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JP2017128860A - コンクリート構造物の補強施工方法および補強構造 - Google Patents

コンクリート構造物の補強施工方法および補強構造 Download PDF

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JP2017128860A JP2016007295A JP2016007295A JP2017128860A JP 2017128860 A JP2017128860 A JP 2017128860A JP 2016007295 A JP2016007295 A JP 2016007295A JP 2016007295 A JP2016007295 A JP 2016007295A JP 2017128860 A JP2017128860 A JP 2017128860A
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鉄太郎 山下
Tetsutaro Yamashita
鉄太郎 山下
宗 栄一
Eiichi So
栄一 宗
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Abstract

【課題】サンダー等の工具を用いて樹脂導入路としての溝を形成する工程を不要にしたコンクリート構造物の補強施工方法および補強構造を提供する。【解決手段】第1鉄筋4aおよびこれに交差する第2鉄筋4bが少なくとも第1面側において同一平面上にある補強用格子材4を、既設の床版1の表面に第1面側を向けて配置し、エポキシ樹脂9の注入孔6gが先端まで形成されたロッド部6bを有する注入用アンカー6を取り付けるアンカー取付穴1bであり、ロッド部6bの外径よりも大きなアンカー取付穴1bを、床版1の補強用格子材4の網状の交差部に隣接する位置に穿設し、注入用アンカー6のロッド部6bをアンカー取付穴1bに差し込み、補強用格子材4を被覆層7によって被覆し、注入用アンカー6の注入孔6gに外部からエポキシ樹脂9を注入する。【選択図】図8

Description

本発明は、例えば橋梁等のコンクリート構造物の補強に係り、特にひび割れを生じた橋梁床版や壁体の補修のほか既設構造物に対して新たに鉄筋を追加施工して補強する補強施工方法および補強構造に関する。
コンクリート構造によって構築される道路橋では、車両の通過による動荷重を繰り返し受けるため、道路橋の主要部材の中でも橋梁の床版に対する負荷はかなり大きい。そして、橋梁自身が持つ強度に対して、過大な負荷の繰り返しや衝撃荷重が大きかったり、耐用年限を大きく越えたりすると、床版の下面にひび割れが発生し、このひび割れは次第に下面を縦横に走るようにまでなって細網化し、コンクリートの剥落などを招くことになる。
このようなひび割れの発生は、コンクリート中の鉄筋の腐食や破断の原因となるので、通常の場合はひび割れが発生した初期の段階で床版を補修することが好ましいとされている。従来、この床版の補修施工としては、ひび割れ内にエポキシ樹脂などを注入する樹脂注入法や、床版に発生した空洞部分やコンクリート剥離部分をセメントモルタルで修復する断面修復工法が行われている。ところが、これらの工法のほとんどは破損部位の修復を主な目的とするものであって、鉄筋の腐食の進行等を防ぐことなどには有効であるものの、構造物自体の強度を上げるという施工には対応できない。
これに対し、例えば特許文献1には、橋梁などを含めて既設のコンクリート構造物に対して新たに鉄筋を追加施工して補強することが可能な補強施工方法が開示されている。この補強施工方法では、図9に示すように、格子状に縦および横の鉄筋104a,104bを予め溶接によって一体化した網鉄筋104をアンカーピン105によって床版101の下面に固定保持し、網鉄筋104の施工後にモルタル樹脂等によって被覆層を施工する。
上記従来の補強施工方法を詳細に説明すると、まず、図10(a)に示すように、床版101の底面に網鉄筋104の鉄筋104a,104bの配列方向およびランダムな方向にサンダー等の工具を用いて溝101aを形成する。次いで、図11に示すように、網鉄筋104を床版101の下面に形成したアンカー穴101bにアンカーピン105を用いて固定した後、アンカーピン105の注入孔105dが開放している部分を取り外し可能なシール材105d−1で封止し、吹き付け装置によって塗布材106aを吹き付けて溝101aを覆う(図10(b)参照。)。
その後、コテを利用して中塗材を塗布し、網鉄筋104を埋設する。このとき、アンカーピン105のヘッド105aは埋没しないようにする。そして、中塗材の塗布後、注入孔105dからシール材105d−1を抜き取り、エポキシ樹脂を外部から注入する。注入されたエポキシ樹脂は、床版101の下面に刻んだ溝101aの中に流れ込んでひび割れに浸透していくほか、塗布材が被覆していない床版101の下面と鉄筋104bとの間の隙間を充填するように流れていき、床版101のほぼ全体の広い領域に分布する。
特許第3582971号公報
ところで、上記従来の補強施工方法で用いられている網鉄筋104は、鉄筋104a,104bを縦横に配列し、その交差部を溶接などにより固着して形成されたものであり、交差部では縦横の鉄筋104a,104bが上下に重なり合った状態である。そのため、網鉄筋104の鉄筋104a,104bのうち、床版104の下面側に配置されている鉄筋104bと床版101の下面との隙間は塗布材の吹き付けによって塞がれず、エポキシ樹脂が流れるための十分な隙間が確保されるが、この鉄筋104bと交差する鉄筋104aと床版101の下面との隙間は塗布材の吹き付けによって塞がれてしまうことになる。そのため、この補強施工方法では、床版101の底面に網鉄筋104の鉄筋104a,104bの配列方向およびランダムな方向にサンダー等の工具を用いて溝101aを形成することで、エポキシ樹脂の導入路を確保することが必要となっている。
本発明は、サンダー等の工具を用いて樹脂導入路としての溝を形成する工程を不要にしたコンクリート構造物の補強施工方法および補強構造を提供することを目的とする。
本発明のコンクリート構造物の補強施工方法は、第1方向部分およびこれに交差する第2方向部分により網状の交差部が形成された補強用格子材であり第1方向部分および第2方向部分が少なくとも第1面側において同一平面上にある補強用格子材を、既設のコンクリート構造物の表面に第1面側を向けて配置すること、合成樹脂の注入孔が先端まで形成されたロッド部を有する注入用アンカーを取り付けるアンカー取付穴であり、ロッド部の外径よりも大きなアンカー取付穴を、コンクリート構造物の補強用格子材の網状の交差部に隣接する位置に穿設すること、注入用アンカーのロッド部をアンカー取付穴に差し込むこと、補強用格子材を被覆層によって被覆すること、注入用アンカーの注入孔に外部から合成樹脂を注入し、この合成樹脂をアンカー取付穴から補強用格子材の第1方向部分および第2方向部分とコンクリート構造物の表面との隙間を通じてコンクリート構造物の表面と被覆層との間の全体に行き渡らせることを含むことを特徴とする。
本発明によれば、補強用格子材の第1方向部分および第2方向部分が、少なくとも既設のコンクリート構造物の表面に向けて配置される第1面側において同一平面上にあるため、注入用アンカーの注入孔に外部から注入される合成樹脂が流入するための補強用格子材の第1方向部分および第2方向部分とコンクリート構造物の表面との隙間が確保される。したがって、本発明によれば、従来のようにコンクリート構造物の表面にサンダー等の工具を用いて樹脂導入路としての溝を形成することなく、注入された合成樹脂をアンカー取付穴から補強用格子材の第1方向部分および第2方向部分とコンクリート構造物の表面との隙間を通じてコンクリート構造物の表面と被覆層との間の全体に行き渡らせることが可能となる。
本発明によれば、コンクリート構造物の表面にサンダー等の工具を用いて樹脂導入路としての溝を形成することなく、補強用格子材を覆う被覆層と、注入用アンカーの注入孔と、アンカー取付穴と、コンクリート構造物の表面と被覆層との間の全体に渡って補強用格子材の第1方向部分および第2方向部分とコンクリート構造物の表面との隙間とに充填された合成樹脂とを含むコンクリート構造物の補強構造が得られる。
本発明の実施の形態におけるコンクリート構造物の補強施工方法によって橋梁の床版を補強した例を示す概略図である。 固定用アンカーおよび注入用アンカーの配置を示す図1のII−II線矢視図である。 補強用格子材の斜視図である。 図3のIV−IV線断面図である。 固定用アンカーの詳細を示す図であって、(a)は平面図、(b)は一部切欠正面図、(c)は底面図である。 注入用アンカーの詳細を示す図であって、(a)は平面図、(b)は一部切欠正面図、(c)は底面図である。 固定用アンカーをアンカー取付穴にねじ込んで鉄筋を固定した後に被覆層を形成した状態を示す要部断面図である。 アンカー取付穴に取り付けた注入用アンカーの注入孔からエポキシ樹脂を注入したときの樹脂の流れを示す要部断面図である。 従来のコンクリート構造物の補強施工方法におけるアンカーピンの配置を示す床版の底面図である。 従来のコンクリート構造物の補強施工方法において床版の底面に刻む溝の施工例であって、(a)は床版を斜め下方から見たときの概略図、(b)は溝の形状を示す断面図である。 従来のコンクリート構造物の補強施工方法においてアンカーピンにより鉄筋を固定した状態を示す要部断面図である。
図1は本発明の実施の形態におけるコンクリート構造物の補強施工方法によって橋梁の床版を補強した例を示す概略図、図2は固定用アンカーおよび注入用アンカーの配置を示す図1のII−II線矢視図、図3は補強用格子材の斜視図、図4は図3のIV−IV線断面図である。
図1に示すコンクリート構造物は、橋梁の床版1が橋桁3によって支持されたものである。床版1の内部には、鉄筋が格子状に配筋されている。また、床版1の路幅方向の両端には、地覆2がそれぞれ一体に形成されている。床版1は既設のものであり、通過車両Vによる動荷重を繰り返し受けてその下面表面にひび割れが発生しているものとする。本実施形態におけるコンクリート構造物の補強施工方法では、このひび割れが発生した床版1を補強するため、図2に示す補強用格子材4を固定用アンカー5によって固定保持する。固定用アンカー5は、補強用格子材4の交差部4cに隣接するように床版1に形成されたアンカー取付穴1a(図7参照。)にねじ込まれる。
補強用格子材4は、図3に示すように、第1方向X1に延びる第1方向部分を構成する第1鉄筋4aおよびこれに交差する第2方向X2に延びる第2方向部分を構成する第2鉄筋4bにより網状の交差部4cが形成されたものである。本実施形態においては、補強用格子材4は、複数の第1鉄筋4aとしての異形棒鋼と複数の第2鉄筋4bとしての異形棒鋼とを互いに直交するように配置し、加熱しながらプレス成型することにより一体化したものを使用する。なお、第1鉄筋4aおよび第2鉄筋4bとして丸鋼を使用することもある。また、本実施形態においては、補強用格子材4は溶融亜鉛メッキしたものを用いることで耐久性を向上させている。
補強用格子材4は、図4に示すように第1鉄筋4aおよび第2鉄筋4bの上面(床版1の下面表面に向けて配置する面。本明細書中において「第1面」と称す。)Z1および下面(第1面と反対側の面。本明細書中において「第2面」と称す。)Z2が同一平面上にある。そのため、交差部4cで第1鉄筋4aおよび第2鉄筋4bが上下に重なり合わず、補強用格子材4全体の厚さを第1鉄筋4aまたは第2鉄筋4bの厚さにすることができる。なお、第1鉄筋4aの厚さと第2鉄筋4bの厚さとは同一である必要はなく、少なくとも第1面Z1側が同一平面上にあれば良い。また、本実施形態においては、第1方向X1と第2方向X2とは直交しているが、直交している必要はない。
図5は固定用アンカー5の詳細を示す図であって、(a)は平面図、(b)は一部切欠正面図、(c)は底面図である。固定用アンカー5は、下端にその端面を緩やかな円弧面状としたヘッド部5aが形成され、このヘッド部5aから上端に向けてロッド部5bが形成されたものである。ロッド部5bには、ヘッド部5aとの間を上端側、すなわち、アンカー取付穴1aへのねじ込み進行方向に外形を先細りさせたテーパ部5cが形成されている。また、ヘッド部5a側には、回転工具を嵌めて回転させるための多角形断面穴としての六角穴5dが設けられている。
また、テーパ部5cよりも先端側のロッド部5bの外周面には、2条のねじ山5e,5fが形成されている。ねじ山5eは、断面形状が三角形になっている三角ねじである。このねじ山5eは、アンカー取付穴1aの内面に切り込む錐として作用するものである(以下、このねじ山5eを「錐ねじ山」と称す。)。ねじ山5fは、ねじ山5eよりも高さが低く形成された台形ねじまたは角ねじである。このねじ山5fは、ねじ込みの際の案内として作用するものである(以下、このねじ山5fを「案内ねじ山」と称す。)。
このような固定用アンカー5がねじ込まれるアンカー取付穴1aは、補強用格子材4の第1鉄筋4aおよび第2鉄筋4bが十字状に交差している角部であって、第1鉄筋4aおよび第2鉄筋4bにロッド部5bの周面が同時に接触するような位置に形成されている。このアンカー取付穴1aに固定用アンカー5をねじ込んでいくと、ロッド部5b部分に変わってテーパ部5cが第1鉄筋4aおよび第2鉄筋4bの周面に当たるようになり、固定用アンカー5の取り付け中心から見るとこのテーパ部5cによってその外径半径が大きくなる。したがって、固定用アンカー5は図2において矢印方向に第1鉄筋4aおよび第2鉄筋4bを押すようになり、これらの交差部4cには引張力が作用する。
このように固定用アンカー5にテーパ部5cを設けることによって、図2に示す補強用格子材4に対して固定用アンカー5の位置を適切にすれば、図中の矢印で示すように補強用格子材4の中心から格子と45°の角度を持つ方向への一様な引張力を作用させることができる。したがって、図1に示すように床版1に対して施工したときには、この床版1が撓み変形しても補強用格子材4がこの撓み変形に追従して、固定用アンカー5と補強用格子材4との間に隙間が発生することが防止される。
また、本実施形態におけるコンクリート構造物の補強施工方法では、合成樹脂を注入するための注入用アンカー6を、補強用格子材4の交差部4cに隣接するように床版1に形成されたアンカー取付穴1bに取り付ける。アンカー取付穴1bは、固定用アンカー5が取り付けられるアンカー取付穴1aとは異なる位置に設けられている。
図6は注入用アンカー6の詳細を示す図であって、(a)は平面図、(b)は一部切欠正面図、(c)は底面図である。注入用アンカー6は、可鍛に前述の固定用アンカー5と同様のヘッド部6aが形成され、このヘッド部6aから上端に向けてロッド部6bが形成されたものである。ロッド部6bには、ヘッド部6aとの間を上端側、すなわち、アンカー取付穴1bへ差し込む方向に外形を先細りさせたテーパ部6cが形成されている。
ヘッド部6a側には、合成樹脂の注入器具8を接続するための注入器具接続部としての雌ねじ部6eが形成されている。また、ロッド部6bの先端側の外周面には、合成樹脂との付着力を高めるための凸凹6fが形成されている。さらに、注入用アンカー6のロッド部6bには、雌ねじ部6eおよびヘッド部6aに連ねて軸線方向に貫通させた一様な内径の注入孔6gが形成されている。そして、ロッド部6bの先端側には、注入孔6gの周壁部分を半径方向に切開したスリット6hが形成されている。
このような注入用アンカー6が取り付けられるアンカー取付穴1bは、補強用格子材4の第1鉄筋4aおよび第2鉄筋4bが十字状に交差している角部であって、第1鉄筋4aおよび第2鉄筋4bにロッド部6bの周面が同時に接触するような位置に形成されている。このアンカー取付穴1bに差し込まれた注入用アンカー6は、テーパ部6cが補強用格子材4の第1鉄筋4aおよび第2鉄筋4bとアンカー取付穴1bの内側面との支圧力によりアンカー取付穴1bに保持される。
次に、本実施形態におけるコンクリート構造物の補強施工方法について説明する。図7は固定用アンカーをアンカー取付穴にねじ込んで鉄筋を固定した後に被覆層を形成した状態を示す要部断面図、図8はアンカー取付穴に取り付けた注入用アンカーの注入孔からエポキシ樹脂を注入したときの樹脂の流れを示す要部断面図である。なお、本実施形態におけるコンクリート構造物の補強施工方法では、従来方法のような溝を刻む施工は行わない。
本実施形態におけるコンクリート構造物の補強施工方法では、まず、補強用格子材4を床版1の下面表面に沿わせてその位置を仮決めし、第1鉄筋4aおよび第2鉄筋4bの両方に固定用アンカー5および注入用アンカー6のそれぞれのロッド部5b,6bが接触できる位置を、床版1の下面表面に墨出しする。固定用アンカー5および注入用アンカー6の施工数は補強用格子材4の大きさに応じて適宜選択すれば良い。
固定用アンカー5および注入用アンカー6の施工位置の墨付け後には、補強用格子材4を床版1から離すかまたは保持具によって仮決めしたままとして、墨付けマークを目印にして下穴としてのアンカー取付穴1a,1bをドリルによって穿孔する。アンカー取付穴1aの内径は、固定用アンカー5のロッド部5bの外形よりも大きく、かつ、錐ねじ山5eよりも小さく、固定用アンカー5をねじ込んだときに錐ねじ山5eがアンカー取付穴1aの内面に切り込む程度とする。一方、アンカー取付穴1bの内径は、注入用アンカー6のロッド部6bの外形よりも大きく、かつ、注入樹脂の詰まりがない程度とする。また、アンカー取付穴1bの深さは、注入用アンカー6を奥まで差し込んだときにその先端に開放している注入孔6gが閉塞しない穿ち長さとする。
アンカー取付穴1a,1bの穿孔作業を全て終えると、補強用格子材4の位置を再び正確に位置合わせして第1鉄筋4aおよび第2鉄筋4bが交差する交差部4cとアンカー取付穴1aの間の位置関係を調整して、再度床版1の下面表面に沿わせて仮固定する。そして、固定用アンカー5のロッド部5bの先端部をアンカー取付穴1aの入口にあてがい、回転工具を六角穴5dに嵌めて固定用アンカー5を回転させながら床版1にねじ込んでいく。このとき、固定用アンカー5の錐ねじ山5eはアンカー取付穴1aの内面に切り込みながら進行し、案内ねじ山5fがアンカー取付穴1aの内面に当接することによって、固定用アンカー5の姿勢を、その軸線がアンカー取付穴1aの軸線と一致するように保持する。
このように固定用アンカー5を回転させながら床版1のアンカー取付穴1aにねじ込んでいくと、テーパ部5cが第1鉄筋4aおよび第2鉄筋4bの周面に当たり、図2において矢印方向に第1鉄筋4aおよび第2鉄筋4bを押すようになり、これらの交差部4cに引張力が作用する。すなわち、この交差部4cに作用する引張力が補強用格子材4の中央から外側に向かって広がるように固定用アンカー5を取り付けることで、図7に示すように、ヘッド部5aが第1鉄筋4aおよび第2鉄筋4bに突き当たってねじ込み完了となったときには、全体に緊張力が作用した状態で補強用格子材4が床版1の下面表面に固定される。
以上の要領で固定用アンカー5をアンカー取付穴1aにねじ込んだ後、注入用アンカー6をアンカー取付穴1bに差し込んで取り付ける。アンカー取付穴1bに差し込まれた注入用アンカー6は、テーパ部6cが補強用格子材4の第1鉄筋4aおよび第2鉄筋4bとアンカー取付穴1bの内側面との支圧力によりアンカー取付穴1bに保持される。
その後、注入用アンカー6の注入孔6gが開放している部分すなわち雌ねじ部6eにボルト等をねじ込むことにより封止する。そして、床版1の下面表面に図1に一点鎖線で示す被覆層7を形成する。被覆層7は、下塗材、中塗材および上塗材からなり、まず、吹き付け装置によって下塗材を吹き付ける。このとき、下塗材は吹き付け装置によって床版1の真下から吹き付けるように作業するため、第1鉄筋4aおよび第2鉄筋4bと床版1の下面との間に下塗材が完全には回り込まず、隙間1cが形成される。
このとき、本実施形態における補強用格子材4の第1鉄筋4aおよび第2鉄筋4bが、少なくとも床版1の下面表面に向けて配置される第1面Z1側において同一平面上にあるため、この補強用格子材4の第1鉄筋4aおよび第2鉄筋4bと床版1の下面表面との間に、後述するように注入用アンカー6の注入孔6gに外部から注入されるエポキシ樹脂9が流入するための隙間1cが形成される。すなわち、本実施形態における補強用格子材4の第1鉄筋4aおよび第2鉄筋4bでは、床版1の下面表面に向けて配置される第1面Z1側において同一平面上にあるため、丸棒である第1鉄筋4aおよび第2鉄筋4bの外周面と床版1との接触部近傍は隙間1cが狭く、下塗材が隅々まで到達できず、必ず隙間1cが形成されることになる。
この下塗材の塗布後、中塗材を塗布する。中塗材はコテ塗りまたは吹き付け作業によって行う。このとき、中塗材はヘッド部を覆い、所定の厚さを確保する。そして、中塗材の養生後、雌ねじ部6eからボルト等を抜き取り、図8に示すように注入器具8を雌ねじ部6eにねじ込んで、この注入器具8から合成樹脂として例えばエポキシ樹脂9を注入する。このエポキシ樹脂9の充填の後、注入器具8を雌ねじ部6eから取り外し、中塗材の表面に上塗材をローラーによって塗布し、下塗材、中塗材および上塗材によって図1に一点鎖線で示す被覆層7が形成される。
なお、注入用アンカー6の注入孔6gに供給されたエポキシ樹脂9は、注入孔6gの上端およびスリット6hから流出してアンカー取付穴1bの中に送り出され、アンカー取付穴1bの中では注入圧力によって隙間1cに速やかに流入していく。そして、アンカー取付穴1bから抜けたエポキシ樹脂9は、第1鉄筋4aおよび第2鉄筋4bとひび割れの交差部から床版1の下面のひび割れに注入されていくほか、床版1の下面表面と補強用格子材4の第1鉄筋4aおよび第2鉄筋4bとの隙間1cを充填するように流れていき、床版1の下面表面と下塗材(被覆層7)との間の全体に行き渡る。
すなわち、ひび割れは下塗材によって被覆された状態となっているが、補強用格子材4の第1鉄筋4aおよび第2鉄筋4bの隙間1cに充填されるエポキシ樹脂9がその注入圧によって流動してひび割れの中に浸透する。また、第1鉄筋4aおよび第2鉄筋4bが直にひび割れと交差している部分では、隙間1cに沿って供給されてくるエポキシ樹脂9が直接ひび割れの中に入り込んでいく。すなわち、ひび割れの発生の仕方が不定型であっても、従来のように床版1にサンダー等の工具を用いて樹脂導入路としての溝を形成することなく、この隙間1cを利用してエポキシ樹脂9をひび割れに充填することができる。
このように注入用アンカー6の注入孔6gから注入されたエポキシ樹脂9はアンカー取付穴1bの中だけに止まるのではなく、床版1のほぼ全体の広い領域に分布させることができる。したがって、エポキシ樹脂9を適当な量だけ注入した後に養生期間を置くと、エポキシ樹脂9の硬化によって注入用アンカー6のロッド部6bはアンカー取付穴1bの中に強固に固定される。
また、床版1の下面表面と補強用格子材4との間にも固化したエポキシ樹脂9がそのまま残るので、床版1の下面を強固に被覆でき、増厚部と完全一体化して補修補強効果を発揮する。さらに、ひび割れについてもエポキシ樹脂9が充填されることから、衝撃荷重等を受けてもその成長を抑えることができ、その補修だけでなく、補強強度も十分に高くすることができる。
以上のように、本実施形態におけるコンクリート構造物の補強施工方法では、コンクリート構造物の表面にサンダー等の工具を用いて樹脂導入路としての溝を形成する必要がない。また、補強用格子材4が、交差部4cで第1鉄筋4aおよび第2鉄筋4bが上下に重なり合わず、補強用格子材4全体の厚さが第1鉄筋4aまたは第2鉄筋4bの厚さであるため、これを覆う被覆層7が薄くなり、施工性および経済性が向上する。
以上の例では橋梁の床版の補強施工としたが、これに代えて各種のコンクリート構造体を施工対象としてもよいことは無論である。
本発明のコンクリート構造物の補強施工方法および補強構造は、例えば橋梁等のコンクリート構造物の補強、特にひび割れを生じた橋梁床版や壁体の補修の他、既設構造物に対して新たに鉄筋を追加施工して補強するための方法および構造として有用である。
1 床版
1a,1b アンカー取付穴
1c 隙間
2 地覆
3 橋桁
4 補強用格子材
4a 第1鉄筋
4b 第2鉄筋
4c 交差部
5 固定用アンカー
5a ヘッド部
5b ロッド部
5c テーパ部
5d 六角穴
5e 錐ねじ山
5f 案内ねじ山
6 注入用アンカー
6a ヘッド部
6b ロッド部
6c テーパ部
6e 雌ねじ部
6f 凸凹
6g 注入孔
6h スリット
7 被覆層
8 注入器具
9 エポキシ樹脂

Claims (3)

  1. 第1方向部分およびこれに交差する第2方向部分により網状の交差部が形成された補強用格子材であり前記第1方向部分および前記第2方向部分が少なくとも第1面側において同一平面上にある補強用格子材を、既設のコンクリート構造物の表面に前記第1面側を向けて配置すること、
    合成樹脂の注入孔が先端まで形成されたロッド部を有する注入用アンカーを取り付けるアンカー取付穴であり、前記ロッド部の外径よりも大きなアンカー取付穴を、前記コンクリート構造物の前記補強用格子材の網状の交差部に隣接する位置に穿設すること、
    前記注入用アンカーのロッド部を前記アンカー取付穴に差し込むこと、
    前記補強用格子材を被覆層によって被覆すること、
    前記注入用アンカーの注入孔に外部から合成樹脂を注入し、この合成樹脂を前記アンカー取付穴から前記補強用格子材の前記第1方向部分および前記第2方向部分と前記コンクリート構造物の表面との隙間を通じて前記コンクリート構造物の表面と前記被覆層との間の全体に行き渡らせること
    を含むコンクリート構造物の補強施工方法。
  2. 前記補強用格子材は、前記第1方向部分を構成する第1鉄筋と前記第2方向部分を構成する第2鉄筋とから構成されたものである請求項1記載のコンクリート構造物の補強施工方法。
  3. 第1方向部分およびこれに交差する第2方向部分により網状の交差部が形成され、前記第1方向部分および前記第2方向部分が少なくとも第1面側において同一平面上にある補強用格子材であり、既設のコンクリート構造物の表面に前記第1面側を向けて配置された補強用格子材と、
    合成樹脂の注入孔が先端まで形成されたロッド部を有する注入用アンカーであり、前記コンクリート構造物の前記補強用格子材の網状の交差部に隣接する位置に穿設された前記ロッド部の外径よりも大きなアンカー取付穴に差し込まれた注入用アンカーと、
    前記補強用格子材を覆う被覆層と、
    前記注入用アンカーの注入孔と、前記アンカー取付穴と、前記コンクリート構造物の表面と前記被覆層との間の全体に渡って前記補強用格子材の前記第1方向部分および前記第2方向部分と前記コンクリート構造物の表面との隙間とに充填された合成樹脂と
    を含むコンクリート構造物の補強構造。
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