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JP2018118905A - 白内障術後合併症の予防治療剤 - Google Patents

白内障術後合併症の予防治療剤 Download PDF

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JP2018118905A JP2015089918A JP2015089918A JP2018118905A JP 2018118905 A JP2018118905 A JP 2018118905A JP 2015089918 A JP2015089918 A JP 2015089918A JP 2015089918 A JP2015089918 A JP 2015089918A JP 2018118905 A JP2018118905 A JP 2018118905A
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恵 本庄
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Abstract

【課題】本発明は、白内障手術の後に発症する後発白内障、前嚢収縮等の白内障術後合併症の予防・治療のための新規な医薬を提供する。【解決手段】本発明は、4−フルオロ−5−{[(2S)−2−メチル−1,4−ジアゼパン−1−イル]スルホニル}イソキノリン(リパスジル)若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物を有効成分とする後発白内障、前嚢収縮等の白内障術後合併症の予防治療剤に関する。【選択図】 なし

Description

本発明は、後発白内障、前嚢収縮等の白内障術後合併症の予防・治療に有用な新規の医薬に関する。
水晶体は、眼内に入った光を屈折させて網膜に結像させるものであり、前面は後房水を介して虹彩後面に接し、後面は硝子体に接し、角膜と共に結像系を担っている。水晶体は透明な無血管組織であり、水晶体嚢(のう)という透明の薄い膜に包まれている。水晶体嚢の前面は前嚢、後面は後嚢、円盤の縁にあたる部分は赤道部と呼ばれている。赤道部にはZinn小帯が結合しており、水晶体の厚みの調節に関与している。
水晶体上皮細胞は、水晶体嚢の内側に並んでおり、赤道部近傍で細胞分裂がみられる(増殖帯上皮細胞)。赤道部の上皮細胞は細長い長方形となって線維細胞に分化し、後嚢側に伸展し、水晶体中心部に向かって移動し、水晶体中心部に圧縮されて脱水して水晶体核を形成する。このように、後嚢は線維であり、この点で前嚢とは異なっている。一般に、水晶体上皮細胞は適度に増殖しており、加齢と共に水晶体は重く厚くなってくるとされている。
また、上皮細胞から分化した線維細胞間には、棘突起、稜突起、ギャップ結合が存在し、上皮細胞の分裂異常や後嚢側への伸展異常がある場合には、水晶体線維による混濁を生ずることがある。
白内障は、水晶体の混濁によるものであり、水晶体の混濁により入射した光が散乱するために、霞んだり、物が二重に見えたり、まぶしく見えるなどの症状が出現し、進行すれば視力が低下し、眼鏡でも矯正できなくなる。白内障の原因として、先天的なものや、外傷、アトピーによるもの、薬剤や放射線によるものなどが挙げられるが、その多くは加齢によるもので、一般に老人性白内障(加齢白内障)と呼ばれており、主に皮質の混濁(皮質白内障)や核の硬化(核白内障)の進行よるとされている。光が水晶体を通過する面は瞳孔の大きさで変わるために、光が通過しないところに混濁が生じている場合には、自覚症状はほとんど無いが、瞳孔を開く検査(散瞳検査)で水晶体を観察すると、早い人では40才代から、80才代では大部分の人で白内障が発見される。
ごく初期の白内障は点眼薬で進行を遅らせることができる場合もあるが、一度混濁が生じた水晶体を元に戻すことはできず、進行した白内障に対しては、混濁した水晶体の核及び皮質を外科手術で取り除き(水晶体嚢外摘出術)、眼内レンズを挿入する方法が一般的に行われる。例えば、水晶体嚢の前面(前嚢)を円形に切開し、嚢の中身を超音波で破砕吸引し、残した嚢の中に眼内レンズを挿入する方法であり、水晶体嚢を残すことにより眼内レンズの挿入が容易となる。
この手術は、痛みもほとんど無く、比較的短時間で終わり、眼内レンズの挿入により視力も回復することから、白内障の治療方法として利用されている。また、老人性白内障の罹患率は60才代で60〜70%、更に、80才以上になるとほぼ100%と言われており、高齢化社会が進展する今日において、白内障の治療の重要性は今後益々増大してきており、手術方法や眼内レンズの改良が行われている。
しかし、手術後しばらくすると、嚢の中に残っている水晶体の細胞の増殖や後嚢への移行などにより、水晶体を再び混濁させることがある。混濁が進行すると視機能が低下し、白内障の症状が出現することがある。これを「後発白内障」といい、その発生率は19%を超えるとの報告もされている。しかし、現在のところ後発白内障の完全な予防・治療法は確立されていない。
後発白内障の発症機序は主として、水晶体嚢外摘出術時に完全に除去されずに残存した水晶体上皮細胞が増殖し、後嚢へ遊走して後嚢混濁(posterior capsule opacification:PCO)が生じるか、又は赤道部に残留した水晶体上皮細胞が異常に増殖するなどして、輪状タイプに混濁するゼンメリング輪状(Soemmerring’s ring)白内障や、真珠様に混濁するエルシュニッヒ真珠( Elschnig’s pearls)を形成することによると考えられている。白内障手術において水晶体上皮細胞を完全に除去することは不可能で後発白内障を完全に防止することは困難であり、後発白内障の予防・治療のための医薬の開発が望まれている。
また、前述の白内障手術時、水晶体嚢の前面(前嚢)を円形に切開した水晶体嚢の窓が、術後小さくなることがある。このような症状を「前嚢収縮」という。これは切開された窓の周囲に残った水晶体の細胞が炎症反応等により線維性の細胞に変化し、増殖し、巾着絞りのように切開した円形の窓を狭くすることにより起こる。通常はほとんど視機能に影響しないが、窓の大きさが瞳孔の中心部分にかかるほど進行してくると眼内に光が入りづらくなり、視機能の低下の原因となる。「前嚢収縮」も白内障手術後に発生する疾患であり、後発白内障と同様に有効な予防・治療方法は確立されておらず、前嚢収縮の予防・治療のための医薬の開発が望まれている。
後発白内障抑制剤としては各種の物質が報告されてきている。例えば、気管支喘息、アレルギー性鼻炎等のアレルギー性疾患の治療剤として知られているN−(3,4−ジメトキシシンナモイル)アントラニル酸(一般名:トラニラスト)が水晶体上皮細胞の増殖を抑制する(特許文献1参照)、トランスフォーミング成長因子−β(TGF−β)により過度の増殖を制限する(特許文献2参照)、Lys−プラスミノーゲンなどのセリンプロテアーゼの酵素前駆体が水晶体上皮細胞の水晶体嚢からの分離を促進し、水晶体上皮細胞の増殖を防止する(特許文献3参照)、Fasリガンドなどの細胞死受容体リガンドが水晶体上皮細胞のアポトーシスを誘導する(特許文献4参照)など、水晶体上皮細胞の増殖抑制作用に基づく後発白内障抑制剤が報告されている。
また、エチレンジアミン四酢酸が水晶体上皮細胞の遊走を防止し、後嚢との接着を阻害する(特許文献5参照)、2−ピペラジノン誘導体などの非ペプチド性の細胞接着阻害物質が水晶体上皮細胞の後嚢への伸展及び重層を阻害する(特許文献6参照)、細胞接着阻害活性を有するポリペプチドと乳酸−グリコール酸重合体が水晶体上皮細胞の後嚢への伸展及び重層を阻害する(特許文献7参照)、Arg−Gly−Aspなどのペプチドが細胞接着阻害活性を有し、水晶体上皮細胞の後嚢への伸展及び接着を阻害する(特許文献8参照)など、水晶体上皮細胞の遊走や伸展などを阻害する作用に基づく後発白内障抑制剤なども報告されてきている。
さらに、セリントレオニンキナーゼ阻害剤の一種であるH−7が、ゼンメリング輪の解消には有効であったが、後嚢混濁(PCO)には効果が無かったことも報告されている(非特許文献1参照)。
一方、ファスジル(fasudil)やY−27632などのRhoキナーゼ(Rho−Associated, Coiled−Coil Containing Protein Kinase : ROCK)阻害剤(以下、ROCK阻害剤ともいう。)が緑内障などの治療に使用されることも報告されてきており(例えば、特許文献9参照)、軸性近視の予防または治療剤として有用であることも報告されてきている(特許文献10参照)。
また、ROCK阻害剤であるHF及びY−27632は、ウシの水晶体細胞においてPDGF−BBやTGF−β2などのサイトカイン誘発の収縮を阻害したこと(非特許文献2参照)が、ROCK阻害剤であるY−27632、HA−1077、H−1152やML−7は、TGF−β誘発の筋線維芽細胞の分化転換及び収縮を阻害し、これは緑内障濾過手術の術後の瘢痕に有用となること(非特許文献3参照)が、ROCK阻害剤であるY−27632は、増殖は促進しないが、接着性を促進し、緑内障濾過手術後の抗瘢痕剤として有用であること(非特許文献4参照)が、ROCK阻害剤であるファスジルが、硝子体細胞含有コラーゲンゲルの収縮を阻害し、硝子体網膜疾患の治療に有用となること(非特許文献5参照)が、それぞれ報告されてきている。
しかしながら、ROCK阻害剤が後発白内障や前嚢収縮等の白内障術後合併症の予防・治療に有用であることは未だ報告されてきていない。
WO 98/16214号公報 特表平8−502033号公報 特表2002−502821号公報 特表2004−518649号公報 特開平8−175984号公報 特開平9−235239号公報 特開平9−291040号公報 特開平10−17487号公報 WO 00/09162号公報 WO 2010/010702号公報
Baohe Tian, et al., J. Ocular Pharma. Ther., 26(6), 2010, 533−539. Kumiko Hirayama, et al., IOVS, 45(11), 2004, 3896−3903. Tobias Meyer−ter−Vehn, et al., IOVS, 47(11), 2006, 4895−4904. Megumi Honjo, et al., IOVS, 48(12), 2007, 5549−5557. Takeshi Kita, et al., PNAS, 105(45), 2008, 17504−17509.
本発明は、白内障手術、特に混濁した水晶体を外科手術で取り除くための水晶体嚢外摘出術の後に発症する後発白内障、前嚢収縮等の白内障術後合併症の予防・治療のための新規な医薬を提供する。
また、本発明は、細胞増殖抑制剤、特に白内障外科手術後の水晶体上皮細胞の細胞増殖抑制剤としての新規な医薬を提供する。
さらに、本発明は、コラーゲンゲル収縮抑制剤、特に白内障外科手術後のコラーゲンゲル収縮抑制剤としての新規な医薬を提供する。
本発明者らは、次式
で表される4−フルオロ−5−{[(2S)−2−メチル−1,4−ジアゼパン−1−イル]スルホニル}イソキノリン(以下、リパスジルともいう。)について各種の作用を検討してきた。リパスジル塩酸塩2水和物を有効成分とする緑内障、高眼圧症の治療薬は商品名「グラナテック」(登録商標)として既に製造販売承認を受けている。
本発明者らは、リパスジルのヒト水晶体上皮細胞の増殖抑制作用、線維芽細胞の増殖抑制作用、及びコラーゲンゲル収縮作用について検討してきた。この結果、リパスジルは、細胞増殖抑制作用やコラーゲンゲル収縮抑制作用を有していることを見出し、後発白内障や前嚢収縮等の白内障術後合併症の予防・治療のための医薬として有用であることが確認された。
したがって、リパスジルには、白内障の外科手術において前嚢切除後に水晶体の核及び皮質が摘出される際に完全に除去されずに残存した水晶体上皮細胞の増殖を抑制する作用があるだけでなく、さらにコラーゲン収縮抑制作用も有していることから、後発白内障、前嚢収縮等の白内障手術後合併症の予防及び/又は治療に有効であることが判明した。
即ち、本発明は、4−フルオロ−5−{[(2S)−2−メチル−1,4−ジアゼパン−1−イル]スルホニル}イソキノリン(リパスジル)若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物を有効成分とする後発白内障、前嚢収縮等の白内障術後合併症の予防治療剤に関する。
また、本発明は、リパスジル若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物を有効成分とする細胞増殖抑制剤、好ましくは水晶体上皮細胞の細胞増殖抑制剤、より好ましくは白内障外科手術後の水晶体上皮細胞の細胞増殖抑制剤に関する。
また、本発明は、リパスジル若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物を有効成分とするコラーゲンゲル収縮抑制剤、好ましくは白内障外科手術後のコラーゲンゲル収縮抑制剤に関する。
本発明によれば、後発白内障、前嚢収縮等の白内障術後合併症の予防及び/又は治療のための新規な薬剤を提供することができる。本発明のリパスジル若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物は、細胞増殖抑制剤、好ましくは水晶体上皮細胞の細胞増殖抑制剤、より好ましくは白内障外科手術後の水晶体上皮細胞の細胞増殖抑制剤、またコラーゲンゲル収縮抑制剤、好ましくは白内障外科手術後のコラーゲンゲル収縮抑制剤として利用できる。
白内障手術後に発生する後発白内障、前嚢収縮等の白内障術後合併症は、外科手術による視機能の回復を台無しにするものであり、患者にとっては深刻な疾患であるが、従来これを予防又は治療するための有効な薬剤は開発されておらず、レーザーによる処置しかなかった。本発明は、これを点眼等の簡単な投与処置で予防・治療することができる新規な薬剤を提供するものである。
さらに、高齢化社会になり老人性白内障の患者の増加が懸念されるが、白内障手術後に発生する後発白内障、前嚢収縮等の白内障術後合併症を本発明の薬剤により簡便にかつ効果的に抑制することが可能となり、安心して白内障の手術を受けることができるようになる。
図1は、ヒト水晶体上皮細胞(SRA01/04)の細胞増殖(DNA合成能)に対するリパスジルの作用を試験した結果を示す。結果は平均±標準偏差で示されており、*印はp<0.05で、**印はp<0.01で、***印はp<0.001で、有意差があったことを示す。
本発明の態様をより詳細に説明すれば次のようになる。
すなわち、本発明は以下の発明に係るものである。
(1)4−フルオロ−5−{[(2S)−2−メチル−1,4−ジアゼパン−1−イル]スルホニル}イソキノリン若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物を有効成分とする後発白内障、前嚢収縮等の白内障術後合併症の予防治療剤。
(2)溶媒和物が、水和物である、前記(1)に記載の予防及び/又は治療剤。
(3)治療が、水晶体嚢の混濁又は収縮の進行を阻止することである、前記(1)又は(2)に記載の予防治療剤。
(4)予防治療剤が、白内障手術中又は白内障手術後から投与されるものである、前記(1)から(3)のいずれか1項に記載の予防治療剤。
(5)白内障手術が、水晶体嚢外摘出術を含むものである、前記(4)に記載の予防治療剤。
(6)リパスジル若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物、及び薬学的に許容される担体を含有してなる後発白内障、前嚢収縮等の白内障術後合併症の予防治療のための医薬組成物。
(7)溶媒和物が、水和物である、前記(6)に記載の医薬組成物。
(8)治療が、水晶体嚢の混濁又は収縮の進行を阻止することである、前記(6)又は(7)に記載の医薬組成物。
(9)予防治療のための医薬組成物が、白内障手術中又は白内障手術後から投与されるものである、前記(6)から(8)のいずれか1項に記載の医薬組成物。
(10)白内障手術が、水晶体嚢外摘出術を含むものである、前記(9)に記載の医薬組成物。
(11)リパスジル若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物、及び点眼薬に許容される担体を含有してなる後発白内障、前嚢収縮等の白内障術後合併症の予防治療のための点眼薬。
(12)溶媒和物が、水和物である、前記(11)に記載の点眼薬。
(13)治療が、水晶体嚢の混濁又は収縮の進行を阻止することである、前記(11)又は(12)に記載の点眼薬。
(14)予防治療のための点眼薬が、白内障手術中又は白内障手術後から投与されるものである、前記(11)から(13)のいずれか1項に記載の点眼薬。
(15)白内障手術が、水晶体嚢外摘出術を含むものである、前記(14)に記載の点眼薬。
(16)4−フルオロ−5−{[(2S)−2−メチル−1,4−ジアゼパン−1−イル]スルホニル}イソキノリン若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物を有効成分とする細胞増殖抑制剤。
(17)溶媒和物が、水和物である、前記(16)に記載の細胞増殖抑制剤。
(18)細胞増殖抑制剤が、水晶体上皮細胞の細胞増殖抑制剤である、前記(16)又は(17)に記載の細胞増殖抑制剤。
(19)細胞増殖抑制剤が、白内障外科手術後の水晶体上皮細胞の細胞増殖抑制剤である、前記(16)から(18)のいずれか1項に記載の細胞増殖抑制剤。
(20)細胞増殖抑制剤が、白内障外科手術後の水晶体の混濁を防止するものである、前記(16)から(19)のいずれか1項に記載の細胞増殖抑制剤。
(21)細胞増殖抑制剤が、白内障外科手術後の水晶体の形態形成を阻害するものである、前記(16)から(20)のいずれか1項に記載の細胞増殖抑制剤。
(22)細胞増殖抑制剤が、後発白内障、前嚢収縮等の白内障術後合併症の予防治療のためものである、前記(16)から(21)のいずれか1項に記載の細胞増殖抑制剤。
(23)4−フルオロ−5−{[(2S)−2−メチル−1,4−ジアゼパン−1−イル]スルホニル}イソキノリン若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物を有効成分とするコラーゲンゲル収縮抑制剤。
(24)溶媒和物が、水和物である、前記(23)に記載のコラーゲンゲル収縮抑制剤。
(25)コラーゲンゲル収縮抑制剤が、白内障外科手術後のコラーゲンゲル収縮抑制剤である、前記(23)又は(24)に記載のコラーゲンゲル収縮抑制剤。
(26)コラーゲンゲル収縮抑制剤が、白内障外科手術後のコラーゲンゲル収縮を防止するものである、前記(23)から(25)のいずれか1項に記載のコラーゲンゲル収縮抑制剤。
(27)コラーゲンゲル収縮抑制剤が、白内障外科手術後の水晶体の形態形成を阻害するものである、前記(23)から(26)のいずれか1項に記載のコラーゲンゲル収縮抑制剤。
(28)コラーゲンゲル収縮抑制剤が、後発白内障、前嚢収縮等の白内障術後合併症の予防治療のためものである、前記(23)から(27)のいずれか1項に記載のコラーゲンゲル収縮抑制剤。
後発白内障は、白内障外科手術後の水晶体上皮細胞の増殖や、線維細胞への分化、その伸展、遊走により発症することが知られている。即ち、白内障外科手術後の水晶体上皮細胞による水晶体の形態形成が、混濁の原因となることが知られている。特に、白内障外科手術後に残存している水晶体上皮細胞の増殖が大きな原因となると考えられている。したがって、本発明のリパスジルは、水晶体上皮細胞を含む細胞増殖抑制作用を有することから、後発白内障の予防治療において有用となる。
また、前嚢収縮は水晶体嚢のコラーゲンの収縮により発症することが知られており、本発明のリパスジルはコラーゲンゲルの収縮抑制作用を示すことから、白内障外科手術後の前嚢収縮の予防治療において有用である。
本発明に用いるリパスジルは、脳血管治療剤や、サブスタンスP拮抗作用、ロイコトリエンD4拮抗作用及びROCK阻害作用を有する化合物であり、公知の方法、例えば、国際特許公開第99/20620号公報に記載の方法により製造することができる。
リパスジルの塩としては、例えば塩酸、硫酸、硝酸、フッ化水素酸、臭化水素酸等の無機酸の塩、又は酢酸、酒石酸、乳酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、カンファースルホン酸等の有機酸との塩が挙げられ、特に塩酸塩が好ましい。
リパスジル又はその塩は、未溶媒和型のみならず水和物又は溶媒和物としても存在することができる。水和物が好ましいが、本発明においては、全ての結晶型及び水和若しくは溶媒和物を含むものである。
リパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物は、後記する実施例に示すように、細胞増殖抑制作用、及びコラーゲン収縮抑制作用などを有し、後嚢部混濁、ゼンメリング輪状(Soemmerring’s ring)白内障、エルシュニッヒ真珠(Elschnig’s pearls)形成、後発白内障、前嚢収縮等の白内障術後合併症及びこれらによる視力、視機能低下の予防及び/又は治療のための薬剤として有用である。
本発明において「白内障術後」とは、水晶体嚢外摘出術などの白内障の治療や白内障による視覚機能の改善のための外科手術を行った後のことをいう。本発明においては、「白内障術後」のことを「白内障手術後」又は「白内障外科手術後」ともいう。
また、本発明において「白内障術後合併症」とは、水晶体嚢外摘出術などの白内障の治療や白内障による視覚機能の改善のための外科手術の後に発症又は発症する可能性がある諸症状を伴う疾患、より詳細には、前記の外科手術において完全に除去されなかった水晶体上皮細胞による水晶体線維細胞の増殖や分化、伸展、遊走などに起因して発症又は発症する可能性がある疾患を包含している。典型的な白内障術後合併症としては、後発白内障や前嚢収縮などが挙げられる。
本発明において、「予防治療」とは、予防及び/又は治療を意味する。ここで、治療とは、水晶体嚢における混濁又は収縮の進行の抑制を包含している。また、予防とは、必ずしも発症を前提にするものではなく、発症の可能性を抑制することも包含している。さらに、白内障手術時において、前嚢切除後に水晶体の核及び皮質が摘出される際に完全に除去されずに残存した水晶体上皮細胞の増殖や分化、伸展、遊走も阻害するために、前嚢切除後に直ちに投与することも、本発明における予防に包含される。
リパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を製剤化する場合は、公知の方法に準じて製剤を調製することができる。例えば、リパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物の製剤は、例えば、国際公開特許公報(WO00/09162号、WO97/23222号など)に記載の製剤例を参考にして調製することができる。
リパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物の製剤を調製する場合も、公知の方法に準じて調製することができる。例えば点眼剤は、等張化剤、緩衝剤、界面活性剤、防腐剤などを必要に応じて使用して、調製することができる。pHは眼科製剤に許容される範囲内にあればよく、pH4〜8の範囲が好ましい。
本発明の製剤は、眼科用製剤として用いるのが好ましく、斯かる眼科用製剤は、水性点眼剤、非水性点眼剤、懸濁性点眼剤、乳濁性点眼剤、眼軟膏等のいずれでもよい。このような製剤は、投与形態に適した組成物として、必要に応じて薬学的に許容される担体、例えば点眼剤の場合は点眼薬に許容される担体、例えば等張化剤、キレート剤、安定化剤、pH調節剤、防腐剤、抗酸化剤、溶解補助剤、粘稠化剤等を配合し、当業者に公知の(製剤)方法により製造できる。
本発明の有効成分は、点眼投与においても有効性を有しており、点眼薬とすることができる。本発明の点眼薬は、本発明の有効成分であるリパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、及び点眼薬に許容される担体を含有するものである。
点眼剤を調製する場合、例えば、所望な上記成分を滅菌精製水、生理食塩水等の水性溶剤、又は綿実油、大豆油、ゴマ油、落花生油等の植物油等の非水性溶剤に溶解又は懸濁させ、所定の浸透圧に調整し、濾過滅菌等の滅菌処理を施すことにより行うことができる。なお、眼軟膏剤を調製する場合は、前記各種の成分の他に、軟膏基剤を含むことができる。前記軟膏基剤としては、特に限定されないが、ワセリン、流動パラフィン、ポリエチレン等の油性基剤;油相と水相とを界面活性剤等により乳化させた乳剤性基剤;ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール等からなる水溶性基剤等が好ましく挙げられる。
リパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を後発白内障、前嚢収縮等の白内障術後合併症の予防及び/又は治療のために用いる場合、その投与量は、患者の体重、年齢、性別、症状、投与形態及び投与回数等によって異なるが、通常は成人に対して、(S)−(−)−1−(4−フルオロ−5−イソキノリンスルホニル)−2−メチル−1,4−ホモピペラジン若しくはその塩又はそれらの溶媒和物として、1日0.025〜10000μg、好ましくは0.025〜2000μg、より好ましくは0.1〜2000μg、さらに0.025〜200μgの範囲が挙げられる。
また、投与回数は、特に限定されないが、1回又は数回に分けて投与するのが好ましく、液体点眼剤の場合は、1回に1〜数滴点眼すればよい。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
ヒト正常線維芽細胞(三光純薬株式会社)を2000個/wellで播種し、一晩培養した。翌日、培地(FGM−2(三光純薬株式会社))を交換(150μL)した後、リパスジルを最終濃度が0.1μM、1.0μM、10.0μMとなるように10μL添加した。2日間培養後、BrdU(58.8倍希釈液:原液は1000倍液)を10μL添加し、2時間培養した。Cell Proliferation ELISA BrdU kit(Roche)のプロトコールに従い、固定・抗体添加、洗浄・発色及び反応停止後、プレートリーダを用いてOD540−620を測定し、増殖に対する作用を評価した。リパスジル未添加時の値を100%としたときの各条件のBrdU取り込み率を表1に示す。
BrdU取り込み率は、リパスジル0.1μMで80.0%、1.0μMで59.3%、10.0μMで10.9%であり、顕著な細胞増殖抑制作用を有していることが分かった。
ヒト水晶体上皮細胞 (SRA01/04(理研セルバンク))は、20%FBS−DMEM培地を用いて37℃、5%CO条件下で培養した。
SRA01/04を2%FBS−DMEM培地を用いての濃度調整し、96Well Plateに100μL/well(5000個/well)播種し、37℃、5%CO条件下で24時間培養した。培地を5% FBS−DMEM培地に交換し、TGFβを10ng/mL(終濃度)、リパスジルを10、30または100μM(終濃度)をそれぞれ添加し、さらに24時間培養した。細胞増殖ELISA , BrdU発色キット(Roche) を用いて、Multiskan MS version 8.0 (LABSYSTEMS) により細胞内の5−bromo−2’−deoxyuridine (BrdU) 取込量を測定波長450nmで測定し、細胞増殖性を評価した。
結果を図1に示す。リパスジルはヒト水晶体上皮細胞のDNA合成能に対して用量依存的な阻害作用を示すことが確認され、30μMで統計学的に有意な低下を示した。
また、前記の実施例1の結果と併せると、本発明のリパスジルがヒト水晶体上皮細胞を含む細胞増殖抑制作用を有していることが示されることになる。
コラーゲンゲル収縮抑制作用
150000〜200000個/mLの密度に培地で調整したHT−1080細胞懸濁液(培地:E’MEM(Sigma)/10%FBS/NEAA/PCSM)と、8:1:1に混合し冷却したコラーゲン・ゲル培養キット(新田ゼラチン)のA、B、C液(A液:Cellmatrix(Collagen Type I 3mg/mL)、B液:濃縮培養液、10×MEMハンクス培養液、C液:再構成用緩衝液)を、1.4:1に混合し、48Well Plateに500μL/wellずつ播種してCOインキュベーター内でゲル化させ、細胞含有コラーゲンゲルを作成した。ゲル化後、リパスジルを0.1μM、1.0μM、10.0μMに調整した培地1mLをゲル上に添加し、ゲルと壁面の間に注射針を差し込み、ゲルを壁面から脱着させ、COインキュベーター内で静置した。2、3日後にゲルの収縮を観察し、写真撮影してリパスジルの作用を評価した。
収縮がリパスジル未添加群とほぼ同程度の場合には(+)、収縮が抑制されている場合には(++)、収縮が顕著に抑制されている場合には(+++)とした。
結果を次の表2に示す。
リパスジルのコラーゲンゲル収縮に対する作用は、0.1μMで(+)、1.0μMで(++)、10.0μMで(+++)であり、用量依存的なコラーゲンゲル収縮抑制作用を有していることが分かった。
以上によれば、本発明のリパスジルにはヒト水晶体上皮細胞の増殖抑制作用があり、白内障手術、特に混濁した水晶体を取り除くための水晶体嚢外摘出術などの外科手術の際に水晶体に残存した水晶体上皮細胞の増殖を効果的に抑制することができ、水晶体上皮細胞の増殖に起因する後発白内障などの白内障術後合併症の予防治療剤とすることができる。
また、本発明のリパスジルにはコラーゲンゲル収縮抑制作用があり、白内障手術、特に混濁した水晶体を取り除くための水晶体嚢外摘出術などの外科手術により切開された水晶体嚢の収縮に起因する前嚢収縮などの白内障術後合併症の予防治療剤とすることができる。
本発明のリパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物は、後発白内障、前嚢収縮等の白内障術後合併症の予防治療剤、細胞増殖抑制剤、及びコラーゲンゲル収縮抑制剤などの医薬として有用であり、産業上の利用可能性を有している。

Claims (5)

  1. 4−フルオロ−5−{[(2S)−2−メチル−1,4−ジアゼパン−1−イル]スルホニル}イソキノリン若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物を有効成分とする白内障術後合併症の予防治療剤。
  2. 4−フルオロ−5−{[(2S)−2−メチル−1,4−ジアゼパン−1−イル]スルホニル}イソキノリン若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物を有効成分とする細胞増殖抑制剤。
  3. 細胞増殖抑制剤が、白内障外科手術後の水晶体上皮細胞の細胞増殖抑制剤である、請求項2に記載の細胞増殖抑制剤。
  4. 4−フルオロ−5−{[(2S)−2−メチル−1,4−ジアゼパン−1−イル]スルホニル}イソキノリン若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物を有効成分とするコラーゲンゲル収縮抑制剤。
  5. コラーゲンゲル収縮抑制が、白内障外科手術後の水晶体上皮細胞のコラーゲンゲル収縮抑制である、請求項4に記載のコラーゲンゲル収縮抑制剤。
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