JP2018083863A - 樹脂成形体及び樹脂成形体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
さらに、セルロースに導入したカルボキシル基の静電的な作用を利用して、対イオンとしてカチオン性を有する様々な塩を形成することにより、特性の異なるセルロース修飾体を得ることができる。本処理では原料セルロースの結晶性を壊すことなく保持できるため、高い物理特性を有する。
工業的利用として盛んに開発が進められている一例として、樹脂との複合化がある。樹脂中にセルロース分散体を混合することにより、セルロースの軽量、高強度、高弾性率、低線熱膨張係数、高耐熱性を利用した樹脂の高機能化を目的とするものである。
この際の機能性向上の重要な要素として、樹脂中でのセルロース繊維の分散性が挙げられている。セルロース繊維が偏在または凝集していると、セルロース繊維混合の効果が顕著に低下することが知られている。
本発明は、製造工程や表示方法が簡便であり、情報の書き込みや消去の繰り返し表示が可能な表示材料に用いられる樹脂成形体及びその製造方法を提供する。
なお、ここで言う樹脂成形体とは、水性ディスパージョンや水性エマルジョンを有する合成樹脂と親水性繊維とを混合した組成物を用いて形成したフィルム状、シート状、構造体等の種々の形態を指す。また、組成物とは、合成樹脂と親水性繊維とを混合したものであり、加熱や光による構造形成や反応をする前の状態を指すものとする。
また、本発明の別の態様に係る樹脂成形体は、水性ディスパージョン成分及び水性エマルジョン成分の少なくとも一方を有する合成樹脂と、親水性繊維とを少なくとも含み、当該樹脂成形体の含水率が25%以上の当該樹脂成形体のヘイズをHZ1とし、前記含水率が8%以下の当該樹脂成形体のヘイズをHZ2とした場合、HZ1とHZ2が以下の(1)式及び(2)式を満たす。
HZ1−HZ2≧15(%) ・・・(1)
HZ2≦5(%) ・・・(2)
図1は、本発明の実施形態に係る樹脂成形体の一部分を模式的に示す図である。より詳しくは、図1(a)は、乾燥状態(常温常湿)にある樹脂成形体の外観を示す図であり、図1(b)は、湿潤状態(含水率が飽和)にある樹脂成形体の外観を示す図である。また、図1(c)は、乾燥状態(常温常湿)にある樹脂成形体の断面を示す図であり、図1(d)は、湿潤状態(含水率が飽和)にある樹脂成形体の断面を示す図である。なお、図1(c)及び図1(d)に示した斜線部は、断面である。
<合成樹脂4>
本実施形態に係る樹脂成形体10は、水性ディスパージョン成分及び水性エマルジョン成分の少なくとも一方を有する合成樹脂4を含んでいる。ここで、水性ディスパージョンや水性エマルジョンはそれぞれ水性ディスパーションや水性エマルションと呼ばれることがあり、水を含む水性分散媒中に分散された水性樹脂であれば、本実施形態に含まれるものとする。また、親水性繊維3と対になる表現として、水性ディスパージョンと水性エマルジョンの樹脂としての総称として合成樹脂4という表現を用いるものとする。
この水性ディスパージョンや水性エマルジョンは、主な分散媒として水を用い、ポリマーをサブミクロンから数ミクロンの粒径に分散させたものである。これらの分散媒を揮発させることによりポリマー同士が変形融合し、連続的な構造を形成する。
また、水性ディスパージョンや水性エマルジョンは、合成樹脂4の重合度は高いが合成樹脂4が個々に独立した微粒子を形成しているため、塗液としての粘度は低い。そのため、本実施形態の構成材料である親水性繊維3が高い粘度を有していても良好な混合性を得ることができる。
水性ディスパージョンや水性エマルジョンからなる合成樹脂4としては、例えば、酢酸ビニル系、ウレタン系、アクリル系、スチレン系、フェノール系、アミノ系、アミド系、ポリエステル系、エチレン系、ポリビニルアルコール系が用いられる。また、これらは単独でもよく、共重合したものや二種類以上併せて用いたものであってもよい。また、反応性の合成樹脂4を用いても構わない。その場合、例えば、硬化剤や硬化触媒、光重合開始剤、連鎖移動剤等を併用することができる。ここで、樹脂成形体10を構成する合成樹脂4と親水性繊維3との間での相分離により生じる脆性を良化するため、合成樹脂4としては柔軟性を有することが好ましく、ウレタン系がより好ましい。ウレタン系においては、ウレタン構造を構成するポリオールの種類によってポリエステル系、ポリエーテル系、ポリカーボネート系等が開発されており、いずれも用いることができる。
本実施形態に用いる親水性繊維3の主な役割としては、水性ディスパージョンや水性エマルジョンからなる合成樹脂4の疎水領域と含水による膨潤率が異なることにより、疎水領域間の界面上で入射光の散乱を生じさせることである。また、別の役割としては、合成樹脂4と適度な相互作用を有することにより、合成樹脂4の粒子の凝集サイズを調整したり、合成樹脂4の凝集界面同士を十分に結着させることである。また、親水性繊維3の繊維幅が大きすぎると含水率に関わらず光の界面による散乱が生じ、樹脂成形体10のヘイズが上昇してしまうため、親水性繊維3の繊維幅は十分に小さい必要がある。以上を鑑みると、親水性繊維3としては、少なくとも、水への膨潤率、イオン性、強度、繊維幅において本実施形態を満たすものであれば用いることができる。
また、透過型電子顕微鏡以外を用いた、樹脂成形体10中のセルロース繊維の繊維幅の測定方法は、例えば、原子間力顕微鏡を用いる方法である。具体的には、原子間力顕微鏡の位相モードを用いると、セルロース繊維と合成樹脂の特性の違いによりカンチレバー振動の位相にずれが生じるので、その位相のずれからセルロース繊維を検出しその幅を測定することができる。
このTEMPO酸化法においては、結晶性のセルロースミクロフィブリルの表面のみを酸化し、結晶内部には酸化が起こらないため、結晶構造を維持できる。そのため、生成物はセルロース本来の高強度、高弾性率、低線熱膨張係数、高耐熱性の特性を有する。
本実施形態では、上述のTEMPO酸化法による酸化処理を次の手順で行った。
水中で分散させたセルロースにN−オキシル化合物と酸化剤や共酸化剤を添加してセルロースの酸化を行う。酸化反応中に水酸化ナトリウムを添加し、反応系内のpHを9から11に制御する。反応温度は0℃以上40℃以下が好適である。この時、セルロース繊維表面のC6位の水酸基がカルボキシル基に酸化される。反応終了後、十分水洗して回収し、本実施形態における構成材料(親水性繊維3)として用いることができる。
セルロースに導入されるカルボキシル基の含有量は、反応条件を適宜設定することにより調整可能である。カルボキシル基が導入されたセルロースは、後述する分散工程を経てカルボキシル基の荷電反発により分散媒中に分散することから、セルロース中のカルボキシル基の含有量が少なすぎると安定的に分散媒中に分散させることができない。また、セルロース中のカルボキシル基の含有量が多すぎると、分散媒への親和性が増大し耐水性が低下する。
なお、セルロースに含有されるカルボキシル基量は、例えば、以下の方法にて算出される。酸化処理したセルロースの乾燥重量換算0.2gをビーカーにとり、イオン交換水80mlを添加する。そこに0.01M塩化ナトリウム水溶液5mlを加え、攪拌させながら0.1M塩酸を加えて全体がpH2.0となるように調整する。
酸化反応を停止させた後、生成物をろ過により反応液中から回収する。反応終了後はセルロースに導入されたカルボキシル基は、反応媒中に存在するカチオンに由来する金属イオンを対イオンとした塩を形成する。
(A)カルボキシル基が塩を形成したままろ別する方法、
(B)反応液に酸を添加して系内を酸性下に調整し、カルボン酸としてろ別する方法、
(C)有機溶媒を添加して凝集させた後にろ別する方法が挙げられる。
その中でも、ハンドリング性や回収効率、廃液処理の観点から、(B)カルボン酸として回収する方法が好適である。また、対イオンとして金属イオンを含有しないほうが副生成物の生成を抑制でき、置換効率に優れるため、(B)カルボン酸として回収する方法が好ましい。
さらに回収したセルロースは洗浄を繰り返すことにより精製でき、触媒や副生成物を除去することができる。このとき、塩酸等を用いてpH3以下の酸性条件に調製した洗浄液で洗浄を繰り返した後に、純水で洗浄を繰り返すことにより、残存する金属イオン及び塩類の量を低減することができる。
特に、1当量以上1.8当量以下の範囲内であると、過剰量のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物を添加することなく対イオン交換できるため、より好ましい。また、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物を過剰量添加した後に、再度セルロースを水洗することにより過剰量のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物を除去することも可能である。過剰なアルカリを除去することにより、セルロース等の材料の経時的な劣化を抑えることが可能になる。
ここで、アルカリ金属種またはアルカリ土類金属種としては、セルロースがナノオーダーで分散される限りにおいて特に限定されないが、分散性の観点から、ナトリウムが好ましい。
以下、本実施形態に係る樹脂成形体10の製造方法について説明する。図2は本実施形態に係る樹脂成形体10の製造工程を模式的に示す図である。
本実施形態における樹脂成形体10は、水性ディスパージョンや水性エマルジョンからなる合成樹脂4と、親水性繊維3とを混合した組成物20により形成される。このとき、親水性繊維3を予め水や水性溶剤により分散させておくことにより、合成樹脂4との混合性を向上させることができる。ウェット塗工における塗液の固形分濃度を低下させない等の目的のため、未分散状態の親水性繊維3を合成樹脂4中で分散処理を施してもよい。分散処理の方法としては、水性ディスパージョンや水性エマルジョンの樹脂粒子の分散媒中での分散性やその後の樹脂成形体10の形成において問題のない場合において、既に知られている各種分散処理が可能である。例えば、ホモミキサー処理、回転刃つきミキサー処理、高圧ホモジナイザー処理、超高圧ホモジナイザー処理、超音波ホモジナイザー処理、ナノジナイザー処理、ディスク型レファイナー処理、コニカル型レファイナー処理、ダブルディスク型レファイナー処理、グラインダー処理、ボールミル処理、ニ軸混練機による混練処理、水中対向処理等がある。この中でも、微細化効率の面から回転刃つきミキサー処理、高圧ホモジナイザー処理、超高圧ホモジナイザー処理、超音波ホモジナイザー処理が好適である。なお、これらの処理のうち、二つ以上の処理方法を組み合わせて分散を行うことも可能である。
塗工方法としては公知の方法を用いることができる。具体的には、バーコート法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、フローコーティング法、スプレーコーティング法、ロールコーティング法、グラビアロールコーティング法、エアドクターコーティング法、プレードコーティング法、ワイヤードクターコーティング法、ナイフコーティング法、リバースコーティング法、トランスファロールコーティング法、マイクログラビアコーティング法、キスコーティング法、キャストコーティング法、スロットオリフィスコーティング法、カレンダーコーティング法、ダイコーティング法等を用いることができる。
合成樹脂4と親水性繊維3とを混合した組成物20を塗工する基材の濡れ性や密着性を向上させる目的で、基材に前処理を施してもよい。前処理方法としては特に制限されることはなく、例えば、予めアンカー層を形成してもよいし、コロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理等を施してもよい。
支持体40上に塗工した組成物20を乾燥させて、つまり、系内の余分な分散媒を除去することにより樹脂成形体10を形成することができる。さらに、樹脂成形体10の作製後に樹脂の反応進行やその他の特性向上を目的として、樹脂成形体10を追加熱してもよい。また、光反応性材料を用いる場合は、反応を進行させる波長の光を樹脂成形体10に照射しても構わない。
こうして形成した樹脂成形体10を図2(b)に示す。
得られた樹脂成形体10の20mm厚に換算した際の660nmでの光線透過率は、樹脂成形体10が乾燥した状態で70%以上であることが好ましい。さらに、80%以上が特に好ましい。本実施形態による樹脂成形体10は、含水率による透明度の可逆性を活用したものであり、透明状態においては少なくとも目視にて透明性を高めることにより、白濁不透明状態とのコントラストにより視認性を向上することができる。ここで、「樹脂成形体10が乾燥した状態」とは、樹脂成形体10の含水率が8%以下の状態をいう。または、樹脂成形体10の含水率が常温常湿よりも低い湿度の環境下で平衡に達した状態をいう。
樹脂成形体10を形成するその他の支持体40としては、吸水速度や透明度の制御のため、保湿性を有する保湿層を積層したものを用いても構わない。保湿層を構成する保湿剤には特に限定はなく、例えば、セルロース、セルロース誘導体、キチン、キトサン誘導体、デンプン、ヒアルロン酸、アルギン酸、ゼラチン、カオリン、デキストリン、グリセリン、ポリグリセリン、D−ソルビトール、PVAなどを挙げることができ、特にグリセリンやソルビトールが好ましい。また、保湿層に用いる保湿剤は、1種類のみを用いることができ、2種類以上を組み合わせて用いても構わない。
本実施形態では、樹脂成形体10に熱硬化性樹脂をさらに添加しても構わない。熱硬化性樹脂を用いると、塗工した組成物20中に含まれた水等の分散媒を除去する工程と、合成樹脂4の粒子同士が融着する成形工程とを同時に進行させることができる
また、樹脂成形体10に紫外線や電子線などの活性エネルギー線を照射することにより樹脂の硬化を選択的に進行させることが可能であることから、光硬化性樹脂をさらに添加しても構わない。なお、硬化反応の過程で溶剤の除去や反応性を向上させる目的などで加熱工程を入れても構わない。
また、耐水性や耐磨耗性を向上させるなどの目的により架橋構造を形成するため、樹脂成形体10は各種架橋剤を含んでもよい。加熱によって架橋構造を形成する架橋剤としては、限定されないが、例えば、オキサゾリン、ジビニルスルホン、カルボジイミド、ジヒドラジン、ジヒドラジド、エピクロルヒドリン、グリオキザール、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物などを用いることができる。また、それらの中の2種類以上を混合して用いることも可能である。これらの中で、カルボジイミドは大きなエネルギーを加えなくても効率的に架橋構造を形成することができるため好ましい。
また、合成樹脂4と親水性繊維3とを混合した組成物20に凝集や沈殿を生じない範囲において、粘度調整や乾燥速度の調整、異種材料との親和性向上等を目的として、付加したい機能に応じて、水をはじめ、様々な有機溶媒を混合させることができる。
また、樹脂成形体10は金属等を含んでもよい。樹脂成形体10に含まれる金属としては、例えば、金、銀、白金、パラジウム、ルテニウム、イリジウム、ロジウム、オスミウムの白金族元素の他、鉄、鉛、銅、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、バナジウム、モリブデン、ガリウム、アルミニウムなどの金属またはこれらの合金、または酸化物、複酸化物、炭化物などを用いることができる。
なお、凝集や沈殿が生成しない範囲においては、より組成物20内の荷電反発を増大させる目的や分散体の粘度を制御する目的で、水溶性多糖類を含む各種添加物、各種樹脂を含んでもよい。例えば、化学修飾したセルロース、カラギーナン、キサンタンガム、グアーガム、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、寒天、可溶化澱粉、グリセリン、ソルビトール、消泡剤、水溶性高分子、合成高分子等を含めることができる。あるいは塗工性やぬれ性など機能性付与などの為に、各種溶剤を含んでもよい。例えば、アルコール類、セルソルブ類、グリコール類等を含めることができる。さらには意匠性を付与する目的で、各種染料や顔料、有機フィラー、無機フィラー等を含んでも構わない。また、反応性を向上させるなどの目的で、酸やアルカリを添加することによってpHを調整することができる。
(1)本実施形態の一様態に係る樹脂成形体10は、水性ディスパージョン成分及び水性エマルジョン成分の少なくとも一方を有する合成樹脂4と、親水性繊維3とを少なくとも含み、樹脂成形体10の含水率が25%以上の状態での樹脂成形体10のヘイズをHZ1とし、その含水率が8%以下の状態での樹脂成形体10のヘイズをHZ2とした場合、HZ1とHZ2が以下の(3)式及び(4)式を満たしている。
HZ1−HZ2≧15(%) ・・・(3)
HZ2≦5(%) ・・・(4)
このような構成であれば、含水率の変化による可逆的な透明度変化を利用して、目視可能な各種情報の書き込み及び消去が繰り返し可能となる。
HZ1−HZ2≧15(%) ・・・(5)
HZ2≦5(%) ・・・(6)
このような構成であれば、含水率の変化による可逆的な透明度変化を利用して、目視可能な各種情報を書き込み及び消去が繰り返し可能となる。
このような構成であれば、樹脂成形体10を情報の書き込みや消去の繰り返し表示が可能な表示材料として用いることができる。
(4)また、本実施形態に係る樹脂成形体10に含まれる親水性繊維3は、100重量部の合成樹脂4に対して5重量部以上200重量部以下の範囲内であってもよい。
このような構成であれば、情報の書き込みや消去の繰り返し表示を確実にすることができる。
このような構成であれば、樹脂成形体10に十分な透明性を付与することができる。
(6)本実施形態に係る樹脂成形体10の含水率が常温常湿よりも低い湿度の環境下で平衡に達した状態での660nmの光線透過率が膜厚20nm換算で70%以上であってもよい。
このような構成であれば、樹脂成形体10に十分な透明性を付与することができる。
このような構成であれば、情報の書き込みや消去の繰り返し表示をより明確にすることができる。
(8)また、本実施形態に係る樹脂成形体10に含まれる親水性繊維3は、セルロースであってもよい。
このような構成であれば、情報の書き込みや消去の繰り返し表示をより確実にすることができる。
このような構成であれば、樹脂成形体10の機械的強度を高めることができる。
(10)本実施形態に係る樹脂成形体10は、1種類以上の光硬化性樹脂をさらに含んでもよい。
このような構成であれば、樹脂成形体10の機械的強度を高めることができる。
(11)本実施形態に係る樹脂成形体10の厚さTは、1μm以上500μm以下の範囲内であってもよい。
このような構成であれば、樹脂成形体10に強度と生産性を付与することができる。
このような構成であれば、含水率の変化による可逆的な透明度変化を利用して、目視可能な各種情報を書き込み及び消去が繰り返し可能となる。
(13)本実施形態の一様態に係る樹脂成形体10の製造方法は、上述の樹脂成形体10を、支持体40上にウェット塗工により形成する。
このような構成であれば、含水率の変化による可逆的な透明度変化を利用して、目視可能な各種情報を書き込み及び消去が繰り返し可能な樹脂成形体10を製造することができる。
以下に、本発明の実施例を説明する。なお、以下の実施例は本発明の一例であり、本発明はこれらの実施例には限定されない。
(実施例1)
以下の手順により、水性ディスパージョン及び水性エマルジョンの少なくとも一方を含む合成樹脂4と、親水性繊維3とを混合した組成物20の調整及び樹脂成形体10の作製を行った。
親水性繊維3として用いるセルロース繊維を作製した。
(1)試薬・材料
・セルロース: 漂白クラフトパルプ(フレッチャー チャレンジ カナダ「MACHENZIE」)
・TEMPO: 市販品(東京化成工業社製、98%)
次亜塩素酸ナトリウム: 市販品(和光純薬社製、CL:5%)
・臭化ナトリウム: 市販品(和光純薬社製)
乾燥重量10gの漂白クラフトパルプを2lのガラスビーカーに入れたイオン交換水500ml中で一晩静置し、パルプを膨潤させた。ここにTEMPO0.1gと臭化ナトリウム1gとを添加して攪拌し、パルプ懸濁液とした。さらに攪拌しながらセルロース重量当たり5mmol/gの次亜塩素酸ナトリウムを添加した。この際、約1Nの水酸化ナトリウム水溶液を添加してパルプ懸濁液のpHを約10.5に保持した。
その後、2時間反応させ、エタノール10gを添加して反応を停止し、セルロースにカルボキシル基が導入された酸化セルロースを得た。なお、この際導入されたカルボキシル基は反応媒中に残存する反応試薬に由来するナトリウムイオンを対イオンとした塩を形成する。続いて0.5Nの塩酸を滴下してpHを2まで低下させた。
ガラスフィルターを用いてセルロースをろ別し、さらに0.05Nの塩酸で3回洗浄してカルボキシル基をカルボン酸とした後に純水で5回洗浄し、固形分濃度20%の湿潤状態の酸化セルロースを得た。得られた酸化セルロースは、水酸化ナトリウムによる中和滴定からセルロースの乾燥重量当たりカルボキシル基量は1.6mmol/gと算出された。
上記により調製した酸化セルロースを固形分濃度5%となるよう水を加えて懸濁液とし、ここにアルカリ種としてアルカリ金属の水酸化物である水酸化ナトリウムを酸化セルロースのカルボキシル基量に対して1.0当量加えた。2時間攪拌した後ガラスフィルターを用いて酸化セルロースをろ別し、対イオン置換酸化セルロースを得た。
(4)分散処理
溶媒置換した酸化セルロースを分散媒となる水に加え、ミキサー(大阪ケミカル社製、アブソルートミル、14,000rpm)を用いて1時間処理することにより固形分濃度0.2%のセルロース繊維分散体を得た。得られた分散体の660nmにおける光線透過率は94%を示した。また、このときのセルロース繊維の平均繊維幅は10nmであった。
(1)組成物20を作製
合成樹脂4(日華化学社製、ポリウレタンディスパージョンタイプ、ネオステッカー1200)と上述した手順にて作製したセルロース繊維とが固形分重量比にてこの順に100:40となるようにスターラーにて一晩混合し、合成樹脂4とセルロース繊維の組成物20を調製した。
(2)樹脂成形体10の作製
調製した上記の組成物20をPETフィルム(ルミラーT60−75μm:東レ)にアプリケーターにて塗工してオーブンにて120℃で10分間乾燥した後にPETフィルムを剥離することで、20μm厚の樹脂成形体10を作製した。
合成樹脂4とセルロース繊維とが固形分重量比にてこの順に100:80となるように調製した。その他は実施例1と同様の条件にて樹脂成形体10を作製した。
(実施例3)
合成樹脂4とセルロース繊維とが固形分重量比にてこの順に100:120となるように調製した。その他は実施例1と同様の条件にて樹脂成形体10を作製した。
(実施例4)
カルボジイミド基を持つ架橋剤(日清紡ケミカル社製、カルボジライトV−02−L2)を、合成樹脂4とセルロース繊維と架橋剤とが固形分重量比にてこの順に100:80:10となるように調製した。その他は実施例2と同様の条件にて樹脂成形体10を作製した。
架橋剤による熱硬化性樹脂であるPVA(クラレ社製、PVA105)の15wt%水溶液を作製し、合成樹脂4とセルロース繊維とPVAとが固形分重量比にてこの順に100:80:10となるように調製した。その他は実施例2と同様の条件にて樹脂成形体10を作製した。
(実施例6)
合成樹脂4とセルロース繊維と光硬化性樹脂(KJケミカルズ社製、HEAA)と光重合開始剤(BASF社製、Irgacure500)とが固形分重量比にてこの順に100:80:10:0.3となるように調製した。その他は実施例2と同様の条件にて樹脂成形体10を作製した。
(実施例7)
合成樹脂4とセルロース繊維とが固形分重量比にてこの順に100:250となるように調製した。その他は実施例2と同様の条件にて樹脂成形体10を作製した。
セルロース繊維の代わりに同重量の水を用いた他は実施例2と同様の条件にて樹脂成形体10を作製した。
(比較例2)
合成樹脂4の代わりに同重量の水を用いた他は実施例2と同様の条件にて樹脂成形体10を作製した。
(比較例3)
セルロース繊維の作製においてミキサーを用いた分散処理時間を10分とした。その他は実施例2と同様の条件にて樹脂成形体10を作製した。また、このときのセルロース繊維の平均繊維幅は500nmであった。
実施例1〜7及び、比較例1〜3について、作製条件を後述の表1に、評価結果を表2に示した。
[セルロース繊維幅の測定]
セルロース繊維が0.001wt%となるように水で希釈し、マイカ上に展開して自然乾燥させた後、サンプルを透過型電子顕微鏡にて観察した。100サンプルを無作為に取り出し、平均値を平均繊維幅(nm)として求めた。
得られた樹脂成形体10について、水に1分間浸漬させた後に表面の水分を拭き取り、直後に樹脂成形体10の形成時にPETと反対側の面についてヘイズを測定した。このときの値をHZ1とした。さらに、水に浸漬させたサンプルを60℃のオーブンにて30分間乾燥させた後に23℃、50%RHの恒温恒湿槽にて2日間調湿した後に、同様にヘイズを測定した。このときの値をHZ2とした。
[樹脂成形体10の光線透過率]
樹脂成形体10について、ヘイズHZ2を測定したのと同様の条件下にて、UV−VIS分光光度計(島津製作所社製、UV3600)を用いて波長660nmにおける光線透過率(%)を測定した。
ヘイズHZ2を測定したのと同様の条件下の樹脂成形体10について、水分を保持できる筆状の筆記具を用いて樹脂成形体10上に書き込みを行い、目視にて視認できるかを官能評価した。なお、視認性が極めて高かったものを「◎」、視認性が高かったものを「○」、使用できる程度に視認性が高かったものを「△」、視認性が低かったものを「×」として評価した。
[繰り返し耐久性]
樹脂成形体10を水への1分間の浸漬と60℃オーブンでの30分間の乾燥を100回繰り返した際の視認性を目視にて官能評価した。なお、上述した視認性の評価と同様に、視認性が極めて高かったものを「◎」、視認性が高かったものを「○」、使用できる程度に視認性が高かったものを「△」、視認性が低かったものを「×」として評価した。
また、実施例2〜実施例4に示すように、親水性繊維3とセルロース繊維とをほぼ等量含む樹脂成形体10であれば、視認性がさらに高まるとともに、光線透過率も高い値をとることがわかる。
2…合成樹脂凝集体
3…親水性繊維
4…合成樹脂
10…樹脂成形体
20…組成物
30…バーコーター
40…支持体
T…厚さ
Claims (13)
- 水性ディスパージョン成分及び水性エマルジョン成分の少なくとも一方を有する合成樹脂と、親水性繊維とを少なくとも含み、
前記親水性繊維の平均繊維幅は、3nm以上200nm以下の範囲内であり、
前記親水性繊維の含有量は、前記合成樹脂100重量部に対して5重量部以上200重量部以下の範囲内であることを特徴とする樹脂成形体。 - 水性ディスパージョン成分及び水性エマルジョン成分の少なくとも一方を有する合成樹脂と、親水性繊維とを少なくとも含み、
当該樹脂成形体の含水率が25%以上の当該樹脂成形体のヘイズをHZ1とし、
前記含水率が8%以下の当該樹脂成形体のヘイズをHZ2とした場合、HZ1とHZ2が以下の(1)式及び(2)式を満たすことを特徴とする樹脂成形体。
HZ1−HZ2≧15(%) ・・・(1)
HZ2≦5(%) ・・・(2) - 水性ディスパージョン成分及び水性エマルジョン成分の少なくとも一方を有する合成樹脂と、親水性繊維とを少なくとも含み、
当該樹脂成形体の含水率が飽和に達した状態での当該樹脂成形体のヘイズをHZ1とし、
前記含水率が常温常湿の環境下で平衡に達した状態での当該樹脂成形体のヘイズをHZ2とした場合、HZ1とHZ2が以下の(1)式及び(2)式を満たすことを特徴とする樹脂成形体。
HZ1−HZ2≧15(%) ・・・(1)
HZ2≦5(%) ・・・(2) - 前記含水率が8%以下の状態での660nmの光線透過率が膜厚20nm換算で70%以上であることを特徴とする請求項2に記載の樹脂成形体。
- 前記含水率が常温常湿よりも低い湿度の環境下で平衡に達した状態での660nmの光線透過率が膜厚20nm換算で70%以上であることを特徴とする請求項3に記載の樹脂成形体。
- 前記親水性繊維の平均繊維幅は、3nm以上200nm以下の範囲内であることを特徴とする請求項2から請求項5のいずれか1項に記載の樹脂成形体。
- 前記親水性繊維の含有量は、前記合成樹脂100重量部に対して5重量部以上200重量部以下の範囲内であることを特徴とする請求項2から請求項6のいずれか1項に記載の樹脂成形体。
- 前記親水性繊維は、セルロースであることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の樹脂成形体。
- 1種類以上の熱硬化性樹脂をさらに含むことを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の樹脂成形体。
- 1種類以上の光硬化性樹脂をさらに含むことを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の樹脂成形体。
- 前記樹脂成形体の厚みは、1μm以上500μm以下の範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の樹脂成形体。
- 前記合成樹脂が凝集して合成樹脂凝集体を形成しており、
前記親水性繊維は、前記合成樹脂凝集体の表面を覆うように配置されていることを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の樹脂成形体。 - 請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の樹脂成形体を、支持体上にウェット塗工により形成することを特徴とする樹脂成形体の製造方法。
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