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JP2017128799A - 高強度ばね用圧延材 - Google Patents

高強度ばね用圧延材 Download PDF

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JP2017128799A
JP2017128799A JP2016239059A JP2016239059A JP2017128799A JP 2017128799 A JP2017128799 A JP 2017128799A JP 2016239059 A JP2016239059 A JP 2016239059A JP 2016239059 A JP2016239059 A JP 2016239059A JP 2017128799 A JP2017128799 A JP 2017128799A
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敦彦 竹田
Atsuhiko Takeda
敦彦 竹田
智一 増田
Tomokazu Masuda
智一 増田
尚志 安居
Hisashi Yasui
尚志 安居
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Kobe Steel Ltd
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Abstract

【課題】高強度でありながら腐食耐久性と大気耐久性に優れる高強度ばね用ワイヤを、伸線加工性良く、かつ追加工程等を必要とせずに量産製造することのできる高強度ばね用圧延材を提供する。
【解決手段】上記高強度ばね用圧延材は、C、Si、Mn、P、S、Al、Cu、Ni、Cr、およびTiが規定範囲を満たし、残部が鉄および不可避不純物であり、かつ規定の式(1)で表される理想臨界直径DCIが120以下であると共に、規定の式(2)で表される脱炭指数CAが70以下であるところに特徴を有する。
【選択図】なし

Description

本発明は、高強度ばね用圧延材に関する。特には、高強度でありながら腐食耐久性と大気耐久性に優れる高強度ばね用ワイヤを、伸線加工性良く、かつ追加工程等を必要とせずに量産製造することのできる高強度ばね用圧延材に関する。
自動車等に用いられるコイルばね、例えばエンジンやサスペンション等に使用される弁ばね、懸架ばねなどは、排ガスの低減や燃費向上のために軽量化が求められており、高強度化が要求されている。高強度ばねの素材として高強度ワイヤを製造する工程では、圧延材に対し、線径の寸法精度向上、塑性加工による組織均一化を目的として伸線加工が施され、その後、調質、すなわち焼入れ焼戻しが施される。上記高強度ワイヤの製造では、組織のより十分な均一化を図るべく、伸線の加工率を増加させることがある。よって、伸線加工に供する圧延材には良好な伸線加工性が必要となる。伸線加工性が悪い場合は、伸線時に断線が生じ、工業生産品として用いることができない。
また、高強度化されたばねは、靭延性に乏しいため水素脆性が生じやすく、腐食環境下での疲労特性、すなわち腐食耐久性が低下する。そのため、ばねの製造に用いられるワイヤには腐食耐久性に優れていることも要求される。更に前記ばねには、大気雰囲気下での疲労特性、すなわち大気耐久性に優れていることも求められる。前記腐食耐久性と大気耐久性に優れたばねを実現するには、該ばねの素材であるワイヤにもこれらの特性が備わっていることが必要である。
高強度ばね用圧延材の伸線加工性や、該圧延材を用いて得られる高強度ばね用ワイヤの腐食耐久性等を高める方法として、化学成分組成を制御することや圧延材等の組織を制御することなどが知られている。
例えば特許文献1は、伸線性に優れた高強度ばね用鋼線材に関するものであり、圧延材の化学成分とともに、圧延材の組織を微細かつ均一なパーライト主体組織とし、更には、パーライトノジュール粒度番号の平均値およびその標準偏差を適正な値に制御することによって、伸線性を向上させている。しかしながら、提案されている鋼材はいずれも、焼入性指数DI値が極めて高いため、軟化焼鈍などの工程を追加する必要があると考えられる。コストアップとなる上記工程の追加を行わずに製造するには、更なる検討が必要であると考えられる。
特許文献2は、耐水素疲労破壊特性に優れた高強度ばね用鋼に関するものであり、化学成分と共に、ワイヤ組織をマルテンサイトとフェライトの層状組織とすることで特性を改善している。しかしながら、このマルテンサイトとフェライトの層状組織といった2相組織を得るには、製造工程において加熱温度を厳密に制御する必要があり、工業的安定性が十分であるとは言い難いため、量産製造するには更なる検討が必要と思われる。
特開2012−072492号公報 特開2003−105485号公報
本発明は上記のような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、高強度でありながら腐食耐久性と大気耐久性に優れる高強度ばね用ワイヤを、伸線加工性良く、かつ追加工程等を必要とせずに量産製造することのできる高強度ばね用圧延材を提供することにある。
上記課題を解決し得た本発明の高強度ばね用圧延材は、質量%で、
C:0.55〜0.63%、
Si:1.90〜2.30%、
Mn:0.15〜0.55%、
P:0%超、0.015%以下、
S:0%超、0.015%以下、
Al:0.001〜0.1%、
Cu:0.15〜0.45%、
Ni:0.35〜0.75%、
Cr:0.36〜0.65%、および
Ti:0.04〜0.11%
を満たし、残部が鉄および不可避不純物であり、かつ下記式(1)で表される理想臨界直径DCIが120以下であると共に、下記式(2)で表される脱炭指数CAが70以下であるところに特徴を有する。
DCI=25.4×(0.171+0.001×[C]+0.265×[C]2
×(3.3333×[Mn]+1)×(1+0.7×[Si])
×(1+0.363×[Ni])×(1+2.16×[Cr])
×(1+0.365×[Cu])×(1+1.73×[V])×(1+3×[Mo])
…(1)
CA=98×[Si]−171×[Mn]−40×[Cr]−142×[Ni]−60×[Cu]…(2)
上記式(1)および式(2)中、[元素名]は各元素の質量%での鋼中含有量を意味する。
前記高強度ばね用圧延材は、圧延材の圧延方向に垂直な断面において、圧延材の最表面から半径方向に深さ20μmまでの領域のC濃度が母相のC濃度の50%以上であり、全組織に占めるマルテンサイトとベイナイトの合計が5面積%以下であり、かつ圧延材の最表面から半径方向に深さ0.5mmまでの領域を観察したときに、深さ20μm以上かつ幅500μm以上のフェライト単相が存在せず、更に引張強度が1170MPa以下を満たすことが好ましい。
前記高強度ばね用圧延材の理想臨界直径DCIは70以上であることが好ましい。
前記高強度ばね用圧延材は、更に、下記(a)と(b)のうちの1以上を含んでいてもよい。
(a)質量%で、B:0%超、0.01%以下、
(b)質量%で、V:0%超、0.3%以下、Nb:0%超、0.3%以下、およびMo:0%超、0.5%以下よりなる群から選択される少なくとも1種
前記高強度ばね用圧延材は、圧延材の中心を含む圧延方向に水平な断面において、圧延材の最表面から半径方向に向かって2.0mmの位置におけるCr偏析度が下記式(3)を満足することが好ましい。
Cr偏析度≦0.1%…(3)
ここで、Cr偏析度は、EPMAを用いた線分析で測定した、圧延方向のCr含有量の分布の+2σの値である。
前記高強度ばね用圧延材は、圧延材の中心を含む圧延方向に水平な断面において、圧延材の最表面からの半径方向長さ:2mm×圧延方向長さ:0.10mmで規定される四辺形領域における、半径方向の大きさが8μm以上のTiNの個数が10個以下であることが好ましい。
本発明の圧延材は、成分組成を最適化しているため、引張強度が例えば1950MPa以上と高強度であっても腐食耐久性と大気耐久性に優れるワイヤを、伸線加工性良く、かつ前述の特許文献1の様な軟化焼鈍等の追加工程や特許文献2の様な加熱温度の厳密な制御を必要とせずに、一般的な製造ラインにおいて量産製造することができる。
本発明者らは、引張強度が例えば1950MPa以上と高強度でありながら腐食耐久性と大気耐久性に優れる高強度ばね用ワイヤを、伸線加工性良く、かつ追加工程等を設けることなく量産製造することのできる高強度ばね用圧延材を得るべく鋭意研究を重ねた。その結果、鋼材の化学成分組成を製造可能な範囲内で最適化すれば、特に優れた伸線加工性を確保できると共に、優れた腐食耐久性と大気耐久性を有するワイヤが得られることを見出した。以下、上記各特性を確保するための具体的方法について説明する。
まず優れた伸線加工性を得るべく検討を行った。伸線加工性は、圧延材素材の延性に強く影響を受け、この延性は、硬化部であるベイナイトとマルテンサイトの有無、および、圧延材の引張強度で評価できる。以下では、上記ベイナイトとマルテンサイトを併せて「過冷組織」という。本発明者らが検討したところ、上記延性を高める、即ち、伸線加工性を高めるには、後述の通り圧延材の成分組成を制御することによって、圧延材の引張強度を抑え、かつ圧延材の全組織中の過冷組織を十分に抑制することが有効であることを見出した。
上記圧延材の引張強度は、1170MPa以下に抑えることが好ましい。より高い伸線加工性を確保するには、1100MPa以下に抑えることがより好ましい。尚、優れた伸線加工性確保の観点からは、上記引張強度は低い方が好ましいが、引張強度が極度に低い場合、球状化や粗大化された炭化物が存在しやすい。該炭化物が存在すると、その後のオーステナイト化で炭化物が十分に溶け込まず、焼入れ硬度不足となる恐れがあるため好ましくない。よって、上記引張強度は900MPa以上であることが好ましい。また全組織中の過冷組織は5面積%以下であることが好ましい。より高い伸線加工性を確保する観点からは、2面積%以下であることが好ましく、最も好ましくは過冷組織なし、即ち0面積%である。
次に大気耐久性について述べる。ばねの大気疲労破壊の原因として、鋼材成分などと共に、表層の脱炭が挙げられる。表層に脱炭が存在する場合、その部位が硬度低下箇所となり、破壊起点として作用し、実使用上で問題となる早期折損が生じる。そのため、表層の脱炭の有無で大気耐久性を判断できる。本発明者らは、大気耐久性を高めるには、後述の通り圧延材の成分組成を制御することにより、表層の脱炭を抑制、具体的には、粗大なフェライト脱炭の生成を抑制すると共に表層C濃度を確保することが有効であることを見出した。
本発明では、上記粗大なフェライト脱炭として、後述する実施例に記載の通り深さ20μm以上かつ幅500μm以上のフェライト単相が、一定領域内に存在しないようにする。微小なフェライト脱炭であれば、熱処理でCなどが拡散して該フェライト脱炭が消失するが、上記サイズのフェライト脱炭は、上記熱処理でも消失せずに残存し、大気耐久性に悪影響を及ぼすと考えられるからである。
また本発明では、上記粗大なフェライト脱炭の生成を抑制すると共に、圧延材の最表面から半径方向に深さ20μmまでの領域のC濃度が母相のC濃度の50%以上を満たすようにする。これにより、圧延材およびワイヤの表層部の硬さを確保でき、その結果、優れた大気耐久性を確保することができる。この「圧延材の最表面から半径方向に深さ20μmまでの領域のC濃度」は、後記する実施例の「表層C濃度の測定」に記載の方法で求められる。以下、上記「圧延材の最表面から半径方向に深さ20μmまでの領域のC濃度」を「表層C濃度」ということがある。該表層C濃度は、好ましくは母相のC濃度の60%以上、より好ましくは母相のC濃度の70%以上である。
更に、腐食耐久性について述べる。この腐食耐久性は、腐食疲労特性ともいわれる。腐食疲労破壊は、腐食により発生した水素が鋼中に侵入し、その水素による鋼材脆化が生じることによって起こる。よって、腐食耐久性を高めるには、後述の通り圧延材の成分組成を制御することにより、鋼材の耐食性と耐水素脆性を高めることが必要である。
高強度ばね用圧延材を一般的な圧延ラインで量産製造する上では、上記伸線加工性に悪影響を及ぼす過冷組織の発生と、上記大気耐久性に悪影響を及ぼすフェライト脱炭の発生が大きな問題となる。本発明では、量産製造で特に上記過冷組織やフェライト脱炭を抑制して、良好な伸線加工性、大気耐久性および腐食耐久性を確保すると共に、良好な腐食耐久性をも確保すべく、ばねやワイヤの素材である圧延材の成分組成を下記の通り制御する。
(C:0.55〜0.63%)
Cは、ばね用ワイヤの強度確保に必要であり、また水素トラップサイトとなる微細炭化物の生成にも必要な元素である。こうした観点から、C量を0.55%以上と定めた。C量の好ましい下限は0.57%以上であり、より好ましくは0.58%以上である。しかし、C量が過剰になると、ワイヤ製造時の焼入れ焼戻し後に、粗大な残留オーステナイトや未固溶の炭化物が生成しやすくなり、耐水素脆性が却って低下する場合がある。またCは、圧延材の強度を高めて、伸線加工性の低下、断線などを生じさせる。こうした観点から、C量を0.63%以下と定めた。C量の好ましい上限は0.62%以下であり、より好ましくは0.61%以下である。
(Si:1.90〜2.30%)
Siは、強度の確保に必要な元素であり、また炭化物を微細にして水素トラップサイトを十分に確保し、腐食耐久性を高める効果がある。これらの効果を有効に発揮させるため、Si量を1.90%以上と定めた。Si量の好ましい下限は1.95%以上であり、より好ましくは2.10%以上である。一方、Siは脱炭を促進させる元素でもあるため、Si量が過剰であると鋼材表面の脱炭層形成が促進され、優れた大気耐久性を確保できない。また、脱炭層削除のためのピーリング工程が必要となり、製造コストの増加を招く。更に、未固溶炭化物も多くなり、腐食耐久性が低下する。こうした観点から、Si量を2.30%以下と定めた。Si量の好ましい上限は2.25%以下であり、より好ましくは2.20%以下である。
(Mn:0.15〜0.55%)
Mnは、脱酸元素として利用されると共に、鋼中の有害元素であるSと反応してMnSを形成し、Sの無害化に有益な元素である。また、Mnは強度向上に寄与する元素でもある。これらの効果を有効に発揮させるため、Mn量を0.15%以上と定めた。Mn量の好ましい下限は0.20%以上であり、より好ましくは0.25%以上である。しかし、Mn量が過剰になると焼入れ性が増大し、また、靭性が低下して鋼材が脆化しやすくなる。こうした観点から、Mn量を0.55%以下と定めた。Mn量の好ましい上限は0.50%以下、より好ましくは0.45%以下である。
(P:0%超、0.015%以下)
Pは、圧延材、すなわち線材の、コイリング性などの延性を劣化させる有害元素である。また、Pは粒界に偏析しやすく、粒界脆化を招き、水素により粒界が破壊しやすくなり、耐水素脆性に悪影響を及ぼす。こうした観点からPはできるだけ少ない方がよく、本発明では0.015%以下と定めた。P量の好ましい上限は0.010%以下であり、より好ましくは0.008%以下である。P量は、上記の通り少なければ少ない程好ましいが、通常、最低でも0.001%程度含まれうる。
(S:0%超、0.015%以下)
Sは、上記したPと同様に、圧延材のコイリング性などの延性を劣化させる有害元素である。また、Sは粒界に偏析しやすく、粒界脆化を招き、水素により粒界が破壊しやすくなり、耐水素脆性に悪影響を及ぼす。こうした観点からSはできるだけ少ない方が望ましく、本発明では0.015%以下と定めた。S量の好ましい上限は0.010%以下であり、より好ましくは0.008%以下である。S量は少なければ少ない程好ましいが、通常、最低でも0.001%程度含まれうる。
(Al:0.001〜0.1%)
Alは、主に脱酸元素として添加される。また、Nと反応してAlNを形成して固溶Nを無害化すると共に組織の微細化にも寄与する。これらの効果を十分に発揮させるため、Al量を0.001%以上と定めた。Al量の好ましい下限は0.002%以上であり、より好ましくは0.005%以上である。しかしながら、AlはSiと同様に脱炭を促進させる元素でもあるため、Siを多く含有するばね用鋼ではAl量を抑える必要があり、本発明ではAl量を0.1%以下と定めた。Al量の好ましい上限は0.07%以下であり、より好ましくは0.030%以下、更に好ましくは0.020%以下である。
(Cu:0.15〜0.45%)
Cuは、表層脱炭の抑制や耐食性の向上に有効な元素である。そこで本発明では、Cu量を0.15%以上と定めた。Cu量は、好ましくは0.20%以上、より好ましくは0.25%以上である。しかしながら、Cuが過剰に含まれると、熱間加工時に割れが発生したり、コストが増加する。そこでCu量を0.45%以下と定めた。Cu量は、好ましくは0.43%以下、より好ましくは0.40%以下である。
(Ni:0.35〜0.75%)
Niは、Cuと同様に表層脱炭の抑制や耐食性の向上に有効な元素である。そこで本発明では、Ni量を0.35%以上と定めた。Ni量は、好ましくは0.40%以上、より好ましくは0.45%以上である。しかしながら、Niが過剰に含まれるとコストが増加する。従ってNi量を0.75%以下と定めた。Ni量は、好ましくは0.70%以下、より好ましくは0.65%以下である。
(Cr:0.36〜0.65%)
Crは、次に示す通り、懸架ばね用鋼の成分設計において重要な元素である。即ち、例えば高温で圧延中に、表層のCが脱炭する現象が生じるが、Crが鋼中に含まれていると、高温酸化で緻密なスケールが鋼材表面に生成し、Cの拡散を抑制する。その結果、表層脱炭を抑制し表層C濃度の低下を抑制でき、優れた大気耐久性を確保することができる。またCrは、耐食性をより高める効果を有し、更には、焼戻し軟化抵抗を示してワイヤの強度をより高める効果も有する。これらの効果を発揮させるには、Crを0.36%以上含有させる必要がある。Cr量は、好ましくは0.38%以上、より好ましくは0.40%以上である。一方、Crが過剰に含まれると、圧延材の強度が高まり、伸線加工が困難になる。また局部的に腐食の進行が生じるといった問題も起こり得る。そこで、Cr量は0.65%以下とする。Cr量は、好ましくは0.60%以下、より好ましくは0.55%以下である。
(Ti:0.04〜0.11%)
Tiは、Sと反応して硫化物を形成し、Sの無害化を図るのに有用な元素である。また、Tiは炭窒化物を形成して組織を微細化する効果も有する。更にTiCは水素の無害効果を有し、耐水素脆性、腐食後回転曲げ特性を向上させる。そこで本発明では、Ti量を0.04%以上と定めた。Ti量は、好ましくは0.05%以上、より好ましくは0.06%以上である。一方、Ti量が過剰になると、粗大なTi硫化物が形成されて延性が劣化することがある。よってTi量は0.11%以下とした。Ti量は、好ましくは0.10%以下である。
本発明の鋼材の成分は上記の通りであり、残部は鉄および不可避不純物である。上記元素に加えて更に、下記の元素を適量含有させることにより、焼入れ性等を更に高めることができる。以下、これらの元素について詳述する。
(B:0%超、0.01%以下)
Bは、焼入れ性向上元素であり、また旧オーステナイト結晶粒界を強化する効果があり、破壊の抑制に寄与する元素である。このような効果を有効に発揮させるため、B量は0.0005%以上が好ましく、より好ましくは0.0010%以上である。しかしながら、B量が過剰になっても上記効果が飽和するため、B量は0.01%以下が好ましく、より好ましくは0.0050%以下、さらに好ましくは0.0030%以下である。
(V:0%超、0.3%以下、Nb:0%超、0.3%以下、およびMo:0%超、0.5%以下よりなる群から選択される少なくとも1種)
V、Nb、MoはいずれもCやNと析出物を形成し、組織微細化に寄与する元素である。これらの元素は、単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。以下、各元素について説明する。
(V:0%超、0.3%以下)
Vは、強度向上や結晶粒微細化に寄与する元素である。このような効果を有効に発揮させるため、V量は0.1%以上が好ましく、より好ましくは0.15%以上であり、更に好ましくは0.20%以上である。しかしながら、V量が過剰になるとコストが増加する。そこで、V量は0.3%以下が好ましく、より好ましくは0.25%以下である。
(Nb:0%超、0.2%以下)
Nbは、CやNと炭窒化物を形成し、主に組織微細化に寄与する元素である。この観点からは、Nbを好ましくは0.005%以上含有してもよく、より好ましくは0.010%以上である。しかしながらNb量が過剰になると、粗大炭窒化物が形成されて鋼材の延性が劣化する。またコストの増加にもつながる。これらの観点からNb量は、0.3%以下とすることが好ましく、より好ましくは0.2%以下、更に好ましくは0.10%以下、特にコスト低減の観点から0.07%以下とすることが更に好ましい。
(Mo:0%超、0.5%以下)
MoもNbと同様に、CやNと炭窒化物を形成し、組織微細化に寄与する元素である。また焼戻し後の強度確保にも有効な元素である。このような効果を有効に発揮させるには、Mo量を0.10%以上とすることが好ましい。しかしながら、Mo量が過剰になると、粗大炭窒化物が形成されて鋼材のコイリング性などの延性が劣化する。よって、Mo量は0.5%以下であることが好ましく、より好ましくは0.3%以下である。
更に本発明の圧延材は、下記式(1)で表される理想臨界直径DCIと下記式(2)で表される脱炭指数CAが下記範囲を満たす。
下記式(1)で表される理想臨界直径DCIが120以下
DCI=25.4×(0.171+0.001×[C]+0.265×[C]2
×(3.3333×[Mn]+1)×(1+0.7×[Si])
×(1+0.363×[Ni])×(1+2.16×[Cr])
×(1+0.365×[Cu])×(1+1.73×[V])×(1+3×[Mo])
…(1)
上記式(1)中、[元素名]は各元素の質量%での鋼中含有量を意味する。
上記式(1)で表される理想臨界直径DCIが高すぎると、焼入れ性が高くなり、通常の圧延において過冷組織が発生しやすく、上述の通りワイヤ製造時の伸線加工性が低下する。そこで本発明では、上記DCIの上限を120とした。該DCIは、好ましくは115以下、より好ましくは110以下である。一方、上記DCIが低い場合、焼入れ性が低くなり、ワイヤ製造時の熱処理として焼入れを行ったときに、内部までマルテンサイト組織とならない場合がある。よって、上記DCIの下限は70以上とすることが好ましい。上記DCIは、より好ましくは75以上、更に好ましくは80以上である。
下記式(2)で表される脱炭指数CAが70以下
CA=98×[Si]−171×[Mn]−40×[Cr]−142×[Ni]−60×[Cu]…(2)
上記式(2)中、[元素名]は各元素の質量%での鋼中含有量を意味する。
上述した圧延材の表層のフェライト脱炭は、圧延前の鋼片に生じたフェライト脱炭が原因となる。前記鋼片に粗大なフェライト脱炭が存在すると、その部分のC濃度が極度に低下し、A3点を上昇させる。そのため、圧延などで高温に加熱してもA3点を超えてオーステナイト単層域に入ることができず、A3点以下の2相域にとどまる。その結果、フェライト脱炭が消失せず、このフェライト脱炭が圧延材まで持ち越される。
上記2相域とオーステナイト域の境界温度は成分の影響を受ける。よって、上記粗大なフェライト脱炭を消失させるには、A3点が低めとなるように成分を制御するのがよい。この観点から、上記式(2)を導き出した。本発明では、上記CAが70以下を満足すれば、一般的な圧延工程の加熱でオーステナイト単相とすることができ、フェライト脱炭を消失させることができる。上記CAは、好ましくは65以下、より好ましくは50以下である。
好ましい実施形態において、本発明の圧延材は、圧延材の中心を含む圧延方向に水平な断面において、圧延材の最表面から半径方向に向かって2.0mmの位置におけるCr偏析度(本明細書において、単に“Cr偏析度”と称することがある)が下記式(3)を満足する。
Cr偏析度≦0.1%…(3)
ここで、Cr偏析度は、EPMAを用いた線分析で測定した圧延方向のCr含有量の分布の+2σの値である。
Cr偏析度を0.1%以下に制御することで、Cr濃度のばらつきを十分に小さくすることができ(すなわち、Crが濃化したCr濃化部の形成を抑制することができ)、このようなCr偏析度が小さい圧延材を用いて製造したばねは、優れた衝撃特性を有することができる。圧延材におけるCr偏析度が大きすぎる、すなわち圧延材内にCr濃化部が多く形成されていると、Cr濃化部は、Crが濃化していないCr非濃化部に比べて、焼戻し処理による軟化および靱延性の回復が生じにくく焼戻し脆性が生じやすいため、衝撃特性を低下させるおそれがある。そのため、本発明の圧延材は、Cr偏析度が0.1%以下であることが好ましい。
本明細書で規定する、圧延材のCr偏析度は、以下のようにして測定することができる。
圧延材の中心を含む圧延方向に水平な断面(本明細書において、縦断面ともいう)で埋め込み研磨を行い、当該縦断面において、圧延材の最表面から半径方向に向かって2.0mmの位置から、圧延方向に向かってEPMAによる線分析を行い、Cr量を測定する。EPMAのビーム径を1μmとし、線分析を行う長さを250μmとし、全250点におけるCr量を母集団としてその標準偏差(σ)を計算により算出し、標準偏差を2倍した値(すなわち2.0σ)を、当該圧延材のCr偏析度とすることができる。
また別の好ましい実施形態において、本発明の圧延材は、圧延材の中心を含む圧延方向に水平な断面において、圧延材の最表面からの半径方向長さ:2mm×圧延方向長さ:0.10mmで規定される四辺形領域における、半径方向の大きさが8μm以上であるTiNの個数が10個以下である。半径方向の大きさが8μm以上であるTiNの個数をこのような範囲に制限することで、衝撃が加わった際の亀裂進展を抑制することができ、衝撃特性をより向上することができる。
半径方向の大きさが8μm以上であるTiNが過剰に存在すると、亀裂の進展が助長され、衝撃特性が低下するおそれがある。また、TiNは、靱延性に乏しいCr濃化部と同一箇所に発生する傾向があり、Cr濃化部に、半径方向の大きさが8μm以上のTiNが多く存在することで、衝撃特性がさらに低下するおそれがある。そのため、本発明の圧延材は、圧延材の中心を含む圧延方向に水平な断面において、圧延材の最表面からの半径方向長さ:2mm×圧延方向長さ:0.10mmで規定される四辺形領域における、半径方向の大きさが8μm以上であるTiNの個数が10個以下であることが好ましい。
本明細書で規定するTiNの個数は、以下のようにして測定することができる。
圧延材を10mm程度の長さに切断してから樹脂に埋め込み、表面研磨を行い、圧延材の中心を含む圧延方向に水平な断面を、光学顕微鏡(例えば倍率200倍)を用いて観察する。観察断面において、圧延材の最表面からの半径方向長さ:2mm×圧延方向長さ:0.10mmで規定される四辺形領域(0.20mm)を1つの観察領域として、このような観察領域を10個選択する。そして、各観察領域における半径方向の大きさが8μm以上であるTiNの個数をJIS G 0555に準じて測定し、10個の観察領域での平均値を、対象とする圧延材の、半径方向の大きさが8μm以上であるTiNの個数とする。
(製造方法)
本発明の圧延材は、上述の通り成分組成を規定したものであって、その製造方法については特に限定されず、一般的な方法で製造することができる。即ち、一般的な方法で鋼材を溶製、鋳造して鋼材を得た後、例えば1000〜1300℃で均質化処理、分塊圧延し、次いで例えば1000〜1300℃で加熱した後、熱間圧延を行って、例えば直径9〜25mmの圧延材を得ることができる。
好ましい実施形態では、本発明の圧延材は、上述した基本製造方法において、連続鋳造後の鋼材を1100〜1300℃で1〜5時間加熱して均質化処理を行い、熱間圧延の最終圧延スタンドの出側温度(最終圧延温度)を920℃以上とし、熱間圧延後700℃までを2℃/s以上の平均冷却速度で冷却することが好ましい。このような製造方法であれば、圧延材の最表面から半径方向に向かって2.0mmの位置におけるCr偏析度が0.1%以下である圧延材を得ることができる。
最終圧延温度を920℃以上の高温にすることでCrの拡散が促進され、Cr偏析度を低減することができる。また、熱間圧延後700℃までの平均冷却速度が小さすぎると、オーステナイト相から生成するフェライトの体積率が増大し、パーライト組織中のセメンタイトへのCrの過度の濃化が生じ、Cr偏析度が大きくなる。熱間圧延後700℃までの平均冷却速度を2℃/s以上にすることで、フェライトの過度の生成を抑制し、Cr偏析度を低減することができる。
さらに好ましい実施形態では、本発明の圧延材は、上述した基本製造方法において、連続鋳造後の鋼材の表面温度を500〜800℃の範囲に冷却し、その後鋼材を1100〜1300℃で1〜5時間加熱して均質化処理を行い、熱間圧延の最終圧延スタンドの出側温度(最終圧延温度)を920℃以上とし、熱間圧延後700℃までを2℃/s以上の平均冷却速度で冷却することが好ましい。このような製造方法であれば、Cr偏析度が0.1%以下であり、かつ圧延材の最表面からの半径方向長さ:2mm×圧延方向長さ:0.10mmで規定される四辺形領域における、半径方向の大きさが8μm以上であるTiNの個数が10個以下である圧延材を得ることができる。
連続鋳造後の鋼材の表面温度を500〜800℃の範囲に冷却することで、TiN生成の原因となるNを、AlNとして析出することができ、そのためTiNの粗大化を抑制することができる。また、連続鋳造後の鋼材の表面温度を500〜800℃の範囲に冷却することで、鋼中にTiNの微細な核を多数生成することができ、その後の均質化熱処理において、TiNを微細に保持することができ、かつCr偏析度を低減することができる。
連続鋳造後の鋼材の表面温度を500℃未満まで冷却すると、鋼材の深部の冷却が進むので、分塊圧延前の加熱で鋼材表面に割れが発生する恐れがある。そのため、均質化熱処理温度までの加熱速度を小さくする必要があり、結果としてTiNの粗大化が進み、衝撃特性が悪化する。
一方、連続鋳造後に冷却した鋼材の表面温度が800℃を超える場合、AlNの生成が不十分になり、また微細なTiNの生成も不十分になるため、分塊圧延後に粗大なTiNが生じ、衝撃特性が悪化することがある。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例によって制限されず、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
(実施例1)
表1および表2に示す化学成分組成を満たす鋼材を転炉で溶製し、連続鋳造後、1100〜1300℃で均質化処理を行った。均質化処理後、分塊圧延を行い、次いで1100〜1280℃で加熱した後、熱間圧延を行って、直径14.3mmの線材、すなわち圧延材を得た。表1および表2において、空欄は添加していないことを意味する。
上記圧延材について、以下の要領で、組織の同定を行うと共に、引張強度TS、粗大なフェライト脱炭、及び表層C濃度を測定した。更に、上記圧延材に対し、下記の条件で伸線加工して伸線加工性を評価した。
組織の同定
圧延材の圧延方向に垂直な断面をバフ研磨し、腐食液によりエッチングした後、光学顕微鏡により倍率100倍で上記断面全体のミクロ組織を観察し、フェライト、パーライト、過冷組織であるベイナイト及びマルテンサイトの同定を実施した。そして、上記過冷組織の面積割合が5%以下のものを過冷組織がないとして「OK」、該面積割合が5%超のものを過冷組織があるとして「NG」と評価した。
引張強度(TS)の測定
圧延材を、チャック間距離200mmかつ各端部のチャック部長さが約50mmとなるように切断して得られた試験片を得た。この試験片を用い、引張速度5mm/minでJIS Z 2241(2011)に従って引張試験を行い、引張強度TSを測定した。そして、上記TSが1170MPa以下の場合を合格と評価した。
粗大なフェライト脱炭の測定
圧延材の圧延方向に垂直な断面において、圧延材の最表面から半径方向に深さ0.5mmまでの領域(これを表層部という)を、光学顕微鏡にて倍率:400倍で全周囲確認し、フェライト単相域のサイズとして深さと幅を測定した。前記「深さ」とは、最表面から中心方向、即ち半径方向の距離をいい、前記「幅」とは円周方向の距離をいう。尚、表3において、No.12とNo.18の「F脱炭」の欄は、幅が500μmを超え、かつ深さがそれぞれ20μm、30μmの粗大なフェライト単相が存在したことを意味する。
表層C濃度の測定
圧延材の圧延方向に垂直な断面において、圧延材の最表面から半径方向に深さ20μmまでを等間隔に1μmずつ、合計20箇所のC量をEPMA(Electron Probe MicroAnalyser、電子線マイクロアナライザー)ライン分析で測定した。EPMA測定装置として、日本電子製X線マイクロアナライザー「JXA−8800 RL」を使用した。そして合計20箇所のC量の平均値を求めた。この測定を、前記断面において4方向、即ち、0度、90度、180度および270度のそれぞれの位置で行い、この4方向のC量の平均値を表層C濃度とした。
そして、上記粗大なフェライト脱炭の測定において、全周囲確認したときに前記深さが20μm以上でかつ前記幅が500μm以上のフェライト単相が存在せず、かつ、上記表層C濃度が、表3に示す「母相のC量の50%」の値以上である場合を、ワイヤの大気耐久性に優れていると評価した。一方、上記の少なくともいずれかを満たさない場合を大気耐久性に劣ると評価した。
伸線加工性の評価
前記圧延材を直径12.5mmまで伸線、すなわち冷間引き抜き加工して、伸線加工での断線有無を評価した。そして断線なしの場合を「OK」、断線ありの場合を「NG」と評価した。断線した例については、下記の焼入れ焼戻し処理と腐食耐久性の評価を行わなかった。
上記伸線加工して得られた伸線材に対し、下記の条件で焼入れ焼戻しを行い、下記表1のNo.10を除き引張強度(TS)が2000MPaのワイヤを得た。上記No.10では、ワイヤの引張強度が1920MPaであり、1950MPaを下回りワイヤ強度を確保できなかったため、腐食耐久性については評価しなかった。この焼入れ焼戻し後のワイヤを用いて、腐食耐久性を評価した。尚、前記ワイヤの引張強度は、ワイヤを、チャック間距離200mmかつ各端部のチャック部長さが約50mmとなるように切断して得られた試験片を用い、引張速度5mm/minでJIS Z2241(2011)に従い引張試験を行って求めた。
(焼入れ焼戻し条件)
・高周波加熱
・加熱速度:150℃/秒
・焼入れ:930℃で20秒、水冷却
・焼戻し:420〜520℃、20秒、水冷却
腐食耐久性の評価
試験片として、焼入れ焼戻したワイヤを切削し、JIS Z 2274(1978)の1号試験片を作製した。この試験片の平行部を800番のエメリー紙で研磨した。表面にショットピーニングは施さずに試験を実施した。まず、上記研磨して得られた試験片に対し、以下の条件で腐食処理を実施し、その後、下記の回転曲げ疲労試験に示す通り、小野式回転曲げ疲労試験を行って腐食耐久性を評価した。
腐食処理
35℃の5%NaCl水溶液を用いて、塩水噴霧を8時間行った後、乾燥させ、35℃で相対湿度が60%の湿潤環境にて16時間保持する工程を1サイクルとし、合計8サイクルを繰り返し行い、試験片に対して腐食処理を実施した。
回転曲げ疲労試験
上記腐食処理後の試験片に対して回転曲げ試験を実施し、腐食耐久性を評価した。下記表3のNo.毎に10本の試験片を用い、負荷応力500MPaに設定して小野式回転曲げ疲労試験を実施し、各試験片が折損するまでの疲労寿命を測定した。そして、試験片10本の疲労寿命の平均値を求め、この疲労寿命の平均値が30万回以上の場合を腐食耐久性に優れると評価した。
これらの結果を表3に示す。
Figure 2017128799
Figure 2017128799
Figure 2017128799
表1〜3から次のことがわかる。即ち、No.1〜5、17および19〜33の圧延材は、成分組成、DCIおよびCAの全てが規定範囲を満たしているので、所望の組織が得られ、表層の脱炭が抑制され表層C濃度を確保できた。その結果、該圧延材を用いて得られるワイヤの大気耐久性を確保できた。また伸線加工性を確保でき、更に優れた腐食耐久性も得られた。また本発明によれば、前述の特許文献1や2の様な軟化焼鈍などの追加工程や加熱温度の厳密な制御を必要とせず、量産製造する上で生産性に優れている。
これに対して、上記以外の例では、成分組成、DCIおよびCAのうちの少なくともいずれかが規定範囲を満たしておらず、上述した大気耐久性、伸線加工性、腐食耐久性のうちの少なくとも1つが劣った。詳細は以下の通りである。
No.6はC量が過剰であるため、圧延材の強度が高くなり、伸線加工性に劣った。No.7はC量が不足しているため、水素トラップサイトとなる析出物を確保できず、腐食耐久性に劣った。
No.8はSi量が過剰であるため、フェライト脱炭が進んで表層C濃度を確保できず、大気耐久性が得られなかった。No.9はSi量が不足しているため、優れた腐食耐久性を確保できなかった。その理由として、析出物を微細化できず水素トラップサイトを十分に確保できなかったことが考えられる。
No.10は、Mn量が不足したためワイヤ強度不足となった。
No.11は、Cu量が不足しているため、表層脱炭を抑制できず大気耐久性を確保できなかった。また腐食耐久性も劣った。No.12は、Ni量が不足してCAが規定範囲を上回り、その結果、表層脱炭を抑制できず大気耐久性に劣った。また腐食耐久性にも劣った。
No.13は、Cr量が過剰でありDCIが規定範囲を上回ったため、過冷組織が生じ圧延材の引張強度が高くなった。その結果、伸線加工時に断線が生じた。No.14は、Cr量が不足したため、表層脱炭を抑制できず表層C濃度が低くなり、大気耐久性に劣った。
No.15は、Ti量が不足しているため、腐食耐久性に劣った。その理由として、水素トラップサイトとなる析出物を十分に確保できなかったことが考えられる。
No.16は、各元素の含有量は規定範囲内にあるが、DCIが規定範囲を上回ったため、過冷組織が生じ圧延材の引張強度が高くなった。その結果、伸線加工時に断線が生じた。
No.18は、各元素の含有量は規定範囲内にあるが、CAが規定範囲を上回ったため、表層脱炭を抑制できず大気耐久性に劣った。
No.34〜36は、Cr量が不足した例である。これらの例では、表層C濃度を確保できず大気耐久性に劣った。
(実施例2)
表1および表2に示すNo.1〜5およびNo.26〜29の化学成分組成を満たす圧延材を、表4に示すように、製造条件を変えて各3つずつ準備した。具体的には、表1および表2に示すNo.1〜5およびNo.26〜29の化学成分組成を満たす鋼材を転炉で溶製し、連続鋳造後、得られた鋼材を表4に示す鋳造後冷却温度まで冷却し、その後表4に示す分塊圧延前加熱温度・時間で均質化処理を行い、その後分塊圧延を行い、次いで1100〜1280℃に加熱した後、最終圧延スタンドの出側温度が表4に示す最終圧延温度となるように熱間圧延を行い、直径14.3mmの線材、すなわち圧延材を得た。
なお、表4に示すNo.1−A、1−Bおよび1−Cは、それぞれ、上述した表1および表2に記載されるNo.1と同じ化学成分組成を満たし、異なる製造条件により準備された圧延材である。表4に示す他の圧延材についても同様である。
表4に示すように、No.1−A〜5−Aおよび26−A〜29−Aは、本発明の実施形態にかかる基本的な製造条件により製造したものである。No.1−B〜5−Bおよび26−B〜29−Bは、上述した好ましい製造条件で製造した圧延材であり、Cr偏析度を低減する条件(すなわち、分塊圧延前加熱温度を1100〜1300℃として1〜5時間加熱し、最終圧延温度を920℃以上とし、熱間圧延後700℃までを2℃/s以上の平均冷却速度で冷却)を満たすように製造したものである。No.1−C〜5−Cおよび26−C〜29−Cは、上述したさらに好ましい製造条件で製造したものであり、Cr偏析度を低減する条件およびTiNを微細化する条件(すなわち、鋳造後冷却温度を500〜800℃とし、分塊圧延前加熱温度を1100〜1300℃として1〜5時間加熱し、最終圧延温度を920℃以上とし、熱間圧延後700℃までを2℃/s以上の平均冷却速度で冷却)を満たすように製造したものである。
Figure 2017128799
上記圧延材について、以下の要領で、Cr偏析度、圧延材の最表面からの半径方向長さ:2mm×圧延方向長さ:0.10mmで規定される四辺形領域における半径方向の大きさが8μm以上のTiNの個数(表5において「8μm以上のTiN個数」と表示)、およびシャルピー吸収エネルギー(表5において「衝撃値vE−50」と表示)を求めた。
(Cr偏析度)
圧延材の中心を含む圧延方向に水平な断面(縦断面)で埋め込み研磨を行い、当該縦断面において、圧延材の最表面から半径方向に向かって2.0mmの位置から、圧延方向に向かってEPMAによる線分析を行い、Cr量を測定した。より詳細には、EPMAのビーム径を1μmとし、線分析を行う長さを250μmとし、全250点におけるCr量を母集団としてその標準偏差(σ)を計算により算出し、標準偏差を2倍した値(すなわち2.0σ)を、当該圧延材のCr偏析度とした。
測定結果を表5に示す。
(圧延材の最表面からの半径方向長さ:2mm×圧延方向長さ:0.10mmで規定される四辺形領域における、半径方向の大きさが8μm以上であるTiNの個数)
圧延材を10mm程度の長さに切断してから樹脂に埋め込み、表面研磨を行い、圧延材の中心を含む圧延方向に水平な断面を、光学顕微鏡を用いて倍率200倍で観察した。より詳細には、観察断面において、圧延材の最表面からの半径方向長さ:2mm×圧延方向長さ:0.10mmで規定される四辺形領域(0.20mm)を1つの観察領域として、このような観察領域を10個選択した。そして、各観察領域における半径方向の大きさが8μm以上であるTiNの個数をJIS G 0555に準じて測定し、10個の観察領域での平均値を、測定対象である圧延材の、半径方向の大きさが8μm以上であるTiNの個数とした。測定結果を表5に示す。
(シャルピー吸収エネルギー)
各圧延材から、5mmUノッチ付衝撃試験片を採取し、JIS Z 2242に従って、−50℃でのシャルピー吸収エネルギー(vE−50)を求めた。試験は圧延材につき2本ずつ行い、平均値を各圧延材のシャルピー吸収エネルギーとした。測定結果を表5に示す。
Figure 2017128799
表4および表5に示すように、Cr偏析度低減条件を満たして製造された圧延材No.1−B〜5−BおよびNo.26−B〜29−Bは、いずれもCr偏析度0.1%以下であり、vE−50が70J/cm以上であり、優れた衝撃特性を示した。
またCr偏析度低減条件およびTiN微細化条件を満たして製造された圧延材No.1−C〜5−CおよびNo.26−C〜29−Cは、いずれも、Cr偏析度0.1%以下、かつ圧延材の最表面からの半径方向長さ:2mm×圧延方向長さ:0.10mmで規定される四辺形領域における、半径方向の大きさが8μm以上であるTiNの個数が10個以下であり、vE−50が85J/cm以上であり、より優れた衝撃特性を示した。

Claims (7)

  1. 質量%で、
    C:0.55〜0.63%、
    Si:1.90〜2.30%、
    Mn:0.15〜0.55%、
    P:0%超、0.015%以下、
    S:0%超、0.015%以下、
    Al:0.001〜0.1%、
    Cu:0.15〜0.45%、
    Ni:0.35〜0.75%、
    Cr:0.36〜0.65%、および
    Ti:0.04〜0.11%
    を満たし、残部が鉄および不可避不純物であり、かつ下記式(1)で表される理想臨界直径DCIが120以下であると共に、下記式(2)で表される脱炭指数CAが70以下であることを特徴とする高強度ばね用圧延材。
    DCI=25.4×(0.171+0.001×[C]+0.265×[C]2
    ×(3.3333×[Mn]+1)×(1+0.7×[Si])
    ×(1+0.363×[Ni])×(1+2.16×[Cr])
    ×(1+0.365×[Cu])×(1+1.73×[V])×(1+3×[Mo])…(1)
    CA=98×[Si]−171×[Mn]−40×[Cr]−142×[Ni]−60×[Cu]…(2)
    上記式(1)および式(2)中、[元素名]は各元素の質量%での鋼中含有量を意味する。
  2. 圧延材の圧延方向に垂直な断面において、圧延材の最表面から半径方向に深さ20μmまでの領域のC濃度が母相のC濃度の50%以上であり、全組織に占めるマルテンサイトとベイナイトの合計が5面積%以下であり、かつ圧延材の最表面から半径方向に深さ0.5mmまでの領域を観察したときに、深さ20μm以上かつ幅500μm以上のフェライト単相が存在せず、更に引張強度が1170MPa以下である請求項1に記載の高強度ばね用圧延材。
  3. 前記理想臨界直径DCIは70以上である請求項1または2に記載の高強度ばね用圧延材。
  4. 更に質量%で、B:0%超、0.01%以下を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の高強度ばね用圧延材。
  5. 更に質量%で、V:0%超、0.3%以下、Nb:0%超、0.3%以下、およびMo:0%超、0.5%以下よりなる群から選択される少なくとも1種を含有する請求項1〜4のいずれかに記載の高強度ばね用圧延材。
  6. 圧延材の中心を含む圧延方向に水平な断面において、圧延材の最表面から半径方向に向かって2.0mmの位置におけるCr偏析度が下記式(3)を満足することを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の高強度ばね用圧延材。
    Cr偏析度≦0.1%…(3)
    ここで、Cr偏析度は、EPMAを用いた、線分析で測定した圧延方向のCr含有量の分布の+2σの値である。
  7. 圧延材の中心を含む圧延方向に水平な断面において、圧延材の最表面からの半径方向長さ:2mm×圧延方向長さ:0.10mmで規定される四辺形領域における、半径方向の大きさが8μm以上のTiNの個数が10個以下である、請求項6に記載の高強度ばね用圧延材。
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