以下、本発明の実施の形態について説明する。
[自動変速機の構成]
図1は、本発明の実施形態に係る油圧制御装置を備えた自動変速機4の構成を示す骨子図であって、この自動変速機4は、変速機ケース5内に入力軸7と出力ギヤ8とを有する横置き式の自動変速機である。
入力軸7は、車体幅方向に延びるように配置されており、入力軸7の図の右側端部は、トルクコンバータ3を介してエンジン1のクランクシャフト2に連結されている。出力ギヤ8は、入力軸7と同一軸線上に配置されている。出力ギヤ8は、デファレンシャル機構(図示せず)を介して車軸(図示せず)に連結されており、これにより、エンジン1の動力は、自動変速機4によって変速された後、走行状況に応じた回転差で左右の車軸に伝達される。
トルクコンバータ3は、クランクシャフト2に連結されたケース3aと該ケース3a内に固設されたポンプ3bと、該ポンプ3bに対向配置されて該ポンプ3bにより作動油を介して駆動されるタービン3cと、該ポンプ3bとタービン3cとの間に介設され、かつ、変速機ケース5にワンウェイクラッチ3dを介して支持されてトルク増大作用を行うステータ3eと、ケース3aとタービン3cとの間に設けられ、該ケース3aを介してクランクシャフト2とタービン3cとを直結するロックアップクラッチ3fとを備えている。そして、タービン3cの回転は、入力軸7を介して自動変速機4に伝達されるようになっている。
自動変速機4とトルクコンバータ3との間には、該トルクコンバータ3を介してエンジン1により駆動される機械式オイルポンプ(以下、「機械ポンプ」という)6が配置されている。機械ポンプ6は、クランクシャフト2の回転によって駆動されるように設けられており、エンジン1の駆動中において、該機械ポンプ6によって、自動変速機4を制御するための油圧回路に油圧が供給される。
自動変速機4の入力軸7上には、エンジン1側(トルクコンバータ3側)から、第1、第2、第3プラネタリギヤセット(以下、「第1、第2、第3ギヤセット」という)10,20,30が配置されている。
また、入力軸7上には、ギヤセット10,20,30で構成される動力伝達経路を切り換えるための摩擦締結要素として、入力軸7からの動力をギヤセット10,20,30側へ選択的に伝達するロークラッチ40及びハイクラッチ50が配置されている。さらに、入力軸7上には、各ギヤセット10,20,30の所定の回転要素を固定するLR(ローリバース)ブレーキ60、26ブレーキ70、及び、R35ブレーキ80が、エンジン1側からこの順序で配置されている。
前記第1〜第3ギヤセット10,20,30のうち、第1ギヤセット10と第2ギヤセット20はシングルピニオン型のプラネタリギヤセットであって、サンギヤ11,21と、これらのサンギヤ11,21に噛み合った各複数のピニオン12,22と、これらのピニオン12,22をそれぞれ支持するキャリヤ13,23と、ピニオン12,22に噛み合ったリングギヤ14,24とで構成されている。
また、第3ギヤセット30はダブルピニオン型のプラネタリギヤセットであって、サンギヤ31と、該サンギヤ31に噛み合った複数の第1ピニオン32aと、該第1ピニオン32aに噛み合った第2ピニオン32bと、これらのピニオン32a,32bを支持するキャリヤ33と、第2ピニオン32bに噛み合ったリングギヤ34とで構成されている。
そして、第3ギヤセット30のサンギヤ31には入力軸7が直接連結されている。第1ギヤセット10のサンギヤ11と第2ギヤセット20のサンギヤ21とは、互いに結合されて、ロークラッチ40の出力部材41に連結されている。第2ギヤセット20のキャリヤ23にはハイクラッチ50の出力部材51が連結されている。
また、第1ギヤセット10のリングギヤ14と第2ギヤセット20のキャリヤ23とは、互いに結合されており、LRブレーキ60を介して変速機ケース5に断接可能に連結されている。第2ギヤセット20のリングギヤ24と第3ギヤセット30のリングギヤ34とは、互いに結合されており、26ブレーキ70を介して変速機ケース5に断接可能に連結されている。第3ギヤセット30のキャリヤ33は、R35ブレーキ80を介して変速機ケース5に断接可能に連結されている。そして、第1ギヤセット10のキャリヤ13には出力ギヤ8が連結されている。
以上の構成により、自動変速機4は、上記の摩擦締結要素(ロークラッチ40、ハイクラッチ50、LRブレーキ60、26ブレーキ70及びR35ブレーキ80)の締結状態の組み合わせにより、図2の締結表に示すように、Dレンジでの1〜6速と、Rレンジでの後退速とが形成されるようになっている。
[自動変速機の油圧制御]
自動変速機4は、上記の摩擦締結要素40,50,60,70,80に締結用の油圧を選択的に供給して上記変速段を実現するための油圧回路を備えており、該油圧回路の油圧制御によって自動変速機4の変速が制御される。
エンジン1の駆動中には、該エンジン1の回転によって駆動される機械ポンプ6で生成された油圧が、上記の摩擦締結要素40,50,60,70,80に選択的に供給されるが、エンジン1のアイドルストップ中には、エンジン1と共に機械ポンプ6が停止するため、モータ105によって駆動される電動式オイルポンプ(以下、「電動ポンプ」という)106で生成された油圧を用いて、自動変速機4の油圧制御が行われる。以下、エンジン1のアイドルストップ中における自動変速機4の油圧制御について、実施形態毎に説明する。
[第1実施形態]
図3は、第1実施形態における自動変速機4の油圧回路100において、エンジン1のアイドルストップ中の油圧制御に関連する部分を示す回路図である。
図3に示すように、油圧回路100は、エンジン1の停止中にモータ105によって駆動されて油圧を生成する電動ポンプ106からの油圧と、エンジン1に駆動されて油圧を生成する機械ポンプ6からの油圧との供給を受ける。
油圧回路100には、運転者のレンジ選択操作によって作動するマニュアルバルブ112と、電動ポンプ106又は機械ポンプ6のいずれを油圧源とするかを切り換える油圧源切換バルブ114と、LRブレーキ60の油圧室に接続されたLRブレーキライン141を開閉する開閉バルブ116とが設けられている。
また、油圧回路100には、油圧制御弁として、前記開閉バルブ116よりも下流側においてLRブレーキライン141上に設けられた第1リニアソレノイドバルブ(以下、「第1LSV」と記す)101と、ハイクラッチ50の油圧室に接続されたハイクラッチライン143上に設けられた第2リニアソレノイドバルブ(以下、「第2LSV」と記す)102と、ロークラッチ40の油圧室に接続されたロークラッチライン142上に設けられた第3リニアソレノイドバルブ(以下、「第3LSV」と記す)103と、前記開閉バルブ116を制御するノーマルオープンタイプのオンオフソレノイドバルブ(以下、「オンオフSV」と記す)104とが設けられている。
第1LSV101、第2LSV102及び第3LSV103は、出力圧を制御可能な電磁弁であり、オンオフSV104は、開閉のみを制御可能な電磁弁である。
油圧源切換バルブ114の両端には、スプール115の位置を切り換えるための第1、第2切換ポートA1,A2が設けられている。第1切換ポートA1には、機械ポンプ6からライン圧が供給される第1メインライン120が接続され、第2切換ポートA2には、電動ポンプ106で生成された油圧が供給される第2メインライン130が接続されている。
機械ポンプ6の作動時には、該機械ポンプ6から第1メインライン120を経由して第1切換ポートA1に油圧が導入され、電動ポンプ106の作動時には、該電動ポンプ106から第2メインライン130を経由して第2切換ポートA2に油圧が導入される。
スプール115の位置は、これら第1、第2切換ポートA1,A2の入力圧によって作用する力と、第1切換ポートA1の入力圧による力と同方向に作用するスプリングの弾性力との関係によって決まる。つまり、両者の力のうち、第1切換ポートA1の入力圧によって作用する力とスプリングの弾性力との合力が、第2切換ポートA2の入力圧によって作用する力よりも大きいとき、スプール115は図中左側の第1位置に位置し、第2切換ポートA2の入力圧によって作用する力が、第1切換ポートA1の入力圧によって作用する力とスプリングの弾性力との合力よりも大きいとき、スプール115は図中右側の第2位置に位置する。
また、油圧源切換バルブ114は、第1〜第4入力ポートB1〜B4と、第1及び第2出力ポートC1,C2を更に備えている。
第1入力ポートB1には、機械ポンプ6から第1メインライン120及びDレンジ位置のマニュアルバルブ112を介してライン圧が供給される第1入力ライン122が接続され、第2入力ポートB2には、マニュアルバルブ112よりも下流側において第1メインライン120から分岐した第2入力ライン123が接続されている。また、第3、第4入力ポートB3,B4には、第2メインライン130からそれぞれ分岐した第3、第4入力ライン131,132が接続されている。
第1出力ポートC1にはロークラッチライン142が接続されており、第2出力ポートC2には、開閉バルブ116の開放状態においてLRブレーキライン141に作動油を供給するベースライン140が接続されている。
油圧源切換バルブ114のスプール115が第1位置(図中左側の位置)にあるとき、第1、第2出力ポートC1,C2には、機械ポンプ6側に接続された第1、第2入力ポートB1,B2がそれぞれ連通し、機械ポンプ6で生成された油圧が第1、第2出力ポートC1,C2からそれぞれロークラッチライン142及びベースライン140に供給される。
一方、油圧源切換バルブ114のスプール115が第2位置(図中右側の位置)にあるとき、第1、第2出力ポートC1,C2には、電動ポンプ106側に接続された第3、第4入力ポートB3,B4がそれぞれ連通し、電動ポンプ106で生成された油圧が第1、第2出力ポートC1,C2からそれぞれロークラッチライン142及びベースライン140に供給される。
開閉バルブ116の図中左側の端部には、スプール117の位置を切り換えるための切換ポートD1が設けられている。切換ポートD1には、オンオフSV104を介して、ベースライン140から分岐した開閉制御ライン144が接続されている。
オンオフSV104はノーマルオープンタイプであるため、オンオフSV104がオンされて閉じているとき、開閉バルブ116の切換ポートD1に油圧が導入されないことにより、スプール117は図中左側の第1位置に位置することになる。一方、オンオフSV104がオフであり開かれているとき、開閉制御ライン144から切換ポートD1に油圧が導入されることにより、スプール117は図中右側の第2位置に位置する。
また、開閉バルブ116は、入力ポートE1及び出力ポートF1を備えている。入力ポートE1にはベースライン140が接続され、出力ポートF1にはLRブレーキライン141が接続されている。
開閉バルブ116のスプール117が第1位置(図中左側の位置)にあるとき、入力ポートE1は出力ポートF1に連通し、開閉バルブ116が開かれた状態となる。一方、スプール117が第2位置(図中右側の位置)にあるとき、入力ポートE1と出力ポートF1との間はスプール117によって遮断され、開閉バルブ116は閉じた状態となる。
LRブレーキライン141上には、第1LSV101よりも下流側において油圧スイッチ170が設けられており、該油圧スイッチ170によって、LRブレーキ60の油圧室における油圧の給排状態が検出される。
以上の油圧回路100の構成によれば、エンジン1の駆動中に1速を形成するときには、オンオフSV104をオンにして閉じることで開閉バルブ116を開くと共に、第1LSV101及び第3LSV103を開くことによって、機械ポンプ6で生成された油圧が、ロークラッチ40及びLRブレーキ60の油圧室に供給され、これにより、1速を実現可能となる。
また、アイドルストップ状態では、機械ポンプ6の吐出圧が低下すると共に電動ポンプ106の吐出圧が立ち上げられることで油圧源切換バルブ114のスプール115の位置が切り換えられ、これにより油圧源が電動ポンプ106に切り換えられる点を除けば、油圧制御弁がエンジン1の駆動中と同様に制御されることにより、ロークラッチ40及びLRブレーキ60の油圧室に油圧が供給され、1速の形成が可能となる。したがって、アイドルストップ中にロークラッチ40及びLRブレーキ60の油圧室に予め油圧を供給しておくことで、発進要求に応じてエンジン1が再始動するとき、良好な発進応答性が得られる。
そして、本実施形態の油圧回路100では、ハイクラッチライン143が、第3LSV103よりも上流側においてロークラッチライン142から分岐している。これにより、ハイクラッチライン143は、ロークラッチライン142を介して油圧源切換バルブ114の第1出力ポートC1に接続されており、油圧源切換バルブ114の第1出力ポートC1から出力された油圧をハイクラッチ50の油圧室に供給することが可能となっている。
そのため、エンジン1の駆動中には機械ポンプ6で生成された油圧が、アイドルストップ中には電動ポンプ106で生成された油圧が、油圧源切換バルブ114の第1出力ポートC1からロークラッチライン142及びハイクラッチライン143を経由してハイクラッチ50へ供給され得る構成となっている。
かかる油路構成により、アイドルストップ中に電動ポンプ106を作動させると共に第2LSV102及び第3LSV103を開くことによって、電動ポンプ106で生成された油圧を、ロークラッチ40及びハイクラッチ50の油圧室に供給することが可能になる。これにより、従来は1速しか実現できなかったアイドルストップ状態において、ロークラッチ40及びハイクラッチ50の締結により4速を実現することが可能になる(図2参照)。
したがって、例えば、オンしても閉じることができなくなるようなオンオフSV104の開故障によって、開閉バルブ116のスプール117がLRブレーキライン141を閉じる第2位置(図中右側の位置)に固定されること等により、アイドルストップ中に電動ポンプ106で生成された油圧をLRブレーキ60の油圧室に供給できない異常が発生した場合、ロークラッチ40及びLRブレーキ60の締結により1速を実現する代わりに、上記のようにロークラッチ40及びハイクラッチ50の締結により4速を実現することで、発進要求に応じてエンジン1が再始動するとき、4速での発進が可能になる。
また、電動ポンプ106は、エンジン1の回転に関係なく駆動可能であるため、アイドルストップ中において、電動ポンプ106の吐出圧をエンジン1の再始動前に予め立ち上げておくことができる。そのため、発進要求に応じてエンジン1が再始動するとき、予め立ち上げられた電動ポンプ106の吐出圧を利用して4速が実現されることで、吐出圧の立ち上がりを待つことなく速やかな発進を行うことができる。そのため、上記のような異常が発生しても、そのことによる発進性の悪化を抑制することができる。
さらに、本実施形態の油圧回路100では、電動ポンプで生成された油圧を発進用の摩擦締結要素のみに供給可能な従来の油圧回路と同様、電動ポンプ106からロークラッチ40及びLRブレーキ60までの各油路は短く簡素に構成されている。
また、本実施形態では、1速と4速のいずれにおいてもロークラッチ40が締結されるため、アイドルストップ中に4速を実現可能な油路構成を構築するために追加された油路は、電動ポンプ106で生成された油圧をハイクラッチ50に導く部分のみである。具体的に、本実施形態では、ロークラッチライン142からハイクラッチライン143を分岐させるという簡素な構成により、電動ポンプ106からハイクラッチ50へ油圧を供給可能な油路が形成されている。
したがって、電動ポンプ106からロークラッチ40及びハイクラッチ50までの各油路を短く簡素に形成することができるため、電動ポンプ106の容量の増大を抑制できる。そのため、電動ポンプ106の小型化が図られることで、エンジンルーム等への電動ポンプ106の搭載性が向上すると共に、アイドルストップ中における電力消費を抑制できる。
[制御システム]
図4に示すように、エンジン1及び自動変速機4に関連する各種制御は制御装置150によって行われる。制御装置150は、例えば、エンジン1に搭載されたECU(Engine Control Unit)151と、自動変速機4に搭載されたTCM(Transmission Control Module)152とを備えており、ECU151とTCM152とは、例えばCAN通信を介して互いに電気的に接続されている。
ECU151には、アクセルペダルの踏み込み量(アクセル開度)を検出するアクセルセンサ160、エンジン1の回転数を検出するエンジン回転数センサ161、及び、ブレーキペダルの踏み込みを検出するブレーキスイッチ162等からの信号が入力される。
ECU151は、これらの入力信号に基づき、エンジン1の燃料供給装置90、点火装置92及び始動装置94に制御信号を出力して、エンジン1のアイドルストップ制御における自動停止または自動再始動など、エンジン1の動作に関する各種制御を行う。また、ECU151は、アイドルストップ制御を行うとき、電動ポンプ106を駆動するモータ105に制御信号を出力する。ただし、該モータ105は、TCM152によって制御されてもよい。
TCM152には、自動変速機4が搭載された車両の速度を検出する車速センサ163からの信号と、運転者によって選択されている自動変速機4のレンジを検出するレンジセンサ164からの信号と、トルクコンバータ3のタービン3cの回転数を検出するタービン回転数センサ165からの信号と、油圧回路100のLRブレーキライン141に設けられた油圧スイッチ170からの信号とが入力される。
そして、これらの入力信号に基づき、TCM152は、油圧回路100に設けられた上述のオンオフSV104及び第1〜第3LSV101〜103を含む各油圧制御弁に制御信号を出力する。これにより、選択されたレンジや車両の運転状態に応じて各油圧制御弁の開閉ないし出力圧が制御され、各摩擦締結要素40,50,60,70,80への油圧供給が制御されることで、図2の締結表に従って各変速段が実現されるように変速制御が行われる。
[停車時アイドルストップ制御の動作例]
図5に示すフローチャートと、図6に示すタイムチャートを併せて参照しながら、停車状態又は極低車速状態でエンジン1を自動停止させる停車時アイドルストップ制御に関するエンジン1及び自動変速機4の動作例を説明する。
図5に示す制御動作は、Dレンジが選択された停車状態又は極低車速状態でエンジン1の所定の自動停止条件が成立したときに、制御装置150によって実行される。
停車時アイドルストップ制御における自動停止条件は、車速が所定車速以下の極低車速状態又は停車状態であること、バッテリの残容量が所定量以上であること、エンジン水温が所定温度以上であること、アクセルペダルが離されていること、及び、ブレーキペダルが踏み込まれていること等の複数の所定条件を含み、全ての所定条件を満たしたときに、自動停止条件が成立する。
自動停止条件が成立すると、先ず、ステップS1で、エンジン1の自動停止が実行されるとともに、ステップS2で、モータ105に作動信号が出力されることで、電動ポンプ106の作動が開始される。具体的に、ステップS1では、エンジン1の燃焼が停止されることで、エンジン1が自動停止する。図6の符号aに示すように、エンジン1の燃焼が停止されると、エンジン1の回転数の低下と共に、機械ポンプ6から出力されるライン圧が低下し、図6の符号bに示すように、電動ポンプ106の駆動が開始されると、電動ポンプ106の吐出圧が上昇する。
ステップS1におけるエンジン1の燃焼停止と、ステップS2における電動ポンプ106の駆動開始を行うタイミングは限定されるものでないが、図6に示す動作例では、エンジン1の燃焼停止が行われる前に電動ポンプ106の駆動が開始され、電動ポンプ106の吐出圧の立ち上がりが完了するタイミングでエンジン1の燃焼が停止される。
この結果、油圧源切換バルブ114の第2切換ポートA2に入力される電動ポンプ106からの油圧によってスプール115に作用する力が、油圧源切換バルブ114の第1切換ポートA1に入力されるライン圧による力及びスプリングの弾性力に打ち勝つと、ステップS3で、油圧源切換バルブ114のスプール115が機械ポンプ6側(図3の左側の第1位置)から電動ポンプ106側(図3の右側の第2位置)に移動する(図6の符号c参照)。以後、アイドルストップ中は、電動ポンプ106で生成された油圧による油圧制御が行われる。
ステップS3において油圧源切換バルブ114が機械ポンプ6側から電動ポンプ106側に切り換えられると、ステップS4において、電動ポンプ106で生成された油圧がLRブレーキ60及びロークラッチ40の各油圧室に供給される。つまり、アイドルストップが実行されると、油圧源が機械ポンプ6から電動ポンプ106に切り換えられた上で、LRブレーキ60及びロークラッチ40の各油圧室への油圧の供給は継続して行われる。
具体的に、ステップS4において、LRブレーキ60への油圧の供給は、オンオフSV104がオンされて閉じられることで開閉バルブ116が開かれると共に、LRブレーキライン141上の第1LSV101の出力圧が制御されることで行われ、ロークラッチ40への油圧の供給は、ロークラッチライン142上の第3LSV103の出力圧が制御されることで行われる。なお、このとき、ハイクラッチライン143上の第2LSV102は閉じられており、ハイクラッチ50への油圧の供給は行われない。
ステップS4で行われるアイドルストップ中におけるLRブレーキ60及びロークラッチ40の各油圧室への油圧の供給は、LRブレーキ60及びロークラッチ40の両方を完全に締結するように行ってもよいし、一方を締結しつつ他方を締結準備したり、両方を締結準備したりするようにしてもよい。なお、第1実施形態において、「締結準備」とは、油圧室に油圧をプリチャージすることでクラッチクリアランスを詰めておくことを意味する。
続くステップS5では、油圧スイッチ170の出力信号に基づいて、LRブレーキ60の油圧室への油圧の供給が正常に行われているか否かが判定される。ステップS5の判定の結果、油圧スイッチ170がオンであり、LRブレーキ60の油圧室に正常に油圧が供給されていれば、ステップS6で、エンジン1の所定の再始動条件が成立したか否かが判定される。
再始動条件としては、例えば、ブレーキペダルが離されるなどの発進要求がなされること、バッテリ残容量が所定量以下であること、カーエアコン等の車両搭載機器の電力消費量が所定量以上であること、又は、ディーゼル自動車の場合においてディーゼル微粒子フィルタ(DPF)の再生を開始することなどが挙げられる。
ステップS5及びステップS6の判定は、LRブレーキ60へ油圧が正常に供給される限り、エンジン1の再始動条件が成立するまで繰り返し実行される。
ステップS5の判定の結果、油圧スイッチ170がオフであり、LRブレーキ60の油圧室に油圧が供給されない異常が生じている場合、ステップS10で、ロークラッチ40への油圧の供給が継続されつつ、図6の符号eに示すようにハイクラッチ50へ油圧が供給されるように第2LSV102が制御され、これにより、アイドルストップ状態での4速の実現が可能になる。また、このとき、LRブレーキ60への油圧の供給が停止されるように第1LSV101が閉じられる。
LRブレーキ60へ油圧を供給できなくなる異常は、例えば、図6の符号dに示すようにオンオフSV104の開故障によって開閉バルブ116のスプール117がLRブレーキライン141を閉じる第2位置に固定されること等によって生じる。
ステップS10で行われるハイクラッチ50及びロークラッチ40の各油圧室への油圧の供給は、ハイクラッチ50及びロークラッチ40の両方を完全に締結するように行ってもよいし、一方を締結しつつ他方を締結準備したり、両方を締結準備したりするようにしてもよい。
続くステップS11では、ステップS6と同様、エンジン1の再始動条件が成立したか否かが判定される。ステップS11の判定は、再始動条件が成立するまで繰り返し実行される。
ステップS6又はステップS11の判定の結果、エンジン1の再始動条件が成立すると、ステップS7で、エンジン1の燃焼が再開されることで、エンジン1が再始動される。
例えば、図6の符号fで示すようにブレーキペダルが離されると、この発進要求に応じてエンジン1が再始動される。このとき、正常時には、ステップS4においてアイドルストップ中にロークラッチ40及びLRブレーキ60が予め締結又は締結準備されていることにより、通常通り、1速での発進が速やかに行われ、異常時には、上述のようにステップS10においてアイドルストップ中にロークラッチ40及びハイクラッチ50が予め締結又は締結準備されていることにより、4速での発進が速やかに行われる。したがって、正常時は勿論、異常時においても、発進要求に応じてエンジン1が再始動されるときに良好な応答性が得られる。
ステップS7におけるエンジン1の再始動によって、エンジン1の回転数と共に機械ポンプ6の吐出圧が立ち上がると、ステップS8で、油圧源切換バルブ114のスプール115が電動ポンプ106側(図3の右側の第2位置)から機械ポンプ6側(図3の左側の第1位置)に移動し(図6の符号g参照)、以後は、機械ポンプ6で生成された油圧による油圧制御が行われる。
その後、所定時間が経過すると、ステップS9で、モータ105に停止信号が出力されることで、電動ポンプ106の作動が停止される。
なお、図5に示す制御動作は停車時アイドルストップ制御の一例に過ぎず、具体的な制御動作については種々の変更が可能である。
例えば、図5に示す例では、ステップS10において、ロークラッチ40及びハイクラッチ50の両方の油圧室に油圧が供給されることでこれらのクラッチ40,50が締結又は締結準備されるが、ハイクラッチ50の油圧室のみに油圧を供給して、ロークラッチ40を解放しておいてもよい。この場合にも、エンジン1の再始動時にはハイクラッチ50が予め締結されているか又は締結準備状態から速やかに締結されるため、エンジン1の再始動により立ち上げられる機械ポンプ6の吐出圧によってロークラッチ40のみを締結すればよいため、両方のクラッチ40,50を機械ポンプ6の吐出圧によって締結する場合に比べて、良好な発進応答性が得られる。
また、図5に示す例では、ステップS5で異常判定されると、異常の有無が再度診断されることなく、直ちにステップS10でハイクラッチ50に油圧が供給されるが、異常判定がなされた後に再度診断を行うようにした上で、異常判定が所定回数なされたときに初めてステップS10が実行されるようにしてもよい。
[走行時アイドルストップ制御]
近年、エンジンの燃費性能を更に向上させるために、広く実用化された上記の停車時アイドルストップ制御に加えて、例えば高速道路でのコースティング走行中など、アクセルペダルが離されているか又は僅かに踏み込まれているような加速要求のない比較的高車速での走行中において、エンジンの燃焼を停止すると共に自動変速機をニュートラル状態にすることでエンジンを自動停止させる走行時アイドルストップ制御の実用化が検討されている。
しかしながら、このような走行時アイドルストップ制御が実行されている状態で再加速が要求されたとき、この加速要求に応じてエンジンが再始動してから、機械ポンプの吐出圧が立ち上がり、運転状態に応じた変速段を実現するための複数の摩擦締結要素に作動油が供給されるまでに時間がかかるため、これらの摩擦締結要素の締結が遅れ、加速応答性が悪くなる問題がある。
また、走行時アイドルストップ制御の実行中に電動ポンプで生成された油圧を摩擦締結要素に供給しておくことで、再加速要求に対する応答性を向上させることも考えられるが、比較的高車速での走行中に低変速段が実現されるとエンジンのオーバレブが生じる可能性があるため、従来のアイドルストップシステム搭載車のように電動ポンプで生成された油圧を発進用摩擦締結要素にしか供給できない油路構成では、そのような制御を採用できない。
これに対して、上述した本実施形態の油圧回路100の構成によれば、電動ポンプ106で生成された油圧を、ロークラッチ40及びLRブレーキ60だけでなく、ハイクラッチ50にも供給可能である。そのため、走行時アイドルストップ制御によるアイドルストップ中にハイクラッチ50の油圧室に油圧を供給して締結又は締結準備状態としておくことで、加速要求に応じてエンジン1が再始動されるとき、ハイクラッチ50が既に締結されているか又は速やかに締結されると共に、機械ポンプ6で生成された油圧の供給によって他の1つの摩擦締結要素が締結されることで、4速以上の変速段(図2参照)を速やかに形成できる。これにより、運転状態に応じた変速段が速やかに形成されて車両が加速されるため、エンジン1のオーバレブを抑制しつつ、良好な加速応答性を得ることが可能になる。
[走行時アイドルストップ制御の動作例]
図7及び図8に示すフローチャートと、図9に示すタイムチャートを併せて参照しながら、走行時アイドルストップ制御に関するエンジン1及び自動変速機4の動作例を説明する。
図7及び図8に示す制御動作は、Dレンジが選択された車両走行状態でエンジン1の所定の自動停止条件が成立したときに、制御装置150によって実行される。また、図9は、アクセルペダルが僅かに踏み込まれた6速でのコースティング走行中に自動停止条件が成立し、図7及び図8に示す制御動作が実行される例を示している。
走行時アイドルストップ制御における自動停止条件は、車速が所定車速以上の車両走行状態であること、アクセル開度が所定開度未満である状態が所定時間継続すること、バッテリの残容量が所定量以上であること、及び、エンジン水温が所定温度以上であること等の複数の所定条件を含み、全ての所定条件を満たしたときに、自動停止条件が成立する。
自動停止条件が成立すると、先ず、ステップS21で、エンジン1の燃焼が停止されると共に自動変速機4がニュートラル状態とされることで、エンジン1が自動停止され、ステップS22で、モータ105に作動信号が出力されることで、電動ポンプ106の作動が開始される。
ステップS21に関して、図9に示す例では、ハイクラッチ50への油圧の供給を維持しつつ、符号pに示すように26ブレーキ70を解放することによってニュートラル状態を実現している。これにより、燃焼停止状態のエンジン1は、駆動輪との連結が遮断されるため、図9の符号qに示すようにエンジン1の回転数が急低下して、その後、エンジン1の回転は完全に停止する。エンジン回転数の低下に伴って、図9の符号rに示すように、機械ポンプ6から出力されるライン圧も低下し、その後、機械ポンプ6は完全に停止する。
ステップS21によるライン圧の低下と、ステップS22による電動ポンプ106の吐出圧の上昇によって、油圧源切換バルブ114の第2切換ポートA2に入力される電動ポンプ106からの油圧によってスプール115に作用する力が、油圧源切換バルブ114の第1切換ポートA1に入力されるライン圧による力及びスプリングの弾性力に打ち勝つと、図7のステップS23で、油圧源切換バルブ114のスプール115が機械ポンプ6側(図3の左側の第1位置)から電動ポンプ106側(図3の右側の第2位置)に移動する(図9の符号s参照)。以後、アイドルストップ中は、電動ポンプ106で生成された油圧による油圧制御が行われる。
続くステップS24では、自動停止条件が成立したときの車両の運転状態に対応する変速段が4速以上であるか否かが判定される。
ステップS24の判定の結果、4速以上の変速段に対応する比較的高車速の運転状態であれば、ステップS25において、電動ポンプ106で生成された油圧がハイクラッチ50へ供給されるように油圧制御が行われ、ハイクラッチ50は締結又は締結準備状態となる。このとき、他の摩擦締結要素、すなわち、ロークラッチ40及びLRブレーキ60への油圧の供給は行われず、これにより、自動変速機4はニュートラル状態に維持される。
一方、ステップS24の判定の結果、3速以下の変速段に対応する比較的低車速の運転状態であれば、図8のステップS35において、電動ポンプ106で生成された油圧がロークラッチ40に供給されるように油圧制御行われ、ロークラッチ40は締結又は締結準備状態となる。このとき、他の摩擦締結要素、すなわち、ハイクラッチ50及びLRブレーキ60への油圧の供給は行われず、これにより、自動変速機4はニュートラル状態に維持される。
ステップS25又はステップS35が実行されると、図7のステップS26又は図8のステップS36において、エンジン1の所定の再始動条件が成立したか否かが判定される。走行時アイドルストップ制御の再始動条件としては、例えば、アクセル開度が所定開度以上になるなどの加速要求がなされること、バッテリ残容量が所定量以下であること、カーエアコン等の車両搭載機器の電力消費量が所定量以上であること、又は、ディーゼル自動車の場合においてディーゼル微粒子フィルタ(DPF)の再生を開始することなどが挙げられる。
ステップS26又はステップS36の判定の結果、再始動条件が成立していない場合は、図7のステップS34又は図8のステップS40において停車したか否かが判定される。図7のステップS26及びステップS34の各判定、又は、図8のステップS36及びステップS40の各判定は、停車しない限り、再始動条件が成立するまで繰り返し実行され、ステップS34又はステップS40の判定の結果、停車した場合は、図7のステップS41に進んで、先に説明した図5に示す停車時アイドルストップ制御が開始されて、図7及び図8に示す走行時アイドルストップ制御は終了する。
図7のステップS25によりハイクラッチ50に油圧が供給されている状態でステップS26の判定が行われた結果、エンジン1の再始動条件が成立すると、ステップS27において、エンジン1の再始動時に必要な変速段、具体的には、再始動条件成立時の運転状態に対応する変速段が、4速以上の変速段であるか否かが判定される。
ステップS27の判定の結果、3速以下の変速段に対応する運転状態である場合、当該変速段の実現のためにはハイクラッチ50を締結する必要がなく、その代わりにロークラッチ40を締結する必要があるため(図2参照)、ステップS32で、ハイクラッチ50が解放されるように油圧制御されると共に、ステップS33で、電動ポンプ106で生成された油圧がロークラッチ40に供給され、ロークラッチ40が締結又は締結準備状態とされた上で、ステップS28で、エンジン1が再始動される。一方、ステップS27の判定の結果、4速以上の変速段に対応する運転状態であれば、ハイクラッチ50への油圧の供給が維持されたまま、ステップS28で、エンジン1が再始動される。
また、図8のステップS35によりロークラッチ40に油圧が供給されている状態でステップS36の判定が行われた結果、エンジン1の再始動条件が成立すると、ステップS37において、エンジン1の再始動時に必要な変速段、具体的には、再始動条件成立時の運転状態に対応する変速段が、4速以下の変速段であるか否かが判定される。
ステップS37の判定の結果、5速以上の変速段に対応する運転状態である場合、当該変速段の実現のためにはロークラッチ40を締結する必要がなく、その代わりにハイクラッチ50を締結する必要があるため(図2参照)、ステップS38で、ロークラッチ40が解放されるように油圧制御されると共に、ステップS39で、電動ポンプ106で生成された油圧がハイクラッチ50に供給され、ハイクラッチ50が締結又は締結準備状態とされた上で、図7のステップS28で、エンジン1が再始動される。一方、ステップS37の判定の結果、4速以下の変速段に対応する運転状態であれば、ロークラッチ40への油圧の供給が維持されたまま、ステップS28で、エンジン1が再始動される。
ステップS28におけるエンジン1の再始動によって、エンジン1の回転数と共に機械ポンプ6の吐出圧が立ち上がると、ステップS29で、油圧源切換バルブ114のスプール115が電動ポンプ106側(図3の右側の第2位置)から機械ポンプ6側(図3の左側の第1位置)に移動し(図9の符号t参照)、これにより、機械ポンプ6で生成された油圧による油圧制御に切り換えられる。
次のステップS30では、必要な変速段、具体的には、再始動条件成立時の運転状態に対応する変速段が実現されるように、既に油圧が供給されているハイクラッチ50又はロークラッチ40と、もう1つの摩擦締結要素とが締結されるように、機械ポンプ6で生成された油圧による油圧制御が行われる。
その後、所定時間が経過すると、ステップS31で、モータ105に停止信号が出力されることで、電動ポンプ106の作動が停止される。
図9に示す例では、電動ポンプ106で生成された油圧によってハイクラッチ50が締結された走行時アイドルストップ状態において、符号uで示すようにアクセルペダルの踏み込み量が増大することで、この加速要求に応じてエンジン1が再始動される。このエンジン1の再始動によって機械ポンプ6の吐出圧が立ち上がると、符号vに示すように、ロークラッチ40が締結準備状態を経て締結され、これにより、ショックを抑制しつつ4速が実現される。この例では、エンジン1の再始動によって油圧源が機械ポンプ6に切り換えられた後、新たに油圧が供給されるのはロークラッチ40のみであるため、速やかに4速を実現することができ、加速要求に対する良好な応答性が得られる。
なお、図7及び図8に示す制御動作は走行時アイドルストップ制御の一例に過ぎず、具体的な制御動作については種々の変更が可能である。
例えば、図7及び図8に示す例では、ステップS25においてハイクラッチ50に油圧が供給され、ロークラッチ40及びLRブレーキ60が解放されるが、自動停止条件成立時の運転状態が4速に対応する場合は、速やかに4速を実現可能なニュートラル状態とするために、ハイクラッチ50を締結しつつロークラッチ40を締結準備状態としたり、ハイクラッチ50及びロークラッチ40の両方を締結準備状態としたり、ハイクラッチ50を締結準備状態としつつロークラッチ40を締結したりするようにしてもよく、これにより、その後の加速要求に応じてエンジン1が再始動するときの運転状態が4速に対応する状態のままであれば、速やかな4速の実現により良好な加速応答性が得られる。
また、図7及び図8に示す例では、エンジン1の再始動時に、再始動条件成立時の運転状態に対応する変速段が形成されるが(ステップS30)、このときの運転状態に関係なく4速を形成するようにしてもよく、例えば、再始動条件成立時の運転状態が5速に対応する場合であっても、再始動時に4速を形成してもよい。この場合、アイドルストップ中に電動ポンプ106で生成された油圧をロークラッチ40及びハイクラッチ50に供給しておくことで、加速要求に応じたエンジン1の再始動時に、動力伝達状態をより迅速に実現することでき、4速での速やかな加速を行うことができる。
[第2実施形態]
続いて、図10〜図12を参照しながら、第2実施形態について説明する。なお、第2実施形態において、第1実施形態と共通する構成については、説明を省略すると共に、図10〜図12において同一の符号を付している。
[タンデムピストン式のLRブレーキ]
図10は、第2実施形態におけるLRブレーキ60の解放状態を示す断面図である。第2実施形態において、LRブレーキ60は、締結時の応答性向上のためのクラッチクリアランス調整機能を有する複動式の油圧アクチュエータ61を備えている。
油圧アクチュエータ61は、変速機ケース5に設けられたシリンダ5a内に軸方向に移動可能に嵌合されたクリアランス調整用ピストン62と、該クリアランス調整用ピストン62の内側に設けられたシリンダ62a内に該クリアランス調整用ピストン62に対して軸方向に相対移動可能に嵌合された締結用ピストン63とを備えている。
変速機ケース5のシリンダ5a内におけるクリアランス調整用ピストン62の背部はクリアランス調整用油圧室(以下、「クリアランス調整室」という)64とされ、クリアランス調整用ピストン62のシリンダ62a内における締結用ピストン63の背部は締結用油圧室(以下、「締結室」という)65とされている。
LRブレーキ60を締結するときに、まずクリアランス調整室64に油圧を供給すれば、クリアランス調整用ピストン62は、締結用ピストン63と共に、両ピストン62,63の位置関係を保持しながら、スプリング66の付勢力に抗してストッパ67に当接するまで図の左側にストロークする。これにより、締結用ピストン63は、変速機ケース5と被制動回転部材(図示せず)とに交互に係合された複数の摩擦板68を押圧することなく該摩擦板68に接した状態もしくはほぼ接した状態、即ち、クラッチクリアランスが小さな締結準備状態(小クリアランス状態)となる。
そして、この締結準備状態で締結室65に油圧を供給すれば、締結用ピストン63は、既に締結のためのストロークがほぼ終了しているから、クリアランス調整用ピストン62のシリンダ62a内で図の左側へ僅かにストロークするだけで、油圧の供給とほぼ同時に摩擦板68を押圧する。これにより、変速機ケース5に固定されたリテーナ69と締結用ピストン63との間にこれらの摩擦板68が挟み込まれて相対回転不能となることで、LRブレーキ60が応答性良く締結されることになる。
なお、図10では、便宜上、最も右側の摩擦板68と締結用ピストン63との間に、LRブレーキ60のクリアランスが集中するように図示されているが、実際には、隣接する摩擦板68間や摩擦板68とリテーナ69との間にもクリアランスは分散される。
以上のように、LRブレーキ60としてタンデムピストン式のブレーキを採用することで、LRブレーキ60の解放状態では大クリアランス状態となることで、潤滑油の粘性による回転抵抗が抑制され、締結時には、小クリアランス状態で締結用ピストン63が作動することで、緻密で応答性の良い締結制御が可能となる。
第2実施形態において、自動変速機4におけるLRブレーキ60以外の摩擦締結要素40,50,70,80としては、第1実施形態と同様のシングルピストン式のものが用いられ、図11の締結表に従って各変速段が実現されるように変速制御が行われる。図11の締結表に示すように、LRブレーキ60の締結を必要としない2〜6速は、第1実施形態と同じ締結状態の組み合わせによって形成される。
また、図11の締結表に示すように、第2実施形態では、Dレンジでの1速や、Rレンジでの後退速を形成するためにLRブレーキ60を締結するときは、クリアランス調整室64と締結室65の両方に油圧が供給されることになり、Nレンジでのニュートラル状態では、LRブレーキ60のクリアランス調整室64に油圧が供給されることで、LRブレーキ60が締結準備状態とされる。
[油圧回路]
図12は、第2実施形態における自動変速機4の油圧回路200において、エンジン1のアイドルストップ中の油圧制御に関連する部分を示す回路図である。
図12に示す油圧回路200において、機械ポンプ6及び電動ポンプ106で生成された油圧を油圧源切換バルブ114の各切換ポートA1,A2及び各入力ポートB1〜B4に導く油路構成は、第1実施形態における油圧回路100と同様である。また、油圧源切換バルブ114の第1出力ポートC1からロークラッチ40へ作動油を供給する油路構成、並びに、油圧源切換バルブ114の第2出力ポートC2から開閉バルブ116の切換ポートD1及び入力ポートE1へ作動油を供給する油路構成も、第1実施形態の油圧回路100と同様である。以下、油圧回路200において、第1実施形態の油圧回路100と異なる構成について説明する。
LRブレーキ60のクリアランス調整室64は、クリアランス調整ライン242を介して開閉バルブ116の出力ポートF1に接続されている。これにより、開閉バルブ116のスプール117が図中左側の第1位置に位置することでクリアランス調整ライン242がベースライン140に連通するとき、ベースライン140及びクリアランス調整ライン242を介してクリアランス調整室64に作動油を供給可能となる。
クリアランス調整ライン242上には油圧スイッチ170が設けられており、該油圧スイッチ170によって、LRブレーキ60のクリアランス調整室64における油圧の給排状態が検出される。
また、油圧回路200は、LRブレーキ60の締結室65に作動油を供給する第1状態と、ハイクラッチ50に作動油を供給する第2状態との間での切り換えを行う供給先切換バルブ218を備えている。これにより、LRブレーキ60の締結室65には、第1状態の供給先切換バルブ218を介して作動油を供給可能であり、ハイクラッチ50の油圧室には、第2状態の供給先切換バルブ218を介して作動油を供給可能となっている。
供給先切換バルブ218の一端には、スプール219の位置を切り換えるための切換ポートG1が設けられている。切換ポートG1には、クリアランス調整ライン242から分岐した第1分岐ライン251が接続されている。
また、供給先切換バルブ218は、第1分岐ライン251から更に分岐した第2分岐ライン252が接続された第1入力ポートH1と、クリアランス調整ライン242、第1分岐ライン251及び第2分岐ライン252とは独立した油圧供給経路である独立ライン243が接続された第2入力ポートH2とを備えている。独立ライン243は、第3LSV103よりも上流側においてロークラッチライン142から分岐しており、独立ライン243には、油圧源切換バルブ114の第1出力ポートC1からロークラッチライン142を介して作動油が供給される。
さらに、供給先切換バルブ218は、第1入力ポートH1又は第2入力ポートH2から導入された作動油を一旦排出する第1出力ポートI1と、再入力ライン253を介して第1出力ポートI1に接続された第3入力ポートH3と、締結ライン254を介してLRブレーキ60の締結室65に接続された第2出力ポートI2と、ハイクラッチライン255を介してハイクラッチ50の油圧室に接続された第3出力ポートI3とを備えている。再入力ライン253上には、第4リニアソレノイドバルブ(以下、「第4LSV」と記す)204が設けられている。第4LSV204は、開閉のみならず、出力圧を制御可能な電磁弁である。
クリアランス調整ライン242を介して第1分岐ライン251に供給された油圧が供給先切換バルブ218の切換ポートG1に入力されるとき、供給先切換バルブ218のスプール219が図中右側の第1位置に位置し、これにより、供給先切換バルブ218は第1状態となる。供給先切換バルブ218の第1状態では、クリアランス調整ライン242及び第1分岐ライン251を介して第2分岐ライン252に供給された油圧が、供給先切換バルブ218の第1入力ポートH1及び第1出力ポートI1を通過して再入力ライン253に供給される。このようにして再入力ライン253に供給された油圧は、第4LSV204の出力圧を制御することで、供給先切換バルブ218の第3入力ポートH3及び第2出力ポートI2を通過して、締結ライン254を介してLRブレーキ60の締結室65に供給され得る。
一方、供給先切換バルブ218の切換ポートG1に油圧が入力されないときは、供給先切換バルブ218のスプール219が図中左側の第2位置に位置し、これにより、供給先切換バルブ218は第2状態となる。供給先切換バルブ218の第2状態では、ロークラッチライン142を介して独立ライン243に供給された油圧が、供給先切換バルブ218の第2入力ポートH2及び第1出力ポートI1を通過して再入力ライン253に供給される。このようにして再入力ライン253に供給された油圧は、第4LSV204の出力圧を制御することで、供給先切換バルブ218の第3入力ポートH3及び第3出力ポートI3を通過して、ハイクラッチライン255を介してハイクラッチ50の油圧室に供給され得る。
以上の油圧回路200の構成によれば、第1実施形態と同様、機械ポンプ6又は電動ポンプ106で生成された油圧は、油圧源切換バルブ114の第1及び第2出力ポートC1,C2からロークラッチライン142及びベースライン140にそれぞれ供給される。
第1出力ポートC1からロークラッチライン142に供給された油圧は、第3LSV103を開くことによってロークラッチ40の油圧室に供給可能である。
第2出力ポートC2からベースライン140に供給された油圧は、オンオフSV104をオンにして閉じることで開閉バルブ116を開くことによって、クリアランス調整ライン242を介してLRブレーキ60のクリアランス調整室64に供給可能である。このとき、クリアランス調整ライン242及び第1分岐ライン251を介して供給先切換バルブ218の切換ポートG1に油圧が導入されることで、供給先切換バルブ218は第1状態となり、この第1状態では、第4LSV204を開くことによってLRブレーキ60の締結室65にも供給可能である。
クリアランス調整室64に油圧を供給するとき、第4LSV204を閉じることで締結室65への油圧供給を停止しておくことで、クリアランス調整室64への作動油の充填が速やかに完了する。これにより、電動ポンプ106の容量を増大させることなく、LRブレーキ60の状態を、クラッチクリアランスが大きな解放状態からクラッチクリアランスが小さな締結準備状態へ速やかに移行させることができる。
このようにしてLRブレーキ60の締結準備状態が実現された後、第4LSV204が開かれて、該第4LSV204の出力圧が制御されることで、締結準備状態において締結室65への油圧供給を緻密に制御できる。したがって、LRブレーキ60の締結準備状態において、例えば、締結用ピストン63(図10参照)の位置を微調整することができる。
供給先切換バルブ218の第1状態において、ロークラッチ40が締結されると共にLRブレーキ60が締結準備されているとき、締結室65へ油圧を供給してLRブレーキ60を締結することで、ショックを抑制しつつ速やかに1速を実現できる。
締結室65への油圧の供給は、必ずクリアランス調整ライン242を経由して行われるため、締結室65に油圧が供給されるときは必ずクリアランス調整室64にも油圧が供給されることになる。したがって、クリアランス調整室64に油圧供給されることなく締結室65に油圧供給されるという異常な給油でのLRブレーキ60の締結を確実に防止できる。
また、第1状態における供給先切換バルブ218は、上記のようにLRブレーキ60の締結室65への油圧の供給を許容しつつ、ロークラッチライン142、独立ライン243、再入力ライン253及びハイクラッチライン255を介したハイクラッチ50への油圧の供給をスプール219によって遮断する。これにより、LRブレーキ60とハイクラッチ50が同時に締結されることが確実に防止される。
一方、オンオフSV104をオフにして開くことで開閉バルブ116を閉じると、そのスプール117によってクリアランス調整ライン242への油圧の供給が遮断され、これにより、供給先切換バルブ218の切換ポートG1に油圧が導入されないため、供給先切換バルブ218は第2状態となる。
供給先切換バルブ218の第2状態では、独立ライン243と再入力ライン253とが連通することでハイクラッチ50への油圧の供給が許容されると共に、第2分岐ライン252と再入力ライン253との連通がスプール219によって遮断されることで、LRブレーキ60の締結室65への油圧の供給が遮断される。したがって、第2状態においても、LRブレーキ60とハイクラッチ50が同時に締結されることが確実に防止される。
このように、供給先切換バルブ218が第1状態又は第2状態のいずれであっても、LRブレーキ60とハイクラッチ50が同時に締結されることが防止されることで、自動変速機4のインターロック等の原因となる摩擦締結要素の多重結合が確実に防止される。
また、LRブレーキ60の締結室65及びハイクラッチ50の油圧室へ供給される油圧を直接的に制御する油圧制御弁として、第4LSV204が共用されていることにより、部品点数の低減と、油圧制御ユニットの小型化を図ることができる。
供給先切換バルブ218の第2状態において、再入力ライン253に供給された油圧は、第4LSV204を開くことによって、ハイクラッチライン255を介してハイクラッチ50の油圧室に供給される。したがって、供給先切換バルブ218が第2状態であるとき、第3LSV103及び第4LSV204を開いてロークラッチ40及びハイクラッチ50に油圧を供給することで、4速の実現が可能となっている(図11参照)。
以上のように構成された油圧回路200では、エンジン1の駆動中には機械ポンプ6で生成された油圧によって、アイドルストップ中には電動ポンプ106で生成された油圧によって、油圧制御が行われる。特に、上記の油圧回路200は、電動ポンプ106で生成された油圧を、ロークラッチ40とLRブレーキ60だけでなく、ハイクラッチ50にも供給できるように構成されていることにより、アイドルストップ中において、1速だけでなく、4速の実現が可能となっている。
したがって、第1実施形態と同様、オンオフSV104の開故障等によりアイドルストップ中に電動ポンプ106で生成された油圧をLRブレーキ60に供給できない異常が発生した場合であっても、例えば図5に示す制御動作のように停車時アイドルストップ制御が実行されることにより、ロークラッチ40及びLRブレーキ60の締結により1速を実現する代わりに、ロークラッチ40及びハイクラッチ50の締結により4速を実現することで、発進要求に応じてエンジン1が再始動するとき、4速での発進が可能になる。
また、発進要求に応じてエンジン1が再始動するとき、アイドルストップ中に予め立ち上げられた電動ポンプ106の吐出圧を利用して4速が実現されることで、吐出圧の立ち上がりを待つことなく速やかな発進を行うことができる。そのため、上記のような異常が発生しても、そのことによる発進性の悪化を抑制することができる。
さらに、油圧回路200では、供給先切換バルブ218を設けることにより摩擦締結要素の多重結合を確実に回避しつつ、ロークラッチライン142から分岐した独立ライン243を供給先切換バルブ218の第2入力ポートH2に接続するという簡素な構成により、電動ポンプ106からハイクラッチ50へ油圧を供給可能な油路が形成されている。したがって、電動ポンプ106からロークラッチ40及びハイクラッチ50までの各油路を短く簡素に形成することができるため、電動ポンプ106の容量の増大を抑制できる。そのため、電動ポンプ106の小型化が図られることで、エンジンルーム等への電動ポンプ106の搭載性が向上すると共に、アイドルストップ中における電力消費を抑制できる。
また、第1実施形態と同様、例えば図7及び図8に示す制御動作のように走行時アイドルストップ制御が行われる場合、車両走行中のアイドルストップ状態において、電動ポンプ106で生成された油圧をハイクラッチ50の油圧室に供給して締結又は締結準備状態としておくことが可能である。この場合、加速要求に応じてエンジン1が再始動されるとき、ハイクラッチ50が既に締結されているか又は速やかに締結されると共に、機械ポンプ6で生成された油圧の供給によって他の1つの摩擦締結要素が締結されることで、4速以上の変速段(図11参照)を速やかに形成できる。これにより、運転状態に応じた変速段が速やかに形成されて車両が加速されるため、エンジン1のオーバレブを抑制しつつ、良好な加速応答性を得ることが可能になる。
[第3実施形態]
図13を参照しながら、第3実施形態について説明する。なお、第3実施形態において、第1又は第2実施形態と共通する構成については、説明を省略すると共に、図13において同一の符号を付している。
図13は、第3実施形態における自動変速機4の油圧回路300において、エンジン1のアイドルストップ中の油圧制御に関連する部分を示す回路図である。
第3実施形態における油圧回路300には、エンジン1の回転とは無関係に作動する油圧源として、第1及び第2実施形態における電動ポンプ106に代えて、機械ポンプ6の作動によって蓄圧されると共に機械ポンプ6の停止時に放圧するアキュムレータ306が設けられている。
また、油圧回路300は、油圧源の変更に伴って、第1及び第2実施形態のものとは異なる油圧源切換バルブ314を備えているが、油圧源切換バルブ314よりも下流側の油路構成は、第2実施形態の油圧回路200と同様である。以下、油圧回路300において、第2実施形態の油圧回路200と異なる構成について説明する。
油圧源切換バルブ314の一端には、スプール315の位置を切り換えるための切換ポートJ1が設けられている。切換ポートJ1には、機械ポンプ6からライン圧が供給されるメインライン320が接続されている。
エンジン1の駆動中、すなわち機械ポンプ6の作動時には、該機械ポンプ6からメインライン320を経由して切換ポートJ1に油圧が導入されることで、スプール315は図中右側の第1位置に位置し、機械ポンプ6の停止時には、切換ポートJ1に油圧が導入されないことにより、スプール315は図中左側の第2位置に位置する。
また、油圧源切換バルブ314は、第1〜第6入力ポートK1〜K5と、第1及び第2出力ポートL1,L2と、蓄圧ポートM1と、放圧ポートN1とを更に備えている。
第1入力ポートK1には、機械ポンプ6からメインライン320及びDレンジ位置のマニュアルバルブ112を介してライン圧が供給される第1入力ライン321が接続され、第2、第3入力ポートK2,K3には、マニュアルバルブ112よりも下流側においてメインライン320から分岐した第2、第3入力ライン322,323がそれぞれ接続されている。蓄圧ポートM1は、アキュムレータライン330を介してアキュムレータ306に接続され、放圧ポートN1は、放圧ライン340を介して第4、第5入力ポートK4,K5に接続されている。第1出力ポートL1にはロークラッチライン142が接続されており、第2出力ポートL2にはベースライン140が接続されている。
エンジン1が駆動されているとき、すなわち、油圧源切換バルブ314のスプール315が第1位置(図中右側の位置)にあるとき、第1、第2出力ポートL1,L2には第1、第2入力ポートK1,K2がそれぞれ連通し、機械ポンプ6で生成された油圧が第1、第2出力ポートL1,L2からそれぞれロークラッチライン142及びベースライン140に供給される。
また、このとき、第3入力ポートK3は蓄圧ポートM1に連通し、これにより、機械ポンプ6で生成された油圧が第3入力ライン323及びアキュムレータライン330を介してアキュムレータ306に供給され、該アキュムレータ306に蓄圧される。
一方、エンジン1が自動停止すると、油圧源切換バルブ314のスプール315が第2位置(図中左側の位置)に位置し、蓄圧ポートM1が放圧ポートN1に連通し、第4、第5入力ポートK4,K5が第1、第2出力ポートL1,L2にぞれぞれ連通する。これにより、アキュムレータ306に蓄圧された油圧がアキュムレータライン330に放圧され、放圧ライン340を介して第4、第5入力ポートK4,K5に入力されて、第1、第2出力ポートL1,L2からそれぞれロークラッチライン142及びベースライン140に供給される。
このようにして、エンジン1の自動停止時に、油圧源が機械ポンプ6からアキュムレータ306に自動的に切り換えられることになる。第3実施形態によっても、エンジン1の停止時に、機械ポンプ6の代わりに電動ポンプ106を作動させる第2実施形態と同様の油圧制御を行うことが可能となる。
したがって、第2実施形態と同様、アイドルストップ中にLRブレーキ60に油圧を供給できない異常時において、ロークラッチ40及びLRブレーキ60の締結により1速を実現する代わりに、ロークラッチ40及びハイクラッチ50の締結により4速を実現することで、発進要求に応じてエンジン1が再始動するとき、4速での発進を応答性良く行うことが可能になる。
また、アキュムレータ306からロークラッチ40及びハイクラッチ50までの各油路が短く簡素に形成されていることにより、アキュムレータ306の小型化を図ることができる。さらに、アキュムレータ306は電力を消費しないため、アイドルストップ中における電力消費を抑制できる。
またさらに、走行時アイドルストップ制御が行われる場合、車両走行中のアイドルストップ状態においてアキュムレータ306から放圧された油圧をハイクラッチ50に予め供給しておくことで、加速要求に応じてエンジン1が再始動されるとき、ハイクラッチ50が既に締結されているか又は速やかに締結されると共に、機械ポンプ6で生成された油圧の供給によって他の1つの摩擦締結要素が締結されることで、4速以上の変速段(図11参照)での速やかな加速が可能になる。
以上、上述の実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。
例えば、上述の実施形態では、2つの摩擦締結要素の締結によって各変速段が実現される例を説明したが(図2及び図11参照)、3つ以上の摩擦締結要素の締結によって各変速段が実現されるようにしてもよい。また、変速段の実現のために締結される摩擦締結要素の少なくとも1つはワンウェイクラッチであってもよい。
さらに、上述の実施形態では、第1変速比(1速)の実現のために締結される2つの摩擦締結要素(ロークラッチ40及びLRブレーキ60)のうち、1つの摩擦締結要素(LRブレーキ60)が第2変速比(4速)の実現のために締結される例を説明したが、第1変速比の実現のために3つ以上の摩擦締結要素が締結される場合において、これらのうち2つ以上の摩擦締結要素が第2変速比の実現のためにも締結されるようにしてもよい。
また、本発明において、第1油圧室と第2油圧室を有する摩擦締結要素は、上述の第2及び第3実施形態で例示したようなクリアランス調整室64と締結室65を有するタンデムピストン式のLRブレーキ60に限られるものでなく、2つの油圧室を有すると共にこれらの油圧室の双方に油圧が供給されたときに締結されるものであれば、タンデムピストン式以外の摩擦締結要素であってもよい。
さらに、上述の実施形態では、本発明を有段式の自動変速機に適用する例を説明したが、本発明は、複数の摩擦締結要素を有する無段式の自動変速機にも同様に適用することができる。