JP2018090872A - 低降伏比高張力厚鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
(1)熱間圧延後の厚鋼板に特定条件で再加熱処理を施すことにより、音響異方性の小さい厚鋼板を製造することができる。その際、再加熱後に特定のパターンで冷却を行うことにより、1回の熱処理でミクロ組織をベイナイト+島状マルテンサイトとし、低降伏比を達成することができる。
C :0.03〜0.13%、
Si:0.01〜0.50%、
Mn:0.8〜3.0%、
P :0.015%以下、
S :0.0050%以下、
Al:0.005〜0.1%、
Ti:0.004〜0.030%、および
N :0.0015〜0.0065%を含有し、
残部がFeおよび不可避的不純物からなり、かつ、
N含有量(質量%)に対するTi含有量(質量%)の比Ti/Nが2.0超、4.2未満である成分組成を有し、
旧オーステナイト粒の平均円相当径が10〜40μm、
旧オーステナイト粒の平均アスペクト比が3.0以下、
ベイナイト相の面積分率が80%以上、
島状マルテンサイトの面積分率が5〜20%、
島状マルテンサイトの平均円相当径が1.0〜5.0μm、かつ
島状マルテンサイトの個数密度が1.0×103〜5.0×105個/mm2であるミクロ組織を有する、低降伏比高張力厚鋼板。
Cu:0.01〜1.0%、
Ni:0.01〜2.0%、
Cr:1.5%以下、
Mo:1.0%以下、
Nb:0.1%以下、
V :0.2%以下、
Ca:0.005%以下、
REM:0.02%以下、
Mg:0.005%以下、および
B:0.005%以下からなる群より選択される1または2以上をさらに含有する、上記1に記載の低降伏比高張力厚鋼板。
C :0.03〜0.13%、
Si:0.01〜0.50%、
Mn:0.8〜3.0%、
P :0.015%以下、
S :0.0050%以下、
Al:0.005〜0.1%、
Ti:0.004〜0.030%、および
N :0.0015〜0.0065%を含有し、
残部がFeおよび不可避的不純物からなり、かつ、
N含有量(質量%)に対するTi含有量(質量%)の比Ti/Nが2.0超、4.2未満である成分組成を有する鋼素材を熱間圧延して厚鋼板とする熱間圧延工程と、
前記厚鋼板を、900〜1000℃の再加熱温度まで再加熱し、前記再加熱温度に10分以上保持する再加熱工程と、
前記再加熱工程後の厚鋼板を、Ar3変態点以上の冷却開始温度から、板厚1/4位置における平均冷却速度:1〜200℃/sで、400〜550℃の冷却停止温度まで冷却する第1水冷工程と、
前記第1水冷工程後の厚鋼板を30〜300s空冷する空冷工程と、
前記空冷工程後の厚鋼板を、板厚1/4位置における平均冷却速度:1〜200℃/sで、300℃以下の冷却停止温度まで冷却する第2水冷工程とを有する、
低降伏比高張力厚鋼板の製造方法。
Cu:0.01〜1.0%、
Ni:0.01〜2.0%、
Cr:1.5%以下、
Mo:1.0%以下、
Nb:0.1%以下、
V :0.2%以下、
Ca:0.005%以下、
REM:0.02%以下、
Mg:0.005%以下、および
B :0.005%以下からなる群より選択される1または2以上をさらに含有する、上記3に記載の低降伏比高張力厚鋼板の製造方法。
本発明の低降伏比高張力厚鋼板、および低降伏比高張力厚鋼板の製造に用いる鋼素材は、上述した成分組成を有する必要がある。以下、前記成分組成に含まれる各成分について説明する。なお、特に断らない限り、各成分の含有量を表す「%」は、「質量%」を意味する。
Cは、鋼の強度を増加させ、構造用鋼材として必要な強度を確保する効果を有する元素である。前記効果を得るために、C含有量を0.03%以上とする。C含有量は、0.05%以上とすることが好ましい。一方、C含有量が0.13%を超えると、特に大入熱溶接熱影響部の靭性を顕著に劣化させるとともに、耐溶接割れ性および母材の低温靭性が低下する。そのため、C含有量を0.13%以下とする。C含有量は、0.08%以下とすることが好ましい。
Siは、脱酸材として機能するとともに、母材強度を高める効果を有する元素である。前記効果を得るために、Si含有量を0.01%以上とする。一方、Si含有量が0.50%を超えると、島状マルテンサイトの生成が促進され、靭性や溶接性の低下が顕在化する。そのため、Si含有量を0.50%以下とする。Si含有量は0.35%以下とすることが好ましい。
Mnは、鋼の強度を増加させる効果を有する元素である。大入熱溶接熱影響部のミクロ組織中の島状マルテンサイトを低減し、微細化することで靭性を確保するとともに、630MPa以上の母材の降伏強さを確保するためには、Mn含有量を0.8%以上とする必要がある。Mn含有量は1.5%以上とすることが好ましい。一方、Mn含有量が3.0%を超えると、母材の靭性および溶接熱影響部靭性が著しく劣化する。そのため、Mn含有量は3.0%以下とする。Mn含有量は2.8%以下とすることが好ましい。
Pは、HAZ組織において島状マルテンサイトに濃化し、島状マルテンサイトの生成を助長するため、HAZ靭性を低下させる。そのため、HAZ靭性向上のためにはPを低減することが望ましい。よって、P含有量は0.015%以下とする。
Sは、母材の低温靭性を劣化させる元素であり、できるだけ低減することが望ましい。S含有量が0.0050%を超えて含有すると、前記低温靭性の劣化が顕著となるため、S含有量は0.0050%以下とする。
Alは、脱酸剤として作用する元素であり、高張力鋼の溶鋼脱酸プロセスにおいて、もっとも汎用的に使われる。また、Alは、鋼中のNをAlNとして固定し、母材の靭性向上に寄与する。前記効果を得るために、Al含有量は0.005%以上とする。Al含有量は、0.010%以上とすることが好ましい。一方、Al含有量が0.1%を超えると、母材の靭性が低下するとともに、溶接時に溶接金属部にAlが混入して靭性を劣化させる。そのため、Al含有量は0.1%以下とする。Al含有量は0.07%以下とすることが好ましい。
Tiは、Nとの親和力が強く、凝固時にTiNとして析出する。高温でも安定なTiNのピンニング効果により、大入熱溶接熱影響部でのオーステナイト結晶粒の粗大化を抑制することで、溶接熱影響部の靭性を向上させることができる。前記効果を得るために、Ti含有量を0.004%以上とする必要がある。Ti含有量は0.006%以上とすることが好ましい。一方、Ti含有量が0.030%を超えると、TiN粒子が粗大化し、オーステナイト粒の粗大化抑制効果が飽和する。そのため、Ti含有量は0.030%以下とする。Ti含有量は0.025%以下とすることが好ましい。
Nは、TiNを確保するために必要な元素であり、0.0015%未満では十分なTiN量が確保できない。そのため、N含有量は0.0015%以上とする。N含有量は、0.0030%以上とすることが好ましい。一方、N含有量が0.0065%を超えると、固溶N量の増加により、母材および溶接部靭性が著しく低下する。そのため、N含有量は0.0065%以下とする。N含有量は0.0060%以下とすることが好ましい。
Cuは、高靭性を保ちつつ強度を増加させることが可能な元素である。加えてCuは、大入熱溶接熱影響部靭性への影響も小さいため、高強度化のために有用な元素である。Cuを含有する場合には、前記効果を得るために、Cu含有量を0.01%以上とする。Cu含有量は0.10%以上とすることが好ましく、0.20%以上とすることがより好ましい。一方、Cu含有量が1.0%を超えると熱間脆性を生じて鋼板の表面性状が劣化するため、Cu含有量は1.0%以下とする。Cu含有量は0.7%以下とすることが好ましい。
Niは、Cuと同様、高靭性を保ちつつ強度を増加させることが可能な元素である。加えてNiは、大入熱溶接熱影響部靭性への影響も小さいため、高強度化のために有用な元素である。Niを含有する場合には、前記効果を得るために、Ni含有量を0.01%以上とする。Ni含有量は0.10%以上とすることが好ましく、0.20%以上とすることがより好ましい。一方、Ni含有量が2.0%を超えると、添加効果が飽和し、含有量に見合う効果が期待できなくなり、経済的に不利になる。そのため、Ni含有量は2.0%以下とする。Ni含有量は1.7%以下とすることが好ましい。
Crは、鋼の強度向上に寄与する元素であり、所望する強度に応じて任意に含有できる。しかし、Cr含有量が1.5%を超えると大入熱溶接熱影響部靭性が劣化するため、Crを含有する場合、Cr含有量を1.5%以下とする。なお、Crによる強度向上効果を得るという観点からは、Cr含有量を0.05%以上とすることが好ましい。
Moは、Crと同様、鋼の強度向上に寄与する元素であり、所望する強度に応じて任意に含有できる。しかし、Mo含有量が1.0%を超えると大入熱溶接熱影響部靭性が劣化するため、Moを含有する場合、Mo含有量を1.0%以下とする。なお、Moによる強度向上効果を得るという観点からは、Mo含有量を0.05%以上とすることが好ましい。
Nbは、Cr、Moと同様、鋼の強度向上に寄与する元素であり、所望する強度に応じて任意に含有できる。しかし、Nb含有量が0.1%を超えると母材靭性および大入熱溶接熱影響部靭性が劣化するため、Nbを含有する場合、Nb含有量を0.1%以下とする。なお、Nbによる強度向上効果を得るという観点からは、Nb含有量を0.005%以上とすることが好ましい。
Vは、Cr、Mo、Nbと同様、鋼の強度向上に寄与する元素であり、所望する強度に応じて任意に含有できる。しかし、V含有量が0.2%を超えると大入熱溶接熱影響部靭性が劣化するため、Vを含有する場合、V含有量を0.2%以下とする。なお、Vによる強度向上効果を得るという観点からは、V含有量を0.01%以上とすることが好ましい。
Caは、結晶粒を微細化することによって靭性を向上させる効果を有する元素であり、所望する特性に応じて任意に含有できる。しかし、Ca含有量が0.005%を超えると、添加効果が飽和するため、Caを含有する場合、Ca含有量を0.005%以下とする。なお、Caによる靭性向上効果を得るという観点からは、Ca含有量を0.001%以上とすることが好ましい。
REM(希土類金属)は、Caと同様に靭性向上効果を有しており、所望する特性に応じて任意に含有できる。しかし、REM含有量が0.02%を超えると、添加効果が飽和するため、REMを含有する場合、REM含有量を0.02%以下とする。なお、REMによる靭性向上効果を得るという観点からは、REM含有量を0.002%以上とすることが好ましい。
Mgは、Caと同様に結晶粒を微細化することによって靭性を向上させる効果を有する元素であり、所望する特性に応じて任意に含有できる。しかし、Mg含有量が0.005%を超えると、添加効果が飽和するため、Mgを含有する場合、Mg含有量を0.005%以下とする。なお、Mgによる靭性向上効果を得るという観点からは、Mg含有量を0.001%以上とすることが好ましい。
Bは、焼入れ性を向上させることにより、鋼の強度を向上させる作用を有する元素である。また、Bは、大入熱溶接時には、溶接熱影響部において固溶窒素を窒化物として固着することにより靭性を向上させる効果を有している。しかしB含有量が0.005%を超えると、焼入れ性が過度に高くなり、母材の靭性および延性が低下する。そのため、Bを含有する場合、B含有量を0.005%以下とする。B含有量は0.0020%以下とすることが好ましい。なお、Bの添加効果を得るという観点からは、B含有量を0.0003%以上とすることが好ましい。
さらに本発明においては、低降伏比高張力厚鋼板の成分組成、および低降伏比高張力厚鋼板の製造に用いる鋼素材の成分組成におけるN含有量(質量%)に対するTi含有量(質量%)の比(以下、単に「Ti/N」という)が、2.0<(Ti/N)<4.2の条件を満たすことが重要である。先に説明したように、TiNはピンニング効果により大入熱溶接熱影響部でのオーステナイト結晶粒の成長を抑制し、溶接熱影響部靭性を向上させる効果を有している。しかし、Ti/Nが2.0以下であると、前記効果を得るため必要なTiN量を確保できず、溶接熱影響部靭性に劣る。そのため、Ti/Nを2.0超とする。Ti/Nは2.4以上とすることが好ましく、2.6以上とすることがより好ましく、2.8以上とすることがさらに好ましい。一方、Ti/Nが4.2以上であると、TiC粒子の生成およびTiNの粗大化のため、母材靭性および溶接熱影響部靭性が劣化する。そのため、Ti/Nは4.2未満とする。Ti/Nは4.1以下とすることが好ましく、4.0以下とすることがより好ましい。
本発明の低降伏比高張力厚鋼板は、以下の条件をすべて満たすミクロ組織を有する必要がある。
・旧オーステナイト粒の平均円相当径が10〜40μm。
・旧オーステナイト粒の平均アスペクト比が3.0以下。
・ベイナイト相の面積分率が80%以上。
・島状マルテンサイトの面積分率が5〜20%。
・島状マルテンサイトの平均円相当径が1.0〜5.0μm。
・島状マルテンサイトの個数密度が1.0×103〜5.0×105個/mm2。
以下、ミクロ組織を上記の範囲に限定する理由について説明する。
本発明では、低降伏比高張力厚鋼板のミクロ組織が、硬質相第2相として島状マルテンサイト(Martensite-Austenite constituent、以下、単に「MA」という場合がある)を含むことが重要である。まず、この島状マルテンサイトについて説明する。
MAは転位密度が非常に高く、また、Cが濃縮しているため、母相と比べて非常に硬い相である。したがって、MAを含むミクロ組織とすることにより、引張強さ(TS)を向上させるとともに、多量に導入された可動転位によって降伏強さ(YP)の上昇を抑制できるため、高強度と低降伏比の両立に有効である。MAの面積分率が5%未満では、前記のような高強度化と低降伏比化の効果が得られないため、MAの面積分率は5%以上とする。MAの面積分率は6%以上とすることが好ましい。一方、MAの面積分率が20%を超えると、母材の延性および靭性が劣化する。そのため、MAの面積分率は20%以下とする。MAの面積分率は16%以下とすることが好ましい。
MAの平均円相当径が1.0μm未満では、上記のような高強度化と低降伏比化の効果が得られない。そのため、MAの平均円相当径は1.0μm以上とする。一方、MAの平均円相当径が5.0μmを超えると溶接部の靭性が劣化する。そのため、MAの平均円相当径は5.0μm以下とする。
MAの個数密度が1.0×103個/mm2未満であると、所望の低降伏比が得られない。そのため、MAの個数密度は1.0×103個/mm2以上とする。一方、MAの個数密度が5.0×105個/mm2を超えると溶接性が低下する。そのため、MAの個数密度は5.0×105個/mm2以下とする。
面積分率:80%以上
本発明では、低降伏比高張力厚鋼板のミクロ組織のうち、上記MAを除く母相を、ベイナイト主体とする。強度確保の観点から、ミクロ組織全体に対するベイナイトの面積分率は、80%以上とする。
平均円相当径:10〜40μm
所望の母材特性を得るためには、旧オーステナイト(旧γ)粒の平均円相当径を10〜40μmとする必要がある。旧γ粒の平均円相当径が10μm未満であると、焼入れ性が低下し、所望の強度特性が得られない。そのため、旧γ粒の平均円相当径は10μm以上とする。一方、旧γ粒の平均円相当径が40μmを超えると、島状マルテンサイトが均一に微細分散した組織が得られず、所望の強度特性が得られない。そのため、旧γ粒の平均円相当径は40μm以下とする。
旧γ粒の平均アスペクト比が3.0を超えると、低降伏比高張力厚鋼板の音響異方性が大きくなる。そのため、旧γ粒の平均アスペクト比は3.0以下とする。なお、ここで旧γ粒の「平均アスペクト比」とは、旧γ粒の最小径に対する最大径の比の平均値を意味するものとする。前記平均アスペクト比の下限は特に限定されないが、前記定義上、最小値は1となる。
本発明の低降伏比高張力厚鋼板の板厚は特に限定されず、任意の厚さとすることができるが、12mm以上100mm以下とすることが好ましい。
(降伏強さ)
本発明の低降伏比高張力厚鋼板の降伏強さ(YP)は、特に限定されず任意の値とすることができるが、630MPa以上とすることが好ましい。
本発明の低降伏比高張力厚鋼板の引張強さ(TS)は、特に限定されず任意の値とすることができるが、780MPa以上とすることが好ましい。
本発明の低降伏比高張力厚鋼板の降伏比(YR)は、特に限定されず任意の値とすることができるが、80%以下とすることが好ましい。なお、ここで降伏比とは、引張強さ(TS)に対する降伏強さ(YP)の比をパーセンテージで表した値、すなわち、YP/TS*100(%)を指すものとする。
次に、本発明の一実施形態における低降伏比高張力厚鋼板の製造方法について説明する。なお、以下の説明においては、特に断らない限り、温度は板厚中央の温度を指すものとする。板厚中央の温度は、放射温度計で測定した鋼板表面温度から、伝熱計算により求めることができる。また、熱間圧延後の冷却条件における温度条件は、板厚1/4位置における温度とし、冷却速度も板厚1/4位置における温度に基づいて算出された平均冷却速度を意味する。
上述した成分組成を有する鋼素材を熱間圧延して厚鋼板とする。前記鋼素材の製造方法は、とくに限定されないが、例えば、上記した組成を有する溶鋼を常法により溶製し、鋳造して製造することができる。前記溶製は、転炉、電気炉、誘導炉等、任意の方法により行うことができる。また、前記鋳造は、生産性の観点から連続鋳造法で行うことが好ましいが、造塊−分解圧延法により行うこともできる。前記鋼素材としては、例えば、鋼スラブを用いることができる。
上記熱間圧延によって得られた厚鋼板に伸長粒が残存すると音響異方性が低下するため、再加熱処理を行う。前記再加熱工程においては、特定の再加熱温度まで厚鋼板を加熱した後、前記再加熱温度に保持する。前記再加熱処理を行うことにより、均一で細かいオーステナイト組織とすることができる。
再加熱工程における再加熱温度が900℃未満であると、焼入性が低下して粗大な上部ベイナイトまたはフェライトが生成する。そのため、再加熱温度は900℃以上とする。
一方、再加熱温度が1000℃を超えると、オーステナイト粒が粗大となり、厚鋼板の靭性が低下する。そのため、再加熱温度1000℃以下とする。
再加熱処理の保持時間は10分以上とする。保持時間が10分未満では、オーステナイト粒径のバラツキが大きくなるからである。
次に、前記再加熱工程後の厚鋼板を、冷却する。本発明における冷却は、途中に空冷を挟んだ2回の加速冷却からなる。第1水冷工程において400℃〜550℃の冷却停止温度まで冷却を行った後、30〜300秒間空冷することによって、鋼板組織の80%以上をベイナイト変態させ、かつ未変態のオーステナイトへCを濃化させる。その後、再度加速冷却することで、未変態のオーステナイトを島状マルテンサイトに変態させることができる。まず、第1水冷工程における上限について以下に説明する。
第1水冷工程における冷却開始温度がAr3変態点未満であると、熱間圧延時に形成された伸長粒が残存する。そのため、冷却開始温度はAr3変態点以上とする。なお、Ar3変態点(℃)は下記(1)式により求めることができる。
Ar3=868−396C+25Si−68Mn−21Cu−36Ni−25Cr−30Mo…(1)
ただし、上記(1)式中のC、Si、Mn、Cu、Ni、Cr、およびMoは、各元素の含有量(質量%)を表し、当該元素が含有されていない場合は0とする。
冷却停止温度が550℃より高いと、フェライトが生成したり、ベイナイトへの変態が不十分となるなどし、必要な量の島状マルテンサイトが得られない。そのため、冷却停止温度は550℃以下とする。一方、冷却停止温度が400℃未満であると、ほぼ100%ベイナイト変態してしまい、島状マルテンサイトが得られない。そのため、冷却停止温度は400℃以上とする。
上記第1水冷工程における平均冷却速度が1℃/s未満であると、ベイナイトを主体とし、かつ所定の島状マルテンサイトを含む焼入組織が得られない。そのため、前記平均冷却速度は1℃/s以上とする。一方、平均冷却速度が200℃/sより高いと、鋼板内の各位置における温度制御が困難となり、板幅方向や圧延方向に材質のばらつきが出やすくなり、その結果、引張特性などの材質上のばらつきが生じる。そのため、平均冷却速度を200℃/s以下とする。
空冷時間:30〜300s
上記第1水冷工程終了後、空冷を行う。前記空冷を行う時間(以下、「空冷時間」という)が30s未満であると、ベイナイト変態率が不十分となり、島状マルテンサイトが得られない。そのため、空冷時間は30s以上とする。一方、空冷時間が300sより長いと、操業能率が悪くなる。そのため空冷時間は300s以下とする。
平均冷却速度:1〜200℃/s
上記空冷工程終了後、平均冷却速度:1〜200℃/sでの第2水冷工程を実施する。前記平均冷却速度が1℃/s未満であると、ベイナイトを主体とし、所定の島状マルテンサイトを含む焼入組織が得られない。そのため、平均冷却速度は1℃/s以上とする。一方、平均冷却速度が200℃/sより高いと、鋼板内の各位置における温度制御が困難となり、板幅方向や圧延方向に材質のばらつきが出やすくなり、その結果、引張特性などの材質上のばらつきが生じる。そのため、平均冷却速度を200℃/s以下とする。
第2水冷工程における冷却停止温度が300℃より高いと、島状マルテンサイトの生成が不十分となり、強度特性を満足できない。そのため、前記冷却停止温度を300℃以下とする。
本発明の一実施形態においては、厚鋼板の靭性を向上させるために、上記第2水冷工程後、任意に、さらに焼き戻しを行うことができる。
焼き戻し処理後のミクロ組織において、硬質相の硬度が、母相の硬度よりも十分に高ければ、高強度と低降伏比を両立させる効果を一層高めることができる。焼き戻し温度が400℃未満では、上記の効果が得られない。そのため、焼き戻し温度を400℃以上とする。一方、焼き戻し温度がAc1変態点以上であると、厚鋼板の強度が低下して780MPa以上の引張強さを達成し難くなる。そのため、焼き戻し温度はAc1変態点未満とする。なお、Ac1変態点(℃)は例えば、下記(2)式により求めることができる。
Ac1=751−27C+18Si−12Mn−23Cu−23Ni+24Cr+23Mo−40V−6Ti+233Nb−169Al・・・(1)
ただし、上記(1)式中のC、Si、Mn、Cu、Ni、Cr、Mo、V、Ti、Nb、およびAlは各合金元素の含有量(質量%)を表し、当該元素が含有されていない場合は0とする。
前記厚鋼板から、板厚1/4位置が観察位置となるように、組織観察用の試験片を採取した。前記試験片を、圧延方向と垂直な断面が観察面となるよう樹脂に埋め、鏡面研磨した。次いで、レペラ腐食を実施した後、倍率1000倍の走査電子顕微鏡で観察して組織の画像を撮影し、島状マルテンサイト組織を同定した。撮影された5視野分の画像を画像解析装置によって解析し、島状マルテンサイト組織の面積分率、平均円相当径、個数密度を求めた。
前記厚鋼板の板厚中央(板厚1/2位置)から、JIS4号引張試験片を採取した。前記引張試験片を用い、JIS Z 2241の規定に準拠して引張試験を実施して、厚鋼板の降伏強さ(YP)、引張強さ(TS)、降伏比(YR)を評価した。
前記厚鋼板の溶接部靭性を評価するために、溶接継手10を作成し、溶接継手10の溶接ボンド部におけるシャルピー吸収エネルギーを測定した。
厚鋼板の音響異方性を評価するために、JIS Z 3060に規定されている横波音速比を評価した。ここで、横波音速比は、横波の振動方向を圧延直交方向(C方向)としたときの音速CSC(m/秒)に対する、横波の振動方向を圧延方向(L方向)としたときの音速CSL(m/秒)の比、CSL/CSCとして定義される値である。
11 スキンプレート
12 ダイアフラム
13 当金
14 溶接金属
15 熱影響部(HAZ)
16 シャルピー試験片採取位置
17 ノッチ位置(ボンド部)
Claims (5)
- 質量%で、
C :0.03〜0.13%、
Si:0.01〜0.50%、
Mn:0.8〜3.0%、
P :0.015%以下、
S :0.0050%以下、
Al:0.005〜0.1%、
Ti:0.004〜0.030%、および
N :0.0015〜0.0065%を含有し、
残部がFeおよび不可避的不純物からなり、かつ、
N含有量(質量%)に対するTi含有量(質量%)の比Ti/Nが2.0超、4.2未満である成分組成を有し、
旧オーステナイト粒の平均円相当径が10〜40μm、
旧オーステナイト粒の平均アスペクト比が3.0以下、
ベイナイト相の面積分率が80%以上、
島状マルテンサイトの面積分率が5〜20%、
島状マルテンサイトの平均円相当径が1.0〜5.0μm、かつ
島状マルテンサイトの個数密度が1.0×103〜5.0×105個/mm2であるミクロ組織を有する、低降伏比高張力厚鋼板。 - 前記成分組成が、質量%で、
Cu:0.01〜1.0%、
Ni:0.01〜2.0%、
Cr:1.5%以下、
Mo:1.0%以下、
Nb:0.1%以下、
V :0.2%以下、
Ca:0.005%以下、
REM:0.02%以下、
Mg:0.005%以下、および
B :0.005%以下からなる群より選択される1または2以上をさらに含有する、請求項1に記載の低降伏比高張力厚鋼板。 - 質量%で、
C :0.03〜0.13%、
Si:0.01〜0.50%、
Mn:0.8〜3.0%、
P :0.015%以下、
S :0.0050%以下、
Al:0.005〜0.1%、
Ti:0.004〜0.030%、および
N :0.0015〜0.0065%を含有し、
残部がFeおよび不可避的不純物からなり、かつ、
N含有量(質量%)に対するTi含有量(質量%)の比Ti/Nが2.0超、4.2未満である成分組成を有する鋼素材を熱間圧延して厚鋼板とする熱間圧延工程と、
前記厚鋼板を、900〜1000℃の再加熱温度まで再加熱し、前記再加熱温度に10分以上保持する再加熱工程と、
前記再加熱工程後の厚鋼板を、Ar3変態点以上の冷却開始温度から、板厚1/4位置における平均冷却速度:1〜200℃/sで、400〜550℃の冷却停止温度まで冷却する第1水冷工程と、
前記第1水冷工程後の厚鋼板を30〜300s空冷する空冷工程と、
前記空冷工程後の厚鋼板を、板厚1/4位置における平均冷却速度:1〜200℃/sで、300℃以下の冷却停止温度まで冷却する第2水冷工程とを有する、
低降伏比高張力厚鋼板の製造方法。 - 前記成分組成が、質量%で、
Cu:0.01〜1.0%、
Ni:0.01〜2.0%、
Cr:1.5%以下、
Mo:1.0%以下、
Nb:0.1%以下、
V :0.2%以下、
Ca:0.005%以下、
REM:0.02%以下、
Mg:0.005%以下、および
B :0.005%以下からなる群より選択される1または2以上をさらに含有する、請求項3に記載の低降伏比高張力厚鋼板の製造方法。 - 前記第2水冷工程後の厚鋼板を、400℃以上Ac1変態点未満の焼き戻し温度で焼き戻す焼き戻し工程をさらに有する、請求項3または4に記載の低降伏比高張力厚鋼板の製造方法。
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