本発明の熱可塑性エラストマー組成物(以下、本発明の組成物ともいう)は、ポリエステル樹脂及びポリアミド樹脂から選択される少なくとも1種の極性樹脂と、スチレン類及びマレイミド化合物に由来する構造単位を含む重合体ブロック(A)、並びにアクリル系重合体ブロック(B)とを有するブロック共重合体からなる熱可塑性エラストマーとを含有するものである。前記極性樹脂に、かかるブロック共重合体を併用することにより、極性樹脂の耐熱性が損なわれることなく、しかも極性樹脂とブロック共重合体のいずれよりも柔軟性が高くなり、さらに引張強度や伸び等の機械特性も向上した熱可塑性エラストマー組成物が得られる。
本発明における極性樹脂とブロック共重合体の相互作用の詳細は定かではないが、極性樹脂分子がブロック共重合体のハードセグメント(重合体ブロック(A))に相溶するため、特にポリエステル樹脂やポリアミド樹脂のような結晶性の樹脂が単体で示していた硬さよりもずっと柔らかくなる一方で、ハードセグメントの疑似架橋は強化されるため耐熱性や機械的特性強度が向上するものと推察される。
<極性樹脂>
本発明における極性樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオキシメチレン樹脂、ポリメチルメタクリレート等のポリ(メタ)アクリレート系樹脂、ポリエチレンオキサイド系樹脂、ポリプロピレンオキサイド系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン系樹脂、ABS樹脂等のポリスチレン系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、LCP(液晶ポリマー)、アイオノマー等が挙げられ、これらは単独であっても2種以上が用いられていてもよい。これらの極性樹脂のうち、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオキシメチレン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、LCP(液晶ポリマー)等は結晶性樹脂として知られているものであり、本発明においては、耐熱性の観点で好ましいものである。
本発明におけるポリエステル樹脂としては、ジカルボン酸化合物とジヒドロキシ化合物の重縮合、オキシカルボン酸化合物の重縮合、これらの化合物の重縮合等によって得られるポリエステルが挙げられ、ホモポリエステル、コポリエステルのいずれであってもよい。また、2種以上のポリエステル樹脂が混合されていてもよい。
ポリエステル樹脂を構成するジカルボン酸化合物としては、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸、そのエステル形成性誘導体等が挙げられる。
芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ビフェニル−2,2’−ジカルボン酸、ビフェニル−3,3’−ジカルボン酸、ビフェニル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルメタン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルスルフォン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルイソプロピリデン−4,4’−ジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸、アントラセン−2,5−ジカルボン酸、アントラセン−2,6−ジカルボン酸、p−ターフェニレン−4,4’−ジカルボン酸、ピリ
ジン−2,5−ジカルボン酸等が挙げられ、これらの中では、テレフタル酸が好ましい。
脂肪族ジカルボン酸としては、アジピン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、セバシン酸等が挙げられる。
脂環式ジカルボン酸としては、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。
ジカルボン酸化合物は、単独の化合物であっても、2種以上を混合して用いられていてもよいが、前記ジカルボン酸化合物の中では、芳香族ジカルボン酸及びそのエステル形成性誘導体を含むことが好ましい。
ポリエステル樹脂を構成するジヒドロキシ化合物としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、へキシレングリコール、ネオペンチルグリコール、2−メチルプロパン−1,3−ジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等の脂肪族ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール等の脂環式ジオール、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフタレンジオール、ジヒドロキシジフェニルエーテル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等の芳香族ジオール、それらの混合物等が挙げられ、これらの中では、脂肪族ジオールを含むことが好ましい。また、分子量400〜6,000の長鎖ジオール、すなわち、ポリエチレングリコール、ポリ−1,3−プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等を1種以上が少量用いられていてもよい。
また、前記の二官能性モノマー以外に、分岐構造を導入するためトリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン等の三官能性モノマーや分子量調節のため脂肪酸等の単官能性化合物が併用されていてもよい。
ポリエステル樹脂としては、ジカルボン酸化合物を含む酸成分とジヒドロキシ化合物を含むアルコール成分との重縮合物が好ましく、ポリエステル樹脂全体の50質量%以上、好ましくは70質量%以上がこの重縮合物であることがより好ましい。
なかでも好ましいポリエステル樹脂は、酸成分の95モル%以上がテレフタル酸であり、アルコール成分の95質量%以上が脂肪族ジオールであるポリアルキレンテレフタレートである。その代表的なものはポリブチレンテレフタレート樹脂及びポリエチレンテレフタレート樹脂である。これらはホモポリエステルに近いもの、即ちポリエステル樹脂全体の50質量%以上が、テレフタル酸成分と1,4−ブタンジオール成分又はエチレングリコール成分との重縮合物であることが好ましい。さらに好適な態様として、柔軟性の観点から、ポリエステル樹脂は、ポリブチレンテレフタレート樹脂を、50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは95質量以上含むことが望ましく、ポリエステル樹脂全てがポリブチレンテレフタレート樹脂であることが特に好ましい。
ポリエステル樹脂の固有粘度は、成形性及び機械的特性の観点から、好ましくは0.5〜2dl/g、より好ましくは0.6〜1.5dl/gである。なお、ポリエステル樹脂の固有粘度は、テトラクロロエタンとフェノールとの1:1(質量比)の混合溶媒中、30℃で測定する値である。
ポリエステル樹脂の末端カルボキシル基含有量は適宜選択して決定すればよいが、後述のブロック共重合体が官能基を有する場合や架橋剤を併用する場合、本発明の組成物の耐熱性を向上させる観点から、好ましくは0.5meq/g以下、より好ましくは0.01〜0.5meq/gである。
ポリエステル樹脂の末端カルボキシル基含有量は、ベンジルアルコール25mLにポリエステル樹脂0.5gを溶解し、水酸化ナトリウムの0.01モル/Lベンジルアルコール溶液を用いて滴定により測定して得られる値をいう。末端カルボキシル基含有量は、重合時の原料仕込み比、重合温度、減圧方法などの重合条件を調節する方法や、末端封鎖剤を反応させる方法等、従来公知の任意の方法により調整することができる。
本発明におけるポリアミド樹脂としては、ラクタム類の開環重合体、ジアミノカルボン酸の重縮合によって得られる重合体、アミン類と二塩基酸類又はこれらと同等な化合物との重縮合によって得られる重合体類等が好ましく、2種以上のポリアミド樹脂が混合されていてもよい。
ラクタム類としては、プロピオラクタム、α−ピロリドン、ε−カプロラクタム、エナントラクタム、ω−ラウロラクタム、シクロドデカラクタム等が挙げられる。ジアミノカルボン酸としては、アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、11−アミノウンデカン酸、9−アミノノナン酸等が挙げられる。アミン類としては、ヘキサメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン等が挙げられる。二塩基酸類としてはテレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二塩基酸、グルタール酸等が挙げられる。
より具体的なポリアミド樹脂の例としては、ポリアミド4、ポリアミド6、ポリアミド7、ポリアミド8、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6・6、ポリアミド6・9、ポリアミド6・10、ポリアミド6・11、ポリアミド6・12、ポリアミド6T、ポリアミド6/6・6、ポリアミド6/6T、ポリアミド6/6I、ポリアミド6I/6T、メタキシリレンジアミンとアジピン酸との重縮合物(ポリアミドMXD6)、メタキシリレンジアミンとパラキシリレンジアミンからなる混合ジアミンとアジピン酸との重縮合物(ポリアミドMP6)等が挙げられる。
ポリアミド樹脂は、機械的特性及び成形性の観点から、特定範囲の重合度、すなわち特定範囲の粘度を有するものが好ましい。すなわち、ISO307規格に準拠して、温度23℃、96質量%の硫酸中、ポリアミド樹脂濃度1質量%で測定した粘度数が70〜200ml/gのものが好ましく、より好ましくは90〜150ml/g、さらに好ましくは100〜130ml/gである。
ポリアミド樹脂の末端カルボキシル基含有量は適宜選択して決定すればよいが、後述のブロック共重合体が官能基を有する場合や架橋剤を併用する場合、本発明の組成物の耐熱性を向上させる観点から、好ましくは0.02meq/g以上、より好ましくは0.02〜1meq/gである。また、同様の観点から、ポリアミド樹脂の末端アミノ基含有量は、好ましくは0.01meq/g以上、より好ましくは0.01〜0.5meq/gである。
ポリアミド樹脂の末端カルボキシル基含有量は、ポリアミド樹脂をベンジルアルコールに溶解して0.01N水酸化ナトリウム標準溶液で滴定することにより測定することができる。また、末端アミノ基含有量は、ポリアミド樹脂をフェノールに溶解して0.01N塩酸標準液で滴定することにより測定することができる。末端カルボキシル基含有量及び末端アミノ基量は、重合時の原料仕込み比、重合温度、減圧方法などの重合条件を調節する方法や、末端封鎖剤を反応させる方法等、従来公知の任意の方法により調整することができる。
本発明において、極性樹脂としてポリエステル樹脂とポリアミド樹脂は併用してもよく、併用する場合、ポリエステル樹脂100質量部に対するポリアミド樹脂の量は、10〜80質量部が好ましく、より好ましくは14〜65質量部、さらに好ましくは18〜60質量部、さらに好ましくは20〜50質量部である。
本発明の組成物中の極性樹脂の含有量は、好ましくは5〜80質量%、より好ましくは8〜60質量%である。
<重合体ブロック(A)>
重合体ブロック(A)は、前記の通り、スチレン類及びマレイミド化合物に由来する構造単位を有する。
前記スチレン類には、スチレン及びその誘導体が含まれる。具体的な化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、ビニルナフタレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−エチルスチレン、m−エチルスチレン、p−エチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−イソブチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、o−メトキシスチレン、m−メトキシスチレン、p−メトキシスチレン、o−クロロメチルスチレン、p−クロロメチルスチレン、o−クロロスチレン、p−クロロスチレン、o−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、ジビニルベンゼン等が例示され、これらの内の1種又は2種以上を用いることができる。スチレン類を含む単量体を重合することにより、重合体ブロック(A)にスチレン類に由来する構造単位を導入することができる。
前記の内でも、重合性の観点から、スチレン、o−メトキシスチレン、m−メトキシスチレン、p−メトキシスチレン、o−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、及びp−ヒドロキシスチレンが好ましい。また、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、ビニルナフタレンは、重合体ブロック(A)のTgを高めることができ、耐熱性に優れるブロックポリマーを得ることができる点において好ましい。
重合体ブロック(A)において、前記スチレン類に由来する構造単位が占める割合は、重合体ブロック(A)の全構造単位中、1質量%以上70質量%以下であることが好ましい。より好ましくは5質量%以上70質量%以下であり、さらに好ましくは10質量%以上70質量%以下であり、一層好ましくは20質量%以上60質量%以下である。また、例えば、20質量%以上40質量%以下であってもよい。
スチレン類に由来する構造単位が1質量%以上であれば、成形性に優れるブロック共重合体が得られる。一方、70質量%以下であれば、後述するマレイミド化合物由来の構造単位の必要量を確保することが可能となるため、耐熱性及び耐油性に優れるブロック共重合体を得ることができる。
前記マレイミド化合物には、マレイミド及びN−置換マレイミド化合物が含まれる。N−置換マレイミド化合物としては、例えば、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−n−プロピルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−n−ブチルマレイミド、N−イソブチルマレイミド、N−tert−ブチルマレイミド、N−ペンチルマレイミド、N−ヘキシルマレイミド、N−ヘプチルマレイミド、N−オクチルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−ステアリルマレイミド等のN−アルキル置換マレイミド化合物;N−シクロペンチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のN−シクロアルキル置換マレイミド化合物;N−フェニルマレイミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)マレイミド、N−(4−アセチルフェニル)マレイミド、N−(4−メトキシフェニル)マレイミド、N−(4−エトキシフェニル)マレイミド、N−(4−クロロフェニル)マレイミド、N−(4−ブロモフェニル)マレイミド、N−ベンジルマレイミド等のN−アリール置換マレイミド化合物等が挙げられ、これらの内の1種又は2種以上を用いることができる。マレイミド化合物を含む単量体を重合することにより、重合体ブロック(A)にマレイミド化合物に由来する構造単位を導入することができる。
前記の内でも、得られるブロック共重合体の耐油性がより優れるものとなる点で、以下の一般式(1)で表される化合物が好ましい。
〔式中、R1は水素、炭素数1〜3のアルキル基又はPhR2を表す。ただし、Phはフェニル基を表し、R2は水素、ヒドロキシ基、炭素数1〜2のアルコキシ基、アセチル基又はハロゲンを表す。〕
重合体ブロック(A)において、前記マレイミド化合物に由来する構造単位が占める割合は、重合体ブロック(A)の全構造単位中、30質量%以上99質量%以下である。好ましくは30質量%以上95質量%以下であり、より好ましくは30質量%以上90質量%以下であり、さらに好ましくは40質量%以上80質量%以下である。また例えば、50質量%以上であってもよく、さらに例えば、60質量%以上であってもよい。また例えば、75質量%以下であってもよく、さらに例えば、70質量%以下であってもよい。また例えば、50質量%以上75質量%以下であってもよく、60質量%以上70質量%以下であってもよい。
マレイミド化合物に由来する構造単位が30質量%未満の場合、得られるブロック共重合体の耐熱性及び耐油性が十分でないときがある。一方、99質量%を超えると、前記スチレン類に由来する構造単位が不足する結果、流動性及び成形性が不十分となる場合がある。
重合体ブロック(A)及びアクリル系重合体ブロック(B)の少なくともいずれかは架橋性官能基を有することが好ましく、重合体ブロック(A)が架橋性官能基を含む場合は、圧縮永久歪の値が小さいブロック共重合体を得易い点で好ましい。前記架橋性官能基の導入は、例えばヒドロキシ基等の官能基を有するスチレン類及び/又はマレイミド化合物を用いてもよいし、架橋性官能基を有するビニル化合物を共重合することによっても導入することができる。架橋性官能基を有するビニル化合物としては、不飽和カルボン酸、不飽和酸無水物、ヒドロキシ基含有ビニル化合物、エポキシ基含有ビニル化合物、1級又は2級アミノ基含有ビニル化合物、反応性ケイ素基含有化合物等が挙げられる。これらの化合物は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
不飽和カルボン酸としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、シトラコン酸、桂皮酸、更には、不飽和ジカルボン酸のモノアルキルエステル(マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等のモノアルキルエステル等)等が挙げられる。これらの化合物は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
不飽和酸無水物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等が挙げられる。これらの化合物は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ヒドロキシ基含有ビニル化合物としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、並びに、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコールのモノ(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。これらの化合物は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
エポキシ基含有ビニル化合物としては、(メタ)アクリル酸グリシジル、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの化合物は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
1級又は2級アミノ基含有ビニル化合物としては、アミノエチル(メタ)アクリレート、アミノプロピル(メタ)アクリレート、N−メチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−エチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル;アミノエチル(メタ)アクリルアミド、アミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N−エチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド等のアミノ基含有(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
反応性ケイ素基含有化合物としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシランン等のビニルシラン類;(メタ)アクリル酸トリメトキシシリルプロピル、(メタ)アクリル酸トリエトキシシリルプロピル、(メタ)アクリル酸メチルジメトキシシリルプロピル、(メタ)アクリル酸ジメチルメトキシシリルプロピル等のシリル基含有(メタ)アクリル酸エステル類;トリメトキシシリルプロピルビニルエーテル等のシリル基含有ビニルエーテル類;トリメトキシシリルウンデカン酸ビニル等のシリル基含有ビニルエステル類等を挙げることができる。これらの化合物は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記の外にも、オキサゾリン基含有単量体又はイソシアネート基含有単量体を共重合することにより、架橋性官能基としてオキサゾリン基又はイソシアネート基を導入することができる。
さらに、分子内に2個以上の重合性不飽和基を有する多官能重合性単量体を共重合することにより、重合体ブロック(A)に架橋性官能基として重合性不飽和基を導入し得る。前記多官能重合性単量体としては、(メタ)アクリロイル基、アルケニル基等の重合性官能基を分子内に2つ以上有する化合物であり、多官能(メタ)アクリレート化合物、多官能アルケニル化合物、(メタ)アクリロイル基及びアルケニル基の両方を有する化合物等が挙げられる。これらの内でも、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸イソプロペニル、(メタ)アクリル酸ブテニル、(メタ)アクリル酸ペンテニル、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル等の分子内に(メタ)アクリロイル基及びアルケニル基の両方を有する化合物を用いた場合、重合性不飽和基の反応性に差異があることから重合体ブロック(A)に効果的に重合性不飽和基を導入し得る点で好ましい。これらの化合物は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
重合体ブロック(A)が架橋性官能基を有する場合、当該架橋性官能基の導入量は、重合体ブロック(A)の全構造単位に基づいて好ましくは0.01モル%以上であり、より好ましくは0.1モル%以上であり、さらに好ましくは1.0モル%以上であり、特に好ましくは2.0モル%以上である。架橋性官能基の導入量が0.01モル%以上であれば、圧縮永久歪の値の小さなブロック共重合体を得易くなる。一方、架橋反応の制御性の観点から、架橋性官能基導入量の上限は好ましくは60モル%以下であり、より好ましくは40モル%以下であり、さらに好ましくは20モル%以下であり、特に好ましくは10モル%以下である。架橋性官能基の導入量は、重合体ブロック(A)の全構造単位に基づいて0.01モル%以上60モル%以下の範囲とすることができ、好ましくは0.1モル%以上40モル%以下の範囲であり、より好ましくは1.0モル%以上20モル%以下の範囲である。
重合体ブロック(A)は、本発明の効果を損なわない範囲において、前記の単量体単位以外に、これらと共重合可能な他の単量体に由来する構造単位を有していてもよい。他の単量体としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル化合物、アミド基含有ビニル化合物等が挙げられる。これらの化合物は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの内でも、より耐油性に優れるブロック共重合体を得ることができる点から、アミド基含有ビニル化合物が好ましい。
重合体ブロック(A)において、前記の他の単量体に由来する構造単位が占める割合は、重合体ブロック(A)の全構造単位中、0質量%以上50質量%以下の範囲であることが好ましい。より好ましくは5質量%以上45質量%以下であり、さらに好ましくは10質量%以上40質量%以下である。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物の具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n−ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル及び(メタ)アクリル酸ドデシル等の(メタ)アクリル酸の直鎖状又は分岐状アルキルエステル化合物;(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸tert−ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロドデシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル等の(メタ)アクリル酸の脂肪族環式エステル化合物等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル化合物としては、(メタ)アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸エトキシメチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸n−プロポキシエチル、(メタ)アクリル酸n−ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸エトキシプロピル、(メタ)アクリル酸n−プロポキシプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブトキシプロピル、(メタ)アクリル酸メトキシブチル、(メタ)アクリル酸エトキシブチル、(メタ)アクリル酸n−プロポキシブチル、(メタ)アクリル酸n−ブトキシブチル等が挙げられる。
アミド基含有ビニル化合物としては、(メタ)アクリルアミド、並びに、tert−ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド及び(メタ)アクリロイルモルホリン等の(メタ)アクリルアミド誘導体;並びに、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミド及びN−ビニルイソブチルアミド等のN−ビニルアミド系単量体等が挙げられる。
前記以外の他の単量体としては、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びN,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
重合体ブロック(A)を構成する重合体のガラス転移温度(Tg)は、150℃以上である。Tgは、耐熱性に貢献できるため、例えば、170℃以上であってもよく、180℃以上であってもよく、190℃以上であってもよく、200℃以上であってもよい。さらにまた、210℃以上であってもよく、220℃以上であってもよく、230℃以上であってもよい。Tgが150℃未満の場合、得られるブロック共重合体の耐熱性及び耐油性が不十分となる場合がある。使用可能な構成単量体単位の制限から、Tgの上限は350℃である。Tgは、また例えば、280℃以下であってもよく、270℃以下であってもよく、さらに例えば、260℃以下であってもよい。
尚、Tgの値は、後述する実施例において記載する通り、示差走査熱量測定(DSC)により得ることができる。また、重合体ブロックを構成する単量体単位から計算により求めることもできる。
重合体ブロック(A)の溶解パラメータ(SP値)が10.0以上である場合、ブロック共重合体の耐油性がより良好なものとなる点で好ましい。SP値は、より好ましくは11.0以上であり、さらに好ましくは12.0以上であり、なお好ましくは13.0以上である。
重合体ブロック(A)のSP値の上限については特に制限されないが、30以下が好ましい。また例えば、SP値は、20.0以下であってもよく、また例えば、18.0以下であってもよい。
前記のSP値については、R.F.Fedorsにより著された「Polymer Engineering and Science」14(2),147(1974)に記載の計算方法によって、算出することができる。具体的には、式(1)に示す計算方法による。
δ :SP値((cal/cm3)1/2)
ΔEvap :各原子団のモル蒸発熱(cal/mol)
V :各原子団のモル体積(cm3/mol)
<アクリル系重合体ブロック(B)>
アクリル系重合体ブロック(B)は、アクリル系単量体を含む単量体を重合することにより得ることができる。アクリル系単量体とは、アクリル酸及びアクリル酸エステル化合物等のアクリロイル基を有する不飽和化合物を指す。アクリル酸エステル化合物しては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル等のアクリル酸アルキルエステル化合物;アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸メチルシクロヘキシル、アクリル酸tert−ブチルシクロヘキシル、アクリル酸シクロドデシル等のアクリル酸の脂肪族環式エステル化合物;アクリル酸メトキシメチル、アクリル酸エトキシメチル、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸エトキシエチル、アクリル酸n−プロポキシエチル、アクリル酸n−ブトキシエチル、アクリル酸メトキシプロピル、アクリル酸エトキシプロピル、アクリル酸n−プロポキシプロピル、アクリル酸n−ブトキシプロピル、アクリル酸メトキシブチル、アクリル酸エトキシブチル、アクリル酸n−プロポキシブチル、アクリル酸n−ブトキシブチル等のアクリル酸アルコキシアルキルエステル化合物等が挙げられる。この他にも、アミド基、アミノ基、カルボキシ基及びヒドロキシ基等の官能基を有するアクリル酸エステル化合物を用いてもよい。
これらの内でも、柔軟性に優れたブロック共重合体が得られる点で炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数2〜8のアルコキシアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル化合物が好ましい。また、耐熱性及び耐油性の観点を加味した場合、前記アクリル系単量体は、炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数2〜3のアルコキシアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル化合物(アクリル酸アルキルエステル化合物A)と炭素数4〜12のアルキル基又は炭素数4〜8のアルコキシアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル化合物(アクリル酸アルキルエステル化合物B)を含むものであることがより好ましい。アクリル酸アルキルエステル化合物Aとアクリル酸アルキルエステル化合物Bの質量比(アクリル酸アルキルエステル化合物A/アクリル酸アルキルエステル化合物B)は、好ましくは10/90〜90/10、より好ましくは40/60〜85/15である。
アクリル系重合体ブロック(B)において、アクリル系単量体に由来する構造単位が占める割合は、アクリル系重合体ブロック(B)の全構造単位中、20質量%以上100質量%以下の範囲であることが好ましく、より好ましくは50質量%以上100質量%以下であり、さらに好ましくは80質量%以上100質量%以下であり、一層好ましくは90質量%以上100質量%以下である。
アクリル系重合体ブロック(B)において、アクリル系単量体に由来する構造単位が前記範囲にある場合は、機械的物性の点で良好なブロック共重合体が得られる傾向にある。
本発明の効果を妨げない限りにおいて、アクリル系重合体ブロック(B)は、前記アクリル系単量体以外の単量体を構成単量体単位として使用することができる。アクリル系単量体以外の単量体としては、アクリロイル基以外の不飽和基を有する単量体を用いることができ、メタクリル酸エステル等のメタクリロイル基含有化合物、並びに、アルキルビニルエステル、アルキルビニルエーテル及びスチレン類等の脂肪族又は芳香族ビニル化合物等が挙げられる。
アクリル系重合体ブロック(B)を構成する重合体のTgは、ブロック共重合体の柔軟性の観点から、好ましくは20℃以下である。また例えば、10℃以下であってもよい。Tgは0℃以下がより好ましく、−10℃以下がさらに好ましい。使用可能な構成単量体単位の制限から、Tgの下限は−80℃である。
また、Tgが−20℃以下の場合には、低温環境下でも柔軟性が確保される点で好ましい。耐寒性を加味した場合、より好ましくは−30℃以下であり、さらに好ましくは−40℃以下である。
また、アクリル系重合体ブロック(B)のSP値が9.9以上である場合、ブロック共重合体の耐油性がより良好なものとなる点で好ましい。SP値は、より好ましくは10.0以上であり、さらに好ましくは10.1以上であり、特に好ましくは10.2以上である。
アクリル系重合体ブロック(B)のSP値の上限については特に制限されないが、20以下が好ましい。
また、重合体ブロック(B)が架橋性官能基を含んでいてもよく、耐油性の高いブロック共重合体を得易い点で好ましい。前記架橋性官能基の導入は、例えば架橋性官能基を有するビニル化合物を共重合することによって導入することができる。架橋性官能基を有するビニル化合物としては、不飽和カルボン酸、不飽和酸無水物、ヒドロキシ基含有ビニル化合物、エポキシ基含有ビニル化合物、1級又は2級アミノ基含有ビニル化合物、反応性ケイ素基含有化合物等が挙げられる。これらの化合物は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
重合体ブロック(B)が架橋性官能基を有する場合、当該架橋性官能基の導入量は、重合体ブロック(B)の全構造単位に基づいて好ましくは0.01モル%以上であり、より好ましくは0.1モル%以上であり、さらに好ましくは0.5モル%以上である。架橋性官能基の導入量が0.01モル%以上であれば、耐油性の高いブロック共重合体を得易くなる。一方、柔軟性の観点から、架橋性官能基導入量の上限は好ましくは20モル%以下であり、より好ましくは10モル%以下であり、さらに好ましくは5モル%以下である。架橋性官能基の導入量は、重合体ブロック(B)の全構造単位に基づいて0.01モル%以上20モル%以下の範囲とすることができ、好ましくは0.1モル%以上10モル%以下の範囲であり、より好ましくは0.5モル%以上5モル%以下の範囲である。
<ブロック共重合体>
本発明におけるブロック共重合体は、前記重合体ブロック(A)及び前記アクリル系重合体ブロック(B)を各々1つ以上有する。ブロック共重合体が、重合体ブロック(A)及び/又はアクリル系重合体ブロック(B)を2以上有する場合、各ブロックの構造は同一であっても異なっていてもよい。また、ブロック共重合体は、本発明の効果を損なわない範囲で、記重合体ブロック(A)及び前記アクリル系重合体ブロック(B)以外の重合体ブロックを有していてもよい。
ブロック共重合体の構造についても特に制限はなく、AB型ジブロックポリマー、又は、ABA型及びABC型トリブロックポリマー等、各種の線状又は分岐状のブロック共重合体を用いることができる。エラストマー材料として良好な性能が得られる点では、A−(BA)n型構造(nは1〜10の整数である)を有するものが好ましい。A−(BA)n型構造とは、重合体ブロック(A)−(アクリル系重合体ブロック(B)−重合体ブロック(A))n型構造であり、nが1の場合、重合体ブロック(A)−アクリル系重合体ブロック(B)−重合体ブロック(A)からなる、ABAトリブロック共重合体である。
ブロック共重合体において、重合体ブロック(A)はハードセグメントとして作用し、アクリル系重合体ブロック(B)はソフトセグメントとして作用する。この結果、本発明におけるブロック共重合体は、破断伸び及び破断強度等の機械的物性に優れた性能を発揮し、エラストマーとして有用な材料となる。
ブロック共重合体における重合体ブロック(A)の割合は、10質量%以上60質量%以下が好ましく、20質量%以上50質量%以下がより好ましい。
ブロック共重合体におけるアクリル系重合体ブロック(B)の割合は、40質量%以上90質量%以下が好ましく、50質量%以上80質量%以下がより好ましい。
本発明の組成物において、前記重合体ブロック(A)のSP値はアクリル系重合体ブロック(B)のSP値よりも大きいことが好ましく、前記重合体ブロック(A)のSP値及びアクリル系重合体ブロック(B)のSP値は、0.1以上の差異を有することが好ましい。SP値が0.1以上異なる場合、ブロック共重合体において両者が適度に相分離するため機械的強度に優れた性能を発揮することが可能となる。前記SP値の差異は、0.3以上であることがより好ましく、0.5以上であることがさらに好ましく、0.8以上であることが一層好ましく、1.0以上であることが特に好ましい。また、製造上の観点等から、SP値の差異は10以下であることが好ましく、5.0以下であることがより好ましい。
また、重合体ブロック(A)が架橋性官能基を有する場合、これを利用して架橋することにより圧縮永久歪の値がより小さいエラストマー材料を得ることができる。前記架橋は重合体ブロック(A)に導入した架橋性官能基同士の反応によるものであってもよいし、後述する通り、当該架橋性官能基と反応可能な官能基を有する架橋剤を添加して行ってもよい。重合体ブロック(A)に導入した架橋性官能基同士の反応による場合、当該架橋性官能基として反応性ケイ素基を用いると、ブロック共重合体を製造する重合反応及びその後の前記架橋反応を効率的に行うことができる。
ブロック共重合体の数平均分子量(Mn)は、10,000以上500,000以下の範囲であることが好ましい。数平均分子量が10,000以上あれば、エラストマー材料として十分な強度を発揮することができる。また、500,000以下であれば、良好な成形性を確保することができる。数平均分子量は、より好ましくは20,000以上400,000以下の範囲であり、さらに好ましくは50,000以上200,000以下の範囲である。
また、ブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)の値を前記数平均分子量(Mn)の値で除して得られる分子量分布(Mw/Mn)は、成形性の点で1.5以下であることが好ましい。より好ましくは1.4以下であり、さらに好ましくは1.3以下であり、一層好ましくは1.2以下である。分子量分布の下限値は1.0である。
<ブロック共重合体の製造方法>
ブロック共重合体は、前記重合体ブロック(A)及び前記アクリル系重合体ブロック(B)を有するブロック共重合体を得る限りにおいて特段の制限を受けるものではなく、公知の製造方法を採用することができる。例えば、リビングラジカル重合及びリビングアニオン重合等の各種制御重合法を利用する方法や、官能基を有する重合体同士をカップリングする方法等を挙げることができる。これらの中でも、操作が簡便であり、広い範囲の単量体に対して適用することができる点でリビングラジカル重合法が好ましい。
リビングラジカル重合は、バッチプロセス、セミバッチプロセス、乾式連続重合プロセス、連続攪拌槽型プロセス(CSTR)等のいずれのプロセスを採用してもよい。また、重合形式は、溶剤を用いないバルク重合、溶剤系の溶液重合、水系の乳化重合、ミニエマルション重合又は懸濁重合等の各種態様に適用することができる。
リビングラジカル重合法の種類についても特段の制限はなく、可逆的付加−開裂連鎖移動重合法(RAFT法)、ニトロキシラジカル法(NMP法)、原子移動ラジカル重合法(ATRP法)、有機テルル化合物を用いる重合法(TERP法)、有機アンチモン化合物を用いる重合法(SBRP法)、有機ビスマス化合物を用いる重合法(BIRP法)及びヨウ素移動重合法等の各種重合方法を採用することができる。これらの内でも、重合の制御性と実施の簡便さの観点から、RAFT法、NMP法及びATRP法が好ましい。
RAFT法では、特定の重合制御剤(RAFT剤)及び一般的なフリーラジカル重合開始剤の存在下、可逆的な連鎖移動反応を介して制御された重合が進行する。RAFT剤としては、ジチオエステル化合物、ザンテート化合物、トリチオカーボネート化合物及びジチオカーバメート化合物等、公知の各種RAFT剤を使用することができる。
RAFT剤は活性点を1箇所のみ有する一官能のものを用いてもよいし、二官能以上のものを用いてもよい。前記A−(BA)n型構造のブロック共重合体を効率的に得やすい点では、二官能型のRAFT剤を用いることが好ましい。
また、RAFT剤の使用量は、用いる単量体及びRAFT剤の種類等により適宜調整される。
RAFT法による重合の際に用いる重合開始剤としては、アゾ化合物、有機過酸化物及び過硫酸塩等の公知のラジカル重合開始剤を使用することができるが、安全上取り扱い易く、ラジカル重合時の副反応が起こりにくい点からアゾ化合物が好ましい。
前記アゾ化合物の具体例としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)等が挙げられる。
前記ラジカル重合開始剤は1種類のみ使用しても又は2種以上を併用してもよい。
ラジカル重合開始剤の使用割合は特に制限されないが、分子量分布がより小さい重合体を得る点から、前記RAFT剤1molに対する前記ラジカル重合開始剤の使用量を0.5mol以下とすることが好ましく、0.2mol以下とするのがより好ましい。また、重合反応を安定的に行う観点から、RAFT剤1molに対するラジカル重合開始剤の使用量の下限は、0.01molである。よって、RAFT剤1molに対するラジカル重合開始剤の使用量は、0.01mol以上0.5mol以下の範囲が好ましく、0.05mol以上0.2mol以下の範囲がより好ましい。
RAFT法による重合反応の際の反応温度は、好ましくは40℃以上100℃以下であり、より好ましくは45℃以上90℃以下であり、さらに好ましくは50℃以上80℃以下である。反応温度が40℃以上であれば、重合反応を円滑に進めることができる。一方、反応温度が100℃以下であれば、副反応が抑制できるとともに、使用できる開始剤や溶剤に関する制限が緩和される。
NMP法では、ニトロキシドを有する特定のアルコキシアミン化合物等をリビングラジカル重合開始剤として用い、これに由来するニトロキシドラジカルを介して重合が進行する。本開示では、用いるニトロキシドラジカルの種類に特に制限はないが、アクリレートを含む単量体を重合する際の重合制御性の観点から、ニトロキシド化合物として一般式(2)で表される化合物を用いることが好ましい。
{式中、R1は炭素数1〜2のアルキル基又は水素原子であり、R2は炭素数1〜2のアルキル基又はニトリル基であり、R3は−(CH2)m−、mは0〜2であり、R4及びR5は炭素数1〜4のアルキル基である}
前記一般式(2)で表されるニトロキシド化合物は、70〜80℃程度の加熱により一次解離し、ビニル系単量体と付加反応を起こす。この際、2以上のビニル基を有するビニル系単量体にニトロキシド化合物を付加することにより多官能性の重合前駆体を得ることが可能である。次いで、前記重合前駆体を加熱下で二次解離することにより、ビニル系単量体をリビング重合することができる。
この場合、重合前駆体は分子内に2以上の活性点を有するため、より分子量分布の狭い重合体を得ることができる。前記A−(BA)n型構造のブロック共重合体を効率的に得やすい観点から、分子内に活性点を2つ有する二官能型の重合前駆体を用いることが好ましい。
また、ニトロキシド化合物の使用量は、用いる単量体及びニトロキシド化合物の種類等により適宜調整される。
ブロック共重合体をNMP法により製造する場合、前記一般式(2)で表されるニトロキシド化合物1molに対し、一般式(3)で表されるニトロキシドラジカルを0.001〜0.2molの範囲で添加して重合を行ってもよい。
{式中、R4及びR5は炭素数1〜4のアルキル基である。}
前記一般式(3)で表されるニトロキシドラジカルを0.001mol以上添加することにより、ニトロキシドラジカルの濃度が定常状態に達する時間が短縮される。これにより、重合をより高度に制御することが可能となり、より分子量分布の狭い重合体を得ることができる。一方、前記ニトロキシドラジカルの添加量が多すぎると重合が進行しない場合がある。前記ニトロキシド化合物1molに対する前記ニトロキシドラジカルのより好ましい添加量は0.01〜0.5molの範囲であり、さらに好ましい添加量は0.05〜0.2molの範囲である。
NMP法における反応温度は、好ましくは50℃以上140℃以下であり、より好ましくは60℃以上130℃以下であり、さらに好ましくは70℃以上120℃以下であり、特に好ましくは80℃以上120℃以下である。反応温度が50℃以上であれば、重合反応を円滑に進めることができる。一方、反応温度が140℃以下であれば、ラジカル連鎖移動等の副反応が抑制される傾向がある。
ATRP法では、一般に有機ハロゲン化物を開始剤とし、触媒に遷移金属錯体を用いて重合反応が行われる。開始剤である有機ハロゲン化物は、一官能性のものを用いてもよいし、二官能以上のものを用いてもよい。前記A−(BA)n型構造のブロック共重合体を効率的に得やすい点では、二官能性の化合物を用いることが好ましい。また、ハロゲンの種類としては臭化物及び塩化物が好ましい。
ATRP法における反応温度は、好ましくは20℃以上200℃以下であり、より好ましくは50℃以上150℃以下である。反応温度20℃以上であれば、重合反応を円滑に進めることができる。
リビングラジカル重合法により、重合体ブロック(A)−アクリル系重合体ブロック(B)−重合体ブロック(A)からなる、ABAトリブロック共重合体等のA−(BA)n型構造体を得る場合、例えば、各ブロックを順次重合することにより目的とするブロック共重合体を得てもよい。この場合、まず、第一重合工程として、スチレン類1質量%以上70質量%以下、及びマレイミド化合物30質量%以上99質量%以下を含む単量体を重合して重合体ブロック(A)を得る。次いで、第二重合工程として、アクリル系単量体を重合してアクリル系重合体ブロック(B)を得る。さらに、第三重合工程として、スチレン類1質量%以上70質量%以下、及びマレイミド化合物30質量%以上99質量%以下を含む単量体を重合することによりABAトリブロック共重合体を得ることができる。この場合、重合開始剤は、前記した一官能性の重合開始剤又は重合前駆体を用いることが好ましい。前記の第二重合工程及び第三重合工程を繰り返すことにより、テトラブロック共重合体等のより高次のブロック共重合体を得ることができる。
また、以下に示す二段階の重合工程を含む方法により製造した場合は、より効率的に目的物が得られることから好ましい。すなわち、第一重合工程として、アクリル系単量体を重合してアクリル系重合体ブロック(B)を得た後、第二重合工程として、アクリル系重合体ブロック(B)の存在下で、スチレン類1質量%以上70質量%以下、及びマレイミド化合物30質量%以上99質量%以下を含む単量体を重合して重合体ブロック(A)を得る。これにより、重合体ブロック(A)−アクリル系重合体ブロック(B)−重合体ブロック(A)からなる、ABAトリブロック共重合体を得ることができる。この場合、重合開始剤は、二官能性の重合開始剤又は重合前駆体を用いることが好ましい。この方法によれば、各ブロックを順次重合して製造する場合に比較して工程を簡略化することができる。また、前記の第一重合工程及び第二重合工程を繰り返すことにより、テトラブロック共重合体等のより高次のブロック共重合体を得ることができる。
ブロック共重合体の重合は、その重合方法によらず、必要に応じて連鎖移動剤の存在下で実施しても良い。
連鎖移動剤は公知のものを使用することができ、具体的には、エタンチオール、1−プロパンチオール、2−プロパンチオール、1−ブタンチオール、2−ブタンチオール、1−ヘキサンチオール、2−ヘキサンチオール、2−メチルヘプタン−2−チオール、2−ブチルブタン−1−チオール、1,1−ジメチル−1−ペンタンチオール、1−オクタンチオール、2−オクタンチオール、1−デカンチオール、3−デカンチオール、1−ウンデカンチオール、1−ドデカンチオール、2−ドデカンチオール、1−トリデカンチオール、1−テトラデカンチオール、3−メチル−3−ウンデカンチオール、5−エチル−5−デカンチオール、tert−テトラデカンチオール、1−ヘキサデカンチオール、1−ヘプタデカンチオール及び1−オクタデカンチオール等の炭素数2〜20のアルキル基を有するアルキルチオール化合物の他、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸、2−メルカプトエタノール等が挙げられ、これらの内の1種又は2種以上を用いることができる。
リビングラジカル重合において公知の重合溶媒を用いることができる。具体的には、ベンゼン、トルエン、キシレン及びアニソール等の芳香族化合物;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル及び酢酸ブチル等のエステル化合物;アセトン及びメチルエチルケトン等のケトン化合物;ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、アルコール、水等が挙げられる。また、重合溶媒を使用せず、塊状重合等の態様で行ってもよい。
前記熱可塑性エラストマーの含有量は、極性樹脂100質量部に対して、50〜2000質量部であり、好ましくは80〜1000質量部、より好ましくは80〜150質量部である。
前記熱可塑性エラストマーの含有量は、本発明の組成物中、好ましくは10〜90質量%、より好ましくは20〜90質量%、さらに好ましくは30〜85質量%である。
本発明の組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、熱可塑性エラストマーとして他のブロック共重合体を含有していてもよいが、前記ブロック共重合体の含有量は、ブロック共重合体の総量中、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。
<架橋剤>
本発明の組成物は、耐熱性の観点から、さらに、架橋剤を含有することが好ましい。また、ブロック共重合体が重合体ブロック(A)及びアクリル系重合体ブロック(B)の少なくともいずれかに架橋性官能基を含む場合、当該官能基と反応可能な架橋剤を含有することが好ましい。
ブロック共重合体が重合体ブロック(A)及びアクリル系重合体ブロック(B)のいずれにも架橋性官能基を含んでいない場合、架橋剤は、エポキシド、カルボジイミド、オキサゾリン、イソシアネート、アミン、及びシランからなる群より選ばれた少なくとも1種の反応性化合物であり、1分子中に反応性基を2個以上有する化合物が好ましく、ポリカルボジイミド化合物がより好ましい。
ポリカルボジイミド化合物は、例えば、モノイソシアネート又はポリイソシアネートを原料とし、有機リン系化合物又は有機金属化合物存在下にて、約70℃以上の温度で、無溶媒又は不活性溶媒中で脱炭酸縮合反応を行うことより、得られる。
ポリカルボジイミド化合物には、式(A):
(式中、nは2以上、好ましくは2〜15の整数である)
において、Rが脂肪族基である脂肪族ポリカルボジイミドと、Rに芳香族基を有する基である芳香族ポリカルボジイミドとがあり、本発明においては、芳香族ポリカルボジイミドよりも反応性が高い脂肪族ポリカルボジイミドが好ましく、また脂肪族基は分枝状よりも線状の方が好ましい。
一般的に入手可能な市販の脂肪族ポリカルボジイミドとしては、カルボジライトLA−1(ポリ(4,4’−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)、数平均分子量2,000、カルボジイミド当量247g/モル)、カルボジライトHMV−8CA(数平均分子量約3,000、カルボジイミド当量278g/モル)、イソシアネート基を含まないカルボジライトHMV−15CA(カルボジイミド当量262g/モル)(以上、日清紡ケミカル(株)製)等が挙げられる。また、芳香族ポリカルボジイミドの市販品としては、スタバクゾールP(ポリ(1,3,5−トリイソプロピルベンゼン)ポリカルボジイミド、数平均分子量3,500)や、スタバクゾールP−400(ポリ(1,3,5−トリイソプロピルベンゼン)ポリカルボジイミド、数平均分子量約20,000)、スタバクゾールI(N,N’−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド、数平均分子量450)(以上、ラインケミー(株)製)等が挙げられる。
ポリカルボジイミド化合物は、揮発性の観点から高分子量であることが好ましく、ポリカルボジイミドの重量平均分子量は、好ましくは200以上、より好ましくは400以上、さらに好ましくは500〜10,000である。
ブロック共重合体が、カルボキシル基を有する架橋性単量体に由来する構造単位を含む場合、架橋剤としては、多価アミン、多官能イソシアネート等が好ましく用いられる。
多価アミンは、ヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンカーバメート、N,N′−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサンジアミン等の脂肪族ジアミン化合物;4,4′−メチレンビスシクロヘキシルアミンカーバメート等の脂環式ジアミン化合物;4,4′−メチレンジアニリン、m−フェニレンジアミン、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、4,4′−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、4,4′−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、2,2′−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、4,4′−ジアミノベンズアニリド、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、1,3,5−ベンゼントリアミン、1,3,5−ベンゼントリアミノメチル等の芳香族ジアミン化合物等が挙げられる。
多官能イソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジメチルジフェニレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等が挙げられる。
多価アミンを用いる場合、1,3−ジ−o−トリルグアニジン、1,3−ジフェニルグアニジン等のグアニジン化合物;2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール等のイミダゾール化合物;リン酸、炭酸、重炭酸、ステアリン酸、ラウリル酸等の酸のアルカリ金属塩(Li、Na、K)等の、弱酸の塩;トリエチレンジアミン、1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]ウンデセン−7等の第3級アミン;トリフェニルホスフィン、トリ(メチル)フェニルホスフィン等の第3級ホスフィン化合物;テトラブチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムクロライド、オクタデシルトリn−ブチルアンモニウムブロマイド等の第4級オニウム塩等の架橋助剤を併用することが好ましい。
ブロック共重合体が、エポキシ基を有する架橋性単量体に由来する構造単位を含む場合、架橋剤としては、有機カルボン酸アンモニウム塩、ジチオカルバミン酸塩、多価カルボン酸又は無水物と、第4級アンモニウム塩又はホスホニウム塩との組合せ等が好ましく用いられる。
有機カルボン酸アンモニウム塩としては、安息香酸アンモニウム等が挙げられる。
ジチオカルバミン酸塩としては、ジメチルジチオカルバミン酸、ジエチルジチオカルバミン酸、ジベンジルジチオカルバミン酸等の亜鉛塩、鉄塩、テルル塩等が挙げられる。
多価カルボン酸としては、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、マレイン酸、クエン酸、酒石酸、フタル酸等が挙げられる。第4級アンモニウム塩としては、テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、n−ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、オクタデシルトリメチルアンンモニウムブロマイド等が挙げられる。また、ホスホニウム塩としては、トリフェニルベンジルホスホニウムクロライド、トリフェニルベンジルホスホニウムブロマイド、トリフェニルベンジルホスホニウムアイオダイド、トリエチルベンジルホスホニウムクロライド、テトラブチルホスホニウムブロマイド等が挙げられる。
ブロック共重合体が、ヒドロキシル基を有する架橋性単量体に由来する構造単位を含む場合、架橋剤としては、多官能イソシアネート等が好ましく用いられる。
ブロック共重合体が、1級又は2級アミノ基有する架橋性単量体に由来する構造単位を含む場合、架橋剤としては、多官能イソシアネート及び多官能グリシジル化合物等が好ましく用いられる。
ブロック共重合体が、重合性不飽和基を含む場合、1,2−エタンジチオール、1,4−ブタンチオール、1,10−デカンチオール、1,4−ベンゼンチオール等のジチオール化合物、又はエタン−1,1,1−トリチオール、1,3,5−ベンゼントリチオール等のトリチオール化合物等の多価チオールとのエン・チオール反応を利用することができる。
ブロック共重合体の架橋性基が反応性ケイ素基である場合、湿気により架橋反応を生じるため、架橋剤等を添加する必要はない。
架橋剤の含有量は、極性樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1〜20質量部、より好ましくは0.5〜10質量部、さらに好ましくは1〜5質量部である。
本発明の組成物中の架橋剤の含有量は、好ましくは0.05〜10質量%、より好ましくは0.1〜5質量%である。
<可塑剤>
本発明の組成物は、さらに、柔軟性の観点から、可塑剤を含有することが好ましい。本発明における可塑剤としては、ゴム組成物として通常知られている可塑剤として知られているもののうち、重合体ブロック(A)よりもアクリル系重合体ブロック(B)に近いSP値を有するものが好ましく選択され、これにより、可塑剤による効果がより顕著に発揮される。即ち、可塑剤のSP値が重合体ブロック(A)に近いと、可塑剤が、共重合体ブロックのソフトセグメントであるアクリル系重合体ブロック(B)よりもハードセグメントである重合体ブロック(A)に入り込みやすくなるため、共重合体分子間の重合体ブロック(A)の凝集による疑似架橋を妨げることになり、強度や耐熱性を低下させる要因になり得る。一方、可塑剤のSP値が小さすぎると、ほとんど極性のない分子構造となる場合が多く、少なくともアクリロイル基を有し極性のあるアクリル系重合体ブロック(B)に保持されにくく、柔軟化の効果が顕れにくいばかりか、ブリードアウトしやすいために好ましくない。
前記観点から、可塑剤のSP値の上限値は、重合体ブロック(A)のSP値とアクリル系重合体ブロック(B)のSP値の平均値以下(重合体ブロック(A)のSP値をSPA、アクリル系重合体ブロック(B)のSP値をSPBとすると、(SPA+SPB)/2以下)が好ましく、より好ましくはSPA>SPBであって、かつアクリル系重合体ブロック(B)のSP値以下であり、下限値は、好ましくは8.0以上、より好ましくは8.1以上、さらに好ましくは8.2以上である。可塑剤のSP値は、R.F.Fedorsにより著された「Polymer Engineering and Science」14(2),147(1974)に記載の計算方法によって、重合体ブロック(A)及びアクリル系重合体ブロック(B)のSP値と同様に算出することができる。
ブロック共重合体が、複数の重合体ブロック(A)及び/又は複数のアクリル系重合体ブロック(B)を有する場合や複数のブロック共重合体が併用されている場合は、各々のブロックのSP値の質量基準の加重平均として算出されるSP値を基に、用いることのできる可塑剤のSP値を決めることができ、可塑剤が複数の可塑剤の混合物であるときは、各々の可塑剤のSP値の質量基準の加重平均値を本発明の組成物における可塑剤のSP値とする。
本発明における可塑剤は、SP値が前記範囲のものであれば特に限定されないが、例えば、ポリエステル系可塑剤、ポリエーテルエステル系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤、グリセリン系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤、エポキシ系可塑剤、ポリアクリル酸エステル系可塑剤等が挙げられ、可塑剤は単独であっても2種以上を併用していてもよい。
ポリエステル系可塑剤としては、アジピン酸、セバチン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸等の酸成分と、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール等のジオール成分からなるポリエステルや、ポリカプロラクトン等のヒドロキシカルボン酸からなるポリエステル等が挙げられる。これらのポリエステルは単官能カルボン酸又は単官能アルコールで末端封鎖されていてもよく、またエポキシ化合物等で末端封鎖されていてもよい。市販品としては、例えば、(株)ADEKA製のアデカサイザーPN−150、PN−170、P−200、PN−350等が該当する。
ポリエーテルエステル系可塑剤としては、ポリアルキレングリコールの有機酸エステルが好ましく、エーテル結合を含むことによって本発明で用いるブロック共重合体のソフトセグメントとの相溶性が向上する。ポリアルキレングリコールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリ(エチレンオキサイド・プロピレンオキサイド)ブロック及び/又はランダム共重合体、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられ、ポリエーテル鎖中にビスフェノール類等の芳香族ユニットが含まれていてもよい。有機酸としては、ブタン酸、イソブタン酸、2−エチルブチル酸、2−エチルヘキシル酸、デカン酸等のモノカルボン酸等が挙げられる。市販品としては、例えば、(株)ADEKA製のアデカサイザーRS−1000、RS−735、RS−700等が該当する。
多価カルボン酸エステル系可塑剤としては、脂肪族ジカルボン酸エステル、芳香族ジカルボン酸エステル、トリメリット酸エステル、アセチルクエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリブチル等のクエン酸エステル等が挙げられる。
脂肪族ジカルボン酸エステルとしては、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ジ−n−オクチル−、アジピン酸ジ−n−デシル等のアジピン酸エステル;アゼライン酸ジ−2−エチルヘキシル等のアゼライン酸エステル;セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル等のセバシン酸エステル等が挙げられる。
芳香族ジカルボン酸エステルとしては、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジベンジル、フタル酸ブチルベンジル等のフタル酸エステル等が挙げられる。
トリメリット酸エステルとしては、トリメリット酸トリメチル、トリメリット酸トリエチル、トリメリット酸トリプロピル、トリメリット酸トリブチル、トリメリット酸トリアミル、トリメリット酸トリヘキシル、トリメリット酸トリヘプチル、トリメリット酸トリ−n−オクチル、トリメリット酸トリ−2−エチルヘキシル、トリメリット酸トリノニル、トリメリット酸トリイソノニル、トリメリット酸トリス(デシル)、トリメリット酸トリス(ドデシル)、トリメリット酸トリス(テトラデシル)、トリメリット酸トリス(C8〜C12混合アルキル)、トリメリット酸トリス(C7〜C9混合アルキル)、トリメリット酸トリラウリル等が挙げられる。市販品としては、例えば、旭電化工業社製のアデカサイザーC−8、C−880、C−79、C810、C−9N、C−10等が該当する。
多価カルボン酸エステル系可塑剤のなかで、エーテル結合を有するものは、エーテル結合を含むことによって本発明で用いるブロック共重合体のソフトセグメントとの相溶性が向上するため好ましく、エーテルであってもポリアルキレンオキサイド構造を含まない方が柔軟性や耐熱性の点で好ましい。このようなものの市販品としては、例えば、(株)ADEKA製のアデカサイザーRS−107(アジピン酸ジブトキシエトキシエチル)等が該当し、アジピン酸エーテルエステル系と称される。
グリセリン系可塑剤としては、グリセリンモノアセトモノラウレート、グリセリンジアセトモノラウレート、グリセリンモノアセトモノステアレート、グリセリンジアセトモノオレート、グリセリンモノアセトモノモンタネート等が挙げられる。
リン酸エステル系可塑剤としては、リン酸トリブチル、リン酸トリ−2−エチルヘキシル、リン酸トリオクチル、リン酸トリフェニル、リン酸ジフェニル−2−エチルヘキシル、リン酸トリクレシル等が挙げられる。
エポキシ系可塑剤とは、一般にはエポキシステアリン酸アルキルと大豆油とからなるエポキシトリグリセリド等を指すが、その他にも、主にビスフェノールAとエピクロロヒドリンを原料とするような、いわゆるエポキシ樹脂も使用することができる。
ポリアクリル酸エステル系可塑剤としては、アクリル酸アルキルエステルの重合体が一般的であるが、エポキシ基やカルボキシル基等の官能基を有していてもよい。市販品としては、例えば、東亞合成(株)製のアルフォンシリーズ等、特には無官能のUPシリーズが該当する。
その他の可塑剤の具体例としては、ネオペンチルグリコールジベンゾエート、ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチレート等の脂肪族ポリオールの安息香酸エステル、ステアリン酸アミド等の脂肪酸アミド、オレイン酸ブチル等の脂肪族カルボン酸エステル、アセチルリシノール酸メチル、アセチルリシノール酸ブチル等のオキシ酸エステル、ペンタエリスリトール、各種ソルビトール、ポリアクリル酸エステル、シリコーンオイル、パラフィン類等が挙げられる。
本発明における前記可塑剤の分子量は、耐熱性があって、なおかつ可塑剤としての効果が高い観点から、400〜10,000が好ましく、より好ましくは500〜2,000である。可塑剤が高分子量化合物の場合は、重量平均分子量がこれらの範囲内であることが好ましい。
前記可塑剤の含有量は、熱可塑性エラストマー100質量部に対して、好ましくは1〜100質量部、より好ましくは5〜70質量部、さらに好ましくは10〜50質量部である。
本発明の組成物中の前記可塑剤の含有量は、好ましくは1〜35質量%、より好ましくは3〜30質量%である。
本発明の組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、他の可塑剤を含有していてもよいが、前記可塑剤の含有量は、可塑剤の総量中、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。
<エラストマー組成物>
本発明の組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、他の熱可塑性樹脂や熱可塑性エラストマーを含有していてもよい。なかでも極性エラストマーは、組成物の極性樹脂への融着性を向上させることができる。極性エラストマーとしては、特に制限されないが、例えばNBR(ニトリルゴム)、ポリウレタンゴム、エピクロルヒドリンゴム、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、アクリル系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
本発明の組成物は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂、カーボンブラック、シリカ、炭素繊維、ガラス繊維等の補強剤、無機充填剤、絶縁性熱伝導性フィラー、顔料、水和金属化合物、赤燐、ポリリン酸アンモニウム、アンチモン、シリコーン等の難燃剤、帯電防止剤、粘着付与剤、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、ブロッキング防止剤、シール性改良剤、離型剤、着色剤、香料等の各種添加剤を含有していてもよい。
本発明の組成物は、例えば、熱可塑性エラストマー及び極性樹脂、さらに必要に応じて、可塑剤、架橋剤、その他添加剤等を含む原料を混合し、冷却により固化させて得られる。
本発明でいう「混合」とは、各種成分が良好に混合される方法であれば特に限定されず、各種成分を溶解可能な有機溶媒中に溶解させて混合してもよいし、溶融混練によって混合してもよい。
溶融混合する場合には、ニーダーや一般的な溶融押出機を用いることができ、混練状態の向上のため、単軸の押出機を使用することが好ましい。押出機への供給は、各種成分を直接押出機に供給しても良く、予めヘンシェルミキサー等の混合装置を用いて各種成分を混合したものを一つのホッパーから供してもよいし、二つのホッパーにそれぞれの成分を仕込みホッパー下のスクリュー等で定量しながら供してもよい。
熱可塑性エラストマー組成物は、溶融混合して得たものを直接成形体に成形して利用する他に、用途に応じて、最終製品として利用される成形体にする前に、いったんペレット、粉体、シート等の中間製品とすることができる。例えば、押出機によって溶融混合してストランドに押出し、冷水中で冷却しつつカッターによって円柱状や米粒状等のペレットに切断される。得られたペレットは、通常、射出成形、押出成形、プレス成形等の成形方法によって所定のシート状成形品や金型成形品とすることができる。
本発明の組成物の23℃での貯蔵弾性率は、柔軟性の観点から、4×108Pa以下であり、好ましくは1×105〜2×108Pa、より好ましくは1×106〜1×108Paである。本発明において、貯蔵弾性率は、10Hz動的粘弾性測定によるものである。
本発明の組成物の150℃での貯蔵弾性率は、耐熱性の観点から、好ましくは1×106Pa以上、より好ましくは1×106〜1×109Pa、さらに好ましくは1.5×106〜5×108Paである。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物を、常法に従って、適宜加熱成形することにより、成形体が得られる。本発明の熱可塑性エラストマー組成物を加熱成形して得られる成形体の用途は、特に限定されるものではなく一般的なスチレン系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、アクリル系エラストマーやポリエステル系エラストマー等が用いられる分野に用いることができる。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物を用いた成形体の製造に用いられる装置は、成形材料を溶融できる任意の成形機を用いることができる。例えば、ニーダー、押出成形機、射出成形機、プレス成形機、ブロー成形機、ミキシングロール等が挙げられる。
以下に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。実施例及び比較例で使用した原料の各種物性は、以下の方法により測定した。
<極性樹脂>
〔固有粘度〕
JIS K7367−5に規定する方法に準拠し、極性樹脂がPET(ポリエチレンテレフタレート)の場合はフェノール/1,2−ジクロロベンゼンの50/50(質量比)溶液で、PBT(ポリブチレンテレフタレート)の場合はフェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタンの50/50(質量比)溶液で、ポリアミド樹脂の場合は98%濃硫酸溶液で測定する。それ以外の極性樹脂についてはm−クレゾールに溶解して、ウベローデ粘度計にて粘度を測定する。
<ブロック共重合体>
〔組成比〕
ブロック共重合体の組成比は、試料を重クロロホルムに溶解し、1H−NMR測定より同定・算出する。
〔ガラス転移温度(Tg)〕
ブロック共重合体のガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量計を用いて得られた熱流束曲線のベースラインと変曲点での接線の交点から決定する。熱流束曲線は試料約10mgを−50℃まで冷却し、5分間保持した後、10℃/minで300℃まで昇温し、引き続き−50℃まで冷却し、5分間保持した後、10℃/minで350℃まで昇温する条件で得る。
測定機器:エスアイアイ・ナノテクノロジー社製DSC6220
測定雰囲気:窒素雰囲気下
尚、ブロック共重合体の示差走査熱量測定を行うことにより、重合体ブロック(A)及びアクリル系重合体ブロック(B)に対応する変曲点が得られ、これらから各重合体ブロックのTgを求めることができる。
〔分子量測定〕
以下に記載の条件にてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定を行い、ポリスチレン換算による数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)を得る。また、得られた値から分子量分布(Mw/Mn)を算出する。
○測定条件
カラム:東ソー製TSKgel SuperMultiporeHZ−M×4本
溶媒:テトラヒドロフラン
温度:40℃
検出器:RI
流速:600μL/min
<架橋剤>
〔重量平均分子量(Mw)〕
以下に記載の条件にてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定を行い、ポリスチレン換算による重量平均分子量(Mw)を得る。
○測定条件
カラム:東ソー製TSKgel SuperMultiporeHZ−M×4本
溶媒:テトラヒドロフラン
温度:40℃
検出器:RI
流速:600μL/min
<可塑剤>
〔重量平均分子量(Mw)〕
以下に記載の条件にてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定を行い、ポリスチレン換算による重量平均分子量(Mw)を得る。
○測定条件
カラム:東ソー製TSKgel SuperMultiporeHZ−M×4本
溶媒:テトラヒドロフラン
温度:40℃
検出器:RI
流速:600μL/min
RAFT剤の合成例1
ナス型フラスコに1−ドデカンチオール(42.2g)、20%KOH水溶液(63.8g)、トリオクチルメチルアンモニウムクロリド(1.5g)を加えて氷浴で冷却し、二硫化炭素(15.9g)、テトラヒドロフラン(以下「THF」ともいう)(38ml)を加え20分攪拌した。α、α’−ジクロロ−p−キシレン(16.6g)のTHF溶液(170ml)を30分かけて滴下した。室温で1時間反応させた後、クロロホルムから抽出し、純水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥、ロータリーエバポレータで濃縮した。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィーで精製した後、酢酸エチルから再結晶することにより、以下の式(4)で表される1,4−ビス(n−ドデシルスルファニルチオカルボニルスルファニルメチル)ベンゼン(以下「DLBTTC」ともいう)を収率80%で得た。1H−NMR測定より7.2ppm、4.6ppm、3.4ppmに目的物のピークを確認した。
アクリル系重合体ブロック(B)の製造例1
攪拌機及び温度計を装着した1L容のフラスコに合成例1で得られたRAFT剤(DLBTTC)(4.28g)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(以下「ABN−E」ともいう)(0.25g)、アクリル酸エチル(651g)及びアニソール(287g)を仕込み、窒素バブリングで十分脱気し、60℃の恒温槽で重合を開始した。3時間30分後、室温まで冷却し反応を停止した。前記重合溶液を、ヘキサンから再沈殿精製、真空乾燥することで重合体B1を得た。得られた重合体B1の分子量はGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定(ポリスチレン換算)より、Mn69200、Mw75500、Mw/Mn1.09であった。
アクリル系重合体ブロック(B)の製造例2
アクリル酸エチルに加え、アクリル酸n−ブチル、及びアクリル酸2−メトキシエチルを用い、表1に記載の通り仕込み量を変更するとともに、反応時間を適宜調整した以外は製造例1と同様の操作を行い、重合体B2を得た。重合体B2の分子量を測定し、表1に示した。また、1H−NMR測定から重合体中のアクリル酸エチルとアクリル酸n−ブチルとアクリル酸2−メトキシエチルの組成比を決定したところ、アクリル酸エチル/アクリル酸n−ブチル/アクリル酸2−メトキシエチル(質量比)=49/25/26であった。
ブロック共重合体の製造例1
攪拌機、温度計を装着した1Lフラスコに製造例1で得られた重合体B1(87.0g)、ABN−E(0.10g)、N−フェニルマレイミド(28.8g)、スチレン(32.2g)及びアニソール(342g)を仕込み、窒素バブリングで十分脱気し、60℃の恒温槽で重合を開始した。3時間後、室温まで冷却し反応を停止した。前記重合溶液を、メタノールから再沈殿精製、真空乾燥することで、表3に示すブロック共重合体1を得た。得られたブロック共重合体1の分子量を測定した結果、Mn99,000、Mw111,000、Mw/Mnは1.12であった。
ブロック共重合体1は重合体ブロック(A)−アクリル系重合体ブロック(B)−重合体ブロック(A)の構造を有するトリブロック共重合体である。1H−NMR測定から重合体ブロック(A)中のN−フェニルマレイミドとスチレンの組成比を決定したところ、N−フェニルマレイミド/スチレン(質量比)=51/49であり、重合体ブロック(A)とアクリル系重合体ブロック(B)の組成比は(A)/(B)(質量比)=30/70であった。ブロック共重合体1についてエラストマーとしての評価を行い、結果を表3に示した。
ブロック共重合体の製造例2
フラスコに仕込む原料の種類及び仕込み量を表2に記載の通り変更するとともに、反応時間を適宜調整した以外は製造例1と同様の操作を行い、ブロック共重合体2〜4を得た。各ブロック共重合体の分子量、並びに、1H−NMR測定による重合体ブロック(A)の組成比、及びブロック共重合体における重合体ブロック(A)とアクリル系重合体ブロック(B)の組成比について表3に記載した。
なお、重合体ブロック(A)とアクリル系重合体ブロック(B)のSP値を、1H−NMR測定による重合体ブロック(A)の組成比及びアクリル系重合体ブロック(B)の組成比を用いて、既述の計算式(式(1))から算出して、表3に記載した。また、ブロック共重合体1〜4の示差走査熱量測定に基づいて、重合体ブロック(A)及びアクリル系重合体ブロック(B)のTgを求め、表3に記載した。
実施例1〜11及び比較例1〜5
表4、5に示す配合(質量比)で原料成分をミキサーに投入し、ドライブレンドした。
ブロック共重合体1〜4以外の原料成分の詳細は以下の通り。
〔極性樹脂〕
PBT:トレコン1401 X04(東レ(株)製)、ポリブチレンテレフタレート、固有粘度:0.85dl/g
PA6:ノバミッド1010C2(DSM社製)、ポリアミド6、固有粘度:2.5dl/g、粘度数:118ml/g
〔架橋剤〕
ケミノックスAC−6:ユニマテックス社製、ヘキサメチレンジアミンカーバメート
カルボジライトHMV−15CA:日清紡ケミカル(株)製、カルボジイミド基当量:278、Mw:3,000
〔可塑剤〕
ARUFON UP1061:東亞合成(株)製、ポリアクリル酸エステル、SP値:9.8、Mw:1,600
アデカサイザーRS−107:(株)ADEKA製、アジピン酸ジブトキシエトキシエチル、SP値:9.2、Mw:434
〔酸化防止剤〕
イルガノックスB225:BASF社製
その後、得られた混合物を下記の条件で押出機(連続式混練機)で溶融混練して、熱可塑性組成物のペレットを製造した。
〔溶融混練条件〕
押出機:KZW32TW−60MG−NH((株)テクノベル製)
シリンダー温度:180〜260℃
スクリュー回転数:200〜650r/min
以下の方法により、得られた熱可塑性エラストマー組成物の柔軟性、耐熱性、機械的特性、及び成形性を評価した。結果を表4、5に示す。
〔柔軟性及び耐熱性〕
TAインスツルメント社製ARES G−2に、熱プレスで成形した厚さ2mm、幅12mmの試験片をセットし、長さ25mm間でのトーションモード(ねじり)で、昇温速度5℃/minで−60℃〜200℃まで10Hzにて粘弾性を測定し、23℃及び150℃における貯蔵弾性率G’を測定した。23℃での貯蔵弾性率G’が小さいほど、柔軟性が良好であり、150℃における貯蔵弾性率G’が大きいほど、耐熱性が良好である。
〔機械的特性〕
JIS K 6251に準じた方法により、引張強さと破壊点伸び率を測定した。試験片はダンベル3号形を使用し、試験室温度23℃、引張速度500mm/minで、試験片を切断するまで引っ張ったときに記録される最大の引張力を試験片の初期断面積で除した値を引張強さ、試験片が切断したときの伸びを、初期に対する比率(%)で表したものを破壊点伸び率とした。
〔成形性〕
ASTM D1238に準拠した方法により、230℃で、公称荷重98Nの条件でメルトマスフローレイト(MFR)を測定した。表中、「>50」はMFRが50g/10minを超え、射出成形に応用できる良好な溶融流動性を有することを示す。
以上の結果より、実施例1〜11の熱可塑性エラストマー組成物は、比較例1〜5と対比して、柔軟性、耐熱性、機械的特性、及び成形性のバランスが良好であることが分かる。これに対し、熱可塑性エラストマーのみの比較例1、2では耐熱性が不十分であり、極性樹脂のみの比較例3、4では柔軟性と機械的特性に欠けていることが分かる。
さらに、実施例3と実施例6の熱可塑性エラストマー組成物について、圧縮永久歪とA硬度を以下の方法により測定した。結果を表6に示す。
<圧縮永久歪の測定>
前記初期引張物性における試料作製手順に準じて厚さ2mmのフィルム試料を作製し、直径29mmの円盤状に切断したものを7枚重ねて作製した円盤状成形体を200℃で熱プレスして厚さを12.5mm±0.5mmに調整したものを試験片として用い、JIS K 6262に規定される圧縮永久歪試験によって測定した。
具体的には、標準温度(23.2±2℃)において、試験片の直径及び厚さがそれぞれ、29.0±0.5mm(直径)、12.5mm±0.5mm(厚さ)であることを確認し、厚さ9.3〜9.4mmのスペーサを備えた圧縮板に試験片を挟んだ。試験片を圧縮する割合が25体積%となる条件で、70℃で24時間保持した後、23℃で圧縮板を外して30分間放置した後の試験片中央部の厚さを測定した。
測定結果を下記の圧縮永久歪算出式にあてはめて、圧縮永久歪(%)の数値を算出した。
圧縮永久歪(%)=(t0−t2)/(t0−t1)×100
(式中、t0は試験片の元の厚さ(mm)、t1はスペーサの厚さ(mm)、t2は圧縮装置から取り外してから30分後の試験片の厚さ(mm)を示す)
圧縮解放後、試験片が完全に圧縮前の寸法形状に戻ったときの圧縮永久歪の値は0%であり、圧縮から開放しても圧縮されたままの形状で寸法形状が元に戻らない場合の圧縮永久歪の値は100%であるから、圧縮永久歪の値は0%から100%の間で小さいほど回復が優れていることを意味する。
<A硬度>
前記圧縮永久歪と同様の手順で作製した厚さ2mmのフィルムを恒温恒湿室(温度23℃、相対湿度50%)に24時間以上静置し、状態を安定させた後、シートを3枚重ね、JIS K 7215「プラスチックのデュロメータ硬さ試験法」に準じてA硬度を測定した。
以上の結果から、一般的には、硬くなるほど圧縮永久歪は小さくなる傾向があるのに対し、ブロック共重合体が架橋されている場合には、硬さはほぼ同等であるにもかかわらず、圧縮永久歪が大幅に向上していることが分かる。