以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
1.筋電デバイス
図1は、本発明の筋電デバイス100の形態の一例を示す。
筋電デバイス100は、使用者の首周りに装着可能なネックバンド型デバイスである。筋電デバイス100は、ハウジング110と、ハウジング110の両端から延びるアーム111、112とを備える。ハウジング110内に筋電センサ(図1には示されていない)が内蔵されている。筋電センサは、基準電極113と、一対の測定電極114、115とを備える。基準電極113と、一対の測定電極114、115とは、ハウジング110の外表面に露出している。筋電センサは、基準電極113および一対の測定電極114、115によって測定される電気信号から、身体の筋活動を示す筋電信号を検出する。
使用者は、ハウジング110の中心を首の後部の中心と整合させて、アーム111、112を首に巻き付けることによって、筋電デバイス100を装着する。アーム111、112は、使用者が筋電デバイス100を装着したときに、基準電極113および一対の測定電極114、115が使用者の首の後部の皮膚に接触するように構成されている。使用者は、筋電デバイス100を装着することによって運動を制限されることはない。本明細書において、「後部」とは、人間の冠状面よりも後側の部分、好ましくは、人間の冠状面よりも後側、かつ、人間の正中面から左右方向に±45度の範囲内の部分、さらに好ましくは、人間の冠状面よりも後側、かつ、人間の正中面から左右方向に±30度の範囲内の部分をいう。
図2Aは、従来の筋電センサを用いて筋肉の筋繊維由来の筋電信号を測定する場合の一対の測定電極1、2の配置例を示す。
図2Bは、使用者が筋電デバイス100を装着したときの筋電センサの一対の測定電極114、115の配置の一例を示す。使用者の首の後部には、首の筋肉の筋繊維1000が上下方向に延びている。
従来の筋電センサは、一対の測定電極が配置された位置に直近の筋肉由来の筋電信号を検出すること、その他の筋肉由来の筋電信号をノイズとして削除することを目的としている。従来の筋電センサでは、測定対象の筋肉の筋繊維が延びる方向に沿って一対の測定電極を配置することが常識であった。筋電信号が筋肉の表面を伝播していく信号であることから、測定対象の筋繊維が延びる方向に沿って一対の測定電極を配置することで、検出される筋電信号のS/N比を高めることができるからである。図2Aに示される例では、従来の筋電センサの一対の測定電極1、2は、測定対象の筋繊維が延びる方向に沿って同一の筋繊維上に位置するように配置されている。加えて、従来の筋電センサでは、ノイズとなる測定対象以外の筋肉由来の筋電信号を取得しないように、多数の電極を配置して測定を行っていた。
本発明の筋電デバイス100の筋電センサは、一対の測定電極が配置された位置に直近の筋肉由来の筋電信号だけでなく、一対の測定電極が配置された位置から離れた位置の筋肉由来の筋電信号を検出すること、従来の筋電センサがノイズとして削除していた筋電信号を検出することを目的としている。この目的を達成するために、本発明の筋電デバイス100は、少数の電極(本例では、基準電極113、一対の測定電極114、115の3つの電極)のみを使用し、本発明の筋電デバイス100の筋電センサの一対の測定電極114、115は、一対の測定電極114、115が配置された位置に直近の筋肉由来の筋電信号のS/N比が高くなることを避けつつ、一対の測定電極114、115が配置された位置から遠い位置の筋肉由来の筋電信号のS/N比を相対的に高めるように、配置される。図2Bに示される例では、筋電センサの測定電極114が首の後部の筋繊維1000に配置されるが、測定電極115は、首の筋繊維1000には配置されない。このように、本発明の筋電デバイスの筋電センサの一対の測定電極114、115は、一対の測定電極114、115が接触する部位に存在する同一の筋繊維上には配置されない。
本発明の筋電デバイス100の筋電センサの一対の測定電極114、115は、筋電デバイス100が使用者に装着されると、一対の測定電極114、115を結ぶ線と、一対の測定電極114、115が配置された位置に直近の筋肉の筋繊維が延びる方向とのなす角θが、30度以上、45度以上、60度以上、または、好ましくは90度となるように配置され得る。θが90度に近いほど、一対の測定電極114、115が配置された位置に直近の筋肉由来の筋電信号のS/N比は有意に低減され、一対の測定電極114、115が配置された位置から遠い位置の筋肉由来の筋電信号のS/N比を相対的に高めることができる。
また、図2Bに示される例では、測定電極114は、使用者の右半身の筋繊維1000上に位置している一方、測定電極115は、測定電極114と左右対称になるように左半身上に位置している。このように、一対の測定電極114、115は、筋電デバイス100が使用者に装着されると使用者の首の後部で使用者の正中面に対して対称に位置するようにしてもよい。これは、例えば、筋電デバイス100のハウジング110の中心から一対の測定電極114、115までの距離をそれぞれ同一の距離とすることによって達成され得る。本明細書において、「同一の距離」とは、±10mmの範囲を含む。本明細書において、「正中面に対して対称に位置する」とは、電極と身体の中心とを通る線と人間の冠状面よりも前側の正中面とのなす角度が左右方向に同一の角度である位置に位置することをいい、ここで、「同一の角度」とは、±15度の範囲を含む。
代替として、一対の測定電極114、115は、筋電デバイス100が使用者に装着されると使用者の首の後部で使用者の正中面に対して非対称に位置するようにしてもよい。これは、例えば、筋電デバイス100のハウジング110の中心から一対の測定電極114、115までの距離をそれぞれ異なる距離とすることによって達成され得る。例えば、一対の測定電極のうちの一方の測定電極114は、ハウジング110の中心から50〜70mm、好ましくは60mmの位置に提供され、一対の測定電極のうちの他方の測定電極115は、ハウジング110の中心から10〜30mm、好ましくは20mmの位置に提供されることにより、筋電デバイス100が使用者に装着されると使用者の首の後部で使用者の正中面に対して非対称に位置する。なお、このとき、一対の測定電極114、115が、基準電極113と重複しないよう留意すべきである。このようにして、一対の測定電極114、115は、使用者の首の後部で任意の角度位置に配置されることができる。例えば、一対の測定電極のうちの一方の測定電極114は、測定電極114と使用者の身体の中心とを通る線と使用者の冠状面よりも後側の正中面とのなす角度が右方向に40〜60度、好ましくは50度の位置に配置され、一対の測定電極のうちの他方の測定電極115を、電極115と使用者の身体の中心とを通る線と使用者の冠状面よりも後側の正中面とのなす角度が左方向に5〜15度、好ましくは10度の位置に配置されるようにしてもよい。このように、一対の測定電極114、115を使用者の正中面に対して非対称に位置するように配置することで、一対の測定電極と測定対象(例えば、心臓)との間の最短距離を、電極間で異ならせることができる。これにより、一対の測定電極のうちの一方の測定電極114によって測定された筋電信号と、一対の測定電極のうちの他方の測定電極115によって測定された筋電信号との間に時間差を生じさせ、測定対象の筋電信号とノイズとを容易に区別することを可能にする。正中面に対して非対称に配置された一対の測定電極を用いると、正中面に対して対称に配置された一対の測定電極から得られる筋電信号よりもクリアな筋電信号を得ることができる。
上述した例では、一対の測定電極114、115が使用者の首の後部の皮膚に接触する例を説明したが、本発明はこれに限定されない。一対の測定電極114、115が使用者の正中面に対して非対称に位置する場合、一対の測定電極114、115のうちの一方が使用者の首の後部の皮膚に接触し、一対の測定電極114、115のうちの他方が使用者の鎖骨上の皮膚に接触するように、一対の測定電極114、115を配置してもよい。なお、このとき、一対の測定電極114、115が、接触する部位に存在する同一の筋繊維上には配置されないよう留意すべきである。例えば、一対の測定電極114、115のうちの測定電極114が使用者の右側の鎖骨上の皮膚に接触し、一対の測定電極114、115のうちの測定電極115が使用者の首の後部の左側の皮膚に接触するように、一対の測定電極114、115を配置してもよい。好ましくは、一対の測定電極114、115のうちの測定電極114が使用者の首の後部の右側の皮膚に接触し、一対の測定電極114、115のうちの測定電極115が使用者の左側の鎖骨上の皮膚に接触するように、一対の測定電極114、115を配置してもよい。人間の心臓が正中面からわずかに左に寄っていることから、このような電極配置によって、一対の測定電極114、115と測定対象である心臓との間の最短距離を、より大きく電極間で異ならせることができる。
なお、図2Bに示される例では、測定電極114が筋繊維1000上に位置する例を説明したが、一対の測定電極114、115は、一対の測定電極114、115が接触する部位に存在する同一の筋繊維上に配置されなければ足り、筋繊維1000上に位置する必要はない。むしろ、直近の筋繊維由来の筋電信号の影響を低減するために、一対の測定電極114、115がいずれの筋繊維上にも位置しないようにすることが好ましい。
図3は、従来の筋電センサの一対の測定電極を被験者の顎の筋繊維および喉の筋繊維が延びる方向に沿って配置し(図2Aに示される従来の電極配置)、本発明の筋電デバイス100を被験者の一対の測定電極114、115を被験者の首の後部に配置し(図2Bに示される電極配置)、筋電信号の測定を行った結果を示す。
図3では、各筋電センサからの筋電信号の周波数解析結果から得られた周波数分布が示されている。上段のグラフは、顎の筋繊維に沿って配置された従来の筋電センサから得られた信号の周波数分布を示し、中段のグラフは、喉の筋繊維に沿って配置された従来の筋電センサから得られた信号の周波数分布を示し、下段のグラフは、筋電デバイス100の筋電センサから得られた信号の周波数分布を示す。横軸が時系列を表し、縦軸が周波数を表す。縦軸の上の方が周波数が低く、縦軸の下の方が周波数が高い。グラフ上の色が周波数成分の強度を表し、色が暗い方が周波数成分が弱く、色が明るい方が周波数成分が強い。
上段のグラフにおいて、広い周波数帯にわたって色が明るい部分は、咀嚼によって顎の筋肉が活動していることを示している。咀嚼によって顎の筋肉が活動している時刻に、下段のグラフにおいても、微弱ではあるが筋肉が活動していることを示す部分が存在している。これは、筋電デバイス100の筋電センサが、咀嚼活動を示す咀嚼信号を検出したことを示している。
中段のグラフにおいて、低周波数帯で色が明るい部分は、心筋が活動していることを示している。心筋が活動している時刻に、下段のグラフにおいても、心筋が活動していることを示す部分が存在している。これは、筋電デバイス100の筋電センサが、心筋活動を示す心電信号を検出したことを示している。
このように、筋電デバイス100の筋電センサは、一対の測定電極114、115が配置された位置に近くの首および/または肩の筋肉由来の筋電信号だけでなく、一対の測定電極114、115が配置された位置から離れた位置の心臓の心電信号を少なくとも検出することができる。筋電デバイス100の筋電センサは、一対の測定電極114、115が配置された位置に近くの首および/または肩の筋肉由来の筋電信号だけでなく、一対の測定電極114、115が配置された位置から離れた位置の心臓の心電信号および顎の筋肉による咀嚼信号を検出するようにしてもよい。
筋電デバイス100は、筋電デバイス100の筋電センサによって検出された筋電信号から、心筋活動を示す心電信号を少なくとも抽出することによって、心電信号を少なくとも検出することができる。心電信号を少なくとも抽出する処理は、後述する。筋電デバイス100は、筋電デバイス100の筋電センサによって検出された筋電信号から、心筋活動を示す心電信号および咀嚼活動を示す咀嚼信号を抽出することによって、心電信号および咀嚼信号を検出するようにしてもよい。心電信号および咀嚼信号を抽出する処理は、後述する。
図4(a)は、従来の筋電センサの一対の測定電極を左胸部の心臓近傍に配置したとき(図2Aに示される従来の電極配置)に得られた心電信号の波形の例を示し、図4(b)は、筋電デバイス100の筋電センサの一対の測定電極114、115を首の後部に配置したとき(図2Bに示される電極配置)に得られた筋電信号から抽出された心電信号の波形の例を示す。
正常な心電信号の波形では、主にP点、Q点、R点、S点、T点、U点が特徴点として認識される。図4(a)に示される波形は、P点、Q点、R点、S点、T点、U点を明確に示している。図4(b)に示される波形では、形状の変質は見られるものの、主な特徴点のうちのP点、Q点、R点、S点、T点の存在を確認することができる。
このように、筋電デバイス100は、一対の測定電極114、115が配置された位置から離れた位置の心臓の心電信号を、その特徴点を維持したまま抽出することができる。
抽出された心電信号および/または咀嚼信号は、例えば、使用者の潜在的な病気およびその前兆の発見や生活スタイルの観察・管理のために利用されることができる。心臓は、身体の異常が最もよく見える部位の一つであり、咀嚼は、生活スタイルのうちの食事に関連しているからである。筋電デバイス100によって抽出された心電信号および/または咀嚼信号は、例えば、ヘルスケア事業者に送信される。ヘルスケア事業者は、心電信号および/または咀嚼信号を解析し、使用者の体調モニタリングのために利用する。ヘルスケア事業者は、例えば、ヘルスケアアプリケーションを使用者端末に提供し、ヘルスケアアプリケーションを通じて、解析結果を使用者に提示することができる。
2.筋電デバイス100の構成
図5は、筋電デバイス100の構成の一例を示す。
筋電デバイス100は、ハウジング110と、筋電センサ120と、AD変換部130と、メモリ部140と、プロセッサ部150と、送信部160プロセッサ部150とを備える。筋電センサ120と、AD変換部130と、メモリ部140と、プロセッサ部150と、送信部160とは、ハウジング110内に配置されている。
筋電センサ120は、図1に示されるように、基準電極113と、一対の測定電極114、115とを備える。筋電センサ120は、身体の筋活動を示す筋電信号を検出可能な任意の検出手段であり得る。例えば、筋電センサ120は、筋電信号の検出のために、1次アンプと、ハイパスフィルタと、ローパスフィルタと、ノッチフィルタと、2次アンプとを備えてもよい。1次アンプおよび2次アンプは、信号を増幅するために使用される。ハイパスフィルタは、所定の周波数より低い周波数の信号、例えば、10Hzより低い周波数の信号を減衰させるために使用される。ローパスフィルタは、所定の周波数より高い周波数の信号、例えば、400Hzより高い周波数の信号を減衰させるために使用される。ノッチフィルタは、所定の範囲の周波数の信号、例えば、代表的な電気ノイズである50〜60HzのACノイズを減衰させるために使用される。ノッチフィルタに代えて、バンドエリミネーションフィルタを使用することも可能である。筋電センサ120からの出力は、アナログ信号である。このような構成の筋電センサ120を用いると、基準電極113と測定電極114との間の電圧信号および基準電極113と測定電極115との間の電圧信号から、10Hz〜400Hzの周波数帯の信号を筋電信号として検出することができる。
AD変換部130は、筋電センサ120から出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換する。AD変換部130は、アナログ信号をデジタル信号に変換することが可能な任意の回路であり得る。
メモリ部140には、筋電デバイス100の処理の実行に必要とされるプログラムやそのプログラムの実行に必要とされるデータ等が格納されている。メモリ部140には、心電信号を少なくとも検出する処理を実現するプログラム(例えば、図6に示される処理を実現するプログラム)が格納されている。メモリ部140は、任意の記憶手段によって実装され得る。
プロセッサ部150は、筋電デバイス100全体の動作を制御する。プロセッサ部150は、メモリ部140に格納されているプログラムを読み出し、そのプログラムを実行する。これにより、筋電デバイス100を所望のステップを実行するデバイスとして機能させることが可能である。
送信部160は、信号を筋電デバイス100の外部に無線送信するように構成されている。送信部160が信号をどのようにして無線送信するかは問わない。例えば、送信部160は、Wi−fi等の無線LANを利用して信号を送信してもよい。例えば、送信部160は、Bluetooth(登録商標)等の近距離無線通信を利用して信号を送信してもよい。送信部160は、プロセッサ部150によって抽出された少なくとも心電信号(好ましくは、心電信号および咀嚼信号)を筋電デバイス100の外部に送信する。
なお、図5に示される例では、AD変換部130を筋電センサ120の外部に設けた例を説明したが、AD変換部130を筋電センサ120の内部に設けるようにしてもよい。この場合、筋電センサ120からの出力は、筋電信号を示すデジタル信号である。この場合、図5に示される構成から、AD変換部130を省略することができる。
3.筋電デバイス100による処理
図6は、心電信号を少なくとも検出するため処理の一例を示す。この処理は、筋電デバイス100において実行される。
ステップS601では、筋電センサ120が、筋電信号を検出する。筋電センサ120は、基準電極113と一対の測定電極114、115とを用いて筋電信号を検出する。
ステップS602では、プロセッサ部150が、筋電信号から心電信号を抽出する。種々の筋電信号は、対象によって信号の周波数帯が異なる。筋電デバイス100のプロセッサ部150は、筋電信号の周波数に基づいて、筋電信号から心電信号を抽出することができる。
なお、図6に示される処理は、ステップS603として、プロセッサ部150が、筋電信号から咀嚼信号を抽出する処理をさらに含んでいてもよい。
図7は、ステップS601において筋電センサ120によって検出された筋電信号を周波数解析した結果を示す。図7は、周波数分布を示すグラフであり、横軸が時系列を表し、縦軸が周波数を表す。縦軸の上の方が周波数が低く、縦軸の下の方が周波数が高い。グラフ上の色が周波数成分の強度を表し、色が暗い方が周波数成分が弱く、色が明るい方が周波数成分が強い。
図7に示されるように、心電信号の周波数帯域は、心電信号以外の筋電信号の周波数帯域よりも低い。
このように、ステップS601において筋電センサ120によって検出された筋電信号では、心電信号と心電信号以外の筋電信号およびノイズとを周波数帯域に基づいて明確に区別することができる。従って、筋電デバイス100のプロセッサ部150は、ステップS602において、信号の周波数帯域に基づいて、筋電信号から心電信号を抽出することができる。
なお、筋電デバイス100のプロセッサ部150は、ステップS603において、筋電信号に対して適切な処理を行うことにより、筋電信号から咀嚼信号を抽出することもできる。筋電デバイス100のプロセッサ部150は、ステップS603において、筋電信号に対して適切な処理を行うことに加えて、または、それに代えて、心電信号以外の筋電信号に対してさらに処理を行うことによって、咀嚼信号を抽出することもできる。
4.筋電デバイス100の代替形態
図8は、筋電デバイス100の代替形態である筋電デバイス100’の形態の一例を示す。
筋電デバイス100’は、筋電デバイス100と同様に、使用者の首周りに装着可能なネックバンド型デバイスである。図8において、図1と同一の構成要素には、同一の参照番号を付し、ここでは、その説明を省略する。
筋電デバイス100’では、アーム111、112の先端部に一対の測定電極116、117(一対の第2の測定電極)が配置されている。使用者は、アーム111、112を首に巻き付けることによって筋電デバイス100’を装着する。アーム111、112は、使用者が筋電デバイス100’を装着したときに、一対の測定電極116、117がそれぞれ、使用者の左右の鎖骨上にある皮膚に接触するように構成されている。一対の測定電極116、117は、一対の測定電極114、115(一対の第1の測定電極)と同様に、一対の測定電極116、117が接触する部位に存在する同一の筋繊維上には配置されない。
本発明の筋電デバイス100’の筋電センサの一対の測定電極116、117は、筋電デバイス100’が使用者に装着されると、一対の測定電極116、117を結ぶ線と、一対の測定電極116、117が配置された位置に直近の筋肉の筋繊維が延びる方向とのなす角θが、30度以上、45度以上、60度以上、または、好ましくは90度となるように配置され得る。θが90度に近いほど、一対の測定電極116、117が配置された位置に直近の筋肉由来の筋電信号のS/N比は有意に低減され、一対の測定電極116、117が配置された位置から遠い位置の筋肉由来の筋電信号のS/N比を相対的に高めることができる。
筋電デバイス100’の一対の測定電極116、117は、筋電デバイス100’が使用者に装着されると、使用者の鎖骨上で使用者の正中面に対して対称に位置するようにしてもよい。これは、例えば、筋電デバイス100’のハウジング110の中心から一対の測定電極116、117までの距離をそれぞれ同一の距離とすることによって達成され得る。あるいは、筋電デバイス100’の一対の測定電極116、117は、筋電デバイス100’が使用者に装着されると、使用者の鎖骨上で使用者の正中面に対して非対称に位置するようにしてもよい。これは、例えば、筋電デバイス100’のハウジング110の中心から一対の測定電極116、117までの距離をそれぞれ異なる距離とすることによって達成され得る。例えば、一対の測定電極のうちの一方の測定電極116は、ハウジング110の中心から270〜290mm、好ましくは280mmの位置に提供され、一対の測定電極のうちの他方の測定電極117は、ハウジング110の中心から230〜250mm、好ましくは240mmの位置に提供されることにより、筋電デバイス100が使用者に装着されると使用者の首の後部で使用者の正中面に対して非対称に位置する。このようにして、一対の測定電極116、117は、使用者の鎖骨上で任意の位置に配置されることができる。一対の測定電極116、117を使用者の正中面に対して非対称に位置するように配置することで、一対の測定電極と測定対象(例えば、心臓)との間の最短距離を、電極間で異ならせることができる。これにより、一対の測定電極のうちの一方の測定電極116によって測定された筋電信号と、一対の測定電極のうちの他方の測定電極117によって測定された筋電信号との間に時間差を生じさせ、測定対象の筋電信号とノイズとを容易に区別することを可能にする。正中面に対して非対称に配置された一対の測定電極を用いると、正中面に対して対称に配置された一対の測定電極から得られる筋電信号よりもクリアな筋電信号を得ることができる。
筋電デバイス100’は、2つの筋電センサ(すなわち、第1の筋電センサ1201および第2の筋電センサ1202;図8には示されていない)を備える。ハウジング110内に第1の筋電センサ1201と第2の筋電センサ1202の一対の測定電極116、117を除く部分とが内蔵されている。第1の筋電センサ1201および第2の筋電センサ1202の構成は、図5に示される筋電センサ120の構成と同様である。第1の筋電センサ1201および第2の筋電センサ1202は、図5に示される筋電センサ120と同様に、例えば10Hz〜400Hzの周波数帯の信号を筋電信号として検出することができる。第1の筋電センサ1201は、基準電極113と一対の測定電極114、115とを用いて筋電信号を検出し、第2の筋電センサ1202は、基準電極113と一対の測定電極116、117とを用いて筋電信号を検出する。
第1の筋電センサ1201によって検出される信号は、心電信号の信号強度は低いが心電信号以外の筋電信号およびノイズのレベルがそれ以上に低く、心電のS/N比が高い。従って、第1の筋電センサ1201によって検出される信号では、心電信号と心電信号以外の筋電信号およびノイズとを容易に区別することが可能であるが、心電信号によって得られる情報の信頼度は低い。
第2の筋電センサ1202によって検出される信号は、心電信号の信号強度が高いが他の筋電信号およびノイズも多く、心電のS/N比が小さい。従って、第2の筋電センサ1202によって検出される信号では、心電信号と心電信号以外の筋電信号およびノイズとの区別が容易ではないが、心電信号の信号強度は、第1の筋電センサ1201によって検出される心電信号の信号強度と比べて大きい。
このように、第1の筋電センサ1201および第2の筋電センサ1202は、長所および短所を有している。筋電デバイス100’は、第1の筋電センサ1201および第2の筋電センサ1202を組み合わせて使用することにより、これらの筋電センサの長所を維持しつつ、短所を補うことができる。
例えば、筋電デバイス100’は、第1の筋電センサ1201によって検出された信号を、心電信号と心電信号以外の筋電信号およびノイズとを区別するためのインデックスとして利用し、このインデックスに基づいて第2の筋電センサ1202によって検出された信号から心電信号と心電信号以外の筋電信号およびノイズとを区別するようにしてもよい。このことは、例えば、第1の筋電センサ1201によって検出された信号から心電信号の時刻と、心電信号以外の筋電信号およびノイズの時刻とを決定し、第2の筋電センサ1202によって検出された信号のうちの、心電信号の時刻として決定された時刻の信号を心電信号であると決定し、心電信号以外の筋電信号およびノイズの時刻として決定された時刻の信号を心電信号以外の筋電信号およびノイズであると決定することによって達成される。これにより、第2の筋電センサ1202によって検出された信号から心電信号と心電信号以外の筋電信号およびノイズとを高い精度で区別することができる。その場合、筋電デバイス100’は、第2の筋電センサ1202によって検出された信号から、心電信号を抽出することで、信頼度の高い情報を得ることが可能である。
あるいは、筋電デバイス100’は、2つの筋電センサ1201、1202のうちの一方を主センサとして利用し、他方のセンサを予備のセンサとして使用するようにしてもよい。筋電センサ120は、人体との接触が肝要であり、適切に接触していないと筋電信号を測定することができない。筋電センサは使用者が動いたときに接触不良になるおそれがあるため、筋電デバイス100’は、2つの筋電センサ1201、1202のうちの一方をバックアップとして予備的に利用するようにしてもよい。これにより、不適切な接触による測定漏れのリスクを低減することができる。
上述した例では、一対の測定電極114、115が使用者の首の後部の皮膚に接触し、一対の測定電極116、117が使用者の左右の鎖骨上にある皮膚に接触する例を説明したが、本発明はこれに限定されない。一対の測定電極114、115および一対の測定電極116、117がそれぞれ使用者の正中面に対して非対称に位置する場合、例えば、一対の測定電極114、115のうちの一方が使用者の首の後部の皮膚に接触し、一対の測定電極114、115のうちの他方が使用者の鎖骨上の皮膚に接触し、一対の測定電極116、117のうちの一方が使用者の首の後部の皮膚に接触し、一対の測定電極116、117のうちの他方が使用者の鎖骨上の皮膚に接触するように、一対の測定電極114、115および一対の測定電極116、117を配置してもよい。なお、このとき、一対の測定電極114、115および一対の測定電極116、117が、接触する部位に存在する同一の筋繊維上には配置されないよう留意すべきである。例えば、一対の測定電極114、115のうちの測定電極114が使用者の右側の鎖骨上の皮膚に接触し、一対の測定電極114、115のうちの測定電極115が使用者の首の後部の左側の皮膚に接触し、一対の測定電極116、117のうちの測定電極116が使用者の首の後部の右側の皮膚に接触し、一対の測定電極116、117のうちの測定電極117が使用者の左側の鎖骨上の皮膚に接触するように、一対の測定電極114、115および一対の測定電極116、117を配置してもよい。
図9は、筋電デバイス100’の構成の一例を示す。図9において、図5と同一の構成要素には、同一の参照番号を付し、ここでは、その説明を省略する。
筋電デバイス100’は、第1の筋電センサ1201および第2の筋電センサ1202を備える。第1の筋電センサ1201から出力される信号および第2の筋電センサ1202から出力される信号は、AD変換部130に提供される。AD変換部130は、第1の筋電センサ1201および第2の筋電センサ1202から出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換し、それぞれのデジタル信号をプロセッサ部150に提供する。
なお、図9に示される例では、AD変換部130を第1の筋電センサ1201および第2の筋電センサ1202の外部に設けた例を説明したが、AD変換部130を第1の筋電センサ1201および第2の筋電センサ1202の内部に設けるようにしてもよい。この場合、第1の筋電センサ1201および第2の筋電センサ1202からの出力は、筋電信号を示すデジタル信号である。この場合、図9に示される構成から、AD変換部130を省略することができる。
筋電デバイス100’による処理は、図6に示される処理と同様である。ステップS601では、第1の筋電センサ1201および第2の筋電センサ1202のうちの少なくとも1つが筋電信号を検出する。ステップS602では、プロセッサ部150は、第1の筋電センサ1201からの筋電信号および第2の筋電センサ1202からの筋電信号の一方または両方を使用して、心電信号を抽出する。例えば、プロセッサ部150は、第1の筋電センサ1201からの心電信号をインデックスとして利用して、第2の筋電センサ1202からの信号から心電信号を抽出するようにしてもよい。あるいは、プロセッサ部150は、第2の筋電センサ1202が筋電信号を検出できなかったときのみ、第1の筋電センサ1201からの筋電信号から心電信号を抽出するようにしてもよい。
なお、筋電デバイス100’による処理は、図6に示される処理と同様に、ステップS603として、筋電デバイス100’のプロセッサ部150が、筋電信号から咀嚼信号を抽出する処理をさらに含んでいてもよい。この場合、筋電デバイス100’のプロセッサ部150は、ステップS603において、筋電信号に対して適切な処理を行うことにより、筋電信号から咀嚼信号を抽出することもできる。筋電デバイス100’のプロセッサ部150は、ステップS603において、筋電信号に対して適切な処理を行うことに加えて、または、それに代えて、心電信号以外の筋電信号に対してさらに処理を行うことによって、咀嚼信号を抽出することもできる。
図1〜図9に示される例では、筋電デバイス100、100’のプロセッサ部150が、筋電センサによって検出された筋電信号から心電信号を少なくとも抽出することを説明したが、本発明は、これに限定されない。心電信号を少なくとも抽出する処理は、プロセッサ部を備える他の情報処理装置によって実行されることができる。例えば、心電信号を少なくとも抽出する処理は、筋電デバイス100と通信するサーバ装置のプロセッサ部によって実行されることができる。あるいは、心電信号を少なくとも抽出する処理は、ユーザ装置のプロセッサ部によって実行されることができる。
以下、心電信号を少なくとも検出するためのシステム10について説明する。
5.心電信号を少なくとも検出するためのシステム
図10は、心電信号を少なくとも検出するためのシステム10の構成の一例を示す。
図10に示される例では、システム10は、筋電デバイス100と、サーバ装置200と、ユーザ装置300とを備える。筋電デバイス100と、サーバ装置200と、ユーザ装置300とは、ネットワーク400を介して接続されている。ここで、ネットワーク400の種類は問わない。例えば、筋電デバイス100と、サーバ装置200と、ユーザ装置300とは、インターネットを介して相互に通信してもよいし、LANを介して相互に通信してもよい。
サーバ装置200は、インターフェース部210と、メモリ部220と、プロセッサ部230とを備える。サーバ装置200は、データベース部240に接続されている。
インターフェース部210は、筋電デバイス100、データベース部240またはユーザ装置300との通信を制御する。インターフェース部210は、任意の方法で通信を制御し得る。
メモリ部220には、処理の実行に必要とされるプログラムやそのプログラムの実行に必要とされるデータ等が格納されている。例えば、メモリ部220には、筋電信号から心電信号を少なくとも抽出する処理(例えば、図6のステップS602および/またはS603の処理)を実現するためのプログラムが格納されていてもよい。ここで、プログラムをどのようにしてメモリ部220に格納するかは問わない。例えば、プログラムは、メモリ部220にプリインストールされていてもよい。あるいは、プログラムは、ネットワーク400を経由してダウンロードされることによってメモリ部220にインストールされるようにしてもよいし、光ディスクやUSB等の記憶媒体を介してメモリ部220にインストールされるようにしてもよい。
プロセッサ部230は、サーバ装置200全体の動作を制御する。プロセッサ部230は、メモリ部220に格納されているプログラムを読み出し、そのプログラムを実行する。これにより、サーバ装置200を所望のステップを実行する装置として機能させることが可能である。
データベース部240は、筋電デバイス100の使用者と筋電デバイス100から送信された筋電信号とを関連付けて格納してもよい。データベース部240は、その他の任意のデータを格納することができる。サーバ装置200は、ユーザ装置300にヘルスケアアプリケーションを提供し、ユーザ装置300がデータベース部240に格納されたデータを利用することが可能であるようにしてもよい。
ユーザ装置300は、インターフェース部310と、表示部320と、メモリ部330と、プロセッサ部340とを備える。
インターフェース部310は、筋電デバイス100またはサーバ装置200との通信を制御する。インターフェース部310は、任意の方法で通信を制御し得る。
表示部320は、画面を表示する任意のディスプレイであり得る。
メモリ部330には、処理の実行に必要とされるプログラムやそのプログラムの実行に必要とされるデータ等が格納されている。例えば、メモリ部330には、筋電信号から心電信号を少なくとも抽出する処理(例えば、図6のステップS602および/またはS603の処理)を実現するためのプログラムが格納されていてもよい。ここで、プログラムをどのようにしてメモリ部330に格納するかは問わない。例えば、プログラムは、メモリ部330にプリインストールされていてもよい。あるいは、プログラムは、ネットワーク400を経由してダウンロードされることによってメモリ部330にインストールされるようにしてもよいし、光ディスクやUSB等の記憶媒体を介してメモリ部330にインストールされるようにしてもよい。
プロセッサ部340は、ユーザ装置300全体の動作を制御する。プロセッサ部340は、メモリ部330に格納されているプログラムを読み出し、そのプログラムを実行する。これにより、ユーザ装置300を所望のステップを実行する装置として機能させることが可能である。
上述した構成において、筋電信号を検出する処理(例えば、図6のステップS601の処理)を筋電デバイス100で実行するようにし、筋電信号から心電信号を少なくとも抽出する処理(例えば、図6のステップS602および/またはS603の処理)をサーバ装置200で実行するようにしてもよい。この場合、システム10からユーザ装置300を省略することも可能である。この場合、筋電デバイス100のプロセッサ部150は、筋電センサ120によって検出された筋電信号に対して抽出処理を行うことなく、筋電センサ120によって検出された筋電信号をサーバ装置200に送信するようにすればよく、サーバ装置200のプロセッサ部230は、筋電デバイス100から受信された筋電信号から心電信号を少なくとも抽出するようにすればよい。
この場合、筋電デバイス100のメモリ部140は、筋電信号を検出する処理(例えば、図6のステップS601の処理)を実現するプログラムを格納すれば足り、筋電信号から心電信号を少なくとも抽出する処理(例えば、図6のステップS602および/またはS603の処理)を実現するプログラムを格納する必要はない。これにより、筋電デバイス100のメモリ部140の容量を低減することができ、筋電デバイス100のプロセッサ部150による処理を単純化することができる。
あるいは、上述した構成において、筋電信号を検出する処理(例えば、図6のステップS601の処理)を筋電デバイス100で実行するようにし、筋電信号から心電信号を少なくとも抽出する処理(例えば、図6のステップS602および/またはS603の処理)をユーザ装置300で実行するようにしてもよい。この場合、システム10からサーバ装置200を省略することも可能である。この場合、筋電デバイス100のプロセッサ部150は、筋電センサ120によって検出された筋電信号に対して抽出処理を行うことなく、筋電センサ120によって検出された筋電信号をユーザ装置300に送信するようにすればよく、ユーザ装置300のプロセッサ部340は、筋電デバイス100から受信された筋電信号から心電信号を少なくとも抽出するようにすればよい。
この場合、筋電デバイス100のメモリ部140は、筋電信号を検出する処理(例えば、図6のステップS601の処理)を実現するプログラムを格納すれば足り、筋電信号から心電信号を少なくとも抽出する処理(例えば、図6のステップS602および/またはS603の処理)を実現するプログラムを格納する必要はない。これにより、筋電デバイス100のメモリ部140の容量を低減することができ、筋電デバイス100のプロセッサ部150による処理を単純化することができる。
なお、図10に示されるシステム10において、筋電デバイス100の代わりに筋電デバイス100’を用いるようにしてもよい。この場合、筋電デバイス100’のプロセッサ部150は、第1の筋電センサ1201または第2の筋電センサ1202によって検出された筋電信号に対して抽出処理を行うことなく、第1の筋電センサ1201または第2の筋電センサ1202によって検出された筋電信号をサーバ装置200またはユーザ装置300に送信するようにすればよい。この場合、筋電デバイス100’のメモリ部140は、筋電信号を検出する処理(例えば、図6のステップS601の処理)を実現するプログラムを格納すれば足り、筋電信号から心電信号を少なくとも抽出する処理(例えば、図6のステップS602および/またはS603の処理)を実現するプログラムを格納する必要はない。これにより、筋電デバイス100’のメモリ部140の容量を低減することができ、筋電デバイス100’のプロセッサ部150による処理を単純化することができる。
図1〜図10に示される例では、ネックバンド型デバイスである筋電デバイス100、100’を説明したが、筋電デバイス100、100’の形態はこれに限定されない。筋電デバイス100は、任意の形態であり得る。
図11は、ネックバンド型筋電デバイス100、100’の代替形態である筋電デバイス100’’の形態の一例を示す。筋電デバイス100’’は、首からさげることが可能なネックストラップ型デバイスである。筋電デバイス100’’は、筋電デバイス100、100’と同様の構成要素を備えている。
筋電デバイス100’’は、ハウジング110(第1のハウジング)と、一対の測定電極116、117(一対の第2の測定電極)とに加えて、第2のハウジング118と、ネックストラップ119とを備える。第1のハウジング110の構成は、図5に示されるハウジング110の構成と同様であるので、ここではその説明を省略する。一対の測定電極116、117の構成は、図8に示される一対の測定電極116、117の構成と同様であるので、ここではその説明を省略する。第2のハウジング118には、筋電デバイス100’’に必要な回路(例えば、バッテリおよびこれに付随する回路等)が収容される。
使用者がネックストラップ119を首からさげることによって筋電デバイス100を装着すると、ハウジング110に配置されている一対の測定電極114、115は、第2のハウジング118の重みによって使用者の首の後部にある皮膚に接触し、一対の測定電極116、117は、使用者の左右の鎖骨上にある皮膚に接触する。
なお、図11に示される例では、筋電デバイス100’’が一対の測定電極116、117を備える例を説明したが、筋電デバイス100’’から一対の測定電極116、117を省略した構成もまた本発明の範囲内である。
図1〜図11に示される例では、首の後部に配置される一対の測定電極を備える筋電デバイス100、100’、100’’を説明したが、一対の測定電が配置される部位は、首の後部に限定されない。一対の測定電極は、身体の任意の部位に配置される。一対の測定電極が配置される部位は、使用者が一対の測定電極を配置するために筋電デバイスを装着しやすい部位であることが好ましい。例えば、一対の測定電極は、使用者の腹部に配置されるようにしてもよい。
図12Aは、筋電デバイス100、100’、100’’の代替形態である筋電デバイス100’’’の形態の一例を示し、図12Bは、筋電デバイス100’’’を使用者の腹部に装着した様子を示す。
筋電デバイス100’’’は、一対の測定電極を腹部に配置するために、図12Bに示されるように腹部に巻き付けて装着することが可能なベルト型デバイスである。本明細書において、「腹部」とは、人間の胸腔と骨盤との間の部分をいう。図12Aにおいて、図1と同一の構成要素には、同一の参照番号を付し、ここでは、その説明を省略する。筋電デバイス100’’’は、図5に示される筋電デバイス100と同様の構成を有する。
筋電デバイス100’’’は、ハウジング110と、ハウジングの両端から延びるベルト部171とを備える。図12Aでは、ハウジング110の中心110Cが図12Aの右側に位置して示されている。ベルト部171は、使用者に密着して装着されるように構成されている。例えば、ベルト部171は、ベルト部171の長さを調節することが可能なアジャスタ(図示せず)を備えることにより、使用者に密着して装着されるようにしてもよい。例えば、ベルト部171は、伸縮可能な材料から作製されることにより、使用者に密着して装着されるようにしてもよい。
ハウジング110内に筋電センサ(図12Aおよび図12Bには示されていない)が内蔵されている。筋電センサは、基準電極113と、一対の測定電極114、115とを備える。一対の測定電極114、115は、ハウジング110に設けられて、ハウジング110の外表面に露出している一方、基準電極113は、ベルト部171に設けられて、ベルト部171の外表面に露出している。ベルト部171の外表面に露出している基準電極113は、有線または無線で、ハウジング110内部の筋電センサと接続されている。
使用者は、ハウジング110の中心110Cを腹部の前部の中心と整合させて、ベルト部171を腹部に巻き付けることによって、筋電デバイス100’’’を装着する。使用者は、ベルトを装着する感覚で、筋電デバイス100’’’を容易に装着することができる。ベルト部171は、使用者が筋電デバイス100’’’を装着したときに、基準電極113および一対の測定電極114、115が使用者の腹部の皮膚に接触するように構成されている。使用者は、筋電デバイス100’’’を装着することによって運動を制限されることはない。筋電デバイス100’’’は、ベルト部171が使用者に密着して装着されるように構成されているため、使用者により密着する。使用者が姿勢を変えても、筋電デバイス100’’’は、腹部の皮膚に密着し、筋電信号を安定的に検出し続けることができる。筋電デバイス100’’’は、例えば、使用者が横になって寝ている間でも筋電信号を安定的に検出することができる。
筋電デバイス100’’’の一対の測定電極114、115は、上述した筋電デバイス100と同様に、一対の測定電極114、115が接触する部位に存在する同一の筋繊維上には配置されない。
また、筋電デバイス100’’’の一対の測定電極114、115は、上述した筋電デバイス100と同様に、筋電デバイス100’’’が使用者に装着されると、一対の測定電極114、115を結ぶ線と、一対の測定電極114、115が配置された位置に直近の筋肉の筋繊維が延びる方向とのなす角θが、30度以上、45度以上、60度以上、または、好ましくは90度となるように配置され得る。θが90度に近いほど、一対の測定電極114、115が配置された位置に直近の筋肉由来の筋電信号のS/N比は有意に低減され、一対の測定電極114、115が配置された位置から遠い位置の筋肉由来の筋電信号のS/N比を相対的に高めることができる。
筋電デバイス100’’’の一対の測定電極114、115は、筋電デバイス100’’’が使用者に装着されると、使用者の腹部で使用者の正中面に対して対称に位置するようにしてもよい。これは、例えば、筋電デバイス100’’’のハウジング110の中心110Cから一対の測定電極114、115までの距離をそれぞれ同一の距離とすることによって達成され得る。あるいは、筋電デバイス100’’’の一対の測定電極114、115は、筋電デバイス100’’’が使用者に装着されると、使用者の腹部で使用者の正中面に対して非対称に位置するようにしてもよい。これは、例えば、筋電デバイス100’’’のハウジング110の中心110Cから一対の測定電極114、115までの距離をそれぞれ異なる距離とすることによって達成され得る。例えば、一対の測定電極のうちの一方の測定電極114は、ハウジング110の中心110Cから20〜60mm、好ましくは40mmの位置に提供され、一対の測定電極のうちの他方の測定電極115は、ハウジング110の中心110Cから130〜170、好ましくは150mmの位置に提供されることにより、筋電デバイス100が使用者に装着されると使用者の腹部で使用者の正中面に対して非対称に位置する。このようにして、一対の測定電極114、115は、使用者の腹部で任意の角度位置に配置されることができる。例えば、一対の測定電極114、115を、それぞれの電極と使用者の身体の中心とを通る線と使用者の冠状面よりも前側の正中面とのなす角度が左右方向に45度の位置に配置するようにしてもよい。あるいは、例えば、一対の測定電極のうちの一方の測定電極114を、電極114と使用者の身体の中心とを通る線と使用者の冠状面よりも前側の正中面とのなす角度が左方向に5〜25度、好ましくは15度の位置に配置し、一対の測定電極のうちの他方の測定電極115を、電極115と使用者の身体の中心とを通る線と使用者の冠状面よりも前側の正中面とのなす角度が右方向に55〜75度、好ましくは65度の位置に配置するようにしてもよい。このように、一対の測定電極114、115を使用者の正中面に対して非対称に位置するように配置することで、一対の測定電極と測定対象(例えば、心臓)との間の最短距離を、電極間で異ならせることができる。これにより、一対の測定電極のうちの一方の測定電極114によって測定された筋電信号と、一対の測定電極のうちの他方の測定電極115によって測定された筋電信号との間に時間差を生じさせ、測定対象の筋電信号とノイズとを容易に区別することを可能にする。正中面に対して非対称に配置された一対の測定電極を用いると、正中面に対して対称に配置された一対の測定電極から得られる筋電信号よりもクリアな筋電信号を得ることができる。
さらに、腹部の横断面は、概して楕円形であり、かつ、略円形の首の横断面に比べて大きい。従って、一対の測定電極114、115を正中面に対して非対称に位置するように配置する場合、腹部に装着する筋電デバイス100’’’では、首に装着する筋電デバイス100、100’、100’’に比べて、一対の測定電極と測定対象(例えば、心臓)との間の最短距離をより大きく電極間で異ならせることができる。これにより、首に装着する筋電デバイス100、100’、100’’よりもクリアな筋電信号を得ることが可能である。
首に装着する筋電デバイス100、100’、100’’では、筋電センサが心電信号に加えて、顎の筋肉による咀嚼活動を示す咀嚼信号も検出したが、腹部に装着する筋電デバイス100’’’では、筋電センサは、咀嚼信号に代えて、歩行活動を示す歩行信号を検出することができる。歩行活動を示す歩行信号は、例えば、大腿の筋肉由来の筋電信号、下腿の筋肉由来の筋電信号を含み得る。筋電デバイス100’’’は、例えば上述した周波数に基づいた抽出処理等の処理によって、検出された信号から心電信号および/または歩行信号を抽出することができる。
なお、筋電デバイス100’’’による処理は、図6に示される処理と同様である。筋電デバイス100’’’による処理は、図6に示される処理に加えて、ステップS603’として、筋電デバイス100’’’のプロセッサ部150が、筋電信号から歩行信号を抽出する処理をさらに含んでいてもよい。この場合、筋電デバイス100’’’のプロセッサ部150は、ステップS603’において、筋電信号に対して適切な処理を行うことにより、筋電信号から歩行信号を抽出することもできる。筋電デバイス100’’’のプロセッサ部150は、ステップS603’において、筋電信号に対して適切な処理を行うことに加えて、または、それに代えて、心電信号以外の筋電信号に対してさらに処理を行うことによって、歩行信号を抽出することもできる。
抽出された心電信号および/または歩行信号は、咀嚼信号と同様に、例えば、使用者の潜在的な病気およびその前兆の発見や生活スタイルの観察・管理のために利用されることができる。歩行は、生活スタイルのうちの運動に関連しているからである。筋電デバイス100’’’によって抽出された心電信号および/または歩行信号は、例えば、ヘルスケア事業者に送信される。ヘルスケア事業者は、心電信号および/または歩行信号を解析し、使用者の体調モニタリングのために利用する。ヘルスケア事業者は、例えば、ヘルスケアアプリケーションを使用者端末に提供し、ヘルスケアアプリケーションを通じて、解析結果を使用者に提示することができる。
筋電デバイス100’’’は、図5に示される構成に加えて、圧力センサおよび/または周長検出センサを備えることができる。
圧力センサは、筋電デバイス100’’’にかかる圧力を検出することが可能なセンサである。使用者の呼吸に合わせて腹部が筋電デバイス100’’’に与える圧力が変化するため、圧力センサ用いて筋電デバイス100’’’にかかる圧力の変化を検出することによって、使用者の呼吸を検出することができる。
周長検出センサは、筋電デバイス100’’’の装着時の周長を検出することが可能なセンサである。使用者の呼吸に合わせて筋電デバイス100’’’の装着時の周長が変化するため、周長検出センサ用いて筋電デバイス100’’’の装着時の周長の変化を検出することによって、使用者の呼吸を検出することができる。
検出された呼吸に関する情報は、例えば、使用者の呼吸器系の潜在的な病気(例えば、睡眠時無呼吸症候群等)およびその前兆の発見のために利用されることができる。筋電デバイス100’’’によって検出された呼吸に関する情報は、例えば、ヘルスケア事業者に送信される。ヘルスケア事業者は、呼吸に関する情報を解析し、使用者の病気の発見のために利用する。ヘルスケア事業者は、例えば、ヘルスケアアプリケーションを使用者端末に提供し、ヘルスケアアプリケーションを通じて、解析結果を使用者に提示することができる。
上述した例における基準電極113、一対の測定電極114、115、または一対の測定電極116、117の電極配置は一例であり、他の電極配置も本発明の範囲内である。
例えば、筋電デバイス100’’’において、基準電極113は、筋電デバイス100’’’が使用者に装着されると使用者の腹部の後部の中心(背骨部分)に位置するようにしてもよい。これは、例えば、筋電デバイス100’’’のハウジング110の中心110Cから基準電極113までの距離を左右方向に同一の距離とすることによって達成され得る。このとき、背骨部分の周りの皮膚が盛り上がっている場合は、筋電デバイス100’’’を装着したときに、筋電デバイス100’’’と背骨部分との間に隙間ができ、基準電極113と皮膚との接触不良を引き起こすおそれがある。このような接触不良は、例えば、基準電極113が、筋電デバイス100’’’が使用者に装着されると使用者の腹部の後部の中心(背骨部分)から左右方向にずれて位置するようにすることで回避されることができる。例えば、基準電極113は、ハウジング110の中心110Cから左右方向に同一の距離の位置から左または右に20〜60mm、好ましくは40mmの位置に提供されるようにしてもよい。これにより、基準電極113は、筋電デバイス100’’’が使用者に装着されると使用者の腹部の後部の中心(背骨部分)からずれて位置することになる。基準電極113は、使用者の腹部周りで任意の角度位置に配置されることができる。例えば、基準電極113は、基準電極113と使用者の身体の中心とを通る線と使用者の冠状面よりも後側の正中面とのなす角度が右方向または左方向に5〜25度、好ましくは15度の位置に配置されるようにしてもよい。代替として、基準電極113と皮膚との接触不良は、基準電極113の位置を左右方向にずらす代わりに、背骨部分と密着するように基準電極113の高さを変更することで回避されることができる。
例えば、図1に示される例では、基準電極113および一対の測定電極114、115は、ハウジング110の上下方向中央に位置しているが、基準電極113および一対の測定電極114、115は、ハウジング110の中央から上下方向にずらして配置されるようにしてもよい。例えば、基準電極113および一対の測定電極114、115は、ハウジング110の中央から下方向にずらし、ハウジング110の底面近傍に配置されるようにしてもよい。このとき、基準電極113および一対の測定電極114、115が配置される底面近傍の面にRをつけ、使用者の首の上下方向の形状に沿うように湾曲した形状とすることで、基準電極113および一対の測定電極114、115を使用者の首の後部の皮膚により密着させることができる。また、基準電極113および一対の測定電極114、115が配置される底面近傍の面にRをつけることに加えて、またはそれに代えて、ハウジング110の身体接触面を、使用者の首の周方向形状に沿うように凹状に湾曲した形状とすることで、首と筋電デバイス100との間の隙間の形成を防止し、基準電極113および一対の測定電極114、115を使用者の首の後部の皮膚により密着させることができる。これにより、安定的に筋電信号を検出することができる。
例えば、図12Aに示される例では、基準電極113がベルト部171に設けられてベルト部171の外表面に露出して配置され、一対の測定電極114、115がハウジング110に設けられてハウジング110の外表面に露出して配置されたが、基準電極113に代えて、または基準電極113に加えて、一対の測定電極114、115の一方または両方がベルト部171に設けられてベルト部171の外表面に露出して配置されるようにしてもよい。あるいは、基準電極113が一対の測定電極114、115と同様にハウジング110に設けられてハウジング110の外表面に露出して配置されるようにしてもよい。
上述した例のように、筋電デバイスが3つの電極(基準電極113、一対の測定電極114、115)のみを備えることが好ましい。本発明の筋電デバイスは、特有の電極配置によって、少ない電極でさえも、測定対象の筋電信号を抽出可能な態様で、筋電信号を検出することができる。しかしながら、本発明の筋電デバイスの電極の数は、これに限定されない。本発明の筋電デバイスは、本発明の効果が得られる限り、任意の数の電極を備えることができる。例えば、筋電デバイス100’’’は、筋電デバイス100’、100’’と同様に、一対の第2の測定電極116、117を備えてもよい。あるいは、筋電デバイス100’’’は、より多くの測定電極を備えてもよい。
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。