以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、本明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺及び縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
(第1の実施の形態)
図1乃至図17を用いて、本発明の第1の実施の形態におけるベーパーチャンバ、ベーパーチャンバ用金属シートおよびベーパーチャンバの製造方法について説明する。ここで、本実施の形態におけるベーパーチャンバ1は、作動液2が封入された密封空間3を有しており、密封空間3内の作動液2が相変化を繰り返すことにより、携帯端末やタブレット端末といったモバイル端末等で使用される中央演算処理装置(CPU)等の発熱を伴うデバイス(被冷却装置)を冷却するための装置である。ベーパーチャンバ1は、概略的に薄い平板状に形成されている。
図1乃至図4に示すように、本実施の形態によるベーパーチャンバ1は、下側金属シート10(第1金属シート)と、下側金属シート10上に設けられた上側金属シート20(第2金属シート)と、を備えている。このうち、下側金属シート10の下面(後述する受熱面10b、とりわけ、後述する蒸発部11の下面)に、冷却対象物であるデバイスDが取り付けられる。
ベーパーチャンバ1は、密封空間3を画定する空間画定面3aと、デバイスDから熱を受ける受熱面10bと、密封空間3に対して受熱面10bの側とは反対側に設けられた放熱面20bと、粗面化部30と、を備えている。このうち、受熱面10bは、上述した下側金属シート10の下面に相当し、放熱面20bは、上述した上側金属シート20の上面に相当する。また、ベーパーチャンバ1は、放熱面20bから受熱面10bに延びる周縁外側面5を更に備えている。この周縁外側面5は、下側金属シート10の外側面10c(後述)と、上側金属シート20の外側面20c(後述)と、によって構成されている。
下側金属シート10と上側金属シート20との間には、作動液2が封入された密封空間3が形成されている。作動液2の例としては、純水、エタノール、メタノール、アセトン等が挙げられる。
下側金属シート10と上側金属シート20とは、後述する拡散接合によって接合されている。図1に示す形態では、下側金属シート10および上側金属シート20は、平面視でいずれも矩形状に形成されている例が示されているが、これに限られることはない。ここで平面視とは、ベーパーチャンバ1がデバイスDから熱を受ける受熱面10b、および受けた熱を放出する放熱面20bに直交する方向から見た状態であって、例えば、ベーパーチャンバ1を上方から見た状態(図1参照)、または下方から見た状態に相当している。
なお、ベーパーチャンバ1がモバイル端末内に設置される場合、モバイル端末の姿勢によっては、下側金属シート10と上側金属シート20との上下関係が崩れる場合もある。しかしながら、本実施の形態では、デバイスDから熱を受ける液相側の金属シートを下側金属シート10と称し、受けた熱を放出する気相側の金属シートを上側金属シート20と称して、下側金属シート10が下側に配置され、上側金属シート20が上側に配置された状態で説明する。
図1乃至図4に示すように、下側金属シート10は、上面10a(第1面、上側金属シート20の側の面)と、上面10aとは反対側に設けられた受熱面10b(第2面)と、外側面10cと、作動液2が蒸発して蒸気を生成する蒸発部11と、上面10aに設けられ、平面視で矩形状に形成された下側流路凹部12と、を有している。このうち下側流路凹部12は、上述した密封空間3の一部を構成しており、主として、蒸発部11で生成された蒸気から凝縮した作動液2(図2乃至図4参照)を蒸発部11に輸送するように構成されている。この蒸発部11は、下側金属シート10の受熱面10bに取り付けられるデバイスDから熱を受けて、密封空間3内の作動液2が蒸発する部分である。このため、蒸発部11という用語は、デバイスDに重なっている部分に限られる概念ではなく、デバイスDに重なっていなくても作動液2が蒸発可能な部分をも含む概念として用いている。ここで蒸発部11は、下側金属シート10の任意の場所に設けることができるが、図1においては、下側金属シート10の中央部に設けられている例が示されている。この場合、ベーパーチャンバ1が設置されたモバイル端末の姿勢が、ベーパーチャンバ1の動作の安定化に影響を及ぼすことを抑制できる。
本実施の形態では、図1乃至図4に示すように、下側金属シート10の下側流路凹部12内に、下側流路凹部12の底面12a(後述)から上方(底面12aに垂直な方向)に突出する複数の下側流路突出部13が設けられている。本実施の形態では、下側流路突出部13は、円柱状のボスとして形成されている例が示されており、上面13aと側面13bとを含んでいる。また、各下側流路突出部13は、ベーパーチャンバ1の長手方向(図1における左右方向)に沿って、等間隔に離間して配置されている。また、下側流路突出部13は、ベーパーチャンバ1の横断方向(長手方向に直交する横方向、図1における上下方向)にも沿って配置されている。このようにして配置された下側流路突出部13の周囲には、下側流路凹部12の底面12aが形成されている。このようにして、下側流路突出部13の周囲を作動液2が流れるように構成されており、作動液2の流れが妨げられることを抑制している。また、下側流路突出部13は、上側金属シート20の対応する上側流路突出部22(後述)に平面視で重なるように配置されており、ベーパーチャンバ1の機械的強度の向上を図っている。なお、底面12aおよび下側流路突出部13の側面13bは、上述した密封空間3の空間画定面3aを構成している。
図2乃至図4に示すように、下側流路凹部12には、ウィックWが設けられている。ここで、ウィックとは、例えば銅線を不定形状に圧接した金属メッシュや、多孔質焼結体により形成され、毛細管作用を発揮する部材である。このウィックWは、毛細管作用を発揮することにより、下側流路凹部12内の作動液2に、蒸発部11に向かう推進力を与えることができるように構成されている。このようにして、蒸気から凝縮した下側流路凹部12内の作動液2が、蒸発部11に向かってスムースに輸送されるようになっている。なお、図2乃至図4に示すように、ウィックWは、下側流路凹部12の底面12aの全領域に設けられていてもよい。底面12aのうち蒸発部11に設けられたウィックWは、液状の作動液2とデバイスDから受けた熱との熱交換面積を増大させ、熱効率向上をさせることに寄与し得る。一方、底面12aのうち蒸発部11の周囲に設けられたウィックWは、液状の作動液2を、蒸発部11に効果的に輸送することに寄与し得る。なお、ウィックWは、下側流路凹部12のうち下側流路突出部13の間の領域に嵌められるように取り付けられており、ベーパーチャンバ1の姿勢によってウィックWが移動することを防止している。また、ウィックWの高さは、蒸発部11における熱交換面積を増大させることや、毛細管作用によって蒸発部11に向かう作動液2の流量を確保することができれば任意とすることができる。
図1乃至図4に示すように、下側金属シート10の周縁部には、下側周縁壁14が設けられている。下側周縁壁14は、密封空間3、とりわけ下側流路凹部12を囲むように形成されており、密封空間3を画定している。下側周縁壁14は、後述する上側周縁壁23の下面23aに当接する上面14aを有している。また、図1に示すように、平面視で下側周縁壁14の四隅に、下側金属シート10と上側金属シート20との位置決めをするための下側アライメント孔15がそれぞれ設けられている。
本実施の形態では、上側金属シート20は、粗面化部30が形成されていることを除いては、下側金属シート10と同一の構造を有している。すなわち、本実施の形態によるベーパーチャンバ1は、粗面化部30を除くと、下側金属シート10を上下反転させると上側金属シート20になるように構成されている。このため、下側金属シート10と上側金属シート20とを接合した後に粗面化部30を形成する場合には、下側金属シート10と同一構造の金属シートを2枚作製して、一方を上下反転させて互いに接合させることもできる。以下に、上側金属シート20の構成についてより詳細に説明する。
図1乃至図4に示すように、上側金属シート20は、下面20a(第1面、下側金属シート10の側の面)と、下面20aとは反対側に設けられた放熱面20b(第2面)と、外側面20cと、下面20aに設けられた上側流路凹部21と、を有している。この上側流路凹部21は、密封空間3の一部を構成しており、主として、蒸発部11で生成された蒸気を拡散して冷却するように構成されている。より具体的には、上側流路凹部21内の蒸気は、蒸発部11から離れる方向に拡散して、蒸気の多くは、比較的温度の低い周縁部に輸送される。
本実施の形態では、図1に示すように、上側金属シート20の上側流路凹部21内に、上側流路凹部21の天井面21a(上側金属シート20を上下反転させた場合には上側流路凹部21の底面に相当する)から下方(天井面21aに垂直な方向)に突出する複数の上側流路突出部22が設けられている。本実施の形態では、上側流路突出部22は、円柱状のボスとして形成されている例が示されており、下面22aと側面22bとを含んでいる。また、各上側流路突出部22は、ベーパーチャンバ1の長手方向に沿って、等間隔に離間して配置されている。また、上側流路突出部22は、ベーパーチャンバ1の横断方向にも沿って配置されている。このようにして配置された上側流路突出部22の周囲には、上側流路凹部21の天井面21a(下側流路凹部12の底面12aに相当する面)が形成されている。このようにして、上側流路突出部22の周囲を作動液2の蒸気が流れるように構成されており、蒸気の流れが妨げられることを抑制している。また、上側流路突出部22は、下側金属シート10の対応する下側流路突出部13に平面視で重なるように配置されており、ベーパーチャンバ1の機械的強度の向上を図っている。なお、天井面21aおよび上側流路突出部22の側面22bは、上述した密封空間3の空間画定面3aを構成している。
図1乃至図4に示すように、上側金属シート20の周縁部には、上側周縁壁23が設けられている。上側周縁壁23は、密封空間3、とりわけ上側流路凹部21を囲むように形成されており、密封空間3を画定している。上側周縁壁23は、下側周縁壁14の上面14aに当接する下面23aを有している。また、図1に示すように、平面視で上側周縁壁23の四隅に、下側金属シート10と上側金属シート20との位置決めをするための上側アライメント孔24がそれぞれ設けられている。すなわち、各上側アライメント孔24は、後述する仮止め時に、上述した各下側アライメント孔15に重なるように配置され、下側金属シート10と上側金属シート20との位置決めが可能に構成されている。
このような下側金属シート10と上側金属シート20とは、好適には拡散接合で、互いに恒久的に接合されている。より具体的には、図2乃至図4に示すように、下側金属シート10の下側周縁壁14の上面14aと、上側金属シート20の上側周縁壁23の下面23aとが当接し、下側周縁壁14と上側周縁壁23とが互いに接合されている。このことにより、下側金属シート10と上側金属シート20との間に、作動液2を密封した密封空間3が形成されている。また、下側金属シート10の下側流路突出部13の上面13aと、上側金属シート20の上側流路突出部22の下面22aとが当接し、各下側流路突出部13と対応する上側流路突出部22とが互いに接合されている。このことにより、ベーパーチャンバ1の機械的強度を向上させている。とりわけ、本実施の形態による下側流路突出部13および上側流路突出部22は等間隔に配置されているため、ベーパーチャンバ1の各位置における機械的強度を均等化させることができる。なお下側金属シート10と上側金属シート20とは、拡散接合ではなく、恒久的に接合できれば、ろう付け等の他の方式で接合されていてもよい。
また、図1および図3に示すように、ベーパーチャンバ1は、長手方向における一対の端部のうちの一方の端部に、密封空間3に作動液2を注入する注入部4を更に備えている。この注入部4は、下側金属シート10の端面から突出する下側注入突出部16と、上側金属シート20の端面から突出する上側注入突出部25と、を有している。このうち下側注入突出部16の上面に下側注入流路凹部17が形成され、上側注入突出部25の下面に上側注入流路凹部26が形成されている。下側注入流路凹部17は、下側流路凹部12に連通しており、上側注入流路凹部26は、上側流路凹部21に連通している。下側注入流路凹部17および上側注入流路凹部26は、下側金属シート10と上側金属シート20とが接合された際、作動液2の注入流路を形成する。当該注入流路を通過して作動液2は密封空間3に注入される。なお、本実施の形態では、注入部4は、ベーパーチャンバ1の長手方向における一対の端部のうちの一方の端部に設けられている例が示されているが、これに限られることはない。
次に、本実施の形態による粗面化部30について、より詳細に説明する。本実施の形態では、ハーフエッチングにより粗面化部30が形成される例について説明する。
粗面化部30は、密封空間3の空間画定面3a(すなわち、下側流路凹部12の底面12a、下側流路突出部13の側面13b、上側流路凹部21の天井面21a、および上側流路突出部22の側面22b)の表面粗さよりも大きい表面粗さを有している。本実施の形態では、図2乃至図4に示すように、この粗面化部30は、上側金属シート20の放熱面20bの全体に設けられている。
粗面化部30の表面粗さは、JIS B0601−2001で規定されている算術平均粗さで表わしたとき、Raが0.1μm〜5.0μmであることが好適であるが、なお、粗面化部30の表面粗さは、0.1μm未満であってもよく、または5.0μmを越えていてもよい。一方、密封空間3の空間画定面3aは、後述するようにエッチングで形成されており、Raが0.01μm〜0.07μmの表面粗さを有している。このため、粗面化部30の表面粗さを上述した数値範囲内に収めることにより、粗面化部30の表面粗さを、空間画定面3aの表面粗さより大きくすることができる。なお、Raの測定には、例えば、光波干渉式表面粗さ計(ZYGO社製、New view 5032)、レーザマイクロスコープ(キーエンス社製、VK−9500)などを用いることが好適である。
本実施の形態では、図2乃至図4に示すように、粗面化部30は、離間配置された複数の粗面化凸部31と、互いに隣り合う粗面化凸部31の間に設けられた粗面化凹部32と、を有している。このうち粗面化凹部32が後述するハーフエッチングによって形成されている。粗面化凸部31と粗面化凹部32とが、微細に形成されることにより、粗面化部30が、所望の表面粗さを有するようになっている。
粗面化凸部31の形状および配置は、上側金属シート20の放熱面20bの表面粗さを、所望の表面粗さにすることができれば、任意である。例えば、図5(a)に示すように、粗面化凸部31は、平面視で円形状に形成され、格子状に配列されていてもよい。この場合、粗面化凸部31の平面視における直径を、10μm〜2000μm、粗面化凸部31の配列ピッチを、20μm〜4000μm、粗面化凸部31の高さを0.2μm〜10μmとすることにより、粗面化部30の表面粗さを上述した数値範囲に収めることができる。粗面化凸部31の直径や配列ピッチは、任意の値を設定することができる。なお、所望の表面粗さに応じて、粗面化凸部31の高さの数値は、上述した数値範囲外の数値を採用してもよい。あるいは、図5(b)に示すように、粗面化凸部31は、平面視で矩形状に形成されて、格子状に配列されていてもよい。また、図5(c)に示すように、粗面化凸部31は、平面視で円形状に形成され、千鳥状に配列されていてもよく、さらには図5(d)に示すように、粗面化凸部31は、平面視で六角形状に形成され、千鳥状(またはハニカム状)に配列されていてもよい。
粗面化凹部32の横断面形状は、放熱面20bの表面粗さを、所望の表面粗さにすることができれば、任意である。例えば、図6(a)に示すように、粗面化凹部32の横断面は、矩形状に形成されていてもよい。あるいは、図6(b)に示すように、粗面化凹部32の横断面は、半円状に形成されていてもよく、図6(c)に示すように、三角形状若しくはV字状に形成されていてもよい。また、粗面化凹部32の横断面は、逆テーパ状に形成されていてもよい。例えば、図6(d)では、粗面化凹部32が、凹部開口部33と、凹部開口部33よりも粗面化凹部32の底側(図6(d)における下側)に設けられた大幅部34と、を有している。凹部開口部33は、粗面化凹部32のうち放熱面20bに相当する位置における開口である。大幅部34は、凹部開口部33よりも図6(d)における底側(下側)に配置されている。凹部開口部33の幅をw1、大幅部34の幅をw2としたときに、w1<w2になっている。このような図6(d)に示す粗面化凹部32の横断面は、円弧状(C字状、タコつぼ形状)に形成されている。逆テーパ形状の他の例として、図6(e)に示すように、粗面化凹部32の横断面は、台形状に形成されていてもよい。なお、このような粗面化凹部32の横断面形状は、スプレーエッチング方式を採用する場合に、エッチング液のスプレー圧を制御したり、後述する第2レジスト膜40のパターン形状を変えたりすることにより、得ることができる。図6(d)や図6(e)に示すように逆テーパ状に形成する場合には、粗面化凹部32の横断面視において、粗面化凹部32の周囲長さを長くすることができ、表面積を増大させることができる。
ところで、下側金属シート10および上側金属シート20に用いる材料は、熱伝導率が良好な材料であれば特に限られることはないが、例えば、下側金属シート10および上側金属シート20は、銅または銅合金により形成されていることが好適である。このことにより、下側金属シート10および上側金属シート20の熱伝導率を高めることができる。このため、ベーパーチャンバ1の熱輸送効率を高めることができる。また、ベーパーチャンバ1の厚さT0は、0.1mm〜1.0mmである。図4では、下側金属シート10の厚さT1および上側金属シート20の厚さT2が等しい場合を示しているが、これに限られることはなく、下側金属シート10の厚さT1と上側金属シート20の厚さT2は、等しくなくてもよい。
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について説明する。ここでは、まず、ベーパーチャンバ1の製造方法について、図7乃至図16を用いて説明するが、下側金属シート10のハーフエッチング工程の説明は簡略化する。なお、図7乃至図9および図14乃至図16では、図4の横断面と同様の横断面を示している。
まず、上側金属シート20の準備工程として、図7に示すように、平板状の金属材料シートMを準備する。
続いて、上側金属シート20の画定面形成工程(第1ハーフエッチング工程)として、図8に示すように、金属材料シートMがハーフエッチングされて、密封空間3の空間画定面3aが形成される。このようにして、密封空間3の一部を構成する上側流路凹部21を有する上側金属シート20が形成される。
画定面形成工程においては、まず、金属材料シートMの下面Maに図示しない第1レジスト膜が、フォトリソグラフィー技術によって、複数の上側流路突出部22および上側周縁壁23に対応するパターン状に形成される。続いて、第1ハーフエッチング工程として、金属材料シートMの下面Maがハーフエッチングされる。このことにより、金属材料シートMの下面Maのうち第1レジスト膜の開口(図示せず)に対応する部分がハーフエッチングされて密封空間3の空間画定面3aが形成され、図8に示すような上側流路凹部21、上側流路突出部22および上側周縁壁23が形成される。この際、図1および図3に示す上側注入流路凹部26も同時に形成され、また、金属材料シートMが下面Maおよび上面からエッチングされて、外側面20cが形成されて、所定の外形輪郭形状が得られる。第1ハーフエッチング工程の後、第1レジスト膜が除去される。なお、ハーフエッチングとは、材料を貫通しないような凹部を形成するためのエッチングを意味している。このため、ハーフエッチングにより形成される凹部の深さは、上側金属シート20の厚さの半分であることには限られない。エッチング液には、例えば、塩化第二鉄水溶液等の塩化鉄系エッチング液、または塩化銅水溶液等の塩化銅系エッチング液を用いることができる。
画定面形成工程の後、粗面化工程として、図9に示すように、上側金属シート20の放熱面20bに、粗面化部30が形成される。ここでは、ハーフエッチングにより粗面化部30が形成される。
粗面化工程においては、まず、図10に示すように、上側金属シート20の放熱面20bに、第2レジスト膜40が形成される。この際、第2レジスト膜40は、上側金属シート20の下面20aを含む全面に形成される。第2レジスト膜40には、電界によって付着可能な電着レジスト材料を好適に使用することができるが、液状のレジスト材料など他の材料を用いてもよい。
続いて、図11に示すように、第2レジスト膜40がパターン化される。すなわち、第2レジスト膜40が、フォトリソグラフィー技術によって、複数の粗面化凹部32に対応するパターン状に形成され、レジスト開口41が形成される。
続いて、図12に示すように、第2ハーフエッチング工程として、上側金属シート20の放熱面20bがハーフエッチングされる。すなわち、第2レジスト膜40のレジスト開口41から放熱面20bがハーフエッチングされて、粗面化部30が形成される。このことにより、放熱面20bのうち第2レジスト膜40のレジスト開口41に対応する部分がハーフエッチングされて、放熱面20bに粗面化凹部32が形成される。粗面化凹部32に隣接したハーフエッチングされない部分が、粗面化凸部31になる。第2ハーフエッチング工程で用いるエッチング液は、特に限られることはないが、第1ハーフエッチング工程で用いるエッチング液と同一であってもよい。
その後、図13に示すように、第2レジスト膜40が除去される。このようにして、図9に示すような粗面化部30が形成された上側金属シート20が得られる。
一方、上側金属シート20と同様にして、下側金属シート10用の金属材料シート(図示せず)が上面からハーフエッチングされて、下側流路凹部12、下側流路突出部13および下側周縁壁14が形成される。そして、下側流路凹部12の下側流路突出部13の間にウィックWが挿入されて嵌められる。このようにして、上述した下側金属シート10が得られる。
次に、仮止工程として、図14に示すように、下側流路凹部12を有する下側金属シート10と、上側流路凹部21を有する上側金属シート20とが仮止めされる。この場合、まず、下側金属シート10の下側アライメント孔15(図1参照)と上側金属シート20の上側アライメント孔24(図1参照)とを利用して、下側金属シート10と上側金属シート20とが位置決めされる。続いて、下側金属シート10と上側金属シート20とが固定される。固定の方法としては、特に限られることはないが、例えば、下側金属シート10と上側金属シート20とに対して抵抗溶接を行うことによって下側金属シート10と上側金属シート20とを固定してもよい。この場合、図14に示すように、電極棒42を用いてスポット的に抵抗溶接を行うことが好適である。抵抗溶接の代わりにレーザ溶接を行ってもよい。このようにして、下側金属シート10と上側金属シート20とが、位置決めされた状態で固定される。
仮止工程の後、接合工程として、図15に示すように、下側金属シート10と上側金属シート20とが、拡散接合によって恒久的に接合される。拡散接合とは、接合する下側金属シート10と上側金属シート20とを密着させ、減圧雰囲気中で、各金属シート10、20を密着させる方向に加圧するとともに加熱して、接合面に生じる原子の拡散を利用して接合する方法である。拡散接合は、下側金属シート10および上側金属シート20の材料を融点に近い温度まで加熱するが、融点よりは低いため、各金属シート10、20が溶融して変形することを回避できる。より具体的には、下側金属シート10の下側周縁壁14の上面14aと上側金属シート20の上側周縁壁23の下面23aとが、接合面となって拡散接合される。このことにより、下側周縁壁14と上側周縁壁23とによって、下側金属シート10と上側金属シート20との間に密封空間3が形成される。また、下側注入流路凹部17(図1および図3参照)と上側注入流路凹部26(図1および図3参照)とによって、密封空間3に連通する作動液2の注入流路が形成される。さらに、下側金属シート10の下側流路突出部13の上面13aと、上側金属シート20の上側流路突出部22の下面22aとが、接合面となって拡散接合され、ベーパーチャンバ1の機械的強度が向上する。
接合工程の後、封入工程として、図16に示すように、注入部4(図1および図3参照)から密封空間3に作動液2が注入される。この際、まず、密封空間3が真空引きされて減圧され、その後に、作動液2が密封空間3に注入される。注入時、作動液2は、下側注入流路凹部17と上側注入流路凹部26とにより形成された注入流路を通過する。
作動液2の注入の後、上述した注入流路が封止される。例えば、注入部4にレーザを照射し、注入部4を部分的に溶融させて注入流路を封止することが好適である。このことにより、密封空間3と外気との連通が遮断され、作動液2が密封空間3に封入される。このようにして、密封空間3内の作動液2が外部に漏洩することが防止される。
以上のようにして、本実施の形態によるベーパーチャンバ1が得られる。
上述のようにして得られたベーパーチャンバ1は、モバイル端末等のハウジング内に設置されるとともに、下側金属シート10の受熱面10bに、被冷却対象物であるCPU等のデバイスDが取り付けられる。この場合、上側金属シート20の放熱面20bは、他の部材に接することなく、ハウジング内に収容される。放熱面20bの周囲は、ハウジング内の空気に覆われる。なお、放熱面20bには、他の電子回路部品との接触を避けるための絶縁シートが貼り付けられる場合がある。
次に、ベーパーチャンバ1の作動方法、すなわち、デバイスDの冷却方法について説明する。
下側金属シート10が鉛直下方に配置され、上側金属シート20が鉛直上方に配置される場合には、密封空間3に封入された作動液2の多くは、重力の影響を受けて、下側金属シート10の下側流路凹部12に滞留する。
この状態でデバイスDが発熱すると、下側流路凹部12のうち蒸発部11に存在する作動液2が、デバイスDから熱を受ける。受けた熱は潜熱として吸収されて作動液2が蒸発(気化)し、作動液2の蒸気が生成される。生成された蒸気の多くは、密封空間3内を上昇して上側流路凹部21内に拡散する。生成された蒸気の一部は、下側金属シート10の下側流路凹部12内でも拡散する。上側流路凹部21内および下側流路凹部12内の蒸気は、蒸発部11から離れ、蒸気の多くは、比較的温度の低い周縁部に輸送される(図3の実線矢印参照)。拡散した蒸気は、ベーパーチャンバ1の下側金属シート10および上側金属シート20に放熱して冷却される。
下側金属シート10および上側金属シート20が蒸気から受けた熱は、上側金属シート20の放熱面20bから周囲の空気に伝達されて放出される。この際、放熱面20bには、密封空間3を画定する空間画定面3aの表面粗さよりも大きい表面粗さを有する粗面化部30(粗面化凸部31および粗面化凹部32)が形成されている。このことにより、粗面化部30において、放熱面20bと周囲の空気との接触面積が大きくなっており、放熱面20bと周囲の空気との間の熱抵抗が低減されている。このことにより、放熱面20bからは効率良く熱が放出される。言い換えると、下側金属シート10および上側金属シート20は、周囲の空気によって効率良く冷却され、これにより、密封空間3の下側流路凹部12内および上側流路凹部21内の作動液2の蒸気を効率良く冷却することができる。このため、密封空間3内の蒸気の凝縮速度を高めることができ、作動液2の相変化を促進することができる。
蒸気は、下側金属シート10および上側金属シート20に放熱することにより、蒸発部11において吸収した潜熱を失って凝縮する。上側流路凹部21内において液状になった作動液2は、上側流路凹部21内を下降して、下側流路凹部12に達する。蒸発部11では作動液2が蒸発し続けているため、下側流路凹部12のうち蒸発部11以外の部分における作動液2は、蒸発部11に向かって輸送される(図3の破線矢印参照)。この際、下側流路凹部12には、毛細管作用を発揮することができるウィックWが設けられている。このため、ウィックWの毛細管作用により、作動液2は、蒸発部11に向かう推進力を得て、蒸発部11に向かってスムースに輸送される。
蒸発部11に達した作動液2は、デバイスDから再び熱を受けて蒸発する。このようにして、作動液2が、相変化、すなわち蒸発と凝縮とを繰り返しながらベーパーチャンバ1内を還流してデバイスDの熱を移動させて放出する。この結果、デバイスDが冷却される。
このように本実施の形態によれば、上側金属シート20の放熱面20bに粗面化部30が設けられ、粗面化部30が、密封空間3を画定する空間画定面3aの表面粗さよりも大きい表面粗さを有している。このことにより、粗面化部30において、放熱面20bと、放熱面20bの周囲の空気との接触面積を大きくすることができ、放熱面20bと周囲の空気との間の熱抵抗を低減することができる。このため、密封空間3内の作動液2の蒸気を効率良く冷却して凝縮させることができる。この結果、熱輸送効率を向上させることができる。
また、本実施の形態によれば、粗面化部30が、複数の粗面化凸部31と、互いに隣り合う粗面化凸部31の間に設けられた粗面化凹部32と、を有している。このことにより、粗面化凸部31の平面サイズ(平面視における直径)、配列ピッチ、ハーフエッチング深さ(高さ)を任意に設計することができる。このため、粗面化部30に所望の接触面積を持たせることができ、粗面化部30の熱抵抗を制御することができる。
なお、上述した本実施の形態においては、粗面化部30は、上側金属シート20の放熱面20bの全体に設けられている例について説明した。しかしながら、このことに限られることなく、粗面化部30は、放熱面20bの一部に形成されるようにしてもよい。この場合においても、この粗面化部30において、放熱面20bと周囲の空気との間の熱抵抗を低減することができ、熱輸送効率を向上させることができる。
また、上述した本実施の形態においては、粗面化部30は、上側金属シート20の放熱面20bに設けられている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、図17に示すように、粗面化部30は、下側金属シート10の受熱面10bの少なくとも一部にも設けられていてよい。図17は、粗面化部30が、受熱面10bの全体に設けられている例を示している。なお、受熱面10bへの粗面化部30の形成は、上側金属シート20の放熱面20bに粗面化部30を形成する方法と同様の方法により形成することができる。
粗面化部30が、受熱面10bのうちデバイスDが取り付けられる部分に設けられている場合には、デバイスDと受熱面10bとの間の熱抵抗を低減することができる。とりわけ、受熱面10bとデバイスDとの間に、軟質性の熱伝導シート(図示せず)が介在されている場合には、熱伝導シートが、粗面化部30の粗面化凹部32内に入り込むことができるため、受熱面10bと熱伝導シートとの接触面積を大きくすることができる。このことにより、受熱面10bとデバイスDとの間の熱抵抗を低減することができ、熱輸送効率を向上させることができる。熱伝導シートの代わりに、熱を容易に伝導させるためのグリース等の半固体状部材が、受熱面10bとデバイスDとの間に介在されるようにしてもよい。
粗面化部30が、受熱面10bのうちデバイスDが取り付けられる部分以外の部分に設けられている場合には、下側金属シート10と周囲の空気との間の熱抵抗を低減することができ、密封空間3内の作動液2の蒸気をより一層冷却して凝縮させ、熱輸送効率を向上させることができる。
また、上述した本実施の形態においては、粗面化部30が設けられた放熱面20bが、他の部材に接することなく、空気に覆われている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはない。例えば、放熱面20bに、モバイル端末等のハウジングの一部を構成するハウジング部材(図示せず)が配置されるようにしてもよい。この場合、放熱面20bとハウジング部材との間に、軟質性の熱伝導シート(図示せず)が介在されていることが好適である。このような熱伝導シートは、粗面化部30の粗面化凹部32内に入り込むことができるため、放熱面20bと熱伝導シートとの接触面積を大きくすることができる。このことにより、放熱面20bと熱伝導シートとの間の熱抵抗、すなわち放熱面20bとハウジング部材との間の熱抵抗を低減することができ、熱輸送効率を向上させることができる。熱伝導シートの代わりに、熱を容易に伝導させるためのグリース等の半固体状部材が、放熱面20bとハウジング部材との間に介在されるようにしてもよい。
また、上述した本実施の形態においては、粗面化部30を形成する粗面化工程が、密封空間3の空間画定面3aを形成する画定面形成工程と、下側金属シート10と上側金属シート20とを接合する接合工程との間(より詳細には、画定面形成工程と仮接合工程との間)に行われる例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、粗面化工程は、作動液2を封入する封入工程の後に行われるようにしてもよい。すなわち、図16に示すように作動液2が封入された後、上側金属シート20の放熱面20bに、エッチングによって粗面化部30を形成してもよい。また、粗面化工程は、画定面形成工程と同時に行われるようにしてもよい。この場合には、図11および図12に示すレジスト開口41の幅を、粗面化凹部32の幅よりも小さくすることが好適である。このことにより、レジスト開口41に入り込むエッチング液の量が低減され、放熱面20bのうちレジスト開口41に対応する部分のエッチング速度が低下する。このため、所望の深さを有する上側流路凹部21を形成しながら、レジスト開口41によって形成される粗面化凹部32の深さを浅くすることができる。このように粗面化工程と画定面形成工程とを同時に行う場合には、ハーフエッチング工程の回数を減らすことができ、製造効率を向上させることができる。
さらに、上述した本実施の形態においては、粗面化部30は、エッチングにより形成される例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、粗面化部30は、機械加工で切削することによって形成されるようにしてもよい。
(第2の実施の形態)
次に、図18を用いて、本発明の第2の実施の形態におけるベーパーチャンバ、ベーパーチャンバ用金属シートおよびベーパーチャンバの製造方法について説明する。
図18に示す第2の実施の形態においては、粗面化部が、材料の結晶の粒界面によって粗面化されている点が主に異なり、他の構成は、図1乃至図17に示す第1の実施の形態と略同一である。なお、図18において、図1乃至図17に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
図18に示すように、本実施の形態では、粗面化部30は、上側金属シート20の放熱面20bの全体に設けられている。また、粗面化部30は、ハーフエッチングによって形成されており、上側金属シート20を構成する材料の結晶50の粒界面51によって粗面化されている。本実施の形態による粗面化部30の表面粗さ(Ra)は、0.20μm〜1.20μmであることが好適である。
また、本実施の形態では、粗面化部30は、下側金属シート10の受熱面10bの全体および周縁外側面5の全体にも形成されている。すなわち、上側金属シート20の放熱面20bおよび外側面20cと、下側金属シート10の受熱面10bおよび外側面10cとに、粗面化部30が形成されている。このようにして、ベーパーチャンバ1の全体にわたって粗面化部30が形成されている。しかしながら、ベーパーチャンバ1の注入部4には、粗面化部30は形成されていなくてもよい。
本実施の形態では、粗面化部30を形成する粗面化工程は、作動液2を封入する封入工程の後に行われることが好適である。すなわち、図16に示すように作動液2が封入された後、下側金属シート10の受熱面10bおよび外側面10c、上側金属シート20の放熱面20bおよび外側面20cに、粗面化部30を形成してもよい。
本実施の形態による粗面化部30を形成するためのエッチング液は、浸食効果が小さいことが好適である。すなわち、粗面化部30を形成する粗面化工程で用いるエッチング液は、密封空間3の空間画定面3aを形成する画定面形成工程で用いるエッチング液よりも浸食効果が小さいことが好適である。このことにより、結晶50の粒界面51に関わることなく材料が浸食されることを防止し、粒界面51に沿った形状を有する粗面化部30を形成することができる。このようなエッチング液としては、画定面形成工程の第1ハーフエッチング工程で用いるエッチング液よりも浸食効果が小さいギ酸系のエッチング液であることが好ましく、例えば、メック社製のCZシリーズや、三菱ガス化学社製のEMRシリーズを用いることが好適である。
このように本実施の形態によれば、下側金属シート10の受熱面10bに設けられた粗面化部30が、下側金属シート10を構成する材料の結晶50の粒界面51によって形成されて、上側金属シート20の放熱面20bに設けられた粗面化部30が、上側金属シート20を構成する材料の結晶50の粒界面51によって形成されている。このことにより、エッチングによって受熱面10bおよび放熱面20bを粗面化することができるため、受熱面10bおよび放熱面20bを容易に粗面化することができる。
また、本実施の形態によれば、上側金属シート20の放熱面20bだけではなく、下側金属シート10の受熱面10bにも、粗面化部30が設けられている。このことにより、受熱面10bのうちデバイスDが取り付けられる部分に設けられた粗面化部30によって、デバイスDと受熱面10bとの間の熱抵抗を低減することができる。このため、熱輸送効率を向上させることができる。また、受熱面10bのうちデバイスDが取り付けられる部分以外の部分に設けられた粗面化部30によって、下側金属シート10と周囲の空気との間の熱抵抗を低減することができる。このため、密封空間3内の作動液2の蒸気をより一層冷却して凝縮させることができ、熱輸送効率を向上させることができる。
また、本実施の形態によれば、ベーパーチャンバ1の周縁外側面5にも粗面化部30が設けられている。このことにより、周縁外側面5と周囲の空気との間の熱抵抗を低減することができる。このため、密封空間3内の作動液2の蒸気をより一層冷却して凝縮させることができ、熱輸送効率をより一層向上させることができる。
さらに、本実施の形態によれば、粗面化工程が、封入工程の後に行われる。このことにより、粒界面51が接合工程時の熱を受けることを防止でき、粒界面51が熱を受けることによって粗面化が喪失されることを回避できる。
なお、上述した本実施の形態においては、粗面化部30が、下側金属シート10の受熱面10b、上側金属シート20の放熱面20bおよびベーパーチャンバ1の周縁外側面5に形成されている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、粗面化部30は、受熱面10bに形成されていなくてもよい。あるいは、粗面化部30は、周縁外側面5に形成されていなくてもよい。
(第3の実施の形態)
次に、図19を用いて、本発明の第3の実施の形態におけるベーパーチャンバ、ベーパーチャンバ用金属シートおよびベーパーチャンバの製造方法について説明する。
図19に示す第3の実施の形態においては、粗面化部が、複数の電着物によって粗面化されている点が主に異なり、他の構成は、図1乃至図17に示す第1の実施の形態と略同一である。なお、図19において、図1乃至図17に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
図19に示すように、本実施の形態では、粗面化部30は、上側金属シート20の放熱面20bの全体に設けられている。また、粗面化部30は、電気めっきによって形成されており、複数のこぶ状の電着物52によって粗面化されている。本実施の形態による粗面化部30の表面粗さ(Ra)は、0.15μm〜0.30μmであることが好適である。
また、本実施の形態では、粗面化部30は、下側金属シート10の受熱面10bの全体および周縁外側面5の全体にも形成されている。すなわち、上側金属シート20の放熱面20bおよび外側面20cと、下側金属シート10の受熱面10bおよび外側面10cとに、粗面化部30が形成されている。このようにして、ベーパーチャンバ1全体にわたって粗面化部30が形成されている。しかしながら、ベーパーチャンバ1の注入部4には、粗面化部30は形成されていなくてもよい。
本実施の形態では、粗面化部30を形成する粗面化工程は、作動液2を封入する封入工程の後に行われることが好適である。すなわち、図16に示すように作動液2が封入された後、下側金属シート10の受熱面10bおよび外側面10cと、上側金属シート20の放熱面20bおよび外側面20cに、粗面化部30を形成してもよい。
本実施の形態による粗面化部30を構成するこぶ状の電着物52は、こぶめっき(やけめっきとも言う)と称される電気めっきによって形成することができる。形成された電着物52は丸みを帯びた突起物のようになる。電着物52は、下側金属シート10の材料と同じ材料(例えば、純銅)によって形成することが好適であり、この場合には、めっき液としてロームアンドハース社製マイクロポジットや、奥野製薬工業社製のトップルチナを使用することが好適である。
なお、本実施の形態による粗面化部30の電着物52は、針状に形成されていてもよい。この場合には、粗面化部30の表面粗さ(Ra)は、0.10μm〜1.0μmであることが好適である。針状の電着物を形成する場合には、電着条件や薬液添加剤の組成を調整すればよい。
このように本実施の形態によれば、下側金属シート10の受熱面10bに設けられた粗面化部30が、複数の電着物52によって形成されて、上側金属シート20の放熱面20bに設けられた粗面化部30が、複数の電着物52によって形成されている。このことにより、受熱面10bおよび放熱面20bを容易に粗面化することができる。また、めっきによって受熱面10bおよび放熱面20bを粗面化することができるため、めっき液の種類を変えることにより、電着物52の材質を変えることもできる。
また、本実施の形態によれば、上側金属シート20の放熱面20bだけではなく、下側金属シート10の受熱面10bにも、粗面化部30が設けられている。このことにより、受熱面10bのうちデバイスDが取り付けられる部分に設けられた粗面化部30によって、デバイスDと受熱面10bとの間の熱抵抗を低減することができる。このため、熱輸送効率を向上させることができる。また、受熱面10bのうちデバイスDが取り付けられる部分以外の部分に設けられた粗面化部30によって、下側金属シート10と周囲の空気との間の熱抵抗を低減することができる。このため、密封空間3内の作動液2の蒸気をより一層冷却して凝縮させることができ、熱輸送効率を向上させることができる。
また、本実施の形態によれば、ベーパーチャンバ1の周縁外側面5にも粗面化部30が設けられている。このことにより、周縁外側面5と周囲の空気との間の熱抵抗を低減することができる。このため、密封空間3内の作動液2の蒸気をより一層冷却して凝縮させることができ、熱輸送効率をより一層向上させることができる。
さらに、本実施の形態によれば、粗面化工程が、封入工程の後に行われる。このことにより、電着物52が接合工程時の熱によって溶融することを防止でき、電着物52が熱を受けることによって粗面化が喪失されることを回避できる。
なお、上述した本実施の形態においては、粗面化部30が、下側金属シート10の受熱面10b、上側金属シート20の放熱面20bおよびベーパーチャンバ1の周縁外側面5に形成されている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、粗面化部30は、受熱面10bに形成されていなくてもよい。あるいは、粗面化部30は、周縁外側面5に形成されていなくてもよい。
本発明は上記実施の形態および変形例そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施の形態および変形例に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。実施の形態および変形例に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施の形態および変形例にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
例えば、上述した本実施の形態においては、下側金属シート10の下側流路凹部12内に、下側流路突出部13がボスとして設けられるとともに、上側金属シート20の上側流路凹部21内に、上側流路突出部22がボスとして設けられている例について説明した。しかしながら、下側流路突出部13および上側流路突出部22の形状や構成は、これに限られることはなく、任意である。
また、上述した本実施の形態においては、下側金属シート10の上面10aに、密封空間3の一部として下側流路凹部12が形成されるとともに、上側金属シート20の下面20aに、密封空間3の一部として上側流路凹部21が形成される例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、密封空間3は、下側金属シート10および上側金属シート20のいずれか一方に形成されていれば他方に形成されていなくてもよい。
また、上述した本実施の形態において、粗面化部30を針状に形成する場合には、電着による方法に限られることはない。例えば、下側金属シート10および上側金属シート20が銅で形成されている場合には、粗面化部30を形成する面を酸化処理して酸化銅を析出させることで、針状の電着物を形成するようにしてもよい。あるいは、粗面化部30を形成する面を還元処理し、亜酸化銅を析出させることで、針状の電着物を形成するようにしてもよい。この場合においても、上述した粗面化部30の針状の電着物52と同様に、粗面化部30の表面粗さ(Ra)を、0.10μm〜1.0μmにすることができる。