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JP2018157018A - 熱電変換材料 - Google Patents

熱電変換材料 Download PDF

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JP2018157018A
JP2018157018A JP2017051258A JP2017051258A JP2018157018A JP 2018157018 A JP2018157018 A JP 2018157018A JP 2017051258 A JP2017051258 A JP 2017051258A JP 2017051258 A JP2017051258 A JP 2017051258A JP 2018157018 A JP2018157018 A JP 2018157018A
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JP2017051258A
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雅重 小野田
Masashige Onoda
雅重 小野田
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University of Tsukuba NUC
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Abstract

【課題】高温でも使用可能な熱電変換材料を提供すること。【解決手段】AをCuおよびLiの少なくとも一方とし,xを0.24 ≦ x < 0.66とした場合に,化学式AxV2O5で表され,原子Aの異方性変位因子が非調和型であるβ'相の結晶構造を有するバナジウム酸化物で構成されたことを特徴とする熱電変換材料(8)。【選択図】図1

Description

本発明は,熱エネルギーと電気エネルギーとを変換する熱電変換材料に関する。
水力,風力,太陽光などの再生可能エネルギーは,枯渇,温室効果ガス排出,放射性廃棄物などの問題とは無縁の一次エネルギー源であり,これらのエネルギーによって成り立つ社会の構築は,人類の最重要課題の一つといえる。このエネルギーは地域的,時間的変動などの問題を含むため,その安定利用にあたっては,エネルギー貯蔵デバイスである2次電池の高性能化および再生可能エネルギー源の一つとして期待される熱電変換材料の高性能化が必要不可欠である。
既に実用化されている熱電変換材料として,ビスマス系化合物がある。しかしながら,これらの化合物は人体に有害であり,高温(400 K〜500 K以上)において不安定になる問題がある。
ビスマス系とは異なる熱電変換材料に関して,下記の特許文献1に記載の技術が従来公知である。
また,特許文献1(特開2008−53542号公報)には,一般式β-AxV2O5(AはLi,Na,Ag,Cuのいずれかであり,xは0.2 ≦ x ≦ 0.45)で表される熱電変換材料が記載されている。なお,特許文献1には,x = 0.33の熱電変換材料のみについて,実験データが記載されている。
特開2008−53542号公報(「0006」,「0009」,「0019」)
(従来技術の問題点)
特許文献1に記載の構成では,AがLi,Na,Ag,Cuのいずれかで,xが0.2 ≦ x ≦ 0.45の熱電変換材料が記載されているが,解析上,各原子のイオン半径の関係等から,NaとAgは,xが0.33のみしか存在しない(成立しない)ことが確認された。同様に,Liでは,β相のものは,xが0.22〜0.38の範囲しか存在しない。
なお,特許文献1に記載の結晶は,結晶構造としては,特許文献1の明細書段落番号「0009」に記載されているように,VO6八面体とVO5ピラミッドが稜および点共有により特徴的なV2O5骨格を形成し,そのトンネル内の1種の席をAイオン(Li,Na,Ag,Cu)が占める。そして,Aイオンが単斜晶フラクショナル座標(0.00±0.05, 0, 0.40±0.05)に位置し,調和振動型(楕円型)の熱振動を行うものがβ相とされる。すなわち,β相のバナジウムブロンズは,Aイオンの異方性変位因子が調和型である。
しかしながら,Cuについてはこの数値範囲についてはβ相のものは存在しないことが確認された。すなわち,解析が間違っていたものと考察される。
本願は,高温でも使用可能な熱電変換材料を提供することを技術的課題とする。
前記技術的課題を解決するために,請求項1に記載の発明の熱電変換材料は,
AをCuおよびLiの少なくとも一方とし,xを0.24 ≦ x < 0.66とした場合に,化学式AxV2O5で表され,原子Aの異方性変位因子が非調和型であるβ'相の結晶構造を有するバナジウム酸化物で構成されたことを特徴とする。
請求項2に記載の発明は,請求項1に記載の熱電変換材料において,
AがCuであり,且つ,xが0.38±0.04であることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は,請求項1に記載の熱電変換材料において,
AがLiであり,且つ,xが0.44 ≦ x ≦ 0.49であることを特徴とする。
請求項4に記載の発明は,請求項1に記載の熱電変換材料において,
xが0.24 ≦ x ≦ 0.65,yが0 < y < 0.65,化学式Cux-yLiyV2O5で表される固溶系のバナジウム酸化物で構成されたことを特徴とする。
請求項1〜4に記載の発明によれば,高温でも使用可能な熱電変換材料を提供することができる。
図1は本発明の実施例1の熱電変換素子の説明図である。 図2は従来の調和型異方性変位因子を持つベータバナジウムブロンズの説明図であり,図2Aは結晶格子のac面の説明図,図2Bは熱振動の説明図,図2Cは電子密度の説明図である。 図3は実施例1の熱電変換材料の説明図であり,図3Aは調和型の熱振動で説明しようとした場合の結晶格子のac面の説明図,図3Bは調和型の熱振動で説明しようとした場合の電子密度の分布の説明図,図3Cは異方性変位因子を非調和型で説明した場合の結晶格子のac面の説明図,図3Dはβ'-Cu0.40V2O5のCuO5ユニットにおけるCuイオンの非調和型異方性変位の様子を示す図である。 図4はβ相およびβ'相におけるA席の環境の相違の説明図であり,図4Aはβ-,β'-AxV2O5のV-O骨格構造の説明図,図4BはTトンネルにあるAの配位様式のβ相とβ'相での違いの説明図である。 図5はβ'-CuxV2O5系の格子定数の組成依存性を示すグラフであり,横軸にxを取り,縦軸に,a軸,b軸,c軸の格子の長さ,単位格子の稜間の角度β,体積Vを取ったものである。 図6はβ'-Cu0.50V2O5の単斜晶ac面に投影された結晶構造の説明図である。 図7はβ'相で1種のCu席を持つとした場合のフラクショナル座標系xz面内の種々のy値における差フーリエ合成マップであり,図7Aは1種のCuイオンが調和型熱振動を持つとした場合の差フーリエ合成マップ,図7Bは非調和型熱振動を持つ場合の差フーリエ合成マップである。 図8はβ'-Cu0.50V2O5の異方性変位因子の組成依存性のグラフであり,横軸に組成xを取り,縦軸にCu ADP(Cuの異方性変位因子)をとったグラフである。 図9はβ'-CuxV2O5(0.24 ≦ x ≦ 0.38)の単斜晶b軸方向の電気抵抗率の温度依存性の説明図であり,図9Aは低温域における温度の逆数に対するグラフ,図9Bは高温域のグラフである。 図10はβ'-CuxV2O5(0.40 ≦ x ≦ 0.60)の単斜晶b軸方向の電気抵抗率の温度依存性の説明図であり,図10Aは温度に対するグラフ,図10Bは温度の逆数に対するグラフである。 図11はβ'-CuxV2O5の単斜晶b軸方向の熱電能の温度依存性の説明図であり,図11Aは0.24 ≦ x ≦ 0.38のグラフ,図11Bは0.40 ≦ x ≦0.60のグラフである。 図12はβ'-CuxV2O5の輸送特性パラメータの組成依存性のグラフであり,横軸にxを取り,縦軸に最近接間ホッピングエネルギーEh,高温極限の電気抵抗率ρh0,2次元的変長ホッピングエネルギーTo,化学ポテンシャル上における状態密度対数のエネルギー微分値S0を取ったグラフである。 図13はβ'-CuxV2O5の熱電変換材料の磁気的性質の説明図であり,図13Aは帯磁率の温度依存性のグラフ,図13Bは帯磁率の逆数の温度依存性のグラフである。 図14はβ'-CuxV2O5の熱電変換材料の室温における熱電変換の性能の説明図であり,図14Aは熱電性能因子Pのグラフ,図14Bは熱伝導度κのグラフ,図14Cは無次元性能指数ZTのグラフである。
次に図面を参照しながら,本発明の実施の形態の具体例である実施例を説明するが,本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
なお,以下の図面を使用した説明において,理解の容易のために説明に必要な部材以外の図示は適宜省略されている。
図1は本発明の実施例1の熱電変換素子の説明図である。
図1において,本発明の実施例1の熱電変換材料を使用した熱電変換素子1は,第1の電極の一例としての高温電極2と,第2の電極の一例としての低温電極3とを有する。高温電極2は,高温の熱源4に接触している。また,低温電極3は,低温の熱源6に接触している。低温電極3は,p側電極3aと,n側電極3bとを有する。
p側電極3aと高温電極2との間には,p型熱電変換部材7が支持されている。p型熱電変換部材7は,電荷を運ぶキャリアが正の電荷を持った正孔(ホール)である従来公知の任意のp型の熱電変換材料で構成可能である。p型の熱電変換材料としては,一例として,NaxCoO2系やBi-Te系の熱電変換材料を使用可能である。
n側電極3bと高温電極2との間には,n型熱電変換部材8が支持されている。n型熱電変換部材8は,電荷を運ぶキャリアが電子であるn型の熱電変換材料で構成可能である。実施例1のn型の熱電変換材料は,xを0.24 ≦ x < 0.66とした場合に,化学式CuxV2O5で表され,Cuの異方性変位因子が非調和型であるβ'相の結晶構造を有するバナジウム酸化物で構成されている。
また,p側電極3aとn側電極3bとの間には,導線9を介して,被給電部材11が接続されている。
(n型の熱電変換材料の合成)
実施例1のn型熱電変換材料は,以下の化学反応式(1)に従って作成可能である。
まず,予めV2O5(株式会社高純度化学研究所製,純度99.99%)をH2,N2雰囲気中にて,750℃で24時間熱処理することで,V2O3を作成した。
そして,V2O3とCuO(株式会社レアメタリック製,純度99.99%)とを石英管内に真空封入して,680℃〜750℃,24時間〜48時間の熱処理を行うことで作成した。
xCuO + (x/2)V2O3 + (1 - x/2)V2O5→ CuxV2O5 …式(1)
なお,xの範囲(0.24 ≦ x < 0.66)は,Cu,O,Vの各イオンのイオン半径等の解析から取りうる値の範囲である。
(実施例1の作用)
前記構成を備えた実施例1の熱電変換素子1では,各熱電変換部材7,8の両端の温度差により,ゼーベック効果で両端に電位差が発生する。したがって,熱電変換素子1に電流iが流れる。
ここで,熱電変換の性能を示す熱電性能因子Pは,電気抵抗率ρ,熱電能Sを用いて,P = S2/ρと表される。また,熱伝導度κを用いて,熱電性能指数Zは,Z = P/κと表される。さらに,無次元性能指数は,熱電性能指数Zと絶対温度Tとの積で与えられ,ZT > 1が実用化の目安とされる。したがって,無次元性能指数ZTを大きな値にするには,熱電能Sが大きく,電気抵抗率ρおよび熱伝導度κが小さな熱電変換材料が好ましい。
図2は従来の調和型のベータバナジウムブロンズの説明図であり,図2Aは結晶格子のac面の説明図,図2Bは熱振動の説明図,図2Cは電子密度の説明図である。
特許文献1に記載の熱電変換材料では,熱電性能因子Pが比較的大きな材料が示されている。しかしながら,異方性変位因子が調和型のベータバナジウムブロンズでは,図2Aに示すように,トンネル内にあるA席が規則正しい。したがって,図2Bに示すように,Aイオンの熱振動(格子振動,フォノン)は大きくなく,フォノンの散乱は起こりにくい。よって,フォノン散乱の影響が大きな熱伝導度κは値が大きくなることが予想される。よって,特許文献1に記載の調和型のベータバナジウムブロンズは,熱電性能指数Zや無次元性能指数ZTが小さな値となり,熱電変換材料としては十分な性能を有しないものと予想される。
図3は実施例1の熱電変換材料の説明図であり,図3Aは調和型の熱振動で説明しようとした場合の結晶格子のac面の説明図,図3Bは調和型の熱振動で説明しようとした場合の電子密度の分布の説明図,図3Cは異方性変位因子を非調和型で説明した場合の結晶格子のac面の説明図,図3Dはβ'-Cu0.40V2O5のCuO5ユニットにおけるCuイオンの非調和型異方性変位の様子を示す図である。
これに対して,実施例1のCuxV2O5では,X線回折等での解析の結果,調和型では説明できない。すなわち,調和型の熱振動で説明をしようとすると,図3A,図3Bに示すように,Cu原子が,2箇所(Cu1席,Cu2席)存在する形となる。なお,2種のCu席の場合(β'相の場合)でも,いずれの席もβ相の席とは位置(座標)や配位が異なる(後述する図4参照)。したがって,β'相は,Cuの異方性変位因子を調和型と仮定する場合,結晶学的に異なる2種類のCu席を持つ結晶構造と定義することも可能である。
本発明者の研究(実験および構造解析)の結果,調和型(楕円型)の熱振動とは異なり,図3C,図3Dに示すように,楕円型の調和型とは形が異なる非調和型(略三角形状,おむすび型)の熱振動の概念を導入することで説明できることがわかった。この非調和型の考え方の導入によりCu2席のイオンが不要になった。したがって,実施例1のCuxV2O5で構成された熱電変換材料は,従来の調和型のベータバナジウムブロンズとは異なり,非調和型の異方性変位因子を有する。なお,本願明細書および特許請求の範囲において,この非調和型の異方性変位因子を有するものを「β'相」と表現し,β'相のCuxV2O5を,「β'-CuxV2O5」と記載する。そして,非調和型の異方性因子を有する場合,調和型(β相)に比べて,電子の密度が広がる,すなわち,長波長のフォノン散乱が大きくなる。よって,熱伝導度κだけが抑制されることになり,特許文献1に記載の熱電変換材料に比べて,β'-CuxV2O5では,熱電性能指数Zや無次元性能指数ZTが大きくなる。よって,実施例1のβ'-CuxV2O5は,従来の熱電変換材料に比べて,熱電変換性能が向上する。
なお,実施例1のβ'-CuxV2O5で構成された熱電変換材料は,酸化物系の材料で構成されている。したがって,ビスマス系の熱電変換素子に比べて,高温,大気中でも安定である。したがって,高温でも十分な熱電変換性能を有する。
(β相とβ'相との違いの説明)
図4はβ相およびβ'相におけるA席の環境の相違の説明図であり,図4Aはβ-,β'-AxV2O5のV-O骨格構造の説明図,図4BはTトンネルにあるAの配位様式のβ相とβ'相での違いの説明図である。
以下に,本発明者の研究の結果によるβ相とβ'相との違いを説明する。
図4において,ベータバナジウムブロンズ(β-AxV2O5)では,Aイオンとして,NaイオンやLiイオンが存在可能である。なお,Liの場合は,0.22 ≦ x ≦ 0.38である。この時,図4Bのβのイオンで示されるように,β相のA(Na,Li)イオンの周囲には,7つのOイオンが配位する形(7配位)となる。
一方,β'相では,Tトンネルを占有可能なAイオンとして,CuイオンやLiイオン(0.44 ≦ x ≦ 0.49),および,CuとLiの固溶系(β'-Cux-yLiyV2O5)が存在する。この時,図4Bのβ'のイオンで示されるように,Aイオンの周囲には,2つのOが直線状に並び且つ合計で5つのOイオンが配位する形(直線2配位(5配位))となる。
なお,図4Bにおいて,ベータバナジウムブロンズ(β相)の場合は,β'の位置にイオンは存在せず,β'相のバナジウム酸化物の場合は,βのイオンが存在しない。
β,β'相のAイオン席の単斜晶フラクショナル座標を以下に示す。
β相のAイオン席: (0.00±0.05, 0, 0.40±0.05) … a
(0.00±0.05, 0, 0.60±0.05) … b
(0.5 ±0.05, 0.5, 0.40±0.05) … c
(0.5 ±0.05, 0.5, 0.60±0.05) … d
β'相のAイオン席(1種の場合): (0.47±0.02, 0, 0.64±0.02) … a'
(0.53±0.02, 0, 0.36±0.02) … b'
(0.97±0.02, 0.5, 0.64±0.02) … c'
(0.03±0.02, 0.5, 0.36±0.02) … d'
β相とβ'相においてac面で類似の座標をとるのは,「aとd'」,「bとc'」,「cとb'」,「dとa'」だが,それらはy位置が「1/2」だけ異なる。すなわち,β相とβ'相では明らかにAイオン席が異なる。このことを図示したのが図4である。したがって,図4に示すように,β相のバナジウムブロンズと,β'相のバナジウムブロンズ(バナジウム酸化物)とは構成が異なる。
特に,図4に示すように,β'相のA席を1種としても,その原子位置は,β相の位置と明確に異なる。すなわち,単斜晶b軸方向に±b/2のシフト差がある。なお,ac面への投影図だけを見ていると,その違いは不明瞭である。
また,前述のように,β相の場合は,Aイオンが単斜晶フラクショナル座標(0.00±0.05, 0, 0.40±0.05)に位置する。これに対して,β'相では,以下の(i)または(ii)を満たす。
(i)1種のMイオンの単斜晶フラクショナル座標が(0.47±0.02, 0, 0.64±0.02)であり,非調和型の熱振動を持つ。
(ii)2種のAイオンの座標が(0.47±0.02, 0, 0.64±0.02)および(0.47±0.02, 0.08±0.02, 0.64±0.02)であり,それぞれ調和型の熱振動を持つ。
次に,実施例1のβ'-CuxV2O5で構成された熱電変換材料の特性の説明を行う。
(格子定数)
図5はβ'-CuxV2O5系の格子定数の組成依存性を示すグラフであり,横軸にxを取り,縦軸に,a軸,b軸,c軸の格子の長さ,単位格子の稜間の角度β,体積Vを取ったものである。
まず,実施例1のβ'-CuxV2O5の多結晶試料に対して,X線粉末回折(Rigaku Ultima+),単結晶試料に対してX線4軸回折を行い(Nonius CAD4),空間群C2/mである単斜晶格子定数を決定した。結果を図5に示す。
なお,図5において,×印は本発明者とは別の研究グループによるデータである。また,図5において,点線は,本発明者の研究における単結晶データに対するべガード則に基づくフィットを表す。
(結晶構造)
図6はβ'-Cu0.50V2O5の単斜晶ac面に投影された結晶構造の説明図である。
CrystalStructure crystallographic software package(Rigaku製)およびJana Crystallographic Computing System(V. Petricek, M. Dusek, and L. Palatinus, Jana2000: The Crystallographic Computing System (Institute of Physics, Prague, 2000))を用いて,Cu0.24V2O5,Cu0.40V2O5,Cu0.50V2O5,Cu0.60V2O5の297 Kにおける原子座標,等価等方性温度因子 Beq (Å2),異方的変位因子Uijならびに非調和型異方性変位因子Cjkl,Djklmを決定した。各結晶の組成は仕込み濃度と一致した。一例としてCu0.50V2O5の結晶構造を図6に示す。
図6に示すように,β'-CuxV2O5の結晶では,V1,V2席は歪んだ8面体配位,V3席はピラミッド配位をとる。なお,図6に示す結晶構造図は前述のように調和型で考えた場合の参考図であり,実際には「Cu1席のみ」が存在する。但し,Cu1席の異方性変位因子は「非調和型」で,この点がβ相とは異なる。すなわち,Cjkl,Djklm効果を取り入れない場合,図6に示すように,Cu1およびCu2席が部分的に占有されていること,またCu1−Cu2,Cu2−Cu2の最近接席間においてイオンが同時に占有されないことがわかり,イオンの乱雑性が大きいことが示唆される。一方,Cjkl,Djklmの効果を取り入れた場合はCu1席のみを考えればよい。また本構造に基づき,全イオンの有効価数を決定した。
結晶学的に異なる3種のV席の有効価数は,Cu濃度の増加とともに,一様に減少することが明らかになった。このことから本系の電子状態は2次元的と示唆される。また,Cu席の有効価数は組成に依存せず1価であった。
図7はβ'相で1種のCu席を持つとした場合のフラクショナル座標系xz面内の種々のy値における差フーリエ合成マップであり,図7Aは1種のCuイオンが調和型熱振動を持つ場合の差フーリエ合成マップ,図7Bは非調和型熱振動を持つ場合の差フーリエ合成マップである。
図7では,正の電子残差を等高線で示している。図7はいずれもβ'相の結晶構造に基づいた解析である。β相の結晶構造を基本にとると(A席のy座標が1/2異なると),電子残差が非常に大きくなり(結晶構造が解けていない状況となり),解析は失敗した。図7A,図7Bともに単斜晶フラクショナル座標が(0.47±0.02, 0, 0.64±0.02)である1種のCu席を考えている。Cuイオンが調和型熱振動を持つとした場合,図7Aの差フーリエ合成マップを与えるのに対して,非調和型熱振動を持つとした場合は,図7Bの結果を与える。調和型熱振動に限定する場合は,2種のCu席が必要である。図7Aにおいて,調和型異方性変位因子を持つ1種類のCu席を含むβ相結晶構造では,Cu1席(×印)のy = 0およびy = 0.125,0.188において,有限の電子密度が存在する。これに対して,図7Bに示すように,非調和型異方性変位因子を持つ,あるいは2種類のCu席を含むβ'相では電子残差がほとんどなく,結晶構造が正しく決定されていることがわかる。
図8はβ'-Cu0.50V2O5の異方性変位因子の組成依存性のグラフであり,横軸に組成xを取り,縦軸にCu ADP(異方性変位因子)をとったグラフである。
なお,図8において,Uijは調和振動項の平均2乗変位(i,jなどは逆格子ベクトル方向を意味し,U22は逆格子ベクトルb*方向の成分に対応)であり,Cjkl,Djklmは3次および4次の非調和項のテンソル係数(便宜上103倍)に対応する。図8には,それらのパラメーターの中で長波長フォノン散乱に特に有効と考えられる成分を示す。
図8によれば,非調和振動型温度因子(異方性変位因子)はCu低濃度側で顕著であり,β'-CuxV2O5系ではCu低濃度側ほど熱伝導度が減少することが予想される。したがって,図8から,Cu高濃度側ではCuの非調和振動が抑制され,熱伝導度が高くなることが期待できる。
(電子物性)
(輸送現象)
(電気抵抗率)
図9はβ'-CuxV2O5(0.24 ≦ x ≦ 0.38)の単斜晶b軸方向の電気抵抗率の温度依存性の説明図であり,図9Aは低温域における温度の逆数に対するグラフ,図9Bは高温域のグラフである。
図10はβ'-CuxV2O5(0.40 ≦ x ≦ 0.60)の単斜晶b軸方向の電気抵抗率の温度依存性の説明図であり,図10Aは温度に対するグラフ,図10Bは温度の逆数に対するグラフである。
図9において,実線は最近接間ホッピングモデル,点線は変長ホッピングモデル,破線は両モデルの並列機構に基づく計算値を示す。さらに,図10において,実線は,x= 0.60を除きホッピングモデル,x = 0.60は相関金属モデル,点線は変長ホッピングモデル,破線は両モデルの並列機構に基づく計算値を示す。
なお,最近接間ホッピングモデルや相関金属モデル,変長ホッピングモデル,両モデルの並列機構,については,例えば,「Masashige Onoda and Asato Tamura, Superlattice structures, electronic properties and spin dynamics of the partially Cu-extracted phase for the composite crystal system CuxV4O11, Journal of the Physical Society of Japan 86, 024801 (2017) [11pp].」に記載されているため,詳細な説明は省略する。
単斜晶b軸方向の電気抵抗率ρおよび熱電能Sを,それぞれ直流4端子法,直流法により,4 K ≦ T ≦ 300 Kの温度範囲で測定した。電気抵抗率ρの測定における降温・昇温過程の温度変化率は,それぞれ,0.5 K min-1,0.25 K min-1,熱電能Sの測定においては,0.5 K min-1,0.1 K min-1,であった。
電気抵抗率ρの温度依存性を図9,図10に示す。x = 0.30,0.40は,温度の減少に伴い電気抵抗率ρが増加する半導体的な振る舞いを示した。組成に応じて220 K付近でCuイオンの秩序化に起因するであろう温度履歴を伴う温度依存性の大きな変化が見られた。ただし,この温度履歴は,温度昇温率を十分に抑制した(0.1 K min-1)後述の熱電能Sにおいては顕著でなかった。一方,x = 0.50は200 K以上で金属的であるのに対して,低温では非金属的な振る舞いをした。x = 0.60は全温度領域で相関金属的な振る舞いを示した。
(熱電能)
図11はβ'-CuxV2O5の単斜晶b軸方向の熱電能の温度依存性の説明図であり,図11Aは0.24 ≦ x ≦ 0.38のグラフ,図11Bは0.40 ≦ x ≦0.60のグラフである。
なお,図11は,横軸に温度Tを取り,縦軸に熱電能S [μV K-1]をとったグラフである。また,図11において,実線は相関電子モデル,破線はホッピングおよび変長ホッピングモデルの並列機構に基づく計算値を示す。
図11は単斜晶b軸方向の熱電能Sの温度依存性である。図11において,すべての濃度で熱電能Sは負の値を示し,キャリアは電子的である(すなわち,n型)。x ≦ 0.40では,室温付近における温度依存性が小さく,電気抵抗率ρに異常が生じた温度以下で温度依存性が大きくなった。一方,x = 0.50,0.60の熱電能Sの大きさは相対的に小さく,金属的状態が示唆される。電気抵抗率の温度依存性が大きく変化した温度において熱電能にも変化が見られた。以上の結果から輸送機構として,次のモデルが妥当であることが明らかになった。
(a) 0.24 ≦ x ≦ 0.45の電気抵抗率ρ
・高温領域:最近接間ホッピング伝導機構
ここで,Ehは最近接間ホッピングエネルギー,kBはボルツマン係数を表す。
・低温領域:2次元変長ホッピング伝導ρvと最近接間ホッピング伝導ρhの並列機構
ここで,Toは2次元的変長ホッピングエネルギーを表す。
(b) x= 0.60の電気抵抗率ρ(T ≦ 250 K)
相関電子モデル
ここで,ρ0は残留抵抗率を表す。また,AはT2の係数である。

(c) 0.24 ≦ x ≦ 0.45の熱電能S
・高温領域:最近接間ホッピング伝導機構
ここで,eは電荷,N(E)は電子の状態密度,μは化学ポテンシャルを表す。
・低温領域:2次元変長ホッピング熱電能Svと最近接間ホッピング熱電能Shの電気伝導度重み機構
(d) x= 0.60の熱電能S
有効質量の増大を伴った相関電子モデル
ここで,EFはフェルミエネルギーを表す。
図12はβ'-CuxV2O5の輸送特性パラメータの組成依存性のグラフであり,横軸にxを取り,縦軸に最近接間ホッピングエネルギーEh,高温極限の電気抵抗率ρh0,2次元的変長ホッピングエネルギーTo,化学ポテンシャル上における状態密度対数のエネルギー微分値S0を取ったグラフである。
上記の(a)〜(d)における各パラメータと組成xとの関係とを図12に示す。
なお,図12の熱電能S0のグラフにおいて,点線と破線は,3次元の自由電子状態密度を仮定し,キャリアーの有効質量比を,それぞれ18(高温),8(低温)にした時の計算値である。
図12において,高温極限の電気抵抗率ρh0の組成依存性から,室温以上の温度領域を考えると,x = 0.4付近の熱電性能指数が最も良いことが示唆される。
(磁気的性質)
図13はβ'-CuxV2O5の熱電変換材料の磁気的性質の説明図であり,図13Aは帯磁率の温度依存性のグラフ,図13Bは帯磁率の逆数の温度依存性のグラフである。
図13において,実線は遍歴電子(結晶中を動き回る電子)と少数の孤立スピンモデル(スピン間の相互作用が極めて小さい孤立したイオンのスピン),点線はキュリーワイス則に基づく計算値を示す。
SQUID(Quantum Design MPMS)を用いて測定したβ'-CuxV2O5の帯磁率の温度依存性を図13に示す。図13において,Cu濃度の増加とともに,キュリーワイス型の帯磁率が大きく抑制される。輸送現象で見られた異常は顕著ではないが,x = 0.40において200 K付近でコブが生じた。
x = 0.24,0.35の結果は,Cu+イオンから移行したVイオン上のd電子が局在していると考えれば理解できるのに対して,x = 0.60ではd電子が遍歴的であることを示す。
(a) x= 0.24,0.35の帯磁率
キュリーワイス則
ここで,Cはキュリー定数,Twはワイス温度,χorbは軌道帯磁率,χdiaは反磁性帯磁率を表す。
(b) x= 0.60の帯磁率
遍歴電子と少数の孤立スピンモデル
ここで,右辺第1項,2項はパウリ的帯磁率における一定値と温度依存項,CiとTwiは不純物スピンあるいは格子欠陥に由来するキュリー定数とワイス温度を表す。
(電子スピン共鳴)
Xバンド電子スピン共鳴(JEOL TE200)を行った結果,磁気的イオンはV4+のみであり,Cu2+イオンは存在しないことを確認した。
(無次元性能指数)
図14はβ'-CuxV2O5の熱電変換材料の室温における熱電変換の性能の説明図であり,図14Aは熱電性能因子Pのグラフ,図14Bは熱伝導度κのグラフ,図14Cは無次元性能指数ZTのグラフである。
前述の電気抵抗率ρと熱電能Sのデータに基づく室温における熱電性能因子P,定常法により300 Kで測定した熱伝導度κ,ならびにそれらのデータから導かれる無次元性能指数ZTを,それぞれ図14A−図14Cに示す。β'-CuxV2O5系ではx = 0.40付近で無次元性能指数ZT(≒ 1×10-2)が最も高い。特に,図14Aの近似線から,0.38±0.04の範囲において,熱電性能因子Pが10-6を超え,特に好適である。
一方,熱電変換酸化物材料として実用化が検討されているNa0.5CoO2の室温における電気抵抗率,熱電能,熱伝導度は,現在それぞれρ ≒ 3×10-3 Ω cm,S ≒ 80 μV K-1,κ = 5 W m-1 K-1程度とされ,それらから熱電性能因子と変換効率はP ≒ 2×10-6 W cm-1 K-2,ZT ≒ 1×10-2となる 。したがって,β'-CuxV2O5の熱電性能因子P,無次元性能指数ZTと同程度である。
(変更例)
以上,本発明の実施例を詳述したが,本発明は,前記実施例に限定されるものではなく,特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内で,種々の変更を行うことが可能である。本発明の変更例(H01)を下記に例示する。
(H01)前記実施例において,熱電変換素子1として,熱エネルギーを電気エネルギーに変換して使用する構成を例示したが,これに限定されない。p型の熱電変換材料とn型の熱電変換材料を接合し,電流を流すことで熱の移動が発生するペルティエ効果を利用したペルティエ素子にも適用可能である。
前述の本発明の熱電変換材料は,例えば,工場や発電所,入浴施設,あるいは車のエンジン等の廃熱や地熱を利用した発電に適用可能である。
また,ペルティエ素子として,電子回路や電子素子の冷却にも利用可能である。
8…熱電変換材料。

Claims (4)

  1. AをCuおよびLiの少なくとも一方とし,xを0.24 ≦ x < 0.66とした場合に,化学式AxV2O5で表され,原子Aの異方性変位因子が非調和型であるβ'相の結晶構造を有するバナジウム酸化物で構成されたことを特徴とする熱電変換材料。
  2. AがCuであり,且つ,xが0.38±0.04であることを特徴とする請求項1に記載の熱電変換材料。
  3. AがLiであり,且つ,xが0.44 ≦ x ≦ 0.49であることを特徴とする請求項1に記載の熱電変換材料。
  4. xが0.24 ≦ x ≦ 0.65,yが0 < y < 0.65,化学式Cux-yLiyV2O5で表される固溶系のバナジウム酸化物で構成されたことを特徴とする請求項1に記載の熱電変換材料。
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