まず、本実施例を詳述する前に、図1〜図9を参照して、インパルス無線通信システムの一例、関連技術としてのインパルス送信機の例、並びに、その問題点を説明する。
図1は、インパルス無線通信システムの一例を説明するための図であり、図1(a)は、インパルス無線通信システムの一例を示すブロック図であり、図1(b)は、バンドパスフィルタの通過周波数帯域を説明するための図である。
図1(a)に示されるように、インパルス無線通信システム(インパルス方式の無線通信システム)は、インパルス送信機Tx、および、インパルス受信機Rxを有する。インパルス送信機Txは、ベースバンド信号生成器101、短パルス発生器102、バンドパスフィルタ103、送信増幅器104、および、送信アンテナ105を有する。
ベースバンド信号生成器101は、通信クロックのタイムスロット単位のデータ信号を生成し、短パルス発生器102に出力する。ここで、データ信号は、例えば、「1」の値では高レベル『H』になり、「0」の値では低レベル『L』になる。
通信クロックは、例えば、5GHzとされ、この場合、データ信号の通信速度は、例えば、5ギガビット/秒(Gbps)になる。短パルス発生器102は、例えば、データ信号がタイムスロットでハイレベルになると、短パルスを生成する。バンドパスフィルタ103は、短パルスに対して、所定の通過周波数帯域のみを通過させるフィルタリングを行って、例えば、ミリ波パルスを出力する。
図1(b)において、参照符号131は、短パルスの周波数特性(短パルス特性)を示し、132は、バンドパスフィルタ103の通過周波数帯域を示す。図1(b)に示されるように、バンドパスフィルタ103から出力されるミリ波パルスは、短パルス特性131のうちの通過周波数帯域132の部分のみの周波数成分を有する。
ところで、例えば、UWB(Ultra Wide Band:超広帯域無線)等では、使用可能な周波数帯域が制限されており、その周波数帯域の制限を満たすように、バンドパスフィルタ103が用いられる。なお、通過周波数帯域132は、例えば、通過下限周波数f1が80GHz、通過上限周波数f2が90GHzであり、通過周波数帯域幅がf2−f1=90−80=10GHzである。
図2は、インパルス無線通信システムにおけるインパルス送信機を説明するための図であり、図2(a)は、短パルス発生器(ユニポーラRZ(リターンゼロ)式短パルス発生器)102およびバンドパスフィルタ103において発生される信号を示す。
また、図2(b)は、バンドパスフィルタ103のフィルタ特性(通過周波数帯域)を示し、図2(c)は、ユニポーラRZ式短パルス発生器102を使用した場合の輝線スペクトルを示す。
ここで、図2(c)において、横軸は、周波数(GHz)を示し、縦軸は、電力スペクトル密度(dBm/Hz)を示す。また、図2(c)は、fcが83.5GHzで、Bw=5GHz(81GHz〜86GHz)の場合を示す。なお、図2(a)〜図2(c)において、fcは、バンドパスフィルタ103の通過周波数帯域における中心周波数を示し、Bwは、例えば、パワーが3dB低下する通過帯域幅を示す。
図2(a)に示されるように、短パルス発生器(ユニポーラRZ式短パルス発生器)102は、例えば、正極性の幅の狭いパルスを生成する。この幅の狭いパルスは、高周波成分を含む広範囲の周波数成分を含んでおり、バンドパスフィルタ103を通過することにより、例えば、ミリ波パルスが生成される。すなわち、図2(b)に示されるように、バンドパスフィルタ103を通過したミリ波パルスは、概ね、周波数fcで振動する幅Bw-1の振動信号(パルス信号)になる。
再び、図1(a)を参照すると、バンドパスフィルタ103の出力は、送信増幅器104に入力されて、例えば、ミリ波パルスが増幅され、送信アンテナ105を介して、送信信号が無線送信される。なお、送信信号は、ミリ波パルスの有無(ON/OFF)により、「1」または「0」のデータが表される。このとき、図2(c)に示されるように、送信信号(電力スペクトル密度)には、例えば、輝線スペクトルSbが含まれることになる。
また、図1(a)に示されるように、インパルス受信機Rxは、受信アンテナ121、受信増幅器122、検波器123、リミットアンプ124、および、ベースバンド信号再生器125を有する。
受信増幅器122は、受信アンテナ121を介して無線受信した受信信号を増幅し、検波器123に出力する。検波器123は、受信増幅器122により増幅された受信信号(ミリ波パルス)の包絡線を検波して、リミットアンプ124に出力する。
リミットアンプ124は、検波器123により検波された信号を増幅して、ベースバンド信号再生器125に出力する。そして、ベースバンド信号再生器125は、リミットアンプ124により増幅された信号を受け取り、例えば、5Gbpsの受信データの再生を行う。
なお、インパルス無線通信システムは、上述したように、ミリ波帯域はもちろんであるが、例えば、マイクロ波帯、準ミリ波帯、UWBをはじめとする超広帯域無線通信に利用可能である。
このインパルス無線通信システムは、狭帯域通信方式の無線通信システムと比較して、発振器やミキサが不要でRF部の構成が簡素で低コストなため、例えば、広帯域を利用できるミリ波帯では、10Gbpsを超える広帯域無線通信の実現が期待されている。
ここで、インパルス無線通信システムに割り当てられた周波数帯域幅をBmaxとすると、バンドパスフィルタ103の通過周波数帯域幅BbpfがBmaxと等しいとき、最大通信速度Bmaxを得ることができる。
例えば、周波数帯域幅Bmaxが10GHzの場合、図1(b)に示されるように、バンドパスフィルタ103の通過周波数帯域幅Bbpfは、f2−f1=90−80=10GHzになり、データ信号の通信速度は、10Gbpsになる。
ところで、多くの無線通信システムは、例えば、周波数1MHz当たりの信号強度0dBm(=1mW/MHz)というように、法令や規格等により、単位周波数当りの信号強度(電力スペクトル密度)が規定されている。
そのため、図2(c)に示されるように、例えば、送信信号(電力スペクトル密度)には、輝線スペクトルSbが含まれる。そして、この輝線スペクトルSbの信号強度が電力スペクトル密度の制限にかかると、全周波数帯域での平均電力を上げられないという事態が生じる。
具体的に、例えば、割り当てられた周波数帯域Bmaxが10GHz(=10000MHz)のとき、送信スペクトル強度が周波数帯域内で一定であれば、1(mW/MHz)×10000(MHz)=10Wの出力が可能になる。
しかしながら、送信信号に1mW/MHzの輝線スペクトルSbが含まれると、この輝線スペクトルSbも、例えば、電波法に基づく信号強度の制限を受けるため、小さな電力しか許容されないことになってしまう。
一般的に、信号を誤りなく長距離伝送するためには、全周波数帯域のスペクトル電力を最大限大きくして、雑音等に対する信号強度マージン(S/N比)を確保するのが好ましい。しかしながら、送信電力が輝線スペクトルSbで制限されると、S/N比を十分確保するのが困難になる。
このように、輝線スペクトルSbにより送信電力が制限されると、長距離で高品質の無線通信が不利になるため、輝線スペクトルSbの生じないインパルス無線通信システムの実現が求められていた。そこで、送信信号に輝線スペクトルSbを含まず、長距離で高品質の無線通信に適したバイポーラ・リターンゼロ(RZ)型インパルス無線通信システムが提案されている。
図3〜図5は、バイポーラRZ型のインパルス送信機を説明するための図である。ここで、図3(a)は、バイポーラRZ型のインパルス送信機(B−RZインパルス送信機)で使用する短パルス発生器102の一例を示すブロック図であり、短パルス発生器102を、パルス発生フィルタ506およびパルス(広帯域)増幅器507と共に示す。
パルス発生フィルタ506は、バンドパスフィルタ103に対応し、パルス増幅器507は、送信増幅器104に対応する。また、図3(b)は、図3(a)に示すトリガーフリップフロップ(T−FF)504の一例の回路図を示す。
また、図4(a)は、短パルス発生器102で発生される正極性のパルス、および、パルス発生フィルタ506(バンドパスフィルタ103)を介して生成される正極性のミリ波パルス(インパルス信号)の例を示す。さらに、図4(b)は、短パルス発生器102で発生される負極性のパルス、および、パルス発生フィルタ506を介して生成される負極性のミリ波パルスの例を示す。
そして、図5(a)は、図3(a)に示す短パルス発生器102およびパルス発生フィルタ506の動作を説明するためのタイムチャートであり、図5(b)は、バイポーラRZ式短パルス発生器102を使用した場合の輝線スペクトル(ノッチ)を示す図である。
なお、図5(b)において、横軸は、周波数(GHz)を示し、縦軸は、電力スペクトル密度(dBm/Hz)を示す。また、図5(b)は、fcが83.5GHzで、Bw=5GHz(81GHz〜86GHz)の場合を示す。
図3(a)に示されるように、バイポーラRZ式短パルス発生器102は、入力バッファ501および502と、NRZ(Non-Return to Zero:ノンリターンゼロ)−RZ(Return to Zero:リターンゼロ)変換部(NRZ−RZ変換部)503と、トリガーフリップフロップ(T−FF)504と、エッジ整形(シェーピング)回路505と、を有する。
エッジシェーピング回路505は、例えば、直列接続された偶数段のインバータを含み、エッジシェーピング回路505によりエッジ成形された出力信号は、パルス発生フィルタ506(103)に入力される。
データ信号Aは、ノンリターンゼロ信号であり、入力バッファ501は、ノンリターンゼロ信号Aをバッファリングし、クロックバッファ502は、クロック信号Clockをバッファリングする。
NRZ(Non-Return to Zero:ノンリターンゼロ)−RZ(Return to Zero:リターンゼロ)変換部503は、ノンリターンゼロ信号Aをリターンゼロ信号Bに変換する。具体的に、NRZ−RZ変換部503は、例えば、論理積(AND)回路であり、ノンリターンゼロ信号Aおよびクロック信号CLKの論理積をとり、その論理積信号をリターンゼロ信号Bとして出力する。
T−FF504は、例えば、図3(b)に示すような、リターンゼロ信号Bをトランスファーゲート信号とするマスタースレーブ型のフリップフロップ回路で実現される。すなわち、T−FF504は、入出力を交差接続したインバータ602,603によるマスターラッチと、インバータ605,606によるスレーブラッチと、スレーブラッチの出力のフィードバック経路に設けられたインバータ607と、を含む。
T−FF504は、さらに、トランジスタで形成されるトランスファーゲート601および604を含む。トランスファーゲート601は、スレーブラッチの出力を、インバータ607を介してマスターラッチにフィードバックする経路に設けられ、ゲート604は、マスターラッチの出力とスレーブラッチの入力の間に設けられている。
トランスファーゲート601は、リターンゼロ信号Bにより導通状態が制御され、トランスファーゲート604は、リターンゼロ信号Bの反転信号/Bにより導通状態が制御される。これにより、T−FF504は、リターンゼロ信号Bが1周期変化する毎に出力信号Cを反転させる、リターンゼロ信号Bの分周回路として機能する。
例えば、リターンゼロ信号Bが『H』→『L』→『H』のように1周期変化する毎に、出力信号Cの論理レベルが反転する。すなわち、図5(a)に示されるように、出力信号Cは、リターンゼロ信号Bの立ち上がりエッジに同期して論理反転する。
エッジシェーピング回路505は、T−FF504の出力信号Cの立ち上がりエッジおよび立ち下がりエッジを急峻にした信号を生成して、パルス発生フィルタ506に出力する。ここで、出力信号Cを急峻にした信号は、立ち上がり時間および立ち下がり時間の短い信号になり、より高い周波数までのスペクトルを含む信号になる。
前述したように、エッジシェーピング回路505は、例えば、直列に接続した偶数段のインバータにより実現することができる。また、エッジシェーピング回路505は、さらに、ピーキングを与えるインダクタを設け、より急峻なエッジが得られるようにしてもよい。
インバータは、pチャネル型MOSトランジスタとnチャネル型MOSトランジスタを電源間に直列に接続し、2個のトランジスタのゲートに入力信号を印加し、pMOSトランジスタとnMOSトランジスタの接続ノードから反転信号を得ることで実現される。なお、他の部分で使用するインバータに関しても同様である。
パルス発生フィルタ506は、ハイパスフィルタまたはバンドパスフィルタである。パルス発生フィルタ506は、エッジシェーピング回路505の出力信号の低周波数成分を除去することにより、データ信号Aの値(データ「1」の値)に応じたパルスの有無であって、正極性パルスおよび負極性パルスを交互に生成した信号Dを出力する。ここで、パルス発生フィルタ506としては、例えば、直列接続されたキャパシタ素子を適用することができる。
パルス増幅器507(104)は、広帯域増幅器または分布型増幅器であり、パルス発生フィルタ506の出力信号Dを増幅し、その増幅した信号を図1(a)の送信アンテナ105に出力する。なお、信号Cのエッジが十分に急峻である場合には、エッジシェーピング回路505を削除してもよい。また、信号Dの大きさが十分であれば、パルス増幅器507を削除することもできる。
短パルス発生器102からバンドパスフィルタ103(パルス発生フィルタ506)に出力されるバイポーラ短パルスは、データ信号の値に応じたパルスの有無であって、正極性パルスおよび負極性パルスを交互に生成されるパルスである。
バイポーラ短パルスは、例えば、データ信号の値が「1」のときに正極性パルスまたは負極性パルスが発生され、データ信号の値が「0」のときに基準電圧になる。正極性パルスは、基準電圧に対して正電圧のパルスであり、負極性パルスは、基準電圧に対して負電圧のパルスである。すなわち、バイポーラ短パルスは、直前のパルスに対して逆極性のパルスになる。
ここで、図5(b)と前述した図2(c)の比較から明らかなように、図2(c)におけるユニポーラRZ式短パルスを使用した場合の輝線スペクトルSbは、図5(b)のように、バイポーラRZ式短パルスを使用することでノッチSnになる。これにより、輝線スペクトルSbの信号強度が電力スペクトル密度(送信信号)の制限にかかることがなく、全周波数帯域での平均電力を上げることが可能になる。
このように、バイポーラ短パルスを利用すると、通信速度(10Gbps)の整数倍に等しい周波数でノッチ(凹部)が生じ、電力スペクトル密度が小さくなる。そのため、ユニポーラ短パルスを利用する場合に比べて、単位周波数当たりの信号強度の最大値を小さくでき、送信電力の確保が容易になり、長距離・高品質通信を行うのに有利になる。
ところで、ユニポーラRZ方式およびバイポーラRZ式を含め、インパルス無線通信システムは、使用する周波数帯域幅あたりの伝送ビット数が小さい、つまり周波数利用効率が低いという問題がある。
すなわち、インパルス無線通信では、ON/OFF変調を行うため、10GHzの周波数帯域幅を使用する場合、せいぜい10Gbpsのデータ伝送しか行えない。また、例えば、無線通信システムが近接し、相互の干渉が問題になると共に、同じ周波数帯を利用して伝送速度を上げる要望が出た場合に、周波数利用効率の高い通信システムが求められる。
例えば、無線通信装置の周波数利用効率を向上するためには、1シンボルに対して、複数ビットの情報をのせる方法、いわゆる多値化が有効であると考えられている。そこで、パルス伝送の場合は、パルスの出現位置を変えることにより情報を伝送するパルス位置変調(PPM)が研究・開発されている。
すなわち、インパルス無線通信システムにおいてパルス位置変調を行う場合、例えば、1周期内に1個のパルス(インパルス)を配置し、送信データに応じてパルスを配置する位置(位相)を変えることが考えられる。
図6は、関連技術としてのインパルス送信機の一例における短パルス発生器を示す図であり、1周期内にパルスを配置する位相を変化(−π,−π/2,基準(0),+π/2,+π)させて、2ビットのデータを伝送する例(多重度が『2』の例)を示す。なお、π/2の位相(配置)に対して、例えば、1周期(例えば、12ps)における1/4周期(例えば、3ps)を対応させるのが好ましい。
ここで、図6(a)は、B−RZインパルス送信機で使用する短パルス発生器102の一例を示すブロック図であり、短パルス発生器102を、パルス発生フィルタ506(103)およびパルス(広帯域)増幅器507(104)と共に示す。また、図6(b)は、図6(a)に示すT−FF(位置変調機能付きトリガーフリップフロップ)504の一例の回路図を示す。
図6(a)と、前述した図3(a)の比較から明らかなように、関連技術一例における短パルス発生器102は、セレクタ701と、クロックバッファ502と、T−FF702と、エッジ整形(シェーピング)回路505と、を有する。
クロックバッファ502、エッジ整形回路505、パルス発生フィルタ506およびパルス増幅器507は、図3(a)を参照して説明したのと同様のものであり、その説明は省略する。
セレクタ701は、シリアルの送信データDataの2ビット毎のデータパターンおよび通信クロックClockの2分周信号Mに基づいて、5つの選択信号p,q,r,s,tを生成する。
すなわち、多重度が『2』のとき、位相が−π,−π/2,基準(0),+π/2,+πとなる信号を生成するために5つの位相制御経路(信号経路)SLp〜SLtを設け、そのうちの1つを5つの選択信号p,q,r,s,tにより選択可能とする。なお、分周信号Mは、例えば、図6(b)に示すT−FF702のインバータ712の出力として生成された信号を使用することができる。
T−FF702は、例えば、図6(b)に示すような回路構成を有し、通信クロックclockを2分周した分周信号を出力する。分周信号の変化エッジは、選択信号p,q,r,s,tに応じて位相がπ/2(例えば、3ps)ずつ変化する。
T−FF702は、入出力が交差接続されたインバータ712および713によるマスターラッチと、インバータ715および716を含むスレーブラッチと、スレーブラッチの出力のフィードバック経路に設けられたインバータ717と、を有する。
T−FF702は、さらに,トランスファーゲート711および714を有する。トランスファーゲート711は、スレーブラッチの出力を、インバータ717を介してマスターラッチにフィードバックする経路に、トランスファーゲート714は、マスターラッチの出力とスレーブラッチの入力の間に、それぞれ設けられている。
トランスファーゲート711は、クロック信号Clockにより、トランスファーゲート714は、クロック信号Clockの反転信号/Clockにより、それぞれ導通状態が制御される。
T−FF702は、さらに、スレーブラッチにおいて、インバータ715の出力とインバータ716の入力(位置変調機能付きT−FF702の出力ノード)との間に接続された可変遅延部720を有する。
可変遅延部720は、インバータ715の出力とインバータ716の入力の間に、並列に接続された第1〜第5の5つの位相制御経路SLp〜SLtを有する。ここで、第1位相制御経路SLpは、トランスファーゲート721のみを有し、トランスファーゲート921のゲートには、選択信号pが入力される。
第2位相制御経路SLqは、直列に接続されたトランスファーゲート722,724およびバッファ723を有し、トランスファーゲート722,724のゲートには選択信号qが入力される。第3位相制御経路SLrは、直列に接続されたトランスファーゲート725,727、および、2個のバッファを接続したバッファ列726を有し、トランスファーゲート725,727のゲートには選択信号qが入力される。
第4位相制御経路SLsは、直列に接続されトランスファーゲート728,730、および、3個のバッファを接続したバッファ列729を有し、トランスファーゲート728,730のゲートには選択信号sが入力される。
第5位相制御経路SLtは、直列に接続されトランスファーゲート731,733、および、4個のバッファを接続したバッファ列732を有し、トランスファーゲート731,733のゲートには選択信号tが入力される。ここで、バッファ723,バッファ列726,729,732は、接続されるバッファの数が異なり、このバッファ数に基づいて遅延量が増加するようになっている。
これにより、例えば、第3位相制御経路SLrの出力を基準(0)にしたとき、第1位相制御経路SLpの出力における位相を−πに設定し、第2位相制御経路SLqの出力における位相を−π/2に設定することができる。
さらに、例えば、第3位相制御経路SLrの出力を基準(0)にしたとき、第4位相制御経路SLsの出力における位相を+π/2に設定し、第5位相制御経路SLtの出力における位相を+πに設定することができる。
このように、図6に示す関連技術の一例におけるインパルス送信機では、例えば、位置変調機能付きT−FF702における可変遅延部720が第1〜第5の5つの位相制御経路SLp〜SLtを有する。
図7は、図6に示すインパルス送信機からの信号を受信するインパルス受信機の一例を示すブロック図である。図6を参照して説明した関連技術の一例におけるインパルス送信機から出力された、位相を変化させて多重化したバイポーラ・インパルス信号を受信するインパルス受信機は、例えば、図7に示す構成を有する。
図7に示されるように、インパルス受信機は、受信アンテナ121と、受信増幅器122と、検波器123と、リミットアンプ124と、ベースバンド信号再生器125と、を有する。
検波器123は、ユニポーラ短パルス発生器801と、バンドパスフィルタ802と、第1ミキサ(ミキサ)803Aと、第2ミキサ(ミキサ)803Bと、π/2移相器804と、を有する。ユニポーラ短パルス発生器801は、通信クロックClockを多重度(ここでは、『2』)で除した周波数信号(2分周信号)の半周期毎に短パルスを発生する。
すなわち、ユニポーラ短パルス発生器801は、例えば、インパルス送信機のバンドパスフィルタ103の通過帯域の中心周波数(例えば、83.5GHz)のローカル発振信号の短パルスを発生する。
バンドパスフィルタ802は、送信機のバンドパスフィルタ103と同様の通過特性を有し、バイポーラ短パルス発生器805の出力信号を受け取って、振動信号と同じ周波数の発振信号で、その包絡線が短パルス信号に対応するパルス信号を生成する。
第1ミキサ803Aは、受信増幅器122の出力信号に、バンドパスフィルタ802が出力するパルス信号をミキシングして検波を行う。第2ミキサ803Bは、受信増幅器122の出力信号に、バンドパスフィルタ802が出力するパルス信号の位相をπ/2移相器804によりπ/2だけ位相シフトし、その位相シフトされた信号をミキシングして検波を行う。これにより中間周波数(IF)信号が得られる。
リミットアンプ124は、第1ミキサ803Aの出力を増幅する第1アンプ124Aと、第2ミキサ803Bの出力を増幅する第2アンプ124Bと、を有する。ここで、第1ミキサ803Aと第2ミキサ803Bでミキシングするローカル発振信号は、π/2(例えば、3ps)だけ位相がずれており、第1アンプ124AからIF信号(Q信号)が出力され、第2アンプ124BからIF信号(I信号)が出力される。
ベースバンド信号再生器125は、アナログ・デジタル変換器(ADC:Analog to Digital Converter)851と、位相検出部852と、データ再生部853と、を有する。ADC851は、IF信号(Q)およびIF信号(I)をデジタルデータに変換する。
位相検出部852は、IF信号(Q)およびIF信号(I)のデジタルデータから、受信したインパルス信号の位相を検出する。データ再生部853は、検出した位相および受信したクロックの位相からデータを再生する。
図8は、関連技術としてのインパルス送信機の他の例における短パルス発生器を示す図であり、1周期内にパルスを配置する位相を変化(−π/2,基準(0),+π/2,+π)させて、2ビットのデータを伝送する例(多重度が『2』の例)を示す。なお、π/2の位相(配置)に対して、例えば、1周期(例えば、12ps)における1/4周期(例えば、3ps)を対応させるのが好ましい。
ここで、図8(a)は、B−RZインパルス送信機で使用する短パルス発生器102の一例を示すブロック図であり、短パルス発生器102を、パルス発生フィルタ506(103)およびパルス増幅器507(送信増幅器104)と共に示す。また、図8(b)は、図8(a)に示すT−FF(位置変調機能付きトリガーフリップフロップ)504の一例の回路図を示す。
図8(a)に示されるように、関連技術の他の例における短パルス発生器102は、セレクタ901と、クロックバッファ502と、T−FF902と、エッジ整形(シェーピング)回路505と、を有する。
ここで、エッジシェーピング回路505は、例えば、直列接続された偶数段のインバータを含み、エッジシェーピング回路505によりエッジ成形された出力信号は、パルス発生フィルタ506(103)に入力される。なお、クロックバッファ502、パルス発生フィルタ506およびパルス(広帯域)増幅器507は、例えば、図3を参照して説明したのと同様のものであり、その説明は省略する。
セレクタ901は、シリアル送信データDataの2ビットの毎のデータパターンに応じて、4つの選択信号e,f,g,hを生成する。ここで、4つの選択信号e,f,g,hは、その1つが選択的にオン(高レベル『H』)にされ、残りの3つがオフ(低レベル『L』)にされる。
なお、図8(a)と、前述した図6(a)の比較から明らかなように、関連技術の他の例におけるセレクタ901は、通信クロックClockの2分周信号Mを使用することなく、送信データDataから選択信号e,f,g,hを生成する。
T−FF902は、例えば、図8(b)に示すような回路構成を有し、通信クロックclockを2分周した分周信号を(C)出力する。分周信号の変化エッジは、選択信号e,f,g,hに応じて位相がπ/2(例えば、3ps)ずつ変化する。
T−FF902は、入出力を交差接続したインバータ912,913によるマスターラッチ、インバータ915,916によるスレーブラッチ、および、スレーブラッチの出力のフィードバック経路に設けられたインバータ917を有する。
T−FF902は、さらに,トランスファーゲート911および914を有する。トランスファーゲート911は、スレーブラッチの出力を、インバータ917を介してマスターラッチにフィードバックする経路に挿入されている。また、トランスファーゲート914は、マスターラッチの出力とスレーブラッチの入力の間に挿入されている。
ここで、トランスファーゲート911は、クロック信号Clockにより導通状態が制御され、トランスファーゲート914は、クロック信号Clockの反転信号/Clockにより導通状態が制御される。
T−FF902は、さらに、スレーブラッチにおいて、インバータ915の出力とインバータ916の入力(位置変調機能付きT−FF902の出力ノード)の間に設けられた可変遅延部920を有する。
可変遅延部920は、インバータ915の出力とインバータ916の入力の間に、並列に接続された第1〜第4の4つの位相制御経路SLe〜SLhを有する。第1位相制御経路SLeは、トランスファーゲート921のみを有し、トランスファーゲート921のゲートには、選択信号eが入力される。
第2位相制御経路SLfは、直列に接続されたトランスファーゲート922およびバッファ923を有し、トランスファーゲート922のゲートには選択信号fが入力される。第3位相制御経路SLgは、直列に接続されたトランスファーゲート924、および、2個のバッファを接続したバッファ列925を有し、トランスファーゲート924のゲートには選択信号gが入力される。
第4位相制御経路SLgは、直列に接続されトランスファーゲート926、および、3個のバッファを接続したバッファ列927を有し、トランスファーゲート926のゲートには選択信号hが入力される。ここで、バッファ923,バッファ列925,927は、接続されるバッファの数が異なり、このバッファ数に基づいて遅延量が増加するようになっている。
これにより、例えば、第2位相制御経路SLfの出力を基準(0)にしたとき、第1位相制御経路SLeの出力位相を−π/2、第3位相制御経路SLgの出力位相を+π/2、そして、第4位相制御経路SLhの出力位相を+πに設定することができる。
ここで、例えば、パルス発生フィルタ506(バンドパスフィルタ103)の通過周波数帯域の中心周波数をfcとし、その周期TをT=1/fcとしたとき、隣接する位相制御経路の位相差『π/2』(遅延時間の差)は、T/4(例えば、3ps程度)に設定される。
例えば、第2位相制御経路SLfの出力を基準としたとき、第1位相制御経路SLeの出力は、−3ps(−T/4:−π/2)に設定され、第3位相制御経路SLgの出力は、+3ps(+T/4:+π/2)に設定される。
可変遅延部920では、セレクタ901の選択信号eに対して第1位相制御経路SLeの出力が選択され、fに対して第2位相制御経路SLfの出力が選択される。さらに、選択信号gに対して第3位相制御経路SLgの出力が選択され、hに対して第4位相制御経路SLgの出力が選択される。
図9は、図8に示すインパルス送信機からの信号を受信するインパルス受信機の一例を示すブロック図であり、関連技術の他の例におけるインパルス送信機から出力された、位相を変化させて多重化したバイポーラ・インパルス信号を受信する受信機の一例を示す。
ここで、インパルス受信機は、図1を参照して説明したように、受信アンテナ121と、受信増幅器122と、検波器123と、リミットアンプ124と、ベースバンド信号再生器125と、を有する。受信増幅器122は、例えば、低雑音アンプで実現される。
検波器123は、バイポーラ短パルス発生器805と、バンドパスフィルタ802と、第1ミキサ803Aと、第2ミキサ803Bと、π/2移相器804と、を有する。バイポーラ短パルス発生器805は、通信クロックClockを多重度(ここでは、『2』)で除した周波数信号(2分周信号)の半周期毎に極性が変化する短パルスを発生する。
すなわち、バイポーラ短パルス発生器805は、例えば、インパルス送信機のバンドパスフィルタ103の通過帯域の中心周波数(例えば、83.5GHz)のローカル発振信号で、正極性と負極性が交互に変化するバイポーラ短パルスを発生する。
このように、図9に示すインパルス受信機は、図7を参照して説明したインパルス受信機とは、検波器123におけるユニポーラ短パルス発生器801の代わりに、バイポーラ短パルス発生器805を使用する点が異なっている。
バンドパスフィルタ802は、送信機のバンドパスフィルタ103と同様の通過特性を有し、バイポーラ短パルス発生器805の出力信号を受け取って、振動信号と同じ周波数の発振信号で、その包絡線が短パルス信号に対応するパルス信号を生成する。
第1ミキサ803Aは、受信増幅器122の出力信号に、バンドパスフィルタ802が出力するパルス信号をミキシングして検波を行う。第2ミキサ803Bは、受信増幅器122の出力信号に、バンドパスフィルタ802が出力するパルス信号の位相をπ/2移相器804によりπ/2だけ位相シフトし、その位相シフトされた信号をミキシングして検波を行う。これにより中間周波数(IF)信号が得られる。
リミットアンプ124は、第1ミキサ803Aの出力を増幅する第1アンプ124Aと、第2ミキサ803Bの出力を増幅する第2アンプ124Bと、を有する。ここで、第1ミキサ803Aと第2ミキサ803Bでミキシングするローカル発振信号は、π/2(例えば、3ps)だけ位相がずれており、第1アンプ124AからIF信号(Q信号)が出力され、第2アンプ124BからIF信号(I信号)が出力される。
ここで、バイポーラ短パルス発生器805は、正極性と負極性が交互に変化するバイポーラ短パルスを発生するため、バンドパスフィルタ802の出力も正極性と負極性が交互に変化する。
また、前述したのと同様に、関連技術の他の例におけるインパルス送信機から出力されるインパルス信号も、受信増幅器122を介して第1ミキサ803Aおよび第2ミキサ803Bに入力され、バンドパスフィルタ802の出力により検波される。
すなわち、第1ミキサ803Aおよび第2ミキサ803Bは、極性が交互に変化するバイポーラ信号(バンドパスフィルタ802の出力信号と、その出力信号とπ/2だけずれた信号で、極性が交互に変化する信号)で検波される。
これにより、4つの選択信号e〜hにより選択された、4つの位相制御経路SLe〜SLhのいずれかの出力信号(C)による位相変調による信号を誤りなく検波して、IF信号(QおよびI信号)を得ることが可能になる。
ベースバンド信号再生器125は、アナログ・デジタル変換器(ADC:Analog to Digital Converter)851と、位相検出部852と、データ再生部853と、を有する。ADC851は、IF信号(Q)およびIF信号(I)をデジタルデータに変換する。
位相検出部852は、IF信号(Q)およびIF信号(I)のデジタルデータから、受信したインパルス信号の位相を検出する。データ再生部853は、検出した位相および受信したクロックの位相からデータを再生する。
ところで、図6(b)を参照して説明した関連技術の一例のインパルス送信機(位置変調機能付きトリガーフリップフロップ:T−FF)、並びに、図8(b)を参照して説明した関連技術の他の例のインパルス送信機では、以下のような3つの課題が存在する。
まず、第1の課題としては、例えば、CMOS(CMOSインバータ)のような低コストにつながるデバイスで遅延バッファを形成する場合、ミリ波帯では、位置変調の遅延時間単位が数psとなり、CMOSバッファの遅延時間(〜10ps)より小さくなる。そのため、単一のCMOSバッファを、遅延時間単位を得るために使用することが困難になる。
また、第2の課題としては、例えば、伝送線路による遅延時間を利用する場合、伝送線路の長さが長くなって占有面積が大きくなり、スペース的な制約を受けることになる。さらに、第3の課題としては、例えば、温度やプロセス変動による遅延時間のばらつきが伝送特性に影響を与えるため、通信品質が低下する虞がある。
以下、本実施例に係るインパルス送信機を、添付図面を参照して詳述する。図10は、インパルス送信機の一実施例におけるT−FF(位置変調機能付きトリガーフリップフロップ)を示すブロック図である。
ここで、図10に示す実施例は、図8(b)に示す関連技術の他の例のインパルス送信機におけるT−FF902に対応させたもので、多重度が『2』のときに使用する−π/2,基準(0),+π/2,+πを生成する場合の例を示す。
また、T−FF902が適用された短パルス発生器102、短パルス発生器102が適用されたインパルス送信機、並びに、インパルス送信機が適用されたインパルス無線通信システムは、上述したのと同様であり、その説明は省略する。
なお、図8(b)に示すT−FFの可変遅延部920において、第1位相制御経路SLeにはバッファが設けられていないが、本実施例では、例えば、2つの遅延回路の遅延時間差を利用して遅延時間(位相)を設定するため、遅延制御部928が設けられている。
さらに、本実施例は、図8(b)に示す関連技術のT−FF(可変遅延部)だけでなく、図6(b)に示す関連技術の可変遅延部に対しても適用することができ、さらに、多重度が『2』よりも大きい場合の可変遅延部等に対しても適用可能である。
図10と、前述した図8(b)の比較から明らかなように、本実施例に係るインパルス送信機のT−FF902は、前述した図8(b)に示すT−FFとは、スレーブラッチの可変遅延部920の構成が異なる。
すなわち、本実施例の可変遅延部920において、第1位相制御経路SLeには、第1遅延制御部(バッファ列)928が設けられ、第2位相制御経路SLfには、第2遅延制御部(バッファ列)923が設けられている。さらに、第3位相制御経路SLgには、第3遅延制御部(バッファ列)925が設けられ、第4位相制御経路SLhには、第4遅延制御部(バッファ列)927が設けられている。
ここで、第1〜第4位相制御経路SLe〜SLhに設けられた第1〜第4遅延制御部928,923,925,927は、それぞれ、3つの遅延回路と、バッファと、トランスファーゲートと、を含む。なお、各遅延制御部に設ける遅延回路の数は、多重度により、すなわち、1周期内にパルスを配置する位置(位相)に応じて変化する。
第1遅延制御部928は、第1遅延制御信号DS1により遅延量が制御される遅延回路De1,De2,De3、バッファBFe、および、トランスファーゲート(第2トランスファーゲート)921'を含む。
また、第2遅延制御部923は、第2遅延制御信号DS2により遅延量が制御される遅延回路Df1、第1遅延制御信号DS1により遅延量が制御される遅延回路Df2,Df3、バッファBFf、および、トランスファーゲート922'を含む。
さらに、第3遅延制御部925は、第2遅延制御信号DS2により遅延量が制御される遅延回路Dg1,Dg2、第1遅延制御信号DS1により遅延量が制御される遅延回路Dg3、バッファBFg、および、トランスファーゲート924'を含む。
そして、第4遅延制御部927は、第2遅延制御信号DS2により遅延量が制御される遅延回路Dh1,Dh2,Dh3、バッファBFh、および、トランスファーゲート926'を含む。
ここで、各位相制御経路のトランスファーゲート(第2トランスファーゲート)921',922',924',926'は、トランスファーゲート(第1トランスファーゲート)921,922,924,926と同じ選択信号e,f,g,hにより制御される。また、各位相制御経路SLe〜SLhの遅延制御部928,923,935,927に含まれるバッファBFe〜BFhは、全て同等のものである。
図11は、図10に示すT−FFの遅延制御部で使用する遅延制御信号生成回路の一例を示すブロック図であり、第1遅延制御信号DS1および第2遅延制御信号DS2を生成する回路の一例を示すものである。
図11に示されるように、遅延制御信号生成回路は、2つのDLL(Delay Locked Loop)回路301および302を含む。第1DLL回路301は、第1可変遅延回路311,第1位相比較器(PD:Phase Detector)312,第1低域通過フィルタ(LPF:Low Pass Filter)313および増幅器314を含む。
第2DLL回路302は、第2可変遅延回路321,第2位相比較器(PD)322,第2低域通過フィルタ(LPF)323および増幅器324を含む。なお、基準発振器300は、第1DLL回路301および第2DLL回路302に対して共通に設けられている。なお、図11では、2つのDLL回路301,302を描いているが、DLL回路の数は、3つ以上設けることもできる。
第1可変遅延回路311は、可変の遅延時間φ1を有するm+1個の遅延回路D11〜D1m+1を縦続接続して形成され、また、第2可変遅延回路321は、可変の遅延時間φ2を有するn+1個の遅延回路D21〜D2n+1を縦続接続して形成される。
第1位相比較器312は、第1可変遅延回路311の出力(例えば、第m段の遅延回路D1mの出力)と、基準発振器300の出力の位相差を比較する。また、第2位相比較器322は、第2可変遅延回路321の出力(例えば、第n段の遅延回路D2nの出力)と、基準発振器300の出力の位相差を比較する。
第1低域通過フィルタ313は、第1位相比較器312の出力の低周波成分を抽出し、抽出された低周波成分は、第1増幅器314により増幅されて第1遅延制御信号DS1として出力される。
この第1遅延制御信号DS1は、上述した図10における遅延回路De1〜De3,Df2,Df3およびDg3に入力されると共に、第1可変遅延回路311におけるm+1個の遅延回路D11〜D1m+1にフィードバックされる。
また、第2低域通過フィルタ323は、第2位相比較器322の出力の低周波成分を抽出し、抽出された低周波成分は、第2増幅器324により増幅されて第2遅延制御信号DS2として出力される。
この第2遅延制御信号DS2は、上述した図10における遅延回路Df1,Dg1,Dg2およびDh1〜Dh3に入力されると共に、第2可変遅延回路321におけるn+1個の遅延回路D11〜D1n+1にフィードバックされる。なお、前述したように、基準発振器300は、第1DLL回路301および第2DLL回路302で共用されている。
第1DLL回路301の第1可変遅延回路311による総遅延時間(m個の遅延回路D11〜D1mによる遅延時間)は、基準発振器300の発振周期T0の整数倍Mになるよう調整される。また、第2DLL回路302の第2可変遅延回路321による総遅延時間(n個の遅延回路D21〜D2nによる遅延時間)は、基準発振器300の発振周期T0の整数倍Nになるよう調整される。
ここで、説明を簡略化するために、M=N=1の場合、すなわち、第1可変遅延回路311による総遅延時間および第2可変遅延回路321による総遅延時間が、共に基準発振器300の発振周期T0に等しくなるように調整された場合を考える。
このとき、第1可変遅延回路311における各遅延回路D11〜D1m(D1m+1)の遅延時間をφ1、第2可変遅延回路321における各遅延回路D21〜D2n(D2n+1)の遅延時間をφ2とし、φ2−φ1=φ0となるように、各パラメータを決定する。
なお、φ0は、位置変調の遅延時間単位(=fc-1/k)であり、fcは、バンドパスフィルタ103の通過周波数帯域における中心周波数を示し、kは位相(位置)変調の数を示し、k=4の場合を考える。
したがって、第1可変遅延回路311における遅延回路の遅延時間φ1および段数m、並びに、第2可変遅延回路321における遅延回路の遅延時間φ2および段数nの間には、次の関係が成立する。
T0=m×φ1=n×φ2
したがって、
n=m×φ1/(φ1+φ0)
具体的に、一例として、インパルス無線装置が80GHz帯(81GHz〜86GHz)を使用する場合を考える。このとき、φ0=fc-1/4=(83.5GHz)-1/4ps〜3.0psであり、φ0=(1GHz)-1=1000psでφ1=10ps,m=100のとき、φ2=13.0ps,n=77となる。
この構成により、2種類の遅延回路D1(D11〜D1m+1の遅延時間φ1と遅延回路D2(D21〜D2n+1の遅延時間φ2の差(φ1−φ2)は、常にφ0に等しくなるよう保たれる(φ2−φ1=φ0)。
すなわち、例えば、1周期内に4つのパルスを配置する(−π/2,基準(0),+π/2,+π)場合、位相差(π/2)に対して、1周期(例えば、12ps)における1/4周期(例えば、3ps)を対応させることになる。
このとき、φ2−φ1=13−10=3psが得られる。すなわち、10psの遅延時間を与える第1可変遅延回路311の遅延回路D1、並びに、13psの遅延時間を与える第2可変遅延回路321の遅延回路D2を使用して、3psの遅延時間差を得ることが可能になる。
再び、図10を参照すると、まず、第1位相制御経路SLeに設けられた第1遅延制御部928は、第1遅延制御信号DS1により遅延量が制御される3つの遅延回路De1〜De3を含む。
また、第2位相制御経路SLfに設けられた第2遅延制御部923は、第1遅延制御信号DS1により遅延量が制御される2つの遅延回路Df2,Df3、および、第2遅延制御信号DS2により遅延量が制御される1つの遅延回路Df1を含む。
すなわち、第2遅延制御部923では、第1遅延制御部928における第1遅延制御信号DS1により遅延量が制御される遅延回路De1が、第2遅延制御信号DS2により遅延量が制御される遅延回路Df1に置き換わっている。
これにより、第2位相制御経路SLfの出力は、第1位相制御経路SLeの出力よりも+3ps(+π/2)だけずれる。したがって、第2位相制御経路SLfの出力を基準(0)にすると、第1位相制御経路SLeの出力は、−π/2(−3ps)ずれることになる。
また、第2位相制御経路SLfの第2遅延制御部923と、第3位相制御経路SLgの第3遅延制御部925を比較すると、DS1により遅延制御されるDf2が、DS2により遅延制御されるDg2に置き換わっている。これにより、第3位相制御経路SLgの出力は、第2位相制御経路SLfの出力よりも+3ps(+π/2)だけずれることになる。
さらに、第3位相制御経路SLgの第3遅延制御部925と、第4位相制御経路SLhの第4遅延制御部927を比較すると、DS1により遅延制御されるDg3が、DS2により遅延制御されるDh3に置き換わっている。
換言すると、第2位相制御経路SLfの第2遅延制御部923と、第4位相制御経路SLhの第4遅延制御部927を比較すると、DS1により遅延制御されるDe2、De3が、DS2により遅延制御されるDh2,Dh3に置き換わっている。これにより、第4位相制御経路SLhの出力は、第2位相制御経路SLfの出力よりも+6ps(+π)だけずれることになる。
このように、所望とする遅延時間差(例えば、3ps)よりも長い遅延時間(例えば、10ps,13ps)を与えるデバイス(例えば、CMOSインバータ)を使用しても、所望とする遅延時間差(例えば、3ps)の信号を得ることができるのがわかる。
ここで、本実施例によれば、遅延回路D1およびD2の遅延時間は、例えば、温度,電源電圧およびプロセス等がばらついても、基準発振器300が温度補償を施されて安定であれば、遅延時間差(φ0=φ2−φ1)の変動を微小なものに抑えることができる。また、本実施例によれば、CMOSインバータ(CMOS技術)のようにバッファ遅延時間が位置変調遅延時間単位φ0より大きくなるデバイスも使用することが可能になる。
そして、3ps(π/2)の遅延時間差(位相差)が制御されたT−FF902の出力Cは、例えば、図1並びに図8(a)(図6(a))等を参照して説明したように、エッジ整形回路505,パルス発生フィルタ506および送信アンテナ105を介して出力される。
上述したように、本実施例によれば、例えば、CMOSのようにバッファ遅延時間が位置変調単位よりも大きいデバイスを適用することができ、また、温度,電源電圧変動およびプロセスばらつき等による位置変調精度の低下が防止することができる。これにより、通信品質が高く、低コストでコンパクトなインパルス送信機を実現すること可能になる。
なお、上述した実施例では、2つのDLL回路を使用した例を説明したが、さらに多くのDLL回路を適用し、例えば、第3DLL回路を使用してより大きな遅延時間差を得るようにしてもよい。
また、上述した実施例では、2つのDLL回路を使用した例のみ説明したが、このDLL回路の代わりに、例えば、PLL(Phase Locked Loop)回路を適用することもできる。さらに、このような微小な遅延時間(位相差)を生成する回路は、バイポーラRZ型のインパルス送信機に対する適用限定されるものではなく、様々な電子機器に対して幅広く適用することが可能である。
図12は、遅延回路の一例を説明するための図であり、第1および第2可変遅延回路311,312の遅延回路D11〜D1m+1,D21〜D2n+1、並びに、位相制御経路SLe〜SLhの遅延回路De1,De2,De3〜Dh1,Dh2,Dh3を示す。
図12(a)は、縦続接続された複数のインバータI1,I2,…,Ij,Ij+1を示し、これが、実質的に、可変遅延回路311(D11〜D1m+1),312(D21〜D2n+1),遅延回路De1,De2,De3〜Dh1,Dh2,Dh3に相当する。
図12(b)は、図12(a)の縦続接続された複数のインバータI1,I2,…,Ij,Ij+1における1つのインバータ(遅延時間可変インバータ)Iの一例を示す。
図12(b)に示されるように、遅延時間可変インバータIは、高電位電源線Vddと低電位電源線Vssの間に接続されたpチャネル型MOSトランジスタQpおよびnチャネル型MOSトランジスタQn(CMOSインバータ)、並びに、バラクタVDを含む。
ここで、バラクタ(バラクタダイオード)VDは、CMOSインバータの出力ノードと低電位電源線Vssの間に設けられ、制御電圧(遅延制御信号DS1,DS2)により容量値が可変制御されるようになっている。
このように、CMOSインバータ(Qp,Qn)の出力ノードと低電位電源線Vssの間にバラクタVDを設け、制御電圧(遅延制御信号DS1,DS2)により容量値を制御することにより、遅延時間の可変制御を行うことができる。なお、図12は、単なる例であり、他の様々な回路を適用することができるのはいうまでもない。
以上、実施形態を説明したが、ここに記載したすべての例や条件は、発明および技術に適用する発明の概念の理解を助ける目的で記載されたものであり、特に記載された例や条件は発明の範囲を制限することを意図するものではない。また、明細書のそのような記載は、発明の利点および欠点を示すものでもない。発明の実施形態を詳細に記載したが、各種の変更、置き換え、変形が発明の精神および範囲を逸脱することなく行えることが理解されるべきである。
以上の実施例を含む実施形態に関し、さらに、以下の付記を開示する。
(付記1)
位相を変化させて多重化したバイポーラ・インパルス信号を送信するインパルス送信機であって、
通信クロックのタイムスロット単位のデータ信号を生成するベースバンド信号生成器と、
前記データ信号に基づいて、極性を反転させて生成されたバイポーラ短パルスに、異なる遅延を与えて位相を変化させるトリガーフリップフロップと、
前記バイポーラ短パルスを受け取り、所定の周波数帯域幅だけを通過させて前記バイポーラ・インパルス信号を生成するバンドパスフィルタと、を有し、
前記トリガーフリップフロップは、マスタースレーブ型であり、スレーブラッチ部は、セレクタからの選択信号に基づいていずれかが選択される、複数の位相制御経路を含み、
前記複数の位相制御経路は、それぞれ縦続接続された複数の遅延回路を含み、
それぞれの前記位相制御経路における前記複数の遅延回路を少なくとも2つの遅延制御信号により選択的に制御する、
ことを特徴とするインパルス送信機。
(付記2)
それぞれの前記位相制御経路は、
前記複数の遅延回路の前段に設けられた第1トランスファーゲートと、
前記複数の遅延回路の出力を受け取るバッファと、
前記複数の遅延回路の後段に設けられた第2トランスファーゲートと、有し、
前記位相制御経路における前記第1および第2トランスファーゲートは、同じ前記選択信号により選択される、
ことを特徴とする付記1に記載のインパルス送信機。
(付記3)
前記遅延回路のそれぞれの遅延時間は、
前記位相制御経路により生成される信号間の最小の時間差よりも大きい、
ことを特徴とする付記1また付記2に記載のインパルス送信機。
(付記4)
前記少なくとも2つの遅延制御信号により制御される、それぞれの前記遅延回路による遅延時間の和または差が、位置変調遅延単位に等しくなっている、
ことを特徴とする付記1乃至付記3のいずれか1項に記載のインパルス送信機。
(付記5)
前記少なくとも2つの遅延制御信号は、遅延回路の構成が異なる少なくとも2つのDLL回路により生成される、
ことを特徴とする付記1乃至付記4のいずれか1項に記載のインパルス送信機。
(付記6)
前記少なくとも2つの遅延制御信号は、共通の基準発振器からの信号を受け取り、前記遅延回路を縦続接続する段数が異なる少なくとも2つのDLL回路により生成される、
ことを特徴とする付記1乃至付記5に記載のインパルス送信機。
(付記7)
前記遅延制御信号は、第1遅延制御信号および第2遅延制御信号を含み、
それぞれの前記位相制御経路における遅延は、
前記第1遅延制御信号により遅延制御される前記遅延回路の数、および、前記第2遅延制御信号により遅延制御される前記遅延回路の数に基づいて規定される、
ことを特徴とする付記1乃至付記4のいずれか1項に記載のインパルス送信機。
(付記8)
前記位相制御経路は、第1〜第4位相制御経路の4つであり、互いに位相がπ/2だけ異なる信号を出力する、
ことを特徴とする付記7に記載のインパルス送信機。
(付記9)
前記位相制御経路は、それぞれ縦続接続された3つの遅延回路を含み、
前記第1位相制御経路において、3つの遅延回路は、前記第1遅延制御信号により制御され、
前記第2位相制御経路において、2つの遅延回路は、前記第1遅延制御信号により制御され、1つの遅延回路は、前記第2遅延制御信号により制御され、
前記第3位相制御経路において、1つの遅延回路は、前記第1遅延制御信号により制御され、2つの遅延回路は、前記第2遅延制御信号により制御され、
前記第4位相制御経路において、3つの遅延回路は、前記第2遅延制御信号により制御される、
ことを特徴とする付記8に記載のインパルス送信機。
(付記10)
前記第1および第2遅延制御信号は、遅延回路の構成が異なる2つのDLL回路により生成される、
ことを特徴とする付記7乃至付記9のいずれか1項に記載のインパルス送信機。
(付記11)
前記第1および第2遅延制御信号は、共通の基準発振器からの信号を受け取り、前記遅延回路を縦続接続する段数が異なる第1および第2DLL回路により生成される、
ことを特徴とする付記7乃至付記10のいずれか1項に記載のインパルス送信機。