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JP2018051705A - 表面被覆切削工具 - Google Patents

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JP2018051705A JP2016192344A JP2016192344A JP2018051705A JP 2018051705 A JP2018051705 A JP 2018051705A JP 2016192344 A JP2016192344 A JP 2016192344A JP 2016192344 A JP2016192344 A JP 2016192344A JP 2018051705 A JP2018051705 A JP 2018051705A
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Shun Sato
峻 佐藤
強 大上
Tsutomu Ogami
強 大上
健志 山口
Kenji Yamaguchi
健志 山口
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Abstract

【課題】断続切削加工において、すぐれた耐チッピング性、耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具を提供する。【解決手段】工具基体の表面に、TiAlN層を含む硬質被覆層が設けられた表面被覆切削工具において、TiAlN層は、組成式:(TixAly)Nzで表した場合、0.05≦x≦0.17、0.33≦y≦0.45、x+y+z=1を満足する(ただし、x、y、zはいずれも原子比)平均組成を有し、TiAlN層中には、高Ti組成領域が、層中の任意の方向(三次元的)に均一に分散形成されており、Ti成分の組成が1.03x〜1.15xであるTi最高含有点と、0.85x〜0.97xであるTi最低含有点が繰り返し存在し、かつ、隣り合うTi最高含有点とTi最低含有点との平均間隔は1nm〜50nmである。【選択図】 図1

Description

この発明は、合金鋼などの断続切削加工において、硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性と耐摩耗性を発揮し、長期の使用にわたってすぐれた切削性能を発揮する表面被覆切削工具(以下、被覆工具という)に関するものである。
一般に、被覆工具として、各種の鋼や鋳鉄などの被削材の旋削加工や平削り加工にバイトの先端部に着脱自在に取り付けて用いられるスローアウエイチップ、前記被削材の穴あけ切削加工などに用いられるドリルやミニチュアドリル、前記被削材の面削加工や溝加工、肩加工などに用いられるエンドミル、前記被削材の歯形の歯切加工などに用いられるソリッドホブ、ピニオンカッタなどが知られている。
そして、被覆工具の切削性能改善を目的として、従来から、数多くの提案がなされている。
例えば、特許文献1に示すように、工具基体表面に、物理蒸着によって堆積された耐火性層を含むコーティングを含む被覆工具であって、 前記耐火性層がM1−xAlN(式中、x≧0.68であり、MがTi、CrまたはZrである)を含み、前記耐火性層が立方晶結晶相を含有し、少なくとも25GPaの硬度を有する厚膜、高硬度および低残留応力の耐摩耗性被覆工具が提案されている。
また、特許文献2には、工具基体表面にTiAlN層からなる硬質被覆層を被覆した被覆工具において、上記硬質被覆層が、層厚方向にそって、Al最高含有点(Ti最低含有点)とAl最低含有点(Ti最高含有点)とが所定間隔をおいて交互に繰り返し存在し、かつ前記Al最高含有点から前記Al最低含有点、前記Al最低含有点から前記Al最高含有点へAl(Ti)含有量が連続的に変化する成分濃度分布構造を有し、さらに、上記Al最高含有点が、組成式:(Ti1−XAl)N(ただし、原子比で、Xは0.70〜0.95を示す)、上記Al最低含有点が、組成式:(Ti1−YAl )N(ただし、原子比で、Yは0.40〜0.65を示す)、をそれぞれ満足し、かつ隣り合う上記Al最高含有点とAl最低含有点の間隔が、0.01〜0.1μmである耐摩耗性にすぐれた被覆工具が提案されている。
特開2015−36189号公報 特開2003−211304号公報
近年の切削加工装置の高性能化はめざましく、一方で切削加工に対する省力化および省エネ化、さらに低コスト化の要求は強く、これに伴い、切削加工はますます高速化・高能率化の傾向にあるが、上記従来の被覆工具においては、これを鋼や鋳鉄などの通常の切削条件での切削加工に用いた場合には、特段の問題は生じないが、これを、例えば、合金鋼等の断続切削加工のような、高熱発生を伴い、しかも、切刃に対して衝撃的・断続的な高負荷がかかる切削加工に用いた場合には、クラックの発生・伝播を抑制することができず、また、摩耗進行も促進されるため、比較的短時間で使用寿命に至るのが現状である。
例えば、特許文献1に示される従来被覆工具においては、M1−xAlNの一つの形態であるTiAlN層は高硬度で耐摩耗性にすぐれる層であり、Al含有量が多いほど耐熱性にすぐれるが、その一方で、Al量の増加と共に硬さに劣る異方性結晶である六方晶の析出が生じ耐摩耗性が低下するという問題がある。
また、特許文献2に示される従来被覆工具においては、層厚方向に組成変化を形成することで高温硬さと耐熱性、靱性を両立せしめることができるが、層内の異方性によって、層厚と垂直方向のクラックの発生・伝播を十分に防止することはできないという問題がある。
そこで、本発明者等は、上述の観点から、合金鋼などの断続切削加工のような、高熱発生を伴い、しかも、切刃に対して衝撃的・断続的な高負荷が作用する切削加工条件下で、硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性と耐摩耗性を両立し得る被覆工具を開発すべく、硬質被覆層を構成する成分および層構造に着目し研究を行った結果、以下のような知見を得た。
即ち、本発明者は、工具基体表面に、TiとAlの複合窒化物(以下、「TiAlN」で示す場合がある。)層からなる硬質被覆層を形成した被覆工具において、該層におけるAlのTiとAlの合量に占める組成割合を比較的高くし、もって、硬質被覆層全体としての耐熱性を確保するとともに、層内には、Ti成分の組成が相対的に高い領域(Al成分の組成が相対的に低くなる領域に相当。以下、「高Ti組成領域」という場合がある。)を任意の方向に均一に分散形成することによって、前記特許文献1に示されるような硬さに劣る異方性結晶である六方晶が形成されるAlの高含有率においても耐摩耗性を維持し、かつ前記特許文献2に示されるような硬質被覆層の異方性を解消するとともに、高Ti組成領域の存在によって硬質被覆層の靱性を向上させることができることを見出した。
したがって、本発明の被覆工具は、高熱発生を伴い、しかも、切刃に対して衝撃的・断続的な高負荷が作用する断続切削加工条件下で、すぐれた耐チッピング性と耐摩耗性を両立することができるのである。
この発明は、上記の知見に基づいてなされたものであって、
「(1)WC基超硬合金、TiCN基サーメットおよび立方晶窒化硼素焼結体のいずれかからなる工具基体の表面に、0.5〜10.0μmの平均層厚のTiとAlの複合窒化物層を少なくとも含む硬質被覆層が設けられた表面被覆切削工具において、
前記TiとAlの複合窒化物層は、その組成を、
組成式:(TiAl)N
で表した場合、0.05≦x≦0.17、0.33≦y≦0.45、x+y+z=1(ただし、x、y、zはいずれも原子比)を満足する平均組成を有し、
前記TiとAlの複合窒化物層中には、前記Ti成分の平均組成xに比して、Ti成分の組成が相対的に高い領域とTi成分の組成が相対的に低い領域が、前記TiとAlの複合窒化物層の縦断面の任意の異なる方向の複数の線分上に存在することを特徴とする表面被覆切削工具。
(2)前記TiとAlの複合窒化物層の縦断面について、工具基体表面に対する傾斜角度がそれぞれ異なる任意の複数本の線分上におけるTi成分の組成を求めた場合、それぞれの線分上において、Ti成分の組成が1.03x〜1.15x(但し、xは、前記組成式におけるTi成分の平均組成)の範囲内にあるTi最高含有点と、Ti成分の組成が0.85x〜0.97xの範囲内にあるTi最低含有点が繰り返し存在し、かつ、隣り合う前記Ti最高含有点と前記Ti最低含有点との平均間隔Lは1nm〜50nmであることを特徴とする(1)に記載の表面被覆切削工具。
(3)前記TiとAlの複合窒化物層の縦断面におけるAl成分の組成の変動幅は、Al成分の平均組成をyとした場合、0.01y〜0.06yであることを特徴とする(1)または(2)に記載の表面被覆切削工具。
(4)前記TiとAlの複合窒化物層は、立方晶構造の結晶粒と六方晶構造の結晶粒の混合組織からなり、前記TiとAlの複合窒化物層の縦断面に占める立方晶構造の結晶粒の面積割合は30面積%以上であることを特徴とする(1)乃至(3)のいずれかに記載の表面被覆切削工具。」
を特徴とするものである。
つぎに、この発明の被覆工具について、詳細に説明する。
TiAlN層の平均層厚:
硬質被覆層は、少なくともTiAlN層を含むが、該TiAlN層の平均層厚が0.5μm未満では、TiAlN層によって付与される耐摩耗性向上効果が十分に得られず、一方、平均層厚が10.0μmを超えると、TiAlN層の中の歪みが大きくなり自壊しやすくなるため、TiAlN層の平均層厚を0.5〜10.0μmとする。
TiAlN層の平均組成:
TiAlN層を、
組成式:(TiAl)N
で表した場合、0.05≦x≦0.17、0.33≦y≦0.45、x+y+z=1を満足する(ただし、x、y、zはいずれも原子比)平均組成を有することが必要である。
Ti成分の平均組成を表すxが0.05未満である場合、あるいは、Al成分の平均組成を表すyが0.45を超える場合には、立方晶構造のTiAlN結晶粒の形成が困難となり、TiAlN層の硬度が低下し十分な耐摩耗性を得ることができない。
一方、Ti成分の平均組成を表すxが0.17を超える場合、あるいは、Al成分の平均組成を表すyが0.33未満となる場合には、Al成分が不足し、耐熱性、すなわち高温硬さおよび高温耐酸化性が低下する。
したがって、Ti成分の平均組成xは、0.05≦x≦0.17、また、Al成分の平均組成yは、0.33≦y≦0.45とする。
また、N成分の平均組成zは、TiとAlの複合窒化物の化学量論比である0.50には限定されず、これと同等な効果が得られる範囲である0.7≦(x+y)/z≦1.2を満足すればよく、この範囲であれば特段の支障はない。また、工具表面の汚染の影響などで不可避的に含まれる酸素や炭素を除いた評価のため、x+y+z=1としている。
Ti成分の分布形態:
本発明では、TiAlN層中に、Ti成分の平均組成xに比して、Ti成分の組成が相対的に高い高Ti組成領域を、TiAlN層の層中のあらゆる方向に均一に分散させて形成する。
そして、このような高Ti組成領域を層中に分散させて形成することにより、TiAlN層全体としての高硬度を維持すると同時に靱性を高めることができるため、高熱発生を伴い、しかも、切刃に対して衝撃的・断続的な高負荷が作用する切削加工条件下で、すぐれた耐チッピング性、耐摩耗性を発揮することができる。
また、高Ti組成領域が、層中のあらゆる方向に均一に分布して存在し、三次元的な高Ti組成領域の均一分布が確保されることによって、特に、硬質被覆層表面に対する切削加工時の機械的衝撃の大きさおよび方向が変化するような切削加工条件であっても、チッピングに対する耐性が向上する。
本発明のTiAlN層におけるTi成分の分布形態を、より具体的に説明すれば、次のとおりである。
図1(a)〜(c)は、TiAlN層の断面のTi成分の分布形態を測定するための概略説明図である。
図1(a)は、本発明のTiAlN層を模式化して表した模式図であって、この図において、高Ti組成領域は、斑状に分布する濃い灰色の領域として示されている。
図1(b)は、図1(a)における一つの方向(工具基体表面と平行。A方向という)の線分上で測定したTi成分の組成変化を示す図であり、また、図1(c)は、前記A方向とは別の方向(工具基体表面に90度の角度を有する方向。B方向という)の線分上で測定したTi成分の組成変化を示す図である。
なお、図1(b)、図1(c)においては、A方向とB方向は、直交する二本の線分としたが、A方向とB方向の線分は、必ずしも直交する二本の線分である必要はなく、例えば、工具基体表面に平行な方向と工具基体表面に対して45度傾斜する方向の二本の線分でもよく、また、工具基体表面に平行な方向の線分と工具基体表面に対してそれぞれ30度、60度傾斜する二本の線分からなる合計三本の線分等であっても良い。
要するに、層断面において、工具基体表面に対して異なる傾斜角度を有する任意の複数本の線分上におけるTi成分の組成変化を求めることによって、TiAlN層における三次元的なTi成分の分布状態、言い換えれば、三次元的な高Ti組成領域の分布状態を測定することができる。
例えば、図1(a)にその模式図を示したTiAlN層の断面について、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いたエネルギー分散型X線分析法(EDS)(以下、「TEM−EDS」という。)により、A方向に沿ってTiの組成を測定した場合、図1(b)に示す組成変化が得られ、また、A方向に直交するB方向に沿ってTiの組成を測定した場合、図1(c)に示す組成変化が得られる。
図1(b)、(c)において、測定されたTi最高含有点を黒丸として示し、また、Ti最低含有点は三角として示す。
本発明においては、例えば、前記の図1(b)、(c)で示すA方向およびB方向におけるTi成分の組成変化を測定した後、それぞれの方向におけるTi最高含有点とTi最低含有点の間隔を測定し、これらの平均値を、Ti最高含有点とTi最低含有点との平均間隔Lとした場合、Lの値は、1nm〜50nmであることが望ましい。
これは、Lが1nm未満では、高Ti組成領域同士が近接しすぎて形成されることになるため、硬質被覆層の耐摩耗性向上効果を望めず、一方、Lが50nmを超えると、高Ti組成領域が広くなりすぎるため耐摩耗性が低下するからである。
また、例えば、前記の図1(b)、(c)から、A方向およびB方向におけるTi成分のTi最高含有点および最低含有点の値を求めたとき、Ti最高含有点の値が1.03x(xは、Tiの平均組成)未満の場合、あるいは、Ti最低含有点の値が0.97xを超える場合には、高Ti組成領域の形成が十分でないため、高硬度と高靱性の両立を図ることができない。
一方、Ti最高含有点の値が1.15xを超える場合、あるいは、Ti最低含有点の値が0.85x未満の場合には、TiAlN層内の歪みが大きくなるため、耐チッピング性が低下する。
したがって、Ti最高含有点の値は、1.03x〜1.15xの範囲内であることが望ましく、また、Ti最低含有点の値は、0.85x〜0.97xの範囲内であることが望ましい。
本発明でいう「Ti成分の平均組成xに比して、Ti成分の組成が相対的に高い領域が、前記TiとAlの複合窒化物層の層中のあらゆる方向に均一に分散して形成されている」とは、TiAlN層の断面について、任意の複数の方向について求めた前記Ti最高含有点とTi最低含有点との平均間隔Lが1nm〜50nmの範囲内であり、しかも、Ti最高含有点の値が1.03x〜1.15xの範囲内かつTi最低含有点の値が0.85x〜0.97xの範囲内であるTi成分の分布形態をいう。
Al成分の組成の変動幅:
本発明では、Al成分の分布形態を特に制限するものではないが、Ti成分の組成が前記の分布形態をとる場合には、Al成分の組成の変動幅は、0.01y〜0.06yの範囲内となり、Al成分の組成の変動幅は、Tiの組成変化(Ti最高含有点の値は、1.03x〜1.15xで、Ti最低含有点の値は、0.85x〜0.97xで、Ti最高含有点の値からTi最低含有点の値を引きxを除した値)に比して小さい。
なお、yは、前記組成式におけるAl成分の平均組成である。
TiAlN層の結晶構造:
本発明のTiAlN層は、立方晶構造のTiAlN結晶粒と六方晶構造のTiAlN結晶粒によって構成され、前述のTi成分の分布形態(およびAl成分の分布形態)を有することによって、すぐれた耐チッピング性、耐摩耗性を備える。
しかし、TiAlN層中の立方晶構造のTiAlN結晶粒の割合が、TiAlN層の縦断面で観察した面積割合で30面積%未満になると、TiAlN層全体としての耐摩耗性が低下することから、TiAlN層の縦断面に占める立方晶のTiAlN結晶粒の面積割合は、30面積%以上とすることが望ましい。
TiAlN層の成膜方法:
前記特徴を備える本発明のTiAlN層は、例えば、以下の方法によって成膜することができる。
図2(a)、(b)に、本発明のTiAlN層を成膜するための、アークイオンプレーティング(以下、「AIP」という)装置の概略図を示す。
図2(a)、(b)に示すAIP装置内に、所定組成のTi−Al合金ターゲットを配置するとともに、WC基超硬合金、TiCN基サーメットおよび立方晶窒化硼素焼結体のいずれかからなる工具基体をAIP装置の回転テーブル上に載置し、工具基体の温度(成膜温度)および成膜時のバイアス電圧を制御してアーク放電を発生させることにより、本発明のTiAlN層を成膜することができる。
特に、低バイアス電圧での成膜工程と高バイアス電圧での成膜工程とを繰り返し行うことによって、高バイアス電圧での成膜で硬質層表面に瞬間的に熱エネルギーを付与することで、自発的に、Ti成分の前述した分布形態を形成することができる。
また、工具基体の温度を制御することにより、原子の拡散速度を制御し、Ti最高含有点とTi最低含有点の組成変化幅(1.03x〜1.15xのTi最高含有点と、0.85x〜0.97xのTi最低含有点の変動幅)および平均間隔Lを調整することができる。
本発明の被覆工具は、硬質被覆層のTiAlN層を、立方晶構造のTiAlN結晶粒と六方晶構造のTiAlN結晶粒によって構成し、TiAlN層中に高Ti組成領域を層中のあらゆる方向に均一に分布するように形成することによって、高熱発生を伴い、しかも、切刃に対して衝撃的・断続的な高負荷が作用する切削加工条件下で、すぐれた耐チッピング性と耐摩耗性を両立することができる。
特に、硬質被覆層表面に対する切削加工時の負荷の大きさおよび方向が変化するような場合であっても、TiAlN層中に、三次元的なあらゆる方向に高Ti組成領域が均一に分布して存在することによって、層の異方性がなく、すぐれた耐チッピング性と耐摩耗性を長期に亘って発揮する。
本発明被覆工具のTiAlN層の断面のTi成分の分布形態を測定するための一つの測定法を例示した概略説明図であり、(a)は、本発明のTiAlN層を模式化して表した模式図、(b)は、(a)における一つの方向(A方向)の線分に沿って測定したTi成分の組成変化を示す模式図、(c)は、前記(b)におけるA方向に直交する方向(B方向)の線分に沿って測定したTi成分の組成変化を示す図である。 本発明被覆工具のTiAlN層を成膜するのに用いるアークイオンプレーティング(AIP)装置を示し、(a)は概略平面図、(b)は概略正面図である。
つぎに、この発明の被覆工具を実施例により具体的に説明する。
なお、具体的な説明としては、WC基超硬合金を工具基体とする被覆工具について説明するが、TiCN基サーメットあるいは立方晶窒化硼素焼結体を工具基体とする被覆工具についても同様である。
工具基体の作製:
原料粉末として、いずれも0.5〜5μmの平均粒径を有する、Co粉末、TiC粉末、TaC粉末、NbC粉末、Cr粉末、WC粉末を用意し、これら原料粉末を、表1に示される配合組成に配合し、さらにワックスを加えてボールミルで72時間湿式混合し、減圧乾燥した後、100MPaの圧力でプレス成形し、これらの圧粉成形体を焼結し、所定寸法となるように加工して、ISO規格SEEN1203AFENのインサート形状をもったWC基超硬合金工具基体1〜2を製造した。

上記の工具基体1〜2のそれぞれを、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、図2に示すAIP装置の回転テーブル上の中心軸から半径方向に所定距離離れた位置に外周部にそって装着し、AIP装置内に、所定組成のTi−Al合金ターゲット(カソード電極)を配置し、
まず、装置内を排気して真空に保持しながら、ヒータで工具基体を400℃に加熱した後、前記回転テーブル上で自転しながら回転する工具基体に−1000Vの直流バイアス電圧を印加し、かつ、Ti−Al合金ターゲット(カソード電極)に100Aの電流を流してアーク放電を発生させ、もって工具基体表面をボンバード洗浄し、
ついで、装置内に反応ガスとして窒素ガスを導入して表2に示す窒素圧とすると共に、前記回転テーブル上で自転しながら回転する工具基体の温度を表2に示す温度範囲内に維持し、表2に示す直流の低バイアス電圧と直流の高バイアス電圧を交互に繰り返して印加し、Ti−Al合金ターゲット(カソード電極)に表2に示すアーク電流を流してアーク放電を発生させることにより、
表4に示す目標平均層厚、平均組成(x、y、z)、Ti成分の分布形態(最高含有点と最低含有点の組成および平均間隔L)、Al成分の組成の変動幅、立方晶結晶構造の結晶粒の相縦断面に占める面積割合を有する本発明被覆工具1〜10(以下、本発明工具1〜10という)をそれぞれ製造した。
比較の目的で、図2に示すAIP装置を用いて、表3に示す成膜条件でTiAlN層を形成することにより、表5に示す比較例被覆工具1〜10(以下、比較例工具1〜10という)をそれぞれ製造した。
上記で作製した本発明工具1〜10および比較例工具1〜10のTiAlN層の層全体としての平均組成を、TEM−EDSにより5箇所の視野範囲で面分析し、その測定値の平均値を、TiAlN層の平均組成x、y、zとして求めた。
表4、表5に、それぞれの値を示す。
また、TEM−EDSにより、Ti成分の分布形態(Ti最高含有点とTi最低含有点における組成、平均間隔)およびAl成分の組成の変動幅を測定した。
具体的には、一つの測定範囲において、図1(a)〜(c)に示すように、TiAlN層の縦断面について、工具基体表面と任意の角度をなす方向をA方向とし、また、縦断面に属しかつA方向に垂直な方向をB方向とし、A方向に沿う線分上及びB方向に沿う線分上でTEM−EDSにより線分析を行い、それぞれの線分上におけるTi成分の組成を測定し、この測定値から得られた組成変化に基づきTi最高含有点とTi最低含有点の組成と位置を特定し、さらに、Ti最高含有点とTi最低含有点の間隔を測定した。
なお、測定した線分の長さは、少なくとも500nm以上となるように定めた。
また、前記と同様にして、他の4箇所の測定範囲においても、Ti最高含有点とTi最低含有点の組成、位置、間隔を測定し、これらの合計5箇所の測定範囲の測定値を平均することにより、Ti最高含有点とTi最低含有点の組成、位置、平均間隔を求めた。
また、Ti成分の場合と同様に、線分析を行うことにより、線分上におけるAl成分の組成を測定し、この測定値からAl成分の組成の変動幅を求めた。
表4、表5に、それぞれの値を示す。
また、電子線後方散乱回折装置を用いて、本発明工具1〜10、比較例工具1〜10のTiAlN層の工具基体表面に垂直な方向の断面を研磨面とした状態で、電界放出型走査電子顕微鏡の鏡筒内にセットし、前記研磨面に70度の入射角度で15kVの加速電圧の電子線を1nAの照射電流で、前記断面研磨面の測定範囲内に存在する結晶粒個々に照射し、工具基体と水平方向に長さ100μm、工具基体表面と垂直な方向の断面に沿って層厚以下の距離の測定範囲内について0.01μm/stepの間隔で、電子線後方散乱回折像を測定し、個々の結晶粒の測定点での結晶構造を解析することで、立方晶構造または六方晶構造と同定した全測定点数に対する立方晶構造と同定した測定点数の割合から、立方晶構造の結晶粒の面積割合を測定した。なお、0.01μm/stepの間隔とした測定点は、より詳細には、測定範囲内を充填するように一辺が0.01μmの正三角形を配置して、その各々の正三角形の頂点を測定点としており、一つの測定点での測定結果はこの正三角形一つの面積の測定結果を代表する測定結果となっている。従って、上記に示したように、測定点数の割合から面積割合が求められる。
上記測定を5箇所の測定範囲で行い、これらの平均値として、立方晶構造の結晶粒の面積割合を算出した。
表4、表5に、その値を示す。



次いで、本発明工具1〜10および比較例工具1〜10について、以下の条件で、高速断続切削の一種である乾式高速正面フライス、センターカット切削加工試験を実施し、切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。
切削試験:乾式高速正面フライス、センターカット切削加工、
カッタ径: 125 mm、
被削材: JIS・SCM445幅100mm、長さ400mmのブロック材、
切削速度: 350 m/min、
切り込み: 2.0 mm、
一刃送り量: 0.2 mm/刃、
切削時間: 9分、
表6に、試験結果を示す。

表6に示される結果から、本発明の被覆工具は、硬質被覆層としてTiAlN層を含み、該には、高Ti組成領域が三次元的に均一に分布して存在し、これによって、靱性が向上し、かつ、層中の異方性がないために、高熱発生を伴い、しかも、切刃に対して衝撃的・断続的な高負荷が作用する合金鋼の断続切削加工において、すぐれた耐チッピング性と耐摩耗性を発揮する。
これに対して、TiAlN層中に、高Ti組成領域が形成されていない比較例の被覆工具は、チッピングの発生によって、比較的短時間で使用寿命に至ることが明らかである。
この発明の被覆工具は、合金鋼などの断続切削加工に供した場合に、すぐれた耐チッピング性とともに長期の使用に亘ってすぐれた耐摩耗性を発揮するものであるから、切削加工装置のFA化、並びに切削加工の省力化および省エネ化、さらに低コスト化に十分満足に対応できるものである。

Claims (4)

  1. WC基超硬合金、TiCN基サーメットおよび立方晶窒化硼素焼結体のいずれかからなる工具基体の表面に、0.5〜10.0μmの平均層厚のTiとAlの複合窒化物層を少なくとも含む硬質被覆層が設けられた表面被覆切削工具において、
    前記TiとAlの複合窒化物層は、その組成を、
    組成式:(TiAl)N
    で表した場合、0.05≦x≦0.17、0.33≦y≦0.45、x+y+z=1(ただし、x、y、zはいずれも原子比)を満足する平均組成を有し、
    前記TiとAlの複合窒化物層中には、前記Ti成分の平均組成xに比して、Ti成分の組成が相対的に高い領域とTi成分の組成が相対的に低い領域が、前記TiとAlの複合窒化物層の縦断面の任意の異なる方向の複数の線分上に存在することを特徴とする表面被覆切削工具。
  2. 前記TiとAlの複合窒化物層の縦断面について、工具基体表面に対する傾斜角度がそれぞれ異なる任意の複数本の線分上におけるTi成分の組成を求めた場合、それぞれの線分上において、Ti成分の組成が1.03x〜1.15x(但し、xは、前記組成式におけるTi成分の平均組成)の範囲内にあるTi最高含有点と、Ti成分の組成が0.85x〜0.97xの範囲内にあるTi最低含有点が繰り返し存在し、かつ、隣り合う前記Ti最高含有点と前記Ti最低含有点との平均間隔Lは1nm〜50nmであることを特徴とする請求項1に記載の表面被覆切削工具。
  3. 前記TiとAlの複合窒化物層の縦断面におけるAl成分の組成の変動幅は、Al成分の平均組成をyとした場合、0.01y〜0.06yであることを特徴とする請求項1または2に記載の表面被覆切削工具。
  4. 前記TiとAlの複合窒化物層は、立方晶構造の結晶粒と六方晶構造の結晶粒の混合組織からなり、前記TiとAlの複合窒化物層の縦断面に占める立方晶構造の結晶粒の面積割合は30面積%以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の表面被覆切削工具。


















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