以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳説する。
本実施形態のウェットワイパーは、繊維シートに薬液が含浸されているものである。
本実施形態の繊維シートは、原紙を2又は3枚重ねとした複数プライのものである。1プライでは拭き取りに必要な十分な強度とするのが難しく、4プライ以上では強度は向上するが厚みや強度が過度になりすぎて使用し難いものとなるとともに、コストも過度に高くなるため望ましくない。
本実施形態に係る繊維シートは、特に、その原紙が、ドライクレープとウェットクレープの二種類のクレープ加工がされている。
ドライクレープは、概ねCD方向に沿う谷線、稜線を多く有する微細な凹凸であり、抄紙工程において湿紙をヤンキードライヤーで乾燥し、その後にこのヤンキードライヤーからクレーピングドクターで引き剥がす際に形成されるものである。このドライクレープによって、シートに柔らかさや伸び、特にMD方向の伸びが付与されるとともに、原紙に凹凸分の厚み感が発現する。また、その微細な凹凸によって原紙のみと比較して汚物の拭き取り性が向上する。
ウェットクレープは、抄紙工程の湿紙をヤンキードライヤーに移行させる際に付与されるものである。湿紙の繊維の並び自体が凹凸のある状態で乾燥されて固定化されるため、薬液を含浸させてもクレープが伸びない。
すなわち、本実施形態の繊維シートは、湿紙の状態で付与されて紙表面に固定されたウェットクレープが存在する原紙に対してさらにドライクレープが付与されたものとなっている。このウェットクレープとドライクレープとが付与されている特異な表面性により、薬液を含侵させてウェットワイパーとなった際における拭き取り性、とりわけ乾燥してこびりついてしまった便等の乾燥付着物の拭き取り性と表面強度とが向上される。
なお、本実施形態に係る繊維シートには、エンボスが付与されていてもよい。エンボスによって、特に大きな汚れの拭き取り性が向上する。
他方、本実施形態のウェットワイパーは、上記のドライクレープとウェットクレープの二種類のクレープ加工が施されている原紙を重ねた繊維シートであるとともに、所定の目付量、四枚重ねでの厚み、薬液の含浸率とすることで薬液含浸後のクレープ加工の効果が維持されやすくなり、拭き取り性及び表面強度の向上効果が発現しやすくなる。
本実施形態の繊維シートの好ましい目付量は60〜95g/m2であり、より好ましい目付量は75〜90g/m2である。目付量が60〜95g/m2の範囲にあると拭き取り性と表面強度が向上しやすい。なお、目付量が60g/m2未満となると、拭き取りに必要な十分な強度とならない場合があり、また、95g/m2を超えると繊維が密となるため繊維間への汚れの入り込みづらくなったり、しなやかさが低下しやすくなる。また、95g/m2を超えると水解性が低下するため、トイレに流した際に詰まりの原因となるおそれが高まる。ここで、本発明における目付とは、ウェットワイパーを10cm四方に裁断し、これを50℃の恒温槽内で0.5時間以上、十分に乾燥させた試料を10枚作成し、その重量を測定して、その重量と試料の大きさから算出した値である。 さらに、本実施形態のウェットワイパーは、好ましくは四枚重ねでの厚みが1.5〜3.0mmであり、より好ましくは1.6〜2.6mmである。ウェットワイパーは、通常、使用者が汚れの裏抜けを意識して、使用する際に、全く折り畳まれていない枚葉の製品の場合には、半分に折り、さらにそれを半分二折る四つ折りの状態として使用し、また、予め二つ折りされている製品では、それをさらに二つ折りにして四つ折りの状態とする。よって、四枚重ねでの厚みは、実際の使用時に使用者が感ずる厚み感、使用感が極めて良く反映される。したがって、四枚重ねでの厚みが1.5〜3.0mmであると使用感にすぐれる。また、この四枚重ねでの厚みが1.5mm未満であると頼りない印象が高まり、使用時に汚物が手に付着しやすい印象を感じやすくなる。反対に3.0mmを超えると剛性が高くなって、便器などの拭き取りの際に拭き取り面に追従しがたくなるおそれがでてくる。また、本実施形態のウェットワイパーは、原紙にドライクレープとウェットクレープの二種類のクレープ加工がされていることにより、繊維の目付量に対して厚みのあるものとなる。すなわち、繊維間空隙が多く、また表面凹凸がしっかりとあり、さらに厚み感のあるものとなる。これにより、拭き取り時の安心感があってしかも拭き取り性が向上されたものとなる。なお、厚みは、デジタル測厚器により測定する。デジタル測厚器としては、ID−C1012CX(株式会社 大栄科学精器製作所製)を好ましく用いることができる。もちろん、同様のしくみによるものが使用できる。なお、ID−C1012CXの測定時の圧力は340gfである。
また、本実施形態にウェットワイパーの厚みに関しては、折らない状態での好ましい厚み、すなわち複数プライの繊維シートに薬液を含浸させただけの一組での好ましい厚みは、0.30〜0.75mmである。より好ましい厚みは0.38〜0.65mmである。さらに加えて、薬液を含まない状態の繊維シートの厚み、すなわち乾燥時の厚みが、0.65〜1.20mmが好ましく、0.70〜1.00mmであるのがより好ましい。上記目付量であるとともにこれらの厚みの数値範囲であると繊維の密度、すなわち繊維間の間隔が適度なものとなり、後述の薬液含浸率と相まって、特に便器等の拭き取り対象物に便、さらに乾燥してこびりついた便の拭き取り性がより高まる。なお、乾燥時の厚みは、ウェットワイパーを10cm四方に裁断し、これを50℃の恒温槽内で0.5時間以上、十分に乾燥させた試料を測定した厚みである。また、薬液を含浸させ、一枚での繊維シートの厚み、乾燥状態での厚みの測定手順は、ウェットワイパーの四枚重ねでの厚みの測定手順と同様である。
また、本実施形態に係るウェットワイパーは、薬液の含浸率が150〜220質量%、より好ましくは165〜200質量%である。この範囲であれば拭き取り対象物に乾燥してこびりついた汚れについては適度にその汚れに液分を与えて対象物から浮きやすくすることができ、また、液状汚れについては紙面に素早く分散させて吸収されるようになる。150質量%未満であると拭き取り性、特に便器等に付着した便など乾燥して拭き取り対象物にこびりついた汚れの拭き取り性が十分に向上しないおそれがある。反対に220質量%を超えると繊維シートに対する薬液が多すぎて液体の吸収性が低下して、液体汚れや水分を多く含む汚れの拭き取り性が十分に向上しないおそれがある。また、薬液の含浸水率が220質量%を超えると、拭き取り操作をした際に、拭き取り面に水分が残り、掃除後に 拭き取り面を乾燥させる煩雑な操作が必要となるおそれがある。ここでの含浸率とは、「(薬液が含浸されたウェットワイパーの重量−繊維シートの重量)×100/繊維シートの重量」である。但し、ここでの繊維シートの重量とは、ウェットワイパーを60℃の恒温槽内で24時間以上、十分に乾燥させた重量をいう。なお、ウェットワイパーを乾燥させるにあたっては、折り畳まれているものの場合には、折り目を開いた状態で乾燥させる。
本実施形態に係るウェットワイパー-は、ドライクレープとウェットクレープの二種の加工を施した原紙を2〜3枚重ねとした繊維シートであるとともに、さらに上記薬液含浸率、坪量、四枚重ねでの厚みとすること、さらには一枚での繊維シートの各厚みとすることで、従来のウェットワイパーに対してより優れた拭き取り性、特に乾燥して便器等にこびりついてしまった汚れの拭き取り性と表面強度が発揮される。
さらに、本実施形態のウェットワイパーは、水解性が100秒以下である。ウェットワイパーは、使用後に水洗トイレに廃棄できることが求められるが、上記の繊維シートの構成であると十分に廃棄可能な水解性を達成できる。なお、水解性は、紙力剤や接着剤の使用・不使用、種類の選択により調整することができる。また、本実施形態にかかる水解性とは、JIS P 4501(2006)4.5「ほぐれやすさ」の試験と同様にして測定した値とする。
他方、本実施形態に係るウェットワイパーの繊維シートの好ましい繊維としては、針葉樹パルプと広葉樹パルプを混合したパルプ、又は古紙パルプである。針葉樹パルプ及び広葉樹パルプは、漂白されたものであっても無漂白のものであってもよい。また、無漂白の未晒しパルプと漂白パルプとを混合したものであってもよい。針葉樹パルプと広葉樹パルプを混合して用いる場合、針葉樹由来のパルプを60〜95%、広葉樹由来のパルプを5〜40%含むものがよい。針葉樹由来のパルプは、繊維長が長く抄紙段階における繊維配向性が所定方向となりやすく剥離強度の縦横比に差が生じやすいが、針葉樹由来のパルプを60〜95%、広葉樹由来のパルプを5〜40%の配合割合とすると、広葉樹由来のパルプの存在によって、剥離強度の縦横比に差が生じ難くなる。さらに、広葉樹由来のパルプの繊維長が短いことから、繊維が密になりしなやかさが向上する。なお、針葉樹由来のパルプは、繊維の太さ(幅)が概ね30〜40μm、平均繊維長が概ね2.5〜5mm程度である。上記のポリビニルアルコール及びカルボキシメチルセルロールの繊維長及び繊維の太さは、天然繊維である針葉樹パルプ及び広葉樹パルプとの関係で、強度や混合性を考慮して適宜に定めることができる。
ここで、本実施形態に係るウェットワイパーは、特徴的に、二つの形態を採る。その一つの形態は、繊維シートにポリビニルアルコールを含むとともに、薬液中に、ホウ酸を含む形態である。他の形態は、繊維シートにカルボキシメチルセルロールを含むとともに、薬液中に金属塩を含む形態である。つまり、本実施形態に係るウェットワイパーに係る薬液中には、ホウ酸及び金属塩の少なくとも一方を含み、繊維シートには、ポリビニルアルコール及びカルボキシメチルセルロールの少なくとも一方を含む。ただし、ホウ酸とポリビニルアルコールとの組み合わせ、カルボキシメチルセルロールと金属塩との組み合わせが必須である。
なお、本実施形態に係るウェットワイパーの薬液におけるホウ酸及び金属イオン以外の成分に関しては、本発明の効果を妨げない範囲で、水解性を有するウェットワイパーに用いる公知の薬液の成分を使用することができる。例えば、アルコール、除菌剤、界面活性剤、シリコーンなどが挙げられる。
繊維シートにポリビニルアルコールを含むとともに、薬液中にホウ酸を含むことにより、湿潤時の紙力増強剤としての機能が発揮される。特に、ホウ酸とポリビニルアルコールとを組み合わせると、水が比較的少ない製品時には湿潤強度が維持され、水洗トイレに廃棄した際など大量の水が存在する状況下では水解することとなり、水解性を有しつつ強度が向上する。繊維シートにポリビニルアルコールを含ませるには、繊維として配合することができる。この場合は、パルプ繊維99.5〜99.9質量%、ポリビニルアルコール繊維0.1〜0.5質量%の配合とするのが望ましい。また、ポリビニルアルコールを水溶液とし、あらかじめ原紙中又は原紙表面に含ませておくこともできる。繊維として含まれるか原紙由来として含まれるかにかかわらず、繊維シート中にポリビニルアルコールが含まれ、かつ薬液中にホウ酸が存在する場合、ウェットワイパーの状態においては、繊維シート中のポリビニルアルコールと薬液中のホウ酸とが弱く結合した態様となり、上述のとおりウェットワイパーの製品時に繊維シートの湿潤強度が高まり、多量の水の存在かでは結合がとけて水解性を発現するものとなる。
また、繊維シートにカルボキシメチルセルロールを含むとともに、薬液中に金属塩を含むと、ポリビニルアルコールとホウ酸との組み合わせと同様に、水が比較的少ない製品時には湿潤強度が維持され、水洗トイレに廃棄した際など大量の水が存在する状況下では水解することとなり、水解性を有しつつ強度が向上する。カルボキシメチルセルロースも繊維シートに対して、繊維として配合することもでき、また、原紙中に水溶液や粉末状態で配合することができる。繊維として含まれるか原紙由来として含まれるかにかかわらず、繊維シート中にカルボキシメチルセルロースが含まれ、薬液中に金属イオンが存在する場合、ウェットワイパーの状態においては、金属イオンの架橋によって繊維同士がつなぎとめられる態様となり、ウェットワイパーの製品時に繊維シートの湿潤強度が高まり、多量の水の存在かでは結合がとけて水解性を発現するものとなる。
ここで、好ましいカルボキシメチルセルロースとしては、エーテル化度が0.6〜2.0である。より好ましいエーテル化度は、0.9〜1.8、特により好ましいエーテル化度は1.0〜1.5である。エーテル化度が上記範囲であると、水解性と湿潤紙力の発現が極めて良好となる。また、カルボキシメチルセルロースは、水膨潤性のものを用いることができる。薬液中の特定金属イオンの架橋により、未膨潤化のままシートを構成する繊維をつなぎとめる機能を発揮し、清掃・清拭作業に耐えうる拭き取りシートとしての強度を発現することができる。金属イオンとなる金属塩としては、例えば、アルカリ土類金属(マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム)、マンガン、亜鉛、コバルト、ニッケル等の2価金属イオンを含む水溶性金属塩(水酸化物、塩化物、硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩、ギ酸塩、酢酸塩等)が挙げられ、これらの1種を単独であるいは2種以上を組み合せて用いることができる。
本実施形態に係るウェットワイパーは、繊維シートが、ドライクレープとウェットクレープの二種類のクレープ加工がされた原紙を2〜3枚重ねにしたものであるとともに、上記の繊維シート中にポリビニルアルコールを含むとともに薬液中にホウ酸を含む形態、及び、繊維シート中にカルボキシメチルセルロールを含むとともに薬液中にイオン化する金属塩を含む形態の少なくとも一方の形態をとることで、表面強度が高く、ウェットクレープを有する紙面に重ねてドライクレープが形成される特異な紙面を有する繊維シートの表面形状が維持されやすいものとなり、特に乾燥して便器等にこびりついてしまった汚れの拭き取り性に優れるものとなる。
他方、本実施形態のウェットワイパーは、薬液が含浸された状態での引張強度がMD方向で好ましくは200〜550cN/25mm、より好ましくは280〜500cN/25mm、CD方向で60〜200cN/25mm、特により好ましくは70〜150cN/25mmである。この範囲の引張り強度であれば、しなやかさ及び伸び、さらに強度において優れ、拭き取り性の点で好ましい。なお、この範囲は、上記の二種類のクレープ加工を用いた原紙、プライ数、目付、厚み、薬液含浸率として、適宜に繊維配合、紙力剤の使用・不使用などの公知の技術により達成することができる。引張り強度は、JIS P 8113に準じて、試験片をダンベルカッターで幅25mm×120mmに裁断したものとして、試験機の条件を、引張り速度を500mm/分、引張強さを100N、単位をNに設定して、チャック間距離を50mmにして測定した値とする。また、特に引張強度については、その縦横比が1.00〜4.00であるのが望ましい。縦横比が1.00に近いほど、拭き取り操作の際にウェットワイパーに均一に力がかかりやすくなる。その結果、裂けにくく丈夫に感じられるようになる。4.00以下であれば、十分にその強さが感じられる。反対に4.00を超えてくると、特に強さが一般的に弱くなるCD方向に破れやすさを感じるようになる。
他方、本実施形態のウェットワイパーは、その原紙1枚の薬液の含浸速度が4〜13mm/分であるのが望ましい。なお、原紙1枚あたりの目付量は20〜40g/m2とするのが望ましい。また、ここでの薬液の含浸速度は、JIS L 1907(2010)のバイレック法に準じて、試験片の大きさを幅25mm×長さ120mmとして行なう。さらに、薬液はインキ等の着色料で着色する。この着色料は薬液の含浸を視認可能にするためのものであり、含浸速度に影響を与えない範囲で適宜選択することができる。
また、本実施形態のウェットワイパーは、学振形の摩擦試験機を用いて測定される表面強度が13回以上であるのが望ましい。なお、ここでの表面強度とは、JIS L 0849(2013)に準じて以下のようにして測定した値である。すなわち、試験片は、ウェットワイパーのMD方向に沿う方向を摩擦子の移動方向となるようにして適宜の長さ採取する。また、試験片はその摩擦子の移動方向に直交するCD方向に三つ折りして三重の状態とする。摩擦子の素材は、摩擦用白綿布に代えてポリプロピレンラバーバンドとする。そして、回数は、目視にて表面の繊維剥がれが視認できる回数とする。
ここで、本実施形態のウェットワイパーの上記物性を達成するには、特に原紙がドライクレープとウェットクレープの二種類のクレープ加工が施されたものであることが重要である。そこで、係るドライクレープとウェットクレープの二種類のクレープ加工が施された原紙の製造方法例について図1を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係るウェットワイパーの原紙を製造するのに好ましく例示できる長網抄紙設備X1の概略図である。この設備において、まず、針葉樹、広葉樹の各由来のパルプ、さらにPVA繊維等の適宜の化学繊維を配合した繊維原料に、紙力剤などの適宜の薬剤を加えた抄紙原料を、インレット1から長網10上に吐出して湿紙W1を形成する(湿紙形成工程P1、この工程及び後段の脱水工程を合わせてワイヤーパートと称されることがある)。化学繊維を配合する場合には、上記パルプに対して、10〜50kg/パルプtとするのが望ましい。そして、この長網10上で前記湿紙の脱水(脱水工程)を行う。長網式の抄紙設備X1による抄紙では、長網10上にインレット1から抄紙原料を吐出するため、円網のように網に抄紙原料がすくい上げられる態様と異なり、繊維配向性について縦横及び紙層の厚さ方向で差が生じ難く、吸水速度、しなやかさを向上させやすい。
脱水工程P2は、長網10上の湿紙W1に含まれる水分を長網を介して下方に自然落下させる或いは吸引して脱水する。長網式の抄紙設備X1による抄紙では、円網抄紙設備を用いる抄紙と比較して、長網10により搬送される過程で時間をかけて脱水されるため、嵩の低下を少なくすることができ、パルプ繊維間の空隙を大きくできる利点がある。さらに、比容積を大きくすることができ、さらにフィブリル化が進められた高CSFの抄紙原料の脱水を十分に行なうことができる。なお、フリーネスの値は適宜に設定すればよい。
長網10による脱水時間は0.1〜18秒程度とすることができる。この場合、製造時間などの関係で概ね長網による搬送長さは5〜30m程度とすることができる。
上記脱水工程P2に続いて行なうプレス工程P3は、脱水工程P2を経た長網10上の湿紙W2をさらに下流に搬送する過程でプレスロール20A,20Bを押し当てて搾水を行なう工程である。本例では、好ましくは長網10上の湿紙W2を後段の搬送フェルト30に移行させる際にプレスロール20A,20Bの押し当てを行なって搾水を行なっている。プレス圧は適宜の調整事項であるが1.0〜6.0kg/cm2とするのが望ましい。
本実施形態では、プレスロールを複数段で押し当てるのが望ましく、より好ましくは、プレスロールの押し当てを3回以上とするのがよい。多段階のプレスによって、一回当たりのプレス圧を低くすることができ製造される原紙の嵩をより向上させることができる。なお、低圧多段のプレスが嵩の低下防止に効果的であるのは、プレスの後に水分が湿紙内で繊維の毛細管現象によって均一化する作用と、繊維の厚さ方向の復元性の作用による。
図示例では2回のプレスを行なう形態を示している。長網10で形成される搬送路と後段のフェルト搬送路30との間にセンターロール21が設けられており、その長網側に1機、フェルト搬送路側に1機の合計2機のプレスロール20A,20Bが配されている。各プレスロール20A,20Bとセンターロール21との間で搾水が行なわれるようになっている。長網10上を搬送されてきた湿紙W2は、初段のプレスロール20A(長網側のプレスロール)にピックアップされて移行され、センターロール21との間でプレスされるとともにセンターロール21にピックアップされて移行され、さらに第2プレスロール20B(フェルト搬送路側のプレスロール)との間でプレスされるとともに当該第2プレスロール20Bにピックアップされて移行され、その後に第2プレスロール20Bからフェルト搬送路30に移行されるようになっている。なお、各ロールへの湿紙の移行は既知のサクション技術が用いられる。また、各プレスロールは直接的に湿紙に接触するのではなく、実際にはプレスロールに巻きかけられて無端搬送路を介して接する。
プレス工程P3を経てフェルト搬送路30に移行された湿紙W3は、フェルト搬送工程P4でフェルト搬送される。フェルト搬送路30は長網10と比較して表面が平滑であり、湿紙との密着性に優れ、表面の地合を良好なものとする。ここで、搬送フェルト30自体は、吸水性を有するものであっても、吸水性を有さないものであってもよい。但し、吸水性を有するものとすれば、搬送フェルト30との密着性が高まり地合が良好となる効果が高く、また前記脱水工程P2やプレス工程P3におけるプレス圧を低下させることができ、嵩の低下をより一層防止することができる。なお、湿紙W3の自然乾燥、湿紙内における水分の均一化、搬送フェルト30との密着性を考慮して、搬送フェルト30による搬送時間は0.5〜30秒、搬送長さは15〜50mとするのが望ましい。
上記所定のフェルト搬送P4を経て水分が適度に低下した湿紙W4は、図2にも示されるように、適宜のフェルト搬送路30から適宜のプレスロール54にピックアップされた後、ウェットクレープ付与工程P5にて当該プレスロール54からブレード40により引き剥がしてウェットクレープを施す。
ウェットクレープは、湿紙W5の状態でクレープを施す。すなわち、湿紙W5はその後工程で乾燥される。このため、ウェットクレープは、薬液を含浸させてもそのクレープが伸びたり崩れたりし難い。本発明では、このウェットクレープの作用により、後述するバルキーワイヤー50等によって形成される表面構造等が崩れることなく維持されるため、拭き取り性と表面強度に優れるウェットワイパーとなる。
ここで、ウェットクレープ付与時のクレープ率は適宜の設計事項であるが概ね5〜20%とするのが望ましい。クレープ率が5%未満では嵩が出がたい。20%超では湿潤状態での引張り強度が低下ししなやかさが低下しやすい。
なお、クレープ率は、下記のように算出することができる。クレープ率:{(プレスロールの周速)−(バルキーワイヤーの搬送速度)}/(プレスロールの周速)×100。なお、バルキーワイヤーの前段に適宜の搬送ロール、搬送路を設ける場合には、上記「バルキーワイヤーの搬送速度」は、かかる搬送ロールや搬送路の速度とする。
ウェットクレープが施された湿紙W6は、次いでバルキーワイヤー50上に移行され、このバルキーワイヤー50を介してヤンキードライヤー60上に移行する。この移行の際に、バルキーワイヤー50をヤンキードライヤー60に押しつけるようにして移行させる。
バルキーワイヤー50は、縦糸、横糸が編まれ、表面に網目状に細かな規則的な凹凸があるため、ヤンキードライヤー60に押し付けられる際にシート内部にバルキーワイヤー50表面の凹凸に応じた規則的な粗密が生じる。この粗密構造が形成されると、特に微細な汚れやこびりついた汚れの拭き取り性が向上する。また、バルキーワイヤー50の表面の規則正しい凹凸が湿紙W6の表面に転写される。この表面の凹凸は、シート表面積を向上させる効果も奏する。なお、特に一つのタッチロールによってヤンキードライヤーに押しつけて行なうのが望ましい。タッチロール55を一つとすることでバルキーワイヤー50のペーパータオルの内部構造の改質、表面構造の改質を好適に行なわれ、また、嵩の低下を防止できる。
ここで、バルキーワイヤー50として好適なものを例示すると、そのメッシュは10〜50メッシュ(線/インチ)であり、バルキーワイヤー50を構成するワイヤーの太さは0.5mmφ程度である。なお、バルキーワイヤー50によって付与される湿紙の凹凸差(頂部と底部との差)は0.4〜1.0mmとするのが望ましい。これは、バルキーワイヤー50の表面構成とヤンキードライヤー60への接触圧、湿紙W6の厚さ、水分率等により調整できる。
このようにバルキーワイヤー50を介してヤンキードライヤー60に湿紙W6を移行させることで、フィブリル化した繊維の層構造に平面的に規則的、均等配向的に凹凸形状を設け、シート層構造内部での規則的な粗密構造を形成し、優れた拭き取り性の向上効果が得られる。なお、このバルキーワイヤーによる作用は、抄紙原料として上述の繊維の太さ(幅)が30〜40μm、平均繊維長が2.5〜5mm程度の針葉樹由来のパルプを用いるとより効果的である。なお、本形態ではバルキーワイヤーを採用した例であるが、本発明では必ずしもバルキーワイヤーを採用する必要はなく通常のフェルトを用いることも可能である。
ヤンキードライヤー60に移行された湿紙W6は、図2にも示されるように、ヤンキードライヤー表面に付着して搬送される過程で乾燥され、その後にヤンキードライヤー60からブレード61により引き剥がされ、適宜巻き取り工程を経て本実施形態にかかる原紙Tとされる。この原紙を後段のプライマシン等で複数枚積層して、適宜の枚数積層したり折り畳んだり、さらには薬液を含浸させれば、本実施形態に係るウェットワイパーが得られる。
ここで、ヤンキードライヤー60からシートW6をブレード61により引き剥がすようにする際にドライクレープが付与される。ドライクレープの付与によって、伸びとしなやかさが向上される。なお、前段のウェットクレープ付与工程P5及びバルキーワイヤーを用いた移行工程P6により、シートW6の表面に凹凸があり、ヤンキードライヤーへの付着力が低下されるためドライクレープを付与し難くなるが、前段のウェットクレープ付与時のクレープ率とこのドライクレープ付与時のクレープ率の和を10〜40%とすると、ウェットクレープの付与とドライクレープの付与との双方を効果的に付与することができる。
なお、本実施形態では、ドライクレープ付与時のクレープ率は、下記のように算出することができる。クレープ率:{(ヤンキードライヤーの周速)−(乾燥紙Tの搬送速度)}/(ヤンキードライヤーの周速)×100。
なお、以上、本実施形態に係る原紙の製造方法を図1の長網抄紙設備により製造する例を述べたが、本実施形態に係る原紙の製造方法は、この形態に限定されるわけではない。ヤンキードライヤーの前でウェットクレープを付与し、ヤンキードライヤーからの引き剥がしの際にドライクレープを付与できるようにした円網抄紙機を用いて製造することも可能である。
次いで、本発明の実施例と比較例について各種試験を行なった結果を下記に説明する。各例に係る物性等は、試験の結果とともに表1中に示す。なお、表中においてポリビニルアルコールはPVA、カルボキシメチルセルロースはCMCと表記する。
実施例1及び実施例2は、ドライクレープとウェットクレープの二種類のクレープを施した原紙を用いたもの、つまり繊維シートがドライクレープとウェットクレープの二種類のクレープを有するものであり、比較例1及び比較例2は、ドライクレープのみの原紙を用いたものである。
実施例1は、原紙にポリビニルアルコール繊維を含むもの、つまりポリビニルアルコール繊維を含む繊維シートであり、薬液はホウ酸を含むものである。また、実施例1の原紙は、予めポリビニルアルコール2質量%を含むバインダー溶液を塗布したものを用いた。薬液は、プロピレングリコール3質量%、プロピレングリコールモノメチルエーテル13質量%、塩化ベンザルコニウム0.2質量%、ホウ酸1質量%、界面活性剤・香料・防腐剤など0.7質量%、水82.1質量%としたものを用いた。
実施例2は、薬液に金属塩として硫酸亜鉛、原紙にカルボキシメチルセルロースを含むもの、つまりカルボキシメチルセルロースを含む繊維シートであり、薬液は金属塩として硫酸亜鉛を含むものである。具体的には、実施例2の原紙は、予めカルボキシメチルセルロース2質量%を含むバインダー溶液を塗布したものを用いた。薬液は、プロピレングリコール3質量%、プロピレングリコールモノメチルエーテル13質量%、塩化ベンザルコニウム0.2質量%、硫酸亜鉛1質量%、界面活性剤・香料・防腐剤など0.7質量%、水82.1質量%としたものを用いた。
なお、実施例1〜2、比較例1〜2の目付は、90gsm(45gsm×2)であり、薬液含浸率は原紙シートの重量に対して200質量%である。また、実施例1〜2、比較例1〜2には、同じパターンのエンボスを付与した。
比較例1における薬液は、実施例1と同じものとし、比較例2における薬液は実施例2のものと同じものとした。
各物性等の測定及び試験は下記のとおりにおこなった。記載がないものは、上記説明した測定方法のとおりに測定した。
〔拭き取り性試験(液状汚れ)〕
拭き取り性試験(液状汚れ)は、疑似便器素材として釉薬をもちいた陶磁器性の表面平滑な20cm×20cmの大きさのタイルを用い、その上に疑似泥状便を0.5g滴下し、これを各例に係る試料を用いて拭き取り操作を行ない、タイル上に残る疑似泥状便中のタンパク質性残渣物がタイル上にどの程度残っているかを測定することにより行なった。
疑似泥状便は、実際の泥状便を模したもので、そば粉177g、との粉177g、人工尿(組成;尿素2.0g、塩化ナトリウム0.8g、硫酸マグネシウム・6水和物0.08g、塩化カルシウム・2水和物0.03g、イオン交換水97.09g)1446g、カルボキシメチルセルロース50g、グリセリン10%溶液450g、界面活性剤(三洋化成株式会社製:ニューポール)0.57gを混合したものであり、その粘度は120cPsとした。
拭き取り操作は、実際の手による拭き取り操作を模して、タイル上の疑似泥上便上に100mm×100mmに裁断した試料を載せ、さらにその上に10cm×10cmの下面平坦を有する1kgのおもりを載せ、そのおもりごと試験片を左右方向に4回スライドさせるように移動させるようにした。なお、スライド幅は23cmとし、おもりと試験片とがずれないようにおもりの下面には面ファスナーを配置するようにした。
タイル上に残るタンパク質性残渣物の測定は、ATP拭き取り検査に基づいて、キッコーマンバイオケミファ株式会社製の「ルシパック(商標)PEN」及び「ルミテスター(商標)PD-20」を用いて検出することとした。
〔拭き取り性試験(乾燥汚れ)〕
拭き取り性試験(乾燥汚れ)は、疑似便器素材として〔拭き取り性試験(液状汚れ)〕と同様の釉薬をもちいた陶磁器性の表面平滑な20cm×20cmの大きさのタイルを用い、その上に疑似泥状便を0.5g滴下した後、40℃、湿度0%の恒温槽内で20分間乾燥させて、こびりつかせ、これを各例に係る試料を用いて拭き取り操作を行ない、タイル上に残る疑似泥状便中のタンパク質性残渣物がタイル上にどの程度残っているかを測定することにより行なった。タイル上に残るタンパク質性残渣物の測定は、〔拭き取り性試験(液状汚れ)〕と同様である。なお、乾燥後の疑似泥状便の質量は0.2〜0.3gとなる。
拭き取り操作は、実際の手による拭き取り操作を模して、タイル上の疑似泥上便上に100mm×100mmに裁断した試料を載せ、さらにその上に10cm×10cmの下面平坦を有する1kgのおもりを載せ、そのおもりごと試験片を左右方向にスライドさせるように移動させるようにした。なお、スライド幅は23cmとし、おもりと試験片とがずれないようにおもりの下面には面ファスナーを配置するようにした。スライドの回数は、通常、便器等にこびりついた乾燥汚れは、汚れが視認できなくなったところで終了することから、汚れが視認できなくなったところで終了することとした。但し、5回以上のスライド回数では、拭き取り性が良好とはいえないから、最大回数は5回とした。
〔汚れの分散性〕上記〔拭き取り性試験(液状汚れ)〕行なった試験片の拭き取り面及びその反対面を目視にて確認し、疑似泥状便が広く分散して試験片の広範囲で拭き取りが行なわれているものを◎、疑似泥状便がある程度分散して拭き取りが行なわれているものを○、裏抜けなどの問題が認められるものを×と評価した。
〔水解性〕上述のJIS P 4501(2006)4.5「ほぐれやすさ」にしたがって測定した。
〔含浸速度〕上述のJIS L 1907(2010)のバイレック法に準じて測定した。
〔表面強度〕上述のJIS L 0849(2013)に準じて測定した。
〔引張強度〕上述のJIS P 8113に準じて測定した。縦横比は、MD方向、CD方向の引張強度の比率である。
表1の各結果において、特に実施例1と比較例1とを対比すると、ドライクレープとウェットクレープの二種類のクレープ加工を施した原紙を用いた実施例1は、ドライクレープのみの比較例1に比して、表面強度の向上と拭き取り性の向上が認められる。特に、乾燥汚れに対する拭き取り性は、拭き取り回数が1回少ないにも関わらず、各段に拭き残りが少ない。また、実施例2と比較例2とを対比すると、ドライクレープとウェットクレープの二種類のクレープ加工を施した原紙を用いた実施例2は、ドライクレープのみの比較例2に比して、表面強度の向上と拭き取り性の向上が認められる。特に、実施例2においても、乾燥汚れに対する拭き取り性は、拭き取り回数が1回少ないにも関わらず、各段に拭き残りが少ない。
これらの結果をまとめると本発明にしたがってドライクレープとウェットクレープの二種類のクレープ加工を施した繊維シートとし、さらに、繊維シートにポリビニルアルコールを含むとともに、薬液中に、ホウ酸を含むようにするか、繊維シートにカルボキシメチルセルロールを含むとともに、薬液中に金属塩を含むようにすることで、液状汚れに加えて便器等に付着した乾燥汚れに対する拭き取り性及び表面強度が向上することが認められる。すなわち、本発明に係るウェットワイパーは、液状汚れに加えて乾燥汚れに対する拭き取り性及び表面強度に優れるものでるあることが認められる。