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JP2018145540A - 炭素繊維束の製造方法 - Google Patents

炭素繊維束の製造方法 Download PDF

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JP2018145540A
JP2018145540A JP2017039012A JP2017039012A JP2018145540A JP 2018145540 A JP2018145540 A JP 2018145540A JP 2017039012 A JP2017039012 A JP 2017039012A JP 2017039012 A JP2017039012 A JP 2017039012A JP 2018145540 A JP2018145540 A JP 2018145540A
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carbon fiber
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dtex
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洋之 中尾
Hiroyuki Nakao
洋之 中尾
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Mitsubishi Chemical Corp
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Mitsubishi Chemical Corp
Mitsubishi Chemicals Holdings Corp
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Abstract

【課題】単繊維繊度が大きくても内部まで均一に耐炎化された耐炎化繊維束を得る、さらに炭素化工程で分解することなく、樹脂含浸性に優れた高品質な炭素繊維を製造する方法を提供する。【解決手段】下記(1)〜(3)を満足する方法。(1)耐炎化繊維の密度が1.37g/cm3以上である。(2)耐炎化繊維の断面二重構造の内層の面積が単繊維繊度1dtexに対して18μm2以下である。(3)前炭素化処理において、500℃〜900℃の不活性雰囲気中を通過する時間が、耐炎化繊維束の単繊維繊度1dtexに対して20秒以上である。【選択図】なし

Description

本発明は、炭素繊維束の製造方法に関する。
従来、炭素繊維前駆体アクリル繊維束(以下、「PAN系前駆体繊維束」と称することがある)は、次のような工程を経て炭素繊維束に変換される。まず、耐炎化工程によりPAN系前駆体繊維束を200〜300℃の酸化性雰囲気中で耐炎化熱処理し、得られた耐炎化繊維束を、炭素化工程において300℃以上の不活性雰囲気中で炭素化して、炭素繊維束を得る。
耐炎化工程および炭素化工程は、炭素繊維の性能および生産性を左右する重要な工程である。耐炎化工程では、PAN系前駆体繊維を構成する高分子鎖を酸化させると共に高分子鎖に結合したニトリル基を環化させることにより、引き続く炭素化工程を通過しうる程度に熱的に安定な構造を有する繊維に転換させることができる。そして、炭素化工程では、更に高温の不活性雰囲気中でグラファイト結晶の構造形成を促進させることによって、高い強度及び弾性率を有する炭素繊維を得ることができる。
最近特に注目されているのが金属よりも高強度で且つ軽い炭素繊維束を熱硬化性樹脂と複合化させた炭素繊維強化樹脂CFRP(carbon fiber reinforced plastics)である。複合化させた材料でも金属と同等以上の強度を有し密度が小さい為、航空用途や自動車用途で利用されている。しかし、熱硬化させる時間が必要となる上、成形した後は形が変わらないため、近年では熱可塑性樹脂をマトリクスとする炭素繊維強化熱可塑性樹脂CFRTP(carbon fiber reinforced thermoplastics)に対する需要が高まっている。
熱硬化性樹脂をマトリクスとする場合、硬化前の樹脂組成物を炭素繊維束を含浸させるため含浸性に対しては比較的、問題視されていなかった。しかし、熱可塑性樹脂の粘度は非常に高いため含浸しにくい。炭素繊維と樹脂との含浸性については、単繊維繊度が大きい炭素繊維のほうが単繊維間の隙間が大きくなるという観点から有利であるが、単繊維繊度が大きくなると耐炎化工程において繊維内への酸素の拡散が追いつかず繊維の表面層のみが耐炎化された断面二重構造を形成するようになる。このような構造を有する耐炎化繊維は炭素化工程で糸切れなどのトラブルを発生しやすく、安定にかつ十分な性能を有する炭素繊維を製造することは困難である。
これらの問題を解決するため、例えば、特許文献1には高速焼成において耐炎化繊維の断面二重構造が抑制され、高品質な炭素繊維束を効率良く生産することが出来る技術する技術が開示されている。
特許文献2には、高温加熱体への接触により効率よく耐炎化繊維束を提供出来る技術が開示されている。
特許文献3には、耐炎化繊維および炭素繊維前駆体であるアクリル繊維を短時間に耐炎化でき、高品質な炭素繊維を得るのに最適な耐炎化繊維の製造方法が開示されている。
WO2012/50171 特開2014−125700号公報 特開平10−251923号公報
しかしながら上記の各特許文献に記載の発明は以下の課題を有するものであった。
特許文献1の技術では、単繊維繊度の大きい炭素繊維前駆体繊維束の場合、長大な時間を掛けて熱処理を施しても繊維内部への酸素の拡散が追いつかず表面層のみが耐炎化されてしまい、内部まで耐炎化反応が進行せず断面二重構造が顕著になるという問題があった。
特許文献2に記載された技術では、炭素繊維前駆体繊維束と加熱体への接触の際、繊維内部への酸素の拡散が追いつかないまま表面層のみが耐炎化され、得られた耐炎化繊維束で炭素化処理を行なうと毛羽が多く発生し、炭素繊維束の製造に適した耐炎化繊維束の製造方法とは言い難いものであった。
特許文献3に記載された技術では、耐炎化の進行状況が均一な耐炎化繊維が得られる一方、単繊維繊度の大きな炭素繊維前駆体繊維については内部まで耐炎化されず、耐炎化処理工程の後工程である前炭素化工程及び炭素化工程において重合体の急激な分解反応が起こる問題がある。
上記課題を解決するために、本発明者らは鋭意検討を行い、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、単繊維繊度が大きくても、経済的な耐炎化熱処理条件で処理して高品質な炭素繊維束を得ることができる炭素繊維束の製造方法を提供することを目的とする。
[1] 単繊維繊度が4dtex以上である炭素繊維前駆体アクリル繊維束を200℃〜
300℃の酸性化雰囲気中を通過させて耐炎化繊維束を得る耐炎化処理、得られ
た耐炎化繊維束を最高温度が500℃〜900℃の不活性雰囲気中を通過させて
熱処理する前炭素化処理、及び、得られた前炭素化処理繊維束を最高温度が
1200℃〜2500℃の不活性雰囲気中を通過させて熱処理する炭素化処理を
順に行い密度1.7〜2.0g/cm、単繊維繊度2.4〜5dtexとなる
炭素繊維束を得る炭素繊維束の製造方法であって、下記1)〜3)を満たす、
炭素繊維束の製造方法。
1)前記耐炎化繊維束の繊維の密度が1.37g/cm以上である。
2)前記耐炎化繊維束の下記の方法で測定される平均内層面積が、耐炎化繊維束の単繊
維繊度1dtexに対して18μm以下である。
<耐炎化繊維束の内層面積の測定方法>
耐炎化繊維束を透明樹脂に包埋し繊維軸方向に対し垂直に切断して研磨し落射蛍光顕微鏡を用い観察して、500倍に拡大して写真を撮影し、画像解析ソフトにて、二値化処理を施した後、蛍光発色部分面積を測定して、耐炎化繊維1本当たりの内層面積を得る。
3)前記前炭素化処理において、500℃〜900℃の不活性雰囲気中を通過する時間
が、耐炎化繊維束の単繊維繊度1dtexに対して20秒以上である。
[2] 前記炭素繊維束が、下記の測定方法で測定した含浸深さが0.12mm以上と
なる炭素繊維束である、[1]に記載の炭素繊維束の製造方法。
<含浸深さの測定方法>
1)200℃にて溶融粘度300Pa・sとなる50mm×50mmの正方形、厚さ
120μmのポリプロピレンフィルムを表面温度が200℃になるようにホット
ステージで加熱した、100mm×100mmの正方形、厚さ5mm鉄板上に置き
溶融させる。
2)総繊度が24,000dtex以上となるように調整した炭素繊維束を前記の溶融し
たPPフィルムの上に幅50mmとなるよう均一に広げて置き、予め200℃に加熱
した50mm×50mmの正方形、厚さ5mmの鉄板を載せて直ぐに0.2MPaで
60秒間圧縮して、試料を取り出して冷却する。
3)作成した試料を樹脂に包埋し、切断研磨して、光学顕微鏡にて、ポリプロピレンが
炭素繊維束に含浸した厚みを含浸深さとして測定する。
本発明によると、単繊維繊度が大きくても単繊維の内部まで均一に耐炎化された耐炎化繊維が炭素化工程で分解することなく炭素化されるので、樹脂含浸性に優れた高品質な炭素繊維からなる炭素繊維束を得ることが可能となる。
以下に本発明の詳細な説明を示す。
(炭素繊維前駆体アクリル繊維束)
本発明の炭素繊維束の製造に用いるPAN系前駆体繊維束の紡糸原液に用いるポリアクリロニトリル系重合体には、アクリロニトリル単位が90重量%以上、好ましくは96%重量以上を含むものが良い。
紡糸原液に用いるポリアクリロニトリル系重合体には、共重合成分、分子量分布、立体規則性などに制約は無く、炭素繊維となすための耐炎化処理を促進させるために、共重合成分として耐炎化促進作用を有する単量体を0.1〜5モル%共重合させるのが良い。耐炎化促進成分としては、ヒドロキシルアルキル基、カルボキシル基、アミド基を一つ以上有するものが好ましく用いられる。また耐炎化促進作用が高くなるほど、短時間で耐炎化処理でき、生産性を高めることが出来ることから耐炎化促進成分の共重合量を多くすることが望ましい。しかし一方で、該共重合量が多くなるほど、発熱速度が大きくなり暴走反応の危険が生じることがあるため、5モル%を超えない範囲とすることが望ましく、0.5〜3モル%がより好ましく、1〜3モル%とすることがさらに好ましい。
耐炎化促進作用を有する単量体の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、シトラコン酸、エタクリル酸、マレイン酸、メサコン酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸4−ヒドロキシブチル、メタクリル酸モノグリセリルなどが好ましく用いられる。焼成工程での耐炎化促進や溶媒に対する溶解性の向上の観点から、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリルアミド、メタクリルアミドなどがより好ましく用いられる。
紡糸原液に用いるポリアクリロニトリル系重合体を製造するには、溶液重合、懸濁重合等公知の重合方法の何れでも用いることが出来る。溶液重合を採用する場合、使用する溶媒としては、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)などのポリアクリロニトリル系重合体が可溶な溶媒を用いる。中でもポリアクリロニトリル系重合体の溶解性の観点から、DMAcがより好ましく用いられる。
(紡糸)
本発明に用いる炭素繊維前駆体アクリル繊維束の製造には、前記した紡糸原液を、湿式紡糸法または乾湿式紡糸法により口金から紡出し、凝固浴に導入して繊維を凝固せしめる。工業的な観点では、生産性に優れた湿式紡糸法が好ましい。
前記凝固浴には、紡糸原液に用いられる用材を含む水溶液が好適に使用され、含まれる溶剤の濃度を調節して、凝固糸の空隙率を少なくするように設定する。使用する溶剤によって異なるが、例えばDMAcを使用する場合は、DMAcの濃度は50〜80重量%、好ましくは60〜75重量%である。また凝固浴の温度は低い方が好ましく、通常50℃以下、さらに好ましくは40℃以下である。凝固浴の温度を低くすればより緻密な凝固糸を得ることが出来るが、温度を下げすぎると凝固糸の引取速度が低下し生産性が低下するので、適切な範囲に設定することが望ましい。
上記で得られた凝固糸を洗浄、延伸工程において洗浄及び延伸する。なお、洗浄と延伸の順番については、洗浄を先に行っても良く、また同時に行っても良い。洗浄の方法としては、特に制限はないが、一般的に用いられている、水中、特に温水中に浸漬する方法がよい。
延伸の方法としては、水中または温水中に浸漬して延伸する方法、熱板または加熱ローラー等を用いた乾熱延伸法、また熱風が循環している箱型炉内での延伸でも良く、これらに限定されるものではない。経済的な観点から、温水中で行うことが好ましい。また延伸倍率は、1〜8倍とすることが好ましい。ただし、後に二次延伸を行う場合、その延伸倍率を考慮して設定することが好ましい。
本発明に用いる炭素繊維前駆体アクリル繊維束の製造方法では、油剤付与工程において上記で得られた洗浄及び延伸後の糸条を、シリコーン系油剤が入った油浴槽に導いて、糸条にシリコーン系油剤を付与する。油剤としては、シリコーン化合物を含有するシリコーン系油剤を使用する。かかるシリコーン油剤はジメチルシリコーンオイルや有機変性シリコーンオイルを用いることが好ましく、耐熱性の高いアミノ変性シリコーンオイルがより好ましい。通常は、油浴槽液としてシリコーン化合物とノニオン系乳化剤とを混合し、乳化したものを用いる。また、場合により、酸化防止剤や各種添加剤、さらにシリコーン原子を含まない有機物を混合することもできる。
更に、本発明に用いる炭素繊維前駆体アクリル繊維束の製造方法では、乾燥緻密化において上記で得られたシリコーン系油剤を付与した糸条を乾燥緻密化することが好ましい。乾燥緻密化の方法としては、熱板や加熱ローラーに接触させることにより行うことが一般的に用いられており、加熱ローラーによる乾燥が好ましく用いられる。乾燥温度が高いほど、シリコーン油剤の架橋反応が促進され、また生産性の観点からも好ましいので、アクリル繊維の単繊維間の融着が生じない範囲で高く設定できる。具体的には150℃以上が好ましく、180℃以上であればさらに好ましい。また乾燥時間は上記糸条が十分乾燥する時間をとることが好ましい。
必要に応じて、上記で得られた乾燥緻密化後の糸条を二次延伸することもできる。二次延伸の方法としては、乾熱延伸、スチーム延伸等が挙げられる。
本発明に用いる炭素繊維前駆体アクリル繊維束の単繊維繊度は2.4dtex以上が好ましく、4dtex以上がさらに好ましい。また単繊維繊度は10dtex以下が好ましく、8tex以下がさらに好ましい。PAN系前駆体繊維束のフィラメント数としては、好ましくは1,000〜100,000、より好ましくは3,000〜30,000であるのが良い。PAN系前駆体繊維束の単繊維繊度が4dtex以上であれば、PAN系前駆体繊維束内部において単繊維同士がからみ合い難く、得られた炭素繊維束の広がり性を保持でき、良好な樹脂含浸性を得ることが出来る。一方、PAN系前駆体繊維束の単繊維繊度が10dtex以下であれば、耐炎化工程において断面二重構造が顕著とならず、均一な品質の炭素繊維束を安定に生産できる。
(耐炎化)
耐炎化工程では、酸化性雰囲気下で炭素繊維前駆体アクリル繊維束を熱処理するが、この際、炭素繊維前駆体アクリル繊維束は酸化されて発熱する。この反応熱が繊維束内部に蓄熱して繊維束が溶融したり発火したりしないような条件で処理する必要がある。
(雰囲気加熱方式による耐炎化処理)
雰囲気加熱方式で耐炎化処理を行なう装置としては、加熱した酸化性ガスを循環させる方式の熱風循環炉が好適に採用できる。通常、熱風循環炉では、炉に入った繊維束を一旦炉の外部に出した後、炉の外部に配設された折り返しロールによって折り返して炉に繰り返し通過させる方法が採られる。
酸化性雰囲気は、空気、酸素、二酸化窒素など公知の酸化性雰囲気を採用できるが、経済性の面から空気が好ましい。
雰囲気加熱方式においては、伝熱効率が低く、反応熱が繊維束内部に蓄熱しやすいため、比較的低温で長時間の酸化処理を行なう必要がある。長時間の酸化処理を行なうため均一に処理を行なうことができる利点がある。
耐炎化反応の進行度を示す一つの指標として耐炎化繊維の密度がある。耐炎化繊維の密度が高くなるほど発熱反応は低減し、また、耐熱性も向上する。
雰囲気加熱としては、雰囲気加熱した後の繊維(耐炎化繊維)の密度が、好ましくは1.35〜1.43g/cm、より好ましくは1.37〜1.43g/cmになるまで90分以上加熱するのが良い。雰囲気加熱して得た耐炎化繊維の密度が1.37g/cmより低いと、炭素化工程通過時に分解反応を起こしやすくなる。
耐炎化工程への前駆体繊維束を並べて投入する場合の投入密度は、高いほど生産性の面では好ましいが、大きくなると後述する雰囲気加熱処理中に発熱反応により繊維束の温度が高くなり分解反応が急激に起こり、繊維束が切断するため、前駆体繊維束を並べた幅当たりの繊度で表して1500〜5000dtex/mmが好ましく、2000〜4000dtex/mmがより好ましい。
(断面二重構造の内層面積)
耐炎化繊維束の単繊維の断面二重構造の黒化されていない内層の面積は単繊維繊度1dtexあたり18μm以下であることが好ましい。但し、耐炎化繊維束の断面二重構造の内層の面積は下記の方法で求められる。
1)耐炎化繊維束をリファインテック社製エポキシ樹脂エポマウント27−771に包埋し、室温下で24時間放置し、硬化した後、繊維軸方向に対し垂直に繊維断面が観察できるよう切断する。
2)切断面を#120〜1200のサンドペーパーで予備研磨した後、研磨布に笠井商工社製アルミナ懸濁液(0.3μm径)を含ませて約10分間研磨する。
3)得られた試料を(株)ニコン社製落射蛍光顕微鏡を用い観察する。酸化反応の進んだ部分は黒く、酸化反応の進んでいない部分は蛍光を発して明るく見える。これを500倍に拡大して写真を撮影する。
4)この写真を(株)ニコン社製画像解析ソフトNIS−Elementsにて、二値化処理を施した後、繊維断面積に蛍光発色部分の比率を算出し、断面二重構造の内層の面積を求める。内層の面積の解析は、1枚当たり100本の耐炎化繊維の断面が撮影された画像を20枚用いて行なう。
上記に示す耐炎化繊維束の断面二重構造の内層の面積は、雰囲気加熱における耐炎化反応が進行すればするほど小さくなる。同じ雰囲気条件、耐炎化時間で熱処理したとしても、単繊維繊度が大きくなるほど内層の面積は増加する。
断面二重構造の内層の面積が単繊維繊度1dtexあたり18μm以下ということは、各単繊維の表面から耐炎化反応が芯に近いところまで進行していることを示しており、耐炎化処理工程の後工程である前炭素化工程及び炭素化工程において重合体の分解反応に伴う急激なガス発生が抑えられる。耐炎化反応が不十分な単繊維が耐炎化繊維束中に存在すると、それが前炭素化工程又は炭素化工程で切断し、炭素繊維束の毛羽となる。断面二重構造の内層の面積が耐炎化繊維の単繊維繊度1dtexあたり18μm以下であれば、前炭素化工程及び炭素化工程における工程通過性に優れ、得られる炭素繊維束は毛羽が少なくなる。
(前炭素化処理)
前炭素化処理では、耐炎化処理された耐炎化繊維束を第1の炭素化炉に投入して前炭素化処理する。第1の炭素化炉内には、温度が300〜800℃の不活性雰囲気となっており、耐炎化繊維束は該不活性雰囲気中を走行する間に前炭素化処理される。なお、第1の炭素化炉内の不活性雰囲気の流れは、走行する被処理繊維に対して平行方向でも、垂直方向でもよく、特に限定されない。不活性雰囲気としては、窒素、アルゴン、ヘリウムなど公知の不活性雰囲気を採用できるが、経済性の面から窒素が望ましい。前炭素化処理時間としては、耐炎化繊維束の単繊維繊度1dtexに対して20秒以上であることで、単繊維繊度の大きい耐炎化繊維であっても、続く炭素化処理中に重合体の分解反応に伴う急激なガス発生が抑えられ、高品質な炭素繊維を得ることができる。
(炭素化処理)
炭素化処理では、前炭素化処理された耐炎化繊維束(前炭素化繊維束)を第2の炭素化炉に投入して炭素化処理する。第2の炭素化炉内には、最高温度が1000〜2500℃の不活性雰囲気となっており、前炭素化処理された繊維束は該不活性雰囲気中を走行する間に炭素化処理される。炭素化処理時間としては、炭素繊維の生産性及び炭素繊維の強度発現性の観点から0.6〜3分間であることが好ましい。なお、第2の炭素化炉内の不活性雰囲気の流れは、走行する被処理繊維に対して平行方向でも、垂直方向でもよく、特に限定されない。不活性雰囲気としては、先に例示した公知の不活性雰囲気の中から選択して用いることができるが、経済性の面から窒素が望ましい。
(表面処理)
本発明の炭素繊維の製造方法により得られた炭素繊維を、電解液を用いた電解酸化表面処理することが好ましい。電解質としては、硫酸、硝酸、リン酸、ホウ酸、炭酸などの無機酸、酢酸酪酸、シュウ酸、マレイン酸等の有機酸およびこれらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩等の単独または2種以上の混合物を用いることができる。炭素化後の炭素繊維表面には焼成過程で焼結付着したタール成分が付着あるいはグラファイト結晶間のミクロボイドに沈積しており、電解液槽に浸漬し表面処理を行うことにより、炭素繊維表面から脱落する。ここで、電解酸化処理に要する電気量は、適用する炭素繊維束より適宜選択することができる。かかる電解酸化処理により、複合材料における炭素繊維とマトリックス樹脂との接着性を適正化でき、優れた強度特性が発現されるようになる。表面処理の後、得られる炭素繊維に集束性を付与するため、サイジング処理をすることもできる。サイジング剤には、複合材料のマトリクス樹脂との相溶性の良いサイジング剤を、使用するマトリクス樹脂の種類に応じて適宜選択することができる。
(炭素繊維束)
本発明の製造方法により、単繊維繊度が2.4dtex以上5dtex以下、単繊維の平均密度が1.7g/cm以上2g/cm以下の炭素繊維からなる炭素繊維束が得られる。本発明では、PAN系前駆体繊維束を構成する単繊維の断面形状と、炭素繊維束を構成する単繊維の断面形状とは一定程度に相似している。
本発明の製造方法によれば、単繊維の繊度が大きくなっても炭素化工程で分解が少なく、高品質な炭素繊維を得ることが出来る。また、炭素繊維束を圧縮した時の炭素繊維の単繊維の変形が少なく、単繊維間の隙間が保たれるので良好な樹脂含浸性(大きな含浸深さ)を有した炭素繊維束を得ることが出来る。
(成形)
こうして得られた炭素繊維束は、熱硬化樹脂または熱可塑性樹脂を含浸させ、プリプレグ化したのち複合材料に成形することもできる。また、織物などのプリフォームとした後、ハンドレイアップ法、プルトルージョン法、レジントランスファーモールディング法などにより複合材料に成形することもできる。また、フィラメントワインディング法や、チョップドファイバーやミルドファイバー化した後、射出成形することにより複合材料に成形することができる。
本発明の炭素繊維束は熱可塑樹脂の含浸が容易で大きな含浸深さを示す。単繊維の断面が大きく、繊維束がまた横圧縮による変形を起こしにくい特徴を有するため、粘度が高く含浸しにくい熱可塑性樹脂の含浸もごく短時間で進行する。熱可塑樹脂の含浸し易さの指標である含浸深さ下記方法で求められる。
1)200℃にて溶融粘度300Pa・sとなる50mm×50mmの正方形、厚さ
120μmのポリプロピレンフィルムを表面温度が200℃になるようにホット
ステージで加熱した、100mm×100mmの正方形、厚さ5mm鉄板上に置き
溶融させる。
2)総繊度が24,000dtex以上になるように調整した炭素繊維束を前記の溶融し
たPPフィルムの上に幅50mmとなるよう均一に広げて置き、予め200℃に加熱
した50mm×50mmの正方形、厚さ5mmの鉄板を載せて直ぐに0.2MPaで
60秒間圧縮して、試料を取り出して冷却する。
3)作成した試料を樹脂に包埋し、切断研磨して、光学顕微鏡にて、ポリプロピレンが
炭素繊維束に含浸した厚みとして含浸深さを測定する。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。本実施例においては、各種特性を次のようにして測定した。
<PAN系前駆体繊維束及び炭素繊維束の総繊度の測定>
PAN系前駆体繊維束及び炭素繊維束の総繊度は、JIS R 7605に準拠して測定した。
<PAN系前駆体繊維束及び炭素繊維束の単繊維繊度の測定>
単繊維繊度とは、繊維1本の10000m当りの質量(g)である。連続した繊維束から長さ1mの繊維束を2本切り出し、各々の質量(g)を測定し、各々の質量を繊維束のフィラメント数(すなわち口金の孔数)で除した後、10000倍して得られた2つの値の平均値を「単繊維繊度」とした。
<耐炎化繊維及び炭素繊維の密度の測定>
耐炎化繊維及び炭素繊維の密度は、JIS R 7603に準拠して測定した。
<耐炎化工程への投入密度の測定>
耐炎化工程への投入密度は、下記式より求めた。
耐炎化工程への投入密度(dtex/mm)=投入した前駆体繊維束の総繊度/前駆体繊維束の全体の幅
<耐炎化繊維束の断面二重構造の内層の面積>
耐炎化繊維束の断面二重構造の内層の面積は下記の方法で求めた。
1)耐炎化繊維束をリファインテック社製エポキシ樹脂 エポマウント27−771に
包埋し、室温下で24時間放置し、硬化した後、繊維軸方向に対し垂直に繊維断面が
観察できるよう切断する。
2)切断面を#120〜1200のサンドペーパーで予備研磨した後、研磨布に笠井商工
社製アルミナ懸濁液(0.3μm径)を含ませて約10分間研磨する。
3)得られた試料を(株)ニコン社製落射蛍光顕微鏡を用い観察する。酸化反応の進んだ
部分は黒く、酸化反応の進んでいない部分は蛍光を発して明るく見える。これを
500倍に拡大して写真を撮影する。
4)この写真を(株)ニコン社製画像解析ソフトNIS−Elementsにて、二値化
処理を施した後、繊維断面積に蛍光発色部分の比率を算出し、断面二重構造の内層の
面積を求める。内層の面積の解析は、1枚当たり100本の耐炎化繊維の断面が撮影
された画像を20枚用いて行なう。
<樹脂含浸深さ>
炭素繊維束の樹脂含浸深さは下記測定方法で求めた。
1)200℃にて溶融粘度300Pa・sとなる50mm×50mmの正方形、厚さ
120μmのポリプロピレンフィルムを表面温度が200℃になるようにホット
ステージで加熱した、100mm×100mmの正方形、厚さ5mm鉄板上に置き
溶融させた。
2)総繊度が24,000dtex以上となる総繊度に合わせた炭素繊維束を前記の溶融
したPPフィルムの上に幅50mmとなるよう均一に広げて置き、予め200℃に
加熱した50mm×50mmの正方形、厚さ5mmの鉄板を載せて直ぐに
0.2MPaで60秒間圧縮して、試料を取り出して冷却した。
3)作成した試料を樹脂に包埋し、切断研磨して、光学顕微鏡にて、ポリプロピレンが
炭素繊維束に含浸した厚みとして含浸深さを測定した。
「実施例1」
アクリロニトリル単位98.7%、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルからなるアクリロニトリル系重合体(カルボン酸基の量は7.0×10−5当量、極限粘度〔η〕は1.7)を、ポリアクリロニトリル系重合体の総固形分濃度が21.2重量%となるようDMAcに溶解し、炭素繊維前駆体アクリル繊維の紡糸原液を得た。次いで、温度38℃、濃度68%のDMAc水溶液(凝固浴)に孔数3000の紡糸口金から吐出して湿式紡糸法により、凝固糸とした。ついで、凝固糸を60℃から98℃の温水中で脱溶媒しながら、7倍に延伸した。延伸糸をアミノシリコン系油剤1%水溶液中に浸漬した後、180℃の加熱ローラーにて乾燥緻密化し、炭素繊維前駆体アクリル繊維を得た。このPAN系前駆体繊維束の単繊維繊度は、4.0dtex、フィラメント数は3000、総繊度は12000dtex、繊維密度は1.18g/cmであった。
得られたPAN系前駆体繊維束を空気中250〜290℃で1.0cN/dtexの緊張下に90分間加熱し密度1.41g/cmの耐炎化繊維束に転換した。
この耐炎化繊維束の断面二重構造の内層の面積は単繊維繊度1dtexあたり14.4μmであった。
この耐炎化繊維束を窒素雰囲気中、最高温度が700℃で張力が0.1cN/dtexの緊張下に耐炎化繊維の単繊維繊度1dtexあたり22.5秒、合計90秒間加熱し前炭素化繊維束とした。この前炭素化処理での400〜500℃での昇温速度は200℃/分であった。
得られた前炭素化繊維束を窒素雰囲気中、最高温度が1350℃で0.1cN/dtexの緊張下に1分間加熱し炭素繊維束とした。この炭素化処理での1000〜1200℃での昇温速度は400℃/分であった。
得られた炭素繊維束を表面処理後、サイジング剤を付与した。耐炎化工程から炭素化工程の伸長率は、−3.8%であった。この炭素繊維束の単繊維繊度は、2.43dtex、フィラメント数は3000、総繊度7290dtex、繊維密度は1.79g/cmであった。またこの炭素繊維束の含浸深さは0.12mmであった。
「実施例2〜4」
炭素繊維前駆体アクリル繊維の実施例2〜4、比較例1〜6については、表1で示した処理条件にて耐炎化熱処理を行った。得られた耐炎化繊維束を実施例1と同じ条件で前炭素化処理、炭素化処理、表面処理、サイジング処理を行い、炭素繊維束とした。
実施例2〜4で得られた炭素繊維密度1.7g/cm以上密度2.0g/cm以下、単繊度2.4dtex以上であり、ストランド引張弾性率は240GPa以上、ストランド引張強度は3.5GPa以上を示した。また熱可塑樹脂の含浸深さは0.12mm以上と、良好な樹脂含浸性を示した。
「比較例1」
実施例1と同じく単繊維繊度4.0dtex、総繊度12000dtexの炭素繊維前駆体繊維束を用い、50分の耐炎化処理を行い、密度1.41g/cmの耐炎化繊維束に転換した。この耐炎化繊維束の断面二重構造の内層の面積は単繊維繊度1dtexあたり20.2μmであった。
その後実施例1と同じ条件で炭素化を行ったが、炭素化工程で重合体の分解反応に伴う急激なガス発生が起き、炭素化工程を通過しなかった。
「比較例2」
実施例1と同じく単繊維繊度4.0dtex、総繊度12000dtexの炭素繊維前駆体アクリル繊維束を用い、90分の耐炎化処理を行い、密度1.35g/cmの耐炎化繊維束に転換した。この耐炎化繊維束の断面二重構造の内層の面積は単繊維繊度1dtexあたり19.7μmであった。その後実施例1と同じ条件で炭素化を行ったが、炭素化工程で重合体の分解反応に伴う急激なガス発生が起き、炭素化工程を通過しなかった。
「比較例3」
前炭素化の加熱時間を単繊維繊度1dtexあたり15秒、合計60秒間加熱し前炭素化繊維束とした以外は実施例1と同じ方法を用い、単繊維繊度が2.34dtexの炭素繊維束を得た。この炭素繊維束の含浸深さは0.08mmであった。実施例1と比較して炭素化工程での分解反応が大きく、トウ強度が低くなった。
「比較例4」
実施例5と同じく単繊度8.0dtex、総繊度800dtexの炭素繊維前駆体アクリル繊維束を用い、50分の耐炎化処理を行い、密度1.41g/cmの耐炎化繊維束に転換した。この耐炎化繊維束の断面二重構造の内層の面積は単繊維繊度1dtexあたり20.2μmであった。
その後実施例1と同じ条件で炭素化を行ったが、炭素化工程で重合体の分解反応に伴う急激なガス発生が起き、炭素化工程を通過しなかった。
「比較例5」
単繊度2.5dtex、総繊度60000dtexの炭素繊維前駆体アクリル繊維束を用い、70分の耐炎化処理を行い、密度1.41g/cmの耐炎化繊維束に転換した。この耐炎化繊維束の断面二重構造の内層の面積は単繊維繊度1dtexあたり8.7μmであった。その後前炭素化の加熱時間を単繊維繊度1dtexあたり24秒、合計60秒間加熱し前炭素化繊維束とした以外は実施例1と同じ方法を用い、単繊維繊度が1.38dtexの炭素繊維束を得た。この炭素繊維束の含浸深さ
は0.04mmであった。実施例1と比較して炭素繊維の単繊維繊度が小さく、ポリプロピレンの含浸速度が低い。
「比較例6」
比較例5と同様に単繊度2.5dtex、総繊度60000dtexの炭素繊維前駆体アクリル繊維束を用い、70分の耐炎化処理を行い、密度1.33g/cmの耐炎化繊維束に転換した。この耐炎化繊維束の断面二重構造の内層の面積は単繊維繊度1dtexあたり18.4μmであった。その後実施例1と同じ条件で炭素化を行ったが、炭素化工程で重合体の分解反応に伴う急激なガス発生が起き、炭素化工程を通過しなかった。
本発明により、樹脂含浸性に優れた高品質な炭素繊維を得ることが可能となり、熱可塑性樹脂をマトリクスとする炭素繊維強化熱可塑性樹脂を高速かつ安定的に供給できる。

Claims (2)

  1. 単繊維繊度が4dtex以上である炭素繊維前駆体アクリル繊維束を200℃〜300℃の酸性化雰囲気中を通過させて耐炎化繊維束を得る耐炎化処理、得られた耐炎化繊維束を最高温度が500℃〜900℃の不活性雰囲気中を通過させて熱処理する前炭素化処理、及び、得られた前炭素化処理繊維束を最高温度が1200℃〜2500℃の不活性雰囲気中を通過させて熱処理する炭素化処理を順に行い密度1.7〜2g/cm、単繊維繊度2.4〜5dtexとなる炭素繊維束を得る炭素繊維束の製造方法であって、下記1)〜3)を満たす、炭素繊維束の製造方法。
    1)前記耐炎化繊維束の繊維の密度が1.37g/cm以上である。
    2)前記耐炎化繊維束の下記の方法で測定される平均内層面積が、耐炎化繊維束の単繊維
    繊度1dtexに対して18μm以下である。
    <耐炎化繊維束の内層面積の測定方法>
    耐炎化繊維束を透明樹脂に包埋し繊維軸方向に対し垂直に切断して研磨し落射蛍光顕微鏡を用い観察して、500倍に拡大して写真を撮影し、画像解析ソフトにて、二値化処理を施した後、蛍光発色部分面積を測定して、耐炎化繊維1本当たりの内層面積を得る。
    3)前記前炭素化処理において、500℃〜900℃の不活性雰囲気中を通過する時間
    が、耐炎化繊維束の単繊維繊度1dtexに対して20秒以上である。
  2. 前記炭素繊維束が、下記の測定方法で測定した含浸深さが0.12mm以上となる炭素繊維束である、請求項1に記載の炭素繊維束の製造方法。
    <含浸深さの測定方法>
    1)200℃にて溶融粘度300Pa・sとなる50mm×50mmの正方形、厚さ
    120μmのポリプロピレンフィルムを表面温度が200℃になるようにホット
    ステージで加熱した、100mm×100mmの正方形、厚さ5mm鉄板上に置き
    溶融させる。
    2)総繊度が24,000dtex以上となるように調整した炭素繊維束を前記の溶融し
    たPPフィルムの上に幅50mmとなるよう均一に広げて置き、予め200℃に加熱
    した50mm×50mmの正方形、厚さ5mmの鉄板を載せて直ぐに0.2MPaで
    60秒間圧縮して、試料を取り出して冷却する。
    3)作成した試料を樹脂に包埋し、切断研磨して、光学顕微鏡にて、ポリプロピレンが
    炭素繊維束に含浸した厚みを含浸深さとして測定する。
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