反射型マスクブランクの代表的な構造は、基板の一方の主表面に、露光光(EUV光)を反射する多層反射膜が形成され、この多層反射膜上に露光光(EUV光)を吸収する吸収体膜が形成された構造のものである。
このような反射型マスクブランクを用いて反射型マスクを製造する場合、まず反射型マスクブランクの表面に電子線描画用のレジスト膜を形成する。次に、このレジスト膜に対し所望の電子線描画、現像を行ってレジストパターンを形成する。次いで、このレジストパターンをマスクとして、上記吸収体膜をドライエッチングして吸収体膜パターン(転写パターン)を形成することにより、多層反射膜上に吸収体膜がパターン状に形成された構造の反射型マスクが出来上がる。
近年、反射型マスクの欠陥に対する要求が高くなり、従来では問題にならなかった多層反射膜付き基板及びマスクブランクにおける多層反射膜上の欠陥が問題となっている。
上記反射型マスクブランクにおける上記多層反射膜及び吸収体膜は、通常、イオンビームスパッタリング装置やDCマグネトロンスパッタリング装置を用いて形成され、上記多層反射膜及び吸収体膜はいずれも基板の主表面の全面に形成され、更に基板の端面にも回り込むように形成される。そして、上記レジスト膜は反射型マスクブランク上の全面に形成されるが、基板周縁部のレジスト膜剥離による発塵を抑制するため、通常、マスクパターンの形成されない基板周縁部のレジスト膜を除去することが行われている。
このように基板周縁部のレジスト膜が除去された(換言すれば、基板周縁部にはレジスト膜が形成されていない)状態の反射型マスクブランクを用いて上記のように反射型マスクを製造した場合、基板周縁部ではレジスト膜が形成されていないため、露出している吸収体膜がエッチングにより除去されて、多層反射膜が露出することになる。通常、反射型マスクの製造工程において、吸収体膜パターンを形成した後に、レジストパターン除去等のために酸性やアルカリ性の水溶液(薬液)を用いたウェット洗浄が行われる。また、半導体装置の製造においても、露光時に反射型マスクに付着した異物を除去するため、薬液を用いたウェット洗浄が行われる。これらの洗浄は少なくとも複数回行われる。波長13〜14nmのEUV光に対する多層反射膜としては、Mo膜とSi膜を交互に40周期程度積層したMo/Si周期積層膜が好ましく用いられるが、この洗浄によって、基板周縁部において露出した多層反射膜が損傷し膜剥がれが発生することがある。このような多層反射膜の膜剥がれは重大なパターン欠陥となるおそれがある。
更に、本発明者らは、基板周縁部において多層反射膜が露出しない場合であっても、多層反射膜が損傷し、吸収体膜の膜剥がれが発生し、それを起因として異物による欠陥が生じることがあることを見出した。具体的には、Mo/Si周期積層膜を多層反射膜として有する反射型マスクブランクに対して、例えばレジスト膜を塗布する前にSPM洗浄(SPM:sulfuric-acid and hydrogen-peroxide mixture)による硫酸を用いた洗浄を行うと、反射型マスクブランクの外周領域の吸収体膜が剥がれ、それに起因したパーティクルが吸収体膜表面に付着して欠陥が発生してしまうことを見出した。尚、SPM洗浄とは、H2SO4及びH2O2を用いた洗浄方法であり、H2SO4:H2O2の比率を1:1〜5:1とした洗浄液を用いて、例えば80〜150℃の温度で処理時間10分程度の条件で行う洗浄のことをいう。SPM洗浄により吸収体膜が剥がれ、欠陥が発生するメカニズムは次の通りであると考えられる。
図6に、反射型マスクブランク30の一例の断面模式図を示す。図6に示す反射型マスクブランクは、マスクブランク用基板10の主表面の上に吸収体膜24を有する。図6に示す反射型マスクブランク30を、反射型マスクの製造工程において、酸性やアルカリ性の水溶液(薬液)を用いたウェット洗浄のとき、図13に示すように、多層反射膜21の端部52が損傷する。この結果、吸収体膜24の端の部分と、マスクブランク用基板10との間に隙間が生じることが考えられる。多層反射膜として、Mo/Si周期積層膜を用いる場合、Mo膜は、SPM洗浄に用いられる硫酸に溶出するので、この現象は顕著に生じる。吸収体膜24と、マスクブランク用基板10との間に隙間が生じるため、図14に示すように、吸収体膜24の端の部分が剥離し、吸収体膜24の表面に付着することで異物70が欠陥として生じることとなる。
吸収体膜24の膜剥がれにより生じた粒子が吸収体膜24の表面に異物70として付着した場合、異物70と、吸収体膜24とは同じ材料からなるため、エッチング等による異物の除去は極めて困難である。したがって、パターン欠陥を防止するために、吸収体膜24の膜剥がれに起因する粒子の発生を防止することは、極めて重要な課題である。
吸収体膜24を有せず、表面に多層反射膜を有する多層反射膜付き基板(図2参照)においても、多層反射膜を構成する複数の材料のうち、一部が溶出することにより、反射型マスクブランクと同様の問題が生じることとなる。すなわち、多層反射膜として、Mo/Si周期積層膜を用いる場合、Mo膜は、SPM洗浄に用いられる硫酸に溶出する。そのためSi膜の一部がSi粒子として、多層反射膜の表面に付着することで異物が欠陥として生じることとなる。Si粒子がSi膜に付着した場合、異物(Si粒子)と、Si膜とは同じ材料からなるため、エッチング等による異物の除去は極めて困難である。
本発明は、上述の問題を解決するためになされたものである。本発明は、マスク製造工程及びマスク使用時の洗浄等による吸収体膜の膜剥がれを防止し、吸収体膜の膜剥がれに起因する欠陥発生を低減することのできる反射型マスクを提供することを目的とする。また、本発明は、吸収体膜の膜剥がれを防止し、吸収体膜の膜剥がれに起因する欠陥発生を低減することのできる反射型マスクを製造するために用いることのできる反射型マスクブランク及び多層反射膜付き基板、並びにそれらの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決するため、以下の本発明の構成によれば、マスク作製後、多層反射膜の露出することがなく、マスク製造工程やマスク使用時の洗浄等による吸収体膜の膜剥がれを防止でき、また吸収体膜の膜剥がれに起因する欠陥を低減することができることを見出した。
本発明は、下記の構成1〜6であることを特徴とする多層反射膜付き基板、下記の構成7であることを特徴とする反射型マスクブランク、下記の構成8であることを特徴とする反射型マスク、下記の構成9〜14であることを特徴とする多層反射膜付き基板の製造方法、下記の構成15であることを特徴とする反射型マスクブランクの製造方法、及び下記の構成16であることを特徴とする半導体装置の製造方法である。
(構成1)
本発明の構成1は、EUVリソグラフィ用反射型マスクブランクの製造に使用される多層反射膜付き基板であって、前記多層反射膜付き基板が、マスクブランク用基板と、前記マスクブランク用基板の表面に形成されたEUV光を反射する多層反射膜とを備え、前記多層反射膜の外周領域に改質領域を有することを特徴とする多層反射膜付き基板である。
本発明の構成1によれば、多層反射膜の外周領域に改質領域を有することにより、吸収体膜の膜剥がれに起因する欠陥発生を低減することができる。
(構成2)
本発明の構成2は、前記多層反射膜が、高屈折率材料からなる高屈折率層と、低屈折率材料からなる低屈折率層との積層膜からなり、前記改質領域が、前記高屈折率材料と、前記低屈折率材料とを含む化合物であることを特徴とする構成1に記載の多層反射膜付き基板である。
多層反射膜が、高屈折率材料からなる高屈折率層と、低屈折率材料からなる低屈折率層との積層膜であることにより、所望の波長の光に対して所望の反射率となる多層反射膜を得ることができる。本発明の構成2によれば、改質領域を、多層反射膜を構成する高屈折率材料(高屈折率層)及び低屈折率材料(低屈折率層)の化合物となるように形成することによって、吸収体膜の膜剥がれに起因する欠陥発生を低減することができる。
(構成3)
本発明の構成3は、前記低屈折率材料が、モリブデンであることを特徴とする構成2に記載の多層反射膜付き基板である。
モリブデンは、SPM洗浄の際に使用する硫酸によって溶出する。本発明の構成3のように、前記低屈折率材料としてモリブデンを用いた場合であっても、高屈折率材料及び低屈折率材料の化合物となるように改質領域を形成することにより、マスクブランク製造工程、マスク製造工程及びマスク使用時の洗浄等の際に、改質領域の溶出を防止することができる。そのため、吸収体膜の膜剥がれに起因する欠陥発生を低減することができる。
(構成4)
本発明の構成4は、前記高屈折率材料が、ケイ素を含む材料であり、前記改質領域が金属シリサイドを含むことを特徴とする構成2又は3に記載の多層反射膜付き基板である。
本発明の構成4によれば、高屈折率材料が、ケイ素を含む材料であることにより、所望の波長の光に対して所望の反射率となる多層反射膜を得ることができる。また、改質領域が金属シリサイドを含むことにより、マスクブランク製造工程、マスク製造工程及びマスク使用時の洗浄等の際の改質領域の溶出を防止することができるので、吸収体膜の膜剥がれに起因する欠陥発生を低減することができる。
(構成5)
本発明の構成5は、前記改質領域は、前記多層反射膜の外周領域の端部から1〜20mmの範囲であることを特徴とする構成1乃至4の何れかに記載の多層反射膜付き基板である。
本発明の多層反射膜付き基板において、改質領域が、前記多層反射膜の外周領域の端部から1〜20mmの範囲であることにより、転写パターン形成領域を妨げることなく、改質領域を形成することができる。
(構成6)
本発明の構成6は、前記多層反射膜の表面に保護膜を有することを特徴とする構成1乃至5の何れかに記載の多層反射膜付き基板である。
本発明の構成6によれば、反射型マスクブランクが多層反射膜上に保護膜を有することにより、転写用マスク(EUVマスク)を製造する際の多層反射膜表面へのダメージを抑制することができるので、EUV光に対する反射率特性がより良好となる。
(構成7)
本発明は、本発明の構成7は、構成1乃至6の何れかに記載の多層反射膜付き基板の前記多層反射膜又は前記保護膜の表面に、EUV光を吸収する吸収体膜を有することを特徴とする反射型マスクブランクである。
反射型マスクブランクの吸収体膜を、吸収体膜を所定の転写パターンにパターニングした場合、所定の転写パターンを有する吸収体膜に入射した光を吸収することができる。この結果、多層反射膜からの反射光として、所定の転写パターン有する露光光を得ることができる。
(構成8)
本発明は、本発明の構成8は、構成7に記載の反射型マスクブランクの前記吸収体膜をパターニングして、前記多層反射膜の表面に吸収体パターンを有することを特徴とする反射型マスクである。
本発明の反射型マスクを用いるならば、マスク製造工程及びマスク使用時の洗浄等をした場合でも、吸収体膜の膜剥がれに起因する欠陥発生を低減することができる。
(構成9)
本発明の構成9は、EUVリソグラフィ用反射型マスクブランクの製造に使用される多層反射膜付き基板の製造方法であって、前記多層反射膜付き基板が、マスクブランク用基板と、前記マスクブランク用基板の表面に形成されたEUV光を反射する多層反射膜とを備え、前記多層反射膜の外周領域に改質領域を形成することを特徴とする多層反射膜付き基板の製造方法である。
本発明の構成9の多層反射膜付き基板の製造方法によれば、多層反射膜の外周領域に改質領域を形成することにより、吸収体膜の膜剥がれに起因する欠陥発生を低減することができる。
(構成10)
本発明の構成10は、前記多層反射膜が、高屈折率材料からなる高屈折率層と、低屈折率材料からなる低屈折率層との積層膜からなり、前記多層反射膜の前記改質領域が、前記高屈折率材料と、前記低屈折率材料とを含む化合物であることを特徴とする構成9に記載の多層反射膜付き基板の製造方法である。
多層反射膜が、高屈折率材料からなる高屈折率層と、低屈折率材料からなる低屈折率層との積層膜であることにより、所望の波長の光に対して所望の反射率となる多層反射膜を得ることができる。本発明の構成10の多層反射膜付き基板の製造方法によれば、改質領域を、多層反射膜を構成する高屈折率材料(高屈折率層)及び低屈折率材料(低屈折率層)の化合物となるように形成することによって、吸収体膜の膜剥がれに起因する欠陥発生を低減することができる。
(構成11)
本発明の構成11は、前記低屈折率材料が、モリブデンであることを特徴とする構成10に記載の多層反射膜付き基板の製造方法である。
モリブデンは、SPM洗浄の際に使用する硫酸によって溶出する。本発明の構成11の多層反射膜付き基板の製造方法のように、前記低屈折率材料としてモリブデンを用いた場合であっても、高屈折率材料及び低屈折率材料の化合物となるように改質領域を形成することにより、マスクブランク製造工程、マスク製造工程及びマスク使用時の洗浄等の際の改質領域の溶出を防止することができる。そのため、吸収体膜の膜剥がれに起因する欠陥発生を低減することができる。
(構成12)
本発明の構成12は、前記高屈折率材料が、ケイ素を含む材料であり、前記改質領域が金属シリサイドを含むことを特徴とする構成10又は11に記載の多層反射膜付き基板の製造方法である。
本発明の構成12の多層反射膜付き基板の製造方法によれば、高屈折率材料が、ケイ素を含む材料であることにより、所望の波長の光に対して所望の反射率となる多層反射膜を形成することができる。また、改質領域が金属シリサイドを含むことにより、マスクブランク製造工程、マスク製造工程及びマスク使用時の洗浄等の際の改質領域の溶出を防止することができるので、吸収体膜の膜剥がれに起因する欠陥発生を低減することができる。
(構成13)
本発明の構成13は、前記多層反射膜の外周領域にレーザ光を照射することによって、前記改質領域を形成することを特徴とする構成9乃至12の何れかに記載の多層反射膜付き基板の製造方法である。
多層反射膜の外周領域にレーザ光を照射することによって、多層反射膜を構成する材料の化合物にすることができるので、マスクブランク製造工程、マスク製造工程及びマスク使用時の洗浄等の際の改質領域の溶出を防止することができる改質領域を形成することができる。
(構成14)
本発明の構成14は、前記多層反射膜の表面に保護膜を形成することを特徴とする構成9乃至13の何れかに記載の多層反射膜付き基板の製造方法である。
本発明の構成14によれば、反射型マスクブランクが多層反射膜上に保護膜を形成することにより、転写用マスク(EUVマスク)を製造する際の多層反射膜表面へのダメージを抑制することができるので、EUV光に対する反射率特性の低下を抑制できる。
(構成15)
本発明は、本発明の構成15は、マスクブランク用基板と、前記マスクブランク用基板の表面上に形成されたEUV光を反射する多層反射膜と、前記多層反射膜の表面に形成されたEUV光を吸収する吸収体膜とを備えた反射型マスクブランクの製造方法である。本発明の構成15の反射型マスクブランクの製造方法は、前記多層反射膜及び前記吸収体膜の外周領域にレーザ光を照射することによって、前記多層反射膜の外周領域に改質領域を形成することを特徴とする。
多層反射膜及び吸収体膜の外周領域にレーザ光を照射することによって、多層反射膜を構成する材料の化合物、又は多層反射膜及び吸収体膜を構成する材料の化合物の改質領域を形成することができるので、マスクブランク製造工程、マスク製造工程及びマスク使用時の洗浄等の際の改質領域の溶出を防止することができる。
(構成16)
本発明は、本発明の構成16は、構成8に記載の反射型マスクを用いて、露光装置を使用したリソグラフィプロセスを行い、被転写体に転写パターンを形成する工程を有することを特徴とする半導体装置の製造方法である。
構成16の半導体装置の製造方法では、吸収体膜の膜剥がれに起因する欠陥発生を低減することのできる反射型マスクを使用できるので、半導体基板等の被転写体上に形成されたレジスト膜に転写する回路パターン等の転写パターンに欠陥がなく、微細でかつ高精度の転写パターンを有する半導体装置を製造することができる。
本発明によれば、マスク製造工程及びマスク使用時の洗浄等による吸収体膜の膜剥がれを防止し、吸収体膜の膜剥がれに起因する欠陥発生を低減することのできる反射型マスクを提供することができる。また、本発明によれば、吸収体膜の膜剥がれを防止し、吸収体膜の膜剥がれに起因する欠陥発生を低減することのできる反射型マスクを製造するために用いることのできる反射型マスクブランク及び多層反射膜付き基板、並びにそれらの製造方法を提供することができる。
本発明は、EUVリソグラフィ用反射型マスクブランクの製造に使用される多層反射膜付き基板であって、マスクブランク用基板の主表面の上に、高屈折率層と低屈折率層とを交互に積層した多層反射膜を含む多層反射膜付き基板である。また、本発明は、多層反射膜付き基板の多層反射膜の表面の上に吸収体膜を有する反射型マスクブランクである。本発明の多層反射膜付き基板及び反射型マスクブランクは、多層反射膜の外周領域に改質領域を有することに特徴がある。
改質領域とは、マスクブランク製造工程、マスク製造工程及びマスク使用時の洗浄等の際の多層反射膜の溶出を防止するために、多層反射膜を改質することにより形成された領域である。
図2は、多層反射膜付き基板20の一例を示す断面模式図である。多層反射膜付き基板20とは、マスクブランク用基板10の主表面の上に、多層反射膜21を有する構造のものである。尚、多層反射膜付き基板20は、多層反射膜21の表面に保護膜22を有することができる。
図3は、本発明の多層反射膜付き基板20の一例を示す断面模式図である。本発明の多層反射膜付き基板20は、マスクブランク用基板10の主表面の上に、多層反射膜21を有し、その外周領域54(図2を参照)に改質領域60を有する。
図6、図9、及び図11は、一般的な反射型マスクブランク30の例を示す断面模式図である。図6に示す反射型マスクブランク30は、図2に示す多層反射膜付き基板20の表面に、吸収体膜24を有する。図9に示す反射型マスクブランク30は、図2に示す多層反射膜付き基板20の表面に、保護膜22及び吸収体膜24を有する。図11に示す反射型マスクブランク30は、図2に示す多層反射膜付き基板20の表面に、保護膜22、吸収体膜24及びエッチングマスク膜25を有する。
図4、図7、図8、図10及び図12は、本発明の反射型マスクブランク30の例を示す断面模式図である。これらの図に示す反射型マスクブランク30は、多層反射膜21の外周領域54(図2、図6、図9及び図11参照)に改質領域60を有する。
本明細書において、マスクブランク用基板10の主表面の上に積層して形成される、多層反射膜21及び吸収体膜24等を含む複数の膜を総称してマスクブランク用多層膜という場合がある。マスクブランク用多層膜は、多層反射膜21及び吸収体膜24以外に、更に、多層反射膜21及び吸収体膜24の間に形成される保護膜22、及び/又は吸収体膜24の表面に形成されるエッチングマスク膜25を含むことができる。図6、図9及び図11に示す反射型マスクブランク30は、マスクブランク用基板10の主表面にマスクブランク用多層膜を有している。
本明細書において、「マスクブランク用基板10の主表面に、マスクブランク用多層膜を有する」とは、マスクブランク用多層膜が、マスクブランク用基板10の表面に接して配置されることを意味する場合の他、マスクブランク用基板10と、マスクブランク用多層膜との間に他の膜を有することを意味する場合も含む。また、本明細書において、例えば「膜Aが膜Bの表面に接して配置される」とは、膜Aと膜Bとの間に他の膜を介さずに、膜Aと膜Bとが直接、接するように配置されていることを意味する。
次に、本発明の多層反射膜付き基板20及び反射型マスクブランク30について、具体的に説明する。
[マスクブランク用基板10]
まず、本発明の多層反射膜付き基板20及び反射型マスクブランク30に用いることのできるマスクブランク用基板10について以下に説明する。
図1(a)は、本発明の多層反射膜付き基板20及び反射型マスクブランク30に用いることのできるマスクブランク用基板10の一例を示す斜視図である。図1(b)は、図1(a)に示すマスクブランク用基板10の断面模式図である。
マスクブランク用基板10(又は、単に基板10と称す場合がある。)は、矩形状の板状体であり、2つの対向主表面2と、端面1とを有する。2つの対向主表面2は、この板状体の上面及び下面であり、互いに対向するように形成されている。また、2つの対向主表面2の少なくとも一方は、転写パターンが形成されるべき主表面である。
端面1は、この板状体の側面であり、対向主表面2の外縁に隣接する。端面1は、平面状の端面部分1d、及び曲面状の端面部分1fを有する。平面状の端面部分1dは、一方の対向主表面2の辺と、他方の対向主表面2の辺とを接続する面であり、側面部1a、及び面取斜面部1bを含む。側面部1aは、平面状の端面部分1dにおける、対向主表面2とほぼ垂直な部分(T面)である。面取斜面部1bは、側面部1aと対向主表面2との間における面取りされた部分(C面)であり、側面部1aと対向主表面2との間に形成される。
曲面状の端面部分1fは、基板10を平面視したときに、基板10の角部10a近傍に隣接する部分(R部)であり、側面部1c及び面取斜面部1eを含む。ここで、基板10を平面視するとは、例えば、対向主表面2と垂直な方向から、基板10を見ることである。また、基板10の角部10aとは、例えば、対向主表面2の外縁における、2辺の交点近傍である。2辺の交点とは、2辺のそれぞれの延長線の交点であってよい。本例において、曲面状の端面部分1fは、基板10の角部10aを丸めることにより、曲面状に形成されている。
本発明の多層反射膜付き基板20及び反射型マスクブランク30に用いるマスクブランク用基板10の主表面、及び、多層反射膜付き基板20の多層反射膜21の表面は、所定の表面粗さであることが好ましい。マスクブランク用基板10の主表面は、触媒基準エッチング(Catalyst Referred Etching:以下、CAREともいう)により表面加工された表面とすることが好ましい。
本発明の反射型マスクブランク30に用いるマスクブランク用基板10は、転写パターンが形成される側の主表面は、少なくともパターン転写精度、位置精度を得る観点から高平坦度となるように表面加工されていることが好ましい。EUVの反射型マスクブランク用基板10の場合、基板10の転写パターンが形成される側の主表面の132mm×132mmの領域、又は142mm×142mmの領域において、平坦度が0.1μm以下であることが好ましく、特に好ましくは0.05μm以下である。更に好ましくは、基板10の転写パターンが形成される側の主表面132mm×132mmの領域において、平坦度が0.03μm以下である。また、転写パターンが形成される側と反対側の主表面は、露光装置にセットする時の静電チャックされる面であって、142mm×142mmの領域において平坦度が0.1μm以下が好ましく、138mm×138mmの領域において0.05μm以下が更に好ましく、特に好ましくは0.05μm以下である。
EUV露光用の反射型マスクブランク用基板10の材料としては、低熱膨張の特性を有するものであれば何でもよい。例えば、低熱膨張の特性を有するSiO2−TiO2系ガラス(2元系(SiO2−TiO2)及び3元系(SiO2−TiO2−SnO2等))、例えばSiO2−Al2O3−Li2O系の結晶化ガラスなどの所謂、多成分系ガラスを使用することができる。また、上記ガラス以外にシリコンや金属などの基板を用いることもできる。
上述のように、EUV露光用のマスクブランク用基板10の場合、基板に低熱膨張の特性が要求されるため、多成分系ガラス材料を使用する。しかしながら、多成分系ガラス材料は、合成石英ガラスと比較して高い平滑性を得にくいという問題がある。この問題を解決すべく、多成分系ガラス材料からなる基板上に、金属、合金からなる又はこれらのいずれかに酸素、窒素、炭素の少なくとも一つを含有した材料からなる薄膜を形成する。そして、このような薄膜表面を鏡面研磨、表面処理することにより、所定の範囲の表面粗さの表面を比較的容易に形成することができる。
上記薄膜の材料としては、例えば、Ta(タンタル)、Taを含有する合金、又はこれらのいずれかに酸素、窒素、炭素の少なくとも一つを含有したTa化合物が好ましい。Ta化合物としては、例えば、TaB、TaN、TaO、TaON、TaCON、TaBN、TaBO、TaBON、TaBCON、TaHf、TaHfO、TaHfN、TaHfON、TaHfCON、TaSi、TaSiO、TaSiN、TaSiON、TaSiCONなどを適用することができる。これらTa化合物のうち、窒素(N)を含有するTaN、TaON、TaCON、TaBN、TaBON、TaBCON、TaHfN、TaHfON、TaHfCON、TaSiN、TaSiON、TaSiCONがより好ましい。尚、上記薄膜は、薄膜表面の高平滑性の観点から、好ましくはアモルファス構造とすることが望ましい。薄膜の結晶構造は、X線回折装置(XRD)により測定することができる。
[多層反射膜付き基板20]
次に、本発明の多層反射膜付き基板20について以下に説明する。
図2は、多層反射膜付き基板20の一例を示す模式図である。図3は、本発明の多層反射膜付き基板20の一例を示す断面模式図である。本発明の多層反射膜付き基板20は、マスクブランク用基板10の主表面の上に、多層反射膜21を有する。本発明の多層反射膜付き基板20は、多層反射膜21の外周領域54(図2を参照)に改質領域60を有する。
多層反射膜付き基板20の多層反射膜21は、EUVリソグラフィ用反射型マスク40においてEUV光を反射する機能を付与するものである。多層反射膜21は、屈折率の異なる元素が周期的に積層された構造を有する。
多層反射膜21はEUV光を反射する限りその材質は特に限定されないが、その単独での反射率は通常62%以上であり、上限は通常73%である。このような多層反射膜21は、一般的には、高屈折率の材料からなる薄膜(高屈折率層)と、低屈折率の材料からなる薄膜(低屈折率層)とが、交互に40〜60周期程度積層された多層反射膜21とすることができる。
例えば、波長13〜14nmのEUV光に対する多層反射膜21としては、Mo膜とSi膜とを交互に40周期程度積層したMo/Si周期多層膜とすることが好ましい。その他、EUV光の領域で使用される多層反射膜21として、Ru/Si周期多層膜、Mo/Be周期多層膜、Mo化合物/Si化合物周期多層膜、Si/Nb周期多層膜、Si/Mo/Ru周期多層膜、Si/Mo/Ru/Mo周期多層膜、Si/Ru/Mo/Ru周期多層膜などとすることが可能である。
多層反射膜21の形成方法は当該技術分野において公知であるが、例えば、マグネトロンスパッタリング法や、イオンビームスパッタリング法などにより、各層を成膜することにより形成できる。上述したMo/Si周期多層膜の場合、例えば、イオンビームスパッタリング法により、まずSiターゲットを用いて厚さ数nm程度のSi膜を基板10上に成膜し、その後、Moターゲットを用いて厚さ数nm程度のMo膜を成膜し、これを一周期として、40〜60周期積層して、多層反射膜21を形成する。
本発明の多層反射膜付き基板20を製造する際、多層反射膜21は、高屈折率材料のスパッタリングターゲット及び低屈折率材料のスパッタリングターゲットにイオンビームを交互に照射して、イオンビームスパッタリング法により形成されることが好ましい。所定のイオンビームスパッタリング法で多層反射膜21を形成することにより、EUV光に対する反射率特性が良好な多層反射膜21を確実に得ることができる。
本発明の多層反射膜付き基板20は、多層反射膜21の外周領域54に改質領域60を有する。多層反射膜21は、高屈折率材料からなる高屈折率層と、低屈折率材料からなる低屈折率層との積層膜である。そのため、多層反射膜21の外周領域54を、例えばレーザ光を照射することなどによって加熱することにより、多層反射膜21の外周領域54に、高屈折率材料及び低屈折率材料を含む化合物である改質領域60を形成することができる。
本発明の多層反射膜付き基板20において、低屈折率材料は、モリブデンであることが好ましい。また、本発明の多層反射膜付き基板20において、多層反射膜21の高屈折率材料は、ケイ素を含む材料であることが好ましい。これらの低屈折率材料及び高屈折率材料を用いて多層反射膜21を形成することにより、所定の露光光に対して高い反射率である多層反射膜21を得ることができる。また、多層反射膜21の低屈折率材料がモリブデンであり、高屈折率材料がケイ素を含む材料である場合には、金属シリサイド(具体的には、モリブデンシリサイド)の改質領域60を得ることができる。モリブデンは、SPM洗浄の際に使用する硫酸によって溶出するが、金属シリサイド(具体的には、モリブデンシリサイド)は硫酸に溶出しない。金属シリサイドの改質領域60を多層反射膜21の外周領域54に形成することにより、マスクブランク製造工程、マスク製造工程及びマスク使用時の洗浄等の際の、改質領域60の溶出を防止することができる。そのため、吸収体膜24の膜剥がれに起因する欠陥発生を低減することができる。
多層反射膜21の低屈折率材料がモリブデンであり、高屈折率材料がケイ素を含む材料である場合には、多層反射膜21の最表面の層は、ケイ素を含む高屈折率材料からなる高屈折率層であることが好ましい。このような構造の多層反射膜21では、ケイ素を含む高屈折率材料からなる高屈折率層により、モリブデンからなる低屈折率層が覆われることになる。その結果、モリブデンからなる低屈折率層が、SPM洗浄の際に使用する硫酸によって溶出することを避けることができる。
本発明の多層反射膜付き基板20の改質領域60は、好ましくは多層反射膜21の外周領域54の端部52から1〜20mmの範囲であり、より好ましくは2〜10mmであり、更に好ましくは3〜6mmである。改質領域60が、前記多層反射膜21の外周領域54の端部52から所定の範囲であることにより、転写パターン形成領域を妨げることなく、改質領域60を形成することができる。
本発明の多層反射膜付き基板20は、多層反射膜21の表面のうち、マスクブランク用基板10とは反対側の表面に接して配置される保護膜22を更に含むことが好ましい。
上述のように形成された多層反射膜21の上に、EUVリソグラフィ用反射型マスク40の製造工程におけるドライエッチングやウェット洗浄からの多層反射膜21の保護のため、保護膜22を形成することもできる。このように、マスクブランク用基板10上に、多層反射膜21と、保護膜22とを有する形態も、本発明における多層反射膜付き基板20とすることができる。
尚、上記保護膜22の材料としては、例えば、Ru、Ru−(Nb,Zr,Y,B,Ti,La,Mo),Si−(Ru,Rh,Cr,B),Si,Zr,Nb,La,B等の材料を使用することができる。これらのうち、ルテニウム(Ru)を含む材料を適用すると、多層反射膜21の反射率特性がより良好となる。具体的には、Ru、Ru−(Nb,Zr,Y,B,Ti,La,Mo)であることが好ましい。このような保護膜22は、特に、吸収体膜24をTa系材料とし、Cl系ガスのドライエッチングで当該吸収体膜24をパターニングする場合に有効である。
多層反射膜21又は保護膜22の表面において、良好な平滑性を得るために、多層反射膜21を、基板10の主表面の法線に対して斜めに高屈折率層と低屈折率層とが堆積するように、スパッタリング法により成膜することが好ましい。より具体的には、Mo等の低屈折率層の成膜のためのスパッタ粒子の入射角度と、Si等の高屈折率層の成膜のためのスパッタ粒子の入射角度は、0度超45度以下にして成膜すると良い。スパッタ粒子の入射角度は、より好ましくは、0度超40度以下、更に好ましくは、0度超30度以下が望ましい。更には、多層反射膜21上に形成する保護膜22も、多層反射膜21の成膜後、連続して、基板10の主表面の法線に対して斜めに保護膜22が堆積するようにイオンビームスパッタリング法により形成することが好ましい。
また、多層反射膜付き基板20において、基板10の多層反射膜21と接する面と反対側の面には、静電チャックの目的のために裏面導電膜23を形成することもできる。このように、マスクブランク用基板10上の転写パターンが形成される側に多層反射膜21と、保護膜22とを有し、多層反射膜21と接する面と反対側の面に裏面導電膜23を有する形態も、本発明における多層反射膜付き基板20とすることができる。尚、裏面導電膜23に求められる電気的特性(シート抵抗)は、通常100Ω/□以下である。裏面導電膜23の形成方法は公知であり、例えば、マグネトロンスパッタリング法やイオンビームスパッタリング法により、Cr、Ta等の金属や合金のターゲットを使用して形成することができる。
また、本実施形態の多層反射膜付き基板20としては、基板10と多層反射膜21との間に下地層を形成しても良い。下地層は、基板10の主表面の平滑性向上の目的、欠陥低減の目的、多層反射膜21の反射率増強効果の目的、及び多層反射膜21の応力補正の目的で形成することができる。
本発明の多層反射膜付き基板20の改質領域60の形成は、保護膜22の形成後に、多層反射膜21の外周領域54にレーザ光を照射することにより、行うことができる。その場合、改質領域60は、多層反射膜21及び保護膜22を構成する材料を含む化合物とすることができる。
[反射型マスクブランク30]
次に、本発明の反射型マスクブランク30について説明する。
図6は、本発明の反射型マスクブランク30の一例を示す模式図である。図4に示す反射型マスクブランク30は、図3に示す多層反射膜付き基板20の表面(保護膜22の表面)に、吸収体膜24を有する。
上記吸収体膜24の材料は、特に限定されるものではない。例えば、EUV光を吸収する機能を有するもので、Ta(タンタル)単体、又はTaを主成分とする材料を用いることが好ましい。Taを主成分とする材料は、通常、Taの合金である。このような吸収体膜24の結晶状態は、平滑性、平坦性の点から、アモルファス状又は微結晶の構造を有しているものが好ましい。Taを主成分とする材料としては、例えば、TaとBを含む材料、TaとNを含む材料、TaとBを含み、更にOとNの少なくともいずれかを含む材料、TaとSiを含む材料、TaとSiとNを含む材料、TaとGeを含む材料、TaとGeとNを含む材料などを用いることができる。また例えば、TaにB、Si、Ge等を加えることにより、アモルファス構造が容易に得られ、平滑性を向上させることができる。更に、TaにN、Oを加えれば、酸化に対する耐性が向上するため、経時的な安定性を向上させることができる。上記範囲の基板10や、多層反射膜付き基板20の表面形態を保ちつつ、吸収体膜24の表面の平滑性を向上するために、吸収体膜24を微結晶構造にするか、又はアモルファス構造にすることが好ましい。結晶構造については、X線回折装置(XRD)により確認することができる。
具体的には、吸収体膜24を形成するタンタルを含有する材料としては、例えば、タンタル金属、タンタルに、窒素、酸素、ホウ素及び炭素から選ばれる一以上の元素を含有し、水素を実質的に含有しない材料等が挙げられる。例えば、Ta、TaN、TaON、TaBN、TaBON、TaCN、TaCON、TaBCN及びTaBOCN等が挙げられる。前記材料については、本発明の効果が得られる範囲で、タンタル以外の金属を含有させてもよい。吸収体膜24を形成するタンタルを含有する材料にホウ素を含有させると、吸収体膜24をアモルファス構造(非晶質)になるように制御しやすい。
反射型マスクブランク30の吸収体膜24は、タンタルと窒素を含有する材料で形成されることが好ましい。吸収体膜24中の窒素含有量は、50原子%以下であることが好ましく、30原子%以下であることが好ましく、25原子%以下であることがより好ましく、20原子%以下であることが更に好ましい。吸収体膜24中の窒素含有量は、5原子%以上であることが好ましい。
吸収体膜24がタンタルと窒素とを含有し、窒素の含有量が5原子%以上50原子%以下であることにより、更に、吸収体膜24を構成する結晶粒子の拡大を抑制できるので、吸収体膜24をパターニングしたときのパターンエッジラフネスが低減できる。
尚、本発明の反射型マスクブランク30は、図6に示す構成に限定されるものではない。例えば、上記吸収体膜24の上に、吸収体膜24をパターニングするためのマスクとなるレジスト膜を形成することもでき、レジスト膜付き反射型マスクブランク30も、本発明の反射型マスクブランク30とすることができる。尚、吸収体膜24の上に形成するレジスト膜は、ポジ型でもネガ型でも構わない。また、電子線描画用でもレーザ描画用でも構わない。更に、吸収体膜24と前記レジスト膜との間に、いわゆるハードマスク膜(エッチングマスク膜25)を形成することもでき、この態様も本発明における反射型マスクブランク30とすることができる(図4参照)。
本発明の反射型マスクブランク30は、マスクブランク用多層膜が、吸収体膜24の表面のうち、マスクブランク用基板10とは反対側の表面に接して配置されるエッチングマスク膜25を更に含むことが好ましい。図4に示す反射型マスクブランク30の場合には、マスクブランク用基板10の主表面の上のマスクブランク用多層膜が、多層反射膜21、保護膜22及び吸収体膜24に加えて、更にエッチングマスク膜25を有している。本発明の反射型マスクブランク30は、図4に示す反射型マスクブランク30のマスクブランク用多層膜の最表面に、更にレジスト膜を有することができる。
具体的には、本発明の反射型マスクブランク30は、吸収体膜24の材料が、Ta単体、又はTaを主成分とする材料を用いる場合、吸収体膜24上にクロムを含有する材料からなるエッチングマスク膜25が形成された構造となっていることが好ましい。このような構造の反射型マスクブランク30とすることにより、吸収体膜24に転写パターンを形成後、エッチングマスク膜25を塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスを用いたドライエッチングで剥離しても、吸収体膜24パターンの光学的特性が良好な反射型マスク40を作製することができる。また、吸収体膜24に形成された転写パターンのラインエッジラフネスが良好な反射型マスク40を作製することができる。
エッチングマスク膜25を形成するクロムを含有する材料としては、例えば、クロムに、窒素、酸素、炭素及びホウ素から選ばれる一以上の元素を含有する材料等が挙げられる。例えば、CrN、CrON、CrCN、CrCON、CrBN、CrBON、CrBCN及びCrBOCN等が挙げられる。前記材料については、本発明の効果が得られる範囲で、クロム以外の金属を含有させてもよい。エッチングマスク膜25の膜厚は、転写パターンを精度よく吸収体膜24に形成するエッチングマスクとしての機能を得る観点から、3nm以上であることが望ましい。また、エッチングマスク膜25の膜厚は、レジスト膜の膜厚を薄くする観点から、15nm以下であることが望ましい。
[多層反射膜付き基板20の製造方法]
次に、本発明の多層反射膜付き基板20の製造方法について説明する。
本発明は、EUVリソグラフィ用の反射型マスクブランク30の製造に使用される多層反射膜付き基板20の製造方法である。
本発明の多層反射膜付き基板20の製造方法では、まず、図2に示すような、マスクブランク用基板10の表面に多層反射膜21を備えた多層反射膜付き基板20を用意する。
尚、上述のように、多層反射膜21は、高屈折率材料からなる高屈折率層と、低屈折率材料からなる低屈折率層との積層膜からなり、多層反射膜21の改質領域60が、高屈折率材料と、低屈折率材料とを含む化合物であることが好ましい。また、低屈折率材料は、モリブデンであることが好ましく、高屈折率材料は、ケイ素を含む材料であることが好ましい。このように低屈折率材料及び高屈折率材料を選択すると、改質領域60が金属シリサイドを含むことになり、マスクブランク製造工程、マスク製造工程及びマスク使用時の洗浄等の際の改質領域60の溶出を防止することができる。
次に、多層反射膜付き基板20の多層反射膜21の外周領域54に改質領域60を形成する。
改質領域60の形成は、マスクブランク製造工程、マスク製造工程及びマスク使用時の洗浄等の際の溶出を防止することができるように改質することができるのであれば、その方法は制限されない。具体的には、改質領域60の形成は、多層反射膜21の外周領域54の端部52から所定の寸法の領域を局所的に加熱することにより、多層反射膜21の高屈折率材料及び低屈折率材料を含む化合物を形成することができる。この化合物の形成により、改質領域60を形成することができる。
改質領域60の形成のための加熱は、レーザ光の照射、局所加熱用ヒータ等により行うことができる。加熱する範囲を正確に制御するために、レーザ光の照射により改質領域60を形成することが好ましい。改質領域60を形成するためのレーザ光の種類は特に制限がない。改質領域60を形成するための加熱を効率的に行うために、CO2レーザ又はYAGレーザのレーザ光を用いて改質領域60を形成することが好ましい。
改質領域60を形成するための局所加熱用ヒータとしては、ノズル式の熱風発生器(ホットブラスター)及び所定形状のホットプレート等を例示することができる。所定形状のホットプレートとしては、多層反射膜21の外周領域54のみを加熱可能なように、外周領域54に相当する部分のみにヒータを配置した、窓枠形状のホットプレートを用いることができる。
本発明の多層反射膜付き基板20の製造方法は、多層反射膜21の表面に接して配置される保護膜22を形成することを更に含むことが好ましい。保護膜22を形成することにより、転写用マスク(EUVマスク)を製造する際の多層反射膜21の表面へのダメージを抑制することができるので、EUV光に対する反射率特性の低下を抑制できる。
保護膜22は、保護膜22材料のスパッタリングターゲットにイオンビームを照射する、イオンビームスパッタリング法により形成されることが好ましい。イオンビームスパッタリング法によって、保護膜22表面の平滑化が得られるので、保護膜22上に形成される吸収体膜24や、更に吸収体膜24上に形成されるエッチングマスク膜25の表面を平滑化させることができる。
[反射型マスクブランク30の製造方法]
次に、本発明の反射型マスクブランク30の製造方法について説明する。
本発明は、マスクブランク用基板10と、マスクブランク用基板10の表面上に形成されたEUV光を反射する多層反射膜21と、多層反射膜21の表面に形成されたEUV光を吸収する吸収体膜24とを備えた反射型マスクブランク30の製造方法である。
本発明の反射型マスクブランク30の製造方法は、上述の改質領域60を有する多層反射膜付き基板20の表面に、上述の吸収体膜24を形成することよって製造することができる。
本発明の反射型マスクブランク30の別の態様の製造方法では、図6、図9、及び図11に示すような改質領域60を有しない多層反射膜付き基板20を用いて反射型マスクブランク30を製造した後に、その反射型マスクブランク30の多層反射膜21及び吸収体膜24の外周領域54にレーザ光を照射するなどして加熱することによって、多層反射膜21の外周領域54に改質領域60を形成することができる。
図6は、反射型マスクブランク30の別の一例を示す模式図である。図6に示す反射型マスクブランク30は、図2に示す多層反射膜付き基板20の表面に、吸収体膜24を有する。図7及び図8は、図6に示す反射型マスクブランク30の外周領域54に対してレーザ光50を照射し、改質領域60を形成している様子を模式的に示す。図7に示す例では、レーザ光50の照射により、多層反射膜21及び吸収体膜24の両方を化合物に改質して、改質領域60を形成している。図8に示す例では、レーザ光50を照射する際のレーザパワーを調節することにより、多層反射膜21だけ(又は更に吸収体膜24の一部)を化合物に改質して、改質領域60を形成している。例えば、吸収体膜24の材料の融点が、多層反射膜21の材料の融点よりも高い場合、レーザパワーを調節することにより、多層反射膜21の材料のみを溶融し、多層反射膜21のみの化合物を形成することが可能である。
尚、図7に示す例のように、レーザ光50を、多層反射膜21及び吸収体膜24の両方に照射する場合、レーザパワーを調節することにより、多層反射膜21及び吸収体膜24の界面付近のみに、多層反射膜21及び吸収体膜24の化合物を形成することが可能である。一方、多層反射膜21を構成する多層の各層の膜厚は薄いため、レーザ光50の照射により、通常、多層反射膜21全体にわたって化合物となり、改質領域60が形成される。
図9は、反射型マスクブランク30の別の一例を示す模式図である。図2に示す多層反射膜付き基板20の表面に、保護膜22及び吸収体膜24を有する。図10は、図6に示す反射型マスクブランク30の外周領域54に対してレーザ光50を照射し、改質領域60を形成している様子を模式的に示す。図10に示す例では、レーザ光50の照射により、多層反射膜21、保護膜22及び吸収体膜24のすべてを化合物に改質して、改質領域60を形成している。尚、図8に示す例と同様に、図10に示す例においても、レーザ光50を照射する際のレーザパワーを調節することにより、多層反射膜21だけ、又は多層反射膜21及び保護膜22だけ(又は更に吸収体膜24の一部)を化合物に改質して、改質領域60を形成することも可能である。
図11は、反射型マスクブランク30の別の一例を示す模式図である。図11に示す反射型マスクブランク30は、図2に示す多層反射膜付き基板20の表面に、保護膜22、吸収体膜24及びエッチングマスク膜25を有する。図12は、図6に示す反射型マスクブランク30の外周領域54に対してレーザ光50を照射し、改質領域60を形成している様子を模式的に示す。図12に示す例では、レーザ光50の照射により、多層反射膜21、保護膜22、吸収体膜24及びエッチングマスク膜25のすべてを化合物に改質して、改質領域60を形成している。尚、図8に示す例と同様に、図12に示す例においても、レーザ光50を照射する際のレーザパワーを調節することにより、多層反射膜21だけ、又は多層反射膜21及び保護膜22だけ(又は更に吸収体膜24の一部)を化合物に改質して、改質領域60を形成することも可能である。
尚、多層反射膜付き基板20の製造後であって、吸収体膜24を形成する前に改質領域60を形成する場合には、種々の薄膜の成膜の途中に、従来行われていなかった改質領域60を形成するプロセスを加えることになる。このようなプロセスの追加は、欠陥等の発生の要因となってしまう場合がある。そのため、改質領域60の形成は、吸収体膜24及びエッチングマスク膜25等のすべてのマスクブランク用多層膜の成膜が終了し、反射型マスクブランク30の完成後であって、レジスト膜塗布前に行うことが好ましい。
本発明の反射型マスクブランク30の製造方法では、吸収体膜24を形成する際に、吸収体膜24に含まれる材料からなるスパッタリングターゲットを用いる反応性スパッタリング法により形成され、反応性スパッタリングの際の雰囲気ガスに含まれる成分が含有されるように吸収体膜24が形成されることが好ましい。反応性スパッタリング法による成膜の際に、雰囲気ガスの流量を調節することにより、吸収体膜24を含むマスクブランク用多層膜の表面の平坦性が良好になるように、調節することができる。
反応性スパッタリング法により吸収体膜24を形成する場合、雰囲気ガスは、不活性ガスと、窒素ガスとを含有する混合ガスであることが好ましい。この場合には、窒素の流量を調節することができるので、適切な組成を有する吸収体膜24を得ることができる。その結果、マスクブランク用多層膜の表面に、良好な平坦性を得ることができる。
本発明の反射型マスクブランク30の製造方法では、吸収体膜24は、タンタルを含む材料のスパッタリングターゲットを用いて形成されることが好ましい。この結果、タンタルを含み、EUV光に対する適切な吸収特性を有する吸収体膜24を形成することができる。
本発明の反射型マスクブランク30の製造方法は、吸収体膜24の表面に接して配置されるエッチングマスク膜25を形成することを更に含むことが好ましい。吸収体膜24とはドライエッチング特性が異なるエッチングマスク膜25を形成することにより、吸収体膜24に転写パターンを形成する際に、高精度の転写パターンを形成することができる。
[反射型マスク40]
次に、本発明の一実施形態に係る反射型マスク40について以下に説明する。図5は、図4に示す反射型マスクブランク30を用いて製造した、反射型マスク40の一例を示す模式図である。
本発明の反射型マスク40は、上記の反射型マスクブランク30における吸収体膜24をパターニングして、上記多層反射膜21上又は上記保護膜22上に吸収体パターン27を形成した構成である。本実施形態の反射型マスク40は、EUV光等の露光光で露光すると、マスク表面で吸収体膜24のある部分では露光光が吸収され、それ以外の吸収体膜24を除去した部分では露出した保護膜22及び多層反射膜21で露光光が反射されることにより、リソグラフィ用の反射型マスク40として使用することができる。本発明の反射型マスク40により、マスク製造工程及びマスク使用時の洗浄等をした場合でも、吸収体膜24の膜剥がれに起因する欠陥発生を低減することができる。
[半導体装置の製造方法]
以上説明した反射型マスク40を用いて、露光装置を使用したリソグラフィプロセスにより、半導体基板等の被転写体上に形成されたレジスト膜に、反射型マスク40の吸収体パターン27に基づく回路パターン等の転写パターンを転写し、その他種々の工程を経ることで、半導体基板等の被転写体上に種々の転写パターン等が形成された半導体装置を製造することができる。
本発明の半導体装置の製造方法によれば、吸収体膜24の膜剥がれに起因する欠陥発生を低減することのできる反射型マスク40を使用できるので、半導体基板等の被転写体上に形成されたレジスト膜に転写する回路パターン等の転写パターンに欠陥がなく、微細でかつ高精度の転写パターンを有する半導体装置を製造することができる。
次に、多層反射膜付き基板20、反射型マスクブランク30及び反射型マスク40を製造した例を実施例として説明する。
まず、EUV露光用のマスクブランク用基板10の表面に、多層反射膜21及び吸収体膜24を以下に述べるように成膜して、実施例試料1の反射型マスクブランク30を製造した。
<マスクブランク用基板10の作製>
マスクブランク用基板10として、大きさが152mm×152mm、厚さが6.35mmのSiO2−TiO2系のガラス基板を準備し、両面研磨装置を用いて、当該ガラス基板の表裏面を、酸化セリウム砥粒やコロイダルシリカ砥粒により段階的に研磨した後、低濃度のケイフッ酸で表面処理した。これにより得られたガラス基板表面の表面粗さを原子間力顕微鏡で測定したところ、二乗平均平方根粗さ(Rms)は0.5nmであった。
当該ガラス基板の表裏面における148mm×148mmの領域の表面形状(表面形態、平坦度)、TTV(板厚ばらつき)を、波長変調レーザを用いた波長シフト干渉計で測定した。その結果、ガラス基板の表裏面の平坦度は290nm(凸形状)であった。ガラス基板表面の表面形状(平坦度)の測定結果は、測定点ごとにある基準面に対する高さの情報としてコンピュータに保存するとともに、ガラス基板に必要な表面平坦度の基準値50nm(凸形状)、裏面平坦度の基準値50nmと比較し、その差分(必要除去量)をコンピュータで計算した。
次いで、ガラス基板面内を加工スポット形状領域ごとに、必要除去量に応じた局所表面加工の加工条件を設定した。事前にダミー基板を用いて、実際の加工と同じようにダミー基板を、一定時間基板を移動させずにスポットで加工し、その形状を上記表裏面の表面形状を測定する装置と同じ測定機にて測定し、単位時間当たりにおけるスポットの加工体積を算出する。そして、スポットの情報とガラス基板の表面形状の情報より得られた必要除去量に従い、ガラス基板をラスタ走査する際の走査スピードを決定した。
設定した加工条件に従い、磁気流体による基板仕上げ装置を用いて、磁気粘弾性流体研磨(Magneto Rheological Finishing : MRF)加工法により、ガラス基板の表裏面平坦度が上記の基準値以下となるように局所表面加工処理をして表面形状を調整した。尚、このとき使用した磁気粘弾性流体は、鉄成分を含んでおり、研磨スラリーは、研磨剤として酸化セリウムを約2wt%含むアルカリ水溶液を用いた。その後、ガラス基板を濃度約10%の塩酸水溶液(温度約25℃)が入った洗浄槽に約10分間浸漬した後、純水によるリンス、イソプロピルアルコール(IPA)乾燥を行った。
尚、本発明におけるマスクブランク用基板10の局所加工方法は、上述した磁気粘弾性流体研磨加工法に限定されるものではない。ガスクラスターイオンビーム(Gas Cluster Ion Beams : GCIB)や局所プラズマを使用した加工方法であってもよい。
その後、局所表面加工処理の仕上げ研磨として、表面粗さ改善を目的として、コロイダルシリカ砥粒を用いた両面タッチ研磨を行った。尚、両面タッチ研磨後、触媒基準エッチング法(CARE:Catalyst Referred Etching)による表面加工を行ってもよい。
その後、ガラス基板の端面をスクラブ洗浄した後、当該基板を王水(温度約65℃)が入った洗浄槽に約10分間浸漬させ、その後、純水によるリンス、乾燥を行った。尚、王水による洗浄は、ガラス基板の表裏面に触媒である白金の残留物がなくなるまで、複数回行った。
上述のようにして得られたEUV露光用のマスクブランク用基板10の主表面において、転写パターン形成領域(132mm×132mm)の任意の箇所の1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定したところ、二乗平均平方根粗さ(Rms)は0.080nm、最大高さ(Rmax)は0.80nmであった。
<実施例試料1の作製>
Moターゲット及びSiターゲットを使用して、イオンビームスパッタリングによりMo層(低屈折率層、厚み2.8nm)及びSi層(高屈折率層、厚み4.2nm)を交互積層し(積層数40ペア)、最後にSi層を4.0nmの厚みで成膜し、多層反射膜21を上述のガラス基板上に形成した。イオンビームスパッタリング法による多層反射膜21の成膜の際、イオンビームスパッタリングにおけるガラス基板の主表面の法線に対するMo及びSiスパッタ粒子の入射角度は30度、イオンソースのガス流量は8sccmとした。
多層反射膜21の成膜後、更に連続して多層反射膜21上にイオンビームスパッタリングによりRu保護膜22(膜厚2.5nm)を成膜して多層反射膜付き基板20とした。イオンビームスパッタリング法によるRu保護膜22の成膜の際、基板の主表面の法線に対するRuスパッタ粒子の入射角度は40度、イオンソースのガス流量は8sccmとした。
以上のようにして、実施例試料1の多層反射膜付き基板20を得た。
次に、上述した実施例試料1の多層反射膜付き基板20の上に、DCマグネトロンスパッタリング法により、吸収体膜24を成膜した。表1に示すように、吸収層であるTaBN膜及び低反射層であるTaBO膜の二層からなる積層膜を吸収体膜24とした。
実施例試料1の吸収体膜24(吸収層であるTaBN膜及び低反射層であるTaBO膜の二層からなる積層膜)の成膜方法は、次の通りである。すなわち、上述した多層反射膜付き基板20の保護膜22表面に、DCマグネトロンスパッタリング法により、吸収層としてTaBN膜を成膜した。このTaBN膜は、TaB混合焼結ターゲット(Ta:B=80:20、原子比)に多層反射膜付き基板20を対向させ、Arガス及びN2ガスの混合ガス雰囲気中で反応性スパッタリングを行った。表1に、実施例試料1のTaBN膜を成膜する際のArガス及びN2ガスの流量等の成膜条件を示す。成膜後、X線光電子分光法(XPS法)により、TaBN膜の元素組成を測定した。表1に、XPS法により測定した実施例試料1のTaBN膜の元素組成を、TaBN膜の膜厚と共に示す。尚、上記TaBN膜の結晶構造をX線回折装置(XRD)により測定したところ、アモルファス構造であった。
実施例試料1では、次に、TaBN膜の上に更に、Ta、B及びOを含むTaBO膜(低反射層)を、DCマグネトロンスパッタリング法によって形成した。このTaBO膜は、第1膜のTaBN膜と同様に、TaB混合焼結ターゲット(Ta:B=80:20、原子比)に多層反射膜付き基板20を対向させ、Ar及びO2の混合ガス雰囲気中で反応性スパッタリングを行った。表1に、実施例試料1のTaBO膜を成膜する際のArガス及びO2ガスの流量等の成膜条件を示す。成膜後、X線光電子分光法(XPS法)により、TaBO膜の元素組成を測定した。表1に、XPS法により測定した実施例試料1のTaBO膜の元素組成を、TaBO膜の膜厚と共に示す。尚、上記TaBO膜の結晶構造をX線回折装置(XRD)により測定したところ、アモルファス構造であった。以上のようにして、実施例試料1の吸収体膜24(積層膜)を成膜した。
実施例試料1では、次に、マスクブランク用基板10の裏面に裏面導電膜23を成膜すした。
裏面導電膜23は、次のように形成した。すなわち、マスクブランク用基板10の主表面のうち、実施例試料1の多層反射膜21を形成していない主表面(裏面)に、DCマグネトロンスパッタリング法により、裏面導電膜23を形成した。この裏面導電膜23は、Crターゲットを多層反射膜付き基板20の裏面に対向させ、Ar及びN2の混合ガス(Ar:N2=90%:10%)雰囲気中で反応性スパッタリングを行った。ラザフォード後方散乱分析法により裏面導電膜23の元素組成を測定したところ、Cr:90原子%、N:10原子%であった。また、裏面導電膜23の膜厚は20nmであった。以上のようにして、実施例試料1の反射型マスクブランク30を製造した。
<実施例1及び比較例1の反射型マスクブランク30>
次に、実施例試料1の吸収体膜24及び多層反射膜21の外周領域54に、レーザ光を照射することにより、改質領域60を形成した。レーザ光の照射は、CO2レーザ(CW、波長10.6μm、出力3W)を用い、照射ビーム径φ200μmとなるように集光したビームをスキャンすることにより、照射時間300msとなる条件にて行った。レーザ光を照射した領域は、多層反射膜21の外周領域54であって、多層反射膜21の端部52から6mmの範囲とした。以上のようにして、実施例1の反射型マスクブランク30を得た。
作製した実施例1の反射型マスクブランク30の多層反射膜の外周領域54に対して断面TEM観察を行ったところ、Mo層及びSi層の界面がなくなっていた。また、モリブデンシリサイドが形成されていることが確認できた。更に、多層反射膜の最上層であるSi層と保護膜のRu膜との界面、該Ru膜と吸収体膜のTaBN膜との界面もなくなっていることが確認でき、多層反射膜、保護膜及び吸収体膜の下層部分に改質領域が形成されていた。
実施例試料1の反射型マスクブランク30と同様にして反射型マスクブランク30を作製した。実施例試料1の反射型マスクブランク30に対して、レーザ光の照射をせず、改質領域60を形成しなかったものを比較例1の反射型マスクブランク30とした。
実施例1及び比較例1の反射型マスクブランク30に対して、SPM洗浄を行った。洗浄の条件は、以下の通りである。
洗浄液 H2SO4:H2O2=2:1(重量比)
洗浄温度 120℃
洗浄時間 10分
洗浄後の実施例1及び比較例1の反射型マスクブランク30に対して、検査光源波長193nmの高感度欠陥検査装置(KLA−Tencor社製「Teron610」)を使用して、球相当直径SEVD(Sphere Equivalent Volume Diameter)で21.5nmの欠陥を検出できる検査感度条件で、吸収体膜24の表面における132mm×132mmの領域を欠陥検査した。尚、球相当直径SEVDは、欠陥の面積を(S)、欠陥の高さを(h)としたときに、SEVD=2(3S/4πh)1/3の式により算出することができる。欠陥の面積(S)、欠陥の高さ(h)は原子間力顕微鏡(AFM)により測定することができる。
上述の球相当直径SEVDの測定による、実施例1及び比較例1の吸収体膜24の表面の、欠陥検出個数は次の通りだった。実施例1では、欠陥検出個数が10個だった。これに対して、比較例1の反射型マスクブランク30では、高感度欠陥検査装置による欠陥検出個数が検出限界以上であり、実施例1の場合よりはるかに多かった。
尚、比較例1の反射型マスクブランク30の欠陥の成分をEDX分析及びTEM分析で調べると、吸収体膜24の成分(Ta、B、NおよびOが主な成分)と同様の成分の欠陥が多数みられた。
<反射型マスク40の作製>
実施例1及び比較例1の反射型マスクブランク30の吸収体膜24の表面に、スピンコート法によりレジストを塗布し、加熱及び冷却工程を経て、膜厚150nmのレジスト膜25を成膜した。次いで、所望のパターンの描画及び現像工程を経て、レジストパターン形成した。当該レジストパターンをマスクにして、所定のドライエッチングにより、吸収体膜24のパターニングを行い、保護膜22上に吸収体パターン27を形成した。尚、吸収体膜24がTaBN膜である場合には、Cl2及びHeの混合ガスによりドライエッチングすることができる。また、吸収体膜24がTaBN膜及びTaBO膜の二層からなる積層膜である場合には、塩素(Cl2)及び酸素(O2)の混合ガス(塩素(Cl2)及び酸素(O2)の混合比(流量比)は8:2)によりドライエッチングすることができる。
その後、レジスト膜25を除去し、上記と同様の薬液洗浄を行い、実施例1及び比較例1の反射型マスク40を作製した。得られた実施例1及び比較例1の反射型マスク40について、高感度欠陥検査装置(KLA−Tencor社製「Teron610」)を使用して欠陥検査を行った。
高感度欠陥検査装置による測定及び欠陥分析を行ったところ、実施例1の反射型マスク40の場合には、吸収体膜24の成分と同様の成分の付着欠陥は確認されなかった。一方、比較例1の反射型マスク40の場合には、吸収体膜24の成分と同様の成分の付着欠陥が多数検出された。
<半導体装置の製造方法>
上述実施例1及び比較例1の反射型マスク40を使用し、露光装置を使用して、半導体基板である被転写体上のレジスト膜にパターン転写を行い、その後、配線層をパターニングして、半導体装置を作製すると、パターン欠陥のない半導体装置を作製することができる。
尚、上述の多層反射膜付き基板20、反射型マスクブランク30の作製において、マスクブランク用基板10の転写パターンが形成される側の主表面に、多層反射膜21及び保護膜22を成膜した後、上記主表面とは反対側の裏面に裏面導電膜23を形成したがこれに限らない。マスクブランク用基板10の転写パターンが形成される側の主表面とは反対型の主表面に裏面導電膜23を形成した後、転写パターンが形成される側の主表面に、多層反射膜21や、更に保護膜22を成膜して多層反射膜付き基板20、更に保護膜22上に吸収体膜24を成膜して反射型マスクブランク30を作製しても構わない。