以下に、本発明の実施形態を詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施形態の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、これらの内容に限定はされない。
[1.光電変換素子]
本発明の一実施形態に係る光電変換素子は、一対の電極と、一対の電極間に配置された活性層と、活性層と電極との間に配置されたバッファ層と、を有している。そして、バッファ層は、半導体化合物と絶縁性ポリマーとを含有している。バッファ層は、カソードと活性層との間に配置された電子取り出し層であってもよいし、アノードと活性層との間に配置された正孔取り出し層であってもよい。すなわち、一実施形態に係る光電変換素子は、電子取り出し層と正孔取り出し層との少なくとも一方を有している。また、光電変換素子が電子取り出し層と正孔取り出し層との双方を有する場合、電子取り出し層と正孔取り出し層との少なくとも一方は半導体化合物と絶縁性ポリマーとを含有している。一実施形態に係る光電変換素子は、基材、及び仕事関数チューニング層を含むその他の構成要素を有していてもよい。
図1は、本発明に係る光電変換素子の一実施形態を模式的に表す断面図である。図1に示される光電変換素子は、一般的な薄膜太陽電池に用いられる光電変換素子であるが、本発明に係る光電変換素子が図1に示されるものに限られるわけではない。本発明の一実施形態に係る光電変換素子100は、基材107、アノード(電極)101、正孔取り出し層(バッファ層)102、活性層103、電子取り出し層(バッファ層)104、仕事関数チューニング層105及びカソード(電極)106がこの順に形成された層構造を有する。なお、必ずしも仕事関数チューニング層105を設ける必要はない。また、仕事関数チューニング層がアノード101と正孔取り出し層102との間に存在してもよい。
以下、光電変換素子100が備える各構成について説明する。
[1−1.活性層(103)]
活性層103は光電変換が行われる層である。光電変換素子100が光を受けると、光が活性層103に吸収されてキャリアが発生し、発生したキャリアはアノード101及びカソード106から取り出される。
活性層103の構造は特に限定されない。例えば、活性層103はp型半導体化合物を含有する層とn型半導体化合物を含有する層とを含むヘテロ接合型の活性層であってもよい。このような活性層103に光が入射すると、層界面でキャリア分離が起こり、生じたキャリア(正孔及び電子)がアノード101及びカソード106へと輸送される。なお、本明細書において、半導体化合物とは半導体の材料となる化合物のことを指す。
一実施形態において、活性層103は、p型半導体化合物とn型半導体化合物とが混合した層(i層)を有するバルクヘテロ型の活性層である。i層においては、p型半導体化合物とn型半導体化合物とが相分離している。i層に光が入射すると、相界面でキャリア分離が起こり、生じたキャリア(正孔及び電子)がアノード101及びカソード106へと輸送される。i層には、p型半導体化合物を含有する層と、n型半導体化合物を含有する層との少なくとも一方が積層されていてもよい。
他の実施形態において、活性層103は、ペロブスカイト半導体化合物を含有する層であり、このような活性層103を有する太陽電池はペロブスカイト太陽電池として知られている。ペロブスカイト半導体においては、ペロブスカイト構造を有するペロブスカイト半導体化合物が結晶を形成している。このような結晶においては速い電荷分離が起こるとともに正孔及び電子の拡散距離が長いため、効率のよい電荷分離が起こる。
活性層103の厚さに特段の制限はない。より多くの光を吸収できる点で、活性層103の厚さは、好ましくは5nm以上、さらに好ましくは10nm以上、より好ましくは50nm以上、特に好ましくは120nm以上である。一方で、直列抵抗が下がる点で、活性層103の厚さは、好ましくは500nm以下、さらに好ましくは400nm以下、より好ましくは300nm以下である。
(ヘテロ接合型の活性層及びバルクヘテロ型の活性層)
ヘテロ接合型又はバルクヘテロ型の活性層103が含有するp型半導体化合物に特段の制限はない。例えば、p型半導体化合物としては、ポリチオフェン、ポリフルオレン、ポリフェニレンビニレン、ポリチエニレンビニレン、ポリアセチレン又はポリアニリン等の共役コポリマー半導体のような高分子半導体化合物が挙げられる。また、p型半導体化合物として、ナフタセン、ペンタセン又はピレン等の縮合芳香族炭化水素;α−セキシチオフェン等のチオフェン環を4個以上含むオリゴチオフェン類;チオフェン環、ベンゼン環、フルオレン環、ナフタレン環、アントラセン環、チアゾール環、チアジアゾール環及びベンゾチアゾール環のうち少なくとも一つ以上を含み、かつ合計4個以上連結したもの;フタロシアニン化合物及びその金属錯体、又はテトラベンゾポルフィリン等のポルフィリン化合物及びその金属錯体、等の大環状化合物等のような低分子半導体化合物も挙げられる。また、単層カーボンナノチューブ、グラフェン等を使用することもできる。さらに、2種以上のp型半導体化合物を用いてもよい。
電荷分離を促進する観点から、1.0eV以上1.8eV以下のエネルギーバンドギャップを有するp型半導体化合物を用いることは好ましい。また、簡易な塗布プロセスを用いて活性層103を形成できる点で、溶媒に溶解可能な高分子半導体化合物を用いることは好ましい。
p型の高分子半導体化合物としては、特段の制限はないが、二種以上のモノマー単位の共重合体である高分子半導体化合物を用いることが好ましい。このような光電子半導体化合物の例としては、Accounts of Chemical Research, 2012, 45, 723-733、Macromolecules, 2012, 45, 607-632、Chemistry of Materials, 2011, 23, 456-469、Energy & Environmental Science, 2011, 4, 1225-1237、Progress in Polymer Science, 2011, 36, 1326-1414、Journal of Materials Chemistry, 2012, 22, 10416-10434、及びProgress in Polymer Science, 2012, 37, 1292-1331に記載されるものが挙げられる。また、これらの高分子半導体化合物の誘導体を用いることもできるし、上記の文献に記載されたモノマーの共重合により得られる高分子半導体化合物を用いることもできる。さらには、溶解性、結晶性、成膜性、HOMOエネルギー準位、及びLUMOエネルギー準位等を制御するために、これらの高分子半導体化合物に対して置換基を導入してもよい。
ヘテロ接合型又はバルクヘテロ型の活性層103が含有するn型半導体化合物に特段の制限はない。n型半導体化合物としては、例えば、フラーレン化合物、8−ヒドロキシキノリンアルミニウム等のキノリノール誘導体金属錯体、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド若しくはペリレンテトラカルボン酸ジイミド等の縮合環テトラカルボン酸ジイミド類、ペリレンジイミド誘導体、ターピリジン金属錯体、トロポロン金属錯体、フラボノール金属錯体、ペリノン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、ベンズオキサゾール誘導体、チアゾール誘導体、ベンズチアゾール誘導体、ベンゾチアジアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、アルダジン誘導体、ビススチリル誘導体、ピラジン誘導体、フェナントロリン誘導体、キノキサリン誘導体、ベンゾキノリン誘導体、ビピリジン誘導体、ボラン誘導体、アントラセン、ピレン、ナフタセン若しくはペンタセン等の縮合多環芳香族炭化水素の全フッ化物、グラフェン又はn型ポリマー等が挙げられる。
これらの中でも、フラーレン化合物、ボラン誘導体、チアゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、ベンゾチアジアゾール誘導体、N−アルキル置換されたナフタレンテトラカルボン酸ジイミド又はN−アルキル置換されたペリレンジイミド誘導体が好ましく、フラーレン化合物、N−アルキル置換されたペリレンジイミド誘導体、N−アルキル置換されたナフタレンテトラカルボン酸ジイミド又はn型ポリマーがより好ましく、フラーレン化合物が特に好ましい。フラーレン化合物としては、特段の制限はないが、C60誘導体又はC70誘導体が特に好ましく、C61PCBM又はC71PCBMが特に好ましい。また、2種以上のn型半導体化合物を用いてもよい。
バルクヘテロ型の活性層103において、i層におけるn型半導体化合物に対するp型半導体化合物の質量比率(p型半導体化合物/n型半導体化合物)は、特段の制限はないが、良好な相分離構造を得ることにより光電変換効率を向上させる点で、0.15以上であることが好ましく、0.3以上であることがより好ましく、一方、4以下であることが好ましく、2以下であることがさらに好ましく、0.8以下であることが特に好ましい。
(ペロブスカイト半導体化合物を含有する活性層)
ペロブスカイト半導体化合物とは、ペロブスカイト構造を有する半導体化合物のことを指す。ペロブスカイト半導体化合物としては、特段の制限はないが、例えば、Galasso et al. Structure and Properties of Inorganic Solids, Chapter 7 - Perovskite type and related structuresで挙げられているものから選ぶことができる。例えば、ペロブスカイト化合物としては、一般式AMX3で表されるもの又は一般式A2MX4で表されるものが挙げられる。ここで、Mは2価のカチオンを、Aは1価のカチオンを、Xは1価のアニオンを指す。
1価のカチオンAに特段の制限はないが、例えば、上記Galassoの著書に記載されているものを用いることができる。より具体的な例としては、周期表第1族及び第13族〜第16族元素を含むカチオンが挙げられる。これらの中でも、セシウムイオン、ルビジウムイオン、置換基を有していてもよいアンモニウムイオン又は置換基を有していてもよいホスホニウムイオンが好ましい。置換基を有していてもよいアンモニウムイオンの例としては、1級アンモニウムイオン又は2級アンモニウムイオンが挙げられる。置換基にも特段の制限はない。置換基を有していてもよいアンモニウムイオンの具体例としては、アルキルアンモニウムイオン又はアリールアンモニウムイオンが挙げられる。特に、立体障害を避けるために、3次元の結晶構造となるモノアルキルアンモニウムイオンを用いることが好ましい。また、カチオンAとして2種類以上のカチオンの組み合わせを用いることもできる。
1価のカチオンAの具体例としては、メチルアンモニウムイオン、エチルアンモニウムイオン、イソプロピルアンモニウムイオン、n−プロピルアンモニウムイオンイソブチルアンモニウムイオン、n−ブチルアンモニウムイオン、t−ブチルアンモニウムイオン、ジメチルアンモニウムイオン、ジエチルアンモニウムイオン、フェニルアンモニウムイオン、ベンジルアンモニウムイオン、フェネチルアンモニウムイオン、グアニジウムイオン、ホルムアミジニウムイオン、アセトアミジニウムイオン又はイミダゾリウムイオン等が挙げられる。
2価のカチオンMにも特段の制限はないが、2価の金属カチオン又は半金属カチオンであることが好ましい。具体的な例としては周期表第14族元素のカチオンが挙げられ、より具体的な例としては、鉛カチオン(Pb2+)、スズカチオン(Sn2+)、ゲルマニウムカチオン(Ge2+)が挙げられる。また、カチオンMとして2種類以上のカチオンの組み合わせを用いることもできる。なお、安定な光電変換素子を得る観点からは、鉛カチオン又は鉛カチオンを含む2種以上のカチオンを用いることが特に好ましい。
1価のアニオンXの例としては、ハロゲン化物イオン、酢酸イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、ホウ酸イオン、アセチルアセトナートイオン、炭酸イオン、クエン酸イオン、硫黄イオン、テルルイオン、チオシアン酸イオン、チタン酸イオン、ジルコン酸イオン、2,4−ペンタンジオナトイオン又はケイフッ素イオン等が挙げられる。バンドギャップを調整するためには、Xは1種類のアニオンであってもよいし、2種類以上のアニオンの組み合わせであってもよい。なかでも、Xとしてはハロゲン化物イオン、又はハロゲン化物イオンとその他のアニオンとの組み合わせを用いることが好ましい。ハロゲン化物イオンXの例としては、塩化物イオン、臭化物イオン又はヨウ化物イオン等が挙げられる。半導体のバンドギャップを広げすぎない観点から、ヨウ化物イオンを用いることが好ましい。
ペロブスカイト半導体化合物の好ましい例としては、有機−無機ペロブスカイト半導体化合物が挙げられ、特にハライド系有機−無機ペロブスカイト半導体化合物が挙げられる。ペロブスカイト半導体化合物の具体例としては、CH3NH3PbI3、CH3NH3PbBr3、CH3NH3PbCl3、CH3NH3SnI3、CH3NH3SnBr3、CH3NH3SnCl3、CH3NH3PbI(3−x)Clx、CH3NH3PbI(3−x)Brx、CH3NH3PbBr(3−x)Clx、CH3NH3Pb(1−y)SnyI3、CH3NH3Pb(1−y)SnyBr3、CH3NH3Pb(1−y)SnyCl3、CH3NH3Pb(1−y)SnyI(3−x)Clx、CH3NH3Pb(1−y)SnyI(3−x)Brx、CH3NH3Pb(1−y)SnyBr(3−x)Clx、等が挙げられる。なお、xは0以上3以下、yは0以上1以下の任意の値を示す。
光電変換効率を向上させる観点から、ペロブスカイト半導体化合物としては、1.0eV以上3.5eV以下のエネルギーバンドギャップを有する半導体化合物を用いることが好ましい。
活性層103は、2種類以上のペロブスカイト半導体化合物を含有していてもよい。例えば、A、B及びXのうちの少なくとも1つが異なる2種類以上のペロブスカイト半導体化合物が活性層103に含まれていてもよい。
活性層103に含まれるペロブスカイト半導体化合物の量は、良好な光電変換特性が得られるように、好ましくは50質量%以上であり、さらに好ましくは70質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上である。上限に制限はなく、100質量%以下である。
また、活性層103は、ペロブスカイト半導体化合物に加えて、添加物を含有していてもよい。添加物は特に限定されないが、添加物としては、例えばハロゲン化物、酸化物、又は硫化物、硫酸塩、硝酸塩若しくはアンモニウム塩等の無機塩のような、無機化合物が挙げられる。活性層103中の添加剤の量は、良好な光電変換特性が得られるように、好ましくは50質量%以下であり、さらに好ましくは30質量%以下であり、より好ましくは20質量%以下である。下限に制限はなく、0質量%以上である。
また、光電変換素子100の耐久性を向上させるために、活性層103は、半導体化合物に加えて絶縁性ポリマーを含有していてもよい。理由は明確ではないが、活性層103に絶縁性ポリマーを添加することにより半導体化合物の結晶成長が制御されて活性層103のモルフォロジーが良好となるために、光電変換素子100の耐久性が向上するものと考えられる。
活性層103に含まれる半導体化合物と絶縁性ポリマーとの比率は、特に限定されない。耐久性を向上させる効果がより得られるように、半導体化合物に対する絶縁性ポリマーの割合は、好ましくは0.1質量%以上であり、さらに好ましくは0.5質量%以上であり、より好ましくは1.2質量%以上である。また、半導体デバイスの性能が十分に維持されるように、半導体化合物に対する絶縁性ポリマーの割合は、好ましくは20質量%以下であり、さらに好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは5.0質量%以下であり、特に好ましくは3.0質量%以下である。
絶縁性ポリマーの種類は、半導体化合物とともに活性層103を形成可能であれば特に限定されない。絶縁性ポリマーの具体例としては、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルポリピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリメチルビニルエーテル、ポリイソプロピルアクリルアミド等の非イオン性ポリマー;ポリアクリル酸ナトリウム、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、ポリイソプロピレンスルホン酸ナトリウム、ポリナフタレンスルホン酸縮合体塩、ポリエチレンイミンザンテート塩等のカチオン性ポリマー;ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート四級塩、ジメチルジアリルアンモニウムクロライド、ポリアミジン、ポリビニルイミダゾリン、ジシアンジアミド系縮合体、エピクロルヒドリンジメチルアミン縮合体、ポリエチレンイミン等のアニオン性ポリマー;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート四級塩アクリル酸共重合体、ポリアクリルアミドのホフマン分解物等の両性ポリマーが挙げられる。
(活性層の形成方法)
活性層103の形成方法は特に限定されず、任意の方法を用いることができる。具体例としては、塗布法及び蒸着法(又は共蒸着法)が挙げられる。簡易に活性層103を形成できる点で、塗布法を用いることは好ましい。以下に、塗布法により活性層103を形成する方法について説明する。
バルクヘテロ型の活性層103は、p型半導体化合物と、n型半導体化合物と、溶媒と、を含む塗布液を調製し、この塗布液を塗布することにより形成することができる。この塗布液は、さらに添加剤を含有していてもよい。また、溶媒として、高沸点溶媒と低沸点溶媒との混合溶媒を用いてもよい。このような添加剤又は混合溶媒を用いることにより、溶媒の揮発速度を調整することができ、半導体化合物の組織化を促進して相分離構造を最適化することができる。
塗布液の塗布方法としては任意の方法を用いることができるが、例えば、スピンコート法、インクジェット法、ドクターブレード法、ドロップキャスティング法、リバースロールコート法、グラビアコート法、キスコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアナイフコート法、ワイヤーバーバーコート法、パイプドクター法、含浸・コート法又はカーテンコート法等が挙げられる。
塗布液を塗布した後に、加熱乾燥を行ってもよい。バルクヘテロ型の活性層103に対して加熱を行うことにより、活性層の自己組織化を促進することができる。加熱温度は、自己組織化の効果が得られるように、好ましくは50℃以上、さらに好ましくは80℃以上であり、一方、熱による損傷が生じないように、好ましくは300℃以下、さらに好ましくは280℃以下、より好ましくは250℃以下である。加熱する時間としては、自己組織化の効果が得られるように、好ましくは1分以上、さらに好ましくは3分以上であり、一方、処理効率を向上させる観点から、好ましくは3時間以下、さらに好ましくは1時間以下である。
塗布液の溶媒としては、p型半導体化合物及びn型半導体化合物を均一に溶解できるものであれば、特に限定されない。溶媒の例としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、ノナン若しくはデカン等の脂肪族炭化水素類;トルエン、キシレン、メシチレン、シクロヘキシルベンゼン、クロロベンゼン若しくはオルトジクロロベンゼン等の芳香族炭化水素類;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、テトラリン若しくはデカリン等の脂環式炭化水素類;メタノール、エタノール若しくはプロパノール等の低級アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン若しくはシクロヘキサノン等の脂肪族ケトン類;アセトフェノン若しくはプロピオフェノン等の芳香族ケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル若しくは乳酸メチル等のエステル類;クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、トリクロロエタン若しくはトリクロロエチレン等のハロゲン炭化水素類;エチルエーテル、テトラヒドロフラン若しくはジオキサン等のエーテル類;又は、ジメチルホルムアミド若しくはジメチルアセトアミド等のアミド類等が挙げられる。
なかでも好ましくは、トルエン、キシレン、メシチレン、シクロヘキシルベンゼン、クロロベンゼン若しくはオルトジクロロベンゼン等の芳香族炭化水素類;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、テトラリン若しくはデカリン等の脂環式炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン若しくはシクロヘキサノン等のケトン類;又は、エチルエーテル、テトラヒドロフラン若しくはジオキサン等のエーテル類である。一方で環境負荷の観点からは、非ハロゲン系溶媒を用いることが好ましい。
より好ましくは、トルエン、キシレン、メシチレン若しくはシクロヘキシルベンゼン等の非ハロゲン芳香族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン若しくはシクロヘキサノン等の非ハロゲン系ケトン類;アセトフェノン若しくはプロピオフェノン等の芳香族ケトン類;テトラヒドロフラン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、テトラリン若しくはデカリン等の非ハロゲン系脂環式炭化水素類;又は、1,4−ジオキサン等の非ハロゲン系脂肪族エーテル類である。特に好ましくは、トルエン、キシレン、メシチレン又はシクロヘキシルベンゼン等の非ハロゲン芳香族炭化水素類である。溶媒としては1種の溶媒を単独で用いてもよいし、任意の2種以上の溶媒を任意の比率で併用してもよい。
高沸点溶媒としては、常圧下での沸点が180℃以上250℃以下である溶媒を用いることが好ましく、具体例としてはテトラリン、デカリン又はアセトフェノン等が挙げられる。低沸点溶媒としては、常圧下での沸点が60℃以上150℃以下である溶媒を用いることが好ましく、具体例としては、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン又はエチルメチルケトン等が挙げられる。このような沸点の溶媒を組み合わせることにより、半導体化合物の組織化を促進することができる。環境負荷の観点から、これらの高沸点溶媒及び低沸点溶媒は非ハロゲン系溶媒であることが好ましい。
高沸点溶媒と低沸点溶媒との比率は、特に制限されない。半導体化合物の組織化を促進しやすい点で、質量比(高沸点溶媒/低沸点溶媒)が1/20以上であることが好ましく、1/15以上であることがさらに好ましく、1/10以上であることがより好ましい。一方、質量比(高沸点溶媒/低沸点溶媒)が10/1以下であることが好ましく、2/1以下であることがさらに好ましく、1/1以下であることがより好ましく、1/2以下であることが特に好ましい。
低沸点溶媒と高沸点溶媒との組み合わせの例としては、非ハロゲン芳香族炭化水素類と脂環式炭化水素類、非ハロゲン芳香族炭化水素類と芳香族ケトン類、エーテル類と脂環式炭化水素類、エーテル類と芳香族ケトン類、脂肪族ケトン類と脂環式炭化水素類、又は脂肪族ケトン類と芳香族ケトン類、等が挙げられる。好ましい組み合わせの具体例としては、トルエンとテトラリン、キシレンとテトラリン、トルエンとアセトフェノン、キシレンとアセトフェノン、テトラヒドロフランとテトラリン、テトラヒドロフランとアセトフェノン、メチルエチルケトンとテトラリン、メチルエチルケトンとアセトフェノン等が挙げられる。
塗布液が添加剤を含む場合、塗布液全体に対する添加剤の量は、半導体化合物の組織化を促進しやすい点で、0.01質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがさらに好ましく、一方、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましい。
塗布液は、p型半導体化合物の溶液とn型半導体化合物の溶液とをそれぞれ調製した後に、これらの溶液を混合することにより作製することができる。また、塗布液は、溶媒にp型半導体化合物及びn型半導体化合物を溶解させることによっても作製することができる。
塗布液中のp型半導体化合物とn型半導体化合物との合計濃度は、特に限定されない。十分な厚さの活性層を形成する観点から、合計濃度は塗布液全体に対して0.3質量%以上であることが好ましい。また、半導体化合物を十分に溶解させる観点から、合計濃度は塗布液全体に対して20質量%以下であることが好ましい。
ヘテロ接合型の活性層103は、p型半導体化合物と溶媒とを含む塗布液と、n型半導体化合物と溶媒とを含む塗布液をそれぞれ調製し、これらの塗布液を順番に塗布することにより形成することができる。溶媒及び塗布方法に特段の制限はなく、バルクヘテロ型の活性層の形成方法において説明した溶媒及び塗布方法を使用することができる。バルクヘテロ型の活性層を作製する場合と同様、それぞれの塗布液を塗布した後に加熱乾燥を行うことが好ましい。また、バルクヘテロ型の活性層を作製する場合と同様、それぞれの塗布液は添加剤を含んでいてもよい。
ペロブスカイト半導体化合物を含有する活性層103を形成する場合にも、活性層103の形成方法に特段の制限はない。一例としては、下記式(2)で表される化合物と、下記式(3)で表わされる化合物と、溶媒と、を含有する塗布液を作製し、この塗布液を塗布する方法が挙げられる。このような塗布液は、化合物を溶液中で加熱攪拌することにより作製することができる。この方法によれば、下記式(1)で表される化合物を含有する活性層103を作製することができる。
別の例としては、下記式(3)で表される化合物と溶媒とを含有する塗布液を塗布した後、下記式(2)で表される化合物と溶媒とを含有する塗布液を塗布し、加熱アニールする方法が挙げられる。この方法によっても、下記式(1)で表される化合物を含有する活性層103を作製することができる。
AMX3 ・・・(1)
AX ・・・(2)
MX2 ・・・(3)
A、M及びXの定義は上述の通りである。
加熱攪拌又は加熱アニールの際の加熱温度は、化合物の反応を十分に促進する観点から、60℃以上であることが好ましく、一方、副反応を避ける観点から、150℃以下であることが好ましい。また、加熱攪拌時間は、化合物の反応を十分に促進する観点から、2時間以上であることが好ましく、生産効率を向上させる観点から、24時間以下であることが好ましい。なお、アニールの方法は、特段の制限はなく、ホットプレートにより行ってもよいし、近赤外線加熱装置(NIR)により行ってもよい。
式(3)で表される化合物に対する式(2)で表される化合物のモル分率(2/3)は、特段の制限はない。しかしながら、活性層中にBX2が残存すると光電変換素子の変換効率が低下する傾向がある。また、後述する加熱処理により式(2)で表される化合物を除去できても、式(3)で表される化合物は加熱により除去することが困難であることが多い。そのため、式(3)で表される化合物が層中に残存しないように活性層103を形成することが好ましい。この点から、式(3)で表される化合物に対する式(2)で表される化合物のモル分率(2/3)は100モル%以上であることが好ましく、一方、600モル%以下であることが好ましく、400モル%以下であることが特に好ましい。
また、塗布液全量に対する式(2)で表される化合物及び/又は式(3)で表される化合物の合計量は、十分な厚さの活性層103を作製するために、好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上、特に好ましくは20質量%以上である。一方で、溶媒中での析出を避けるために、好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは45質量%以下、特に好ましくは40質量%以下である。
また、結晶形成を促進するために、塗布液がさらに添加物を含んでいてもよい。この場合、添加物の量は、良好な光電変換性能が得られるように、式(2)で表される化合物及び/又は(3)で表される化合物の合計量に対して、好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下、特に好ましくは10質量%以下である。
ペロブスカイト半導体化合物を含有する活性層103を形成する場合も、塗布液を塗布した後に加熱乾燥を行うことが好ましい。加熱により配位している溶媒及び残存する式(2)で表わされる化合物が層中から除去されて結晶化が促進され、光電変換効率が向上する傾向にある。結晶化の進行は塗布液の濃度に依存するため、塗布液の濃度が薄い場合又は溶媒の含有量が少ない場合には、加熱時間を短くすることが好ましい。
この際の加熱温度は、特段の制限はないが、十分に結晶化を促進する観点から、好ましくは70℃以上、さらに好ましくは90℃以上であり、一方、ペロブスカイト半導体化合物の分解及び副反応を抑制するために、好ましくは150℃以下、さらに好ましくは130℃以下、より好ましくは120℃以下である。加熱する時間にも特段の制限はないが、十分に結晶化を促進する観点から、好ましくは10分以上、さらに好ましくは30分以上、より好ましくは1時間以上であり、一方、生産効率を向上させる観点から、好ましくは3時間以下、さらに好ましくは2時間以下である。
ペロブスカイト半導体化合物を使用する場合、塗布液の溶媒としては、Brandrup,J.ら編「Polymer Handbook, 4th Ed.」に記載の溶解度パラメータ(SP値)が、9以上であるものが好ましく、10以上であるものが特に好ましい。例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ピリジン、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。溶媒としては、2種類以上の溶媒の混合溶媒を用いてもよい。なお、混合溶媒を用いる場合も、混合溶媒のうち少なくとも1種の溶媒の溶解度パラメータは10以上であることが好ましい。
[1−2.バッファ層(102,104)]
バッファ層は通常、電子取り出し層と正孔取り出し層とに分類することができる。一実施形態において、光電変換素子100は、アノード101と活性層103との間に正孔取り出し層102を有し、活性層103とカソード106との間に電子取り出し層104を有する。もっとも、光電変換素子100は、正孔取り出し層102と電子取り出し層104との一方のみを有していてもよい。
正孔取り出し層102と電子取り出し層104とは、一対の電極(101,106)間に、活性層103を挟むように配置されることが好ましい。すなわち、光電変換素子100が正孔取り出し層102と電子取り出し層104の両者を含む場合、アノード(電極)101、正孔取り出し層102、活性層103、電子取り出し層104、及びカソード(電極)106をこの順に配置することができる。光電変換素子100が電子取り出し層104を含み正孔取り出し層102を含まない場合は、アノード(電極)101、活性層103、電子取り出し層104、及びカソード(電極)106をこの順に配置することができる。正孔取り出し層102と電子取り出し層104とは積層順序が逆であってもよい。また、正孔取り出し層102と電子取り出し層104の少なくとも一方が異なる複数の膜により構成されていてもよい。なお、本明細書において、アノードは正孔を捕集する電極のことを指し、カソードは電子を捕集する電極のことを指す。
上述のように、バッファ層である正孔取り出し層102と電子取り出し層104の少なくとも一方は、半導体化合物と絶縁性ポリマーとを含有する。半導体化合物としては、活性層103から電極(101,106)へ電子又は正孔の取り出し効率を向上させる材料であれば特段の制限はなく、無機化合物であっても有機化合物であってもよい。例えば、活性層103の材料となる半導体化合物として挙げたものを、バッファ層用の半導体化合物として用いることができる。
絶縁性ポリマーとは、絶縁性を有するポリマーのことである。絶縁性ポリマーの例としては、主鎖中に共役系を含まない非共役ポリマーが挙げられる。本明細書において、絶縁性ポリマー単体の電気抵抗率は1×106Ω・m以上であり、好ましくは1×108Ω・m以上であり、さらに好ましくは1×1010Ω・m以上である。絶縁性ポリマー単体の電気抵抗率が1×106Ω・m以上であることにより、バッファ層中の半導体化合物のエネルギー準位に対する影響が抑えられることが考えられる。
バッファ層に絶縁性ポリマーを加えた場合、バッファ層の機能が損なわれることが想定される。しかしながら、本願発明者らによれば、バッファ層に絶縁性ポリマーを加えてもバッファ層の機能は損なわれず、かえって変換効率が向上することが見出された。その理由は明確ではないが、本願発明者らは以下のようにその理由を推測している。すなわち、半導体化合物のみを用いてバッファ層を形成する場合、半導体化合物の結晶はアイランド構造をとることになり、さらには凝集により得られる層中にはサイズの異なる様々な半導体化合物結晶が含まれることが考えられる。このために、バッファ層におけるキャリア輸送性能にばらつきが生じることが考えられ、さらには活性層との接合性が悪くなることで素子の特性が低下することが考えられる。一方で、絶縁性ポリマーを添加することにより、半導体化合物の結晶成長が制御され、半導体層中の半導体化合物結晶のサイズが均一化することが考えられる。また、バッファ層と活性層との間の接着性も向上するものと考えられる。このことによりキャリア輸送性能が向上するのではないかと推測される。
半導体化合物の溶解性が低いことは、絶縁性ポリマーにより結晶構造を調整する効果を効果的に得ることができる点で好ましい。例えば、25℃における1mLのトルエンに対する半導体化合物の溶解度は、10mg以下であることが好ましく、7mg以下であることがより好ましく、5mg以下であることがさらに好ましく、3.5mg以下であることが特に好ましい。
絶縁性ポリマーの種類は、半導体化合物とともにバッファ層を形成可能であれば特に限定されない。一実施形態において、絶縁性ポリマーとしては、有機ケイ素化合物であるポリマーが用いられる。例えば、絶縁性ポリマーはシリコーンでありうる。シリコーンとは、シロキサン結合を主骨格として有するポリシロキサンのことを指す。絶縁性ポリマーの具体例としては、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリメチルフェニルシロキサン、ポリジフェニルシロキサン等が挙げられる。
より具体的には、絶縁性ポリマーが下式(I)で表される繰り返し単位を有することが好ましい。
式(I)において、R
1及びR
2はそれぞれ独立して炭化水素基又は水素原子を表す。
炭化水素基としては、好ましくは炭素数1〜10の炭化水素基であり、より具体的には炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルケニル基、及び炭素数1〜10のアルキニル基、及び炭素数6〜10の芳香族基等が挙げられる。炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−ヘキシル基、及びフェニル基等が挙げられる。この炭化水素基は、さらなる置換基を有していてもよい。さらに有していてもよい置換基としては、ハロゲン基、ヒドロキシ基、シアノ基、シリル基、ボリル基、アルキル基で置換されていてもよいアミノ基、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数1〜10のアルキルカルボニル基、炭素数1〜10のアルキルチオ基、炭素数1〜10のアルケニル基、炭素数1〜10のアルキニル基、エステル基、アリールカルボニル基、アリールチオ基、アリールオキシ基、炭素数6〜10の芳香族炭化水素基又は炭素数2〜10の複素環基等が挙げられる。
絶縁性ポリマーは、式(I)で表される繰り返し単位以外の繰り返し単位を含んでいてもよい。例えば、絶縁性ポリマーは、式(I)で表される繰り返し単位を含む共重合体であってもよい。絶縁性ポリマーを構成する繰り返し単位のうち、式(I)で表される繰り返し単位の割合は、好ましくは30モル%以上であり、さらに好ましくは50モル%以上であり、より好ましくは70モル%以上であり、特に好ましくは90モル%以上である。
なお、絶縁性ポリマーの末端基としては、特段の制限はないが、水素原子、水酸基、トリアルキルシリル基、トリアリールシリル基又はビニル基等が挙げられる。
絶縁性ポリマーの重量平均分子量は、絶縁性ポリマーにより結晶構造を調整する効果が得られるのであれば特に限定されないが、好ましくは1000以上であり、さらに好ましくは2000以上であり、より好ましくは4000以上である。また、好ましくは400000以下であり、より好ましくは200000以下である。重量平均分子量がこの範囲にあることにより、溶媒への適度な溶解性を担保でき、半導体化合物の凝集等を防ぎ、結晶成長を適切に制御できるものと考えられる。
バッファ層に含まれる半導体化合物と絶縁性ポリマーとの比率は、特に限定されない。半導体化合物の結晶構造を調整する効果がより得られるように、半導体化合物に対する絶縁性ポリマーの割合は、好ましくは0.1質量%以上であり、さらに好ましくは0.5質量%以上であり、より好ましくは1.0質量%以上であり、特に好ましくは2.5質量%以上である。また、バッファ層の機能が十分に維持されるように、半導体化合物に対する絶縁性ポリマーの割合は、好ましくは20質量%以下であり、さらに好ましくは15質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下であり、特に好ましくは5.5質量%以下である。
バッファ層である正孔取り出し層102と電子取り出し層104の少なくとも一方は、半導体化合物と絶縁性ポリマーの他に、添加剤を含有していてもよい。好ましくは、バッファ層は、主成分として半導体化合物及び絶縁性ポリマーを含有している。
絶縁性ポリマーを含むバッファ層を塗布法により形成できるように、絶縁性ポリマーは溶媒に対する溶解度が高いことが好ましい。例えば、1gのトルエンに対する絶縁性ポリマーの25℃における溶解度は、0.1mg以上であることが好ましく、0.5mg以上であることがさらに好ましく、2.0mg以上であることがより好ましい。
(電子取り出し層)
電子取り出し層104は、n型半導体化合物と絶縁性ポリマーとを含有する。n型半導体化合物としては、例えば、活性層103の材料となるn型半導体化合物として挙げたものを用いることができる。n型半導体化合物の好ましい例としてはフラーレン化合物が挙げられ、特に非置換フラーレン化合物を用いることは好ましい。非置換フラーレン化合物は結晶性が高いため、非置換フラーレン化合物をn型半導体化合物として用いる場合には、絶縁性ポリマーにより結晶構造を調整する効果を効果的に得ることができる。非置換フラーレン化合物の例としては、C60、C70、C76、C78、C80、C82、C84、C86及びC88等が挙げられる。
その他のn型半導体化合物の別の好ましい例としては、縮合多環ペリレンビスイミド誘導体、ベンゾポルフィリン誘導体又はフタロシアニン誘導体等が挙げられる。
もっとも、正孔取り出し層102がp型半導体化合物と絶縁性ポリマーを含有している場合、電子取り出し層104がn型半導体化合物と絶縁性ポリマーとを含有している必要はない。このような場合の電子取り出し層104の材料としては、国際公開第2013/171517号、国際公開第2013/180230号又は特開2012−191194号公報等の公知文献に記載の無機化合物、有機化合物、又は有機−無機ペロブスカイト化合物が挙げられる。例えば、無機化合物としては、リチウム、ナトリウム、カリウム又はセシウム等のアルカリ金属の塩、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アルミニウム又は酸化インジウム等の金属酸化物が挙げられる。有機化合物としては、バソキュプロイン(BCP)、バソフェナントレン(Bphen)、(8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウム(Alq3)、ホウ素化合物、オキサジアゾール化合物、ベンゾイミダゾール化合物、ナフタレンテトラカルボン酸無水物(NTCDA)、ペリレンテトラカルボン酸無水物(PTCDA)、フラーレン化合物、又はホスフィンオキシド化合物若しくはホスフィンスルフィド化合物等の周期表第16族元素と二重結合を有するホスフィン化合物が挙げられる。以下では、これらの材料と、上述した電子取り出し層104に用いられるn型半導体化合物と、を合わせて単に電子取り出し層材料と呼ぶ。
電子取り出し層材料のLUMOエネルギー準位は、特に限定は無いが、好ましくは−4.5eV以上、さらに好ましくは−4.3eV以上である。一方、好ましくは−1.9eV以下、さらに好ましくは−2.0eV以下である。LUMOエネルギー準位が−1.9eV以下であることは、活性層103から電子取り出し層104への電荷移動が促進されうる点で好ましい。LUMOエネルギー準位が−4.5eV以上であることは、電子取り出し層104から活性層103への逆電子移動が防がれうる点で好ましい。
電子取り出し層材料のHOMOエネルギー準位は、特に限定は無いが、好ましくは−9.0eV以上、さらに好ましくは−8.0eV以上である。一方、好ましくは−5.0eV以下、さらに好ましくは−5.5eV以下である。HOMOエネルギー準位が−5.0eV以下であることは、活性層103から電子取り出し層104へと正孔が移動してくることを阻止しうる点で好ましい。LUMOエネルギー準位及びHOMOエネルギー準位の算出方法としては、サイクリックボルタモグラム測定法、ケルビンプローブ、光電子収量分析装置又は逆光電子分光装置等が挙げられる。
電子取り出し層材料が有機化合物である場合、DSC法により測定した場合のこの化合物のガラス転移温度は、特段の制限はないが、観測されないか、又は55℃以上であることが好ましい。例えば、一実施形態において、電子取り出し層材料は、DSC法によるガラス転移温度が30℃以上55℃未満に観測されないものである。ガラス転移温度は、さらに好ましくは65℃以上、より好ましくは80℃以上、さらにより好ましくは110℃以上、特に好ましくは120℃以上である。DSC法によりガラス転移温度が観測されないとは、400℃以下においてガラス転移温度が観測されないことを意味する。ガラス転移温度が観測されない材料は、熱的に高い安定性を有している点で好ましい。一方、ガラス転移温度の上限は特にないが、好ましくは400℃以下、さらに好ましくは350℃以下、より好ましくは300℃以下である。
本明細書において、ガラス転移温度とは、アモルファス状態の固体において、熱エネルギーにより局所的な分子運動が開始される温度とされており、比熱が変化する点として定義される。温度がガラス転移温度より高くなると、固体構造が変化して結晶化が起こる(この時の温度を結晶化温度(Tc)とする)。さらに温度が高くなると、一般的には融点(Tm)において固体は融解して液体状態に変化する。ただし、高温で分子が分解したり昇華したりするたるめに、これらの相転移が見られないこともある。
DSC法とは、JIS K−0129「熱分析通則」に定義されている熱物性の測定法(示差走査熱量測定法)である。ガラス転移温度をより明確に決める為には、一度ガラス転移点以上の温度に加熱したサンプルを急冷した後にガラス転移温度を測定することが望ましい。例えば、公知文献(国際公開第2011/016430号)に記載の方法により、ガラス転移温度の測定を実施することができる。
電子取り出し層材料のガラス転移温度が55℃以上である場合、この材料は、印加される電場、流れる電流、曲げ又は温度変化等による応力等の外部ストレスに対して構造が変化しにくいため、耐久性の面で好ましい。さらに、電子取り出し層材料のガラス転移温度が55℃以上である場合、材料の結晶化が進みにくい傾向があるため、光電変換素子100の使用温度範囲においてこの材料がアモルファス状態と結晶状態との間で変化しにくくなる。このために電子取り出し層の安定性が向上するため、耐久性の面で好ましい。この効果は、材料のガラス転移温度が高ければ高いほど、より顕著に表れる。
電子取り出し層104の全体の膜厚に特に限定はないが、好ましくは0.5nm以上、さらに好ましくは1nm以上、より好ましくは5nm以上、特に好ましくは10nm以上である。一方、好ましくは1μm以下、さらに好ましくは700nm以下、より好ましくは400nm以下、特に好ましくは200nm以下である。電子取り出し層104の膜厚が上記の範囲内にあることで、均一な塗布が容易となり、電子取り出し機能もよく発揮されうる。
(正孔取り出し層)
正孔取り出し層102は、p型半導体化合物と絶縁性ポリマーとを含有する。p型半導体化合物としては、例えば、活性層103の材料となるp型半導体化合物として挙げたものを用いることができる。
もっとも、電子取り出し層104がn型半導体化合物と絶縁性ポリマーを含有している場合、正孔取り出し層102がp型半導体化合物と絶縁性ポリマーとを含有している必要はない。このような場合の正孔取り出し層102の材料としては、国際公開第2013/171517号、国際公開第2013/180230号又は特開2012−191194号公報等の公知文献に記載の無機化合物、有機化合物、又は有機−無機ペロブスカイト化合物が挙げられる。例えば、無機化合物としては、酸化銅、酸化ニッケル、酸化マンガン、酸化鉄、酸化モリブデン、酸化バナジウム又は酸化タングステン等の金属酸化物が挙げられる。また、有機化合物としては、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアセチレン、トリフェニレンジアミン又はポリアニリン等に、スルホン酸及びヨウ素等がドーピングされた導電性ポリマー(例えば、PEDOT:PSS又はドーピングされたP3HT)、スルホニル基を置換基に有するポリチオフェン誘導体、アリールアミン等の導電性有機化合物、ナフィオン、又はリチウムドーピングされたspiro−OMeTADが挙げられる。以下では、これらの材料と、上述した正孔取り出し層102に用いられるp型半導体化合物と、を合わせて単に正孔取り出し層材料と呼ぶ。
正孔取り出し層102の全体の膜厚に特に限定はないが、好ましくは0.5nm以上である。一方、好ましくは400nm以下、さらに好ましくは200nm以下である。正孔取り出し層102の膜厚が0.5nm以上であることでバッファ材料としての機能をよく果たすことになり、正孔取り出し層102の膜厚が400nm以下であることで、正孔が取り出し易くなり、光電変換効率が向上しうる。
正孔取り出し層102の形成方法に特に制限はない。昇華性を有する化合物を材料として用いる場合は、真空蒸着法等の乾式成膜法により形成することができる。また、溶媒に可溶な化合物を材料として用いる場合は、スピンコート法やインクジェット法等の湿式成膜法により形成することができる。なお、塗布法を用いる場合に用いられる溶媒及び塗布方法としては、活性層103を塗布法で形成する場合について挙げた溶媒及び塗布方法を用いることができる。
(バッファ層の形成方法)
正孔取り出し層102及び電子取り出し層104の形成方法に特に制限はない。昇華性を有する化合物を材料として用いる場合は、真空蒸着法等の乾式成膜法により形成することができる。例えば、半導体化合物と絶縁性ポリマーとを含有するバッファ層は、半導体化合物と絶縁性ポリマーとを共蒸着することにより形成することができる。また、溶媒に可溶な化合物を材料として用いる場合は、スピンコート法やインクジェット法等の湿式成膜法により形成することができる。なお、塗布法を用いる場合に用いられる溶媒及び塗布方法としては、活性層103を塗布法で形成する場合について挙げた溶媒及び塗布方法を用いることができる。塗布液を塗布した後に乾燥を行うことにより、バッファ層を形成することができる。乾燥方法は特に限定されず、例えば加熱乾燥を行ってもよい。
例えば、半導体化合物と絶縁性ポリマーとを含有するバッファ層は、半導体化合物、絶縁性ポリマー及び溶媒を含有する塗布液を塗布することにより形成することができる。このような、半導体化合物、絶縁性ポリマー及び溶媒を含有する塗布液は、バッファ層形成用の組成物として用いることができ、組成物溶液を塗布することによりバッファ層を形成することができる。例えば、n型半導体化合物、絶縁性ポリマー及び溶媒を含有する組成物は、電子取り出し層形成用の塗布液として用いることができ、p型半導体化合物、絶縁性ポリマー及び溶媒を含有する組成物は、正孔取り出し層形成用の塗布液として用いることができる。
組成物中に含まれる半導体化合物と絶縁性ポリマーとの比率は、特に限定されない。半導体化合物の結晶成長を制御する効果がより得られるように、半導体化合物に対する絶縁性ポリマーの割合は、好ましくは0.1質量%以上であり、さらに好ましくは0.5質量%以上であり、より好ましくは1.0質量%以上であり、特に好ましくは2.5質量%以上である。また、バッファ層の性能が十分に維持されるように、半導体化合物に対する絶縁性ポリマーの割合は、好ましくは20質量%以下であり、さらに好ましくは15質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下であり、特に好ましくは5.5質量%以下である。
また、組成物中に含まれる半導体化合物の濃度も、特に限定されず、適切な厚さのバッファ層が形成されるように適宜選択することができる。塗布成膜が円滑に進むように、半導体化合物の濃度は好ましくは0.1質量%以上であり、さらに好ましくは0.5質量%以上であり、一方で好ましくは10質量%以下であり、さらに好ましくは5.0質量%以下であり、より好ましくは2.0質量%以下である。
溶媒としては、半導体化合物及び絶縁性ポリマーを十分に溶解できるものを選択することが好ましい。例えば、25℃における溶媒1gに対する半導体化合物の溶解度は、10mg以上であることが好ましい。また、25℃における溶媒1gに対する絶縁性ポリマーの溶解度は、0.2mg以上であることが好ましい。
バッファ層を塗布法により形成することは、隣接する層との密着性が向上しやすい点で好ましい。例えば、活性層103上に電子取り出し層104を形成する場合、電子取り出し層104を蒸着法により形成するよりも、電子取り出し層104を塗布法により形成する方が、変換効率が向上する傾向がみられる。これは、活性層103と電子取り出し層104との密着性が向上しているためと推測される。特に、活性層103の材料としてペロブスカイト半導体化合物を用いる場合、活性層103の表面には微細な凹凸が形成されやすく、電子取り出し層104との密着性が低下する傾向がある。このため、特に活性層103がペロブスカイト半導体化合物を含有する場合において、活性層103上に電子取り出し層104のようなバッファ層を塗布法により形成することは有利である。また、半導体化合物結晶が不均一に成長する傾向は、蒸着法を用いる場合よりも塗布法を用いる場合の方が顕著になると考えられる。したがって、特に活性層103がペロブスカイト半導体化合物を含有する場合において、半導体化合物及び絶縁性ポリマーを含有する塗布液を塗布することにより、活性層103上に電子取り出し層104のようなバッファ層を形成することは有利となる。
なお、半導体化合物及び絶縁性ポリマーを含有する塗布液を塗布することにより半導体化合物層を形成する方法は、特に半導体化合物の結晶性が高い場合において、結晶の大きさが揃った良好な半導体層を形成するために有用であると考えられる。特に、非置換フラーレンは結晶性が高いため、非置換フラーレン及び絶縁性ポリマーを含有する塗布液を塗布することによりフラーレン層を形成することは有効である。このような方法は、光電変換素子のバッファ層を形成する場合に限られず、半導体層を形成する場合に一般的に応用可能であるものと考えられる。
[1−4.電極(101,106)]
電極は、光吸収により生じた正孔及び電子を捕集する機能を有する。したがって、一対の電極としては、正孔の捕集に適したアノード101と、電子の捕集に適したカソード106とを用いることが好ましい。一対の電極は、いずれか一方が透光性であればよく、両方が透光性であっても構わない。透光性があるとは、太陽光が40%以上透過することを指す。また、透明電極の太陽光線透過率は70%以上であることが、より多くの光が透明電極を透過して活性層103に到達するために好ましい。光の透過率は、分光光度計(例えば、日立ハイテク社製U−4100)で測定できる。
アノード101及びカソード106の構成部材及びその製造方法について特段の制限はなく、周知技術を用いることができる。例えば、国際公開第2013/171517号、国際公開第2013/180230号又は特開2012−191194号公報等の公知文献に記載の部材及びその製造方法を使用することができる。
[1−5.仕事関数チューニング層(105)]
仕事関数チューニング層105は、アノード101又はカソード106の仕事関数を調整する。しかしながら、アノード101又はカソード106が適切に機能しうるのであれば、仕事関数チューニング層105を設ける必要はない。
仕事関数チューニング層105の種類は特に限定されず、公知のものを使用することができる。仕事関数チューニング層105の材料の例としては、ポリエチレンイミンエトキシレート(PEIE)若しくは分岐ポリエチレンイミン(PEI)等のアミン系ポリマー若しくはオリゴマーが、塗布による成膜が容易な点で好ましい。この場合、有機溶媒への溶解性を上げる観点から、仕事関数チューニング層105の材料の分子量は、好ましくは100以上、より好ましくは1000以上、特に好ましくは10000であり、一方で、好ましくは1000000以下、好ましくは500000以下であり、特に好ましくは200000以下である。
仕事関数チューニング層105の形成方法に制限はない。昇華性を有する化合物を用いる場合は真空蒸着法等の乾式成膜法により形成することができる。また、溶媒に可溶な化合物を用いる場合は、スピンコート法やインクジェット法等の湿式成膜法により形成することができる。なお、溶媒としては、活性層103の形成方法の説明において挙げた溶媒を用いることができる。
[1−6.その他の層]
光電変換素子110は、図3に示す構成要素以外の構成要素を有していてもよい。例えば、光電変換素子110は、活性層103と電極(101,106)との間に絶縁体層を有していてもよい。具体的な例としては、仕事関数チューニング層105とカソード106との間に絶縁体層を設けることができる。絶縁体層とは、直流電流を通さない絶縁体を含有する層のことを指す。このような絶縁体層を設けることにより、水分等の物質が活性層103に到達することを効果的に抑制することができる。その一方で、薄い絶縁体層を設けても光電変換素子110の機能は保たれる。これは、トンネル効果のために電子又は正孔であるキャリアが絶縁体層を透過するためであると考えられる。
絶縁体層の材料に特に制限はないが、例えばフッ素樹脂又はケイ素樹脂を用いることができる。絶縁体層による防湿性を向上させる観点から、絶縁体層の厚さは、1.0nm以上であることが好ましく、5.0nm以上であることがさらに好ましく、10nm以上であることが特に好ましい。また、トンネル効果によるキャリアの移動を促進する観点から、絶縁体層の厚さは、30nm以下であることが好ましく、25nm以下であることがさらに好ましく、20nm以下であることが特に好ましい。
[1−7.基材(107)]
光電変換素子100は、通常は支持体となる基材107を有する。もっとも、本発明に係る光電変換素子は基材107を有さなくてもよい。基材107の材料は、本発明の効果を著しく損なわない限り特に限定されず、例えば、国際公開第2013/171517号、国際公開第2013/180230号又は特開2012−191194号公報等の公知文献に記載の材料を使用することができる。
[1−8.光電変換素子の製造方法]
上述の方法に従って、光電変換素子100を構成する各層を形成することにより、光電変換素子100を作製することができる。光電変換素子100を構成する各層の形成方法に特段の制限はなく、シートツゥーシート(万葉)方式、又はロールツゥーロール方式で形成することができる。
なお、ロールツゥーロール方式とは、ロール状に巻かれたフレキシブルな基材を繰り出して、間欠的、或いは連続的に搬送しながら、巻き取りロールにより巻き取られるまでの間に加工を行う方式である。ロールツゥーロール方式によれば、kmオーダの長尺基板を一括処理することが可能であるため、ロールツゥーロール方式はシートツゥーシート方式に比べて量産化に適している。一方、ロールツゥーロール方式で各層を成膜しようとすると、その構造上、成膜面とロールとが接触することにより膜に傷がついたり、部分的に剥がれてしまったりする場合がある。
ロールツゥーロール方式に用いることのできるロールの大きさは、ロールツゥーロール方式の製造装置で扱える限り特に限定されないが、外径の上限は、好ましくは5m以下、さらに好ましくは3m以下、より好ましくは1m以下である。一方、下限は好ましくは10cm以上、さらに好ましくは20cm以上、より好ましくは30cm以上である。ロール芯の外径の上限は、好ましくは4m以下、さらに好ましくは3m以下、より好ましくは0.5m以下である。一方、下限は好ましくは1cm以上、さらに好ましくは3cm以上、より好ましくは5cm以上、さらに好ましくは10cm以上、特に好ましくは20cm以上である。これらの径が上記上限以下であることはロールの取り扱い性が高い点で好ましく、下限以上であることは各工程で成膜される層が曲げ応力により破壊される可能性が低くなる点で好ましい。ロールの幅の下限は、好ましくは5cm以上、さらに好ましくは10cm以上、より好ましくは20cm以上である。一方、上限は、好ましくは5m以下、さらに好ましくは3m以下、より好ましくは2m以下である。幅が上限以下であることはロールの取り扱い性が高い点で好ましく、下限以上であることは光電変換素子100の大きさの自由度が高くなるため好ましい。
また、アノード101又はカソード106を積層した後に、光電変換素子100を好ましくは50℃以上、さらに好ましくは80℃以上、一方、好ましくは300℃以下、さらに好ましくは280℃以下、より好ましくは250℃以下の温度範囲において、加熱することが好ましい(この工程をアニーリング処理工程と称する場合がある)。アニーリング処理工程を50℃以上の温度で行うことにより、光電変換素子100の各層間の密着性、例えば正孔取り出し層102とアノード101、電子取り出し層104と活性層103等の層間の密着性が向上する効果が得られるため、好ましい。各層間の密着性が向上することにより、光電変換素子の熱安定性や耐久性等が向上しうる。アニーリング処理工程の温度を300℃以下にすることは、光電変換素子100に含まれる有機化合物が熱分解する可能性が低くなるため、好ましい。アニーリング処理工程においては、上記の温度範囲内において異なる温度を用いた段階的な加熱を行ってもよい。
加熱時間としては、熱分解を抑えながら密着性を向上させるために、好ましくは1分以上、さらに好ましくは3分以上、一方、好ましくは180分以下、さらに好ましくは60分以下である。アニーリング処理工程は、太陽電池性能のパラメータである開放電圧、短絡電流及びフィルファクターが一定の値になったところで終了させることが好ましい。また、アニーリング処理工程は、構成材料の熱酸化を防ぐ上でも、常圧下、かつ不活性ガス雰囲気中で実施することが好ましい。加熱方法としては、ホットプレート等の熱源に光電変換素子を載せてもよいし、オーブン等の加熱雰囲気中に光電変換素子を入れてもよい。また、加熱はバッチ式で行っても連続方式で行ってもよい。
[1−9.光電変換特性]
光電変換素子100の光電変換特性は次のようにして求めることができる。光電変換素子100にソーラシュミレーターでAM1.5G条件の光を照射強度100mW/cm2で照射して、電流−電圧特性を測定する。得られた電流−電圧曲線から、光電変換効率(PCE)、短絡電流密度(Jsc)、開放電圧(Voc)、フィルファクター(FF)、直列抵抗、シャント抵抗といった光電変換特性を求めることができる。
光電変換素子100の光電変換効率は、特段の制限はないが、好ましくは1%以上、さらに好ましくは1.5%以上、より好ましくは2%以上である。一方、上限に特段の制限はなく、高ければ高いほどよい。また、光電変換素子100のフィルファクターは、特段の制限はないが、好ましくは0.6以上、さらに好ましくは0.7以上、より好ましくは0.9以上である。一方、上限に特段の制限はなく、高ければ高いほどよい。
[2.太陽電池及び太陽電池モジュール]
本発明に係る光電変換素子100は、太陽電池、なかでも薄膜太陽電池の太陽電池素子として使用されることが好ましい。図2は本発明の一実施形態に係る太陽電池の構成を模式的に表す断面図であり、図2には本発明の一実施形態に係る太陽電池である薄膜太陽電池が示されている。図2に表すように、本実施形態に係る薄膜太陽電池14は、耐候性保護フィルム1と、紫外線カットフィルム2と、ガスバリアフィルム3と、ゲッター材フィルム4と、封止材5と、太陽電池素子6と、封止材7と、ゲッター材フィルム8と、ガスバリアフィルム9と、バックシート10と、をこの順に備える。本実施形態に係る薄膜太陽電池14は、太陽電池素子6として、本発明に係る光電変換素子を有している。そして、耐候性保護フィルム1が形成された側(図2中下方)から光が照射されて、太陽電池素子6が発電するようになっている。なお、薄膜太陽電池14は、これらの構成部材を全て有する必要はなく、必要な構成部材を任意に選択することができる。
薄膜太陽電池を構成するこれらの構成部材及びその製造方法について特段の制限はなく、周知技術を用いることができる。例えば、国際公開第2013/171517号、国際公開第2013/180230号又は特開2012−191194号公報等の公知文献に記載の技術を使用することができる。
本発明に係る太陽電池、特には上述した薄膜太陽電池14の用途に制限はなく、任意の用途に用いることができる。例えば、一実施形態に係る太陽電池は、建材用太陽電池、自動車用太陽電池、インテリア用太陽電池、鉄道用太陽電池、船舶用太陽電池、飛行機用太陽電池、宇宙機用太陽電池、家電用太陽電池、携帯電話用太陽電池又は玩具用太陽電池として用いることができる。
本発明に係る太陽電池、特には上述した薄膜太陽電池14はそのまま用いてもよいし、太陽電池モジュールの構成要素として用いられてもよい。例えば、図3に示すように、本発明に係る太陽電池、特には上述した薄膜太陽電池14を基材12上に備える太陽電池モジュール13を作製し、この太陽電池モジュール13を使用場所に設置して用いることができる。基材12としては周知技術を用いることができ、例えば、基材12の材料としては国際公開第2013/171517号、国際公開第2013/180230号又は特開2012−191194号公報等に記載の材料を用いることができる。例えば、基材12として建材用板材を使用する場合、この板材の表面に薄膜太陽電池14を設けることにより、太陽電池モジュール13として、建物の外壁用太陽電池パネルを作製することができる。
以下に、実施例により本発明の実施形態を説明する。しかしながら、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例には限定されない。
[実施例1]
(活性層塗布液の調製)
モル比が1:1:4となるようにヨウ化鉛(II)(0.84g)、塩化鉛(II)(0.51g)及びヨウ化メチルアンモニウム(CH3NH3I,1.16g)をバイアルにはかりとり、ポリビニルピロリドン(PVP,49.4mg,重量平均分子量Mw=40×103)とN、N−ジメチルホルムアミド(8mL)を加えた。次に、得られた混合液を67℃で6時間加熱撹拌した。その後、得られた溶液をポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルター(孔径0.2μm)で濾過することにより、活性層塗布液を作製した。得られた活性層塗布液中での、ヨウ化鉛(II)、塩化鉛(II)とヨウ化メチルアンモニウムとの合計濃度は、25質量%であった。こうして作製された活性層塗布液を用いることにより、モル比1:1:2のヨウ化鉛(II)、塩化鉛(II)、及びヨウ化メチルアンモニウムで構成されるペロブスカイト半導体化合物(1.93g)を形成できると考えられた。形成可能なペロブスカイト半導体化合物に対する、活性層塗布液に含まれるポリビニルピロリドンの質量比は2.6質量%であった。
(光電変換素子の作製)
パターニングされた酸化インジウムスズ(ITO)透明導電膜を備えるガラス基板(ジオマテック社製)に対して、洗浄剤(横浜油脂工業社製,精密ガラス基板用洗浄剤セミクリーンM−LO,15mL)を用いた超音波洗浄、超純水を用いた超音波洗浄、窒素ブローによる乾燥、及びUV−オゾン処理を行った。
次に、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)ポリ(スチレンスルホン酸)分散液(PEDOT:PSS,ヘレウス社製)をオートバイアル(孔径0.45μm)でろ過した後、室温で、上記の基板上に3000rpmの速度でスピンコートすることにより、厚さ約35nmの正孔取り出し層を形成した。得られた基板を120℃で30分間加熱した。
次に、基板をグローブボックスに導入し、窒素雰囲気下115℃で20分間加熱処理した。冷却後、基板上に活性層塗布液(0.1mL)を6000rpmの速度でスピンコートすることにより、厚さ約100nmの層を形成し、さらにホットプレート上100℃で25分間加熱アニールした。以上のようにして、活性層を形成した。こうして形成された活性層には、ハライド系有機−無機ペロブスカイト半導体化合物と、絶縁性ポリマーであるポリビニルピロリドンとが含まれる。
次に、フラーレンC60(フロンティアカーボン社製,18mg)及びポリジメチルシロキサン(PDMS,Alfa社製,2mg,重量平均分子量Mw=14×103)をクロロベンゼン(1mL)に溶解させた溶液を、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルター(孔径0.2μm)で濾過することにより、電子取り出し層塗布液を作製した。得られた塗布液(0.1mL)を活性層上に1000rpmの速度でスピンコートすることにより、厚さ約70nmの電子取り出し層を形成した。フラーレンC60に対するポリジメチルシロキサンの質量比は11wt%であった。
次に、分岐鎖ポリエチレンイミンエトキシレート(PEI)のイソプロパノール溶液(0.2質量%,0.1mL)を、電子取り出し層上に6000rpmの速度でスピンコートすることにより、厚さ約10nmの仕事関数チューニング層を形成した。
次に、アモルファスフッ素樹脂ポリマー溶液CYTOP(旭硝子社製,0.4質量%に調製,0.1mL)を、仕事関数チューニング層上に6000rpmの速度でスピンコートすることにより、絶縁体層を形成した。絶縁体層の厚さは15nmであった。
なお、CYTOPの特性は、体積抵抗率:>1017Ωcm(JIS K6911)、比誘電率:2.0〜2.1(100Hz〜1MHz,室温,JEC−6150)、屈折率:1.34(JIS K7142,25℃〜)、水接触角:110°、ガラス転移温度:108℃である。また200μm厚のCYTOPフィルムの可視光線透過率は95%である。さらに、100μm厚のCYTOPフィルムの水蒸気透過率は、0.2g/m2(24時間)であった。
次に、絶縁体層上に、抵抗加熱型真空蒸着法によりパターニングマスクを用いて厚さ約150nmの銀膜を蒸着させ、上部電極を形成した。こうして、25x30mm角の光電変換素子を作製した。
[実施例2]
電子取り出し層形成用塗布液を調製する際に用いたポリジメチルメチルシロキサン(Mw=14×103)の質量を1mg(5.6wt%(フラーレンC60に対する質量比、以下同じ))としたことを除き、実施例1と同様に光電変換素子を作製した。
[実施例3]
電子取り出し層形成用塗布液を調製する際に用いたポリジメチルメチルシロキサン(Mw=14×103)の質量を0.5mg(2.8wt%)としたことを除き、実施例1と同様に光電変換素子を作製した。
[実施例4]
電子取り出し層形成用塗布液を調製する際に用いたポリジメチルメチルシロキサン(Mw=14×103)の質量を0.3mg(1.7wt%)としたことを除き、実施例1と同様に光電変換素子を作製した。
[実施例5]
電子取り出し層形成用塗布液を調製する際に、重量平均分子量(Mw)が4×103のポリジメチルメチルシロキサン(1mg,5.6wt%)を用いたことを除き、実施例1と同様に光電変換素子を作製した。
[実施例6]
電子取り出し層形成用塗布液を調製する際に、重量平均分子量(Mw)が28×103のポリジメチルメチルシロキサン(1mg,5.6wt%)を用いたことを除き、実施例1と同様に光電変換素子を作製した。
[実施例7]
電子取り出し層形成用塗布液を調製する際に、重量平均分子量(Mw)が63×103のポリジメチルメチルシロキサン(1mg,5.6wt%)を用いたことを除き、実施例1と同様に光電変換素子を作製した。
[実施例8]
電子取り出し層形成用塗布液を調製する際に、重量平均分子量(Mw)が139×103のポリジメチルメチルシロキサン(1mg,5.6wt%)を用いたことを除き、実施例1と同様に光電変換素子を作製した。
[比較例]
電子取り出し層形成用塗布液にポリジメチルシロキサンを加えなかったことを除き、実施例1と同様に光電変換素子を作製した。
[光電変換素子の評価]
実施例1〜8及び比較例で得られた光電変換素子に1mm角のメタルマスクを付け、ITO電極と銀電極との間における電流−電圧特性を測定した。測定にはソースメーター(ケイスレー社製,2400型)を用い、照射光源としてはエアマス(AM)1.5G、放射照度100mW/cm2のソーラシミュレータを用いた。この測定結果から、開放電圧Voc(V)、短絡電流密度Jsc(mA/cm2)、形状因子FF、及び光電変換効率PCE(%)を算出した。光電変換素子を作製した直後の測定結果に基づいて算出されたこれらの値を表1に示す。
ここで、開放電圧Vocとは電流値=0(mA/cm2)の際の電圧値であり、短絡電流密度Jscとは電圧値=0(V)の際の電流密度である。形状因子FFとは内部抵抗を表すファクターであり、最大出力をPmaxとすると次式で表される。
FF = Pmax/(Voc×Jsc)
また、光電変換効率PCEは、入射エネルギーをPinとすると次式で与えられる。
PCE = (Pmax/Pin)×100
= (Voc×Jsc×FF/Pin)×100
また、実施例1〜8及び比較例で得られた光電変換素子の透過性の評価を行った。透過性は、上部電極(銀電極)を形成する前における光電変換素子の透過スペクトルに従って評価した。すなわち、ブランクを空気として透過スペクトルを測定し、400〜800nmの波長範囲における平均透過率を算出した。得られた結果を表1に示す。
表1に示すように、実施例1〜8では、無置換フラーレンに絶縁性ポリマーを添加することにより、比較例と比較して、光電変換効率PCEが大幅に向上した。これは、絶縁性ポリマーの存在により、バッファ層中のフラーレンの結晶性を制御できたことが原因であると考えられる。また、実施例1〜8では比較例と比較してフィルファクターも向上していることから、活性層とバッファ層との間の接合性も向上していることが予想できる。