(1)有機発光素子
まず本発明の有機発光素子について説明する。本発明の有機発光素子は、陽極と、陰極と、前記陽極と前記陰極との間に配置されている発光層と、を有する。本発明において、発光層は蛍光を発する発光材料を有している。また本発明においては、この発光材料の発光波長領域において、前記発光層に含まれる構成材料のうち励起最低三重項エネルギーが最も小さい材料の励起最低三重項状態における吸収スペクトルの吸収ピークが存在しないことを特徴とする。ここで吸収スペクトルの吸収ピークが存在しないとは、この吸収スペクトルが、発光材料の発光波長領域に、吸収ピークを持たないことを意味する。
本発明の有機発光素子の具体的な構成としては、例えば、下記(A)乃至(E)の構成が挙げられる。
(A)(基板/)陽極/ホール輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(B)(基板/)陽極/ホール注入層/ホール輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(C)(基板/)陽極/ホール注入層/ホール輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(D)(基板/)陽極/ホール注入層/ホール輸送層/発光層/ホールブロッキング層/電子輸送層/陰極
(E)(基板/)陽極/ホール注入層/ホール輸送層/発光層/ホールブロッキング層/電子輸送層/電子注入層/陰極
ただし上記(A)乃至(E)に示される構成は、あくまでも本発明の実施形態の一つに過ぎず、本発明の有機発光素子の構成はこれらに限定されるものではない。例えば、電極と有機化合物層界面に絶縁性層、接着層あるいは干渉層を設ける等の多様な層構成をとることができる。
発光層の構成材料のうち、発光層全体に対する重量比が最も大きいものがホストである。また発光層の構成材料のうち、発光層全体に対する重量比がホストよりも小さく、かつ主たる発光を担うものが発光性ドーパントである。また本発明においては、発光層の構成材料として、ホストよりも重量比が小さく、かつ発光性ドーパントの発光を助ける材料を発光層に含ませてもよい。このように、発光性ドーパントの発光を補助する材料は、アシスト材料又は第二ホストと呼ばれる材料である。
本発明において、発明者等は、これまでの技術とは異なるアプローチで連続駆動耐久性を向上させる素子の開発を試みた。このアプローチとは、具体的には、素子の劣化を引き起こす経路を分析し、この経路へ導く原因となる現象・プロセスを改善することを試みることである。
本発明において、発明者等は、はじめに、次に説明する現象に気付いた。即ち、最低三重項励起状態の化合物が、発光層から発せられる光の波長領域に吸収ピークを有していると劣化するという現象である。
以下、最低三重項励起状態の化合物が、発光層から発せられる光によりさらに励起されることで、材料劣化が引き起こす現象を検証する実験について説明する。
(1)検証実験用のサンプル作製
まず以下に列挙される化合物をそれぞれ用意した。尚、以下に列挙される化合物は、いずれも検証実験用のサンプルとなる化合物である。
以下に説明する方法により検証実験用のサンプルを作製した。まずスパッタ法により、ガラス基板(基板)の上に、酸化錫インジウム(ITO)を成膜して陽極を形成した。このとき陽極の膜厚を130nmとした。次に、陽極が形成されている基板を、アセトン、イソプロピルアルコール(IPA)で順次超音波洗浄し、次いでIPAで煮沸洗浄後乾燥した。さらに、UV/オゾン洗浄した。以上に説明した方法で処理した基板を透明導電性支持基板として次に工程で用いた。
次に、化合物8(ホール注入層材料)とクロロホルムとを混合して、濃度が0.1重量%となるようにクロロホルム溶液を調製した。次に、このクロロホルム溶液を、ITO電極の上に滴下し、最初に500RPMの回転で10秒、次に1000RPMの回転で1分間スピンコートを行うことで膜を形成した。この後真空オーブン内にて80℃で10分間膜を乾燥させることで、膜中の溶剤が完全に除去されたホール注入層が得られた。このとき得られたホール注入層の膜厚は11nmであった。
次に、真空蒸着法により、ホール注入層の上に、化合物15を成膜してホール輸送層を形成した。このときホール輸送層の膜厚を15nmとした。
次に、真空蒸着法により、ホール輸送層の上に、化合物16(ホスト)と、化合物17(発光性ドーパント)とを、それぞれ別のボートから同時蒸着して発光層を形成した。このとき発光層に含まれる発光性ドーパントの濃度は5重量%であり、また発光層の膜厚を25nmとした。
次に、真空蒸着法により、発光層の上に、化合物6を成膜し電子輸送層を形成した。このとき電子輸送層の膜厚を25nmとした。
以上により、ホール注入層と、ホール輸送層と、発光層と、電子輸送層とからなる有機化合物層を形成した。尚、この有機化合物層を構成する層のうち真空蒸着法により形成したものについては、蒸着時の真空度を7.0×10-5Pa以下とし、成膜速度を0.8nm/sec以上1.0nm/sec以下の条件とした。ただし、発光層において、成膜速度は、ホストの蒸着速度及びドーパントの蒸着速度を合わせたものである。
次に、真空蒸着法により、有機化合物層の上にフッ化リチウム(LiF)を成膜してLiF膜を形成した。このときLiF膜の膜厚を0.5nmとし、蒸着時の真空度を1.0×10-4Paとし、成膜速度を0.05nm/secとした。さらに真空蒸着法により、アルミニウムを成膜してAl膜を成膜した。このときAl膜の膜厚を150nmとし、蒸着時の真空度を1.0×10-4Paとし、成膜速度を1.0nm/sec以上1.2nm/sec以下の条件とした。尚、LiF膜とAl膜とからなる積層薄膜は電子注入電極(陰極)として機能する。
次に、作製した有機発光素子に水分が吸着しないように、露点−70℃以下の窒素雰囲気中で保護用ガラス板をかぶせ、エポキシ系接着材で封止した。尚、保護ガラスの接着面側には掘り込みを入れ、水分吸着用のシート(有機EL用水分ゲッターシート、ダイニック株式会社製)を封入した。以上の方法により検証実験用サンプルとなる有機発光素子を得た。以下、この有機発光素子をサンプル1とする。
(2)検証実験
上記サンプル1に、逆バイアス−10V(1msec)と順バイアス+5.6V(1msec)とからなる矩形波電圧を周期1Hzで繰り返し印加した。尚、実験の際にサンプル1に電圧が印加されていない時は0Vである。ここで、順バイアス+5.6Vを印加する時には発光層中に電荷が注入され、励起最低一重項(S1)状態の励起子と励起最低三重項(T1)状態の励起子とが生成される。またサンプル1には、定常状態駆動時で+5.6Vの順バイアスを印加した際には約100mA/cm2の電流が通電している。
そして順バイアスの印加が終わり逆バイアス−10Vが印加されると、発光層中の電荷は電極を通して引き抜かれる。このとき励起最低一重項状態となっている分子からは数nsecオーダーで光が発せられることで励起子自体が速やかに消滅する。一方で、励起最低三重項状態となっている分子は励起寿命が長く数十μsec乃至数百μsecの間、発光層に励起子が残存すると考えられる。
ここで逆バイアス印加から1μsec後のタイミングで、波長470nmのパルス光を有機発光素子に繰り返し照射した。パルス光はレーザー光をOPO(Continnum製、Surelite OPO)によって光波長変換したものであり、パルス幅約4nsec、約4mWのレーザー光を直径2mmの有機発光素子の駆動部に集光した。このときパルス光源として、具体的には、Nd:YAGレーザーSurelite(Continnum製)を用いた。尚、有機発光素子に含まれる有機材料は、基底状態では470nmの光は吸収しないため、発光層中に残存する励起最低三重項状態の分子のみがこのレーザー光を吸収しさらに励起される。その結果、高次の励起三重項(Tn)状態の励起子が生成される。
このように電圧印加及びレーザー照射を繰り返し5時間行った後、電流効率(cd/A)を測定し実験前と比較した。その結果、電圧印加及びレーザー照射を行った素子は実験前に比べ、3V印加時の電流効率が約8%低下していた。因みに、矩形波電圧を印加する際に、有機発光素子に印加される順方向電流の積算通電時間は、下記計算式の通り、0.05hであった。
1[msec]×10[Hz]×5[h]=0.05[h]
次に、サンプル1の作製方法と全く同様の方法で作製したサンプル2について、サンプル1と同様に矩形波電圧印加とレーザー照射を行った。ただしサンプル2においては、矩形波の順バイアス時の電圧を+2.4Vにしている。ここで+2.4Vは閾値電圧以下の低い電圧であるため、順バイアスの印加の際には発光層への電荷注入は行われない。このため、サンプル2においては励起最低一重項状態の励起子及び励起最低三重項状態の励起子は生成しない。従って、レーザー照射による高次の励起三重項状態の励起子の生成も起こらない。この条件で、電圧印加及びレーザー照射を繰り返し5時間行った後、電流効率(cd/A)を測定し実験前と比較したところ、電流効率の変化は測定誤差(約1%)以下であった。
次に、サンプル1と全く同様に作製したサンプル3について、サンプル1と同様に矩形波電圧印加を行うが、サンプル3においてはレーザー照射をしないものとする。5時間の電圧印加を行った後、電流効率(cd/A)を測定し実験前と比較したところ、電流効率の変化は測定誤差(約1%)以下であった。
(3)検証実験の結果に関する考察
以上の3種のサンプルのうち、顕著に効率低下が見られたのはサンプル1のみであった。このことから、最低三重項励起状態の励起子に対してレーザーが照射されたことによる励起エネルギーの注入によってもたらされる高次の励起三重項状態の励起子の生成が、有機発光素子の効率低下を引き起こしたと考えられる。
上記の検証実験より、最低三重項励起状態の励起子が素子外部からの照射光によって励起されることにより素子が劣化したものと考えられる。ただし、実際の有機発光素子においては、発光層中に生じる発光材料の発光によって励起子が励起され劣化することも考えられる。しかし研究を重ねた結果、発明者等は、高次の励起三重項状態の励起子の生成によってもたらされる有機発光素子の効率劣化の本質に気付いた。即ち、素子外部又は発光層からの光が劣化の主たる原因ではなく、むしろ励起最低一重項状態の発光材料から励起最低三重項状態の励起子へエネルギーが移動することによって励起最低三重項状態の励起子が励起され劣化すると考えた。
というのも発光材料からの発光を最低三重項励起状態の励起子が吸収する(発光−再吸収)確率よりも、励起状態の発光材料から最低三重項励起状態の励起子へエネルギーが移動する確率の方が、効率が高く支配的であると考えられるからである。発光−再吸収と同様に、エネルギー移動も、励起最低三重項状態の励起子を通じて行われる。
そして、特に、エネルギーの高い励起最低一重項状態からのエネルギー移動、即ち、フェルスター型のエネルギー移動が重要であると考えられる。これは、高次の励起三重項状態のエネルギーが高い方が不安定であり、より材料劣化を起こしやすいと考えられるためである。
以上説明したように、本発明の発明者等は、励起最低一重項状態の発光材料から励起最低三重項状態の励起子へエネルギーが移動することで生成される高次の励起三重項状態の励起子が、劣化経路(劣化要因)となっていると考えた。これを踏まえて本発明においては、この劣化経路を形成しにくくする手法、具体的には、励起最低三重項状態の励起子の吸収スペクトルの観点から発光層を構成する材料を制御することで効果的に素子の劣化を抑制し、駆動寿命の向上を可能にするものである。
特に、高次の励起三重項状態となっている励起子のエネルギーが高いと、劣化がより顕著になると考えられるため、発光色のエネルギーが高い青色発光素子の場合には、特にこの劣化が問題になる。そのため、本発明は特に青色発光素子の場合に発明の効果が顕著に現れる。
尚、本発明における青色発光とは、JIS規格(JIS Z8110)の色度区分において、青の範囲のxy色度座標を示す発光をいう。また、本発明において発光スペクトルは、後述するように、発光層と同様の構成の薄膜をガラス基板上に直接成膜し、この薄膜のフォトルミネッセンスを測定することによって得られる発光スペクトルである。
ところで、本発明においては、発光層に含まれる構成材料のうち励起最低三重項エネルギーが最も小さい材料の励起最低三重項状態に着目する。というのも発光層内で生成された励起三重項状態となる分子のうち、最も存在確率が高いのは励起最低三重項エネルギーの最も小さい材料に由来するものだからである。
本発明の有機発光素子は、発光層において励起最低三重項エネルギーが最も小さい材料の、励起最低三重項状態の吸収スペクトル(T−T吸収スペクトル)が、発光材料の発光波長領域に、吸収ピークを持たないようにする。これは、発光材料の発光波長領域において、発光層に含まれる構成材料のうち励起最低三重項エネルギーが最も小さい材料の励起最低三重項状態における吸収スペクトルの吸収ピークが存在しないことと同意である。この構成を有することにより、本発明においては、発光材料の励起状態から、励起最低三重項エネルギーの最も小さい材料の励起最低三重項状態への、エネルギー移動を抑制することになるので、素子の劣化を防止することができる。
尚、上述した吸収ピークを持つということは、その対応するエネルギーに高次の励起三重項状態が存在する(基底状態をゼロエネルギーとして)ことを意味する。吸収ピークを持つ場合、発光材料から励起最低三重項状態へのエネルギーの移動が円滑に起こってしまう。また、本発明において発光波長領域とは、発光層において発せられる光の発光スペクトルのうち、発光スペクトルの最大強度の1/5以上の強度となる波長範囲をいう。
また本発明において、吸収ピークとは、吸収ピーク波長をエネルギー換算した際に、そのエネルギーを中心に高次の励起三重項状態が存在する(励起最低三重項状態をゼロエネルギーとする)ことを吸収スペクトルの波形の中で明らかに示すものであればよい。このとき吸収ピークの具体的形状については限定しないが、測定ノイズレベル以上の凸状のものをいう。ここで測定ノイズレベルは測定条件及び装置の性能限界で決定されるものであり、測定ノイズか否かは、例えば、複数回測定して対象となるピークが再現されるかどうかで判断できる。また対象の材料を溶解していない溶媒のみのサンプルの測定結果と比較することで、対象の材料固有の吸収ピークかどうか判断する方法もある。
また本発明においては、発光波長領域における、励起最低三重項状態となっている材料の光の吸収量は小さいことが好ましい。より具体的には、最低励起三重項状態となっている材料の光の吸収量はモル吸光係数で6,500以下であって測定ノイズレベル以上であることが好ましい。これは本発明の発明者の実験によって判明した。尚、モル吸光係数の単位は[L/(mol・cm)]であるため、好ましい最低三重項励起状態となっている分子の光の吸収量は、6,500[L/(mol・cm)]以下と表現することができる。
本発明において発光材料とは、有機発光素子として取り出したい発光を発する材料のことである。従って、例えば、発光層がホストと発光ドーパントとからなる場合には、発光ドーパントが発光材料である。
本発明において、有機発光素子が有する発光層には、励起最低三重項エネルギーの最も小さい材料や発光材料だけでなく他の材料を含めてもよい。また本発明において、有機発光素子が有する発光層は、単一の材料で構成されてもよい。この場合には、励起最低三重項エネルギーの最も小さい材料となる化合物と発光材料となる化合物とが同一となる。
また、上記の劣化経路をさらに形成しにくくする手法として、好ましくは、発光層中の励起最低三重項状態の励起子の寿命、即ち、励起寿命を短くする手法がある。この手法により、励起最低一重項状態の発光材料から励起最低三重項状態の励起子へのエネルギー移動をさらに抑制することができる。励起最低三重項状態の励起子の励起寿命を短くするためには、発光層に含まれる材料のうち最も励起最低三重項エネルギーが小さい材料をホストにするのが好ましい。ホストは発光層の構成材料のうち重量比が最も大きい材料であるため、励起最低三重項状態の励起子が隣接分子間を移動し易くなる。よって、二つの励起最低三重項状態の励起子が衝突し、消滅する現象、T−T Annihilation(TTA)が発生しやすくなるのである。一方、発光層に含まれる材料のうち最も励起最低三重項エネルギーが小さい材料が、ドーパント等といった発光層において重量比が小さい材料である場合、励起最低三重項状態の励起子がトラップされ、消滅せずに、長時間発光層に存在し易くなる。この励起最低三重項状態の励起子のトラップは、本発明においては好ましくはない。
本発明において、発光層に接して設けられるホール輸送層及び電子輸送層の励起最低三重項エネルギーは、いずれも発光層で最も励起最低三重項エネルギーが小さい材料の励起最低三重項エネルギーよりも大きいことが好ましい。これによって、ホール輸送層及び電子輸送層によって励起最低三重項状態の励起子をブロックすることができるため、発光層における励起最低三重項状態の励起子同士の衝突及び消滅を促進することができる。
本発明において、さらに好ましくは、発光層中で最も励起最低三重項エネルギーの小さい材料がバイポーラ性の材料であることが挙げられる。バイポーラ性の材料とは正孔移動度及び電子移動度が共に10-4cm2/Vs以上である電荷輸送性の高い材料である。電荷輸送性の高い材料は、分子スタック性が高く分子間距離が短いため、励起最低三重項状態の励起子が拡散する可能性が高い。これによって、発光層での、励起最低三重項状態の励起子同士の衝突、消滅が促進され、励起最低三重項状態の励起寿命が短くなり易くなる。バイポーラ性の材料として、特に好ましいのは、ピレン骨格を有する材料である。ピレン骨格を有する材料は、主骨格であるピレン骨格が平面性の高い構造であるので、分子スタック性が高い。このため、励起最低三重項状態の励起子の拡散性も高くなり易い。
また、本発明において、発光層中で最も励起最低三重項エネルギーの低い材料として、アミノ基や芳香族炭化水素と複素環同士との結合によって生じるC−N単結合を分子中に含まない炭化水素化合物がより好ましい。芳香族炭化水素同士の結合によって生じるC原子とC原子との単結合(C−C単結合)や芳香族炭化水素とアルキル基との結合によって生じるC−C単結合の解離エネルギーはおよそ4eV乃至5eVである。反対に、例えば、アミノ基と芳香族炭化水素との結合によって生じるC原子とN原子との単結合(C−N単結合)や複素環と芳香族炭化水素との結合によって生じるC−N単結合の解離エネルギーは3eV乃至4eV程度である。つまり、C−N単結合はC−C単結合と比較して解離エネルギーが小さいため、励起状態を経由して結合が解離しやすいのである。
本発明において、発光層における電荷再結合領域は膜厚方向に広いことが望ましい。仮に、電荷再結合領域が発光層と発光層に隣接する層との界面といった狭い領域に極端に偏ると、発光領域において励起最低一重項状態の励起子の密度が高くなり、励起最低一重項状態から励起最低三重項状態へエネルギー移動が起こりやすくなる。こうなると、連続駆動による劣化が顕著になりやすくなる。以下に、電荷再結合領域が発光層と隣接層の界面の狭い領域に極端に偏ることなく、連続駆動による劣化が起こりにくくするための要件について説明する。
本発明の発明者らが検討した結果、ピレン骨格を有する化合物が、特に、電子輸送性に優れることが分かった。即ち、ピレン骨格を有する化合物を用いると、ピレン骨格を有する化合物を有する層の電子移動度が1×10-4cm2/Vs以上になりやすい傾向にあることがわかった。従って、発光層にピレン骨格を有する化合物を導入することで、素子の駆動電圧の低電圧化を図ることができ、電力効率を高めることが可能になる。しかしその反面、発光層内の電子とホールとのキャリアバランスが崩れて、発光(電荷再結合)領域が発光層の陽極側界面に極端に偏るという問題が従来はあった。このため、素子の発光効率の低下や、連続駆動による劣化が問題となることがあった。
上記の諸問題を改善するために、本発明では、発光層に特定の機能を有する発光性ドーパントをドープする。ここで発光性ドーパントが有する特定の機能とは、ホストとの間で下記式(I)の関係を満たすエネルギーを発光性ドーパントが有することをいう。
ELD−ELH≧0.15eV (I)
式(I)において、ELDは、下記式(Ia)から導き出せるパラメータである。
ELD=|IpD|−EGD (Ia)
式(Ia)において、IpDは、発光性ドーパントのイオン化ポテンシャルを表し、EGDは、発光性ドーパントのエネルギーギャップを表す。
式(I)において、ELHは、下記式(Ib)から導き出せるパラメータである。
ELH=|IpH|−EGH (Ib)
式(Ib)において、IpHは、ピレン骨格を有する化合物のイオン化ポテンシャルを表し、EGHは、ピレン骨格を有する化合物のエネルギーギャップを表す。
尚、式(I)中のパラメータであるELD及びELHは、電子輸送に関わる軌道エネルギーの相対的な指標、いわゆる相対値である。
ここで電子輸送に関わる軌道エネルギー(相対値)が、上記式(I)の関係を満たすことにより、発光性ドーパントは電子トラップドーパントとして機能し、発光層の電子輸送性能はホスト単体と比較して低下する。即ち、発光層内の電子移動度がホスト単体の電子移動度よりも小さくなる。これにより、キャリアバランスの崩れや、発光領域の極端な偏りという課題が解消される。また本発明においては、発光性ドーパントが有する電子トラップ性能により、発光層の電子移動度がホスト単体と比較して一桁以上低下することが望ましい。
尚、本発明者等が発光層のキャリア移動度測定を行いこの測定の結果を検討した結果、式(I)の要件を満たしていない場合(ELD−ELH<0.15eVの場合)、電子トラップ効果が十分でないこともわかった。
本発明においては、ホストとなるピレン骨格を有する化合物のホール移動度μHは、5×10-5cm2/Vs以下である。本発明においては、発光性ドーパントが電子トラップとして機能するため、発光層の電子輸送性能の指標となる発光層内の電子移動度は低下する。ここで発光層のホール移動度が発光層内の電子移動度と比較して相対的に大きい場合、発光層内に含まれるキャリア(電子、ホール)のバランスが崩れて、発光領域が発光層の陰極側の界面に極端に偏る。この結果、素子の発光効率の低下や、連続駆動による劣化が生じやすくなる。
そこで、ホスト単体のホール移動度μHを5×10-5cm2/Vs以下に調整する。具体的には、ホール移動度μHが5×10-5cm2/Vs以下の材料を発光層のホストとして用いる。こうすることで、発光層内のキャリアバランスが崩れるにくくなるので発光領域の偏りが解消される。
また発光領域の偏りの解消という観点から、発光層内における電子移動度とホール移動度とが大きく偏らないようにすることが好ましい。そこで、ホストとなるピレン骨格を有する化合物を含む発光層のホール移動度をμHEMLとし、このピレン骨格を有する化合物を含む発光層の電子移動度をμEEMLとしたときに、下記式(II)の要件を満たすことが好ましい。
0.1≦{μHEML/μEEML}≦1000 (II)
ここで下記式(IIa)の要件を満たすことがより好ましい。
0.1≦{μHEML/μEEML}≦200 (IIa)
本発明において、ホストとなるピレン骨格を有する化合物として、好ましくは、トリフェニレン骨格を有する部分構造をさらに含む化合物である。ピレン骨格を有する化合物に少なくとも一つのトリフェニレン骨格を置換基としてさらに導入することで、ホスト自体のホール移動度を本発明の作用効果を奏するに足る値、具体的には、5×10-5cm2/Vs以下とすることができる。
ここでホストとなるピレン骨格を有する化合物として、特に好ましくは、下記一般式[1]又は[2]に示される化合物である。
一般式[1]において、R1乃至R15は、それぞれ水素原子又は置換あるいは無置換のアルキル基を表し、それぞれ同じでも異なっていてもよい。
R1乃至R15で表されるアルキル基として、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。
上記アルキル基がさらに有してもよい置換基として、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等のアルキル基等が挙げられる。
一般式[1]において、nは0乃至2の整数である。
一般式[2]において、R13乃至R17は、それぞれ水素原子、置換あるいは無置換のアルキル基、を表し、それぞれ同じでも異なっていてもよい。
一般式[2]において、R18及びR19は、それぞれ置換あるいは無置換のアルキル基を表し、それぞれ同じでも異なっていてもよい。
一般式[2]において、R13乃至R19で表されるアルキル基及びこのアルキル基がさらに有してもよい置換基の具体例は、一般式[1]中のR1乃至R15で表されるアルキル基の具体例と同様である。
一般式[2]において、nは0以上2以下の整数である。
ところで、上記一般式[1]及び一般式[2]の化合物は、その構造から、下記(i)及び(ii)の特徴を有している。
(i)アモルファス性が高く、耐熱性が高い。
(ii)電子及びホールの両者とも、好適なキャリア注入レベルを得ることが容易である。
本発明において、発光性ドーパントとして用いられる化合物としては、フルオランテン誘導体やホウ素錯体等が好ましい。これらは、発光性ドーパントのELDの絶対値が大きい傾向にあるからである。フルオランテン誘導体やホウ素錯体の具体例として、例えば、以下に示される基本骨格を有する化合物が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明において、発光層に含まれるホストと発光性ドーパントとの混合濃度は、上述した電子トラップ機構や、ホストから発光性ドーパントへのエネルギー移動を考慮して適宜設定する。具体的には、ホストに対する発光性ドーパントの濃度は、好ましくは、0.01質量%以上20質量%以下であり、より好ましくは、0.2質量%以上5質量%以下ある。
本発明の有機発光素子は、青色を発するのに好適な発光素子である。また白色光を外部へ出力させる場合においても好適に用いられる。本発明の有機発光素子を白色発光の有機発光素子として用いる場合、素子を構成する発光層の構成としては、以下に説明する二種類の構成がある。
1つ目は、発光層(発光層に相当する層も含む)が単一の層である構成である。この1つ目の構成においては、発光層(発光層に相当する層も含む)となる層が複数種の発光材料を有している。そしてこれら複数種の発光材料のうち、少なくとも1種は他の発光材料と異なる色の光を発する。
2つ目は、有機化合物層が複数の発光層からなる積層体を有する構成である。この2つ目の構成においては、所定の発光色を発する発光材料が含まれる発光層が複数設けられている。これら複数の発光層のうち、少なくとも1層は他の発光層とは異なる色の光を発する発光層である。
本発明の有機発光素子には、必要に応じて従来公知の低分子系又は高分子系のホール注入・輸送性化合物、ホストとなる化合物、発光性化合物あるいは電子注入・輸送性化合物等を一緒に使用することができる。
以下にこれらの化合物例を挙げる。
ホール(正孔)注入・輸送性化合物としては、陽極からのホールの注入を容易にし、また注入されたホールを発光層に輸送するためにホール移動度が高い材料であることが好ましい。ホール注入性能あるいはホール輸送性能を有する低分子及び高分子系材料としては、トリアリールアミン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、オキサゾール誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、ポリ(ビニルカルバゾール)、ポリ(チオフェン)、その他導電性高分子が挙げられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
発光性化合物としては、蛍光発光材料となる公知の化合物を使用することができる。
電子注入・輸送性化合物としては、陰極からの電子の注入を容易にし、注入された電子を発光層に輸送する機能を有するものから任意に選ぶことができ、ホール注入性化合物あるいはホール輸送性化合物のホール移動度とのバランス等を考慮し選択される。電子注入性能あるいは電子輸送性能を有する化合物としては、オキサジアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、チアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、ピラジン誘導体、トリアゾール誘導体、トリアジン誘導体、ペリレン誘導体、キノリン誘導体、キノキサリン誘導体、フルオレノン誘導体、アントロン誘導体、フェナントロリン誘導体、有機金属錯体等が挙げられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。また、イオン化ポテンシャルの大きい材料は、ホールブロック材料としても使用できる。
本発明の有機発光素子において、少なくともホール輸送層と発光層と電子輸送層とを有する有機化合物層は、以下に示す方法により形成される。一般には真空蒸着法、イオン化蒸着法、スパッタリング、プラズマあるいは、適当な溶媒に溶解させて公知の塗布法(例えば、スピンコーティング、ディッピング、キャスト法、LB法、インクジェット法等)により薄膜を形成する。ここで真空蒸着法や溶液塗布法等によって層を形成すると、結晶化等が起こりにくく経時安定性に優れる。また塗布法で成膜する場合は、適当なバインダー樹脂と組み合わせて膜を形成することもできる。
上記バインダー樹脂としては、ポリビニルカルバゾール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、尿素樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらバインダー樹脂は、ホモポリマー又は共重合体として一種類を単独で使用してもよいし、二種類以上を混合して使用してもよい。さらに必要に応じて、公知の可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の添加剤を併用してもよい。
陽極の構成材料としては、仕事関数がなるべく大きなものがよい。例えば、金、白金、銀、銅、ニッケル、パラジウム、コバルト、セレン、バナジウム、タングステン等の金属単体あるいはこれらの合金、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化錫インジウム(ITO)、酸化亜鉛インジウム等の金属酸化物である。また、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン等の導電性ポリマーでもよい。これらの電極物質は一種類を単独で使用してもよいし複数種類を併用して使用してもよい。また、陽極は一層構成でもよく、多層構成でもよい。
一方、陰極の構成材料としては、仕事関数の小さなものがよい。例えば、リチウム等のアルカリ金属、カルシウム等のアルカリ土類金属、アルミニウム、チタニウム、マンガン、銀、鉛、クロム等の金属単体が挙げられる。あるいはこれら金属単体を組み合わせた合金も使用することができる。例えば、マグネシウム−銀、アルミニウム−リチウム、アルミニウム−マグネシウム等が使用できる。酸化錫インジウム(ITO)等の金属酸化物の利用も可能である。これらの電極物質は一種類を単独で使用してもよいし、複数種類を併用して使用してもよい。また、陰極は一層構成でもよく、多層構成でもよい。
また陽極及び陰極の少なくともいずれか一方は、透明又は半透明であることが望ましい。
本発明で用いる基板としては、特に限定するものではないが、金属製基板、セラミックス製基板等の不透明性基板、ガラス、石英、プラスチックシート等の透明性基板が用いられる。また、基板にカラーフィルター膜、蛍光色変換フィルター膜、誘電体反射膜などを用いて発光色をコントロールする事も可能である。また、基板上に薄膜トランジスタ(TFT)を作成し、それに接続して素子を作成することも可能である。
また、素子の光取り出し方向に関しては、ボトムエミッション構成(基板側から光を取り出す構成)および、トップエミッション構成(基板の反対側から光を取り出す構成)のいずれも可能である。
尚、作製した素子に対して、酸素や水分等との接触を防止する目的で保護層あるいは封止層を設けることもできる。保護層としては、ダイヤモンド薄膜、金属酸化物、金属窒化物等の無機材料膜、フッ素樹脂、ポリパラキシレン、ポリエチレン、シリコーン樹脂、ポリスチレン樹脂等の高分子膜、さらには、光硬化性樹脂等が挙げられる。また、ガラス、期待不透過性フィルム、金属などをカバーし、適当な封止樹脂により素子自体をパッケージングすることもできる。
(2)有機発光素子の用途
本発明の有機発光素子は、表示装置や照明装置の構成部材として用いることができる。他にも、電子写真方式の画像形成装置の露光光源や液晶表示装置のバックライト、白色光源にカラーフィルターを有する発光装置等の用途がある。カラーフィルターは例えば赤、緑、青の3つの色が透過するフィルターが挙げられる。
本発明の表示装置は、本発明の有機発光素子を表示部に有する。尚、この表示部は複数の画素を有する。
そしてこの画素は、本発明の有機発光素子と、発光輝度を制御するための能動素子(スイッチング素子)又は増幅素子の一例であるトランジスタとを有し、この有機発光素子の陽極又は陰極とトランジスタのドレイン電極又はソース電極とが電気接続されている。ここで表示装置は、PC等の画像表示装置として用いることができる。上記トランジスタとして、例えば、TFT素子が挙げられ、このTFT素子は、例えば、基板の絶縁性表面に設けられている。またこのTFT素子は、透明酸化物半導体からなる電極を有するのが好ましい。
表示装置は、エリアCCD、リニアCCD、メモリーカード等からの画像情報を入力する画像入力部を有し、入力された画像を表示部に表示する画像情報処理装置でもよい。
また、撮像装置やインクジェットプリンタが有する表示部は、タッチパネル機能を有していてもよい。このタッチパネル機能の駆動方式は特に限定されない。
また表示装置はマルチファンクションプリンタの表示部に用いられてもよい。
照明装置は例えば室内を照明する装置である。照明装置は白色(色温度が4200K)、昼白色(色温度が5000K)、その他青から赤のいずれの色を発光するものであってもよい。
本発明の照明装置は、本発明の有機発光素子と、この有機発光素子と接続し有機発光素子に駆動電圧を供給するAC/DCコンバーター回路(交流電圧を直流電圧に変換する回路)とを有している。尚、この照明装置は、カラーフィルターをさらに有してもよい。
本発明の画像形成装置は、感光体とこの感光体の表面を帯電させる帯電部と、感光体を露光して靜電潜像を形成するための露光部と、感光体の表面に形成された静電潜像を現像するための現像器とを有する画像形成装置である。ここで画像形成装置に備える露光手段、例えば、露光器は、本発明の有機発光素子を含んでいる。
また本発明の有機発光素子は、感光体を露光するための露光器の構成部材(発光部材)として使用することができる。本発明の有機発光素子を有する露光器は、例えば、本発明の有機発光素子と本発明の有機発光素子に接続される能動素子とを有する発光点を少なくとも1つ有している。発光点は複数有しているのが好ましい。そして、この発光点が所定の直線方向(例えば、感光体の長軸方向)に沿って配列されている。
次に、図面を参照しながら本発明の表示装置につい説明する。図1は、有機発光素子とこの有機発光素子に接続されるスイッチング素子とを有する表示装置の例を示す断面模式図である。尚、図1の表示装置1を構成する有機発光素子として、本発明の有機発光素子が用いられている。
図1の表示装置1は、ガラス等の基板11とその上部にスイッチング素子となるTFT素子18又は有機化合物層を保護するための防湿膜12が設けられている。また符号13は金属のゲート電極13である。符号14はゲート絶縁膜14であり、15は半導体層である。
TFT素子18は、半導体層15とドレイン電極16とソース電極17とを有している。TFT素子18の上部には絶縁膜19が設けられている。コンタクトホール20を介して有機発光素子を構成する陽極21とソース電極17とが接続されている。
尚、有機発光素子に含まれる電極(陽極、陰極)とTFTに含まれる電極(ソース電極、ドレイン電極)との電気接続の方式は、図1に示される態様に限られるものではない。つまり陽極又は陰極のうちいずれか一方とTFT素子ソース電極又はドレイン電極のいずれか一方とが電気接続されていればよい。
図1の表示装置1では多層の有機化合物層を1つの層の如く図示をしているが、有機化合物層22は、複数層であってよい。陰極23の上には有機発光素子の劣化を抑制するための第一の保護層24や第二の保護層25が設けられている。
図1の表示装置1が白色を発する表示装置の場合、図1中の有機化合物層22に含まれる発光層は、赤色発光材料、緑色発光材料及び青色発光材料を混合してなる層としてもよい。また赤色発光材料からなる層、緑色発光材料からなる層、青色発光材料からなる層をそれぞれ積層させてなる積層型の発光層としてもよい。さらに別法として、赤色発光材料からなる層、緑色発光材料からなる層、青色発光材料からなる層を横並びにするなりして一の発光層の中にドメインを形成した態様であってもよい。
図1の表示装置1ではスイッチング素子としてトランジスタを使用しているが、これに代えてMIM素子をスイッチング素子として用いてもよい。
また図1の表示装置1に使用されるトランジスタは、単結晶シリコンウエハを用いたトランジスタに限らず、基板の絶縁性表面上に活性層を有する薄膜トランジスタでもよい。活性層として単結晶シリコンを用いた薄膜トランジスタ、活性層としてアモルファスシリコンや微結晶シリコン等の非単結晶シリコンを用いた薄膜トランジスタ、活性層としてインジウム亜鉛酸化物やインジウムガリウム亜鉛酸化物等の非単結晶酸化物半導体を用いた薄膜トランジスタであってもよい。尚、薄膜トランジスタはTFT素子とも呼ばれる。
図1の表示装置1に含まれるトランジスタは、Si基板等の基板内に形成されていてもよい。ここで基板内に形成されるとは、Si基板等の基板自体を加工してトランジスタを作製することを意味する。つまり、基板内にトランジスタを有することは、基板とトランジスタとが一体に形成されていると見ることもできる。
基板内にトランジスタを設けるかどうかについては、精細度によって選択される。例えば1インチでQVGA程度の精細度の場合はSi基板内に有機発光素子を設けることが好ましい。
また本発明に係る有機発光素子は、その発光の制御のためにチャネル部に酸化物半導体を有するスイッチング素子と接続していてもよい。このスイッチング素子において、構成材料である酸化物半導体は、アモルファス状であってもよいし結晶状であってもよい。またアモルファス状の部分と結晶状の部分とが混在した状態のものであってもよい。ここで酸化物半導体が結晶状のものである場合、具体的な結晶の形態としては、単結晶、微結晶、C軸等の特定軸が配向している結晶等が挙げられる。尚、この結晶の形態は、列挙された具体的な形態のうちのいずれか1種であってもよいし、2種以上の形態が混在したものであってもよい。
以上説明したスイッチング素子を有する有機発光素子は、それぞれの有機発光素子が画素として設けられる画像表示装置に用いてもよいが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、照明装置、レーザービームプリンタ、複写機等の電子写真方式の画像形成装置の感光体を露光するための露光部として用いてもよい。
以上の説明の通り、本発明の有機発光素子を用いた表示装置を駆動することにより、良好な画質で、長時間安定な表示が可能になる。
次に、本発明の有機発光素子の他の用途について説明する。図2は、本発明に係る有機発光素子を有する画像形成装置の例を示す模式図である。図2の画像形成装置26は、感光体27と、露光光源28と、現像器30と、帯電部31と、転写器32と、搬送ローラー33と、定着器33と、を有している。
図2の画像形成装置26は、露光光源28から感光体27へ向けて光29が照射され、感光体27の表面に静電潜像が形成される。図2の画像形成装置26において、露光光源28は、本発明に係る有機発光素子を有している。また図2の画像形成装置26において、現像器30は、トナー等を有している。図2の画像形成装置26において、帯電部31は、感光体27を帯電させるために設けられている。図2の画像形成装置26において、転写器32は、現像された画像を紙等の記録媒体34に転写するために設けられている。尚、記録媒体34は、搬送ローラー33によって転借32へ搬送される。図2の画像形成装置26において、定着器35は、記録媒体34に形成された画像を定着させるために設けられている。
図3(a)及び図3(b)は、図2の画像形成装置26を構成する露光光源の具体例を示す平面概略図であり、図3(c)は、図2の画像形成装置26を構成する感光体をの具体例を示す概略図である。尚、図3(a)及び図3(b)は、露光光源28に有機発光素子を含む発光部36が長尺状の基板28aに複数配置されている点で共通している。また符合37の矢印は、発光部36が配列されている列方向を表わす。この列方向は、感光体27が回転する軸の方向と同じである。
ところで図3(a)では、発光部36は、感光体27の軸方向に沿って配置した形態である。一方、図3(b)では、第一の列αと第二の列βとのそれぞれにおいて発光部36が列方向に交互に配置されている形態である。図3(b)において、第一の列α及び第二の列βは、それぞれ行方向に異なる位置に配置されている。
また図3(b)において、第一の列αは、複数の発光部36αが一定の間隔を空けて配置される一方で、第二の列βは、第一の列αに含まれる発光部36α同士の間隔に対応する位置に発光部36βを有する。即ち、図3(b)の露光光源は、行方向にも、複数の発光部が一定の間隔を空けつつ配置されている。
尚、図3(b)の露光光源は、露光光源を構成する発光部(36α、36β)を、例えば、格子状、千鳥格子、あるいは市松模様に配置されている状態と言い換えることもできる。
図4は、本発明に係る有機発光素子を有する照明装置の例を示す模式図である。図4の照明装置は、基板(不図示)の上に設けられる有機発光素子38と、AC/DCコンバーター回路39と、を有している。また図4の照明装置は、装置内の熱を外部へ放出する放熱部に相当する放熱板(不図示)を、例えば、有機発光素子38が載置されている側とは反対側の基板面に有していてもよい。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明していくが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[実施例1]
本実施例では、基板の上に、陽極、ホール注入層、ホール輸送層、発光層、ホールブロッキング層、電子輸送層及び陰極がこの順で積層されている有機発光素子を作製した。ここで、本実施例で用いた材料の一部を以下に列挙する。
まずスパッタ法により、ガラス基板(基板)の上に、酸化錫インジウム(ITO)を成膜して陽極を形成した。このとき陽極の膜厚を100nmとした。次に、陽極が形成されている基板を、アセトン、イソプロピルアルコール(IPA)で順次超音波洗浄し、次いでIPAで煮沸洗浄後乾燥した。さらにUV/オゾン洗浄を行った。以上の方法で処理した基板を透明導電性支持基板として次の工程で用いた。
次に、真空蒸着法により、ITO電極(陽極)の上に、化合物1(ホール注入材料)を成膜してホール注入層を形成した。このときホール注入層の膜厚を70nmとした。次に、真空蒸着法により、ホール注入層の上に化合物2を成膜してホール輸送層を形成した。このときホール輸送層の膜厚を45nmとした。次に、化合物3(ホスト)と化合物4(発光性ドーパント)とを、それぞれ別のボートから同時蒸着を行うことで、ホール輸送層の上に発光層を形成した。このとき発光層の膜厚を25nmとし、発光層に含まれる化合物4の濃度を1重量%に制御した。次に、真空蒸着法により、発光層の上に化合物5を成膜してホールブロッキング層と形成した。このときホールブロッキング層の膜厚を5nmとした。次に、真空蒸着法により、ホールブロッキング層の上に、化合物6を成膜して電子輸送層を形成した。このとき電子輸送層の膜厚を30nmとした。尚、上述した化合物1乃至6の各化合物を蒸着する際の真空度を1.0×10-4Paとし、成膜速度を0.1nm/sec以上0.3nm/sec以下の条件とした。次に、真空蒸着法により、電子輸送層の上に、フッ化リチウム(LiF)を成膜して電子注入層を形成した。このとき電子注入層の膜厚を0.5nmとし、蒸着時の真空度を1.0×10-4Paとし、成膜速度を0.05nm/secの条件とした。次に、真空蒸着法により、電子注入層の上に、アルミニウムを成膜して電子注入電極(陰極)を形成した。このとき電子注入電極の膜厚を150nmとし、蒸着時の真空度を1.0×10-4Paとし、成膜速度を1.0nm/sec以上1.2nm/sec以下とした。次に、水分の吸着によって素子劣化が起こらないように、窒素雰囲気下にて保護用ガラス板をかぶせ、アクリル樹脂系接着材で素子を封止した。以上により有機発光素子を得た。
得られた有機発光素子について、ITO電極(陽極)を正極、アルミニウム電極(陰極)を負極にして、有機発光素子の特性の測定を行った。具体的には、有機発光素子の特性として、電流電圧特性については、ヒューレッドパッカード社製・微小電流計4140Bで測定し、発光輝度及び色度については、トプコン社製分光放射計SR3で測定した。輝度1000cd/m2におけるCIE色度座標は(x=0.134、y=0.163)であり、化合物4に由来する青色の発光が観測された。また、輝度1000cd/m2における電流効率は10.9cd/Aであった。さらに、この素子を乾燥空気雰囲気中にて電流密度を100mA/cm2に保った状態で連続駆動させたところ、輝度半減時間が1100時間と長かった。
また、以下に説明する方法により発光材料の発光スペクトルを測定した。
まず真空蒸着法により、ガラス基板上に、発光層の構成材料を成膜してサンプルを作製した。このときサンプルとなる薄膜の膜厚、構成材料及び成膜条件は、本実施例の有機発光素子を構成する発光層を作製する際の条件と同様の条件とした。次に、得られたサンプルについて日立製蛍光光度計F4500を用いてフォトルミネッセンスを測定した。尚、発光材料の発光スペクトルは、フォトルミネッセンスの測定の際に得られたスペクトルである。
以上説明した方法により、発光性ドーパント(発光材料)の発光波長領域を測定したところ、図5に示される発光スペクトルが得られた。また図5より、発光波長領域を評価したところ、451nm乃至505nmであることが分かった。
次に、発光層の構成材料のうち、励起三重項エネルギーが最も小さい材料について、励起三重項状態の吸収スペクトルを測定した。
ここで励起最低三重項状態の吸収スペクトル(T−T吸収スペクトル)は、対象となる有機材料に、ポンプ光を照射して励起最低三重項状態を生成したときに、プローブ光を用いて、T−T吸収スペクトルを計測することで得られる。ポンプ光によって励起された材料は、一旦励起最低一重項状態となるが、一部は項間交差によって、励起最低三重項状態となる。一般的な蛍光材料の場合、励起最低三重項状態は、励起寿命がμs乃至msオーダーであるのに対し、励起最低一重項状態の励起寿命がnsオーダー以下と非常に短い。よって、ポンプ光照射後1μs以降の吸収スペクトルは励起最低三重項状態のみの吸収(T−T吸収スペクトル)と見なすことができるので、ポンプ光照射後1μs以降の吸収スペクトルをデータとして抽出することができる。本実施例においてはポンプ光照射後1μs乃至10μsの吸収スペクトルをデータとして抽出した。
ところで、励起最低三重項状態の吸光度は時間とともに減衰するが、吸収スペクトルの時間変化を測定し、時間に対する吸光度の減衰曲線を外挿することでポンプ光照射直後の励起最低三重項状態の吸光度を見積もることができる。これによって、ポンプ光照射直後の励起最低三重項状態における吸光度と、励起最低三重項状態の密度から、励起最低三重項状態となっている材料のモル吸光係数を見積もることができる。励起最低三重項状態の密度は、溶液中の励起最低三重項状態となった材料の密度であり、励起光の光子密度と、溶液サンプルの吸光度、項間交差割合及びサンプルに対するプローブ光の照射位置から見積もることができる。項間交差割合は、ポンプ光によって励起され励起最低一重項状態となった材料が、交換交差によって励起最低三重項状態に変換される割合である。一般的な蛍光材料は、励起最低一重項状態になった材料が基底状態に戻る際に発光するが、励起最低三重項状態になった材料が基底状態に戻る際は非発光である。よって、溶液の蛍光量子収率測定を行い、励起された分子のうち非発光の分子の割合を見積もることで項間交差割合を計算することができる。
本実施例において、サンプルは、対象となる有機材料とトルエンとを混合してトルエン溶液を調製した後、調製した溶液を石英セルに入れ、光路長10mmの条件で、吸光度が約0.7となるように、濃度を調整した。その後15分間窒素バブリングを行い、溶液中の酸素濃度を低下させた。
以上に説明した方法により調製したサンプルを用いてT−T吸収の測定を行った。尚、測定の際には、以下に示す装置を用いた。
T−T吸収測定装置:時間分解吸収分光解析装置Nanosecond System(浜松ホトニクス製)
ポンプ光光源:小型YAGパルスレーザーINDI−HG(スペクトラフィジックス製。尚、特定の際、励起波長を355nmに、照射強度を約25mW/cm2に、パルス周波数を10Hzにそれぞれ設定した。)
プローブ光:キセノンランプL8004(白色光源、浜松ホトニクス製)
プローブ光受光部:高ダイナミックレンジストリークカメラC7700(浜松ホトニクス製)
溶液サンプルの吸光度測定装置:分光光度計U−3010(日立製)
溶液サンプルの蛍光量子収率測定装置:絶対PL量子収率装置C9920−02(浜松ホトニクス製)
尚、励起最低三重項エネルギーは、対象となる有機材料の燐光スペクトルから求めることが可能である。具体的には、液体窒素温度(77K)等の低温下において燐光スペクトルの測定を行い、測定された燐光スペクトルの第一の発光ピ−ク(最も短波長のピ−ク)から、励起最低三重項エネルギ−を得られる。尚、燐光発光が得られないものは(燐光が弱く測れない)ものは、三重項増感剤からのエネルギー移動を利用すれば見積もりが可能である。
一方、燐光の発光効率が非常に低いために、上述した方法で燐光が測れない場合には、アクセプターへの三重項−三重項エネルギー移動を利用すれば、励起最低三重項エネルギーの見積もりが可能である。
以上の測定を行っても燐光発光が得られない場合は、Turbomole等の計算化学ソフトウェアにより、以下の計算手法によって、励起最低三重項エネルギーを理論的に計算することができる。まず、基底状態の構造最適化を密度汎関数法(DFT)により、汎関数にB3LYP、基底関数にdef2−SV(P)を用いて計算する。次に、最適化された構造において、時間依存密度汎関数法(TDDFT)により、汎関数にB3LYP、基底関数にdef2−SV(P)を用いて励起最低三重項(吸収)エネルギーを計算する。尚、DFT及びTDDFTの計算には、代わりに同様の機能を持つ計算化学ソフトウェアを用いてもよい。以上のようにして計算した励起最低三重項(吸収)エネルギーT1(calc.)[eV]から、以下の相関式1を用いて、膜状態にて上記測定した励起最低三重項エネルギーT1(exp.film)[eV]の推定値を得ることができる。
T1(exp./exp)=0.4518×T1(calc.)+1.3248 [式1]
以下、T1(calc.)を求める際に利用する関数、ソフトウェア等を示す。
(1)構造最適化
密度汎関数法(DFT)
汎関数:B3LYP
基底関数:def2−SV(P)
ソフトウェア:TURBOMOLE
(2)励起最低三重項(吸収)励起エネルギ−
時間依存密度汎関数法(TDDFT)
密度汎関数法(DFT)
汎関数:B3LYP
基底関数:def2−SV(P)
ソフトウェア:TURBOMOLE
ソフトウェア:TURBOMOLE:
TURBOMOLE:
R.Ahlrichs,M.Baer,M.Haeser,H.Horn,and C.Koelmel
Electronic structure calculations on workstation computers:the program system TURBOMOLE Chem.Phys.LetT162:165(1989)
ここで本実施例において、発光層の構成材料として使用した材料(ホスト、発光性ドーパント)の最低三重項励起エネルギーを測定した。まず対象材料と、下記に示される化合物18(三重項増感剤)とを同時蒸着して、スライドガラス上へ薄膜を形成することで測定用サンプルを作製した。
このとき薄膜全体に対する化合物18(三重項増感剤)の濃度は10重量%であり、膜厚は100nmであった。次に、蛍光光度計F4500(日立製)を用いてサンプルの燐光スペクトルを測定することで得られた燐光スペクトルから最低三重項励起エネルギーを求めた。ここで燐光スペクトルの測定は、液体窒素温度(77K)等の低温下において測定を行った。また励起最低三重項エネルギー(T1)は、測定された燐光スペクトルの第一の発光ピーク(最も短波長のピーク)から求めた。
測定及び算出の結果、ホスト及び発光性ドーパントの励起最低三重項エネルギーは、各々、1.82eV(ホスト)、1.90eV(発光性ドーパント)であった。従って、本実施例において、発光層中で励起最低三重項エネルギーの最も小さい材料は、ホストであることがわかる。
次に、ホストの励起最低三重項状態の吸収スペクトルを測定した。結果は図6に示される通りであって、発光材料の発光波長領域(領域B)内に、測定ノイズレベルを上回る凸状の形状は見られなかったため、吸収ピークが存在しないことが分かった。尚、図6に示される領域B内において、モル吸光係数は6,500以下であった。
次に、発光層に接して設けられるホール輸送層の構成材料である化合物2と、ホールブロッキング層の構成材料である化合物5と、について励起最低三重項エネルギーを測定した。このとき、対象材料を蒸着して、スライドガラスの上に薄膜を形成することで測定用サンプルを作製した。この測定用サンプルを用いて、励起最低三重項エネルギーを測定、算出したところ、各々、2.25eV(化合物2)、2.10eV(化合物5)であった。従って、ホール輸送層及びホールブロッキング層の励起最低三重項エネルギーは、発光層で最も励起最低三重項エネルギーが小さい材料の励起最低三重項エネルギーよりも大きいことが分かった。
尚、発光層の構成材料であるホスト及び発光性ドーパントのイオン化ポテンシャルを評価するために、大気下光電子分光装置(理研機器製、装置名:AC−3)を用いて、ホストあるいは発光性ドーパントの真空蒸着法で得られた薄膜のイオン化ポテンシャルを測定した。またこの真空蒸着法で得られた薄膜を用いて、紫外−可視光吸収スペクトルの測定(日本分光(JASCO)社製、装置名:V−560)を行い、その測定結果から、エネルギーギャップを算出した。
以上の測定で得られたホスト及び発光性ドーパントのイオン化ポテンシャル、エネルギーギャップを、下記式(Ia)及び(Ib)のいずれかに適宜代入して、ELD及びELHを求めた。
ELD=|IpD|−EGD (Ia)
ELH=|IpH|−EGH (Ib)
(式(Ia)において、IpDは、発光性ドーパントのイオン化ポテンシャルを表し、EGDは、発光性ドーパントのエネルギーギャップを表す。式(Ib)において、IpHは、ピレン骨格を有する化合物のイオン化ポテンシャルを表し、EGHは、ピレン骨格を有する化合物のエネルギーギャップを表す。)
その結果、ホストのELHは3.05eVであり、発光性ドーパントのELDは3.48eVであったため、ELD−ELH=0.43eVであり、式(I)の要件を満たしていることが分かった。
また発光層のホスト単体のキャリア移動度を測定するために、以下に示す方法により、第一の移動度測定用素子を作製した。
まず真空蒸着法により、ITO付ガラス基板上に、ホスト(化合物3)を成膜した。このときホストからなる膜の膜厚を2μmとした。次に、真空蒸着法により、ホストからなる膜の上に、アルミニウム膜を膜厚150nmで成膜した。次に、素子の成膜面に水分が吸着して素子劣化が起こらないように、窒素雰囲気下で保護用ガラス板をかぶせ、UV系接着剤を充填硬化させた。以上により、第一の移動度測定用素子を得た。
得られた素子(第一の移動度測定用素子)について、タイムオブフライト測定装置(オプテル社製TOF−301)を用いて、5×105V/cmの電界強度でのホール移動度μHを測定した。本実施例において、ホストのホール移動度μHは7.6×10-6cm2/Vsであった。
次に、発光層のキャリア移動度を測定するために、以下に示す方法により、第二の移動度測定用素子を作製した。
まず有機発光素子を構成する発光層の形成方法と同様な方法を用いて、ITO付ガラス基板上に、ホスト(化合物3)と発光性ドーパント(化合物4)とを共蒸着して、膜厚2μmの薄膜を形成した。次に、真空蒸着法により、ホストと発光性ドーパントとを有する薄膜の上に、アルミニウム膜を膜厚150nmで成膜した。次に、素子の成膜面に水分が吸着して素子劣化が起こらないように、窒素雰囲気下で保護用ガラス板をかぶせ、UV系接着剤を充填硬化させた。以上により、第二の移動度測定用素子を得た。
得られた素子(第二の移動度測定用素子)について、TOF(Time of Flight)法による過渡電流測定によって発光層のキャリアの移動度(電子移動度、ホール移動度)測定することが可能である。具体的には、タイムオブフライト測定装置(オプテル社製TOF−301)を用いて、5×105V/cmの電界強度における電子移動度及びホール移動度を測定した。その結果、発光層のホール移動度μHEMLは、9.5×10-6cm2/Vsであり、発光層の電子移動度μEEMLは、1.6×10-5cm2/Vsであった。この結果、μHEML/μEEML=0.6になることが分かった。
[比較例1]
実施例1において、化合物3の代わりに下記に示される化合物14を発光層のホストとして用いたことを除いては、実施例1と同様の方法に有機発光素子を作製した。
得られた素子について、実施例1と同様の方法で評価した。その結果、輝度1000cd/m2におけるCIE色度座標は(x=0.133、y=0.151)であり、化合物4に由来する青色の発光が観測された。また、輝度1000cd/m2における電流効率は8.4cd/Aであり、実施例1と比較して低かった。さらに、この素子の輝度半減時間は500時間であり、実施例1と比較して短かった。
次に、実施例1と同様に、発光性ドーパント(発光材料)の発光波長領域を測定したところ、451nm乃至505nmであることが分かった。
次に、実施例1と同様に、発光層のホストの最低三重項励起エネルギーを測定した。測定に先立ち、ホストと、化合物18(三重項増感剤)とを同時蒸着して、スライドガラスの上へ薄膜を形成することで測定用サンプルを作製した。この測定用サンプルを用いて発光層のホストの励起最低三重項エネルギーを測定、算出したところ、1.83eVであった。従って、本比較例において、発光層中で励起最低三重項エネルギーの最も小さい材料は、ホストであることがわかった。
次に、ホストの最低三重項励起状態での吸収スペクトルを測定した。測定の結果、図7に示される吸収スペクトルが得られた。図7より、約459nmに吸収ピークAが存在し、発光材料の発光波長領域(領域B)内に吸収ピークが存在することが分かった。この吸収スペクトルを考慮すると、本比較例の有機発光素子は、励起最低一重項状態となっている発光材料(発光性ドーパント)から、励起最低三重項状態となっているホストへエネルギー移動が起き、高次の励起三重項状態となっているホストが生じると考えられる。このことが、本比較例の有機発光素子が実施例(例えば、実施例1)の有機発光素子と比較して耐久性能が劣る原因になっていると推察される。
[比較例2]
実施例1において、化合物3の代わりに下記に示される化合物7を発光層のホストとして用いたことを除いては、実施例1と同様の方法に有機発光素子を作製した。
得られた素子について、実施例1と同様の方法で評価した。その結果、輝度1000cd/m2におけるCIE色度座標は(x=0.135、y=0.148)であり、化合物4に由来する青色の発光が観測された。また、輝度1000cd/m2における電流効率は7.8cd/Aであり、実施例1と比較して低かった。さらに、この素子の輝度半減時間は500時間であり、実施例1と比較して短かった。
また本比較例において、ホストのELHは3.19eVであり、発光性ドーパントのELDは3.48eVであるため、ELD−ELH=0.29eVであり、式(I)の要件を満たしていることが分かった。
一方、本比較例において、ホスト単体のキャリア移動度μHは、6.8×10-5cm2/Vsであった。
他方、本比較例における発光層の電子移動度及びホール移動度を、実施例1と同様に測定したところ、発光層のホール移動度μHEMLは7.0×10-5cm2/Vsであり、発光層の電子移動度μEEMLは2.2×10-4cm2/Vsであった。この結果、μHEML/μEEML=0.3となることが分かった。
[実施例2]
本実施例では、基板の上に、陽極、ホール注入層、ホール輸送層、発光層、ホールブロッキング層、電子輸送層及び陰極がこの順で積層されている有機発光素子を作製した。ここで、本実施例で用いた材料の一部を以下に列挙する。
まずスパッタ法により、ガラス基板(基板)の上に、酸化錫インジウム(ITO)を成膜して陽極を形成した。このとき陽極の膜厚を100nmとした。次に、陽極が形成されている基板を、アセトン、イソプロピルアルコール(IPA)で順次超音波洗浄し、次いでIPAで煮沸洗浄後乾燥した。さらにUV/オゾン洗浄を行った。以上の方法で処理した基板を透明導電性支持基板として次の工程で用いた。
次に、真空蒸着法により、陽極の上に、下記表1に示される有機化合物層及び電極層を順次形成した。
次に、水分の吸着によって素子劣化が起こらないように、窒素雰囲気下にて保護用ガラス板をかぶせ、アクリル樹脂系接着材で素子を封止した。以上により有機発光素子を得た。
得られた素子について、実施例1と同様の方法により素子特性の測定・評価を行った。その結果、輝度1000cd/m2におけるCIE色度座標は(x=0.138、y=0.122)であり、化合物10に由来する青色の発光が観測された。また輝度1000cd/m2における電流効率は9.3cd/Aであった。さらにこの素子を乾燥空気雰囲気中で電流密度を100mA/cm2に保ち連続駆動したところ、輝度半減時間は600時間であった。
次に、実施例1と同様の方法により、ELH及びELDを評価したところ、ELHは3.14eVであり、ELDは3.61eVであったため、ELD−ELH=0.47eVであり、式(I)の要件を満たしていることが分かった。
さらに実施例1と同様の方法により、ホスト(化合物9)のホール移動度μHを評価したところ、2.6×10-5cm2/Vsであった。
次に、化合物9と化合物10とを用いて、実施例1と同様の方法により発光層のキャリア移動度を測定したところ、発光層のホール移動度μHEMLは2.8×10-5cm2/Vsであり、発光層の電子移動度μEEMLは2.0×10-7cm2/Vsであった。この結果、μHEML/μEEML=140となることが分かった。
[比較例3]
実施例2において、発光層に含まれるホストとして下記に示される化合物7を用いた以外は、実施例2と同様の方法により有機発光素子を作製した。
得られた素子について、実施例1と同様の方法により素子特性の測定・評価を行った。その結果、輝度1000cd/m2におけるCIE色度座標は(x=0.138、y=0.122)であり、化合物10に由来する青色の発光が観測された。また輝度1000cd/m2における電流効率は7.6cd/Aであり、実施例2と比較して低かった。さらに、この素子に乾燥空気雰囲気中で電流密度を100mA/cm2に保ち連続駆動したところ、輝度半減時間が350時間ととなり、実施例2と比較して短かった。
次に、実施例1と同様の方法により、ELH及びELDを評価したところ、ELHは3.19eVであり、ELDは3.61eVであったため、ELD−ELH=0.42eVであり、式(I)の要件を満たしていることが分かった。
さらに実施例1と同様の方法により、ホスト(化合物7)のホール移動度μHを評価したところ、6.8×10-5cm2/Vsであった。
次に、化合物7と化合物10とを用いて、実施例1と同様の方法により発光層のキャリア移動度を測定したところ、発光層のホール移動度μHEMLは、7.0×10-5cm2/Vsであり、発光層の電子移動度は、μEEMLは2.1×10-7cm2/Vsであった。この結果、μHEML/μEEML=333となることが分かった。
[実施例3]
本実施例では、基板の上に、陽極、ホール注入層、ホール輸送層、発光層、ホールブロッキング層、電子輸送層及び陰極がこの順で積層されている有機発光素子を作製した。ここで、本実施例で用いた材料の一部を以下に列挙する。
まずスパッタ法により、ガラス基板(基板)の上に、酸化錫インジウム(ITO)を成膜して陽極を形成した。このとき陽極の膜厚を100nmとした。次に、陽極が形成されている基板を、アセトン、イソプロピルアルコール(IPA)で順次超音波洗浄し、次いでIPAで煮沸洗浄後乾燥した。さらにUV/オゾン洗浄を行った。以上の方法で処理した基板を透明導電性支持基板として次の工程で用いた。
次に、真空蒸着法により、陽極の上に、下記表2に示される有機化合物層及び電極層を順次形成した。
次に、水分の吸着によって素子劣化が起こらないように、窒素雰囲気下にて保護用ガラス板をかぶせ、アクリル樹脂系接着材で素子を封止した。以上により有機発光素子を得た。
得られた素子について、実施例1と同様の方法により素子特性の測定・評価を行った。その結果、輝度1000cd/m2におけるCIE色度座標は(x=0.148、y=0.144)であり、化合物12に由来する青色の発光が観測された。また輝度1000cd/m2における電流効率は8.0cd/Aであった。さらにこの素子を乾燥空気雰囲気中で電流密度を100mA/cm2に保ち連続駆動したところ、輝度半減時間は700時間であった。
次に、実施例1と同様の方法により、ELH及びELDを評価したところ、ELHは3.04eVであり、ELDは3.55eVであったため、ELD−ELH=0.51eVであり、式(I)の要件を満たしていることが分かった。
さらに実施例1と同様の方法により、ホスト(化合物11)のホール移動度μHを評価したところ、8.7×10-6cm2/Vsであった。
次に、化合物11と化合物12とを用いて、実施例1と同様の方法により発光層のキャリア移動度を測定したところ、発光層のホール移動度μHEMLは9.0×10-6cm2/Vsであり、発光層の電子移動度μEEMLは2.2×10-6cm2/Vsであった。この結果、μHEML/μEEML=4.0となることが分かった。
[比較例4]
実施例3において、発光層に含まれるホストとして下記に示される化合物14を用いた以外は、実施例3と同様の方法により有機発光素子を作製した。
得られた素子について、実施例1と同様の方法により素子特性の測定・評価を行った。その結果、輝度1000cd/m2におけるCIE色度座標は(x=0.148、y=0.144)であり、化合物12に由来する青色の発光が観測された。また、輝度1000cd/m2における電流効率は7.5cd/Aであり、実施例3と比較して低かった。さらに、この素子を乾燥空気雰囲気中で電流密度を100mA/cm2に保ち連続駆動したところ、輝度半減時間は450時間であり、実施例3と比較して短かった。
次に、実施例1と同様の方法により、ELH及びELDを評価したところ、ELHは2.98eVであり、ELDは3.55eVであったため、ELD−ELH=0.57eVであり、式(I)の要件を満たしていることが分かった。
さらに実施例1と同様の方法により、ホスト(化合物14)のホール移動度μHを評価したところ、1.3×10-4cm2/Vsであった。
次に、化合物14と化合物12とを用いて、実施例1と同様の方法により発光層のキャリア移動度を測定したところ、発光層のホール移動度μHEMLは1.2×10-4cm2/Vsであり、発光層の電子移動度μEEMLは2.1×10-6cm2/Vsであった。この結果、μHEML/μEEML=57となることが分かった。
(結果と考察)
以上説明した実施例より、本発明の有機発光素子は、連続駆動寿命の長さと優れた発光効率とを両立することができる有機発光素子であることがわかった。