古くから食パンや菓子パン等のパン作りは、温度管理が難しい酵母を必要とすること、捏ねを十分に行わなければ出来映えの良い美味しいパンが得られないことなどを理由として業務用の製パン器に頼っていた。
例えば、パン作りの一連の工程は、先ず始めに、水と、小麦粉、塩、砂糖、スキムミルクおよびショートニングを含むミックス粉と、酵母を水に触れないようにしてパンケース内に投入した後、それぞれの材料を十分に混合する捏ね工程を有する。その後、捏ね上った生地を休めて25〜32℃程度に加温して発酵させて膨らませる一次発酵工程と、その後、生地を僅かの時間捏ねて生地中の余分なガス(気泡)を抜くガス抜き工程と、その後、生地内に残ったガスをつぶさないようにして成形する生地丸め工程と、さらにその後、生地を1時間程度休ませて発酵させる二次発酵工程と、その後160〜180度で焼く焼成工程とから構成されており、これらの工程を順序よく進めなければならない。
そこで、パン材料の捏ねから焼成までの種々の工程をマイクロコンピュータのプログラムに基づいて自動的に実行して、一般家庭で手軽にパンを焼くことができる自動製パン器が世の中に普及してきている(例えば、特許文献1参照)。
図8は、特許文献1に記載された自動製パン器のレーズン入り食パンの調理工程図である。図8に示すように、従来の自動製パン器はパン材料の捏ねから焼成までの種々の工程をマイクロコンピュータのプログラムに基づいて自動的に実行するようになっていて、一般家庭で手軽にパンを焼くことができるようになっている。
また、低コストで取り扱いが簡単な製パン器能付き炊飯器も考えられている(例えば、特許文献2参照)。図9は、特許文献2に記載された製パン器能付き炊飯器の炊飯時の状態を示す断面図である。図9に示すように、製パン器能付き炊飯器によれば、容器1は加熱室2内に着脱自在に設けられ、容器1の開口部は内蓋3によって選択的に塞ぐことが可能となり、練り羽根4はモータと制御部とによって選択的に回転される。そのため、内蓋3を付すことで容器1を密封して炊飯を行うことができ、内蓋3を取り外した状態で練り羽根4を回転させて製パンを行うことができる。従って、容器1を共通にして炊飯と製パンを行うことができるので、コスト的に有利である。また、容器1を加熱室2から取り外して洗浄作業、洗米を入れる作業などを行うことができるとともに、容器1を加熱室2に入れるだけで係合部を介して練り羽根4とモータとの連結が行われるので、取り扱いが簡単である。
さらに、近年、食生活の欧米化、消費者の嗜好の変化等により米の消費量が低迷してきていることから、この低迷に歯止めをかけ、より米の消費量の増大を図る取り組みが推進されている。その推進策として、米を主原料としたこれまでの加工食品、例えば餅、煎餅、団子等以外にも広げるべく、米を主原料にした製パン技術が開発され、米粉パンが市販されている。この米粉パンは、小麦粉パンに比べて、多糖類の含有量が多く、しっとりした良好な感触と自然な甘味が得られ、また餅のように喉に詰まる恐れが少なく、更に少量を食するだけで満腹感が得られることから、消費者間で人気を博しており、更にまた、小
麦粉を混入しない米粉パンは小麦アレルギーを持つ消費者にとって待望された食材となってきている。
そこで、より簡易に米粉パンができるように、米粉を入手しなくても、自動製パン器で、家庭にある米をそのまま粉砕してパンにする装置が考えられている(例えば、特許文献3参照)。図10は、特許文献3に記載された従来の生地製造器の断面図、図11は、特許文献3に記載された従来の加熱調理食品生地製造工程の全体フローチャートである。
図11に示すように、加熱調理食品生地製造方法は、所定量の穀物粒と所定量の液体とを容器へ収納し所定時間静置する粉砕前含浸工程♯10と、所定量の穀物粒と所定量の液体の混合物の中で粉砕ブレードを回転させて穀物粒を粉砕する粉砕工程#20と、粉砕穀物粒と液体の混合物からなる生地原料を練りブレードで生地に練り上げる練り工程#30からなる。
そして、穀物粒からパン用の生地を製造するときは、図10に示すように生地製造器11を次のように用いる。蓋12を外し、容器13の中に所定量の穀物粒と所定量の液体を入れた後、再び蓋12を嵌め込んで、粉砕前含浸工程#10を実行する。粉砕前含浸工程#10の間、加熱手段14で容器13を加熱し、液体(この場合は水)の温度を上げると含浸が進む。粉砕前含浸工程♯10の最初でブレード15を回転させ、その後も時々ブレード15を回転させて穀物粒の表面に傷をつけると、穀物粒の吸液が促され、含浸を早く完了させることができる。
粉砕工程#20に入ったらブレード15を高速回転させ、穀物粒を粉砕する。これにより、粉砕穀物粒と液体の混合物からなる生地原料が形成される。練り工程#30ではブレード15を低速回転させ、生地原料を捏ねて一つにつながった生地を練り上げる。練り工程#30の冒頭で蓋12を開け、所定量のグルテンと、必要に応じ所定量の調味材料を生地原料に投入する。蓋12を閉じ、ブレード15を低速回転させて、生地原料及びそれに投入されたグルテンや調味材料を混練する。この過程で生地の温度が上昇するので、後に投入される発泡誘起材料が酵母である場合には、適当なタイミングで冷却手段16により容器13を冷却し、中の生地を冷やす。なお冷却の場合も加熱の場合も、容器13の温度を温度センサ17で監視し、正確な温度が得られるようにする。
発泡誘起材料を投入する時機になったら、蓋12を開けて生地に所定量の発泡誘起材料を投入する。蓋12を閉め、ブレード15を低速回転させて生地と発泡誘起材料を混練し、生地を完成させる。その後、生地を容器13から取り出して、あるいは生地を容器13に入れたままで、生地の発泡が進むのを待つ。所望の発泡を得られたら生地をパン焼き装置に入れ、パンを焼く。
このように、同一の容器11内で粉砕前含浸工程#10から練り工程#30まで進行させることにより、ある工程から他の工程に移行する際に内容物を別の容器に移し替える必要がなく、時間を短縮できる。また、穀物粒や生地原料の一部が前の工程で使用した容器の内面に残り、少しずつ目減りするという問題もなくなる。
さらに、特許文献4には、小麦粉を原料とするパン生地では、イースト発酵の際のせん断粘度が1×105(Pa・s)程度であるのに対し、米粉を主成分とした生地のせん断粘度を1×102〜4×104(Pa・s)の範囲に調整することで、イースト発酵により良好な発泡倍率を得ることができ、小麦粉、グルテンを添加しなくてもパン状の製品を得られることが記載されている。
第1の発明は、被調理材を収容する容器と、前記容器の周囲に配設し前記容器を加熱する加熱手段と、前記容器内の被調理材を撹拌する撹拌手段と、前記被調理材の温度を直接的或いは間接的に検出する温度検出手段と、操作条件を設定する操作部と、前記操作部で設定された条件と、前記温度検出手段で検出された前記被調理材の温度に基づき、前記加熱手段および前記撹拌手段を駆動制御し前記被調理材の撹拌を経て発酵から焼成までを自動的に行う制御手段とを備え、前記被調理材として生の穀物粒と水を用い前記加熱手段および前記撹拌手段を駆動制御することにより生の穀物粒と水から穀物ペーストを作製するようにし、前記穀物ペーストは前記撹拌の過程で糊化しない温度帯で前記加熱手段および前記撹拌手段を駆動制御するようにして、小麦粉やグルテンを用いることなく製パンに適した穀物ペーストを作製するようにした自動製パン器を提供する。
これによれば、生の穀物粒を用い加熱手段および撹拌手段を制御することにより生の穀物粒と水から穀物ペーストを作製し、その穀物ペーストを用いてパンを作製する穀物パン工程を有するようにしてあるので、穀物粒を被調理材としたパンにおいて、生の穀物粒を直に穀物粉に粉砕する必要がないため、静音化や低振動化が図れるようになる。また、穀物粒の澱粉を吸水と加熱と撹拌によって糊化させることなく十分に膨潤させ、穀物ペーストのせん断粘度を自動的に最適化することで、製パン性能に悪影響を及ぼす心配もなく、簡単に穀物粒を使ったおいしいパンができるようになる。
例えば穀物粒として米粒を用いた場合は、米粒と水から作成した米ペーストとその他の被調理材に米粉などのグルテンを含まない被調理材を用いたパンにおいては、小麦を用いていないので、小麦アレルギーの人でも食べられるようになるが、小麦に比べ、米粉は水を多量に含み、小麦パンが膨らむ要素のグルテンを有しておらず、グルテンの代替品を用いても膨らみにくいため、捏ね方や水分量など作り方が難しいが、生の米粒を用い加熱手段および撹拌手段を制御し、糊化させずに生の米粒と水からせん断粘度を最適化した米ペーストを作製し、その米ペーストを用いてパン材料の捏ねから焼成までの種々の工程を自動製パン器で一貫して行うことで、膨らみが安定した生の米粒から作製するパンができるようになる。
また、穀物粒の澱粉を吸水と加熱と撹拌によって糊化させることなく十分に膨潤させてせん断粘度が最適化された穀物ペーストを用いることにより、発酵の際に気泡を内部に閉じ込めることが可能となり生地の膨らみを促進し、生地の膨らみと形状の保持に対し非常に良好な影響を及ぼす。
第2の発明は、特に第1の発明の前記穀物ペーストを撹拌する過程で、前記撹拌手段に作用する負荷が所定の負荷になるよう前記撹拌手段を駆動制御するようにすることで、発酵前の穀物ペーストの状態を一定に管理し発酵時の生地の膨らみを安定化させることができる。
すなわち、粘度が最適化された穀物ペーストは、発酵の際に気泡の成長を促す作用と気泡を生地内部に閉じ込める作用を併せ持ち、相互作用によって生地の膨らみを促進し、生地の膨らみと形状の保持に対し非常に良好な影響を及ぼすことができる。
第3の発明は、特に第1または2の発明において、被調理材と容器近傍を冷却する冷却手段を配設した自動製パン器とすることにより、生の穀物粒と水を用い加熱手段および撹拌手段を駆動制御することにより生の穀物粒から作製した穀物ペーストの温度が発酵前の生地の練りに適する温度に冷却するようにできる。
穀物ペーストを作製するときから、焼成してパンに作り上げるときまで、適宜冷却手段を作動することで、穀物ペーストを糊化しない温度に制御しやすくすることが出来る。また、穀物ペーストの水分を蒸発させることで穀物ペーストのせん断粘度を調整することができる。
また、冷却手段は、少なくとも生の穀物粒と水を用い加熱手段および撹拌手段を駆動制御することにより生の穀物粒からせん断粘度を最適化した穀物ペーストを作成してから、酵母を投入するまでの間に作動させ、発酵に適した温度以下になるまで冷却するようにした構成としてあるので、穀物ペーストの温度を適正な温度に素早く下げるとともにせん断粘度を最適化することが出来、製パン性の向上と製パンにかかる時間の短縮を図ることが出来るようになる。
第4の発明は、特に第1〜3のいずれか1つの発明において、生の穀物粒を用い加熱手段および撹拌手段を駆動制御することにより生の穀物粒から穀物ペーストを作製した後に、酵母を自動で投入することで、パン生地に適した粒残りの無い穀物ペーストが均等に混ざり合った後に酵母を生地に混ぜ込むことが可能となり、小麦グルテンと米粉と小麦粉を添加しないかつ穀物ペーストを自動で作製するパンにおいて、従来に無い製パン性能を確保することができるとともに製パンのばらつきを少なくすることができる。
すなわち、穀物ペーストを作製する際の温度が発酵温度に近い場合は、酵母が混合していたならば撹拌の際に発酵が進んでしまうことになるが、穀物ペーストの作製が終了し穀物ペーストの状態を安定させた上で、酵母を投入することで発酵状態が非常に安定したものになる。
第5の発明は、特に第1〜4のいずれか1つの発明において、前記操作部に、穀物ペーストを用いてパンを作製する穀物パン工程を選択する工程選択手段を配設した自動製パン器とすることで、生の穀物粒を用い加熱手段および撹拌手段を駆動制御することにより生の穀物粒から穀物ペーストを作製しその穀物ペーストを用いてパンを作製する穀物パン工程を選択する工程選択手段を有するので、穀物澱粉の糊化度を調整した穀物ペーストを用いて作製するパンと他の工程で作られるパン例えば小麦粉を主とした従来のパンが簡単に切り替えられ、使用者の好みにあったパンを手軽に製パン出来るようになる。
特に、穀物ペーストを用いて作製するパンは、小麦粉を主とした従来のパンと共通するようなパンのメニュー例えば食パンやレーズンなどの具入りパンが出来るので、工程選択手段で穀物ペーストを用いて作製するパンかあるいは小麦粉を主とした従来のパンかを選択してパンのメニューを選ぶことが出来、使用者にとって判りやすく、操作性のよい機器
を提供できるようになる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は本発明の第1の実施の形態における自動製パン器の要部断面図、図2は本発明の第1の実施の形態における自動製パン器の制御ブロック図、図3は本発明の第1の実施の形態における自動製パン器の操作部の表示例を示す模式図、図4は本発明の第1の実施の形態における自動製パン器の穀物ペーストを用いて作成するパンの工程図、図5は本発明の第1の実施の形態における自動製パン器の穀物ペーストを用いて作成するパンの工程図、図6は本発明の第1の実施の形態における自動製パン器の生の穀物粒から作製する穀物ペーストのせん断粘度の経時変化を示したグラフ、図7は本発明の第1の実施の形態における自動製パン器の糊化しない穀物ペーストを用いた小麦やグルテンを含まないパンの製パン性能を示したグラフである。
図1、図2に示すように、本実施の形態における自動製パン器は、機器本体21内部に設けた焼成室22と、焼成室22内に着脱自在に収納され被調理材を収容する容器(焼成ケース)23が配設してある。この容器23内には被調理材を撹拌する撹拌手段の練り羽根24が設けてあり、製パン中または生の穀物粒から穀物ペーストを作製する時において練り羽根24により被調理材を撹拌するようになっている。練り羽根24はモータ25によって駆動されるようになっており、かつ練り羽根24に作用する被調理材を撹拌する時の抵抗力(電流値)をモータ25が検知し被調理材のせん断抵抗が分かるようになっている。また、機器本体21の上部には開口部を覆う開閉自在な外蓋が設けてあり、焼成室22内の下方の容器23の周囲である外周に位置して外周部より容器23を加熱する加熱手段26が設けてある。そして、容器23の温度を検知して被調理材の温度を間接的に検出する温度検出手段27が容器23に当接して設けてあり、温度検出手段27で検出された前記被調理材の温度に基づき、機器本体21上部に配設され機器本体21の操作条件を設定する操作部28で設定された設定内容に対応する所定のシーケンスで、制御手段29によって前記加熱手段26および練り羽根24を駆動制御し前記被調理材の加熱あるいは撹拌から焼成までを自動的に行うようになっている。
なお、機器本体21の上部の外蓋の内部には、酵母を自動投入する酵母自動投入器30と、小麦粉などの粉を投入する粉自動投入器31と、具材を投入する具材自動投入器32が配設してあり、さらに、容器23の上部に位置し焼成室22に配設し、焼成室22内の空気を吸い込み口33から吸引して機器本体21外へ排出する送風ファン34が設けてあり、穀物ペーストを作製する時から、焼成してパンに作り上げるときまで、所定のシーケンスで適宜、送風ファン34を作動するようにしてある。
また、粉自動投入器31には、粉が固まって落ちにくいので、粉自動投入器31に接して振動を与えて粉を落としやすいようにバイブレーター35が設けてあり、この粉自動投入器31は穀物粒の澱粉を吸水と加熱と撹拌によって穀物粒を糊化させることなく十分に膨潤させ、穀物ペーストを作製しその穀物ペーストを用いてパンを作製する穀物パン工程の加熱時に、一緒に加熱することのできない上新粉やとうもろこし粉などの被調理材を後から投入する必要性があるものを、適切な投入時期に自動的に投入するものである。
さらに、機器本体21の雰囲気温度などの影響により温度検出手段27で検出された被調理材の温度が所定の温度より低いときは、加熱手段26で加熱するとともに、温度検出手段27で検出された被調理材の温度が所定の温度より高いときは、被調理材の発酵時間を短縮するなど、温度検出手段27で検出する温度によって調整するようにしてある。
そしてまた、図3に示すように、操作部28には、小麦粉を主とした従来のパンを製造する通常のパン製造工程と、穀物ペーストを作製しその穀物ペーストを用いて穀物パンを作製する穀物パン工程を選択する工程選択手段36と表示部37が設けてあり、表示部37に工程毎の設定内容を表示し、例えば食パンやレーズンなどの具入りパンなどのそれぞれの工程に共通のメニューと、上記工程の単独メニューを表示してメニュー選択手段38で選べるようになっている。
さらに、操作部28には、穀物ペーストを作製しその穀物ペーストを用いて穀物パンを作製する穀物パン工程のときに、機器本体21で使用する穀物量を設定する穀物量設定手段39と、できあがりのパンにおける穀物の含有割合を変化させる割合選択手段40が設けてあり、穀物量設定手段39で設定された穀物の量と割合選択手段40で選択された含有割合に基づき、穀物以外の使用する前記被調理材の量を表示部37に表示するようになっている。
また、操作部28には、パン工程を開始させるスタートボタン41が配設してあり、上述の設定した条件で、パン工程を開始させるようになっている。
以上のように構成された本実施の形態1の自動製パン器について、それぞれの工程のパンの作成について説明する。
本実施の形態では被調理材として生の穀物粒を用い加熱手段および撹拌手段を駆動制御することにより生の穀物粒から穀物ペーストを作製するようにしている。生の穀物粒の澱粉を吸水と加熱と撹拌によって糊化させることなく十分に膨潤させ、穀物ペーストのせん断粘度を自動的に最適化して穀物ペーストを作製するようにし、その穀物ペーストを用いてパンを作製する代表的な穀物パン工程(本実施の形態では生の穀物粒として生の米を用いた)について説明すると、図4に示すように、はじめに操作部28で吸水した生の米から米ペーストを作製しその米ペーストを用いてパンを作製する米パン工程を選択して(ステップ201)、つぎに、穀物量設定手段39で機器本体21での米量を設定する(ステップ202)とともに、割合選択手段40で出来上がりのパンの米の含有割合を選択する(ステップ203)。つぎに、表示部37に、例えば食パンやレーズンなどの具入りパンなどの共通のメニューあるいは米ペーストを作製しその米ペーストを用いてパンを作製する米パンの個別のメニュー(出来上がりの米パンの食味:甘い、しっとり感など)および米種を表示して(ステップ204)、メニュー選択手段38でそれぞれを選択する(ステップ205)。つぎに、選択された内容に基づき表示部37に必要な具材の量を表示して(ステップ206)、使用者が確認して容器23に水と生の米を所定量投入するとともに、酵母自動投入器30に酵母を、粉自動投入器31に小麦やグルテン以外の穀物粉を、そして、具材自動投入器32に具材を所定量セットし(ステップ207)、準備が完了したら、スタートボタン41を押して、機器本体21の製パンを開始させる(ステップ208)。機器本体21は、操作部28で設定された設定内容に対応する所定のシーケンスで、温度検出手段27で検出された前記被調理材の温度に基づき、加熱手段26および練り羽根24を駆動制御し、穀物ペーストである米ペーストの作製、練り、ねかせ、発酵、焼き上げを組み合わせて、パンを作成する(ステップ209)。
ここで、米ペーストの作製、練り、ねかせ、発酵、焼き上げの製パンのフローは、図5に示すように、ステップ211で穀物粒の澱粉を吸水と加熱と撹拌によって糊化させることなく十分に膨潤させ、穀物ペーストのせん断粘度を自動的に最適化する。このとき、練り羽根24で生の米と水をゆっくりと間欠的に撹拌するようにしてあるとともに、米澱粉の吸水と膨潤が促進される温度(例えばこしひかりなどの米種を選択した場合には25〜45℃、選択した穀物種に合わせて自動で20℃〜65℃の範囲で加熱温度設定される)
で加熱手段26により加熱するようにしてある。
すなわち米ペーストの作製における生の米の撹拌の過程において、米ペーストを加熱手段26によって、糊化しない温度帯で加熱制御する。米澱粉を十分に膨潤させることによって製パン性が向上する。すなわち、米澱粉が水を十分に吸水して水和することで膨潤し、それに伴って徐々に米ペーストのせん断粘度が向上し、発酵の際にイースト菌が発生させた炭酸ガスを内包して膨らむことが可能となる。せん断粘度が低い場合には、炭酸ガスが内部にとどまることが出来ず上方に上がってきて外部に放出されてしまい膨らむことが出来ない。
また、米ペーストの膨潤を促進しながら練り羽根24に作用する被調理材の抵抗力(電流値)をモータ25が検知し被調理材のせん断抵抗が分かるようになっているため、せん断抵抗を検知しながら米ペーストのせん断粘度が最適値になるようにモータ25と加熱手段26と送風ファン34を制御手段29が制御する。米澱粉の膨潤が進んでいない初期の段階ではせん断粘度は小さく、加熱と撹拌するに従ってせん断粘度が大きくなっていくため、せん断粘度が小さすぎず、大きすぎることがないように制御手段29がモータ25と加熱手段26と送風ファン34を制御して米ペーストを最適な状態に保つようにしている。米ペーストのせん断粘度が製パンに適した値になったことをモータ25がせん断抵抗に基づく値によって検知すると、米ペーストが完成したことを制御手段29が判定して次のステップに移行する。
送風ファン34の作用として、被調理材である米ペーストの温度調整をするとともに被調理材である米ペースト中の水分量を調整する役割を有している。
次に、穀物ペーストのせん断粘度について述べる。
図6は、本発明の第1の実施の形態における自動製パン器の穀物ペースト作製時のせん断粘度の変化を示した特性図である。
図6に示すように、温度検出手段27で検出された被調理材である生の米と溶液の温度およびモータ25で検出されたせん断抵抗に基づき、モータ25と加熱手段26と送風ファン34を制御手段29により駆動制御し、米ペーストを所定のせん断粘度になるように制御する。製パンに適した米ペーストを作製するために、撹拌手段の駆動状態をモータ25から得られる負荷(電流値)によって検知し、モータ25を当初断続的に駆動制御しその後連続して駆動制御することで澱粉の膨潤を促進してせん断粘度を向上させるとともに、加熱手段26を当初連続的に通電制御しその後断続的に通電制御することで加熱量を調整して所定の温度になるようにし澱粉を分解する酵素が働きやすい状態にする。
送風ファン34を作動させると、容器23の上部の焼成室22内の蒸気を含む温度の高い空気を機器本体21外へ排出する様になっており、水分を蒸発させることで米ペーストのせん断粘度を調整するようになっている。
そして米澱粉膨潤のための加熱が終了すると、図5に示すステップ212で練り羽根24で米ペーストを撹拌調整しより滑らかな米ペーストを作製し、ステップ213で粉自動投入器31から米粉等の粉を投入して、ステップ214で練りを行い米ペーストと米粉等の粉品を混ぜるとともに、ステップ212およびステップ214の間で、送風ファン34を作動させて、容器23の上部の焼成室22内の米ペーストの蒸気を含む温度の高い空気を機器本体21外へ排出して、米ペーストを酵母の最も活動する温度に冷却していくようになっている。尚、ステップ213の米粉等の粉品を投入時には、送風ファン34の作動は停止して、送風ファン34の吸い込み口33に米粉等の粉品が入らないようにしてある。
つぎに、ステップ215で、酵母を酵母自動投入器30で自動投入するとともに、ステップ216で、具材自動投入器32でレーズン等の具材を投入したのち、ステップ217で練り羽根24による第3練りを行い、その後に、米ペーストと米粉等の粉の混合物をねかし(ステップ218)、そして、ステップ219で焼き上げる。さらにこのとき、ステップ217およびステップ218の間で、送風ファン34を作動させて、容器23の上部の焼成室22内のパン生地の水分を含む温度の高い空気を機器本体21外へ排出して、焼成中のパン生地の水分の微調整をおこなうようになっている。尚、ステップ215の酵母およびステップ216のレーズン等の具材を投入時には、送風ファン34を作動は停止して、送風ファン34の吸い込み口33に酵母およびレーズン等の具材が入らないようにしてある。ステップ220で焼き上がったら完成となり、容器23から取り出して完了する。
そして、上述の米ペーストを作製しその米ペーストを用いて作成したパンは、米粉を主とした従来のパンの工程で作成したものよりも膨らみが得られ、もちっとした食感で、甘みが感じられよりおいしく感じられた。
さらに、せん断粘度を最適化した米ペーストを作製し、酵母のみを用いたパンにおいては、小麦を用いていないので、小麦アレルギーの人でも食べられるようになるが、小麦に比べ、米粉は水を多量に含み、小麦パンが膨らむ要素のグルテンを有しておらず、グルテンの代替品を用いても膨らみにくいため、捏ね方や水分量など作り方が難しく、パン材料の捏ねから焼成までの種々の工程を自動製パン器で一貫して行うことで、できあがりが安定した米から作製するパンができるようになる。
図7はせん断粘度を最適化した米ペーストと酵母のみを用いて作製したパンの製パン性能を示したグラフである。
図7に示すように、A従来の粉砕ブレードを回転させて米粒を粉砕する方式と、B従来の市販の米粉を用いる方式と、Cせん断粘度を最適化した米ペーストを用いる本発明の方式との比較において、本発明の方式は従来の方式に比べて、「膨らみ」、「食味」とも上回っていることが分かる。これは、米ペーストに含まれている膨潤した澱粉とタンパク質が均等に混ざり合うことで、生地の伸びと強度を両立するパン生地のベースとなる状態が形成され、酵母を均等に混ぜ込むことで膨潤した澱粉とタンパク質の間に酵母が入り込み、発酵によって生成する炭酸ガスが膨潤した澱粉とタンパク質の隙間に気泡を形成し生地が十分に膨らむためである。また、米中には糖生成酵素が存在しているが、その酵素は米の外層部と内層部で温度依存性が異なる。先に溶液の温度の影響を受ける外層部の酵素群至適温度は40℃であり、内層部は60℃である。よって、米ペーストを作製する際に糊化しない40℃に温度制御を行って米澱粉を膨潤することによって、米が本来持っているアミラーゼが作用して十分に澱粉の分解が起こり、米澱粉が膨潤するとともに甘味成分を生成でき、甘味の強いパンを焼き上げることができる。また糖類が生成することでパンの日持ちも良くすることができる。
従来の方式では、粉砕ブレードを回転させて米粒を粉砕し微細米粉ペーストを作製しそこに米粉などを添加していたため、生地の伸びと強度が不足していることで製パン性(特に膨らみ)が十分ではない。また、米を加熱して粉砕ブレードを回転させると粘性が高くなることによってブレードが回転不能になるため、温度を上げることが出来ず、甘味の強いパンを焼き上げることが出来ない。
せん断粘度を最適化した米ペーストを作製するときに、練り羽根24で被調理材を撹拌するようにした構成としてあるので、生の米と水の状態で撹拌することで、生の米の吸水を早く均一にすることができ、また、加熱中に撹拌することで、温度分布を平均にするこ
とができ、更に製パン時の捏ねに適するように混ぜることができ、そして、製パンに適した条件で米澱粉の膨潤時間を短縮することが出来るとともに、撹拌時間を短縮することができるようになる。
また、被調理材あるいは容器23近傍を冷却する送風ファン34を配設してあるので、米ペーストを作成するときから、焼成してパンに作り上げるときまで、適宜、送風ファン34を作動することで、米澱粉の糊化度を調整した米ペーストを作製する加熱時にその熱で酵母が死滅しないようにするなどや、米ペーストを冷却する時間の短縮を図ることが出来るようになる。つまり、米澱粉の糊化度を調整した米ペーストから製パンするときの温度調節をすることが出来、より米から作製するパンの製パン性能を向上させることができるようになる。
製パン時に用いる酵母は、温度が27〜36℃で最も活動的になり、60℃以上で死滅するため、製パン時はパンを焼成する前までつまり、酵母の保管、捏ね、発酵期間は少なくとも常温に近い温度にしておかねばならず、米ペースト作製の加熱量を小さくすることで、酵母の冷却保管を容易にして、酵母の冷却手段を簡易とすることができ、酵母の温度管理が容易となり、できあがりが安定したせん断粘度を調整した米から作製するパンができるようになる。
特に、酵母は4℃以下になると活動が停止し60℃以上で死滅し、27℃〜30℃が活発に働く温度として、一次発酵に丁度よい温度で、再発酵(仕上げ発酵)させる時は35℃〜38℃とやや高めで発酵させるようになっており、温度管理が必要で、米ペースト作製完了した直後は温度が高いため、酵母を投入することが出来ない。
ここで、送風ファン34は、米ペーストを作製してから、酵母を投入するまでの間に作動させ、米ペーストの温度が酵母の死滅する温度以下になるまで冷却するようにした構成としてあるので、米ペーストの温度を適正な温度に素早く下げることが出来、製パン性の向上と製パンにかかる時間の短縮を図ることが出来るようになる。
また、米ペーストを被調理材として用いてパンを作成する場合は、小麦粉を主とした被調理材を用いてパンを作成する場合より、パンの膨らみが少なく、また、作製した米ペーストの量や被調理材などの量を調整して、容器23のパンを作成したときのパンの体積が少なくて、容器23の上部まで達していないと、どうしても、パン焼成時のパン上面への熱の伝わり方が不十分となりやすい。そこで、容器23の上方にできあがるパンの天面を加熱する第2加熱手段26を配設するか、あるいは、容器23の上方に加熱手段26の熱を反射させる反射板を配設するようにしてもよい。
これによれば、パンの膨らみが十分でない場合でも、容器23の側面からの加熱に加えて、容器23の上方から加熱されるので、パン焼成時にパン上面が加熱されやすくなり、パン上面の焼きムラが低減されるようになる。
本実施の形態では穀物粒として米粒を用いた例を示したが、穀物粒はとうもろこし、じゃがいも、グルテンを形成し難い麦など世界各地の主食を用いて製パンすることもできる。主食の穀物であれば家庭に常備されているか簡単に入手できる環境にあるため、製パン主材料の入手に手間がかからず手軽にパンを食することができる。
以上のように、本実施の形態によれば、生の穀物粒を用い加熱手段26および撹拌手段の練り羽根24を制御することにより生の穀物粒と水から穀物ペーストを作製し、その穀物ペーストを用いてパンを作製する穀物パン工程を有するようにしてあるので、穀物粒を被調理材としたパンにおいて、生の穀物粒を直に穀物粉に粉砕する必要がないため、静音
化や低振動化が図れるようになる。また、穀物粒の澱粉を吸水と加熱と撹拌によって糊化させることなく十分に膨潤させ、穀物ペーストのせん断粘度を自動的に最適化することで、製パン性能に悪影響を及ぼす心配もなく、簡単に穀物粒を使ったおいしいパンができるようになる。
例えば穀物粒として米粒を用いた場合は、米粒と水から作成した米ペーストとその他の被調理材に米粉などのグルテンを含まない被調理材を用いたパンにおいては、小麦を用いていないので、小麦アレルギーの人でも食べられるようになるが、小麦に比べ、米粉は水を多量に含み、小麦パンが膨らむ要素のグルテンを有しておらず、グルテンの代替品を用いても膨らみにくいため、捏ね方や水分量など作り方が難しいが、生の米粒を用い加熱手段26および撹拌手段の練り羽根24を制御し、糊化させずに生の米粒と水からせん断粘度を最適化した米ペーストを作製し、その米ペーストを用いてパン材料の捏ねから焼成までの種々の工程を自動製パン器で一貫して行うことで、膨らみが安定した生の米粒から作製するパンができるようになる。
また、穀物粒の澱粉を吸水と加熱と撹拌によって糊化させることなく十分に膨潤させてせん断粘度が最適化された穀物ペーストを用いることにより、発酵の際に気泡を内部に閉じ込めることが可能となり生地の膨らみを促進し、生地の膨らみと形状の保持に対し非常に良好な影響を及ぼす。