本発明は、建物の独立基礎部分等を構築するに際し、プレキャストコンクリート版(PC版)の捨て型枠材を新たに開発し、このPC版捨て型枠材を用いて短期間で且つ他業者との連携をすることなく、PC版建込業者のみで建物基礎の構築を行うことのできる施工方法に関するものである。
建物の柱の基礎を構築する場合において、従来から一般に行われている施工方法は、先ず、基礎部分に位置する地盤を掘り起し、建物の大きさや地盤の土質等に応じて必要であれば杭を打ち込んでいる。そして、掘り起こした溝の底面地盤に割栗石又は砕石を敷き並べ、ランナー等の打撃器で締固めてその上からコンクリートを10cm程度の厚みになるように打設してベース面を形成している。
その後、このベース面の上にベニヤ合板及び桟木で形成した木製型枠材又は鋼鉄製の型枠材を用いて枠組み形成し、内部に鉄筋を組み込み、型枠内にコンクリートを打設して基礎を構築している。コンクリート打設後は、前記型枠を脱型し、その後コンクリート基礎の周囲を掘り起こした土砂で埋戻しを行っていた。
なお、柱の基礎部分どうしの間は、地中梁で連結されている。
ところが、このような従来一般に行われている施工方法では、型枠を組立ててコンクリートを打設した後に、型枠を脱型して取り除くことが必要であり、型枠の組立作業及び脱型作業のためのスペースが必要となり、掘削する領域が大きくなって掘り起こした土砂の排出量が多くなるという欠点があった。また掘り起こした土砂は、一旦別の場所に仮置きしておく必要があり、そのスペースが必要であった。更に、型枠設置後にコンクリートを打設し、脱型後に埋め戻すという施工は工程数が多くなり、工期が長引くという欠点があった。
そのため、近年は、特許文献1又は2に記載されているように、型枠を設置した後にその周囲を埋め戻し、コンクリートを打設して型枠はそのまま土中に埋めたままにするという捨て型枠工法が開発されている。
特許文献1の技術は、基礎面よりT字状に立設する布基礎をプレキャストコンクリート版(PC版)で構築する捨て型枠工法を示すものである。PC版の両端側に切欠きを設けてこの切欠き端面に、埋込みナットを植設し、別途製作した専用のL型金具と連結用のボルトを用いて隣位のPC版どうしを連結固定するようにしている。連結後は、PC版の両側面側の溝を掘り起こした土砂で埋戻し、布基礎の上端面に木造の建物を構築するようにしている。
なお、このPC版による布基礎は、PC版自体が布基礎を構成するのでこれを型枠材として用い、コンクリートを打設するというようなことは行っていなかった。
特許文献2の技術は、キーストンプレート(溶融亜鉛メッキ銅板の鋼製型枠)を用いて地中梁を構築する場合の技術である。先ず、地中梁の幅と同程度の幅の掘削溝を掘り起こしている。そして、この掘削溝の底面側に割栗石又は砕石を敷き並べて突き固め、厚みが5〜10cm程度の捨コンを打設している。次に、掘削溝内にその両側面それぞれに沿って互いに間隔を隔ててほぼ垂直に支持用鉄筋棒を立設し、これらの支持用鉄筋棒に型枠材としてのキーストンプレート等の鋼板を支持させて一対の対向する金属製型枠を設けている。然る後に、地中梁どうしで囲まれた領域の上面側にスラブ鉄筋を配筋し、また地中梁内には地中梁鉄筋を配筋してこれらのスラブ鉄筋と地中梁鉄筋とを一体的に組み上げ、スラブから前記鋼板型枠間に亘ってコンクリートを一連に打設している。
また従来においては、キーストンプレートを用いて柱部基礎を構築する方法として、図9に示す技術が公知である。この従来技術は、掘削した溝底面の捨コン上面1の所定位置にL型アングル材2又はランナー部材を固定し、その外周面側に連続した断面矩形状波型のキーストンプレート3を立設し、上端面側にL型アングル材4を溶接固定している。そして、隣位のキーストンプレート3どうしが当接するコーナー部にはL型ジョイント5を縦方向に溶接している。更に、全体の剛性をアップさせるために、コーナー部の上端面に補強用の連結材(斜交い)6を溶接している。剛性をアップさせないと、埋戻しの際の周囲の土圧に耐えられないからである。
尚、一組の対向するキーストンプレート3,3の上部中央部に設けられた開口7は、地中梁と連結するためのものである。
特開平8−296239号公報
特許第2629482号公報
前記特許文献1に示す技術では、PC版捨て型枠を土中に埋められたまま放置するので、脱型作業が不要となり、工期の短縮は可能であるが、これを建物柱部の基礎部分を構築するものとしてそのままでは利用できないという問題があった。
建物柱部の基礎は、建物の大きさ等によるが、通常は矩形体の一辺の長さが2m〜3mで、高さが1.2m〜1.5mであり、PC版型枠材で枠組み形成した後に、その周囲の掘削溝を掘り起こした土砂で埋め戻した場合に、PC版型枠材にかなりの大きな土圧が作用することになる。そのため、PC版型枠材どうしを専用のL型金具及びボルトを用いて連結すると、その連結部にPC版型枠材の全体に作用する土圧の応力が集中し、L型金具及びボルト部分のPC版型枠材が破損してPC版型枠材がコンクリートを打設しなければならない基礎部分の空間領域である内側へ倒れ込み、型枠を組み上げることができなかった。
またこの特許文献1の施工方法では、専用のL型金具を製造し、準備しなければならないこと、PC版型枠材に特定形状の切欠きを形成し、この切欠き部分にボルト締結用の埋込ナットを植設しなければならないこと、PC版型枠材どうしの組付け時に金具取付及びボルト締結等の余分の工程が必要で有り、全体として加工及び組付け工数が増加し、コストアップの原因にもなっていた。
また特許文献2等に示す技術では、掘削溝の両側面に沿った部分に、所定間隔ごとに鉄筋棒を土中へ差し込み、この鉄筋棒に凭れ掛けさせてキーストンプレートを配置し、地中梁コンクリートを流し込むための捨て型枠としている。
ところが、このような技術を、通常であっても矩形体の一辺の長さが2m〜3mで、高さが1.2m〜1.5mもある大容積の柱部基礎の型枠材として使用することは、大きな土圧が作用するので採用することができなかった。
そのため、キーストンプレートを用いる場合は、図9の従来技術に示すように、キーストンプレート3の上下端面をL型アングル材又は断面コ字状のランナー部材2,4で溶接することが必要である。またキーストンプレート3どうしが突合せで当接するコーナー部は、L型ジョイント5を溶接し、更に上端面側のコーナー部には連結材(斜交い)6を溶接して、全体の剛性をアップしなければならなかった。
従って、この図9に示す従来技術では、建設作業員の他に溶接作業員が必要で、両者の連携作業が必須であり、建設作業員が単独で型枠の組付けを行うことができないという問題と、連携の不備に基づく事故が発生するという問題があった。それに加えて、キーストンプレート3の型枠材の他に、L型アングル又はランナー部材2,4やL型ジョイント5、連結材(斜交い)6等の付属部品が必要であり、その製作・管理に手間とコストを要し、作業が煩雑になるという問題もあった。更に、金属製の型枠材であり、経年変化で腐食するという問題もあった。
そこで、本発明は、従来の前記問題点に鑑みてこれを改良除去したものであって、プレキャストコンクリート版(PC版)に縦溝を設けて隣位のプレキャストコンクリート版の縦溝どうしを嵌合させることで、土圧にも十分に耐え得る柱部基礎構築用のPC版型枠材と、これを用いた施工方法を提供せんとするものである。
前記課題を解決するために本発明が採用した請求項1の手段は、矩形状をなすプレキャストコンクリート版の両端側に同一方向の縦溝を設けて成り、該縦溝は隣位のプレキャストコンクリート版に設けられた縦溝と嵌合し得るものであることを特徴とするPC版型枠材である。
前記課題を解決するために本発明が採用した請求項2の手段は、矩形状をなすプレキャストコンクリート版の一端側に上方向の縦溝を設けると共に、他端側に下方向の縦溝を設けて成り、前記上下方向の各縦溝は隣位のプレキャストコンクリート版に設けられた上下方向の各縦溝と嵌合し得るものであることを特徴とするPC版型枠材である。
前記課題を解決するために本発明が採用した請求項3の手段は、縦溝から端部までの間の領域において、上端面又は下端面から縦溝の溝底に至る途中までの部分が切除されている前記請求項1又は2に記載のPC版型枠材である。
前記課題を解決するために本発明が採用した請求項4の手段は、プレキャストコンクリート版の上端面の中央部に、下端側の途中へ向けて地中梁用型枠との連結用凹部が形成されている前記請求項1乃至3のいずれか一つに記載のPC版型枠材である。
前記課題を解決するために本発明が採用した請求項5の手段は、建物の基礎を構築する位置の地盤を掘り起こしてその底面に捨コン等でベース面を設置し、該ベース面上に上向きの縦溝が形成されているプレキャストコンクリート版を設置し、該プレキャストコンクリート版の上向きの縦溝に別のプレキャストコンクリート版の下向きの縦溝を嵌合させて隣位のプレキャストコンクリート版どうしを組合せて結合し、複数のプレキャストコンクリート版で任意の多角形平面形状を呈する型枠を形成し、該型枠の周囲を掘り起こした土砂で埋戻し、前記型枠内にコンクリートを打設して建物の基礎を構築するようにしたことを特徴とするPC版型枠材を用いた基礎の構築施工方法である。
請求項1の発明にあっては、矩形状をなすプレキャストコンクリート版の両端側に同一方向の縦溝を設けている。建物の基礎を構築するに際しては、隣位のプレキャストコンクリート版に設けられた縦溝どうしを嵌合させるだけでよい。但し、縦溝がプレキャストコンクリート版の両端側で同一方向に設けられているので、縦溝を上向きにしたプレキャストコンクリート版を所定間隔を置いて二個一対で対向配置し、その状態でプレキャストコンクリート版の縦溝を下向きにして嵌合させ、組付けを行うことが必要である。
この請求項1のPC版型枠材であれば、溶接作業が不要であるため、PC版建込業者のみでの型枠の建込みが可能であり、異なる業者間での連携不良に起因する事故の発生を防止することが可能である。また組付け作業自体の簡略化による建設作業員の負担軽減を図ることも可能である。
請求項2の発明にあっては、矩形状をなすプレキャストコンクリート版の一端側に上方向の縦溝を設けると共に、他端側に下方向の縦溝を設けている。縦溝どうしを嵌合させて型枠の建込を行うこと及びその効果については、前記請求項1の場合と同じである。この請求項2のPC版型枠材にあっては、請求項1に記載のPC版型枠材と組み合わせることで、プレキャストコンクリート版を最初に二個一対で準備する必要がなく、一個ずつ隣位どうしの縦溝どうしを嵌合させて組み上げていくことができる。これにより、作業員数を少なくすることが可能である。
請求項3の発明にあっては、縦溝から端部までの間の領域において、上端面又は下端面から縦溝の溝底に至る途中までの部分を切除している。この切除部分は、土圧等の対向手段として機能するものではなく、本来的に不要な部分である。切除することで、材料費の削減を図ることが可能である。
請求項4の発明にあっては、建物の基礎部分に地中梁が設けられる場合のものであり、基礎部分の鉄筋と地中梁の鉄筋とを一体的に組み上げ、またコンクリートの打設も基礎部分と地中梁とを同時に行うことが可能である。
請求項5の発明は、前記請求項1乃至4に記載のPC版型枠材を用いて実際に基礎部分の型枠を建込み、コンクリートを打設するまでの施工方法である。建物の基礎のベース面上に、上向きの縦溝が形成されているプレキャストコンクリート版を設置し、別のプレキャストコンクリート版の下向きの縦溝を前記上向き縦溝に嵌合させて隣位のプレキャストコンクリート版どうしを組合せて結合する。これを繰り返して、複数のプレキャストコンクリート版で任意の多角形平面形状を呈する型枠を建て込んでいる。
そして、型枠の周囲を掘り起こした土砂で埋戻す。このときの土圧は、隣位のプレキャストコンクリート版へ伝達されて分散されると共に、対向するプレキャストコンクリート版から反対方向の土圧が作用し、相互に打ち消し合うので、プレキャストコンクリート版が土圧で倒壊したり、欠損するというようなことはない。
またプレキャストコンクリート版で建て込まれた基礎型枠内へ流し込まれるコンクリートの圧力は、各プレキャストコンクリート版に作用するが、各プレキャストコンクリート版の外周囲が埋め戻した土砂により充満されているので十分にバックアップされており、何ら問題はない。
しかも、プレキャストコンクリート版の建て込みと、掘り起こした土砂の埋戻しをほぼ同時に行うことができるので、掘り起こした土砂の仮置き時間を短縮することができる。またプレキャストコンクリート版の型枠材は、そのまま土中に埋め込まれるので、建込作業や脱型作業のための大きなスペースは不要であり、基礎部分の構築のための掘り起こす土砂の量を少なくすることができる。工期の短縮、作業負担の軽減を図ることが可能である。
更に、金属材料を用いてないので腐食の問題が起こることもない。 更にまた、コンクリート基礎部分の周囲にプレキャストコンクリート版が介在することになり、基礎部分のコンクリートの中性化や基礎鉄筋の腐食を防止する保護層としても機能し得るものである。
本発明の一実施の形態に係るPC版型枠材を示すものであり、図(A)は同一方向に縦溝を設けた場合の斜視図、図(B)は上下方向の縦溝を設けた場合の斜視図である。
本発明の一実施の形態に係る一部切除タイプのPC版型枠材を示すものであり、図(A)は同一方向に縦溝を設けた場合の斜視図、図(B)は上下方向の縦溝を設けた場合の斜視図である。
本発明の一実施の形態に係るものであり、第一の建込工程を示す斜視図である。
本発明の一実施の形態に係るものであり、第二の建込工程を示す斜視図である。
本発明の一実施の形態に係るものであり、第三の建込工程を示す斜視図である。
本発明の一実施の形態に係るものであり、PC版型枠の建込が完了した状態の全体を示す斜視図である。
本発明の一実施の形態に係るものであり、PC版型枠の建込が完了した状態の基礎部分の縦断面である。
本発明の一実施の形態に係るものであり、PC版型枠の建込完了後に、コンクリートを打設し、柱型を形成し、鉄骨を建て込んだ状態を示す基礎部分の全体を示す縦断面図である。
従来のキーストンプレートを用いた基礎部分の施工方法を説明するための鋼製型枠の全体を示す斜視図である。
以下に、本発明の構成を図面に示す一実施の形態に基づいて説明すると次の通りである。図1の図(A)及び図(B)、図2の図(A)及び図(B)はプレキャストコンクリート版(PC版)で型枠材10,11,12,13を構成した場合のそれぞれ一例を示す斜視図である。これらのPC版型枠材10〜13は、建設する建物の大きさ等によって設計されるコンクリート基礎部分の大きさにもよるが、一般的には横幅が2.6m〜4m、高さが1.2m〜1.5m程度である。これは、コンクリート基礎の一辺の長さが2m〜3m、高さが1.2m〜1.5m程度に対応する場合のものである。前記PC型枠材10〜13は、内部に鉄筋が配筋されており、厚みは50mm〜150mm程度である。実験では、一辺の長さ2mで高さが1.2mの四角柱体の基礎を構築する場合、60mmでも十分であった。
図1の図(A)に示すPC版型枠材10は、矩形状のプレキャストコンクリート版14の両端側に同一方向(図面では上方向)の縦溝15,16を設けている。縦溝15,16の深さは、高さ寸法の1/2よりも若干大きめであればよい。また縦溝15,16の位置は、縦溝15,16どうしの間の寸法が、構築するコンクリート基礎の一辺の長さに相当する位置であればよく、左右の側端面から200mm〜300mm程度、内側へ入ったところが適当である。縦溝15,16の幅は、プレキャストコンクリート版の厚みよりも若干大きめのものであればよい。
図1の図(B)に示すPC版型枠材11は、左側端面寄りに上向きの縦溝15aを形成し、右側端面寄りに下向きの縦溝17を形成した場合のものである。その他の構成は、前記図(A)に示すPC版型枠材10と同じである。
図2の図(A)に示すPC版型枠材12は、図1の図(A)に示すPC版型枠材10の縦溝15,16からそれぞれ外側の範囲で且つプレキャストコンクリート版14の上端面から縦溝15,16の溝底へ向かうまでの途中の領域の一部を切除したものである。この切除した部分は、型枠材として特別な機能を持つ部分ではないので、当初から製作しないことで材料費削減に寄与させることとした。また切除することで、後述するPC版型枠材の組付け時に縦溝どうしの嵌合が却ってし易くなるという利点もある。
図2の図(B)に示すPC版型枠材13は、図1の図(B)に示すPC版型枠材11の縦溝15aからそれぞれ外側の範囲で且つプレキャストコンクリート版14の上端面から縦溝15aの溝底へ向かうまでの途中の領域の一部を切除すると共に、縦溝17からそれぞれ外側の範囲で且つプレキャストコンクリート版14の下端面から縦溝17の溝底へ向かうまでの途中の領域の一部を切除したものである。切除部の作用効果については、前記図2の図(A)に示すPC版型枠材12の場合と同じである。
次に、図3乃至図7を参照して、図2の図(A)及び図(B)に示すPC版型枠材12,13を用いて建物のコンクリート基礎を構築する場合の型枠の建込要領について説明する。先ず、図7に示すように、建物のコンクリート基礎を構築する領域の地盤18を掘削し、必要であれば杭19,19を打ち込む。そして、掘削した領域の底面に割栗石又は砕石20を敷き並べてランナー等の打撃器で締固め、その上に厚み50mm程度の捨コン21を流し込んでベース面22を形成する。
然る後に、図3に示すように、同一方向の縦溝15,16が形成された図2の図(A)で示すPC版型枠材10をベース面22の墨出しを行った所定位置に配置して準備し、その縦溝15,16が上を向くように立設する。この場合、作業員が手で把持してその姿勢を維持していてもよい。この状態からクレーン等で吊り上げた図2の図(B)で示すPC版型枠材13を準備し、その下向きの縦溝17を前記仮置きの状態で立設しているPC版型枠材10の縦溝16に嵌合させる。この状態では、二つのPC版型枠材10及び13は、平面視した場合にL字状を成し、自立することが可能となる。
次に、図4に示すように、別のPC版型枠材13をクレーンで吊り上げて準備し、その下向きの縦溝17を先に組み付けたPC版型枠材13の上向きの縦溝15aへ嵌合させる。これにより、三辺の組付けが完了する。
最後に、図5に示すように、同一方向に縦溝15,16が形成されたPC版型枠材12を、前記縦溝15,16が下を向くように吊り上げて準備し、その縦溝15を一番最初に立設したPC版型枠材12の縦溝15へ嵌合させると共に、他方の縦溝16を三番目に組み付けたPC版型枠材13の上向きの縦溝15aに嵌合させる。
以上により、図6及び図7に示すように、建物の柱部のコンクリート基礎部分の型枠の建込が完了する。
然る後は、図7で示す、各PC型枠材12,12,13,13の外周囲の空間Aへ掘り起こした土砂で埋戻しを行う。この時、埋め戻した土砂の土圧が各PC版型枠材に作用するが、土圧は、隣位のPC版型枠材へ伝達されて分散されると共に、対向するPC版型枠材から反対方向の土圧が作用し、相互に打ち消し合うので、これらのPC版型枠材が土圧で倒壊したり、位置ズレを起こすということはなく、また欠損するというようなこともない。
次に、図8に示すように、型枠内の空間Bへ予め組み込んでおいた鉄筋23をクレーン等で吊り上げて配置し、続いて位置決めプレート24等を介して鉄骨組み立て用のアンカーボルト25,25を配置する。
最後に、型枠内の空間Bへコンクリート26を打設すれば、コンクリート基礎の構築作業は完了する。なお、PC版型枠材12,12,13,13は土中に埋め込まれたままであり、脱型作業は不要である。またこれらのPC版型枠材は、コンクリート26及び鉄筋23等の保護層としても機能する。
コンクリート基礎の構築後は、柱型27のコンクリート土台を設け、この柱型27上にH型鋼等の鉄骨柱28のベースプレート29へアンカーボルト25,25を挿通させてナット30で締結し、鉄骨柱28を立設する。最後にコンクリート基礎26の上面側の空間Cを掘り起こした土砂で埋戻して地表面と同一高さになるようにすればよい。
ところで、以上の説明は、同一方向の縦溝を有するPC版型枠材12と、異なる方向の縦溝を有するPC版型枠材13をそれぞれ二個ずつ用いて建物の柱部のコンクリート基礎を構築する場合を説明したが、同一方向の縦溝を有するPC版型枠材12を四個用いて構築することも可能である。この場合は、上向きにした縦溝のPC版型枠材12を二個一対で対向配置し、これに下向きにした縦溝のPC版型枠材12を一つずつ組み付けていけばよい。
また前記説明は、コンクリート基礎26が矩形体をなす場合を説明したが五角柱体や六角柱体、その他の多角形柱体等へも適用することが可能である。その場合に、縦溝は多角形の各辺どうしが成す角度と同じ角度の斜めに形成することが必要である。また最初は、同一方向の上向きの縦溝を有するPC版型枠材を使用し、最後は同一方向の下向きの縦溝を有するPC版型枠材を使用することが必要であり、途中の段階では上向きと下向きの縦溝が形成されたPC版型枠材を使用すればよい。
また以上の説明は、コンクリート基礎26を構築する場合のみを説明したが、コンクリート基礎26とコンクリート基礎26との間を地中梁で連結する場合は、図1の図(A),図(B)及び図2の図(A),図(B)において鎖線で示す位置に、地中梁の型枠と連結するための凹部31を設ければよい。この場合、地中梁の型枠を建て込んだ後に、PC版型枠材で建て込んだ柱部構築用の基礎部分と、地中梁部分とを同時にコンクリートで打設するようにすればよい。
ところで、本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、適宜の変更が可能である。例えば、地上で多角形状の柱体を構築する場合も、このPC版型枠材を使用して構築することが可能である。
10,11,12,13…PC版型枠材
14…プレキャストコンクリート版
15,15a,16,17…縦溝
18…地盤
22…基礎のベース面
31…地中梁連結用の凹部
A…PC版型枠材の外周側の空間
B…PC版型枠材の内部空間
本発明は、建物の独立基礎部分等を構築するに際し、プレキャストコンクリート版(PC版)の捨て型枠材を新たに開発し、このPC版捨て型枠材を用いて短期間で且つ他業者との連携をすることなく、PC版建込業者のみで建物基礎の構築を行うことのできる施工方法に関するものである。
建物の柱の基礎を構築する場合において、従来から一般に行われている施工方法は、先ず、基礎部分に位置する地盤を掘り起し、建物の大きさや地盤の土質等に応じて必要であれば杭を打ち込んでいる。そして、掘り起こした溝の底面地盤に割栗石又は砕石を敷き並べ、ランナー等の打撃器で締固めてその上からコンクリートを10cm程度の厚みになるように打設してベース面を形成している。
その後、このベース面の上にベニヤ合板及び桟木で形成した木製型枠材又は鋼鉄製の型枠材を用いて枠組み形成し、内部に鉄筋を組み込み、型枠内にコンクリートを打設して基礎を構築している。コンクリート打設後は、前記型枠を脱型し、その後コンクリート基礎の周囲を掘り起こした土砂で埋戻しを行っていた。
なお、柱の基礎部分どうしの間は、地中梁で連結されている。
ところが、このような従来一般に行われている施工方法では、型枠を組立ててコンクリートを打設した後に、型枠を脱型して取り除くことが必要であり、型枠の組立作業及び脱型作業のためのスペースが必要となり、掘削する領域が大きくなって掘り起こした土砂の排出量が多くなるという欠点があった。また掘り起こした土砂は、一旦別の場所に仮置きしておく必要があり、そのスペースが必要であった。更に、型枠設置後にコンクリートを打設し、脱型後に埋め戻すという施工は工程数が多くなり、工期が長引くという欠点があった。
そのため、近年は、特許文献1又は2に記載されているように、型枠を設置した後にその周囲を埋め戻し、コンクリートを打設して型枠はそのまま土中に埋めたままにするという捨て型枠工法が開発されている。
特許文献1の技術は、基礎面よりT字状に立設する布基礎をプレキャストコンクリート版(PC版)で構築する捨て型枠工法を示すものである。PC版の両端側に切欠きを設けてこの切欠き端面に、埋込みナットを植設し、別途製作した専用のL型金具と連結用のボルトを用いて隣位のPC版どうしを連結固定するようにしている。連結後は、PC版の両側面側の溝を掘り起こした土砂で埋戻し、布基礎の上端面に木造の建物を構築するようにしている。
なお、このPC版による布基礎は、PC版自体が布基礎を構成するのでこれを型枠材として用い、コンクリートを打設するというようなことは行っていなかった。
特許文献2の技術は、キーストンプレート(溶融亜鉛メッキ銅板の鋼製型枠)を用いて地中梁を構築する場合の技術である。先ず、地中梁の幅と同程度の幅の掘削溝を掘り起こしている。そして、この掘削溝の底面側に割栗石又は砕石を敷き並べて突き固め、厚みが5〜10cm程度の捨コンを打設している。次に、掘削溝内にその両側面それぞれに沿って互いに間隔を隔ててほぼ垂直に支持用鉄筋棒を立設し、これらの支持用鉄筋棒に型枠材としてのキーストンプレート等の鋼板を支持させて一対の対向する金属製型枠を設けている。然る後に、地中梁どうしで囲まれた領域の上面側にスラブ鉄筋を配筋し、また地中梁内には地中梁鉄筋を配筋してこれらのスラブ鉄筋と地中梁鉄筋とを一体的に組み上げ、スラブから前記鋼板型枠間に亘ってコンクリートを一連に打設している。
また従来においては、キーストンプレートを用いて柱部基礎を構築する方法として、図9に示す技術が公知である。この従来技術は、掘削した溝底面の捨コン上面1の所定位置にL型アングル材2又はランナー部材を固定し、その外周面側に連続した断面矩形状波型のキーストンプレート3を立設し、上端面側にL型アングル材4を溶接固定している。そして、隣位のキーストンプレート3どうしが当接するコーナー部にはL型ジョイント5を縦方向に溶接している。更に、全体の剛性をアップさせるために、コーナー部の上端面に補強用の連結材(斜交い)6を溶接している。剛性をアップさせないと、埋戻しの際の周囲の土圧に耐えられないからである。
尚、一組の対向するキーストンプレート3,3の上部中央部に設けられた開口7は、地中梁と連結するためのものである。
特開平8−296239号公報
特許第2629482号公報
前記特許文献1に示す技術では、PC版捨て型枠を土中に埋められたまま放置するので、脱型作業が不要となり、工期の短縮は可能であるが、これを建物柱部の基礎部分を構築するものとしてそのままでは利用できないという問題があった。
建物柱部の基礎は、建物の大きさ等によるが、通常は矩形体の一辺の長さが2m〜3mで、高さが1.2m〜1.5mであり、PC版型枠材で枠組み形成した後に、その周囲の掘削溝を掘り起こした土砂で埋め戻した場合に、PC版型枠材にかなりの大きな土圧が作用することになる。そのため、PC版型枠材どうしを専用のL型金具及びボルトを用いて連結すると、その連結部にPC版型枠材の全体に作用する土圧の応力が集中し、L型金具及びボルト部分のPC版型枠材が破損してPC版型枠材がコンクリートを打設しなければならない基礎部分の空間領域である内側へ倒れ込み、型枠を組み上げることができなかった。
またこの特許文献1の施工方法では、専用のL型金具を製造し、準備しなければならないこと、PC版型枠材に特定形状の切欠きを形成し、この切欠き部分にボルト締結用の埋込ナットを植設しなければならないこと、PC版型枠材どうしの組付け時に金具取付及びボルト締結等の余分の工程が必要で有り、全体として加工及び組付け工数が増加し、コストアップの原因にもなっていた。
また特許文献2等に示す技術では、掘削溝の両側面に沿った部分に、所定間隔ごとに鉄筋棒を土中へ差し込み、この鉄筋棒に凭れ掛けさせてキーストンプレートを配置し、地中梁コンクリートを流し込むための捨て型枠としている。
ところが、このような技術を、通常であっても矩形体の一辺の長さが2m〜3mで、高さが1.2m〜1.5mもある大容積の柱部基礎の型枠材として使用することは、大きな土圧が作用するので採用することができなかった。
そのため、キーストンプレートを用いる場合は、図9の従来技術に示すように、キーストンプレート3の上下端面をL型アングル材又は断面コ字状のランナー部材2,4で溶接することが必要である。またキーストンプレート3どうしが突合せで当接するコーナー部は、L型ジョイント5を溶接し、更に上端面側のコーナー部には連結材(斜交い)6を溶接して、全体の剛性をアップしなければならなかった。
従って、この図9に示す従来技術では、建設作業員の他に溶接作業員が必要で、両者の連携作業が必須であり、建設作業員が単独で型枠の組付けを行うことができないという問題と、連携の不備に基づく事故が発生するという問題があった。それに加えて、キーストンプレート3の型枠材の他に、L型アングル又はランナー部材2,4やL型ジョイント5、連結材(斜交い)6等の付属部品が必要であり、その製作・管理に手間とコストを要し、作業が煩雑になるという問題もあった。更に、金属製の型枠材であり、経年変化で腐食するという問題もあった。
そこで、本発明は、従来の前記問題点に鑑みてこれを改良除去したものであって、プレキャストコンクリート版(PC版)に縦溝を設けて隣位のプレキャストコンクリート版の縦溝どうしを嵌合させることで、土圧にも十分に耐え得る柱部基礎構築用のPC版型枠材と、これを用いた施工方法を提供せんとするものである。
前記課題を解決するために本発明が採用した請求項1の手段は、矩形状をなすプレキャストコンクリート版の一端側に上方向の縦溝を設けると共に、他端側に下方向の縦溝を設けて成り、前記上下方向の各縦溝は隣位のプレキャストコンクリート版に設けられた上下方向の各縦溝と嵌合し得るものであることを特徴とするPC版型枠材である。
前記課題を解決するために本発明が採用した請求項2の手段は、縦溝から端部までの間の領域において、上端面又は下端面から縦溝の溝底に至る途中までを切除した切除部を設けた前記請求項1に記載のPC版型枠材である。
前記課題を解決するために本発明が採用した請求項3の手段は、プレキャストコンクリート版の上端面の中央部に、下端側の途中へ向けて地中梁用型枠との連結用凹部が形成されている前記請求項1又は2に記載のPC版型枠材である。
前記課題を解決するために本発明が採用した請求項4の手段は、建物の基礎を構築する位置の地盤を掘り起こしてその底面に捨コン等でベース面を設置し、最初に両端側に同一方向の上向きの縦溝が形成されているプレキャストコンクリート版を前記ベース面上に設置し、二番目に上向きの縦溝と下向きの縦溝とが形成されたプレキャストコンクリート版を準備して最初のプレキャストコンクリート版の上向きの縦溝に、当該二番目のプレキャストコンクリート版の下向きの縦溝を嵌合させ、三番目に上向きの縦溝と下向きの縦溝とが形成されたプレキャストコンクリート版を準備して二番目のプレキャストコンクリート版の上向きの縦溝に、三番目のプレキャストコンクリート版の下向きの縦溝を嵌合させ、四番目に同一方向の下向きの縦溝が形成されたプレキャストコンクリート版を準備して三番目と最初のプレキャストコンクリート版のそれぞれの上向きの縦溝に四番目のプレキャストコンクリート版の下向きの縦溝を嵌合させて型枠を形成し、該型枠の周囲を掘り起こした土砂で埋戻し、前記型枠内にコンクリートを打設して建物の基礎を構築するようにしたことを特徴とするPC版型枠材を用いた基礎の構築施工方法である。
前記課題を解決するために本発明が採用した請求項5の手段は、建物の基礎を構築する位置の地盤を掘り起こしてその底面に捨コン等でベース面を設置し、該ベース面上に、五角柱体や六角柱体、その他の多角柱体のコンクリート基礎を構築する場合において、両端側に同一方向の上向きの縦溝が形成されている矩形状のプレキャストコンクリート版と、両端側に上向きの縦溝と下向きの縦溝とが形成された矩形状のプレキャストコンクリート版と、両端側に同一方向の下向きの縦溝が形成されている矩形状のプレキャストコンクリート版とを準備し、これらのプレキャストコンクリート版の各縦溝を多角形の各辺どうしが成す角度と同じ角度の斜めに形成し、建込の最初は両端側に同一方向の上向きの縦溝を有するプレキャストコンクリート版を前記ベース面上へ立設し、二番目から最後の手前までは上向きと下向きの縦溝が形成されたプレキャストコンクリート版の下向きの縦溝をその前に建て込んだプレキャストコンクリート版の上向きの縦溝に嵌合させ、最後は同一方向の下向きの縦溝を有するプレキャストコンクリート版を最初と最後から手前のプレキャストコンクリート版の上向きの縦溝に嵌合させて型枠を形成し、該型枠の周囲を掘り起こした土砂で埋戻し、前記型枠内にコンクリートを打設して建物の基礎を構築するようにしたことを特徴とするPC版型枠材を用いた基礎の構築施工方法である。
請求項1の発明にあっては、矩形状をなすプレキャストコンクリート版の一端側に上方向の縦溝を設けると共に、他端側に下方向の縦溝を設けている。建物の基礎を構築するに際しては、隣位のプレキャストコンクリート版に設けられた上向きの縦溝と下向きの縦溝どうしを嵌合させるだけでよい。
この請求項1のPC版型枠材であれば、溶接作業が不要であるため、PC版建込業者のみでの型枠の建込みが可能であり、異なる業者間での連携不良に起因する事故の発生を防止することが可能である。また組付け作業自体の簡略化による建設作業員の負担軽減を図ることも可能である。
請求項2の発明にあっては、縦溝から端部までの間の領域において、上端面又は下端面から縦溝の溝底に至る途中までの部分を切除した切除部を設けている。この切除部分は、土圧等の対向手段として機能するものではなく、本来的に不要な部分である。切除することで、材料費の削減を図ることが可能である。
請求項3の発明にあっては、建物の基礎部分に地中梁が設けられる場合のものであり、基礎部分の鉄筋と地中梁の鉄筋とを一体的に組み上げ、またコンクリートの打設も基礎部分と地中梁とを同時に行うことが可能である。
請求項4の発明は、前記請求項1乃至3に記載のPC版型枠材を用いて実際に基礎部分の型枠を建込み、コンクリートを打設するまでの施工方法である。建物の基礎のベース面上に、両端側に同一方向の上向きの縦溝が形成されているプレキャストコンクリート版を設置し、次に上向きの縦溝と下向きの縦溝とが形成された別のプレキャストコンクリート版を準備し、これの下向きの縦溝を最初のプレキャストコンクリート版の上向き縦溝に嵌合させて隣位のプレキャストコンクリート版どうしを組合せて結合する。三番目に上向きの縦溝と下向きの縦溝とが形成されたプレキャストコンクリート版を準備し、その下向きの縦溝を二番目のプレキャストコンクリート版の上向きの縦溝に嵌合させる。最後に、両端側に同一方向の下向きの縦溝が形成されたプレキャストコンクリート版を準備し、その両端側の下向きの縦溝を、最初と三番目のプレキャストコンクリート版のそれぞれの上向きの縦溝に嵌合させて型枠を建て込んでいる。
そして、型枠の周囲を掘り起こした土砂で埋戻す。このときの土圧は、隣位のプレキャストコンクリート版へ伝達されて分散されると共に、対向するプレキャストコンクリート版から反対方向の土圧が作用し、相互に打ち消し合うので、プレキャストコンクリート版が土圧で倒壊したり、欠損するというようなことはない。
またプレキャストコンクリート版で建て込まれた基礎型枠内へ流し込まれるコンクリートの圧力は、各プレキャストコンクリート版に作用するが、各プレキャストコンクリート版の外周囲が埋め戻した土砂により充満されているので十分にバックアップされており、何ら問題はない。
しかも、プレキャストコンクリート版の建て込みと、掘り起こした土砂の埋戻しをほぼ同時に行うことができるので、掘り起こした土砂の仮置き時間を短縮することができる。またプレキャストコンクリート版の型枠材は、そのまま土中に埋め込まれるので、建込作業や脱型作業のための大きなスペースは不要であり、基礎部分の構築のための掘り起こす土砂の量を少なくすることができる。工期の短縮、作業負担の軽減を図ることが可能である。
更に、金属材料を用いてないので腐食の問題が起こることもない。 更にまた、コンクリート基礎部分の周囲にプレキャストコンクリート版が介在することになり、基礎部分のコンクリートの中性化や基礎鉄筋の腐食を防止する保護層としても機能し得るものである。
請求項5の発明にあっては、コンクリート基礎を五角柱体や六角柱体、その他の多角形柱体等に構築するようにしている。その場合に、縦溝は多角形の各辺どうしが成す角度と同じ角度の斜めに形成することが必要である。また最初は、同一方向の上向きの縦溝を有するプレキャストコンクリート版を使用し、最後は同一方向の下向きの縦溝を有するプレキャストコンクリート版を使用することが必要であり、途中の段階では上向きと下向きの縦溝が形成されたプレキャストコンクリート版を使用すればよい。その他の作用効果は、前記請求項4の場合と同じである。
本発明の一実施の形態に係るPC版型枠材を示すものであり、図(A)は同一方向に縦溝を設けた場合の斜視図、図(B)は上下方向の縦溝を設けた場合の斜視図である。
本発明の一実施の形態に係る一部切除タイプのPC版型枠材を示すものであり、図(A)は同一方向に縦溝を設けた場合の斜視図、図(B)は上下方向の縦溝を設けた場合の斜視図である。
本発明の一実施の形態に係るものであり、第一の建込工程を示す斜視図である。
本発明の一実施の形態に係るものであり、第二の建込工程を示す斜視図である。
本発明の一実施の形態に係るものであり、第三の建込工程を示す斜視図である。
本発明の一実施の形態に係るものであり、PC版型枠の建込が完了した状態の全体を示す斜視図である。
本発明の一実施の形態に係るものであり、PC版型枠の建込が完了した状態の基礎部分の縦断面である。
本発明の一実施の形態に係るものであり、PC版型枠の建込完了後に、コンクリートを打設し、柱型を形成し、鉄骨を建て込んだ状態を示す基礎部分の全体を示す縦断面図である。
従来のキーストンプレートを用いた基礎部分の施工方法を説明するための鋼製型枠の全体を示す斜視図である。
以下に、本発明の構成を図面に示す一実施の形態に基づいて説明すると次の通りである。図1の図(A)及び図(B)、図2の図(A)及び図(B)はプレキャストコンクリート版(PC版)で型枠材10,11,12,13を構成した場合のそれぞれ一例を示す斜視図である。これらのPC版型枠材10〜13は、建設する建物の大きさ等によって設計されるコンクリート基礎部分の大きさにもよるが、一般的には横幅が2.6m〜4m、高さが1.2m〜1.5m程度である。これは、コンクリート基礎の一辺の長さが2m〜3m、高さが1.2m〜1.5m程度に対応する場合のものである。前記PC型枠材10〜13は、内部に鉄筋が配筋されており、厚みは50mm〜150mm程度である。実験では、一辺の長さ2mで高さが1.2mの四角柱体の基礎を構築する場合、60mmでも十分であった。
図1の図(A)に示すPC版型枠材10は、矩形状のプレキャストコンクリート版14の両端側に同一方向(図面では上方向)の縦溝15,16を設けている。縦溝15,16の深さは、高さ寸法の1/2よりも若干大きめであればよい。また縦溝15,16の位置は、縦溝15,16どうしの間の寸法が、構築するコンクリート基礎の一辺の長さに相当する位置であればよく、左右の側端面から200mm〜300mm程度、内側へ入ったところが適当である。縦溝15,16の幅は、プレキャストコンクリート版の厚みよりも若干大きめのものであればよい。
図1の図(B)に示すPC版型枠材11は、左側端面寄りに上向きの縦溝15aを形成し、右側端面寄りに下向きの縦溝17を形成した場合のものである。その他の構成は、前記図(A)に示すPC版型枠材10と同じである。
図2の図(A)に示すPC版型枠材12は、図1の図(A)に示すPC版型枠材10の縦溝15,16からそれぞれ外側の範囲で且つプレキャストコンクリート版14の上端面から縦溝15,16の溝底へ向かうまでの途中の領域の一部を切除したものである。この切除した部分は、型枠材として特別な機能を持つ部分ではないので、当初から製作しないことで材料費削減に寄与させることとした。また切除することで、後述するPC版型枠材の組付け時に縦溝どうしの嵌合が却ってし易くなるという利点もある。
図2の図(B)に示すPC版型枠材13は、図1の図(B)に示すPC版型枠材11の縦溝15aからそれぞれ外側の範囲で且つプレキャストコンクリート版14の上端面から縦溝15aの溝底へ向かうまでの途中の領域の一部を切除すると共に、縦溝17からそれぞれ外側の範囲で且つプレキャストコンクリート版14の下端面から縦溝17の溝底へ向かうまでの途中の領域の一部を切除したものである。切除部の作用効果については、前記図2の図(A)に示すPC版型枠材12の場合と同じである。
次に、図3乃至図7を参照して、図2の図(A)及び図(B)に示すPC版型枠材12,13を用いて建物のコンクリート基礎を構築する場合の型枠の建込要領について説明する。先ず、図7に示すように、建物のコンクリート基礎を構築する領域の地盤18を掘削し、必要であれば杭19,19を打ち込む。そして、掘削した領域の底面に割栗石又は砕石20を敷き並べてランナー等の打撃器で締固め、その上に厚み50mm程度の捨コン21を流し込んでベース面22を形成する。
然る後に、図3に示すように、同一方向の縦溝15,16が形成された図2の図(A)で示すPC版型枠材10をベース面22の墨出しを行った所定位置に配置して準備し、その縦溝15,16が上を向くように立設する。この場合、作業員が手で把持してその姿勢を維持していてもよい。この状態からクレーン等で吊り上げた図2の図(B)で示すPC版型枠材13を準備し、その下向きの縦溝17を前記仮置きの状態で立設しているPC版型枠材10の縦溝16に嵌合させる。この状態では、二つのPC版型枠材10及び13は、平面視した場合にL字状を成し、自立することが可能となる。
次に、図4に示すように、別のPC版型枠材13をクレーンで吊り上げて準備し、その下向きの縦溝17を先に組み付けたPC版型枠材13の上向きの縦溝15aへ嵌合させる。これにより、三辺の組付けが完了する。
最後に、図5に示すように、同一方向に縦溝15,16が形成されたPC版型枠材12を、前記縦溝15,16が下を向くように吊り上げて準備し、その縦溝15を一番最初に立設したPC版型枠材12の縦溝15へ嵌合させると共に、他方の縦溝16を三番目に組み付けたPC版型枠材13の上向きの縦溝15aに嵌合させる。
以上により、図6及び図7に示すように、建物の柱部のコンクリート基礎部分の型枠の建込が完了する。
然る後は、図7で示す、各PC型枠材12,12,13,13の外周囲の空間Aへ掘り起こした土砂で埋戻しを行う。この時、埋め戻した土砂の土圧が各PC版型枠材に作用するが、土圧は、隣位のPC版型枠材へ伝達されて分散されると共に、対向するPC版型枠材から反対方向の土圧が作用し、相互に打ち消し合うので、これらのPC版型枠材が土圧で倒壊したり、位置ズレを起こすということはなく、また欠損するというようなこともない。
次に、図8に示すように、型枠内の空間Bへ予め組み込んでおいた鉄筋23をクレーン等で吊り上げて配置し、続いて位置決めプレート24等を介して鉄骨組み立て用のアンカーボルト25,25を配置する。
最後に、型枠内の空間Bへコンクリート26を打設すれば、コンクリート基礎の構築作業は完了する。なお、PC版型枠材12,12,13,13は土中に埋め込まれたままであり、脱型作業は不要である。またこれらのPC版型枠材は、コンクリート26及び鉄筋23等の保護層としても機能する。
コンクリート基礎の構築後は、柱型27のコンクリート土台を設け、この柱型27上にH型鋼等の鉄骨柱28のベースプレート29へアンカーボルト25,25を挿通させてナット30で締結し、鉄骨柱28を立設する。最後にコンクリート基礎26の上面側の空間Cを掘り起こした土砂で埋戻して地表面と同一高さになるようにすればよい。
ところで、以上の説明は、同一方向の縦溝を有するPC版型枠材12と、異なる方向の縦溝を有するPC版型枠材13をそれぞれ二個ずつ用いて建物の柱部のコンクリート基礎を構築する場合を説明したが、同一方向の縦溝を有するPC版型枠材12を四個用いて構築することも可能である。この場合は、上向きにした縦溝のPC版型枠材12を二個一対で対向配置し、これに下向きにした縦溝のPC版型枠材12を一つずつ組み付けていけばよい。
また前記説明は、コンクリート基礎26が矩形体をなす場合を説明したが五角柱体や六角柱体、その他の多角形柱体等へも適用することが可能である。その場合に、縦溝は多角形の各辺どうしが成す角度と同じ角度の斜めに形成することが必要である。また最初は、同一方向の上向きの縦溝を有するPC版型枠材を使用し、最後は同一方向の下向きの縦溝を有するPC版型枠材を使用することが必要であり、途中の段階では上向きと下向きの縦溝が形成されたPC版型枠材を使用すればよい。
また以上の説明は、コンクリート基礎26を構築する場合のみを説明したが、コンクリート基礎26とコンクリート基礎26との間を地中梁で連結する場合は、図1の図(A),図(B)及び図2の図(A),図(B)において鎖線で示す位置に、地中梁の型枠と連結するための凹部31を設ければよい。この場合、地中梁の型枠を建て込んだ後に、PC版型枠材で建て込んだ柱部構築用の基礎部分と、地中梁部分とを同時にコンクリートで打設するようにすればよい。
ところで、本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、適宜の変更が可能である。例えば、地上で多角形状の柱体を構築する場合も、このPC版型枠材を使用して構築することが可能である。
10,11,12,13…PC版型枠材
14…プレキャストコンクリート版
15,15a,16,17…縦溝
18…地盤
22…基礎のベース面
31…地中梁連結用の凹部
A…PC版型枠材の外周側の空間
B…PC版型枠材の内部空間
本発明は、建物の独立基礎部分等を構築するに際し、プレキャストコンクリート版(PC版)の捨て型枠材を新たに開発し、このPC版捨て型枠材を用いて短期間で且つ他業者との連携をすることなく、PC版建込業者のみで建物基礎の構築を行うことのできる施工方法に関するものである。
建物の柱の基礎を構築する場合において、従来から一般に行われている施工方法は、先ず、基礎部分に位置する地盤を掘り起し、建物の大きさや地盤の土質等に応じて必要であれば杭を打ち込んでいる。そして、掘り起こした溝の底面地盤に割栗石又は砕石を敷き並べ、ランナー等の打撃器で締固めてその上からコンクリートを10cm程度の厚みになるように打設してベース面を形成している。
その後、このベース面の上にベニヤ合板及び桟木で形成した木製型枠材又は鋼鉄製の型枠材を用いて枠組み形成し、内部に鉄筋を組み込み、型枠内にコンクリートを打設して基礎を構築している。コンクリート打設後は、前記型枠を脱型し、その後コンクリート基礎の周囲を掘り起こした土砂で埋戻しを行っていた。
なお、柱の基礎部分どうしの間は、地中梁で連結されている。
ところが、このような従来一般に行われている施工方法では、型枠を組立ててコンクリートを打設した後に、型枠を脱型して取り除くことが必要であり、型枠の組立作業及び脱型作業のためのスペースが必要となり、掘削する領域が大きくなって掘り起こした土砂の排出量が多くなるという欠点があった。また掘り起こした土砂は、一旦別の場所に仮置きしておく必要があり、そのスペースが必要であった。更に、型枠設置後にコンクリートを打設し、脱型後に埋め戻すという施工は工程数が多くなり、工期が長引くという欠点があった。
そのため、近年は、特許文献1又は2に記載されているように、型枠を設置した後にその周囲を埋め戻し、コンクリートを打設して型枠はそのまま土中に埋めたままにするという捨て型枠工法が開発されている。
特許文献1の技術は、基礎面よりT字状に立設する布基礎をプレキャストコンクリート版(PC版)で構築する捨て型枠工法を示すものである。PC版の両端側に切欠きを設けてこの切欠き端面に、埋込みナットを植設し、別途製作した専用のL型金具と連結用のボルトを用いて隣位のPC版どうしを連結固定するようにしている。連結後は、PC版の両側面側の溝を掘り起こした土砂で埋戻し、布基礎の上端面に木造の建物を構築するようにしている。
なお、このPC版による布基礎は、PC版自体が布基礎を構成するのでこれを型枠材として用い、コンクリートを打設するというようなことは行っていなかった。
特許文献2の技術は、キーストンプレート(溶融亜鉛メッキ銅板の鋼製型枠)を用いて地中梁を構築する場合の技術である。先ず、地中梁の幅と同程度の幅の掘削溝を掘り起こしている。そして、この掘削溝の底面側に割栗石又は砕石を敷き並べて突き固め、厚みが5〜10cm程度の捨コンを打設している。次に、掘削溝内にその両側面それぞれに沿って互いに間隔を隔ててほぼ垂直に支持用鉄筋棒を立設し、これらの支持用鉄筋棒に型枠材としてのキーストンプレート等の鋼板を支持させて一対の対向する金属製型枠を設けている。然る後に、地中梁どうしで囲まれた領域の上面側にスラブ鉄筋を配筋し、また地中梁内には地中梁鉄筋を配筋してこれらのスラブ鉄筋と地中梁鉄筋とを一体的に組み上げ、スラブから前記鋼板型枠間に亘ってコンクリートを一連に打設している。
また従来においては、キーストンプレートを用いて柱部基礎を構築する方法として、図9に示す技術が公知である。この従来技術は、掘削した溝底面の捨コン上面1の所定位置にL型アングル材2又はランナー部材を固定し、その外周面側に連続した断面矩形状波型のキーストンプレート3を立設し、上端面側にL型アングル材4を溶接固定している。そして、隣位のキーストンプレート3どうしが当接するコーナー部にはL型ジョイント5を縦方向に溶接している。更に、全体の剛性をアップさせるために、コーナー部の上端面に補強用の連結材(斜交い)6を溶接している。剛性をアップさせないと、埋戻しの際の周囲の土圧に耐えられないからである。
尚、一組の対向するキーストンプレート3,3の上部中央部に設けられた開口7は、地中梁と連結するためのものである。
特開平8−296239号公報
特許第2629482号公報
前記特許文献1に示す技術では、PC版捨て型枠を土中に埋められたまま放置するので、脱型作業が不要となり、工期の短縮は可能であるが、これを建物柱部の基礎部分を構築するものとしてそのままでは利用できないという問題があった。
建物柱部の基礎は、建物の大きさ等によるが、通常は矩形体の一辺の長さが2m〜3mで、高さが1.2m〜1.5mであり、PC版型枠材で枠組み形成した後に、その周囲の掘削溝を掘り起こした土砂で埋め戻した場合に、PC版型枠材にかなりの大きな土圧が作用することになる。そのため、PC版型枠材どうしを専用のL型金具及びボルトを用いて連結すると、その連結部にPC版型枠材の全体に作用する土圧の応力が集中し、L型金具及びボルト部分のPC版型枠材が破損してPC版型枠材がコンクリートを打設しなければならない基礎部分の空間領域である内側へ倒れ込み、型枠を組み上げることができなかった。
またこの特許文献1の施工方法では、専用のL型金具を製造し、準備しなければならないこと、PC版型枠材に特定形状の切欠きを形成し、この切欠き部分にボルト締結用の埋込ナットを植設しなければならないこと、PC版型枠材どうしの組付け時に金具取付及びボルト締結等の余分の工程が必要で有り、全体として加工及び組付け工数が増加し、コストアップの原因にもなっていた。
また特許文献2等に示す技術では、掘削溝の両側面に沿った部分に、所定間隔ごとに鉄筋棒を土中へ差し込み、この鉄筋棒に凭れ掛けさせてキーストンプレートを配置し、地中梁コンクリートを流し込むための捨て型枠としている。
ところが、このような技術を、通常であっても矩形体の一辺の長さが2m〜3mで、高さが1.2m〜1.5mもある大容積の柱部基礎の型枠材として使用することは、大きな土圧が作用するので採用することができなかった。
そのため、キーストンプレートを用いる場合は、図9の従来技術に示すように、キーストンプレート3の上下端面をL型アングル材又は断面コ字状のランナー部材2,4で溶接することが必要である。またキーストンプレート3どうしが突合せで当接するコーナー部は、L型ジョイント5を溶接し、更に上端面側のコーナー部には連結材(斜交い)6を溶接して、全体の剛性をアップしなければならなかった。
従って、この図9に示す従来技術では、建設作業員の他に溶接作業員が必要で、両者の連携作業が必須であり、建設作業員が単独で型枠の組付けを行うことができないという問題と、連携の不備に基づく事故が発生するという問題があった。それに加えて、キーストンプレート3の型枠材の他に、L型アングル又はランナー部材2,4やL型ジョイント5、連結材(斜交い)6等の付属部品が必要であり、その製作・管理に手間とコストを要し、作業が煩雑になるという問題もあった。更に、金属製の型枠材であり、経年変化で腐食するという問題もあった。
そこで、本発明は、従来の前記問題点に鑑みてこれを改良除去したものであって、プレキャストコンクリート版(PC版)に縦溝を設けて隣位のプレキャストコンクリート版の縦溝どうしを嵌合させることで、土圧にも十分に耐え得る柱部基礎構築用のPC版型枠材と、これを用いた施工方法を提供せんとするものである。
前記課題を解決するために本発明が採用した請求項1の手段は、矩形状をなすプレキャストコンクリート版の一端側に上方向の縦溝を設けると共に、他端側に下方向の縦溝を設けて成り、前記上下方向の各縦溝は隣位のプレキャストコンクリート版に設けられた上下方向の各縦溝と嵌合し得るものであることを特徴とするPC版型枠材である。
前記課題を解決するために本発明が採用した請求項2の手段は、縦溝から端部までの間の領域において、溝底からの立ち上がり高さ寸法が縦溝全体の寸法よりも短くなる部分を設けた前記請求項1に記載のPC版型枠材である。
前記課題を解決するために本発明が採用した請求項3の手段は、プレキャストコンクリート版の上端面の中央部に、下端側の途中へ向けて地中梁用型枠との連結用凹部が形成されている前記請求項1又は2に記載のPC版型枠材である。
前記課題を解決するために本発明が採用した請求項4の手段は、建物の基礎を構築する位置の地盤を掘り起こしてその底面に捨コン等でベース面を設置し、最初に両端側に同一方向の上向きの縦溝が形成されているプレキャストコンクリート版を前記ベース面上に設置し、二番目に上向きの縦溝と下向きの縦溝とが形成されたプレキャストコンクリート版を準備して最初のプレキャストコンクリート版の上向きの縦溝に、当該二番目のプレキャストコンクリート版の下向きの縦溝を嵌合させ、三番目に上向きの縦溝と下向きの縦溝とが形成されたプレキャストコンクリート版を準備して二番目のプレキャストコンクリート版の上向きの縦溝に、三番目のプレキャストコンクリート版の下向きの縦溝を嵌合させ、四番目に同一方向の下向きの縦溝が形成されたプレキャストコンクリート版を準備して三番目と最初のプレキャストコンクリート版のそれぞれの上向きの縦溝に四番目のプレキャストコンクリート版の下向きの縦溝を嵌合させて型枠を形成し、該型枠の周囲を掘り起こした土砂で埋戻し、前記型枠内にコンクリートを打設して建物の基礎を構築するようにしたことを特徴とするPC版型枠材を用いた基礎の構築施工方法である。
前記課題を解決するために本発明が採用した請求項5の手段は、建物の基礎を構築する位置の地盤を掘り起こしてその底面に捨コン等でベース面を設置し、該ベース面上に、五角柱体や六角柱体、その他の多角柱体のコンクリート基礎を構築する場合において、両端側に同一方向の上向きの縦溝が形成されている矩形状のプレキャストコンクリート版と、両端側に上向きの縦溝と下向きの縦溝とが形成された矩形状のプレキャストコンクリート版と、両端側に同一方向の下向きの縦溝が形成されている矩形状のプレキャストコンクリート版とを準備し、これらのプレキャストコンクリート版の各縦溝を多角形の各辺どうしが成す角度と同じ角度の斜めに形成し、建込の最初は両端側に同一方向の上向きの縦溝を有するプレキャストコンクリート版を前記ベース面上へ立設し、二番目から最後の手前までは上向きと下向きの縦溝が形成されたプレキャストコンクリート版の下向きの縦溝をその前に建て込んだプレキャストコンクリート版の上向きの縦溝に嵌合させ、最後は同一方向の下向きの縦溝を有するプレキャストコンクリート版を最初と最後から手前のプレキャストコンクリート版の上向きの縦溝に嵌合させて型枠を形成し、該型枠の周囲を掘り起こした土砂で埋戻し、前記型枠内にコンクリートを打設して建物の基礎を構築するようにしたことを特徴とするPC版型枠材を用いた基礎の構築施工方法である。
請求項1の発明にあっては、矩形状をなすプレキャストコンクリート版の一端側に上方向の縦溝を設けると共に、他端側に下方向の縦溝を設けている。建物の基礎を構築するに際しては、隣位のプレキャストコンクリート版に設けられた上向きの縦溝と下向きの縦溝どうしを嵌合させるだけでよい。
この請求項1のPC版型枠材であれば、溶接作業が不要であるため、PC版建込業者のみでの型枠の建込みが可能であり、異なる業者間での連携不良に起因する事故の発生を防止することが可能である。また組付け作業自体の簡略化による建設作業員の負担軽減を図ることも可能である。
請求項2の発明にあっては、縦溝から端部までの間の領域において、溝底からの立ち上がり高さ寸法が縦溝全体の寸法よりも短くなる部分を設けている。この寸法が短くなった部分は、土圧等の対向手段として機能するものではなく、本来的に不要な部分である。短くすることで、材料費の削減を図ることが可能である。
請求項3の発明にあっては、建物の基礎部分に地中梁が設けられる場合のものであり、基礎部分の鉄筋と地中梁の鉄筋とを一体的に組み上げ、またコンクリートの打設も基礎部分と地中梁とを同時に行うことが可能である。
請求項4の発明は、前記請求項1乃至3に記載のPC版型枠材を用いて実際に基礎部分の型枠を建込み、コンクリートを打設するまでの施工方法である。建物の基礎のベース面上に、両端側に同一方向の上向きの縦溝が形成されているプレキャストコンクリート版を設置し、次に上向きの縦溝と下向きの縦溝とが形成された別のプレキャストコンクリート版を準備し、これの下向きの縦溝を最初のプレキャストコンクリート版の上向き縦溝に嵌合させて隣位のプレキャストコンクリート版どうしを組合せて結合する。三番目に上向きの縦溝と下向きの縦溝とが形成されたプレキャストコンクリート版を準備し、その下向きの縦溝を二番目のプレキャストコンクリート版の上向きの縦溝に嵌合させる。最後に、両端側に同一方向の下向きの縦溝が形成されたプレキャストコンクリート版を準備し、その両端側の下向きの縦溝を、最初と三番目のプレキャストコンクリート版のそれぞれの上向きの縦溝に嵌合させて型枠を建て込んでいる。
そして、型枠の周囲を掘り起こした土砂で埋戻す。このときの土圧は、隣位のプレキャストコンクリート版へ伝達されて分散されると共に、対向するプレキャストコンクリート版から反対方向の土圧が作用し、相互に打ち消し合うので、プレキャストコンクリート版が土圧で倒壊したり、欠損するというようなことはない。
またプレキャストコンクリート版で建て込まれた基礎型枠内へ流し込まれるコンクリートの圧力は、各プレキャストコンクリート版に作用するが、各プレキャストコンクリート版の外周囲が埋め戻した土砂により充満されているので十分にバックアップされており、何ら問題はない。
しかも、プレキャストコンクリート版の建て込みと、掘り起こした土砂の埋戻しをほぼ同時に行うことができるので、掘り起こした土砂の仮置き時間を短縮することができる。またプレキャストコンクリート版の型枠材は、そのまま土中に埋め込まれるので、建込作業や脱型作業のための大きなスペースは不要であり、基礎部分の構築のための掘り起こす土砂の量を少なくすることができる。工期の短縮、作業負担の軽減を図ることが可能である。
更に、金属材料を用いてないので腐食の問題が起こることもない。 更にまた、コンクリート基礎部分の周囲にプレキャストコンクリート版が介在することになり、基礎部分のコンクリートの中性化や基礎鉄筋の腐食を防止する保護層としても機能し得るものである。
請求項5の発明にあっては、コンクリート基礎を五角柱体や六角柱体、その他の多角形柱体等に構築するようにしている。その場合に、縦溝は多角形の各辺どうしが成す角度と同じ角度の斜めに形成することが必要である。また最初は、同一方向の上向きの縦溝を有するプレキャストコンクリート版を使用し、最後は同一方向の下向きの縦溝を有するプレキャストコンクリート版を使用することが必要であり、途中の段階では上向きと下向きの縦溝が形成されたプレキャストコンクリート版を使用すればよい。その他の作用効果は、前記請求項4の場合と同じである。
本発明の一実施の形態に係るPC版型枠材を示すものであり、図(A)は同一方向に縦溝を設けた場合の斜視図、図(B)は上下方向の縦溝を設けた場合の斜視図である。
本発明の一実施の形態に係る一部切除タイプのPC版型枠材を示すものであり、図(A)は同一方向に縦溝を設けた場合の斜視図、図(B)は上下方向の縦溝を設けた場合の斜視図である。
本発明の一実施の形態に係るものであり、第一の建込工程を示す斜視図である。
本発明の一実施の形態に係るものであり、第二の建込工程を示す斜視図である。
本発明の一実施の形態に係るものであり、第三の建込工程を示す斜視図である。
本発明の一実施の形態に係るものであり、PC版型枠の建込が完了した状態の全体を示す斜視図である。
本発明の一実施の形態に係るものであり、PC版型枠の建込が完了した状態の基礎部分の縦断面である。
本発明の一実施の形態に係るものであり、PC版型枠の建込完了後に、コンクリートを打設し、柱型を形成し、鉄骨を建て込んだ状態を示す基礎部分の全体を示す縦断面図である。
従来のキーストンプレートを用いた基礎部分の施工方法を説明するための鋼製型枠の全体を示す斜視図である。
以下に、本発明の構成を図面に示す一実施の形態に基づいて説明すると次の通りである。図1の図(A)及び図(B)、図2の図(A)及び図(B)はプレキャストコンクリート版(PC版)で型枠材10,11,12,13を構成した場合のそれぞれ一例を示す斜視図である。これらのPC版型枠材10〜13は、建設する建物の大きさ等によって設計されるコンクリート基礎部分の大きさにもよるが、一般的には横幅が2.6m〜4m、高さが1.2m〜1.5m程度である。これは、コンクリート基礎の一辺の長さが2m〜3m、高さが1.2m〜1.5m程度に対応する場合のものである。前記PC型枠材10〜13は、内部に鉄筋が配筋されており、厚みは50mm〜150mm程度である。実験では、一辺の長さ2mで高さが1.2mの四角柱体の基礎を構築する場合、60mmでも十分であった。
図1の図(A)に示すPC版型枠材10は、矩形状のプレキャストコンクリート版14の両端側に同一方向(図面では上方向)の縦溝15,16を設けている。縦溝15,16の深さは、高さ寸法の1/2よりも若干大きめであればよい。また縦溝15,16の位置は、縦溝15,16どうしの間の寸法が、構築するコンクリート基礎の一辺の長さに相当する位置であればよく、左右の側端面から200mm〜300mm程度、内側へ入ったところが適当である。縦溝15,16の幅は、プレキャストコンクリート版の厚みよりも若干大きめのものであればよい。
図1の図(B)に示すPC版型枠材11は、左側端面寄りに上向きの縦溝15aを形成し、右側端面寄りに下向きの縦溝17を形成した場合のものである。その他の構成は、前記図(A)に示すPC版型枠材10と同じである。
図2の図(A)に示すPC版型枠材12は、図1の図(A)に示すPC版型枠材10の縦溝15,16からそれぞれ外側の範囲で且つプレキャストコンクリート版14の上端面から縦溝15,16の溝底へ向かうまでの途中の領域の一部を切除したものである。この切除した部分は、型枠材として特別な機能を持つ部分ではないので、当初から製作しないことで材料費削減に寄与させることとした。また切除することで、後述するPC版型枠材の組付け時に縦溝どうしの嵌合が却ってし易くなるという利点もある。
図2の図(B)に示すPC版型枠材13は、図1の図(B)に示すPC版型枠材11の縦溝15aからそれぞれ外側の範囲で且つプレキャストコンクリート版14の上端面から縦溝15aの溝底へ向かうまでの途中の領域の一部を切除すると共に、縦溝17からそれぞれ外側の範囲で且つプレキャストコンクリート版14の下端面から縦溝17の溝底へ向かうまでの途中の領域の一部を切除したものである。切除部の作用効果については、前記図2の図(A)に示すPC版型枠材12の場合と同じである。
次に、図3乃至図7を参照して、図2の図(A)及び図(B)に示すPC版型枠材12,13を用いて建物のコンクリート基礎を構築する場合の型枠の建込要領について説明する。先ず、図7に示すように、建物のコンクリート基礎を構築する領域の地盤18を掘削し、必要であれば杭19,19を打ち込む。そして、掘削した領域の底面に割栗石又は砕石20を敷き並べてランナー等の打撃器で締固め、その上に厚み50mm程度の捨コン21を流し込んでベース面22を形成する。
然る後に、図3に示すように、同一方向の縦溝15,16が形成された図2の図(A)で示すPC版型枠材10をベース面22の墨出しを行った所定位置に配置して準備し、その縦溝15,16が上を向くように立設する。この場合、作業員が手で把持してその姿勢を維持していてもよい。この状態からクレーン等で吊り上げた図2の図(B)で示すPC版型枠材13を準備し、その下向きの縦溝17を前記仮置きの状態で立設しているPC版型枠材10の縦溝16に嵌合させる。この状態では、二つのPC版型枠材10及び13は、平面視した場合にL字状を成し、自立することが可能となる。
次に、図4に示すように、別のPC版型枠材13をクレーンで吊り上げて準備し、その下向きの縦溝17を先に組み付けたPC版型枠材13の上向きの縦溝15aへ嵌合させる。これにより、三辺の組付けが完了する。
最後に、図5に示すように、同一方向に縦溝15,16が形成されたPC版型枠材12を、前記縦溝15,16が下を向くように吊り上げて準備し、その縦溝15を一番最初に立設したPC版型枠材12の縦溝15へ嵌合させると共に、他方の縦溝16を三番目に組み付けたPC版型枠材13の上向きの縦溝15aに嵌合させる。
以上により、図6及び図7に示すように、建物の柱部のコンクリート基礎部分の型枠の建込が完了する。
然る後は、図7で示す、各PC型枠材12,12,13,13の外周囲の空間Aへ掘り起こした土砂で埋戻しを行う。この時、埋め戻した土砂の土圧が各PC版型枠材に作用するが、土圧は、隣位のPC版型枠材へ伝達されて分散されると共に、対向するPC版型枠材から反対方向の土圧が作用し、相互に打ち消し合うので、これらのPC版型枠材が土圧で倒壊したり、位置ズレを起こすということはなく、また欠損するというようなこともない。
次に、図8に示すように、型枠内の空間Bへ予め組み込んでおいた鉄筋23をクレーン等で吊り上げて配置し、続いて位置決めプレート24等を介して鉄骨組み立て用のアンカーボルト25,25を配置する。
最後に、型枠内の空間Bへコンクリート26を打設すれば、コンクリート基礎の構築作業は完了する。なお、PC版型枠材12,12,13,13は土中に埋め込まれたままであり、脱型作業は不要である。またこれらのPC版型枠材は、コンクリート26及び鉄筋23等の保護層としても機能する。
コンクリート基礎の構築後は、柱型27のコンクリート土台を設け、この柱型27上にH型鋼等の鉄骨柱28のベースプレート29へアンカーボルト25,25を挿通させてナット30で締結し、鉄骨柱28を立設する。最後にコンクリート基礎26の上面側の空間Cを掘り起こした土砂で埋戻して地表面と同一高さになるようにすればよい。
ところで、以上の説明は、同一方向の縦溝を有するPC版型枠材12と、異なる方向の縦溝を有するPC版型枠材13をそれぞれ二個ずつ用いて建物の柱部のコンクリート基礎を構築する場合を説明したが、同一方向の縦溝を有するPC版型枠材12を四個用いて構築することも可能である。この場合は、上向きにした縦溝のPC版型枠材12を二個一対で対向配置し、これに下向きにした縦溝のPC版型枠材12を一つずつ組み付けていけばよい。
また前記説明は、コンクリート基礎26が矩形体をなす場合を説明したが五角柱体や六角柱体、その他の多角形柱体等へも適用することが可能である。その場合に、縦溝は多角形の各辺どうしが成す角度と同じ角度の斜めに形成することが必要である。また最初は、同一方向の上向きの縦溝を有するPC版型枠材を使用し、最後は同一方向の下向きの縦溝を有するPC版型枠材を使用することが必要であり、途中の段階では上向きと下向きの縦溝が形成されたPC版型枠材を使用すればよい。
また以上の説明は、コンクリート基礎26を構築する場合のみを説明したが、コンクリート基礎26とコンクリート基礎26との間を地中梁で連結する場合は、図1の図(A),図(B)及び図2の図(A),図(B)において鎖線で示す位置に、地中梁の型枠と連結するための凹部31を設ければよい。この場合、地中梁の型枠を建て込んだ後に、PC版型枠材で建て込んだ柱部構築用の基礎部分と、地中梁部分とを同時にコンクリートで打設するようにすればよい。
ところで、本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、適宜の変更が可能である。例えば、地上で多角形状の柱体を構築する場合も、このPC版型枠材を使用して構築することが可能である。
10,11,12,13…PC版型枠材
14…プレキャストコンクリート版
15,15a,16,17…縦溝
18…地盤
22…基礎のベース面
31…地中梁連結用の凹部
A…PC版型枠材の外周側の空間
B…PC版型枠材の内部空間