続いて、本発明に係る床暖房システムの一実施形態に関し、図面を参照して説明する。本形態の床暖房システムは、例えばQ値が2.0以下の高気密性及び高断熱性を有する住宅に適用される。ここで、Q値は、熱損失係数であり、住宅の断熱性能を数値的に表す値である。Q値が小さいほど、気密性および断熱性が高いことを意味する。
[床暖房システムの概略構成]
まず、床暖房システム2の概略構成を説明する。図1は、床暖房システム2の概略構成図である。床暖房システム2は、床暖房パネル21と、循環回路22と、熱源機23と、熱動弁24と、床暖房リモコン25を備える。床暖房パネル21は、床暖房装置の一例である。熱動弁24は、開閉装置の一例である。床暖房リモコン25は、床暖房パネル21が設置される部屋の壁に取り付けられ、室温センサ255を内蔵している。室温センサ255は室温検出部の一例である。
床暖房パネル21は、温水を流す図示しないパイプが蛇行して配置されている。床暖房パネル21は、床面9の下側に設置されてもよいし、床面9を構成する床材と一体的に設けてもよい。
循環回路22は、往き配管22aと戻り配管22bを備え、往き配管22aに熱動弁24が配設されている。往き配管22aは、床暖房パネル21の図示しないパイプの入口側端部と熱源機23とを接続し、熱源機23から床暖房パネル21に温水を供給する。戻り配管22bは、床暖房パネル21の図示しないパイプの出口側端部と熱源機23とを接続し、床暖房パネル21にて放熱した温水を床暖房パネル21から熱源機23へ排出する。熱動弁24は、弁部と駆動部とを備える。熱動弁24の駆動部は、電力が供給される場合には、弁部に弁開動作を行わせる一方、電力が遮断される場合には、弁部に弁閉動作を行わせる。
熱源機23は、周知の構成を備える。簡単に説明すると、熱源機23は、戻り配管22bと往き配管22aに接続する図示しない通路に、バーナ233とポンプ234が配設されている。バーナ233は、ガス供給源3に接続され、ガスを燃焼させて温水を加熱する。ポンプ234は、電力供給源4から電力を供給され、図示しない通路において温水を戻り配管22b側から往き配管22a側へ向かって送り出す。熱源機23は、床暖房システム2を制御するための制御基板231を内蔵している。また、熱源機23は、バーナ233により加熱された温水を貯めるタンク235を備える。タンク235は、温水の温度を検出するための温水温度検出センサ236が設けられている。
[床暖房システムの電気的構成]
続いて、床暖房システム2の電気的構成について説明する。図2は、床暖房システム2の電気ブロック図である。
床暖房リモコン25は、コントローラ250に、入力部256と表示部257と室温センサ255と通信部258が接続されている。入力部256は、設定部の一例である。入力部256は、床暖房運転をオンまたはオフするための運転ボタンや、設定温度を設定するための温度設定ボタンなど、ユーザによって入力操作されるボタン群により構成される。表示部257は、設定メモリや時間などの情報を表示する液晶パネルである。室温センサ255は、室温を検出するハードウエアである。通信部258は、通信配線が接続されるハードウエアである。
コントローラ250は、通信部258を介して熱源機23の制御基板231に接続され、制御基板231とデータの送受信を行う。
コントローラ250は、CPU251と、ROM252と、RAM253と、フラッシュメモリ254を備える。フラッシュメモリ254は、記憶部の一例である。CPU251は、データをRAM253やフラッシュメモリ254に記憶させながら、ROM252やフラッシュメモリ254に記憶されたプログラムを実行する。
フラッシュメモリ254には、例えば、ユーザが入力部256を操作して入力した設定温度が記憶される。また、フラッシュメモリ254には、床暖房運転プログラム2541と、デューティ比設定テーブル2542が記憶されている。床暖房運転プログラム2541は、床暖房システム2による床暖房を制御するためのプログラムである。デューティ比設定テーブル2542は、室温と設定温度との温度偏差に関連付けて、要求温度とデューティ比を記憶するものである。要求温度は、熱源機23に作製させる温水の温度、つまり、床暖房パネル21に供給する温水の設定温度をいう。要求温度は、例えば40℃以上75℃以下の範囲内で設定され、温度偏差が大きいほど、要求温度が高く設定される。デューティ比は、熱動弁24を弁開させる時間(以下「ON時間」とする)が、サイクル時間に占める割合をいう。つまり、デューティ比は、ON時間を、サイクル時間[ON時間と、熱動弁24を弁閉する時間(以下「OFF時間」とする)とを加算した時間]で割った値である。デューティ比は、温度偏差が大きいほど、ON時間のデューティ比が大きく(ON時間が長く)設定される。
熱源機23の制御基板231は、周知のマイクロコンピュータである。制御基板231は、通信部2311と、CPU2312と、ROM2313と、RAM2314と、フラッシュメモリ2315を備える。通信部2311は、通信配線が接続されるハードウエアである。CPU2312は、通信部2311を介して床暖房リモコン25に接続され、床暖房リモコン25とデータの送受信を行う。また、CPU2312は、通信部2311を介して熱動弁24に接続されている。CPU2312は、通信部2311を介して熱動弁24に電力を供給することにより、熱動弁24を弁開させる。そして、CPU2312は、通信部2311を介して熱動弁24への電力供給を停止することにより、熱動弁24を弁閉させる。CPU2312は、RAM2314やフラッシュメモリ2315にデータを記憶させながら、ROM2313やフラッシュメモリ2315に記憶されるプログラムを実行する。フラッシュメモリ2315には、温水制御プログラム2316が記憶されている。バーナ233とポンプ234は、制御基板231に接続され、CPU2312によって動作を制御される。温水温度検出センサ236は、制御基板231に接続され、温水の温度を検出して制御基板231に送信する。尚、制御基板231と床暖房リモコン25のコントローラ250は、制御装置の一例を構成する。
[床暖房運転の概要]
続いて、床暖房運転の概要を説明する。床暖房システム2は、床暖房リモコン25の運転ボタンがオンにされると、40分のサイクル時間を開始する。また、床暖房システム2は、室温と設定温度との温度偏差に基づいてデューティ比を設定する。そして、床暖房リモコン25は、温度偏差に基づいて要求温度を設定し、要求温度とデューティ比を熱源機23に送信する。熱源機23は、温水を要求温度以上に加熱すると、床暖房リモコン25から受信したデューティ比に従って熱動弁24を弁開閉させる。床暖房リモコン25は、サイクル時間(40分)が経過したことを検出すると、当該サイクルのデューティ比をリセットし、次のサイクルのために、要求温度とデューティ比を再設定する。
床暖房システム2は、熱源機23が熱動弁24を弁開させると、要求温度の温水が、熱源機23と床暖房パネル21との間で循環する。この間、床暖房パネル21の放熱量が大きくなる。一方、床暖房システム2は、熱源機23が熱動弁24を弁閉させると、温水が熱源機23と床暖房パネル21との間で循環しなくなる。この間、床暖房パネル21の放熱量が小さくなる。
このような床暖房システム2は、室温センサ255が測定する室温と、床暖房リモコン25に設定された設定温度との温度偏差が大きい場合には、ON時間のデューティ比を大きく設定することにより、床面9の温度を上昇させる。つまり、室温の上昇を促進する。
これに対して、床暖房システム2は、室温センサ255が測定する室温と、床暖房リモコン25に設定された設定温度との温度偏差が小さい場合には、ON時間のデューティ比を小さく設定することにより、床面9の温度上昇を抑制する。つまり、室温の上昇を抑制する。
よって、床暖房システム2は、床暖房運転を実行する間、サイクル時間毎に、温度偏差に基づいてデューティ比を設定し、熱動弁24の開閉動作をデューティ制御することにより、室温を設定温度に調整することが可能である。
ここで、床暖房システム2は、熱動弁24をデューティ制御するためのサイクル時間が、従来の20分より長い40分に設定される。そのため、例えばQ値が2.0以下の高気密性及び高断熱性を有し、室温が下がりにくい家屋に床暖房システム2を設置した場合に、室温が設定温度を超える状態で、デューティ比を設定し直して、熱動弁24を開くことが回避される。つまり、熱動弁24のデューティ制御が、40分間継続される。よって、床暖房システム2は、室温が設定温度より必要以上に高い温度状態になることが、抑制される。
また、床暖房システム2は、40分のサイクル時間の途中で、室温から設定温度を減算した値である温度偏差が、所定値以下であるか判断する。そして、温度偏差が所定値以下である場合には、床暖房システム2は、当該サイクルをリセットしてデューティ比を見直し、熱動弁24のデューティ制御のやり直しを行う。一方、温度偏差が所定値以下でない場合には、当該サイクルのデューティ比を維持し、そのまま熱動弁24のデューティ制御を継続する。このように、床暖房システム2は、サイクル時間を長くしても、サイクル時間の途中で温度偏差に基づいてデューティ比を維持してデューティ制御を継続するか、デューティ比を見直してデューティ制御をやり直すかを判断する。そのため、例えば、床暖房で暖めた部屋の窓を開けて換気を行ったために、室温が低下した場合でも、40分のサイクル時間の途中で、室温を上昇させるように床暖房運転を変更することができる。よって、床暖房システム2は、室温調整性能が良い。
[床暖房運転の制御手順]
続いて、床暖房運転の制御手順について、図3を参照して説明する。
床暖房リモコン25は、入力部256に含まれる運転ボタンがオンされたことを契機に、フラッシュメモリ254から床暖房運転プログラム2541を読み出し、図3のフローチャートに示す制御を実行する。運転ボタンは、ユーザが手動操作することにより、オンにされる。また、ユーザが、入力部256を操作して、床暖房を開始する運転開始時刻を設定している場合には、コントローラ250が運転開始時刻になったことを検知したときに、運転ボタンが自動的にオンされる。
CPU251は、制御ボタンがオンにされると、運転開始信号を熱源機23に送信する(ステップ1、以下「S1」とする)。熱源機23に温水制御プログラム2316を実行させる契機を与えるためである。
そして、CPU251は、内蔵するタイマを用いてサイクル時間の計測を開始し、サイクル時間を開始させる(S2)。そして、CPU251は、室温と設定温度との温度偏差を算出する(S3)。すなわち、CPU251は、室温センサ255が検出する室温を室温センサ255から受信して取得する。また、フラッシュメモリ254には、例えば、入力部256の温度設定ボタンを操作して設定された設定温度が記憶される。CPU251は、フラッシュメモリ254から設定温度を読み出して取得する。CPU251は、このようにして取得される室温から設定温度を減算して温度偏差を算出する。
それから、CPU251は、S2にて算出した温度偏差に基づいて、要求温度とデューティ比を取得する(S4)。すなわち、CPU251は、S2にて算出した温度偏差を、フラッシュメモリ254に記憶されているデューティ比設定テーブル2542に照合し、その温度偏差に対応する要求温度とデューティ比をデューティ比設定テーブル2542から読み出してRAM253に記憶させる。
その後、CPU251は、S3にて取得した要求温度とデューティ比を、通信部258を介して熱源機23の制御基板231へ送信する(S5)。制御基板231のCPU2312は、温水温度検出センサ236が検出する温水の温度が、床暖房リモコン25から受信した要求温度以上でない場合には、熱動弁24を弁閉させた状態でバーナ233を燃焼させ、温水を要求温度以上に加熱する。CPU2312は、温水の温度が要求温度以上である場合には、床暖房リモコン25から受信したデューティ比に従って熱動弁24を開閉する。
それから、CPU251は、床暖房運転を停止するか否かを判断する(S6)。CPU251は、ユーザが入力部256の運転ボタンを手動操作してオフした場合、又は、予め設定された運転終了時刻になり、入力部256の運転ボタンが自動的にオフされた場合に、床暖房運転を停止すると判断する。CPU251は、床暖房運転を停止すると判断した場合には(S6:YES)、床暖房運転を停止することを示す運転停止信号を熱源機23の制御基板231に送信する(S14)。制御基板231は、運転停止信号を受信すると、温水の作製を停止する。また、制御基板231は、熱動弁24を弁閉状態にする。その後、CPU251は、床暖房運転の制御を終了する。
CPU251は、床暖房運転を停止しないと判断した場合には(S6:NO)、内蔵するタイマを介して、S1にて当該サイクル時間を開始してから20分が経過したか否かを判断する(S7)。
20分が経過していない場合には(S7:NO)、CPU251は、S6に戻る。つまり、CPU251は、20分が経過するまで、S5にて熱源機23に送信したデューティ比を維持し、デューティ制御を継続させる。
一方、CPU251は、サイクル時間を開始してから20分が経過した場合には(S7:YES)、室温と設定温度を取得する(S8)。すなわち、CPU251は、室温センサ255により検出される室温を室温センサ255から受信し、RAM253に記憶させる。また、CPU251は、フラッシュメモリ254に記憶される設定温度をフラッシュメモリ254から読み出し、RAM253に記憶させる。
そして、CPU251は、S8にてRAM253に記憶した室温から設定温度を減算することにより、温度偏差を算出する(S9)。その後、CPU251は、S9にて算出した温度偏差が−1.0℃以下であるか判断する(S10)。なお、S10の処理は、判断処理の一例である。また、−1.0℃は所定値の一例である。
CPU251は、S9にて算出した温度偏差が−1.0℃以下でないと判断する場合には(S10:NO)、床暖房運転を停止するか否かを判断する(S11)。つまり、CPU251は、室温が設定温度より1℃以上低くない場合には、S5にて熱源機23に送信したデューティ比を維持し、デューティ制御を継続させる。
CPU251は、床暖房運転を停止すると判断した場合には(S11:YES)、S14の処理を行った後、床暖房運転の制御を終了する。S11の処理は、S6の処理と同様なので、説明を割愛する。
一方、CPU251は、床暖房運転を停止しないと判断した場合には(S11:NO)、内蔵するタイマを介して、S1にてサイクル時間を開始してから40分が経過したか否かを判断する(S12)。つまり、CPU251は、当該サイクルの終了を監視する。
CPU251は、40分が経過するまでは(S12:NO)、S11に戻る。つまり、CPU251は、S5にて熱源機23に送信したデューティ比を維持したまま、40分が経過するまで待機する。なお、S10:NO,S12:NOの処理は、継続処理の一例である。
CPU251は、40分が経過したと判断すると(S12:YES)、内蔵するタイマを初期化して、サイクル時間をリセットする(S13)。その後、CPU251は、S2に戻り、次のサイクルを開始する。つまり、CPU251は、サイクル時間が終了したとき若しくは直後の温度偏差を算出し、その温度偏差に基づいて要求温度とデューティ比を取得し直す。これにより、例えばQ値が2.0以下の高気密性及び高断熱性を有する家屋に床暖房システム2を適用し、床暖房により暖めた部屋の室温が下がりにくい場合でも、従来の床暖房システムのサイクル時間(20分)より長い40分のサイクル時間でデューティ比を設定するので、室温が必要以上に高い状態で維持されることを回避できる。また、バーナ233が無駄にガスを燃焼することを回避し、消費エネルギー量を低減させることができる。
これに対して、CPU251は、サイクル時間を開始してから20分が経過したときに(S7:YES)、室温から設定温度を減算して算出される温度偏差が、−1.0℃以下である場合には(S8、S9、S10:YES)、S13にてサイクル時間をリセットした後、S2に戻る。つまり、例えば、床暖房システム2により部屋の空気を設定温度20℃まで暖めたが、窓を開けて換気したために、室温が20℃から18℃に下がった場合、サイクル時間の途中でも、デューティ比を見直して、床暖房運転を室温を上昇させる運転に切り換えることができる。なお、S10:YES、S13の処理は、リセット処理の一例である。
[シミュレーション]
続いて、床暖房システム2の性能を調べるシミュレーションについて説明する。本発明者らは、サイクル時間を20分に設定した場合の性能と、サイクル時間を40分に設定した場合の性能と、60分に設定した場合の性能を調べるシミュレーションを行った。
各シミュレーションに用いたハードウエアの構成は、同じである。すなわち、Q値1.5相当の住宅の部屋に床暖房パネルを設置した。部屋は16畳の洋室である。その部屋の床下に、床暖房パネルを約11畳設置した。そして、床暖房パネルと熱源機とを接続する循環回路は、内径10mmのパイプで構成した。熱源機から床暖房パネルまでのパイプの全長は、5mである。
試験中、部屋の開口部を全閉した。そして、試験開始初期の室温は約13℃、床面の温度は、それぞれ約13℃とした。設定温度は、20℃とした。試験では、熱源機と床暖房パネルとの間で所定の要求温度に加熱した温水を、4.0L/分の流量で循環させた。
そして、サイクル時間を40分に設定して熱動弁をデューティ制御する実施例と、サイクル時間を20分に設定して熱動弁をデューティ制御する第1比較例と、サイクル時間を60分に設定して熱動弁をデューティ制御する第2比較例について、床温と、室温と、インプットガス熱量と、アウトプット(以下「温水熱量」とする)を調べた。床温は、床に設置した温度計により測定される床面の温度である。室温は、室内に設置される温度計により測定される温度である。インプットガス熱量は、熱源機によって使用されるガスの使用量である。温水熱量は、熱源機がガスを燃焼させて得られた床暖房パネルに供給される熱量である。実施例のシミュレーションの結果を図4に示し、第1比較例のシミュレーションの結果を図5に示し、第2比較例のシミュレーション結果を図6に示す。図4および図5、図6は、横軸に時間[分]を示し、左側縦軸に温度[℃]と熱量[kW]を示す。図7は、図4に示す実施例の室温と図5に示す第1比較例の室温と図6に示す第2比較例の室温を比較するグラフである。
実施例と第1比較例について室温を比較すると、図7のX11に示すように、第1比較例は、立ち上げ時に、室温が設定温度(20℃)を大きく上昇した後、下降し、その後、定常運転を開始する。さらに、第1比較例は、定常運転時には、X12に示すように、室温が設定温度(20℃)より高く維持される。これに対して、実施例は、図中X1に示すように、立ち上げ時に、室温が設定温度(20℃)まで上昇すると、定常運転を開始する。実施例は、定常運転時には、図中X2に示すように、室温が設定温度(20℃)に概ね安定する。よって、実施例は、第1比較例と比べ、室温を設定温度に調整する室温調整性能が高い。
また、実施例と第2比較例について室温を比較すると、実施例の方が、第2比較例よりも、設定温度に対する室温の変動が小さい。よって、実施例は、第1比較例と比べ、室温を設定温度に調整する室温調整性能が高い。
これらの原因について検討する。図8は、室温変化を説明するためのグラフである。図中細い実線で示すタイプ3のグラフは、従来の断熱性能を有するQ値4.0の家屋について、サイクル時間D3を20分に設定した場合の室温変化を示す。図中実線で示すタイプ1のグラフは、従来の断熱性能を有する家屋より断熱性能が高いQ値1.5の家屋について、サイクル時間D1を40分に設定した場合の室温変化を示す。図中点線で示すタイプ2のグラフは、従来の断熱性能を有する家屋より断熱性能が高いQ値1.5の家屋について、サイクル時間D2を20分に設定した場合の室温変化を示す。図中一点鎖線で示すタイプ4のグラフは、従来の断熱性能を有する家屋より断熱性能が高いQ値1.5の家屋について、サイクル時間D4を60分に設定した場合の室温変化を示す。尚、タイプ1〜4は、何れも、サイクル時間D1〜D4の間にON時間(室温上昇)とOFF時間(室温低下)がある。図8に示すタイプ1〜4の各グラフは、室温低下に着目して作成されている。
タイプ3のグラフでは、室温が設定温度を超える所定温度Tまで上昇した後、20分が経過すると、室温が設定温度より低い温度まで下がる。Q値4.0の家屋では、部屋の空気の温度が壁や窓などを介して部屋の外部に逃げやすいためである。そのため、従来の断熱性能を有するQ値4.0の家屋に対しては、サイクル時間を20分に設定するのが適していた。
タイプ2のグラフでは、室温が設定温度を超える所定温度Tまで上昇した後、20分が経過しても、室温が設定温度未満にならない。Q値1.5の家屋は、Q値4.0の家屋と比べ、部屋の空気の温度が壁や窓などを介して部屋の外部に伝わりにくく、室温が下がりにくいからである。よって、Q値1.5の家屋に、Q値4.0に適用していた20分をサイクル時間に設定して床暖房を行うと、室温が設定温度未満になる前にデューティ比が設定され、熱動弁が弁開されてしまう。そのため、室温が設定温度を超えた状態に維持されてしまう。
これに対して、タイプ1のグラフでは、室温が設定温度を超える所定温度Tまで上昇した後、20分が経過しても、室温が設定温度未満にならない。しかし、サイクル時間が40分に設定される床暖房システムは、サイクル時間を開始してから20分が経過しても、デューティ比を再設定せず、当該デューティ制御を継続するため、熱動弁を必要以上に開かない。そのため、室温が低下し続ける。そして、サイクル時間である40分が経過した時点では、室温が設定温度未満になる。この状態で、床暖房システムは、次のサイクルを始め、熱動弁を開く。よって、室温が設定温度付近で安定する。
一方、タイプ4のグラフでは、室温が低下する時間(OFF時間)が長くなる。そのため、サイクル時間を開始してから60分が経過したときの室温が、サイクル時間を開始してから40分を経過したときの室温より低くなる。そして、60分のサイクル時間が経過すると、熱動弁を開き、床面を暖める。よって、Q値1.5では、サイクル時間を60分に設定すると、サイクル時間を40分に設定した場合より室温の変動が大きくなる。
なお、Q値1.5の家屋について、サイクル時間を30分未満に設定した場合、サイクル時間が経過したときの室温が、設定温度付近までしか低下しない。この状態で次のサイクルを開始すると、タイプ2のグラフと同様、設定温度より必要以上に高い状態で室温が維持される可能性がある。
よって、Q値1.5相当の高気密性・高断熱性を有する家屋に床暖房システムを使用する場合には、サイクル時間を40分に設定すると良いことがわかった。
次に、実施例と第1比較例と第2比較例について消費エネルギーを比較する。
図4に示すように、実施例は、ガスバーナでガスを燃焼させ、床暖房パネルで放熱した温水を加熱する。そのため、図中Y11に示すように、熱動弁の弁開動作に追従して、ガスが使用され、図中Y12に示すように、熱動弁の弁閉動作に追従して、ガスが使用されなくなる。つまり、ガスも、40分のサイクルで、間欠的に使用される。なお、これと同様に、図5のY21,Y22に示すように、第1比較例は、20分のサイクルでガスが間欠的に使用される。また、図6のY31,Y32に示すように、第2比較例は、60分のサイクルでガスが間欠的に使用される。
実施例は、図4のY11に示すように、定常運転時におけるガス使用時1回当たりのガス供給回数は、7回〜9回程度である。一方、第1比較例は、図5のY21に示すように、定常運転時におけるガス使用時1回当たりのガス供給回数は、5回程度である。よって、40分のスパンで比較すると、実施例のガス供給回数は7回から9回程度であるのに対し、第1比較例のガス供給回数は10回程度となり、実施例のガス供給回数の方が、第1比較例のガス供給回数より少ない。つまり、実施例のインプットガス熱量は、第1比較例のインプットガス熱量よりも少ない。
本発明者らは、実施例と第1比較例について、定常状態で80分間運転した場合のインプットガス熱量の合計値をそれぞれ計算した。その結果、実施例は、インプットガス熱量が6.49MJであったのに対し、第1比較例は、インプットガス熱量が7.92MJであり、実施例のガス使用量は第1比較例のガス使用量よりも1.43MJ少ない。この80分間のガス使用量の差を年間に換算すると、冬期120日間、1日8時間暖房運転行ったと仮定した場合、約1GJの暖房エネルギーを削減できることになる。これは、平成28年省エネルギー基準に準拠したエネルギー消費性能の評価モデルの暖房負荷の約15分の1に相当する値である。
また、第2比較例は、図6のY31に示すように、定常運転時におけるガス使用時1回当たりのガス供給回数は、13回から14回程度である。120分のスパンでみると、実施例のガス供給回数は、21回から27回程度となり、第2比較例のガス供給回数は、26回から28回程度となり、実施例のガス供給回数の方が第2比較例のガス供給回数より少ない。つまり、実施例のインプットガス熱量は、第2比較例のインプットガス熱量より少ない。なお、120分のスパンでは、第1比較例のガス供給回数は、30回程度である。よって、第2比較例のインプットガス熱量は第1比較例のインプットガス熱量よりも少ない。
よって、Q値1.5の高気密性・高断熱性を有する家屋に対しては、サイクル時間を従来の20分より長い時間に設定すると、消費エネルギーを低減できることがわかった。特に、サイクル時間を40分に設定すると、高い省エネ効果が得られることがわかった。
なお、本発明者らは、サイクル時間を10分に設定したシミュレーションも行った。サイクル時間とデューティ比を第1比較例の半分にしていること以外の条件は、上記第1比較例のシミュレーションと同様である。その結果、サイクル時間を10分に設定した場合の消費エネルギーは、サイクル時間を20分に設定した場合の消費エネルギーの約1.1倍であった。よって、サイクル時間を従来のサイクル時間である20分より短くすることは、省エネ上好ましくない。
以上説明したように、本形態の床暖房システム2は、Q値が2.0以下の家屋、より好ましくはQ値が1.0以上2.0以下の家屋に使用される場合に、デューティ制御のサイクル時間を、30分以上60分以下の範囲で設定する。
床暖房システムを構成する機器は、日本全国で統一化されていることが多い。寒冷地でも、床暖房システムが、例えば60℃の温水を熱源機と床暖房パネルとの間で循環させ、室温を上昇させることができる程度まで床面を暖めるには、20分程度必要であった。また、例えばQ値が4.0〜5.0である気密性・断熱性の低い家屋では、熱動弁をデューティ制御して室温を設定温度に制御するには、サイクル時間を20分に設定するのが最適であった。
しかし、近年、断熱性の高い断熱材の開発や、気密性の高いサッシの開発などが進み、住宅の高気密性・高断熱性が進んでいる。そして、床暖房システムは、高気密性・高断熱性を有する住宅に設置されることが多い。高気密性・高断熱性を有する住宅は、いったん暖められた部屋の温度が下がりにくい。そのため、例えば、Q値が1.5の高気密性・高断熱性を有する住宅に設置される床暖房システムについて、サイクル時間を20分に設定すると、室温が設定温度より高いにもかかわらず、熱動弁を開き、室温を上昇させてしまう。よって、本発明者らは、サイクル時間を見直す必要があることに気付き、サイクル時間を変えて上述のようなシミュレーションを行った。
例えば、Q値が1.5の高気密性・高断熱性を有する住宅に設置される床暖房システムのサイクル時間を10分に設定した場合、サイクル時間を20分に設定する場合より、消費エネルギーが大きかった。これは、10分のサイクル時間のうち、熱動弁を開いて温水を熱源機と床暖房装置との間で循環させ始めてから、床暖房装置が放熱して床を暖め始めるまでの時間が大半を占め、床暖房装置に温水を流して実質的に足元を暖める時間が短くなって、熱効率が悪いためと考えられる。
これに対して、例えば、Q値が1.5の高気密性・高断熱性を有する住宅に設置される床暖房システムのサイクル時間を40分に設定した場合、サイクル時間を20分に設定する場合より、室温を設定温度付近に調整することができた。これは、室温が設定温度を超える状態で、デューティ比を設定し直して、熱動弁を開くことをできるためと考えられる。また、サイクル時間を40分に設定した場合、サイクル時間を20分に設定した場合より、消費エネルギーを低減できた。これは、室温が設定温度を超える状態で、熱源機が温水を無駄に加熱しなくなったためと考えられる。
よって、本発明者らは、Q値が1.5の高気密性・高断熱性を有する住宅に設置される床暖房システムでは、サイクル時間を変更してシミュレーションを重ねた結果、サイクル時間を40分に設定するのが妥当であると判断した。
ここで、室温の変化は、家屋の断熱性能や気密性能の影響を受ける。よって、Q値によってサイクル時間を40分より短くしたり、長くしたりする必要がある。具体的に例えば、Q値が2.0の家屋は、Q値が1.5の家屋より室温が低下しやすい。この場合には、サイクル時間を40分より短い時間(例えば30分)に設定すると良い。また、Q値が1.0の家屋は、Q値が1.5の家屋より室温が低下しにくい。この場合には、サイクル時間を40分より長い時間(例えば60分)に設定すると良い。よって、Q値が2.0以下の家屋、更に好ましくは、Q値が1.0以上2.0以下の家屋に使用される床暖房システムでは、サイクル時間を30分以上60分以下に設定すれば良いと、本発明者らは、判断した。
本実施形態の床暖房システム2は、あるサイクルのサイクル時間を開始してから20分が経過した時点で、熱動弁24を開くON時間のデューティ比を設定しない。そのため、床暖房システム2は、Q値が2.0以下の高気密性・高断熱性を有する家屋に使用されても、例えば、サイクル時間を開始してから20分が経過した時点で室温が設定温度を超える状態で、熱動弁24を弁開させ、熱源機23で加熱した温水を熱源機23と床暖房パネル21との間で循環させることを回避できる。よって、上記床暖房システム2によれば、室温が設定温度を超えて維持されることを防ぎ、室温調整性能を向上させることができる。そして、床暖房システム2は、無駄なエネルギーを使って部屋の空気を暖めることを抑制し、消費エネルギーを低減することができる。
また、本形態の床暖房システム2は、あるサイクルのサイクル時間内に、例えば床暖房中に換気のために窓が開けられ、室温が設定温度より1.0℃以上低くなった場合には、サイクル時間をリセットしてデューティ制御をやり直し、室温を上昇させるように床暖房の運転を変更する。よって、床暖房システム2によれば、室温調整性能が良い。
尚、本発明は、上記実施形態に限定されることなく、色々な応用が可能である。
図3に示す制御を行う制御装置を、床暖房リモコン25および制御基板231と別個に設けてもよい。この場合、制御装置は、床暖房リモコン25の室温センサ255や、入力部256や、フラッシュメモリ254と別個に設けることになる。また、熱動弁24の弁開閉制御を床暖房リモコン25に行わせるようにしてもよいし、図3に示す制御を制御基板231に行わせるようにしてもよい。
デューティ比設定テーブル2542は、熱源機23の制御基板231のフラッシュメモリ2315や床暖房リモコン25と別に設けた制御装置など、床暖房リモコン25の外部に設けた外部装置に記憶させても良い。
上記形態では、ユーザの入力操作により設定温度を手動で設定したが、例えば学習機能などにより設定温度を自動設定するようにしてもよい。
上記構成では、熱動弁24に代えて、流路を開閉する機能を有する他の形態の弁や装置などを使用してもよい。熱動弁24は、熱源機23に内設してもよい。
上記形態では、図3のS10にて、温度偏差の判断基準となる所定値を−1.0℃としたが、この値は、床暖房パネル21を設置する部屋の高断熱性や高気密性に応じて適宜変更してよいことは、言うまでもない。
上記形態では、20分経過時にデューティ比を再設定するか判断したが(図3のS7:YES、S8,S9,S10)、S7の処理を省略してもよい。この場合、サイクル時間内に常時S8〜S10の処理を行い、デューティ比を再設定するか判断することになる。そして、サイクル時間内に温度偏差が−1.0℃以下になった時点で、デューティ比を再設定する。また、サイクル時間内に温度偏差が−1.0℃以下にならなければ、当該サイクル時間が経過するまでデューティ制御が継続される。
上記形態では、床暖房リモコン25に室温センサ255を内蔵させたが、室温センサを床暖房リモコン25の外部に設けてもよい。
熱動弁24を弁閉させるタイミングと、温水加熱を停止するタイミングは、どちらが先でもよいし、同時でも良い。