JP2017002352A - 二相ステンレス鋼材および二相ステンレス鋼管 - Google Patents
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まず、本発明に係る二相ステンレス鋼材の実施形態について説明する。二相ステンレス鋼材は、フェライト相とオーステナイト相とからなる二相ステンレス鋼材である。二相ステンレス鋼材の成分組成は、所定量のC、Si、Mn、P、S、Al、Ni、Cr、Mo、N、Vを含有すると共に、Ta、REM、Zrの少なくともいずれか一種を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなるように構成されている。更に、Taの含有量を[Ta]、Mnの含有量を[Mn]とした際に、[Ta]/[Mn]が所定の範囲内に制御されるように構成されている。更には、二相ステンレス鋼材は、所定量のCo、Cuの少なくとも1種を含有することが好ましく、また、所定量のB、Mg、Caの少なくとも1種を更に含有することが好ましい。以下、本発明の二相ステンレス鋼材について、鋼材組織、成分組成、製造方法の順に説明する。
本発明の二相ステンレス鋼材は、フェライト相とオーステナイト相の二相からなるものである。フェライト相とオーステナイト相からなる二相ステンレス鋼材においては、CrやMoなどのフェライト相安定化元素はフェライト相に濃縮し、NiやNなどのオーステナイト相安定化元素はオーステナイト相に濃縮する傾向にある。このとき、フェライト相のオーステナイト相に対する面積率が30%未満または70%を超える場合には、Cr、Mo、Ni、Nなどの耐食性に寄与する元素のフェライト相とオーステナイト相における濃度差異が大きくなりすぎて、フェライト相とオーステナイト相のいずれか耐食性に劣る側が選択腐食されて耐食性が劣化する傾向が大きくなる。従って、フェライト相とオーステナイト相との比率も最適化することが推奨され、フェライト相のオーステナイト相に対する面積率は、耐食性の観点から30〜70%が好ましい。面積率のより好ましい下限は40%、好ましい上限は60%である。尚、フェライト相とオーステナイト相の面積率は、フェライト相安定化元素とオーステナイト相安定化元素の含有量を調整することによって適正化することが可能である。
次に、本発明の二相ステンレス鋼材の成分組成の数値範囲とその限定理由について詳細に説明する。尚、成分組成の表示単位である%は全て質量%を意味する。
Cは、鋼材中でCr等との炭化物を形成して耐食性を低下させる有害な元素である。そのため、Cの含有量を0.05%以下とする。尚、Cの含有量はできる限り少ない方が良いため、好ましくは0.04%以下、より好ましくは0.03%以下とする。また、Cは鋼材中に含有されていなくても良く、すなわち、0%であっても良い。
Siは、脱酸とフェライト相の安定化のために必要な元素である。このような効果を得るために、Siの含有量を0.1%以上、好ましくは0.15%以上、より好ましくは0.2%以上とする。しかし、過剰にSiを含有させると加工性が劣化することから、Siの含有量は2.0%以下、好ましくは1.5%以下、より好ましくは1.0%以下とする。
Mnは、強度確保およびオーステナイト相の安定化のために必要な元素である。Mnの含有量が不足している場合、溶接熱影響部におけるオーステナイト相量が不足し、フェライト相中に固溶できないNがCr2Nとして析出し、耐食性を低下させる。従って、Mnの含有量を0.1%以上、好ましくは0.15%以上、より好ましくは0.2%以上とする。しかし、過剰にMnを含有させると粗大なMnSの形成を促進し、かつ、Mn、Cr、O、Sの複合介在物の形成を促進させ、Ta含有酸硫化物の形成を抑制し、母材および溶接熱影響部の耐食性、冷間加工性が劣化することから、Mnの含有量は2.0%以下、好ましくは1.7%以下、より好ましくは1.5%以下とする。
Pは、不純物として不可避的に混入し、耐食性に有害な元素であり、溶接性や加工性も劣化させる元素である。そのため、Pの含有量を0.05%以下とする。また、Pの含有量は、できる限り少ない方が良く、好ましくは0.04%以下、より好ましくは0.03%以下である。尚、Pは鋼材中に含有されていなくても良く可能であれば0%であっても良いと考えられるが、Pは前記したように不可避的に混入する元素でもある。また、Pの含有量の過度の低減は、製造コストの上昇をもたらすので、Pの含有量の実操業上の下限は0.01%程度である。
Sは、Pと同様に不純物として不可避的に混入し、Mn等と結合してMnSなどの硫化物系介在物を形成して、耐食性や熱間加工性を劣化させる元素である。そして、Sを過剰に含有させると、酸硫化物系複合介在物へのTa添加による改質が不十分となり、耐食性が低下する。更に、熱間加工性も低化する。そのため、Sの含有量を0.004%以下、好ましくは0.003%以下、より好ましくは0.001%以下とする。尚、Sは背景技術に記載したように、その含有量が低ければ低いほど好ましく鋼材中に含有されていなくても良く、可能であれば0%であっても良いと考えられるが、Sは前記したように不可避的に混入する元素でもある。従って、Sの含有量の実操業上の下限は0.0004%程度である。
Alは、脱酸元素であり、溶製時のOの含有量およびSの含有量の低減に必要な元素である。しかし、過剰にAlを含有させると粗大な酸化物系介在物を生成させて、耐孔食性に悪影響を及ぼすことから、Alの含有量を0.05%以下とする。好ましくは0.04%以下、より好ましくは0.03%以下である。尚、本発明ではAlの含有量の下限値は特に限定しないが、好ましい下限は0.001%、より好ましい下限は0.003%、更に好ましい下限は0.005%である。
Niは、耐食性向上に必要な元素であり、特に、塩化物環境における局部腐食抑制に効果が大きい。また、Niは、低温靱性を向上させるのにも有効であり、更にオーステナイト相を安定化させるためにも必要な元素である。Niの含有量が不足している場合、溶接熱影響部で十分な量のオーステナイト相が析出しないため、フェライト相中に固溶できないNがCr2Nとして析出し、耐食性を低下させる。従って、Niの含有量を2.0%以上、好ましくは2.5%以上、より好ましくは3.0%以上とする。しかし、過剰なNiの添加はコストの上昇を招くため、Niの含有量は6.0%以下、好ましくは5.0%以下、より好ましくは4.0%以下とする。
Crは、不働態皮膜の主要成分であり、ステンレス鋼材の耐食性発現の基本元素である。また、Crは、フェライト相を安定化させる元素である。そのため、フェライトとオーステナイトの二相組織を維持して、耐食性、強度を両立させるためには、Crの含有量を19.0%以上、好ましくは20.0%以上、より好ましくは21.0%以上とする。Crの含有量が下限値未満であると均質な不働態皮膜を形成できず、母材および溶接熱影響部の耐食性が大きく低下する。しかし、過剰にCrを含有させると、溶接熱影響部でのフェライト相量が増加し、冷却時にフェライト相に残ったNがCr2Nとして析出し、耐食性を低下させる。従って、Crの含有量は、25.0%以下、好ましくは24.5%以下、より好ましくは24.0%以下とする。
Moは、溶解時にモリブデン酸を生成して、インヒビター作用により耐局部腐食性を向上させる効果を発揮し、耐食性を飛躍的に向上させる元素である。また、Moは、フェライト相を安定化させる元素であり、鋼材の耐孔食性・耐割れ性を改善させる効果がある。一方で、非常に高コストかつ価格安定性に乏しい元素でもある。このことから、本発明においては、Moの含有量は、1.0%以下、好ましくは、0.8%以下、より好ましくは0.6%以下とする。尚、本発明ではMoの含有量の下限値は特に限定しないが、好ましい下限は0.1%、より好ましい下限は0.2%、より好ましい下限は0.25%である。
Nは、強力なオーステナイト相を安定化させる元素であり、σ相の生成感受性を増加させずに耐食性を向上させる効果がある。更に、Nは、鋼の高強度化にも有効な元素である。Nの含有量が少なすぎる場合は、溶接熱影響部で十分な量のオーステナイト相が析出しないため、フェライト相中に固溶できないNがCr2Nとして析出し、耐食性を低下させる。従って、Nの含有量を、0.01%以上、好ましくは0.03%以上、より好ましくは0.05%以上とする。しかし、過剰にNを含有させると、オーステナイト相に拡散しきれなかったNがフェライト相中にCr2Nとして析出し、靭性や耐食性を低下させる。また、熱間加工性を劣化させ、鍛造・圧延時に耳割れや表面欠陥を生じさせる。そのため、Nの含有量の上限を、0.20%以下、好ましくは0.19%以下、より好ましくは0.17%以下とする。
Vは不純物元素であるが、極微量でも含有すると二相ステンレス鋼の特性に悪影響を及ぼす。また、VはNと結合しやすく、固溶N量を低下させるため、耐食性を低下させる。加えて、強いフェライト形成元素として作用する元素である。介在物制御のためにオーステナイト安定化元素であるMnの量を制限している本発明では、Vを添加するとα/γ相比率のバランスが崩れ、σ相の析出が促進され、耐食性および靭性が低下する。従って、出来る限り含有させないことが好ましく、0%であることが最も好ましいが、許容できるVの含有量の上限は0.01%である。
Taは、耐食性に悪影響を及ぼすMnSなどの硫化物系介在物を、Taを含有する酸硫化物系複合介在物に改質することで、耐食性を向上させる元素である。また、Taは、Oと結合することで、Cr系酸化物の生成を抑制する元素であり、鋼材の実質的なCr濃度向上に寄与する効果がある。このような効果を得るためには、Taの含有量を、0.01%以上、好ましくは0.02%以上、より好ましくは0.04%以上とする。しかし、Taは非常に高価な元素であることに加え、過剰にTaを含有させると、鋼中のNと結合することで窒化物として析出してしまい、靱性、熱間加工性およびNの有効濃度を低減させてしまう。そのため、耐食性が低下する。また、Taで改質された酸硫化物系複合介在物が多数析出してしまい、熱間加工性を低下させる。そのため、Ta含有量は、0.30%以下、好ましくは0.25%以下、より好ましくは0.20%以下とする。
REMは、Taと同様に、耐食性に悪影響を及ぼすMnSなどの硫化物系介在物を、REMを含有する酸硫化物系複合介在物に改質することで、耐食性を向上させる元素であるため、Taに代えて、REMを用いても良い。このような効果を得るためには、REMの含有量の下限を、0.0005%以上、好ましくは0.001%以上、より好ましくは0.002%以上とする。しかし、過剰にREMを含有させると粒界にREMが偏析して熱間加工性が乏しくなることから、REMの含有量の上限を0.07%以下、好ましくは0.06%以下、より好ましくは0.05%以下とする。尚、本発明において、REMとは、ランタノイド元素、すなわちLaからLuまでの15元素およびScとYを含む意味である。これらの元素のなかでも、La、CeおよびYよりなる群から選ばれる少なくとも一種の元素を含有することが好ましく、LaまたはCeの少なくとも一種の元素を含有することがより好ましい。
Zrは、強力な脱酸剤として作用する元素であり、耐食性に悪影響を及ぼすMnSなどの硫化物系介在物の核となるZrを含む酸化物や窒化物を均一に分散することで耐食性を向上する効果を有している。また、Zrの酸化物や窒化物は溶接熱影響部でのフェライト結晶粒のピン止めや、オーステナイト相の形成核として働き、溶接熱影響部の組織を微細化することができる。溶接熱影響部の組織を微細化することで、溶接によってCrやMoの析出物などの形成を抑制し、耐食性が低下することを防ぐことができる。このような効果を得るためには、Zrの含有量を0.01%以上、好ましくは0.015%以上、より好ましくは0.02%以上とする。しかしながら、過剰な添加により粗大なZr窒化物を多量に形成し、熱間加工性を低下させる。そのため、Zr含有量の上限は0.10%以下、好ましくは0.07%以下、より好ましくは0.05%以下とする。
上記の通り、耐食性を改善するためには、鋼中介在物で局部腐食の起点になるようなMnSを抑制することが重要である。Taは、耐食性に悪影響を及ぼすMnSのような硫化物を、Taを含有する酸硫化物複合介在物に改質することができる。
Coは、耐食性の向上およびオーステナイト相を安定化させる元素である。このような効果を得るために、Coを含有させるときは、その含有量を0.1%以上、好ましくは0.2%以上とする。しかしながら、Coは非常に高価な元素であるため、原料コストの観点から、Coを含有させるときは1.0%以下、好ましくは0.7%以下とする。
Bは、粒界に偏析することで、熱間加工性を向上させる元素である。この効果を得るためには0.0005%以上含有させる必要があり、好ましくは0.0006%以上、より好ましくは0.0008%以上で、更に好ましくは0.001%以上である。しかしながら、過剰に含有させるとホウ化物を形成し、熱間加工性および耐食性を劣化させる。よって、好ましい含有量は0.010%以下であり、より好ましくは0.005%以下である。
本発明に係る二相ステンレス鋼材は、Crの含有量を[Cr]、Moの含有量を[Mo]、Nの含有量を[N]とした際に、[Cr]+3.3[Mo]+16[N]の値であるPREが20〜30程度の省合金系の二相ステンレス鋼を対象としている。PREが高いほどステンレス鋼の再不働態化能は高くなり、介在物溶解の影響を無視できるようになるが、高価な合金の含有量が増えてしまうため、本発明ではこれらの合金の含有量を制限し、その上限を30としている。
本発明の二相系ステンレス鋼材は、通常のステンレス鋼の量産に用いられている製造設備および製造方法によって製造することができる。鋼中の不純物としてのOを低減するためには、SiやAl等のOとの親和力の大きい元素を多めに添加して脱酸を行い、更に、真空脱ガスやアルゴンガス攪拌などの二次精錬の時間を長時間化したり、複数回行ったりすることによって酸化物系介在物を除去することができる。
次に、本発明に係る二相ステンレス鋼管の実施形態について説明する。二相ステンレス鋼管は、前記二相ステンレス鋼材からなるもので、通常のステンレス鋼管の量産に用いられる製造設備および製造方法によって製造することができる。例えば、丸棒を素材とした押出製管やマンネスマン製管、板材を素材として成形後に継ぎ目を溶接する溶接製管などによって、所望の寸法にすることができる。また、二相ステンレス鋼管の寸法は、鋼管が使用される海水淡水化プラント、LNG気化器、燃料噴射管等に応じて適宜設定することができる。
小型溶解炉:容量20kg/1chによって、表1,2に示す成分組成の鋼を溶製し、円柱鋳型:本体:φ110×約200mmを用いて鋳造した。また、各鋼について、PRE=[Cr]+3.3[Mo]+16[N]の算出結果についても表2に示す。尚、表1,2の成分組成欄において、空欄は該当成分が含有されていないことを示し、残部はFeおよび不可避的不純物である。凝固した鋼塊を1200℃まで加熱し、同温度で熱間鍛造:鍛造温度:1000〜1200℃を施し、その後切断した。次に1100℃で30分保持の固溶化熱処理を施し、冷速12℃/秒で水冷後に切断し、40×100×400mmの鋼材に仕上げた。
次に、前記鋼材から加工方向に平行に採取した試料:20mm×30mm×2mmtを用いて、以下に示す手順で、耐孔食性などの耐食性、熱間加工性などを評価した。
母材の耐食性の評価は、JISG0577に記載の方法を参考にして評価を行った。試料表面をSiC#600研磨紙で湿式研磨し、超音波洗浄した後、スポット溶接で試料に導線の取り付けを行い、試料表面の試験面:10mm×10mmの部分以外をエポキシ樹脂で被覆した。その試料を80℃に保持した3.5%人工海水中に10分間浸漬した。その後、20mV/minの掃引速度でアノード分極を行い、電流密度が0.1mA/cm2を超えた時点の電位を孔食電位:VC‘100とした。耐食性の評価は、孔食電位が130mV vs.SCEを基準とし、150mV vs.SCEを超えるものを良好として評価した。その結果を表3,4に示す。尚、SCEとは飽和カロメル電極のことである。
溶接熱影響部の耐食性の評価は、図1に示すように、1300℃まで15秒で加熱した後、5秒間保持し、1300℃から500℃まで7℃/secで冷却し、更に500℃から室温まで3℃/secで冷却するという、TIG溶接における溶接部の熱サイクルを再現した熱処理を鋼材に与えた後、前記した母材の耐食性の評価と同様の条件で評価を行った。耐食性の評価は、孔食電位が130mV vs.SCEを基準とし、150mV vs.SCEを超えるものを良好として評価した。その結果を表3,4に示す。
熱間加工性の評価は、溶製した材料を30%熱間鍛造した際に発生する表面欠陥を目視で観察することで行った。端面から1cmを除いた箇所で、長さ1cm以上の表面欠陥が試料1cm2あたり0.05個未満のものを欠陥なし、0.05個以上のものを欠陥ありとして熱間加工性を評価した。その結果を表3,4に示す。
Claims (5)
- フェライト相とオーステナイト相とからなる二相ステンレス鋼材であって、
質量%で、C:0〜0.05%、Si:0.1〜2.0%、Mn:0.1〜2.0%、P:0%超0.05%以下、S:0%超0.004%以下、Al:0%超0.05%以下、Ni:2.0〜6.0%、Cr:19.0〜25.0%、Mo:0%超1.0%以下、N:0.01〜0.20%、V:0〜0.01%を含有すると共に、Ta:0.01〜0.30%、REM:0.0005〜0.07%、Zr:0.01〜0.10%のいずれか少なくとも1種を含有し、残部が鉄および不可避的不純物であることを特徴とする二相ステンレス鋼材。 - 質量%で、Ta:0.01〜0.30%を含有し、
[Ta]/[Mn]が0.02以上である請求項1記載の二相ステンレス鋼材。
但し、前記した各式中、[ ]は質量%を示す。 - 更に、質量%で、Co:0.1〜1.0%、Cu:0.1〜2.0%の少なくとも1種を含有する請求項1または2に記載の二相ステンレス鋼材。
- 更に、質量%で、B:0.0005〜0.010%、Mg:0.0005〜0.020%、Ca:0.0005〜0.020%の少なくとも1種を含有する請求項1乃至3のいずれかに記載の二相ステンレス鋼材。
- 請求項1乃至4のいずれかに記載の二相ステンレス鋼材からなることを特徴とする二相ステンレス鋼管。
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