以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において「(メタ)アクリル」とは、アクリル又はメタクリルを意味し、例えば「(メタ)アクリル酸」はメタクリル酸又はアクリル酸の意味である。同様に、「(メタ)アクリロイル」とは「アクリロイル」又は「メタクリロイル」を意味し、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート」又は「メタクリレート」を意味する。
本発明における歯科材料用重合性モノマー(A)は、以下の一般式(1)で表すことができるウレタンメタクリレートである。
上記一般式(1)中、Raは二価の芳香族炭化水素基又は二価の橋かけ構造を有してもよい環式炭化水素基であり、R1及びR2は水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基であり、R3、R4、R5及びR6は水素原子又は炭化水素基であり、R7及びR8は水素原子又はメチル基であり、m及びnはそれぞれ独立に0〜4であり、Rb及びRcは、それぞれ独立に、水素原子が炭素数1〜3のアルキル基又は(メタ)アクリロイルオキシメチレン基で置換されていてもよい、炭素数2〜6の直鎖アルキレン基又は炭素数2〜6の直鎖オキシアルキレン基を示す。
上記一般式(1)中のRaに含まれる二価の芳香族炭化水素基、及び二価の橋かけ構造を有してもよい環式炭化水素基の炭素数には制限はないが、好ましくは6〜9である。
以下、本発明の態様についてさらに具体的に説明する。
[歯科材料用重合性モノマー(Aa)]
本発明の第1態様は、上記一般式(1)において、R1及びR2がメチル基であり、Raが二価の炭素数6〜9の橋かけ構造を有している環式炭化水素基であり、かつm及びnが1である歯科材料用重合性モノマー(Aa)に関する。以下、詳細に説明する。
歯科材料用重合性モノマー(Aa)の中でも、工業生産性の観点などからは、R7及びR8は、いずれも水素原子であることが好ましい一態様である。
また、疎水性の観点などからは、R7及びR8は、いずれか一方がメチル基であることが好ましい一態様であり、いずれもメチル基であることがより好ましい一態様である。
上記歯科材料用重合性モノマー(Aa)としては、上記一般式(1)において、R7及びR8が水素原子である下記一般式(1a)で表すことができるウレタンメタクリレートが好ましい一態様である。
上記一般式(1a)中のRa、R3、R4、R5、R6、Rb、及びRcの定義は、一般式(1)における定義と同一である。
歯科材料用重合性モノマー(Aa)として用いる場合、上記一般式(1)及び(1a)中のRaに含まれる二価の橋かけ構造を有している環式炭化水素基の炭素数は、適度な剛直性を有する観点より6〜9であり、好ましくは6〜7である。橋かけ構造を有している環式炭化水素基としては、具体的には、ビシクロ[2.2.1]ヘプチレン基が挙げられる。かかる場合、一般式(1)及び(1a)において、Ra中の炭化水素環に対する、Raに隣接する炭素原子の二カ所の結合位置の位置関係は限定されない。本発明の第1態様の効果を奏する上では、これら二カ所の結合位置の位置関係は、上記炭化水素環の同一の炭素原子上でないことが好ましく、隣接した炭素上にないことがより好ましい。これらの位置異性体は、単独で使用されることもあるし、2種以上の混合物として使用されることもある。
歯科材料用重合性モノマー(Aa)として用いる場合、上記一般式(1)及び上記一般式(1a)中のR3、R4、R5、及びR6は水素原子又は炭化水素基である。適度な剛直性を有する観点よりR3、R4、R5、及びR6はメチル基もしくは水素原子であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
歯科材料用重合性モノマー(Aa)として用いる場合、上記一般式(1)及び上記一般式(1a)中の二つのカルバモイル基に挟まれる下記一般式(3a)にあたる部分の好ましい一態様は、以下の一般式(2a)である。
歯科材料用重合性モノマー(Aa)として用いる場合、上記一般式(1)及び(1a)中、Rb及びRcは、歯科材料用重合性モノマー(Aa)に適度な柔軟性を持たせる観点より、それぞれ独立に、水素原子が炭素数1〜3のアルキル基又は(メタ)アクリロイルオキシメチレン基で置換されていてもよい炭素数2〜6の直鎖アルキレン基、又は炭素数2〜6の直鎖オキシアルキレン基を示す。上記Rb及びRcとしては、水素原子が炭素数1〜3のアルキル基で置換されていてもよい、炭素数2〜6の直鎖アルキレン基又は炭素数2〜6の直鎖オキシアルキレン基が好ましい。
歯科材料用重合性モノマー(Aa)としては、一般式(1)で示される化合物のうち、R7及びR8が水素原子であり、Rb及びRcは、それぞれ独立に、水素原子が炭素数1〜3のアルキル基で置換されていてもよい、炭素数2〜6の直鎖アルキレン基又は炭素数2〜6の直鎖オキシアルキレン基である化合物が好ましい一態様である。
上記一般式(1)及び(1a)のRb及びRcのさらに好ましい一態様は、水素原子が炭素数1〜3のアルキル基で置換されていてもよい、炭素数2〜4の直鎖アルキレン基又は炭素数2〜4の直鎖オキシアルキレン基である。
上記直鎖アルキレン基としては、例えば、−CH2CH2−、−CH2CH2CH2−、−CH2CH2CH2CH2−、−CH2CH2CH2CH2CH2−、及び−CH2CH2CH2CH2CH2CH2−などが挙げられる。これら直鎖アルキレン基の好ましい一態様は、例えば、−CH2CH2−、−CH2CH2CH2−、−CH2CH2CH2CH2−等である。上記直鎖オキシアルキレン基としては、例えば、−CH2CH2OCH2CH2−、及び−CH2CH2OCH2CH2OCH2CH2−などが挙げられる。上記直鎖オキシアルキレン基の好ましい一態様は、例えば、−CH2CH2OCH2CH2−等である。上記直鎖アルキレン基又は直鎖オキシアルキレン基の炭素数としては、歯科材料用重合性モノマー(Aa)に適度な柔軟性を持たせる観点から、炭素数は2〜6であり、好ましくは2〜4、より好ましくは2である。
上記直鎖アルキレン基又は直鎖オキシアルキレン基では、その水素原子が下記アルキル基又は(メタ)アクリロイルオキシメチレン基で置換されていてもよい。その置換基の数は、直鎖アルキレン基又は直鎖オキシアルキレン基1つあたり、0〜4が好ましく、0〜2がより好ましく、0〜1がさらに好ましい。また置換基が0すなわち直鎖アルキレン基又は直鎖オキシアルキレン基が置換基を有さないことは、モノマーの粘度が低く抑えられる観点から好ましい一態様である。
上記直鎖アルキレン基又は直鎖オキシアルキレン基に含まれる水素原子と置換可能なアルキル基としては、例えば、CH3−、CH3CH2−、CH3CH2CH2−、及び(CH3)2CH−などが挙げられる。歯科材料用重合性モノマー(Aa)に適度な柔軟性を持たせる観点から、該アルキル基の炭素数としては、1〜3が好ましく、1〜2がより好ましく、1がさらに好ましい。
上記直鎖アルキレン基又は直鎖オキシアルキレン基に含まれる水素原子と置換可能な(メタ)アクリロイルオキシメチレン基としては、メタクリロイルオキシメチレン基及びアクリロイルオキシメチレン基が挙げられる。
ウレタンメタクリレートである上記歯科材料用重合性モノマー(Aa)の中でも、下記化学式で示されるウレタンメタクリレートが好ましい。
これらのウレタンメタクリレートは1種単独で又は2種類以上を組み合わせて適宜用いられる。
歯科材料用重合性モノマー(A)及びその好適一態様である歯科材料用重合性モノマー(Aa)(特にR7及びR8が水素原子の場合)は、例えば、下記一般式(4a)で表される適度な剛直性を有するジイソシアネート(a1a)と下記一般式(5a)で表される適度な柔軟性を有するヒドロキシメタクリレート(a2a)とを反応させることにより得られる。
上記一般式(4a)中、Raは一般式(1)のRaの定義と同一、すなわち二価の芳香族炭化水素基、又は二価の橋かけ構造を有してもよい環式炭化水素基を示し、歯科材料用重合性モノマー(Aa)の場合、Raは二価の炭素数6〜9の橋かけ構造を有している環式炭化水素基である。上記一般式(4a)中のRaに関する詳細な説明(例えば好適態様)は、歯科材料用重合性モノマー(Aa)として用いる場合の上記一般式(1)中のRaに関する詳細な説明と同一である。上記一般式(4a)中のR3、R4、R5、及びR6は水素原子又は炭化水素基を示す。上記一般式(4a)中のR3、R4、R5、及びR6に関する詳細な説明(例えば好適態様)は、歯科材料用重合性モノマー(Aa)として用いる場合の上記一般式(1)中のR3、R4、R5、及びR6に関する詳細な説明と同一である。上記ジイソシアネート(a1a)の具体的な化合物としては、下記一般式(6a)で示される化合物が好ましい。
これらジイソシアネート(a1a)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
上記一般式(5a)中、Rdは、それぞれ独立に、水素原子が炭素数1〜3のアルキル基又は(メタ)アクリロイルオキシメチレン基で置換されていてもよい炭素数2〜6の直鎖アルキレン基、又は直鎖オキシアルキレン基を示す。一般式(5a)中のRdに関する詳細な説明(例えば好適態様)は、歯科材料用重合性モノマー(Aa)として用いる場合の上記一般式(1)中のRb及びRcに関する詳細な説明と同一である。
上記ヒドロキシメタクリレート(a2a)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
反応時における前記ジイソシアネート(a1a)と、前記ヒドロキシメタクリレート(a2a)との量的比率は特には限定されないが、前記ジイソシアネート(a1a)中に含有されるイソシアネート基と前記ヒドロキシメタクリレート(a2)中に含有されるヒドロキシル基との比率が等量、すなわち1:1になることが通例である。この比率よりも前記ジイソシアネート(a1a)中に含有されるイソシアネート基が多ければ、反応後にイソシアネート基が残存し、この比率よりも前記ヒドロキシメタクリレート(a2a)中に含有されるヒドロキシル基が多ければ、反応後にヒドロキシル基が残存する。用途によっては、このように若干量の片方の原料を残存させるような比率で反応させることもある。
歯科材料用重合性モノマー(A)及び(Aa)は、前述のように前記ジイソシアネート(a1a)と、前記ヒドロキシメタクリレート(a2a)とを反応させることにより得られるが、その反応は、公知又は公知に準ずる方法により行うことができる。
例えば、上記ジイソシアネート(a1a)と上記ヒドロキシメタクリレート(a2a)とを混和させることによって、歯科材料用重合性モノマー(A)及び(Aa)を得ることができる。この際、ジイソシアネート(a1a)中のイソシアネート基と、ヒドロキシメタクリレート(a2a)中の水酸基が反応することにより、カルバモイル基が生成する。このような反応は、ウレタン化反応と呼ばれることがある。
反応の際には、触媒を添加してもよいし、また添加しなくてもよいが、反応速度を向上させるために、触媒を添加することが好ましい。該触媒としては、ウレタン化反応を加速する公知の触媒を使用できる。
ウレタン化触媒としては、例えば、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジオクテート及びオクタン酸スズなどの有機スズ化合物、ナフテン酸銅、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸亜鉛、アセチルアセトナトジルコニウム、アセチルアセトナト鉄及びアセチルアセトナトゲルマニウムなどのスズ以外のその他の有機金属化合物、トリエチルアミン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、2,6,7−トリメチル−1−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、ピリジン、N−メチルモルホリン、N,N,N',N'−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N',N'−テトラメチル−1,3−ブタンジアミン、N,N,N',N'−ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N',N'−テトラ(3−ジメチルアミノプロピル)−メタンジアミン、N,N'−ジメチルピペラジン及び1,2−ジメチルイミダゾールなどのアミン化合物及びそれらの塩、トリ−n−ブチルホスフィン、トリ−n−ヘキシルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン及びトリ−n−オクチルホスフィンなどのトリアルキルホスフィン化合物などが挙げられる。
これらの中でも、少量で反応が進行し、ジイソシアネート化合物に対して選択性が高い、ジブチルスズジラウレート及びオクタン酸スズが好ましい。ウレタン化触媒を使用する場合には、ジイソシアネート(a1a)とヒドロキシメタクリレート(a2a)の合計重量100重量%に対して、0.001〜0.5重量%を添加することが好ましく、0.002〜0.3重量%を添加することがより好ましく、0.005〜0.2重量%を添加することがさらに好ましい。上記下限値を下回る添加量では、触媒の効果が小さくなり、反応時間が著しく長くなる可能性があり、上記上限値を超える添加量では、触媒効果が過大となり、多量の反応熱が発生し温度制御が困難になることがある。該触媒は反応の開始時に全量投入してもよく、必要に応じて逐次もしくは分割して反応系に投入してもよい。このような逐次もしくは分割された触媒の投入は、反応初期の多量の反応熱の発生を抑制するため、反応温度の制御をより容易にする。
反応温度に関しては、特に制限はないが、0〜120℃であることが好ましく、20〜100℃であることがより好ましく、40〜90℃であることがさらに好ましい。上記下限値を下回る温度で反応を実施すると、反応速度が極度に低下するため、反応の完結までに非常に長い時間を要し、場合によっては反応が完結しない恐れがある。一方、上記上限値を超える温度で反応を実施すると、副反応により不純物が生成する恐れがある。このような不純物は、製造された(メタ)アクリレート化合物の着色原因となることがある。
前述の好ましい温度範囲における安定的な製造を行う点からは、反応温度は制御されていることが好ましい。通常、ウレタン化反応は発熱反応であるので、その発熱量が大きく、反応物の温度が好ましい反応温度範囲を超えて上昇する恐れがある場合、冷却を行う場合がある。また、反応がほぼ完結し、反応物の温度が好ましい反応温度範囲を超えて低下する恐れがある場合、加熱を行う場合がある。
歯科材料用重合性モノマー(A)及び(Aa)は重合活性を有する。したがって、その製造中において、高い温度に晒された際に意図しない重合反応が進行する可能性がある。そのような意図しない重合反応を防止するために、反応を開始する前又は反応中に公知の重合禁止剤を添加することができる。重合禁止剤は、歯科材料用重合性モノマー(A)及び(Aa)の製造をする際に(メタ)アクリレート基の反応を抑制できれば特に限定されないが、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ヒドロキノン(HQ)、ヒドロキノンモノメチルエーテル(MEHQ)、及びフェノチアジン(PTZ)等が挙げられる。これら重合禁止剤の中でも、BHTは、他のフェノール性重合禁止剤と比較するとイソシアネート基と反応することによって消費されることが少なく、またアミン系の重合禁止剤で見られるような着色が少ないことから特に好ましい。添加する重合禁止剤の量は特に限定されないが、ジイソシアネート(a1)とヒドロキシメタクリレート(a2)の合計重量100重量%に対して、0.001〜0.5重量%を添加することが好ましく、0.002〜0.3重量%を添加することがより好ましく、0.005〜0.3重量%を添加することがさらに好ましい。上記下限値を下回る添加量では、重合禁止剤として能力を発揮できない可能性があり、上記上限値を超える添加量では、重合性モノマー(A)及び(Aa)の用途である歯科材料用組成物として使用した際に、硬化速度が極度に遅くなり、実用性に制限が加えられる場合がある。また、これらの重合禁止剤は、歯科材料用重合性モノマー(A)及び(Aa)の原料である前記ジイソシアネート(a1a)、もしくは前記ヒドロキシメタクリレート(a2a)中に安定剤として既に含有されていることもある。
ウレタン化反応の際に、溶媒を使用してもよい。溶媒は、ジイソシアネート(a1a)及びヒドロキシメタクリレート(a2a)に対する反応性が実用上なく、反応を阻害せず、また、原料及び生成物を溶解させるものであれば、特に限定されない。また、溶媒を使用せずに反応を行ってもよい。ジイソシアネート(a1a)は、通常、低粘度の液体であるためヒドロキシメタクリレート(a2a)と混和することができ、溶媒を使用せずに反応を行うことができる。
ジイソシアネート(a1a)とヒドロキシメタクリレート(a2a)を混和する方法については、特に限定されない。例えば、反応容器中のジイソシアネート(a1a)に対して、ヒドロキシメタクリレート(a2a)の投入量を制御しながら添加して混和する方法、反応容器中のヒドロキシメタクリレート(a2a)に対して、ジイソシアネート(a1)の投入量を制御しながら添加して混和する方法、反応容器に対して、ジイソシアネート(a1)とヒドロキシメタクリレート(a2a)とを同時に投入量を制御しながら添加して混和する方法などにより混和することができる。このような混和方法によれば、ウレタン化反応により発生する熱量を適切な範囲に制御できるので、反応中の温度制御が容易になる。また、ジイソシアネート(a1a)とヒドロキシメタクリレート(a2)とを反応容器に全量入れた後に昇温を行うことによりウレタン化反応を行う方法を採用することもできる。反応時には、反応熱により急激に反応温度が上昇することがあるので、適宜冷却による温度制御が必要となる場合がある。
酸素は、(メタ)アクリロイル基を含む化合物の重合禁止剤として有効である。そのため、反応の際に、意図しない(メタ)アクリロイル基の重合を防止するために、反応器の中に酸素を導入することがある。酸素は、例えば、乾燥空気、酸素ガス、又は酸素と窒素等の不活性気体との混合ガス などの形態で反応器に導入できるが、好ましくは乾燥空気又は酸素と窒素等の不活性気体との混合ガスの形態で反応器に導入する。乾燥空気は、例えば、凝縮型エアードライヤー等の使用をはじめとした公知の方法で乾燥させて、水を除去することで得ることができる。酸素と窒素等の不活性気体との混合ガスは、酸素ガスもしくは酸素を含む前述の乾燥空気に窒素を所定比率で混合することで得ることができる。該窒素は公知の方法で乾燥させて水を除去してあるものが好ましい。導入方法は特に限定されないが、例えば、反応容器の底部から、気泡状で連続的、もしくは間欠的に導入できる。また、反応容器上部の空隙部分に連続的、もしくは間欠的に導入してもよい。乾燥空気の導入量は、反応容器の大きさなどに応じて適宜設定すればよいが、例えば、反応容器が1Lの場合、通常1〜500ml/分、好ましくは1〜300ml/分である。1ml/分より少ないと十分な量の酸素が導入できず、重合禁止剤として作用しない可能性があり、500ml/分より多いと反応時にジイソシアネートの揮発を増加させ、歯科材料用重合性モノマー(A)及び(Aa)の硬化後の物性を低下させるおそれがある。
ウレタン化反応時に水が系中の不純物として存在すると、ジイソシアネート(a1)と水とが反応することにより、目的物よりも高分子量の不純物を生じる恐れがある。かかる不純物量の増大は、生成物の粘度の上昇の原因となり、好ましくない。したがって、ウレタン化反応する際に反応系中には、極力水が存在しないことが好ましい。
そのため、ヒドロキシメタクリレート(a2)に含有される水分量は極力少ないことが好ましく、具体的には、ヒドロキシメタクリレート(a2)に対して、水分量が、0.5重量%以下であることが好ましく、0.3重量%以下であることがより好ましく、0.1重量%以下であることがさらに好ましい。ヒドロキシメタクリレート(a2)に含有される水分量が上記値を超える場合は、公知の方法で水を取り除いた後に、ウレタンメタリレートである歯科材料用重合性モノマー(A)及びその好適一態様である歯科材料用重合性モノマー(Aa)の原料に供することが好ましい。また、ウレタン化反応を行う反応容器内は、公知の方法で乾燥させて、水を除去したものが好ましい。
なお、歯科材料用重合性モノマー(A)及びその好適一態様である歯科材料用重合性モノマー(Aa)のうち、R7及びR8がメチル基の物は、例えば以下のようにして製造できる。上述の方法で合成されるR7及びR8が水素原子の歯科材料用重合性モノマー(A)及び(Aa)に対して、塩基(例えば水素化ナトリウム)の存在下、メチル化剤(例えばヨウ化メチル)を反応させることにより、R7及びR8がメチル基の歯科材料用重合性モノマー(A)及び(Aa)が製造できる。
[歯科材料用重合性モノマー組成物(Ba)]
本発明の第1態様の一形態である歯科材料用重合性モノマー組成物(Ba)は、上記歯科材料用重合性モノマー(Aa)を含有し、該歯科材料用重合性モノマー組成物(Ba)は、好ましくは1〜99重量%の上記歯科材料用重合性モノマー(Aa)を含有する。
上記歯科材料用重合性モノマー組成物(Ba)は、上記歯科材料用重合性モノマー(Aa)に替えて、一般式(1)で表される歯科材料用重合性モノマー(A)のうち、R1及びR2がメチル基であり、R3、R4、R5及びR6は水素原子であり、
Raが二価の炭素数6〜9の橋かけ構造を有している環式炭化水素基であり、かつm及びnがそれぞれ独立に0又は1であるか、
Raが二価の炭素数6〜9の芳香族炭化水素基でありかつm及びnが0であるか、
Raが二価の炭素数6〜9の橋かけ構造を有しない環式炭化水素基であり、かつm及びnのいずれか一方が0であり他方が1である、
歯科材料用重合性モノマー(以下、歯科材料用重合性モノマー(Aa')とも称する。)を含有するものであってもよい。
かかる場合、歯科材料用重合性モノマー組成物(Ba)は、好ましくは1〜99重量%の歯科材料用重合性モノマー(Aa')を含有する。
上記歯科材料用重合性モノマー(Aa')の中でも、より剛直性を有する観点からは、
Raが二価の炭素数6〜9の橋かけ構造を有している環式炭化水素基であり、かつm及びnがそれぞれ独立に0又は1であるか、
Raが二価の炭素数6〜9の橋かけ構造を有しない環式炭化水素基であり、かつm及びnのいずれか一方が0であり他方が1である歯科材料用重合性モノマー(Aa')がより好ましく、
Raが二価の炭素数6〜9の橋かけ構造を有している環式炭化水素基であり、かつm及びnが1であるか、
Raが二価の炭素数6〜9の橋かけ構造を有しない環式炭化水素基であり、かつm及びnのいずれか一方が0であり他方が1である歯科材料用重合性モノマー(Aa')がさらに好ましい。
橋かけ構造を有している環式炭化水素基としては、具体的には、ビシクロ[2.2.1]ヘプチレン基などが挙げられる。橋かけ構造を有しない環式炭化水素基としては、具体的には、シクロへキシレン基、及び3,5,5−トリメチルシクロヘキシレン基などが挙げられる。Raとしては、適度な剛直性を有する観点からは、橋かけ構造を有している環式炭化水素基が好ましい一態様であり、適度な疎水性を有する観点からは、橋かけ構造を有しない環式炭化水素基、特に3,5,5−トリメチルシクロヘキシレン基が好ましい一態様である。
ここで、各化合物の疎水性は、JIS 7260−107又はJIS 7260−117に従って測定した1−オクタノール/水間における分配係数から評価できる。分配係数が大きいほど疎水性は高い。また、計算科学的手法を用いて、予想平衡水含有量の指標を評価することにより疎水性の傾向を算出することができる。予想平衡水含有量が小さい程、疎水性は高い。
一般式(1)又は(1a)において、Raが環式炭化水素基である場合には、その環式炭化水素基に含まれる炭化水素環に対する、Raに隣接する炭素原子の二カ所の結合位置の位置関係は限定されない。本発明の第1態様の効果を奏する上では、これら二カ所の結合位置の位置関係は、上記炭化水素環の同一の炭素原子上でないことが好ましく、隣接した炭素上にないことがより好ましい。これらの位置異性体は、単独で使用されることもあるし、2種以上の混合物として使用されることもある。
二価の炭素数6〜9の橋かけ構造を有している環式炭化水素基に関する詳細な説明(環式炭化水素基の好適な炭素数、具体例など)は、上記歯科材料用重合性モノマー(Aa)のRaとなる環式炭化水素基に関する詳細な説明と同一である。
上述した二価の橋かけ構造を有しない環式炭化水素基の炭素数は、適度な疎水性及び適度な剛直性を有する観点より、6〜9であり、好ましくは6〜7である。橋かけ構造を有しない環式炭化水素基としては、具体的には、シクロヘキシル基、及び3,5,5−トリメチルシクロヘキシレン基などが挙げられる。
二価の芳香族炭化水素基の炭素数は、適度な疎水性及び適度な剛直性を有する観点より、6〜9であり、好ましくは6〜7である。かかる二価の芳香族炭化水素基としては、具体的にはフェニレン基等が挙げられる。一般式(1)において、該芳香族炭化水素基の芳香環に対する、Raに隣接する炭素原子の二カ所の結合位置の位置関係はオルト位、メタ位、又はパラ位のいずれであってもよい。しかし、本願発明の効果を奏する上では、これら二カ所の結合位置の位置関係は、メタ位又はパラ位であることが好ましく、メタ位であることがより好ましい。これらの位置異性体は、単独で使用されることもあるし、2種以上の混合物として使用されることもある。
上記歯科材料用重合性モノマー(Aa')における、Rb、Rc、R7、及びR8に関する詳細な説明(定義、好適態様など)は、それぞれ、歯科材料用重合性モノマー(Aa)におけるRb、Rc、R7、及びR8に関する詳細な説明と同一である。また、上記歯科材料用重合性モノマー(Aa')は、上記歯科材料用重合性モノマー(A)及び(Aa)と同様の方法により製造できる。
上記歯科材料用重合性モノマー組成物(Ba)は、実質的には重合性基を有する化合物、すなわちモノマーの混合物である。上記重合性基としては、公知の重合開始剤によって重合反応が促進され、硬化物を与えるものであれば制限を受けずに用いることができるが、典型的には、(メタ)アクリロイル基、アリール基、エポキシ基等が挙げられ、(メタ)アクリロイル基であることが好ましい。
上記歯科材料用重合性モノマー組成物(Ba)の粘度は、25℃において1〜100,000mPa・sであることが好ましく、5〜50,000mPa・sであることがより好ましく、10〜20,000mPa・sであることがより好ましい。粘度がこの範囲より高いと、重合性モノマー組成物(Ba)に後述の追加成分を混和する際に、その混和性に問題が生じる可能性がある。
上記歯科材料用重合性モノマー組成物(Ba)は、その意図しない重合反応を防止して保存安定性を向上させるため、前述の重合禁止剤を含有することができる。
[(メタ)アクリレートモノマー(Ca)]
上記歯科材料用重合性モノマー組成物(Ba)には、歯科材料用重合性モノマー(Aa)及び(Aa')以外の(メタ)アクリレートモノマー(Ca)を含有させることができる。(メタ)アクリレートモノマー(Ca)を歯科材料用重合性モノマー組成物(Ba)に含有させることで、例えば、該歯科材料用重合性モノマー組成物の粘度、機械的強度を調製する目的に用いることができる。以下に挙げるような(メタ)アクリレートモノマーをその目的に応じて選択し、その目的に適合する量を任意に配合することができる。
上記(メタ)アクリレートモノマー(Ca)に含有される重合性基の数は、1つでもよいし、2つ以上でもよい。好ましい重合性基の数は2以上10以下であり、より好ましい重合性基の数は2以上6以下であり、さらに好ましい重合性基の数は2以上4以下である。これら(メタ)アクリレートモノマー(Ca)は、1種の化合物で構成されてもよいし、2種以上の化合物の混合物で構成されてもよい。
上記(メタ)アクリレートモノマー(Ca)の分子量としては、80〜2,000が好ましく、150〜1,000がより好ましい。分子量がこの範囲より小さいと低沸点となるため、歯科材料用組成物を調製する際の操作性の観点から下限値を上記にすることが好ましい。分子量がこの範囲より大きいと粘度が高くなる傾向があり、歯科材料用組成物を調製する際の操作性の観点から上限値を上記にすることが好ましい。
重合性基を1つだけ有する(メタ)アクリレートモノマー(Ca)としては、例えば、下記一般式(7a)で示される重合性化合物が挙げられる。
上記一般式(7a)中、R5aは水素原子又はメチル基であり、R6aは酸素又は窒素を含有してもよい炭素数1〜20の一価の有機基を示す。
上記一価の有機基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基等の炭素数1〜20の非環状炭化水素基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、シクロアルキニル基、アリール基等の炭素数1〜20の環状炭化水素基などの炭化水素基;アルコキシアルキル基、アルコキシアルキレングリコール基、テトラヒドロフルフリル基等の上記炭化水素基の少なくとも一部の炭素−炭素結合の間に、酸素が挿入された基(ただし酸素が連続して挿入されることはない。)などの炭素数1〜20の酸素含有炭化水素基等が挙げられる。上記炭素数1〜20の環状炭化水素基は、非環状炭化水素部分を有していてもよい。また、これら基中に含まれる非環状炭化水素部分は直鎖状又は分岐状のいずれでもよい。
上記炭素数1〜20の炭化水素基又は炭素数1〜20の酸素含有炭化水素基に直鎖状のアルキレン部分が含まれている場合には、その少なくとも1つのメチレン基が、エステル結合、アミド結合、カーボネート結合、ウレタン結合(カルバモイル基)、又はウレア結合で置き換えられていてもよい(ただし、メチレン基が連続して置き換えられることはない。)。
また、上記炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20の酸素含有炭化水素基などの有機基に含まれる水素原子が、カルボキシル基、リン酸基等の酸基、水酸基、アミノ基、エポキシ基等の官能基に置き換えられていてもよい。
上記一般式(7a)で示されるメタクリロイル基を有する化合物としては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、エトキシジエチレングリコールメタクリレート、メトキシトリエチレングルコールメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシブチルメタクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノメタクリレートなどが挙げられる。
上記一般式(7a)で示されるアクリロイル基を有する化合物としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシトリエチレングルコールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノアクリレートなどが挙げられる。
重合性基を2つ以上有する(メタ)アクリレートモノマー(Ca)としては、例えば、下記一般式(8a)で示される重合性化合物が挙げられる。
上記一般式(8a)中、R7a及びR8aは水素原子又はメチル基を示し、これらは同一でも異なっていてもよく、R9aは酸素又は窒素を含有してもよい炭素数1〜40の二価の有機基を示す。ただし、上記一般式(8a)で示される化合物には、歯科材料用重合性モノマー(Aa)は含まれない。
上記二価の有機基としては、例えば、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基等の炭素数1〜40の非環状炭化水素基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、シクロアルキニレン基、アリーレン基等の炭素数1〜40の環状炭化水素基などの炭化水素基;オキシアルキレン基等の上記炭化水素基の少なくとも一部の炭素−炭素結合の間に、酸素が挿入された基(ただし酸素が連続して挿入されることはない。)などの炭素数1〜40の酸素含有炭化水素基等が挙げられる。上記炭素数1〜40の環状炭化水素基は、非環状炭化水素部分を有していてもよい。また、これら基中に含まれる非環状炭化水素部分は直鎖状又は分岐状のいずれでもよい。
上記炭素数1〜40の炭化水素基又は炭素数1〜40の酸素含有炭化水素基に直鎖状のアルキレン部分が含まれている場合には、その少なくとも1つのメチレン基が、エステル結合、アミド結合、カーボネート結合、ウレタン結合(カルバモイル基)、又はウレア結合で置き換えられていてもよい(ただし、メチレン基が連続して置き換えられることはない。)。
また、上記炭素数1〜40の炭化水素基、炭素数1〜40の酸素含有炭化水素基などの有機基に含まれる水素原子が、カルボキシル基、リン酸基等の酸基、水酸基、アミノ基、エポキシ基等の官能基、アクリロイル基、メタクリロイル基等の重合性基に置き換えられていてもよい。
上記一般式(8a)で示される重合性化合物のうち、好適な重合性化合物の一例としては、上記R9aが炭素数2〜20、望ましくは炭素数4〜12の直鎖アルキレン基である重合性化合物が挙げられる。
上記好適な重合性化合物であり、メタクリロイル基を有する化合物としては、例えば、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,8−オクタンジオールジメタクリレート、1,9−ナノンジオールジメタクリレート、1,10−デカンジオールジメタクリレートなどが挙げられる。
上記好適な重合性化合物であり、アクリロイル基を有する化合物としては、例えば、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,8−オクタンジオールジアクリレート、1,9−ナノンジオールジアクリレート、1,10−デカンジオールジアクリレートなどが挙げられる。
また、上記一般式(8a)で示される重合性化合物のうち、好適な重合性化合物の他の例としては、上記R9aが炭素数2〜20、望ましくは炭素数4〜12の直鎖オキシアルキレン基である重合性化合物が挙げられる。
上記好適な重合性化合物であり、メタクリロイル基を有する化合物としては、例えば、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、テトラプロピレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレートなどが挙げられる。
上記好適な重合性化合物であり、アクリロイル基を有する化合物としては、例えば、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、テトラプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレートなどが挙げられる。
さらに、上記一般式(8a)で示される重合性化合物のうち、好適な重合性化合物の他の例として、下記一般式(9a)で示されるカルバモイル基を有する重合性化合物が挙げられる。ただし、下記一般式(9a)で示される化合物には、歯科材料用重合性モノマー(Aa)は含まれない。
上記一般式(9a)中、R7a及びR8aは水素原子又はメチル基であり、これらは同一でも異なっていてもよく、R10a及びR11aは酸素を含有してもよい炭素数1〜12の二価の有機基であり、これらは同一でも異なっていてもよい。
上記二価の有機基としては、例えば、アルキレン基等の炭素数1〜12の非環状炭化水素基、シクロアルキレン基、アリーレン基等の炭素数1〜12の環状炭化水素基などの炭化水素基;オキシアルキレン基等の上記炭化水素基の少なくとも一部の炭素−炭素結合の間に、酸素が挿入された基(ただし酸素が連続して挿入されることはない。)などの炭素数1〜12の酸素含有炭化水素基等が挙げられる。上記炭素数1〜12の環状炭化水素基は、非環状炭化水素部分を有していてもよい。また、これら基中に含まれる非環状炭化水素部分は直鎖状又は分岐状のいずれでもよい。
また、上記炭素数1〜12の炭化水素基、炭素数1〜12の酸素含有炭化水素基などの有機基に含まれる水素原子が、カルボキシル基、リン酸基等の酸基、水酸基、アミノ基、エポキシ基等の官能基、アクリロイル基、メタクリロイル基等の重合性基に置き換えられていてもよい。
上記一般式(9a)中、R12aは酸素を含有してもよい炭素数1〜20の二価の有機基を示す。上記二価の有機基としては、例えば、アルキレン基等の炭素数1〜20の非環状炭化水素基、及び、オキシアルキレン基等の上記炭化水素基の少なくとも一部の炭素−炭素結合の間に、酸素が挿入された基(ただし酸素が連続して挿入されることはない。)などの炭素数1〜20の酸素含有炭化水素基等が挙げられる。上記炭素数1〜20の環状炭化水素基は、非環状炭化水素部分を有していてもよい。また、これら基中に含まれる非環状炭化水素部分は直鎖状又は分岐状のいずれでもよい。
また、上記炭素数1〜20の炭化水素基又は炭素数1〜20の酸素含有炭化水素基などの有機基に含まれる水素原子が、カルボキシル基、リン酸基等の酸基、水酸基、アミノ基、エポキシ基等の官能基に置き換えられていてもよい。
上記一般式(9a)で示されるメタクリロイル基を有する化合物としては、例えば、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシブチルメタクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、又は1,4−シクロヘキサンジメタノールモノメタクリレート等のヒドロキシメタクリレートと、2,4−又は2,6−トルエンジイソシアネート、4,4'−、2,4'−又は2,2'−ジフェニルメタン−ジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−又は2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレン−ジイソシアネート等のジイソシアネートとの反応生成物であるウレタンメタクリレートなどが挙げられ、このようなウレタンメタクリレートとしては、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンビス(2−カルバモイルオキシエチル)ジメタクリレート(UDMA)などが挙げられる。
上記一般式(9a)で示されるアクリロイル基を有する化合物としては、例えば、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、又は1,4−シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート等のヒドロキシアクリレートと、2,4−又は2,6−トルエンジイソシアネート、4,4'−、2,4'−又は2,2'−ジフェニルメタン−ジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−又は2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレン−ジイソシアネート等のジイソシアネートとの反応生成物であるウレタンアクリレートなどが挙げられ、このようなウレタンアクリレートとしては、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンビス(2−カルバモイルオキシエチル)ジアクリレートなどが挙げられる。
また、好ましい上記一般式(8a)で示される重合性化合物の別の例として、下記一般式(10a)の重合性化合物が挙げられる。
上記一般式(10a)中、R7aび及びR8aは水素原子又はメチル基を示し、これらは同一でも異なっていてもよく、R13a及びR14aは酸素を含有してもよい炭素数1〜12の二価の有機基を示し、これらは同一でも異なっていてもよい。
上記二価の有機基としては、例えば、アルキレン基等の炭素数1〜12の非環状炭化水素基、シクロアルキレン基、アリーレン基等の炭素数1〜12の環状炭化水素基などの炭化水素基;オキシアルキレン基等の上記炭化水素基の少なくとも一部の炭素−炭素結合の間に、酸素が挿入された基(ただし酸素が連続して挿入されることはない。)などの炭素数1〜12の酸素含有炭化水素基等が挙げられる。上記炭素数1〜12の環状炭化水素基は、非環状炭化水素部分を有していてもよい。また、これら基中に含まれる非環状炭化水素部分は直鎖状又は分岐状のいずれでもよい。
また、上記炭素数1〜12の炭化水素基、炭素数1〜12の酸素含有炭化水素基などの有機基に含まれる水素原子が、カルボキシル基、リン酸基等の酸基、水酸基、アミノ基、エポキシ基等の官能基、アクリロイル基、メタクリロイル基等の重合性基に置き換えられていてもよい。
上記一般式(10a)中、R15aは酸素を含有してもよい炭素数1〜20の二価の有機基を示す。
上記二価の有機基としては、例えば、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基などの炭素数1〜20の炭化水素基;オキシアルキレン基等の上記炭化水素基の少なくとも一部の炭素−炭素結合の間に、酸素が挿入された基(ただし酸素が連続して挿入されることはない。)などの炭素数1〜20の酸素含有炭化水素基などが挙げられる。上記炭素数1〜20の環状炭化水素基は、非環状炭化水素部分を有していてもよい。また、これら基中に含まれる非環状炭化水素部分は直鎖状又は分岐状のいずれでもよい。
また、上記炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20の酸素含有炭化水素基などの有機基に含まれる水素原子が、カルボキシル基、リン酸基等の酸基、水酸基、アミノ基、エポキシ基等の官能基に置き換えられていてもよい。
上記一般式(10a)で示されるメタクリロイル基を有する化合物としては、例えば、2,2−ビス〔4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕プロパン(Bis−GMA)、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジメタクリレート、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールAジメタクリレートなどが挙げられる。
上記一般式(10a)で示されるアクリロイル基を有する化合物としては、例えば、2,2−ビス〔4−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕プロパン、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジアクリレート、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールAジアクリレートなどが挙げられる。
[歯科材料用組成物(a)]
本発明の第1態様の一形態である歯科材料用組成物(a)は、上記歯科材料用重合性モノマー(Aa)又は(Aa')を含有し、該歯科材料用組成物(a)は好ましくは1〜99重量%の歯科材料用重合性モノマー(Aa)又は(Aa')を含有する。上記歯科材料用組成物(a)は、前述のように歯科材料用重合性モノマー組成物(Ba)をいったん製造したのち、該モノマー組成物(Ba)に対して、後述の任意の成分を配合することにより製造されることがある。また、歯科材料用重合性モノマー(Aa)又は(Aa')に対して、該重合性モノマー(Aa)及び(Aa')以外の歯科材料用重合性モノマー組成物(Ba)の構成成分、及び後述の任意の成分を配合することもできる。また、上記歯科材料用重合性モノマー組成物(Ba)に後述の重合開始剤を配合したものも歯科材料用組成物(a)として用いることができる。
上記歯科材料用重合性モノマー(Aa)又は(Aa')が歯科材料用組成物(a)に含有されることにより、つまり、上記歯科材料用重合性モノマー組成物(Ba)が歯科材料用組成物(a)に含有されることにより、該歯科材料用組成物は高い弾性率と高い強度を両立する物性を有する硬化物を与える。
このような特性の歯科材料用組成物(a)が得られる詳細な理由は不明である。しかし、上記歯科材料用重合性モノマー(Aa)又は(Aa')の分子内に炭素数6〜9の二価の橋かけ構造を有してもよい環式炭化水素基又は炭素数6〜9の二価の芳香族炭化水素基を有する場合には、炭素数6〜9の二価の橋かけ構造を有してもよい環式炭化水素基又は炭素数6〜9の二価の芳香族炭化水素基、及び炭素数2〜6の直鎖アルキレン基又は炭素数2〜6の直鎖オキシアルキレン基を有していることが影響していると推測される。分子内の炭素数6〜9の二価の橋かけ構造を有してもよい環式炭化水素基又は炭素数6〜9の二価の芳香族炭化水素基が分子に適度な剛直性を付与し、かつ、同一分子内の炭素数2〜6の直鎖アルキレン基又は炭素数2〜6の直鎖オキシアルキレン基が適度な柔軟性を付与することで、上記歯科材料用重合性モノマー(Aa)又は(Aa')を含む組成物を硬化させてなる硬化物の弾性率、強度を向上させるためである。また、歯科材料用重合性モノマー(Aa)又は(Aa')は、重合性基としてメタクリロイル基を有しているメタクリレート化合物である。一般的にメタクリレート化合物の硬化物の弾性率、強度は、同様の構造を有するアクリレート化合物の硬化物に較べて弾性率、強度の値が高い。この点も、歯科材料用重合性モノマー(Aa)又は(Aa')の硬化物の弾性率及び強度の向上に寄与していると考えられる。以上のような理由で、歯科材料用重合性モノマー(Aa)又は(Aa')の硬化物は、従来の歯科材料用重合性モノマーの硬化物と比較して、その弾性率、強度が向上していると推測される。さらには、そのような高い機械物性を有する歯科材料用重合性モノマー(Aa)又は(Aa')の硬化物を相当量含有する歯科材料用組成物(a)の硬化物は高い弾性率と強度を両立する物性を有するに至ると考えられる。
上記重合性モノマー(Aa)又は(Aa')は、歯科材料用組成物(a)の合計100重量%に対して、好ましくは1〜99重量%の範囲で使用される。例えば歯科材料用組成物(a)がフィラーを含有しない場合(例えばフィラー不含有の充填材として歯科材料用組成物(a)を用いる場合)には、上記重合性モノマー(Aa)又は(Aa')の含有量は、歯科材料用組成物(a)の合計100重量%に対して、好ましくは50〜99重量%、より好ましくは60〜95重量%の範囲である。また、歯科材料用接着性組成物(a)がフィラーを含有する場合(例えばコンポジットレジンとして歯科材料用組成物(a)を用いる場合)には、上記重合性モノマー(Aa)又は(Aa')の含有量は、歯科材料用接着性組成物(a)の合計100重量%に対して、好ましくは1〜50重量%、より好ましくは2〜40重量%以下の範囲である。上記数値範囲の下限値を下回ると硬化体の強度、柔軟性、及び靱性が低下する場合があり、また、その上限値を上回ると組成物の粘度及び稠度が高くなりすぎる場合がある。
(メタ)アクリレートモノマー(Ca)は、歯科材料用重合性モノマー組成物(Ba)に含有させてもよいが、含有させなくともよい。(メタ)アクリレートモノマー(Ca)を含有させる場合には、(メタ)アクリレートモノマー(Ca)を1種のみで用いてもよいし2種類以上用いてもよい。(メタ)アクリレートモノマー(Ca)を歯科材料用重合性モノマー組成物(Ba)に含有させる場合、(メタ)アクリレートモノマー(Ca)としては、特定の低粘度(メタ)アクリレートモノマーが少なくとも1種含有されることが好ましい。低粘度(メタ)アクリレートモノマーの25℃における粘度としては、1〜5,000mPa・sであることが好ましく、1〜3,000mPa・sであることがより好ましく、1〜1,000mPa・sであることがさらに好ましい。上記粘度は、E型粘度計により、25℃で測定した値である。この様な低粘度(メタ)アクリレートモノマーを配合することで、歯科材料用重合性モノマー組成物(Ba)の粘度を効果的に低減できる。
このような低粘度(メタ)アクリレートモノマーとしては、上記一般式(7a)〜(10a)で表される重合性化合物のうち、前記一般式(8a)の重合性化合物であって、前記一般式(8a)中のR9aが炭素数2〜20の直鎖アルキレン基、又は炭素数2〜20の直鎖オキシアルキレン基である重合性化合物が好ましい。具体的には、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,8−オクタンジオールジメタクリレート、1,9−ナノンジオールジメタクリレート、1,10−デカンジオールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,8−オクタンジオールジアクリレート、1,9−ナノンジオールジアクリレート、1,10−デカンジオールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、テトラプロピレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、テトラプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート等が挙げられる。このような低粘度(メタ)アクリレートモノマーは、アルキレン基、もしくはオキシアルキレン基等の柔軟な構造の主鎖を有している。そのため、適度な剛直性を示す構造を有するウレタンメタクリレートからなる歯科材料用重合性モノマー(Aa)に、さらに(メタ)アクリレートモノマー(Ca)として上記に列挙した柔軟な構造の主鎖を有する低粘度(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種とを組合せることで、歯科材料用組成物(a)の硬化物の靱性を向上する上で効果的である。
上記歯科材料用組成物(a)は、前述の歯科材料用重合性モノマー(Aa)又は(Aa')、歯科材料用重合性モノマー組成物(Ba)、及び(メタ)アクリレートモノマー(Ca)以外に、さらに以下のような成分を任意に含めてもよい。
上記歯科材料用組成物(a)は、重合開始剤(Da)を含有することができる。上記重合開始剤(Da)としては、歯科分野で用いられる一般的な重合開始剤を使用することができ、通常、重合性モノマーの重合性と重合条件を考慮して選択される。また、重合開始剤を選択することにより、歯科材料用組成物(a)に常温重合性、熱重合性、又は光重合性を持たせることができる。
常温重合を行う場合には、たとえば、酸化剤及び還元剤を組み合わせたレドックス系の重合開始剤が好適である。レドックス系の重合開始剤を使用する場合、酸化剤と還元剤が別々に包装された形態をとり、使用する直前に両者を混合する必要がある。
酸化剤としては、特に限定されないが、例えば、ジアシルパーオキサイド類、パーオキシエステル類、ジアルキルパーオキサイド類、パーオキシケタール類、ケトンパーオキサイド類及びハイドロパーオキサイド類などの有機過酸化物が挙げられる。上記有機過酸化物としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド及びm−トルオイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類;t−ブチルパーオキシベンゾエート、ビス−t−ブチルパーオキシイソフタレート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート及びt−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート等のパーオキシエステル類;ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド及びラウロイルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド類;1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等のパーオキシケタール類;メチルエチルケトンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類;t−ブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類などが挙げられる。
また、還元剤としては、特に限定されないが、通常第三級アミンが用いられる。第三級アミンとしては、例えば、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル−m−トルイジン、N,N−ジエチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル−3,5−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−3,4−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−4−エチルアニリン、N,N−ジメチル−4−i−プロピルアニリン、N,N−ジメチル−4−t−ブチルアニリン、N,N−ジメチル−3,5−ジ−t−ブチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,5−ジメチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,4−ジメチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−4−エチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−4−i−プロピルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−4−t−ブチルアニリン、N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)−3,5−ジ−i−プロピルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,5−ジ−t−ブチルアニリン、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸n−ブトキシエチル、4−ジメチルアミノ安息香酸(2−メタクリロイルオキシ)エチル、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N−n−ブチルジエタノールアミン、N−ラウリルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、(2−ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、N,N−ビス(メタクリロイルオキシエチル)−N−メチルアミン、N,N−ビス(メタクリロイルオキシエチル)−N−エチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−メタクリロイルオキシエチルアミン、N,N−ビス(メタクリロイルオキシエチル)−N−(2−ヒドロキシエチル)アミン、トリス(メタアクリロイルオキシエチル)アミンなどが挙げられる。
これら有機過酸化物/アミン系の他には、クメンヒドロパーオキサイド/チオ尿素系、アスコルビン酸/Cu2+塩系、有機過酸化物/アミン/スルフィン酸(又はその塩)系等のレドックス系重合開始剤を用いることができる。また、重合開始剤として、トリブチルボラン、有機スルフィン酸なども好適に用いられる。
加熱による熱重合を行う場合には、過酸化物、もしくはアゾ系化合物を使用することが好ましい。
過酸化物としては特に限定されないが、例えば、過酸化ベンゾイル、t−ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシドなどが挙げられる。アゾ系化合物としては特に限定されないが、例えば、アゾビスイソブチロニトリルなどが挙げられる。
可視光線照射による光重合を行う場合には、α−ジケトン/第3級アミン、α−ジケトン/アルデヒド、α−ジケトン/メルカプタン等のレドックス系開始剤が好ましい。
光重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、α−ジケトン/還元剤、ケタール/還元剤、チオキサントン/還元剤などが挙げられる。α−ジケトンとしては、例えば、カンファーキノン、ベンジル及び2,3−ペンタンジオンなどが挙げられる。ケタールとしては、例えば、ベンジルジメチルケタール及びベンジルジエチルケタールなどが挙げられる。チオキサントンとしては、例えば、2−クロロチオキサントン及び2,4−ジエチルチオキサントンなどが挙げられる。還元剤としては、例えば、ミヒラ−ケトン等、2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、N,N−ビス〔(メタ)アクリロイルオキシエチル〕−N−メチルアミン、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸ブチル、4−ジメチルアミノ安息香酸ブトキシエチル、N−メチルジエタノールアミン、4−ジメチルアミノベンゾフェノン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン及びジメチルアミノフェナントール等の第三級アミン;シトロネラール、ラウリルアルデヒド、フタルジアルデヒド、ジメチルアミノベンズアルデヒド及びテレフタルアルデヒド等のアルデヒド類;2−メルカプトベンゾオキサゾール、デカンチオール、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、4−メルカプトアセトフェノン、チオサリチル酸及びチオ安息香酸等のチオール基を有する化合物;等が挙げられる。これらのレドックス系に有機過酸化物を添加したα−ジケトン/有機過酸化物/還元剤の系も好適に用いられる。
紫外線照射による光重合を行う場合には、ベンゾインアルキルエーテル及びベンジルジメチルケタール等が好適である。また、(ビス)アシルフォスフィンオキサイド類の光重合開始剤も好適に用いられる。
(ビス)アシルフォスフィンオキサイド類のうち、アシルフォスフィンオキサイド類としては、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジメトキシベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジクロロベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルメトキシフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルエトキシフェニルホスフィンオキサイド、2,3,5,6−テトラメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド及びベンゾイルジ−(2,6−ジメチルフェニル)ホスホネートなどが挙げられる。ビスアシルフォスフィンオキサイド類としては、例えば、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−プロピルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−1−ナフチルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド及び(2,5,6−トリメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイドなどが挙げられる。これら(ビス)アシルフォスフィンオキサイド類の光重合開始剤は、単独もしくは各種アミン類、アルデヒド類、メルカプタン類及びスルフィン酸塩等の還元剤と併用することもできる。これらは、上記可視光線の光重合開始剤とも好適に併用することができる。
上記重合開始剤は単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
上記歯科材料用組成物(a)は、重合禁止剤(Ea)を含有することができる。重合禁止剤(Ea)としては、歯科材料用重合性モノマー(Aa)、歯科材料用重合性モノマー組成物(Ba)、及び歯科材料用組成物(a)が含有する重合性基の意図しない重合反応を抑止できる公知の化合物を使用することができる。例えば、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ヒドロキノン(HQ)、ヒドロキノンモノメチルエーテル(MEHQ)、及びフェノチアジン(PTZ)等が挙げられる。
重合禁止剤(Ea)は前述のように歯科材料用重合性モノマー(Aa)の製造時に添加されることがある。また同様に、酸性基及び(メタ)アクリロイル基を同一分子内に含有する(メタ)アクリレートモノマー、ならびに低粘度(メタ)アクリレートモノマー(Ca)の製造時に添加されることがある。また、これらの(メタ)アクリレートモノマーの製造原料にすでに上記重合禁止剤(Ea)が添加されていることもある。また、後述のように歯科材料用組成物(a)を製造する際に添加することもできる。これらの重合禁止剤は1種単独で又は2種類以上を組み合わせて適宜用いられる。
上記歯科材料用組成物(a)は、さらにフィラー(Fa)を含有することができる。フィラーは、歯科分野で用いられる一般的なフィラーを使用することができる。フィラーは、通常、有機フィラーと無機フィラーに大別される。
有機フィラーとしては、例えば、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、メタクリル酸メチル−メタクリル酸エチル共重合体、架橋型ポリメタクリル酸メチル、架橋型ポリメタクリル酸エチル、エチレン−酢酸ビニル共重合体及びスチレン−ブタジエン共重合体等の重合体からなる微粉末が挙げられる。
また、上記歯科材料用組成物(a)は、有機フィラーとして柔軟性を発現するフィラー(Fa')を含有することができる。柔軟性を発現するフィラー(Fa')を上記歯科材料用組成物(a)に含有することで、その硬化物は強度、柔軟性、及び靱性を高めることができる。特に、上記歯科材料用組成物(a)を動揺歯固定材として用いる場合、柔軟性を発現するフィラーを含めることは好ましい態様である。柔軟性を発現するフィラー(Fa')に関する詳細な説明(柔軟性の指標、架橋された重合体の態様、他の化合物との組合せ、具体的化合物、好ましいエチレン性二重結合量、好ましい粒子径、好ましい含有量など)は、後述する本発明の第4態様における柔軟性を発現するフィラー(Dd)に関する詳細な説明と同一である。
本発明の第1態様では、上記重合性モノマー(Aa)又は(Aa')と、後述する本発明の第4態様で用いられる柔軟性を発現するフィラー(Dd)とを含む歯科材料用組成物(a)が、最も好ましい態様のひとつである。
無機フィラーとしては、例えば、各種ガラス類(二酸化珪素を主成分とし、必要に応じ、重金属、ホウ素及びアルミニウム等の酸化物を含有する)、各種セラミック類、珪藻土、カオリン、粘土鉱物(モンモリロナイト等)、活性白土、合成ゼオライト、マイカ、フッ化カルシウム、フッ化イッテルビウム、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化ジルコニウム、二酸化チタン、ヒドロキシアパタイト等の無機物からなる微粉末が挙げられる。このような無機フィラーの具体例としては、例えば、バリウムボロシリケートガラス(キンブルレイソーブT3000、ショット8235、ショットGM27884及びショットGM39923など)、ストロンチウムボロアルミノシリケートガラス(レイソーブT4000、ショットG018−093及びショットGM32087など)、ランタンガラス(ショットGM31684など)、フルオロアルミノシリケートガラス(ショットG018−091及びショットG018−117など)、ジルコニウム及び/又はセシウム含有のボロアルミノシリケートガラス(ショットG018−307、G018−308及びG018−310など)が挙げられる。
また、これら無機フィラーに重合性モノマーを予め添加し、ペースト状にした後、重合硬化させ、粉砕して得られる有機無機複合フィラーを用いても差し支えない。
また、歯科材料組成物において、粒径が0.1μm以下のミクロフィラーが配合された組成物は、歯科材料用コンポジットレジンに好適な態様の一つである。かかる粒径の小さなフィラーの材質としては、シリカ(例えば、商品名アエロジル)、アルミナ、ジルコニア、チタニアなどが好ましい。このような粒径の小さい無機フィラーの配合は、コンポジットレジンの硬化物の研磨滑沢性を得る上で有利である。
これらのフィラーに対しては、目的に応じて、シランカップリング剤などにより表面処理が施される場合がある。かかる表面処理剤としては、公知のシランカップリング剤、例えば、γ−メタクリルオキシアルキルトリメトキシシラン(メタクリルオキシ基とケイ素原子との間の炭素数:3〜12)、γ−メタクリルオキシアルキルトリエトキシシラン(メタクリルオキシ基と珪素原子との間の炭素数:3〜12)、ビニルトリメトキシシラン、ビニルエトキシシラン及びビニルトリアセトキシシラン等の有機珪素化合物が使用される。表面処理剤の濃度は、フィラー100重量%に対して、好ましくは0.1〜20重量%、より好ましくは1〜10重量%の範囲で使用される。
これらのフィラーは1種単独で又は2種類以上を組み合わせて適宜用いられる。
上記歯科材料用組成物(a)に対して接着性能を付与するために、上記歯科材料用組成物(a)は(メタ)アクリレートモノマー(Ca)以外に酸性基及び(メタ)アクリロイル基を同一分子内に含有する(メタ)アクリレートモノマー(11a)(ただし、(メタ)アクリレートモノマー(11a)には、(メタ)アクリレートモノマー(Ca)は含まれない。)を含有することができる。該(メタ)アクリレートモノマー(11a)の構造は、同一分子内酸性基及び(メタ)アクリロイル基を含有する限りにおいて限定されない。なお、カルボキシル基などの酸基から得られる酸無水物基のように、実用条件において容易に加水分解して酸性基になる基など、実用条件において酸性基として機能し得る基も、上記酸性基とみなす。
酸性基として、例えば、リン酸残基、ピロリン酸残基、チオリン酸残基、カルボン酸残基及びスルホン酸残基、これら酸の酸無水物残基等が挙げられる。一分子中における酸性基の数は限定されないが、通常1〜10である。
一分子中における(メタ)アクリロイル基の数は限定されないが、通常1〜10である。
具体的には、メタクリロイル基とリン酸残基とを有する重合性化合物としては、例えば、2−メタクリロイルオキシエチルジハイドロジェンホスフェート、9−メタクリロイルオキシノニルジハイドロジェンホスフェート、10−メタクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート、11−メタクリロイルオキシウンデシルジハイドロジェンホスフェート、20−メタクリロイルオキシエイコシルジハイドロジェンホスフェート、1,3−ジメタクリロイルオキシプロピル−2−ジハイドロジェンホスフェート、2−メタクリロイルオキシエチルフェニルリン酸、2−メタクリロイルオキシエチル 2'−ブロモエチルリン酸、メタクリロイルオキシエチルフェニルホスホネート、及びこれらの酸塩化物などが挙げられる。
アクリロイル基とリン酸残基とを有する重合性化合物としては、例えば、2−アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンホスフェート、9−アクリロイルオキシノニルジハイドロジェンホスフェート、10−アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート、11−アクリロイルオキシウンデシルジハイドロジェンホスフェート、20−アクリロイルオキシエイコシルジハイドロジェンホスフェート、1,3−ジアクリロイルオキシプロピル−2−ジハイドロジェンホスフェート、2−アクリロイルオキシエチルフェニルリン酸、2−アクリロイルオキシエチル 2'−ブロモエチルリン酸、アクリロイルオキシエチルフェニルホスホネート、及びこれらの酸塩化物などが挙げられる。
メタクリロイル基とピロリン酸残基とを有する重合性化合物としては、例えば、ピロリン酸ジ(2−メタクリロイルオキシエチル)及びこれらの酸塩化物などが挙げられる。
アクリロイル基とピロリン酸残基とを有する重合性化合物としては、例えば、ピロリン酸ジ(2−アクリロイルオキシエチル)及びこれらの酸塩化物などが挙げられる。
メタクリロイル基とチオリン酸残基とを有する重合性化合物としては、例えば、2−メタクリロイルオキシエチルジハイドロジェンジチオホスフェート、10−メタクリロイルオキシデシルジハイドロジェンチオホスフェート、及びこれらの酸塩化物などが挙げられる。
アクリロイル基とチオリン酸残基とを有する重合性化合物としては、例えば、2−アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンジチオホスフェート、10−アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンチオホスフェート、及びこれらの酸塩化物などが挙げられる。
メタクリロイル基とカルボン酸残基とを有する重合性化合物としては、例えば、4−メタクリロイルオキシエトキシカルボニルフタル酸(4−メタクリロイルオキシエチルトリメリット酸ともいう)、5−メタクリロイルアミノペンチルカルボン酸及び11−メタクリロイルオキシ−1,1−ウンデカンジカルボン酸、及びこれらの酸塩化物又は酸無水物等が挙げられる。
アクリロイル基とカルボン酸残基とを有する重合性化合物としては、例えば、4−アクリロイルオキシエトキシカルボニルフタル酸、5−アクリロイルアミノペンチルカルボン酸及び11−アクリロイルオキシ−1,1−ウンデカンジカルボン酸、及びこれらの酸塩化物又は酸無水物等が挙げられる。
メタクリロイル基とスルホン酸残基とを有する重合性化合物としては、例えば、2−スルホエチルメタクリレート、及び2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などが挙げられる。
アクリロイル基とスルホン酸残基とを有する重合性化合物としては、例えば、2−スルホエチルアクリレート、及び2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などが挙げられる。
これらの酸性基及び(メタ)アクリロイル基を同一分子内に含有する(メタ)アクリレートモノマー(11a)は1種単独で又は2種類以上を組み合わせて適宜用いられる。
上記(メタ)アクリレートモノマー(11a)は、歯科用接着性組成物(a)の合計100重量%に対して、好ましくは0.5〜50重量%、より好ましくは1〜30重量%の範囲で使用される。上記数値範囲の下限値を下回ると粘度が高くなりやすい場合があり、また、その上限値を上回ると硬化体の強度が低下するとともに変色しやすくなる場合がある。
上記歯科材料用重合性モノマー(Aa)、及び任意のその他の成分を所定量混和することにより、歯科材料用組成物(a)を製造することができる。その製造法に関しては、公知の方法であれば制限なく用いることができるが、例えば公知の混練装置を用いて、所定量の各種成分を十分に混練して、必要に応じて減圧下脱泡等することができる。各成分の配合比率は、特に制限されるものではなく、歯科材料用組成物(a)の用途に応じて、それぞれ有効量を配合すればよい。
上記歯科材料用組成物(a)の用途は特には限定されないが、上記歯科材料用組成物(a)の硬化物の典型的な例としては、歯科修復材料、歯科補綴材料、歯科仮補修材料、義歯床用レジン、義歯床用裏装材、印象材、合着用材料(レジンセメントやレジン添加型グラスアイオノマーセメント)、歯牙裂溝封鎖材、CAD/CAM用レジンブロック、テンポラリークラウン及び接着性材料等が挙げられる。
[歯科材料用接着性組成物用重合性モノマー(Ab)]
本発明の第2態様は、上記一般式(1)において、R1及びR2が水素原子又はメチル基であり、mが1である、歯科材料用接着剤組成物用重合性モノマー(Ab)、すなわち、以下の一般式(1'b)で表すことができるウレタン(メタ)アクリレートであって、接着性能に優れるウレタン(メタ)アクリレートに関する。以下、詳細に説明する。なお、歯科材料用接着性組成物用の上記重合性モノマー(Ab)は、後述する酸性基を含有しない。また、上記重合性モノマー(Ab)は、ヒドロキシル基を含有しない。
上記一般式(1'b)中のRa、R3、R4、R5、R6、R7、R8、Rb、及びRc、ならびにnの定義は、一般式(1)における定義と同一であり、R1b及びR2bは水素原子又はメチル基である。R1b及びR2bのいずれか一方が水素原子の場合、上記一般式(1'b)はアクリレートモノマーとなる。上記一般式(1'b)がアクリレートモノマーの場合、上記一般式(1'b)を含有する歯科材料用組成物の硬化物がより高い靱性を有する観点において好ましい一態様である。その中でも、R1b及びR2bがいずれも水素原子であることが好ましい。また、R1b及びR2bのいずれか一方がメチル基の場合、上記一般式(1'b)はメタクリレートモノマーとなる。上記一般式(1'b)がメタクリレートモノマーの場合、上記一般式(1'b)を含有する歯科材料用組成物の硬化物がより高い弾性率を有する観点において好ましい一態様である。その中でも、R1b及びR2bがいずれもメチル基であることが好ましい。
上記一般式(1'b)中、nは0又は1であることが好ましい。nが0のとき、Ra中の炭素の一つはカルバモイル基の炭素と結合している。適度な剛直性を有する観点より、nは1であることが好ましい。
上記重合性モノマー(Ab)の中でも、工業生産性の観点などからは、R7及びR8は、いずれも水素原子であることが好ましい一態様である。
また、適度な疎水性を有する観点などからは、R7及びR8は、いずれか一方がメチル基であるあることが好ましい一態様であり、いずれもメチル基であることがより好ましい一態様である。
上記重合性モノマー(Ab)としては、上記一般式(1'b)において、R7及びR8が水素原子であり、nが0又は1である下記一般式(1b)で表されるウレタン(メタ)アクリレートが好ましい一態様である。
上記一般式(1b)中のRa、R3、R4、R5、R6、R1b、R2b、Rb、及びRcの定義は、一般式(1'b)における定義と同一であり、nbは0又は1である。
上記一般式(1'b)又は(1b)中のRaに含まれる二価の芳香族炭化水素基、又は二価の橋かけ構造を有してもよい環式炭化水素基の炭素数には制限はないが、適度な疎水性及び適度な剛直性を有する観点より、6〜9であり、好ましくは6〜7である。
歯科材料用接着性組成物用の上記重合性モノマー(Ab)としては、上記一般式(1)で示される重合性モノマーのうち、R1及びR2が水素原子又はメチル基であり、
Raが二価の炭素数6〜9の芳香族炭化水素基又は二価の炭素数6〜9の橋かけ構造を有している環式炭化水素基であり、かつmが1であるか、
Raが二価の炭素数6〜9の橋かけ構造を有しない環式炭化水素基であり、かつm及びnが1である、重合性モノマーが好ましい一態様である。
すなわち、上記一般式(1'b)で示される重合性モノマーのうち、
Raが二価の炭素数6〜9の芳香族炭化水素基又は二価の炭素数6〜9の橋かけ構造を有している環式炭化水素基であるか、
Raが二価の炭素数6〜9の橋かけ構造を有しない環式炭化水素基であり、かつnが1である、重合性モノマーが好ましい一態様である。
Raに含まれる二価の基の好ましい一態様は、芳香族炭化水素基である。このような芳香族炭化水素基としては、具体的にはフェニレン基等が挙げられる。一般式(1'b)又は(1b)において、該芳香族炭化水素基の芳香環に対する、Raに隣接する炭素原子の二カ所の結合位置の位置関係はオルト位、メタ位、又はパラ位のいずれであってもよい。しかし、本願発明の効果を奏する上では、これら二カ所の結合位置の位置関係は、メタ位又はパラ位であることが好ましく、メタ位であることがより好ましい。これらの位置異性体は、単独で使用されることもあるし、2種以上の混合物として使用されることもある。
Raに含まれる二価の基の好ましい一態様は、橋かけ構造を有してもよい環式炭化水素基である。橋かけ構造を有してもよい環式炭化水素基とは、具体的には橋かけ構造を有している環式炭化水素基、もしくは橋かけ構造を有しない環式炭化水素基である。橋かけ構造を有している環式炭化水素基としては、具体的には、ビシクロ[2.2.1]ヘプチレン基等が挙げられる。橋かけ構造を有しない環式炭化水素基としては、具体的には、シクロヘキシレン基、及び3、3、5−トリメチルシクロヘキシレン基等が挙げられる。一般式(1'b)又は(1b)において、橋かけ構造を有してもよい環式炭化水素基中の炭化水素環に対する、Raに隣接する炭素原子の二カ所の結合位置の位置関係は限定されないが、本発明の第2態様の効果を奏する上では、これら二カ所の結合位置の位置関係は、上記炭化水素環の同一の炭素原子上でないことが好ましく、隣接した炭素上にないことより好ましい。これらの位置異性体は、単独で使用されることもあるし、2種以上の混合物として使用されることもある。
Raに含まれる二価の基としては、適度な剛直性を有する観点より芳香族炭化水素基、又は橋かけ構造を有している環式炭化水素基が好ましく、橋かけ構造を有している環式炭化水素基が特に好ましい。
適度な疎水性を有する観点からは、Raに含まれる二価の基としては、橋かけ構造を有しない環式炭化水素基が好ましい。
上記一般式(1'b)又は(1b)中のR1b及びR2bは水素原子又はメチル基のいずれであってもよい。疎水性の観点からは、R1b及びR2bはいずれか一方がメチル基であることが好ましく、いずれもメチル基であることがより好ましい。重合反応性の観点からは、R1b及びR2bはいずれか一方が水素原子であることが好ましく、いずれも水素原子であることがより好ましい。
上記一般式(1'b)又は(1b)中のR3、R4、R5及びR6は水素原子又は炭化水素基である。適度な剛直性を有する観点より、R3、R4、R5及びR6は水素原子又はメチル基であることが好ましい。また、適度な剛直性を有する観点からはR3、R4、R5及びR6は水素原子であることがより好ましい一態様であり、適度な疎水性を有する観点からはR3、R4、R5及びR6はメチル基であることがより好ましい一態様である。
歯科材料用接着性組成物用の上記重合性モノマー(Ab)としては、上記一般式(1)で示される重合性モノマーのうち、R1及びR2が水素原子又はメチル基であり、Raが二価の炭素数6〜9の芳香族炭化水素基であり、かつR3、R4、R5及びR6が水素原子であるか、
Raが二価の炭素数6〜9の橋かけ構造を有している環式炭化水素基であり、かつR3、R4、R5及びR6が水素原子である、態様が適度な剛直性を有する観点において好ましい一態様である。
また、R1及びR2が水素原子又はメチル基であり、Raが二価の炭素数6〜9の橋かけ構造を有しない環式炭化水素基であり、かつR3、R4、R5及びR6が水素原子である態様、又は
Raが二価の炭素数6〜9の芳香族炭化水素基であり、かつR3、R4、R5及びR6がいずれもメチル基である態様が、適度な疎水性を有する観点において好ましい一態様である。
上記一般式(1'b)及び(1b)中の二つのカルバモイル基に挟まれる下記一般式(2'b)及び(2b)にあたる部分の好ましい一態様としては、例えば、適度な剛直性を有する観点において、以下の一般式(3b)〜(7b)で表される構造が挙げられる。この態様の中では下記一般式(3b)〜(6b)で表される構造が好ましく、下記一般式(3b)〜(5b)で表される構造がより好ましく、下記一般式(3b)及び(4b)で表される構造がさらに好ましく、下記一般式(3b)で表される構造が特に好ましい。
また、別の好ましい一態様としては、例えば、適度な疎水性を有する観点において、以下の一般式(5b)〜(7b)で表される構造が挙げられる。この態様の中では下記一般式(5b)で表される構造がより好ましい。
また、一般式(4b)〜(6b)は、通常、それぞれ位置異性体を含む混合物を表すが、中でも下記一般式(8b)〜(10b)で示す位置異性体であることが好ましい。
上記一般式(1'b)及び(1b)中、Rb及びRcは、歯科材料用接着性組成物用の重合性モノマー(Ab)に適度な柔軟性を持たせる観点から、それぞれ独立に、水素原子が炭素数1〜3のアルキル基又は(メタ)アクリロイルオキシメチレン基で置換されていてもよい炭素数2〜6の直鎖アルキレン基、又は炭素数2〜6の直鎖オキシアルキレン基を示す。上記Rb及びRcとしては、水素原子が炭素数1〜3のアルキル基で置換されていてもよい、炭素数2〜6の直鎖アルキレン基又は炭素数2〜6の直鎖オキシアルキレン基が好ましい。
重合性モノマー(Ab)としては、一般式(1)で示される化合物のうち、R7及びR8が水素原子であり、Rb及びRcは、それぞれ独立に、水素原子が炭素数1〜3のアルキル基で置換されていてもよい、炭素数2〜6の直鎖アルキレン基又は炭素数2〜6の直鎖オキシアルキレン基である化合物が好ましい一態様である。
上記一般式(1'b)及び(1b)のRb及びRcのさらに好ましい一態様は、水素原子が炭素数1〜3のアルキル基で置換されていてもよい、炭素数2〜4の直鎖アルキレン基又は炭素数2〜4の直鎖オキシアルキレン基である。
上記直鎖アルキレン基としては、例えば、−CH2CH2−、−CH2CH2CH2−、−CH2CH2CH2CH2−、−CH2CH2CH2CH2CH2−、及び−CH2CH2CH2CH2CH2CH2−などが挙げられる。これら直鎖アルキレン基の好ましい一態様は、例えば、−CH2CH2−、−CH2CH2CH2−、−CH2CH2CH2CH2−等である。上記直鎖オキシアルキレン基としては、例えば、−CH2CH2OCH2CH2−、及び−CH2CH2OCH2CH2OCH2CH2−などが挙げられる。上記直鎖オキシアルキレン基の好ましい一態様は、例えば、−CH2CH2OCH2CH2−等である。上記直鎖アルキレン基又は直鎖オキシアルキレン基の炭素数としては、歯科材料用接着性組成物用の重合性モノマー(Ab)に適度な柔軟性を持たせる観点から、炭素数は2〜6であり、好ましくは2〜4、より好ましくは2である。
上記直鎖アルキレン基又は直鎖オキシアルキレン基では、その水素原子が下記アルキル基又は(メタ)アクリロイルオキシメチレン基で置換されていてもよい。その置換基の数は、直鎖アルキレン基又は直鎖オキシアルキレン基1つあたり、0〜4が好ましく、0〜2がより好ましく、0〜1がさらに好ましい。また置換基が0すなわち直鎖アルキレン基又は直鎖オキシアルキレン基が置換基を有さないことは、モノマーの粘度が低く抑えられる観点から好ましい一態様である。
上記直鎖アルキレン基又は直鎖オキシアルキレン基に含まれる水素原子と置換可能なアルキル基としては、例えば、CH3−、CH3CH2−、CH3CH2CH2−、及び(CH3)2CH−などが挙げられる。ウレタン(メタ)アクリレートである重合性モノマー(Ab)に適度な柔軟性を持たせる観点から、該アルキル基の炭素数としては、1〜3が好ましく、1〜2がより好ましく、1がさらに好ましい。
上記直鎖アルキレン基又は直鎖オキシアルキレン基に含まれる水素原子と置換可能な(メタ)アクリロイルオキシメチレン基としては、メタクリロイルオキシメチレン基及びアクリロイルオキシメチレン基のいずれであってもよいが、疎水性の観点からメタクリロイルオキシメチレン基が好ましい。
ウレタン(メタ)アクリレートである上記歯科材料用接着性組成物用重合性モノマー(Ab)の中でも、下記式で示されるウレタン(メタ)アクリレートが好ましい。
これらの化合物が、適度な疎水性、適度な剛直性、及び適度な柔軟性を有する構造を含むことで、第2態様の効果を奏することができる。ここで、各化合物の疎水性は、JIS 7260−107又はJIS 7260−117に従って測定した1−オクタノール/水間における分配係数から評価できる。分配係数が大きいほど疎水性は高い。上記歯科材料用接着性組成物用の重合性モノマー(Ab)に適度な疎水性を付与することが、第2態様の効果を奏する上で好ましい。また、計算科学的手法を用いて、予想平衡水含有量の指標を評価することにより疎水性の傾向を算出することができる。予想平衡水含有量が小さい程、疎水性は高い。
これらのウレタン(メタ)アクリレートは1種単独で又は2種類以上を組み合わせて適宜用いられる。
上記歯科材料用接着性組成物用の重合性モノマー(Ab)は、例えば、下記一般式(11b)で表される適度な疎水性及び適度な剛直性を有するジイソシアネート(a1b)と下記一般式(12b)で表される適度な柔軟性を有するヒドロキシ(メタ)アクリレート(a2b)とを反応させることにより得られる。
上記一般式(11b)中、一般式(1'b)のRaの定義と同一、すなわちRaは二価の芳香族炭化水素基、又は二価の橋かけ構造を有してもよい環式炭化水素基を示す。Raに関する詳細な説明(例えば好適態様)は、上記一般式(1'b)又は(1b)中のRaに関する詳細な説明と同一である。上記一般式(11b)中のR3、R4、R5及びR6は水素原子又は炭化水素基を示す。R3、R4、R5及びR6に関する詳細な説明(例えば好適態様)は、前記の一般式(1'b)又は(1b)中のR3、R4、R5及びR6に関する詳細な説明と同一である。適度な剛直性を付与できる観点において、上記ジイソシアネート(a1b)の中でも、下記一般式(13b)〜(17b)で示される化合物に記載されるより選択される少なくとも1つの化合物が好ましい一態様である。この態様の中では下記一般式(13b)〜(16b)の構造が好ましく、下記一般式(13b)〜(15b)の構造がより好ましく、下記一般式(13b)及び(14b)の構造がさらに好ましく、下記一般式(13b)の構造が特に好ましい。また、適度な疎水性を付与できる観点において、上記ジイソシアネート(a1b)の中でも、下記一般式(15b)〜(17b)で示される化合物に記載されるより選択される少なくとも1つの化合物が別の好ましい一態様である。この態様中では下記一般式(15b)の構造が好ましい。
また、一般式(14b)〜(16b)は、位置異性体の混合物であるが、それらの中では以下の一般式(18b)〜(20b)で示すような位置異性体であることが好ましい。
これらジイソシアネート(a1b)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
上記一般式(12b)中のRdは、それぞれ独立に、水素原子が炭素数1〜3のアルキル基又は(メタ)アクリロイルオキシメチレン基で置換されていてもよい炭素数2〜6の直鎖アルキレン基、又は直鎖オキシアルキレン基を示す。一般式(12b)中のRdに関する詳細な説明(例えば好適態様)は、上記一般式(1'b)又は(1b)中のRb及びRcに関する詳細な説明と同一である。一般式(12b)中のR7は水素原子又はメチル基である。疎水性の観点からは、メチル基であることが好ましい。重合反応性の観点からは、R7は水素原子であることが好ましい。
上記ヒドロキシ(メタ)アクリレート(a2b)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
反応時における前記ジイソシアネート(a1b)と、前記ヒドロキシ(メタ)アクリレート(a2b)との量的比率は特には限定されないが、前記ジイソシアネート(a1b)中に含有されるイソシアネート基と前記ヒドロキシ(メタ)アクリレート(a2b)中に含有されるヒドロキシル基との比率が等量、すなわち1:1になることが通例である。この比率よりも前記ジイソシアネート(a1b)中に含有されるイソシアネート基が多ければ、反応後にイソシアネート基が残存し、この比率よりも前記ヒドロキシメタクリレート(a2b)中に含有されるヒドロキシル基が多ければ、反応後にヒドロキシル基が残存する。用途によっては、このように若干量の片方の原料を残存させるような比率で反応させることもある。
歯科材料用接着性組成物用の重合性モノマー(Ab)は、前述のように前記ジイソシアネート(a1b)と、前記ヒドロキシ(メタ)アクリレート(a2b)とを反応させることにより得られるが、その反応は、公知又は公知に準ずる方法により行うことができる。
例えば、上記ジイソシアネート(a1b)と上記ヒドロキシ(メタ)アクリレート(a2b)とを混和させることによって、上記重合性モノマー(Ab)を得ることができる。この際、ジイソシアネート(a1b)中のイソシアネート基と、ヒドロキシ(メタ)アクリレート(a2b)中の水酸基が反応することにより、カルバモイル基が生成する。このような反応は、ウレタン化反応と呼ばれることがある。
反応の際には、触媒を添加してもよいし、添加しなくてもよいが、反応速度を向上させるために、触媒を添加することが好ましい。該触媒としては、ウレタン化反応を加速する公知の触媒を使用できる。
ウレタン化触媒の具体例及び好適例は、歯科材料用重合性モノマー(A)及び(Aa)の製造の際に用いるウレタン化触媒と同一である。
また、ウレタン化触媒を使用する場合の、ジイソシアネート(a1b)とヒドロキシ(メタ)アクリレート(a2b)に関する詳細な説明(例えば好適量比など)は、歯科材料用重合性モノマー(A)及び(Aa)の製造の際のジイソシアネート(a1a)とヒドロキシメタクリレート(a2a)に関する詳細な説明と同一である。また、ウレタン化反応に関する詳細な説明(例えば好適温度など)は、歯科材料用重合性モノマー(A)及び(Aa)の製造の際のウレタン化反応に関する詳細な説明と同一である。
歯科材料用接着性組成物用の重合性モノマー(Ab)は重合活性を有する。したがって、その製造中において、高い温度に晒された際に意図しない重合反応が進行する可能性がある。そのような意図しない重合反応を防止するために、反応を開始する前又は反応中に公知の重合禁止剤を添加することができる。かかる重合禁止剤の詳細な説明(例えば、具体例、好適な量比)は、歯科材料用重合性モノマー(A)及び(Aa)の製造の際に使用する重合禁止剤の詳細な説明と同一である。
ウレタン化反応の際のその他の条件に関する詳細な説明は、歯科材料用重合性モノマー(A)及び(Aa)の製造の際のウレタン化反応の際のその他の条件に関する詳細な説明と同一である。
なお、歯科材料用接着性組成物用の重合性モノマー(Ab)のうち、R7及びR8がメチル基の物は、歯科材料用重合性モノマー(A)及びその好適一態様である歯科材料用重合性モノマー(Aa)のうち、R7及びR8がメチル基の物と同様の方法により製造できる。
[酸性基及び(メタ)アクリロイル基を同一分子内に含有する(メタ)アクリレートモノマー(Bb)]
本発明の第2態様の一形態である歯科材料用接着性組成物(b)は、好ましくは、酸性基及び(メタ)アクリロイル基を同一分子内に含有する(メタ)アクリレートモノマー(Bb)を含有する。該(メタ)アクリレートモノマー(Bb)の構造は、同一分子内酸性基及び(メタ)アクリロイル基を含有する限りにおいて限定されない。(メタ)アクリレートモノマー(Bb)が歯科材料用接着性組成物(b)に含まれることにより、より高い接着性能を示す硬化物が得られる。
(メタ)アクリレートモノマー(Bb)に関するその他の詳細な説明(酸性基の具体例及び好適な基の数、モノマーの具体例など)は、前述の歯科材料用組成物(a)に含まれ得る酸性基及び(メタ)アクリロイル基を同一分子内に含有する(メタ)アクリレートモノマー(11a)に関する詳細な説明と同一である。
[低粘度(メタ)アクリレートモノマー(Cb)]
歯科材料用接着性組成物用の上記重合性モノマー(Ab)と、酸性基及び(メタ)アクリロイル基を同一分子内に含有する(メタ)アクリレートモノマー(Bb)とは、室温付近、例えば25℃において高粘度であることがあり、これらのモノマーが配合された歯科材料用接着性組成物(b)も高粘度となることがある。高粘度の歯科材料用接着性組成物は、操作性が悪化して、臨床的な使用の際に支障を生じることもある。
上記歯科材料用接着性組成物(b)の粘度を低減する目的で、低粘度(メタ)アクリレートモノマー(Cb)を歯科材料用接着性組成物(b)に含有させることができる。低粘度(メタ)アクリレートモノマー(Cb)としては、公知の低粘度の(メタ)アクリレートモノマーを用いることができる。粘度としては、25℃における粘度が1〜5,000mPa・sが好ましく、1〜2,000mPa・sがより好ましい。なお低粘度(メタ)アクリレートモノマー(Cb)は、歯科材料用接着性組成物用の重合性モノマー(Ab)及び酸性基及び(メタ)アクリロイル基を同一分子内に含有する(メタ)アクリレートモノマー(Bb)を含まない。
低粘度(メタ)アクリレートモノマー(Cb)に対するその他の詳細な説明(モノマーの具体例、好適な基、好適な基の数など)は、前述の歯科材料用組成物(a)に含まれ得る(メタ)アクリレートモノマー(Ca)に関する詳細な説明と同一である。
[重合開始剤(Db)]
上記歯科材料用接着性組成物(b)は、重合開始剤(Db)を含有することができる。上記重合開始剤(Db)としては、歯科分野で用いられる一般的な重合開始剤を使用することができ、通常、重合性モノマーの重合性と重合条件を考慮して選択される。また、重合開始剤を選択することにより、歯科材料用接着性組成物(b)に常温重合性、熱重合性、又は光重合性を持たせることができる。重合開始剤(Db)に関するその他の詳細な説明(例えば、具体例など)は、歯科材料用組成物(a)に含まれ得る重合開始剤(Da)に関する詳細な説明と同一である。
また、上記歯科材料用接着性組成物(b)は、重合開始剤(Db)とともに還元剤を含有することができる。これにより、重合を効率的に行うことができる。なお、還元剤とともに重合開始剤(Db)を用いる場合、重合開始剤(Db)としては、酸化剤が好ましく、有機過酸化物がより好ましい。また、後述する第3態様に記載の還元剤(Dc)を上記歯科材料用重合性モノマー(Ab)と組合せて用いることにより、上記歯科材料用接着性組成物(b)の十分な硬化性の発現及びその硬化性を長期間にわたって発揮できるような安定性(保存安定性)を高めることができる。具体的には、還元剤として、アミン化合物(Db1)又はその塩とスルフィン酸化合物(Db2)又はその塩との混合物を用いることが好ましい態様のひとつである。その他、アミン化合物(Db1)又はその塩に関する詳細な説明(具体的な化合物、好ましい含有量、及び他の化合物との組合せ態様など)は、後述する第3態様のアミン化合物(Dc1)又はその塩の詳細な説明と同一であり、スルフィン酸化合物(Db2)又はその塩に関する詳細な説明(具体的な化合物、好ましい含有量、及び他の化合物との組合せ態様など)は、後述する第3態様のスルフィン酸化合物(Dc2)又はその塩の詳細な説明と同一である。
そして、第2態様における上記歯科材料用重合性モノマー(Ab)の好ましい態様と、第3態様に記載の還元剤(Dc)の好ましい態様との組合せが、上記歯科材料用接着性組成物(b)におけるより好ましい態様のひとつである。これらの組合せにより、高い接着性能に優れ、かつ、保存安定性により優れる歯科材料用接着性組成物(b)を提供できる。
さらに、上記還元剤としては、アミン化合物(Db1)として、第2級アミンである非芳香族性カルボニル基を有する芳香族性アミン化合物(bb)を用いることができる。また、スルフィン酸化合物(Db2)として、電子吸引基を有する有機スルフィン酸化合物(cb)を用いることができる。上記歯科材料用接着性組成物(b)の硬化性及び保存安定性の観点から、これらを単独又は組合せて用いることがより好ましい態様である。非芳香族性カルボニル基を有する芳香族性アミン化合物(bb)に関する詳細な説明(好ましい構造態様や具体的な化合物など)は、後述する第5態様における非芳香族性カルボニル基を有する芳香族性アミン化合物(be)に関する詳細な説明と同一である。また、電子吸引基を有する有機スルフィン酸化合物(cb)に関する詳細な説明(好ましい態様としての電子吸引基のHammettの置換基定数、具体的な化合物、及び含有量など)は、第5態様における電子吸引基を有する有機スルフィン酸化合物(ce)に関する詳細な説明と同一である。
第2態様における上記歯科材料用重合性モノマー(Ab)の好ましい態様と、第5態様に記載の還元剤の好ましい態様との組合せが、上記歯科材料用接着性組成物(b)におけるより好ましい態様である。これらの組合せにより、歯質に対してより高い接着性能を有しつつ、かつ、保存安定性により優れた歯科材料用硬化性組成物、及び該組成物からなる歯科用セメントを提供できる。
[重合禁止剤(Eb)]
上記歯科材料用接着性組成物(b)は、重合禁止剤(Eb)を含有することができる。重合禁止剤(Eb)としては、歯科材料用接着性組成物用の重合性モノマー(Ab)、酸性基及び(メタ)アクリロイル基を同一分子内に含有する(メタ)アクリレートモノマー(Bb)、及び低粘度(メタ)アクリレートモノマー(Cb)に含有される(メタ)アクリロイル基の意図しない重合反応を抑止できる公知の化合物を使用することができる。重合禁止剤(Eb)に関するその他の詳細な説明(例えば、具体例、添加方法など)は、歯科材料用組成物(a)に含まれ得る重合禁止剤(Ea)に関する詳細な説明と同一である。
[フィラー(Fb)]
上記歯科材料用接着性組成物(b)は、フィラー(Fb)を含有することができる。
フィラーは、歯科分野で用いられる一般的なフィラーを使用することができる。フィラーは、通常、有機フィラーと無機フィラーに大別される。かかるフィラー(Fb)として用いることができる有機フィラー及び無機フィラーの具体例は、歯科材料用組成物(a)に含まれ得るフィラー(Fa)として用いることができる有機フィラー及び無機フィラーと同一である。
また、上記フィラー(Fb)として、無機フィラーに重合性モノマーを予め添加し、ペースト状にした後、重合硬化させ、粉砕して得られる有機無機複合フィラーを用いても差し支えない。
また、歯科材料用接着性組成物(b)において、粒径が0.1μm以下のミクロフィラーが配合された組成物は、歯科材料用コンポジットレジンに好適な態様の一つである。かかる粒径の小さなフィラーの材質としては、シリカ(例えば、商品名アエロジル)、アルミナ、ジルコニア、チタニアなどが好ましい。
これらのフィラーに対しては、目的に応じて、シランカップリング剤などにより表面処理が施される場合がある。かかるフィラー(Fb)の表面処理に関する詳細な説明(例えば、具体例、表面処理剤の濃度など)は、歯科材料用組成物(a)に含まれ得るフィラー(Fa)の表面処理に関する詳細な説明と同一である。
これらのフィラーは1種単独で又は2種類以上を組み合わせて適宜用いられる。
また、上記フィラー(Fb)の有機フィラーとして、上記歯科材料用接着性組成物(b)に柔軟性を発現するフィラー(Fc)を含有することができる。上記歯科材料用接着性組成物(b)に後述する第4態様の柔軟性を発現するフィラー(Dd)を含有させることで、その硬化体の強度、柔軟性、及び靱性を向上させることができる。柔軟性を発現するフィラー(Fc)に関する詳細な説明(柔軟性の指標、架橋された重合体の態様、他の化合物との組合せ、具体的化合物、好ましいエチレン性二重結合量、好ましい粒子径、好ましい含有量など)は、第4態様に記載の柔軟性を発現するフィラー(Dd)に関する詳細な説明と同一である。
第2態様における上記歯科材料用重合性モノマー(Ab)の好ましい態様と、第4態様に記載の柔軟性を発現するフィラー(Dd)の好ましい態様との組合せが、上記歯科材料用接着性組成物(b)におけるより好ましい態様である。上記歯科材料用接着性組成物(b)は動揺歯固定材として有用である。特に、上記歯科材料用重合性モノマー(Ab)がアクリレートモノマーである場合、より高い靱性が得られる観点において動揺歯固定材として好ましい一態様である。
[その他の添加物]
上記歯科材料用接着性組成物(b)は、必要に応じて、歯科材料として公知の化合物を、その他の添加物として含有することができる。
その他の添加物としては、例えば歯科材料用接着性組成物用の重合性モノマー(Ab)、酸性基及び(メタ)アクリロイル基を同一分子内に含有する(メタ)アクリレートモノマー(Bb)及び低粘度(メタ)アクリレートモノマー(Cb)以外の(メタ)アクリレートモノマー、水、有機溶媒などが挙げられる。具体的には、該(メタ)アクリレートモノマーとしては、2,2−ビス〔4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕プロパン(Bis−GMA)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンビス(2−カルバモイルオキシエチル)ジメタクリレート(UDMA)等が挙げられ、該有機溶媒としては、アセトン等が挙げられる。
これら以外のその他の添加物としては、例えば公知の顔料、染料、ファイバー等が挙げられる。
これらのその他の添加物は、用途に応じて任意に選択され、本発明の第2態様の効果を損なわない限りにおいて適切な量を添加することができる。
[歯科材料用接着性組成物(b)]
本発明の第2態様の一形態である歯科材料用接着性組成物(b)は、上記重合性モノマー(Ab)を含有し、歯科材料用接着性組成物(b)は、好ましくは0.1〜99重量%、より好ましくは1〜99重量%の歯科材料用接着性組成物用の重合性モノマー(Ab)を含有する。
上記歯科材料用接着性組成物(b)は、上記重合性モノマー(Ab)に替えて、上記重合性モノマー(A)を含有するものであってもよい。歯科材料用接着性組成物(b)は、好ましくは0.1〜99重量%、より好ましくは1〜99重量%の歯科材料用接着性組成物用の重合性モノマー(A)を含有する。
歯科材料用接着性組成物(b)に含有される重合性モノマー(A)の中でも、一般式(1)において、Raが二価の芳香族炭化水素基又は二価の橋かけ構造を有してもよい環式炭化水素基であり、m及びnがそれぞれ独立に0又は1である重合性モノマー(以下、(以下、歯科材料用重合性モノマー(Ab')とも称する。)が好ましい一態様である。
上記重合性モノマー(A)又は(Ab')に含まれる二価の芳香族炭化水素基及び二価の橋かけ構造を有してもよい環式炭化水素基に関する詳細な説明(これら基の好適な炭素数、具体例など)は、歯科材料用接着性組成物用の上記重合性モノマー(Ab)のRaとなる二価の芳香族炭化水素基及び二価の橋かけ構造を有してもよい環式炭化水素基に関する詳細な説明と同一である。
歯科材料用接着性組成物用の重合性モノマー(Ab)又は(A)が歯科材料用接着性組成物(b)に含有されることにより、該歯科材料用接着性組成物は高い接着性能、及び優れた保存安定性を示す。
このような特性の歯科材料用接着性組成物が得られる詳細な理由は不明であるが、歯科材料用接着性組成物用の重合性モノマー(Ab)又は(A)が、その分子内に二価の芳香族炭化水素基、又は二価の橋かけ構造を有してもよい環式炭化水素基を有することが影響していると推測される。
分子内の二価の芳香族炭化水素基、又は二価の橋かけ構造を有してもよい環式炭化水素基は歯科材料用接着性組成物用の重合性モノマー(Ab)又は(A)の分子に適度な剛直性を付与し、その硬化物の強度及び弾性率を向上させると考えられる。さらに、特定構造を有する該歯科材料用接着性組成物用の重合性モノマー(Ab)又は(A)を接着性組成物に含ませることで、接着成分そのものの強度を高めることに寄与し、接着剤層の破壊いわゆる凝集破壊を防ぎ、結果として接着剤層の強度が向上したものと考えられる。
さらに、歯科材料用接着性組成物用の重合性モノマー(Ab)又は(A)が分子内に有する二価の芳香族炭化水素基、又は二価の橋かけ構造を有してもよい環式炭化水素基は、歯科材料用接着性組成物用の重合性モノマー(Ab)又は(A)の分子に適度な疎水性を付与していると考えられる。例えば、(i)従来の歯科材料用接着性組成物用の重合性モノマーとして用いられているBis−GMA等が分子内に親水性基である水酸基を有するのに対し、歯科材料用接着性組成物用の重合性モノマー(Ab)又は(A)は、分子内に水酸基を有していない。また、(ii)上述の分子内の二価の芳香族炭化水素基、又は二価の橋かけ構造を有してもよい環式炭化水素基は疎水性の高い基である。歯科材料用接着性組成物用の重合性モノマー(Ab)又は(A)における適度な疎水性は、歯科材料用接着性組成物用の重合性モノマーそのものの吸水性を低下させることに寄与し、これにより歯科材料用接着性組成物用の重合性モノマー分子の分解抑制を図ることができる。また、歯科材料用接着性組成物用の重合性モノマー(Ab)又は(A)における適度な疎水性は、歯科材料用接着性組成物(b)の歯質への浸透性の向上に影響すると考えられる。さらに、この歯科材料用接着性組成物(b)の歯質への浸透性が向上することで、接着強度は向上すると考えられる。ここで、歯科材料用接着剤組成物(b)に用いる重合性モノマー(A)の疎水性は、上述した重合性モノマー(A)の疎水性の評価方法により評価できる。
また、歯科材料用接着性組成物用の重合性モノマー(Ab)又は(A)は、その分子内に直鎖アルキレン基、又は直鎖オキシアルキレン基を含み、適度な柔軟性を示す構造を有することで、その硬化物の弾性率を向上させると考えられる。
このように、歯科材料用接着性組成物用の重合性モノマー(Ab)又は(A)は、適度な疎水性を示す構造、適度な剛直性を示す構造、及び適度な柔軟性を示す構造を有することで、重合性モノマー(Ab)又は(A)を含有する歯科材料用組成物(b)が高い接着性能を有すると考えられる。
また、歯科材料用接着性組成物(b)の保存安定性には、その吸湿性が影響している可能性がある。前述したように、歯科材料用接着性組成物は、吸湿によるモノマー及び触媒の分解により、その性能を維持できない場合がある。前述したような、上記重合性モノマー(Ab)又は(A)の有する高い疎水性は、それを含有する歯科材料用接着性組成物(b)の吸湿性を低下させ、結果としてその保存安定性を向上させると考えられる。このように、特定の構造を有する歯科材料用接着性組成物用の重合性モノマー(Ab)又は(A)を用いることが、本発明の第2態様の1形態である歯科材料用接着性組成物(b)の性能を向上させる上で重要である。
上記重合性モノマー(Ab)又は(A)の含有量は、歯科材料用接着性組成物(b)の全重量(2剤以上に分けて保存されており、最終的に混合して用いる場合には、それらを最終的に混合した後の全重量;以下、組成物(b)についての重量についても同様)100重量部に対して、好ましくは5重量部以上、より好ましくは10重量部以上、さらに好ましくは15重量部以上である。
上記重合性モノマー(Ab)又は(A)の含有量は、歯科材料用接着性組成物(b)に含まれる重合性モノマーの全重量 100重量部に対して、好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは0.5重量部以上、さらに好ましくは1重量部以上である。前記数値範囲の下限値を下回ると、歯科材料用接着性組成物(b)の室温以上での保存安定性を担保できなくなる場合がある。
上記重合性モノマー(Ab)又は(A)の中でも、上記一般式(1)で表されかつアクリレートである場合、すなわち、R1及びR2が水素原子である場合には、
Raが二価の炭素数6〜9の芳香族炭化水素基又は二価の炭素数6〜9の橋かけ構造を有している環式炭化水素基であり、かつm及びnがそれぞれ独立に0又は1であるか、
Raが二価の炭素数6〜9の橋かけ構造を有しない環式炭化水素基であり、かつm及びnが1である、重合性モノマーが好ましい一態様である。
上記重合性モノマー(Ab)又は(A)は、上記重合性モノマー(Ab)又は(A)の有する適度な疎水性を示す構造、適度な剛直性を示す構造及び適度な柔軟性を示す構造という構造特性により、かかる重合性モノマー(Ab)又は(A)を含有する歯科材料用組成物(b)が高い接着性能を有すると考えられる。さらに、上記重合性モノマー(A)がアクリレートモノマーである場合、その硬化物の靱性をも向上させると考えられ、好ましい態様のひとつといえる。
上記重合性モノマー(Ab)又は(A)がアクリレートである場合(一般式(1)においてR1及びR2が水素原子である場合)、上記重合性モノマー(Ab)又は(A)の含有量は、歯科材料用接着性組成物(b)の合計100重量%に対して、好ましくは1〜99重量%、より好ましくは30〜99重量%の範囲である。上記数値範囲の下限値を下回ると硬化体の強度、柔軟性、及び靱性が低下する場合があり、また、その上限値を上回ると接着性が低下する場合がある。
上記歯科材料用接着性組成物(b)はフィラーを含むことが好ましい一態様である。
例えば、歯科材料用接着性組成物(b)を動揺歯固定材として用いる場合には、上記重合性モノマー(Ab)又は(A)の含有量は、歯科材料用接着性組成物(b)の合計100重量%に対して、好ましくは50〜99重量%、より好ましくは60〜95重量%の範囲である。
また、歯科材料用接着性組成物(b)を接着性セメントとして用いる場合には、上記重合性モノマー(Ab)又は(A)の含有量は、歯科材料用接着性組成物(b)の合計100重量%に対して、好ましくは1〜50重量%、より好ましくは2〜40重量%以下の範囲である。
歯科材料用接着性組成物(b)には、重合性モノマー(Ab)又は(A)に加えて、前述の酸性基及び(メタ)アクリロイル基を同一分子内に含有する(メタ)アクリレートモノマー(Bb)が含有されていることが好ましい一態様である。これら2種類のモノマーが含まれていることにより、歯科材料用接着性組成物(b)はより高い接着性能、及びより優れた保存安定性を示す。また、これら2種類のモノマーを組み合わせることで、その硬化物の強度及び弾性率がより向上する傾向にある。この組み合わせにより、接着成分そのものの強度への寄与がより大きくなり、接着剤層の破壊いわゆる凝集破壊の防止がより効果的になり、結果として接着剤層の強度がより向上する傾向にあると考えられる。
上記(メタ)アクリレートモノマー(Bb)の含有量については、本発明の第2態様の効果を損なわない限り特に制限はないが、歯科材料用接着性組成物(b)中、一般的に0.1〜50重量%であり、好ましくは0.1〜30重量%、より好ましくは0.5〜20重量%、さらに好ましくは1〜20重量%、さらに好ましくは1〜10重量%である。前記数値範囲の下限値を下回ると接着性が担保できなくなる場合がある。
また、上記歯科材料用接着性組成物(b)においては、(メタ)アクリレートモノマー(Bb)に含まれる重合性基の数が、歯科材料用接着性組成物(b)に含まれる全重合性基の数に対して、50%以下であることが好ましい。本発明の第2態様の効果を奏する上では、(メタ)アクリレートモノマー(Bb)に含まれる重合性基の数は、歯科材料用接着性組成物(b)に含まれる全重合性基の数に対して、50%未満であることがより好ましく、0.1〜20%であることがさらに好ましく、0.5〜10%であることが特に好ましい。
また、上記歯科材料用接着性組成物(b)は、前述の低粘度(メタ)アクリレートモノマー(Cb)を含有することができる。低粘度(メタ)アクリレートモノマー(Cb)の25℃における粘度は1〜5,000mPaであることが好ましい。その含有量については、本発明の第2態様の効果を損なわない限り特に制限はないが、好ましくは1〜90重量%であり、より好ましくは5〜40重量%である。
また、上記歯科材料用接着性組成物(b)は、前述の重合開始剤(Db)を含有することができる。その含有量については、本発明の第2態様の効果を損なわない限り特に制限はないが、一般的に0.01〜5重量%であり、好ましくは0.1〜1重量%である。なお、ここでの重合開始剤(Db)の重量は、該重合開始剤系が複数の成分で構成されている場合は、その合計重量を意味する。
また、上記歯科材料用接着性組成物(b)は、前述の重合禁止剤(Eb)を含有することができる。その含有量については、本発明の第2態様の効果を損なわない限り特に制限はないが、一般的に0.01〜5重量%であり、好ましくは0.1〜1重量%である。0.001〜0.5重量%を添加することが好ましく、0.002〜0.3重量%を添加することがより好ましく、0.005〜0.1重量%を添加することがさらに好ましい。
また、上記歯科材料用接着性組成物(b)は、前述のフィラー(Fb)を含有することができる。その含有量については、本発明の第2態様の効果を損なわない限り特に制限はないが、一般的に1〜90重量%であり、好ましくは5〜80重量%である。
上記歯科材料用接着性組成物(b)は、歯科材料用接着性組成物用の上記重合性モノマー(Ab)及び任意のその他の成分を所望量混和することにより製造できる。その製造法に関しては、公知の方法であれば制限なく用いることができるが、例えば公知の混練装置を用いて、所望量の各種成分を十分に混練し、必要に応じて減圧下脱泡等することにより製造できる。各成分の配合比率は、特に制限されるものではなく、歯科材料用接着性組成物(b)の用途に応じて、それぞれ有効量を配合すればよい。
歯科材料用接着性組成物(b)の25℃における粘度は、好ましくは1〜100,000mPa・sであり、より好ましくは10〜10,000mPa・sである。
歯科材料用接着性組成物(b)は、製造時に歯科材料用接着性組成物用の上記重合性モノマー(Ab)、及び目的に応じて必要とされるその他の任意成分を所望量混和して、一剤の組成物として、実用に供することができる。また、重合形式、及び保存安定性等を勘案して、二剤以上に分けた複数の剤を含むキットを調製し、使用直前にこれらを公知の方法で混和させてから、組成物として使用することもできる。
歯科材料用接着性組成物(b)を使用する際には、公知の方法で被着物を表面処理することがある。例えば、歯面を公知の方法で、エッチング処理、プライマー処理することがある。また例えば補綴物の表面を公知の方法で、表面処理することがある。
歯科材料用接着性組成物(b)の用途は特には限定されないが、典型的な例としては、接着性セメント、ボンディング材、動揺歯固定用接着剤、インプラント用仮着セメント等が挙げられる。
本発明の第3態様である歯科用接着性硬化性組成物(c)に関して、以下、具体的に説明する。
なお、以下の第3態様の説明において、好適な数値範囲などの記述に関して「XX〜YY」(XXとYYは数値等)とある記載は、「XX以上、及び/又は、YY以下」の意である。
歯科用接着性硬化性組成物(c)は、上記歯科材料用重合性モノマー(A)又は下記特定構造の重合性モノマー(Ac)、分子内に酸性基を有する重合性モノマー(Bc)、重合開始剤(Cc)、及び還元剤(Dc)を含むことを特徴とする。
本発明において使用される重合性モノマーは、特に指定されていない限り、1分子内に前記重合性基から選択される基を少なくとも1個含有していればよく、重合性モノマーを複数個有する多官能性モノマー及び上記重合性基を1個有する単官能性モノマーが例示される(以下に記述する重合性モノマーにおける重合性基は、すべてこれと同様に解釈されるべきである)。
歯科用接着性硬化性組成物(c)には、歯科材料用重合性モノマー(A)が含まれる。歯科用接着性硬化性組成物(c)に用いられる重合性モノマー(A)の好適な一態様は、R7及びR8が水素原子である、下記一般式(1c)で表される重合性モノマー(Ac)である。
上記一般式(1c)中のRa、R1、R2、R3、R4、R5、R6、Rb、及びRcの定義は、一般式(1)における定義と同一である。以下、歯科用接着剤組成物(c)として用いる重合性モノマー(A)と、その好適な一態様である重合性モノマー(Ac)とについて併せて説明する。
歯科用接着性硬化性組成物(c)として用いる場合、上記一般式(1)及び(1c)中のRaに含まれる二価の芳香族炭化水素基、及び二価の橋かけ構造を有してもよい環式炭化水素基の炭素数には制限はないが、適度な剛直性を有する観点より、6〜9であり、好ましくは6〜7である。
Raに含まれる二価の基の好ましい一態様は、芳香族炭化水素基である。このような芳香族炭化水素基としては、具体的にはフェニレン基等が挙げられる。一般式(1)及び(1c)において、該芳香族炭化水素基の芳香環に対する、Raに隣接する炭素原子の二カ所の結合位置の位置関係は、オルト位、メタ位、又はパラ位のいずれであってもよい。しかし、本願発明の効果を奏する上では、これら二カ所の結合位置の位置関係は、メタ位又はパラ位であることが好ましく、メタ位であることがより好ましい。これらの位置異性体は、単独で使用されることもあるし、2種以上の混合物として使用されることもある。
Raに含まれる二価の基の好ましい一態様は、橋かけ構造を有してもよい環式炭化水素基である。橋かけ構造を有してもよい環式炭化水素基とは、具体的には橋かけ構造を有している環式炭化水素基、もしくは橋かけ構造を有しない環式炭化水素基である。橋かけ構造を有している環式炭化水素基としては、具体的には、ビシクロ[2.2.1]ヘプチレン基(通称「ノルボルネン基」)等が挙げられる。橋かけ構造を有しない環式炭化水素基は、具体的には、シクロヘキシルレン基、及び3,5,5−トリメチルシクロヘキシレン基等が挙げられる。一般式(1)及び(1c)において、橋かけ構造を有してもよい環式炭化水素基中の炭化水素環に対する、Raに隣接する炭素原子の二カ所の結合位置の位置関係は限定されない。本発明の第3態様の効果を奏する上では、これら二カ所の結合位置の位置関係は、上記炭化水素環の同一の炭素原子上でないことが好ましく、隣接した炭素上にないことが好ましい。これらの位置異性体は、単独で使用されることもあるし、2種以上の混合物として使用されることもある。
Raに含まれる二価の基としては、適度な剛直性を有する観点より芳香族炭化水素基、又は橋かけ構造を有している環式炭化水素基が好ましく、橋かけ構造を有している環式炭化水素基が特に好ましい。
上記一般式(1)及び(1c)中のR3、R4、R5及びR6は水素原子又は炭化水素基であるが、適度な剛直性を有する観点よりR3、R4、R5及びR6は水素原子であることが好ましい。
上記一般式(1)及び(1c)中、m及びnはそれぞれ独立に0〜4であるが、m及びnは0又は1であることが好ましい。m及びnが0のとき、Ra中の炭素の一つはカルバモイル基の炭素と結合している。適度な剛直性を有する観点より、m又はnの少なくとも一方は1であることが好ましい。また、上記一般式(1)及び(1c)中、m及びnが1であることは好ましい一態様である。さらに、上記一般式(1)及び(1c)中、m又はnのどちらか一方が0であり、かつ他方が1であることも好ましい他の一態様である。
上記一般式(1)及び(1c)中の二つのカルバモイル基に挟まれる下記一般式(2c)にあたる部分の好ましい一態様は、以下の一般式(3c)で表した構造が好ましい。
上記一般式(1)及び(1c)中、Rb及びRcは、それぞれ独立に、水素原子が炭素数1〜3のアルキル基又は(メタ)アクリロイルオキシメチレン基で置換されていてもよい炭素数2〜6の直鎖アルキレン基、又は炭素数2〜6の直鎖オキシアルキレン基を示す。
Rb及びRcとしては、水素原子が炭素数1〜3のアルキル基又はアクリロイルオキシメチレン基で置換されていてもよい炭素数2〜6の直鎖アルキレン基、又は炭素数2〜6の直鎖オキシアルキレン基が好ましい。
上記直鎖アルキレン基としては、例えば、−CH2CH2−、−CH2CH2CH2−、−CH2CH2CH2CH2−、−CH2CH2CH2CH2CH2−、及び−CH2CH2CH2CH2CH2CH2−などが挙げられる。これら直鎖アルキレン基の好ましい一態様は、例えば、−CH2CH2−、−CH2CH2CH2−、−CH2CH2CH2CH2−等である。上記直鎖オキシアルキレン基としては、例えば、−CH2CH2OCH2CH2−、及び−CH2CH2OCH2CH2OCH2CH2−などが挙げられる。上記直鎖オキシアルキレン基の好ましい一態様は、例えば、−CH2CH2OCH2CH2−等である。上記直鎖アルキレン基又は直鎖オキシアルキレン基の炭素数としては、歯科用接着性硬化性組成物(c)に適度な柔軟性を持たせる観点から、炭素数は2〜6であり、好ましくは2〜4、より好ましくは2である。
上記直鎖アルキレン基又は直鎖オキシアルキレン基に含まれる水素原子と置換可能なアルキル基としては、例えば、CH3−、CH3CH2−、CH3CH2CH2−、及び(CH3)2CH−などが挙げられる。歯科用接着性硬化性組成物(c)に適度な柔軟性を持たせる観点から、該アルキル基の炭素数としては、1〜3が好ましく、1〜2がより好ましく、1がさらに好ましい。
上記直鎖アルキレン基又は直鎖オキシアルキレン基に含まれる水素原子と置換可能な(メタ)アクリロイルオキシメチレン基としては、メタクリロイルオキシメチレン基及びアクリロイルオキシメチレン基が挙げられる。
上記一般式(1)及び(1c)中、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基である。R1及びR2としては、炭素数1〜3のアルキル基が好ましい。
上記アルキル基としては、具体的にはメチル基、エチル基などが挙げられ、疎水性の観点から水素原子よりもメチル基の方が好ましい。
上記一般式中、R7及びR8は、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基である。R7及びR8としては、水素原子が好ましい。R7及びR8がともに水素原子である場合には、前述したとおり、一般式(1c)で示される化合物になる。
一般式((1)又は(1c)で示される特定構造の化合物は、ジイソシアネートとヒドロキシアルキルメタクリレートなどとの反応生成物と構造が同じであり、公知の製造法による製造が可能である。該化合物は、例えば、前述した歯科材料用重合性モノマー(A)及び(Aa)と同様の方法により製造できる。一般式(1)又は(1c)で示される特定構造の化合物(例えば、二つのカルバモイル基に挟まれる部分が、上記式(2c)で示される構造を有する化合物)は、環式炭化水素基又は芳香族炭化水素基を含むジイソシアネートから導くことができる。歯科用接着性硬化性組成物(c)に用いる重合性モノマー(A)又は(Ac)としては、環式炭化水素基又は芳香族炭化水素基を含むものが好ましい。
重合性モノマーの含有量は、上記歯科用接着性硬化性組成物(c)の全重量(2剤以上に分けて保存されており、最終的に混合して用いる場合には、それらを最終的に混合した後の全重量;以下、組成物(c)についての重量についても同様)100重量部に対して、好ましくは5重量部以上99重量部以下、より好ましくは10重量部以上95重量部以下、さらに好ましくは15重量部以上90重量部以下である。
一般式(1)で示される特定構造の化合物である重合性モノマー(A)の含有量は、上記歯科用接着性硬化性組成物(c)に含まれる重合性モノマーの全重量 100重量部に対して、好ましくは0.1重量部以上99重量部以下、より好ましくは0.5重量部以上95重量部以下、さらに好ましくは1重量部以上90重量部以下である。前記数値範囲の下限値を下回ると、歯科用接着性硬化性組成物(c)の室温以上での保存安定性を担保できなくなる場合がある。
上記歯科用接着性硬化性組成物(c)には、分子内に酸性基を含有する重合性モノマー(Bc)が含まれる。重合性モノマー(Bc)に含まれる酸性基としては、例えば、リン酸基、カルボン酸基(酸無水物基を含む)、チオリン酸基及びスルホン酸基などが挙げられる。重合性モノマー(Bc)に含まれる重合性基としては、例えば(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリルアミド基、スチリル基、ビニル基、アリル基などのラジカル重合可能な炭素−炭素不飽和二重結合を有する基等が挙げられる。重合性基の中でも、歯科用接着性硬化性組成物(c)は主に口腔内で使用され、口腔内における加水分解等によるモノマーの分解が起きにくいことなどを考慮して重合性基はメタクリロイル基とすることが好ましい。
リン酸基を有する重合性モノマーとしては、例えば、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンホスフェート、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルジハイドロジェンホスフェート、4−(メタ)アクリロイルオキシブチルジハイドロジェンホスフェート、5−(メタ)アクリロイルオキシペンチルジハイドロジェンホスフェート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルジハイドロジェンホスフェート、7−(メタ)アクリロイルオキシヘプチルジハイドロジェンホスフェート、8−(メタ)アクリロイルオキシオクチルジハイドロジェンホスフェート、9−(メタ)アクリロイルオキシノニルジハイドロジェンホスフェート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート、11−(メタ)アクリロイルオキシウンデシルジハイドロジェンホスフェート、12−(メタ)アクリロイルオキシドデシルジハイドロジェンホスフェート、16−(メタ)アクリロイルオキシヘキサデシルジハイドロジェンホスフェート、20−(メタ)アクリロイルオキシイコシルジハイドロジェンホスフェート、等の(メタ)アクリロイルオキシアルキルジハイドロジェンホスフェート、ビス〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔4−(メタ)アクリロイルオキシブチル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔8−(メタ)アクリロイルオキシオクチル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔9−(メタ)アクリロイルオキシノニル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔10−(メタ)アクリロイルオキシデシル〕ハイドロジェンホスフェート、等のビス〔(メタ)アクリロイルオキシアルキル〕ハイドロジェンホスフェート、1,3−ジ(メタ)アクリロイルオキシプロピルジハイドロジェンホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルハイドロジェンホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ブロモエチルハイドロジェンホスフェート、ビス〔2−(メタ)アクリロイルオキシ−(1−ヒドロキシメチル)エチル〕ハイドロジェンホスフェート、及びこれらの酸塩化物、アルカリ金属塩、アンモニウム塩等が挙げられる。これら化合物におけるリン酸基は、チオリン酸基に置き換えることができる。これらリン酸基を有する重合性モノマーは単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。歯科用接着性硬化性組成物(c)では、これらの中でも、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルアシドホスフェート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルアシドホスフェートが好ましい。
ピロリン酸基を有する重合性モノマーとしては、例えば、ピロリン酸ビス〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕、ピロリン酸ビス〔4−(メタ)アクリロイルオキシブチル〕、ピロリン酸ビス〔6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシル〕、ピロリン酸ビス〔8−(メタ)アクリロイルオキシオクチル〕、ピロリン酸ビス〔10−(メタ)アクリロイルオキシデシル〕、及びこれらの酸塩化物、アルカリ金属塩、アンモニウム塩等が挙げられる。これら化合物におけるピロリン酸基は、チオピロリン酸基に置き換えることができる。これらピロリン酸基を有する重合性モノマーは単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
ホスホン酸基を有する重合性モノマーとしては、例えば、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルホスホネート、5−(メタ)アクリロイルオキシペンチル−3−ホスホノプロピオネート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシル−3−ホスホノプロピオネート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシル−3−ホスホノプロピオネート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシル−3−ホスホノアセテート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシル−3−ホスホノアセテート、及びこれらの酸塩化物、アルカリ金属塩、アンモニウム塩等が挙げられる。これら化合物におけるホスホン酸基は、チオホスホン酸基に置き換えることができる。これらホスホン酸基を有する重合性モノマーは単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
スルホン酸基を有する重合性モノマーとしては、例えば、2−スルホエチル(メタ)アクリレート、2−スルホ−1−プロピル(メタ)アクリレート、1−スルホ−2−プロピル(メタ)アクリレート、1−スルホ−2−ブチル(メタ)アクリレート、3−スルホ−2−ブチル(メタ)アクリレート、3−ブロモ−2−スルホ−2−プロピル(メタ)アクリレート、3−メトキシ−1−スルホ−2−プロピル(メタ)アクリレート、1,1−ジメチル−2−スルホエチル(メタ)アクリルアミド、及びこれらの酸塩化物、アルカリ金属塩、アンモニウム塩等を挙げることができる。これらのスルホン酸基を有する重合性モノマーは単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
カルボン酸基(カルボン酸基の酸無水物基を含む)を有する重合性モノマーとしては、例えば、モノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸及びテトラカルボン酸又はこれらの誘導体を挙げることができ、これらの例としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、p−ビニル安息香酸、11−(メタ)アクリロイルオキシ−1,1−ウンデカンジカルボン酸(メタクリレートの場合:「MAC10」)、1,4−ジ(メタ)アクリロイルオキシエチルピロメリット酸、6−(メタ)アクリロイルオキシエチルナフタレン−1,2,6−トリカルボン酸、4−(メタ)アクリロイルオキシメチルトリメリット酸及びその無水物、4−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリット酸(メタクリレートの場合:「4−MET」)及びその無水物(メタクリレートの場合:4−META)、4−(メタ)アクリロイルオキシブチルトリメリット酸及びその無水物、4−[2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシ]ブチルトリメリット酸及びその無水物、2,3−ビス(3,4−ジカルボキシベンゾイルオキシ)プロピル(メタ)アクリレート、N,O−ジ(メタ)アクリロイルチロシン、O-(メタ)アクリロイルチロシン、N−(メタ)アクリロイルチロシン、N−(メタ)アクリロイルフェニルアラニン、N−(メタ)アクリロイル−p−アミノ安息香酸、N−(メタ)アクリロイル−O−アミノ安息香酸、N−(メタ)アクリロイル−5−アミノサリチル酸(メタクリレートの場合:「5−MASA」)、N−(メタ)アクリロイル−4−アミノサリチル酸、2又は3又は4−(メタ)アクリロイルオキシ安息香酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとピロメリット酸二無水物の付加生成物(メタクリレートの場合:「PMDM」)、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートと無水マレイン酸又は3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(メタクリレートの場合:「BTDA」)又は3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物の付加反応物、2−(3,4−ジカルボキシベンゾイルオキシ)−1,3−ジ(メタ)アクリロイルオキシプロパン、N−フェニルグリシン又はN−トリルグリシンとグリシジル(メタ)アクリレートとの付加物、4−[(2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル)アミノ]フタル酸、3又は4−[N−メチル-N−(2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル)アミノ]フタル酸、及びこれらの酸塩化物、アルカリ金属塩、アンモニウム塩等が挙げられる。これらカルボン酸基を有する重合性モノマーは単独であるいは2種以上組み合わせて使用することができる。
また、これら重合性モノマー(Bc)は単独であるいは2種以上組み合わせて使用することができる。
分子内に酸性基を含有する重合性モノマー(Bc)の含有量は、上記歯科用接着性硬化性組成物(c)に含まれる重合性モノマー 全重量100重量部に対して、好ましくは0.1〜30重量部、より好ましくは0.5〜20重量部、さらに好ましくは1〜10重量部である。前記数値範囲の下限値を下回ると接着性が担保できなくなる場合がある。
上記歯科用接着性硬化性組成物(c)には、上記歯科材料用重合性モノマー(A)、及び分子内に酸性基を含有する重合性モノマー(Bc)と共重合可能な、重合性モノマー(A)及び(Bc)以外のその他の重合性モノマー(Ec)(酸性基非含有重合性モノマー)を含んでいてもよい。重合性モノマー(Ec)としては、重合性基を有するラジカル重合性モノマーが好ましく、重合性基として、例えば(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリルアミド基、スチリル基、ビニル基、アリル基などのラジカル重合可能な炭素−炭素不飽和二重結合を有する基等が挙げられる。重合性基の中でも、歯科用接着性硬化性組成物(c)は主に口腔内で使用され、口腔内における加水分解等によるモノマーの分解が起きにくいことなどを考慮して重合性基はメタクリロイル基とすることが好ましい。
上記歯科用接着性硬化性組成物(c)に含まれる重合性モノマーの全重量を100重量部とした場合に、その他の重合性モノマー(Ec)の含有量は、好ましくは1重量部以上95重量部以下、より好ましくは5重量部以上90重量部以下、さらに好ましくは10重量部以上85重量部以下である。
上記歯科用接着性硬化性組成物(c)に使用できる、その他の重合性モノマー(Ec)は、単官能重合性モノマー(Ec1)と多官能重合性モノマーとに大別される。多官能モノマーは、芳香族化合物系二官能重合性モノマー(Ec2R)、脂肪族化合物系二官能重合性モノマー(Ec2L)などの2官能重合性モノマー(Ec2)と3官能以上の多官能重合性モノマー(Ec3)とに大別される。
単官能性モノマー(Ec1)としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、エリスリトールモノ(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N、N−(ジヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2,3−ジブロモプロピル(メタ)アクリレート、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、11−(メタ)アクリロイルオキシウンデシルトリメトキシシラン、(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノプロピルメタクリレート、ジメチルアミノブチルメタクリレート及びこれらのアクリレートなどが挙げられる。
芳香族化合物系二官能性重合性モノマー(Ec2R)としては、例えば、2,2−ビス((メタ)アクリロイルオキシフェニル)プロパン、2,2−ビス〔4−(3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕プロパン(通称「Bis−GMA」)、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン)、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシテトラエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシペンタエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジプロポキシフェニル)プロパン、2−(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)−2−(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン、2−(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)−2−(4−(メタ)アクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、2−(4−(メタ)アクリロイルオキシジプロポキシフェニル)−2−(4−(メタ)アクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシイソプロポキシフェニル)プロパン、1,4−ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)ピロメリテートなどが挙げられる。これらの中でも、2,2−ビス〔4−(3−(メタ)アクリロイルオキシ)−2−ヒドロキシプロポキシフェニル〕プロパン(通称「bis−GMA」)及び2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパンが好ましい。なお、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパンのうち、エトキシ基の平均付加モル数が2.6である化合物(通称「D2.6E」)が好ましい。
脂肪族化合物系二官能性重合性モノマー(Ec2L)としては、例えば、グリセロールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、等のアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12−ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2−ビス(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)エタン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンビス(2−カルバモイルオキシエチル)ジメタクリレート(通称「UDMA」)、1,2−ビス(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)エタンなどが挙げられる。これらの中でも、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンビス(2−カルバモイルオキシエチル)ジメタクリレート(通称「UDMA」)及びトリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート(通称「TEGDMA」)が好ましい。
三官能性以上の重合性モノマー(Ec3)としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、N,N−(2,2,4−トリメチルヘキサメチレン)ビス〔2−(アミノカルボキシ)プロパン−1,3−ジオール〕テトラメタクリレート、1,7−ジアクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラアクリロイルオキシメチル−4−オキシヘプタンなどが挙げられる。
上記歯科用接着性硬化性組成物(c)に含まれる重合性モノマーの全重量を100重量部とした場合に、単官能重合性モノマー(Ec1)の含有量は、その効果を得たい場合は、好ましくは0.1〜95重量部、より好ましくは1〜80重量部、さらに好ましくは5〜50重量部である。前記数値の範囲内であれば、得られた組成物と各種被着体との親和性が高くなり、歯科用接着性硬化性組成物(c)の硬化物の被着体に対する接着強度に優れる。
2官能重合性モノマー(Ec2)の含有量は、上記歯科用接着性硬化性組成物(c)に含まれる重合性モノマーの全重量 100重量部に対して、好ましくは0.1〜95重量部、より好ましくは1〜80重量部、さらに好ましくは5〜70重量部である。前記数値の下限以上であれば、硬化前の組成物(c)の操作性が向上し、前記数値の上限値以下であれば組成物(c)から得られる硬化物に優れた強度を付与できる。
芳香族化合物系二官能重合性モノマー(Ec2R)の含有量は、上記歯科用接着性硬化性組成物(c)に含まれる重合性モノマーの全重量 100重量部に対して、好ましくは0.1〜95重量部、より好ましくは1〜80重量部、さらに好ましくは5〜70重量部である。歯科用接着性硬化性組成物(c)に前記範囲の重合性モノマー(Ec2R)を配合することにより、組成物(c)から得られる硬化物の強度が向上する。
脂肪族化合物系二官能重合性モノマー(Ec2L)の含有量は、上記歯科用接着性硬化性組成物(c)に含まれる重合性モノマーの全重量 100重量部に対して、好ましくは0.1〜95重量部、より好ましくは1〜80重量部、さらに好ましくは5〜70重量部である。歯科用接着性硬化性組成物(c)に前記範囲の重合性モノマー(Ec2L)を配合することにより、硬化前の組成物(c)の操作性が向上する。
3官能以上の多官能重合性モノマー(Ec3)の含有量は、上記歯科用接着性硬化性組成物(c)に含まれる重合性モノマーの全重量 100重量部に対して、その効果を得たい場合、好ましくは1〜90重量部である。
なお、上記歯科用接着性硬化性組成物(c)が、保存等するために、第1剤、第2剤等の複数の剤に分けてキットの状態とされている場合には、上記重合性モノマーは1つの剤に含まれていてもよく、複数の剤に含まれていてもよい。
歯科用接着性硬化性組成物(c)には、重合開始剤(Cc)が含まれる。
重合開始剤(Cc)は過酸化物(Cc1)を用いることが好ましい。過酸化物(Cc1)としては、例えば、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシケタール、ケトンパーオキサイド、ハイドロパーオキサイドなどの有機過酸化物;過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、塩素酸カリウム、臭素酸カリウム及び過リン酸カリウムなどの無機過酸化物;アルキルボラン、アルキルボランの部分酸化物、無機硫黄化合物、アゾ化合物等が挙げられる。これら過酸化物(Cc1)の中でも、化学重合性の高さから、ジアシルパーオキサイド(Cc11)が好ましい。
上記ジアシルパーオキサイド(Cc11)としては、例えば、ジアセチルペルオキシド、ジプロピルペルオキシド、ジブチルペルオキシド、ジカプリルペルオキシド、ジラウリルペルオキシド、ジラウリルペルオキシド、過酸化ベンゾイル(BPO)、p,p'−ジクロルベンゾイルペルオキシド、p,p'−ジメトキシベンゾイルペルオキシド、p,p'−ジメチルベンゾイルペルオキシド、p,p'−ジニトロジベンゾイルペルオキシドなどが挙げられる。これらジアシルパーオキサイド(Cc11)の中でも、BPOが好ましい。
上記過酸化物ジアシルパーオキサイド(Cc11)としては、有機ホウ素化合物(Cc12)又はこれを含有してなる組成物も好適に使用することができる。有機ホウ素化合物(Cc12)として、例えば、トリエチルホウ素、トリプロピルホウ素、トリイソプロピルホウ素、トリブチルホウ素、トリ−sec−ブチルホウ素、トリイソブチルホウ素、トリペンチルホウ素、トリヘキシルホウ素、トリオクチルホウ素、トリデシルホウ素、トリドデシルホウ素、トリシクロペンチルホウ素、トリシクロヘキシルホウ素などのトリアルキルホウ素類;ブトキシジブチルホウ素などのアルコキシアルキルホウ素類;ブチルジシクロヘキシルボラン、ジイソアミルボラン、9−ボラビシクロ[3,3,1]ノナンなどのジアルキルボランなどが挙げられ、上記有機ホウ素化合物の一部が部分酸化された化合物も挙げられる。これら有機ホウ素化合物(Cc12)は、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。これら有機ホウ素化合物(Cc12)の中でも、トリブチルホウ素、部分酸化トリブチルホウ素が好ましい。部分酸化トリブチルホウ素としては、例えば、トリブチルホウ素1モルに対して酸素分子を0.3〜0.9モル付加させたものが好ましい。また、有機ホウ素化合物(Cc12)に、非プロトン性溶媒及び/又は有機ホウ素化合物に不活性な有機オリゴマー又はポリマー(液状又は固体状のいずれであってもよい)を含有する組成物を上記重合開始剤(Cc)として使用できる。
上記重合開始剤(Cc)として、前述した過酸化物(Cc1)に加えて光重合開始剤(Cc2)を併用してもよい。光重合開始剤(Cc2)は、通常、紫外線又は可視光線によって増感される化合物である。光重合開始剤(Cc2)としては、例えば、α−ケトカルボニル化合物(Cc21)、アシルホスフィンオキサイド化合物(Cc22)などが挙げられる。
好適に使用される上記α-ケトカルボニル化合物(Cc21)としては、例えば、ジアセチル、2,3−ペンタジオン、2,3−ヘキサジオン、ベンジル、4,4'−ジメトキシベンジル、4,4'−ジエトキシベンジル、4,4'−オキシベンジル、4,4'−ジクロルベンジル、4−ニトロベンジル、α−ナフチル、β−ナフチル、カンファーキノン(CQ)、カンファーキノンスルホン酸、カンファーキノンカルボン酸、1,2−シクロへキサンジオンなどのα−ジケトン;メチルグリオキザール、フェニルグリオキザールなどのα−ケトアルデヒド:ピルビン酸、ベンゾイルギ酸、フェニルピルビン酸、ピルビン酸メチル、ベンゾイルギ酸エチル、フェニルピルビン酸メチル、フェニルピルビン酸ブチルなどが挙げられる。これらα-ケトカルボニル化合物(Cc21)の中でも、安定性などの面から、α−ジケトンが好ましく、ジアセチル、ベンジル、カンフアーキノン(CQ)がより好ましい。
上記アシルホスフィンオキサイド化合物(Cc22)としては、例えば、ベンゾイルジメトキシホスフィンオキシド、ベンゾイルエトキシフェニルホスフィンオキシド、ベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2−メチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドなどが挙げられる。
これら光重合開始剤(Cc2)は、単独であるいは2種以上組み合わせて使用することができる。
これら重合開始剤(Cc)は、単独であるいは2種以上組み合わせて使用することができる。
重合開始剤(Cc)の含有量は、上記歯科用接着性硬化性組成物(c)に含まれる重合性モノマーの全重量 100重量部に対して、好ましくは0.0001〜20重量部、より好ましくは0.05〜10重量部、さらに好ましくは0.1〜5重量部である。前記数値範囲の下限値を下回ると硬化性が十分に発揮されなくなる場合がある。
過酸化物(Cc1)の含有量は、上記歯科用接着性硬化性組成物(c)に含まれる重合性モノマーの全重量 100重量部に対して、好ましくは0.01〜20重量部、より好ましくは0.05〜10重量部、さらに好ましくは0.1〜5重量部である。前記数値範囲の下限値を下回ると化学重合性を担保できなくなる場合があり、また、その上限値を上回ると硬化速度が必要以上に速く、十分な作業時間が確保できなくなる恐れがあり、さらには組成物からの析出を招く恐れがある。
ジアシルパーオキサイド(Cc11)の含有量は、上記歯科用接着性硬化性組成物(c)に含まれる重合性モノマーの全重量 100重量部に対して、好ましくは0.01〜20重量部、より好ましくは0.05〜10重量部、さらに好ましくは0.1〜5重量部である。前記数値範囲の下限値を下回ると化学重合性を担保できなくなる場合があり、また、その上限値を上回ると硬化速度が必要以上に速く、十分な作業時間が確保できなくなる恐れがあり、さらには組成物からの析出を招く恐れがある。
有機ホウ素化合物(Cc12)の含有量は、上記歯科用接着性硬化性組成物(c)に含まれる重合性モノマーの全重量 100重量部に対して、好ましくは0.001〜20重量部、より好ましくは0.01〜10重量部、さらに好ましくは0.1〜5重量部である。前記数値範囲の下限値を下回ると組成物の重合性に対する好適な効果が得られなくなる場合があり、また、その上限値を上回ると組成物からの析出ならびに硬化不良を招く恐れがあり、いずれも好ましくない。
光重合開始剤(Cc2)の含有量は、上記歯科用接着性硬化性組成物(c)に含まれる重合性モノマーの全重量 100重量部に対して、好ましくは0.0001〜15重量部、より好ましくは0.0005〜5重量部、さらに好ましくは0.001〜5重量部である。前記数値範囲の下限値を下回ると重合が十分に進行しなくなる場合があり、また、その上限値を上回ると組成物からの析出ならびに硬化不良を招く恐れがある。
α−ケトカルボニル化合物(Cc21)又はアシルホスフィンオキサイド化合物(Cc22)の含有量は、上記歯科用接着性硬化性組成物(c)に含まれる重合性モノマーの全重量 100重量部に対して、好ましくは0.0001〜15重量部、より好ましくは0.001〜10重量部、さらに好ましくは0.005〜5重量部である。上記歯科用接着性硬化性組成物(c)では、α−ケトカルボニル化合物(Cc21)を配合量が多いものを化学重合させた場合、硬化物に黄色味が強く残る場合があるため、α−ケトカルボニル化合物(Cc21)の含有量は、上記歯科用接着性硬化性組成物(c)に含まれる重合性モノマーの全重量 100重量部に対して、0.001〜0.5重量部とすることが好ましい。
上記歯科用接着性硬化性組成物(c)には、還元剤(Dc)が含まれる。上記歯科用接着性硬化性組成物(c)のように酸生成分を含有する組成物において、重合開始剤(Cc)を使用して化学重合させる際に、還元剤(Dc)を併用すると重合を効率的に行うことができる。上記還元剤としては、例えば、アミン化合物(Dc1)又はその塩、スルフィン酸化合物(Dc2)又はその塩などが挙げられる。なお、これら化合物又は塩が還元剤として使用できる限り、特に制限無く公知の化合物を使用できる。また、これら化合物又は塩は、脂肪族化合物、脂環族化合物、芳香族化合物又はこれら化合物の塩のいずれであってもよい。また、還元剤(Dc)として、アミン化合物(Dc1)又はその塩とスルフィン酸化合物(Dc2)又はその塩との混合物を使用することは歯科用接着性硬化性組成物(c)の好ましい一態様である。
上記アミン化合物(Dc1)としては、芳香族置換グリシン化合物(Dc11)又はその塩、及び芳香族第三級アミン(Dc12)が好ましい。
芳香族置換グリシン化合物(Dc11)又はその塩としては、芳香族置換グリシン、又はこれらの通常のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アミン塩、アンモニウム塩が使用できる。また芳香族置換グリシン化合物(Dc11)の塩としては、グリシンと芳香族アミンとの塩も使用できる。これらの中でも、芳香族置換グリシン塩を使用すると、保存安定性が向上するためより好ましい。アルカリ金属塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩などが例示できる。アルカリ土類金属塩としてはマグネシウム塩、カルシウム塩、ストロンチウム塩、バリウム塩などが例示できる。アミン塩としては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、アニリン、トルイジン、フェニレンジアミン、キシリレンジアミンなどの第一級アミンの塩;ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ピペリジン、N−メチルアニリン、N−エチルアニリン、ジフェニルアミン、N−メチルトルイジンなどの第二級アミン塩;トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジ(β−ヒドロキシエチル)アニリン、N,N−ジエチルアミン、N,N−ジメチルトルイジン、N,N−ジエチルトルイジン、N,N−(β−ヒドロキシエチル)トルイジンなどの第三級アミンの塩等が例示できる。アンモニウム化合物の塩としてはアンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、テトラプロピルアンモニウム塩、トリメチルベンジルアンモニウム塩などが例示できる。
上記芳香族置換グリシン化合物(Dc11)としては、例えば、N−フェニルグリシン(NPG)、N−トリルグリシン(NTG)、N,N−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)フェニルグリシン(NPG−GMA)などが挙げられる。これら芳香族置換グリシン化合物とこれら化合物の上記塩などが、芳香族置換グリシン化合物又はその塩(Dc11)として使用できる。これら芳香族置換グリシン化合物又はその塩(Dc11)の中でも、NPG及びその塩が好ましい。これら芳香族置換グリシン化合物(Dc11)又はその塩は単独であるいは2種以上組み合わせて使用できる。
上記芳香族第三級アミン(Dc12)としては、N,N−ジメチルアニリン(DMA)、N,N−ジメチル p−トルイジン(DMPT)、N,N−ジエチル p−トルイジン、N,N−ジエタノール p−トルイジン(DEPT)、N,N−ジメチル−m−トルイジン、N,N−ジエチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル p−エチルアニリン、N,N−ジメチル p−イソプロピルアニリン、N,N−ジメチル p−tert−ブチルアニリン、N,N−ジメチルアニシジン、N,N−ジメチルキシリジン、N,N−ジメチル−3,5−ジ−t−ブチルアニリン、N,N−ジメチル p−クロルアニリン、N,N−ジメチル p−フルオロアニリン、N−メチル−N−フェニルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−エチル−N−フェニルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノ安息香酸及びそのアルキルエステル; N,N−ジメチルアミノ安息香酸メチル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチル(DMABAE)、N,N−ジメチルアミノ安息香酸ブトキシエチル(DMABABE)、N,N−ジエチルアミノ安息香酸(DEABA)及びそのアルキルエステル、N,N−ジメチルアミノベンズアルデヒド(DMABAd)、N,N−ジメチルアミノベンゾフェノンなどが挙げられる。これら芳香族第三級アミン(Dc12)の中でも、DMPT、DEPT、DEABAE、DMABABEが好ましい。これら芳香族第三級アミン(Dc12)は単独であるいは2種以上組み合わせて使用できる。
上記アミン化合物(Dc1)として、バルビツール酸化合物(Dc13)、チオ尿素類(Dc14)を用いることもできる。
上記バルビツール酸化合物(Dc13)としては、例えば、1,3,5-トリメチルバルビツール酸、1,3,5-トリエチルバルビツール酸、1,3−ジメチル−5−エチルバルビツール酸、1,5−ジメチルバルビツール酸、1−メチル−5−エチルバルビツール酸、1−メチル−5−プロピルバルビツール酸、5−エチルバルビツール酸、5−プロピルバルビツール酸、5−ブチルバルビツール酸、5−メチル−1−ブチルバルビツール酸、1−ベンジル−5−フェニルバルビツール酸、1−シクロヘキシル−5−エチルバルビツール酸、又はこれらのアルカリ金属塩などが挙げられる。
上記チオ尿素類(Dc14)としては、例えば、チオ尿素、メチルチオ尿素、エチルチオ尿素、N,N'−ジメチルチオ尿素、N,N'−ジエチルチオ尿素、N,N'−ジ−n−プロピルチオ尿素、ジシクロヘキシルチオ尿素、トリメチルチオ尿素、トリエチルチオ尿素、トリ−n−プロピルチオ尿素、トリシクロヘキシルチオ尿素、テトラメチルチオ尿素、テトラエチルチオ尿素、テトラ−n−プロピルチオ尿素、テトラシクロヘキシルチオ尿素などが挙げられる。
上記スルフィン酸化合物(Dc2)又はその塩としては、スルフィン酸又はスルフィン酸の通常のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アミン塩、アンモニウム塩が使用できる。硬化物の色調が優れる点及び保存安定性の観点から芳香族スルフィン酸塩の使用が好ましく、より好ましくは電子吸引性官能基を有する芳香族スルフィン酸塩の使用が好ましい。アルカリ金属塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩などが例示できる。アルカリ土類金属塩としては、マグネシウム塩、カルシウム塩、ストロンチウム塩、バリウム塩などが例示できる。アミン塩としては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、アニリン、トルイジン、フェニレンジアミン、キシリレンジアミンなどの第一級アミンの塩;ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ピペリジン、N−メチルアニリン、N−エチルアニリン、ジフェニルアミン、N−メチルトルイジンなどの第二級アミン塩;トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジ(β−ヒドロキシエチル)アニリン、N,N−ジエチルアミン、N,N−ジメチルトルイジン、N,N−ジエチルトルイジン、N,N−(β−ヒドロキシエチル)トルイジンなどの第三級アミンの塩等が例示できる。アンモニウム化合物の塩としては、アンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、テトラプロピルアンモニウム塩、トリメチルベンジルアンモニウム塩などが例示できる。
上記有機スルフィン酸化合物(Dc2)としては、例えば、メタンスルフィン酸、エタンスルフィン酸、プロパンスルフィン酸、ヘキサンスルフィン酸、オクタンスルフィン酸、デカンスルフィン酸、ドデカンスルフィン酸などのアルカンスルフィン酸;シクロヘキサンスルフィン酸、シクロオクタンスルフィン酸などの脂環族スルフィン酸;、ベンゼンスルフィン酸、o−トルエンスルフィン酸、p−トルエンスルフィン酸、エチルベンゼンスルフィン酸、デシルベンゼンスルフィン酸、ドデシルベンゼンスルフィン酸、クロルベンゼンスルフィン酸、フルオロベンゼンスルフィン酸、ナフタリンスルフィン酸などの芳香族スルフィン酸;等が挙げられる。
上記有機スルフィン酸化合物(Dc2)の塩としては、上記スルフィン酸化合物(Dc2)の塩などが挙げられ、例えば、メタンスルフィン酸リチウム、メタンスルフィン酸ナトリウム、メタンスルフィン酸カリウム、メタンスルフィン酸マグネシウム、メタンスルフィン酸カルシウム、メタンスルフィン酸ストロンチウム、メタンスルフィン酸バリウム、メタンスルフィン酸ブチルアミン塩、メタンスルフィン酸アニリン塩、メタンスルフィン酸トルイジン塩、メタンスルフィン酸フェニレンジアミン塩、メタンスルフィン酸ジエチルアミン塩、メタンスルフィン酸ジフェニルアミン塩、メタンスルフィン酸トリエチルアミン塩、メタンスルフィン酸トリブチルアミン塩、メタンスルフィン酸アンモニウム塩、メタンスルフィン酸テトラメチルアンモニウム、メタンスルフィン酸トリメチルベンジルアンモニウム、ベンゼンスルフィン酸リチウム、ベンゼンスルフィン酸ナトリウム、ベンゼンスルフィン酸カリウム、ベンゼンスルフィン酸マグネシウム、ベンゼンスルフィン酸カルシウム、ベンゼンスルフィン酸ストロンチウム、ベンゼンスルフィン酸バリウム、ベンゼンスルフィン酸ブチルアミン塩、ベンゼンスルフィン酸アニリン塩、ベンゼンスルフィン酸トルイジン塩、ベンゼンスルフィン酸フェニレンジアミン塩、ベンゼンスルフィン酸ジエチルアミン塩、ベンゼンスルフィン酸ジフェニルアミン塩、ベンゼンスルフィン酸トリエチルアミン塩、ベンゼンスルフィン酸トリブチルアミン塩、ベンゼンスルフィン酸アンモニウム塩、ベンゼンスルフィン酸テトラメチルアンモニウム、ベンゼンスルフィン酸トリメチルベンジルアンモニウムなどが挙げられる。
さらに、上記有機スルフィン酸化合物(Dc2)の塩としては、例えば、o−トルエンスルフィン酸リチウム、o−トルエンスルフィン酸ナトリウム、o−トルエンスルフィン酸カリウム、o−トルエンスルフィン酸カルシウム、o−トルエンスルフィン酸シクロヘキシルアミン塩、o−トルエンスルフィン酸アニリン塩、o−トルエンスルフィ酸アンモニウム塩、o−トルエンスルフィン酸テトラエチルアンモニウム、p−トルエンスルフィン酸リチウム、p−トルエンスルフィン酸ナトリウム、p−トルエンスルフィン酸カリウム、p−トルエンスルフィン酸カルシウム、p−トルエンスルフィン酸バリウム、p−トルエンスルフィン酸エチルアミン塩、p−トルエンスルフィン酸ブチルアミン塩、p−トルエンスルフィン酸トルイジン塩、p−トルエンスルフィン酸N−メチルアニリン塩、p−トルエンスルフィン酸ピリジン塩、p−トルエンスルフィン酸アンモニウム塩、p−トルエンスルフィン酸テトラメチルアンモニウム、p−トルエンスルフィン酸テトラエチルアンモニウム、p−トルエンスルフィン酸テトラブチルアンモニウム、β−ナフタリンスルフィン酸ナトリウム、β−ナフタリンスルフィン酸ストロンチウム、β−ナフタリンスルフィン酸トリエチルアミン、β−ナフタリンスルフィン酸N−メチルトルイジン、β−ナフタリンスルフィン酸アンモニウム、β−ナフタリンスルフィン酸トリメチルベンジルアンモニウム、p−クロロベンゼンスルフィン酸リチウム、p−クロロベンゼンスルフィン酸ナトリウム、p−クロロベンゼンスルフィン酸カリウム、p−クロロベンゼンスルフィン酸カルシウム、p−クロロベンゼンスルフィン酸バリウム、p−クロロベンゼンスルフィン酸エチルアミン塩、p−クロロベンゼンスルフィン酸ブチルアミン塩、p−クロロベンゼンスルフィン酸トルイジン塩、p−クロロベンゼンスルフィン酸N−メチルアニリン塩、p−クロロベンゼンスルフィン酸ピリジン塩、p−クロロベンゼンスルフィン酸アンモニウム塩、p−クロロベンゼンスルフィン酸テトラメチルアンモニウム、p−クロロベンゼンスルフィン酸テトラエチルアンモニウム、p−クロロベンゼンスルフィン酸テトラブチルアンモニウムなどが挙げられる。
上記還元剤(Dc)としては、上記の他に、無機還元性化合物(Dc3)、還元性ボレート化合物(Dc4)などが挙げられる。
無機還元性化合物(Dc3)としては、硫黄、窒素及び/又はホウ素を含有する還元性無機化合物が使用できる。硫黄を含有する無機還元性化合物(Dc3)としては、例えば、亜硫酸、重亜硫酸、メタ亜硫酸、メタ重亜硫酸、ピロ亜硫酸、チオ硫酸、亜ジチオン酸、次亜硫酸、ヒドロ亜硫酸、及びこれらの塩が挙げられる。これらの中でも、亜硫酸塩が好ましく、好適な亜硫酸塩としては、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウムなどが挙げられる。窒素を含有する無機還元性化合物(Dc3)としては、例えば、亜硝酸塩が挙げられ、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸カルシウム、亜硝酸アンモニウムなどが挙げられる。還元性ボレート化合物(Dc4)としては、アリールボレート化合物が好ましく、アリールボレーと化合物としては、1分子中に1〜4個のアリール基を有する公知のボレート化合物を制限無く使用することができる。
上記還元剤(Dc)は単独で、あるいは2種以上組み合わせて使用できる。
還元剤(Dc)の含有量は、上記歯科用接着性硬化性組成物(c)に含まれる重合性モノマーの全重量 100重量部に対して、好ましくは0.001〜20重量部、より好ましくは0.005〜10重量部、さらに好ましくは0.01〜5重量部である。前記数値範囲の下限値を下回ると組成物(c)の硬化性が不十分となる場合がある。
アミン化合物(Dc1)又はその塩の含有量は、上記歯科用接着性硬化性組成物(c)に含まれる重合性モノマーの全重量 100重量部に対して、好ましくは0.001〜20重量部、より好ましくは0.005〜10重量部、さらに好ましくは0.01〜5重量部である。前記数値範囲の下限値を下回ると組成物(c)の硬化性が不十分となる場合があり、またその上限値を上回るとアミン化合物の変色により組成物(c)の審美性が低下してしまう場合がある。
スルフィン酸化合物(Dc2)又はその塩の含有量は、上記歯科用接着性硬化性組成物(c)に含まれる重合性モノマーの全重量 100重量部に対して、好ましくは0.001〜15重量部、より好ましくは0.01〜10重量部、さらに好ましくは0.1〜5重量部である。前記数値範囲の下限値を下回ると組成物の重合性が担保できなくなる場合があり、また、還元剤などとしてアミン化合物を併用した場合には、スルフィン酸化合物又はその塩のアミン化合物に由来する変色を抑制する効果が低くなり、組成物(c)の審美性が低下してしまう場合がある。一方、その上限値を上回ると組成物の硬化不良を誘導してしまう場合がある。
芳香族置換グリシン化合物(Dc11)又はその塩の含有量は、上記歯科用接着性硬化性組成物(c)に含まれる重合性モノマーの全重量 100重量部に対して、好ましくは0.001〜10、より好ましくは0.005〜10重量部、さらに好ましくは0.01〜5重量部である。前記数値範囲の下限値を下回ると組成物(c)の重合性が低下する場合があり、また、その上限値を上回ると芳香族置換グリシン化合物由来の変色により硬化性組成物の審美性が低下する場合がある。
芳香族第三級アミン(Dc12)の含有量は、上記歯科用接着性硬化性組成物(c)に含まれる重合性モノマーの全重量 100重量部に対して、好ましくは0.001〜20重量部、より好ましくは0.005〜10重量部、さらに好ましくは0.01〜5重量部である。前記数値範囲の下限値を下回ると組成物の重合性が低下する場合があり、また、その上限値を上回ると芳香族アミン化合物の変色による組成物(c)の審美性が低下する場合がある。
無機還元性化合物(Dc3)の含有量は、上記歯科用接着性硬化性組成物(c)に含まれる重合性モノマーの全重量 100重量部に対して、好ましくは0.01〜10重量部である。前記数値範囲の下限値を下回るとその効果が得られなくなる場合があり、またその上限値を上回ると組成物(c)の硬化不良を誘導する場合がある。
還元性ボレート化合物(Dc4)の含有量は、上記歯科用接着性硬化性組成物(c)に含まれる重合性モノマーの全重量 100重量部に対して、好ましくは0.01〜10重量部である。前記数値範囲の下限値を下回るとその効果が得られなくなる場合がある。
なお、上記還元剤(Dc)の含有量は、上記歯科用接着性硬化性組成物(c)に含まれる重合開始剤(Cc)の全重量 100重量部に対して、好ましくは0.01〜1000重量部、より好ましくは0.05〜750重量部、さらに好ましくは1〜500重量部である。
上記歯科用接着性硬化性組成物(c)には、さらにフィラー(Fc)が含まれていてもよい。フィラー(Fc)としては、無機質ガラスフィラー(Fc1)、微粒子シリカフィラー(Fc2)、有機質フィラー(Fc3)、有機質−無機質複合フィラー(Fc4)などが挙げられる。
無機質ガラスフィラー(Fc1)及び微粒子シリカフィラー(Fc2)となる無機材料としては、例えば、シリカ、シリカアルミナ、アルミナ石英、カオリン、クレー、雲母、マイカ等のシリカを基材とする鉱物;シリカを基材とし、酸化アルミニウム、酸化ホウ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化バリウム、酸化ランタン、酸化ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化カルシウム、酸化リチウム、酸化ナトリウム、酸化ビスマスなどのシリカ以外の無機酸化物を含有するセラミックス;ガラス類としては、ランタンガラス、バリウムガラス、ストロンチウムガラス、ソーダガラス、リチウムボロシリケートガラス、亜鉛ガラス、フルオロアルミノシリケートガラス、ホウ珪酸ガラス、バイオガラスなどのガラス類;結晶石英、ヒドロキシアパタイト、酸化イットリウム、ジルコニア、炭酸カルシウム、硫酸アルミニウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウムリン酸カルシウム、水酸化アルミニウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化リチウム、フッ化イッテルビウムなどが挙げられる。
有機質フィラー(Fc3)としては、重合体の粉砕物、分散重合によって得られた粉末重合体、架橋剤を含む重合性モノマーを重合して得られた物の粉砕物などが挙げられる。有機質フィラー(Fc3)となる有機材料の種類に特に限定はないが、好適な該有機材料としては、重合性モノマーの単独重合体又は共重合体等の重合体が挙げられる。重合体としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸プロピル、ポリメタクリル酸ブチル(PBMA)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリエチレングリコール(PEG)やポリプロピレングリコール(PPG)、ポリビニルアルコール(PVA)などが挙げられる。
無機質−有機質複合フィラー(Fc4)としては、前述した無機系フィラー表面を重合性モノマーからなる重合体で被覆した後、粉砕して得られるフィラーが挙げられる。具体的には、無機質フィラーのうちの微粉末シリカ又は酸化ジルコニウムなどをトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート(TMPT)を主成分とする重合性モノマーからなる重合体で被覆し、得られた複合体を粉砕したフィラー(TMPT・f)が挙げられる。
上記フィラー(Fc)として、無機質ガラスフィラー(Fc1)、微粒子シリカフィラー(Fc2)、無機質-有機質複合フィラー(Fc4)を用いる場合、歯科用接着性硬化性組成物(c)に含まれる重合性モノマーとの親和性や分散性を良好にするために、カップリング剤などで表面処理されたフィラーを用いるのが好ましい。カップリング剤としては、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤、ジルコ−アルミネート系カップリング剤などが挙げられる。これらカップリング剤の中でもシランカップリング剤が好適である。好適なシランカップリング剤としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランあるいはヘキサメチルジシラザンなどが挙げられる。カップリング剤などによる表面処理は公知の方法により行うことだできる。また、これらフィラーの表面処理は、ラジカル重合性モノマーをフィラーの表面にグラフト重合させることによって行ってもよい。
上記フィラー(Fc)としては、無機質ガラスフィラー(Fc1)、微粒子シリカフィラー(Fc2)が好ましく、カップリング剤などの有機化合物で表面処理されている、無機質ガラスフィラー(Fc1)及び微粒子シリカフィラー(Fc2)がより好ましい。上記フィラー(Fc)は単独で、あるいは2種以上組み合わせて使用できる。
上記フィラー(Fc)の含有量は、上記歯科用接着性硬化性組成物(c)に含まれる重合性モノマーの全重量 100重量部に対して、好ましくは95重量部以下、より好ましくは90重量部以下、さらに好ましくは85重量部以下である。なお、歯科用接着性硬化性組成物(c)から得られる硬化物に優れた強度を付与する観点からは、上記フィラー(Fc)の含有量は、上記歯科用接着性硬化性組成物(c)に含まれる重合性モノマーの全重量 100重量部に対して、好ましくは5重量部以上、より好ましくは10重量部以上、さらに好ましくは20重量部以上である。
また上記フィラー(Fc)の含有量は、上記歯科用接着性硬化性組成物(c)中、好ましくは5〜95重量%、より好ましくは10〜90重量%,さらに好ましくは20〜85重量%である。
さらに、上記歯科用接着性硬化性組成物(c)が奏する効果を損なわない範囲で、上記(Ac)、(Bc)、(Cc)、(Dc)、(Ec)及び(Fc)以外のその他の添加剤(Gc)を含んでいてもよい。その他の添加剤(Gc)としては、例えば、塩化カルシウムなどカルシウム含有化合物、フッ化ナトリウムなどのフッ素含有化合物、重合禁止剤、安定剤、顔料、蛍光剤、紫外線吸収剤、防カビ剤、抗菌剤、再石灰化等の治療を行うための治療成分、及び生物活性成分などが挙げられる。
上記その他の添加剤(Gc)の含有量は、上記歯科用接着性硬化性組成物(c)に含まれる重合性モノマーの全重量 100重量部に対して、好ましくは0.00001〜10重合部、より好ましくは0.00005〜5重量部、さらに好ましくは0.0001〜1重量部である。前記数値範囲の下限値を下回ると、添加剤(Gc)の特性が発揮されなくなる場合があり、また、その上限値を上回ると歯科用接着性硬化性組成物(c)が奏する効果を損なう場合がある。
上記歯科用接着性硬化性組成物(c)の硬化時間(熱負荷の前)は、好ましくは1〜10分、より好ましくは1.5〜8分、さらに好ましくは2〜5分以内である。前記数値範囲の下限値を下回ると必要以上に高い重合性を有しており可使時間が短すぎ作業性に優れない場合があり、また、その上限値を上回ると十分な重合性を有しておらず、硬化時間が長すぎ、作業性に優れない場合がある。
上記硬化時間の評価はDSC法によって評価できる。DSC法による硬化時間の評価は、歯科用接着性硬化性組成物(c)の各成分を混合した後アルミ製のセル(パン)に充填し、ラジカル重合により生じる重合熱を示差熱分析法によって測定し、混合開始から最高温度を記録するまでの時間を硬化時間として評価する。DSC測定の測定装置は、示差走査熱量計(例えば(株)島津製作所製;DSC−60)を用いて行い、測定は37±2℃で実施する。
また、歯科用接着性硬化性組成物(c)の硬化物の引張り接着強さは、好ましくは4MPa、より好ましくは6MPa、さらに好ましくは8MPa以上である。
歯科用接着性硬化性組成物(c)の保管形態は、第1剤、第2剤などの複数の剤に分けた歯科用接着性硬化性キット(αc)であってもよい。該歯科用接着性硬化性キット(αc)は、3以上の剤(例えば、第3剤、第4剤など)を含んていてもよい。
歯科用接着性硬化性キット(αc)では、保存安定性を考慮して、酸性基含有重合性モノマー(Bc)及び重合開始剤(Cc)については、還元剤(Dc)と同一剤中で共存しないようにすることが望ましい。このようなキットとする場合には、
歯科用接着性硬化性組成物(c)の他の成分(例えば、重合性モノマー(A)、その他の重合性モノマー(Ec)、フィラー(Fc)、添加剤(Gc))は、酸性基含有重合性モノマー(Bc)、重合開始剤(Cc)、又は還元剤(Dc)と共存していてもよいし、共存していなくてもよい。歯科用接着性硬化性キット(αc)に含まれる各剤に、いかなる成分が含まれるかは、保存安定性、取扱い性などを考慮して決定できる。
歯科用接着性硬化性キット(αc)の好ましい一例は、
第1剤及び第2剤の少なくとも一方に重合性モノマー(A)が含まれており、
第1剤に還元剤(Dc)が含まれ、
第2剤に酸性基を有する重合性モノマー(Bc)、及び重合開始剤(Cc)が含まれている歯科用接着性硬化性キット(以下、歯科用接着性硬化性キット(αc1)とも称する。)の形態である。
歯科用接着性硬化性キット(αc1)の第1剤及び第2剤には、歯科用接着性硬化性組成物(c)の他の成分(例えば、その他の重合性モノマー(Ec)、フィラー(Fc)、添加剤(Gc))が含まれていてもよいし、含まれていなくてもよい。また、第1剤及び第2剤以外の他の剤(例えば第3剤、第4剤)として、これらの各成分が含まれていてもよい。
歯科用接着性硬化性キット(αc1)としては、第1剤及び第2剤の少なくとも一方に、さらに重合性モノマー(A)及び(Bc)以外のその他の重合性モノマー(Ec)が含まれていることが好ましい一態様である。
上記歯科用接着性硬化性キット(αc)は、保存安定性を有することが好ましい。具体的には、76℃に24時間保管する熱負荷の前後において、歯科用接着性硬化性キット(αc)に含まれる各成分を混合して、歯科用接着性硬化性組成物(c)を作製した際に、硬化時間の差が好ましくは3分以内、より好ましくは2分以内、さらに好ましくは1分以内である。或いは硬化時間の比(熱負荷後硬化時間/熱負荷前硬化時間)が好ましくは2以内、より好ましくは1.5以内、さらに好ましくは1以内である。
このようにして得られた歯科用接着性硬化性組成物(c)は、例えば、歯科用接着性レジンセメントとして用いることができる。
上記歯科用接着性硬化性組成物(c)は、歯科用のセメント、ボンディング材、コーティング材、矯正用接着剤などの各種歯科用接着性材料への応用において極めて有用性が高い。また、室温下での長期保管後も硬化時間の遅延が少なく、各種歯冠修復材料に対して優れた接着性を有する。
本発明の第4態様である動揺歯固定材(βd)に関して、以下具体的に説明する。動揺歯固定材(βd)は、特定の歯科用接着性組成物(d)から構成される。かかる歯科用接着性組成物(d)について、以下説明する。
上記歯科用接着性組成物(d)には、上記一般式(1)において、Raが二価の炭素数6〜9の芳香族炭化水素基、又は二価の炭素数6〜9の橋かけ構造を有してもよい環式炭化水素基であり、R1及びR2は水素原子又はメチル基であり、R7及びR8は水素原子である重合性モノマー(以下、重合性モノマー(Ad)とも称する。)が含まれる。すなわち重合性モノマー(Ad)は、以下の一般式(1d)で表すことができる。
上記一般式(1d)中、Radは二価の炭素数6〜9の芳香族炭化水素基、又は二価の炭素数6〜9の橋かけ構造を有してもよい環式炭化水素基であり、R1d及びR2dは水素原子又はメチル基であり、R3、R4、R5及びR6は水素原子又は炭化水素基であり、n及びmはそれぞれ独立に0〜4の整数であり、Rb及びRcは、それぞれ独立に、水素原子が炭素数1〜3のアルキル基又は(メタ)アクリロイルオキシメチレン基で置換されていてもよい炭素数2〜6の直鎖アルキレン基、又は直鎖オキシアルキレン基である。
歯科用接着性組成物(d)として用いられる場合、上記Ra又はRadに含まれる二価の芳香族炭化水素基、又は二価の橋かけ構造を有してもよい環式炭化水素基の炭素数は、適度な剛直性を有する観点より、6〜9であり、好ましくは6〜7である。
Ra又はRadに含まれる二価の基の好ましい一態様は、芳香族炭化水素基である。このような芳香族炭化水素基としては、具体的にはフェニレン基等が挙げられる。該芳香族炭化水素基の芳香環に対する、Ra又はRadに隣接する炭素原子の二カ所の結合位置の位置関係は、オルト位、メタ位、又はパラ位のいずれであってもよい。しかし、本願発明の効果を奏する上では、これら二カ所の結合位置の位置関係は、メタ位又はパラ位であることが好ましく、メタ位であることがより好ましい。これらの位置異性体は、単独で使用されることもあるし、2種以上の混合物として使用されることもある。
Ra又はRadに含まれる二価の基の好ましい一態様は、橋かけ構造を有してもよい環式炭化水素基である。橋かけ構造を有してもよい環式炭化水素基とは、具体的には橋かけ構造を有している環式炭化水素基、もしくは橋かけ構造を有しない環式炭化水素基である。橋かけ構造を有している環式炭化水素基としては、具体的には、ビシクロ[2.2.1]ヘプチレン基等が挙げられる。橋かけ構造を有しない環式炭化水素基は、具体的には、シクロヘキシレン 基、及び3,5,5−トリメチルシクロヘキシレン基等が挙げられる。橋かけ構造を有してもよい環式炭化水素基中の炭化水素環に対する、Ra又はRadに隣接する炭素原子の二カ所の結合位置の位置関係は限定されない。本発明の第4態様の効果を奏する上では、これら二カ所の結合位置の位置関係は、上記炭化水素環の同一の炭素原子上でないことが好ましく、隣接した炭素上にないことが好ましい。これらの位置異性体は、単独で使用されることもあるし、2種以上の混合物として使用されることもある。
Raに含まれる二価の基としては、適度な剛直性を有する観点より芳香族炭化水素基、又は橋かけ構造を有している環式炭化水素基が好ましく、橋かけ構造を有している環式炭化水素基が特に好ましい。
歯科用接着性組成物(d)として用いられる場合、上記R3、R4、R5及びR6は水素原子又は炭化水素基であるが、適度な剛直性を有する観点よりR3、R4、R5及びR6はメチル基又は水素原子であることが好ましく、水素原子であることがさらに好ましい。
歯科用接着性組成物(d)として用いられる場合、上記n及びmはそれぞれ独立に0〜4の整数である。適度な剛直性を有する観点より、n、mのうち少なくともいずれかが1であることが好ましい。
歯科用接着性組成物(d)として用いられる場合、上記一般式(1)中の二つのカルバモイル基に挟まれる下記一般式(2'd)(上記一般式(1d)中の下記一般式(2d))にあたる部分の好ましい一態様は、以下の一般式(3d)、(4d)、(8d)〜(10d)で表される。これらの中でも下記一般式(3d)、(4d)及び(8d)の構造が好ましく、下記一般式(3d)の構造がさらに好ましい。
また、一般式(8d)〜(10d)は、位置異性体の混合物であるが、それらの中では以下の一般式(5d)〜(7d)で示すような異性体であることが好ましい。なお、一般式(3d)も位置異性体の混合物であるが、いずれの異性体でも効果に大きな違いがないので、いずれであってもよく、混合物として用いても良い。
一般式(1)中の下記一般式(2'd)(上記一般式(1d)中の下記一般式(2d))にあたる部分のさらに好ましい一態様は、上記一般式(3d)〜(7d)で表され構造であり、望ましくは、上記記一般式(3d)〜(5d)で表される構造であり、より望ましくは、上記一般式(3d)の構造である。
歯科用接着性組成物(d)として用いられる場合、上記Rb及びRcは、それぞれ独立に、水素原子が炭素数1〜3のアルキル基又は(メタ)アクリロイルオキシメチレン基で置換されていてもよい炭素数2〜6の直鎖アルキレン基、又は直鎖オキシアルキレン基を示す。
歯科用接着性組成物(d)として用いられる場合、上記Rb及びRcの好ましい一態様は、水素原子が炭素数1〜3のアルキル基で置換されていてもよい、炭素数2〜4の直鎖アルキレン基又はオキシアルキレン基である。
上記直鎖アルキレン基としては、例えば、−CH2CH2−、−CH2CH2CH2−、−CH2CH2CH2CH2−、−CH2CH2CH2CH2CH2−、及び−CH2CH2CH2CH2CH2CH2−などが挙げられる。これら直鎖アルキレン基の好ましい一態様は、例えば、−CH2CH2−、−CH2CH2CH2−、−CH2CH2CH2CH2−等である。上記直鎖オキシアルキレン基としては、例えば、−CH2CH2OCH2CH2−、及び−CH2CH2OCH2CH2OCH2CH2−などが挙げられる。上記直鎖オキシアルキレン基の好ましい一態様は、例えば、−CH2CH2OCH2CH2−等である。上記直鎖アルキレン基又は直鎖オキシアルキレン基の炭素数としては、重合性モノマー(Ad)に適度な柔軟性を持たせる観点から、炭素数は2〜6であり、好ましくは2〜4、より好ましくは2である。
上記直鎖アルキレン基又は直鎖オキシアルキレン基に含まれる水素原子と置換可能なアルキル基としては、例えば、CH3−、CH3CH2−、CH3CH2CH2−、及び(CH3)2CH−などが挙げられる。重合性モノマー(Ad)に適度な柔軟性を持たせる観点から、該アルキル基の炭素数としては、1〜3が好ましく、1〜2がより好ましく、1がさらに好ましい。
上記直鎖アルキレン基又は直鎖オキシアルキレン基に含まれる水素原子と置換可能な(メタ)アクリロイルオキシメチレン基としては、メタクリロイルオキシメチレン基及びアクリロイルオキシメチレン基が挙げられる。
ウレタン(メタ)アクリレートである上記重合性モノマー(Ad)の中でも、下記化学式(11d)〜(70d)で示されるウレタン(メタ)アクリレートが好ましい。
上記式中、Etはエチル基を示す。
重合性モノマー(Ad)としては上記式(11d)〜(70d)を使用することができ、好ましくは上記式(11d)〜(46d)を、さらに好ましくは(35d)〜(46d)を使用することができる。
これら重合性モノマー(Ad)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
上記重合性モノマー(Ad)は、重合性モノマー(Ad)、並びに後述する分子内に少なくとも1つの酸性基を有する重合性モノマー(Bd)及び光重合開始剤(Cd)の合計100重量部に対して、好ましくは10〜99重量部であり、より好ましくは40〜99重量部である。
上記重合性モノマー(Ad)は、歯科用接着性組成物(d)の合計100重量%に対して、好ましくは1〜99重量%、より好ましくは30〜99重量%の範囲で使用される。また、上記重合性モノマー(Ad)の含有量は、重合性モノマー(Ad)、後述する分子内に酸性基を有する重合性モノマー(Bd)及び光重合開始剤(Cd)、柔軟性フィラー(Dd)及びその他の重合性モノマー(Ed)の合計100重量部に対して、好ましくは1〜99重量部であり、より好ましくは10〜98.5重量部であり、さらに好ましくは20〜98重量部である。上記数値範囲の下限値を下回ると硬化体の強度、柔軟性、及び靱性が低下する場合があり、また、その上限値を上回ると接着性が低下する場合がある。
上記歯科用接着性組成物(d)には、分子内に少なくとも1つの酸性基を有する重合性モノマー(Bd)、典型的には分子内に少なくとも1つの酸性基を有する(メタ)アクリレート化合物(B'd)が含まれる。
上記歯科用接着性組成物(d)に配合される分子内に少なくとも1つの酸性基を有する重合性モノマー(Bd)に含まれる重合性基としては、ラジカル重合性基が好ましく用いられ、例えば、ビニル基、シアン化ビニル基、アクリロイル基、メタアクリロイル基、アクリルアミド基、メタアクリルアミド基などが挙げられる。重合性モノマー(Bd)に含まれる酸性基としては、例えば、カルボキシル基、リン酸基、チオリン酸基、スルホン酸基、スルフィン酸基などが挙げられる。なお、カルボキシル基の酸無水物基のように、実用条件において容易に分解して前記酸性基になるなど、実質上酸性基として機能するものも、上記酸性基とみなす。これら酸性基の中でも、カルボキシル基、リン酸基、及びスルホン酸基並びに実用条件において容易に分解してこれら基となる基が好ましい。
分子内に少なくとも1つのカルボキシル基を有する重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸等のα−不飽和カルボン酸;4−ビニル安息香酸等のビニル芳香環化合物;11−(メタ)アクリロイルオキシ−1,1−ウンデカンジカルボン酸等の(メタ)アクリロイルオキシ基とカルボン酸基の間に直鎖炭化水素基が存在するカルボン酸化合物;6−(メタ)アクリロイルオキシエチルナフタレン−1,2,6−トリカルボン酸等の(メタ)アクリロイルオキシアルキルナフタレン(ポリ)カルボン酸;4−(メタ)アクリロイルオキシメチルトリメリット酸、4−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリット酸、4−(メタ)アクリロイルオキシブチルトリメリット酸等の(メタ)アクリロイルオキシアルキルトリメリット酸;4−[2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシ]ブチルトリメリット酸等の酸性基と水酸基とを含有する化合物;2,3−ビス(3,4−ジカルボキシベンゾイルオキシ)プロピル(メタ)アクリレート等のカルボキシベンゾイルオキシを有する化合物;N,O−ジ(メタ)アクリロイルチロシン、O−(メタ)アクリロイルチロシン、N−(メタ)アクリロイルチロシン、N−(メタ)アクリロイルフェニルアラニン、O−(メタ)アクリロイルフェニルアラニン、N,O−ジ(メタ)アクリロイルフェニルアラニン等のN−及び/又はO−位置換のモノ又はジ(メタ)アクリロイルアミノ酸;N−(メタ)アクリロイル−4−アミノ安息香酸、N−(メタ)アクリロイル−5−アミノ安息香酸、2−又は3−又は4−(メタ)アクリロイルオキシ安息香酸、4−又は5−(メタ)アクリロイルアミノサリチル酸等の官能性置換基を有する安息香酸の(メタ)アクリロイル化合物;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとピロメリット酸二無水物の付加生成物、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ−トと無水マレイン酸又は3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物又は3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物の付加反応物等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートと不飽和ポリカルボン酸無水物の付加反応物;2−(3,4−ジカルボキシベンゾイルオキシ)−1,3−ジ(メタ)アクリロイルオキシプロパン、N−フェニルグリシン又はN−トリルグリシンとグリシジル(メタ)アクリレ−トとの付加物、4−[(2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル)アミノ]フタル酸、3−又は4−[N−メチル−N−(2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル)アミノ]フタル酸等のポリカルボキシベンゾイルオキシと(メタ)アクリロイルオキシとを有する化合物などが挙げられる。これらの中でも、11−(メタ)アクリロイルオキシ−1,1−ウンデカンジカルボン酸及び4−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリット酸が好ましい。
少なくとも1個の水酸基がリン原子に結合している基及び水中で容易に該基に変換し得る官能基として、例えばリン酸エステル基で水酸基を1個又は2個を有する基を好ましく例示することができる。このような基を有する重合性モノマーとしては、例えば2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシドホスフェート、2−及び/又は3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルアシドホスフェート、4−(メタ)アクリロイルオキシブチルアシドホスフェート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルアシドホスフェート、8−(メタ)アクリロイルオキシオクチルアシドホスフェート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルアシドホスフェート、12−(メタ)アクリロイルオキシドデシルアシドホスフェート等の(メタ)アクリロイルオキシアルキルアシドホスフェート;ビス[2−(メタ)アクリロイルオキシエチル]アシドホスフェート、ビス[2−又は3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル]アシドホスフェート等の2つ以上の(メタ)アクリロイルオキシアルキル基を有するアシドホスフェート;2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルアシドホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−p−メトキシフェニルアシドホスフェート等の(メタ)アクリロイルオキシアルキル基とフェニレン基などの芳香環やさらには酸素原子などのヘテロ原子を介して有するアシドホスフェートなどが挙げられる。これらの化合物におけるリン酸基を、チオリン酸基に置き換えた化合物も例示することができる。これらの中でも、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシドホスフェートを好ましく使用することができる。
スルホン酸基又はスルホン酸基に容易に水中で変換し得る官能基を有する重合性モノマーとして、例えば、2−スルホエチル(メタ)アクリレート、2−又は1−スルホ−1−又は2−プロピル(メタ)アクリレート、1−又は3−スルホ−2−ブチル(メタ)アクリレート等のスルホアルキル(メタ)アクリレート;3−ブロモ−2−スルホ−2−プロピル(メタ)アクリレート、3−メトキシ−1−スルホ−2−プロピル(メタ)アクリレート等の上記スルホアルキル(メタ)アクリレートのアルキル部にハロゲンや酸素などのヘテロ原子を含む原子団を有する化合物;1,1−ジメチル−2−スルホエチル(メタ)アクリルアミド、2−メチル−2−(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸等のスルホン酸基又はスルホン酸基に容易に水中で変換し得る官能基を有するアクリルアミド;4−スチレンスルホン酸、4−(プロプ−1−エン−2−イル)ベンゼンスルホン酸などのビニルアリールスルホン酸などが挙げられる。これらの中でも、4−スチレンスルホン酸を好ましく使用することができる。
これら重合性モノマー(Bd)は単独であるいは2種以上組み合わせて使用することができる。
分子内に少なくとも1つの酸性基を有する重合性モノマー(Bd)は、上記重合性モノマー(Ad)及び重合性モノマー(Bd)、並びに後述する光重合開始剤(Cd)の合計100重量部に対して、好ましくは0.5〜80重量部であり、より好ましくは0.5〜50重量部である。
分子内に少なくとも1つの酸性基を有する重合性モノマー(Bd)は、歯科用接着性組成物(d)の合計100重量%に対して、好ましくは0.5〜50重量%、より好ましくは1〜30重量%の範囲で使用される。また、上記重合性モノマー(Bd)は、重合性モノマー(Ad)、重合性モノマー(Bd)及び後述する光重合開始剤(Cd)、柔軟性フィラー(Dd)及びその他の重合性モノマー(Ed)の合計100重量部に対して、好ましくは0.5〜50重量部であり、より好ましくは1.0〜40重量部であり、さらに好ましくは1.5〜30重量部の範囲で使用される。上記数値範囲の下限値を下回ると接着性が低下する場合があり、また、その上限値を上回ると硬化体の強度、柔軟性、及び靱性が低下するとともに変色しやすくなる場合がある。
上記歯科用接着性組成物(d)には、光重合開始剤(Cd)が含まれる。光重合開始剤(Cd)としては所望の時に光を照射するだけで硬化させることができる光重合開始剤が好ましい。光重合開始剤(Cd)としては、光増感剤(Cd1)単独、又は、光増感剤(Cd1)と光重合促進剤(Cd2)との組み合わせが使用できる。
光増感剤(Cd1)としては、例えば、ベンジル、カンファーキノン等のα−ジケトン化合物、α−ナフチル、p,p'−ジメトキシベンジル、ペンタジオン、1,4−フェナントレンキノン、ナフトキノン、ジフェニルトリメチルベンゾイルフォスフィンオキシド等のアシルホスフィンオキシド又はその誘導体、その他の紫外光あるいは可視光で励起され重合を開始する公知の化合物などが挙げられる。光増感剤(Cd1)は単独であるいは2種以上混合して使用することができる。これらの中でも、カンファーキノン、ジフェニルトリメチルベンゾイルホスフィンオキシド等のアシルホスフィンオキシド又はその誘導体が特に好ましい。
また、光重合開始剤(Cd)を使用する際には、光増感剤(Cd1)と光重合促進剤(Cd2)を併用することが好ましい。光重合促進剤(Cd2)としては、例えば、p−トルエンスルフィン酸又はそのアルカリ金属; N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、N,N−ジベンジルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、p−N,N−ジメチルアミノ安息香酸、p−N,N−ジエチルアミノ安息香酸、p−N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−N,N−ジエチルアミノ安息香酸エチル、p−N,N−ジメチルアミノ安息香酸メチル、p−N,N−ジエチルアミノ安息香酸メチル、p−N,N−ジメチルアミノベンズアルデヒド、p−N,N−ジメチルアミノ安息香酸2−n−ブトキシエチル、p−N,N−ジエチルアミノ安息香酸2−n−ブトキシエチル、p−N,N−ジメチルアミノベンゾニトリル、p−N,N−ジエチルアミノベンゾニトリル、p−N,N−ジヒドロキシエチルアニリン、p−ジメチルアミノフェネチルアルコール、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリプロピルアミン、N−エチルエタノールアミン等の第三級アミン類、N−フェニルグリシン、N−フェニルグリシンのアルカリ金属塩等の第二級アミン類; 上記第三級アミン又は第二級アミンと、クエン酸、リンゴ酸、2 -ヒドロキシプロパン酸との組み合わせ;5−ブチルアミノバルビツール酸、1−ベンジル−5−フェニルバルビツール酸等のバルビツール酸類; ベンゾイルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド等の有機過酸化物を挙げることができる。光重合促進剤(Cd2)は単独であるいは2種以上混合して使用することができる。これらの中でも、p−N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−N,N−ジメチルアミノ安息香酸2−n−ブトキシエチル、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート等の芳香族に直接窒素原子が結合した芳香族第三級アミン、もしくはN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート等の重合性基を有する脂肪族系第三級アミン、N−フェニルグリシン、N−フェニルグリシンのアルカリ金属塩等の第二級アミン類が特に好ましい。
光重合開始剤(Cd)は、上記重合性モノマー(Ad)、重合性モノマー(Bd)、及び光重合開始剤(Cd)の合計100重量部に対して、好ましくは0.05〜10重量部である。
光重合開始剤(Cd)は、歯科用接着性組成物(d)の合計100重量%に対して、好ましくは0.001〜5重量%、より好ましくは0.05〜2重量%、さらに好ましくは0.05〜1重量%の範囲で使用される。また、上記光重合開始剤(Cd)は、重合性モノマー(Ad)、重合性モノマー(Bd)及び光重合開始剤(Cd)、柔軟性フィラー(Dd)及びその他の重合性モノマー(Ed)の合計100重量部に対して、好ましくは0.001〜5重量部であり、より好ましくは0.05〜2重量部であり、さらに好ましくは0.05〜1重量部の範囲で使用される。前記数値範囲の下限値を下回ると硬化速度が低下する場合があり、また、その上限値を上回ると硬化速度が速くなりすぎ操作性が悪化する場合がある。また、光重合促進剤(Cd2)の配合量は光硬化性能が促進されれば限定されないが、通常、光増感剤(Cd1)100 重量%に対して5〜1000重量%の範囲で使用される。
歯科用接着性組成物(d)で使用する重合開始剤としては、光重合開始剤(Cd)を使用することが好ましいが、熱重合開始剤や常温重合開始剤を併用することもできる。その具体例を下記に示す。
熱重合開始剤としては有機過酸化物、ジアゾ系化合物等が好ましく使用できる。重合を短時間で効率よく行おうとする場合には、80℃での分解半減期が10時間以下である化合物が好ましい。有機過酸化物としては、例えば、アセチルパーオキサイド、イソブチルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、スクシン酸パーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類; ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ- 2 -エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジアリルパーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート類; t e r t -ブチルパーオキシイソブチレート、t e r t -ブチルパーオキシネオデカネート、クメンパーオキシネオデカネート等のパーオキシエステル類; アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキシド等の過酸化スルホネート類が挙げられる。
ジアゾ系化合物としては、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、4,4'−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2'−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメトキシバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2−シクロプロピルプロピオニトリル)等を挙げることができる。特にベンゾイルパーオキサイド、2,2'−アゾビスイソブチロニトリルがより好ましい。また、有機過酸化物と第三級アミン等の還元剤とを組み合わせ、常温付近で重合を開始するレドックス開始剤も使用可能である。
上記歯科用接着性組成物(d)には、柔軟性を発現するフィラー(Dd)が含まれていてもよい。柔軟性を発現するフィラー(Dd)は、そのフィラー自体が柔軟であることが好適なので、その材質は有機質、典型的には有機化合物の重合体であることが好ましい。その柔軟性の指標としては、フィラーを長さ方向に圧縮した際の単位面積当たりの反力(圧縮強度として測定されるもの)がある。フィラーを元の長さよりも10%減に圧縮した際の単位面積あたりの反力は、好ましくは30MPa以下、より好ましくは15MPa以下、さらに好ましくは5MPa以下である。また、フィラーを元の長さよりも30%減に圧縮した際の単位面積あたりの反力は、好ましくは50MPa、より好ましくは30MPa以下、さらに好ましくは10MPaMPa以下である。これらの値は、フィラー粒子1粒に対して微小圧縮試験を行うことにより容易に測定可能である。そのような測定器としては例えば島津製作所製微小圧縮試験機MCT−510などが例示できる。この試験機においては、圧縮破壊強度の試験法に用いられるJIS R 1639−5(2007)に示されている下記式を準用することにより計算できる。
Cs=2.48×(P/π・d2)
(上記式中、Csは強度(MPa)ここでは単位面積あたりの反力(MPa)、Pは試験力(N)、dは粒子径(mm)を表す。)
さらに柔軟性を発現するフィラー(Dd)が、前記機能を実現するためには、歯科用接着性組成物(d)の重合後において、例えば海島状に相分離して、フィラー(Dd)を中心とする独立相が重合後の硬化体中に形成されている複合材料となっていることが好ましい。したがって、フィラー(Dd)は溶媒に溶解してドメインが消失しないことが好ましい。そのためには、例えば、フィラー(Dd)は有機化合物の重合体からなっており、かかる重合体は架橋されていることが好ましい。
フィラー(Dd)が架橋された重合体からなるものである場合には、架橋の程度はゲル分率により評価できる。これは、架橋による不溶性残渣の残留率を測定するものである。試験すべき架橋された重合体に対して、例えば、非架橋重合体が最も好適に溶解する溶媒、又はその架橋された重合体が実際に曝されると想定される成分に、一定の温度及び時間浸漬して、溶解せずに残存する固形分の比率(浸漬後溶媒乾燥後の残存固形分重量/浸漬前重量)を計測することによりゲル分率は求められる。例えば、フィラー(Dd)がポリウレタンからなる場合には、アセトンに浸漬して評価することが適切であり、通常20℃及び24時間の浸漬条件によりゲル分率の評価を行う。フィラー(Dd)が架橋された重合体からなるものである場合には、そのゲル分率は好ましくは30重量%以上、より好ましくは60重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上である。
フィラー(Dd)と歯科用接着性組成物(d)に含まれる重合性モノマー成分(例えば、重合性モノマー(Ad)、重合性モノマー(Bd)、後述する重合性モノマー(Ed))、及び/又は該重合性モノマー成分の重合後の重合体成分との親和性が低すぎると、複合材料としての一体性を保持できず、接着強度の低下などを招き好ましくない。そのため、歯科用接着性組成物(d)が重合した後にマトリクスを形成する重合性モノマー成分とフィラー(Dd)とは親和性が高いことが望ましい。例えば、フィラー(Dd)が、重合後マトリクスを形成する歯科用接着性組成物(d)に含まれる重合性モノマー成分に膨潤している態様、フィラー(Dd)と歯科用接着性組成物(d)に含まれる重合性モノマー成分が重合して形成されるマトリクスとが共有結合、イオン結合、分子間力などの化学的又は物理的に親和性の相互作用を有している態様などが、望ましい態様として例示できる。このようなフィラー(Dd)の態様としては、さらに具体的には、フィラー(Dd)表面に上記マトリクスと相溶性が高い分子鎖を有している態様、フィラー(Dd)表面に、重合後マトリクスを形成する歯科用接着性組成物(d)に含まれる重合性モノマー成分とラジカル共重合可能なエチレン性二重結合を有している態様、重合後マトリクスを形成する歯科用接着性組成物(d)に含まれるその他の反応性の高い部位と親和的な相互作用(例えば、反応して結合形成)可能な、水酸基、イソシアネート基、カルボン酸基、リン酸基、アミノ基、アミド基等の活性の高い基をフィラー(Dd)表面に有している態様などが挙げられる。
フィラー(Dd)を構成し得る有機質としては、例えば、ポリウレタン、ポリアクリル酸ブチル、ポリアクリル酸エステル、ポリアミド、シリコーン、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/ビニルアルコール共重合体、エチレン/アクリル酸共重合体、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリスチレン、ニトリルゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、エチレン/αオレフィン共重合体などの柔軟な高分子が挙げられる。これら高分子の架橋体及び混合物も同様にフィラー(Dd)として用いることができる。
前述のとおり、歯科用接着性組成物(d)の硬化体は強度、柔軟性、及び靱性を兼ね備えていることが好ましいので、フィラー(Dd)の材質としては、ポリウレタン、ポリアクリル酸エステル、エチレン/アクリル酸共重合体であることが好ましく、架橋ポリウレタンがより好ましい。架橋ポリウレタンからなるフィラーとしては、市販品を用いることもできる。架橋ポリウレタンからなるフィラーの市販品としては、根上工業株式会社のアートパール『JB−800T』、『P−800T』、『C−800』、『U−600T』、『RZ−600T』、『RY−600T』、『RT−600T』、『RX−600T』、『RW−600T』などが挙げられる。これらは単独であるいは2種以上組み合わせて使用することができる。
これらの中でも、歯科用接着性組成物(d)の硬化体の強度、柔軟性、及び靱性の観点から、重合後マトリクスを形成する歯科用接着性組成物(d)に含まれる重合性モノマー成分とラジカル共重合可能なエチレン性二重結合を有している架橋ポリウレタンがさらに好ましい。かかる市販品としては、『RZ−600T』、『RY−600T』、『RT−600T』、『RX−600T』、『RW−600T』などが挙げられる。
フィラー(Dd)に含まれ得るラジカル共重合可能なエチレン性二重結合は、1kg当りの二重結合のミリモル数である二重結合当量(m・mol/kg)で定義することができる。フィラー(Dd)にラジカル共重合可能なエチレン性二重結合が含まれる場合には、この二重結合当量が、好ましくは200〜6000m・mol/kg、より好ましくは500〜3000m・mol/kg、さらに好ましくは1000〜1800m・mol/kgである。前記数値範囲の下限値を下回ると重合性モノマー成分と化学反応する二重結合が少ないことによる硬化体の強度、柔軟性、及び靱性向上の効果が十分得られなくなる場合があり、また、その上限値を上回ると着色性等が問題となる場合がある。
柔軟性を発現する上記フィラー(Dd)の平均粒子径は1〜1000μmの範囲内であることが好ましく、2〜100μmの範囲内であることがより好ましく、3〜20μmの範囲内にあることがさらに好ましい。前記数値範囲の下限値を下回ると紛体の取り扱いが困難となる場合があり、また、その上限値を上回ると重合体の表面の荒れの原因となる場合がある。
上記平均粒子径は、レーザー回析式粒度分布測定機(例えば島津製作所製SALD−2100等)で測定した積算体積50%粒子径である。
柔軟性を発現するフィラー(Dd)は、上記歯科用接着性組成物(d)100重量部に対して、好ましくは0.5〜70重量部、より好ましくは5〜50重量部、さらに好ましくは10〜40重量部の範囲で使用される。上記数値範囲の下限値を下回ると柔軟性が十分に発現されなくなる場合があり、また、その上限値を上回ると組成物の流動性が低下し操作性が著しく悪化する場合がある。このような量で架橋性ポリウレタン粉末等の柔軟性を発現するフィラー(Dd)を使用することにより、歯科用接着性組成物(d)から得られる硬化体では、その強度、柔軟性、及び靱性を両立できるようになる。
上記歯科用接着性組成物(d)には前記重合性モノマー(Ad)及び(Bd)以外のその他の重合性モノマー(Ed)が含まれていてもよい。その他の重合性モノマー(Ed)としては、例えば、α−シアノアクリル酸、(メタ)アクリル酸、α−ハロゲン化アクリル酸、クロトン酸、桂皮酸、マレイン酸、イタコン酸等のα−不飽和カルボン酸のエステル類、(メタ)アクリルアミド、及び(メタ)アクリルアミド誘導体等の(メタ)アクリルアミド類、ビニルエステル類、ビニルエーテル類、モノ−N−ビニル誘導体、スチレン誘導体、その他公知の重合性モノマーなどが挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸エステル及び(メタ)アクリルアミド類の重合性が良好な点で好ましい。
かかるその他の重合性モノマー(Ed)は、重合性基を1つ有する単官能性モノマー(Ed1)、重合性基を2つ有する二官能性モノマー(Ed2)、重合性基を3つ以上有する三官能性以上のモノマー(Ed3)に大別される。以下、かかる重合性モノマーの例を示す。
単官能性モノマー(Ed1)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2,3−ジブロモプロピル(メタ)アクリレート、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、エリスリトールモノ(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N、N−(ジヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルオキシドデシルピリジニウムブロマイドなどが挙げられる。
二官能性モノマー(Ed2)としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル(メタ)アクリレート、2,2−ビス〔4−(メタ)アクリロイルオキシポリエトキシフェニル〕プロパン、1,2−ビス〔3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ〕エタン、1,2−ビス〔3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ〕トリエチレングリコール、1,2−ビス〔3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ〕グリセリン、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンビス(2−カルバモイルオキシエチル)ジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
三官能性以上のモノマー(Ed3)としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、1,7−ジアクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラアクリロイルオキシメチル−4−オキシヘプタン、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
上記単官能性モノマー(Ed1)、二官能性モノマー(Ed2)、及び三官能性以上のモノマー(Ed3)は、1種単独であるいは2種以上組み合わせて使用することができる。
上記二官能性モノマー(Ed2)又は三官能性以上のモノマー(Ed3)に分類されるモノマーとして、ウレタン結合を有する多官能(メタ)アクリレート(ウレタン結合と(メタ)アクリロイル基を2つ以上有する化合物)が挙げられる(ただし、重合性モノマー(A)は除く。)。かかるウレタン結合を有する多官能(メタ)アクリレートは、例えば、後述する、イソシアネート基(−NCO)を有する化合物と、水酸基(−OH)を有する(メタ)アクリレート化合物とを付加反応させることにより容易に合成することができる。
イソシアネート基を有する化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートなどが挙げられる。
水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N、N−(ジヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、ビスフェノールAジグリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3アクリロイルオキシプロピル(メタ)アクリレート、2,2−ビス[4−〔3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ〕フェニル]プロパン、1,2−ビス〔3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ〕エタン、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリールのトリ又はテトラ(メタ)アクリレートなどのヒドロキシ(メタ)アクリレートが挙げられる。
これらの重合性モノマー(Ed)は1種単独で又は2種類以上を組み合わせて用いられる。
重合性モノマー(Ed)の配合量は、歯科用接着性組成物(d)の操作性(粘稠度)やその硬化物の機械的物性を考慮して適宜決定すればよく、重合性モノマー(Ed)は、歯科用接着性組成物(d)の合計100重量部に対して、好ましくは0.5〜50重量部、より好ましくは1〜30重量部の範囲で使用される。
また、上記重合性モノマー(Ed)は、重合性モノマー(Ad)、重合性モノマー(Bd)及び光重合開始剤(Cd)、柔軟性フィラー(Dd)及びその他の重合性モノマーの合計100重量部に対して、好ましくは0.5〜50重量部であり、より好ましくは1〜40重量部であり、さらに好ましくは1〜30重量部の範囲で使用される。前記数値範囲の下限値を下回ると硬化速度が低下する場合があり、また、その上限値を上回ると硬化速度が速くなりすぎ操作性が悪化する場合がある。
上記歯科用接着性組成物(d)には柔軟性を発現するフィラー(Dd)の他に、組成物(d)の粘度調整や、得られる硬化体の強度、柔軟性、及び靱性の向上させることなどを目的に、フィラー(Dd)以外のその他のフィラー(Fd)が含まれていてもよい。
その他のフィラー(Fd)は、歯科分野で用いられる一般的なフィラーを使用することができる。フィラー(Fd)は、通常、有機フィラー(Fd1)と無機フィラー(Fd2)に大別される。
有機フィラー(Fd1)としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、メタクリル酸メチル−メタクリル酸エチル共重合体、架橋型ポリメタクリル酸メチル、架橋型ポリメタクリル酸エチル等の重合体からなる微粉末が挙げられる。
無機フィラー(Fd2)としては、例えば、各種ガラス類(二酸化珪素を主成分とし、必要に応じ、重金属、ホウ素及びアルミニウム等の酸化物を含有する)、各種セラミック類、珪藻土、カオリン、粘土鉱物(モンモリロナイト等)、活性白土、合成ゼオライト、マイカ、フッ化カルシウム、フッ化イッテルビウム、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化ジルコニウム、二酸化チタン、ヒドロキシアパタイト等の無機物からなる微粉末が挙げられる。このような無機フィラーの具体例としては、例えば、バリウムボロシリケートガラス(キンブルレイソーブT3000、ショット8235、ショットGM27884及びショットGM39923など)、ストロンチウムボロアルミノシリケートガラス(レイソーブT4000、ショットG018−093及びショットGM32087など)、ランタンガラス(ショットGM31684など)、フルオロアルミノシリケートガラス(ショットG018−091及びショットG018−117など)、ジルコニウム及び/又はセシウム含有のボロアルミノシリケートガラス(ショットG018−307、G018−308及びG018−310など)が挙げられる。
また、フィラー(Fd)として、これら無機フィラー(Fd2)に重合性モノマーを予め添加し、ペースト状にした後、重合硬化させ、粉砕して得られる有機無機複合フィラー(Fd3)を用いても差し支えない。
また、歯科材料組成物において、粒径が0.1μm以下のミクロフィラーが配合された組成物は、歯科用コンポジットレジンに好適な態様の一つである。かかる粒径の小さなフィラーの材質としては、シリカ(例えば、商品名アエロジル)、アルミナ、ジルコニア、チタニアなどが好ましい。これらのフィラーに対しては、目的に応じて、シランカップリング剤などにより表面処理が施される場合がある。かかる表面処理剤としては、公知のシランカップリング剤、例えば、γ−メタクリルオキシアルキルトリメトキシシラン(メタクリルオキシ基とケイ素原子との間の炭素数:3〜12)、γ−メタクリルオキシアルキルトリエトキシシラン(メタクリルオキシ基と珪素原子との間の炭素数:3〜12)、ビニルトリメトキシシラン、ビニルエトキシシラン及びビニルトリアセトキシシラン等の有機珪素化合物が使用される。表面処理剤の濃度は、フィラー100重量%に対して、通常0.1〜20重量%、好ましくは1〜10重量%の範囲で使用される。
フィラー(Fd)は1種単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。フィラー(Fd)の配合量は、歯科用接着性組成物(d)の操作性(粘稠度)やその硬化物の機械的物性を考慮して適宜決定すればよく、フィラー(Fd)は、歯科用接着性組成物(d)に含まれるフィラー(フィラー(Dd)とフィラー(Fd))以外の全成分100重量部に対して、好ましくは10〜2000重量部、より好ましくは50〜1000重量部、さらに好ましくは100〜600重量部の範囲で使用される。
歯科用接着性組成物(d)には、所望によりその他の添加剤(Gd)が含まれていてもよい。添加剤(Gd)としては、例えば、2−ヒドロキシ−4−メチルベンゾフェノン等の紫外線吸収剤、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2,5−ジターシャリーブチル−4−メチルフェノール等の重合禁止剤、変色防止剤、抗菌材、その他の従来公知の添加剤などが挙げられる。これら添加剤(Gd)は単独であるいは2種以上組み合わせて使用することができる。
歯科用接着性組成物(d)には、所望により、色素及び/又は顔料(Hd)が含まれていてもよい。かかる色素及び/又は顔料(Hd)としては、例えば、フロキシンBK、アシッドレッド、ファストアシッドマゼンダ、フロキシンB 、ファストグリーンFCF、ローダミンB、塩基性フクシン、酸性フクシン、エオシン、エチスロシン、サフラニン、ローズベンガル、ベーメル、ゲンチアナ紫、銅クロロフィルソーダ、ラッカイン酸、フルオレセインナトリウム、コチニール及びシソシン、タルク、チタンホワイトなどが挙げられる。これら色素及び/又は顔料(Hd)は単独であるいは2種以上組み合わせて使用することができる。
歯科用接着性組成物(d)を歯質と接着し重合反応して得られた硬化体は、外部応力に対して優れた耐久性を有することが望ましく、そのため、該硬化体は適度な強度、柔軟性、及び靱性とを備えていることが望ましい。
歯科用接着性組成物(d)から得られる硬化体の、下記試験方法により測定した弾性率は、好ましくは0.5〜4GPaであり、より好ましくは1〜3GPaである。前記数値範囲の上限値を超えると柔軟性及び靱性が損なわれる場合があり、また、その下限値を下回ると柔らかくなりすぎる場合、強度が低下する場合がある。
強度が確保されるためには、上記硬化体の最大点応力は、好ましくは65MPa以上、より好ましくは80MPa以上、さらに好ましくは100MPa以上である。前記数値範囲を下回ると強度が損なわれる場合がある。
柔軟性及び靱性が確保されるためには、上記硬化体の破断エネルギーは、好ましくは65mJ以上、より好ましくは80mJ以上、さらに好ましくは100mJ以上である。前記数値範囲を下回ると柔軟性及び靱性が損なわれる場合がある。
『3点曲げ試験』
歯科用接着性組成物(d)を2×2×25mmの型枠に充填後、ポリプロピレンフィルムとガラス板で圧接し、光照射(PENCURE 2000、株式会社モリタ)を10秒×9点×裏表行い、#320の耐水研磨紙にて表面を研磨した後、3点曲げ試験用の硬化体を得、37℃の水中に一晩浸漬した。一晩浸漬後、この硬化体について、精密万能試験機(オートグラフAG−IS、島津製作所)を用いて、クロスヘッドスピード1.0mm/minで3点曲げ試験を行った。(N=3)
本発明の第4態様では、歯科用接着性組成物(d)を動揺歯固定材(βd)として用いる。そのためには、歯質に対して有効な接着強度を有することが望ましい。特に限定されるものではないが、歯科用接着性組成物(d)から得られる硬化体の、37℃にて水中で一晩浸漬後、クロスヘッドスピード2mm/minでの引張接着強さは、好ましくは3MPa以上、より好ましくは5MPa以上、さらに好ましくは7MPa以上である。上記歯科用接着性組成物(d)よりなる動揺歯固定材(βd)は、歯周病等で動揺した歯牙を隣接歯と固定する方法(このような術式を動揺歯固定法という)に用いる固定材として使用する。
動揺歯固定材(βd)として用いる歯科用接着性組成物(d)は、硬化前の粘度と賦形性が両立され操作性に優れる。また、歯質に対して良好な接着性を発揮する。そして、硬化物が強度、柔軟性、及び靭性に優れている。したがって、歯科用接着性組成物(d)は、例えば、1剤型のシリジン容器に収納されて、歯科材料として使用され、とりわけ、動揺歯固定材(βd)として好適に使用される。かかる動揺歯固定材(βd)から得られる硬化体は適度な強度、柔軟性、及び靱性を有する。
歯科用接着性組成物(d)は、全ての成分が予め混合されて1剤型となっていることが好ましく、操作性の観点から円筒状のシリンジ容器に歯科用接着性組成物(d)が充填されて使用することが好ましい。シリンジ容器の円筒部の形状は長さ10cm、内径15mm以下が好ましく、長さ7.5cm、内径10mm以下がより好ましい。また、取り扱い性を向上させるためにシリンジの先端にノズルを装着して使用することができる。かかるノズルの形状は長さ25mm、開口部の内径2.5mm以下が好ましく、長さ20mm、開口部の内径2.0mm以下がより好ましい。
動揺歯固定材(βd)は、公知の方法で動揺歯固定に適用することができる。
本発明の第5態様である歯科用硬化性キット(αe)に関して、以下具体的に説明する。
歯科用硬化性キット(αe)は、歯科用硬化性組成物(e)となる成分として第1剤と第2剤とを少なくとも有し、重合性モノマー(ae)が第1剤及び第2剤に含まれており、かつ、非芳香族性カルボニル基を有する芳香族性アミン化合物(be)、及び電子吸引基を有する有機スルフィン酸化合物(ce)が第1剤に含まれており、重合開始剤(de)が第2剤に含まれており、第1剤を75℃環境下で24時間保管する前後における第1剤及び第2剤の混合物の硬化時間の変動が3分以内であることに特徴がある。
なお、特に断らない限り、以下の第5態様の説明において、表記される重量部は、2剤以上に分かれている場合はそれらを合したものにて、換算されるものとする。
また、以下の第5態様の説明において好適な数値範囲などの記述に関して「XX〜YY」(XXとYYは数値等)とある記載は、「XX以上、及び/又は、YY以下」の意である。
歯科用硬化性キット(αe)に含まれる、歯科用硬化性組成物(e)となる成分として用いる第1剤及び第2剤には重合性モノマー(ae)が含まれる。重合性モノマー(ae)としては、重合性基を有するラジカル重合性モノマーが好ましい。ラジカル重合が容易である観点から、重合性基は(メタ)アクリル基及び(メタ)アクリルアミド基が好ましい。歯科用硬化性キット(αe)から調製される歯科用組成物は口腔内で用いられるが、口腔内は湿潤な環境であり、加水分解等により重合性基が脱離するおそれがあるため、脱離した重合性基の生体への刺激性を考慮すると、重合性基は、メタクリル基及びメタクリルアミド基であることがより好ましい。
上記重合性モノマー(ae)は、酸性基を有しない重合性モノマー(ae−1)と酸性基含有重合性モノマー(ae−2)とに大別される。
酸性基を有しない重合性モノマー(ae−1)としては、上記重合性基を複数有する多官能性モノマー、及び上記重合性基を1個有する単官能性モノマー(ae−11)が例示される。
多官能性モノマーとしては、二官能性重合性モノマー(ae−12)、三官能性以上の重合性モノマー(ae−13)等が挙げられる。
二官能性重合性モノマー(ae−12)としては、例えば、2,2−ビス((メタ)アクリロイルオキシフェニル)プロパン、2,2−ビス〔4−(3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕プロパン(通称「Bis−GMA」)、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシテトラエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシペンタエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジプロポキシフェニル)プロパン、2−(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)−2−(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン、2−(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)−2−(4−(メタ)アクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、2−(4−(メタ)アクリロイルオキシジプロポキシフェニル)−2−(4−(メタ)アクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシイソプロポキシフェニル)プロパン、1,4−ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)ピロメリテート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2−ビス(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)エタン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンビス(2−カルバモイルオキシエチル)ジメタクリレート(通称「UDMA」)、1,2−ビス(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)エタン、下記式(1e)〜(4e)で表されるウレタンジメタクリレート等が挙げられる。これらの中でも、歯科用硬化性キット(αe)から得られる硬化体の機械的強度が大きい点で、2,2−ビス〔4−(3−(メタ)アクリロイルオキシ)−2−ヒドロキシプロポキシフェニル〕プロパン(通称「Bis−GMA」)、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン、下記式(1e)〜(4e)で表されるウレタンジメタクリレートが好ましい。なお、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパンのなかでは、エトキシ基の平均付加モル数が2.6である化合物(通称「D2.6E」)が好ましい。また、得られる歯科用硬化性組成物(e)の取り扱い性が優れる点で、グリセロールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンビス(2−カルバモイルオキシエチル)ジメタクリレート及び1,2−ビス(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)エタンが好ましい。さらに、得られる歯科用硬化性組成物(e)の熱安定性にも優れる点で、下記式(1e)〜(4e)で表されるウレタンジメタクリレートが特に好ましい。
三官能性以上の重合性モノマー(ae−13)としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、N,N−(2,2,4−トリメチルヘキサメチレン)ビス〔2−(アミノカルボキシ)プロパン−1,3−ジオール〕テトラメタクリレート、1,7−ジアクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラアクリロイルオキシメチル−4−オキシヘプタン等が挙げられる。
単官能性モノマー(ae−13)としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、エリスリトールモノ(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N、N−(ジヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド等の水酸基を有する(メタ)アクリルレート又は(メタ)アクリルアミド系モノマー;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等の炭化水素基を有する(メタ)アクリレート;2,3−ジブロモプロピル(メタ)アクリレート等のハロゲン原子を有する(メタ)アクリレート、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、11−(メタ)アクリロイルオキシウンデシルトリメトキシシラン等のケイ素原子を有する(メタ)アクリレート;(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド系モノマーなどが挙げられる。これらの中でも、歯科用硬化性キット(αe)から得られる歯科用硬化性組成物(e)の歯質との親和性が高く、また、該歯科用硬化性組成物(e)から得られる硬化体の接着強さが大きい点で、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート及びエリスリトールモノ(メタ)アクリレートが好ましい。
上記重合性モノマー(ae−1)は、歯科用硬化性キット(αe)に含まれる複数の剤のいずれに含まれていてもよいが、混合して歯科用硬化性組成物(e)として用いる第1剤に含まれていることが好ましい。
歯科用硬化性キット(αe)から得られる歯科用組成物(e)において、酸性基を有さない重合性モノマー(ae−1)は、歯科用硬化性組成物(e)に後述するフィラー等の充填剤(fe)及び水、アセトン、アルコール類に代表される溶媒が含まれる場合には、これらを除く歯科用硬化性組成物(e)中に、好ましくは50〜99.99重量%、より好ましくは60〜99.9重量%、さらに好ましくは70〜99.5重量%の範囲内の量で含有されている。上記数値範囲の下限値を下回ると歯科用硬化性キット(αe)の歯科用硬化性組成物(e)から硬化体が得られない場合、硬化体が得られたとしても硬化体が脆い場合、歯科用硬化性組成物(e)の硬化時間が著しく短くなる場合があり、その上限値を上回ると歯科用硬化性組成物(e)が硬化しなくなる場合、硬化するまでの時間が著しく遅くなる場合がある。
歯科用硬化性キット(αe)に含まれる酸性基含有重合性モノマー(ae−2)としては、分子内に酸性基を有する重合性モノマーを使用でき、かかる重合性モノマーを1種単独で用いてもよく、複数種類を組み合わせて用いてもよい。また、酸性基を有しない重合性モノマー(ae−1)と組み合わせて配合することもできる。
酸性基含有重合性モノマー(ae−2)には、例えば、カルボキシル基、リン酸基、チオリン酸基、スルホン酸基、スルフィン酸基などの酸性基を有している。これらの酸性基は、酸性基含有重合性モノマー(ae−2)に単独であるいは組み合わせて導入されていてもよい。
なお、後述する4−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリット酸無水物(4−META)等の酸無水物は見かけ上は酸性基を有しない構造ではあるが、口腔内等の適用環境下(室温の水分豊富な環境下)において、速やか、かつ、容易に加水分解されて酸性基を形成する。したがって、このような酸無水物基も上記酸性基に該当するとみなす。
酸性基含有重合性モノマー(ae−2)として、1分子中に少なくとも1個のカルボキシル基を有する、カルボキシル基含有重合性モノマー(ae−21)を使用できる。重合性モノマー(ae−21)には、モノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸及びテトラカルボン酸又はこれらの誘導体などがある。重合性モノマー(ae−21)としては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、p−ビニル安息香酸、11−(メタ)アクリロイルオキシ−1,1−ウンデカンジカルボン酸(メタクリレートの場合:「MAC−10」)、1,4−ジ(メタ)アクリロイルオキシエチルピロメリット酸、6−(メタ)アクリロイルオキシエチルナフタレン−1,2,6−トリカルボン酸、4−(メタ)アクリロイルオキシメチルトリメリット酸及びその無水物、4−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリット酸(メタクリレートの場合:「4−MET」)及びその無水物(メタクリレートの場合:4−META)、4−(メタ)アクリロイルオキシブチルトリメリット酸及びその無水物、4−[2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシ]ブチルトリメリット酸及びその無水物、2,3−ビス(3,4−ジカルボキシベンゾイルオキシ)プロピル(メタ)アクリレート、N,O−ジ(メタ)アクリロイルチロシン、O-(メタ)アクリロイルチロシン、N−(メタ)アクリロイルチロシン、N−(メタ)アクリロイルフェニルアラニン、N−(メタ)アクリロイル−p−アミノ安息香酸、N−(メタ)アクリロイル−O−アミノ安息香酸、N−(メタ)アクリロイル−5−アミノサリチル酸(メタクリレートの場合:「5−MASA」)、N−(メタ)アクリロイル−4−アミノサリチル酸、2又は3又は4−(メタ)アクリロイルオキシ安息香酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとピロメリット酸二無水物の付加生成物(メタクリレートの場合:「PMDM」)、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートと無水マレイン酸又は3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(メタクリレートの場合:「BTDA」)又は3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物の付加反応物、2−(3,4−ジカルボキシベンゾイルオキシ)−1,3−ジ(メタ)アクリロイルオキシプロパン、N−フェニルグリシン又はN−トリルグリシンとグリシジル(メタ)アクリレートとの付加物、4−[(2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル)アミノ]フタル酸、3又は4−[N−メチル-N−(2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル)アミノ]フタル酸などが挙げられる。
これらカルボキシル基含有重合性モノマー(ae−21)の中でも、MAC−10、4−MET、4−META、5−MASAが好ましい。これらカルボキシル基含有重合性モノマー(ae−21)は単独であるいは組み合わせて使用することができる。
酸性基含有重合性モノマー(ae−2)として、1分子中に少なくとも1個のリン酸基を有する、リン酸基含有重合性モノマー(ae−22)を使用できる。重合性モノマー(ae−22)としては、例えば、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシドホスフェート、2及び3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルアシドホスフェート、4−(メタ)アクリロイルオキシブチルアシドホスフェート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルアシドホスフェート、8−(メタ)アクリロイルオキシオクチルアシドホスフェート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルアシドホスフェート、12−(メタ)アクリロイルオキシドデシルアシドホスフェート、ビス{2−(メタ)アクリロイルオキシエチル}アシドホスフェート、ビス{2又は3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル}アシドホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルアシドホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−p−メトキシフェニルアシドホスフェートなどが挙げられる。これら化合物におけるリン酸基を、チオリン酸基に置き換えた化合物も酸性基含有重合性モノマー(ae−2)として使用できる。
これらリン酸基含有重合性モノマー(ae−22)の中でも、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルアシドホスフェート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルアシドホスフェートが好ましい。これらリン酸基含有重合性モノマー(ae−22)は単独で又は組み合わせて使用できる。
また、これら重合性モノマー(ae−22)におけるリン酸基を、チオリン酸基に置き換えた化合物も酸性基含有重合性モノマー(ae−2)として使用できる。
酸性基含有重合性モノマー(ae−2)として、1分子中に少なくとも1個のスルホン酸基を有する、スルホン酸基含有重合性モノマー(ae−23)を使用できる。重合性モノマー(ae−23)としては、例えば、−スルホエチル(メタ)アクリレート、2−スルホ−1−プロピル(メタ)アクリレート、1−スルホ−2−プロピル(メタ)アクリレート、1−スルホ−2−ブチル(メタ)アクリレート、3−スルホ−2−ブチル(メタ)アクリレート、3−ブロモ−2−スルホ−2−プロピル(メタ)アクリレート、3−メトキシ−1−スルホ−2−プロピル(メタ)アクリレート、1,1−ジメチル−2−スルホエチル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。
これらスルホン酸基含有重合性モノマー(ae−23)の中でも、2−メチル−2−(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸が好ましい。これらスルホン酸基含有重合性モノマー(ae−23)は単独で又は組み合わせて使用できる。
上記酸性基含有重合性モノマー(ae−2)は、歯科用硬化性キット(αe)の、歯科用硬化性組成物(e)となる成分である第2剤に含まれていることが好ましい。また、第2剤に重合性モノマー(ae−2)が含まれている場合には、重合性モノマー(ae−2)とともに、酸性基を有しない重合性モノマー(ae−1)が含まれていてもよい。上記重合性モノマー(ae−2)は、第1剤に含まれる場合でも少量であることが好ましく、第1剤に含まれていないことがより好ましい。重合性モノマー(ae−2)が第1剤に多量に含まれる場合には、電子吸引基を有する有機スルフィン酸化合物(ce)が分解してスルフィン酸となってしまう場合があり、第1剤の保存安定性に悪影響を与える場合もある。
歯科用硬化性キット(αe)の、歯科用硬化性組成物(e)となる成分として用いる第1剤には、非芳香族性カルボニル基を有する芳香族性アミン化合物(be)が含まれる。非芳香族性カルボニル基を有する芳香族性アミン化合物(be)とは、芳香環に結合したアミン基を有しており、かつ、芳香環とは直接結合していないカルボニル基を有する化合物を意味する。
上記アミン基は一級アミン、二級アミン、三級アミンのいずれであってもよいが、好ましくは二級アミン基である。上記カルボニル基は、上記化合物(be)中に、好ましくは、カルボン酸又はカルボン酸塩の形態で、より好ましくはカルボン酸塩の形態で含まれている。上記アミン基の窒素原子と上記カルボニル基の炭素原子とは、炭素数3個以下の炭素鎖を介して結合していることが好ましく、炭素数1個のメチレン基(−CH2−)を介して結合していることがより好ましい。
上記化合物(be)としては、下記式(5e)で表される化合物がより好ましい。
上記式(5e)において、R1eは水素原子又は官能基を有していてもよいアルキル基であり、R2eは水素原子又は金属原子である。
上記式(5e)で表される化合物としては、例えば、R1eが水素原子、R2eが水素原子であるN−フェニルグリシン(NPG)及びその塩、N-トリグリジン(NTG)及びその塩などが挙げられる。これらの中でも、NPG及びそのアルカリ金属塩が好ましく、NPG及びそのナトリウム塩(NPG−Na)がより好ましい。
非芳香族性カルボニル基を有する芳香族性アミン化合物(be)は、単独であるいは組み合わせて使用することができる。
歯科用硬化性キット(αe)の、歯科用硬化性組成物(e)となる成分として用いる第1剤には電子吸引基を有する有機スルフィン酸化合物(ce)が含まれる。電子吸引基を有する有機スルフィン酸化合物(ce)は重合促進成分である。歯科用硬化性キット(αe)に含まれる第1剤、ならびに該キットから得られる歯科用硬化性組成物(e)の熱安定性の観点か、有機スルフィン酸化合物(ce)は電子吸引基を有する。一方、有機スルフィン酸化合物(ce)が有する電子吸引性基は、電電子吸引性が大き過ぎると重合が進み難くなるので、電子吸引性基のHammettの置換基定数σpは、好ましくは0.01〜2.00の範囲、より好ましくは0.05〜1.50の範囲、さらに好ましくは0.10〜1.00の範囲である。安定性及び重合促進効果の観点から、電子吸引基を有する有機スルフィン酸化合物(ce)は、ベンゼン環等の芳香環を有することが好ましく、スルフィン基と直接結合している芳香環を有することがさらに好ましい。有機スルフィン酸化合物(ce)が芳香環を有する場合には、電子吸引性基は、芳香環に結合していることが好ましい。
電子吸引基を有する有機スルフィン酸化合物(ce)としては、例えば、フルオロベンゼンスルフィン酸、クロロベンゼンスルフィン酸、ブロモベンゼンスルフィン酸、ヨードベンゼンスルフィン酸、アルキルオキシカルボニルベンゼンスルフィン酸、トリフルオロメチルベンゼンスルフィン酸、シアノベンゼンスルフィン酸、ニトロベンゼンスルフィン酸などのリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、ルビジウム塩、セシウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、ストロンチウム塩、鉄塩、亜鉛塩、アンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩などが挙げられる。これらの中でも、歯科用硬化性キット(αe)に含まれる第1剤、及び該キットから得られる歯科用硬化性組成物(e)の硬化性及び保存安定性の点で、クロロベンゼンスルフィン酸のリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩が好ましい。
電子吸引基を有する有機スルフィン酸化合物(ce)の含有量は特に限定されないが、得られる歯科用硬化性組成物(e)の硬化速度が遅延せず、該組成物(e)から得られる硬化体の接着強さが低下しないことから、歯科用硬化性キット(αe)に含まれる歯科用硬化性組成物(e)として用いる重合性モノマー(ae)の総量100重量部に対して、好ましくは0.001重量部以上、より好ましくは0.01重量部以上、さらに好ましくは0.1重量部以上である。また、得られる歯科用硬化性組成物(e)の硬化時間が速過ぎ、作業時間が確保できないという恐れを生じさせないことから、有機スルフィン酸化合物(ce)の含有量は、重合性モノマー(ae)の総量100重量部に対して、好ましくは20重量部以下、より好ましくは15重量部以下、さらに好ましくは10重量部以下である。
歯科用硬化性キット(αe)から得られる硬化体の色調安定性の観点からは、歯科用硬化性キット(αe)中での、電子吸引基を有する有機スルフィン酸化合物(ce)と上記芳香族性アミン化合物(be)との重量比((ce)/(be))は、好ましくは1/10〜100/1、より好ましくは1/5〜75/1、さらに好ましくは1/1〜50/1である。
歯科用硬化性キット(αe)の歯科用硬化性組成物(e)の成分として用いられる第2剤には重合開始剤(de)が含まれる。重合開始剤(de)としては、過酸化物(de−1)が好ましい。過酸化物(de−1)には、有機過酸化物(de−11)及び無機過酸化物(de−12)があり、歯科用硬化性キット(αe)に用いる重合開始剤としては、重合開始することができる限り、いずれの過酸化物も使用することができる。
上記有機過酸化物(de−11)としては、例えば、ジアセチルペルオキシド、ジプロピルペルオキシド、ジブチルペルオキシド、ジカプリルペルオキシド、ジラウリルペルオキシド、過酸化ベンゾイル(BPO)、p,p'−ジクロルベンゾイルペルオキシド、p,p'−ジメトキシベンゾイルペルオキシド、p,p'−ジメチルベンソイルペルオキシド、p,p'−ジニトロジベンゾイルペルオキシドなどが挙げられる。
上記無機過酸化物(de−12)としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、塩素酸カリウム、臭素酸カリウム及び過リン酸カリウムなどが挙げられる。
これら重合開始剤(de)は単独であるいは組み合わせて使用することができる。
過酸化物(de−1)に代表される重合開始剤(de)は、歯科用硬化性キット(αe)の、上記第2剤に含有され得る、後述するフィラー等の充填剤(fe)を除く全ての成分の合計量100重量%中に、好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは0.3〜8重量%、さらに好ましくは0.5〜7重量%の範囲内の量で使用される。過酸化物(de−1)に代表される重合開始剤(de)の量が上記数値範囲の上限値を上回ると歯科用硬化性キット(αe)の歯科用硬化性組成物(e)の重合開始時間が著しく短くなり、十分か可使時間を確保することができない場合がある。
歯科用硬化性キット(αe)の上記第1剤には、芳香族第三級アミン(ee)(ただし、非芳香族性カルボニル基を有する芳香族性アミン化合物(be)に該当する化合物は除く。)が含まれていてもよい。芳香族第三級アミン(ee)は、窒素原子に結合した有機基のうち少なくとも一つが芳香族基(窒素原子が芳香族環の構成原子と直接に結合していることが好ましい。)である第三級アミン化合物であればよく、公知のものが特に制限なく使用できる。芳香族第三級アミン(ee)の中でも、より重合活性が高く、保存安定性に優れ、また揮発性が低いため臭気が少なく、さらには入手が容易な点で、窒素原子に1つの芳香族基と、2つの脂肪族基が結合した第三級アミン化合物が好ましい。代表的な芳香族第三級アミン化合物としては下記一般式(6e)で表されるものが挙げられる。
上記式(6e)中、R3e及びR4eは各々独立に置換されていてもよいアルキル基であり、R5eは置換されていてもよい、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルコキシ基、又はアルキルオキシカルボニル基であり、nは0〜5の整数を表す。nが2以上の場合は、複数のR5eは、互いに同一でも異なっていてもよく、R5e同士が結合して環を形成していてもよい。
上記R3e、R4e及びR5eで示される置換されていてもよいアルキル基としては、例えば、炭素数1〜6の基が好ましい。かかる置換されていてもよいアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基等の非置換アルキル基、クロロメチル基、2−クロロエチル基等のハロゲン置換アルキル基;2−ヒドロキシエチル基等の水酸基置換アルキル基などが挙げられる。
また、上記R5eで示される置換されていてもよいアリール基としては、例えば、フェニル基、p−メトキシフェニル基、p−メチルチオフェニル基、p−クロロフェニル基、4−ビフェニリル基等の炭素数6〜12の基が挙げられる。置換されていてもよいアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、2−フェニルエテニル基等の炭素数2〜12の基が挙げられる。置換されていてもよいアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等の炭素数1〜10の基が挙げられる。置換されていてもよいアルキルオキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、アミルオキシカルボニル基、イソアミルオキシカルボニル基等のアルキルオキシカルボニル基に含まれるアルキルオキシ基部分の炭素数が1〜10の基が挙げられる。
上記R3e及びR4eの中でも、炭素数1〜6の置換されていてもよいアルキル基が好ましく、特に、炭素数1〜3の非置換のアルキル基(例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基)、及び2−ヒドロキシエチル基がより好ましい。
また、上記式(6e)中、n=1の場合は、R5eの結合位置は、NR3eR4e基に対してパラ位であることが好ましい。これらの中でもR5eがアルキルオキシカルボニル基又はアルキル基であることが好ましい。
上記式(6e)中、n=2又は3の場合(基R5eが2〜3個結合している場合)は、R5eの結合位置はNR3eR4e基に対してオルト位及び/又はパラ位であることが好ましい。
上記式(6e)で示される芳香族第三級アミン化合物としては、例えば、R5eがパラ位に結合したアルキルオキシカルボニル基である化合物として、p−ジメチルアミノ安息香酸メチル、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジメチルアミノ安息香酸プロピル、p−ジメチルアミノ安息香酸アミル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、p−ジエチルアミノ安息香酸エチル、p−ジエチルアミノ安息香酸プロピル等のp−ジアルキルアミノ安息香酸アルキルなどのR5eがNR3eR4e基に対してパラ位に結合したアルキルオキシカルボニル基である化合物が挙げられる。また、上記式(6e)で示される芳香族第三級アミン化合物としては、例えば、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジベンジルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジエチル−p−トルイジン、N,N−ジ(β−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、N,N,2,4,6−ペンタメチルアニリン、N,N,2,4−テトラメチルアニリン、N,N−ジエチル−2,4,6−トリメチルアニリンなどが挙げられる。
これら芳香族第三級アミン化合物(ee)は、必要に応じて1種で、あるいは2種以上の化合物を組み合わせて用いてもよい。
芳香族第三級アミン化合物(ee)の含有量は、R5eが電子供与基(Hammettの置換基定数σpが−1.00〜−0.01)である場合又はnが0の場合には、歯科用硬化性キット(αe)に含まれる歯科用硬化性組成物(e)として用いる重合性モノマー(ae)の総量100重量部に対して、0.001〜3重量部であることが好ましく、0.005〜2重量部であることがより好ましく、0.01〜1重量部であることがさらに好ましい。上記含有量が0.001重量部未満の場合は、重合硬化後の歯科用セメントとして要求される機械的特性を得ることができない場合があり、上記含有量が3重量部を超えた場合は、重合速度が速くなり過ぎるため、臨床での操作性が悪化する場合がある。
R5eが電子吸引基(Hammettの置換基定数σpが0.01〜2.00)である場合には、芳香族第三級アミン化合物(ee)の含有量は、歯科用硬化性キット(αe)に含まれる歯科用硬化性組成物(e)として用いる重合性モノマー(ae)の総量100重量部に対して、0.1〜20重量部であることが好ましく、0.3〜10重量部であることがより好ましく、0.5〜5重量部であることがさらに好ましい。上記含有量が0.1重量部未満の場合は、重合硬化後の組成物の耐変色性が悪化する場合があり、上記含有量が20重量部を超えた場合は、光刺激に対して過剰に鋭敏になるため、臨床での操作性が悪化する場合がある。
なお、Hammettの置換基定数σpが−0.01を越え、0.01未満である数値範囲に属する置換基は通常は水素原子のみであるので、この数値範囲の置換基は、電子供与基に属するものと見なせばよい。
歯科用硬化性キット(αe)に含まれる、歯科用硬化性組成物(e)の成分として用いる第1剤と第2剤との少なくとも一方には、さらにフィラー等の充填剤(fe)が含まれていてもよい。フィラー等の充填剤(fe)は、1種単独で配合されていてもよく、複数種類を組み合わせて配合されていてもよい。また、上記第1剤と第2剤との両方に配合されている場合には、第1剤と第2剤は同じ配合でも、異なった配合でもよい。フィラー等の充填剤(fe)としては、無機系フィラー(fe1)、有機系フィラー(fe2)、及び無機系フィラーと有機系フィラーとの複合体フィラー(fe3)が挙げられる。
無機系フィラー(fe1)となる無機材料としては、例えば、シリカ、カオリン、クレー、雲母、マイカ等のシリカを基材とする鉱物;シリカを基材とし、Al2O3、B2O3、TiO2、ZrO2、BaO、La2O3、SrO、ZnO、CaO、P2O5、Li2O、Na2Oなどを含有する、セラミックス及びガラスが挙げられる。ガラスとしては、例えば、ランタンガラス、バリウムガラス、ストロンチウムガラス、ソーダガラス、リチウムボロシリケートガラス、亜鉛ガラス、フルオロアルミノシリケートガラス、ホウ珪酸ガラス、バイオガラスなどが好ましい。上記無機材料としては、例えば、結晶石英、ヒドロキシアパタイト、アルミナ、酸化チタン、酸化イットリウム、ジルコニア、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化リチウム、フッ化イッテルビウムも好ましい。
有機系フィラー(fe2)の材料としては、重合体が例示できる。かかる重合体としては、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、多官能メタクリレートの重合体、ポリアミド、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、あるいは、前記重合体となるモノマー成分を共重合させたランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体等の共重合体、さらには、これら重合体を均一に混合したブレンド物、海島構造、層状構造、境界が不明瞭な混合比率が傾斜的濃淡を有する構造を有する不均一に混合したブレンド物などが挙げられる。
無機系フィラーと有機系フィラーとの複合体フィラー(fe3)としては、有機系フィラーに無機系フィラーを分散させたもの、無機系フィラーを種々の重合体にてコーティングした無機/有機複合フィラーが例示される。
硬化性、機械的強度、取り扱い性を向上させるために、フィラー等の充填剤(fe)として無機系フィラー(fe1)などを用いる場合には、シランカップリング剤等の公知の表面処理剤で予め表面処理してから用いてもよい。表面処理剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリ(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
フィラー等の充填剤(fe)の配合量は、歯科用硬化性キット(αe)に含まれる第1剤及び第2剤などを混合して得られる歯科用硬化性組成物(e)の全重量に基づいて、10〜80重量%の範囲が好ましく、30〜80重量%の範囲がより好ましく、50〜75重量%の範囲がさらに好ましい。
なお、第1剤の含有成分である非芳香族性カルボニル基を有する芳香族性アミン化合物(be)、電子吸引基を有する有機スルフィン酸化合物(ce)、及び必要に応じて含まれる芳香族第三級アミン(ee)のみでは、均一な液相を形成することが困難である場合がある。そのため、常温において、液体である重合性モノマー(ae)を混合することが妥当である。それに代えてアセトン等のこれら化合物の溶解性に優れ、かつ、人体に顕著な為害性が無く、揮発しやすく、接着の阻害となり難い溶媒を用いることは、様々な問題点があり、難しい。
上記第1剤及び第2剤においては、各成分をさらに分割して保管してもよい。すなわち、
酸性基を有しない重合性モノマー(ae−1)
酸性基含有重合性モノマー(ae−2)
非芳香族性カルボニル基を有する芳香族性アミン化合物(be)
電子吸引基を有する有機スルフィン酸化合物(ce)
重合開始剤(de)
芳香族第三級アミン(ee)
のうち、芳香族性アミン化合物(be)、有機スルフィン酸化合物(ce)、及び必要に応じて含まれる芳香族第三級アミン(ee)はそれぞれ、
酸性基含有重合性モノマー(ae−2)又は重合開始剤(de)と混合すると保存安定性が十分でなく、好ましくないので、当該組み合わせ(集合論で表せば、((be)∪(ee))∩((ce)∪(ae−2)∪(de)))を除いた、任意の組み合わせを選択することができる。
歯科用硬化性キット(αe)の第1剤及び第2剤などを混合して得られるて歯科用硬化性組成物(e)を歯牙、特に象牙質、への接着に適応する場合、良好な接着性を得るためには歯科用表面処理剤による歯面前処理を行うことが望ましい。したがって、歯科用硬化性キット(αe)には歯科用組成物(e)を作製するための第1剤、第2剤などとは別に、歯科用表面処理剤が含まれていることが好ましい一態様である。かかる歯科用表面処理剤の組成は特に限定されないが、例えば、上述した酸性基含有重合性モノマー(a−2)、遷移金属化合物、及び水を含有する歯科用表面処理剤が挙げられる。
上記歯科用表面処理剤に含まれる酸性基含有重合性モノマー(ae−2)は、歯科用硬化性組成物(e)として用いる第2剤に含まれる酸性基含有重合性モノマー(ae−2)と同一でも異なっていてもよい。良好な歯質接着性と歯科用表面処理剤の安定性を両立できる点で、上記歯科用表面処理剤に含まれる酸性基含有重合性モノマー(ae−2)としては、4−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリット酸(メタクリレートの場合:「4−MET」)及びその塩、その無水物(メタクリレートの場合:4−META)が好ましい。
上記歯科用表面処理剤に含まれる遷移金属化合物は公知のものを用いることができる。該遷移金属化合物としては、例えば、臭化バナジウム、臭化ニッケル、臭化銅、臭化鉄、臭化コバルト等の臭化物;塩化ニッケル、塩化バナジウム、塩化パラジウム、塩化ニッケル、塩化チタン、塩化鉄、塩化コバルト等の塩化物;フッ化バナジウム、フッ化コバルト、フッ化銅、フッ化ニッケル、フッ化チタンカリウム等のフッ化物;硫酸パラジウム、硫酸ニッケル、硫酸チタン、硫酸銅、硫酸鉄、硫酸コバルト等の硫酸塩;硝酸ニッケル、硝酸パラジウム、硝酸ニッケル、硝酸鉄、硝酸コバルト等の硝酸塩;二リン酸鉄、リン酸コバルト等のリン酸塩;等の無機酸の塩、
酢酸ニッケル、酢酸銅、酢酸コバルト、安息香酸コバルト、クエン酸銅、クエン酸鉄、シュウ酸チタンカリウム、シュウ酸鉄、シュウ酸コバルト、乳酸鉄、フマル酸鉄、アクリル酸銅、メタクリル酸銅、スルファミン酸ニッケル、ステアリン酸酸化バナジウム、ステアリン酸コバルト、ナフテン酸バナジウム、ナフテン酸コバルト、グルコン酸コバルト等の有機酸の塩;
水酸化パラジウム、水酸化ニッケル、水酸化鉄、水酸化銅、水酸化コバルト等水酸化物;
チタノセンジクロリド等のパイ電子系有機錯体、バナジウムアセチルアセトナート、ニッケルアセチルセトナート、銅アセチルアセトナート、鉄アセチルアセトナート、コバルトアセチルアセトナート等のアセチルアセトンやEDTAとの有機錯体;などが挙げられる。
これら遷移金属化合物はいずれの価数のものであってもよい。遷移金属化合物の中でも、鉄、コバルト及び銅の化合物が好ましく、鉄と銅の化合物がより好ましい。これら遷移金属化合物は単独で又は組み合わせて用いることができる。
上記歯科用表面処理剤に含まれる水としては、例えば、精製水(日本薬局方)、蒸留水、イオン交換水及び生理食塩水などが挙げられる。これらの中でも、蒸留水及びイオン交換水が好ましい。
歯科用硬化性キット(αe)に含まれる混合して歯科用硬化性組成物(e)として用いる第2剤及び/又は上記歯科用表面処理剤には、光照射によって重合を開始するために、光重合開始剤(ge)をさらに含有してもよい。光重合開始剤(ge)としては、α−ジケトン類(ge1)、ケタール類(ge2)、チオキサントン類(ge3)、アシルホスフィンオキサイド類(ge4)、α−アミノアセトフェノン類(ge5)が例示される。
α−ジケトン類(ge1)としては、例えば、ジアセチル、ジベンジル、カンファーキノン、2,3−ペンタジオン、2,3−オクタジオン、9,10−フェナンスレンキノン、4,4'−オキシベンジル、アセナフテンキノンなどが挙げられる。これらの中でも、可視及び近紫外領域での光硬化性に優れ、ハロゲンランプ、発光ダイオード(LED)、キセノンランプのいずれの光源を用いても十分な光硬化性を示すことから、カンファーキノンが好ましい。
ケタール類(ge2)としては、例えば、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタールなどが挙げられる。
チオキサントン類(ge3)としては、例えば、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントンなどが挙げられる。
アシルホスフィンオキサイド類(ge4)としては、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ジベンゾイルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、トリス(2,4−ジメチルベンゾイル)ホスフィンオキサイド、トリス(2−メトキシベンゾイル)ホスフィンオキサイド、2,6−ジメトキシベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジクロロベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,3,5,6−テトラメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ベンゾイル−ビス(2,6−ジメチルフェニル)ホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルエトキシフェニルホスフィンオキサイドなどが挙げられる。
α−アミノアセトフェノン類(ge5)としては、例えば、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−ベンジル−2−ジエチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−プロパノン−1、2−ベンジル−2−ジエチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−プロパノン−1、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ペンタノン−1、2−ベンジル−2−ジエチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ペンタノン−1などが挙げられる。
光重合開始剤(ge)は、一種類単独を用いてもよく、複数種類を併用してもよい。
光重合開始剤(ge)の配合量は特に限定されないが、歯科用硬化性キット(αe)の第1剤及び第2剤などから作製される歯科用硬化性組成物(e)においては、光硬化性の観点から、歯科用硬化性組成物(e)に含まれる重合性モノマー(ae)の総量100重量部に対して、0.01〜10重量部が好ましく、0.10〜3重量部がより好ましい。同様に、歯科用表面処理剤においても、歯科用表面処理剤に含まる重合性モノマー(ae)の総量100重量部に対して、0.01〜10重量部が好ましく、0.10〜3重量部がより好ましい。
歯科用硬化性組成物(e)の構成成分である第1剤もしくは第2剤、又は歯科用表面処理剤には、レドックス重合の重合促進剤として、さらに、硫黄を含有する還元性無機化合物が含有されていてもよい。硫黄を含有する還元性無機化合物としては、例えば、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、ピロ亜硫酸塩、チオ硫酸塩、チオン酸塩、亜二チオン酸塩などが挙げられる。これらの中でも亜硫酸塩、重亜硫酸塩が好ましく、好適化合物としては、例えば、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸カルシウム、亜硫酸アンモニウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウムなどが挙げられる。硫黄を含有する還元性無機化合物は、一種類単独を用いてもよく、複数種類を併用してもよい。
歯科用硬化性組成物(e)の構成成分である第1剤もしくは第2剤、又は歯科用表面処理剤には、歯質に耐酸性を付与することを目的として、フッ素イオン放出性物質が配合されていてもよい。フッ素イオン放出性物質としては、例えば、メタクリル酸メチルとメタクリル酸フルオライドとの共重合体等のフッ素イオン放出性ポリマー、セチルアミンフッ化水素酸塩等のフッ素イオン放出性物質、無機フィラーとして既述のフルオロアルミノシリケートガラス、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化リチウム、フッ化イッテルビウムなどが挙げられる。
歯科用硬化性組成物(e)の構成成分である第1剤もしくは第2剤、又は歯科用表面処理剤には、安定剤(重合禁止剤)、着色剤、蛍光剤、紫外線吸収剤等の添加剤を配合してもよい。また、歯科用硬化性組成物(e)の構成成分である第1剤もしくは第2剤、又は歯科用表面処理剤には、セチルピリジニウムクロライド、塩化ベンザルコニウム、(メタ)アクリロイルオキシドデシルピリジニウムブロマイド、(メタ)アクリロイルオキシヘキサデシルピリジニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシデシルアンモニウムクロライド、トリクロサン等の抗菌性物質が配合されていてもよい。
歯科用硬化性組成物(e)の構成成分である第1剤もしくは第2剤、又は歯科用表面処理剤には、公知の染料、顔料を配合されていてもよい。
歯科用硬化性キット(αe)は、第1剤と第2剤とを少なくとも有し、(a)重合性モノマー(ae)は第1剤と第2剤に含まれており、かつ、非芳香族性カルボニル基を有する芳香族性アミン化合物(be)及び(c)電子吸引基を有する有機スルフィン酸化合物(ce)が第1剤に含まれ、重合開始剤(de)が第2剤に含まれている。なお、歯科用硬化性キット(αe)に含まれる歯科用硬化性組成物(e)となる成分は、第1剤と第2剤のみである必要はなく、第3剤等の他の剤が含まれていてもよい。歯科用硬化性組成物(e)となる他の剤としては、重合促進剤などを含有する剤などが挙げられる。
歯科用硬化性キット(αe)の好ましい実施態様としては、歯科用硬化性組成物(e)となる成分が第1剤及び第2剤からなる形態(いわゆる2ペースト型の形態)が挙げられる。2ペースト型の形態で用いる場合、第1剤及び第2剤はそれぞれ隔離された状態で保存されており、使用直前にこれら2つの剤を混合して、歯科用硬化性組成物(e)の重合を進行させる。かかる場合、重合開始剤(de)に加えて、光重合開始剤(ge)がさらに含有される場合には、化学重合に加えて光重合を進行させて硬化させることが好ましい。
歯科用硬化性キット(αe)は、保存安定性を有することが好ましい。具体的には、重合性モノマー(ae)、非芳香族性カルボニル基を有する芳香族性アミン化合物(be)、及び電子吸引基を有する有機スルフィン酸化合物(ce)を含む第1剤を76℃に24時間保管する熱負荷の前後において、歯科用硬化性キット(αe)の第1剤及び第2剤の混合物の硬化時間の差が好ましくは3.0分以内、より好ましくは2.0分以内、さらに好ましくは1.5分以内である。
また、上記熱負荷の前後において、歯科用硬化性キット(αe)の第1剤及び第2剤の混合物の硬化時間の比(熱負荷後硬化時間/熱負荷前硬化時間)が、好ましくは1.5以内、より好ましくは1.4以内、さらに好ましくは1.3以内である。
上記歯科用硬化性組成物(e)から得られる硬化体の引っ張り接着強度は好ましくは3.0MPa以上、より好ましくは4.0MPa以上、さらに好ましくは5.0MPa以上である。
歯科用硬化性キット(αe)に含まれる歯科用硬化性組成物(e)となる第1剤及び第2剤などの成分は、これらを混合することにより、歯科用セメントに使用される。
歯科用セメントとして使用する際には、上述した歯科用表面処理剤を併用することが好ましい。歯科用表面処理剤を治療すべき歯牙に塗布し、歯科用エアシリンジを用いてエアブローを行った後に、歯科用硬化性組成物の第1剤と第2剤とを混合して、塗布面に塗布し、化学重合による硬化を待つことで治療を完結することができる。また、歯科用可視光線照射器などを用いて硬化させ治療を完結することもできる。また、仮照射を行い、重合性モノマーを半硬化させ、固定面の調整を行なう操作を経てもよい。
また、若干過剰な量の歯科用硬化性キット(αe)から調製される歯科用硬化性組成物(e)を歯冠修復材料の内壁面に塗布し、歯質に圧接させる。この圧接操作の際、組成物(e)の過剰分を歯質と歯冠用修復材料の接合部(マージン部)からはみ出させ、そのはみ出した余剰セメントに歯科用の光照射器を用いて仮照射を行い、余剰セメントを半硬化状態とする。こうして硬化状態となった余剰セメントに対して歯科用短針等を用いて余剰セメントを除去する。
上記歯科用硬化性キット(αe)は保存安定性に優れ、歯科用接着剤、コーティング材、填塞材、歯質及び歯冠修復材料として有用である。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
以下、本発明の第1態様の実施例に関して説明する。
第1態様の実施例に使用した化合物の略号を以下に示す。
HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート(東京化成工業株式会社)
HPMA:2−ヒドロキシプロピルメタクリレート(東京化成工業株式会社)
NBDI:ノルボルナンジイソシアネート(三井化学株式会社)
DBTDL:ジブチルスズジラウレート(東京化成工業株式会社)
BHT:ジブチルヒドロキシトルエン(東京化成工業株式会社)
UDMA:2,2,4−トリメチルヘキサメチレンビス(2−カルバモイルオキシエチル)ジメタクリレート(根上工業株式会社)
TEGDMA:トリエチレングリコールジメタクリレート(新中村化学工業株式会社)
CQ:カンファーキノン(和光純薬工業株式会社)
DMABA−BE:4―(ジメチルアミノ)安息香酸2−ブトキシエチル(東京化成工業株式会社)
[粘度測定の方法]
第1態様の実施例及び比較例における粘度は、E型粘度計(東機産業製TVE−22H)を用い測定した。温度は循環式恒温水槽を用いて、所定の温度にコントロールした。
[重合収縮率測定の方法]
後述の第1態様の実施例中の記述に従い、光重合性の歯科材料用組成物を得た。該光重合性の歯科材料用組成物を直径10mm、深さ2mmのアルミニウム製金型に充填し、カバーガラスで上下から挟んだ後、歯科材料用可視光照射器((株)松風社製ツイン重合器)を用いて、片面3分間ずつ両面合わせて6分間ずつ光照射して硬化物を得た。硬化前の歯科材料用組成物とその硬化物の密度を、乾式密度計((株)島津製作所製アキュピック1330)を用いて測定し、下記式(1)より重合収縮率を求めた。
式(1):重合収縮率(%)=((重合後の硬化物の密度)−(重合前の歯科組成物の密度)/(重合後の硬化物の密度)×100
[曲げ試験]
第1態様の実施例及び比較例における曲げ試験の方法を、以下に示す。
(歯科材料用組成物用の光重合性モノマー組成物の曲げ試験片の作製)
後述の第1態様の実施例中の記述に従い、光重合性の歯科材料用組成物を得た。該光重合性の歯科材料用組成物を、2×2×25mmのステンレス製型に入れ、可視光照射装置(松風社製 ソリディライトV)を用いて、片面3分間ずつ両面合わせて6分間ずつ光照射して硬化物を得た。該硬化物を密閉できるサンプル瓶中に試験片を蒸留水に浸漬して、37℃で24時間保持したものを試験片として使用した。
(三点曲げ試験)
上記方法で作成した試験片を、試験機(島津製作所製 オートグラフEZ−S)を使用して、支点間距離20mm、クロスヘッドスピード1mm/分で三点曲げ試験を行った
モノマーの合成:
[製造例1a]
十分に乾燥させた攪拌羽根、及び温度計を備えた容器内に、HEMA 557.3重量部、DBTDL 1.0重量部、及びBHT 0.5重量部を加えたのち60℃に昇温し、均一になるまで撹拌した。続いて、NBDI 441.6重量部を、内温が90℃以下となるようにコントロールしながら滴下した。NBDIを全量滴下後、反応温度を85℃に保ち7時間反応を行い以下に示す目的のウレタンメタクリレート 1000.0重量部を得た。この際、HPLC分析で反応の進行を追跡して、反応の終点を確認した。なお、HEMAのモル数はNBDIのモル数の2倍量であり、HEMA中に含有されるヒドロキシル基とNBDIに含有されるイソシアネート基との比率は1:1である。生成したウレタンメタクリレートの65℃における粘度は750mPa・sであった。
[製造例2a〜4a]
下記表1aに示すヒドロキシ(メタ)アクリレートとジイソシアネートとを用いて、製造例1aと同様の合成操作を行うことによりウレタン(メタ)アクリレートを得た。なお、ヒドロキシ(メタ)アクリレートのモル数はジイソシアネートのモル数の2倍量であり、(メタ)アクリレートに含有されるヒドロキシル基とジイソシアネートに含有されるイソシアネート基との比率は1:1である。生成したウレタンメタクリレートの65℃における粘度は、下記表1aに示す通りであった。
[実施例1a]
製造例1aで得られたウレタンメタクリレート700重量部と、TEGDMA300重量部(25℃における粘度は9mPa・s)とを容器に入れ、均一になるまで50℃で撹拌して、歯科材料用重合性モノマー組成物を得た。得られた歯科材料用重合性モノマー組成物の25℃における粘度を測定したところ、680mPa・sであった。
[実施例2a〜9a]
下記表2aに示すウレタンメタクリレートと(メタ)アクリレートモノマーを用いて、実施例1aと同様の操作を行うことにより、歯科材料用重合性モノマー組成物を得た。得られた歯科材料用重合性モノマー組成物の25℃における粘度は、下記表2aに示す通りであった。
[実施例10a]
実施例1aで得られた歯科材料用重合性モノマー組成物1000重量部に、さらにCQ 5重量部、DMAB2−BE 5重量部を添加し、均一になるまで室温で撹拌し、光重合性の歯科材料用組成物を得た。上記の試験方法に従い、該歯科材料用組成物の硬化物の曲げ試験を実施した。弾性率は2.5GPa、曲げ強度は106MPaであった。なお重合収縮率は、7.6%であった。
[実施例11a〜13a]
下記表3aに示す歯科材料用重合性モノマー組成物を用いて、実施例10aと同様の操作を行うことにより、歯科材料用組成物を得た。上記の試験方法に従い、該歯科材料用組成物の硬化物の曲げ試験を実施した。結果は下記表3aに示す。
[比較例1a]
製造例1aで得られたウレタンメタクリレートの代わりにUDMAを用いた以外は、実施例1aと同様の操作を行い歯科材料用重合性モノマー組成物を調製したのち、実施例10aと同様の操作を行い歯科材料用組成物を得た。上記の試験方法に従い、該歯科材料用組成物の硬化物の曲げ試験を実施した。結果は下記表3aに示したとおりであった。
表3aに記載のように本発明の第1態様の1形態である歯科材料用組成物(a)の硬化物は、従来の歯科材料用組成物で汎用されているUDMAを含有する歯科材料用組成物の硬化物と比較して、より高い弾性率とより高い曲げ強度を兼ね備え、さらに、重合収縮率も低いことがわかった。このような性質は、歯科材料用組成物として使用する際に有利である。
以下、本発明の第2態様の実施例に関して説明する。
第2態様の実施例に使用した化合物の略号を以下に示す。
HEA:2−ヒドロキシエチルアクリレート(東京化成工業株式会社)
NBDI:ノルボルナンジイソシアネート(三井化学株式会社)
UDMA:2,2,4−トリメチルヘキサメチレンビス(2−カルバモイルオキシエチル)ジメタクリレート(根上工業株式会社)
HEA:2−ヒドロキシエチルアクリレート(東京化成工業株式会社)
DBTDL:ジブチルスズジラウレート(東京化成工業株式会社)
BHT:ジブチルヒドロキシトルエン(東京化成工業株式会社)
UDMA:ジ−2−メタクリロイルオキシエチル−2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジカルバメート(根上工業株式会社)
Bis−GMA:2,2−ビス〔4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕プロパン(新中村化学工業株式会社)
TEGDMA:トリエチレングリコールジメタクリレート(新中村化学工業株式会社)
HEMA:メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(東京化成工業株式会社)
GDMA:グリセロールジメタクリラート(東京化成工業株式会社)
4−MET:4−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリット酸(サンメディカル株式会社)
RT−600T:架橋性ポリウレタン粉末(6μm、屈折率:1.49 超ソフトグレード、二重結合当量2900、ゲル分率90%以上、根上工業株式会社)
RW−600T:架橋性ポリウレタン粉末(6μm、屈折率:1.53 ソフトグレード、二重結合当量2900、10%微小圧縮強度2.01MPa、ゲル分率90%以上、根上工業株式会社)
CQ:カンファーキノン(和光純薬工業株式会社)
DTMPO:ジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(シグマアルドリッチ ジャパン株式会社)
DMABAE:4―(ジメチルアミノ)安息香酸エチル(東京化成工業株式会社)
DMABA−BE:4―(ジメチルアミノ)安息香酸2−ブトキシエチル(東京化成工業株式会社)
MEHQ:4−メトキシフェノール(和光純薬工業株式会社)
MDP:10−メタクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート(サンメディカル株式会社)
BPO:過酸化ベンゾイル(東京化成工業株式会社)
NPG・Na:N−フェニルグリシンのナトリウム塩(東京化成工業株式会社)
p−TS・Na:p−トルエンスルフィン酸ナトリウム(東京化成工業株式会社)
p−CBS・Na:p−クロロベンゼンスルフィン酸ナトリウム(東京化成工業株式会社)
モノマーの合成:
[製造例1b]
十分に乾燥させた攪拌羽根、及び温度計を備えた容器内に、HEA 530.3部、DBTDL 1.0部、及びBHT 0.5部を加えたのち60℃に昇温し、均一になるまで撹拌した。続いて、NBDI 468.6部を、内温が90℃以下となるようにコントロールしながら滴下した。NBDIを全量滴下後、反応温度を85℃に保ち7時間反応を行い目的のウレタンアクリレート 1000.0部を得た。この際、HPLC分析で反応の進行を追跡して、反応の終点を確認した。なお、HEAのモル数はNBDIのモル数の2倍量であり、HEA中に含有されるヒドロキシル基とNBDIに含有されるイソシアネート基との比率は1:1である。
[製造例2b〜8b]
下記表1bに示すヒドロキシ(メタ)アクリレートとジイソシアネートとを用いて、製造例1bと同様の合成操作を行うことによりウレタン(メタ)アクリレートを得た。なお、ヒドロキシ(メタ)アクリレートのモル数はジイソシアネートのモル数の2倍量であり、(メタ)アクリレートに含有されるヒドロキシル基とジイソシアネートに含有されるイソシアネート基との比率は1:1である。
動揺歯固定接着剤を想定した試験例:
<組成物の調製>
実施例1b〜8b及び比較例1b〜3bに用いたモノマー及び有機フィラーの配合を表2bに、実施例1b〜8b及び比較例1b〜3bに用いた重合開始剤及び安定剤の配合を表3bに示す。
<物性値の測定方法>
動揺歯固定接着剤を想定した試験例において、各種の測定は以下の方法により実施した。
(3点曲げ試験)
各実施例及び比較例で得た組成物を2×2×25mmの型枠に充填後、ポリプロピレンフィルムとガラス板で圧接し、光照射(PENCURE 2000、株式会社モリタ)を10秒×9点×裏表行い、#320の耐水研磨にて表面を研磨した後、3点曲げ試験用の硬化体を得、37℃の水中に一晩浸漬した。一晩浸漬後、この硬化体について、精密万能試験機(オートグラフAG−IS、島津製作所)を用いて、クロスヘッドスピード1.0mm/minで3点曲げ試験を行った。(N=3)
実施例1b〜8b及び比較例1b〜3bのそれぞれの3点曲げ試験の結果を表4bに示す。
(引張り接着試験)
ウシ下顎前歯を注水下#180エメリーペーパーで研磨し平坦な接着用エナメル質面を削りだし、水洗、乾燥した後、歯面にエッチング材(高粘度レッド/サンメディカル(株)製)を塗布し、30秒後に水洗、乾燥した。前記の面を粘着テープでマスキングして直径4.8mmの円形の接着面積を規定した。続いて、各実施例及び比較例で得た組成物からなるペーストを接着歯面に塗布後PENCURE2000にてLED光照射を10秒行い硬化させた後、アクリルロッドをスーパーボンド(サンメディカル(株)製)を用いて、圧接して植立した。硬化したサンプルを37℃にて水中で一晩浸漬した後、オートグラフAG−IS(島津製作所)を用いて、クロスヘッドスピード2mm/minで引張接着強さを評価した。(N=10)
実施例1b〜8b及び比較例1b〜3bのそれぞれの引張接着強さを表4bに示す。
表4bから、実施例1b〜8bの歯科用接着性組成物は、比較例1b〜3bの歯科用接着性組成物と比較すると、同等以上の曲げ強度と接着性を保持しつつ、高い破断エネルギーを示すことがわかる。このような性質を持つ接着性組成物は、一定水準以上の接着性と強度を保持しつつ、破断しにくい材料であり、動揺歯固定接着剤として有用である。したがって、実施例1b〜8bに代表される本発明の第2態様の歯科用接着性組成物(b)は、動揺歯固定接着剤として好適に用いることができ、接着性材料としても有用である。
接着セメントを想定した試験例:
(組成物用第1剤及び第2剤の調製)
表5b、表7b及び表8bに記載した各実施例及び比較例の組成物となる第1剤及び第2剤は、予め各成分を乳鉢にて充分に練和して均一なペースト状にした後、容量10ml以下の注射器中に充填して冷蔵庫中に保存した。各実施例及び比較例の実施に当たっては、注射器を室温中(約23℃)に15分以上静置した後に使用した。
<物性値の測定方法>
接着セメントを想定した試験例において、各種の測定は以下の方法により実施した。
(硬化時間測定試験)
硬化時間の評価はDSC法によって評価した。DSC法による硬化時間の評価は、各実施例及び比較例の第1剤及び第2剤を練和して組成物を得て、その組成物をアルミ製のセル(パン)に充填し、ラジカル重合により生じる重合熱を示差熱分析法によって測定し、混合開始から最高温度を記録するまでの時間を硬化時間として評価した。測定装置は示差走査熱量計((株)島津製作所製;DSC−60)を用い、測定は37±2℃で実施した。硬化時間は10分以内であれば好ましく、より好ましくは5分以内である。
(保存安定性試験)
保存安定性に関する評価試験は次の方法により実施した。組成物となる1成分の第1剤を遮光した樹脂製注射器(ミックスパックス社製)に充填し、76℃に24時間保管して熱負荷を与える試験を行った。所定の保管期間後、第1剤及び第2剤を練和して得られた組成物(ペースト)の硬化時間をDSC法により測定し、保管前の硬化時間と比較して評価した。室温条件下で歯科用練和紙上に等量採取した第1剤と第2剤を歯科用練和棒で20秒間混合した後、得られた練和物約0.1gをアルミパンに充填する。練和開始から40秒後に口腔内温度(37±2℃)に保たれた示差熱分析装置に投入し、ラジカル重合による重合熱が最大を記録するまでの時間を硬化時間として定める。なお、加熱負荷については、重合性モノマーの配合による変動の大きい、(D)還元剤を含む第1剤のみ実施した。保管前後の硬化時間の差異は3分以内が好ましく、2分以内であればより好ましく、1分以内であればさらに好ましい。
(歯冠修復材料への接着試験、表面処理無し)
各実施例及び比較例で得た組成物の歯冠修復物に対する接着強さの評価を以下に示す方法で実施した。
(歯科用貴金属(金合金)への接着試験)
金合金(プライムキャスト:石福金属社製、10×10×3mm)の面を、耐水エメリー紙#600まで研磨して平滑な面を得た。研磨面を、5kg/cm2の条件で約10秒間アルミナサンドブラスト処埋(装置:Sahara(JELENKO社製);研磨剤:50μmアルミニウムオキシド)して、処理された金合金を水中超音波洗浄した後、エアブローによって乾燥した。処理面に接着面積を規定するための直径4.8mmの円孔のあいた両面テープを張り付けた。この円孔内に各実施例及び比較例で得た組成物を塗布して、SUS棒を直立させて圧接した後、室温で30分間静置した。表6bは、静置後の試験体を37℃の恒温槽で16時間保管した後、引張り試験をクロスヘッドスピード2mm/minで行い、接着強度を算出した結果をまとめた。表8bは、静置後の試験体を5℃−55℃の温冷刺激を5000回与えた後、引張り試験をクロスヘッドスピード2mm/minで行い、接着強度を算出した結果をまとめた。
(ジルコニアへの接着試験)
ジルコニア(ジルコニア:品川ファインセラミック社製、10×10×3mm)の面を耐水エメリー紙#600まで研磨して平滑な面を得た。研磨面を5kg/cm2の条件で約10秒間アルミナサンドブラスト処埋して、処理されたジルコニアを水中超音波洗浄した後、エアブローによって乾燥した。処理面に接着面積を規定するための直径4.8mmの円孔のあいた両面テープを張り付けた。この円孔内に各実施例及び比較例で得た組成物を塗布して、SUS棒を直立させて圧接した後、室温で30分間静置した。表6bは、静置後の試験体を37℃の恒温槽で16時間保管した後、引張り試験をクロスヘッドスピード2mm/minで行い、接着強度を算出した結果をまとめた。表8bは、静置後の試験体を5℃−55℃の温冷刺激を5000回与えた後、引張り試験をクロスヘッドスピード2mm/minで行い、接着強度を算出した結果をまとめた。
(長石系セラミックスヘの接着試験)
歯科用ポーセレン(VITA VMK MASTER:VITA社製)、15×15×10)の一面を耐水エメリー紙#600まで研磨して平滑な面を得た。研磨面を2kg/cm2の条件で約10秒間アルミナサンドブラスト処埋して、処理された歯科用ポーセレンを水中超音波洗浄した後、エアブローによって乾燥した。処理面に接着面積を規定するための直径4.8mmの円孔のあいた両面テープを張り付けた。この円孔内に各実施例で得た組成物を塗布して、SUS棒を直立させて圧接した後、室温で30分間静置した。表6bは、静置後の試験体を37℃の恒温槽で16時間保管した後、引張り試験をクロスヘッドスピード2mm/minで行い、接着強度を算出した結果をまとめた。表8bは、静置後の試験体を5℃−55℃の温冷刺激を5000回与えた後、引張り試験をクロスヘッドスピード2mm/minで行い、接着強度を算出した結果をまとめた。
(ガラスセラミックスへの接着試験)
ガラスセラミックス(HeraCeram:ヘレウス−クルツァー社製、10×10×3mm)の面を耐水エメリー紙#600で研磨して平滑な面を得た。処理されたガラスセラミックスを水中超音波洗浄した後、エアブローによって乾燥した。処理面に接着面積を規定するための直径4.8mmの円孔のあいた両面テープを張り付けた。この円孔内に各実施例及び比較例で得た組成物を塗布して、SUS棒を直立させて圧接した後、室温で30分間静置した。表6bは、静置後の試験体を37℃の恒温槽で16時間保管した後、引張り試験をクロスヘッドスピード2mm/minで行い、接着強度を算出した結果をまとめた。表8bは、静置後の試験体を5℃−55℃の温冷刺激を5000回与えた後、引張り試験をクロスヘッドスピード2mm/minで行い、接着強度を算出した結果をまとめた。
表6bに示すように、歯科材料用接着性組成物(b)は、各種歯冠修復材料に対して良好な接着性能を示した。
表7bに示すように、歯科材料用接着性組成物(b)は、それぞれ加熱負荷の前後で硬化時間の差が前記好ましい範囲であることから、該組成物は優れた保存安定性を示すことがわかった。一方、第2態様で用いられる重合性モノマー(Ab)又は(A)の代わりに、汎用の重合性モノマーであるbis−GMAを使用した比較例4bにおいて、加熱負荷後の組成物は30分以上経過しても硬化しなかった。この結果は、重合性モノマー(Ab)又は(A)の含有により、歯科材料用接着性組成物の保存安定性が格段に向上することを示している。
表8bに示すように、重合性モノマー(Ab)又は(A)を含有する歯科材料用接着性組成物(b)は、それぞれ加熱負荷の前後で硬化時間の差が好ましい範囲であることから、該組成物は優れた保存安定性を示すことがわかった。また、同時に、重合性モノマー(Ab)又は(A)を含有する歯科材料用接着性組成物(b)は、各種歯冠修復材料に対して良好な接着性能を示した。
すなわち実施例11b〜17bに代表される重合性モノマー(Ab)又は(A)を含有する歯科材料用接着性組成物(b)は、接着性と保存安定性を要求される歯科材料用途に対して、好適に用いることができる。
なお、第2態様の実施例において接着試験に使用した歯冠修復物表面に対して特別な前処理を実施していないが、金合金などの貴金属に対しては6−(4−ピニルペンジル−n−プロピル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオン(VTD)を含む表面改質剤などを、ジルコニア、長石系セラミックス、二ケイ酸リチウム系セラミックスに対してはシラン処理剤などを歯科材料用接着性組成物(b)を塗布する直前に適用しても構わない。
また、上記歯科材料用接着性組成物(b)を、歯質、特に象牙質に対する接着に適用する場合、状況に合わせて歯質表面を、エッチング剤(例えば、金属塩を含んでいてもよいリン酸水溶液、クエン酸水溶液、又はEDTA水溶液など)、歯質用プライマー(例えば、重合性モノマー、重合開始剤及び/又は還元剤を含有する)、ボンディング材等の各種前処理剤によりあらかじめ処理してもよい。
以下、本発明の第3態様の実施例に関して説明する。
第3態様の実施例で使用する化合物の略称は次の通りである。
[一般式(1)で示される特定構造の化合物である重合性モノマー(A)]
NBUDMA−1: 化学式(4c)で表される化合物
NBUDMA−2: 化学式(5c)で表される化合物
IPUDMA:化学式(6c)で表される化合物
XUDMA:化学式(7c)で表される化合物
[その他の重合性モノマー(Ec)]
bis−GMA: 2,2−ビス[(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)フェニル]プロパン(1モルのビスフェノールAと2モルのグリシジルメタクリレートとの付加物)
D−2.6E: 2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパンUDMA:1,6−ビス(メタクリロキシエチルオキシカルボニルアミノ)−2,2,4−トリメチルヘキサン
TEGDMA: トリエチレングリコールジメタクリレート
[酸性基を有する重合性モノマー(Bc)]
MDP:10−メタクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート
4−MET:4−メタクリロイルオキシエチルトリメリット酸
[重合開始剤(Cc)]
BPO:過酸化ベンゾイル
CQ:カファーキノン
[還元剤(Dc)]
NPG・Na:N−フェニルグリシンのナトリウム塩
DMPT:N,N−ジメチル−p−トルイジン
DMABAE:N,N−ジメチル安息香酸エチル
p−TS・Na:p−トルエンスルフィン酸ナトリウム
p−CBS・Na:p−クロロベンゼンスルフィン酸ナトリウム
[フィラー(Fc)]
F1:シラン処理バリウムガラス粉、シラン処理フルオロアルミノシリケート粉など
R812:ヒュームドシリカ(日本アエロジル(株)社製、商品名「エアロジルR812」)
[その他]
[重合禁止剤]
BHT:2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール
MEHQ:4−メトキシフェノール
(組成物用第1剤及び第2剤の調製)
表1c及び3cに記載した各実施例及び比較例の組成物となる第1剤及び第2剤は、予め各成分を乳鉢にて充分に練和して均一なペースト状にした後、容量10ml以下の注射器中に充填して冷蔵庫中に保存した。各実施例及び比較例の実施に当たっては、注射器を室温中(約23℃)に15分以上静置した後に使用した。
<物性値の測定方法>
第3態様の実施例において、各種の測定は以下の方法により実施した。
(硬化時間測定試験)
初期硬化時間の評価はDSC法によって評価した。DSC法による硬化時間の評価は、上述した第2態様の接着セメントを想定した試験例で行った硬化時間測定試験と同様に行った。硬化時間は10分以内であれば好ましく、より好ましくは5分以内である。
(保存安定性試験)
保存安定性に関する評価試験は、上述した第2態様の接着セメントを想定した試験例で行った保存安定性試験と同様に行った。保管前後の硬化時間の差異は3分以内が好ましく、2分以内であればより好ましく、1分以内であればさらに好ましい。
(歯冠修復材料への接着試験、表面処理無し)
各実施例及び比較例で得た組成物の歯冠修復物に対する接着強さの評価を以下に示す方法で実施した。
(歯科用貴金属(金合金)への接着試験)
金合金(プライムキャスト:石福金属社製、10×10×3mm)への接着試験は、上述した第2態様の接着セメントを想定した試験例で行った金合金への接着試験と同様に行った。表4cは、静置後の試験体を5℃−55℃の温冷刺激を5000回与えた後、引張り試験をクロスヘッドスピード2mm/minで行い、接着強度を算出した結果をまとめた。
(ジルコニアへの接着試験)
ジルコニア(ジルコニア:品川ファインケミック社製、10×10×3mm)への接着試験は、上述した第2態様の接着セメントを想定した試験例で行ったジルコニアへの接着試験と同様に行った。
(長石系セラミックスヘの接着試験)
歯科用ポーセレン(VITA VMK MASTER:VITA社製)、15×15×10)への接着試験は、上述した第2態様の接着セメントを想定した試験例で行った長石系セラミックスへの接着試験と同様に行った。表4cは、静置後の試験体を5℃−55℃の温冷刺激を5000回与えた後、引張り試験をクロスヘッドスピード2mm/minで行い、接着強度を算出した結果をまとめた。
(ガラスセラミックスへの接着試験)
ガラスセラミックス(HeraCeram:ヘレウス−クルツァー社製、10×10×3mm)への接着試験は、上述した第2態様の接着セメントを想定した試験例で行ったガラスセラミックスへの接着試験と同様に行った。表4cは、静置後の試験体を5℃−55℃の温冷刺激を5000回与えた後、引張り試験をクロスヘッドスピード2mm/minで行い、接着強度を算出した結果をまとめた。
表1cの実施例1cは本発明の第3態様の条件を満足するように配合したものである。各種歯冠修復材料に対して良好な接着性能を示した(表2c)。
表3cに記述した実施例3c〜9cは本発明の第3態様の条件を満足するように配合したものである。それぞれ加熱負荷の前後で硬化時間の差が好ましい範囲であることから、歯科用接着性硬化性組成物(c)を調製するための第1剤及び第2剤を含む歯科用接着性硬化性キット(αc)は優れた保存安定性があることが示された。
一方、重合性モノマー(A)を第1剤に含まず、汎用の重合性モノマーであるbis−GMAを第1剤に含む、歯科用接着性硬化性キットを使用した比較例1において、加熱負荷後の第1剤及び第2剤から得られる組成物は30分以上経過しても硬化しなかった。したがって、重合性モノマー(A)、特にメタクリレート型の重合性モノマー(A)を使用することにより、優れた保存安定性を有する歯科用接着性硬化性キットが得られることが示された。
実施例3c〜9c及び比較例1cについてそれぞれの保存安定性試験を表3c、実施例3c〜9cについて歯冠修復材料への接着試験の結果を表4cにまとめた。各々の保存安定性試験の結果より、本発明の第3態様では、優れた保存安定性を有する歯科用接着性硬化性キット(αc)が得られることが明らかである。
さらに、実施例3c〜9cの接着試験結果より、本発明の第3態様で得られる歯科用接着性硬化性組成物(c)は歯科用貴金属、歯科用陶材及びセラミックス材料など歯冠修復物に対して特別な前処理無しでも優れた接着性能を示すことが明らかとなった。
なお、第3態様の実施例において接着試験に使用した歯冠修復物表面に対して特別な前処理を実施していないが、金合金などの貴金属に対しては6−(4−ピニルペンジル−n−プロピル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオン(VTD)を含む表面改質剤などを、ジルコニア、長石系セラミックス、二ケイ酸リチウム系セラミックスに対してはシラン処理剤などを歯科用接着性硬化性組成物(c)を塗布する直前に適用しても構わない。
また、上記歯科用接着性硬化性組成物(c)を、歯質、特に象牙質に対する接着に適用する場合、状況に合わせて歯質表面を、エッチング剤(例えば、金属塩を含んでいてもよいリン酸水溶液、クエン酸水溶液、又はEDTA水溶液など)、歯質用プライマー(例えば、重合性モノマー、重合開始剤及び/又は還元剤を含有する)、ボンディング材等の各種前処理剤によりあらかじめ処理してもよい。
以下、本発明の第4態様の実施例に関して説明する。
略語は以下の通りである。
UDMA:ジ−2−メタクリロイルオキシエチル−2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジカルバメート(新中村化学工業株式会社)
3G:トリエチレングリコールジメタクリラート(新中村化学工業株式会社)
DGMA:2,2−ビス〔4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕プロパン(新中村化学工業株式会社)
HEMA:メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(東京化成工業株式会社)
GDMA:グリセロールジメタクリラート(東京化成工業株式会社)
Bis−GMA:2,2−ビス〔4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕プロパン(新中村化学工業株式会社)
RT−600T:架橋性ポリウレタン粉末(6μm、屈折率:1.49 超ソフトグレード、二重結合当量2900、ゲル分率90%以上、根上工業株式会社)
RW−600T:架橋性ポリウレタン粉末(6μm、屈折率:1.53 ソフトグレード、二重結合当量2900、10%微小圧縮強度2.01MPa、ゲル分率90%以上、根上工業株式会社)
4−MET:4−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリット酸(サンメディカル株式会社)
CQ:カンファーキノン(和光純薬工業株式会社)
DTMPO:ジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(シグマアルドリッチ ジャパン株式会社)
DMABA−BE:4―(ジメチルアミノ)安息香酸2−ブトキシエチル(東京化成工業株式会社)
DMABAE:4―(ジメチルアミノ)安息香酸エチル(東京化成工業株式会社)
MEHQ:4−メトキシフェノール(和光純薬工業株式会社)
BHT:ジブチルヒドロキシトルエン(東京化成工業株式会社)
DBTDL:ジラウリン酸ジブチルスズ(東京化成工業株式会社)
[製造例1d]
十分に乾燥させた攪拌羽根、及び温度計を備えた容器内に、アクリル酸2−ヒドロキシエチル(東京化成工業株式会社)530.3部、DBTDL 1.0部、及びBHT 0.5部を加えたのち60℃に昇温し、均一になるまで撹拌した。続いて、化合物1dを468.6部、内温が90℃以下となるようにコントロールしながら滴下した。化合物1dを全量滴下後、反応温度を85℃に保ち7時間反応を行い(化合物6d)1000.0部を得た。この際、HPLC分析で反応の進行を追跡して、反応の終点を確認した。なお、アクリル酸2−ヒドロキシエチルのモル数は化合物1のモル数の2倍量であり、アクリル酸2−ヒドロキシエチル中に含有されるヒドロキシル基と化合物1dに含有されるイソシアネート基との比率は1:1である。
[製造例2d〜5d]
表1dに示すヒドロキシアクリレートとジイソシアネートとを用いて、製造例1dと同様の合成操作を行うことによりウレタン(メタ)アクリレート化合物2d〜5dを得た。
実施例1d〜8d及び比較例1d〜3dに用いた歯科用接着性組成物の配合を表2d、実施例1d〜8d及び比較例1d〜3dに用いた重合開始剤及び安定剤の配合を表3dに示す。なお、比較例4dには、市販の動揺歯固定材(G−Fix(株式会社ジーシー製)を、比較例5dにはスーパーボンド(サンメディカル社製)を製品の取扱説明書に従って使用した。
『3点曲げ試験』
各実施例及び比較例で得た組成物を2×2×25mmの型枠に充填後、ポリプロピレンフィルムとガラス板で圧接し、光照射(PENCURE 2000、株式会社モリタ)を10秒×9点×裏表行い、#320の耐水研磨にて表面を研磨した後、3点曲げ試験用の硬化体を得、37℃の水中に一晩浸漬した。一晩浸漬後、この硬化体について、精密万能試験機(オートグラフAG−IS、島津製作所)を用いて、クロスヘッドスピード1.0mm/minで3点曲げ試験を行った。(N=3)
本発明の第4態様の歯科用接着性組成物(d)は、歯質と接着し重合反応した硬化体が、外部応力に対して優れた耐久性を有すために硬化体は適度な強度、柔軟性、及び靱性を備えていることが望ましい。上記試験方法にて測定した硬化体の弾性率が1〜3GPaであり、最大点応力は65MPa以上であり、破断エネルギーは65mJ以上であることを合格とした。
実施例1d〜8d及び比較例1d〜5dのそれぞれの3点曲げ試験の結果を表4dに示す。
『引張り接着試験』
ウシ下顎前歯を注水下#180エメリーペーパーで研磨し平坦な接着用エナメル質面を削りだし、水洗、乾燥した後、歯面にエッチング材(高粘度レッド/サンメディカル(株)製)を塗布し、30秒後に水洗、乾燥した。前記の面を粘着テープでマスキングして直径4.8mmの円形の接着面積を規定した。続いて、各実施例及び比較例で得た組成物(ペースト)を接着歯面に塗布後PENCURE2000にてLED光照射を10秒行い硬化させた後、アクリルロッドを、スーパーボンド(サンメディカル(株)製)を用いて、圧接して植立した。比較例4d、比較例5dの組成物に関しては製品の取扱説明書にそって使用した。硬化したサンプルを37℃にて水中で一晩浸漬した後、オートグラフAG−IS(島津製作所)を用いて、クロスヘッドスピード2mm/minで引張接着強さを評価した。(N=10)
実施例1d〜8d及び比較例1d〜5dのそれぞれの引張接着強さを表4dに示す。
[結果]
表4dから、比較例1d〜4dは設定した範囲を逸脱しており、実施例1d〜8d及び比較例5dは設定した範囲に適合していることが分かった。しかし、比較例5dに用いたスーパーボンド(サンメディカル社製)は液材、粉材、キャタリストVの3成分から構成される化学重合型の製品であり、使用に際して操作が煩雑かつ、硬化のために待ち時間を必要とする。このことから、本発明の第4態様の歯科用接着性組成物(d)は、硬化体が適度な柔軟性、強度、及び靱性を有しており、現在市販されている動揺歯固定材では達成できない耐久性と操作性とを両立していることが分かった。また、歯科用接着性組成物(d)に含まれる剛直な骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートが重合反応後の硬化体の強度、柔軟性、及び靱性に大きな影響を与えることが分かった。
本発明の第4態様の歯科用接着性組成物(d)は、重合反応後の硬化体が適度な柔軟性、強度、及び靱性を有していることにより外部応力に対して優れた耐久性を示し、円滑な動揺歯の治療が期待できる。
以下、本発明の第5態様の実施例に関して説明する。
第5態様の実施例で使用する化合物の略称は次の通りである。
〔重合性モノマー(ae)〕
〔酸性基を有しない重合性モノマー(ae−1)〕
bis−GMA:2,2−ビス〔4−(3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕プロパン
D−2.6E:2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパンで、エトキシ基の平均付加モル数が2.6である化合物)
TEGDMA:トリエチレングリコールジメタクリレート
UDMA:2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソアネート
IPUDMA:1,5,5−トリメチル−1−[(2−メタクリロイルオキシエチル)カルバモイルメチル] −3−(2−メタクリロイルオキシエチル)カルバモイルシクロヘキサン、下記式(7e)で表されるウレタンジメタクリレート
〔酸性基を有する重合性モノマー(ae−2)〕
MDP:10−メタクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート
4−MET:4−メタクリロイルオキシエチルトリメリット酸
〔(b)非芳香族性カルボニル基を有する芳香族性アミン化合物〕
NPG・Na:N−フェニルグリシンのナトリウム塩
NPG・K:N−フェニルグリシンのカリウム塩
〔電子吸引基を有する有機スルフィン酸化合物(ce)〕
p−CBSS:4−クロロベンゼンスルフィン酸ナトリウム
〔電子吸引基を有さない有機スルフィン酸化合物〕
p−TsNa:p−トルエンスルフィン酸ナトリウム
〔過酸化物(de−1)〕
BPO:過酸化ベンゾイル
〔芳香族第三級アミン(ee)〕
DMABAE:N,N−ジメチル安息香酸エチル
DMPT:N,N−ジメチル−p−トルイジン
DEPT:N,N−ジエタノール−p−トルイジン
〔フィラー等充填物(fe)〕
F−R812:ヒュームドシリカ(日本アエロジル(株)社製、商品名「エアロジルR812」)
F−8235:シラン処理バリウムガラス粉(SCHOTT社製、商品名「Schott 8235 Dental Glass」)
〔光重合開始剤〕
CQ:カンファーキノン
〔重合禁止剤〕
BHT:2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール
[実施例1e〜3e及び比較例1e〜2e]
(レジンセメント用の第1剤及び第2剤の調製)
表1eに示す原料を常温下(25℃)で乳鉢にて均一なペースト状になるまで十分に練和して第1剤及び第2剤を調製し、これらをそれぞれ遮光した樹脂製注射器(ミックスパックス社製)に充填して、歯科用硬化性キットを得た。この歯科用硬化性キットを、冷蔵庫(6℃)にて保管した。各種試験の実施に当たっては、実施の15分以上前から注射器を室温に静置することによって第1剤及び第2剤の温度を室温に戻したのちに使用した。
(接着性能の評価)
接着性能の評価は、特に限定しない限り次のようにして行ったものである。
接着試験方法の一例として牛歯象牙質を、注水、指圧下で耐水エメリー紙180番まで研削し、平滑な面を得た後、気銃により水分を除去する。こうして形成した研削面に、以下の組成の歯科用歯面処理剤を塗布して20秒静置した後、気銃により3秒乾燥する。
歯科用歯面処理剤(総量100重量部): 4−MET12.5重量部、HEMA36.0重量部、UDMA8.5重量部、水27.8重量部、アセトン15.0重量部、塩化鉄(II)四水和物0.2重量部
このようにして歯面処理された面に、接着面積を直径4.8mmとなるように規定して本発明の第5態様の歯科用硬化性キットの第1剤及び第2剤の混練物を盛り付けてSUS製円柱(以下、SUS棒又はSUSと略記する)を5秒間指圧下にて圧着する。その1時間後に37℃水中に16時間浸漬し、引張り接着試験(クロスヘッドスピード2mm/秒)を行う。
(熱安定性能の評価)
熱安定性能の評価は、特に限定しない限り次のようにして行った。
熱安定性試験方法として、第1剤に熱負荷を与える前後で硬化時間を比較する方法を用いた。第1剤に熱負荷を与える方法としては、第1剤を遮光した樹脂製注射器(ミックスパックス社製)に充填し、76℃に24時間保管する熱負荷を与える方法を採用した。また、硬化時間は以下に記載するDSC法で測定した。室温条件下で歯科用練和紙上に等量採取した第1剤と第2剤を歯科用練和棒で20秒間混合した後、得られた練和物約0.1gをアルミパンに充填した。練和開始から40秒後に口腔内温度(37.0℃)に保たれた示差熱分析装置に投入し、ラジカル重合による重合熱が最大を記録するまでの時間を硬化時間として定めた。
実施例1e〜3e及び比較例1e〜2eの接着性能評価、第1剤の熱安定性評価の結果について表1eに示す。
表1eの結果より、第5態様の実施例のレジンセメントは、電子吸引基を有する有機スルフィン酸化合物(ce)を含有しない比較例1eのレジンセメントと比較して第1剤への熱負荷前後における硬化時間の変化が小さく、熱安定性に優れていることが分かる。
本発明の第5態様の歯科用硬化性キット、及び歯科用硬化性組成物は、歯科医療の分野において、歯牙と歯冠用修復物を接着する際に極めて有用性が高い。