本発明においては、炭酸マグネシウム粒子と繊維との複合繊維を改質することによって、複合繊維を水性溶媒に添加した際の炭酸マグネシウムの溶解を抑制することができる。本発明においては、繊維と複合化した炭酸マグネシウムの表面に炭酸マグネシウムよりも水への溶解度が低い無機粒子を析出させるか、多価カルボン酸、ポリリン酸またはキレート剤を吸着させることによって、炭酸マグネシウムの水への溶解を抑制することができる。
本発明の1つの態様において、複合繊維の炭酸マグネシウム表面に、炭酸マグネシウムよりも水への溶解度が低い無機粒子を析出させる。100gの水に対する炭酸マグネシウムの溶解度は、25℃において約0.0106g/100gとされており、本発明においては、炭酸マグネシウム粒子の表面に水への溶解度が0.0106g/100gより低い無機粒子を析出させることによって、炭酸マグネシウムの水への溶出を抑制する。このような無機粒子としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸亜鉛、炭酸銀、炭酸鉄、炭酸銅、炭酸マンガン、硫酸バリウム、リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸水素バリウム、リン酸マグネシウム、シュウ酸カルシウム、シュウ酸銀、シュウ酸鉄二水和物、臭化銀、酸化銀、過マンガン酸バリウム、塩化銀、二酸化ケイ素などが挙げられ、好ましくは、水酸化アルミニウムおよび/または硫酸バリウムである。
炭酸マグネシウム表面に、炭酸マグネシウムよりも水への溶解度が低い無機粒子を析出させる場合、例えば、下記の反応によって行うことができる。
(水酸化マグネシウム)
MgCl2+2Na(OH)2→Mg(OH)2+2NaCl
(炭酸カルシウム)
CaCl2+Na2CO3→CaCO3+2NaCl2
(炭酸バリウム)
BaCl2+Na2CO3→BaCO3+2NaCl2
(炭酸亜鉛)
ZnSO4+Na2CO3→ZnCO3+Na2SO4
(硝酸銀)
Ag+2HNO3→AgNO3+NO2+H2O
(炭酸銀)
NaCO3+AgNO3→AgCO3+NaNO3
(炭酸鉄)
FeSO4+Na2CO3→FeCO3+Na2SO4
(炭酸銅)
CuSO4+Na2CO3→CuCO3+Na2SO4
(第一リン酸カルシウム、リン酸二水素カルシウム)
CaCO3+2H3PO4→Ca(H2PO4)2+H2O+CO2
(第二リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム)
CaCO3+H3PO4→CaHPO4+H2O+CO2
(第三リン酸カルシウム、リン酸三カルシウム)
CaCO3+H3PO4→Ca3(PO4)2+3H2O+3CO2
(リン酸水素バリウム)
BaCO3+H3PO4→BaHPO4+H2O+CO2
(リン酸二水素マグネシウム)
MgCO3+2H3PO4→Mg(H2PO4)2+H2O+CO2
(リン酸水素マグネシウム)
MgCO3+H3PO4→MgHPO4+H2O+CO2
(リン酸三マグネシウム)
MgCO3+H3PO4→Mg3(PO4)2+3H2O+3CO2
(シュウ酸カルシウム)
H2C2O4+Ca(OH)2→CaC2O4+2H2O
(シュウ酸銀)
H2C2O4+2AgOH→Ag2C2O4+2H2O
(シュウ酸鉄二水和物)
H2C2O4+Fe(OH)2→Fe(C2O4)・2H2O
(臭化銀)
2KBr+AgCl2→AgBr+2KCl
(酸化銀)
AgCl2+2NaOH→AgO+2NaCl+H2O
(過マンガン酸バリウム)
2KMnO4+BaCl2→Ba(MnO4)2+2KCl
(塩化銀)
AgO+2HCl→AgCl2+H2O
(シリカ)
Na2SiO3+H2SO4→SiO2+Na2SO4+H2O
また別の態様において、繊維と複合化した炭酸マグネシウムの表面に、多価カルボン酸、ポリリン酸、キレート剤などをイオン結合で吸着させることによって、炭酸マグネシウムの水への溶解を抑制する。炭酸マグネシウムとイオン結合させる物質としては、例えば、多価カルボン酸、ポリリン酸、各種キレート剤などが挙げられ、複数の物質を併用してもよい。
多価カルボン酸としては、例えば、ジカルボン酸、トリカルボン酸、ポリカルボン酸を使用することができる。ジカルボン酸としては、例えば、コハク酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、ジメリン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ベンゼンジカルボン酸など、トリカルボン酸としては、例えば、トリカルバリル酸、ベンゼントリカルボン酸など、ポリカルボン酸としては、例えば、アルギン酸やポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウムのようなアクリル酸もしくはアクリル酸ナトリウムの重合物、セルロースナノファイバーやカルボキシメチルセルロースなどのセルロースなどを挙げることができる。キレート剤としては、例えば、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、DTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)、NTA(ニトリロ三酢酸)、GLDA(L−グルタミン酸二酢酸)、HEDTA(ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸)、GEDTA(グリコールエーテルジアミン四酢酸)、TTHA(トリエチレンテトラミン五酢酸)、HIDA(ヒドロキシエチルイミノ二酢酸)、DHEG(ジヒドロキシエチルグリシン)などを挙げることができ、EDTA、DTPAなどを好適に用いることができる。
炭酸マグネシウム
本発明は、炭酸マグネシウムと繊維との複合繊維に関する。本発明に係る複合繊維を構成する炭酸マグネシウム微粒子の平均粒子径は、例えば50μm未満であるが、平均粒子径が30μm以下の炭酸マグネシウムとすることもできる。また、好ましい態様において、炭酸マグネシウム微粒子の平均一次粒子径を10nm〜3μm程度とすることや、10nm〜1μmとすることも可能である。
また、本発明における炭酸マグネシウムは、微細な一次粒子が凝集した二次粒子の形態を取ることもあり、用途に応じた二次粒子を生成させることができるし、粉砕によって凝集塊を細かくすることもできる。粉砕の方法としては、ボールミル、サンドグラインダーミル、インパクトミル、高圧ホモジナイザー、低圧ホモジナイザー、ダイノーミル、超音波ミル、カンダグラインダ、アトライタ、石臼型ミル、振動ミル、カッターミル、ジェットミル、離解機、叩解機、短軸押出機、2軸押出機、超音波攪拌機、家庭用ジューサーミキサー等が挙げられる。
本発明において炭酸マグネシウムは、例えば、酸化マグネシウム、マグネサイト、ドロマイト、ハンタイト、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、ブルサイトおよびこれらの混合物からなる群より選択される原料から合成することができる。好ましい態様において、本発明の炭酸マグネシウムは、水酸化マグネシウムから合成される。
本発明の複合繊維を構成する炭酸マグネシウムの平均粒子径や形状等は、電子顕微鏡による観察により確認することができる。さらに、炭酸マグネシウムを合成する際の条件を調整することによって、種々の大きさや形状を有する炭酸マグネシウム微粒子を繊維と複合繊維化することができる。
繊維
本発明においては、炭酸マグネシウム微粒子と繊維とを複合化する。複合繊維を構成する繊維は特に制限されないが、例えば、セルロースなどの天然繊維はもちろん、石油などの原料から人工的に合成される合成繊維、さらには、レーヨンやリヨセルなどの再生繊維(半合成繊維)、さらには無機繊維などを制限なく使用することができる。天然繊維としては上記の他にウールや絹糸やコラーゲン繊維等の蛋白系繊維、キチン・キトサン繊維やアルギン酸繊維等の複合糖鎖系繊維等が挙げられる。セルロース系の原料としては、パルプ繊維(木材パルプや非木材パルプ)、バクテリアセルロース、ホヤなどの動物由来セルロース、藻類などが例示され、木材パルプは、木材原料をパルプ化して製造すればよい。木材原料としては、アカマツ、クロマツ、トドマツ、エゾマツ、ベニマツ、カラマツ、モミ、ツガ、スギ、ヒノキ、カラマツ、シラベ、トウヒ、ヒバ、ダグラスファー、ヘムロック、ホワイトファー、スプルース、バルサムファー、シーダ、パイン、メルクシマツ、ラジアータパイン等の針葉樹、及びこれらの混合材、ブナ、カバ、ハンノキ、ナラ、タブ、シイ、シラカバ、ハコヤナギ、ポプラ、タモ、ドロヤナギ、ユーカリ、マングローブ、ラワン、アカシア等の広葉樹及びこれらの混合材が例示される。
木材原料をパルプ化する方法は、特に限定されず、製紙業界で一般に用いられるパルプ化法が例示される。木材パルプはパルプ化法により分類でき、例えば、クラフト法、サルファイト法、ソーダ法、ポリサルファイド法等の方法により蒸解した化学パルプ;リファイナー、グラインダー等の機械力によってパルプ化して得られる機械パルプ;薬品による前処理の後、機械力によるパルプ化を行って得られるセミケミカルパルプ;古紙パルプ;脱墨パルプ等が挙げられる。木材パルプは、未晒(漂白前)の状態であってもよいし、晒(漂白後)の状態であってもよい。
非木材由来のパルプとしては、綿、ヘンプ、サイザル麻、マニラ麻、亜麻、藁、竹、バガス、ケナフ、サトウキビ、トウモロコシ、稲わら、楮(こうぞ)、みつまた等が例示される。
パルプ繊維は、未叩解及び叩解のいずれでもよく、複合繊維シートの物性に応じて選択すればよいが、叩解を行う方が好ましい。これにより、シート強度の向上並びに炭酸マグネシウムの定着促進が期待できる。
合成繊維としてはポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、アクリル繊維、半合繊維としてはレーヨン、アセテートなどが挙げられ、無機繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、各種金属繊維などが挙げられる。
また、これらセルロース原料はさらに処理を施すことで粉末セルロース、酸化セルロースなどの化学変性セルロース、およびセルロースナノファイバー:CNF(ミクロフィブリル化セルロース:MFC、TEMPO酸化CNF、リン酸エステル化CNF、カルボキシメチル化CNF、機械粉砕CNFなど)として使用することもできる。本発明で用いる粉末セルロースとしては、例えば、精選パルプを酸加水分解した後に得られる未分解残渣を精製・乾燥し、粉砕・篩い分けするといった方法により製造される棒軸状である一定の粒径分布を有する結晶性セルロース粉末を用いてもよいし、KCフロック(日本製紙製)、セオラス(旭化成ケミカルズ製)、アビセル(FMC社製)などの市販品を用いてもよい。粉末セルロースにおけるセルロースの重合度は好ましくは100〜1500程度であり、X線回折法による粉末セルロースの結晶化度は好ましくは70〜90%であり、レーザー回折式粒度分布測定装置による体積平均粒子径は好ましくは1μm以上100μm以下である。本発明で用いる酸化セルロースは、例えばN−オキシル化合物、及び、臭化物、ヨウ化物若しくはこれらの混合物からなる群から選択される化合物の存在下で酸化剤を用いて水中で酸化することで得ることができる。セルロースナノファイバーとしては、上記セルロース原料を解繊する方法が用いられる。解繊方法としては、例えばセルロースや酸化セルロース等の化学変性セルロースの水懸濁液等を、リファイナー、高圧ホモジナイザー、グラインダー、一軸または多軸混練機、ビーズミル等による機械的な磨砕、ないし叩解することにより解繊する方法を使用することができる。上記方法を1種または複数種類組み合わせてセルロースナノファイバーを製造してもよい。製造したセルロースナノファイバーの繊維径は電子顕微鏡観察などで確認することができ、例えば5nm〜1000nm、好ましくは5nm〜500nm、より好ましくは5nm〜300nmの範囲にある。このセルロースナノファイバーを製造する際、セルロースを解繊及び/又は微細化する前及び/又は後に、任意の化合物をさらに添加してセルロースナノファイバーと反応させ、水酸基が修飾されたものにすることもできる。修飾する官能基としては、アセチル基、エステル基、エーテル基、ケトン基、ホルミル基、ベンゾイル基、アセタール、ヘミアセタール、オキシム、イソニトリル、アレン、チオール基、ウレア基、シアノ基、ニトロ基、アゾ基、アリール基、アラルキル基、アミノ基、アミド基、イミド基、アクリロイル基、メタクリロイル基、プロピオニル基、プロピオロイル基、ブチリル基、2−ブチリル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、ノナノイル基、デカノイル基、ウンデカノイル基、ドデカノイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、ナフトイル基、ニコチノイル基、イソニコチノイル基、フロイル基、シンナモイル基等のアシル基、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアノイル基等のイソシアネート基、メチル基、エチル基、プロピル基、2−プロピル基、ブチル基、2−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基等のアルキル基、オキシラン基、オキセタン基、オキシル基、チイラン基、チエタン基等が挙げられる。これらの置換基の中の水素が水酸基、カルボキシ基等の官能基で置換されても構わない。また、アルキル基の一部が不飽和結合になっていても構わない。これらの官能基を導入するために使用する化合物としては特に限定されず、例えば、リン酸由来の基を有する化合物、カルボン酸由来の基を有する化合物、硫酸由来の基を有する化合物、スルホン酸由来の基を有する化合物、アルキル基を有する化合物、アミン由来の基を有する化合物等が挙げられる。リン酸基を有する化合物としては特に限定されないが、リン酸、リン酸のリチウム塩であるリン酸二水素リチウム、リン酸水素二リチウム、リン酸三リチウム、ピロリン酸リチウム、ポリリン酸リチウムが挙げられる。更にリン酸のナトリウム塩であるリン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウムが挙げられる。更にリン酸のカリウム塩であるリン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三カリウム、ピロリン酸カリウム、ポリリン酸カリウムが挙げられる。更にリン酸のアンモニウム塩であるリン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ピロリン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウムなどが挙げられる。これらのうち、リン酸基導入の効率が高く、工業的に適用しやすい観点から、リン酸、リン酸のナトリウム塩、リン酸のカリウム塩、リン酸のアンモニウム塩が好ましく、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウムがより好ましいが、特に限定されない。カルボキシル基を有する化合物としては特に限定されないが、マレイン酸、コハク酸、フタル酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、イタコン酸等のジカルボン酸化合物やクエン酸、アコニット酸などトリカルボン酸化合物が挙げられる。カルボキシル基を有する化合物の酸無水物としては特に限定されないが、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水フタル酸、無水グルタル酸、無水アジピン酸、無水イタコン酸等のジカルボン酸化合物の酸無水物が挙げられる。カルボキシル基を有する化合物の誘導体としては特に限定されないが、カルボキシル基を有する化合物の酸無水物のイミド化物、カルボキシル基を有する化合物の酸無水物の誘導体が挙げられる。カルボキシル基を有する化合物の酸無水物のイミド化物としては特に限定されないが、マレイミド、コハク酸イミド、フタル酸イミド等のジカルボン酸化合物のイミド化物が挙げられる。カルボキシル基を有する化合物の酸無水物の誘導体としては特に限定されない。例えば、ジメチルマレイン酸無水物、ジエチルマレイン酸無水物、ジフェニルマレイン酸無水物等の、カルボキシル基を有する化合物の酸無水物の少なくとも一部の水素原子が置換基(例えば、アルキル基、フェニル基等)で置換されたものが挙げられる。上記カルボン酸由来の基を有する化合物のうち、工業的に適用しやすく、ガス化しやすいことから、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水フタル酸が好ましいが、特に限定されない。また、化学的に結合させなくても、修飾する化合物がセルロースナノファイバーに物理的に吸着する形でセルロースナノファイバーを修飾してもよい。物理的に吸着する化合物としては界面活性剤等が挙げられ、アニオン性、カチオン性、ノニオン性いずれを用いてもよい。セルロースを解繊及び/又は粉砕する前に上記の修飾を行った場合、解繊及び/又は粉砕後にこれらの官能基を脱離させ、元の水酸基に戻すこともできる。以上のような修飾を施すことで、セルロースナノファイバーの解繊を促進したり、セルロースナノファイバーを使用する際に種々の物質と混合しやすくしたりすることができる。
以上に示した繊維は単独で用いても良いし、複数を混合しても良い。中でも、木材パルプを含むか、若しくは、木材パルプと非木材パルプ及び/又は合成繊維との組み合わせを含むことが好ましく、木材パルプのみであることがより好ましい。
好ましい態様において、本発明の複合繊維を構成する繊維はパルプ繊維である。また、例えば、製紙工場の排水から回収された繊維状物質を本発明の炭酸化反応に供給してもよい。このような物質を反応槽に供給することにより、種々の複合粒子を合成することができ、また、形状的にも繊維状粒子などを合成することができる。
本発明においては、繊維の他にも、炭酸化反応には直接的に関与しないが、生成物である炭酸マグネシウムに取り込まれて複合粒子を生成するような物質を用いることができる。本発明にいては、パルプ繊維を始めとする繊維を使用するが、それ以外にも無機粒子、有機粒子、ポリマーなどを含む溶液中で炭酸マグネシウムを合成することによって、さらにこれらの物質が取り込まれた複合粒子を製造することが可能である。
炭酸マグネシウム微粒子と繊維との複合繊維の合成
本発明においては、繊維を含む溶液中で炭酸マグネシウム微粒子を合成するが、炭酸マグネシウムの合成方法は、公知の方法によることができる。例えば、水酸化マグネシウムと炭酸ガスから重炭酸マグネシウムを合成し、重炭酸マグネシウムから正炭酸マグネシウムを経て塩基性炭酸マグネシウムを合成することができる。炭酸マグネシウムは合成方法によって重炭酸マグネシウム、正炭酸マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウムなどを得ることができるが、本発明の複合繊維に係る炭酸マグネシウムは、塩基性炭酸マグネシムにすることが特に好ましい。なぜならば、重炭酸マグネシウムは安定性が比較的低く、柱状(針状)結晶である正炭酸マグネシウムは繊維へ定着しにくい場合があるためである。一方、繊維の存在下で塩基性炭酸マグネシウムにまで化学反応させることで、繊維表面をうろこ状などに被覆した炭酸マグネシウムと繊維の複合繊維を得ることができる。
本発明は、炭酸マグネシウムと繊維の複合繊維に関するが、好ましい態様において、繊維表面の15%以上が炭酸マグネシウムによって被覆されている。好ましい態様において本発明の複合繊維は、炭酸マグネシウムによる繊維の被覆率(面積率)が25%以上であり、より好ましくは40%以上であるが、本発明によれば被覆率が60%以上や80%以上の複合繊維を製造することも可能である。
本発明によって炭酸マグネシウムと繊維を複合繊維化しておくと、単に炭酸マグネシウムを繊維と混合した場合と比較して、炭酸マグネシウムが製品に歩留り易いだけでなく、凝集せずに均一に分散した製品を得ることができる。すなわち、本発明によれば、炭酸マグネシウムと繊維の複合繊維の製品への歩留り(投入した炭酸マグネシウムが製品中に残る重量割合)を60%以上とすることが可能であり、70%以上や90%以上とすることもできる。
本発明においては、炭酸マグネシウムを合成する際に、キャビテーション気泡や特願2016−174759に記載するウルトラファインバブル(平均粒径が1000nm以下の微細気泡、UFB)を存在させることが好ましい。この場合、炭酸マグネシウムの合成ルートのすべてにおいてキャビテーション気泡やウルトラファインバブルを存在させる必要はなく、少なくとも1つの段階でキャビテーション気泡やウルトラファインバブルを存在させればよい。
例えば、塩基性炭酸マグネシウムを製造する場合、マグネシウム源として酸化マグネシウムMgOを使用し、酸化マグネシウムから得られた水酸化マグネシウムMg(OH)2に炭酸ガスCO2を吹き込んで重炭酸マグネシウムMg(HCO3)2を得て、重炭酸マグネシウムから正炭酸マグネシウムMgCO3・3H2Oを経て塩基性炭酸マグネシウムが得られる。炭酸マグネシウムを合成する際、繊維を存在させておくことによって、繊維上に塩基性炭酸マグネシウムを合成することができる。好ましい態様においては炭酸マグネシウムを合成する際にキャビテーション気泡を存在させてもよいが、本発明においては、炭酸マグネシウムのいずれかの合成段階でキャビテーション気泡を存在させておくとよい。好ましい態様においては、水酸化マグネシウムから重炭酸マグネシウムを合成する段階においてキャビテーション気泡を存在させることができる。また別の態様においては、重炭酸マグネシウムや正炭酸マグネシウムから塩基性炭酸マグネシウムを合成する段階においてキャビテーション気泡を存在させることができる。さらに別の態様においては、塩基性炭酸マグネシムを合成後、熟成させるときに存在させることができる。
一般に、炭酸マグネシウムを製造する際の反応容器として、ガス吹き込み型の装置と機械攪拌型の装置が知られている。ガス吹き込み型では、水酸化マグネシウムを入れた反応槽に炭酸ガスを吹き込み反応させるが、単純に炭酸ガスを吹き込むだけでは気泡の大きさを均一かつ微細に制御することが難しく、反応効率の点からは制限がある。一方、機械攪拌型の装置では、装置内部に攪拌機を設け、その攪拌機の近くに炭酸ガスを導入することによって、炭酸ガスを細かな気泡とし、炭酸ガスとの反応効率を向上させる。
しかし、機械攪拌型のように、反応槽内部に設けた攪拌機で攪拌を行う場合、反応液の濃度が高かったり炭酸化反応が進むと反応液の抵抗が大きく十分な攪拌が困難になるため炭酸化反応を的確に制御することが難しかったり、十分な攪拌を行うには攪拌機に相当な負荷がかかりエネルギー的に不利となることがあった。また、ガスの吹込口が反応槽の下部にあり、攪拌をよくするために攪拌機の羽根が反応槽底部の近くに設置されている場合、溶解性が低い成分が底部に滞留し、ガス吹込口を塞いだり、攪拌機のバランスを崩したりする。さらに、従来の方法では、反応槽に加えて、攪拌機や、炭酸ガスを反応槽に導入するための設備が必要であり、設備面でもコストがかかるものであった。そして、機械攪拌型の装置では、攪拌機の近くに供給した炭酸ガスを攪拌機によって細かくすることによって反応効率を向上させるものの、反応液の濃度が高い場合などは十分に炭酸ガスを微細化できず、炭酸化反応の面でも、生成する無機粒子の形態等を正確に制御することが難しいことがあった。本発明においては、キャビテーション気泡の存在下で炭酸マグネシウムを合成することによって、効率的に炭酸化反応を進行させ、均一な炭酸マグネシウム微粒子を繊維上に製造することが可能になる。特に噴流キャビテーションを用いることで、羽根などの機械的な攪拌機なしに、十分な攪拌を行うことができる。本発明においては、従来からの公知の反応容器を用いることができ、もちろん、上述したようなガス吹き込み型や機械攪拌型の装置を問題なく使用することができ、これらの容器にノズルなどを用いた噴流キャビテーションを組合せても良い。
本発明によって炭酸マグネシウムを合成する場合、水酸化マグネシウムの水性懸濁液の固形分濃度は、好ましくは0.1〜40重量%、より好ましくは0.5〜30重量%、さらに好ましくは1〜20重量%程度である。固形分濃度が低いと反応効率が低く、製造コストが高くなり、固形分濃度が高すぎると流動性が悪くなり、反応効率が落ちる。本発明においては、キャビテーション気泡の存在下で炭酸マグネシウムを合成する場合、固形分濃度の高い懸濁液(スラリー)を用いても、反応液と炭酸ガスを好適に混合することができる。
水酸化マグネシウムを含む水性懸濁液としては、一般に用いられるものを使用でき、例えば、水酸化マグネシウムを水に混合して調製したり、酸化マグネシウムを水に添加したりして調製することができる。酸化マグネシウムから水酸化マグネシウムのスラリーを調製する際の条件は特に制限されないが、例えば、MgOの濃度は0.1重量%以上、好ましくは1重量%以上、温度は20〜100℃、好ましくは30〜100℃として、例えば、5分〜5時間(好ましくは2時間以内)の間、処理することが好ましい。装置はバッチ式であっても連続式であってもよい。なお、本発明においては水酸化マグネシウムスラリーの調製と炭酸化反応は、別々の装置を用いてもよく、また、1つの反応槽で行ってもよい。
本発明においては、懸濁液の調製などに水を使用するが、この水としては、通常の水道水、工業用水、地下水、井戸水などを用いることができる他、イオン交換水や蒸留水、超純水、工業廃水、さらには、本発明の反応工程で得られた炭酸マグネシウムスラリーを分離・脱水する際に得られる水を好適に用いることできる。
また本発明においては、反応液を循環させて水酸化マグネシウムを含む液体として使用することができる。このように反応液を循環させて、反応液と炭酸ガスとの接触を増やすことにより、反応効率を上げ、所望の炭酸マグネシウムを得ることが容易になる。
本発明においては、二酸化炭素(炭酸ガス)を含む気体が反応容器に吹き込まれ、反応液と混合される。本発明によれば、ファン、ブロワなどの気体供給装置がなくとも炭酸ガスを反応液に供給することができ、しかも、キャビテーション気泡によって炭酸ガスが微細化されるため炭酸化反応を効率よく行うことができる。
本発明において、二酸化炭素を含む気体の二酸化炭素濃度に特に制限はないが、二酸化炭素濃度が高い方が好ましい。また、反応容器に導入する炭酸ガスの量に制限はなく適宜選択することができるが、例えば、水酸化マグネシウム1kgあたり100〜10000L/時の流量の炭酸ガスを用いると好ましい。
本発明の二酸化炭素を含む気体は、実質的に純粋な二酸化炭素ガスでもよく、他のガスとの混合物であってもよい。例えば、二酸化炭素ガスの他に、空気、窒素などの不活性ガスを含む気体を、二酸化炭素を含む気体として用いることができる。また、二酸化炭素を含む気体としては、二酸化炭素ガス(炭酸ガス)の他、製紙工場の焼却炉、石炭ボイラー、重油ボイラーなどから排出される排ガスを二酸化炭素含有気体として好適に用いることができる。その他にも、石灰焼成工程から発生する二酸化炭素を用いて炭酸化反応を行うこともできる。
本発明の複合繊維を製造する際には、さらに公知の各種助剤を添加することができる。例えば、キレート剤を炭酸化反応に添加することができ、具体的には、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸などのポリヒドロキシカルボン酸、シュウ酸などのジカルボン酸、グルコン酸などの糖酸、イミノ二酢酸、エチレンジアミン四酢酸などのアミノポリカルボン酸およびそれらのアルカリ金属塩、ヘキサメタリン酸、トリポリリン酸などのポリリン酸のアルカリ金属塩、グルタミン酸、アスパラギン酸などのアミノ酸およびこれらのアルカリ金属塩、アセチルアセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸アリルなどのケトン類、ショ糖などの糖類、ソルビトールなどのポリオールが挙げられる。また、表面処理剤としてパルミチン酸、ステアリン酸等の飽和脂肪酸、オレイン酸、リノール酸等の不飽和脂肪酸、脂環族カルボン酸、アビエチン酸等の樹脂酸、それらの塩やエステルおよびエーテル、アルコール系活性剤、ソルビタン脂肪酸エステル類、アミド系やアミン系界面活性剤、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、アルファオレフィンスルホン酸ナトリウム、長鎖アルキルアミノ酸、アミンオキサイド、アルキルアミン、第四級アンモニウム塩、アミノカルボン酸、ホスホン酸、多価カルボン酸、縮合リン酸などを添加することができる。また、必要に応じ分散剤を用いることもできる。この分散剤としては、例えば、ポリアクリル酸ナトリウム、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、アクリル酸−マレイン酸共重合体アンモニウム塩、メタクリル酸−ナフトキシポリエチレングリコールアクリレート共重合体、メタクリル酸−ポリエチレングリコールモノメタクリレート共重合体アンモニウム塩、ポリエチレングリコールモノアクリレートなどがある。これらを単独または複数組み合わせて使用することができる。また、添加のタイミングは炭酸化反応の前でも後でも良い。このような添加剤は、水酸化マグネシウムに対して、好ましくは0.001〜20%、より好ましくは0.1〜10%の量で添加することができる。
本発明において炭酸化反応の条件は、特に制限されず、用途に応じて適宜設定することができる。例えば、水酸化マグネシウムから重炭酸マグネシウムや塩基性炭酸マグネシウムを得る反応の温度は0〜90℃とすることができ、10〜70℃とすることが好ましい。反応温度の下限は20℃としてもよく、上限は80℃としてもよい。反応温度は、反応液の温度を温度調節装置によって制御することができ、温度が低いと反応効率が低下したり、塩基性炭酸マグネシウムにまで変換されない場合がある。一方、90℃を超えると加温のためのコストがかかる場合や作業性が低下する場合があり、粗大な粒子が多くなる傾向がある。
また、本発明において炭酸化反応はバッチ反応とすることもでき、連続反応とすることもできる。一般に、反応後の残存物を排出する便利さから、バッチ反応工程を行うことが好ましい。反応のスケールは特に制限されないが、100L以下のスケールで反応させてもよいし、100L超のスケールで反応させてもよい。反応容器の大きさは、例えば、10L〜100L程度とすることもできるし、100L〜1000L程度としてもよい。
さらに、炭酸化反応は、反応懸濁液のpHをモニターすることにより制御することができ、反応液のpHプロファイルに応じて、例えばpH9未満、好ましくはpH8.5未満、より好ましくはpH8.3未満、さらにはpH8.0未満のあたりに到達するまで炭酸化反応を行うことができる。繊維と塩基性炭酸マグネシウムとの複合繊維を製造する場合、pHが7〜7.5になるまで炭酸化反応を行うことが望ましい。
一方、反応液の電導度をモニターすることにより炭酸化反応を制御することも出来る。電導度が4mS/cm以上(400mS/m以上)に増加するまで炭酸化反応を行うことが好ましい。
本発明においては、炭酸化反応を終了した後に、反応液を熟成させることもできる。具体的には、上記のようにpHもしくは電導度の変化で炭酸化反応の終了を確認した後、炭酸ガスの吹き込みを停止し、その後、任意の温度や撹拌方法で熟成時間を設けることができる。熟成時の温度としては、例えば、20〜90℃とすることができ、40〜90℃とすることが好ましく、60〜90℃とすることがさらに好ましい。熟成時間としては、例えば、1分以上とすることができ、15分以上が好ましく、30分以上がより好ましい。また、この熟成反応は炭酸化反応時の反応容器内でそのまま行うことも出来るし、他の反応容器に移してから行うこともできる。他の反応容器で熟成を行う場合の反応容器の形態や撹拌方法に特に制限はない。また、この熟成反応時にキャビテーションを発生させることもでき、これにより繊維への炭酸マグネシウムの定着をさらに促進することが期待できる。
さらにまた、炭酸化反応は、反応時間によって制御することができ、具体的には、反応物が反応槽に滞留する時間を調整して制御することができる。その他、本発明においては、炭酸化反応槽の反応液を攪拌したり、炭酸化反応を多段反応としたりすることによって反応を制御することもできる。
本発明においては、反応生成物である複合繊維が懸濁液として得られるため、必要に応じて、貯蔵タンクに貯蔵したり、濃縮、脱水、粉砕、分級、熟成、分散などの処理を行ったりすることができる。これらは公知の工程によることができ、用途やエネルギー効率などを考慮して適宜決定すればよい。例えば濃縮・脱水処理は、遠心脱水機、沈降濃縮機などを用いて行われる。この遠心脱水機の例としては、デカンター、スクリューデカンターなどが挙げられる。濾過機や脱水機を用いる場合についてもその種類に特に制限はなく、一般的なものを使用することができるが、例えば、フィルタープレス、ドラムフィルター、ベルトプレス、チューブプレス等の加圧型脱水機、オリバーフィルター等の真空ドラム脱水機などを好適に用いてケーキとすることができる。粉砕の方法としては、ボールミル、サンドグラインダーミル、インパクトミル、高圧ホモジナイザー、低圧ホモジナイザー、ダイノーミル、超音波ミル、カンダグラインダ、アトライタ、石臼型ミル、振動ミル、カッターミル、ジェットミル、離解機、叩解機、短軸押出機、2軸押出機、超音波攪拌機、家庭用ジューサーミキサー等が挙げられる。分級の方法としては、メッシュ等の篩、アウトワード型もしくはインワード型のスリットもしくは丸穴スクリーン、振動スクリーン、重量異物クリーナー、軽量異物クリーナー、リバースクリーナー、篩分け試験機等が挙げられる。分散の方法としては、高速ディスパーザー、低速ニーダーなどが挙げられる。
本発明によって得られた複合繊維は、完全に脱水せずに懸濁液の状態で填料や顔料に配合することもできるが、乾燥して粉体とすることもできる。この場合の乾燥機についても特に制限はないが、例えば、気流乾燥機、バンド乾燥機、噴霧乾燥機などを好適に使用することができる。
本発明に係る複合繊維の製造方法は、繊維を含む溶液において炭酸マグネシウムを合成することを必須とするものである。酸化マグネシウム等に代表される水酸化マグネシム前駆体から水酸化マグネシムを得る時点で反応溶液中に繊維を分散させておくことができる。また、水酸化マグネシウムから炭酸マグネシウムを得る工程で繊維を分散させておくこともできる。いずれの場合においても、反応溶液がアルカリ性であるため、反応液に浸漬することで繊維を膨潤させ、効率よく炭酸マグネシウムと繊維の複合繊維を得ることができる。繊維を分散させた後、すぐに炭酸化反応を開始することもできるし、15分以上撹拌することでより繊維の膨潤を促してから炭酸化反応を開始することもできる。例えば、水酸化マグネシウムを含む水性懸濁液を反応容器内に噴射することによって炭酸マグネシウムを合成してもよい。後述するが、水酸化マグネシウムの水性懸濁液を反応容器内に噴射する際に、キャビテーション気泡を発生させ、その存在下で炭酸マグネシウムを合成することが好ましい態様である。
本発明においては、反応容器内にキャビテーション気泡を生じさせるような条件で液体を噴射してもよいし、キャビテーション気泡を生じさせないような条件で噴射してもよい。また、反応容器はいずれの場合においても圧力容器であることが好ましいが、開放系の反応容器を用いても問題はない。なお、圧力容器では、好ましい態様において、0.005MPa以上の圧力をかけることが可能である。キャビテーション気泡を生じさせないような条件の場合、圧力容器内の圧力は、静圧で0.005MPa以上0.9MPa以下であることが好ましい。
(キャビテーション気泡)
本発明に係る複合繊維を合成する場合、キャビテーション気泡の存在下で炭酸マグネシウムを析出させることができる。本発明においてキャビテーションとは、流体の流れの中で圧力差により短時間に泡の発生と消滅が起きる物理現象であり、空洞現象とも言われる。キャビテーションによって生じる気泡(キャビテーション気泡)は、流体の中で圧力がごく短時間だけ飽和蒸気圧より低くなったとき、液体中に存在する100ミクロン以下のごく微小な「気泡核」を核として生じる。
本発明においてキャビテーション気泡は、公知の方法によって反応容器内に発生させることができる。例えば、流体を高圧で噴射することによってキャビテーション気泡を発生させること、流体内で高速で攪拌することによってキャビテーションを発生させること、流体内で爆発を生じさせることによってキャビテーションを発生させること、超音波振動子によってキャビテーションを発生させること(バイブトラリー・キャビテーション)などが考えられる。
特に本発明においては、キャビテーション気泡の発生と制御が容易なため、流体を高圧で噴射することによってキャビテーション気泡を発生させることが好ましい。この態様では、ポンプなどを用いて噴射液体を圧縮し高速でノズルなどを介して噴射することによって、ノズル近傍での極めて高いせん断力と急激な減圧による液体自体の膨張と同時にキャビテーション気泡が発生する。流体噴流による方法は、キャビテーション気泡の発生効率が高く、より強力な崩壊衝撃力を持つキャビテーション気泡を発生させることができる。本発明においては、硫酸バリウムを合成する際に制御されたキャビテーション気泡を存在させるものであって、流体機械に自然発生的に生じる制御不能の害悪をもたらすキャビテーション気泡と明らかに異なる。
本発明においては、原料などの反応溶液をそのまま噴射液体として用いてキャビテーションを発生させることもできるし、反応容器内に何らかの流体を噴射してキャビテーション気泡を発生させることもできる。液体噴流が噴流をなす流体は、流動状態であれば液体、気体、粉体やパルプ等の固体の何れでもよく、またそれらの混合物であってもよい。更に必要であれば上記の流体に、新たな流体として、炭酸ガスなど、別の流体を加えることができる。上記流体と新たな流体は、均一に混合して噴射してもよいが、別個に噴射してもよい。
液体噴流とは、液体または液体の中に固体粒子や気体が分散あるいは混在する流体の噴流であり、パルプや無機粒子の原料スラリーや気泡を含む液体噴流のことをいう。ここで云う気体は、キャビテーションによる気泡を含んでいてもよい。
また、ノズルまたはオリフィス管を通じて噴射液を噴射してキャビテーションを発生させる際には、噴射液の圧力(上流側圧力)は0.01MPa以上30MPa以下であることが望ましく、0.7MPa以上20MPa以下であることが好ましく、2MPa以上15MPa以下がより好ましい。上流側圧力が0.01MPa未満では下流側圧力との間で圧力差を生じ難く作用効果は小さい。また、30MPaより高い場合、特殊なポンプ及び圧力容器を必要とし、消費エネルギーが大きくなることからコスト的に不利である。一方、容器内の圧力(下流側圧力)は静圧で0.005MPa以上0.9MPa以下が好ましい。
また、容器内の圧力と噴射液の圧力との比は0.001〜0.5の範囲が好ましい。
本発明において、キャビテーション気泡が発生しないような条件で噴射液を噴射して無機粒子を合成することもできる。具体的には、噴射液の圧力(上流側圧力)を2MPa以下、好ましくは1MPa以下とし、噴射液の圧力(下流側圧力)を開放し、0.05MPa以下とすることがより好ましい。
噴射液の噴流の速度は1m/秒以上200m/秒以下の範囲であることが望ましく、20m/秒以上100m/秒以下の範囲であることが好ましい。噴流の速度が1m/秒未満である場合、圧力低下が低く、キャビテーションが発生し難いため、その効果は弱い。一方、200m/秒より大きい場合、高圧を要し特別な装置が必要であり、コスト的に不利である。
本発明におけるキャビテーション発生場所は、炭酸マグネシウムを合成する反応容器内に発生させればよい。また、ワンパスで処理することも可能であるが、必要回数だけ循環することもできる。さらに複数の発生手段を用いて並列で、あるいは順列で処理することができる。
キャビテーションを発生させるための液体の噴射は、大気開放の容器の中でなされても良いが、キャビテーションをコントロールするために圧力容器の中でなされるのが好ましい。
液体噴射によってキャビテーションを発生させる場合、反応溶液の固形分濃度は30重量%以下であることが好ましく、20重量%以下がより好ましい。このような濃度であると、キャビテーション気泡を反応系に均一に作用させやすくなるためである。また、反応溶液である消石灰の水性懸濁液は、反応効率の点から、固形分濃度が0.1重量%以上であることが好ましい。
本発明において複合繊維を合成する場合、反応液のpHが反応の進行にしたがって変化するようであれば、反応液のpHをモニターすることによって反応を制御することができる。
本発明では、液体の噴射圧力を高めることで、噴射液の流速が増大し、これに伴って圧力が低下し、より強力なキャビテーションが発生させることができる。また、反応容器内の圧力を加圧することで、キャビテーション気泡が崩壊する領域の圧力が高くなり、気泡と周囲の圧力差が大きくなるため気泡は激しく崩壊し衝撃力を大きくすることができる。反応温度は0℃以上90℃以下であることが好ましく、特に10℃以上60℃以下であることが好ましい。一般には、融点と沸点の中間点で衝撃力が最大となると考えられることから、水性溶液の場合、50℃前後が好適であるが、それ以下の温度であっても、蒸気圧の影響を受けないため、上記の範囲であれば高い効果が得られる。
本発明においては、界面活性剤を添加することでキャビテーションを発生させるために必要なエネルギーを低減することができる。使用する界面活性剤としては、公知または新規の界面活性剤、例えば、脂肪酸塩、高級アルキル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、高級アルコール、アルキルフェノール、脂肪酸などのアルキレンオキシド付加物などの非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤などが挙げられる。これらの単一成分からなるものでも、2種以上の成分の混合物でも良い。添加量は噴射液及び/または被噴射液の表面張力を低下させるために必要な量であればよい。
複合繊維の成形物
本発明によって得られた複合繊維は、種々の形状で用いることができ、例えば、粉体、パルプ、ペレット、モールド、水性懸濁液、微小球形粒、ペースト、シート、糸、発泡体、またはその他の形状にして用いることができる。また、複合繊維を主成分として他の材料と共にモールドや粒子・ペレット、糸、発泡体などの成形体にすることもできる。乾燥して紛体にする場合の乾燥機についても特に制限はないが、例えば、気流乾燥機、バンド乾燥機、噴霧乾燥機などを好適に使用することができる。
本発明によって得られた複合繊維は、種々の用途に用いることができ、例えば、紙、繊維、セルロース系複合材料、フィルター材料、塗料、プラスチックやその他の樹脂、ゴム、エラストマー、セラミック、ガラス、タイヤ、建築材料(アスファルト、アスベスト、セメント、ボード、コンクリート、れんが、タイル、合板、繊維板など)、各種担体(触媒担体、医薬担体、農薬担体、微生物担体など)、吸着剤(不純物除去、消臭、除湿など)、しわ防止剤、粘土、研磨材、改質剤、補修材、断熱材、耐熱材、放熱材、防湿材、撥水材、耐水材、遮光材、シーラント、シールド材、防虫剤、接着剤、インキ、化粧料、医用材料、ペースト材料、変色防止剤、食品添加剤、錠剤賦形剤、分散剤、保形剤、保水剤、濾過助材、精油材、油処理剤、油改質剤、電波吸収材、絶縁材、遮音材、防振材、半導体封止材、放射線遮断材、化粧品、肥料、飼料、香料、塗料・接着剤用添加剤、難燃材料、衛生用品(使い捨ておむつ、生理用ナプキン、失禁者用パッド、母乳パッドなど)等のあらゆる用途に広く使用することができる。また、前記用途における各種充填剤、コーティング剤などに用いることができる。このうち、難燃材料が好ましい。
本発明の複合繊維は、製紙用途に適用してもよく、例えば、印刷用紙、新聞紙、インクジェット用紙、PPC用紙、クラフト紙、上質紙、コート紙、微塗工紙、包装紙、薄葉紙、色上質紙、キャストコート紙、ノンカーボン紙、ラベル用紙、感熱紙、各種ファンシーペーパー、水溶紙、剥離紙、工程紙、壁紙用原紙、不燃紙、難燃紙、積層板原紙、プリンテッドエレクトロニクス用紙、バッテリー用セパレータ、クッション紙、トレーシングペーパー、含浸紙、ODP用紙、建材用紙、化粧材用紙、封筒用紙、テープ用紙、熱交換用紙、化繊紙、減菌紙、耐水紙、耐油紙、耐熱紙、光触媒紙、化粧紙(脂取り紙など)、各種衛生紙(トイレットペーパー、ティッシュペーパー、ワイパー、おむつ、生理用品等)、たばこ用紙、板紙(ライナー、中芯原紙、白板紙など)、紙皿原紙、カップ原紙、ベーキング用紙、研磨紙、合成紙などが挙げられる。すなわち、本発明によれば、炭酸マグネシウム微粒子と繊維が複合化したものを得ることができるため、多くの炭酸マグネシウムを繊維に定着させることができる。一次粒子径の小さい炭酸マグネシウムを単に繊維に配合した場合と異なり、炭酸マグネシウムがシートに歩留り易いだけでなく、凝集せずに均一に分散したシートを得ることができる。この時、炭酸マグネシウムは繊維の外表面・ルーメンの内側に定着するだけでなく、ミクロフィブリルの内側にも生成させることができ、この様子は、電子顕微鏡観察によって確認することができる。
また、本発明によって得られる炭酸マグネシウム複合繊維を使用する際には、一般に無機填料及び有機填料と呼ばれる粒子や、各種繊維を併用することができる。例えば、無機填料として、炭酸カルシウム(軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム)、炭酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、クレー(カオリン、焼成カオリン、デラミカオリン)、タルク、酸化亜鉛、ステアリン酸亜鉛、二酸化チタン、ケイ酸ナトリウムと鉱酸から製造されるシリカ(ホワイトカーボン、シリカ/炭酸カルシウム複合物、シリカ/二酸化チタン複合物)、白土、ベントナイト、珪藻土、硫酸カルシウム、ゼオライト、脱墨工程から得られる灰分を再生して利用する無機填料および再生する過程でシリカや炭酸カルシウムと複合物を形成した無機填料などが挙げられる。炭酸カルシウム−シリカ複合物としては、炭酸カルシウムおよび/または軽質炭酸カルシウム−シリカ複合物以外に、ホワイトカーボンのような非晶質シリカを併用しても良い。有機填料としては、尿素−ホルマリン樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール樹脂、微小中空粒子、アクリルアミド複合物、木材由来の物質(微細繊維、ミクロフィブリル繊維、粉体ケナフ)、変性不溶化デンプン、未糊化デンプンなどが挙げられる。繊維としては、セルロースなどの天然繊維はもちろん、石油などの原料から人工的に合成される合成繊維、さらには、レーヨンやリヨセルなどの再生繊維(半合成繊維)、さらには無機繊維などを制限なく使用することができる。天然繊維としては上記の他にウールや絹糸やコラーゲン繊維等の蛋白系繊維、キチン・キトサン繊維やアルギン酸繊維等の複合糖鎖系繊維等が挙げられる。セルロース系の原料としては、パルプ繊維(木材パルプや非木材パルプ)、バクテリアセルロース、ホヤなどの動物由来セルロース、藻類などが例示され、木材パルプは、木材原料をパルプ化して製造すればよい。木材原料としては、針葉樹や広葉樹、これらの混合材が例示される。木材原料をパルプ化する方法は、特に限定されず、製紙業界で一般に用いられるパルプ化法が例示される。木材パルプはパルプ化法により分類でき、例えば、クラフト法、サルファイト法、ソーダ法、ポリサルファイド法等の方法により蒸解した化学パルプ;リファイナー、グラインダー等の機械力によってパルプ化して得られる機械パルプ;薬品による前処理の後、機械力によるパルプ化を行って得られるセミケミカルパルプ;古紙パルプ;脱墨パルプ等が挙げられる。木材パルプは、未晒(漂白前)の状態であってもよいし、晒(漂白後)の状態であってもよい。非木材由来のパルプとしては、綿、ヘンプ、サイザル麻、マニラ麻、亜麻、藁、竹、バガス、ケナフ、サトウキビ、トウモロコシ、稲わら、楮(こうぞ)、みつまた等が例示される。木材パルプ及び非木材パルプは、未叩解及び叩解のいずれでもよい。また、これらセルロース原料はさらに処理を施すことで粉末セルロース、酸化セルロースなどの化学変性セルロース、およびセルロースナノファイバー:CNF(ミクロフィブリル化セルロース:MFC、TEMPO酸化CNF、リン酸エステル化CNF、カルボキシメチル化CNF、機械粉砕CNF)として使用することもできる。合成繊維としてはポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、アクリル繊維、半合繊維としてはレーヨン、アセテートなどが挙げられ、無機繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、各種金属繊維などが挙げられる。以上について、これらは単独でも2種類以上の組み合わせで用いても構わない。
本発明に係る複合繊維を用いて、適宜、成形物(体)を製造することも可能である。例えば、本発明によって得られた複合繊維を含有させると、高灰分の製品を容易に得ることができる。特に、本発明によって得られた複合繊維をシート化すると、高灰分のシートを容易に得ることができる。シート製造に用いる抄紙機(抄造機)としては、例えば長網抄紙機、丸網抄紙機、ギャップフォーマ、ハイブリッドフォーマ、多層抄紙機、これらの機器の抄紙方式を組合せた公知の抄造機などが挙げられる。抄紙機におけるプレス線圧、後段でカレンダー処理を行う場合のカレンダー線圧は、いずれも操業性や複合繊維シートの性能に支障を来さない範囲内で定めることができる。また、形成されたシートに対して含浸や塗布により澱粉や各種ポリマー、顔料およびそれらの混合物を付与しても良い。
シート化の際には湿潤および/または乾燥紙力剤(紙力増強剤)を添加することができる。これにより、複合繊維シートの強度を向上させることができる。紙力剤としては例えば、尿素ホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ポリアミド、ポリアミン、エピクロロヒドリン樹脂、植物性ガム、ラテックス、ポリエチレンイミン、グリオキサール、ガム、マンノガラクタンポリエチレンイミン、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルアミン、ポリビニルアルコール等の樹脂;上記樹脂から選ばれる2種以上からなる複合ポリマー又は共重合ポリマー;澱粉及び加工澱粉;カルボキシメチルセルロース、グアーガム、尿素樹脂等が挙げられる。紙力剤の添加量は特に限定されない。
また、填料の繊維への定着を促したり、填料や繊維の歩留を向上させるために、高分子ポリマーや無機物を添加することもできる。例えば凝結剤として、ポリエチレンイミンおよび第三級および/または四級アンモニウム基を含む改質ポリエチレンイミン、ポリアルキレンイミン、ジシアンジアミドポリマー、ポリアミン、ポリアミン/エピクロヒドリン重合体、並びにジアルキルジアリル第四級アンモニウムモノマー、ジアルキルアミノアルキルアクリレート、ジアルキルアミノアルキルメタクリレート、ジアルキルアミノアルキルアクリルアミド及びジアルキルアミノアルキルメタクリルアミドとアクリルアミドの重合体、モノアミン類とエピハロヒドリンからなる重合体、ポリビニルアミン及びビニルアミン部を持つ重合体やこれらの混合物などのカチオン性のポリマーに加え、前記ポリマーの分子内にカルボキシル基やスルホン基などのアニオン基を共重合したカチオンリッチな両イオン性ポリマー、カチオン性ポリマーとアニオン性または両イオン性ポリマーとの混合物などを用いることができる。また歩留剤として、カチオン性またはアニオン性、両性ポリアクリルアミド系物質を用いることができる。また、これらに加えて少なくとも一種以上のカチオンやアニオン性のポリマーを併用する、いわゆるデュアルポリマーと呼ばれる歩留りシステムを適用することもでき、少なくとも一種類以上のアニオン性のベントナイトやコロイダルシリカ、ポリ珪酸、ポリ珪酸もしくはポリ珪酸塩ミクロゲルおよびこれらのアルミニウム改質物などの無機微粒子や、アクリルアミドが架橋重合したいわゆるマイクロポリマーといわれる粒径100μm以下の有機系の微粒子を一種以上併用する多成分歩留りシステムであってもよい。特に単独または組合せで使用するポリアクリルアミド系物質が、極限粘度法による重量平均分子量が200万ダルトン以上である場合、良好な歩留りを得ることができ、好ましくは、500万ダルトン以上であり、更に好ましくは1000万ダルトン以上3000万ダルトン未満の上記アクリルアミド系物質である場合に非常に高い歩留りを得ることが出来る。このポリアクリルアミド系物質の形態はエマルジョン型でも溶液型であっても構わない。この具体的な組成としては、該物質中にアクリルアミドモノマーユニットを構造単位として含むものであれば特に限定はないが、例えば、アクリル酸エステルの4級アンモニウム塩とアクリルアミドとの共重合物、あるいはアクリルアミドとアクリル酸エステルを共重合させた後、4級化したアンモニウム塩が挙げられる。該カチオン性ポリアクリルアミド系物質のカチオン電荷密度は特には限定されない。
その他、目的に応じて、濾水性向上剤、内添サイズ剤、pH調整剤、消泡剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤、嵩高剤、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、シリカなどの無機粒子(いわゆる填料)等が挙げられる。各添加材の使用量は特に限定されない。
シート化以外の成形法を用いることも可能であり、例えば、パルプモールドと呼ばれるように鋳型に原料を流し込んで吸引脱水・乾燥させる方法や、樹脂や金属などの成形物の表面に塗り広げて乾燥後、基材から剥離する方法などによって、種々の形状を有する成形物を得ることができる。また、樹脂を混ぜてプラスチック様に成形することもできるし、シリカやアルミナ等の鉱物を添加し、焼成することでセラミック様に成形することもできる。以上に示した配合・乾燥・成形において、1種類の複合繊維のみを用いることもできるし、2種類以上の複合繊維を混合して用いることもできる。2種類以上の複合繊維を用いる場合は、予めそれらを混合したものを用いることもできるし、それぞれを配合・乾燥・成形したものを後から混合することもできる。
また、複合繊維の成形物に後からポリマーなどの各種有機物や顔料などの各種無機物を付与しても良い。
以下に具体例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はかかる具体例に限定されるものではない。また、本明細書において特に記載しない限り、濃度や部などは重量基準であり、数値範囲はその端点を含むものとして記載される。なお、以下の実験において、特に記載しない限り、pHの測定は約25℃において行った。
実験1:炭酸マグネシウムとパルプ繊維の複合繊維の製造
以下に示す手順により、炭酸マグネシウムとパルプ繊維の複合繊維を合成した。水酸化マグネシウム700g(宇部マテリアルズ、UD653)とクラフトパルプ700g(LBKP/NBKP=8/2、カナダ標準フリーネス:370ml、平均繊維長:0.9mm)を水中に添加して水性懸濁液を準備した。
図1に示すように、この水性懸濁液35Lをキャビテーション装置(45L容)に入れ、反応溶液を循環させながら、反応容器中に炭酸ガスを吹き込んで炭酸ガス法によって炭酸マグネシウム微粒子と繊維との複合繊維を合成した。反応開始温度は約40℃、炭酸ガスは市販の液化ガスを供給源とし、炭酸ガスの吹き込み量は20L/minとした。反応液のpHが約7.8になった段階でCO2の導入を停止し(反応前のpHは10.3)、その後30分間、キャビテーションの発生と装置内でのスラリーの循環を続け、炭酸マグネシウム微粒子とパルプ繊維の複合繊維を得た(サンプルA)。
複合繊維の合成においては、反応溶液を循環させて反応容器内に噴射することよって、反応容器内にキャビテーション気泡を発生させた。具体的には、ノズル(ノズル径:1.5mm)を介して高圧で反応溶液を噴射してキャビテーション気泡を発生させたが、噴流速度は約70m/sであり、入口圧力(上流圧)は7MPa、出口圧力(下流圧)は0.3MPaだった。
電子顕微鏡を用いて複合繊維を観察したところ、うろこ状の炭酸マグネシウムの結晶がパルプ繊維の表面を覆っていることが確認できた(図2、無機粒子の平均一次粒子径:0.8μm)。得られた複合繊維について、繊維:無機粒子の重量比を測定したところ、50:50であった(灰分:50%)。重量比(灰分)は、ろ紙を用いて複合繊維スラリー(固形分換算で3g)を吸引濾過した後、残渣をオーブンで乾燥し(105℃、2時間)、さらに525℃で有機分を燃焼させ、燃焼前後の重量から算出した。
実験2:複合繊維の化学処理
(サンプル1、図3)
2AlCl3+3Mg2++6OH−→2Al(OH)3+3Mg2++6Cl-
塩化アルミニウム六水和物(和光純薬、0.9g、塩化アルミニウム換算で0.5g)を3%水溶液に調整した。実験1で得られた複合繊維のスラリー(濃度3.2%、固形分10g、pH:8.6)を室温下でスリーワンモーターにて700rpmで撹拌する中に、塩化アルミニウム水溶液をペリスターポンプにて2mL/minで滴下した(滴下終了時のpH:7.4)。全量の滴下が終了後、室温にて30分間撹拌を継続して熟成を行った。
この実験で得られたサンプル1を電子顕微鏡で観察したところ、炭酸マグネシウムの結晶の表面に針状の水酸化アルミニウムの結晶(長さ:約100nm、幅:約10nm)が定着している様子が観察された(図3)。水酸化アルミニウムと炭酸マグネシウムは結晶の形状から判別した。なお、電子顕微鏡に供するサンプルは、エタノールを用いた洗浄操作(約0.5gのサンプルを50mLのエタノールで希釈後、ろ紙を用いた吸引ろ過にて固液分離し、再度、残渣をさらに50mLのエタノールで希釈し、吸引ろ過にて固液分離する)を3回以上繰り返した後に行った。
(サンプル2)
用いる塩化アルミニウム六水和物の量を2.4g(塩化アルミニウム換算で1.3g)とした他は、サンプル1と同様にして実験を行った(滴下終了時のpH:7.2)。
(サンプル3)
塩化アルミニウム六水和物(和光純薬、9g、塩化アルミニウム換算で5g)の5%水溶液、および、水酸化ナトリウム(和光純薬)の5%水溶液を調製した。実験1で得られた複合繊維のスラリー(濃度3.2%、固形分10g)を室温下でスリーワンモーターにて700rpmで撹拌する中に、上記5%塩化アルミニウム水溶液をペリスターポンプにて2mL/minで滴下した。反応液のpHをモニターしながら、滴下中にpHが7を下回りそうになった際に、水酸化ナトリウム水溶液を1mLずつピペッターで添加した(添加した水酸化ナトリウムの固形分総量:1.8g、滴下終了時のpH:6.8)。塩化アルミニウム水溶液の全量の滴下が終了後、30分間撹拌して熟成し、炭酸マグネシウムの結晶表面に水酸化アルミニウムが析出したサンプルを製造した。
(サンプル4、図4)
Al2(SO4)3+3Mg2++6OH−→2Al(OH)3+3Mg2++3SO4 2-
塩化アルミニウム水溶液の代わりに硫酸アルミニウム溶液(工業用硫酸バンド、10倍希釈品16.7g、アルミナ換算で0.13g)を用いた他は、サンプル1と同様にして実験を行った(滴下終了時のpH:7.7)。
この実験で得られたサンプル4を電子顕微鏡で観察したところ、長さ約100nm、幅約10nmほどの針状の水酸化アルミニウムの結晶が炭酸マグネシウムの結晶の表面に定着している様子が観察された(図4)。
(サンプル5)
用いる硫酸アルミニウム溶液を5倍希釈品とし、液の総重量を29.2g(添加した硫酸アルミニウム総量はアルミナ換算で0.47g)した他は、サンプル4と同様にして実験を行った(滴下終了時のpH:7.0)。
(サンプル6)
塩化アルミニウム六水和物の代わりに硫酸アルミニウム溶液(硫酸バンドの3倍希釈品、188g、アルミナ換算で5g)を用いた他は、サンプル3と同様にして炭酸マグネシウムの結晶表面に水酸化アルミニウムを析出させた。なお、この実験で添加した水酸化ナトリウムの固形分総量は8.1gであった(滴下終了時のpH:6.8)。
(サンプル7、図5)
Al2(OH)3Cl3+3Mg2++3OH−→2Al(OH)3+3Mg2++3Cl-
塩化アルミニウム水溶液の代わりにポリ塩化アルミニウム溶液(PAC溶液、浅田化学100B、3倍希釈品、21.3g、アルミナ換算≧0.2g)を用いた他は、サンプル1と同様にして実験を行った(滴下終了時のpH:7.4)。
この実験で得られたサンプル7を電子顕微鏡で観察したところ、長さ約100nm、幅約10nmほどの針状の水酸化アルミニウムの結晶が炭酸マグネシウムの結晶の表面に定着している様子が観察された(図5)。
(サンプル8)
用いるポリ塩化アルミニウム溶液の重量を72.5g(アルミナ換算≧0.2g)とした他は、サンプル7と同様にして実験を行った(滴下終了時のpH:7.1)。
(サンプル9)
塩化アルミニウム六水和物の代わりにポリ塩化アルミニウム溶液(PAC、浅田化学100B、3倍希釈品、158g、アルミナ換算≧5g)を用いた他は、サンプル3と同様にして炭酸マグネシウムの結晶表面に水酸化アルミニウムを析出させた。なお、この実験で添加した水酸化ナトリウムの固形分総量は7.2gであった(滴下終了時のpH:6.9)。
(サンプル10、図6)
3Ba(OH)2+Al2(SO4)3→3BaSO4+2Al(OH)3
実験1で得られた複合繊維のスラリー(サンプルA、濃度3.2%、固形分10g)に水酸化バリウム八水和物(和光純薬、0.7g、水酸化バリウム換算0.5g)を添加した。このスラリーを室温下でスリーワンモーターにて700rpmで撹拌する中に、硫酸アルミニウム溶液(硫酸バンドの5倍希釈品、11.6g、アルミナ換算で0.19g)をペリスターポンプにて2mL/minで滴下した(滴下終了時のpH:7.9)。全量滴下終了後、30分間撹拌を継続して熟成を行い、サンプル10を得た。
この実験で得られたサンプルを電子顕微鏡で観察したところ、直径約10nmの粒子が炭酸マグネシウムの結晶の表面に定着している様子が観察された。上式で示すように、硫酸バリウムと水酸化アルミニウムの結晶が炭酸マグネシウムの表面に定着したものと考えられる。
(サンプル11、図7)
用いる水酸化バリウム八水和物の量を2.2g(水酸化バリウム換算1.5g)とし、硫酸バンドの総添加量を61.6g(アルミナ換算で1.0g)とした以外は、サンプル10と同様にして複合繊維を改質した(滴下終了時のpH:7.9)。
この実験で得られたサンプルを電子顕微鏡で観察したところ、直径約10nmの粒子が炭酸マグネシウムの結晶の表面に定着している様子が観察された。
(サンプル12)
実験1で得られた複合繊維のスラリー(濃度0.5%、固形分0.5g)にポリアクリル酸(和光純薬、分子量5000、0.05g)を添加した(添加後のpH:7.4)。このスラリーを室温下でスリーワンモーターにて700rpmで30秒間撹拌し、サンプル12を得た。
(サンプル13)
TEMPO酸化CNF(濃度1%、固形分0.02g、製造法は以下のとおり)を用いた以外は、サンプル12と同様にしてサンプル13を得た(添加後のpH:8.3)。
<TEMPO酸化CNFの製造> 粉末セルロース(日本製紙ケミカル製、粒径24μm)15g(絶乾)を、TEMPO(Sigma Aldrich社)78mg(0.5mmol)と臭化ナトリウム755mg(7mmol)を溶解した水溶液500mlに加え、粉末セルロースが均一に分散するまで攪拌した。反応系に次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素5%)50mlを添加した後、0.5N塩酸水溶液でpHを10.3に調整し、酸化反応を開始した。反応中は系内のpHは低下するが、0.5N水酸化ナトリウム水溶液を逐次添加し、pH10に調整した。2時間反応した後、遠心操作(6000rpm、30分、20℃)で酸化した粉末セルロースを分離し、十分に水洗することで酸化処理した粉末セルロースを得た。酸化処理した粉末セルロースの2%(w/v)スラリーをミキサーにより12,000rpm、15分処理し、さらに粉末セルローススラリーを超高圧ホモジナイザーにより140MPaの圧力で5回処理したところ、透明なゲル状分散液としてセルロースナノファイバー(CNF)が得られた。
<サンプル12および13のキレート状態の確認> 上記のようにして調整したサンプル12および13をそれぞれ100mLずつ取り、ブフナーを用いてマットとろ液に分離した(使用したろ紙:アドバンテック製、No.2)。得られたマットは、100mLの水道水に全量投入し、スリーワンモーターで600rpmの速度で1分間撹拌し、完全に離解した。離解後のマットスラリーと、ブフナーろ過で得られたろ液を、自動滴定装置(Mutek社製、PCD−03)を用い、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(DADMAC)でカチオン要求量を測定した。測定したカチオン要求量(アニオン性)から、下式に基づいて、各添加物の炭酸マグネシウム複合体への定着率を評価したところ、サンプル12の定着率は約20%、サンプル13の定着率は約92%だった。なお、ポリアクリル酸やCNF、原料の炭酸マグネシウム複合体については、サンプル12や13を調整する際に用いた濃度の水溶液のカチオン要求量を測定した。
定着率=[(添加物のカチオン要求量+炭酸マグネシウム複合体のカチオン要求量)−添加物を添加後の炭酸マグネシウム複合体マットのカチオン要求量]÷添加物のカチオン要求×100
(カチオン要求量)
・炭酸マグネシウム複合体:24(調製時スラリー)、26(マットスラリー)
・ポリアクリル酸:1029(調製時スラリー)
・CNF:290(調製時スラリー)
・炭酸マグネシウム複合体+ポリアクリル酸:845(マットスラリー)、10(ろ液)
・炭酸マグネシウム複合体+CNF:47(マットスラリー)、25(ろ液)
(サンプル14)塩酸(比較例)
塩化アルミニウム六水和物の代わりに塩酸水溶液(和光純薬、1M、22.0g、固形分0.8g)を用いた他は、サンプル1と同様にしてサンプル14を得た(添加後のpH:7.6)。
実験3:水への離解性評価
実験1および実験2で得られたそれぞれの複合繊維スラリーについて、ろ紙を用いて吸引濾過し、残渣をシートプレス機にて1MPaの圧力で2分間プレスして、直径約9cmの円形のウェットマットを作製した。
ウェットマットを8等分してから、8等分した3cm角のサンプルのすべてを水道水に投入し、水中に分散(離解)させてスラリーを調製した(サンプル1〜11/14:1.0重量%、サンプル12〜13:0.5重量%)。離解は、スリーワンモーターを用いて一定の速度(600rpm)で撹拌しながら実施した。
本実験においては、pHセンサーを用いて、離解開始(pH=約8)から離解120秒後までのスラリーpHを約25℃において測定した。
また、水への分散しやすさ(離解性)については、下記の基準により3段階で評価した。
・3点:未離解片が1〜2個以下しか認められない
・2点:未離解片が3〜6個認められる
・1点:未離解片が7個以上認められる、もしくは7mm以上の未離解片がある
結果を表に示すが、炭酸マグネシウムとパルプの複合繊維(サンプルA)を単に水に分散させた場合は、離解後のスラリーpHが約10まで上昇した。一般に炭酸マグネシウムは、下式のように、水中で溶解してスラリーのpHを上昇させるところ、サンプルAの複合繊維を水中に分散させると炭酸マグネシウムが水中に溶解し、スラリーのpHが上昇したものと考えられた。
MgCO3 + H2O → Mg2+ + CO2 +2OH−
それに対し、炭酸マグネシウムの表面に溶解しにくい水酸化アルミニウムや硫酸バリウムを析出させたサンプル1〜11は、水中に分散させた場合、離解後のpHの上昇が抑制されていた。また、サンプル12〜13も、離解したスラリーのpHが低く、炭酸マグネシウムとパルプの複合繊維にポリカルボン酸を添加することによって、炭酸マグネシウムの水への溶解が抑制されたものと考えられた。
また、サンプル1〜9を比較すると、アルミニウムイオンを多く添加すると、離解した際のpH上昇は抑えられるものの、水への分散しやすさが低下する傾向が見られた。アルミニウムイオンはパルプ繊維を結びつける効果があるため、過剰に添加すると複合繊維が水に分散しにくくなったものと考えられる。
一方、塩酸を単に添加したサンプル14は、離解後120秒後のスラリーpHが9.8と高く、離解したスラリーのpH上昇は抑制されなかった。
実験4:燃焼試験
一般に炭酸マグネシウムは難燃材として用いられることから、実験2のサンプルをマット状にしてから、その難燃性能を確認した。
具体的には、実験2で合成したサンプル3、6、9のスラリーをろ紙を用いて吸引濾過することによってウェットマットを作成し、ウェットマットをオーブンにて105℃で2時間以上乾燥させて、乾燥マットを得た。
・サンプル3のマット:坪量320g/m2(灰分:約40%、図8左)
・サンプル6のマット:坪量520g/m2(灰分:約54%、図8中央)
・サンプル9のマット:坪量390g/m2(灰分:約56%、図8右)
次いで、手持ちのガスバーナーを用いて燃焼試験を行った。具体的には、ガスバーナーの先端からマットまでの間を10cm離してガスバーナーを着火し、着火10秒後におけるマットの燃焼状態を目視で評価した。
燃焼試験後のサンプルの外観写真を図8に示すが、いずれのマットも炎の延焼が小さく、難燃性があることを確認できた。なお、クラフトパルプから抄紙した紙(坪量:約400g/m2)を同様の燃焼試験に供した場合、サンプルは完全に燃焼して、燃え尽きることになる。
実験5:抄紙機を用いたシート化
(複合繊維の改質)
実験1と同様にして合成した炭酸マグネシウム複合体をマシンチェスト(4m2)中で撹拌した(濃度3.5%、945L)。そこに工業用硫酸アルミニウム(硫酸バンド)5.3kgを、ペリスターポンプにて180g/minの早さで滴下することで、水酸化アルミニウムで表面修飾した炭酸マグネシウム複合体を得た(サンプル5−1)。
また、実験1と同様にして合成した炭酸マグネシウム複合体をマシンチェスト(4m2)中で撹拌した(濃度3.5%、855L)。そこに、ポリアクリル酸(硫酸バンド)1.5kgを投入して15分間撹拌することで、ポリアクリル酸で表面修飾した炭酸マグネシウム複合体を得た(サンプル5−2)。
(抄紙機を用いたシート化)
実験1の複合体と上記サンプルについて、濃度1%に希釈後、それぞれに対してND300(ハイモ社製)とFA230(ハイモ社製)を100ppmずつ添加して紙料を調製した。調整後のスラリーを、それぞれ長網抄紙機(抄速10m/min)を用いてシート化した。その際の白水(抄紙ワイヤーにてろ別されて出るろ液)のpHを測定したところ、未処理の複合体ではpHが9.1だったのに対し、サンプル5−1ではpHが8.4、サンプル5−2ではpHが8.3であった。
以上より、水酸化アルミニウムもしくはポリアクリル酸で表面を修飾することで、炭酸マグネシウムを抄紙する際の白水pHの上昇を抑えられることが確認できた。