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JP2016008327A - 転がり軸受 - Google Patents

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JP2016008327A JP2014129963A JP2014129963A JP2016008327A JP 2016008327 A JP2016008327 A JP 2016008327A JP 2014129963 A JP2014129963 A JP 2014129963A JP 2014129963 A JP2014129963 A JP 2014129963A JP 2016008327 A JP2016008327 A JP 2016008327A
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紘樹 山田
Koki Yamada
紘樹 山田
宇山 英幸
Hideyuki Uyama
英幸 宇山
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Abstract

【課題】軸受部材を形成する合金鋼中に侵入する水素による組織変化型はく離を長期にわたり抑え、長寿命の転がり軸受を提供する。【解決手段】内輪及び外輪の少なくとも1つが、C、Si、Mn、Cr及びMoを特定量含み、残部が鉄及び不可避的不純物を含有する合金鋼を浸炭処理または浸炭窒化処理して表面に硬化層を形成してなり、かつ、特定の表面硬さを有し、最表面に厚さ0.1μm以上のクロム化成被膜が成膜されている転がり軸受。【選択図】図5

Description

本発明は、水素による組織変化を伴うはく離を抑えた長寿命の転がり軸受に関し、特に風力発電装置の主軸や、変速機、建設機械、産業用ロボットを構成する回転軸を支持するために使用される転がり軸受として好適である。
風力発電装置の主軸や、上記したような各種機械を構成する回転軸を支持するために、各種転がり軸受が使用されており、大きなラジアル荷重が加わる場合には転動体として円錐ころや円筒ころを使用したラジアル円錐ころ軸受やラジアル円筒ころ軸受が使用されることもある。
転がり軸受では、荷重が負荷された状態での長時間の使用により金属疲労が起こり、軌道面や転動面の表面がはく離する場合がある。具体的には、軸受部材を構成する合金鋼中に、酸化物や窒化物等の非金属系介在物を起点として疲労亀裂が生じてはく離に至る内部起点型はく離、潤滑油に異物が混入して軌道面に生じた圧痕を起点として疲労亀裂が生じてはく離に至る圧痕起点型はく離が知られている。
また、使用条件の厳しい一部の用途では、転がり軸受を構成する合金鋼の基地自体の金属組織がマルテンサイト組織から白色組織と呼ばれる微細なフェライト粒に変化し、その組織変化を起点として疲労亀裂が生じてはく離に至る組織変化型はく離も知られている。この組織変化型はく離は、軌道面に形成された潤滑膜が部分的に破断されるような使用条件で、軌道面と転動体とが接触して現れた新生面が触媒となり、新生面と潤滑剤とがトライボケミカル反応を起こすことで発生した水素が合金鋼中の応力集中部に集積することが原因であると考えられている。
特に、転動体にころを用いた転がり軸受や、転動体の直径が30mm以上である転がり軸受では、軌道輪と転動体との接触面積が大きいため、潤滑膜が安定して形成されにくい。そのため、局所的に金属接触が生じやすく、上記のトライボケミカル反応により潤滑剤が分解して水素が発生しやすい。
また、歯車で動力を伝達する変速機の軸を支持し、軸に作用するトルクの方向が一時的に変化する用途では、転動体と軌道輪との間に大きな滑りが発生するため、潤滑膜が切れやすい。そのため、局所的に金属接触が生じやすく、上記のトライボケミカル反応により潤滑剤が分解して水素が発生しやすい。
更に、転がり軸受の回転方向が頻繁に変化する用途でも、転動体と軌道輪との間の潤滑膜が切れやすい。そのため、局所的に金属接触が生じやすく、上記のトライボケミカル反応により潤滑剤が分解して水素が発生しやすい。
このような水素によって引き起こされる組織変化に対する対策として、特許文献1〜3のように、転送面に四三酸化鉄の層を形成して(黒染め処理)新生面の生成を防ぐことも行われている。また、特許文献4のように、転送面にリン酸鉄系被膜を成膜して新生面の生成を防ぐことも行われている。
特開平2−190615号公報 特開平10−176718号公報 特開2013−96448号公報 特開2003−97560号公報
しかしながら、上記のような被膜処理は、金属接触が生じやすく新生面が生成しやすい使用環境では時間の経過とともに摩耗し、比較的早期に被膜が消失することがあった。
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、軸受部材を形成する合金鋼中に侵入する水素による組織変化型はく離を長期にわたって抑え、長寿命の転がり軸受を提供することを目的とする。
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、上記課題を解決するには、表面を特定硬さにするとともに、0.1μm以上の厚さでクロム化成被膜を成膜することが有効であることが効果的であることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は下記の転がり軸受を提供するものである。
(1)内輪と外輪との間に、転動自在に設けられた転動体を備える転がり軸受において、
前記内輪及び前記外輪の少なくとも1つが、
C :0.08〜0.38質量%、
Si:0.16〜0.5質量%、
Mn:0.18〜1.2質量%、
Cr:2.5〜4.5質量%、
Mo:0.09〜0.4質量%、
を含み、残部が鉄及び不可避的不純物を含有する合金鋼を、浸炭処理または浸炭窒化処理して表面に硬化層を形成してなり、かつ、
表面硬さがHv653〜804であり、
最表面に厚さ0.1μm以上のクロム化成被膜が成膜されていることを特徴とする転がり軸受。
(2)下記式(1)を満たすことを特徴とする上記(1)記載の転がり軸受。
式(1):[Cr]−5([C]−0.02[γR])≧−0.3
式中[Cr]:合金鋼中のCr量(質量%)
[C]:転動体との接触面の表面から0.01D位置でのC量(質量%)
[γR]:転動体との接触面の表面から0.01D位置でのγR量(体積%)
本発明によれば、各部品を構成する鋼材組成を特定するとともに、表面を特定の硬さとし、更にクロム化成皮膜を成膜して新生面の発生、更には水素の侵入を防ぐことで、水素による組織変化型はく離を抑え、長寿命の転がり軸受を提供することができる。
本発明の転がり軸受を製造する際の熱処理パターンの一例を示す図である。 本発明の転がり軸受を製造する際の熱処理パターンの他の例を示す図である。 本発明の転がり軸受を製造する際の熱処理パターンの更に他の例を示す図である。 実施例の転がり寿命評価試験における、回転様式を説明するための図である。 実施例で得られた、Cr量と寿命比との関係を示すグラフである。 実施例で得られた、3価クロム化成被膜の厚さと寿命比との関係を示すグラフである。
以下、図面を参照して本発明を詳細に説明する。
本発明の転がり軸受では、内輪及び外輪の少なくとも一方、好ましくは両方を、下記の元素を含み、残部が鉄及び不可避的不純物を含有する合金鋼製とし、更に浸炭処理または浸炭窒化処理により表面に硬化層を形成する。
C :0.08〜0.38質量%、
Si:0.16〜0.5質量%、
Mn:0.18〜1.2質量%、
Cr:2.5〜4.5質量%、
Mo:0.09〜0.4質量%、
〔C:0.08〜0.38質量%〕
Cは焼入れによって合金鋼の基地組織に固溶し、焼入れ性を向上させる元素である。その含有量は、0.08〜0.33質量%であり、好ましくは0.10〜0.30である。C含有量が0.08質量%未満では、芯部における硬さが不足して剛性が低下してしまう。一方、C含有量が0.38質量%を超えると、芯部の靭性が低下してしまう。尚、浸炭処理または浸炭窒化処理を行うと、表面が硬く、内部にいくほど硬さが下がるが、本発明では、硬さが下がりきって一定になったところを芯部と定義している。
〔Si:0.16〜0.5質量%〕
Siは、合金鋼の基地組織に固溶して焼入れ性を向上させる元素である。また、基地組織のマルテンサイトを安定化させるため、水素による組成基変化が遅延されて各部品の寿命を延長させる効果をもたらす。その含有量は、0.16〜0.5質量%であり、好ましくは0.2〜0.5質量%である。Si含有量が0.16質量%未満では、組織変化を遅延させる効果が十分に得られない。一方、Si含有量が0.5質量%を超えると、浸炭性及び浸炭窒化性が低下してしまう場合がある。
〔Mn:0.18〜1.2質量%〕
Mnは、合金鋼中の基地組織に固溶して焼入れ性を向上させる元素である。また、基地組織のマルテンサイトを安定化させるため、水素による組成基変化が遅延されて、各部品の寿命を延長させる効果をもたらす。更に、熱処理後の残留オーステナイトを生成しやすくする効果をもたらす。生成した残留オーステナイトは、合金鋼中の水素の拡散及び集積を遅延させるため、組織変化が局所的に生じるのを遅延させ、各部品の寿命を延長させる効果をもたらす。その含有量は0.18〜1.2質量%であり、好ましくは0.6〜1.2質量%である。Mn含有量が0.18質量%未満では、残留オーステナイトを生成しやすくする効果が得られない。一方、Mn含有量が1.2質量%を超えると、旧オーステナイト粒が粗大したり、残留オーステナイト量が過多になる等して寸法安定性が低下する。
〔Cr:2.5〜4,5質量%〕
Crは、合金鋼の基地組織に固溶して焼入れ性を向上させる元素である。また、Cと結合して鋼中に炭化物を形成し、耐摩耗性を向上させる効果をもたらす。更に、炭素物と基地組織のマルテンサイトを安定化させるため、水素による組織変化が遅延されて、各部品の寿命を延長させる効果をもたらす。その含有量は2.5〜4.5質量%であり、好ましくは2.6〜4.5質量%である。Cr含有量が2.5質量%未満では、組織変化を遅延させる効果等が十分に得られない。一方、Cr含有量が4.5質量%を超えると、各部品の靭性が低下したり、浸炭性及び浸炭窒化性が低下する場合がある。また、素材のコストアップにもなり、焼入れ温度を高くしないと所定の硬さを得られず、生産コストアップにもなる。
〔Mo:0.09〜0.4質量%〕
Moは、合金鋼の基地組織に固溶して焼入れ性及び焼戻し軟化抵抗性を向上させる元素である。また、炭化物と、基地組織のマルテンサイトとオーステナイトを安定化させるため、水素による組織変化が遅延されて各部品の寿命を延長させる効果をもたらす。その含有量は、0.09〜0.4質量%であり、好ましくは0.1〜0.4質量%である。Mo含有量が0.09質量%未満では、組織変化を遅延させる効果等が十分に得られない。一方、Mo含有量が0.4質量%を超えると、素材のコストアップを生じたり、被削性が低下したりするため生産性を低下させる。
〔他の合金成分〕
合金鋼は上記各元素を必須成分とするが、NiやCu、S、P及びO等を含むことができるが、含有量は何れも少ない方が好ましい。
〔表面硬さ:Hv653〜804〕
軸受は円滑な転がり運動を実現するため、内輪または外輪と転動体とは微小な領域で接触しており、その接触面には高い面圧が発生している。そのため、接触面の塑性変形の防止と、十分な転動疲労寿命とを確保するために、上記合金鋼に浸炭処理または浸炭窒化処理を行い、焼入れ後の表面硬さをHv(ビッカース硬さ)653〜804、好ましくはHv653〜800とする。Hv653を下回ると、このような効果が得られず転動疲労寿命の低下をもたらす。一方、Hv804を越えると、各部品の靭性が低下してしまう。このような表面硬さとするには、合金組成の制御とともに、(C+N)量と焼入れ及び焼戻しの条件を制御する。
〔クロム化成被膜〕
クロム化成被膜は、Cr−Oを主体として構成されており、不働態化状態であるため化学的に安定である。そのため、潤滑膜が部分的に破断されるような使用条件下でも潤滑剤とのトライボケミカル反応を起こすことを防ぎ、水素の発生を抑制することができる。また、金属接触により被膜が薄くなっても、ある程度の自己修復能力があるため長時間成膜状態を維持することができる。本発明でクロム化成被膜を成膜する目的は、新生面を生成させないためであり、3価クロムや6価クロム等どのような形態のクロム化成被膜であっても基本的に本発明の効果は得られる。但し、環境保護の目的から、3価クロム化成処理を行うことが好ましい。具体的には、3価クロム塩を基本として構成された酸性溶液に各部品を浸漬することで、酸化クロム(Cr)や水酸化クロム(Cr(OH))からなる被膜を成膜する。
このクロム化成被膜は、上記したCr含有量が2.5〜4.5質量%である鋼に成膜した方が、通常の軸受鋼(JIS−SUJ2)のようにCr含有量が1.3〜1.6質量%である鋼に成膜した場合よりも、鋼と被膜との間の結合が強固になり、長時間成膜状態を維持できることを見出した。そのため、クロム化成被膜はめっき処理跡に耐食性を確保するために実施されることが一般的であるが、本発明では鋼の表面に直接成膜する。
また、クロム化成被膜の膜厚は、0.1μm以上とし、好ましくは0.1〜2.1μmとし、更に好ましくは0.1〜2.0μmとする。膜厚が0.1μm未満では十分な被膜効果が得られない。一方、被膜が厚くなりすぎると内輪または外輪と、転動体との間に設けれた隙間が小さくなり、円滑な転がり運動が阻害されるおそれがあるため、上限を2.1μmとすることが好ましい。
〔より好ましい品質〕
寿命延長効果をより高めるために、転動体直径をDとするとき、軌道面の表面から深さ0.01Dの位置におけるC量及び残留オーステナイト量(γR量)、並びに鋼中のCr量が、下記式(1)を満足することが好ましい。
式(1):[Cr]−5([C]−0.02[γR])≧−0.3
式中[Cr]:合金鋼中のCr量(質量%)
[C]:転動体との接触面の表面から0.01D位置でのC量(質量%)
[γR]:転動体との接触面の表面から0.01D位置でのγR量(体積%)
〔表面から深さ0.01Dの位置〕
転がり軸受では、軌道輪(内輪及び外輪)と転動体との接触応力によって、接触面直下の内部にせん断応力が発生し、このせん断応力によって金属疲労が生じて、接触面表面のはく離に至ることがある。このせん断応力の分布は、軌道輪と転動体との接触応力と接触面積により決定されるため、転動体直径がせん断応力の分布に大きく影響を与える。通常の使用条件では、転動体直径(D)の約1%程度の深さ(深さ0.01D)でせん断応力が大きくなり、その領域を起点としてはく離が生じる。水素による組織変化も同様に、せん断応力が大きくなり、この深さ0.01D位置で発生しやすいことが明らかになっている。このような理由から、深さ0.01D位置において、式(1)を満足することが好ましい。
〔式(1)の規定〕
炭化物が生成すると、基地組織に固溶しているCrが炭化物に取られてしまう。そのため、炭化物周辺とその他の場所とで合金成分の分布が不均一になり、Crが疎な場所ではクロム化成被膜を強固に結合する効果が得られないことがある。特に、Cr量が多い合金鋼ではこの現象が顕著に見られる。そこで、鋼材中のCr量と、深さ0,01Dの位置でのC量及び残留オーステナイト量(γR量)との関係が式(1)を満たすことで、炭化物の生成を抑制して基地組織に合金元素を均一に多く固溶させることができることを見出した。
式(1)の値は、Cr量が多くなるほど大きくなる。また、C量が多いと、基地組織に固溶しきれなかったCがCrと結合して炭化物を形成するため、C量が低いほど式(1)の値は大きくなる。更に、一般的にC量を多くしたり、焼入れ温度を高くすることで基地組織への固溶C量を多くすると、γR量が多くなる。そのため、γR量が多いと固溶C量が多くなり、炭化物の生成が少なくなるため、式(1)の値は高くなる。そして、式(1)の値が−0.3以上であるときに、Cr量、C量及びγR量のバランスが良く、炭化物の生成を抑制して基地組織に合金元素を均一に多く固溶させることができ、寿命の延長効果がより高まる。式(1)のより好ましい値は、1以上である。
〔深さ0.01D位置での残留オーステナイト量〕
尚、金属組織中の残留オーステナイトは、合金鋼の基地組織であるマルテンサイトと結晶構造が異っており、その結晶構造により水素の拡散定数を低下させる効果がある。そのため、深さ0.01D位置にて水素が局所的に集積するのを遅延させ、この位置での組織変化の発生を遅延させる効果がある。この効果を十分に得るためには、深さ0.01D位置での残留オーステナイト量を20〜45体積%とすることが好ましい。20体積%未満%未満では組織変化を遅延させる効果が十分ではなく、45体積%を超えると各部品の寸法安定性が低下する。また、深さ0.01D位置での残留オーステナイト量をこの範囲にするには、合金鋼の成分を制御するとともに、(C+N)量と焼入れ・焼戻し条件とを制御する。
〔深さ0.01D位置での圧縮残留応力〕
式(1)を満足することに加えて、深さ0.01D位置での圧縮残留応力を50〜300MPaとすることがより好ましい。水素が集積しやすいこの位置での圧縮残留応力は、組織変化からの亀裂の発生及びその伝播を抑制する効果はる。この位置での圧縮残留応力が50MPa未満では、この組織変化を遅延させる効果が十分に得られない。一方、この位置での圧縮残留応力が300MPaを超えると、この圧縮残留応力と平衡をとるために材料内部に発生する引張残留応力の値が大きくなり、逆に亀裂の進展を加速する可能性がある。
〔熱処理条件〕
本発明の転がり軸受を製造するにあたり、上記した式(1)、更には深さ0.01D位置での圧縮残留応力を満足するには、例えば下記に示す熱処理を行えばよい。
図1に示すように、先ず、880〜1000℃にて所定時間保持する浸炭処理または浸炭窒化処理、好ましくは浸炭窒化処理を行う。浸炭窒化処理によりNが基地組織に固溶されると、C含有量が低い場合でも硬さとγR量を高く保つことができる。より好ましくは、N含有量を0.05〜0.50質量%とする。880℃未満では、CやNの十分な拡散速度を得ることができず、処理時間が長くなるため、生産性を低下させる。一方、1000℃を越えると、旧オーステナイト粒が粗大化してしまう。炉内のガス濃度については、最適な(C+N)含有量を得るために調整する必要があり、例えばプロパンやブタン等の炭化水素系のガス流量を制御することでC濃度を、アンモニアのガス流量を制御することでN濃度をそれぞれ調整する。保持時間については、内輪や外輪のサイズに応じて最適な浸炭または浸炭窒化の深さとなるように調整する。
浸炭処理または浸炭窒化処理後に、放冷却する。また、図2に示すように、急冷してもよい。あるいは、図3に示すように、浸炭処理または浸炭窒化処理後に800〜880℃で所定時間保持した後に、急冷してもよい。800℃未満で保持すると基地組織から析出Cによる炭化物が生成する。一方、保持温度が880℃を超えると、粗大化した旧オーステナイト粒が次工程の焼入れ処理に影響を及ぼし、組織が粗くなってしまう。尚、保持時間は、内輪や外輪のサイズに応じて最適な浸炭または浸炭窒化の深さとなるように調整する。
次いで、焼入れ処理を行う。その際、内輪や外輪を820〜900℃にて所定時間保持した後、油冷する。焼入れ温度が820℃未満では、焼入れ後の硬さが不足する。より好ましくは、基地組織への合金元素を溶け込みやすくするために、860℃以上で行う。一方、焼入れ温度が900℃を超えると、残留オーステナイト量が過剰になったり、旧オーステナイト粒の粗大化が生じたりして、靭性の低下をもたらす。尚、焼入れ時間は、内輪や外輪のサイズに応じて最適な浸炭または浸炭窒化の深さとなるように調整する。
但し、浸炭処理または浸炭窒化処理後に800〜880℃で所定時間保持した場合は、この焼入れ処理を行わなくてもよい。
次いで、焼き戻し処理を行う。その際、内輪や外輪を160〜240℃にて保持した所定時間後、空冷または炉冷する。焼戻し温度が160℃未満では、靭性の低下や。合金鋼の組織が水素に対して敏感になり、水素による組織変化が生じやすくなる。一方、焼入れ温度が240℃を超えると、残留オーステナイトが分解されて固溶Cが析出されるため、水素による組織変化を遅延させる効果が十分に得られなくなる。尚、焼戻し時間は、内輪や外輪のサイズに応じて最適な浸炭または浸炭窒化の深さとなるように調整する。
尚、本発明において転がり軸受の種類に制限はなく、深溝玉軸受、アンギュラ玉軸受、スラスト玉軸受等の玉軸受、円筒ころ軸受や円錐ころ軸受、自動調心ころ軸受等のころ軸受、あるいはニードル軸受等に適用可能である。また、本発明の転がり軸受には潤滑剤が封入もしくは外部から供給されるが、潤滑剤は潤滑油でもグリースでも構わない。
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明を更に説明するが、本発明はこれにより何ら制限されるものではない。
(実施例1〜14、比較例1〜13)
本実施例では、玉軸受6317の内輪を表1の鋼種からなる鋼材を用いて作製し(但し、鋼種HはJIS−SUJ2)、外輪及び玉についてはJIS−SUJ2で作製した。これは、後述する寿命評価試験では、内輪がはく離しやすいためである。
内輪は、表1の鋼種からなる鋼材を、所定のサイズに切断して熱間ローリング、旋削加工を行った後、表2に示す熱処理を行った。浸炭処理または浸炭窒化処理は、880〜1000℃で、14時間保持した。また、浸炭工程は、初期からRXガスとエンリッチガスの混合ガス雰囲気、浸炭窒化工程は処理からRXガスとエンリッチガスとアンモニアガスの混合ガス雰囲気とし、表2のC濃度になるようにCP値を調節した。浸炭窒化後の冷却時に保持する場合は、860〜880℃で1.5時間保持後に油冷した。その後、800〜900℃で1.5時間保持してから焼入れを行い、その後160〜240℃で焼戻しを行った。
熱処理後、研削加工と仕上げ加工を行った後、十分に脱脂及び洗浄を行い、30℃の3価クロム塩を基本として構成された酸性溶液に20〜120秒間浸漬し、その後洗浄、乾燥工程を行うことで、表面に3価クロム化成被膜を成膜した。最後に、このようにして作製した内輪を用い、外輪、玉及び保持器とともに組み立てて玉軸受6317(内径85mm、外径180mm、幅41mm、玉直径30.2mm)を得た。そして、この軸受を下記に示す寿命評価試験に供した。
(寿命評価試験)
ラジアル荷重53.2Nを負荷し、高トラクション油(トランスミッション用合成油)
を供給しながら、図4に示すように10秒ごとに回転方向を逆転させて連続回転させ、寿命に至るまでの時間を計測した。寿命ははく離発生によるものであり、はく離は全て内輪側に発生しており、はく離部には白色組織が観察された。サンプル数は3であり、その平均値を求めた。結果を表2に示すが、一般的な軸受鋼であるJIS−SUJ2製の比較例1の寿命に対する相対値である。また、表2には、用いた鋼種、熱処理条件、表面硬さ、深さ0.01D位置の品質(C量、N量、残留オーステナイト量、圧縮残留効力)、クロム化成被膜の膜厚を併せて示す。
Figure 2016008327
Figure 2016008327
表2及び図6に示すように、実施例1〜14は、合金組成、熱処理品質、クロム化成被膜の厚さが本発明で規定する範囲内であり、比較例1の標準的なJIS−SUJ2製と比較して寿命が実施例1〜9では10倍以上、実施例10〜14では5.5〜6.9倍延びている。
これに対し比較例2〜13は何れも、実施例に比べて寿命が短くなっており、試験後あの内輪断面の金属組織の観察において、水素による組織変化が観察された。その理由は次のとおりと考えられる。
比較例2、11、12は、合金組成が本発明の範囲外、もしくは熱処理品質が本発明の範囲外であるため、寿命が短くなっている。
比較例3〜9は、クロム化成被膜が成膜されていないため、寿命が短くなっている。しかしながら、合金組成及び熱処理品質が本発明の範囲内であるため、水素による組織変化が遅延されて比較例1に比べると寿命が4〜5倍延びている。
比較例10は、クロム化成被膜の厚さが本発明の範囲外であるため、寿命が短くなっている。
また、クロム化成被膜の耐久性を評価するために、クロム化成皮膜を成膜した実施例1〜7、11及び比較例2、13について、合金鋼中のCr量と、寿命比との関係を求めた。図5に示す。鋼種はA〜G、H、K、Nであり、Cr量以外は全て本発明の範囲内であるため、寿命比がクロム化成被膜の耐久性を示していると考えられる。そして、図5に示すように、Cr量が2.5質量%以上で寿命が格段に長くなっている。

Claims (2)

  1. 内輪と外輪との間に、転動自在に設けられた転動体を備える転がり軸受において、
    前記内輪及び前記外輪の少なくとも1つが、
    C :0.08〜0.38質量%、
    Si:0.16〜0.5質量%、
    Mn:0.18〜1.2質量%、
    Cr:2.5〜4.5質量%、
    Mo:0.09〜0.4質量%、
    を含み、残部が鉄及び不可避的不純物を含有する合金鋼を、浸炭処理または浸炭窒化処理して表面に硬化層を形成してなり、かつ、
    表面硬さがHv653〜804であり、
    最表面に厚さ0.1μm以上のクロム化成被膜が成膜されていることを特徴とする転がり軸受。
  2. 下記式(1)を満たすことを特徴とする請求項1記載の転がり軸受。
    式(1):[Cr]−5([C]−0.02[γR])≧−0.3
    式中[Cr]:合金鋼中のCr量(質量%)
    [C]:転動体との接触面の表面から0.01D位置でのC量(質量%)
    [γR]:転動体との接触面の表面から0.01D位置でのγR量(体積%)
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2023110174A (ja) * 2022-01-28 2023-08-09 山陽特殊製鋼株式会社 高温ガス浸炭下での浸炭性に優れる機械構造用鋼

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