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JP2018189761A - 臓器膜モデルおよびそれで被膜した臓器モデル - Google Patents

臓器膜モデルおよびそれで被膜した臓器モデル Download PDF

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JP2018189761A JP2017090879A JP2017090879A JP2018189761A JP 2018189761 A JP2018189761 A JP 2018189761A JP 2017090879 A JP2017090879 A JP 2017090879A JP 2017090879 A JP2017090879 A JP 2017090879A JP 2018189761 A JP2018189761 A JP 2018189761A
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Makoto Yasojima
真 八十島
浩之 河野
Hiroyuki Kono
浩之 河野
寿宣 柏崎
Toshinobu Kashiwazaki
寿宣 柏崎
晃平 濱地
Kohei Hamachi
晃平 濱地
伊藤 雅昭
Masaaki Ito
雅昭 伊藤
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Abstract

【課題】 柔軟性や弾力性が実際の臓器に近く、臓器を覆う膜組織、筋繊維、血管等まで立体的に再現した臓器モデルを提供する。【解決手段】 本発明の臓器膜モデル100は、ゲル状の素材で形成した膜組織の単層を模擬した単層膜パーツ110を重ね合わせまたは貼り合わせて多層構造とした多層膜パーツ120と、ゲル状の素材で形成した繊維組織を模擬した繊維パーツ130を備えた構造とする。繊維パーツ130は、繊維組織に近い複数の糸状体が絡み合った形状を再現するための基材となるゲル状の素材でできた繊維組織の主構造体と、繊維組織に近い引っ張り強度を出すために繊維組織の主構造体の表面をコーティングするゲル状の素材でできたコーティング体の組み合わせで形成することが可能である。【選択図】 図1

Description

本発明は、臓器膜モデルおよびそれで被膜した臓器モデルに関する。臓器膜モデルは膜組織と繊維構造が再現されたモデルであり、柔らかさも実際の臓器膜に近く、さらに、電気メス等の電子医療機器に対する反応も実際の臓器膜に近い臓器膜モデルに関する。
一般的に、手術トレーニングを行うツールとして臓器モデルが用いられている。臓器モデルは高分子素材等を用いて成型され、実際の臓器等の軟質部位を想定したモデルとなっている。臓器モデルは、粉末焼結積層造形法、光造形法、射出成形法、真空注型法、切削加工法などにより成形されたものが知られている。これらは幅広く医療の研究または教育用モデルなどに用いられている。
しかし、これらの成形手法で製作された臓器モデルは臓器の形などを参照する模型であり、硬いプラスチック成形品であることが多く、実際に生体組織のような物性とはなっていないことが多い。
実際のヒト臓器は膜組織に覆われており、この膜の中に血管や神経などの極めて重要な組織が配置されており、さらに膜中に筋繊維構造が存在している。実際の手技では患部におけるこれら血管や神経に注意を配りながら、出血させずに膜を剥離していく手技のトレーニングは重要である。
このように、臓器モデルとしては、解剖学的な臓器の形状面の模擬のみならず、膜組織、膜組織中に含まれる血管や神経、筋繊維構造が再現されていることが重要であるが、それらは複雑であるため、従来技術では、膜組織まで再現した臓器モデルは製作が難しいのが現状であった。そのため、一部のみを再現させた簡略モデルも多くみられ、膜組織や筋繊維は再現されておらず、動脈、静脈もいずれか一方しか再現されていないようなモデルも散見される。
実際の臓器は、膜組織で覆われており、膜組織中には筋繊維や血管が含まれており、臓器内部は体液を多く含んでおり、柔軟性と弾力性に富んだものである。これら膜組織と筋繊維の再現が手技のトレーニングにおいて重要である。
従来技術において、臓器モデルの素材として、ゲル状素材、例えば、ウレタンゲル、シリコーンエラストマー、ポリビニルアルコールの水性ゲルが多用されている。
特許文献1(特開2015−125231号)に開示された臓器モデルは模擬腸管壁のトレーニングモデルであり、模擬粘膜層と模擬筋層が設けられている。しかし、模擬粘膜層および模擬筋層はともに平板状のシートを2枚貼り合わせたシンプルなものであり、筋繊維や血管などは再現されていないものである。
特許文献2(特開2015−194708号)に開示された臓器モデルは、臓器の形状などをかたどったもので、臓器の膜組織や筋繊維などは再現されたものとはなっていないものである。
特許文献3(特開2015−069054号)に開示された臓器モデルは、カテーテル治療用シミュレータであり、シリコーンエラストマー、ポリビニルアルコールの水性ゲルにより疑似血管流路が再現されている。しかし、カテーテル治療用シミュレータであるので、比較的太い大動脈や大静脈が再現されており、臓器モデルとしての膜組織や筋組織までは再現されていないものである。
特許文献4(特開2014−106400号)に開示された臓器モデルも、カテーテル治療用シミュレータであり、ポリビニルアルコールの水性ゲルにより疑似的に冠動脈が再現されている。比較的太い冠動脈が再現されているが、臓器モデルとしての膜組織や筋繊維までは再現されていないものである。
特許文献5(特開2014−021174号)に開示された臓器モデルは、心臓など内部に空間を有している臓器モデルであり、光硬化性樹脂により内部が空洞である外殻体の型と内殻体の型からなるサポート樹脂型を作り、その型にウレタンゲル、シリコーンエラストマー、ポリビニルアルコールの水性ゲルを流し込んで内部に空間を持つ臓器モデルを形成するものであるが、組織自体は単層のもので臓器モデルとしての膜組織や筋繊維までは再現されていないものである。
特許文献6(特開2010−277003号)に開示された臓器モデルは、人体などの切開や切削縫合といった手術における手技練習に用いる塊状の臓器モデルであり、ポリビニルアルコールの水性ゲルにより疑似的に組織塊が再現されている。しかし、臓器モデルは塊状の外形をかたどったものであり、臓器モデルとしての膜組織や筋繊維までは再現されていないものである。
特許文献7(特開2010−197637号)に開示された臓器モデルも、人体などの切開や切削縫合といった手術における手技練習に用いる塊状の臓器モデルであり、ポリビニルアルコールの水性ゲルにより疑似的に組織塊が再現されているが、臓器モデルは塊状の外形をかたどったものであり、臓器モデルとしての膜組織や筋繊維までは再現されていないものである。
特開2015−125231号公報 特開2015−194708号公報 特開2015−069054号公報 特開2014−106400号公報 特開2014−021174号公報 特開2010−277003号公報 特開2010−197637号公報
しかし、上記従来技術における臓器モデルは主に臓器の形などを参照する模型であり、実際に生体組織のような物性とはなっていないことが多い。臓器の解剖学的な形状は再現されていても、手技で問題となる膜組織やその中にある血管・神経等は再現されていないか、再現されていてもごく一部が簡単に再現されているに過ぎないものであった。
実際のヒト臓器は膜組織に覆われており、この膜の中に血管や神経などの極めて重要な組織が配置されており、さらに膜中に筋繊維構造が存在している。実際の手技では患部におけるこれら血管や神経に注意を配りながら、出血させずに膜を剥離していく手技のトレーニングは重要である。
臓器モデルとしては、臓器の形状面の模擬のみならず、膜組織、膜組織中に含まれる血管や神経、筋繊維構造が再現されていることが重要である。しかし、それらは複雑であるため、現在、膜組織まで再現した臓器モデルは製作が難しいとされていた。
また、臓器モデルは、理想的には、電気メスのような医療機器を用いて実際の臓器に手技を施した際と同様の反応が再現されることが好ましい。特に、表面が膜で覆われた臓器の切開は、膜組織、その中にある筋繊維、血管、神経などを丁寧に扱いながら切開する必要があり、それらの実際の反応が近い形で再現されることが好ましい。
そこで、本発明は、臓器膜モデルとして、柔軟性や弾力性が実際の臓器膜に近く、臓器を覆う膜組織、筋繊維、血管等まで立体的に再現し、電気メスなどの医療機器を用いた手技における反応も実際の反応に近い臓器膜モデルを提供することを目的とする。また、その臓器膜モデルで被覆した臓器モデルを提供することも目的とする。
上記目的を達成するため、本発明の臓器膜モデルは、繊維組織を含む膜組織を模擬した臓器膜モデルであって、ゲル状の素材で形成した前記膜組織の単層を模擬した単層膜パーツを重ね合わせまたは貼り合わせて多層構造とした多層膜パーツと、ゲル状の素材で形成した前記繊維組織を模擬した繊維パーツを備え、繊維パーツを多層膜パーツの層間に配置したことを特徴とする臓器膜モデルである。
上記構成において、繊維パーツが、繊維組織に近い複数の糸状体が絡み合った形状を再現するための基材となるゲル状の素材でできた繊維組織の主構造体と、繊維組織に近い引っ張り強度を出すために前記繊維組織の主構造体の表面をコーティングするゲル状の素材でできたコーティング体の組み合わせで形成されていることが好ましい。
上記構成により、臓器膜モデルが、多層膜パーツの層間に繊維パーツが再現された構造となり、実際の臓器膜に近い仕上がりのものとなり、医療トレーニングの際に必要とされる、患部における膜中の筋線維などの繊維組織、血管、神経などに注意を配りながら、膜を剥離する等の手技のシミュレーションが体験できる臓器膜モデルとなる。
具体的な素材例としては、繊維パーツの主構造体は、アルギン酸ナトリウムゲルとする。アルギン酸ナトリウムゲルを繊維状に形成するため、アルギン酸ナトリウム水溶液を塩化カルシウム水溶液中にシリンジから糸状に押し出して糸状体とし、その糸状体を繊維状に絡ませて繊維状のアルギン酸ゲルを形成する。
さらに、上記手法で形成した繊維パーツの主構造体である繊維状アルギン酸ゲルをポリビニルアルコール水溶液に浸漬した状態で、飽和ホウ酸等の架橋剤で架橋してポリビニルアルコールゲルを繊維状アルギン酸ゲルの表面に形成してゆきコーティング体でコーティングした構造とする。
次に、本発明の臓器膜で被覆した臓器モデルとしては、臓器モデル鋳型に対して必要に応じて血管モデルや神経モデルを配置した状態でポリビニルアルコール等の臓器モデル用ゲル素材を流し込んで形成した臓器本体モデルに対して、上記した臓器膜モデルを用いて被覆した構造とする。
上記構造の臓器モデルは、実際の臓器に近いものとして再現した臓器本体モデルに対して、さらに実際の臓器膜に近い臓器膜モデルを再現して被覆せしめた構造となるので、より実際の臓器に近い臓器モデルとして再現される。
次に、本発明にかかる臓器膜モデルを形成する方法としては、塩化カルシウム水溶液とポリビニルアルコール水溶液の混合水溶液に対して、アルギン酸ナトリウム水溶液をシリンジから糸状に押し出してアルギン酸ゲルの糸状体を作成しつつ、その糸状体を絡めて繊維状にしてゆき、繊維状アルギン酸ゲルよりなる繊維パーツの主構造体を形成する(第1の工程)。
さらに、繊維パーツの主構造体の周囲にあるポリビニルアルコールに対する架橋剤を添加し、繊維パーツの主構造体の周囲にまとわりついているポリビニルアルコールを架橋させて繊維パーツの主構造体の周囲にコーティング体を形成する(第2の工程)。
一方、ゲル状の素材で形成した膜組織の単層を模擬した単層膜パーツを作成しておき、それらを重ね合わせまたは貼り合わせる際に第1の工程および第2の工程を経て作成された繊維パーツを挟み込んで多層構造の多層膜パーツを形成する(第3の工程)。これで臓器膜モデルの完成である。
さらに、臓器モデル鋳型に対して必要に応じて血管モデルや神経モデルを配置した状態で、ポリビニルアルコール等の臓器モデル用ゲル素材を流し込んで臓器本体モデルを形成しておき、その臓器本体モデルを第3の工程を経て作成された臓器膜モデルで被覆すれば形成臓器膜モデルが作成できる(第4の工程)。
本発明の臓器膜モデル100およびそれを適用した臓器モデル200の構成を簡単に示す図である。 本発明の実施例1にかかる臓器膜モデル100の構成を簡単に示す図である。 3次元プリンターを用いて血管モデル210を製作する様子を簡単に示す図である。 臓器本体モデル200を形成する様子を示す図である。 臓器モデル鋳型300から完成した臓器モデル200を取り出す様子を示す図である。 実施例4にかかる臓器膜モデル100の製作例を示す図である。 実施例5にかかる繊維パーツ130をコーティング処理した試作例を示す図である。 実施例5にかかる臓器膜モデル100の上層の膜を剥離した様子を示す図である。
以下、本発明の臓器膜モデル、および臓器膜モデルで被覆して形成した臓器モデルの実施例を説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
図1は、本発明にかかる臓器膜モデル100およびそれを適用した臓器モデル200の構成を簡単に示す図である。
図1の例では臓器モデルの例として、腎臓の臓器モデルを示している。
図1(a)は臓器モデル200の外観を示す図である。臓器モデル200は臓器本体モデル220の表面が臓器膜モデル100により覆われている構造となっている。
図1(b)は、臓器膜モデル100およびそれを適用した臓器モデル200の縦断面図を示している。なお、図1(b)において腎臓の部位のうち、臓器本体モデル220、被膜である臓器膜モデル100のほか、血管モデル210である腎動脈モデル210−1、腎静脈モデル210−2が図示されているが、実際の腎臓本体の内部に存在するその他の皮質、髄質、腎杯、腎盂、尿管などの部位のモデルは図示が省略されており、一様な臓器本体モデル220として図示されている。
以下、各構成要素を説明する。
[臓器膜モデル100]
臓器膜モデル100を詳しく後述する。
図1に示したように、臓器本体モデル200は、臓器膜モデル100により被膜されている。図1(b)に示すように、臓器膜モデル100の一部を取り出して説明する。
図2は、本発明の実施例1にかかる臓器膜モデル100の構成を簡単に示す図である。
図2(a)は、臓器膜モデル100の断片を取り出した構成例を簡単に示す図である。
図2(b)は、上層の単層膜パーツ110−1を下層の単層膜パーツ110−2から引き剥がした際に、間挿されている繊維パーツ130が繊維状に裂けて行く様子を簡単に示した図である。
図2(a)に示すように、本発明の実施例1にかかる臓器膜モデル100は、複数枚の単層パーツ110、それを多層化して形成した多層膜パーツ120、繊維パーツ130を備えた多層構造となっている。つまり、多層膜パーツ120は、ゲル状の素材で形成した単層膜パーツ110を重ね合わせまたは貼り合わせて多層構造とした膜状組織を模擬したものである。なお、単層膜パーツ110同士の間には繊維パーツ130が間挿されている。
図2の構成例では、多層膜パーツ110が、2枚の単層膜パーツ110−1、110−2により構成された例となっている。多層膜パーツ110は2枚に限らず、3枚以上重ねた多層構造であっても良い。
[単層膜パーツ110]
まず、単層膜パーツ110について述べる。
単層膜パーツ110は、膜組織の単層を模擬したものであり、その柔軟性や弾力性やエコー特性、さらには、電気メスなど医療電子機器による手技の反応が実際の臓器の膜組織と近い仕上がりになるゲル素材を選択しておけば、理想的な単層膜パーツ110が形成される。またそれらを重ねた多層膜パーツ120も理想的なものとなる。例えば、熱硬化性のポリビニルアルコールゲル素材を用いて形成する。
この構成例では、単層膜パーツ110は、平均重合度が300〜3500であり、ケン化度がそれぞれ異なる2種類のポリビニルアルコール水溶液をブレンドしたものをゲル化した混合型ポリビニルアルコールゲル素材で形成する。
例えば、第1のケン化ポリビニルアルコール水溶液として、ケン化度97モル%から99モル%のケン化度のポリビニルアルコール水溶液を用い、第2のケン化ポリビニルアルコール水溶液として、ケン化度50%から80モル%、その一例として、ケン化度72.5モル%から74.5モル%程度のポリビニルアルコール水溶液を用いる。これら2種類のケン化ポリビニルアルコール水溶液を所定割合で混合して混合液全体のケン化度を50モル%以上90モル%未満に調合した部分ケン化ポリビニルアルコール混合水溶液を用意し、凝析剤または架橋剤からなる硬化剤を投入して硬化して形成することができる。
上記したように、単層膜パーツ110を形成するゲル素材における平均重合度の範囲は300〜3500としたが、その下限は、素材が生体組織モデルとして成形できる成形可能性を考慮する必要がある。つまり、手術練習用の生体組織モデルを製作するには固まってしっかり成形できる程度に構造的強度が得られなければならない。そのためには分子の重合度がある程度大きくなければならず、平均重合度は300以上が好ましく、さらに1000以上であることが好ましい。一方、その上限は、素材が生体組織モデルとして弾力性を保持できることを考慮する必要がある。重合度が大きくなるほど硬く成形されるが、弾力性が失われるほど硬くなるのは好ましくない。そこで、適度な弾力性を付与する観点から分子の重合度はある程度抑える必要があり、平均重合度は3500以下とすることが好ましく、さらに2500以下であることが好ましい。
第1のケン化ポリビニルアルコール水溶液は、2種類のケン化度のポリビニルアルコール水溶液のうち、ケン化度の高いポリビニルアルコール水溶液である。例えば、完全ケン化ポリビニルアルコール水溶液とする。一般には完全ケン化ポリビニルアルコールと市販されているものでもケン化度100モル%のものはなく、事実上、ケン化度97モル%から99モル%程度のものでも完全ケン化ポリビニルアルコールと呼ばれている。本発明でも、第1のケン化ポリビニルアルコール水溶液として、ケン化度97モル%から99モル%のケン化度のポリビニルアルコール水溶液を用いることができる。
一方、第2のケン化ポリビニルアルコール水溶液は、2種類のケン化度のポリビニルアルコール水溶液のうち、ケン化度の低いポリビニルアルコール水溶液である。例えば、ケン化度50%から80モル%のポリビニルアルコール水溶液を用いることができる。一例として、ケン化度72.5モル%から74.5モル%程度のポリビニルアルコール水溶液が好適である。
第1のケン化ポリビニルアルコール水溶液と第2のケン化ポリビニルアルコール水溶液のブレンド量であるが、上記したように、ブレンドして得る部分ケン化ポリビニルアルコール混合水溶液中の平均重合度、平均ケン化度、ポリビニルアルコールの平均濃度が、それぞれ説明した範囲に収まるように配合する必要がある。
例えば、第1のケン化ポリビニルアルコール水溶液として、ケン化度97モル%から99モル%の完全ケン化度のポリビニルアルコール水溶液を用い、第2のケン化ポリビニルアルコール水溶液としてケン化度72.5モル%から74.5モル%の範囲のポリビニルアルコール水溶液を用いる場合、第1のケン化ポリビニルアルコール水溶液と、第2のケン化ポリビニルアルコール水溶液との混合比率を7:3から4:6の範囲として調合すれば、平均重合度が300〜3500であり、ケン化度が50モル%以上90モル%未満であり、含有されるポリビニルアルコールの濃度が1重量%から30重量%程度の部分ケン化ポリビニルアルコール混合水溶液となる。
発明者は、長年の研究により、単層膜パーツ110として、このような範囲の2種類のポリビニルアルコール水溶液をブレンドして、硬化剤を投入して硬化すれば、人体の臓器と近い柔軟性や弾力性やエコー特性、さらには、電気メスなど医療電子機器による手技の反応が実際の臓器と近い仕上がりになることを突き止めている。
ポリビニルアルコールのケン化度を一様とせずに2種類のケン化度の異なるポリビニルアルコールをブレンドする理由としては以下に示すものがある。
第1の理由は、部分ケン化ポリビニルアルコール混合水溶液の全体としてのケン化度を調整しやすくするためである。
製作しようとする生体組織モデルは、部位によって硬さなどが異なるため、製造過程において硬化させて再現する弾力性などは自在に調整できることが好ましい。ここで、成形物の弾力性を決める要因としては、ポリビニルアルコールの平均重合度、ポリビニルアルコールのケン化度、ポリビニルアルコール混合水溶液中のポリビニルアルコールの濃度、冷却処理および解凍加熱処理で減ずる水分量などの要因があるが、ポリビニルアルコールの平均重合度は原材料の調達時点で決まってしまうため変更が容易ではない。ここで、2種類のケン化度の異なるポリビニルアルコールをブレンドの配合を調整することは比較的容易である。そこで、2種類のケン化度の異なるポリビニルアルコールを用いることで部分ケン化ポリビニルアルコール混合水溶液の全体としての平均ケン化度やポリビニルアルコールの濃度を調整するのである。
第2の理由は、製作しようとする生体組織モデル内での生体組織としての弾力性バラツキの再現のためである。
製作しようとする生体組織モデルは、部位によって硬さなどが異なるが、同じ部位の中身であっても、生体ならではの弾力のバラツキがある。例えば、肝臓、膵臓、それらの膜組織も中身がまったくの一様という訳ではなく、比較的弾力の大きい分と比較的弾力の小さな部分が微妙に混在しているものと考えられる。ここで、2種類のケン化度の異なるポリビニルアルコールをブレンドの配合を調整したものを架橋剤や凝析剤で硬化させると、全体としては平均ケン化度の示す物性が現れるが、微小部分ごとには自然と微妙なバラツキが生じるような生体組織が再現できる。そこで、2種類のケン化度の異なるポリビニルアルコールを用いることで部分ケン化ポリビニルアルコール混合水溶液の全体としての平均ケン化度は調整しつつも、ブレンドによるバラツキを確保するのである。
次に、硬化剤について説明する。
硬化剤としては、凝析剤または架橋剤のいずれか一方を硬化剤として用いて硬化させても良いし、凝析剤と架橋剤の両方を硬化剤として投入して硬化させることも可能である。
凝析剤としては、クエン酸水素2カリウム、亜硝酸ナトリウム、硝酸亜鉛、(NH4)2SO4、Na2SO4,K2SO4,ZnSO4、CuSO4,FeSO4,MgSO4、Al2(SO4)3 、KAl(SO4)2、NH4NO3,KNO3,NaCl,KCl、Na2PO4,K2CrO4,H3BO3のいずれか、またはそれらの組み合わせである。
架橋剤としては、ホウ酸、ホスホン酸、リン酸、クロム酸、またはそれらの化合物のいずれか、またはそれらの組み合わせである。
硬化剤の濃度としては、2重量%から30重量%、または、20℃飽和濃度であることを特徴とする。その量は、具体的には、部分ケン化ポリビニルアルコール混合水溶液を凝析または架橋させるのに十分な量を勘案して決定することとなる。
次に、部分ケン化ポリビニルアルコール混合水溶液に対するオプションとなる添加物について述べる。添加物の一つとして、金属ヒドロゾルを上げることができる。金属ヒドロゾルを添加することにより、成形物の構造的強度を向上し、微小部位ごとの多様性を再現すること可能となる。
金属ヒドロゾルとしては、微小粒子のシリカヒドロゾル、チタニナヒドロゾル、アルミナヒドロゾル、ジルコニアヒドロゾル等がある。上記で得られた部分ケン化ポリビニルアルコールの混合水溶液に対して3重量%から30重量%、より好ましくは、4重量%から10重量%の金属ヒドロゾルを含有せしめて調合することができる。
硬化剤として凝析剤のみを用いる構成では金属ヒドロゾルをゲル化させるアルカリ剤として兼用することができる。
[多層膜パーツ120]
多層膜パーツ120は、単層膜パーツ110を複数枚重ねることにより多層化して形成されたものである。この多層膜パーツ120において、単層膜パーツ110と単層膜パーツ110の間に繊維パーツ130が間挿されている。
単層膜パーツ110同士の接着については、もともと単層膜パーツ110が多少の粘着性を備えている上、間に間挿されている繊維パーツ130にも粘着性が備えており、重ね合わせた単層膜パーツ110同士を圧着すれば、多層膜パーツ120として安定した構造となる。
[繊維パーツ130]
次に、繊維パーツ130について述べる。
繊維パーツ130は、ゲル状の素材で形成した筋繊維組織を模擬したものである。
臓器膜は、膜組織と筋組織が血管を挟んでつながっており、膜組織を引き剥がす内部の筋組織と膜組織の間で筋組織が裂けてゆき繊維状になる。本発明の臓器膜モデル100ではこの筋組織を模擬する繊維パーツ130を作成する。
繊維パーツ130は、繊維組織に近い構造となるよう複数の糸状体が絡み合った形状を再現するための基材となるゲル状の素材でできた繊維組織の主構造体を備えている。
繊維パーツ130の主構造体の素材としては、繊維状の組織を模擬しやすい素材が好ましく、例えば、アルギン酸ナトリウム水溶液を塩化カルシウム水溶液中にシリンジで糸状に押し出して得られる糸状体を繊維状に絡ませて形成した繊維状アルギン酸ゲルがある。
さらに、繊維組織の主構造体の表面をコーティング体によってコーティングすることも可能である。つまり、複数の糸状体が絡み合った繊維組織の主構造体に対して、その表面をコーティングするようにコーティング体を設けることにより、実際の繊維組織に近い引っ張り強度を再現する。例えば、コーティング体の素材としては、ポリビニルアルコール水溶液を架橋剤で架橋して形成したポリビニルアルコールゲルがある。
図2に示した例は、繊維パーツ130の主構造体131を繊維状のアルギン酸ゲルで形成し、その表面にポリビニルアルコール水溶液を架橋剤で架橋したポリビニルアルコールゲルによりコーティングしてコーティング体132を形成したものとなる。
図2(b)は、多層膜120において、単層膜パーツ110を引き剥がす様子を示す図である。単層膜パーツ110同士の間に間挿されている内部の繊維パーツ130が繊維状に裂けてゆく様子が分かる。
以上、臓器膜モデル100の構成例を説明した。
[血管モデル210]
血管モデル210について述べる。
血管モデル210は、臓器に関する血管、特に動脈や静脈といった重要な血管を模擬している。臓器は活動に大量の血液を使用するため動脈や静脈が通っていることが多い。手技において動脈や静脈といった血管の取り扱いが重要である。トレーニングとして臓器に通っている動脈や静脈を再現しておくことは重要である。
血管モデル210も人体の組織として柔軟性、弾力性などを備えている。そのため柔軟性や弾力性やエコー特性、さらには、電気メスなど医療電子機器による手技の反応が実際の血管と近い仕上がりになるゲル素材を選択しておけば、理想的な血管モデル210が形成される。例えば、ポリウレタンゲルなどで形成する。
血管モデル210は複雑な形状をしており、臓器本体モデル220と血管モデル210を同時に一体成型することは難しい。そこで、血管モデル210は臓器本体モデル220とは別にあらかじめ製作しておき、作成した血管モデル210を臓器本体モデル220用の鋳型に設置した後、臓器本体モデル220用のゲル素材を流し込み、熱を加えて一体化させることで成型することができる。
図3は3次元プリンターを用いて血管モデル210を製作する様子を簡単に示す図である。図3(a)に示すように、血管モデル210は3次元プリンターを用いてゲル素材で形成することができる。例えば、紫外線硬化素材を用いて立体を造形する。ここでは、紫外線硬化型のポリウレタンゲルを主成分とした材料を紫外線照射により立体造形できる3次元プリンターとする。このような3次元プリンターは市場において調達可能である。
この血管モデル210は、図3(b)に示すように、臓器膜モデル100が敷き詰められた臓器モデルの鋳型300に対して、所定位置に配置される。
[臓器本体モデル220]
次に、臓器本体モデル220について述べる。
臓器本体モデル220は、腎臓本体を模擬したものであり、実際の臓器とその柔軟性や弾力性やエコー特性、さらには、電気メスなど医療電子機器による手技の反応が実際の臓器と近い仕上がりになるゲル素材を選択しておけば、理想的な臓器本体モデル220が形成される。例えば、熱硬化性のポリビニルアルコールゲル素材(PVAゲル素材)を用いて形成する。
この構成例では、臓器本体モデル220は、平均重合度が300〜3500であり、ケン化度がそれぞれ異なる2種類のポリビニルアルコール水溶液をブレンドしたものをゲル化した混合型ポリビニルアルコールゲル素材で形成する。
例えば、第1のケン化ポリビニルアルコール水溶液として、ケン化度97モル%から99モル%のケン化度のポリビニルアルコール水溶液を用い、第2のケン化ポリビニルアルコール水溶液として、ケン化度50%から80モル%、その一例として、ケン化度72.5モル%から74.5モル%程度のポリビニルアルコール水溶液を用いる。これら2種類のケン化ポリビニルアルコール水溶液を所定割合で混合して混合液全体のケン化度を50モル%以上90モル%未満に調合した部分ケン化ポリビニルアルコール混合水溶液を用意し、凝析剤または架橋剤からなる硬化剤を投入して硬化して形成することができる。
なお、平均重合度の範囲が300〜3500であること、ケン化度97モル%から99モル%のケン化度の第1のポリビニルアルコール水溶液と、ケン化度50%から80モル%のケン化度の第2のポリビニルアルコール水溶液をブレンドして硬化させる点については、臓器膜モデル100の単層パーツ110の形成の手法と同様の点が多いので、ここでの説明は省略する。
図4は、臓器本体モデル200を形成する様子を示す図である。
図4(a)に示すように、臓器モデル鋳型300に対してゲル注入装置を介して上記した高分子ゲルを注入する。
その後、図4(b)に示すように、所定温度で所定時間にわたり加熱することにより、熱硬化させて臓器モデル200を完成させる。
図5に示すように、臓器モデル鋳型300から完成した臓器モデル200を取り出す。
以上が臓器膜モデル100およびそれを包含する臓器モデル200の構成要素、およびそれらの製造方法の説明である。
次に、実際に臓器膜モデル100を以下に示すように試作した。
[単層膜モデル110の試作1]
組織膜を疑似して単層膜モデル110を仕上げるためには、破れない程度の引っ張り強度が必要である。PVA単体では強度が弱いので、2種類のゲルを組み合わせて強度の向上を試みた。
[使用した材料]
PVA−117水溶液(15wt%) 95.0g
ポリアクリル酸ナトリウム水溶液(5wt%) 5.0g
シリカゾル(スノーテックスZL) 2.6g
クエン酸三カリウム水溶液(1M) 12mL
水酸化ナトリウム水溶液(1M) 4.0mL
ホウ酸三ナトリウム水溶液(0.5M)
黄土色顔料 0.3g
[製作方法]
15wt%PVA−117水溶液95gと5wt%ポリアクリル酸ナトリウム水溶液5.0gを混合し、80℃に加熱しながら撹拌した。この混合溶液を室温まで冷却し、シリカゾル2.6gを加えて撹拌後、撹拌しながら1Mのクエン酸三カリウム水溶液を12mL滴下した。その後、1M水酸化ナトリウム水溶液4.0mLを滴下して黄土色顔料を0.3g加えて撹拌、真空脱泡後、型に流し込み一晩冷凍した。冷蔵庫で解凍後、0.5Mホウ酸三ナトリウム水溶液に1分間浸漬した。
[結果]
強度は実際の臓器膜に比べて十分に出たようであるが、実際の臓器膜に比べて伸びにくく伸張性が小さくものであった。
[単層膜モデル110の試作2]
実施例1に示した単層膜パーツ110の試作1では、実際の臓器膜に比べて伸びにくいものであったので、実際の臓器膜に近い伸長性を再現するため架橋度を抑える工夫を行う。実施例1の製作過程においてホウ酸三ナトリウム水溶液の処理をなくし、膜が伸びるよう変更する。
つまり、ホウ酸三ナトリウム水溶液で処理すると、架橋度が高まり引っ張っても伸びが小さい。水酸化ナトリウム水溶液およびホウ酸三ナトリウム水溶液の処理をなくし、架橋度を抑えて膜が伸びるよう変更した。
[使用した材料]
PVA−117水溶液(15wt%) 95.0g
ポリアクリル酸ナトリウム水溶液(5wt%) 5.0g
シリカゾル(スノーテックスZL) 2.6g
クエン酸三カリウム水溶液(1M) 12mL
水酸化ナトリウム水溶液(1M) 4.0mL
ホウ酸三ナトリウム水溶液(0.5M)
黄土色顔料 0.3g
[製作方法]
PVA−117(15wt%)水溶液95gと5wt%ポリアクリル酸ナトリウム水溶液5.0gを混合し、80℃に加熱しながら撹拌した。この混合溶液を室温まで冷却し、シリカゾル2.6gを加えて撹拌後、撹拌しながら1Mのクエン酸三カリウム水溶液を12mL滴下した。その後、黄土色顔料を0.3g加えて撹拌、真空脱泡後、型に流し込み一晩冷凍した。冷蔵庫で解凍した。なお、解凍後に0.5Mホウ酸三ナトリウム水溶液への浸漬処理は行わない。
[結果]
強度は実際の臓器膜に比べて十分に出ており、また、実際の臓器膜と近い伸張性が得られた。ホウ酸三ナトリウムでの処理を行っていないので電気メスでの切開性が良好であった。
[多層膜モデル120の試作1]
[製作方法]
多層膜モデル120の試作1として、繊維パーツ130を間挿しない構成にて試作した。
実施例2で作成したPVA−117を主成分として製作した単層膜パーツ110を単純に圧着して多層化することにより多層膜モデル120を試作した。
[結果]
試作した多層膜モデル120の単層膜パーツ110同士を引き剥がしたところ、剥離した面の間には繊維状の組織が再現されなかった。
[繊維パーツ130の試作1、それを間挿した多層膜モデル120の試作2]
実施例4にかかる繊維パーツ130を試作する。アルギン酸ナトリウム水溶液を塩化カルシウム水溶液中にシリンジで糸状に押し出して得られる糸状体を繊維状に絡ませて形成した繊維状アルギン酸ゲルを得る。
(1)単層膜パーツ110
[使用した材料]
PVA−117(15wt%)水溶液 300g
シリカゾル(スノーテックスZL) 8g
クエン酸三カリウム水溶液(1M) 94mL
赤色顔料 0.3g
[製作方法]
PVA−117(15wt%)水溶液300gにシリカゾル8gを加えて撹拌後、撹拌しながらビュレットにて1Mのクエン酸三カリウム水溶液を94mL滴下した。その後、赤色顔料を0.3g加えて撹拌、真空脱泡後、型に流し込み一晩冷凍した。冷蔵庫で解凍した。なお、解凍後に0.5Mホウ酸三ナトリウム水溶液への浸漬処理は行わない。
(2)繊維パーツ130(主構造体のみ)
[使用した材料]
アルギン酸ナトリウム水溶液(1wt%)
塩化カルシウム水溶液(1M)
[製作方法]
シリンジに1wt%アルギン酸ナトリウム水溶液を入れて1Mの水酸化カルシウム水溶液中に押し出し、繊維状アルギン酸ゲルを作成した(使用した針の内径は0.6mm)。
図6は、実施例4にかかる臓器膜モデル100の製作例を示す図である。
図6(a)は、繊維パーツ130の試作例である。繊維状アルギン酸ゲルにより作成した繊維パーツ130が繊維状に絡み合っている構造が再現できていることが分かる。
(3)多層膜モデル120
[製作方法]
作成したPVA薄膜の単層膜パーツ110を2枚解凍し、接着剤として同じPVA素材を塗った(単層膜パーツ110の作成の過程で得たPVAの余りを用いた)。作成したアルギン酸繊維である繊維パーツ130をこの単層膜パーツ110の間に配置して多層化して多層膜パーツ120とし、上下から挟んで圧着させたまま一晩冷凍した。
[結果]
試作した実施例4にかかる多層膜モデル120の単層膜パーツ110同士を引き剥がしたところ、剥離した面の間の繊維パーツ130が繊維状に剥離した。一応、筋繊維組織が剥離する様子が再現できた。
しかし、アルギン酸ゲルの主構造体のみで形成された繊維パーツ130は引っ張ることにより破断しやすく切れてしまうこともあり得る。
図6(b)は、実施例4にかかる多層膜モデル120の単層膜パーツ110を引き剥がして剥離した状態を示す図である。アルギン酸ゲルのみで形成された繊維パーツ130は引っ張ることにより一部を残して他は破断して途切れてしまっている。
実施例4の結果から、アルギン酸ゲルは筋繊維状のものを模擬する上で適した素材であることは確認できたものの、アルギン酸ゲルの主構造体のみの繊維パーツ130は溶けて破断しやすくなるおそれがあることが分かった。他の弾力性に富んだゲル素材、例えばPVAを架橋してゲル化すると構造的強度を増大させることが可能である。例えば、単純に混合してゲル化して構造強度を向上させる方法として、アルギン酸ナトリウム/PVA−117混合溶液をゲル化させる方法があるが、作成した繊維パーツ130の幅が太くなってしまい(直径約1mm)、臓器膜モデル100の繊維パーツ130としては適用範囲が限られてしまうおそれがある。
そこで、実施例5では、主構造体であるアルギン酸ゲルの表面をコーティングするようにPVAゲルのコーティング体で被覆した構造を試作した。主構造体であるアルギン酸ゲルの表面をPVAゲルでコーティングすれば引っ張り強度が向上する。
(1)単層膜パーツ110
単層膜パーツ110は実施例4で製作したものと同様のものを用いる。
(2)繊維パーツ130(主構造体の表面をPVAでコーティングしたもの)
[使用した材料]
アルギン酸ナトリウム水溶液(1wt%)
塩化カルシウム水溶液(1M)とPVA−117(5w%)との混合溶液
飽和ホウ酸水溶液
[製作方法]
塩化カルシウム水溶液とPVA−117との混合溶液(1M)を用意し、その溶液中に、シリンジから1wt%アルギン酸ナトリウム水溶液を押し出し(使用した針の内径は0.6mm)、繊維状アルギン酸ゲルを作成した。この状態で未架橋のPVAが繊維状アルギン酸ゲルの周りにまとわりついている。この形成された繊維状アルギン酸ゲルに対して飽和ホウ酸水溶液をかけて表面に含有されているPVA−117を架橋した。
[結果]
図7は、実施例5にかかる繊維パーツをコーティング処理した試作例を示す図である。
図7(a)は、未架橋のPVAが周りにまとわりついているアルギン酸ゲルの製作例である。この状態ではPVAが未架橋の状態である。
図7(b)は、未架橋のPVAが周りにまとわりついているアルギン酸ゲルに対して飽和ホウ酸水溶液をかけてPVA−117を架橋した状態を示す図である。
架橋反応により表面が少し泡立っている。
コーティング体でコーティングされたアルギン酸ゲルの径は0.7mmであった。PVA架橋体でコーティングされたアルギン酸ゲルを繊維状に絡めれば繊維パーツ130の構造が再現できる。
(3)多層膜モデル120
[製作方法]
解凍したPVA薄膜の単層膜パーツ110を型枠の中に配置し、接着剤として同じPVA−117を塗り、その単層膜パーツ110の上にPVA架橋体でコーティングされたアルギン酸ゲル繊維である繊維パーツ130を配置し、上から残りのPVA−117を流し込み、冷凍庫で一晩冷凍した。
[結果]
PVAの単層膜パーツ110同士を剥がせば、繊維パーツ130が破断せず、繊維状に剥がれていった。
図8は、実施例5にかかる臓器膜モデル100の上層の膜を剥離した様子を示す図である。
図8に示すように、上層である単層膜パーツ110を引き剥がせば、間挿されている繊維パーツ130が破断せずに繊維状に剥がれて行く様子が分かる。
このように、臓器モデルとして、柔軟性や弾力性が実際の臓器に近く、臓器を覆う膜組織、筋繊維、血管等まで立体的に再現し、電気メスなどの医療機器を用いた手技における反応も実際の反応に近い臓器モデルを製作することができる。
以上、本発明の臓器膜モデルの構成例における好ましい実施形態を図示して説明してきたが、本発明の技術的範囲を逸脱することなく種々の変更が可能であることは理解されるであろう。
本発明の臓器膜モデルは、人体の臓器などに対する手技のトレーニング用モデルとして広く適用することができる。
100 臓器膜モデル
110 単層膜パーツ
120 多層膜パーツ
130 繊維パーツ
200 臓器モデル
210 血管モデル
220 臓器本体モデル

Claims (6)

  1. 繊維組織を含む膜組織を模擬した臓器膜モデルであって、
    ゲル状の素材で形成した前記膜組織の単層を模擬した単層膜パーツを重ね合わせまたは貼り合わせて多層構造とした多層膜パーツと、
    ゲル状の素材で形成した前記繊維組織を模擬した繊維パーツを備え、
    前記繊維パーツを前記多層膜パーツの層間に配置したことを特徴とする臓器膜モデル。
  2. 前記繊維パーツが、前記繊維組織に近い複数の糸状体が絡み合った形状を再現するための基材となるゲル状の素材でできた繊維組織の主構造体と、前記繊維組織に近い引っ張り強度を出すために前記繊維組織の主構造体の表面をコーティングしたゲル状の素材でできたコーティング体との組み合わせで形成されていることを特徴とする請求項1に記載の臓器膜モデル。
  3. 前記繊維パーツの主構造体が、アルギン酸ナトリウム水溶液を塩化カルシウム水溶液中にシリンジで糸状に押し出して糸状体を、繊維状に絡ませて形成した繊維状アルギン酸ゲルであることを特徴とする請求項2に記載の臓器膜モデル。
  4. 前記繊維パーツが、前記前記繊維パーツの主構造体である前記繊維状アルギン酸ゲルの表面を、ポリビニルアルコール水溶液を架橋剤で架橋して形成したポリビニルアルコールゲルからなるコーティング体でコーティングした構造とした請求項3に記載の臓器膜モデル。
  5. 請求項1から4のいずれかに記載の臓器膜モデルと、
    臓器モデル鋳型に対して必要に応じて血管モデルを配置した状態で臓器モデル用ゲル素材を流し込んで形成した臓器本体モデルを備え、
    前記臓器膜モデルで前記臓器本体モデルを被覆して形成した、臓器膜モデルで被覆した臓器モデル。
  6. 請求項1から4のいずれかに記載した臓器膜モデルを形成する方法であって、
    塩化カルシウム水溶液とポリビニルアルコール水溶液の混合水溶液に対して、アルギン酸ナトリウム水溶液をシリンジから糸状に押し出して絡めて繊維状にした前記繊維状アルギン酸ゲルよりなる前記繊維パーツの主構造体を形成する第1の工程と、
    前記ポリビニルアルコールに対する架橋剤を添加して前記繊維パーツの主構造体の周囲にまとわりついている前記ポリビニルアルコールを架橋させて前記繊維パーツの主構造体の周囲にコーティング体を形成する第2の工程と、
    ゲル状の素材で形成した膜組織の単層を模擬した単層膜パーツを重ね合わせまたは貼り合わせる際に前記繊維パーツを挟み込んで多層構造の多層膜パーツを形成する第3の工程を備えた、臓器膜モデル形成方法。
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