以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
なお、本明細書に示す各図面では、説明のため、一部の構成部材の大きさを誇張して表現している場合がある。各図面において図示される各部材の相対的な大きさは、必ずしも実際の部材間における大小関係を正確に表現するものではない。
また、以下では、一例として、連続鋳造の対象が鉄鋼であり、溶融金属が溶鋼である実施形態について説明する。ただし、本発明はかかる例に限定されず、本発明は、他の金属に対する連続鋳造に対して適用されてもよい。
(1.従来技術についての検討と本発明に想到した背景)
本発明の好適な実施形態について説明するに先立ち、本発明をより明確なものとするために、本発明者らが本発明に想到した背景について説明する。
(1−1.従来の浸漬ノズルについての検討)
上述したように、連続鋳造においては、鋳型内の溶鋼の流動を制御するために、浸漬ノズルの構造を工夫し、当該浸漬ノズルからの吐出流を制御する技術が開発されている。
例えば、浸漬ノズル内において、流路に沿った安定的な流れでなく、流路から外れた偏った流れ(偏流)が発生することがある。このような偏流が発生すると、吐出流が不安定なものとなり、鋳型内の溶鋼の流動に悪影響を及ぼす可能性がある。
例えば、浸漬ノズル内での溶鋼の偏流は、溶鋼の流量制御に起因して生じることがある。具体的には、鋼の連続鋳造においては、タンディッシュから鋳型内に供給する溶鋼の流量制御のために、浸漬ノズルの入口(上端)にスライディングノズル(スライディングゲートともいう)と呼ばれる装置を設置する方法、あるいはストッパーと呼ばれる装置を設置する方法の、2種類の流量制御方式が一般的に用いられている。
図1−図4は、スライディングノズル又はストッパーが設置された一般的な既存の浸漬ノズルの構成を概略的に示す図である。図1は、入口にスライディングノズルが設置された一般的な既存の浸漬ノズルの鋳型幅方向と平行な断面における断面図である。図2は、図1に示す浸漬ノズルの鋳型厚み方向と平行な断面における断面図である。図3は、入口にストッパーが設置された一般的な既存の浸漬ノズルの鋳型幅方向と平行な断面における断面図である。図4は、図3に示す浸漬ノズルの鋳型厚み方向と平行な断面における断面図である。図1−図4では、いずれも、浸漬ノズル内での溶鋼の流れを、模擬的に矢印で示している。
なお、以下の説明では、上下方向をz軸方向とも呼称する。上下方向のことを鉛直方向又は高さ方向とも呼称する。また、z軸方向と垂直な平面(水平面)内における互いに直交する2方向を、それぞれ、x軸方向及びy軸方向とも呼称する。また、x軸方向を、水平面内において鋳型幅方向と平行な方向として定義し、y軸方向を、水平面内において鋳型厚み方向と平行な方向として定義する。
図1及び図2を参照すると、一般的な既存の浸漬ノズル50は、内径が略一様の円筒形状を有する。また、浸漬ノズル50の下端近傍の側壁には、互いに対向するように一対の吐出孔501が設けられる。浸漬ノズル50が連続鋳造機に設置される場合には、当該一対の吐出孔501の開口方向が鋳型幅方向(x軸方向)に向くように(すなわち、一対の吐出孔501が鋳型短辺面とそれぞれ対向するように)、当該浸漬ノズル50が鋳型に対して設置される。
スライディングノズル301は、開口部が設けられた耐火物製の3枚のプレート303が重ね合わされて構成される。これら3枚のプレート303の開口部を介して、溶鋼が浸漬ノズル内に注入される。これら3枚のプレート303のうち、中間のプレート303は、他の2枚のプレート303に対して水平面内方向に相対的に移動可能に構成されており、この中間のプレート303の移動により、開口部305の実効的な面積を変化させ、溶鋼の流量を調整することができる。
一方、図3及び図4を参照すると、ストッパー310は、耐火物製の棒から構成される。当該棒の下端と浸漬ノズル50の上端の開口部との距離の変化により、当該浸漬ノズル50の上端の開口面積を変化させ、溶鋼の流量を調整することができる。
一般的に、スライディングノズル301は、制御性がストッパー310よりも高いことから、スループットが比較的大きい場合に使用され、ストッパー310は、スループットが比較的小さい場合に使用されることが多い。
ここで、スライディングノズル301では、図2に示すように、通常、鋳型厚み方向に中間のプレート303が摺動されて、溶鋼の流量が調整される。そのため、浸漬ノズル50の入口において、各プレート303の開口部305が鋳型厚み方向に偏芯することとなるため、浸漬ノズル50内に偏流が発生し得る。また、ストッパー310を使用した場合には、ストッパー310の下端と浸漬ノズル50の上端の開口部との間の空間を通過して溶鋼が浸漬ノズル50内に注入されることとなるが、ストッパー310の中心軸と浸漬ノズル50の中心軸とは厳密には一致していないため、当該空間は、浸漬ノズル50の中心軸に対して必ずしも対称には形成され得ない。そのため、やはり浸漬ノズル50内に偏流が発生し得る。
発明者らが、水モデル実験や数値解析シミュレーションによって、このような一般的な既存の浸漬ノズル50内における溶鋼偏流の挙動を解析した結果、吐出孔501において、溶鋼の流動が、x軸方向と略平行な方向を回転軸とする(より厳密には吐出孔501の延伸方向と略平行な方向を回転軸とする)渦を形成することが分かった。すなわち、吐出流が旋回流として形成されることが分かった。
ここで、一般的に、連続鋳造時には、浸漬ノズル50の吐出孔501の上端は鋳型内の溶鋼湯面下100mm〜400mmに位置する。そして、湯面からの輻射熱を弱めるとともに作業スペースを確保する観点から、湯面上方に所定の広さの空間が必要となるため、浸漬ノズル50の長さは例えば1m程度である。また、浸漬ノズル50の内径は、例えば100mm程度である。このように、浸漬ノズル50においては、長さと内径の比が大きいため、浸漬ノズル50内における溶鋼の流れは複雑なものになる。具体的には、解析の結果、浸漬ノズル50内の偏流は停滞したり、周期的に回転方向が変わったりしていることが分かった。
そして、このような浸漬ノズル50内の偏流の複雑な挙動に起因して、吐出流における旋回流の回転軸の位置や、旋回流の大きさ、旋回流における溶鋼の流速等は、周期的に変動することが分かった。また、実際に浸漬ノズル50を用いて連続鋳造を行って得られた鋳片を調査したところ、このような吐出流における旋回流の特性の時間変動に起因すると思われる鋳片の品質の時間変動が確認された。
以上の結果から、鋳片の品質を向上させるためには、浸漬ノズル50内における溶鋼偏流に起因して生じる、吐出流における旋回流の特性の時間変動を抑制することが有効であると考えられる。
一方、浸漬ノズルでは、精錬の脱酸に使用されるアルミニウムが酸化されて生成されるアルミナが当該浸漬ノズルの内壁に付着、堆積して、ノズル閉塞を引き起こすことが知られている。そこで、図1−図4に示すような一般的な浸漬ノズル50を用いた連続鋳造では、ノズル閉塞を防止するために、アルゴンガスや窒素等の不活性ガスを、溶鋼とともに当該浸漬ノズル50内に吹き込むことが広く行われている。
ここで、この吹き込まれた不活性ガスは、アルミナ等の介在物を吸着し、吐出孔501から鋳型内に排出された後、鋳型内を浮上して湯面から脱離することが期待されるものの、一部は凝固シェルに捕捉され、鋳片において欠陥となることが知られている。そのため、鋳片の品質を向上させるためには、溶鋼内における気泡の浮上性を高めることが重要となる。より具体的には、吐出孔から吐出流とともに噴出された気泡が、凝固シェルに衝突することなく溶鋼湯面まで到達するような、当該気泡の浮上の挙動が求められる。
このように、連続鋳造において鋳片の品質を向上させるためには、浸漬ノズル50内における溶鋼偏流に起因して生じる、吐出流における旋回流の特性の時間変動を抑制することと、溶鋼内における不活性ガスの気泡の浮上性を高めること、を両立させることが重要であると考えられる。
かかる2つの目的をともに達成し得る従来技術について検討すると、例えば上記特許文献1には、内壁に段差構造を設けた浸漬ノズルが開示されている。特許文献1によれば、かかる構成により、浸漬ノズル内の溶鋼の偏流を抑制する効果が得られるとともに、ノズル閉塞を抑制する効果が得られるとしている。従って、特許文献1に記載の浸漬ノズルを用いることにより、そもそも吐出流が旋回流として形成されることを防止することができるとともに、ノズル閉塞防止のための不活性ガスの吹き込みを行う必要もなくなるため、上記2つの目的をともに達成することができる可能性がある。しかしながら、上述したように、特許文献1に記載の浸漬ノズルは、その構造が複雑であるため、かかる構造を採用することはコスト等の面から現実的でない。
一方、例えば上記特許文献2には、浸漬ノズル内の鉛直部(すなわち、吐出孔に至るまでの円筒形状の流路)に旋回羽根を設けた構造が開示されている。特許文献2によれば、かかる構成により、浸漬ノズル内に旋回流が形成され、吐出孔全体からほぼ均一な流速で溶融金属が吐出されることとなるため、吐出流の流速を低減することができ、気泡の浮上性を高めることができるとしている。また、特許文献2に記載の浸漬ノズルによれば、旋回羽根によって旋回流が安定的に形成され得るとともに、内圧が高められるため、吐出流の左右偏流が抑制される(すなわち、左右の吐出流について略均一な流れが形成され得る)効果も得られると考えられる。
しかしながら、特許文献2に記載の技術は、1孔の浸漬ノズルを対象としたものであり、かかる技術を2孔の浸漬ノズルに適用した場合には、鉛直部においては安定的な旋回流が形成され得ると考えられるが、吐出流の旋回性も安定的になるとは限らない。すなわち、特許文献2に記載の技術では、2孔の浸漬ノズルの吐出流における旋回流の特性の時間変動が効果的に抑制され得るかどうかは不明である。また、流路の途中に旋回羽根を設けると、当該旋回羽根に介在物が付着、堆積し、当該旋回羽根の動作が正常に行われなくなることが懸念される。すなわち、特許文献2に記載の浸漬ノズルは長時間の使用に耐えず効果の持続性に課題がある可能性がある。
(1−2.本発明に想到した背景と、本発明の基本原理)
以上、本発明者らが従来の浸漬ノズルについて検討した結果について説明した。以上説明したように、鋳片の品質向上のためには、浸漬ノズル内における溶鋼偏流に起因して生じる、吐出流における旋回流の特性の時間変動を抑制することと、溶鋼内における不活性ガスの気泡の浮上性を高めること、を両立させることが重要であると考えられる。しかしながら、従来の浸漬ノズルでは、これら2つの目的を好適に達成し得ることは困難であった。
以上の事情に鑑みて、本発明者らは、これら2つの目的を好適に達成し得る技術について鋭意検討した結果、本発明に想到した。具体的には、本発明者らは、鋭意検討の結果、以下の着想に至った。
浸漬ノズルの吐出孔から流出した気泡は、拡散しながら(すなわち、水平面内において広がりながら)鋳型内の溶鋼の湯面に浮上しようとする。そのため、鋳造条件(浸漬ノズルの浸漬深さ、及び溶鋼を供給する流量等)にも依存するが、気泡を凝固シェルに衝突させることなく湯面まで浮上させるための好適な条件は、吐出孔における気泡の流出の起点を、当該吐出孔の略中心に集中させることであると考えられる。気泡を、吐出孔全体から流出させるのではなく、当該吐出孔の略中心から集中的に流出させることにより、溶鋼内において気泡が拡散する度合いをより小さくすることができ、気泡が凝固シェルに衝突する可能性を低下させることができると考えられるからである。また、気泡を吐出孔の略中心に集中させることにより、気泡同士が集積、合体することも期待できる。気泡同士が集積、合体し、その体積が大きくなれば、それだけ浮上速度も増加するため、浮上中における溶鋼内での気泡の広がり具合をより小さくすることができ、気泡が凝固シェルに衝突する可能性を更に低下させることができると考えられる。
これを実現するために、本発明者らは、上述した、浸漬ノズル内における溶鋼偏流に起因して生じる吐出流の渦を利用することに想到した。具体的には、この吐出流の渦を安定的に形成することができれば、すなわち、吐出流を安定的な旋回流とすることができれば、旋回流の遠心力により、溶鋼よりも比重が小さい気泡を、その旋回流の回転軸近傍に集めることができる。つまり、吐出孔の略中心に気泡を集中させることが可能になる。具体的には、吐出孔の延伸方向と略平行な(すなわち、x軸方向(鋳型幅方向)と略平行な)回転軸を有する旋回流を、浸漬ノズルの内部であって、吐出孔が設けられる部位(すなわち、浸漬ノズルの下部)において安定的に形成することが望ましい。これにより、吐出流を安定的な旋回流とすることができる。また、浸漬ノズル内でかかる旋回流を安定的に形成することができれば、浸漬ノズル内での溶鋼の滞留も生じ難くなるため、ノズル閉塞を抑制する効果も得ることができる。
本発明者らは、浸漬ノズルの鉛直部の内壁であって、吐出孔よりも上方のy軸方向(鋳型厚み方向)のいずれか一方の内壁に突起部を設けることにより、かかる旋回流が安定的に形成され得ることを見い出した。かかる構成によれば、浸漬ノズル内の鉛直部を流れている溶鋼が、当該突起部に衝突することにより、当該突起部よりも下側の空間において、x軸方向と略平行な回転軸を有する一方向の旋回流を強制的に生じさせることができる。これにより、浸漬ノズル内の下部において、吐出孔の延伸方向と略平行な回転軸を有する旋回流を安定的に発生させることが可能となる。
以下、本発明者らが想到した本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
(2.浸漬ノズルの構成)
図5−図9を参照して、本発明の一実施形態に係る浸漬ノズルの構成について説明する。図5は、本実施形態に係る浸漬ノズルの鋳型幅方向と平行な断面における断面図である。図6は、図5に示す浸漬ノズルの鋳型厚み方向と平行な断面における断面図である。図7は、図5に示す浸漬ノズルの、後述する突起部近傍を拡大して示す図である。図8は、図5に示す浸漬ノズルの、後述する突起部を通る水平断面での断面図である。図9は、本実施形態に係る浸漬ノズルに対して設けられるガス吹き込み機構の構成について説明するための図である。なお、図5、図6及び図9では、浸漬ノズル内での溶鋼の流れを、模擬的に矢印で示している。
図5及び図6を参照すると、本実施形態に係る浸漬ノズル10は、内径が略一様な円筒形状を有する。また、浸漬ノズル10の下端近傍の側壁には、互いに対向するように一対の吐出孔101が設けられる。浸漬ノズル10が連続鋳造機に設置される場合には、当該一対の吐出孔101の開口方向が鋳型幅方向(x軸方向)に向くように(すなわち、一対の吐出孔101が鋳型短辺面とそれぞれ対向するように)、当該浸漬ノズル10が鋳型に対して設置される。連続鋳造時には、下端から所定の距離の領域が鋳型内の溶鋼に浸漬するように、浸漬ノズル10が設置される。そして、溶鋼が、上端から浸漬ノズル10内に注入され、下端の吐出孔101から鋳型内に供給される。
なお、図示する構成例では、一対の吐出孔101は、斜め下向きに開口している。一般的に、いわゆる2孔の浸漬ノズルでは、このような斜め下向きに開口する吐出孔を有するものが多い。ただし、本実施形態はかかる例に限定されない。本実施形態では、浸漬ノズル10は、互いに対向して設けられる一対の吐出孔101を有する2孔の浸漬ノズルであればよく、例えば当該一対の吐出孔101は略水平面内方向に向いて開口していてもよい。
図5及び図6では、一例として、浸漬ノズル10に対してスライディングノズル301が設けられた構成を図示している。浸漬ノズル10では、当該スライディングノズル301を構成する3枚のプレート303のうち中間のプレート303を鋳型厚み方向に移動させることにより、開口部305の実効的な面積を変化させ、溶鋼の流量を調整することができる。
また、本実施形態では、浸漬ノズル10は、ノズル閉塞の防止のために、溶鋼とともに不活性ガスが吹き込まれて使用されることを前提としている。従って、図5及び図6では図示を省略しているが、実際には、浸漬ノズル10には、図9に示すように、浸漬ノズル10内に不活性ガスを吹き込むためのガス吹き込み機構201が設けられる。
図9を参照すると、ガス吹き込み機構201は、浸漬ノズル10の内壁を円周方向にくり抜いて設けられるガス空間203と、当該ガス空間203と浸漬ノズル10の内部の空間との境界を覆うように、浸漬ノズル10の内壁に嵌合されて設けられる多孔質スリーブ205と、ガス空間203に外部から不活性ガスを供給するパイプ207と、から構成される。多孔質スリーブ205は、耐火物によって形成される筒状の部材であり、その壁面には不活性ガスを通過させるための多数の孔が形成されている。パイプ207によって外部から供給された不活性ガスが、ガス空間203に貯留され、多孔質スリーブ205に形成された孔を介して浸漬ノズル10内に吹き込まれることとなる。
なお、図示するガス吹き込み機構201の構成はあくまで一例であり、本実施形態では、不活性ガスの吹き込みのために、他の種類のガス吹き込み機構が用いられてもよい。ガス吹き込み機構201としては、各種の公知のものを適用することができる。
図5−図8に示すように、浸漬ノズル10には、その鉛直部の内壁の一部領域であって、吐出孔101よりも上方のy軸方向の片側の一部領域(すなわち、水平面内において一対の吐出孔101の開口方向と垂直な方向の片側の一部領域)に、突起部103が設けられる。当該突起部103を設けることにより、浸漬ノズル10内の鉛直部を流れている溶鋼が、当該突起部103に衝突し、当該突起部103よりも下側の空間、すなわち浸漬ノズル10内の下部において、吐出孔101の延伸方向と略平行な回転軸を有する旋回流を安定的に発生させることが可能となる。従って、吐出流を安定的な旋回流とすることができる。また、浸漬ノズル10内での溶鋼の滞留も生じ難くなるため、ノズル閉塞を抑制することも可能となる。
なお、突起部103が設けられること以外は、浸漬ノズル10の構造は、一般的な浸漬ノズルの構造と同様であってよい。例えば、浸漬ノズル10の長さは1m程度であり、連続鋳造時には、吐出孔101の上端が鋳型内の溶鋼湯面下100mm〜400mmに位置する。また、浸漬ノズル10の内径は、例えば100mm程度である。
例えば、浸漬ノズル10は、一般的な既存の浸漬ノズルに対して突起部103を取り付けることによって作製されてよい。これにより、その製造コストを低減することができる。なお、突起部103を浸漬ノズル10の内壁に取り付ける方法は特に限定されず、例えばピン留め等、あらゆる方法が用いられてよい。
図示する例では、突起部103は、x−z平面での断面及びy−z平面での断面においてともに略長方形形状を有し、x−y平面において浸漬ノズル10の円形の開口部の一部を埋めるような弓形形状を有する。ただし、本実施形態はかかる例に限定されない。突起部103は、安定な旋回流を形成可能であればよく、その設置位置、形状、及び/又は個数は任意であってよい。ただし、突起部103は、浸漬ノズル10の内壁においてy軸方向の片側にのみ設けられる必要がある。具体的な突起部103の設置位置、形状、及び/又は個数は、例えば、水モデル実験や数値解析シミュレーションを行うことにより、浸漬ノズル10の形状や鋳造条件に応じて適宜設定されてよい。
本発明者らによる検討の結果、上述したような突起部103が設けられること以外は一般的な浸漬ノズルと同様の構成を有する浸漬ノズル10において、一般的な鋳造条件を想定した場合には、安定な旋回流を形成するためには、吐出孔101の高さ方向の中心位置から突起部103の下端までの高さT0が、浸漬ノズル10の内径φの0.5倍以上、かつ0.75倍程度未満であることが好ましいことが分かった(後述する実施例も参照)。当該高さT0をかかる範囲とすることにより、突起部103よりも下側に、十分な大きさの空間が確保され得るため、当該空間において、略円形の安定的な旋回流が形成され得ることとなる。また、かかる構成により、介在物が堆積しやすい突起部103の下側の空間に、十分な流速が生まれ、当該空間における溶鋼流動の滞留を生じ難くすることができるため、介在物の堆積によるノズル閉塞も抑制することができる。
なお、ここで、本明細書において、吐出孔101の高さ方向の中心位置とは、吐出孔101の開口部のうち最も位置が高い点を通る水平面と、吐出孔101の開口部のうち最も位置が低い点を通る水平面と、の間における、高さ方向の中心位置のことを意味する。図7に示すように、吐出孔101が斜め下向きに開口している場合であれば、当該吐出孔101の開口部のうち最も位置が高い点は、浸漬ノズル10の内壁における吐出孔101の開口部の上端に当たる点(図7に示す点X)となる。そして、吐出孔101の開口部のうち最も位置が低い点は、浸漬ノズル10の外壁における吐出孔101の開口部の下端に当たる点(図7に示す点Y)となる。当該点Xを通る水平面と当該点Yを通る水平面との間における、高さ方向の中心位置が、吐出孔101の高さ方向の中心位置であり、図7に示す高さT0の下端に対応する位置となる。
一方、突起部103の水平面内方向の高さD(y軸方向における突起部103の厚み)は、溶鋼の流量制御を阻害しないように、浸漬ノズル10の突起部103が設けられる部位における水平断面での開口面積が、スライディングノズル301の開口面積よりも大きくなるようにする必要がある。例えば一般的な鋳造条件を想定すると、当該高さDの上限は、浸漬ノズル10の内径φの0.5倍程度であり得る。一方、突起部103の当該高さDが小さすぎると、溶鋼内に吹き込まれた不活性ガスの浮力による整流化が発生し、溶鋼の流動の旋回性が弱まってしまう。本発明者らによる検討の結果、安定的な旋回流を得るためには、当該高さDの下限は、浸漬ノズル10の内径φの0.15倍程度(内径φ=100mmの場合であれば、当該高さD=15mm程度)であることが好ましいことが分かった。以上の検討から、突起部103の水平面内方向の高さDは、浸漬ノズル10の内径φの0.15倍以上、かつ0.5倍未満であることが好ましい(後述する実施例も参照)。なお、上述したように、図示する例では、突起部103はy−z平面での断面において略長方形形状を有するため、当該高さDはz軸方向において略一様であるが、突起部103の形状はかかる例に限定されない。当該高さDはz軸方向において分布を有してもよい。
なお、安定的な旋回流を形成する観点からは、突起部103のz軸方向の高さTは、任意であってよい。また、浸漬ノズル10の内径φは略一様であるから、突起部103の水平面内方向の高さDが定まれば、突起部103のx軸方向の幅Wも定まる。つまり、突起部103の設置位置及び形状を設定する際には、吐出孔101の高さ方向の中心位置から突起部103の下端までの高さT0及び水平面内方向の高さDを規定すれば足りる。従って、これらのパラメータT0、Dを、水モデル実験等によって設定すればよい。なお、突起部103は、浸漬ノズル10の内壁においてy軸方向のいずれか一方に設けられればよく、その設置位置はy軸方向のいずれであってもよい。
ここで、図10−図12を参照して、本実施形態に係る浸漬ノズル10による気泡の浮上性を高める効果について説明する。図10は、本実施形態に係る浸漬ノズル10が鋳型に対して設置された様子を示す、鋳型幅方向での断面図である。図11は、図10に示す浸漬ノズル10の吐出孔101の近傍を鋳型幅方向から見た様子を示す図であり、本実施形態に係る浸漬ノズル10を用いた場合における鋳型内での気泡の浮上の様子を概略的に示す図である。図12は、比較のための図であり、従来の既存の浸漬ノズルを用いた場合における、図11に対応する方向から見た、鋳型内での気泡の浮上の様子を概略的に示す図である。
図10に示すように、浸漬ノズル10は、鋳型6の幅方向の略中心に、一対の吐出孔101が当該鋳型6の両側の短辺面とそれぞれ対向するように設置され得る。浸漬ノズル10の吐出孔101から、鋳型6内に溶鋼2が供給される。鋳型6は、例えば水冷銅板によって構成されており、当該鋳型6と接触する溶鋼2を冷却して、鋳片3を製造する。鋳片3が鋳型6の下方に向かって移動するにつれて、内部の未凝固部3bの凝固が進行し、外殻の凝固シェル3aの厚さは、徐々に厚くなる。かかる凝固シェル3aと未凝固部3bを含む鋳片3が、鋳型6の下端から引き抜かれることにより、連続的に鋳造が行われる。
図11には、浸漬ノズル10の吐出孔101から噴出される気泡の挙動を概略的に図示している。図11に概略的に示すように、本実施形態に係る浸漬ノズル10を用いることにより、吐出孔101の略中心に気泡が集中するため、気泡の合体が促され、比較的大きな気泡が形成され得る。従って、気泡が浮上する際の広がりが抑えられ、当該気泡が凝固シェル3aに衝突する可能性を低減することができる。すなわち、気泡性の欠陥の発生を抑えることができる。
一方、図12に概略的に示すように、従来の既存の浸漬ノズル50を用いた場合には、吐出孔501の全体から略均一に気泡が噴出され得るため、気泡が合体し難く、比較的小さな気泡が浮上していくこととなる。従って、気泡が浮上する際により拡散しやすくなり、当該気泡が凝固シェル3aに衝突する可能性が高まる。すなわち、気泡に起因する欠陥が発生しやすくなる。
以上、図5−図9を参照して、本実施形態に係る浸漬ノズル10の構成について説明した。また、図10−図12を参照して、本実施形態に係る浸漬ノズル10による気泡の浮上性を高める効果について説明した。
なお、図5−図9では、一例として、浸漬ノズル10に対してスライディングノズル301が設けられた構成を図示していたが、本実施形態はかかる例に限定されない。浸漬ノズル10における流量制御は、ストッパー310によって行われてもよい。
図13及び図14に、本実施形態に係る浸漬ノズル10に対してストッパー310が設けられた構成を概略的に示す。図13は、本実施形態に係る浸漬ノズル10に対してストッパー310が設けられた構成の鋳型幅方向と平行な断面における断面図である。図14は、図13に示す浸漬ノズル10及びストッパー310の鋳型厚み方向と平行な断面における断面図である。図13及び図14に示す構成例のように、ストッパー310によって流量制御が行われる場合であっても、上述したスライディングノズル301が設けられた構成と同様に、安定的な旋回流を形成する効果を得ることが可能である。
以上説明したように、本実施形態によれば、突起部103を設けることにより、浸漬ノズル10内の下部において、吐出孔101の延伸方向と略平行な回転軸を有する旋回流を安定的に発生させることが可能となるため、吐出流を安定的な旋回流とすることができる。これにより、気泡の浮上性を高めることができる。また、浸漬ノズル10内で安定的な旋回流を形成することにより、浸漬ノズル10内での溶鋼の滞留も生じ難くなるため、ノズル閉塞を抑制することも可能となる。このように、本実施形態によれば、浸漬ノズル10内における溶鋼偏流に起因して生じる、吐出流における旋回流の特性の時間変動を抑制することと、溶鋼内における不活性ガスの気泡の浮上性を高めること、を両立させることが可能となる。従って、鋳片の品質向上が実現される。
ここで、上記特許文献2には、浸漬ノズルの鉛直部に旋回羽根を設けた構成が開示されており、かかる構成でも、少なくとも鉛直部においては安定的な旋回流が発生し得る。しかしながら、上述したように、特許文献2に記載の技術を2孔の浸漬ノズルに適用した場合には、吐出流の旋回性も安定的になるとは限らない。仮に、吐出流が安定的に形成されたとしても、旋回流が鉛直部から2つの吐出孔に分岐する際に、その旋回力は弱められると考えられるため、気泡をその回転軸近傍に集積させる効果は低下し得る。従って、特許文献2に記載の技術では、気泡の浮上性を高める効果を好適に得ることは困難である。
また、上記特許文献3には、本実施形態に係る浸漬ノズル10と同様に、鉛直部の内壁に突起部が設けられた浸漬ノズルが開示されている。しかしながら、本実施形態に係る浸漬ノズル10と、特許文献3に記載の浸漬ノズルとでは、その目的が異なる。
具体的には、特許文献3に記載の浸漬ノズルは、湾曲型連続鋳造機において湾曲内側の凝固シェルへの介在物の捕捉、集積を防止することを目的とするものであり、かかる突起部を設けることにより、湾曲内側では下降流となり湾曲外側では上昇流となるような吐出流の流動パターンを形成することができるとしている。つまり、特許文献3に記載の浸漬ノズルは、湾曲型連続鋳造機に使用されることに特化したものであり、例えば垂直型や垂直曲げ型等、他の構造の連続鋳造機に当該浸漬ノズルを適用したとしても、鋳片の品質を向上させる効果を好適に得ることはできないと考えられる。また、特許文献3では、上記のような吐出流の流動パターンを形成するために、突起部は、浸漬ノズルの内壁の湾曲外側に対応する部位に設けられなければならず、また、その水平面内方向の高さ(上述した本実施形態における水平面内方向の高さDに対応)が浸漬ノズルの内径の0.05倍〜0.15倍になるように形成されることが記載されている。更に、特許文献3では、不活性ガスの吹き込みによる気泡に起因する欠陥については言及されていないため、当該浸漬ノズルが、当該気泡に起因する欠陥の低減に寄与するか否かは不明である。
一方、本実施形態では、浸漬ノズル10内における溶鋼偏流に起因して生じる、吐出流における旋回流の特性の時間変動を抑制すること、及び溶鋼内における不活性ガスの気泡の浮上性を高めること、を目的とするものであり、突起部103を設けることにより、浸漬ノズル10の内部で安定的な旋回流を形成し、これにより吐出流を安定的な旋回流とすることを実現するものである。当該効果は、連続鋳造機の構造にかかわらず奏されるものであるから、本実施形態に係る浸漬ノズル10は、湾曲型以外の連続鋳造機に適用された場合であっても、鋳片の品質向上の効果を好適に得ることができる。また、上述したように、本実施形態では、安定的な旋回流を得るという目的のために、突起部103は、鋳型厚み方向のいずれに設けられてもよく、その水平面内方向の高さDが浸漬ノズルの内径φの0.15倍程度以上であることが好ましい。
以上説明したように、本実施形態に係る浸漬ノズル10と、特許文献3に記載の浸漬ノズルとでは、その目的が異なるため、突起部103の設置位置や形状も大きく異なる。そして、突起部103によって得られる効果も大きく異なる。このように、本実施形態に係る浸漬ノズル10と、特許文献3に記載の浸漬ノズルとは、全く異なるものであることに留意されたい。
(3.適用例)
以上説明した本実施形態に係る浸漬ノズル10の一適用例として、図15を参照して、浸漬ノズル10が適用された連続鋳造機の構成、及び当該連続鋳造機を用いた連続鋳造方法について説明する。図15は、本実施形態に係る浸漬ノズル10が適用され得る連続鋳造機の一構成例を概略的に示す側断面図である。
図15に示すように、本実施形態に係る連続鋳造機1は、連続鋳造用の鋳型6を用いて溶鋼2を連続鋳造し、スラブ等の鋳片3を製造するための装置である。連続鋳造機1は、鋳型6と、取鍋4と、タンディッシュ5と、浸漬ノズル10と、二次冷却装置7と、鋳片切断機8と、を備える。
取鍋4は、溶鋼2を外部からタンディッシュ5まで搬送するための可動式の容器である。取鍋4は、タンディッシュ5の上方に配置され、取鍋4内の溶鋼2がタンディッシュ5に供給される。タンディッシュ5は、鋳型6の上方に配置され、溶鋼2を貯留して、当該溶鋼2中の介在物を除去する。浸漬ノズル10は、タンディッシュ5の下端から鋳型6に向けて略鉛直に下方に延び、その先端は鋳型6内の溶鋼2に浸漬されている。当該浸漬ノズル10は、タンディッシュ5にて介在物が除去された溶鋼2を鋳型6内に連続供給する。
図面が煩雑になることを避けるため詳細な図示を省略しているが、上述したように、浸漬ノズル10は鋳型6の両方の短辺面にそれぞれ対向するように、一対の吐出孔101が形成されている。また、その内壁には突起部103が設けられている。かかる突起部103により、浸漬ノズル10では、吐出流として安定的な旋回流が形成され得る。
鋳型6は、鋳片3の幅及び厚さに応じた四角筒状であり、例えば、一対の長辺鋳型板で一対の短辺鋳型板を両側から挟むように組み立てられる。長辺鋳型板及び短辺鋳型板(以下、鋳型板と総称することがある)は、例えば冷却水が流動する水路が設けられた水冷銅板である。鋳型6は、かかる鋳型板と接触する溶鋼2を冷却して、鋳片3を製造する。鋳片3が鋳型6下方に向かって移動するにつれて、内部の未凝固部3bの凝固が進行し、外殻の凝固シェル3aの厚さは、徐々に厚くなる。かかる凝固シェル3aと未凝固部3bを含む鋳片3は、鋳型6の下端から引き抜かれる。
二次冷却装置7は、鋳型6の下方の二次冷却帯9に設けられ、鋳型6下端から引き抜かれた鋳片3を支持及び搬送しながら冷却する。この二次冷却装置7は、鋳片3の厚さ方向両側に配置される複数対の支持ロール(例えば、サポートロール11、ピンチロール12及びセグメントロール13)と、鋳片3に対して冷却水を噴射する複数のスプレーノズル(図示せず)とを有する。
二次冷却装置7に設けられる支持ロールは、鋳片3の厚さ方向両側に対となって配置され、鋳片3を支持しながら搬送する支持搬送手段として機能する。当該支持ロールにより鋳片3を厚さ方向両側から支持することで、二次冷却帯9において凝固途中の鋳片3のブレイクアウトやバルジングを防止できる。
支持ロールであるサポートロール11、ピンチロール12及びセグメントロール13は、二次冷却帯9における鋳片3の搬送経路(パスライン)を形成する。このパスラインは、図示するように、鋳型6の直下では垂直であり、次いで曲線状に湾曲して、最終的には水平になる。二次冷却帯9において、当該パスラインが垂直である部分を垂直部9A、湾曲している部分を湾曲部9B、水平である部分を水平部9Cと称する。このようなパスラインを有する連続鋳造機1は、垂直曲げ型の連続鋳造機1と呼称される。
サポートロール11は、鋳型6の直下の垂直部9Aに設けられる無駆動式ロールであり、鋳型6から引き抜かれた直後の鋳片3を支持する。鋳型6から引き抜かれた直後の鋳片3は、凝固シェル3aが薄い状態であるため、ブレイクアウトやバルジングを防止するために比較的短い間隔(ロールピッチ)で支持する必要がある。そのため、サポートロール11としては、ロールピッチを短縮することが可能な小径のロールが用いられることが望ましい。図1に示す例では、垂直部9Aにおける鋳片3の両側に、小径のロールからなる3対のサポートロール11が、比較的狭いロールピッチで設けられている。
ピンチロール12は、モータ等の駆動手段により回転する駆動式ロールであり、鋳片3を鋳型6から引き抜く機能を有する。ピンチロール12は、垂直部9A、湾曲部9B及び水平部9Cにおいて適切な位置にそれぞれ配置される。鋳片3は、ピンチロール12から伝達される力によって鋳型6から引き抜かれ、上記パスラインに沿って搬送される。なお、ピンチロール12の配置は図示する例に限定されず、その配置位置は任意に設定されてよい。
セグメントロール13(ガイドロールともいう)は、湾曲部9B及び水平部9Cに設けられる無駆動式ロールであり、上記パスラインに沿って鋳片3を支持及び案内する。セグメントロール13は、パスライン上の位置によって、及び、鋳片3のF面(Fixed面、図15では左下側の面)とL面(Loose面、図15では右上側の面)のいずれに設けられるかによって、それぞれ異なるロール径やロールピッチで配置されてよい。
鋳片切断機8は、上記パスラインの水平部9Cの終端に配置され、当該パスラインに沿って搬送された鋳片3を所定の長さに切断する。切断された厚板状の鋳片14は、テーブルロール15により次工程の設備に搬送される。
以上、図15を参照して、本実施形態に係る浸漬ノズル10が適用された連続鋳造機の構成、及び当該連続鋳造機を用いた連続鋳造方法について説明した。なお、本実施形態に係る浸漬ノズル10が適用され得る連続鋳造機は、図示したものに限定されず、連続鋳造機としてはあらゆる構成のものが用いられてよい。例えば、本実施形態に係る浸漬ノズル10は、図示するような垂直曲げ型の連続鋳造機1だけでなく、湾曲型又は垂直型など他の各種の連続鋳造機にも適用可能である。
図5−図9を参照して説明した本実施形態に係る浸漬ノズル10と同様の構成を有する浸漬ノズルを、鉄鋼プラントにおいて実際に操業に用いられている連続鋳造機に適用した実施例について説明する。
連続鋳造の条件は以下の通りである。すなわち、連続鋳造機としては、曲げ半径7.5m、垂直部長さ2.5mの、垂直曲げ型の連続鋳造機を用いた。鋳型のサイズは、幅が1200mm、高さが900mm、厚みが250mmである。浸漬ノズルは、鋳型幅方向中心においてその吐出孔がメニスカスから深さ方向に300mmに位置するように設置した。浸漬ノズルの外径は150mm、内径φは90mmである。また、その吐出孔の直径は60mm、吐出角度θは下向き30度である。鋼種は自動車向けの極低炭アルミキルド鋼であり、鋳造速度は1.5m/分とした。浸漬ノズルの入り口には、直径60mmの開口部を有する3枚のプレートからなるスライディングノズルを設け、当該スライディングノズルにより溶鋼の流量を調整した。また、浸漬ノズル内には、浸漬ノズル上部に設置したガス吹き込み機構によって、多孔質スリーブを介して6NL/分の速度でアルゴンガスを吹き込んだ。
本発明の効果を確認するために、本実施形態のように内壁に突起部が設けられた浸漬ノズル、及び内壁に突起部が設けられない浸漬ノズル、をそれぞれ用意した。更に、突起部を設けた浸漬ノズルについては、突起部の設置位置及び形状がそれぞれ異なる8種類の浸漬ノズルを用意した。具体的には、突起部について、鉛直方向高さTは30mmで固定し、水平面内方向の高さDを5mm(=0.056φ(mm))、9mm(=0.10φ(mm))、15mm(=0.17φ(mm))、30mm(=0.33φ(mm))、40mm(=0.44φ(mm))、45mm(=0.50φ(mm))の6水準で変化させるとともに、吐出孔の高さ方向の中心位置から突起部の下端までの高さT0を45mm(=0.50φ(mm))、67.5mm(=0.75φ(mm))、90mm(=1.0φ(mm))の3水準で変化させた。
これらの9種類の浸漬ノズルについて、上記の条件の下でそれぞれ連続鋳造を行い、鋳造後の鋳片における気泡に起因する欠陥の数をカウントすることにより、鋳片の品質を評価した。具体的には、鋳片の表層5mmの深さまで1mmピッチで段削りして観察してカウントした、直径が0.5mm以上の気泡に起因する欠陥の数を、突起部が設けられない浸漬ノズルを用いた場合での当該気泡に起因する欠陥の数を1とする相対的な指数として評価した。また、各浸漬ノズルについて、所定時間連続鋳造機を行った後のノズル閉塞の有無を、目視にて確認した。
結果を下記表1に示す。なお、下記表1において、ノズル閉塞については、ほぼ発生が確認されなかったものには「○」を、多少の発生が確認されたものには「△」を、大規模な発生が確認されたものには「×」を付して表している。
表1から、突起部を設けない浸漬ノズルを用いた条件1における結果と、突起部を設けた浸漬ノズルを用いた条件2〜9における結果とを比較すると、突起部を設けることにより、その設置位置及び形状にかかわらず、気泡に起因する欠陥を低減する効果が得られることが分かる。
また、条件2〜条件7における結果から、突起部の水平面内方向の高さDについては、浸漬ノズルの内径φの0.10倍程度以下である場合(すなわち、条件2、3)には、突起部を設けない場合に比べて気泡に起因する欠陥の数を減少させることはできるものの、当該欠陥の数を表す指数が0.5を超えており、その減少率はさほど大きくない。一方、当該高さDを浸漬ノズルの内径φの0.15倍程度以上とした場合(すなわち、条件4〜条件7)には、突起部を設けない場合に比べて、気泡に起因する欠陥の数を、十分な品質改善レベルであると考えられる半分以下にまで低減できていることが分かる。
また、条件5、8、9における結果から、吐出孔の高さ方向の中心位置から突起部の下端までの高さT0については、浸漬ノズルの内径φの0.75倍程度とした場合(すなわち、条件8)に、突起部を設けない場合に比べて気泡に起因する欠陥の数を、十分な品質改善レベルであると考えられる半分以下にまで低減できていることが分かる。また、当該高さT0を浸漬ノズルの内径φの0.50倍程度まで小さくすることにより(すなわち、条件5)、気泡に起因する欠陥の数を更に減少させることができることが分かる。一方、当該高さT0を浸漬ノズルの内径φの1.0倍程度まで大きくした場合(すなわち、条件9)には、気泡に起因する欠陥の数を表す指数が0.5を超えており、当該欠陥の数の減少率は低下してしまうことが分かる。
以上の結果から、本実施形態に係る浸漬ノズルにおいて気泡に起因する欠陥の低減の効果を好適に得るためには、突起部の水平面内方向の高さDを少なくとも浸漬ノズルの内径φの0.15倍程度以上とし、吐出孔の高さ方向の中心位置から突起部の下端までの高さT0を少なくとも浸漬ノズルの内径φの0.50倍程度以上かつ0.75倍程度以下の範囲とすることが効果的であると考えられる。
一方、ノズル閉塞の発生有無に注目すると、条件7における結果から、突起部の水平面内方向の高さDを浸漬ノズルの内径φの0.50倍程度まで大きくした場合には、多少のノズル閉塞が発生していることが分かる。また、条件8における結果から、吐出孔の高さ方向の中心位置から突起部の下端までの高さT0を浸漬ノズルの内径φの0.75倍程度まで大きくした場合には、同じく多少のノズル閉塞が発生していることが分かる。かかるノズル閉塞が発生した原因は、これらの条件では、浸漬ノズル内において十分に安定的な旋回流が形成されておらず、溶鋼の流動の滞留が生じているからであると考えられる。
以上の結果から、本実施形態に係る浸漬ノズルにおいて安定的な旋回流を形成しノズル閉塞を好適に抑制するためには、突起部の水平面内方向の高さDを少なくとも浸漬ノズルの内径φの0.50倍程度よりも小さくし、吐出孔の高さ方向の中心位置から突起部の下端までの高さT0を少なくとも浸漬ノズルの内径φの0.75倍程度よりも小さくすることが効果的であると考えられる。
まとめると、本実施例の結果から、少なくとも本実施例に対応する上記の鋳造条件においては、本実施形態に係る浸漬ノズルによって気泡に起因する欠陥を好適に低減し、かつノズル閉塞を好適に抑制するためには、突起部の水平面内方向の高さDを浸漬ノズルの内径φの0.15倍程度以上かつ0.50倍程度未満とし、吐出孔の高さ方向の中心位置から突起部の下端までの高さT0を浸漬ノズルの内径φの0.50倍程度以上かつ0.75倍程度未満とすることが、効果的であると考えられる。
(4.補足)
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。