以下に図面を用いて本発明に係る実施の形態につき、詳細に説明する。以下では、回転電機ステータの製造方法によって製造された回転電機ステータとして、車両に搭載される回転電機に用いられるステータを述べるが、これは説明のための例示であって、集中巻のカセットコイルを用いる回転電機ステータであれば、車両搭載以外の用途であっても構わない。以下で述べる形状、寸法、ティースの数、巻数、材質等は、説明のための例示であって、回転電機ステータの仕様に合わせ、適宜変更が可能である。以下では、全ての図面において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
図1は、後述する回転電機の製造方法によって製造された回転電機ステータとして、車両に搭載される回転電機に用いられる回転電機ステータ10の構成を示す図である。以下では、回転電機ステータ10を特に断らない限り、ステータ10と呼ぶ。ステータ10からは、図示しない駆動回路に接続するための動力線18が引き出される。ステータ10が用いられる回転電機は、駆動回路の制御によって、車両が力行するときは電動機として機能し、車両が制動時にあるときは発電機として機能するモータ・ジェネレータで、三相同期型回転電機である。回転電機は、図1に示される固定子であるステータ10と、ステータ10の内周側に所定の隙間を隔てて配置される円環状の回転子であるロータとで構成される。図1ではロータの図示を省略した。
図1は、ステータ10の軸方向のリード側から見た上面図である。リード側とは、ステータ10の両側の軸方向のうち、動力線がステータ10から引き出される側である。リード側と反対側の軸方向が反リード側である。図1に、ステータ10の周方向、径方向、軸方向をそれぞれ示した。周方向における両側方向は、リード側から見たステータ10の上面図において時計回りの方向と反時計回りの方向である。以下では、時計回りの方向を時計方向と呼び、反時計回りの方向を反時計方向と呼ぶ。径方向における両側方向は、ステータコア12の内径側方向と外径側方向である。軸方向における両側方向は、リード側方向と反リード側方向である。
ステータ10は、ステータコア12と、ステータコア12に装着されるカセットコイル14と、ステータコア12とカセットコイル14との間に配置されるインシュレータ16とを含んで構成される。
ステータコア12は、円環状の磁性体部品で、円環状のステータヨーク20とステータヨーク20から内周側に突き出す複数のティース22とを含む。隣接するティース22の間の空間は、スロット24である。ティース22はカセットコイル14が装着され磁極となる突出部である。
かかるステータコア12は、ステータヨーク20とティース22とを含み、スロット24が形成されるように所定の形状に成形された円環状の磁性体薄板28(図2参照)を複数積層したものである。磁性体薄板28の両面には電気的絶縁処理が施される。磁性体薄板28の材質としては、電磁鋼板を用いることができる。磁性体薄板の積層体に代えて、磁性粉末を所定の形状に一体化成形したものを用いてもよい。
カセットコイル14は、集中巻コイルで、1つのティース22に1つの相巻線が所定巻数で巻回されたものである。隣接するティース22の間の1つのスロット24には異なる相のカセットコイル14が配置される。
かかるカセットコイル14は、絶縁皮膜付きの導線を所定の巻型を用いて所定の巻数で巻回し、巻き終わったものを巻型から取り外すことで形成される単体コイルである。ステータ10のティース22には、ティース22の両側の空間であるスロット24を利用して絶縁皮膜付き導線を直接巻きつけられるのではなく、ステータコア12とは別体の単体コイルとしてのカセットコイルがはめ込まれて装着される。カセットコイル14は、絶縁皮膜付き導線を後述する方法で形成されたままの単体コイルで、例えば、ボビン等を用いない。
カセットコイル14の絶縁皮膜付き導線の素線としては、銅線、銅錫合金線、銀メッキ銅錫合金線等を用いることができる。素線としては、略矩形の断面形状を有する平角線が用いられる。絶縁皮膜としては、ポリアミドイミドのエナメル皮膜が用いられる。これに代えて、ポリエステルイミド、ポリイミド、ポリエステル、ホルマール等を用いることができる。
カセットコイル14は、ステータコア12の各ティース22にそれぞれ1つずつ装着される。図1の例では、ステータコア12は、U相用のティース22が5つ、V相用のティース22が5つ、W相用のティース22が5つであり、この15のティース22のそれぞれに1つずつカセットコイル14が装着される。カセットコイル14が装着されたティース22について、図1では、U相に用いられるU1〜U5、V相に用いられるV1〜V5、W相に用いられるW1〜W5と示した。
三相同期型回転電機では、ステータコア12の周方向に沿って、U相コイルとV相コイルとW相コイルとが1組となって順次配置される。例えば、5つのU相のカセットコイル14は、ステータコア12の周方向に沿って互いに3ティースの間隔を離して配置される。同様に、5つのV相のカセットコイル14もステータコア12の周方向に沿って互いに3ティースの間隔を離して配置され、W相のカセットコイル14もステータコア12の周方向に沿って互いに3ティースの間隔を離して配置される。
各カセットコイル14は、巻線の巻始め端と巻終り端を有する。ステータコア12の周方向に沿って配置される5つの同相のカセットコイル14において、1つ目のカセットコイル14の巻始め端は動力線18に接続される。その1つ目のカセットコイル14の巻終り端は、3ティースの間隔で離れた2つ目のカセットコイル14の巻始め端に渡り線26で接続される。2つ目のカセットコイル14の巻終り端は、3ティースの間隔で離れた3つ目のカセットコイル14の巻始め端に渡り線26で接続される。これを繰り返し、最後の5つ目のカセットコイル14の巻終り端は、他の2つの相のそれぞれの5つ目のカセットコイル14の巻終り端と相互接続されて中性点Nとなる。図1では、各相用の渡り線26を区別して、U相用の渡り線26U、V相用の渡り線26V、W相用の渡り線26Wと示す。
例えば、U相巻線コイルの場合、3本の動力線18のU端子は、U1のカセットコイル14の巻始め端に接続される。その巻終り端とU2のカセットコイル14の巻始め端との間は、渡り線26Uで接続される。U2のカセットコイル14の巻終り端とU3のカセットコイル14の巻始め端の間は、別の渡り線26Uで接続される。これを繰り返し、U5のカセットコイル14に至ると、その巻終り端が中性点Nとなる。V相巻線コイル、W相巻線コイルも同様である。このようにして、カセットコイル14のそれぞれの巻端子である巻始め端と巻終り端を所定の接続方法で互いに接続して、回転電機における三相巻線コイルを形成する。これによって、U1〜U5に対応する5つのU相磁極、V1〜V5に対応する5つのV相磁極、W1〜W5に対応する5つのW相磁極が形成される。
インシュレータ16は、カセットコイル14の内周側面とこれに向かい合うティース22の外周側面との間に保持される筒状形状を有する絶縁体である。インシュレータ16は接着等の固定手段によってステータコア12に固定される。かかるインシュレータ16は、電気絶縁性を有するシートを所定の形状に成形したものを用いることができる。電気絶縁性を有するシートとしては、紙の他、プラスチックフィルムを用いることができる。インシュレータ16の詳細については後述する。なお、カセットコイル14の絶縁被膜の電気絶縁性能が十分ある場合等のときは、インシュレータ16を省略してもよい。以下では、特に断らない限り、インシュレータ16を用いる。
集中巻のコイルは、導線を曲げながら所定の円環状に巻回するので、導線の剛性によってはコイルばねのように、元の導線形状に戻ろうとする弾性的反力が周方向と径方向とに働く。本実施形態では、このコイルばねとしての弾性的反力を積極的に利用して、ステータコア12に対してカセットコイル14を固定する。
図2は、図1においてU4に対応する磁極30を抜き出し、巻回方法を示すために、軸方向を上下逆にしてリード側を紙面の下側として示す図である。
ティース22は、ステータヨーク20から内周側に突出し、周方向に沿った面に平行な断面形状は矩形である。ステータヨーク20とティース22とは、同じ形状の磁性体薄板28を用いて積層されるので、軸方向に沿った高さ寸法は、ステータヨーク20とティース22は同じである。ステータ10の仕様によっては、ステータヨーク20とティース22とで異なる電磁鋼板として、互いに異なる高さ寸法としてもよい。
図2に示すカセットコイル14は、インシュレータ16の外側側面に嵌めこまれた状態であるので、装着前の単体コイルとしてのカセットコイル60(図3C参照)と区別するときは、カセットコイル14を装着後のカセットコイル14と呼ぶ。カセットコイル14は、幅W0、厚さt0の平角線を用い、厚さ方向を径方向として、巻方向の軸周りに所定の巻数で巻回された状態である。平角線の各巻の巻線形状は、4隅が丸みを有する矩形環状である。巻方向の軸は、径方向に平行な軸で、各巻の巻線形状である矩形環状の中心を通る軸である。平角線の(幅W0/厚さt0)は、1を超え、約3程度までの範囲である。ステータ10の仕様によってはこれ以外の値でもよい。
装着後のカセットコイル14の巻始め端32は、ティース22において、リード側端部と外径側端部との交点付近にある。平角線は、巻始め端32から巻方向の軸周りに反時計方向に巻数=7で巻回される。巻方向の軸は、径方向に平行な軸である。7巻した後の巻終り端34は、ティース22において、リード側端部と内径側端部との交点付近にある。各巻の巻線形状である矩形環状の4辺のうち2辺は軸方向に平行で、他の2辺は周方向に平行である。なお、径方向に沿って、ティース22の内径側端部と、インシュレータ16の内径側端部は、カセットコイル14の内径側端部よりもさらに内径側に突出する。
図3A〜図3Dは、ティース22、インシュレータ16、インシュレータ16に装着後のカセットコイル14、装着前のカセットコイル60の関係を示す図である。
図3Aは、図2からステータヨーク20の図示を省略した磁極30を示す図で、ティース22にインシュレータ16とカセットコイル14を組み上げた図に相当する。図3Bは、図3Aを分解してインシュレータ16を示す斜視図である。図3Cは、装着前のカセットコイル60の斜視図である。図3Dは、図3Aを分解して装着後のカセットコイル14を示す斜視図である。図3A〜図3Cにおいて、インシュレータ16の対応する位置を二点鎖線で結んで示し、図3C、図3Dにおいて、巻始め端32、巻終り端34の対応する位置を二点鎖線で結んで示す。
図3Bに示すインシュレータ16は、カセットコイル14とステータヨーク20との間を電気的に絶縁するための背面板部40を有する。さらに、インシュレータ16は、背面板部40に接続され、カセットコイル14の内周側面とこれに向かい合うティース22の外周側面との間を絶縁するための側壁板部42とを有する。背面板部40はティース22を通す開口部を有し、その開口部の縁部に接続して側壁板部42が設けられる。側壁板部42は、ティース22の外周側面に沿って一周する筒状部材である。
ティース22は、径方向に垂直な断面形状が矩形である突出部である。矩形の断面形状は、カセットコイル14が装着される範囲において、ステータヨーク20側の根元部における周方向に沿った辺の長さよりも、ティース22の先端部における周方向に沿った辺の長さが短い。つまり、カセットコイル14が装着される範囲において、ティースは先細り形状を有する。径方向において、カセットコイル14が装着される範囲よりも内径側に突出する部分においては、ティース22の周方向に沿った長さは一定である。このティース22の形状に対応し、インシュレータ16の側壁板部42は、カセットコイル14が装着される範囲において先端側に向かって先細りとなる形状を有する。カセットコイル14が装着される範囲よりも先端側に突出す部分において、インシュレータ16の周方向に沿った長さは一定である。
インシュレータ16の側壁板部42のうち、周方向における時計方向側の側壁板44の外側側面と反時計方向側の側壁板46の外側側面には、装着状態のカセットコイル14の各巻の平角線の内周側面が接触する。カセットコイル14が装着される範囲ではインシュレータ16は先端側に向かって先細りとなるので、断面形状が略矩形の平角線を先細りのインシュレータ16の外側側面に接触させると、平角線の内周側面とインシュレータ16の外側側面に隙間が生じる。この隙間を生じさせないように、平角線の各巻の内周側面に沿う形状の階段状の段差48が設けられる。これにより、カセットコイル14を装着させたとき、カセットコイル14の各巻の平角線は、インシュレータ16の側壁板44,46の外側側面の段差48に沿って、無駄な隙間を生ずることなく整列して配置される。
インシュレータ16の側壁板部42のうち、軸方向のリード側に張り出す張出部50と、反リード側に張り出す張出部52は、平角線を矩形環状に曲げるときの曲げ半径の確保のために設けられる。張出部50,52の張り出した外側側面には、カセットコイル14の各巻の平角線の内周側面が接触する。
図3Cに示す装着前のカセットコイル60において、平角線は、巻始め端32から巻方向の軸周りに反時計方向に巻数=7で巻回されることは装着後のカセットコイル14と同じである。(E−E)は巻方向の軸で、径方向に平行で、各巻の平角線の巻線形状の中心を通る軸である。巻方向の軸(E−E)は、ティース22において、径方向に垂直な断面形状の中心を通り径方向に平行な軸でもある。装着前のカセットコイル60では、巻方向の軸(E−E)周りに巻数=7で巻回するときに、各巻の巻線形状を巻方向の軸(E−E)周りに所定の捩り角Δθで捩る。捩り角Δθとは、カセットコイル60をコイルばねとして見たときに、巻方向の軸(E−E)周りに小さな角度で捩るときの角度である。捩り角Δθは、数度程度の角度であるので、1周360度の角度を単位とする回転角とは異なる。捩り角Δθは、各巻の巻線形状は変更せずに巻線形状全体を巻方向の軸(E−E)周りに捩るときの角度である。捩り角Δθは、7巻の各巻ごとに異なる。
装着後のカセットコイル14では、捩り角Δθ=0度となる。したがって、装着後のカセットコイル14における各巻の巻線形状と、装着前のカセットコイル60における各巻の巻線形状との間における巻方向の軸(E−E)周りの角度差が捩り角Δθに相当する。
そこで、装着前のカセットコイル60と装着後のカセットコイル14とを比較しながら捩り角Δθを説明する。図3Dは、磁極30に装着された状態のカセットコイル14を抜き出した図である。磁極30からカセットコイル14を取り外すと、図3Cの装着前のカセットコイル60の形態に戻る。あくまでも、図3Dは、磁極30に装着された状態のカセットコイル14である。
図3Dにおいて、7巻の中で、径方向において最も内径側の1巻における平角線の巻線形状36について、その一部に斜線を付して示した。巻線形状36は、巻終り端34を有する周方向に平行な辺と、その手前の軸方向に平行な辺38とを含む。この2つの辺の間の角度は、90度である。
図3Cにおいて二点鎖線で示すのは、図3Dにおける巻線形状36、巻終り端34を有する周方向に平行な辺、その手前の軸方向に平行な辺38に対応する部分である。磁極30に装着前のカセットコイル60の7巻の中で、径方向において最も内径側の1巻における平角線の巻線形状62は、巻終り端64を有する周方向に平行な辺と、その手前の軸方向に平行な辺66を含む。
ここで、7巻の中で、径方向において最も内径側の1巻における平角線の巻線形状に関する捩り角Δθは、軸方向に平行な辺について、装着後のカセットコイル14の辺38と、装着前のカセットコイル60の辺66とを重ねたときに生じる角度差である。周方向に平行な辺については、装着後のカセットコイル14の巻き終り端34を含む辺と、装着前のカセットコイル60の巻き終り端64を含む辺とを重ねたときに生じる角度差である。捩り角Δθを与えても、巻線形状62は巻線形状36から変化しない。巻線形状62=巻線形状36のままで、周方向に沿った面内で微小な角度である捩り角Δθで回転するのみである。
捩り角Δθは、平角線の7巻の各巻によって異なる。平角線の7巻を区別して、巻始め端32を含む1巻目を(N=1)とし、巻き終り端64を含む7巻目を(N=7)とすると、捩り角Δθは、(N=1)巻目が最も小さく、(N=7)巻目が最も大きい。図3Cの例では、1巻目の捩り角Δθ(N=1)は0度で、7巻目の捩り角Δθ(N=7)は約10度である。2巻目から6巻目の間は、0度から10度の範囲で、次第に捩り角が大きくなる。
装着前のカセットコイル60は、平角線の各巻の巻線形状についてそれぞれ所定の捩り角Δθが与えられた状態で巻方向の軸(E−E)周りに巻回され、その形状で固定されて形成される。形状の固定方法としては、適当な加圧成形法を用いることができる。装着前のカセットコイル60は、図3Bのインシュレータ16を介してティース22に装着される。そのときに、平角線の各巻は、インシュレータ16の段差48に合わせるように装着される。
カセットコイル60は、コイルばねとしての弾性を有するので、装着によって各巻の巻線の捩り角が戻される。例えば、7巻目の場合、捩り角Δθが与えられた巻線形状62を有する巻線部分がインシュレータ16を介したティース22に装着されることで、巻線形状36を有する巻線部分として弾性的に戻される。このときの弾性的反力がインシュレータ16の段差48に与えられる。これによって、特別な固定部材を用いることなく、カセットコイル14がインシュレータ16を介してステータコア12に固定される。
以下に、上記構成のステータ10の製造方法について、図4以下を用いて詳細に説明する。図4は、ステータ10の製造方法の各手順を示すフローチャートである。ここでは、ステータコア12の形成が行われる(S10)。ステータコア12は、所定の形状に成形された円環状の磁性体薄板28を所定の枚数で積層することで形成される。磁性体薄板28には、両面が電気的絶縁処理された電磁鋼板が用いられる。
次に、ステータコア12の各ティース22に、図3Bで述べた段差48付きのインシュレータ16が配置される(S12)。S12は、各ティース22の先端側からインシュレータ16をそれぞれ嵌め込むことで行われる。
S10,S12と並行して、あるいはこれに先立って、装着前のカセットコイル60が形成される(S14)。S14における装着前のカセットコイル60の形成は、図3Cで述べたように、平角線を用い、ティース22に巻回されるときの巻方向の軸(E−E)に対し、各巻の巻線の捩り角Δθを互いにずらしながら各巻を巻回して行われる。
図5A、図5Bは、装着前のカセットコイルの形成法を従来技術と比較して示す図である。これらの図では、ティースが径方向に沿って同じ断面を有するものとする。
図5Aは、従来技術における集中巻のカセットコイル15の製造方法の一例を示す図である。従来技術では、巻回用に予め定めた断面形状を有する巻型70を用いる。巻型70は、巻方向の軸72の回りに回転可能である。ここで平角線の巻始め端32を巻型70の適当な個所に固定し、巻型70の外周に沿わせる。そして、平角線を矢印で示す送り方向74に沿って送りながら、巻型70を巻方向の軸周りに図5Aの矢印の向きに回転させる。送り方向74の送りは、巻きの進みに合わせた径方向の送りと、周方向の送りとを含む。これにより、平角線は巻型70の外周に沿ってらせん状に巻回される。巻型70にらせん状の巻ガイド溝を設けてもよい。
図3Cで述べた装着前のカセットコイル60を形成する方法としては、各巻に対する捩り角Δθを有する捩り形成用の巻型を準備する。その捩り形成用巻型を用いて、図5Aと同様な方法で平角線の各巻を巻回することで、図3Cで述べた装着前のカセットコイル60を形成できる。
図5Bは、各巻の巻線形状について捩り角Δθを与える別の方法を示す図である。図5Bにおけるカセットコイル61は、図5Aの方法で形成したカセットコイル15を追加工して形成される。追加工としては、カセットコイル15の隅部の丸みの1つに捩り用の支軸76を宛がい、その捩り用の支軸76の回りに各巻の巻線形状を所定の捩り角Δθで捩る。ここで「捩る」とは、図3Cで述べたように、微小な角度で回転させてそこで止めることを示す。図3Cの例では、7巻目で捩り角Δθが約10度程度である。捩った形状の固定方法としては、適当な加圧成形法を用いることができる。
上記の装着前のカセットコイル60,61は、各巻の巻線形状について捩り角Δθを与えて形成されるが、これ以外の方法でも、各巻の巻線形状について巻方向の軸に対して所定のずらし量の初期ひずみを与える方法で装着前のカセットコイルを形成してもよい。図6におけるカセットコイル63は、図5Aの方法で形成したカセットコイル15を用い、各巻の巻線形状について、所定のずらし量として周方向に所定の変位量ΔPを与える。変位量ΔPは各巻で異なり、巻始め端32から数えて(N=1)巻目が最も小さく、巻数目を示すNが増すほど変位量ΔPが大きくなり、(N=7)巻目が最も大きい変位量ΔPとなる。変位量を与えた形状の固定方法としては、適当な加圧成形法を用いることができる。
上記では捩り角Δθをカセットコイル60,61の径方向における内径側から見て時計回り方向の角度としたが、これを反時計回り方向の角度としてもよい。また、カセットコイル63の変位量ΔPを周方向に沿って時計方向の変位量としたが、これを周方向に沿って反時計方向の変位量としてもよい。さらに、捩り角Δθと変位量ΔPを組み合わせてもよい。上記では、捩り角Δθ、変位量ΔPを各巻によって異なるとしたが、各巻の一部について捩り角Δθ、変位量ΔPを異ならせてもよい。捩り角Δθ、変位量ΔPは、少なくとも1巻の巻線形状に対して与える。例えば、径方向において最も内径側の7巻目についてのみ捩り角Δθまたは変位量ΔPを与えてもよい。なお、上記では、巻数を7巻として説明したが、7巻以外の巻数でもよい。
図4に戻り、次に、S14で形成されたカセットコイル60がステータコア12に装着される(S16)。ここでは、S12においてステータコア12に配置されたインシュレータ16にカセットコイル60が装着される。カセットコイル60に代えて、図5Bのカセットコイル61または図6のカセットコイル63を用いてもよい。S12で形成されたままのカセットコイル60は、各巻線の巻線形状に所定のずらし量が与えられていて初期ひずみを有している。カセットコイル60の装着は、ティース22およびインシュレータ16の先端側から嵌めこみ、各巻の巻線形状のずれを戻しながら、平角線の各巻の内周側面をインシュレータ16の外側側面の段差48に合わせて互いに面接触させることで行われる。
図7Aは、各巻の巻線形状についてのずらし量である捩り角Δθを戻しながらカセットコイル60がインシュレータ16の外側側面に装着されるときの作用を示す図である。装着前のカセットコイル60について、捩り角Δθの状態から(−Δθ)の捩り角戻しが行われることによって、カセットコイル60は、装着後のカセットコイル14となる。カセットコイル60はコイルばねとしての性質を有するので、(−Δθ)の捩り角戻しによって、カセットコイル60が弾性変形し、その弾性的反力がインシュレータ16の段差48に与えられる。その弾性的反力によってカセットコイル14がインシュレータ16に固定され、ステータコア12に固定される。カセットコイル61でも同様である。
図7Bは、カセットコイル63がインシュレータ16の外側側面に装着されるときの作用を示す図である。装着前のカセットコイル63について、変位量ΔPの状態から(−ΔP)の変位量戻しが行われることによって、カセットコイル63は、装着後のカセットコイル14となる。カセットコイル63はコイルばねとしての性質を有するので、(−ΔP)の変位量戻しによって、カセットコイル63が弾性変形し、その弾性的反力がインシュレータ16の段差48に与えられる。その弾性的反力によってカセットコイル14がインシュレータ16に固定され、ステータコア12に固定される。
弾性的反力は、所定のずらし量を戻したことによる弾性変形を元に戻そうとする力である。図7Aの場合も図7Bの場合も、所定のずらし量の方向は周方向についての反時計方向であるので、ずらし量を戻す弾性変形の方向は周方向についての時計方向である。したがって、その弾性変形を元に戻そうとする方向である弾性的反力の方向は周方向についての反時計方向である。この周方向についての反時計方向への弾性的反力は、カセットコイル14の巻線形状における軸方向に平行な2辺のうち、周方向についての時計方向側の辺によって、インシュレータ16に与えられる。図7Aに弾性的反力80を示し、図7Bに弾性的反力82を示す。これらの弾性的反力80,82によって、カセットコイル14は、インシュレータ16に固定され、ステータコア12に固定される。
ステータコア12にカセットコイル14を固定するために必要な弾性的反力80,82の大きさは、回転電機の動作環境等の仕様で定められる。定められた弾性的反力80,82の大きさを発生させるために、平角線の幅W0、厚さt0、平角線の材料の剛性、巻線形状、巻数、捩り角Δθ、変位量ΔP等が設定される。
図4に戻り、S16の手順は、ステータコア12の各ティース22に嵌め込まれたインシュレータ16のそれぞれについて行われる。すべてのティース22に関してS16の手順が終了すると、図1で説明したように、各カセットコイル14のそれぞれの巻端子を所定の接続方法で互いに接続して回転電機における所定の巻線コイルを形成する(S18)。
上記では、インシュレータ16を用いるものとしたが、カセットコイル14の電気絶縁性能が十分でインシュレータ16を用いなくても済む場合には、S12の工程が省略される。S16では装着前のカセットコイル60等がティース22の外周面に直接的に装着される。この場合には、所定のずらし量を戻すことによる弾性的反力は、カセットコイル14からティース22に直接与えられる。これにより、カセットコイル14は、ステータコア12のティース22に固定される。