以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
図1には、空気入りタイヤ2が示されている。図1において、上下方向がタイヤ2の半径方向であり、左右方向がタイヤ2の軸方向であり、紙面との垂直方向がタイヤ2の周方向である。本明細書では、タイヤ2が車両に装着されたときの車両の内側方向は「裏側」と称される。これに対して、車両の外側方向は「表側」と称される。図1において、矢印Xは裏側を表し、矢印Yは表側を表す。
図1において、符号PEはこのタイヤ22の半径方向外側端を表している。この外側端PEは、赤道とも称される。実線ELは、赤道PEを通る。実線ELは、半径方向に延びる。実線ELは、このタイヤ2の赤道面である。この実施形態では、赤道面ELは、このタイヤ2の幅方向の中心線CLと一致する。図1から明らかなように、このタイヤ2の形状は赤道面ELに対して非対称である。
このタイヤ2は、トレッド4、一対のサイドウォール6、一対のビード8、カーカス10、ベルト12、インナーライナー14、バンド16、一対のチェーファー18、一対の第一フィラー20及び一対の第二フィラー22を備えている。このタイヤ2は、チューブレスタイプである。このタイヤ2は、レース用の自動車に装着される。このタイヤ2がレース用以外の自動車に装着されてもよい。
トレッド4は、半径方向外向きに凸な形状を呈している。トレッド4は、路面と接地するトレッド面24を形成する。このトレッド面24には、溝は刻まれていない。このタイヤ2は、スリックタイヤ2である。このトレッド面24に溝が刻まれていてもよい。トレッド4は、耐摩耗性、耐熱性及びグリップ性に優れた架橋ゴムからなる。
それぞれのサイドウォール6は、トレッド4の端から半径方向略内向きに延びている。サイドウォール6の半径方向外側端は、トレッド4と接合されている。このサイドウォール6は、耐カット性及び耐候性に優れた架橋ゴムからなる。このサイドウォール6は、カーカス10の損傷を防止する。
それぞれのビード8は、軸方向においてサイドウォール6よりも内側に位置している。ビード8は、コア26と、このコア26から半径方向外向きに延びるエイペックス28とを備えている。コア26はリング状であり、巻回された非伸縮性ワイヤーを含む。ワイヤーの典型的な材質は、スチールである。エイペックス28は、半径方向外向きに先細りである。エイペックス28は、高硬度な架橋ゴムからなる。
カーカス10は、第一プライ30及び第二プライ32の二つのカーカスプライからなる。第一プライ30及び第二プライ32は、両側のビード8の間に架け渡されており、トレッド4及びサイドウォール6に沿っている。第一プライ30は、コア26の周りにて折り返されている。第一プライ30は、第一主部と第一折返し部とを備えている。第一主部は、一方のビード8の軸方向内側から他方のビード8の軸方向内側まで延びている。第一折返し部は、ビード8の軸方向外側を略半径方向に延びている。第二プライ32は、コア26の周りにて折り返されている。第二プライ32は、第二主部と第二折返し部とを備えている。第二主部は、一方のビード8の軸方向内側から他方のビード8の軸方向内側まで延びている。第二折返し部は、ビード8の軸方向外側を略半径方向に延びている。カーカス10が、1枚のカーカスプライから形成されてもよい。
図示されないが、第一プライ30及び第二プライ32は、並列された多数のコードとトッピングゴムとからなる。それぞれのコードが赤道面ELに対してなす角度の絶対値は、50°から90°である。換言すれば、このカーカス10はラジアル構造を有する。コードは、有機繊維からなる。好ましい有機繊維として、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。カーカス10が、1枚のプライから形成されてもよい。
ベルト12は、トレッド4の半径方向内側に位置している。ベルト12は、バンド16の半径方向外内に位置している。ベルト12は、カーカス10と積層されている。ベルト12は、カーカス10を補強する。ベルト12は、内側層34及び外側層36からなる。軸方向において、内側層34の幅は外側層36の幅よりも若干大きい。図示されていないが、内側層34及び外側層36のそれぞれは、並列された多数のコードとトッピングゴムとからなる。それぞれのコードは、赤道面ELに対して傾斜している。傾斜角度の一般的な絶対値は、10°以上35°以下である。内側層34のコードの赤道面ELに対する傾斜方向は、外側層36のコードの赤道面ELに対する傾斜方向とは逆である。コードの好ましい材質は、スチールである。コードに、有機繊維が用いられてもよい。ベルト12の軸方向幅は、タイヤ2の最大幅の0.7倍以上が好ましい。ベルト12が、3以上の層を備えてもよい。
バンド16は、ベルト12の半径方向外側に位置している。バンド16は、トレッド4の半径方向外内に位置している。軸方向において、バンド16の幅はベルト12の幅よりも大きい。バンド16はベルト12を拘束する。バンド16により、ベルト12のリフティングが抑制される。
インナーライナー14は、カーカス10の内側に位置している。インナーライナー14は、カーカス10の内面に接合されている。インナーライナー14は、架橋ゴムからなる。インナーライナー14には、空気遮蔽性に優れたゴムが用いられている。インナーライナー14の典型的な基材ゴムは、ブチルゴム又はハロゲン化ブチルゴムである。インナーライナー14は、タイヤ2の内圧を保持する。
それぞれのチェーファー18は、ビード8の近傍に位置している。タイヤ2がリムに組み込まれると、チェーファー18がリムと当接する。この当接により、ビード8の近傍が保護される。チェーファー18は、布とこの布に含浸したゴムとからなっている。
それぞれの第一フィラー20は、ビード8の近傍に位置している。第一フィラー20は、コア26の周りにて折り返されている。第一フィラー20は、ビード8を囲っている。第一フィラー20は、ビード8を補強する。フィラーは、架橋ゴムからなる。
それぞれの第二フィラー22は、ビード8の近傍に位置している。第二フィラー22は、コア26の周りにて折り返されている。第二フィラー22は、第一フィラー20の外側にてビード8を囲っている。第二フィラー22は、第一フィラー20とカーカス10との間に位置している。第二フィラー22は、ビード8を補強する。第二フィラー22は、架橋ゴムからなる。
本発明では、タイヤ2の外面の輪郭はプロファイルと称される。外面に溝や突起が設けられている場合は、この溝や突起がないと仮定して得られる仮想外面を用いて、このプロファイルは表される。
図2には、図1のタイヤ2のトレッド4のプロファイルが、バンド16とともに示されている。図2において、上下方向がタイヤ2の半径方向であり、左右方向がタイヤ2の軸方向であり、紙面との垂直方向がタイヤ2の周方向である。また、図2において、矢印Xは裏側を表し、矢印Yは表側を表す。図に示されるとおり、トレッド4は、赤道面ELより裏側に位置する裏部Bと、赤道面ELより表側に位置する表部Fとを備えている。トレッド4は、裏部Bと表部Fとから構成されている。裏部Bと表部Fとの境界は、赤道面EL上に位置している。
裏部Bのトレッド面24のプロファイルは、少なくとも3つの円弧を備えている。裏部Bのトレッド面24のプロファイルは、円弧Cb1、円弧Cb2及び円弧Cb3を備えている。図2タイヤ2では、裏部Bのトレッド面24のプロファイルは、円弧Cb1、円弧Cb2及び円弧Cb3から構成されている。
円弧Cb1は、赤道面ELから裏側に延びている。円弧Cb1は、赤道面ELとトレッド端38との中央近くにまで延びている。円弧Cb1は、外向きに凸である。円弧Cb2は、円弧Cb1の裏側に位置している。円弧Cb2は、円弧Cb1と接している。すなわち、円弧Cb1と円弧Cb2とは、その交点において共通接線を有している。円弧Cb2は、トレッド端38の近くにまで延びている。円弧Cb2は、外向きに凸である。円弧Cb3は、円弧Cb2の裏側に位置している。円弧Cb3は、円弧Cb2と接している。すなわち、円弧Cb2と円弧Cb3とは、その交点において共通接線を有している。円弧Cb3は、外向きに凸である。裏部Bのトレッド面24のプロファイルが、円弧Cb3の裏側に、さらに1又は複数の円弧を備えていてもよい。
このタイヤ2では、円弧Cb1の曲率半径Rb1は、円弧Cb2の曲率半径Rb2より大きい。円弧Cb2の曲率半径Rb2は、円弧Cb3の曲率半径Rb3より大きい。
表部Fのトレッド面24のプロファイルは、少なくとも2つの円弧を備えている。表部Fのトレッド面24のプロファイルは、円弧Cf1及び円弧Cf2を備えている。図2タイヤ2では、表部Fのトレッド面24のプロファイルは、円弧Cf1及び円弧Cf2から構成されている。円弧Cf1は、赤道面ELから表側に延びている。円弧Cf1は、トレッド端38の近くにまで延びている。円弧Cf1は、外向きに凸である。円弧Cf2は、円弧Cf1の表側に位置している。円弧Cf2は、円弧Cf1と接している。すなわち、円弧Cf1と円弧Cf2とは、その交点において共通接線を有している。円弧Cf2は、外向きに凸である。表部Fのトレッド面24のプロファイルが、円弧Cf2の表側に、さらに1又は複数の円弧を備えていてもよい。
このタイヤ2では、円弧Cf1の曲率半径Rf1は、円弧Cf2の曲率半径Rf2より大きい。
このタイヤ2では、円弧Cb1は円弧Cf1と赤道面EL上で接している。すなわち、円弧Cb1と円弧Cf1とは、赤道PEにおいて共通接線を有している。
このタイヤ2では、曲率半径Rb1は曲率半径Rf1より小さい。裏部Bのトレッド面24のプロファイルは、この曲率半径の小さな円弧Cb1と、この円弧Cb1より曲率半径がさらに小さな円弧Cb2及びCb3を有している。裏部Bのトレッド面24のプロファイルは、表部Fのトレッド面24のプロファイルに比べてトレッド端38に向けて丸みを帯びた形状を呈している。裏部Bのトレッド面24のプロファイルは、ラウンド状を呈している。これに対して、表部Fのトレッド面24のプロファイルは、裏部Bのトレッド面24のプロファイルに比べてトレッド端38に向けてフラットな形状を呈している。表部Fのトレッド面24のプロファイルは、フラット状を呈している。
図2に示されるように、この実施形態では、バンド16は第一部A1と第二部A2とを備えている。バンド16は、第一部A1と第二部A2とから構成されている。
第一部A1はバンド16の裏側の端から表方向に延びている。図示されていないが、第一部A1は第一コードとトッピングゴムとからなる。第一コードは、螺旋状に巻かれている。この第一部A1は、いわゆるジョイントレス構造を有する。第一コードは、実質的に周方向に延びている。周方向に対する第一コードの角度は、5°以下、さらには2°以下である。第一コードは、有機繊維からなる。
第二部A2は第一部A1の表側に位置する。第二部A2は、バンド16の表側の端まで延びている。図示されていないが、第二部A2は第二コードとトッピングゴムとからなる。第二コードは、螺旋状に巻かれている。この第二部A2は、いわゆるジョイントレス構造を有する。第二コードは、実質的に周方向に延びている。周方向に対する第二コードの角度は、5°以下、さらには2°以下である。第二コードは、有機繊維からなる。
この実施形態では、第二コードの初期引張抵抗度Rd2は、第一コードの初期引張抵抗度Rd1より大きい。第一コード及び第二コードの好ましい有機繊維として、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。第一コード及び第二コードの材質が、これらの複数の有機繊維からなるハイブリッド繊維でもよい。初期引張抵抗度Rd2が引張抵抗度Rd1より大きくなるように、第一コード及び第二コードの材質が決められている。
本発明において、第一コード及び第二コードの初期引張抵抗度は、JIS L 1017の「化学繊維タイヤ2コード試験方法(8.8 初期引張抵抗度)」に準拠して、インテスコ社製の材料試験機2005型を用いて測定される。測定条件は、以下の通りである。なお、測定のための試料は、タイヤ2のバンド16からサンプリングされる。
温度:20℃
湿度:65%
材料つかみ間隔:250mm
引張速度:300mm/min
バンド16が第一部A1と第二部A2とを備えてなくてもよい。バンド16の全体が、一つの領域で構成されていてもよい。このときこのバンド16は、一種類のコードが螺旋状に巻かれて構成されている。
以下、本発明による作用効果が説明される。
より高い旋回性、操縦安定性及び耐久性を備えたレース用のタイヤが求められている。従来のレース用のタイヤでは、旋回時に高いコーナリングフォースを発生させるために、トレッド面のプロファイルはフラット状である。このタイヤでは、プロファイルがフラット状であるため、ベルト及びバンドの端と接地面との距離が短い。走行時にトレッドが変形と復元とを繰り返したとき、この変形による応力がベルト及びバンドの端に集中し易い。ネガティブキャンバーであるレース用の車両では、トレッドの裏側部分が頻繁に変形と復元とを繰り返す。このため、タイヤの裏側に位置するベルト及びバンドの端でルースが発生し易くなる。これは、タイヤの耐久性向上の妨げとなる。
本発明に係るタイヤ2では、裏部Bのトレッド面24のプロファイルは、赤道面ELから延びる円弧Cb1、この円弧Cb1より曲率半径が小さな円弧Cb2及びこの円弧Cb2より曲率半径が小さな円弧Cb3を備えている。表部Fのトレッド面24のプロファイルは、赤道面ELから延びる円弧Cf1及びこの円弧Cf1より曲率半径の小さな円弧Cf2を備えている。円弧Cb1の曲率半径Rb1は円弧Cf1の曲率半径Rf1より小さい。すなわち、この裏部Bのトレッド面24のプロファイルは、曲率半径の小さな円弧Cb1と、この円弧Cb1より曲率半径がさらに小さな円弧Cb2及びCb3とを有している。この裏部Bのトレッド面24のプロファイルは、ラウンド状である。裏部Bでは、ベルト12及びバンド16の端の近辺まで接地していない。裏側のベルト12の端及びバンド16の端と、接地面とは距離が離れている。トレッド4の裏側部分が頻繁に変形と復元とを繰り返しても、ベルト12及びバンド16の端におけるルースは抑制されている。このタイヤ2は、耐久性に優れる。
このタイヤ2の表部Fのトレッド面24のプロファイルは、曲率半径の大きな円弧Cf1を備える。この表部Fのトレッド面24のプロファイルは、フラット状である。車両が旋回すると、トレッド4の表側に大きな荷重が負荷される。表部Fのトレッド面24のプロファイルがフラット状であるこのタイヤ2は、高いコーナリングフォースを発生させることができる。これは、旋回性及び旋回時の操縦安定性に寄与する。このタイヤ2は、旋回性及び旋回時の操縦安定性に優れる。
トレッド面のプロファイルがフラット状である従来のレース用タイヤでは、プロファイルがラウンド状であるタイヤに比べて、接地面の周方向の長さ(接地長と称される)は短くなる。短い接地長は、コーナリングパワーを低下させる要因となりうる。短い接地長は、直進時のトラクション性能を低下させる要因となりうる。
上記のとおり、本発明に係るタイヤ2では、裏部Bのトレッド面24のプロファイルはラウンド状である。直進時に主に接地するトレッド4の裏部Bで、その接地長は長い。裏部Bでの長い接地長は、コーナリングパワーに寄与する。このタイヤ2は、直進から旋回に移るときの応答性に優れる。このタイヤ2は、旋回開始時の操縦安定性に優れる。さらに裏部Bでの長い接地長は、直進時のトラクション性能に寄与する。このタイヤ2は、直進時の操縦安定性に優れる。
曲率半径Rf1の曲率半径Rb1に対する比(Rf1/Rb1)は1.2以上が好ましい。比(Rf1/Rb1)を1.2以上とすることで、この表部Fはコーナリングフォースに効果的に寄与する。このタイヤ2は、旋回性及び旋回時の操縦安定性に優れる。比(Rf1/Rb1)を1.2以上とすることで、裏側のベルト12及びバンド16の端が接地面から十分離れうる。このタイヤ2では、裏部Bが変形と復元とを繰り返しても、ベルト12及びバンド16の端におけるルースは抑制されている。このタイヤ2は、耐久性に優れる。さらに、比(Rf1/Rb1)を1.2以上とすることで、裏部Bでの接地長が長くできる。このタイヤ2はコーナリングパワーに優れる。このタイヤ2は、旋回開始時の操縦安定性に優れる。裏部Bでの長い接地長は、直進時のトラクション性能に寄与する。このタイヤ2は、直進時の操縦安定性に優れる。これらの観点から、比(Rf1/Rb1)は1.4以上がより好ましい。
比(Rf1/Rb1)は2.0以下が好ましい。比(Rf1/Rb1)を2.0以下とすることで、裏部Bと表部Fとの境界において、トレッド面24のプロファイルの曲率半径の変化が適正に抑えられる。この変化が大きくなることによる操縦安定性の低下が抑えられている。このタイヤ2は操縦安定性に優れる。この観点から、比(Rf1/Rb1)は1.9以下がより好ましい。
バンドは旋回性、操縦安定性及び耐久性に影響を及ぼす。バンドが初期引張抵抗度の小さなコードを有する場合、ベルト及びバンドの端での応力が緩和される。このタイヤでは、ベルト及びバンドの端でのルースが抑制される。しかし、このバンドを備えるタイヤでは、トレッドの剛性が十分でないことが起こる。このタイヤでは、旋回性、操縦安定性の向上が課題となる。一方、バンドが初期引張抵抗度の大きなコードを有する場合、このバンドはタイヤの剛性に寄与する。このバンドを備えるタイヤは、旋回性、操縦安定性に優れる。しかしこのタイヤでは、ベルト及びバンドの端でのルースの抑制が課題となる。
前述のように、このタイヤ2のバンド16は、初期引張抵抗度の小さな第一コードを有する第一部A1と、初期引張抵抗度の大きな第二コードを有する第二部A2とを備えるのが好ましい。この第一部A1は、バンド16の裏側の端から表方向に延びている。すなわち、バンド16の裏側部分では、初期引張抵抗度の小さな第一コードが巻回されている。このタイヤ2では、トレッド4の裏側部分が変形と復元とを頻繁に繰り返しても、ベルト12の端及びバンド16の端での応力が効果的に緩和されている。このタイヤ2では、ベルト12及びバンド16の端でのルースが抑制される。このタイヤ2は耐久性に優れる。
このバンド16の第二部A2は、第一部A1の表側に位置する。第二部A2は、バンド16の表側の端まで延びている。すなわち、バンド16の表側部分では、初期引張抵抗度の大きな第二コードが巻回されている。このバンド16は、旋回時に特に大きな荷重が負荷される表部Fの剛性に、効果的に寄与する。このバンド16を備えるタイヤ2は、旋回性、操縦安定性に優れる。
図2において、符号Pは、第一部A1と第二部A2との境界を表す点である。境界点Pよりも裏側が第一部A1であり、境界点Pよりも表側が第二部A2である。境界点Pは赤道面EL上に位置しないのが好ましい。赤道面ELは、トレッド4の裏部Bと表部Fとの境界である。赤道面ELにおいて、トレッド面24のプロファイルの曲率半径が変化している。赤道面ELと境界点Pとが一致すると、赤道面ELにおいて曲率半径に加えて剛性も変化する。赤道面ELで曲率半径及び剛性が両方変化することは、偏摩耗の要因となりうる。さらに、赤道面ELで曲率半径及び剛性が両方変化することは、操縦安定性を低下させる要因となりうる。境界点Pが赤道面EL上に位置しないことで、良好な耐偏摩耗性及び操縦安定性が実現されている。
境界点Pは、赤道面ELよりも裏側に位置しているのが好ましい。境界点Pを赤道面ELよりも裏側に位置させることで、このバンド16は、表部Fの剛性及び赤道面EL近辺での裏部Bの剛性に効果的に寄与する。このタイヤ2は、旋回性、操縦安定性に優れる。
図2において、両矢印Dpは、境界点Pと赤道面ELとの軸方向距離である。距離Dpは、赤道面ELから裏側方向が正の値、赤道面ELから表側方向が負の値で表される。距離Dpは5mm以上が好ましい。距離Dpを5mm以上とすることで、境界点Pは赤道面ELよりも裏側に位置し、かつトレッド面24の曲率半径の変化する位置と剛性が変化する位置とが十分に離れる。このタイヤ2では、赤道面EL近辺での偏摩耗が抑えられている。このタイヤ2では、操縦安定性の低下が抑えられている。さらに、このバンド16は、赤道面EL近辺での裏部Bの剛性に効果的に寄与する。このタイヤ2は、旋回性、操縦安定性に優れる。これらの観点から、距離Dpは7mm以上がより好ましい。距離Dpは15mm以下が好ましい。距離Dpを15mm以下とすることで、この第一部A1により、トレッド4の裏側部分が変形と復元とを頻繁に繰り返しても、ベルト12及びバンド16の端での応力が効果的に緩和される。このタイヤ2では、ベルト12及びバンド16の端でのルースが抑制される。このタイヤ2は耐久性に優れる。この観点から、距離Dpは13mm以下がより好ましい。
初期引張抵抗度Rd2の上記初期引張抵抗度Rd1に対する比(Rd2/Rd1)は、3以上が好ましい。比(Rd2/Rd1)を3以上とすることで、トレッド4の裏側部分が変形と復元とを頻繁に繰り返しても、ベルト12及びバンド16の端での応力が効果的に緩和されうる。このタイヤ2では、ベルト12及びバンド16の端でのルースが抑制される。このタイヤ2は耐久性に優れる。さらに比(Rd2/Rd1)を3以上とすることで、このバンド16は、表部F及び赤道面EL近辺での裏部Bの剛性に効果的に寄与しうる。このタイヤ2は、旋回性、操縦安定性に優れる。これらの観点から、比(Rd2/Rd1)は3.5以上がより好ましい。比(Rd2/Rd1)は、6以下が好ましい。比(Rd2/Rd1)を6以下とすることで、境界点Pの近辺におけるトレッド4の剛性の変化が適正に抑えられる。このタイヤ2では、この位置でトレッド4の剛性が大きく変化することによる操縦安定性の低下が抑えられている。このタイヤ2は操縦安定性に優れる。
初期引張抵抗度Rd1は、30cN/dtex以下が好ましい。初期引張抵抗度Rd1を30cN/dtex以下とすることで、トレッド4の裏側部分が変形と復元とを頻繁に繰り返しても、ベルト12及びバンド16の端での応力が効果的に緩和されうる。このタイヤ2では、ベルト12及びバンド16の端でのルースが抑制される。このタイヤ2は耐久性に優れる。この観点から、初期引張抵抗度Rd1は25cN/dtex以下がより好ましい。初期引張抵抗度Rd1は、10cN/dtex以上が好ましい。初期引張抵抗度Rd1を10cN/dtex以上とすることで、このバンド16は、裏部Bの剛性に寄与する。このタイヤ2は、直進時の操縦安定性に優れる。この観点から、初期引張抵抗度Rd1は13cN/dtex以上がより好ましい。
初期引張抵抗度Rd2は、50cN/dtex以上が好ましい。初期引張抵抗度Rd2を50cN/dtex以上とすることで、このバンド16は、表部F及び赤道面EL近辺での裏部Bの剛性に効果的に寄与しうる。このタイヤ2は、旋回性、操縦安定性に優れる。この観点から、初期引張抵抗度Rd2は60cN/dtex以上がより好ましい。初期引張抵抗度Rd2は、90cN/dtex以下が好ましい。初期引張抵抗度Rd2を90cN/dtex以下とすることで、表部F及び赤道面EL近辺での裏部B剛性は適正に抑えられる。このトレッド4は、衝撃吸収性に優れる。この観点から、初期引張抵抗度Rd2は85cN/dtex以下がより好ましい。
第一コードの材質は、ナイロン繊維、又はナイロン繊維とアラミド繊維とからなるハイブリッド繊維が好ましい。第一コードの材質をこのようにすることで、このタイヤ2では、ベルト12及びバンド16の端でのルースが抑制される。このタイヤ2は耐久性に優れる。
第二コードの材質は、アラミド繊維が好ましい。第二コードの材質をこのようにすることで、このバンド16は、表部F及び赤道面EL近辺での裏部Bの剛性に効果的に寄与しうる。このタイヤ2は、旋回性、操縦安定性に優れる。
図1において、両矢印Lbは、赤道面ELから裏部Bのトレッド端38までの軸方向距離である。図2において、両矢印Lb1は、赤道面ELから円弧Cb1と円弧Cb2との交点までの軸方向距離である。距離Lb1の距離Lbに対する比(Lb1/Lb)は35%以上が好ましい。比(Lb1/Lb)を35%以上とすることで、このタイヤ2では充分な接地幅が得られる。このタイヤ2は、操縦安定性に優れる。この観点から、この比は40%以上がより好ましい。比(Lb1/Lb)は55%以下が好ましい。比(Lb1/Lb)を55%以下とすることで、裏側のベルト12及びバンド16の端が接地面から十分離れうる。このタイヤ2では、裏部Bが変形と復元とを繰り返しても、ベルト12及びバンド16の端におけるルースは抑制されている。このタイヤ2は、耐久性に優れる。さらに、これにより裏部Bでの接地長が長くできる。このタイヤ2はコーナリングパワーに優れる。このタイヤ2は、旋回開始時の操縦安定性に優れる。裏部Bでの長い接地長は、直進時のトラクション性能に寄与する。このタイヤ2は、直進時の操縦安定性に優れる。これらの観点から、この比は50%以下がより好ましい。
図2において、両矢印Lb2は、赤道面ELから円弧Cb2と円弧Cb3との交点までの軸方向距離である。距離Lb2の距離Lbに対する比(Lb2/Lb)は70%以上が好ましい。比(Lb2/Lb)を70%以上とすることで、このタイヤ2では充分な接地幅が得られる。このタイヤ2は、操縦安定性に優れる。この観点から、この比は75%以上がより好ましい。比(Lb1/Lb)は90%以下が好ましい。比(Lb2/Lb)を90%以下とすることで、裏側のベルト12及びバンド16の端が接地面から十分離れうる。このタイヤ2では、裏部Bが変形と復元とを繰り返しても、ベルト12及びバンド16の端におけるルースは抑制されている。このタイヤ2は、耐久性に優れる。さらに、これにより裏部Bでの接地長が長くできる。このタイヤ2はコーナリングパワーに優れる。このタイヤ2は、旋回開始時の操縦安定性に優れる。裏部Bでの長い接地長は、直進時のトラクション性能に寄与する。このタイヤ2は、直進時の操縦安定性に優れる。これらの観点から、この比は85%以下がより好ましい。
半径Rb2の半径Rb1に対する比(Rb2/Rb1)は30%以上が好ましい。比(Rb2/Rb1)を30%以上とすることで、このタイヤ2では充分な接地幅が得られる。このタイヤ2は、操縦安定性に優れる。この観点から、この比は35%以上がより好ましい。比(Rb2/Rb1)は50%以下が好ましい。比(Rb2/Rb1)を50%以下とすることで、裏側のベルト12及びバンド16の端が接地面から十分離れうる。このタイヤ2では、裏部Bが変形と復元とを繰り返しても、ベルト12及びバンド16の端におけるルースは抑制されている。このタイヤ2は、耐久性に優れる。さらに、これにより裏部Bでの接地長が長くできる。このタイヤ2はコーナリングパワーに優れる。このタイヤ2は、旋回開始時の操縦安定性に優れる。裏部Bでの長い接地長は、直進時のトラクション性能に寄与する。このタイヤ2は、直進時の操縦安定性に優れる。これらの観点から、この比は45%以下がより好ましい。
半径Rb3の半径Rb2に対する比(Rb3/Rb2)は10%以上が好ましい。比(Rb3/Rb2)を10%以上とすることで、このタイヤ2では充分な接地幅が得られる。このタイヤ2は、操縦安定性に優れる。この観点から、この比は12%以上がより好ましい。比(Rb3/Rb2)は25%以下が好ましい。比(Rb3/Rb2)を25%以下とすることで、裏側のベルト12及びバンド16の端が接地面から十分離れうる。このタイヤ2では、裏部Bが変形と復元とを繰り返しても、ベルト12及びバンド16の端におけるルースは抑制されている。このタイヤ2は、耐久性に優れる。さらに、これにより裏部Bでの接地長が長くできる。このタイヤ2はコーナリングパワーに優れる。このタイヤ2は、旋回開始時の操縦安定性に優れる。裏部Bでの長い接地長は、直進時のトラクション性能に寄与する。このタイヤ2は、直進時の操縦安定性に優れる。これらの観点から、比(Rb3/Rb2)は23%以下がより好ましい。
図1において、両矢印Lfは、赤道面ELから表部Fのトレッド端38までの軸方向距離である。図2において、両矢印Lf1は、赤道面ELから円弧Cf1と円弧Cf2との交点までの軸方向距離である。距離Lf1の距離Lfに対する比(Lf1/Lf)は、70%以上が好ましい。比(Lf1/Lf)を70%以上とすることで、この表部Fでは旋回時に充分な接地幅が得られる。この表部Fはコーナリングフォースに効果的に寄与する。このタイヤ2は、旋回性及び旋回時の操縦安定性に優れる。この観点から、この比は75%以上がより好ましい。比(Lf1/Lf)は90%以下が好ましい。比(Lf1/Lf)を90%以下とすることで、旋回時に表側部分のベルト12及びバンド16の端は接地面から離れている。このタイヤ2では、ベルト12及びバンド16の端におけるルースの発生が抑制される。この観点から、この比は85%以下がより好ましい。
半径Rf2の半径Rf1に対する比(Rf2/Rf1)は2%以上が好ましい。比(Rf2/Rf1)を2%以上とすることで、この表部Fでは旋回時に充分な接地幅が得られる。この表部Fは高いコーナリングフォースに効果的に寄与する。このタイヤ2は、旋回性及び旋回時の操縦安定性に優れる。この観点から、この比は3%以上が好ましい。比(Rf2/Rf1)は10%以下が好ましい。比(Rf2/Rf1)を10%以下とすることで、旋回時に表側部分のベルト12及びバンド16の端は接地面から離れている。このタイヤ2では、ベルト12及びバンド16の端におけるルースの発生が抑制される。この観点から、この比は8%以下がより好ましい。
図2のタイヤ2では、裏部Bのトレッド面24のプロファイルを構成する円弧の数は3であり、表部Fのトレッド面24のプロファイルを構成する円弧の数は2であった。このように、裏部Bのトレッド面24のプロファイルを構成する円弧の数は、表部Fのトレッド面24のプロファイルを構成する円弧の数よりも大きいのが好ましい。トレッド面24のプロファイルを構成する円弧の数が大きい裏部Bでは、ベルト12及びバンド16の端が接地面から十分離れうる。このタイヤ2では、裏部Bが変形と復元とを繰り返しても、ベルト12及びバンド16の端におけるルースは抑制されている。このタイヤ2は、耐久性に優れる。この裏部Bでは、接地長が長くできる。このタイヤ2はコーナリングパワーに優れる。このタイヤ2は、旋回開始時の操縦安定性に優れる。裏部Bでの長い接地長は、直進時のトラクション性能に寄与する。このタイヤ2は、直進時の操縦安定性に優れる。トレッド面24のプロファイルを構成する円弧の数が小さい表部Fは、コーナリングフォースに効果的に寄与する。このタイヤ2は、旋回性及び旋回時の操縦安定性に優れる。
本発明では、タイヤ2及びタイヤ2の各部材の寸法及び角度は、タイヤ2が正規リムに組み込まれ、正規内圧となるようにタイヤ2に空気が充填された状態で測定される。測定時には、タイヤ2には荷重がかけられない。本明細書において正規リムとは、タイヤ2が依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」は、正規リムである。本明細書において正規内圧とは、タイヤ2が依拠する規格において定められた内圧を意味する。JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」は、正規内圧である。
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
[実施例1]
図1及び2に示された構成を備えた実施例1のタイヤを得た。タイヤのサイズは、265/35R18とされた。表1にこのタイヤの諸元が示されている。このタイヤでは、裏部のトレッド面のプロファイルは3個の円弧で構成され、表部のトレッド面のプロファイルは2個の円弧で構成された。このタイヤでは、比(Lb1/Lb)は45%とされた。比(Lb2/Lb)は80%とされた。比(Lf1/Lf)は80%とされた。
[比較例1]
このタイヤでは、トレッドの裏部のプロファイルは、表1に示されるとおりとされた。さらに表部のプロファイルは、裏部のプロファイルと同じとれさた。従って、表部のトレッド面のプロファイルも3つの円弧から構成されている。バンドは、アラミド繊維からなる一種類のコードからなっている。従って、バンドは一つの領域から構成されている。これらの他は実施例1と同様にして、比較例1のタイヤを得た。このタイヤは従来のタイヤである。
[比較例2]
円弧Cf1の曲率半径Rf1を表1の通りとしたこと、及びバンドがアラミド繊維からなる一種類のコードからなることの他は実施例1と同様にして、比較例2のタイヤを得た。
[比較例3]
円弧Cf1の曲率半径Rf1を表1の通りとしたこと、及びバンドがナイロン繊維からなる一種類のコードからなることの他は実施例1と同様にして、比較例3のタイヤを得た。
[実施例2]
バンドがナイロン繊維からなる一種類のコードからなることの他は実施例1と同様にして、実施例2のタイヤを得た。
[実施例3]
バンドがアラミド繊維からなる一種類のコードからなることの他は実施例1と同様にして、実施例3のタイヤを得た。
[実施例4−6及び比較例4−5]
曲率半径Rf1の値を変更し、比(Rf1/Rb1)を表2の通りとした他は実施例1と同様にして、実施例4−6及び比較例4−5のタイヤを得た。
[実施例7−10]
距離Dpを表3の通りとした他は実施例1と同様にして、実施例7−10のタイヤを得た。
[ラップタイム]
試作タイヤを標準リム(サイズ=18×9.5J)に組み込み、このタイヤに空気を充填して内圧を180kPaとした。このタイヤを排気量が2600ccであるリア駆動のレース用自動車の後輪に装着した。前輪には、市販のタイヤ(サイズ:265/35R18)を装着し、その内圧が180kPaとなるように空気を充填した。この自動車を、その路面がアスファルトであるサーキットコースで走行させた。一周4.5kmのコースを10周したときのラップタイムが測定された。ラップタイムは、旋回性及び操縦安定性の総合的な指標となる。この結果が、比較例1を100とした指数で測定結果が表1から表3に示されている。値が大きいほどラップタイムが小さい。値が大きいほど好ましい。
[操縦安定性]
上記ラップタイムを測定したのと同じ条件の車両を、その路面がアスファルトであるサーキットコースで走行させた。操縦安定性について、ドライバーによる官能評価を行った。この結果が、比較例1の結果を100とした指数として下記表1から表3に示されている。値が大きいほど好ましい。
[耐久性]
試作タイヤを標準リム(サイズ=18×9.5J)に組み込み、このタイヤに空気を充填して内圧を120kPaとした。このタイヤをドラム式走行試験機に装着し、7.0kNの縦荷重をタイヤに負荷した。スリップ角は1.5°とし、キャンバー角は2.8°とした。このタイヤを、200km/hの速度でドラムの上を60分間走行させた。ベルトの端及びバンドの端に発生したルースの大きさを測定した。この結果が、比較例1を100とした指数として、下記の表1から表3に示されている。値が小さいほど、好ましい。
表1から表3に示されるように、実施例のタイヤでは、比較例のタイヤに比べて評価が高い。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。