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JP2016111878A - 車両の駆動トルク制御装置 - Google Patents

車両の駆動トルク制御装置 Download PDF

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JP2016111878A
JP2016111878A JP2014249360A JP2014249360A JP2016111878A JP 2016111878 A JP2016111878 A JP 2016111878A JP 2014249360 A JP2014249360 A JP 2014249360A JP 2014249360 A JP2014249360 A JP 2014249360A JP 2016111878 A JP2016111878 A JP 2016111878A
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Asif Faisa
アシフ フアイサ
中島 祐樹
Yuki Nakajima
祐樹 中島
伊藤 健介
Kensuke Ito
健介 伊藤
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Nissan Motor Co Ltd
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Abstract

【課題】ヨーモーメント制御からトラクション制御へ移行するとき、車両挙動の安定化を確保する。【解決手段】左右の駆動輪5L,5Rへ伝達される駆動トルクを異ならせることが可能な駆動系を有し、左右の駆動輪5L,5Rへの駆動トルクに差をつけて車両挙動をコントロールするビークルコントロールモジュール1と、左右の駆動輪5L,5Rの一方にスリップが発生し、実スリップ値がTCS(駆動輪スリップを抑えるトラクション制御)作動閾値以上であると判定されると、実スリップ値がTCS制御目標値に収束するように駆動輪への駆動トルクを低減する制御を開始するモータコントローラ2と、を備える。この車両の駆動トルク制御装置Aにおいて、モータコントローラ2は、左右駆動トルク差によるヨーモーメント制御中にスリップが発生した際に、TCS作動閾値及びTCS制御目標値を、左右駆動トルク差がゼロの時の値よりも小さな値にする。【選択図】図1

Description

本発明は、左右の駆動輪に駆動トルク差をつけるヨーモーメント制御と、駆動輪スリップを抑えるトラクション制御と、を行う車両の駆動トルク制御装置に関する。
従来、インホイールモータ電気自動車において、4WD制御及びトラクション/ABS相当制御を実現可能な駆動制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特開平10−295004号公報
しかしながら、例えば、インホイールモータ電気自動車のように、左右の駆動輪に駆動トルク差をつけるヨーモーメント制御を行う車両で、駆動輪スリップを抑えるトラクション制御(以下、「TCS」という。)を行うものとする。そして、TCSを作動する際、TCS作動閾値及びTCS制御目標値(いずれもスリップ量やスリップ率等のスリップ相当値)が、左右駆動トルク差がある時と無い時で同じ値とする。この場合、左右駆動トルク差が無い走行状態でTCSが作動した時よりも、左右駆動トルク差がある走行状態でTCSが作動した時の方が、車両挙動が乱れやすい、という問題があった。
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、ヨーモーメント制御からトラクション制御へ移行するとき、車両挙動の安定化を確保する車両の駆動トルク制御装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明の車両の駆動トルク制御装置は、左右の駆動輪へ伝達される駆動トルクを異ならせることが可能な駆動系を有し、ヨーモーメント制御手段と、トラクション制御手段と、を備える。
ヨーモーメント制御手段は、左右の駆動輪への駆動トルクに差をつけて車両挙動をコントロールする。
トラクション制御手段は、左右の駆動輪の一方にスリップが発生し、実スリップ値がTCS作動閾値以上であると判定されると、実スリップ値がTCS制御目標値に収束するように駆動輪への駆動トルクを低減する制御を開始する。
この車両の駆動トルク制御装置において、トラクション制御手段は、左右駆動トルク差によるヨーモーメント制御中、又は、左右駆動トルク差によるヨーモーメント制御中にスリップが発生した際に、TCS作動閾値及びTCS制御目標値を、左右駆動トルク差がゼロの時の値よりも小さな値にする。
よって、左右駆動トルク差によるヨーモーメント制御中、又は、左右駆動トルク差によるヨーモーメント制御中にスリップが発生した際に、TCS作動閾値及びTCS制御目標値が、左右駆動トルク差がゼロの時の値よりも小さな値にされる。
例えば、左右駆動トルク差がある時、左右駆動トルク差が無い時のTCS作動閾値及びTCS制御目標値を用いる場合、アクセル踏み増し操作により駆動輪スリップが発生すると、スリップが十分に進行してからトラクション制御に移行する。このため、大きな駆動輪スリップの発生を許すことになり、車両挙動が不安定になる。
これに対し、左右駆動トルク差がある時には、左右駆動トルク差が無い時のTCS作動閾値及びTCS制御目標値より小さい値にされる。このため、ヨーモーメント制御中にアクセル踏み増し介入がある等により駆動輪にスリップが発生すると、応答良くTCS作動条件が成立し、不要なスリップを発生させないでトラクション制御が開始される。このため、駆動輪スリップが速やかに抑えられ、車両挙動の安定性が確保される。
この結果、ヨーモーメント制御からトラクション制御へ移行するとき、車両挙動の安定化を確保することができる。
実施例1の駆動トルク制御装置が適用されたインホイールモータ電気自動車を示す概略システム図である。 実施例1のモータコントローラの制御構成を示す制御系ブロック図である。 実施例1のモータコントローラで実行される駆動トルク制御処理の流れを示すフローチャートである。 比較例において基本駆動が一定の通常走行時のスリップ量・第一指令トルク・第三指令トルクの各特性を示すタイムチャートである。 比較例においてトルクホールドによるヨーモーメント制御中にアクセル踏み増しによる加速要求が介入する時のスリップ量・第一指令トルク・第三指令トルクの各特性を示すタイムチャートである。 実施例1においてトルクホールドによるヨーモーメント制御中にアクセル踏み増しによる加速要求が介入する時のスリップ量・第一指令トルク・第二指令トルクFBトルクダウン・第三指令トルクの各特性を示すタイムチャートである。
以下、本発明の車両の駆動トルク制御装置を実現する最良の形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
まず、構成を説明する。
実施例1における車両の駆動トルク制御装置の構成を、[全体システム構成]、[駆動トルク制御のブロック構成]、[駆動トルク制御処理構成]に分けて説明する。
[全体システム構成]
図1は、実施例1の駆動トルク制御装置Aが適用されたインホイールモータ電気自動車を示す。以下、図1に基づき、全体システム構成を説明する。
実施例1の駆動トルク制御装置Aが適用された車両は、左右後輪を駆動輪5L,5Rとし、左右前輪を従動輪とする後輪駆動によるインホイールモータ電気自動車である。
前記駆動トルク制御装置Aは、図1に示すように、ビークルコントロールモジュール1(ヨーモーメント制御手段)と、モータコントローラ2(トラクション制御手段)と、インバータ3L,3Rと、インホイールモータ4L,4Rと、駆動輪5L,5Rと、を備えている。
前記ビークルコントロールモジュール1は、所定の入力情報に基づき、左右の駆動輪5L,5Rの駆動トルクに差をつけて車両挙動をコントロールするヨーモーメント制御(DYC)を行う。具体的なヨーモーメント制御としては、操舵応答制御、横風対応制御、加減速対応制御、定常横加速対応制御、等がある。ビークルコントロールモジュール1には、左前輪速センサ11、右前輪速センサ12、左後輪速センサ13、右後輪速センサ14、操作角センサ15、ヨーレートセンサ16、横Gセンサ17、前後Gセンサ18、アクセル開度センサ19等から信号が入力される。そして、モータコントローラ2からの取得情報により、ヨーモーメント制御中にスリップ量が、スリップ予備判定閾値Jmを超えたら左右の駆動トルク差の増加を止めて一定の駆動トルク差を保つ。この駆動トルク差一定状態でスリップ量がスリップ判定閾値Jp(>Jm)を超えたら左右の駆動トルク差の低減を開始する。また、モータコントローラ2とは、CAN通信線6により接続されていて、スリップ量情報などを双方向に交換可能としている。なお、実スリップ値として用いているスリップ量に代えてスリップ率としても良い。
前記モータコントローラ2は、ヨーモーメント制御中でないとき、左右駆動輪にスリップが発生し、スリップ量がTCS作動閾値以上であると判定されると、スリップ量がTCS制御目標値に収束するように左右駆動輪への駆動トルクを低減する制御(=TCS制御)を開始する。ここで、「TCS作動閾値」は、ヨーモーメント制御側の「スリップ判定閾値Jp」より大きな値に設定されている。また、「TCS制御目標値」は、TCS作動閾値より小さい一定値に設定されている。一方、左右駆動トルク差によるヨーモーメント制御中に駆動スリップが発生し、スリップ量がスリップ判定閾値Jpを超えると、スリップ量がTCS作動閾値を超えるのを待つことなく、ヨーモーメント制御対応のトラクション制御を開始する(図2)。このモータコントローラ2には、ビークルコントロールモジュール1からヨーモーメント制御の最終目標値(右輪第一指令トルク、左輪第一指令トルク)や各センサ情報が取得される。また、インホイールモータ4L,4Rに設けられたレゾルバ7L,7Rからのモータ回転数信号を入力する。そして、インバータ3L,3Rに対して左輪最終指令トルクと右輪最終指令トルクをそれぞれ出力する。
前記インバータ3L,3Rは、モータコントローラ2からの右輪最終指令トルクと左輪最終指令トルクに基づき、力行時、車載のバッテリ8からの直流を三相交流に変換し、インホイールモータ4へ駆動出力する。また、回生時、インホイールモータ4からの三相交流を直流に変換し、車載のバッテリ8を充電する。
前記インホイールモータ4L,4Rは、左右の駆動輪5L,5Rのそれぞれに独立して設けられていて、左右の駆動輪5L,5Rへ伝達される駆動トルクを異ならせることが可能な駆動系を構成している。
[駆動トルク制御のブロック構成]
図2は、実施例1のモータコントローラ2の制御構成を示す。以下、図2に基づき、駆動トルク制御のブロック構成を説明する。
前記モータコントローラ2は、図2に示すように、駆動輪速演算部2aと、車体速演算部2bと、スリップ量計算部2cと、スリップ判定部2dと、TCS作動閾値決定部2eと、左右輪指令トルク演算部2fと、TCS制御目標値決定部2gと、を備えている。そして、FB制御動作部2hと、FB制御安定化フラグ生成部2iと、ドライバ期待トルク到達フラグ生成部2jと、TCS制御目標値傾き決定部2kと、を備えている。
前記駆動輪速演算部2aは、レゾルバ7L,7Rからのモータ回転数情報に基づき、駆動輪速を演算し、スリップ量計算部2cへ出力する。
前記車体速演算部2bは、車輪速センサ11,12,13,14からの車輪速値と前後Gセンサ18からの入力情報に基づき、車体速を演算し、スリップ量計算部2cへ出力する。
前記スリップ量計算部2cは、駆動輪速演算部2aからの駆動輪速と車体速演算部2bからの車体速の速度差によりスリップ量を計算し、スリップ判定部2dへ出力する。
前記スリップ判定部2dは、スリップ量計算部2cからのスリップ量が、スリップ判定閾値Jpを超えたか否かを判定する。スリップ判定部2dでスリップ量がスリップ判定閾値Jpを超えたと判定されると、その判定結果を、TCS作動閾値決定部2eと左右輪指令トルク演算部2fに出力する。
前記TCS作動閾値決定部2eは、スリップ判定部2dからスリップ量がスリップ判定閾値Jpを超えたとの判定結果を受けると、ヨーモーメント制御側に設定されているスリップ判定閾値Jpを、ヨーモーメント制御中のTCS作動閾値として決定する。ヨーモーメント非制御中のTCS作動閾値より小さな値のスリップ判定閾値Jpが、TCS制御を開始するTCS作動閾値に決定されると、その決定結果とスリップ量を、TCS制御目標値決定部2gとFB制御動作部2hに出力する。
前記左右輪指令トルク演算部2fは、スリップ判定部2dからスリップ量がスリップ判定閾値Jpを超えたとの判定結果を受けると、右輪第一指令トルクと左輪第一指令トルクとドライバ期待トルクに基づき、トルク差の無い左右輪指令トルクを演算し、FB制御動作部2hに出力する。FB制御動作部2hでは、トルク差の無い左右輪指令トルクを、FB制御の開始トルク(FBスタートトルク)とする。
ここで、FBスタートトルクは、下記のように決める。
(a) ドライバ期待トルク>第一指令トルク(左右両方)
→左右それぞれのトルクを高い方のトルクと同等にする。
(b) ドライバ期待トルク<第一指令トルク(左右両方)
→左右それぞれのトルクをドライバ期待トルクと同等にする。
(c) 右(左)第一指令トルク<ドライバ期待トルク<左(右)第一指令トルク
→左右それぞれのトルクをドライバ期待トルクと同等にする。
前記TCS制御目標値決定部2gは、TCS作動閾値決定部2eからスリップ判定閾値JpをTCS作動閾値にしたとの決定結果を入力すると、TCS制御目標値として、スリップ判定閾値Jpより低く下げた初期目標値への変更を決定する。そして、ドライバ期待トルク到達フラグ生成部2jやTCS制御目標値傾き決定部2kからの入力に基づき、TCS制御目標値の変更を決定し、決定したTCS制御目標値をFB制御動作部2hへ出力する。
前記FB制御動作部2hは、TCS作動閾値決定部2eからスリップ判定閾値JpをTCS作動閾値にしたとの決定結果と、TCS制御目標値決定部2gから変更したTCS制御目標値を入力すると、実スリップ量とTCS制御目標値との偏差に基づくフィードバック制御によりFBトルクダウン分(第二指令トルク)を算出する。そして、左右輪指令トルク演算部2fによる第一指令トルクから第二指令トルクを減算することで、第三指令トルク(左右同等の左輪最終指令トルク、右輪最終指令トルク)を計算し、インバータ3L,3Rへ出力する。
前記FB制御安定化フラグ生成部2iは、FB制御動作部2hによりFB制御動作が開始されると、FB制御が安定したか否かを判断し、FB制御が安定したと判断されると、FB制御安定化フラグを生成し、左右輪指令トルク演算部2fに出力する。なお、左右輪指令トルク演算部2fでは、FB制御安定化フラグを受けて、第一指令トルクを、開始トルクからドライバ期待トルク(アクセル開度に応じたトルク)まで高める。
前記ドライバ期待トルク到達フラグ生成部2jは、第一指令トルクがドライバ期待トルクに到達すると、ドライバ期待トルク到達フラグを生成し、TCS制御目標値決定部2gとTCS制御目標値傾き決定部2kへ出力する。
前記TCS制御目標値傾き決定部2kは、ドライバ期待トルク到達フラグを受けると、路面摩擦係数に基づき、初期目標値からトルク差の無い時のTCS制御目標値に向かって上げる上昇勾配の傾きを決定し、TCS制御目標値決定部2gへ出力する。TCS制御目標値決定部2gでは、生成されたドライバ期待トルク到達フラグと決定された傾きを受けると、ドライバ期待トルク到達フラグが生成されるまで初期目標値を維持する。そして、ドライバ期待トルク到達フラグが生成されると、初期目標値からトルク差の無い時のTCS制御目標値に向かって、路面摩擦係数や初期目標値とTCS制御目標値の乖離幅等により決定された傾きにてTCS制御目標値を上昇させる。
なお、インホイールモータ4Lと駆動輪5Lの間には、減速ギア列9Lを有し、インホイールモータ4Rと駆動輪5Rの間には、減速ギア列9Rを有する。
[駆動トルク制御処理構成]
図3は、実施例1のモータコントローラ2で実行される駆動トルク制御処理の流れを示す(トラクション制御手段)。以下、駆動トルク制御処理構成をあらわす図3の各ステップについて説明する。なお、この処理は、左右駆動トルク差によるヨーモーメント制御中に実行される。
ステップS1では、回転情報、操舵角、ヨーレート、横G、前後G、アクセル開度などの入力データ処理を行い、ステップS2へ進む。
ステップS2では、ステップS1での入力データ処理に続き、スリップ量(=駆動輪速−車体速)の演算を行い、ステップS3へ進む。
ステップS3では、ステップS2でのスリップ量演算に続き、スリップ量が、スリップ判定閾値Jp以上であるか否かを判定する。YES(スリップ量≧スリップ判定閾値Jp)の場合はステップS4へ進み、NO(スリップ量<スリップ判定閾値Jp)の場合はステップS1へ戻る。
ステップS4では、ステップS3でのスリップ量≧スリップ判定閾値Jp、つまり、ヨーモーメント制御において左右駆動トルク差を解除するとの判定に続き、左右駆動トルク差をゼロとする左右輪指令トルク(第一指令トルク)を演算し、ステップS5へ進む。
ここで、左右輪指令トルクは、右輪トルク>左輪トルクのときは、左輪トルクを右輪トルクと同じトルクまで上げて右輪トルク=左輪トルクとする。右輪トルク<左輪トルクのときは、右輪トルクを左輪トルクと同じトルクまで上げて右輪トルク=左輪トルクとする。
ステップS5では、ステップS4での左右輪指令トルクの演算に続き、左右駆動トルク差によるヨーモーメント制御のトルク差解除閾値であるスリップ判定閾値Jpを、TCS作動閾値とする決定をし、ステップS6へ進む。
すなわち、ヨーモーメント制御側に設定されているスリップ判定閾値Jpを、そのままTCS制御を開始するTCS作動閾値(左輪開始閾値Jp又は右輪開始閾値Jp)としている。
ステップS6では、ステップS5でのTCS作動閾値の決定に続き、TCS制御目標値の初期目標値を決定し、ステップS7へ進む。
ここで、初期目標値は、スリップ判定閾値Jpから、さらに所定のオフセット値を差し引いた値とする。
ステップS7では、ステップS6での初期目標値の決定に続き、実スリップ量とTCS制御目標値(初期目標値)との偏差に基づくフィードバック制御によりFBトルクダウン分(第二指令トルク)を算出するFB制御動作を開始し、ステップS8へ進む。
ステップS8では、ステップS7でのFB制御動作開始、或いは、ステップS9でのFB制御安定化フラグ=0であるとの判断に続き、FB制御安定化フラグを生成し、ステップS9へ進む。
ここで、FB制御安定化フラグは、実スリップ値が、初期目標値から±オフセット値の範囲内であり、かつ、範囲内に値がある状態が所定時間以上継続したとき(積分項≧所定値)、FB制御安定化フラグ=0からFB制御安定化フラグ=1に書き替えられる。
ステップS9では、ステップS8でのFB制御安定化フラグの生成に続き、FB制御安定化フラグ=1であるか否かを判断する。YES(FB制御安定化フラグ=1)の場合はステップS10へ進み、NO(FB制御安定化フラグ=0)の場合はステップS8へ戻る。
ステップS10では、ステップS9でのFB制御安定化フラグ=1であるとの判断に続き、ステップS5で演算した左右輪指令トルク(第一指令トルク)の上昇を開始し、ステップS11へ進む。
ここで、第一指令トルクを上昇する際、レート・リミッタ(傾き制限)をかけることで徐々に上昇させる。
ステップS11では、ステップS10での第一指令トルクの上昇に続き、ドライバ期待トルク到達フラグを生成し、ステップS12へ進む。
ここで、ドライバ期待トルク到達フラグは、左輪トルクと右輪トルクが、アクセル開度トルクであるドライバ期待トルクに到達すると、ドライバ期待トルク到達フラグ=0からドライバ期待トルク到達フラグ=1に書き替えられる。
ステップS12では、ステップS11でのドライバ期待トルク到達フラグの生成に続き、ドライバ期待トルク到達フラグ=1か否かを判断する。YES(ドライバ期待トルク到達フラグ=1)の場合はステップS13へ進み、NO(ドライバ期待トルク到達フラグ=0)の場合はステップS11へ戻る。
ステップS13では、ステップS12でのドライバ期待トルク到達フラグ=1であるとの判断に続き、TCS制御目標値を上昇させる傾きを決定し、ステップS14へ進む。
ここで、TCS制御目標値を上昇させる傾きは、路面μに応じて最大許容可能なスリップ量(例えば、駆動トルク差が無い時のTCS制御目標値)に向け、ステップS6にて決定した初期目標値からの上昇勾配に制限をかける。つまり、路面μが低μ路を示すときは、上昇傾きとして緩やかな傾きとし、路面μが高μ路を示すほど、上昇傾きを急な傾きにする。
ステップS14では、ステップS13でのTCS制御目標値の上昇傾きの決定に続き、TCS制御目標値を決定された傾きにより上昇させ、ステップS15へ進む。
ステップS15では、ステップS14でのTCS制御目標値の上昇に続き、TCS制御目標値が、許容する目標値(例えば、駆動トルク差が無い時のTCS制御目標値)に到達したか否かを判断する。YES(TCS制御目標値が許容目標値へ到達)の場合は終了へ進み、NO(TCS制御目標値が許容目標値へ未到達)の場合はステップS14へ戻る。
次に、作用を説明する。
実施例1のインホイールモータ電気自動車の駆動トルク制御装置Aにおける作用を、[比較例の課題]、[駆動トルク制御の全体作用]、[駆動トルク制御の特徴作用]に分けて説明する。
[比較例の課題]
まず、左右駆動トルク差によるヨーモーメント制御中、又は、左右駆動トルク差によるヨーモーメント制御中にスリップが発生した際に、TCS作動閾値及びTCS制御目標値を、ヨーモーメント非制御中の値のまま変えないものを比較例とする。
図4は、比較例において基本駆動が一定の通常走行時のタイムチャートである。この図4に基づき、比較例での通常走行時の駆動トルク制御作用を説明する。
図4において、時刻t1はヨーモーメント制御の開始時刻、時刻t2はスリップ量がスリップ予備判定閾値Jmに到達した時刻、時刻t3はスリップ量がスリップ判定閾値Jpに到達した時刻、時刻t4はヨーモーメント制御の終了時刻、時刻t5は駆動スリップの収束時刻である。
時刻t1にてヨーモーメント制御が開始されると、時刻t2にてスリップ量がスリップ予備判定閾値Jmに達することで、第一指令トルクにトルクリミットが作動し、その後、左右輪指令トルクのトルク差が一定に保たれる。その後、時刻t3にて、スリップ量がスリップ判定閾値Jp(>Jm)に到達すると、左右輪指令トルクのうち、高い方のトルクをドライバ期待トルクに向かって低下させ、低い方のトルクをドライバ期待トルクに向かって上昇させる。これにより、時刻t4になると、第一指令トルクはドライバ期待トルクに統一されてそのまま維持される。そして、スリップ量については、スリップ判定閾値Jpになる時刻t3からは、駆動スリップが発生した高い方のトルクをドライバ期待トルクに向かって低下させているため、時刻t5にてスリップ量が収束する。すなわち、通常走行時は、スリップ量がスリップ判定閾値Jpになったことを検知した後、ヨーモーメント制御のトルク差をゼロにすることで、滑りが無くなり通常制御に戻る。
図5は、比較例においてトルクホールドによるヨーモーメント制御中にアクセル踏み増しによる加速要求が介入する時のタイムチャートである。この図5に基づき、比較例での加速要求介入時における駆動トルク制御作用を説明する。
図5において、時刻t1はヨーモーメント制御の開始時刻、時刻t2はスリップ量がスリップ予備判定閾値Jmに到達した時刻、時刻t3はアクセル踏み増し時刻、時刻t4はスリップ量がスリップ判定閾値Jpに到達した時刻、時刻t5はTCS作動開始時刻、時刻t6はスリップ量ピーク時刻、時刻t7はTCS制御によるスリップ収束時刻である。
時刻t1にてヨーモーメント制御が開始されると、時刻t2にてスリップ量がスリップ予備判定閾値Jmに達することで、第一指令トルクにトルクリミットが作動し、その後、左右輪指令トルクのトルク差が一定に保たれる。その後、時刻t3にてアクセル踏み増し操作が行われると、ドライバ期待トルクは、アクセル踏み増し操作に伴って上昇する。そして、時刻t4にて、スリップ量がスリップ判定閾値Jp(>Jm)に到達すると、トルクの制限値の急な開放により、左右輪指令トルクがドライバ期待トルクに向かって急上昇する。このトルク急上昇により多大なスリップが発生し、時刻t5になってスリップ量がTCS作動閾値を超えると、TCS制御が開始されるものの、スリップ量はオーバーシュートにより時刻t6でピークに到達する。そして、時刻t6を過ぎると、TCS制御目標値に向かってスリップ量は徐々に低下していき、時刻t7にてスリップ量がTCS制御目標値に収束する。すなわち、図5の矢印Bで囲んだように、トルクホールドによるヨーモーメント制御中にアクセル踏み増しによる加速要求が介入すると、トルクの急な開放により多大なスリップを発生させる原因になる。
[駆動トルク制御の全体作用]
まず、図3に示すフローチャートに基づき、駆動トルク制御の全体作用を説明する。
左右駆動トルク差によるヨーモーメント制御が開始されると、図3のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS2→ステップS3へと進む。ステップS2では、スリップ量(=駆動輪速−車体速)の演算が行われ、ステップS3では、ステップS2で演算されたスリップ量が、スリップ判定閾値Jp以上であるか否かが判定される。このステップS3にてスリップ量<スリップ判定閾値Jpであると判定されている間は、ステップS1→ステップS2→ステップS3へと進む流れが繰り返される。
一方、ステップS3にてスリップ量≧スリップ判定閾値Jpと判定されると、ステップS3からステップS4→ステップS5→ステップS6→ステップS7へと進む。ステップS4では、左右輪指令トルク(第一指令トルク)として、ドライバ期待トルクではなく、左右輪のうち、高い方のトルクに統一した第一指令トルクが演算され、この第一指令トルクがFB制御動作での開始トルクとされる。ステップS5では、スリップ判定閾値Jpが、TCS制御を開始するTCS作動閾値として決定される。ステップS6では、TCS制御目標値の初期目標値が、スリップ判定閾値Jpからオフセット値を差し引いた値により決定される。ステップS7では、実スリップ量とTCS制御目標値(初期目標値)との偏差に基づくフィードバック制御によりFBトルクダウン分(第二指令トルク)を算出するFB制御動作が開始される。
FB制御動作が開始されると、ステップS7からステップS8→ステップS9へ進む。ステップS8では、FB制御安定化フラグが生成され、ステップS9では、FB制御安定化フラグ=1であるか否かが判断される。FB制御安定化フラグ=0である間は、ステップS8→ステップS9へと進む流れが繰り返される。そして、FB制御安定化フラグ=1になると、ステップS9からステップS10へ進み、ステップS10では、ステップS5で演算した左右輪指令トルク(第一指令トルク)にレート・リミッタをかけた上昇が開始される。
第一指令トルクの上昇が開始されると、次のステップS11では、ドライバ期待トルク到達フラグが生成され、ステップS12では、ドライバ期待トルク到達フラグ=1か否かが判断される。そして、左輪トルクと右輪トルクがドライバ期待トルクに到達し、ドライバ期待トルク到達フラグが、“0”から“1”に書き替えられると、ステップS12からステップS13→ステップS14→ステップS15へ進む。ステップS13では、TCS制御目標値の上昇傾きが決定され、次のステップS14では、ステップS6での初期目標値を決定された上昇傾きにより上昇させる。そして、ステップS15では、初期目標値が、許容するTCS制御目標値に到達したか否かが判断される。初期目標値が許容するTCS制御目標値へ未到達の場合は、ステップS14→ステップS15へと進む流れが繰り返される。そして、TCS制御目標値が許容するTCS制御目標値へ到達すると、ヨーモーメント制御介入対応のトラクション制御を終了する。
図6は、トルクホールドによるヨーモーメント制御中にアクセル踏み増しによる加速要求が介入する時のタイムチャートである。この図6に基づき、実施例1での加速要求介入時における駆動トルク制御作用を説明する。
図6において、時刻t1はヨーモーメント制御の開始時刻、時刻t2はスリップ量がスリップ予備判定閾値Jmに到達した時刻、時刻t3はアクセル踏み増し時刻、時刻t4はスリップ量がスリップ判定閾値Jpに到達した時刻(=TCS作動開始時刻)である。時刻t5はFB制御安定化フラグの生成時刻、時刻t6はドライバ期待トルク到達フラグの生成時刻、時刻t7は許容するTCS制御目標値への到達時刻である。
時刻t1にてヨーモーメント制御が開始されると、時刻t2にてスリップ量がスリップ予備判定閾値Jmに達することで、第一指令トルクにトルクリミットが作動し、その後、左右輪指令トルクのトルク差が一定に保たれる。その後、時刻t3にてアクセル踏み増し操作が行われると、ドライバ期待トルクは、アクセル踏み増し操作に伴って上昇する。そして、時刻t4にて、スリップ量がスリップ判定閾値Jpに到達すると、トルク差制御が解除され、第一指令トルクは、左右駆動輪のうち高い方のトルクに統一され、FB制御安定化フラグの生成時刻t5まで維持される。
この時刻t4では、図6の矢印Cに示すように、トラクション制御を開始するTCS作動閾値が、左右駆動トルク差が無い時の値(TCS制御目標値よりも高い値)から、TCS制御目標値よりも低いスリップ判定閾値Jpに切り替えられる。同時に、時刻t4では、図6の矢印Dに示すように、そして、TCS制御目標値の初期目標値が、スリップ判定閾値Jpよりさらに小さい値に切り替えられる。そして、実スリップ量とTCS制御目標値の初期目標値を用いてトラクション制御が開始され、第二指令トルク(FBトルクダウン分)が演算され、第一指令トルクから第二指令トルクを差し引く演算により、第三指令トルク(最終指令トルク)が得られる。そして、トラクション制御が開始される時刻t4より少し遅れて実スリップ量が初期目標値に収束し、その後、初期目標値に沿って実スリップ量が推移する。
その後、FB制御安定化フラグ生成時刻t5になると、FB制御の開始トルクとして維持されていた第一指令トルクの上昇が開始される。そして、時刻t5になると、第一指令トルクの上昇に符合して第二指令トルク(FBトルクダウン分)の低下を開始し、時刻t5から時刻t6まで第三指令トルク(最終指令トルク)を一定に保つ。さらに、第一指令トルクの上昇によりドライバ期待トルクに到達する時刻t6になると、第一指令トルクは、ドライバ期待トルクに沿ったトルクに保たれる。そして、時刻t6になると、TCS制御目標値が、時刻t4から時刻t6までの初期目標値から決定された上昇傾きにより上昇する。このTCS制御目標値の上昇に符合して第二指令トルク(FBトルクダウン分)が上昇を開始し、時刻t6から時刻t7まで第三指令トルク(最終指令トルク)を上昇させる。その後、許容するTCS制御目標値への到達時刻t7になると、それ以降は、TCS制御目標値が一定に保たれ、第一指令トルク(=ドライバ期待トルク)も一定に保たれ、第二指令トルク(FBトルクダウン分)も一定に保たれる。この結果、第三指令トルク(最終指令トルク)は、ドライバ期待トルクからFBトルクダウン分を差し引いた値にて一定に保たれる。
すなわち、図6のハッチングEで示すスリップ量領域が、トルクホールドによるヨーモーメント制御中にアクセル踏み増しによる加速要求が介入するときの、比較例に対するスリップ量の低減代になり、スリップ量の発生が抑えられる。
[駆動トルク制御の特徴作用]
実施例1では、左右駆動トルク差によるヨーモーメント制御中、スリップが発生してスリップ量がスリップ判定閾値Jp以上になると(図6の時刻t4)、TCS作動閾値及びTCS制御目標値を、左右駆動トルク差がゼロの時の値よりも小さな値にする構成とした。
例えば、左右駆動トルク差がある時、左右駆動トルク差が無い時のTCS作動閾値及びTCS制御目標値を用いる場合、アクセル踏み増し操作により駆動輪スリップが発生すると、スリップが十分に進行してからトラクション制御に移行する。このため、大きな駆動輪スリップの発生を許すことになり、車両挙動が不安定になる(図5)。
これに対し、左右駆動トルク差がある時には、左右駆動トルク差が無い時のTCS作動閾値及びTCS制御目標値より小さい値を用いる(図6の矢印C、矢印D)。このため、ヨーモーメント制御中にアクセル踏み増し介入がある等により駆動輪5L,5Rにスリップが発生すると、応答良くTCS作動条件が成立し、不要なスリップを発生させないでトラクション制御が開始される。このため、駆動輪スリップが速やかに抑えられ、車両挙動の安定性が確保される。この結果、ヨーモーメント制御からトラクション制御へ移行するとき、車両挙動の安定化を確保することができる。
実施例1では、トラクション制御を開始するTCS作動閾値を、左右駆動トルク差を解除する閾値としてヨーモーメント制御側で設定されたスリップ判定閾値Jpにする構成とした。
すなわち、TCS作動閾値を、ヨーモーメント制御側のスリップ判定閾値Jpとしたため、ヨーモーメント制御側で左右駆動トルク差の解除を開始するタイミングに合わせて、待ち時間無くトラクション制御が開始される。
したがって、左右駆動トルク差によるヨーモーメント制御中にスリップが発生すると、左右駆動トルク差の解除と同時に開始されるトラクション制御により応答遅れなくスリップを抑制できる。
実施例1では、ヨーモーメント制御中にドライバによるアクセル踏み増し介入により駆動輪スリップが判定されると、左輪指令トルクと右輪指令トルクのうち低い方のトルクを高い方のトルクまで高める。そして、トルク差の無い左右輪指令トルクをトラクション制御の開始トルクとする構成とした。
すなわち、ドライバのアクセル操作によるアクセル開度に応じた目標駆動トルクをドライバ期待トルクというとき、ドライバ期待トルクを観察しながら、現在出力トルクがドライバ期待トルクに近い側のトルクに両方統一される。
したがって、トラクション制御の開始トルクをより早くドライバ期待トルクに近づかせることで、ドライバの違和感を無くすことができると共に、不要なスリップを発生させることなく他の制御へ移行することができる。
実施例1では、TCS制御目標値として、TCS作動閾値より低く下げた値を初期目標値とし、左右輪指令トルクが、ドライバ期待トルクに到達するまで初期目標値を保持する。そして、ドライバ期待トルクに到達すると、初期目標値から許容可能なTCS制御目標値に向かって上げる構成とした。
すなわち、トラクション制御での初期目標値を、一旦、TCS作動閾値より低く下げて保持し、左右輪指令トルクが、ドライバ期待トルクに到達すると、徐々に上昇させるようにした。このように、初期目標値を、一旦、TCS作動閾値より低く下げることで、FB系の安定化が図られると共に、いち早く滑りを発生させないでトラクション制御に移行することが可能になる。
したがって、トラクション制御でのFB系の安定化を図ることができると共に、大きなスリップの発生を確実に抑えることができる。
実施例1では、左右輪指令トルクとして、フィードバック制御の開始から制御安定化が確認されるまで開始トルクを維持し、フィードバック制御の安定化が確認されたら、開始トルクからドライバ期待トルクまで高める構成とした。
すなわち、FB系の安定化を確認した後、左右輪指令トルクをドライバ期待トルクに向けて徐々に上昇させる制御が行われる。
したがって、フィードバック制御の開始から制御安定化が確認されるまで開始トルクを維持することで、スリップを発生させないで、スリップ量が初期目標値に追従するようなトラクション制御に移行することができる。
実施例1では、左右輪指令トルクを、開始トルクからドライバ期待トルクまで高めるときの上昇傾きを、路面摩擦係数が低いと緩勾配の傾きに決定し、路面摩擦係数が高くなるほど急勾配の傾きにする構成とした。
この構成により、低摩擦係数路では、左右輪指令トルクを上昇させることによるスリップの進行が抑制される。一方、スリップが発生し難い高摩擦係数路では、左右輪指令トルクを応答良くドライバ期待トルクまで高めることができる。
したがって、低摩擦係数路走行時、スリップ発生によるドライバに違和感を与えず、高摩擦係数路走行時、駆動トルクをより早くドライバ期待トルクに近づけることができる。
次に、効果を説明する。
実施例1のインホイールモータ電気自動車の駆動トルク制御装置Aにあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
(1) 左右の駆動輪5L,5Rへ伝達される駆動トルクを異ならせることが可能な駆動系を有し、
左右の駆動輪5L,5Rへの駆動トルクに差をつけて車両挙動をコントロールするヨーモーメント制御手段(ビークルコントロールモジュール1)と、
左右の駆動輪5L,5Rの一方にスリップが発生し、実スリップ値がTCS作動閾値以上であると判定されると、実スリップ値がTCS制御目標値に収束するように駆動輪への駆動トルクを低減する制御を開始するトラクション制御手段(モータコントローラ2)と、
を備えた車両の駆動トルク制御装置Aにおいて、
トラクション制御手段(モータコントローラ2)は、左右駆動トルク差によるヨーモーメント制御中、又は、左右駆動トルク差によるヨーモーメント制御中にスリップが発生した際に、TCS作動閾値及びTCS制御目標値を、左右駆動トルク差がゼロの時の値よりも小さな値にする。
このため、ヨーモーメント制御からトラクション制御へ移行するとき、車両挙動の安定化を確保することができる。
(2) トラクション制御手段(モータコントローラ2)は、ヨーモーメント制御中にスリップが発生した際にトラクション制御を開始するTCS作動閾値を、左右駆動トルク差を解除する閾値としてヨーモーメント制御側で設定されたスリップ判定閾値Jpにする。
このため、(1)の効果に加え、左右駆動トルク差によるヨーモーメント制御中にスリップが発生すると、左右駆動トルク差の解除と同時に開始されるトラクション制御により応答遅れなくスリップを抑制することができる。
(3) トラクション制御手段(モータコントローラ2)は、ヨーモーメント制御中にドライバによるアクセル踏み増し介入により駆動輪スリップが判定されると、左輪指令トルクと右輪指令トルクのうち低い方のトルクを高い方のトルクまで高め、トルク差の無い左右輪指令トルクをトラクション制御の開始トルクとする左右輪指令トルク演算部2fを有する。
このため、(1)又は(2)の効果に加え、トラクション制御の開始トルクをより早くドライバ期待トルクに近づかせることで、ドライバの違和感を無くすことができると共に、不要なスリップを発生させることなく他の制御へ移行することができる。
(4) ドライバのアクセル操作によるアクセル開度に応じた目標駆動トルクをドライバ期待トルクというとき、
トラクション制御手段(モータコントローラ2)は、TCS制御目標値として、TCS作動閾値より低く下げた値を初期目標値とし、左右輪指令トルクが、ドライバ期待トルクに到達するまで初期目標値を保持し、ドライバ期待トルクに到達すると、初期目標値から許容可能なTCS制御目標値に向かって上げるTCS制御目標値決定部2gを有する。
このため、(3)の効果に加え、TCS制御目標値として、TCS作動閾値より低く下げた値を初期目標値とすることで、トラクション制御でのFB系の安定化を図ることができると共に、大きなスリップの発生を確実に抑えることができる。
(5) トラクション制御手段(モータコントローラ2)は、実スリップ値とTCS制御目標値との偏差に基づくフィードバック制御によりFBトルクダウン分を算出するFB制御動作部2hを有し、
左右輪指令トルク演算部2fは、FBトルクダウン分を除いた左右輪指令トルクとして、フィードバック制御の開始から制御安定化が確認されるまで開始トルクを維持し、フィードバック制御の安定化が確認されたら、開始トルクからドライバ期待トルクまで高める。
このため、(3)又は(4)の効果に加え、制御安定化が確認されるまで開始トルクを維持することで、スリップを発生させないで、スリップ量が初期目標値に追従するようなトラクション制御に移行することができる。
(6) 左右輪指令トルク演算部2fは、左右輪指令トルクを、開始トルクからドライバ期待トルクまで高めるときの上昇傾きを、路面摩擦係数が低いと緩勾配の傾きに決定し、路面摩擦係数が高くなるほど急勾配の傾きにする。
このため、(5)の効果に加え、低摩擦係数路走行時、スリップ発生によりドライバに違和感を与えず、高摩擦係数路走行時、駆動トルクをより早くドライバ期待トルクに近づけることができる。
以上、本発明の車両の駆動トルク制御装置を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この実施例1に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
実施例1では、トラクション制御手段として、左右駆動トルク差によるヨーモーメント制御中にスリップが発生した際に、TCS作動閾値を、ヨーモーメント制御側で設定されたスリップ判定閾値Jpにする例を示した。しかし、トラクション制御手段としては、TCS作動閾値を、左右駆動トルク差がゼロの時の値よりも小さな値にするものであれば、スリップ判定閾値Jpよりも高い値としても良い。
実施例1では、トラクション制御手段として、左右駆動トルク差によるヨーモーメント制御中にスリップが発生した際に、TCS制御目標値を、スリップ判定閾値Jpよりも小さな値にする例を示した。しかし、トラクション制御手段としては、TCS制御目標値を、左右駆動トルク差がゼロの時の値よりも小さな値にするものであれば、スリップ判定閾値Jpよりも大きな値としても良い。
実施例1では、トラクション制御手段として、TCS作動閾値及びTCS制御目標値の切り替えタイミングを、図6のタイムチャート中のスリップ量がスリップ判定閾値Jpに到達するタイミング(図6のt4)とする例を示した。しかし、トラクション制御手段としては、TCS作動閾値及びTCS制御目標値の切り替えタイミングを、図6のタイムチャート中の時刻t4より前であれば、ヨーモーメント制御開始時刻t1〜時刻t4までの何れのタイミングでも良い。つまり、ヨーモーメント制御開始から終了までのタイミングであれば、スリップ発生の有無にかかわらず、TCS作動閾値及びTCS制御目標値を小さな値に切り替えるタイミングとして良い。
実施例1では、トラクション制御において、スリップ値として、車輪速と車体速の差分によるスリップ量を用いる例を示した。しかし、スリップ値としては、車体速に対する車輪速と車体速の差分の比率によるスリップ率を用いる例としても良い。
実施例1では、本発明の駆動トルク制御装置を、後輪駆動のインホイールモータ電気自動車に適用する例を示した。しかし、本願発明の駆動トルク制御装置は、インホイールモータ電気自動車ばかりでなく、1つの駆動源からの駆動トルクをクラッチなどによって左右の駆動輪に配分する車両のように、左右駆動輪へ伝達される駆動トルクを異ならせることが可能な駆動系を有する車両に適用できる。また、車両としても、電気自動車に限ることなく、ヨーモーメント制御が可能なハイブリッド車やエンジン車等にも適用できる。
A 駆動トルク制御装置
1 ビークルコントロールモジュール(ヨーモーメント制御手段)
2 モータコントローラ(トラクション制御手段)
2a 駆動輪速演算部
2b 車体速演算部
2c スリップ量計算部
2d スリップ判定部
2e TCS作動閾値決定部
2f 左右輪指令トルク演算部
2g TCS制御目標値決定部
2h FB制御動作部
2i FB制御安定化フラグ生成部
2j ドライバ期待トルク到達フラグ生成部
2k TCS制御目標値傾き決定部
3L,3R インバータ
4L,4R インホイールモータ
5L,5R 駆動輪

Claims (6)

  1. 左右の駆動輪へ伝達される駆動トルクを異ならせることが可能な駆動系を有し、
    前記左右の駆動輪への駆動トルクに差をつけて車両挙動をコントロールするヨーモーメント制御手段と、
    前記左右の駆動輪の一方にスリップが発生し、実スリップ値がTCS作動閾値以上であると判定されると、実スリップ値がTCS制御目標値に収束するように駆動輪への駆動トルクを低減する制御を開始するトラクション制御手段と、
    を備えた車両の駆動トルク制御装置において、
    前記トラクション制御手段は、左右駆動トルク差によるヨーモーメント制御中、又は、左右駆動トルク差によるヨーモーメント制御中にスリップが発生した際に、前記TCS作動閾値及び前記TCS制御目標値を、左右駆動トルク差がゼロの時の値よりも小さな値にする
    ことを特徴とする車両の駆動トルク制御装置。
  2. 請求項1に記載された車両の駆動トルク制御装置において、
    前記トラクション制御手段は、ヨーモーメント制御中にスリップが発生した際にトラクション制御を開始する前記TCS作動閾値を、左右駆動トルク差を解除する閾値としてヨーモーメント制御側で設定されたスリップ判定閾値にする
    ことを特徴とする車両の駆動トルク制御装置。
  3. 請求項1又は請求項2に記載された車両の駆動トルク制御装置において、
    前記トラクション制御手段は、ヨーモーメント制御中にドライバによるアクセル踏み増し介入により駆動輪スリップが判定されると、左輪指令トルクと右輪指令トルクのうち低い方のトルクを高い方のトルクまで高め、トルク差の無い左右輪指令トルクをトラクション制御の開始トルクとする左右輪指令トルク演算部を有する
    ことを特徴とする車両の駆動トルク制御装置。
  4. 請求項3に記載された車両の駆動トルク制御装置において、
    ドライバのアクセル操作によるアクセル開度に応じた目標駆動トルクをドライバ期待トルクというとき、
    前記トラクション制御手段は、前記TCS制御目標値として、前記TCS作動閾値より低く下げた値を初期目標値とし、前記左右輪指令トルクが、前記ドライバ期待トルクに到達するまで初期目標値を保持し、前記ドライバ期待トルクに到達すると、初期目標値から許容可能なTCS制御目標値に向かって上げるTCS制御目標値決定部を有する
    ことを特徴とする車両の駆動トルク制御装置。
  5. 請求項3又は4に記載された車両の駆動トルク制御装置において、
    前記トラクション制御手段は、実スリップ値と前記TCS制御目標値との偏差に基づくフィードバック制御によりFBトルクダウン分を算出するFB制御動作部を有し、
    前記左右輪指令トルク演算部は、前記FBトルクダウン分を除いた左右輪指令トルクとして、前記フィードバック制御の開始から制御安定化が確認されるまで前記開始トルクを維持し、前記フィードバック制御の安定化が確認されたら、前記開始トルクから前記ドライバ期待トルクまで高める
    ことを特徴とする車両の駆動トルク制御装置。
  6. 請求項5に記載された車両の駆動トルク制御装置において、
    前記左右輪指令トルク演算部は、前記左右輪指令トルクを、前記開始トルクから前記ドライバ期待トルクまで高めるときの上昇傾きを、路面摩擦係数が低いと緩勾配の傾きに決定し、路面摩擦係数が高くなるほど急勾配の傾きにする
    ことを特徴とする車両の駆動トルク制御装置。
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