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JP2018168005A - 酸化金の分解と保存の制御方法 - Google Patents

酸化金の分解と保存の制御方法 Download PDF

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JP2018168005A JP2017065237A JP2017065237A JP2018168005A JP 2018168005 A JP2018168005 A JP 2018168005A JP 2017065237 A JP2017065237 A JP 2017065237A JP 2017065237 A JP2017065237 A JP 2017065237A JP 2018168005 A JP2018168005 A JP 2018168005A
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Abstract

【課題】酸化金を長期間保存したり、分解を促進したりするなど、酸化金から金への還元反応を制御することができる酸化金の分解と保存の制御方法を提供する。【解決手段】紫外線UVの酸化金薄膜2への照射状態を調整するとともに、酸化金薄膜2の周囲の水分の状態を調整することにより、酸化金の分解と保存を制御する。紫外線UVが酸化金薄膜2へ照射されるのを遮断して、酸化金薄膜2を保存するか、酸化金薄膜2の周囲から水分を除去して、酸化金薄膜2を保存する。また、紫外線UVを酸化金薄膜2の少なくとも一部へ照射するとともに、酸化金薄膜2における紫外線UVが照射される部分に水分を付与することにより、酸化金を分解するようにしてもよい。【選択図】図4

Description

本発明は、酸化金の分解と保存の制御方法に関する。
従来より、様々な金の表面処理方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。金は空気中や酸素中では酸化されないが、酸素グロー放電等により、その表面に酸化金薄膜が生成される。金が疎水性であるのに対して、生成された酸化金は親水性であることから、酸化金薄膜は、金の表面処理において重要な役割を果たす可能性がある。
特開2011−109117号公報
しかしながら、金から酸化金への反応は吸熱反応であるため、室内に放置すると数日後には酸化金が分解して元の金に戻ってしまう。酸化金の分解とその抑制に関する知見は存在せず、酸化金の長期保存とその工業的利用は困難な状況である。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、酸化金を長期間保存したり、分解を促進したりするなど、酸化金から金への還元反応を制御することができる酸化金の分解と保存の制御方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の酸化金の分解と保存の制御方法は、
波長が紫外域以下である光の酸化金への照射状態を調整するか、酸化金の周囲の水分の状態を調整することにより、酸化金の分解と保存を制御する。
この場合、前記光が酸化金へ照射されるのを防止して、酸化金を保存する、
こととしてもよい。
また、前記光を遮断する物質により、前記光が酸化金へ照射されるのを防止する、
こととしてもよい。
酸化金の周囲から水分を除去して、酸化金を保存する、
こととしてもよい。
水分のない真空中、気体中、液体中又は固体中に酸化金を保存する、
こととしてもよい。
前記光を酸化金の少なくとも一部へ照射するとともに、酸化金における前記光が照射される部分に水分を付与することにより、酸化金を分解する、
こととしてもよい。
金の表面に生成された酸化金の薄膜に対し、前記光を遮断するか水分が除去された第1の部分と前記光を照射し水分が付着する第2の部分とがパターン形成されたマスクを形成し、
前記マスクを介して、前記酸化金の薄膜に水分を供給するとともに前記光を照射する、
こととしてもよい。
前記第2の部分は、
酸化金薄膜を露出する開口部である、
こととしてもよい。
前記光の波長を調整するか、酸化金の周囲の水分量を調整することにより、酸化金の分解と保存を制御する、
こととしてもよい。
本発明によれば、波長が紫外域以下である光の酸化金への照射状態を調整するとともに、酸化金の周囲の水分の状態を調整する。これにより、波長が紫外域以下である光の照射により水がラジカルに分解して酸化金を金に還元する性質を利用して、酸化金を長期間保存したり、分解を促進したりするなど、酸化金から金への還元反応を制御することができる。
本発明の実施の形態1に係る酸化金薄膜の生成と使用方法のフローチャートである。 金薄膜の断面図である。 金薄膜上に形成された酸化金薄膜の断面図である。 酸化金薄膜から紫外線を遮断する構成の一例である。 一般的なガラスと合わせガラスの光透過率特性を示すグラフである。 ホウケイ酸ガラスとソーダ石灰ガラスの光透過率特性を示すグラフである。 石英ガラスの光透過率特性を示すグラフである。 酸化金薄膜の上に防水膜を設けた場合の断面図である。 酸化金薄膜の周囲を水分のない気体で充填した様子を示す断面図である。 酸化金薄膜の周囲を真空とした様子を示す断面図である。 図11(A)及び図11(B)は、マスクを用いて酸化金薄膜のパターンを形成する方法を示す図である。 無処理金のAu 4fスペクトル及びO 1sスペクトルと、酸化金のAu 4fスペクトル及びO 1sスペクトルを示す図である。 金薄膜上の酸化金薄膜と酸素の積層モデルを示す模式図である。 図14(A)及び図14(B)は、計測するスペクトルのピーク位置と半値幅の設定値を示す図である。 光電子の異なる取り出し角度における酸化金のAu 4fスペクトル及びO 1sスペクトルを比較して示す図である。 酸素グロー放電の経過時間とAu 4fスペクトル及びO 1sスペクトルとの関係を示す図である。 酸化金薄膜の暗所と明所とでのAu 4fスペクトル及びO 1sスペクトルの変化を比較した図である。 波長の異なる紫外線を大気中で酸化金薄膜に照射した場合のAu 4fスペクトル及びO 1sスペクトルを示す図である。 暗所と高真空中と大気圧中で波長302nmの紫外線を24時間照射した酸化金の分解状態を比較して示す図である。 窒素中、酸素中、水蒸気中で、波長302nmの紫外線を6時間照射した場合の酸化金の分解状態を比較して示す図である。 水蒸気中で異なる波長の紫外線を3時間照射した酸化金のAu 4fとO 1sスペクトル(光電子の取り出し角度θ=90°)の比較結果を示す図である。 水蒸気中で異なる波長の紫外線を3時間照射した酸化金のAu 4fとO 1sスペクトル(光電子の取り出し角度θ=10°)の比較結果を示す図である。 暗所で24時間保存した場合と、白熱球を24時間照射した場合での酸化金薄膜の分解状態の比較結果を示す図である。 窒素中で長期間保存した場合の酸化金薄膜の分解状態の結果を示す図である。 図25(A)、図25(B)、図25(C)及び図25(D)は、各種条件で紫外線を酸化金薄膜に照射した結果をまとめた表である。 水蒸気の吸収スペクトルを示す図である。 300秒酸素グロー放電を行った金薄膜を各温度で大気中で3時間加熱したときの比較結果を示す図である。 図28(A)は、1重量%ポリビニルアルコール水溶液を金薄膜に滴下した直後の様子を示す図である。図28(B)は、金薄膜に滴下した1重量%ポリビニルアルコール水溶液の水滴を乾燥させた後の様子を示す図である。図28(C)は、1重量%ポリビニルアルコール水溶液を酸化金薄膜に滴下した直後の様子を示す図である。図28(D)は、酸化金薄膜に滴下した1重量%ポリビニルアルコール水溶液の水滴を乾燥させた後の様子を示す図である。
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。本実施の形態では、金(薄膜)の表面に形成された酸化金(薄膜)の分解と保存を制御する制御方法について説明する。
本発明者は、酸化金の分解に紫外線及び水が関与していることを明らかにし、紫外線及び水を酸化金から遮断することにより酸化金の分解を抑制できることを発見した。そこで、本実施の形態に係る酸化金の分解と保存の制御方法では、紫外線の酸化金への照射状態を調整するとともに、酸化金の周囲の水分の状態を調整することにより、酸化金の分解と保存を制御する。
制御対象となる酸化金薄膜の生成と使用方法について説明する。図1に示すように、まず、金薄膜1を生成する(ステップS1)。金薄膜1の生成には例えば真空蒸着法が用いられる。真空蒸着法では、例えば、10−4Paの高真空中において、雲母基板上に純度99.99%の金を50nm蒸着する。これにより、図2に示すように、金薄膜1が形成される。
続いて、生成された金薄膜1から酸化金薄膜2を生成する(ステップS2)。酸化金薄膜2の生成には、例えば酸素グロー放電が用いられる。例えば、生成された金薄膜1に対して高純度酸素(99.999%)を流しながらアルミニウムの放電リングを用いて酸素グロー放電(10Pa,5mA,10秒〜30分)を行う。これにより、図3に示すように、金薄膜1上に酸化金薄膜2が生成される。
続いて、生成された酸化金薄膜2の周囲の環境状態を調整する(ステップS3)。このステップでは、具体的には、紫外線UVの酸化金薄膜2への照射状態を調整するとともに、酸化金薄膜2の周囲の水分の状態を調整する。ここでは、例えば、酸化金薄膜2を保存する場合には、紫外線UVが酸化金薄膜2へ照射されるのを遮断するか、酸化金薄膜2の周囲から水分を除去するかの少なくとも一方の処理が行われる。
ステップS3において、紫外線UVが酸化金薄膜2へ照射されるのを防止するには、例えば、紫外線UVを遮断する物質、すなわち材質の部材により、紫外線UVが酸化金薄膜2へ照射されるのを防止すればよい。例えば、図4に示すように、金薄膜1及び酸化金薄膜2を、紫外線UVを遮断する金属製又は樹脂製等の容器3の中に設置する。容器3にはガラス(石英ガラスを除く)4が設けられているが、ガラス4も紫外線UVを遮断する。容器3内では、図4に示すように、水蒸気(HO)の存在が許容される。水蒸気が進入しても、紫外線UVが酸化金薄膜2に照射されないので、酸化金の金への分解を抑制することができる。
図5及び図6には、ガラスにおける光の波長と透過率との関係が示されている。図5には、厚さ3mmの一般的なガラスと、厚さ3mmのガラスが貼り合わされて構成される合わせガラスとの光の透過率特性が示されている。図5に示すように、厚さ3mmのガラスは、300nm以下の紫外線UVを遮断し、合わせガラスは、380nm以下の紫外線UVを遮断する。
図6には、厚さ3mmのホウケイ酸ガラス及びソーダ石灰ガラスにおける光の透過率特性が示されている。図6に示すように、厚さ3mmのホウケイ酸ガラスは、270nm以下の紫外線UVを遮断し、厚さ3mmのソーダ石灰ガラスは、約290nm以下の紫外線UVを遮断する。ガラス4としては、図5及び図6に示されるものを用いることができる。
これに対し、図7には石英ガラスにおける光の透過率特性が示されている。図7に示すように、石英ガラスは、紫外線UVを良く透過させるため、図4のガラス4として用いるのは適切ではない。
一方、ステップS3において、酸化金薄膜2の周囲から水分を除去するには、酸化金薄膜2の周囲を水分のない真空、気体、液体又は固体で充填するようにすればよい。このような気体として、例えば乾燥空気、窒素ガス又は酸素ガスを用いることができる。また、液体として、例えばヘキサンやクロロホルムを用いることができる。
例えば、図8に示すように、酸化金薄膜2上に固体としての防水膜5を設けるようにしてもよいし、図9に示すように、乾燥空気、窒素ガス又は酸素ガス等の気体6を充填するようにしてもよい。また、図10に示すように、容器3内部を真空とし、その内部に酸化金薄膜2を置くようにしてもよい。気体6を充填するか真空にした場合、ガラス4’は紫外線UVを通す石英ガラスであってもよい。このようにすれば、酸化金薄膜2の周囲から水分が取り除かれているので、酸化金薄膜2に紫外線UVが入射したとしても、酸化金の分解を抑制することができる。
また、ステップS3において、紫外線UVを酸化金薄膜2の少なくとも一部へ照射するとともに、酸化金薄膜2における紫外線UVが照射される部分に水分を付与することにより、酸化金を分解するようにしてもよい。
例えば、図11(A)に示すように、金薄膜1の表面に生成された酸化金薄膜2に対し、紫外線UVを遮断するか水分が除去された領域A(第1の部分)と紫外線UVを照射し水分が付着する領域B(第2の部分)とがパターン形成されたマスク7を形成し、マスク7を介して、酸化金薄膜2に水分(HO)を供給するとともに紫外線UVを照射するようにしてもよい。このようにすれば、図11(B)に示すように、領域Bについては、酸化金から金への分解が進み、その表面が金に戻るが、領域Aについては酸化金が保存される。これにより、金薄膜1の表面上に酸化金薄膜2の所望のパターンを形成することができる。
なお、領域B(第2の部分)は、酸化金薄膜2を露出する開口部であるが、紫外線UVを透過する部材を領域Bに配置するようにしてもよい。
なお、酸化金を金に分解する場合、照射する紫外線UVの波長が短ければ短いほど酸化金の分解は早く、酸化金の周囲の水分量が多ければ多いほど酸化金の分解は早くなる。このため、酸化金へ照射する紫外線UVの波長を調整するか、酸化金の周囲の水分量を調整することにより、酸化金の分解と保存を制御するようにしてもよい。例えば、酸化金の分解時間を早めるには、照射する紫外線UVの波長を短くし、酸化金の周囲の水分量を多くすればよい。
なお、前提として、酸化金薄膜2は、75度以下に保たれており、強塩基(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム)、ハロゲン化水素酸(塩酸、臭化水素酸)、アルデヒド(ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド)にも接触しないように調整されている。
<実験結果>
本実施の形態に係る酸化金薄膜2の制御方法の有用性を明らかにするため、各種実験を行った。これらの実験結果の計測は、以下の2つのXPS(X線光電子分光分析)装置のいずれかを用いてX線光電子分光法により行われた。X線光電子分光法とは、超高真空におかれた試料表面に軟X線を照射して外部光電効果により放出される内殻電子の運動エネルギーを分光することでスペクトルを取得する方法である。X線光電子分光法では、放出される前の電子と原子核との間の結合エネルギーが算出される。結合エネルギーは元素特有の値を示し、光電子放出量が測定領域の元素濃度に応じて増減することから、この算出結果により元素の特定及び定量分析を行うことができる。
2つのXPS装置の仕様は以下の通りである。
(1)XPS装置:島津Axis−ULTRA DLD
励起光源:単色化AlKα(1486.6eV)
分解能:約0.6eV
分析面積:0.7×0.3mm
エネルギーステップ:0.1eV
エネルギー補正:Au 4f7/2 84.0eV
(2)XPS装置:島津ESCA−1000
励起光源:MgKα(1253.6eV)
分解能:1.1eV
分析面積3×10mm
エネルギーステップ:0.1eV
エネルギー補正:Au 4f7/2 84.0eV
この実験では、酸化金におけるAu 4fスペクトル及びO 1sのスペクトルを計測した。Au 4fスペクトル及びO 1sのスペクトルは、横軸が結合エネルギーで縦軸が光電子の強度を表すカウント数で表される。
図12には、無処理金のAu 4fスペクトル及びO 1sのスペクトルが上側に示され、酸化金のAu 4fスペクトル及びO 1sのスペクトルが下側に示されている。これらのスペクトルは、上記(1)の装置で計測されたものである。図12に示すように、XPSスペクトルにおいて、酸化金では、Au 4fピークの高エネルギー側に酸素の電気陰性度によりケミカルシフトした成分とO 1sのピークが現れており、明確にその存在が確認できる。また、O 1sスペクトルを見ると、無処理金のスペクトルには、酸素成分のスペクトルは出現していないが、酸化金のO 1sスペクトルにはI成分、II成分、III成分の3つの成分を確認することができる。I成分は、図13に示すように、酸化金の上に存在する2層の酸素のうち、上層に位置する成分であり、II成分は下層に位置する成分であり、III成分は、金と結びついている成分である。
すなわち、酸化金では、XPSスペクトルとして、Auに関しては、4つのピーク、Au 4f7/2(Metal)、Au 4f5/2(Metal)、Au 4f7/2(Oxide)、Au 4f5/2(Oxide)という4つのピークが観測された。また、Oに関しては、3つのピーク、O 1s(I成分)、O 1s(II成分)、O 1s(III成分)が観測された。そこで、本実験では、各スペクトルの変化を計測して、酸化金の分解と保存を制御するための条件を探索した。
なお、計測された各スペクトルは、ガウス−ローレンツ関数を用いた最小二乗法によりスペクトルをピーク分割し、各ピークの曲線としたものである。ピーク分割では、バックグラウンドを求めるのに、Shirley法が用いられた。また、面積強度比についてはAu 4f7/2:Au 4f5/2=4:3とした。さらに、上記(1)の装置については、Au 4f、O 1sのピーク位置と半値幅が図14(A)に示すように設定され、上記(2)の装置については、図14(B)に示すように設定されて計測が行われた。
また、上述のXPS装置では、検出器に向かって試料を回転させ、試料表面からの光電子の取り出し角度θを小さくするほど最表面の状態分析を行うことが可能となっている。そこで、まず、上記(1)の装置を用いて、酸化金からの光電子の取り出し角度θを90°、30°、10°と変化させて、酸素グロー放電300秒後の生成物におけるAu 4fスペクトルと、O 1sスペクトルとをそれぞれ計測した。この結果、図15に示すように、Au 4fスペクトルでは、低角度にすればするほど、酸化金由来のピークが増大しているのに対し、O 1sスペクトルでは、取り出し角度θを低角度にすればするほど、I成分のピークが増大し、III成分のピークが減少した。この結果から、金の表面に酸化金薄膜2が形成されており、酸素由来の成分は、表面からI成分→II成分→III成分の順に、分布していると推定される。
(グロー放電時間と生成物のスペクトルとの関係)
図16には、グロー放電時間と生成物のスペクトルとの関係が示されている。図16に示すAu 4fスペクトル及びO 1sスペクトルは、上記(1)の装置で計測されたものである。図16に示すように、60秒後に酸化物由来のピークの生成が確認された。O 1sスペクトルについては、最初にI、II成分が出現し、60秒後には、III成分が出現した。このように、酸素グロー放電時間を変化させることによって、酸化金の生成過程が明らかとなった。
この実験結果より、最初にI成分、II成分が生成され、その後にIII成分が生成されることが明らかとなった。また、図15に示すように、酸素グロー放電300秒後の酸化金薄膜2の角度依存性に基づいて、酸化金、I成分、II成分、III成分等の深さ分布を明らかにすることができた。
(暗所での保存)
続いて、大気中1.0×10Paにて、酸素グロー放電を30分行うことで生成された酸化金薄膜2の暗所と明所での保存状態の比較を行った。図17には、酸化金薄膜2を暗所で保存した場合と、自然光が入る窓際の明所での保存した場合とのスペクトルの比較結果が示されている。なお、図17に示すデータは、上記(2)の装置で計測された。
図17に示すように、酸化金薄膜2を暗い場所で保存した場合には、Au 4fスペクトル及びO 1sスペクトルは、10日経過しても、ほとんど変化しなかった。これに対し、酸化金薄膜2を明るい場所で保存した場合には、Au 4fスペクトル及びO 1sスペクトルは、日がたつにつれて変化し、7日後には、無処理金の状態に戻った。以上のように、紫外線UVが入射しない状態では、酸化金は分解されず、紫外線UVが入射する状態では、酸化金が分解され、金に還元されることが明らかとなった。
(紫外線の波長依存性)
続いて、紫外線UVの波長に対して酸化金の分解状態がどのようになるかを計測した。図18には、大気中1.0×10Paで、365nm、302nm、254nmの紫外線UVをそれぞれ酸化金薄膜2に6時間照射したときのAu 4fスペクトルとO 1sスペクトルの計測結果が示されている。この計測では、上記(1)の装置が使用された。図18に示すように、365nm、302nm、254nmの順で、酸化金が良く分解された。したがって、紫外線UVの波長が短くなればなるほど、酸化金の分解が促進されることが明らかとなった。
(暗所と高真空中と大気圧中での酸化金の分解状態の比較)
続いて、暗所と高真空中と大気圧中で波長302nmの紫外線を24時間照射した酸化金の分解状態を比較した。図19には、暗所と高真空中(10−4Pa)と大気圧中で波長302nmの紫外線を24時間照射した場合のAu 4fスペクトルとO 1sスペクトルが示されている。この計測には、上記(1)の装置が使用された。図19に示すように、大気圧中では、酸化金が分解されたが、暗所又は高真空中では、スペクトルは変化せず、酸化金の分解が抑制された。以上の結果から、紫外線UVが照射されない状態、水分が除去された状態では酸化金の分解が抑制されることが明らかとなった。
(窒素中、酸素中、水蒸気中での比較)
次に、窒素中、酸素中、水蒸気中で、波長が302nmである紫外線UVを6時間照射した場合の酸化金の分解状態の比較を行った。図20には、窒素中(6.0×10Pa)、酸素中(6.0×10Pa)、水蒸気中(1.5×10Pa)で、波長302nmの紫外線を6時間照射した場合のAu 4fスペクトルとO 1sスペクトルが示されている。この計測は、上記(1)の装置を用いて行った。図20に示すように、窒素中、酸素中では、酸化金の分解が抑制され、水蒸気中では、酸化金が分解することが明らかとなった。
(水蒸気中での紫外線の照射:光電子の取り出し角度=90°)
続いて、酸化金薄膜2を水蒸気中に置き、それぞれ異なる波長の紫外線UVを3時間照射した場合について計測を行った。図21には、水蒸気中(1.5×10Pa)で各波長(365nm、302nm、254nm)の紫外線UVを3時間照射した酸化金のAu 4fとO 1sスペクトル(光電子の取り出し角度θ=90°)が示されている。この計測は、上記(1)の装置を用いた。図21に示すように、波長254nmの紫外線を照射した場合、Au 4fスペクトルにおいて、Auの成分が少なくなった。紫外線の波長が短くなればなるほど、酸化金の分解が促進されることが確認された。
(水蒸気中での紫外線の照射:光電子の取り出し角度=10°)
同様に、酸化金薄膜2を水蒸気中に置き、それぞれ異なる波長の紫外線UVを3時間照射した場合について計測を行った。ここでも、上記(1)の装置を用いた。図22には、水蒸気中(1.5×10Pa)で各波長の紫外線を3時間照射した酸化金のAu 4fとO 1sスペクトル(光電子の取り出し角度θ=10°)が示されている。図22に示すように、θ=10°とした場合には、θ=90°とした場合に比べ、スペクトルの分析深さは1/6程度となるが、酸化金薄膜2の最表面においても、紫外線UVの波長が短くなればなるほど、酸化金の分解が促進されることが確認された。
(紫外線と可視光線との比較)
紫外線UVを照射した場合と、可視光線を照射した場合とで、酸化金が分解される様子の比較を行った。この実験では、大気中1.0×10Paで暗所に24時間保存した場合と白熱球による可視光線を24時間照射した場合の酸化金薄膜2のAu 4fスペクトルとO 1sスペクトルとを計測した。この計測は、上記(1)の装置を用いて行われた。図23には、暗所保存した場合と、白熱球を照射した場合での酸化金の分解状態の比較結果が示されている。図23に示すように、酸化金は、紫外線UVで分解され、可視光線では分解されないことが確認された。
(長期保存)
続いて、30日程度、酸化金薄膜2を水分のない暗所で保存して、その分解の様子を確認した。この計測においては、上記(1)の装置を使用した。図24には、窒素中(6.0×10Pa)で長期間保存した場合の酸化金の分解状態の結果が示されている。図24に示すように、暗所で窒素中に保存した酸化金薄膜2のAu 4fスペクトルと、O 1sスペクトルには変化がなく、暗所では、酸化金薄膜2が長期間(30日以上)保存可能であることが確認された。
(実験結果まとめ)
これまでの実験結果を図25(A)〜図25(D)の表にまとめる。各表において、二重丸は、酸化金の分解が終了したことを示し、丸は、酸化金が分解中であることを示し、三角は、酸化金の分解開始を示す。×は、酸化金が分解しなかったことを示している。
図25(A)に示すように、大気中で波長365nm、302nm、254nmの紫外線UVを酸化金薄膜2に照射した結果、波長が短い302nm、254nmの紫外線UVが酸化金を分解することが明らかとなった。このことは、紫外線の波長を調整することにより、酸化金の分解と保存を制御できることを示している。
図25(B)に示すように、大気圧中及び水蒸気中で波長365nmの紫外線UVを酸化金薄膜2に照射した結果、酸化金の分解が遅くなることが確認された。また、分解まで要する時間は、水蒸気中の方が短くなった。これにより、水分が多い方が、酸化金の分解が促進されることが明らかとなった。このことは、酸化金の周囲の水分量を調整することにより、酸化金の分解と保存を制御できることを示している。
図25(C)に示すように、大気圧中などの様々な雰囲気中で波長302nmの紫外線UVを酸化金薄膜2に照射した場合、大気圧中、低真空中、高真空中、水蒸気中で酸化金が分解され、酸素中、窒素中では酸化金は分解されなかった。水蒸気中が、最も分解が早かった。また、水蒸気中で紫外線UVを照射しなかった場合、酸化金は分解されなかった。これにより、紫外線及び水分のいずれかが存在しない場合には、酸化金が分解されないことが明らかとなった。
図25(D)に示すように、大気圧中及び水蒸気中で波長254nmの紫外線UVを酸化金薄膜2に照射した結果、酸化金は完全に分解された。分解まで要する時間は、水蒸気中の方が短くなり、図25(B)に示す波長365nmの紫外線UVを照射した場合よりも分解時間は短くなった。
(光の波長域について)
なお、酸化金を分解する光は、紫外線UVには限られない。図26の水蒸気の吸収スペクトルから明らかなように、紫外域よりも短い波長の光(遠紫外線、真空紫外線)も、紫外線UVと同様に、水蒸気をラジカル化するため、酸化金を分解することは明らかである。したがって、酸化金の分解を抑制するには、紫外線UVのみならず、紫外域よりも短い波長の光も遮断する必要がある。
なお、本実施の形態において、酸化金薄膜2を保存するには、その温度を80℃未満に保つ必要がある。図27には、300秒酸素グロー放電を行った金薄膜1を各温度で大気中で3時間加熱したときの比較結果が示されている。比較した温度は、75℃、80℃、85℃、256℃である。図27に示すように、加熱前、300秒酸素グロー放電を行った金薄膜1には、Au 4f(Oxide)の2つピークとO 1sのIII成分のピークが現れている。しかしながら、80℃からAu 4f(Oxide)の2つのピークとO 1sのIII成分のピークが減少し始め、85℃でこれらのピークは消失し、酸化金が完全に分解することが確認された。
<金表面の疎水性、親水性>
1重量%ポリビニルアルコール水溶液を酸化金薄膜2等に滴下してポリビニルアルコールの薄膜を生成するときの様子について説明する。図28(A)には、この水溶液の水滴を金薄膜1上に滴下した直後の様子が示されている。図28(A)に示すように、ポリビニルアルコール水溶液の水滴の接触角は大きくなり、金薄膜1が疎水性であることが確認された。図28(B)には、この水滴を乾燥してポリビニルアルコール薄膜の状態が示されている。図28(B)に示すように、親水性のポリビニルアルコール薄膜は、金薄膜1の上で不均一となった。
一方、図28(C)には、上記水溶液の水滴を酸化金薄膜2上に滴下した直後の様子が示されている。図28(C)に示すように、水滴の接触角は極めて小さくなり、酸化金薄膜2が親水性であることが確認された。図28(D)には、この水滴を乾燥してポリビニルアルコール薄膜の状態が示されている。図28(D)に示すように、ポリビニルアルコール薄膜は、酸化金薄膜2の上で均一な状態で残留した。
このような酸化金薄膜2の性質は、例えば表面プラズモン共鳴装置において試薬を搭載する金薄膜の表面として有用である。計測対象が親水性のものであっても、金の表面を酸化金に改質することにより、計測対象を均一な状態できるので、良好な計測が可能となる。
以上詳細に説明したように、本実施の形態によれば、波長が紫外域以下である光(例えば紫外線UV)の酸化金薄膜2への照射状態を調整するとともに、酸化金薄膜2の周囲の水分の状態を調整する。これにより、波長が紫外域以下である光の照射により水がラジカルに分解して酸化金を金に還元する性質を利用して、酸化金薄膜2を長期間保存したり、分解を促進したりするなど、酸化金から金への還元反応を制御することができる。
この発明は、この発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、この発明を説明するためのものであり、この発明の範囲を限定するものではない。すなわち、この発明の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、この発明の範囲内とみなされる。
本発明は、金薄膜の表面処理技術として科学技術に大きく貢献することができる。特に金薄膜や金ボンディングワイヤを用いるエレクトロニクス産業や半導体事業における新しい金の表面処理技術として適用することができる。また、本発明は、親水性の試料を金薄膜の上に載置して測定を行う表面プラズモン測定装置など、親水性の試料を扱う様々な化学分野に適用可能である。
1 金薄膜、2 酸化金薄膜、3 容器、4,4’ ガラス、5 防水膜、6 気体、7 マスク、A,B 領域、UV 紫外線

Claims (9)

  1. 波長が紫外域以下である光の酸化金への照射状態を調整するか、酸化金の周囲の水分の状態を調整することにより、酸化金の分解と保存を制御する、
    酸化金の分解と保存の制御方法。
  2. 前記光が酸化金へ照射されるのを防止して、酸化金を保存する、
    請求項1に記載の酸化金の分解と保存の制御方法。
  3. 前記光を遮断する物質により、前記光が酸化金へ照射されるのを防止する、
    請求項2に記載の酸化金の分解と保存の制御方法。
  4. 酸化金の周囲から水分を除去して、酸化金を保存する、
    請求項1から3のいずれか一項に記載の酸化金の分解と保存の制御方法。
  5. 水分のない真空中、気体中、液体中又は固体中に酸化金を保存する、
    請求項4に記載の酸化金の分解と保存の制御方法。
  6. 前記光を酸化金の少なくとも一部へ照射するとともに、酸化金における前記光が照射される部分に水分を付与することにより、酸化金を分解する、
    請求項1に記載の酸化金の分解と保存の制御方法。
  7. 金の表面に生成された酸化金の薄膜に対し、前記光を遮断するか水分が除去された第1の部分と前記光を照射し水分が付着する第2の部分とがパターン形成されたマスクを形成し、
    前記マスクを介して、前記酸化金の薄膜に水分を供給するとともに前記光を照射する、
    請求項6に記載の酸化金の分解と保存の制御方法。
  8. 前記第2の部分は、
    酸化金薄膜を露出する開口部である、
    請求項7に記載の酸化金の分解と保存の制御方法。
  9. 前記光の波長を調整するか、酸化金の周囲の水分量を調整することにより、酸化金の分解と保存を制御する、
    請求項1に記載の酸化金の分解と保存の制御方法。
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