例1の反射防止フィルム、参考例1の反射防止フィルムおよび比較例1の反射防止フィルムについて、反射防止機能およびアンチグレア機能を評価した結果を示す。
表2中、「映り込み像のぼかし」および「白濁感」は、目視による主観評価であり、「ヘイズ値」、「20度鏡面光沢度」、「60度鏡面光沢度」および「85度鏡面光沢度」は、測定結果である。主観評価は、10人に対して聞き取りを行うことで行った。
表2中の「映り込み像のぼかし」は、反射防止フィルムを正面方向(表面の法線方向)から見たとき、反射防止フィルムに映り込んだ像の輪郭のぼかし具合を目視で評価することで反射防止フィルムの防眩性を評価した結果である。「○」は、像の輪郭のぼかし具合が適度であり、クリアな画像が得られることを示す。「◎」は、クリアな画像を得る目的からは、像の輪郭が過度にぼかされていることを示す。ただし、より高いアンチグレア機能を有する反射防止膜として、「◎」である反射防止フィルムを好適に用いることできる場合ももちろんある。
表2中の「白濁感」は、反射防止フィルムが白濁して(白茶けて)見えるか否かを目視で評価した結果である。「正面方向」は、表面の法線方向から見たときの結果であり、「斜め視角」は、表面の法線方向からの極角80°から見たときの結果である。
表2のヘイズ値は、日本電色工業株式会社製の積分球式濁度計NDH−2000を用いて測定した。投光は平行光とした。直進透過光と拡散透過光との和を全光線透過光とし、全光線透過光に対する拡散透過光の比をヘイズ値とした。20度鏡面光沢度、60度鏡面光沢度および85度鏡面光沢度は、フィルムを黒アクリル板に貼り付け、グロス計(スガ試験機株式会社製、製品名:GS−4K)を用いて測定した。
なお、実施例1および参考例1の反射防止フィルムは、図8(a)に示す反射防止フィルム50と同様の構造を有する。すなわち、反射防止フィルム50が有する反射防止膜32の表面構造が反射防止機能およびアンチグレア機能を発現する。従って、実施例1および参考例1の反射防止フィルムについての、表2に示す反射防止機能およびアンチグレア機能の評価結果は、実施例1および参考例1の反射防止膜の反射防止機能およびアンチグレア機能の評価と同等であると考えることができる。
実施例1の反射防止フィルムは、正面方向から見たときの映り込み像の輪郭のぼかし具合が適度であり、これによりクリアな画像が得られる。実施例1の反射防止フィルムは、低いヘイズ値を有する。実施例1の反射防止フィルムは、正面方向から見たときおよび斜め視角からみたときのいずれも白濁して見えない。さらに、実施例1の反射防止フィルムは、モスアイ構造を有しているので、斜め視角から見たときにも反射防止機能を十分に発現する。実施例1の反射防止フィルムは、モスアイ構造を有しているので、優れた黒表示の品位を実現する(すなわち、黒表示状態の輝度が低い)。
これに対して、参考例1の反射防止フィルムは、高いヘイズ値を有するので、正面方向から見たときに白濁して見える。また、参考例1の反射防止フィルムは、斜め視角からみたときにも白濁して見える(斜め白茶け)。また、参考例1の反射防止フィルムは、正面方向から見たときの映り込み像の輪郭が、クリアな画像を得る目的からすると過度にぼかされている。
比較例1の反射防止フィルムは、実施例1の反射防止フィルムよりも低いヘイズ値を有し、正面方向から見たときおよび斜め視角からみたときに白濁して見えることが抑制されている。しかしながら、比較例1の反射防止フィルムはモスアイ構造を有しないので、実施例1の反射防止フィルムに比べて黒表示の品位が低い(すなわち、黒表示状態の輝度が高い)。さらに、比較例1の反射防止フィルムは、モスアイ構造を有しないことにより、斜め視角から見たときの反射防止効果が十分ではない。
このように、本発明の実施形態による反射防止膜は、クリア性を保ちつつ、防眩性を発現し、かつ、斜め視角から見たときに白濁して見えることを抑制することができる。
実施例1の反射防止フィルムの60度鏡面光沢度は4.0であり、85度鏡面光沢度は68.4であり、20度鏡面光沢度は0.1である。実施例1の反射防止フィルムは、比較例1の反射防止フィルムに比べて、60度鏡面光沢度および85度鏡面光沢度が小さい。実施例1の反射防止フィルムは、比較例1の反射防止フィルムに比べて、斜め視角から見たときの防眩性に優れている。図5(b)からも、実施例1の反射防止フィルムは、比較例1の反射防止フィルムに比べて、斜め視角から見たときの映り込みを抑制することが分かる。
参考例1の反射防止フィルムも、比較例1の反射防止フィルムに比べて、60度鏡面光沢度および85度鏡面光沢度が小さい。参考1の反射防止フィルムは、比較例1の反射防止フィルムに比べて、斜め視角から見たときの防眩性に優れている。ただし、参考例1の反射防止フィルムの20度鏡面光沢度は0.05であり、実施例1の反射防止フィルムに比べて小さい。参考例1の反射防止フィルムは、クリア性の観点から実施例1の反射防止フィルムに劣る。
本発明の実施形態による反射防止膜の60度鏡面光沢度は、1.0以上10.0以下であることが好ましく、20度鏡面光沢度は0.01以上1.0以下であることが好ましい。本発明の実施形態による反射防止膜の85度鏡面光沢度は、50.0以上75.0以下であることが好ましい。本発明の実施形態による反射防止膜において、例えば、60度鏡面光沢度を1とすると、20度鏡面光沢度は0.01以上0.1以下であることが好ましい。本発明の実施形態による反射防止膜において、例えば、85度鏡面光沢度を1とすると、20度鏡面光沢度は0.001以上0.005以下であることが好ましい。このような反射防止膜は、クリア性を保ちつつ、防眩性を発現し、かつ、斜め視角から見たときに白濁して見えることを抑制することができる。本発明の実施形態による反射防止膜のヘイズ値は、5以上30以下であることが好ましい。反射防止膜のヘイズ値は、例えば2以上40以下であってもよい。
本発明の実施形態による反射防止膜の製造方法によると、クリア性を保ちつつ、防眩性を発現し、かつ、斜め視角から見たときに白濁して見えることを抑制することができる膜を効率よく作製することができる。本発明の実施形態による反射防止膜の製造方法は、量産性に優れている。
なお、実施例1の反射防止フィルムおよび参考例1の反射防止フィルムを形成するための型は、アンチグレア膜No.2およびアンチグレア膜No.3を形成するための型試料と同じ条件の吹き付け処理工程を行うことにより得られた。実施例1の反射防止フィルムのヘイズ値と、アンチグレア膜No.2のヘイズ値とが異なるのは、モスアイ構造の有無が寄与していると考えられる。参考例1の反射防止フィルムのヘイズ値と、アンチグレア膜No.3のヘイズ値とが異なる理由についても同様である。
図6および図7に、実施例1の反射防止フィルムおよび参考例1の反射防止フィルムのSEM像を示す。図6(a)〜(c)は、実施例1の反射防止フィルムのSEM像であり、図6(a)は、実施例1の反射防止フィルムの表面を垂直方向から観察したときのSEM像(SEM像中のフルスケール10.0μm)であり、図6(b)は、実施例1の反射防止フィルムの断面SEM像(SEM像中のフルスケール3.0μm)であり、図6(c)は、実施例1の反射防止フィルムの断面SEM像(SEM像中のフルスケール500nm)である。図7(a)〜(c)は、参考例1の反射防止フィルムのSEM像であり、図7(a)は、参考例1の反射防止フィルムの表面を垂直方向から観察したときのSEM像(SEM像中のフルスケール10.0μm)であり、図7(b)は、参考例1の反射防止フィルムの断面SEM像(SEM像中のフルスケール3.0μm)であり、図7(c)は、参考例1の反射防止フィルムの断面SEM像(SEM像中のフルスケール500nm)である。
図6(a)および(b)からわかるように、アンチグレア構造にモスアイ構造が重畳して形成されている。アンチグレア構造は、複数の第3凹部18aを有する反転されたアンチグレア構造が反転されることによって形成される。すなわち、アンチグレア構造は、複数の第3凹部18aが反転された第1凸部によって構成される。図6(a)および(b)から、実施例1の反射防止フィルムにおいて、第1凸部の2次元的な大きさは1μm以上5μm以下であり、第1凸部の隣接間距離(隣接する第1凸部の中心間距離)は10μm程度であることが分かる。モスアイ構造は、複数の第2凹部14pを有する反転されたモスアイ構造が反転されることによって形成される。すなわち、モスアイ構造は、複数の第2凹部14pが反転された第2凸部によって構成される。図6(c)から、第2凸部の2次元的な大きさおよび隣接間距離(Dp=Dintに対応)は約200nmであり、高さ(第2凹部14pの深さに対応)の平均は240nmである。
図7(a)から、参考例1の反射防止フィルムにおいて、第1凸部の2次元的な大きさは0.1μm以上2μm以下であり、第1凸部の隣接間距離は1μm以上5μm以下であることが分かる。図7の反射防止膜の第1凸部の隣接間距離は、図6の反射防止膜の第1凸部の隣接間距離よりも小さい。図7(c)から、第2凸部の2次元的な大きさおよび隣接間距離(Dp=Dintに対応)は約200nmであり、高さ(第2凹部14pの深さに対応)の平均は236nmである。
本発明の実施形態による反射防止膜が有するアンチグレア構造において、複数の第1凸部の2次元的な大きさは、例えば1μm以上12μm以下である。複数の第1凸部の高さは、例えば1μm以上4μm以下である。複数の第1凸部の、2次元的な大きさに対する深さのアスペクト比は、例えば0.05以上0.5以下である。
上述したように、本発明の実施形態による反射防止膜は、クリア性を保ちつつ、防眩性を発現し、かつ、斜め視角から見たときに白濁して見えることを抑制することができる。このような効果は、従来の反射防止膜(または反射防止フィルム)では得られなかったことを以下で説明する。
表3を参照して比較例2〜比較例9の反射防止フィルムを説明する。表3に比較例2〜比較例9の反射防止フィルムについて、反射防止機能およびアンチグレア機能を評価した結果を示す。
「映り込み像のぼかし」、「白濁感」および「ヘイズ値」については、表2について説明したのと同様に評価または測定を行った。「映り込み像のぼかし」について「×」は、反射防止フィルムに映り込んだ像の輪郭がほとんどぼかされていないことを示す。すなわち、「映り込み像のぼかし」が「×」である反射防止フィルムは、防眩性を有しない。「斜め視角」の「白濁感」について、「○」は斜め視角における白浮きがないことを示し、「△」は極角70°以上から見たときに若干の白濁感があることを示し、「×」は極角60°程度から見たときに白濁感があることを示す。「正面方向」の「白濁感」は、反射防止フィルムの正面方向から見たときの結果であり、「○」は白濁感がないことを示し、「△」は若干の白濁感があることを示し、「×」は明らかな白濁感があることを示す。
表3中の「タイプ」は、比較例2〜比較例9の反射防止フィルムの構造の種類(タイプ)を示す。図8を参照して説明するように、アンチグレア機能を有する反射防止フィルムは、その構造によって「外部ヘイズタイプ(またはノンフィラータイプ)」と「内部ヘイズタイプ(またはフィラータイプ)」に大別することができる。
図8を参照して反射防止フィルムの種類(タイプ)について説明する。図8(a)および(b)は、それぞれ、アンチグレア機能を有する反射防止フィルムの模式的な断面図である。図8(a)は、表面にアンチグレア構造を有する反射防止フィルム50の模式的な断面図であり、図8(b)は、アンチグレア機能を有する層を表面よりも内側に有する反射防止フィルム950の模式的な断面図である。表3中の「ヘイズ値」は、図8(a)の反射防止フィルム50または図8(b)の反射防止フィルム950をガラス板に貼り付けて測定した。
図8(a)において、反射防止フィルム50は、ベースフィルム(例えばTACフィルム)42と、ハードコート層43と、モスアイ構造およびアンチグレア構造を表面に有する反射防止膜32とを有する。反射防止フィルム50は、表示パネル200の観察者側に配置された偏光層(例えばPVA)212のさらに観察者側に設けられている。反射防止膜32が表面に有するアンチグレア構造によって、反射防止フィルム50は防眩性を発現する。表面にアンチグレア構造を有する反射防止フィルムを「外部ヘイズタイプ」と呼ぶことがある。本発明の実施形態による反射防止膜は、外部ヘイズタイプの反射防止フィルムを構成する。偏光層212は、ベースフィルム(例えばTACフィルム)42と、保護層(例えばTAC)214とによって保護されている。反射防止フィルム50を有する表示パネルは、図示する構成に限られず、以下のような構成であってもよい。偏光層と、偏光層の両側に設けられた保護層とを有する偏光板が、表示パネル200の観察者側に設けられ、偏光板のさらに観察者側に反射防止フィルム50が接着層を介して貼り合わされていてもよい。
図8(b)において、反射防止フィルム950は、内部ヘイズ層933と、ベースフィルム(例えばTACフィルム)42と、ハードコート層43と、モスアイ構造を表面に有する反射防止膜932とを有する。内部ヘイズ層933は、散乱性を有する。内部ヘイズ層933は、例えば、散乱性を有する粒子を含む接着剤で形成される。反射防止フィルム950は、表示パネル200の観察者側に配置された偏光層(例えばPVA層)212のさらに観察者側に設けられている。内部ヘイズ層933によって、反射防止フィルム950は防眩性を発現する。反射防止フィルムの表面よりも内側に、散乱性を有する層を有する反射防止フィルムを「内部ヘイズタイプ」と呼ぶことがある。偏光層212は、保持層(例えばTAC)214および216によって保持されている。偏光層212と、保持層214および216とを指して偏光板ということもある。偏光層212と、保持層214および216とを有する偏光板と、反射防止フィルム950との間に接着層が設けられていてもよい。
表3に示すように、比較例2および比較例3の反射防止フィルムは外部ヘイズタイプであり、比較例5〜比較例9の反射防止フィルムは内部ヘイズタイプである。比較例2および比較例3の反射防止フィルムは、図8(a)に示す反射防止フィルム50と同様の構造を有し、比較例5〜比較例9の反射防止フィルムは、図8(b)に示す反射防止フィルム950と同様の構造を有する。比較例4の反射防止フィルムはアンチグレア機能を有しない。
表2および表3から、一般に、外部ヘイズタイプおよび内部ヘイズタイプのいずれにおいても、高いヘイズ値を有するほど、正面方向から見たときおよび斜め視角から見たときに白濁して見える傾向にあることが分かる。一方、内部ヘイズタイプの反射防止フィルム、特に比較例5〜比較例9の反射防止フィルムに注目すると、表面法線方向から見たときの白濁感よりも、斜め視角から見たときの白濁感の方が顕著になる傾向があることが分かる。内部ヘイズタイプの反射防止フィルムは、アンチグレア機能の有する内部ヘイズ層を、表面よりも内側に有するので、表面法線方向から見たときよりも、特に斜め視角から見たときに、白濁して見えるという問題が生じやすい。
これに対して、外部ヘイズタイプの反射防止フィルムは、表面にアンチグレア構造を有するので、このような問題が生じ難い。本発明者は、上記の問題を解決することができる反射防止膜およびそのような反射防止膜の製造方法に想到した。本発明のある実施形態において、反射防止膜に映り込んだ像の輪郭のぼかし具合において比較例5の反射防止フィルムと同程度であるような反射防止膜およびその製造方法を開発した。比較例5の反射防止フィルムを目安としたのは、比較例5の反射防止フィルムが有するクリア性が市場の少なくとも一部において好まれているからである。なお、反射防止膜に映り込んだ像の輪郭のぼかし具合(すなわち反射防止膜の防眩性の程度)はこれに限られず、反射防止膜の使用目的や使用形態に応じて変更してもよいことはもちろんである。
図9を参照して、比較例2〜比較例7および比較例10の反射防止フィルムを正面方向から見たときの特性についてさらに説明する。図9(a)は、比較例2〜比較例7および比較例10の反射防止フィルムを正面方向から見たときの、高照度下(100Lux)におけるコントラスト比を示し、図9(b)は、比較例2〜比較例7および比較例10の反射防止フィルムを正面方向から見たときの、白表示状態の輝度を示し、図9(c)は、比較例2〜比較例7および比較例10の反射防止フィルムを正面方向から見たときの、黒表示状態の輝度を示す。比較例10の反射防止フィルムは、アンチグレア機能を有しない低反射膜(LR膜)である。
白表示状態の輝度および黒表示状態の輝度は、以下のように測定し、明所コントラスト比は、白表示状態の輝度および黒表示状態の輝度の比から以下のように算出した。以下の測定方法は、社団法人電波産業会のARIB TR−B28に基づいている。白表示状態の輝度は、Yレベル940(白100%)、CB、-CRレベル512の信号を入力し、色彩輝度計(製品名:BM−5A、株式会社トプコンテクノハウス製)を使用して暗室において輝度を測定した。黒表示状態の輝度は、Yレベル64(黒)、CB、-CRレベル512の信号を入力し、色彩輝度計(製品名:BM−5A、株式会社トプコンテクノハウス製)を使用して暗室において輝度を測定した。明所コントラスト比は、暗室において、Rec. ITU-R BT 815-1 で規定されたコントラスト比測定用信号を入力し、Yレベル 940(白100%)の部分とYレベル64(黒)(ともにCB、-CRレベル512)の部分を色彩輝度計(製品名:BM−5A、株式会社トプコンテクノハウス製)を使用してそれぞれの輝度を測定した。ただし、ディスプレイはPLUGE信号等を用いて調整され、Yレベル940(白100%)部分の輝度が100cd/m2に調整された状態とした。測定中、バックライトの強度(光量)の調整機能は、自動および手動とも動作しないものとした。
比較例3の反射防止フィルムを、モスアイ構造を有しない比較例2の反射防止フィルムと比較すると、モスアイ構造を有することによって、白表示状態の輝度が高くなることが分かる。バックライトから出射された光の透過率が向上するからである。また、モスアイ構造を有することによって、黒表示状態の輝度が低下し、黒表示の品位が向上することが分かる。
比較例3の反射防止フィルムを、アンチグレア構造を有しない比較例4の反射防止フィルムと比較すると、アンチグレア構造を有することによって、白表示状態の輝度が低くなり、黒表示状態の輝度が高くなることが分かる。その結果、アンチグレア構造を有することによって、明所コントラスト比は低下している。
比較例3の反射防止フィルムを、クリア性を有する比較例5の反射防止フィルムと比較する。比較例3の反射防止フィルムは、比較例5の反射防止フィルムよりも低い白表示状態および黒表示状態の輝度を有する。比較例3の反射防止フィルムは、明所コントラスト比において、比較例5の反射防止フィルムよりも優れている。
図10(a)は、比較例3〜比較例7の反射防止フィルムによる拡散反射光の配光分布の測定結果を示すグラフであり、図10(b)は、拡散反射光の配光分布の測定系を示す模式図である。なお、拡散反射光は、散乱光を特に排除するものではない。
拡散反射光の配光分布は、図10(b)に示すように、反射防止フィルムに対して、入射角5°で光を照射し、0°〜25°の受光角で拡散反射光の配光分布を測定した。具体的には、各反射防止フィルムをガラス板に貼り、ゴニオフォトメーターで、配光分布を測定した。ゴニオフォトメーターとしては、村上色彩技術研究所製のGP−200を用いた。ここでは、入射角を5°とし、受光角を横軸にとり、拡散反射光強度の最大値を80%として規格化した、相対拡散反射率(%)の常用対数を縦軸にとった配光分布曲線を示す。以下に示す配光分布曲線も特に説明しない限り、同様とする。
配光分布曲線は受光角5°にピーク値をとる。図13を参照して後述するように、本発明の実施形態による反射防止膜は、例えば、受光角が5°以上7°以下の範囲において、相対拡散反射率(%)が3%以上であり、受光角が8°以上10°以下で、かつ、相対拡散反射率(%)が2%以上8%以下の範囲内にある点を含み、受光角が10°以上15°以下で、かつ、相対拡散反射率(%)が0.9%以上1.1%以下の範囲内にある点を含むという特徴を有する。詳細は、図13を参照して後述する。
図11(a)および(b)は、比較例2〜比較例7の反射防止フィルムの白表示状態の輝度を、極角を変化させながら測定した結果を示すグラフである。図11(b)は、図11(a)の一部を拡大して示す図である。
極角が大きいとき(例えば極角50°以上)、比較例2〜比較例7の反射防止フィルムの内、モスアイ構造を有しない比較例2の反射防止フィルムの輝度が最も低い。すなわち、比較例3〜比較例7の反射防止フィルムの輝度は、モスアイ構造を有しない比較例2の反射防止フィルムの輝度よりも高い。例えば極角70°において、アンチグレア構造を有しない比較例4の反射防止フィルムの輝度は、比較例2の反射防止フィルムの輝度よりも30%程度高い。例えば極角70°において、比較例3の反射防止フィルムの輝度は、比較例2の反射防止フィルムの輝度よりも15%程度高い。表示パネルに入射する光の表面における反射率は、入射角が大きくなると高くなる。従って、表面にモスアイ構造を有する反射防止フィルムによって、斜め視角(特に大きい極角)からみたときの表面反射を低減させる効果が大きい。比較例3の反射防止フィルムの輝度は、アンチグレア構造を有しない比較例4の反射防止フィルムの輝度に比べて低い傾向にあるが、内部ヘイズタイプである比較例5〜比較例7の反射防止フィルムの輝度と同程度である。
次に、本発明の実施形態による反射防止膜の製造方法および比較例の反射防止膜の製造方法について説明する。
上述してきたように、本発明者は、クリア性を保ちつつ、防眩性を発現し、かつ、斜め視角から見たときに白濁して見えることが抑制された反射防止膜を形成するための型の製造方法について検討した。上述したように、本発明の実施形態による反射防止膜(または反射防止フィルム)は表面にアンチグレア構造を有するので、このような反射防止膜を形成するための型は、反転されたアンチグレア構造を表面に有する。本発明者は、型の表面に反転されたアンチグレア構造を形成する方法を種々検討し、本発明の実施形態による型の製造方法に想到した。
表4に、実施例2の反射防止フィルム、比較例6および比較例11〜比較例13の反射防止フィルムについて、反射防止機能およびアンチグレア機能を評価した結果を示す。
実施例2および比較例11〜比較例13の反射防止フィルムは、図8(a)に示す反射防止フィルム50と同様の構造を有する外部ヘイズタイプの反射防止フィルムである。既に述べたように、外部ヘイズタイプの反射防止フィルムについての、反射防止機能およびアンチグレア機能の評価結果は、反射防止フィルムが有する反射防止膜の反射防止機能およびアンチグレア機能の評価と同等であると考えることができる。
実施例2の反射防止膜は、上述の方法で製造したモスアイ用型を用いて形成した。実施例2の反射防止膜を形成するためのモスアイ用型を製造する工程における、吹き付け処理工程の条件は、表6に示す。
比較例11の反射防止膜は、以下のように製造したモスアイ用型を用いて形成した。本発明の実施形態による型の製造方法と異なる点を主に説明する。以降においても同様である。
比較例11の反射防止膜を形成するための型の製造工程において、国際公開第2011/105206号および国際公開第2013/146656号に記載されているように、アルミニウム基材12の表面に無機材料層16を電着法によって形成した。参考のために、国際公開第2011/105206号および国際公開第2013/146656号の開示内容の全てを本明細書に援用する。電着樹脂には艶消し剤を混合した。電着樹脂に艶消し剤を混合することによって、表面に反転されたアンチグレア構造を有する無機材料層16を形成することができる。ここでは、アクリルメラミン樹脂に艶消し剤を混合することによって、例えば、法線方向から見たときの2次元的な大きさが約20μmで、高さが1μm弱の凸部が形成された表面を得た。このように無機材料層16を形成すると、アルミニウム膜18の表面に、無機材料層16の表面の反転されたアンチグレア構造が反映された構造が形成される。比較例11の反射防止膜が有するアンチグレア構造を構成する凸部の2次元的な大きさは、およそ30μmであった。
電着法としては、例えば、公知の電着塗装方法を用いることができる。例えば、まず、基材12を洗浄する。次に、基材12を、電着樹脂を含む電着液が貯留された電着槽に浸漬する。電着槽には、電極が設置されている。カチオン電着により硬化性樹脂層を形成するときは、基材12を陰極とし、電着槽内に設置された電極を陽極として、基材12と陽極との間に電流を流し、基材12の外周面上に電着樹脂を析出させることによって、硬化性樹脂層を形成する。アニオン電着により硬化性樹脂層を形成するときは、基材12を陽極とし、電着槽内に設置された電極を陰極として電流を流すことにより硬化性樹脂層を形成する。その後、洗浄工程、焼付工程等を行うことにより、有機絶縁層が形成される。電着樹脂としては、例えば、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、またはこれらの混合物を用いることができる。
比較例12の反射防止膜は、以下のように製造したモスアイ用型を用いて形成した。比較例12の反射防止膜を形成するための型の製造工程において、国際公開第2015/159797号に記載されているように、鏡面加工を行ったアルミニウム基材12の表面をフッ化水素とアンモニウムとの塩を含む水溶液によって梨地処理することにより、アルミニウム基材12の表面に反転されたアンチグレア構造を形成した。参考のために、国際公開第2015/159797号の開示内容の全てを本明細書に援用する。ここでは、アルミニウム基材12として、Al−Mg−Si系のアルミニウム合金、特に、JIS A6063で形成されているものを用いた。
アルミニウム基材12の表面を梨地処理する工程の前に、アルカリ性のエッチング液を用いてアルミニウム基材12の表面をエッチングする工程(以下、「アルカリ洗浄工程」ということがある。)を行った。アルカリ洗浄工程によって、切削痕の原因となり得る、アルミニウム基材12の加工変質層の少なくとも一部を除去することができる。アルカリ洗浄工程は、アルミニウム基材12の脱脂工程をも兼ねる。アルカリ性のエッチング液として、有機アルカリ性洗浄剤(横浜油脂工業株式会社製、製品名:セミクリーンLC−2)を濃度16mass%で含む水溶液に、酸性の添加剤として腐食抑制剤(キレスビットAL、キレスト株式会社製)を10vol%加えた水溶液を用い、40℃で40分間アルカリ洗浄工程を行った。
アルカリ洗浄工程の後、純水による洗浄工程、前処理工程、梨地処理工程、後処理工程、および純水による洗浄工程をこの順で行った。
梨地処理工程においては、梨地処理のためのエッチング液として、フッ化アンモニウム、硫酸アンモニウムおよびリン酸二水素アンモニウムを、それぞれ、2.5mass%、1mass%および1mass%含む水溶液を用いて、10℃で3分間梨地処理を行った。梨地処理工程は、アルミニウム基材12の長軸を中心に回転させながら(回転速度5rpm)行い、梨地処理のためのエッチング液をエッチング槽内で循環させながら行った。
前処理工程および後処理工程においては、上記エッチング液を2.5倍に希釈したもの(すなわち、フッ化アンモニウム、硫酸アンモニウムおよびリン酸二水素アンモニウムを、それぞれ、1mass%、0.4mass%および0.4mass%含む水溶液)を用いて、室温で3分間アルミニウム基材12の表面処理を行った。前処理工程および後処理工程は、アルミニウム基材12の長軸を中心に回転させながら(回転速度5rpm)行った。このとき、前処理用エッチング液および後処理用エッチング液は、エッチング槽内で循環させなかった。後処理工程においては、バータイプシャワーユニットを併用した。
純水による洗浄工程は、ハンドシャワーを用いて行った。後処理工程の後の洗浄工程においては、2流体ノズルを併用した。
アルミニウム膜18の表面には、梨地処理によって形成されたアルミニウム基材12の表面の反転されたアンチグレア構造が反映された構造が形成される。比較例12の反射防止膜が有するアンチグレア構造を構成する凸部の2次元的な大きさは、およそ10μmであった。
比較例13の反射防止膜は、以下のように製造したモスアイ用型を用いて形成した。比較例13の反射防止膜を形成するための型の製造工程において、アルミニウム膜18の厚さを1.0μmにすることによって、アルミニウム膜18の表面に反転されたアンチグレア構造を形成した。特許文献4に記載されているように、厚さ0.5μm以上5μm以下のアルミニウム膜18を形成することによって、2次元的な大きさの平均値が200nm以上5μm以下である複数の凸部から構成される反転されたアンチグレア構造を有するモスアイ用型を製造することができる。
表4中の「映り込み像のぼかし」および「白濁感」については、表2および表3について説明したのと同様に評価を行った。表4中の「明所コントラスト比」および「白表示状態の輝度」については、図9および図10について説明したのと同様に測定した結果を用いて評価を行った。「明所コントラスト比」について「○」は充分なコントラスト比を有していることを示し、「△」はコントラスト比が不十分であることを示す。「白表示状態の輝度」について「○」は充分な輝度を有していることを示す。表4中の「ぎらつき」は、反射防止膜を表示パネルに貼ったときに、反射防止膜を介した像にぎらつきが発生することを抑制する効果について評価した結果である。ぎらつき抑制効果の詳細については、表5を参照して後述する。
表4に示すように、実施例2の反射防止膜は、クリア性を保ちつつ、防眩性を発現し、かつ、斜め視角から見たときに白濁して見えることが抑制されている。
アルミニウム基材12の表面に投射材を吹き付けることによって、アルミニウム基材12の表面に反転されたアンチグレア構造を形成した後に、アルミニウム基材12の表面に電解研磨を施すと、斜め視角から見たときに白濁して見えることをさらに抑制することができる。アルミニウム基材12の表面に電解研磨を施すと、アルミニウム基材12の表面に反転されたアンチグレア構造がなだらかになることによって、斜め視角から見たときに白濁して見えることを効果的に抑制することができると考えられる。
実施例2の反射防止膜は、上述したような方法で製造したモスアイ用型を用いることによって、製造コストを低減することができる。すなわち、基材12の上にアンチグレア機能を有するアンチグレアフィルムを設け、アンチグレアフィルムの上にアルミニウム膜18を形成するという方法で型を製造すると、製造コストが高くなる傾向にある。本発明の実施形態による型の製造方法は、基材12の表面に投射材を吹き付け、基材12の上にアルミニウム膜18を堆積するので、製造コストを低減することができる。
比較例11の反射防止膜は、斜め視角から見たときに白濁して見える。さらに、比較例11の反射防止膜は、ぎらつきの発生を十分に抑制することができない。
比較例12の反射防止膜は、斜め視角から見たときに白濁して見える。
比較例13の反射防止膜は、映り込み像のぼかしが十分ではない。すなわち、防眩性が十分ではない。
比較例6の反射防止フィルムは、斜め視角から見たときに白濁して見える。さらに、比較例6の反射防止フィルムは、ぎらつきの発生を十分に抑制することができない。また、比較例6の反射防止フィルムは、正面方向から見たときの明所コントラスト比についても、実施例2の反射防止フィルムよりも劣る。
表4中の「ぎらつき」は、以下のように評価した。
ぎらつきの発生は、アンチグレア構造を構成する凹凸構造と、行方向のドットピッチPxとの大きさの関係に依存する。まず、図12を参照して、アンチグレア構造を構成する凹凸構造と、行方向のドットピッチPxとの大きさの関係を説明する。
図12(a)および(b)は、アンチグレア構造を構成する凹凸構造と、行方向のドットピッチPxとの大きさの関係を模式的に示す図であり、図12(a)は、アンチグレア構造を構成する凹凸構造がドットピッチPxよりも大きい場合を示し、図12(b)は、アンチグレア構造を構成する凹凸構造がドットピッチPxよりも小さい場合を示している。ここで、ドットとは、典型的なカラー液晶表示パネルにおける画素を構成するR、G、Bの各ドットを指す。すなわち、カラー液晶表示パネルにおける画素が、行方向に配列された3つのドット(Rドット、GドットおよびBドット)で構成されている場合、行方向の画素ピッチは、行方向のドットピッチPxの3倍となる。なお、列方向の画素ピッチは、列方向のドットピッチPyと等しい。
図12(a)および(b)に模式的に示すように、アンチグレア構造を構成する凹凸構造を有する表面28sは、平坦部を有しない連続した波形の表面形状を有する場合がある。このような連続した波形の表面形状を有する凹凸構造は、隣接する凹部間距離の平均値(平均隣接間距離ADint)または凹部の2次元的な大きさADpで特徴付けられる。ここでは、凹部に着目するが、凸部に着目しても同様に特徴づけることができる。
図12(a)に示すように、凹部の平均隣接間距離ADint(凹部の2次元的な大きさADpと等しいと考える)が、例えば行方向のドットピッチPx(画素が3つのドット(R、G、B)で構成されている場合、行方向の画素ピッチはドットピッチの3倍)よりも大きいと、十分なアンチグレア機能を得ることができない。アンチグレア機能を十分に発揮させるためには、図12(b)に示すように、凹部の平均隣接間距離ADint(凹部の2次元的な大きさADp)が互いにほぼ等しく、かつ、ドットピッチよりも小さいことが好ましい。
表5に、実施例2、比較例5および比較例11の反射防止フィルムをドットピッチの異なる4種類のディスプレイパネルの観察者側の表面に貼りつけ、表示面のぎらつきが発生しているかどうかを目視で評価した結果を示す。表5中、「×」は全面緑表示および全面白表示のいずれを行ってもぎらつきがあることを示し、「△」は全面白表示においてはぎらつきが気にならないが、全面緑表示を行うとぎらつきがあることを示し、「○」は全面白表示においてはぎらつきが気にならないが、全面緑表示を行うと若干のぎらつきがあることを示し、「◎」は全くぎらつきが無いことを示す。表4中の「ぎらつき」は、表5のディスプレイの内、対角9.7インチ、行方向のドットピッチ(図12中のPx)が約32μm、列方向のドットピッチ(画素ピッチに等しい)が約96μm、約264ppiのものを用いて評価した結果を示す。表5に記載はしていないが、比較例6についても同様に評価を行った。
実施例2の反射防止膜が表面に有するアンチグレア構造を構成する第1凸部の2次元的な大きさADpは、5μm以下である。ぎらつきの発生を抑制するためには、第1凸部の2次元的な大きさADpが、行方向のドットピッチよりも十分に小さいことが好ましい。
比較例11の反射防止膜が有するアンチグレア構造を構成する凸部の2次元的な大きさは、およそ30μmである。比較例11の反射防止膜のアンチグレア構造を構成する凸部の2次元的な大きさは、実施例2の反射防止膜のアンチグレア構造を構成する凸部の2次元的な大きさよりも大きいので、ぎらつきの発生の抑制において、比較例11の反射防止膜は、実施例2の反射防止膜に劣る。
比較例5の反射防止フィルムは、内部ヘイズタイプなので、アンチグレア構造を表面に有しない。実施例2の反射防止フィルムは、ぎらつきの発生の抑制において、比較例5の反射防止フィルムよりも優れている。
図13は、実施例3、参考例2、比較例3、比較例5、比較例12および比較例13およびの反射防止フィルムによる拡散反射光の配光分布の測定結果を示すグラフである。図13も、図10(a)と同様に、入射角を5°とし、受光角を横軸にとり、拡散反射光強度の最大値を80%として規格化した、相対拡散反射率(%)の常用対数を縦軸にとった配光分布曲線を示す。
実施例3および参考例2の反射防止フィルムは、図8(a)に示す反射防止フィルム50と同様の構造を有する外部ヘイズタイプの反射防止フィルムである。実施例3および参考例2の反射防止膜は、上述の方法で製造した。実施例3および参考例2の反射防止膜を形成するためのモスアイ用型を製造する工程における吹き付け処理工程の条件は、表6に示す。
実施例3の反射防止フィルムの配光分布曲線は、受光角5°においてピーク値をとり、ピーク幅は比較的細く、受光角2°〜3°の範囲および受光角7°〜8°の範囲において傾きが緩やかに変曲し、受光角20°までの範囲内に収まっている。実施例3の反射防止フィルムは、クリア性を保ちつつ、防眩性を発現し、かつ、斜め視角から見たときに白濁して見えることが抑制される。一方、参考例2の反射防止フィルムの配光分布曲線は、受光角25°までの範囲内に収まらない。参考例2の反射防止フィルムは、斜め視角から見たときに白濁して見える傾向がある。
本発明の実施形態による反射防止膜は、例えば、受光角が5°以上7°以下の範囲において、相対拡散反射率(%)が3%以上であり、受光角が8°以上10°以下で、かつ、相対拡散反射率(%)が2%以上8%以下の範囲内にある点を含み、受光角が10°以上15°以下で、かつ、相対拡散反射率(%)が0.9%以上1.1%以下の範囲内にある点を含むという特徴を有する。
本発明者の検討によると、以下のような傾向がある。クリア性を保ちつつ、防眩性を発現し、かつ、斜め視角から見たときに白濁して見えることが抑制されるためには、ピーク幅は比較的細いことが好ましく、配光分布曲線の傾きが不連続に変化する点を有しないことが好ましい。また、ピークの外側においては、ピーク中心(5°)から離れるにつれて早く減衰することが好ましい。
表6に、明細書中における実験例の吹き付け処理工程の条件(投射材を吹き付ける条件および投射材の種類)および吹き付け処理を行った対象のアルミニウムの種類を示す。具体的には、アルミニウム基材12を形成するアルミニウムの種類、投射材の種類、投射材の平均粒径、ノズル82から投射材が吐き出される圧力、ノズル82と型基材10の表面との間の距離d、およびノズル82を型基材10の長軸方向に沿って移動させる速度vvを示す。