JP2017169491A - 液状発酵乳の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】たんぱく質含量が3.5質量%以上の液状発酵乳の製造方法において、調乳液を調製し、該調乳液を発酵させて発酵物を調製する発酵物調製工程と、調製した発酵物を液状発酵乳のたんぱく質含量より高含量となるように濃縮して濃縮発酵物を調製する濃縮工程と、調製した濃縮発酵物に加水し、液状発酵乳のたんぱく質含量になるまで希釈して希釈発酵物を調製する希釈工程と、を含む。
【選択図】なし
Description
濃縮発酵乳の製造方法としては、発酵原料の乳脂肪分や無脂乳固形分を高める方法が知られている。具体的には、全脂乳を膜処理した後、発酵させて発酵乳を製造する方法が知られている(特許文献1、非特許文献1等)。
また、発酵乳ミックスを発酵させて得られた発酵物を膜処理することで濃厚な食感を有し、塩味が抑えられた、後味の良い滑らかな食感の発酵乳が得られることが知られている(特許文献2)。
しかしながら、前述した濃縮発酵乳の製造方法によって発酵乳のたんぱく質を主とする無脂乳固形分を高めた場合には、粘度が著しく上昇し、飲用に適した性状が得られ難い。すなわち、これまで液状発酵乳において濃縮発酵乳を製造する実用的な方法は提案されていなかった。
そこで、本発明は、たんぱく質を3.5質量%以上含有する液状発酵乳の製造方法として実用的な方法を提供することを課題とする。そして、本発明は、たんぱく質を3.5質量%以上含有し、かつ、飲用に適した性状を有する液状発酵乳を提供することを課題とする。
このような範囲で発酵物を濃縮しておくことで、飲用に適した性状を発酵乳に付与することができる。
このような範囲で希釈を行うことで、飲用に適した性状を発酵乳に付与することができる。
前記範囲のたんぱく質含量の液状発酵乳を製造する際に、本発明の製造方法の粘度低下を抑制する効果を顕著に得ることができる。
濃縮により濃縮発酵物のたんぱく質含量を前記範囲とすることによって、特に風味及び性状に優れた液状発酵乳を製造することが可能となる。
調乳液を、ホエイたんぱく質変性率が前記範囲となる条件で加熱処理することにより、粘度上昇を抑制することができ、良好な性状の液状発酵乳を製造することができる。
本明細書において、乳、乳製品に関する分類は、特に断らない限り、『乳及び乳製品の成分規格等に関する省令』(以下、「乳等省令」という。)に基づくものである。
本明細書において、「%」パーセントについての表示は、特に断らない限り、質量による表示である。
本発明の実施形態では、まず、調乳液を調製し、該調乳液を発酵させることにより発酵物を調製する発酵物調製工程を行う。
(1−1)調乳液の調製
「調乳液」とは、発酵乳の製造に用いられる、乳、乳製品などの発酵乳原料を含む種々の原料を調製して得られる原料である。
調乳液の調製には、発酵乳の製造に通常用いられる乳製品及びその他の原料を特に制限なく用いることができる。調乳液に用いる乳製品としては、クリーム、脱脂濃縮乳、脱脂粉乳等が挙げられる。
調乳液における無脂乳固形分は、好ましくは5〜14質量%であり、更に好ましくは7〜13質量%である。
調乳液におけるたんぱく質含量を前記範囲とすることにより、乳酸菌による発酵が促進され、良好な酸味を有する発酵物を得ることができる。また、脱脂粉乳やホエイ粉を多量に添加する必要がないため、最終製品におけるこれらの原料由来の風味を抑えることができ、フレッシュな風味を得ることが可能となる。
このようにして調製された調乳液は、好ましくは加熱処理される。加熱処理は、牛乳の殺菌等、乳製品の製造過程において通常用いられる条件を用いることができる。例えば、加熱処理は、ホエイたんぱく質変性率が好ましくは50%未満となる条件で、更に好ましくは35%未満となる条件で行う。このような条件で加熱処理を行うことで、後述する発酵物の濃縮に伴う粘度増加を抑制することができ、最終的に飲用に適した粘度の液状発酵乳を製造することが容易となる。
また、ホエイたんぱく質変性率と、加熱処理条件(温度及び時間)との関係については、従来知られており、前述したホエイたんぱく質変性率を実現するための加熱処理装置、加熱処理条件も適宜選択することが可能である。本発明においては、例えば、プレート式殺菌機、直接加熱式殺菌機等を用いることができ、75〜85℃の温度条件で、15〜40秒加熱することが挙げられる。
調乳液の発酵には、通常の発酵乳の製造に用いられる乳酸菌スターターを特に制限なく用いることができる。乳酸菌スターターとしては、例えば、ラクトバチルス・ブルガリクス(L.bulgaricus)、ラクトコッカス・ラクチス(L.lactis)、ストレプトコッカス・サーモフィラス(S.thermophilus)等の乳酸菌を用いることができる。また、ビフィドバクテリウム属細菌を添加することもできる。
発酵条件も通常の範囲で適宜調節することができる。例えば、35〜43℃の温度で、3〜12時間発酵することにより発酵物を得ることができる。
なお、発酵終了後、たんぱく質を含む無脂乳固形分を添加することにより、発酵物のたんぱく質含量を調整してもよい。
本発明の実施形態では、続いて、調製した発酵物を濃縮して濃縮発酵物を調製する濃縮工程を行う。ここで、発酵物の濃縮は、濃縮発酵物におけるたんぱく質含量が、製造の目的とする液状発酵乳のたんぱく質含量より高含量となるように行い、濃縮発酵物におけるたんぱく質含量が、調製した発酵物のたんぱく質含量の1.5〜4.5質量倍となるように、更には2〜4質量倍となるように行うことが好ましい。
後述する希釈工程に先立ちこのような範囲で発酵物を濃縮することで、後述する希釈工程によって効果的に粘度を低下させることが可能となり、飲用に特に適した性状の液状発酵乳を得ることが可能となる。
濃縮発酵物のたんぱく質含量を前記範囲とすることによって、後述する希釈工程を経て得られる液状発酵乳の風味及び性状を特に良好なものとすることが可能となる。
本発明の実施形態では、続いて、濃縮発酵物に加水することで、濃縮発酵物を希釈して希釈発酵物を調製する希釈工程を行う。この希釈工程により、発酵物の粘度を低下させ、飲用に適した性状の液状発酵乳を製造することができる。後述する実施例に示すとおり、同じたんぱく質含量の発酵乳の製造を目的とする場合であっても、たんぱく質含量を、濃縮工程のみによって目的とする含量に調整した場合と、たんぱく質含量を、濃縮工程によって目的とする含量以上とした後、希釈工程によって目的とする含量に調整した場合とでは、最終的に得られる発酵乳の粘度に顕著な違いが出る。
すなわち、本発明は、発酵により調製した発酵物を過濃縮した後、その過剰分を希釈するという従来にない考え方(後述する実施例で示す図1(A)、(B)、(C)を参照)を採用することにより、全体としてたんぱく質含量の増加に伴う粘度上昇を抑制するものである。
濃縮発酵物の希釈は、製造の目的とする液状発酵乳のたんぱく質含量となるように、濃縮発酵物に対し加水することにより行う。
ここで、加水は、純水の添加によって行うこともできるし、水溶液の添加によって行うこともできる。水溶液としては、例えば、前記膜濃縮の副産物である、ミネラル、乳糖、酸等を含む膜透過液や、糖類、果汁、香料、増粘安定剤等を溶解した水溶液が挙げられる。水溶液における水の含有量は、好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上である。
加水は、濃縮発酵物を攪拌機で撹拌しながら行うことが好ましい。また、加水の際の濃縮発酵物の温度、及び純水又は水溶液の温度は、好ましくは4〜20℃、更に好ましくは4〜12℃である。
また、希釈による発酵物中のたんぱく質含量の減少量(濃縮発酵物のたんぱく質含量と希釈発酵物のたんぱく質含量の差、たんぱく質減少量)は、好ましくは1〜5質量%、更に好ましくは1〜3質量%である。このような範囲で希釈を行うことにより、得られる希釈発酵物の粘度を効果的に低下させることができ、加えて、風味にも優れた液状発酵乳を提供することができる。
希釈発酵物は、好ましくは均質化し、液状発酵乳の形態とする。均質化は、希釈と同時に行ってもよいし、希釈後に行ってもよい。均質化は、均質機を用いて常法により行うことができる。均質化の圧力は、通常0.01〜15MPaである。
均質化して得られた発酵物の粘度は、製造後10℃で1日静置した場合の粘度として、通常2100mPa・s以下、好ましくは1300mPa・s以下、更に好ましくは1100mPa・s以下である。粘度の下限値は特に制限されないが、例えば150mPa・s以上、好ましくは200mPa・sである。
本発明で製造される液状発酵乳は、飲用可能な流動性を有しているものであり、10℃における粘度が、2100mPa・s以下、好ましくは1300mPa・s以下、更に好ましくは1100mPa・s以下である。なお、10℃における液状発酵乳の粘度の下限は、100mPa・s以上である。
また、前記液状発酵乳のたんぱく質含量は、3.5質量%以上、好ましくは4質量%以上、更に好ましくは5質量%以上、特に好ましくは7質量%以上、中でも好ましくは8質量%以上である。また、液状発酵乳におけるたんぱく質含量の上限は、例えば12質量%、好ましくは11質量%である。
すなわち、本発明の製造方法によれば、高たんぱく質含量の発酵乳に、飲用可能な流動性を付与することができる。また、本発明の製造方法により得られた液状発酵乳は、高たんぱく質含量であり、かつ飲用可能な流動性を有している。
容器は、紙製、ガラス製、プラスチック製(例えばポリプロピレン製、ポリエチレンテレフタレート(PET)製、ポリスチレン製、ポリエチレン製)が好ましい。
本試験は、本発明の製造方法が発酵物の粘度低下へ与える効果を測定するために行った。
以下の方法により、本発明の方法により液状発酵乳を製造した。製造フローと発酵物中のたんぱく質含量の増減の概念を図1に示す。
脱脂粉乳及び水を混合し、均質化し、たんぱく質含量が3.34質量%の調乳液を調製した(無脂乳固形分9.4質量%、乳脂肪分0.1質量%)。調乳液は、製造する発酵乳1検体(1実施例)あたり25〜40kgとなるような量を調製した。調乳液は、バッチ式加熱機を用いて75℃、15秒加熱処理した。続いて、乳酸菌スターター(商品名:Express1.0、クリスチャンハンセン社製)を0.002質量%の割合で添加し、pHが4.7±0.05になった時点で冷却により発酵を終了し、発酵物中のカードを破砕し、発酵物を調製した。発酵により得られた発酵物におけるたんぱく質含量の概念を図1(A)に示す。得られた発酵物を8℃で16時間貯蔵した。続いて、調製した発酵物を、限外濾過膜(UF膜)を用いて表1に示すたんぱく質の濃縮倍率(質量基準)で膜濃縮し、同表に示すたんぱく質含量の濃縮発酵物を調製した。濃縮発酵物のたんぱく質含量の概念を図1(B)に示す。膜濃縮の際に、発酵物の温度は25℃に維持した。
実施例に示した方法と同様の方法で調製した濃縮発酵物No.1〜5を、均質機で5MPaの圧力をかけて均質化し、比較例1〜5の発酵乳を得た。
均質化前の発酵物の粘度、均質化後、10℃で1日貯蔵後の発酵乳の粘度(何れも単位:mPa・s)を、実施例については表2に、比較例については表3にそれぞれ示す。粘度は、B型回転粘度計を使用し、ローター3、60rpm、10秒の条件で測定した。
また、本発明の方法で製造した、たんぱく質含量9質量%の実施例6〜8の発酵乳の貯蔵後粘度は300〜1400mPa・sの間にあり、希釈をしない方法で製造した同たんぱく質含量の比較例2の発酵乳の貯蔵後粘度(2400mPa・sを超える)に比べて、顕著に低かった。
また、本発明の方法で製造した、たんぱく質含量10質量%の実施例9、10の発酵乳の貯蔵後粘度は1000〜2100mPa・sの間にあり、希釈をしない方法で製造した同たんぱく質含量の比較例3の発酵乳の貯蔵後粘度(2400mPa・sを超える)に比べて、顕著に低かった。
また、本発明の方法で製造した、たんぱく質含量11質量%の実施例11の発酵乳の貯蔵後粘度は約2100mPa・sであり、希釈をしない方法で製造した同たんぱく質含量の比較例4の発酵乳の貯蔵後粘度(2400mPa・sを超える)に比べて、顕著に低かった。
なお、比較例2〜5の発酵乳は、その貯蔵後粘度は測定可能粘度である2400mPa・sを超えるものであった。また、比較例2〜5の発酵乳は、粘性が著しく高く、飲用できないものであった。
以上の結果から、本発明の発酵物を過濃縮した後、加水により希釈して目的とするたんぱく質含量に調整する製造方法を用いることで、発酵物の濃縮のみによって目的とするたんぱく質含量に調整する製造方法に対して、粘度上昇を抑制し、相対的に低い粘度の発酵乳を製造することができることがわかった。
この粘度の低下のメカニズムは定かではないが、膜濃縮により破壊されて凝集したたんぱく質のネットワークに、加水することにより自由水が多く保たれ、粘度低下が引き起こされているものと推測される。
前述した実施例と比較例との比較から、本発明の製造方法を用いることによる粘度上昇抑制の効果は、製造する液状発酵乳のたんぱく質含量が異なっていても広く得られることがわかった。また、前記効果は、9〜31質量%という広い加水割合で得られることがわかった。これらの知見から、液状発酵乳のたんぱく質含量が3.5質量%以上という従来の標準的な液状発酵乳に対して高いたんぱく質含量の液状発酵乳の製造において、濃縮発酵物のたんぱく質含量と加水割合を各々調整することで、本発明の製造方法の粘度低下効果が広く得られることがわかる。また、本発明の製造方法によれば、たんぱく質含量が8〜11質量%という極めて高含量である液状発酵乳を製造する際に、特に粘度低下の効果が顕著に得られることもわかった。
本試験は、調乳液の加熱処理条件が発酵物の粘度低下へ与える影響を測定するために行った。
試験1と同様の方法により調乳液を調製した。調乳液は、製造する発酵乳1検体(1実施例)あたり30kgとなるような量を調製した。調乳液を、表4に示す条件にて加熱処理した。続いて、試験1と同様の方法により発酵物を得た。続いて、試験1と同様の方法で、たんぱく質含量が3質量倍となるように膜濃縮し、たんぱく質含量10質量%の濃縮発酵物を調製した。得られた濃縮発酵物を撹拌しながら、試験1と同様の方法で、前記濃縮工程の副産物である膜透過液を添加し、たんぱく質含量が8質量%の希釈発酵物を調製した。続いて、これらの希釈発酵物を均質機で5MPaの圧力をかけて均質化し、実施例12〜14の発酵乳を得た。表4に、均質化前の発酵物の粘度、均質化後、10℃で1日貯蔵後の発酵乳の粘度(何れも単位:mPa・s)を示す。粘度は、試験1と同様に測定した。
試験1及び2で製造した実施例1〜14の液状発酵乳の飲用適正について、専門パネラーにより評価した。評価は、以下の基準で行った。結果を表5に示す。
(評価基準)
◎:さらっとした食感で飲用しやすい
〇:濃厚な食感であるが飲用しやすい
△:粘性が高く、舌残りが気になるが飲用できる
×:粘性が著しく高く飲用できない
また、粘度が比較的高い(例えば、1000〜2000mPa・s)濃厚な食感の液状発酵乳の製造においては、液状発酵乳(最終製品)のたんぱく質含量を9〜10質量%とし、かつ希釈によるたんぱく質減少量を1〜2質量%とする態様が好ましいことも分かった。
さらに、たんぱく質含量が10〜11質量%と高い液状発酵乳の製造においては、調乳液の加熱処理条件を、ホエイたんぱく質変性率が50%未満、好ましくは30%以下となるような加熱温度及び加熱時間とし、希釈によるたんぱく質減少量を2質量%以上とすることで、粘度を1500mPa・s以下に低下させることができ、高栄養価と飲用適正の両立の観点から好ましいことも分かった。
Claims (6)
- たんぱく質含量が3.5質量%以上の液状発酵乳の製造方法であって、
調乳液を調製し、該調乳液を発酵させて発酵物を調製する発酵物調製工程と、調製した発酵物を液状発酵乳のたんぱく質含量より高含量となるように濃縮して濃縮発酵物を調製する濃縮工程と、調製した濃縮発酵物に加水し、液状発酵乳のたんぱく質含量になるまで希釈して希釈発酵物を調製する希釈工程と、を含むことを特徴とする、液状発酵乳の製造方法。 - 前記濃縮工程では、濃縮発酵物のたんぱく質含量が、調製した発酵物のたんぱく質含量の1.5〜4.5質量倍となるように該発酵物を濃縮することを特徴とする、請求項1に記載の液状発酵乳の製造方法。
- 前記希釈工程では、加水割合が希釈発酵物に対して7〜40質量%となるように濃縮発酵物を希釈することを特徴とする、請求項1又は2に記載の液状発酵乳の製造方法。
- 液状発酵乳のたんぱく質含量が5〜11質量%である、請求項1〜3の何れかに記載の液状発酵乳の製造方法。
- 前記濃縮工程では、濃縮発酵物のたんぱく質含量が6〜14質量%となるように、調製した発酵物を濃縮することを特徴とする、請求項1〜4の何れかに記載の液状発酵乳の製造方法。
- 前記発酵物調製工程は、さらに、調乳液を発酵させる前に該調乳液を加熱処理することを含み、
該加熱処理は、ホエイたんぱく質変性率が50%未満となる条件で行う、請求項1〜5の何れかに記載の液状発酵乳の製造方法。
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